説明

成膜装置、成膜速度算出方法、成膜方法、及び有機発光素子の製造方法

【課題】迅速に成膜速度を算出し、被処理基板へ供給する有機材料ガスの濃度を略一定にして良質な膜を効率良く形成することができ、保守管理も容易である成膜装置、成膜速度算出方法、成膜方法、有機発光素子の製造方法を提供する。
【解決手段】成膜装置1のプロセスコントローラ11は、イオンゲージ10に搬送ガスのみを通流させた場合の(Ii/Ie)0 と、有機材料及び搬送ガスを通流させた場合の(Ii/Ie)との差と、成膜速度D/Rとの関係を示す成膜速度検量線を作成する。プロセスコントローラ11は成膜時に(Ii/Ie)を算出し、前記成膜速度検量線を用いてD/Rを求め、求めたD/Rに基づいてマスフローコントローラ5を制御し、搬送ガスの流量を制御して、成膜処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機材料を搬送ガスにより被処理基板へ供給して成膜を行う成膜装置、成膜速度を算出する成膜速度算出方法、該成膜速度算出方法により算出された成膜速度に基づいて成膜する成膜方法、及び該成膜方法により成膜する工程を有する有機発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロルミネッセンス(EL:electroluminescence)を利用した有機EL素子が開発されている。有機EL素子は、ブラウン管等に比べて消費電力が小さく、また、自発光であるため、液晶ディスプレイ(LCD)に比べて視野角に優れている等の利点があり、今後の発展が期待されている。
【0003】
有機EL素子のもっとも基本的な構造は、ガラス基板上にアノード(陽極)層、発光層および陰極(カソード)層を重ねて形成したサンドイッチ構造である。発光層の光を外に取り出すために、ガラス基板上のアノード層には、ITO(Indium Tin Oxide)からなる透明電極が用いられる。
【0004】
また、有機EL素子の陰極側には、陰極層から発光層への電子の移動の橋渡しを行わせるために、発光層の上に電子輸送層及び電子注入層(仕事関数調整層)が順に成膜されている。電子注入層としては仕事関数が小さいアルカリ金属、例えばCs、Li等が用いられ、電子輸送層には、電子輸送性の有機材料は例えばAlq3 (tris(8-hydroxyquinolinato) aluminium)が用いられている。電子輸送層及び電子注入層は、それぞれ、蒸着によって成膜されている。
【0005】
特許文献1には、上述の有機EL素子の有機材料からなる層を形成するための成膜装置が開示されている。該成膜装置は、被処理基板であるガラス基板を成膜処理する処理室を備えており、ヒータにより加熱して有機材料の蒸気を発生させる蒸気発生部が処理室の外部に配置されている。処理室の上部には、配管により蒸気発生部に接続され、蒸気発生部で発生した有機材料の蒸気をガラス基板へ向けて噴出する蒸着ヘッドが設けられている。
【0006】
上述の従来の成膜装置において、成膜材料の気化速度(蒸発速度、換言すれば材料ガスの濃度)を一定に保持することは、成膜速度を向上させて、良質な膜を被処理基板上に効率よく形成し、製品の性能を向上させるために重要である。このため、特許文献2に開示されているように、被処理基板の近傍に膜厚センサ(成膜速度センサ)を配設し、膜厚センサによって検出された結果に基づいて、ヒータ温度及び搬送ガスの流量を調整することにより、材料の気化速度を一定に制御することが行われている。
【0007】
成膜速度センサ、すなわち材料ガスの濃度を検出するためのセンサとしては、QCM(Quarts Crystal Microbalance:水晶振動子マイクロバランス)、FT−IR(フーリエ変換型赤外分光光度計)が挙げられる。
QCMは、水晶振動子の電極表面に成膜材料が付着した場合、その質量に応じ共振周波数が変動する(下がる)性質を利用して極めて微量な質量変化を計測するものである。
FT−IRは、成膜材料に赤外線を照射し、透過光を分光することでスペクトルを得、微量な濃度変化を計測するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−38225号公報
【特許文献2】特開2005−325425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の水晶振動子マイクロバランス(QCM)により膜厚をモニタリングする場合、成膜材料が一定量堆積したときには交換・洗浄しなければならず、保守管理が煩雑であるという問題がある。
また、フーリエ変換型赤外分光(FT−IR)により蒸気量(成膜レート)をモニタリングする場合、測定に1分間程度の時間を要する。
