説明

成膜装置および成膜方法

【課題】成膜対象となる基板の劣化を防止ないしは抑制する。
【解決手段】原料ガスに光を照射することで種を生成し、種を基板2に堆積させることにより膜を成長させる光CVD装置(成膜装置)1であって、光源13と基板2を保持する試料台(基板保持部)14の間に遮光板(遮光部材)20を配置する。遮光板20は、基板2の成膜面2aと対向する裏面20a、裏面20aの反対側に位置する表面20b、裏面20aおよび表面20bのうちの一方から他方までを貫通する複数の貫通孔21を有している。また、遮光板20の裏面20aと基板2の成膜面2aの距離C1は、原料ガスの気体分子の平均自由行程以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜技術に関し、特に、光を照射することで種を生成し、これを基板に堆積させる光成膜装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平6−244159号公報(特許文献1)には、光励起を用いた基板(ウェハ)の洗浄装置(レジスト除去装置)として、光源と基板の間に光を透過しない遮蔽体を配置することが記載されている。
【0003】
また非特許文献1には、TEOS(Tetra-Ethyl-Ortho-Silicate)分子の消光断面積のスペクトルが掲載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−244159号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】前薗好成、横谷篤至、黒澤宏、菱沼宜是、松野博光、「真空紫外エキシマランプ光CVDによるシリカ薄膜常圧形成技術の開発」、レーザー研究、第32巻第1号、第55項、2004年1月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
化学気相反応を利用した成膜装置(CVD(Chemical Vapor Deposition)装置)は電子デバイス製造プロセスにおける各種半導体膜や金属膜、誘電体膜等の成膜を始めとして広く産業で用いられている。この装置は原料ガスにエネルギーを与えてガス分子を励起、若しくは解離させ活性種を生成し、これを基板上に堆積させて化学反応により膜を形成する装置である。ガスに与えるエネルギーの形態により幾つかの方式に分類される。熱エネルギーにより化学反応を起こして成膜を行う、熱CVD方式がある。また、プラズマ放電によりガス分子を解離、ラジカル化することにより成膜を行う、プラズマCVD方式がある。プラズマCVD方式ではプラズマによる励起を用いるため、熱的には比較的低温でも成膜できる特徴を有する。
【0007】
また、上記の他、ガス分子の励起に光を用いる光CVD方式(光CVD装置)がある。光CVD方式では、ガス分子の反応性を高めるため、分子内の結合を切断するか、高いエネルギー状態に励起する必要がある。このため使用する光源の波長はエネルギーの高い紫外光若しくは真空紫外光が用いられる。光CVD方式では、光が原料ガス分子に吸収され内部自由度を励起する。一部のエネルギーは緩和して熱エネルギーとなるものの、ガス分子の温度上昇を抑制しつつ、成膜を進行させることができるため、熱CVD方式やプラズマCVD方式と比較して成膜工程時のプロセス温度を低下させることができる。例えば、ほぼ室温(20℃〜50℃程度)で成膜することができる。また、原料ガスに有機系材料ガスを用いた光CVD方式は高い段差被覆性を示し、基板上の凹凸を平坦化して成膜できる点で熱CVD方式やプラズマCVD方式と比較して有利である。
【0008】
光CVD方式は、上記した特徴を有するので種々の分野で適用が検討される。例えば、半導体デバイスにおける層間絶縁膜、STI(Shallow Trench Isolation)やPMD(Pre−Metal Dielectric)のギャップ埋め込みプロセスなどへの適用が検討されている。半導体デバイスプロセスに於いては、光CVD方式で成膜する下地基板は無機材料であるため、段差被覆性が高いことが最も重要となる。また、例えば有機膜など、比較的に耐熱性が低い下地膜上に成膜する場合に光CVD方式を適用すると、プロセス温度を低下させることができるという点で、有利である。例えば、有機EL(Electro Luminescence)発光層上に保護絶縁膜などを堆積させる工程に適用する場合、有機膜の耐熱性から凡そ100℃以下での成膜が要求される。このため、プロセス温度を低減させることができる光CVD方式は、無機膜と比較して相対的に耐熱性の低い有機膜上に成膜する場合に適用して特に有効である。本願発明者は、光CVD方式を適用した成膜技術について検討を行い、以下の課題を見出した。
【0009】
光CVD方式を有機ELの様な下地に有機膜を含む基板に適用する場合、熱エネルギーを低減することができる。しかし、励起源である光が基板に照射されることにより、基板内の例えば有機膜が劣化する点について考慮する必要がある。光CVD方式では高エネルギーの光をエネルギー源に用いるため、原料ガスだけでなく基板も高エネルギーの光に晒されることになる。光CVD方式に用いられる光源は例えば低圧水銀ランプや重水素ランプ、誘電体バリアエキシマランプ、エキシマレーザーなどが用いられるため、光源の波長は126nmから248nm程度、典型的にはキセノン誘電体バリアエキシマランプの172nmである。このような波長域の光を照射しても、多くの無機膜に対しては劣化の問題は生じ難い。石英を始めとした誘電体などは長時間の照射により劣化が進行するが、数分程度の成膜時間であれば全く問題は生じない。
【0010】
ところが、下地に有機物(有機膜)を有する基板に光CVD方式で成膜する場合、光による有機物の損傷が生じる恐れがある。例えば有機ELの場合、分子の損傷により輝度劣化、寿命短縮などの悪影響が生ずる。そこで、本願発明者は、光の照射による基板の劣化を防止ないしは抑制する技術についてさらに検討を行った。本願発明者は、光CVD装置で成膜を行う前に、光CVD装置で使用する光源の波長を吸収する様な膜(光バリア膜)を前もって成膜しておく方法について検討した。しかし、この方法は光バリア膜を成膜するための真空装置を別途で必要とし、高い費用が必要となる。また、複数の真空装置間を真空環境で接続し真空搬送しない限り、真空引きと大気解放を繰り返す必要がありタクトが長くなる。真空搬送は、小さなウェハでは現実的解法となり得るが、ディスプレイ製造に使用されるような大型ガラス基板に対しては非現実的である。また、本願発明者は、光源と基板の間に光を遮蔽する構造物(遮光板)を設置する方法について検討した。詳しくは、光源と基板の間に複数の貫通孔を備える遮光板を配置した。つまり、遮光板により、光源から基板に照射される光の量を低減させ、かつ、複数の貫通孔を通じて励起された原料ガスを基板上に供給することで成膜する方法について検討した。この方法によれば、基板に照射される光を大幅に低減することができるので、例えば、下地に有機物(有機膜)を有する基板に適用しても、有機物の損傷(劣化)を防止ないしは抑制することができる。しかし、単に、光源と基板の間に複数の貫通孔を備える遮光板を配置するのみでは、成膜速度が大幅に低下してしまうことが判った。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、励起源として光を用いた成膜法において、効率的に成膜することができる技術を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、励起源として光を用いた成膜法において、成膜対象となる基板の劣化を防止ないしは抑制することができる技術を提供することにある。
【0013】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願において開示される発明のうち、代表的な形態の概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0015】
