説明

成膜装置に於ける成膜速度測定装置および方法

【課題】 基板上に堆積する物質の膜厚又は成膜速度の測定において、安定した測定手段によって成膜中リアルタイムで膜厚又は成膜速度を監視する。
【解決手段】 発振回路を有する水晶振動子上に堆積する物質の膜厚又は膜厚変化量をモニタする測定装置であって、水晶振動子の振動周波数を送信する送信手段、水晶振動子および送信手段を連動して移動させる移動手段、並びに水晶振動子の振動周波数を受信する受信手段を有し、水晶振動子上への物質堆積時に送信手段の送信部が移動する移動経路内の任意の一点と受信手段の受信部とが常に略一定距離を保つように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板上に堆積する物質の膜厚又は成膜速度を測定する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜の成膜中に膜厚および成膜速度をモニタする方法として、従来から水晶振動子が用いられている。これは、水晶振動子の固有振動数がその質量によって変化することを利用するものであり、水晶振動子に堆積する薄膜によって生じる振動周波数の変化を、基板に堆積する薄膜の膜厚および成膜速度に換算するものである。
【0003】
基板に堆積する薄膜の成膜速度および膜厚を精度良くモニタするためには、水晶振動子を出来る限り基板に近づけることが望ましいが、成膜時に基板位置が変化する構成では内部の電気ケーブルの引き回し等が困難であるため、水晶振動子を基板から離れた位置に固定配置していた。この場合、水晶振動子に堆積する膜厚と基板に堆積する膜厚が異なるため、膜厚コントローラに予め補正値を入力する必要があり、補正値の入力が煩わしいばかりでなく測定精度が悪いという問題があった。こうした問題を解決するため、成膜時に基板位置が変化する構成であっても基板と共に水晶振動子を移動させ、水晶振動子と基板とを常に等しい成膜条件下に位置させる構成が、例えば特許文献1から3に開示されている。
【0004】
特許文献1は、連続式スパッタ装置に於ける膜厚確認方法に関し、基板を取り付けたトレーに水晶振動子を取り付け、トレーがスパッタ電極を通過したときに、水晶振動子に膜厚コントローラから延びる接触子を接触させて基板に成膜された膜厚を確認するものである。
【0005】
特許文献2は、蒸着室内部に膜厚モニタおよび膜厚モニタの情報を送信する無線方式の送信機を設置し、蒸着室内部または外部に設置した受信機に膜厚モニタの情報を伝送するものである。
【0006】
特許文献3は、真空チャンバー内に被処理基板表面の情報である温度、膜厚、圧力、フローティングポテンシャル等を計測するためのセンサーを配し、センサーが計測したデータを真空チャンバー外に設けた受信機に無線で送信するものである。実施例では、センサー回路、変調回路、送信回路、および送信アンテナにより構成される送信機と、受信アンテナ、受信回路、復調回路、および処理・表示手段により構成される受信機が示されている。
【特許文献1】特許第3292925号
【特許文献2】特開平09−256155号
【特許文献3】特開平06−76193号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
薄膜デバイスに要求される仕様が厳しくなるに従い、成膜された薄膜の特性は単に膜厚だけでは無く、膜の充填密度、屈折率といった膜の諸特性が極めて重要視されており、これらの膜の諸特性は成膜速度に大きく左右されることから、リアルタイムで成膜速度を監視することが極めて重要である。
【0008】
然しながら特許文献1では、成膜を終えた後、水晶振動子が組み込まれたトレーが膜厚コントローラから延びる接触子と接触する位置まで移動しなければ水晶振動子の振動周波数測定を行うことができないため、リアルタイムでの成膜速度監視が不可能であった。
【0009】