【0010】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、迅速に成膜速度を算出し、被処理基板へ供給する有機材料ガスの濃度を略一定にして良質な膜を効率良く形成することができ、保守管理も容易である成膜装置、成膜速度算出方法、成膜方法、該成膜方法により成膜する工程を有する有機発光素子の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る成膜装置は、被処理基板に成膜する処理室と、有機材料を蒸発させる蒸発部と、該蒸発部で蒸発させた前記有機材料を搬送ガスにより搬送し、前記被処理基板へ向けて噴出する有機材料供給部とを備える成膜装置において、熱電子を放出する熱電子源、正電圧が印加されるグリッド、放出された熱電子が前記有機材料及び搬送ガスの分子と衝突して生じた正イオンを捕捉するコレクタ、及び該正イオンが該コレクタに捕捉されたときに流れるイオン電流を測定するイオン電流測定部を有するイオンゲージと、前記熱電子が前記グリッドに入って生じる電子電流の電流値Ieを一定に保持した場合に、前記イオン電流測定部により測定されるイオン電流の電流値Iiに基づいて、前記有機材料の成膜速度を求める成膜速度算出手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る成膜速度算出方法は、有機材料を蒸発させ、蒸発させた前記有機材料を搬送ガスにより搬送し、被処理基板へ供給して成膜する成膜速度を算出する成膜速度算出方法において、加速電圧が印加されて熱電子を放出する熱電子源、正電圧が印加されるグリッド、放出された熱電子が前記有機材料及び搬送ガスの分子と衝突して生じた正イオンを捕捉するコレクタ、及び該正イオンが該コレクタに捕捉されたときに流れるイオン電流を測定するイオン電流測定部を有するイオンゲージを用い、前記熱電子が前記グリッドに入って生じる電子電流の電流値Ieを一定に保持した場合に、前記イオン電流測定部により測定されるイオン電流の電流値Iiに基づいて、前記成膜速度を算出することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る成膜方法は、前述の成膜速度算出方法により成膜速度を算出し、算出した成膜速度に基づき前記搬送ガスの流量を制御して、前記有機材料を前記被処理基板に成膜することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る有機発光素子の製造方法は、基板上に、陽極、発光層、及び陰極を設ける有機発光素子の製造方法において、前述の成膜方法により、前記有機発光素子を構成する膜を形成する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、応答性良好に、成膜速度を算出して搬送ガスの流量をフィードバック制御することができ、成膜時の有機材料の蒸発速度(材料ガスの濃度)を一定にして良質な膜を効率良く形成することができ、保守管理も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1に係る成膜装置の構成を模式的に示す側断面図である。
【図2】イオンゲージの構成を示す模式図である。
【図3】グリッド電圧VgとSA /SB (SAr/SN2 )との関係を示すグラフである。
【図4】加速電圧Vacc とSA /SB (SAr/SN2 )との関係を示すグラフである。
【図5】グリッド電圧Vgを180V、加速電圧Vacc を45Vにした場合の、基準真空ゲージ値(CM)とIi/Ieとの関係を示すグラフである。
【図6】グリッド電圧Vgを50V、加速電圧Vacc を50Vにした場合の、CMとIi/Ieとの関係を示すグラフである。
【図7】Arの流量とΔPとの関係を示すグラフである。
【図8】搬送ガスを通流させた状態を示す側断面図である。
【図9】搬送ガスの流量と(Ii/Ie)0 との関係を示すグラフである。
【図10】搬送ガス及び材料ガスを通流させた状態を示す側断面図である。
【図11】搬送ガスの流量と(Ii/Ie)との関係を示すグラフである。
【図12】成膜速度検量線を示すグラフである。
【図13】プロセスコントローラによる流量設定の処理の手順を示すフローチャートである。
【図14】プロセスコントローラによる成膜処理の手順を示すフローチャートである。
【図15】本発明に係る成膜装置を備える成膜システムの構成を概念的に説明する説明図である。
【図16】成膜システムを用いて成膜された有機EL素子を模式的に示した断面図である。
【図17】本発明の実施の形態2に係る成膜装置の構成を示す模式図である。
【図18】搬送ガス及び材料ガスを通流させた状態を示す模式図である。
【図19】プロセスコントローラによる成膜速度検量線の較正処理の手順を示すフローチャートである。
【図20】他の成膜装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る成膜装置1の構成を模式的に示す側断面図である。
処理室2は、搬送方向を長手方向とする中空略直方体形状をなし、アルミニウム、ステンレス等で構成されている。処理室2の長手方向両端側の面には、被処理基板Gを処理室2の内外へ搬送するための搬送口211,211が形成され、ゲートバルブ212,212によって搬送口211,211が開閉するように構成されている。処理室2の適宜箇所には排気管213が設けられており、排気管213には高速真空ポンプを含む排気装置214が接続されている。排気装置214を作動させることによって、処理室2内を所定の圧力、例えば0.01Paに減圧することができる。