すなわち、本発明の一実施の形態である成膜装置は、原料ガスに光を照射することで種を生成し、前記種を基板に堆積させることにより膜を成長させる成膜装置であって、光源と基板を保持する基板保持部の間に遮光部材を配置するものである。また、前記遮光部材は、前記基板の成膜面と対向する第1面、前記第1面の反対側に位置する第2面、前記第1面および前記第2面のうちの一方から他方までを貫通する複数の貫通孔を有している。また、前記遮光部材の前記第1面と前記基板の前記成膜面の離間距離は、前記原料ガスの気体分子の平均自由行程以下である。
【発明の効果】
【0016】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。
【0017】
すなわち、励起源として光を用いた成膜法において、効率的に成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態である光CVD装置の基本構造を示す断面図である。
【図2】図1に示す光CVD装置により絶縁膜が形成された基板の構成例を示す拡大断面図である。
【図3】図1に示す遮光板の平面形状の一例を示す平面図である。
【図4】図3のA−A線に沿った拡大断面図である。
【図5】TEOSガスを用いた場合の成膜時の圧力(原料ガスの全圧)と平均自由行程λの相関を示す説明図である。
【図6】図3に示す遮光板の変形例を示す平面図である。
【図7】図6のA−A線に沿った拡大断面図である。
【図8】図4に示す遮光板に対する変形例を示す拡大断面図である。
【図9】図4に示す遮光板に対する他の変形例を示す拡大断面図である。
【図10】図1を用いて説明した成膜装置の変形例を示す拡大断面図である。
【図11】図10に示す基板、遮光板、マスク、および光源の平面的位置関係を示す平面図である。
【図12】図11に対する変形例である光CVD装置の基板、遮光板、マスク、および光源の平面的位置関係を示す平面図である。
【図13】図12に示す基板と遮光板の平面的位置関係を相対的に移動させた後の状態を示す平面図である。
【図14】図10に対する変形例である光CVD装置を示す断面図である。
【図15】図14に示す光CVD装置の成膜処理室に基板および遮光板を出し入れする機構を模式的に示す説明図である。
【図16】OMCTSガスを用いた場合の成膜時の圧力(原料ガスの全圧)と平均自由行程λの相関を示す説明図である。
【図17】TMCTSガスを用いた場合の成膜時の圧力(原料ガスの全圧)と平均自由行程λの相関を示す説明図である。
【図18】HMDSガスを用いた場合の成膜時の圧力(原料ガスの全圧)と平均自由行程λの相関を示す説明図である。
【図19】TEOS、OMCTS、TMCTS、HMDS各ガスに対する、計算で求めた波長172nmにおける振動子強度、消光断面積σ、平均自由行程の算出に使った分子径を一覧にまとめた説明図である。
【図20】図1に対する第1の比較例である光CVD装置を示す断面図である。
【図21】図1に対する第2の比較例である光CVD装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<本願における記載形式>
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0020】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0021】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。
【0022】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0023】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0024】
また、以下の実施の形態では、光CVDによる成膜工程の適用例として、本願発明者が具体的に検討した、有機EL素子が備える有機膜上に、例えば酸化珪素から成る保護膜を成膜する工程を取り上げて説明する。
【0025】
<光CVD装置の構成>
図1は、本実施の形態の光CVD装置の基本構造を示す断面図である。また、図2は、図1に示す光CVD装置により絶縁膜が形成された基板の構成例を示す拡大断面図である。
【0026】
図1に示す光CVD装置(成膜装置)1は、反応チェンバ(成膜処理室)10、ガス導入口(ガス供給部)11、ガス排出口(ガス排出部)12、光源13、試料台(基板保持部)14、および遮光板(遮光物、遮光部材)20を備えている。光CVD装置1を用いた成膜工程(成膜プロセス)では、ガス導入口11から導入(供給)された原料ガスに光源13から光を照射する。これにより原料ガスは光を吸収して分解され、活性種となった分子や原料ガス分子が遮光板20に形成された複数の貫通孔21を経由して基板2の成膜面2aに衝突する。そして基板2の成膜面に活性種が吸着し、基板2上に堆積されることで、成膜される。
【0027】
成膜処理室である反応チェンバ10内には、成膜対象物(試料)である基板2を保持する試料台14と、反応チェンバ10内に光を照射するための光源13を備えている。光源13は、原料ガスを励起するための励起光の供給源であって、本実施の形態では、例えばキセノン(Xe)エキシマランプを用いている。また、試料台14と光源13は、成膜工程時に基板2の成膜面2aが光源13側を向くような位置関係で配置される。図1に示す例では、基板2の成膜面2aとは反対側に位置する裏面2bが試料台14の上面と対向するように試料台14上に固定され、基板2の成膜面2aと光源13が上下方向で対向するように配置されている。光源13と基板2が固定される試料台14の間には、隔離板として石英窓17が配置され、光源13が直接的に原料ガスに晒されることを防ぐ構造となっている。励起光は石英窓17を介して基板2に向かって照射され、この途中で原料ガスに一部が吸収される。また、反応チェンバ10は、真空ポンプなどの排気装置15に接続され、減圧状態(真空状態)に維持することが可能な気密室となっている。図1に示す例では、ガス排出口12に排気装置15が接続され、ガス排出口12を介して反応チェンバ10内のガスを排出することにより、減圧状態を維持する構成となっている。
【0028】
また、ガス導入口11には、ガス供給源16が接続され、このガス供給源16から反応チェンバ10に向かって原料ガスが供給される。本実施の形態では、例えばTEOSガスが供給される。なお、図1では光CVD装置の基本構造を判り易く示すため、ガス導入口11に一つのガス供給源16を接続し、そこから1種類の原料ガスを供給する実施態様について示している。しかし、ガス供給源16の数や種類は上記に限定されず、例えば複数のガス供給源16を接続し、反応チェンバ10内に複数種類の原料ガスを供給することができる。また例えば、反応チェンバ10に供給するガスは、原料ガスのみみには限定されず、例えば、原料ガスに加えてキャリアガスや反応ガスを反応チェンバ10内に導入することができる。また、図1に示す例では、ガス導入口11は、反応チェンバ10の側壁に、ガス排出口12は、ガス導入口11とは反対側に位置する側壁に配置されている。また、ガス導入口11とガス排出口12の間には、基板2を保持する試料台14が配置されている。このような配置により、ガス導入口11から供給された原料ガスがガス排出口12に到達するまでの間に原料ガスに励起光が照射されて活性種が生成され、生成した活性種が基板2の成膜面2aに衝突する。
【0029】
