説明

成膜装置及びそのクリーニング方法

【課題】クリーニングガスとしてフッ素系ガスを使用することにより、処理容器自体や被処理体を保持する保持手段にダメージを与えることなく不要な高分子薄膜のみを選択的に且つ効率的に除去することが可能な成膜装置を提供する。
【解決手段】被処理体Wの表面に高分子薄膜を形成する成膜装置において、被処理体を収容する処理容器4と、処理容器内で被処理体を保持する保持手段6と、処理容器内を真空引きする真空排気系30と、処理容器内へ高分子薄膜の複数の原料ガスを供給するガス供給手段20と、処理容器内へクリーニングガスとしてフッ素ガスを供給するクリーニングガス供給手段26と、処理容器を加熱する容器加熱手段14とを備える。これにより、処理容器内をクリーニング処理するに際して、クリーニングガスとしてフッ素系ガスを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の表面にポリイミド薄膜等の高分子薄膜を形成する成膜装置及びそのクリーニング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体集積回路等を製造するためには、シリコン基板等よりなる半導体ウエハに対して成膜処理、エッチング処理、酸化処理等の各種の処理が繰り返し行われている。そして、上記半導体集積回路に用いる絶縁膜としては一般的にはSiO 膜等に代表される無機系の絶縁膜が主流であるが、従来より、製造プロセスやプロセス条件が比較的簡単なことから有機物による高分子薄膜が検討されている(特許文献1、2、3及び非特許文献1)。
【0003】
例えばポリイミド薄膜に代表されるこの高分子薄膜は、半導体集積回路の層間絶縁膜や液晶表示装置の液晶配向膜等として用いることが検討されている。またこの高分子薄膜は、他の用途としては、集積回路が形成された、いわゆるチップ同士を、3次元的に積み上げて実装する際のチップ間絶縁膜としても注目を集めている。この高分子薄膜を形成するための方法としては、原料モノマーを溶媒に溶かして、これを半導体ウエハ上にスピンコートして重合させる、いわゆる湿式法や、この高分子薄膜を予めフィルム状にしてウエハ表面に接合するようにしたフィルム法や、減圧雰囲気になされた真空容器内で原料モノマーを蒸発させて重合させるようにした蒸着重合法等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−261322号公報
【特許文献2】特開平9−143681号公報
【特許文献3】特開2000−21867号公報
【非特許文献1】”Electrical,thermal and mechanical properties of polyimide thin films prepared by high−temperature vapor deposition polymerization”[High Perform,Polym. 5(1993)229−237pp.]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記湿式法にあっては、膜厚を十分に薄くすることが困難であるばかりか、薄膜と基板(半導体ウエハ)との密着性が十分ではなく、しかも溶媒の添加及び除去に際して不純物が混入し易かったり、溶媒の揮発成分が抜けたところにピンホール等が生じる、といった欠点があった。また上記フィルム法にあっては、ウエハ表面に凹部が存在する場合には、その凹部内には埋め込むことができない、という欠点があった。
【0006】
これに対して、上記蒸着重合法では上記した湿式法による欠点を全て排除することができることから比較的好ましい方法である。しかしながら、この蒸着重合法では、処理容器の内壁面やウエハを保持するウエハボート等に不要な膜が多量に付着するが、この不要な膜を除去するためのクリーニング処理の方法が十分に確立されていない、といのが現状であった。
【0007】
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、処理容器内に付着した不要な高分子薄膜をクリーニング処理により除去するに際して、クリーニングガスとしてフッ素系ガスを使用することにより、処理容器自体や被処理体を保持する保持手段にダメージを与えることなく不要な高分子薄膜のみを選択的に且つ効率的に除去することが可能な成膜装置及びそのクリーニング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、被処理体の表面に高分子薄膜を形成する成膜装置において、前記被処理体を収容する処理容器と、前記処理容器内で前記被処理体を保持する保持手段と、前記処理容器内を真空引きする真空排気系と、前記処理容器内へ前記高分子薄膜の複数の原料ガスを供給するガス供給手段と、前記処理容器内へクリーニングガスとしてフッ素系ガスを供給するクリーニングガス供給手段と、前記処理容器を加熱する容器加熱手段と、を備えたことを特徴とする成膜装置である。
【0009】