【0018】
処理室2の底部には、処理室2に搬入された被処理基板Gを搬送する搬送装置202が設置されている。搬送装置202は、処理室2の底部に長手方向に沿って設けられた案内レールと、該案内レールに案内されて搬送方向、即ち前記長手方向へ移動可能に設けられた移動部材とを備え、移動部材の上端部には、被処理基板Gを略水平に支持する支持台203が設けられている。支持台203の内部には、被処理基板Gを保持する静電チャック、被処理基板Gの温度を保温又は加熱するヒータ、冷媒管等が設けられている。なお、支持台203は、リニアモータによって移動するように構成されている。
【0019】
処理室2の上部、搬送方向略中央部には、真空蒸着法にて有機材料を被処理基板Gに形成する蒸着ヘッド241が設けられている。蒸着ヘッド241には、ヘッドカバー204が設けられ、ヘッドカバー204にはヒータが内蔵されている。
【0020】
蒸気発生部3は、容器31と、容器31の内部に配された加熱機構32とを備える。加熱機構32は、前記有機材料の蒸気を収容可能な容器状部分を有し、電源33から供給された電力によって有機材料を加熱するように構成されている。例えば電気抵抗体にて有機材料を加熱する。この加熱機構32内に収容した有機材料を加熱して、有機材料の蒸気を発生させる。
【0021】
また、容器31には、被処理基板Gに対して例えばAr等の不活性ガスからなる搬送ガスを供給する搬送ガス供給管4が接続されている。搬送ガスはマスフローコントローラ5により弁41を開き、流量を調整された状態で、搬送ガス供給管4により蒸気発生部3へ供給され、蒸気発生部3で生じた有機材料の蒸気と共に有機材料供給管6を介して蒸着ヘッド241へ供給されるように構成されている。有機材料供給管6の中途部には配管7が接続されており、弁71を開くことにより有機材料及び搬送ガスがイオンゲージ10及び外部へ送出されるように構成されている。
弁71の下流側には、マスフローコントローラ15により弁81の開閉を制御され、流量を調整された状態で、搬送ガスをイオンゲージ10側へ送出する配管8が接続されている。配管7の、配管8との接続部分の下流側の中途部には、搬送ガス及び有機材料をイオンゲージ10へ送出するためのイオンゲージ導管9が接続されている。配管7の該接続部分とイオンゲージ導管9との間にはオリフィスが設けられ、圧力を測定できるように構成されている。搬送ガス供給管4、有機材料供給管6、及び配管7,8は、ヒータにより加熱され、有機材料が管の内面に堆積しないように構成されている。
イオンゲージ導管9は、有機材料を通流する有機材料供給管6から分岐して設けられているので、イオンゲージ10において材料ガスが分解されて生じた有機化合物が蒸着ヘッド241へ供給されて成膜されることはない。
【0022】
また、成膜装置1は、成膜装置1の各構成部を制御するプロセスコントローラ11を備える。プロセスコントローラ11には、工程管理者が成膜装置1を管理するためにコマンドの入力操作等を行うユーザインターフェース12が接続されている。また、プロセスコントローラ11には、成膜装置1で実行される各種処理をプロセスコントローラ11の制御にて実現するための制御プログラム、処理条件データ等が記録されたプロセス制御プログラムが格納された記憶部13が接続されている。プロセスコントローラ11は、ユーザインターフェース12からの指示に応じた任意のプロセス制御プログラムを記憶部13から呼び出して実行し、プロセスコントローラ11の制御下で、成膜装置1での所要の処理が行われる。
なお、ここでは、被処理基板Gを搬送する例を説明したが、支持台203を固定し、被処理基板Gに対して基板処理ヘッド241を搬送するように構成してもよい。
【0023】
図2は、イオンゲージ10の構成を示す模式図である。
イオンゲージ10は、加速電圧Vacc が印加されて熱電子101を放出するフィラメント102と、正電圧Vg(グリッド電圧)が印加されるグリッド103と、放出された熱電子101が前記有機材料及び搬送ガスの分子110と衝突して生じた正イオン104を捕捉するコレクタ106と、正イオン104がコレクタ106に捕捉されたときに流れるイオン電流の電流値Iiを測定するイオン電流測定部107とを備える。また、イオンゲージ10は、熱電子101(前記分子と衝突して生じた2次電子105を含む)がグリッド103に入って生じる電子電流の電流値Ieを測定する電子電流測定部108と、フィラメント102の電流値Ifを測定するフィラメント電流測定部109とを備えている。
図2中、Vfはフィラメント電圧である。
【0024】
前記IiとIeとの間には次の式(1)が成立する。
Ii=S・Ie・P・・・(1)
S:感度係数、P:圧力
Ieが一定になるように加速電圧Vacc 及びグリッド電圧Vgを制御した場合、IiはPに比例する。
式(1)を変形すると、式(2)のようになる。