また、本実施の形態で説明する成膜方法において、被成膜処理物である基板2は、図2に示すように、例えば、表示装置である有機ELディスプレイ装置に組み込まれる表示パネルである。基板2は成膜面(表面)2a、および成膜面2aの反対側に位置する裏面(所謂トップエミッション構造では基板裏面、ボトムエミッション構造では表示面)2bを備えている。また、基板2の成膜面2a側には、有機膜を含む有機EL素子3が形成されている。有機EL素子3の構成は、図2に示す態様には限定されないが、例えば以下のように構成される。図2に示す例では、アレイ状に形成されたTFT(Thin Film Transistor)などから成る複数のアクティブ素子(図示は省略)上に、陽極となる導体膜3a、正孔輸送層、発光層、電子輸送層など、機能の異なる膜(有機膜)が順次積層された積層膜である有機膜3b、および陰極となる導体膜3cが積層されている。そして、本実施の形態の成膜プロセスでは、基板2の成膜面2a上に予め形成された有機EL素子3を覆うように、酸化珪素や窒化珪素あるいは酸化窒化珪素などの絶縁膜(保護膜、パッシベーション膜)4を、図1に示す光CVD装置1を用いて成膜する。言い換えれば、本実施の形態の成膜プロセスでは、基板2上に形成された有機EL素子の上面が、成膜面2aの一部を構成し、有機EL素子3上に絶縁膜4を成膜する。なお、図2に示す例では複数のアクティブ素子が存在する場合について言及しているが、アクティブ素子の存在は必ずしも必須ではない。
【0030】
<遮光板>
ここで、本実施の形態の光CVD装置1が備える遮光板20について、比較例と対比しながら説明する。図20は図1に対する第1の比較例である光CVD装置を示す断面図、図21は図1に対する第2の比較例である光CVD装置を示す断面図である。また、図3は、図1に示す遮光板の平面形状の一例を示す平面図、図4は図3のA−A線に沿った拡大断面図である。
【0031】
図20に示す光CVD装置50は、図1に示す遮光板20を有していない点で図1に示す光CVD装置1と相違する。その他の点は図1に示す光CVD装置1と同様である。また、図21に示す光CVD装置51は、遮光板20と基板2が図1に示す光CVD装置1よりも離れて配置されている点で図1に示す光CVD装置1と相違する。その他の点は図1に示す光CVD装置1と同様である。
【0032】
基板2の成膜面2a上に絶縁膜を成膜することは、図20に示す光CVD装置50および図21に示す光CVD装置51のいずれでもできる。しかし、図20に示す光CVD装置50の場合、光源13から照射された光(励起光)の一部が、基板2に照射される。このように、励起光が基板2に照射されると、基板2に既に成膜された膜の特性に影響を及ぼす場合がある。特に、図2に示すように基板2の成膜面2a側に有機膜3bが形成されている場合、有機膜3bは光照射の影響を受け易い。例えば図2に示すように有機EL素子3を構成する有機膜3bの場合、有機膜3bを構成する分子が損傷することで輝度劣化、寿命短縮などの悪影響が生ずる。また、有機膜3bが成膜面2a側において露出している場合には特に光照射の影響を受け易いが、本願発明者の検討によれば、図2に示すように、有機膜3bが例えば金属膜である導体膜3cで覆われている場合であっても有機膜3bが光照射の影響により損傷し易いことが判った。したがって、基板2の成膜面2a側に有機膜3bを含む膜が形成されている場合には、特に、有機膜3bの特性劣化を抑制するための対策が必要であることが判った。
【0033】
そこで、本願発明者は図1に示す光CVD装置1や図21に示す光CVD装置51のように、基板2と光源13の間に遮光板20を設け、光源13から基板2に照射される光の量を低減させる技術について検討した。図1および図21に示す遮光板20は、例えばステンレスなど、励起光に対する吸収特性が隔離板である石英窓17よりも高い材料から成る。また、図3および図4に示すように遮光板20は、基板2の成膜面2aと対向する裏面20aおよび裏面20aの反対側に位置する表面20bを備え、裏面20aおよび表面20bのうちの一方から他方までを貫通する複数の貫通孔21が形成されている。詳しくは図4に示すように、遮光板20は、裏面20aに形成された複数の開口部21a、表面20bに形成された複数の開口部21b、および複数の開口部21aと複数の開口部21bを連結する複数の連結部21cにより複数の貫通孔21が構成される。また、図4に示す例では、平面視において複数の開口部21aと複数の開口部21bの位置が重なるように配置されている。このように遮光板20を基板2と光源13の間に配置することで、基板2に照射される光の量を低減することができる。また、遮光板20に複数の貫通孔21を設けることで、活性種となった分子を基板2に向かって通過させることができる。基板2上に形成された有機膜3bの特性劣化を抑制する観点からは、基板2に照射される光を完全に遮断する方法も考えられるが、本願発明者の検討によれば、基板2に照射される光の強さが遮光板20を配置しない場合と比較して50%程度になるまで低減できれば、有機膜3bの特性劣化の抑制効果が得られる。したがって、複数の貫通孔21による遮光板20の開口率を50%以下とすることが好ましい。ただし、貫通孔21の開口径が極端に大きくなると、基板2の成膜面2a上において、光の照射量にムラが生じるので、複数(多数)の貫通孔21を形成することで、光の照射量のムラを抑制することが好ましい。また、光の照射量のムラを抑制する観点からは、図3に示すように複数の貫通孔21を規則的に配置することが好ましい。図3では平面視において円形を成す開口部21bを備える貫通孔21がマトリクス状(行列状)に配置されている。また、隣り合う開口部21bは、等間隔で配置されている。このように、規則的に貫通孔21を配置することで、図1に示す基板2の成膜面2a上において、光の照射量にムラが生じることを抑制できる。つまり、光の照射による基板2の劣化を防止ないしは抑制することができる。
【0034】
ところが、本願発明者の検討によれば、図21に示す光CVD装置51の構成では、遮光板20を配置することにより成膜速度が大幅に低下することが判った。本願発明者が成膜速度低下の理由についてさらに検討を行った結果、以下の理由が考えられることが判った。膜の成長を担う活性種は比較的短い寿命のため、基板へ到達するまでに長い距離を移動すると失活する懸念がある。活性種が長距離を移動すると活性種同士の衝突により不活性分子となり、膜成長に寄与しなくなる。つまり、図21に示す光CVD装置51の場合、遮光板20の裏面20aと基板2の成膜面2aの距離が長いため(典型的には3cm〜5cm程度)、多くの活性種が基板2の成膜面2aに到達する前に失活した結果、成膜速度が低下したと考えられる。
【0035】
そこで、本願発明者は、図1に示す光CVD装置1のように遮光板20の裏面20aと基板2の成膜面2aの距離C1を近づける構成について検証し、成膜速度の低下を防止ないしは抑制できることを確認した。詳しくは、光CVD装置1は、遮光板20の裏面20aと基板2の成膜面2aの距離(離間距離)C1が原料ガスの気体分子の平均自由行程以下となるような位置関係で遮光板20と試料台14が配置されている。ここで、平均自由行程とは、分子の連続する2回の衝突間の平均的な移動距離として定義される。つまり、分子が平均自由行程よりも基板2から離れた位置で解離すると、概略半数以上の解離分子が基板2に到達する前に衝突するため、基板2に到達する前に失活し易い。言い換えると、遮光板20の裏面20aと基板2の成膜面2aの距離(離間距離)C1を原料ガスの気体分子の平均自由行程以下とすることで、平均的には、励起光を照射することで生成した活性種は、生成後に衝突を経験せずに基板2へ到達し、成膜に寄与させることができる。
【0036】
分子の平均自由行程は、以下のように算出することができる。平均自由行程λは気体分子運動論より、式1で表わされる。
λ=1/(21/2πdn)・・・(式1)
式1に示すdは分子の直径、nは分子密度である。光CVD方式での成膜時の反応チェンバ10内の典型的な圧力条件は例えば15Pa〜35Pa程度であり、反応チェンバ10内のガス分子密度(全分子密度)が低い為、ほぼ理想気体として取り扱うことができる。
【0037】
したがって、式1に示す分子密度nは理想気体の状態方程式から得られる式2の関係から求めることができる。
p=nkT・・・(式2)
式2に示すpは圧力、Tは絶対温度、kはボルツマン定数である。ここで、圧力pはガス分子(原料ガス分子)の全圧ではなく、分解、励起された活性種による分圧を用いるべきである。活性種同士の衝突では結合などにより失活するが、活性種と安定分子の衝突では両者共不活性な状態に緩和するよりも、エネルギーの授受を介して一方の分子は活性状態を保てると考えられるからである。