特許文献2は膜厚モニタの情報を無線伝送するため成膜中の膜厚測定を可能とするが、膜厚モニタの送信機が基板と共に公転かつ定期的に反転する過程のいずれかで伝送波が基板ホルダ等により遮蔽される位置が存在し、厳密にはリアルタイムで成膜速度を監視することができない。また、基板が公転かつ反転するため、受信機送信機間距離が常に変化してしまう。例えば成膜装置においては、電子銃を用いるものや、プラズマを生成するものがあるが、電子銃のノイズやプラズマ等の影響に加えて受信機送信機間距離が変化してしまうと、伝送波を安定して送受信できず測定精度に影響を及ぼしてしまう。
【0010】
特許文献3についても、位置変化する送信機から情報を受信するということに関して、遮蔽物や受信機送信機間距離を考慮するという内容を示唆する記載はない。また、受信機が真空チャンバー外に配置されるため、例えば成膜中の基板搬送距離が大きい場合などは成膜の最初から最後までリアルタイムで成膜速度を監視することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、安定した測定手段により、成膜中リアルタイムで膜厚又は成膜速度を監視することを目的とするものである。
本発明の第1の側面は、発振回路を有する水晶振動子上に堆積する物質の膜厚又は膜厚変化量をモニタする測定装置であって、水晶振動子の振動周波数を送信する送信手段、水晶振動子および送信手段を連動して移動させる移動手段、並びに、水晶振動子の振動周波数を受信する受信手段を有し、水晶振動子上への物質堆積時に送信手段の送信部が移動する移動経路内の任意の一点と受信手段の受信部とが常に略一定距離を保つように構成した。
【0012】
本発明の第2の側面は、真空槽、基板の成膜手段、および基板の移動手段を有する真空装置において、基板上に堆積する物質の膜厚又は膜厚変化量をモニタする測定装置であって、発振回路を有する水晶振動子、水晶振動子の振動周波数を送信する送信手段、水晶振動子の振動周波数を受信する受信手段を有し、水晶振動子を基板に近接配置し、移動手段は基板、水晶振動子、および送信手段を連動して移動させ、基板上への成膜時に送信手段の送信部が移動する移動経路内の任意の一点と受信機の受信部とが常に略一定距離を保つように構成し、水晶振動子上に堆積する物質の膜厚又は膜厚変化量をモニタすることにより基板上に堆積する物質の膜厚又は膜厚変化量をモニタする構成とした。
【0013】
本発明の第3の側面は、第1乃至第2いずれかの側面において、受信部は送信部の移動経路に覆設され、移動経路に対して所定の距離を有して対面する面体構造とした。
【0014】
本発明の第4の側面は、第1乃至第2いずれかの側面において、送信部を送信側アンテナとし、受信部を受信側アンテナとし、水晶振動子の振動周波数を電磁波として非接触伝送する構成とした。送信手段を水晶振動子の発振回路から出力される信号を変調する変調部、変調部において変調された信号を増幅する送信側増幅部、および増幅された信号を送信する送信側アンテナにより構成し、受信手段を送信側アンテナから信号を受信する受信側アンテナ、受信側アンテナが受信した信号を増幅する受信側増幅部、および増幅された信号を検波する検波部により構成した。
【0015】
本発明の第5の側面は、第1乃至第2いずれかの側面において、送信部を送信側電極とし、受信部を受信側電極とし、水晶振動子の振動周波数を送信側電極と受信側電極との容量結合により非接触伝送する構成とした。送信手段を送信側電極、水晶振動子の発振回路から出力される信号を変調する変調部、および変調部において変調された信号に対応する電圧を送信側電極に印加する電圧印加部により構成し、受信手段を送信側電極に対面する受信側電極、受信側電極を介して受信した信号を復調する復調部により構成した。
【0016】
本発明の第6の側面は、送信手段に非接触で電力を供給する構成とした。電力送信用コイルおよび電力受信用コイルを用い、電力送信用コイルが生成する磁束が電磁結合により電力受信用コイルと鎖交し、誘起電圧を励起することにより該送信手段に電力を供給する構成とした。
【0017】
上記第1乃至第6の側面において、成膜手段はスパッタ電極に配設したターゲット材料を通電により基板上に堆積させるスパッタ手段であってもよい。