Ii/Ie=S・P・・・(2)
すなわち、Iiを測定し、ガス種に基づくSをパラメータとして式(1)に与えることにより、ガスの圧力Pが求まる。
従って、搬送ガスAのみイオンゲージ10に通流させた場合の(Ii/Ie)0 (イオン電流測定部107による測定値Iiを電流測定部108による測定値Ieで除したもの)と、搬送ガスA及び材料ガスBを通流させた場合の(Ii/Ie)との差を求めることで、材料ガスの分圧(濃度)に対応付けることができる。
【0025】
以下に、有機材料の被処理基板Gに対する成膜速度D/Rの求め方について詳述する。温度によりガスの圧力Pは変化するので、以下、温度は一定に保持する。
(測定条件の設定)
搬送ガスAのみを用い、加速電圧Vacc を一定にし、グリッド電圧Vgを複数変えて、それぞれIi/Ieと圧力Pとの関係を求める。各グリッド電圧Vgにつき、Ii/Ieと圧力Pとの関係を表すグラフの傾き(搬送ガスAの感度係数SA )を求める。材料ガスBについても同様に、加速電圧Vacc を一定にし、グリッド電圧Vgを複数変えた場合の、Ii/Ieと圧力Pとの関係を求め、各グリッド電圧Vgにつき、Ii/Ieと圧力Pとの関係を表すグラフの傾き(材料ガスBの感度係数SB )を求める。そして、各グリッド電圧Vgにおける感度係数SA とSB との比(比感度係数)SA /SB を求める。
【0026】
次に、搬送ガスAのみを用い、グリッド電圧Vgを一定にし、加速電圧Vacc を複数変えて、それぞれIi/Ieと圧力Pとの関係を求める。各加速電圧Vacc につき、Ii/Ieと圧力Pとの関係を表すグラフの傾き(搬送ガスAの感度係数SA )を求める。材料ガスBについても同様に、グリッド電圧Vgを一定にし、加速電圧Vacc を複数変えて、Ii/Ieと圧力Pとの関係を求め、各加速電圧Vacc につき、Ii/Ieと圧力Pとの関係を表すグラフの傾き(材料ガスBの傾きSB )を求める。そして、各加速電圧Vacc における感度係数SA とSB との比(比感度係数)SA /SB を求める。
【0027】
図3は、搬送ガスAとしてArを用い、材料ガスBの代わりに基準ガスとしてN2 を用いた場合のグリッド電圧VgとSA /SB (SAr/SN2 )との関係を示すグラフである。図3において、Vacc =0である。
図4は、搬送ガスAとしてArを用い、材料ガスBの代わりに基準ガスとしてN2 を用いた場合の加速電圧Vacc とSA /SB (SAr/SN2 )との関係を示すグラフである。図4において、グリッド電圧Vgは50V、100V、150Vの3種類である。
図3よりグリッド電圧Vgを50Vにした場合、比感度係数SA /SB が最も大きくなり、図4より加速電圧Vacc を50Vにした場合、比感度係数SA /SB が最も大きくなることが分かる。
【0028】
図5は、グリッド電圧Vgを180V、加速電圧Vacc を45Vにした場合の、基準真空ゲージ値(CM)とIi/Ieとの関係を示すグラフである。
図6は、グリッド電圧Vgを50V、加速電圧Vacc を50Vにした場合の、CMとIi/Ieとの関係を示すグラフである。
図5及び図6の場合の比感度係数SAr/SN2 はそれぞれ1.345、1.813であるので、図6の場合、比感度係数SAr/SN2 が向上していることが分かる。
以上のようにして、グリッド電圧Vg、加速電圧Vacc が設定される。
【0029】
有機EL素子等の製造工程において有機材料を成膜する場合に、一般的に材料ガスBの分圧は5%以下であり、小さい。比感度係数SA /SB が大きくなるようにグリッド電圧Vg及び加速電圧Vacc を設定することで、材料ガスBのイオン化確率が大きくなり、材料ガスBの分圧の変化に対する感度を向上させることができる。例えばAlq3 等の複数の環を有する有機材料の分子はイオンゲージ10により多数の化合物に分解されるので、Iiを増加させることができ、感度係数SB の増加効果をより大きくすることが可能である。
【0030】
有機材料の被処理基板Gへの成膜を行う場合に、搬送ガスと気化した有機材料とが混合された状態で、蒸着ヘッド241から噴出されるが、搬送ガスと材料ガスとを混合したときの搬送ガスの感度係数の変化の有無を調べた。
搬送ガスAとしてArを用い、材料ガスBとして基準ガスのN2 を用いるとする。
上記式(2)より、
Ii/Ie=SAr・PAr+SN2 ・PN2
SN2 =1であるので、
Ii/Ie=PN2 +SAr・PAr
よって、次式(3)のようになる。
SAr・PAr=Ii/Ie−PN2 ・・・(3)
【0031】
図7は、Arの流量と[(Ii/Ie)−PN2 ](ΔP)との関係を示すグラフである。Arの流量の各点(0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、4.0、4.5(sccm))につき、N2 の流量を0、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、4.0、4.5(sccm)それぞれに変えた場合のΔPを求めた。