【0038】
式2の圧力pを活性種による分圧とする場合、分子密度nに全分子密度ではなく活性種の分子密度を用いればよい。活性種の分子密度は、原料ガス分子の光吸収に伴う解離と基板や壁への付着、排気などによる消滅とのバランスで決まる。単位時間当たりの活性種の生成数をα、単位時間当たりの活性種の消滅頻度をγとすると、活性種の分子密度Nに対し次のレート方程式が成り立つ。
dN/dt=α−γN・・・(式3)
また、式3をt=0でN=0の初期条件の下で解くと
N=α/γ×(1−exp(−γt))・・・(式4)
となる。
【0039】
上記式3、式4のαは、光源から入射する光子を吸収する原料ガス分子数と考えられるので、光源の照射強度をε、光の波長をη、原料ガスによる光の吸収率をβとすると次の式5から求められる。
α=β×εη/(hc)・・・(式5)
ここでhはプランク定数、cは光速である。
【0040】
また、式5のβは式7から求めることが出来る。まず、ガスに光を照射した場合の光の透過率は式6から求めることができる。
I=Iexp(−σnL)・・・(式6)
ここで、Iはガスを透過してきた光の強度、Iはガスに照射する光の強度、Lは光が通過するガスの存在する領域の距離、σは照射光に対するガスの消光断面積である。この式から
β=(1−I/I)=(1−exp(−σnL))・・・(式7)
となる。
【0041】
また、式7中のnは原料ガス全体の分子密度である。γは活性種となった分子の平均的な寿命の逆数と考えよく、Maxwell分布で与えられる最確速度(最も実現度の高い速度)Vを用いて
γ=V/Λ・・・(式8)
と表せる。ここで、Λは活性種の発生領域から基板、壁、排気ポートまでの平均的な距離である。mを分子質量とすればV=(2kT/m)1/2であることは知られている。式4、5、7、8より定常状態での活性種分子密度Nが求められる。このNを用いて式1より活性種の平均自由行程が求められる。
【0042】
以下に、原料ガスとしてTEOSガスを用いた場合を一例として平均自由行程λの値について説明する。図5は、TEOSガスを用いた場合の成膜時の圧力(原料ガスの全圧)と平均自由行程λの相関を示す説明図である。図5では、平均自由行程λと成膜時の圧力(原料ガスの全圧)を計算により求めた結果を片対数グラフとして示している。なお、上記した式6、式7における距離Lは、光CVD装置1の構成から5cmとした。また、Xeエキシマランプの波長172nmにおけるTEOS分子の消光断面積σはおよそ5×10−18cmである(例えば前記した非特許文献1には、TEOS分子の消光断面積のスペクトルが記載されている)。また、波長172nmの光を照射することでTEOSガスは解離するが、TEOSガスのメチル基1つが解離する場合が最も多く、次に、メチル基2つが解離する場合が多いと考えられる。このため、図5では、メチル基1つが解離した場合の平均自由行程λを曲線P1として記載し、メチル基2つが解離した場合の平均自由行程λを曲線P2として記載している。原料ガスの温度Tについては、50℃(323K)として曲線P1、P2を算出した。
【0043】
図5に示すように、成膜工程において用いる光源の種類、原料ガスの種類、圧力、および温度をパラメータとして、解離分子の平均自由行程λを算出することができる。また、解離分子の平均自由行程λは、解離後の分子の直寸法(分子直径サイズ)により異なるので、図5に示すように、原料ガス圧力および温度を一定にしても分子直径サイズに応じて幅を持った値となる。図5に示すように1つのメチル基が解離する場合よりも、2つのメチル基が解離する場合の方が平均自由行程λの値は大きくなる。また図示は省略するが、3つ以上のメチル基が解離する場合には、平均自由行程λの値は更に大きくなる。また、前記したように、原料ガスに光が照射された時に最も多く生じるのは、メチル基1つが解離する場合であると考えられる。したがって、距離Lをメチル基1つが解離する場合の平均自由行程以下とすれば、成膜速度の低下を防止ないしは抑制することができる。例えば図5に示す例では、典型的な圧力条件を例えば15Pa〜35Paとした場合、図1に示す遮光板20と基板2の距離C1を1cm以下とすれば、成膜速度の低下を抑制できる。
【0044】
以下に本願発明者が実験的に検証した結果について説明する。本願発明者は、図1に示す光源13にXeエキシマランプを用い、原料ガスであるTEOSガスの圧力を20Pa、基板2の温度を50℃(323K)として成膜処理を行った。この時、図1に示す遮光板20を取り除いた場合、および図1に示す距離C1を5mmとした場合には、いずれも50nm/分の成膜速度で酸化珪素(SiO)膜を形成することができた。一方、図1に示す距離C1を、平均自由行程λよりも大きい4cmとした場合には、成膜速度は著しく低下した。図1に示す距離C1と成膜速度の関係は原料ガス種により変化するが、後述するように典型的な原料ガス複数種類について検討した結果、原料ガス種による平均自由行程λの変化はあるものの、通常の原料ガス圧力範囲内であれば図1に示す距離C1を概ね5mm以下にすればガス種によらず遮光板20がない場合の成膜速度を維持できることが判った。
【0045】
以上説明したように、図1に示す光CVD装置1では、遮光板20の裏面20aと基板2の成膜面2aの距離(離間距離)C1が上記した式1〜式4を組み合わせて算出した平均自由行程λ以下となっている。このため、活性種の分子の多くは、生成後に衝突を経験せずに基板2へ到達する。この結果、成膜速度の低下を抑制できる。つまり、励起源として光を用いた成膜法において、効率的に成膜することができる。また、本実施の形態によれば、遮光板20を配置するので、励起源として光を用いた成膜法において、成膜対象となる基板2の劣化を防止ないしは抑制することができる。
【0046】
<成膜方法>
次に、図1に示す光CVD装置1を用いた成膜方法について説明する。
【0047】
本実施の形態の成膜方法では、まず、被成膜処理物である基板2を準備して、図1に示すように、試料台14上に固定し、反応チェンバ10内に配置する。この時、反応チェンバ10は、例えばガス排出口12を介して反応チェンバ10内のガスが予め排出され、減圧状態(真空状態)で維持される。また、基板2の成膜面2aには、例えば図2に示すように有機膜3bを含む膜(有機EL素子3)が予め形成(成膜)されている。また、基板2を試料台14上に配置する方法および反応チェンバ10内への搬送方法は特に限定されないが、例えば、図示しないロボットアームなどの基板搬送治具を用いて反応チェンバ10内の試料台14上に配置し、保持治具(図示は省略)により基板2を保持することで試料台14上に固定することができる。
【0048】
次に、基板2の成膜面2aと遮光板20の裏面20aが対向するように、基板2の成膜面2a上に遮光板20を配置する。遮光板20は、試料台14から独立して支持される。例えば図1に示すように試料台14は支持部14aにより支持され、遮光板20は支持部14aとは別に形成された支持部18に支持されている。また支持部18には、遮光板20を基板2の成膜面2aに対して直交方向に移動させる駆動部19が取り付けられている。このため、駆動部19を介して支持部18を移動させれば、遮光板20と基板2を所定の位置関係で配置することができる。すなわち、遮光板20の裏面20aと基板2の成膜面2aの距離(離間距離)C1が、上記した平均自由行程λ以下となるような位置関係で、基板2と遮光板20を対向配置することができる。
【0049】
次に、ガス供給源16からガス導入口11を介して反応チェンバ10内に原料ガス(例えばTEOSガス)を供給する。また、反応チェンバ10内に供給された原料ガスはガス排出口12から反応チェンバ10の外に排出される。この時、本実施の形態では、図1に示すようにガス導入口11は基板2の上方(成膜面2a側)に配置し、ガス排出口12は基板2の下方(裏面2b側)に配置している。言い換えれば、基板2が、ガス導入口11からガス排出口12の間に配置されている。この配置により、原料ガスが、ガス導入口11からガス排出口12に至るまでの間に、基板2の成膜面2aに接触させ易くなる。