【0018】
本発明の第7の側面は、真空槽、基板の成膜手段、基板の搬送用トレー、真空槽に固定配置された防着板、基板の近接位置に配置された水晶振動子、水晶振動子の発振回路、水晶振動子の発振回路に接続し得られた信号を変調する変調部、変調部により変調された信号を増幅する送信側増幅部、送信側増幅部により増幅された信号を電波として送信する送信側アンテナ、送信側アンテナから送信された電波を受信する受信側アンテナ、受信アンテナが受信した信号を増幅する受信側増幅部、受信側増幅部により増幅された信号を検波する検波部を有し、水晶振動子、変調部、送信側増幅部、および、送信側アンテナを搬送用トレーに配設し、少なくとも基板への成膜時に搬送用トレーが移動する移動経路から所定の距離離れて対面する位置に防着板を覆設し、防着板を受信側アンテナとして受信側増幅部に接続し、水晶振動子上に堆積する物質の膜厚又は膜厚変化量をモニタすることにより、基板上への成膜中に膜厚又は成膜速度を常に測定、監視することを構成とした。
【0019】
本発明の第8の側面は、第1乃至第7の側面のいずれかの測定装置を備える成膜装置であって、測定装置の測定結果を元に成膜速度を制御する手段を設ける構成とした。
【0020】
本発明の第9の側面は、水晶振動子上への薄膜形成時における膜厚又は膜厚変化量の測定方法であって、水晶振動子の振動周波数を伝送する送信手段、水晶振動子および送信手段を連動させて位置変化させる駆動手段、並びに送信手段から水晶振動子の振動周波数を受信する受信手段を有し、駆動手段によりに送信手段位置が変化しても送信手段と受信手段との距離を常に略一定に保つ測定方法である。
【0021】
本発明の第10の側面は、基板上への薄膜形成時における膜厚および膜厚変化量の測定方法であって、基板の近接位置に水晶振動子を配置し、水晶振動子の振動周波数を伝送する送信手段、基板、水晶振動子、および送信手段を連動させて位置変化させる駆動手段、並びに送信手段から水晶振動子の振動周波数を受信する受信手段を有し、駆動手段によりに送信手段位置が変化しても送信手段と受信手段との距離が常に略一定に保つ測定方法である。
【発明の効果】
【0022】
水晶振動子の振動周波数を伝送する送信手段が位置変化しても、振動周波数の受信手段と送信手段との距離を常に略一定に保つことができるため、安定した信号の授受が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の第1の実施例を説明する。以下第1乃至第3の実施例においては、図1および図2に示す連続式スパッタ装置を用いるものとするが、本発明の測定手段を搭載可能な装置はこれに限られるものではない。例えば成膜手段はスパッタに限られるものではなく、真空蒸着やIAD(Ion Assisted Deposition)等を用いても良い。
【0024】
同図において、成膜室1はガス導入口2と排気口3、スパッタ電極4を備え、成膜室1の左右には仕切バルブ5を介して真空圧と大気圧に変更自在の仕込室6と取出室7が設けられている。仕込室6には基板8を組み込んだ板状のトレ9ーが例えば複数枚収容される。トレー9は仕込室6から仕切りバルブ5を介して順次成膜室1内へ送り込まれ、成膜室1から仕切バルブ5を介して取出室7へと送り出される。トレー9は動力源13に接続する駆動機構11により搬送され、図中10はトレー9の移載経路を示す。スパッタ電源12はスパッタ電極4へ電力を供給する電源である。同図ではスパッタ電極4を移載経路10の片側にのみ設けるが、スパッタ電極を移載経路の両側に設け、基板8を両面成膜する構成としてもよい。
【0025】