図7より、ArとN2 との混合割合が異なっても、SArは略一定であることが確認された。従って、搬送ガスAと材料ガスBとの混合比率が変化した場合においても、SArは略一定であり、(Ii/Ie)0 と(Ii/Ie)との差を求めることで、材料ガスBの分圧をモニタリングできることが確認された。
【0032】
(成膜速度検量線の作成)
まず、搬送ガスAのみ用いて、搬送ガスAの流量と(Ii/Ie)0 との関係を求める。ここでは、搬送ガスAの一例としてArを挙げる。
図8に示すように、弁41,71を閉じ、弁81を開き、搬送ガスArを、配管8及びイオンゲージ導管9内を通流させる。
図9は、搬送ガスArの流量と(Ii/Ie)0 との関係を示すグラフである。(Ii/Ie)0 が搬送ガスArの圧力に対応する。
【0033】
次に、搬送ガスA及び材料ガスBを用い、搬送ガスAの流量と(Ii/Ie)との関係を求める。
図10に示すように、弁81を閉じ、弁41,71を開いて、Arを搬送ガス供給管4、有機材料供給管6、配管7、及びイオンゲージ導管9内を通流させ、有機材料ガスを有機材料供給管6、配管7、及びイオンゲージ導管9内を通流させる。
図11は、搬送ガスArの流量と(Ii/Ie)との関係を示すグラフである。また、図11には、搬送ガスArの流量と成膜速度D/R(nm/sec)との関係を表すグラフも示してある。(Ii/Ie)が搬送ガスAr及び材料ガスの合計圧力に対応する。
【0034】
そして、図9及び図11に基づいて、成膜速度検量線を作成する。
図12に成膜速度検量線を示す。横軸は成膜速度D/Rであり、縦軸は(Ii/Ie)0 と(Ii/Ie)との差、すなわち差圧ΔPに対応する。
この成膜速度検量線は記憶部13に記憶される。
有機材料を搬送ガスにより処理室2へ供給し、被処理基板G上に成膜する場合、イオン電流測定部107によりIiを測定して(Ii/Ie)を算出し、(Ii/Ie)0 との差を求め、前記成膜速度検量線を用いることにより、Iiの測定時点の成膜速度(D/R)、換言すれば材料ガスの濃度が得られる。
【0035】
(成膜処理)
以下に、成膜速度検量線を用いた成膜処理について詳述する。
図13は、プロセスコントローラ11による流量設定の処理の手順を示すフローチャートである。図10に示すように、弁81を閉じ、弁41,71を開いておく。
まず、プロセスコントローラ11は温度を設定し、搬送ガスArの流量を設定する(S1)。
次に、プロセスコントローラ11は有機材料を搬送ガスArによりイオンゲージ10へ供給させ、イオン電流測定部107によりIiを測定させて、Ii/Ieを算出する(S2)。
そして、プロセスコントローラ11は、前記流量における[(Ii/Ie)0 −(Ii/Ie)]を算出し(S3)、成膜速度検量線を用いて成膜速度D/Rを算出する(S4)。
プロセスコントローラ11は、a≦D/R≦bであるか否かを判定する(S5)。a,bは所望する成膜速度の誤差範囲に応じて適宜に設定する。
【0036】
プロセスコントローラ11は、a≦D/R≦bでないと判定した場合(S5:NO)、処理をステップS1へ戻す。プロセスコントローラ11はa≦D/R≦bを満たすようにマスフローコントローラ5を制御して、搬送ガスArの流量を変更する。
プロセスコントローラ11は、a≦D/R≦bであると判定した場合(S5:YES)、被処理基板Gを処理室2内で搬送させ、成膜処理を行い(S6)、処理を終了する。
【0037】
図14は、プロセスコントローラ11による成膜処理の手順を示すフローチャートである。
まず、プロセスコントローラ11は温度、ステージ速度、及び搬送ガスArの流量を設定する(S11)。
次に、プロセスコントローラ11は有機材料を搬送ガスArにより処理室2及びイオンゲージ10へ供給させ、イオン電流測定部107によりIiを測定させて、Ii/Ieを算出する(S12)。
そして、プロセスコントローラ11は、(Ii/Ie)0 −(Ii/Ie)を算出し(S13)、成膜速度検量線を用いてD/Rを算出する(S14)。
プロセスコントローラ11は、a≦D/R≦bであるか否かを判定する(S15)。
【0038】
プロセスコントローラ11は、a≦D/R≦bでないと判定した場合(S15:NO)、処理をステップS11へ戻す。プロセスコントローラ11は、搬送ガスArの流量、材料温度、及びステージ速度を変更する。ここで、成膜速度検量線は搬送ガスArの流量に基づいて作成されているので、まず、マスフローコントローラ5を用いて、搬送ガスArの流量を変更するのが好ましい。ステージ速度と成膜量の調整とは予め対応付けておく。D/Rが大幅にずれている場合は成膜前の処理に戻す。
プロセスコントローラ11は、a≦D/R≦bであると判定した場合(S15:YES)、被処理基板Gの末端部の成膜が終了したか否かを判定する(S16)。
プロセスコントローラ11は成膜が終了していないと判定した場合(S16:NO)、処理をステップS12へ戻す。
プロセスコントローラ11は成膜が終了したと判定した場合(S16:YES)、成膜処理を終了する。
【0039】