【0050】
次に、光源13から励起光を原料ガスに向かって照射する。本実施の形態では、図1に示すように、光源13から基板2の成膜面2aに向かって励起光を照射する。これにより、原料ガスの一部は光を吸収して分解され(解離して)、活性種が生成される。生成された活性種の一部は、遮光板20に衝突して失活する。そして、活性種の他の一部は、遮光板20に形成された複数の貫通孔21を通過する。本実施の形態では前記したように遮光板20の裏面20aと基板2の成膜面2aの距離(離間距離)C1が、上記した平均自由行程λ以下となるような位置関係で、基板2と遮光板20を対向配置しているので、貫通孔21を通過した活性種の大部分は、基板2の成膜面2a上に形成される。そして、基板2の成膜面2aに活性種が吸着し、基板2上に堆積されることで図2に示す絶縁膜4が形成(成膜)される。このように、貫通孔21を通過した活性種の失活を抑制することで、成膜効率を向上させることができる。また、遮光板20により基板2に照射される光の強さを低減することで、基板2の劣化(特に図2に示す有機EL素子3を構成する有機膜3bの劣化)を防止ないしは抑制することができる。
【0051】
また、成膜速度や成膜される絶縁膜4の膜質は、成膜工程時の基板2の温度の影響を受ける。したがって、安定的に一定の膜質の絶縁膜4を形成する観点から基板2の温度を調整する基板温度調整機構部を設けることが好ましい。図示は省略するが、例えば、試料台14に温度調節用の流体を流す流体経路を設け、該流体経路に略一定温度となるように温度調節された流体を流す機構を基板温度調整機構部として用いることができる。また、活性種が基板2の成膜面2a以外の場所、例えば反応チェンバ10の内壁、石英窓17、あるいは遮光板20で堆積して膜が形成されることを抑制するため、これらの部材を加熱する加熱部を備えていることが好ましい。特に、遮光板20の貫通孔21が閉塞すると、成膜効率(成膜速度)が低下する原因となるため、遮光板20は例えばヒータなどの加熱部(図示は省略)により加熱しながら成膜することが好ましい。
【0052】
<変形例>
次に、上記した本実施の形態の成膜装置および成膜方法の好ましい態様について、変形例を取り上げながら説明する。図6は図3に示す遮光板の変形例を示す平面図、図7は図6のA−A線に沿った拡大断面図である。また、図8および図9は、それぞれ図4に示す遮光板に対する変形例を示す拡大断面図である。
【0053】
図3では、図1に示す基板2の成膜面2a上において、光の照射量にムラが生じることを抑制する観点から好ましい構成として、平面視において円形を成す開口部21bを備える貫通孔21がマトリクス状(行列状)に配置された例を示した。しかし、遮光板20に形成する複数の貫通孔の形状および配置は図3に示す態様に限定されない。例えば、図6および図7に示すように、平面視において長方形(帯形状)を成す開口部23bを備える複数の貫通孔(貫通スリット)23を等間隔で配置する構成とすることができる。詳しくは図7に示すように、遮光板22は、裏面20aに形成された複数の開口部23a、表面20bに形成された複数の開口部23b、および複数の開口部23aと複数の開口部23bを連結する複数の連結部23cにより構成される複数の貫通孔23を備える。開口部23a、23bはそれぞれ平面視において長方形(帯形状)を成す。図6に示すように帯状の貫通孔23を形成する場合であっても、遮光板22の開口率を調整(前記したように50%以下が好ましい)することで、図1に示す基板2の成膜面2aに照射される光を低減させることができる。また、複数の貫通孔23を規則的に配置することで、基板2の成膜面2a上において、光の照射量にムラが生じることを抑制できる。図3および図4に示す貫通孔21と図6および図7に示す貫通孔23は、開口率が同じであれば、遮光性能の観点および成膜速度の低下抑制の観点において大きな差はなく、孔開け加工効率および遮光板の強度の観点から好ましい形態を採用することができる。また、図示は省略するが、更なる変形例として貫通孔21と貫通孔23を交互に配置する態様とすることもできる。
【0054】
また、図4に示す例では、平面視において複数の開口部21aと複数の開口部21bの位置が重なるように配置されている。しかし、図8に示す貫通孔25や図9に示す貫通孔27のように、表面20b側に形成された開口部25b、27bと裏面20a側に形成された開口部25a、27aを平面視において重ならないように配置することができる。
【0055】
図8に示す遮光板24は、表面20bを持つ表面側板24b、裏面20aを持つ裏面側板24aおよび表面側板24bと裏面側板24aの間に配置される中空空間(連結部)24cを備えている。そして、表面側板24bの表面20bには複数の開口部25bが形成され、裏面側板24aの裏面20aには複数の開口部25aが形成される。言い換えれば遮光板24は開口部25a、25bの位置をずらした2枚の遮光物(表面側板24bと裏面側板24a)を、隙間(中空空間24c)を開けて重ねた構造である。また、開口部25a、25bはそれぞれ中空空間24cに連通しており、これにより、複数の開口部25aと複数の開口部25bがそれぞれ連結されている。つまり中空空間24cは、開口部25a、25b間を連結する連結部として機能する。
【0056】
一方、図9に示す遮光板26は、裏面20aに形成された複数の開口部27a、表面20bに形成された複数の開口部27b、および複数の開口部27aと複数の開口部27bを連結する複数の連結部27cにより構成される複数の貫通孔27を備える。つまり、開口部27aと開口部27bが平面視において重ならない位置に配置されている点を除き、図4に示す遮光板20と同様である。
【0057】
遮光板24、26のように開口部25a、27aと開口部25b、27bが平面視において重ならない位置に配置する構造は、遮光率を向上させる観点からは好ましい。特に、図8に示す遮光板24の場合、開口部25bから開口部25aに至る経路中に屈曲部が存在するので、遮光板24内を通過する光の経路が屈曲する。したがって、基板2(図1参照)に照射される光を大幅に低減することができる。ただし、貫通孔25のように開口部25bから開口部25aに至る経路中に屈曲部が存在する場合、活性種の分子が貫通孔25の内壁に衝突して失活する場合がある。この場合、成膜速度が低下する原因となる。したがって、活性種の失活による成膜速度の低下を抑制する観点からは、図4に示す遮光板20、図6および図7に示す遮光板22、あるいは図9に示す遮光板26のように、表面20b側の開口部21b、23b、27bと裏面20a側の開口部21a、23a、27aを連結する連結部21c、23c、27cに屈曲部が存在しない構成が好ましい。
【0058】
次に、基板2の成膜面2aの一部に成膜する実施態様について説明する。図10は、図1を用いて説明した成膜装置の変形例を示す拡大断面図、図11は図10に示す基板、遮光板、マスク、および光源の平面的位置関係を示す平面図である。図10に示す光CVD装置1Aと図1に示す光CVD装置1は、遮光板20と光源13の間にマスク30が固定されている点で相違する。その他の点では光CVD装置1Aは光CVD装置1と同様である。
【0059】