このように成膜装置の処理容器内に付着した不要な高分子薄膜をクリーニング処理により除去するに際して、クリーニングガスとしてフッ素系ガスを使用することにより、処理容器自体や被処理体を保持する保持手段にダメージを与えることなく不要な高分子薄膜のみを選択的に且つ効率的に除去することができる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記保持手段は、アルミニウム製或いはアルミニウム合金製であり、前記クリーニング処理時の温度は、150〜300℃の範囲内であることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記処理容器は、石英により形成されていることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発明において、前記高分子薄膜は、有機薄膜又は無機薄膜よりなることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記有機薄膜は、ポリイミド薄膜又はポリ尿素薄膜よりなることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記ポリイミド薄膜を形成する時の前記複数の原料ガスは、ピロメリット酸二無水物(PMDA)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)とよりなることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項5の発明において、前記ポリイミド尿素薄膜を形成する時の前記複数の原料ガスは、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)と4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)とよりなることを特徴とする。
請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の発明において、前記フッ素系ガスは、F 、NF 、ClF 、C よりなる群から選択される1以上のガスよりなることを特徴とする。
【0013】
請求項9に係る発明は、被処理体の表面に高分子薄膜を形成するために用いられる請求項1乃至8のいずれか一項に記載の成膜装置のクリーニング方法において、保持手段を処理容器内へ搬入した状態で前記処理容器内へクリーニングガスとしてフッ素系ガスを供給してクリーニング処理を行うようにしたことを特徴とする成膜装置のクリーニング方法である。
【0014】
請求項10の発明は、請求項9の発明において、前記保持手段は、アルミニウム製或いはアルミニウム合金製であり、前記クリーニング処理時の温度は、150〜300℃の範囲内であることを特徴とする。
請求項11の発明は、請求項9又は10記載の発明において、前記処理容器は、石英により形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項12の発明は、請求項9乃至11のいずれか一項に記載の発明において、前記高分子薄膜は、有機薄膜又は無機薄膜よりなることを特徴とする。
請求項13の発明は、請求項12の発明において、前記有機薄膜は、ポリイミド薄膜又はポリ尿素薄膜よりなることを特徴とする。
請求項14の発明は、請求項13の発明において、前記ポリイミド薄膜を形成する時の前記複数の原料ガスは、ピロメリット酸二無水物(PMDA)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)とよりなることを特徴とする。
【0016】
請求項15の発明は、請求項13の発明において、前記ポリイミド尿素薄膜を形成する時の前記複数の原料ガスは、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)と4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)とよりなることを特徴とする。
請求項16の発明は、請求項9乃至15のいずれか一項に記載の発明において、前記フッ素系ガスは、F 、NF 、ClF 、C よりなる群から選択される1以上のガスよりなることを特徴とする。
【0017】
請求項17の発明は、被処理体を収容する処理容器と、前記処理容器内で前記被処理体を保持する保持手段と、前記処理容器内を真空引きする真空排気系と、前記処理容器内へ高分子薄膜の複数の原料ガスを供給するガス供給手段と、前記処理容器内へクリーニングガスとしてフッ素系ガスを供給するクリーニングガス供給手段と、前記処理容器を加熱する容器加熱手段と、装置全体の動作を制御する装置制御部と、を備えて前記被処理体の表面に高分子薄膜を形成するようにした成膜装置をクリーニングするに際して、請求項9乃至16のいずれか一項に記載したクリーニング方法を実施するように前記成膜装置を制御する、コンピュータに読み取り可能なプログラムを記憶するようにしたことを特徴とする記憶媒体である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る成膜装置及びそのクリーニング方法によれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。