本実施の形態においては、イオンゲージ10を用いるので、印加電圧等の測定条件を迅速に設定することができる。そして、イオンゲージ10により成膜速度D/Rを求めるので、応答性良好に搬送ガスの流量をフィードバック制御することができ、有機材料の蒸発速度(濃度)を一定にして良質な膜を形成することができるとともに、製品の歩留を向上させることができる。また、膜厚センサとしてQCMを用いる場合のように、有機材料のロスもなく、材料の使用効率が向上し、保守管理も容易である。上述したように、感度係数Sを上げているので、感度が向上した状態で、有機材料のガスの圧力変化(蒸気量の変化)をモニタリングして、適正に成膜速度D/Rを制御することができる。
【0040】
以下に、成膜装置1を用いて、有機ELデバイスの有機EL素子を構成する電子輸送層等の層を形成する場合につき説明する。
図15は本発明に係る成膜装置1を備える成膜システムの構成を概念的に説明する説明図、図16は本実施の形態に係る成膜システムを用いて成膜された有機EL素子120を模式的に示した断面図である。
本実施の形態に係る成膜システムは、被処理基板Gの搬送方向に沿って直列順に並べたローダ90、トランスファーチャンバ91、成膜装置100、トランスファーチャンバ92、エッチング装置93、トランスファーチャンバ94、スパッタリング装置95、トランスファーチャンバ96、CVD装置97、トランスファーチャンバ98、及びアンローダ99を備える。
成膜装置100は、真空蒸着法にて、被処理基板G上にホール注入層123a、ホール輸送層123b、青発光層123c、赤発光層123d、緑発光層123e、電子輸送層123f、及び電子注入層123gを形成する。上述した成膜装置1は成膜装置100に含まれ、Alq3 等を有機材料として電子輸送層123fを形成するために用いられる。
エッチング装置93は、有機層の形状を所定形状に調整するための装置である。
スパッタリング装置95は、パターンマスクを用いて、例えば銀Ag、マグネシウムMg/銀Ag合金等をスパッタリングすることによって、電子注入層123g上に陰極層122を形成する装置である。
CVD装置97は、例えば窒化珪素等からなる封止層124をCVD法によって成膜し、被処理基板G上に形成された各層を封止するための装置である。
アンローダ99は、被処理基板Gを成膜システム外へ搬出するための装置である。
【0041】
電子輸送層123fを成膜する場合、Alq3 等の有機材料のガスの分圧は5%以下であり、小さいが、本実施の形態の成膜装置1によれば、感度を向上させた状態で、有機材料のガスの圧力変化(蒸気量、濃度の変化)をモニタリングすることができるので、適正に成膜速度D/Rを制御して、良好に電子輸送層123fを成膜することができる。
【0042】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2に係る成膜装置111は、実施の形態1に係る成膜装置1と同様の構成を有し、さらにフーリエ変換型赤外分光装置(FT−IR)20を備える点が成膜装置1と異なる。
図17は、本発明の実施の形態2に係る成膜装置111の構成を示す模式図である。図中、図1と同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。ここでは、搬送ガスとしてArを用いる場合につき説明する。
FT−IR20は、搬送ガスAr及び有機材料に赤外線を照射するFT−IR光源21と、透過光を分光してスペクトルを得る分光部22と、分光部22により得られたスペクトルを検出するFT−IR光源23とを備えている。
マスフローコントローラ15により弁81を開き、流量を調整された状態で、搬送ガスArは配管8を介しFT−IR20を通流され、さらにイオンゲージ導管9内を通流されてイオンゲージ10へ送出され、外部へ排出される。
また、マスフローコントローラ5により弁41を開き、流量を調整された状態で、搬送ガスArは、搬送ガス供給管4により蒸気発生部3へ供給され、蒸気発生部3で生じた有機材料の蒸気と共に、弁161が開いた状態で、配管16及び8を介しFT−IR20を通流された後、イオンゲージ導管9内を通流されてイオンゲージ10へ送出され、外部へ排出されるとともに、弁171が開いた状態で、有機材料供給管17を介し蒸着ヘッド241へ供給されるように構成されている。また、有機材料及び搬送ガスArは、弁61が開いた状態で、有機材料供給管6を介し蒸着ヘッド241へ供給されるようにも構成されている。
【0043】
本実施の形態において、実施の形態1と同様に、まず加速電圧Vacc 及びグリッド電圧Vgの電圧値等の測定条件を設定する。
そして、設定した条件下で、図17に示すように、弁41,61,161,171を閉じ、弁81を開き、搬送ガスArを、配管8を介しFT−IR20を通流させた上で、イオンゲージ導管9内を通流させる。そして、図9に示す場合と同様にして、搬送ガスArの流量と(Ii/Ie)0 との関係を求める。
【0044】