トレー9には水晶振動子15、および水晶振動子15の振動周波数を送信する送信手段16が組み込まれ、水晶振動子15は基板8の成膜面に近接する位置に取り付けられる。成膜室1には、送信手段16から伝送される発振信号を受信する受信手段17が配設され、例えば発振回路と演算回路を備えた公知の膜厚コントローラ14に接続される。トレー9は駆動機構11により移載経路上を所定の搬送速度で移動するが、トレー9がスパッタ電極4の前面を通過するときに、スパッタ電極4に固定したターゲット14からのスパッタ物質が基板8に成膜される。同時に、トレー9に組み込んだ水晶振動子15にも基板8と同厚の薄膜が成膜されるため、膜厚コントローラ14は水晶振動子15の発振信号から基板8上に堆積する膜厚又は膜厚変化量を検出する。同図の装置は非接触の送信手段16および受信手段17を用いて振動周波数伝送するため、成膜時に水晶振動子が位置変化する場合であっても成膜中のリアルタイム測定が可能となる。よって測定用の水晶振動子を基板と等しい成膜条件下におくことができるため、高精度の成膜制御が可能となる。この場合、膜厚コントローラ14に図示しない制御装置を接続し、制御装置をスパッタ電源12や動力源13に接続して成膜速度等を制御すればよい。
【0026】
第1の実施例は、水晶振動子15の振動周波数を伝送に適した電気信号に変換し、その電波をアンテナから放射することを特徴とする。
図3に第1の実施例における送信手段16および受信手段17の概略図を示す。同図の送信手段16は、トレー9内部に内蔵された発振部20、変調部21、送信側増幅部22、および、送信側アンテナ23により構成される。トレー9表面に組み込まれた水晶振動子15は発振部20に接続され、発振部20は水晶振動子固有の振動周波数で発振する。得られた発振信号は変調部21に入力され搬送波が変調される。実施例では搬送波をASK変調(amplitude shift keying)するものとするが、ASK変調だけでなく、例えば、AM変調、FM変調、FSK変調等の他の変調方式を用いても良い。変調された搬送波は送信側増幅部22で増幅され送信側アンテナ23を介して電波として送信される。
【0027】
同図の受信手段17は、成膜室1内壁に固定配置された受信側アンテナ24、受信側増幅部25、検波部26により構成される。送信側アンテナ23から送信された信号を受信側アンテナ24を介して受信し、受信側増幅部25に於いて微弱な信号を増幅する。増幅された信号は検波部26で検波され、水晶振動子15の振動周波数と同一周波数の信号が出力される。この信号を膜厚コントローラ14に入力し、膜厚又は成膜速度を測定する。
【0028】
成膜装置においては、成膜手段から放出するターゲット物質により内壁が汚染されることを防止する目的で防着板が配設されることが一般的である。防着板は成膜領域を被覆する形状あるため、基板の移載経路に平行に防着板を配設し、これを受信側アンテナ24として用いることにより、送信側アンテナ23が基板8と一体となって移動しても送信側アンテナ23と受信側アンテナ24との距離が常に保たれ安定して発振信号を伝送することが可能となる。同図の装置では、成膜装置に一般的に備え付けられる防着板を受信側アンテナ24として兼用することにより、部品点数の削減および構成の簡略化に貢献するが、防着板と受信側アンテナ24は別に設けてもよい。受信側アンテナ24は、成膜時に送信側アンテナ23が移動する移載経路10内の任意の一点から常に略一定の距離を保つように構成すればよい。
【0029】
図4は受信側アンテナ23と送信側アンテナ24の概略斜視図を示す。図は移載経路10上を矢印方向に移動するトレー9を破線にて示すが、トレー9が移動しても送信側アンテナ23と受信側アンテナ24との距離が常に一定に保たれていることがわかる。
【0030】
第1の実施例は、光領域を含む電磁波を媒体とし、送信側から電磁波を輻射し、受信側が電磁波を捕捉することにより発振信号を非接触に伝送するものであればよく、例えば、光電変換により送信側が信号光を出射し、受信側が受光器等を用いて信号光を受信する構成としてもよい。
【0031】
次に本発明の第2の実施例を説明する。第2の実施例は、送信側電極および受信側電極を用い、電極間の容量結合により水晶振動子の発振信号を非接触に伝送することを特徴とする。送信手段および受信手段を除く部分は第1の実施例と同様であるため、同様部分の説明は省略する。