成膜装置の処理容器内に付着した不要な高分子薄膜をクリーニング処理により除去するに際して、クリーニングガスとしてフッ素系ガスを使用することにより、処理容器自体や被処理体を保持する保持手段にダメージを与えることなく不要な高分子薄膜のみを選択的に且つ効率的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る成膜装置を示す断面構成図である。
【図2】保持手段であるウエハボートを示す横断面図である。
【図3】ウエハボートを示す部分拡大図である。
【図4】ポリイミド薄膜と石英に対するF ガスのエッチング時の選択性を示すグラフである。
【図5】シリコン基板上に形成されたポリイミド薄膜(PI)の膜厚方向の元素濃度を示すグラフである。
【図6】シリコン基板上に形成されたポリイミド薄膜(PI)の膜厚方向の電子顕微鏡写真を示す。
【図7】エッチング時のフッ素濃度及び温度依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る成膜装置及びそのクリーニング方法の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
図1は本発明に係る成膜装置を示す断面構成図、図2は保持手段であるウエハボートを示す横断面図、図3はウエハボートを示す部分拡大図である。尚、ここでは高分子薄膜の一例としてポリイミド樹脂の薄膜であるポリイミド薄膜を形成する場合を例にとって説明する。
【0021】
図示するように、この成膜装置2は下端が開口されて上下方向に所定の長さを有して円筒体状になされた有天井の縦型の処理容器4を有している。この処理容器4は、例えば耐熱性の高い石英を用いることができる。この処理容器4の下方より複数枚の被処理体としての半導体ウエハWを複数段に亘って所定のピッチで載置した保持手段としてのウエハボート6が昇降可能に挿脱自在になされている。このウエハボート6の構造については後述する。そして、ウエハボート6の処理容器4内への挿入時には、上記処理容器4の下端の開口部4Aは、例えばアルミニウムやアルミニウム合金等よりなる金属製の蓋部8により塞がれて密閉される。
【0022】
この際、処理容器4の下端部と蓋部8の周辺部との間には、気密性を維持するために例えばOリング等のシール部材10が介在される。尚、この蓋部8をステンレス板により形成する場合もある。このウエハボート6は、上記蓋部8の上面側に取り付け固定されている。そして、この蓋部8は、例えばボートエレベータ等の昇降機構12より延びたアーム12Aの先端に取り付けられており、上記ウエハボート6及び蓋部8等を一体的に昇降できるようになされている。
【0023】
上記処理容器4の側部には、これを取り囲むようにした例えばカーボンワイヤ製のヒータよりなる容器加熱手段14が設けられており、この内側に位置する石英製の処理容器4や被処理体である半導体ウエハWを加熱し得るようになっている。そして、この容器加熱手段14は、これに電力を供給するヒータ電源15に接続される。またこの容器加熱手段14の外周には、断熱材16が設けられており、この熱的安定性を確保するようになっている。
【0024】
そして、この容器加熱手段14の近傍には、例えば熱電対よりなる温度センサ18が設けられており、この容器加熱手段14に近い処理容器4の温度を測定するようになっている。また処理容器4の下部側壁には、この処理容器4内へ所定のガスを供給するためのガス供給手段20を設けている。具体的には、このガス供給手段20は、成膜用の複数の原料ガス、ここでは2種類の原料ガスを供給するために第1の原料ガス供給系22と、第2の原料ガス供給系24とを有し、更にクリーニングガスを供給するためのクリーニングガス供給系26を有している。
【0025】
尚、実際には、図示されないが、不活性ガスとして例えばN ガスやAr、He等の希ガスを必要に応じてパージガスや希釈ガスとして供給する不活性ガス供給系も設けられている。そして、上記第1の原料ガス供給系22、第2の原料ガス供給系24及びクリーニングガス供給系26は、それぞれ上記処理容器4の下部側壁に例えば貫通するように設けられた石英製の第1、第2及び第3のガスノズル22A、24A、26Aを有している。ここでは上記第1、第2及び第3のガスノズル22A、24A、26Aとして直線状のストレート管が用いられている。
【0026】
尚、これらの各ガスノズル22A、24A、26Aは実際には上記処理容器4の下端部の肉厚になされたフランジ部4Bに設けられる。また、この構造に代えて、処理容器4の下端にステンレス製の筒体状のマニホールドを設け、このマニホールドにガスノズル22A、24A、26Aを設けるようにしてもよい。
【0027】
そして、上記第1、第2及び第3の各ガスノズル22A、24A、26Aには、それぞれガス通路22B、24B、26Bが接続されており、流量制御されたそれぞれの原料ガスやクリーニングガスを供給するようになっている。また、この原料ガス用のガス通路22B、24Bには、例えばテープヒータのような通路加熱ヒータ22C、24Cが巻回して設けられており、各通路を加熱することにより蒸気圧が高くなされた各原料ガスが流れる途中で液化や固化することを防止するようになっている。また上記各ガス通路22B、24B、26Bの途中には、各ガスの供給及び供給停止を行う開閉弁22D、24D、26Dがそれぞれ介設されている。ここでは2種類の原料ガスとして例えば、ピロメリット酸二無水物(以下「PMDA」とも称す)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(以下「ODA」とも称す)とが用いられる。