次に、弁61,81,171を閉じ、弁41,161を開いて、搬送ガスArを、搬送ガス供給管4を介し蒸気発生部3へ供給し、蒸気発生部3で発生した気体状の有機材料とともに、配管8を介しFT−IR20を通流させた上で、イオンゲージ導管9内を通流させる。
そして、図11に示す場合と同様にして、搬送ガスArの流量と(Ii/Ie)との関係を示すグラフ、及び搬送ガスArの流量と成膜速度D/R(nm/sec)との関係を表すグラフを作成する。このとき、FT−IR20を用いてD/Rを求める。FT−IR20を用いることにより、定量の精度が向上する。
次いで、実施の形態1と同様にして、図12に示す場合と同様にして、成膜速度検量線を作成する。本実施の形態においては、D/Rの定量の精度が良好であるので、成膜速度検量線の精度も良好になる。
【0045】
プロセスコントローラ11は、図18に示すように、弁61,81を閉じ、弁41,161,171を開いた状態で成膜処理を制御する。
まず、プロセスコントローラ11は、図13に示したフローチャートと同様の手順で流量設定の処理を行い、図14に示したフローチャートと同様の手順で、成膜処理を行う。 プロセスコントローラ11は、成膜時にFT−IR20は用いず、イオンゲージ10を用いて測定したIiに基づき、成膜速度検量線を参照してD/Rを求める。
【0046】
また、プロセスコントローラ11は、所定の時間Tが経過した場合に、成膜速度検量線の較正を行う。
図19は、プロセスコントローラ11による成膜速度検量線の較正処理の手順を示すフローチャートである。
まず、プロセスコントローラ11は所定時間Tが経過したか否かを判定する(S21)。プロセスコントローラ11は所定時間Tが経過していないと判定した場合(S21:NO)、判定を繰り返す。
【0047】
プロセスコントローラ11は所定時間Tが経過したと判定した場合(S21:YES)、処理室2内を被処理基板Gを搬送させる前に、搬送ガスAr及び有機材料をFT−IR20及びイオンゲージ10へ送出し、イオンゲージ10によるIiの測定値に基づきD/Rを算出する(S22)。
同時に、プロセスコントローラ11は、FT−IR20を用いてD/R(2)を求める(S23)。
【0048】
プロセスコントローラ11は、D/RとD/R(2)との差の絶対値が所定値c以下であるか否かを判定する(S24)。所定値cは適宜の値を設定する。プロセスコントローラ11は、前記絶対値が所定値c以下であると判定した場合(S24:YES)、処理を終了する。
プロセスコントローラ11は、前記絶対値が所定値c以下でないと判定した場合(S24:NO)、成膜速度検量線の較正を行い(S25)、処理を終了する。プロセスコントローラ11はFT−IR20により求めた複数点のD/R(2)と、(Ii/Ie)0 −(Ii/Ie)とを対応付けて、成膜速度検量線を較正する。なお、成膜速度検量線の較正はこの方法には限定されない。
成膜速度検量線の較正後は、上記と同様にして成膜処理を行う。
【0049】
本実施の形態においては、FT−IR20を用いて成膜速度検量線を作成するので、上述したように精度(定量性)が向上する。そして、FT−IR20により成膜速度検量線を較正することができるので、有機材料の気化速度(蒸発速度、濃度)をより一定に保持することができ、より良質な膜を被処理基板G上に形成して、最終製品の均質化を図ることができる。
そして、成膜時にイオンゲージ10を用いてD/Rを検出するので、応答性は良好である。なお、成膜時に、FT−IR20を併用してD/Rを検出することにしてもよい。
また、有機材料を複数成分から構成する場合においても、FT−IR20により得られる分光スペクトルにより分離して、各成分のD/Rを求め、その合計値と、(Ii/Ie)0 −(Ii/Ie)とを対応付けて、成膜速度検量線を作成することができ、良好に成膜速度を検出することができる。
【0050】
図20は、他の成膜装置112の構成を示す模式図である。図中、図17と同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。
この成膜装置112においては、成膜時に、搬送ガスAr及び有機材料はFT−IR20内を通流せずに、配管18を用いて、蒸着ヘッド241及びイオンゲージ10へ供給されるように構成されている。
この場合、FT−IR20を通流させることによる有機材料の損失がなく、製品の歩留が向上する。
【0051】
なお、前記実施の形態1及び2においては、(Ii/Ie)0 と(Ii/Ie)との差と、成膜速度D/Dとの関係を示す成膜速度検量線を作成する場合につき説明しているがこれに限定されるものではない。(Ii/Ie)0 と(Ii/Ie)との差と、材料ガスの濃度との関係を示す検量線を作成することにしてもよい。
また、成膜装置の構成は、前記実施の形態1及び2において説明したものに限定されるものではない。
そして、本発明の成膜速度算出方法及び成膜方法は、有機EL素子以外の素子の成膜にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1、111、112 成膜装置
2 処理室
202 搬送装置
204 ヘッドカバー
241 蒸着ヘッド