図5に第2の実施例における送信手段16および受信手段17の概略図を示す。同図の送信手段16は、水晶振動子15の発振部30、発振信号を変調する変調部31、送信側電極33、および変調信号に対応する電圧を送信側電極33に印加する電圧印加部32により構成され、受信手段17は、送信側電極33に対面する受信側電極34、受信電極34を介して受信した信号を復調する復調部35により構成される。
【0032】
図6は受信側電極34と送信側電極33の概略斜視図を示す。図では、凹形状の受信側電極34に、凸形状の送信側電極33が所定の間隙をもって嵌入される様子を示すが、例えば受信側電極を凸形状、送信側電極を凹形状としてもよい。電極の形状は適宜選択すればよく、対面する電極間で容量を形成するように構成すればよい。送信側電極33はトレー9に固定配置し、受信側電極34は成膜時に送信側電極33が移動する移載経路10を覆設するように成膜室1に固定配置する。図は移載経路10上を矢印方向に移動するトレー9を破線にて示すが、トレー9が移動しても送信側電極33と受信側電極34との距離および面積が常に一定に保たれるため、電極間の容量に変化がなく、発振信号を安定して伝送することが可能となる。実施例では電極間の間隙を真空槽内雰囲気に等しいものとしているが、電極間に誘電体を満たしてもよい。
【0033】
次に本発明の第3の実施例を説明する。第3の実施例は、送信手段に非接触で電力を供給することを特徴とする。電力供給手段を除く部分は第1乃至第2の実施例と同様であるため、同様部分の説明は省略する。
図7に第3の実施例における電力供給手段の概略図を示す。同図の電力供給手段は、送信手段16側に設けられる電力受信用コイル40と、受信手段17側に設けられる電力送信用コイル41および電力伝送用発振部43により構成される。図では、電力送信用コイル41が生成する磁束42が電磁結合により電力受信用コイル40と鎖交し、誘起電圧を励起することにより送信手段16に電力を供給するものとする。電力受信用コイル40の誘起電圧は、送信手段16内の整流回路で整流して送信手段16内の各回路の電源として用いられる。
【0034】
電力送信用コイル41を受信側アンテナ24又は受信側電極34に併設し、電力受信用コイル40を送信側アンテナ23又は送信側電極33に併設することにより、コイル間の距離が保たれるため、電力の伝送効率の変動を抑えて安定した電力供給が可能となる。
【0035】
実施例では電力供給手段を別途設けたが、発振信号の送信手段16および受信手段17に電力供給手段を組み込んでもよい。例えば、第1の実施例における送信側アンテナ23にアンテナコイルを、受信側アンテナ24にループアンテナを用い、受信手段17に電力供給用発振部を設けることにより、送信手段16側からの発振信号の伝送と受信手段17側からの電力供給を同時に行うことも可能である。送信手段16側からの発振信号の伝送は、アンテナコイルからループアンテナへの電磁誘導により行えばよい。
【0036】
実施例では成膜を行おうとする基板をインライン式に搬送する例について述べたが、本発明の測定手段は、バッチ式の成膜装置や枚葉式成膜装置においても搭載可能である。例えば、基板を基板ドーム等の回転ホルダに搭載する場合は、回転ホルダ上に送信手段を固定配置し、回転ホルダの上面を被覆する円板形状の受信手段を成膜室に固定配置すればよい。もしくは、受信手段は、基板ホルダの外周を被覆する円柱形状としてもよい。これにより、成膜時に基板ホルダが回転駆動しても、振動周波数の送信部と受信部との距離は常に一定であるため、信号を安定して伝送することができる。受信部を基板の移動経路に沿った形状とし、基板が位置変化しても送信部との距離が所定の距離に保たれるように構成すれば種々の成膜装置に応用可能である。
【0037】
実施例では基板上に堆積する薄膜を水晶振動子を用いて間接的にモニタするが、成膜を行おうとする基板が水晶振動子等の圧電振動体である場合は、実基板の振動周波数を直接モニタしてもよい。
【0038】