図1では、光CVD装置の基本構成を理解し易くするため、基板2の成膜面2a全体に、一括して絶縁膜4(図2参照)を成膜する構成について説明したが、絶縁膜4を成膜するのは基板2の成膜面2a全体には限定されず、成膜面2aの一部に選択的に形成する場合に、前記した成膜技術を適用することができる。例えば、表示装置向けの用途では、製造効率を向上させる観点から、平面積が1mを超えるような大型の基板2が備える複数のデバイス領域に一括して成膜処理を施し、基板2上に必要なデバイスを形成した後で分割して複数の製品(例えばディスプレイパネル)を取得する場合がある。このような方法では、原料の利用効率向上などの観点からデバイス領域以外の領域(例えばデバイス領域の周囲を取り囲むように配置される切断領域)には、膜を形成せず、デバイス領域に選択的に成膜することが好ましい。図10に示す光CVD装置1Aでは、遮光板20と光源13の間にマスク30が固定されている。マスク30には、基板2のデバイス領域に対応する複数の開口部(貫通孔)31が形成されている。図11に示す例では、マスク30には4つの開口部31が形成されている。このように光CVD装置1Aのように、光源13と基板2の間にマスク30を配置する場合、マスク30により励起光の一部は遮光される。しかし、基板2のデバイス領域は開口部31において露出しているため、マスク30による遮光効果では、基板2の劣化を抑制することができない。そこで、図10および図11に示すように、マスク30と基板2の間に遮光板20を配置することで、マスク30の開口部31にそれぞれ複数の貫通孔21が配置される。また複数の貫通孔21の平面サイズは、開口部31の平面サイズよりも小さい。これにより、基板2に照射される光の強さを低減することができる。なお、マスク30は、デバイス領域以外を覆うための部材なので、基板2と位置合わせを行い固定する必要があるが、図10に示す例では遮光板20と一括して固定している。言い換えれば、マスク30を固定(支持)する装置を利用して遮光板20を固定している。このため、遮光板20およびマスク30をそれぞれ独立して固定(支持)する場合と比較して装置の構成を単純化することができる。
【0060】
また、図11に示した実施態様の変形例として、マスク30に形成する開口部31を例えば1箇所、あるいは2箇所程度に留め、基板2を移動させることで、基板2上の複数のデバイス領域に成膜することができる。図12は、図11に対する変形例である光CVD装置の基板、遮光板、マスク、および光源の平面的位置関係を示す平面図である。また、図13は、図12に示す基板と遮光板の平面的位置関係を相対的に移動させた後の状態を示す平面図である。図12および図13に示す光CVD装置1Bは、遮光板20、マスク30の平面積が図11に示す光CVD装置1Aよりも小さい。また、一度に光を照射する領域の面積が小さいため、図11に示す光CVD装置1Aよりも光源13の数が少なくなっている。光CVD装置1Bを用いた成膜方法では、まず、図12に示すように基板2の成膜面2aの一部を光照射領域(第1領域)として光CVD方式による成膜を行う。次に、図13に示すように基板2と光源13の平面的位置関係を基板2の成膜面2aに沿って相対的に移動させる。この時、遮光板20およびマスク30は光源13と基板2の間に配置する必要があるので、遮光板20およびマスク30と基板2の平面的位置関係も相対的に移動させる。そして図13に示す位置関係で、基板2の成膜面2aの他の一部を光照射領域(前記第1領域とは異なる第2領域)として光CVD方式による成膜を行う。言い換えれば、光CVD装置1Bを用いた成膜方法では、基板2の成膜面2aを複数の領域に区分して、各領域に対して光CVD方式による成膜処理を順次行う。
【0061】
図12および図13に示す光CVD装置1Bを用いた成膜方法では、一度に光を照射する領域が小さくなるので、図11に示す実施態様と比較して光源13の数を低減することができる。また、遮光板20およびマスク30の平面積を小さくすることができる。前記したように、光源13と基板2の間に遮光板20を設ける場合、成膜速度の低下を防止ないしは抑制する観点から遮光板20と基板2の離間距離を平均自由行程λ以下とすることが好ましい。この平均自由行程λは基板2や遮光板20の平面寸法と比較すると非常に小さく、1mm〜1cm程度の距離となる。このため、遮光板20と基板2の間の距離C1(図1参照)を維持する観点から遮光板20には弛みの発生を抑制できる程度の強度が要求される。しかし、遮光板20の板厚を厚くすると、成膜速度が低下し易くなる。そこで、図12および図13に示す光CVD装置1Bを用いた成膜方法のように、遮光板20の平面積を小さくすれば、遮光板20と基板2の間の距離C1(図1参照)を維持する観点から必要な強度を確保し、かつ、遮光板20の板厚の増加を抑制できる。基板2と光源13の位置を相対的に移動させる方法としては、例えば図12および図13に示すように、基板2を保持、固定する試料台14(図10参照)に、基板2の成膜面2aに沿って移動させる移動機構部(駆動部)14bを取り付ける方法を例示することができる。図12および図13に示す光CVD装置1Bを用いた成膜方法は、例えば平面積が1mを超えるような大型の基板2に対して成膜処理を施す場合に適用して特に有効である。
【0062】
次に、図1〜図13では、基板2の成膜面2aが上方を向くように、所謂平置き状態で固定して成膜処理を行う実施態様について説明した。しかし、基板2の固定方法は平置き状態での固定に限定されず、例えば、基板2の成膜面2aが横方向を向くように、所謂縦置き状態で固定して成膜処理を行うことができる。図14は、図10に対する変形例である光CVD装置を示す断面図である。また、図15は図14に示す光CVD装置の成膜処理室に基板および遮光板を出し入れする機構を模式的に示す説明図である。なお、図15は、光CVD装置1Cの平面的レイアウトを上方からの視点で示している。
【0063】
図15に示す光CVD装置1Cは、基板2の成膜面2aが横方向を向くような状態で保持しながら成膜処理を施す点で、図10に示す光CVD装置1Aとは異なる。基板2を保持する基板保持部32には、複数の保持治具33が取り付けられ、複数の保持治具33を介して基板2の保持および姿勢制御を行う構造となっている。また光CVD装置1Cでは、遮光板20は遮光板保持部(遮光部材保持部)34に、マスク30はマスク保持部35にそれぞれ保持されている。基板保持部32、遮光板保持部34およびマスク保持部35はそれぞれ独立して支持され、また、それぞれ独立して移動させることができる駆動部(図示は省略)を備えている。また、遮光板保持部34は遮光板20の上方に配置され、遮光板20の上端側を保持している。言い換えれば遮光板20は遮光板20の上方に配置された遮光板保持部34に吊るされている。このように遮光板20を上方から吊るすように保持することで、遮光板20に弛みが発生することを抑制することができる。特に、遮光板20の寸法(基板2の成膜面2aと対向する平面の寸法)が大きくなれば、遮光板20の自重が増加するので、弛みの発生を一層抑制することができる。前記したように大型の基板2に対して成膜処理を施す場合には、前記したように遮光板20の板厚の増加を抑制し、かつ、基板2と遮光板20の離間距離を1mm〜1cm以下で維持する技術が必要となる。このため、図14に示す光CVD装置1Cのように、遮光板20の自重により、弛みの発生を抑制することができる構造は、遮光板20の板厚の増加を抑制できる点で好ましい。また、光CVD装置1Cのマスク保持部35はマスク30の上方に配置され、マスク30の上端側を保持している。言い換えればマスク30はマスク30の上方に配置されたマスク保持部35に吊るされている。つまり、マスク30は遮光板20と同様な構造により保持される。このため、マスク30の平面サイズが大きくなった場合でも厚さが厚くなることを抑制できる。
【0064】
次に、図14および図15に示す光CVD装置1Cを用いた成膜方法について説明する。図15に示すように光CVD装置1Cは成膜処理室である反応チェンバ10の隣に、基板準備室40および退避室(遮光板退避室、マスク退避室)41を備えている。光CVD装置1Cを用いた成膜方法では、まず基板準備室40で基板保持部32に基板2を保持させる。
【0065】
基板保持部32には、図15に矢印を付して示すように、反応チェンバ10と基板準備室40の間を移動(矢印M1)できるような駆動部(移動機構部;図示は省略)が取り付けられている。また、反応チェンバ10と基板準備室40の間にはゲート(仕切扉)40Gが配置されている。基板保持部32が反応チェンバ10と基板準備室40の間を移動する際には、このゲート40Gを開放(矢印M2)する。また、基板準備室40において、基板2を基板保持部32に保持させる方法は特に限定されないが、例えば、図示しないロボットアームなどの基板搬送治具を用いて基板2の姿勢制御を行いながら基板保持部32まで搬送(矢印M0)し、基板保持部32に保持、固定させることができる。次に基板2を保持した基板保持部32を成膜処理室である反応チェンバ10内に搬送する。基板保持部32は、反応チェンバ10内において、光源13に向かって移動させる(矢印M3)ことができる。このため基板2の成膜面2aと光源13の距離を調整することができる。