3 蒸気発生部(蒸発部)
31 容器
32 加熱機構
4 搬送ガス供給管
5、15 マスフローコントローラ
6 有機材料供給管
7、8 配管
9 イオンゲージ導管
10 イオンゲージ
102 フィラメント
103 グリッド
104 コレクタ
107 イオン電流測定部
11 プロセスコントローラ
13 記憶部
20 FT−IR
21 FT−IR光源
22 分光部
23 FT−IR検出器
G 被処理基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板に成膜する処理室と、有機材料を蒸発させる蒸発部と、該蒸発部で蒸発させた前記有機材料を搬送ガスにより搬送し、前記被処理基板へ向けて噴出する有機材料供給部とを備える成膜装置において、
熱電子を放出する熱電子源、正電圧が印加されるグリッド、放出された熱電子が前記有機材料及び搬送ガスの分子と衝突して生じた正イオンを捕捉するコレクタ、及び該正イオンが該コレクタに捕捉されたときに流れるイオン電流を測定するイオン電流測定部を有するイオンゲージと、
前記熱電子が前記グリッドに入って生じる電子電流の電流値Ieを一定に保持した場合に、前記イオン電流測定部により測定されるイオン電流の電流値Iiに基づいて、前記有機材料の成膜速度を求める成膜速度算出手段と
を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記搬送ガスのみを通流させた場合の(Ii/Ie)0 と、前記有機材料及び搬送ガスを通流させた場合の(Ii/Ie)との差と、前記成膜速度との関係を示す成膜速度検量線を作成する手段を備え、
前記成膜速度算出手段は、前記成膜速度検量線に基づいて前記成膜速度を算出することを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
フーリエ変換型赤外分光光度計を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記蒸発部から前記有機材料供給部へ前記有機材料及び搬送ガスを通流する第1の通流管と、
該第1の通流管から分岐して前記有機材料及び搬送ガスを前記イオンゲージへ通流する第2の通流管と
を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項5】
前記第1及び第2の通流管、及び前記有機材料供給部を加熱する手段を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項6】
有機材料を蒸発させ、蒸発させた前記有機材料を搬送ガスにより搬送し、被処理基板へ供給して成膜する成膜速度を算出する成膜速度算出方法において、
加速電圧が印加されて熱電子を放出する熱電子源、正電圧が印加されるグリッド、放出された熱電子が前記有機材料及び搬送ガスの分子と衝突して生じた正イオンを捕捉するコレクタ、及び該正イオンが該コレクタに捕捉されたときに流れるイオン電流を測定するイオン電流測定部を有するイオンゲージを用い、
前記熱電子が前記グリッドに入って生じる電子電流の電流値Ieを一定に保持した場合に、前記イオン電流測定部により測定されるイオン電流の電流値Iiに基づいて、前記成膜速度を算出することを特徴とする成膜速度算出方法。
【請求項7】
前記搬送ガスのみを通流させた場合の(Ii/Ie)0 と、前記有機材料及び搬送ガスを通流させた場合の(Ii/Ie)との差と、前記成膜速度との関係を示す成膜速度検量線を作成するステップを有し、
作成した成膜速度検量線に基づいて前記成膜速度を算出することを特徴とする請求項6に記載の成膜速度算出方法。
【請求項8】
前記搬送ガス及び有機材料それぞれの下記式(1)で表される感度係数Sの比が大きくなるように、前記加速電圧及び前記正電圧を設定するステップを有し、
該ステップにより設定した前記加速電圧及び前記正電圧を印加して、前記(Ii/Ie)0 及び前記(Ii/Ie)を求めることを特徴とする請求項7に記載の成膜速度算出方法。
S=Ii/(Ie・P)・・・(1)
[式中、Pは圧力である]
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれかに記載の成膜速度算出方法により成膜速度を算出し、算出した成膜速度に基づき前記搬送ガスの流量を制御して、前記有機材料を前記被処理基板に成膜することを特徴とする成膜方法。
【請求項10】
基板上に、陽極、発光層、及び陰極を設ける有機発光素子の製造方法において、
請求項9に記載の成膜方法により、前記有機発光素子を構成する膜を形成する工程を有することを特徴とする有機発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−251178(P2012−251178A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122517(P2011−122517)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】