実施例では水晶振動子の振動周波数で変調をかけたが、水晶振動子の振動周波数を低周波に分周し変調しても良く、また水晶振動子の振動周波数を電力増幅し振動周波数のまま無線伝送しても良い。
【0039】
水晶振動子を複数個取り付けそれぞれの振動周波数を伝送することにより、リアルタイムでの膜厚分布監視も可能となる。
【0040】
更に水晶振動子の代わりに熱電対の電位差を電圧/周波数変換し、これを変調信号として用いることにより、成膜中のリアルタイム温度測定も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】連続式スパッタ装置概略断面図
【図2】連続式スパッタ装置概略平面図
【図3】第1の実施例における送信手段および受信手段概略図
【図4】第1の実施例における送信側アンテナおよび受信側アンテナ概略斜視図
【図5】第2の実施例における送信手段および受信手段概略図
【図6】第2の実施例における送信側電極および受信側電極概略図
【図7】第3の実施例における電力送信手段概略図
【符号の説明】
【0042】
1 成膜室
2 ガス導入口
3 排気口
4 スパッタ電極
5 仕切バルブ
6 仕込室
7 取出室
8 基板
9 トレー
10 移載経路
11 駆動機構
12 スパッタ電源
13 動力源
14 膜厚コントローラ
15 水晶振動子
16 送信手段
17 受信手段
20 発振部
21 変調部
22 送信側増幅部
23 送信側アンテナ
24 受信側アンテナ
25 受信側増幅部
26 検波部
30 発振部
31 変調部
32 電圧印加部
33 送信側電極
34 受信側電極
35 復調部
40 電力受信用コイル
41 電力送信用コイル
42 磁束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振回路を有する水晶振動子上に堆積する物質の膜厚又は膜厚変化量をモニタする測定装置であって、
該水晶振動子の振動周波数を送信する送信手段、該水晶振動子および該送信手段を連動して移動させる移動手段、並びに該水晶振動子の振動周波数を受信する受信手段を有し、
該水晶振動子上への物質堆積時に該送信手段の送信部が移動する移動経路内の任意の一点と該受信手段の受信部とが常に略一定距離を保つように構成することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
真空槽、基板の成膜手段、および該基板の移動手段を有する真空装置において、該基板上に堆積する物質の膜厚又は膜厚変化量をモニタする測定装置であって、
発振回路を有する水晶振動子、該水晶振動子の振動周波数を送信する送信手段、および該水晶振動子の振動周波数を受信する受信手段を有し、
該水晶振動子が該基板に近接配置され、
該移動手段は、該基板、該水晶振動子、および該送信手段を連動して移動させ、
該基板上への成膜時に該送信手段の送信部が移動する移動経路内の任意の一点と該受信機の受信部とが常に略一定距離を保つように構成され、
該水晶振動子上に堆積する物質の膜厚又は膜厚変化量をモニタすることにより該基板上に堆積する物質の膜厚又は膜厚変化量をモニタすることを特徴とする測定装置。
【請求項3】
請求項1乃至2記載の測定装置であって、
該受信部は、該送信部の移動経路に覆設され、該移動経路に対して所定の距離を有して対面する面体構造を有することを特徴とする測定装置。
【請求項4】
請求項1乃至2記載の測定装置であって、
該送信部を送信側アンテナとし、
該受信部を受信側アンテナとし、
該水晶振動子の振動周波数を電磁波として非接触伝送することを特徴とする測定装置。
【請求項5】
請求項4記載の測定装置であって、
該送信手段は、該水晶振動子の発振回路から出力される信号を変調する変調部、該変調部において変調された信号を増幅する送信側増幅部、および増幅された信号を送信する送信側アンテナを有し、
該受信手段は、該送信側アンテナから信号を受信する受信側アンテナ、該受信側アンテナが受信した信号を増幅する受信側増幅部、および増幅された信号を検波する検波部を有することを特徴とする測定装置。