【0066】
一方、退避室41には、遮光板20を保持する遮光板保持部34、およびマスク30を保持するマスク保持部35がそれぞれ収容される。遮光板保持部34およびマスク保持部35は、それぞれ独立して反応チェンバ10と退避室41の間を移動(矢印M4、M5)できるような駆動部(移動機構部;図示は省略)が取り付けられている。また、反応チェンバ10と退避室41の間にはゲート(仕切扉)41Gが配置されている。基板保持部32が反応チェンバ10と退避室41の間を移動する際には、このゲート41Gを開放(矢印M6)する。なお、基板準備室40および退避室41は、それぞれ真空ポンプなどの排気装置(図示は省略)に接続され、減圧状態(真空状態)に維持することが可能な気密室となっているので、ゲート40G、41Gを開放した場合でも、反応チェンバ10内に多量の大気が流入することを抑制できる。また、遮光板保持部34およびマスク保持部35は、それぞれ独立して反応チェンバ10内において、光源13と基板保持部32の間で移動(矢印M7、M8)させることができる。このため、基板2の成膜面2aと遮光板20の離間距離(図14に示す距離C1)を調整することができる。
【0067】
上記のように、基板2、遮光板20およびマスク30を所定の位置関係で配置した後、原料ガスを供給し、該原料ガスに向かって光を照射する。光CVD装置1Cを用いた成膜方法では、基板2の成膜面2aと光源13が上下方向ではなく横方向において対向配置されているので、光源13からの光源13の横に配置される基板2に向かって照射される。なお、図14では、原料ガスの流れ易さを考慮して、ガス導入口11を反応チェンバ10の上方に配置し、ガス排出口12を反応チェンバ10の下方に配置する構成を示している。ただし、ガス導入口11およびガス排出口12の位置は図14に示す態様には限定されず、例えば、ガス導入口11およびガス排出口12をそれぞれ反応チェンバ10の側壁に設ける構造とすることができる。
【0068】
また、光CVD装置1Cは前記したように遮光板保持部34およびマスク保持部35を、それぞれ独立して別個に移動させることができるので、以下のような成膜方法を適用することができる。すなわち、成膜処理の途中でマスク30と基板2の間から遮光板20を取り除き、再び成膜処理を行うことで、全体の成膜時間を短縮することができる。詳しく説明すると、光CVD方式で酸化珪素や窒化珪素あるいは酸化窒化珪素などの絶縁膜4(図2参照)を成膜する場合、絶縁膜4には励起光の一部を吸収する特性がある。波長が126nmから248nm程度の光を励起光として用いる場合、波長が短いため絶縁膜4に吸収され易い。このため、成膜処理の開始時には遮光板20を設置した状態で成膜を行い、絶縁膜4がある程度成長した時点で遮光板20を取り除くことで下地の基板2への光照射を抑制しつつ、成膜速度を加速することができる。この場合、遮光板20を介在させた状態で成膜処理を行う第1の成膜工程では、例えば図14に示す遮光板20の裏面20aと基板2の成膜面2aの距離(離間距離)C1が例えば平均自由行程λより大きくても良い。距離(離間距離)C1が平均自由行程λよりも大きくなると第1の成膜工程の成膜時間は増大するが、遮光板20を取り除いた後で成膜処理を行う第2の成膜工程で成膜時間を短縮することができるので、全体の成膜時間を短縮することができる。ただし、成膜時間を短縮する観点からは、前記した第1の成膜工程においても距離C1を平均自由行程λ以下とすることが好ましい。図15に示す例では、反応チェンバ10の隣にはゲート41Gを介して反応チェンバ10と連通する退避室41が配置されている。また、遮光板保持部34は成膜処理の途中で遮光板20を反応チェンバ10から退避室41に向かって移動させる機構を備えている。したがって、成膜処理の途中で退避室41に遮光板20を移動させることで、基板2と光源13の間から取り除くことができる。
【0069】
また、上記では、原料ガスをTEOSガスとする場合を取り上げて詳しく説明したが、原料ガスはTEOSガスには限定されない。例えば、TEOSガスの他、OMCTS(Octa-Methyl-Cyclo-Tetra-Siloxane)ガス、TMCTS(Tetra-Methyl-Cyclo-Tetra-Siloxane)ガス、Hexamethyldisilaneガス、Hexamethyldisilazaneガスなど、シラザン、シラノール、シロキサンを含めた有機珪素ガスを用いることができる。本願発明者の検討によれば、前記したTEOSガスをOMCTSガス、TMCTSガス、HMDS(Hexa-Methyl-Di-Silane)ガスに置き換えた場合であっても例えば図1に示す距離C1を5mm以下とすれば、図16〜図18に示すように概ねこれらのガスの平均自由行程λ以下となり、成膜速度の低下を効果的に抑制することができることが判った。OMCTSガス、TMCTSガス、HMDSガスの平均自由行程λは上記で既に説明した方法と同様にして求めた。ただし、波長172nmの照射光に対するこれらのガスの消光断面積σは次に述べるようにシミュレーションにより算出した。シミュレーションには第一原理の分子軌道計算プログラムGaussian03を用い、基底関数にはB3LYP/6−31+G(d)を使用した。TEOS、OMCTS、TMCTS、HMDSの各ガスの構造最適化後、時間依存密度汎関数法を用いて9eV以下の範囲で励起状態の励起エネルギーおよび基底状態との間の遷移の振動子強度を計算した。更に、得られた線スペクトルを半値幅0.35eVのガウス関数で幅を持たせて振動子強度のスペクトルを求め、波長172nmにおける振動子強度を得た。消光断面積σの実験値が明らかになっているTEOSガスの振動子強度を1とした場合の、他のガスの振動子強度の計算値とTEOSガスの消光断面積σの積の値から、各ガスの波長172nmにおける消光断面積を推定した。計算により求めた波長172nmにおける振動子強度、消光断面積σ、分子量、活性種分子径(メチル基が1〜2個解離した場合の径)を図19にまとめた。この他、温度は50℃(323K)、光源の波長172nm、光源の照射強度25mW/cm、光源の光が原料ガスを通過する距離5cm、活性種の発生領域から図1に示す基板2を経由して反応チェンバ10の壁や、ガス排出口12に至るまでの平均的な距離1mを計算に用いた。また、図5の場合と同様に、メチル基1つが解離した場合の曲線をP1、メチル基2つの解離した場合の曲線をP2として示した。ただし、図18に示すHMDSガスの例では、メチル基の解離数が1つの場合と2つの場合で同様な曲線を描くため、曲線P2は図示を省略した。
【0070】
図16〜図18に示すように、OMCTSガス、TMCTSガス、HMDSガスの平均自由行程λは、原料ガスの圧力によらず、少なくとも5mmよりは大きいことが判る。また、原料ガス温度による平均自由行程λの変化は小さいため、少なくとも図1に示す距離C1を5mm以下とすれば、ガス種によらず、成膜時間の低下を抑制できることが判る。
【0071】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0072】
例えば、前記実施の形態では、光照射により劣化が生じ易い基板の一例として、成膜面に有機膜を含む積層膜が形成された基板2を取り上げて説明したが、有機膜の有無によらず、光照射による劣化(特性劣化)が懸念される成膜工程に上記した成膜方法を適用することでこれを抑制することができる。
【0073】
また例えば、前記実施の形態では、遮光板20と基板2の間に他の部材を配置せずに成膜処理を行う実施態様について説明した。しかし、例えば成膜時に絶縁膜4をパターニングする場合には、パターニング用のマスク(ステンシルマスク)を基板2の成膜面2a上に取り付けた状態で前記した光CVD方式による成膜方法を適用することができる。このように遮光板20と基板の間に他の部材を配置する場合であっても、遮光板20の裏面20aと基板2の成膜面2aの距離C1を平均自由行程λ以下とすれば、成膜速度の低下を抑制することができる。
【0074】
また、上記では、種々の変形例を説明したが、各変形例を適宜組み合わせて適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、光CVD方式による成膜工程を有する製品、例えば、有機ELディスプレイなどに幅広く利用可能である。
【符号の説明】
【0076】
1、1A、1B、1C、50、51 光CVD装置(成膜装置)
2 基板
2a 成膜面
2b 裏面(表示面)
3 有機EL素子
3a、3c 導体膜
3b 有機膜
4 絶縁膜(保護膜、パッシベーション膜)
10 反応チェンバ(成膜処理室)
11 ガス導入口(ガス供給部)
12 ガス排出口(ガス排出部)
13 光源
14 試料台(基板保持部)
14a 支持部
14b 移動機構部(駆動部)
15 排気装置
16 ガス供給源
17 石英窓
18 支持部
19 駆動部
20、22、24、26 遮光板(遮光部材)
20a 裏面
20b 表面
21、23、25、27 貫通孔
21a、21b、23a、23b、25a、25b、27a、27b 開口部
21c、23c、25c、27c 連結部
24 遮光板(遮光部材)
24a 裏面側板
24b 表面側板
24c 中空空間(連結部)
30 マスク
31 開口部
32 基板保持部
33 保持治具
34 遮光板保持部(遮光部材保持部)
35 マスク保持部
40 基板準備室
40G、41G ゲート(仕切扉)
41 退避室
C1 距離(離間距離)
P1、P2 曲線
M0〜M8 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスに光を照射することで種を生成し、前記種を基板に堆積させることにより膜を成長させる成膜装置であって、
前記基板を収容する成膜処理室と、
前記成膜処理室内に前記原料ガスを供給するガス供給部と、
前記成膜処理室内に前記光を照射する光源と、
前記成膜処理室内において、前記基板の成膜面が前記光源側を向くように前記基板を保持する基板保持部と、
前記成膜処理室内の前記基板と前記光源の間に配置される遮光部材と、
を備え、
前記遮光部材は、
前記基板の前記成膜面と対向する第1面、前記第1面の反対側に位置する第2面、前記第1面および前記第2面のうちの一方から他方までを貫通する複数の貫通孔を有し、
前記遮光部材の前記第1面と前記基板の前記成膜面の離間距離は、前記原料ガスの分子の平均自由行程以下であることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
請求項1に記載の成膜装置において、
前記基板の前記成膜面には、有機膜を含む積層膜が形成されていることを特徴とする成膜装置。
【請求項3】
請求項2に記載の成膜装置において、
前記遮光部材は、
前記第1面に形成される複数の第1開口部、前記第2面に形成され前記複数の第1開口部と連通する複数の第2開口部、および前記複数の第1開口部と前記複数の第2開口部を接続して前記複数の貫通孔を構成する複数の連結部を備え、
前記複数の連結部には、屈曲部が形成されていないことを特徴とする成膜装置。
【請求項4】
請求項3に記載の成膜装置において、
前記離間距離は5mm以下であることを特徴とする成膜装置。
【請求項5】
請求項3に記載の成膜装置において、
前記原料ガスは、TEOS(Tetraethoxysilane)ガス、OMCTS(Octa−Methyl−Cyclo−Tetra−Siloxane)ガス、TMCTS(Tetra−Methyl−Cyclo−Tetra−Siloxane)ガス、またはHMDS(Hexamethyldisilane)ガスであることを特徴とする成膜装置。
【請求項6】
請求項1に記載の成膜装置において、
前記基板保持部には、前記基板の前記成膜面に沿って前記基板保持部を移動させる移動機構部が取り付けられていることを特徴とする成膜装置。
【請求項7】
請求項1に記載の成膜装置において、
前記遮光部材は、遮光部材保持部に保持され、
前記遮光部材保持部には、前記基板保持部とは別個に移動させることができる駆動部が取り付けられていることを特徴とする成膜装置。
【請求項8】
請求項7に記載の成膜装置において、
前記成膜処理室の隣には、前記成膜処理室と仕切扉を介して連通する退避室が配置され、
前記遮光部材保持部は、成膜処理の途中で前記遮光部材を前記成膜処理室から前記退避室に向かって移動させる機構を備えていることを特徴とする成膜装置。
【請求項9】
(a)基板を保持する基板保持部を成膜処理室内に配置する工程、
(b)前記成膜処理室内に原料ガスを供給する工程、
(c)前記基板の成膜面と対向する位置に配置される光源と前記基板の間に遮光部材を配置する工程、
(d)前記(a)、(b)および(c)工程の後、前記光源から前記基板に向かって光を照射することで種を生成し、前記基板の前記成膜面上に前記種を堆積させる工程、
を有し、
前記遮光部材には、
前記基板の前記成膜面と対向する第1面、前記第1面の反対側に位置する第2面、前記第1面および前記第2面のうちの一方から他方までを貫通する複数の貫通孔が形成され、
前記(c)工程では、前記遮光部材の前記第1面と前記基板の前記成膜面の離間距離が、前記原料ガスの分子の平均自由行程以下となるように位置合わせを行うことを特徴とする成膜方法。
【請求項10】
請求項9に記載の成膜方法において、
前記(a)工程で前記成膜処理室内に配置する前記基板の前記成膜面には、有機膜を含む積層膜が予め形成されていることを特徴とする成膜方法。
【請求項11】
請求項9に記載の成膜方法において、
前記(d)工程では、前記基板の前記成膜面を複数の領域に区分して、各領域に対して成膜処理を順次行うことを特徴とする成膜方法。
【請求項12】
請求項9に記載の成膜方法において、
前記(d)工程には、
(d1)前記遮光部材を介在させた状態で成膜処理を行う第1の成膜工程、
(d2)前記(d1)工程の後、前記遮光部材を前記光源と前記基板の間から取り除く工程、
(d3)前記(d2)工程の後、前記遮光部材を介さずに成膜処理を行う第2の成膜工程、
を含んでいることを特徴とする成膜方法。
【請求項13】
(a)基板を保持する基板保持部を成膜処理室内に配置する工程、
(b)前記成膜処理室内に原料ガスを供給する工程、
(c)前記基板の成膜面と対向する位置に配置される光源と前記基板の間に遮光部材を配置する工程、
(d)前記(a)、(b)および(c)工程の後、前記光源から前記基板に向かって光を照射することで種を生成し、前記基板の前記成膜面上に前記種を堆積させる工程、
を有し、
前記遮光部材には、
前記基板の前記成膜面と対向する第1面、前記第1面の反対側に位置する第2面、前記第1面および前記第2面のうちの一方から他方までを貫通する複数の貫通孔が形成され、
前記(d)工程には、
(d1)前記遮光部材を介在させた状態で成膜処理を行う第1の成膜工程、
(d2)前記(d1)工程の後、前記遮光部材を前記光源と前記基板の間から取り除く工程、
(d3)前記(d2)工程の後、前記遮光部材を介さずに成膜処理を行う第2の成膜工程、
を含んでいることを特徴とする成膜方法。
【請求項14】
請求項13に記載の成膜方法において、
前記(a)工程で前記成膜処理室内に配置する前記基板の前記成膜面には、有機膜を含む積層膜が予め形成されていることを特徴とする成膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−100575(P2013−100575A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244421(P2011−244421)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】