【請求項6】
請求項1乃至2記載の測定装置であって、
該送信部を送信側電極とし、
該受信部を受信側電極とし、
該水晶振動子の振動周波数を送信側電極と受信側電極との容量結合により非接触伝送することを特徴とする測定装置。
【請求項7】
請求項6記載の測定装置であって、
該送信手段は、送信側電極、該水晶振動子の発振回路から出力される信号を変調する変調部、および該変調部において変調された信号に対応する電圧を送信側電極に印加する電圧印加部を有し、
該受信手段は、送信側電極に対面する受信側電極、該受信側電極を介して受信した信号を復調する復調部を有することを特徴とする測定装置。
【請求項8】
請求項1乃至2記載の測定装置であって、
該送信手段に非接触で電力を供給する手段を有することを特徴とする測定装置。
【請求項9】
請求項8記載の測定装置であって、
電力送信用コイルおよび電力受信用コイルを用い、該電力送信用コイルが生成する磁束が電磁結合により該電力受信用コイルと鎖交し、誘起電圧を励起することにより該送信手段に電力を供給することを特徴とする測定装置。
【請求項10】
請求項1乃至9記載の測定装置であって、
該成膜手段はスパッタ電極に配設したターゲット材料を通電により基板上に堆積させるスパッタ手段であることを特徴とする測定装置。
【請求項11】
真空槽、基板の成膜手段、該基板の搬送用トレー、該真空槽に固定配置された防着板、該基板の近接位置に配置された水晶振動子、該水晶振動子の発振回路、該水晶振動子の発振回路に接続し得られた信号を変調する変調部、該変調部により変調された信号を増幅する送信側増幅部、該送信側増幅部により増幅された信号を電波として送信する送信側アンテナ、該送信側アンテナから送信された電波を受信する受信側アンテナ、該受信アンテナが受信した信号を増幅する受信側増幅部、および該受信側増幅部により増幅された信号を検波する検波部を有し、
該水晶振動子、該変調部、該送信側増幅部、および、該送信側アンテナを該搬送用トレーに配設し、
少なくとも該基板への成膜時に該搬送用トレーが移動する移動経路から所定の距離離れて対面する位置に該防着板を覆設し、
該防着板を該受信側アンテナとして該受信側増幅部に接続し、
該水晶振動子上に堆積する物質の膜厚又は膜厚変化量をモニタすることにより、該基板上への成膜中に膜厚又は成膜速度を常に測定、監視することを特徴とする測定装置。
【請求項12】
請求項1乃至11いずれか記載の測定装置を備える成膜装置であって、
該測定装置の測定結果を基に成膜速度を制御する手段を設けたことを特徴とする成膜装置。
【請求項13】
水晶振動子上への薄膜形成時における膜厚又は膜厚変化量の測定方法であって、
該水晶振動子の振動周波数を伝送する送信手段、
該水晶振動子および該送信手段を連動させて位置変化させる駆動手段、並びに
該送信手段から該水晶振動子の振動周波数を受信する受信手段を有し、
該駆動手段によりに該送信手段位置が変化しても該送信手段と該受信手段との距離が常に略一定であることを特徴とする測定方法。
【請求項14】
基板上への薄膜形成時における膜厚および膜厚変化量の測定方法であって、
該基板の近接位置に水晶振動子を配置し、
該水晶振動子の振動周波数を伝送する送信手段、
該基板、該水晶振動子、および該送信手段を連動させて位置変化させる駆動手段、並びに
該送信手段から該水晶振動子の振動周波数を受信する受信手段を有し、
該駆動手段によりに該送信手段位置が変化しても該送信手段と該受信手段との距離が常に略一定であることを特徴とする測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−206969(P2006−206969A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−21207(P2005−21207)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000146009)株式会社昭和真空 (72)
【Fターム(参考)】