【0028】
上記PMDAは常温で固体なので、例えば250℃程度に加熱して昇華し、発生したガスを流量制御されたキャリアガスと共に移送する。また上記ODAは常温で固体なので、これを加熱して液化し、この液体を流量制御されたキャリアガスによりバブリングすることにより蒸気を発生させ、キャリアガスと共に移送する。上記キャリアガスとしては、ここでは例えば不活性ガスであるN ガスが用いられるが、これに代えてHe等の希ガスを用いてもよい。また上記クリーニングガスとしては、フッ素系ガスが用いられ、ここではフッ素系ガスとして、例えば4%濃度のF (フッ素ガス)が使用されている。
【0029】
また、上記処理容器4の天井部には、横方向へL字状に屈曲させた排気口28が設けられる。この排気口28には、処理容器4内を真空引きする真空排気系30が接続されている。具体的には、上記真空排気系30は上記排気口28に接続された排気通路32を有しており、この排気通路32には、バタフライ弁のような圧力制御弁32A、排気ガス中の反応副生成物や未反応の原料ガスを捕集するトラップ機構32B及び真空ポンプ32Cがそれぞれ順次介設されている。
【0030】
ここでウエハWを保持する保持手段としてのウエハボート6について説明する。このウエハボート6は、図2及び図3にも示すように、複数本、図示例では3本の支柱36A、36B、36Cと、この支柱36A〜36Cの長手方向に沿って複数段に亘って固定された複数の載置台38とにより主に構成されている。そして、このウエハボート6には、これに保持されるウエハWを冷却するための内部冷却手段40(図1参照)が設けられている。
【0031】
具体的には、上記ウエハボート6の全体は、ウエハWに対する汚染を引き起こすことがないような金属、例えばアルミニウムやアルミニウム合金により形成されている。上記ウエハボート6の一部を形成する上記3本の支柱36A〜36Cは、処理容器4の下端の開口部4Aを密閉する蓋部8より起立させて設けられており、各支柱36A〜36Cの上端部は天板42(図1参照)により互いに連結されている。そして、上記載置台38は、所定の厚さの円板状に成形されており、この載置台38の裏面に上記3本の各支柱36A〜36Cから中心方向へ延びるL字状になされた支持アーム44A、44B、44Cの先端部を接続固定して、上記載置台38を支持するようになっている(図2参照)。そして、この載置台38の上面側にウエハWが直接的に載置されることになる。上記載置台38のピッチP1は例えば8mm程度であるが、特に限定されない。
【0032】
ここで、ウエハWの直径に対して上記載置台38の直径は僅かに、例えば数cm程度小さく設定されており、図2に示すように、ウエハWを移載するための二股状のフォーク46によりウエハWの周辺部の下面を支持し、これに持ち上げたり、或いは持ち下げたりできるようになっている。
【0033】
尚、このフォーク46を有する移載機構(図示せず)は、処理容器4の下方のローディングエリアに設けられる。また図2に示すように、上記3本の支柱36A〜36Cは、上記フォーク46が侵入する方向とは反対側の略半円状の円周部分に等間隔で配置されており、ウエハ移載時のフォーク46と各支柱36A〜36Cとが干渉しないようになっている。図1に示す場合には、7個の載置台38が設けられているが、処理容器4の高さ方向の大きさにもよるが、実際には25〜100個程度設けられることになる。
【0034】
一方、上記ウエハWを冷却する上記内部冷却手段40は、上記ウエハボート6に形成された冷媒通路48と、これに冷媒を循環させる冷媒循環部50とにより主に構成されている。具体的には、上記冷媒通路48は、上記3本の支柱36A〜36Cの内の2本の支柱36A、36C内に沿って形成された支柱内通路52A、52Cと、この2本の支柱36A、36Cから延びる支持アーム44A、44C内に形成されたアーム内通路54A、54Cと、各載置台38内にその全面に亘って例えば蛇行状に形成された載置台内通路56とにより構成されている。
【0035】
そして、各載置台38においてアーム内通路54A、載置台内通路56及びアーム内通路54Cは直列に接続されており、また各アーム内通路54A、54Cは、2本の支柱内通路52A、52Cに対してそれぞれ接続されている。これにより、各載置台38の載置台内通路56に対して冷媒を流すことができるようになっている。
【0036】
また、図1に示すように、上記各支柱内通路52A、52Cと冷媒循環部50との間は、伸縮可能になされた蛇腹状の伸縮管58により連結されており、この伸縮管58を介して冷媒を循環させると共に、この伸縮管58がウエハボート6の昇降移動に追従できるようになっている。このように形成された内部冷却手段40としては、例えばチラー(登録商標)を用いることができる。そして、上記ウエハボート6の一部の載置台38には、ウエハ温度(載置台温度)を計測するための例えば熱電対よりなる温度センサ60が設けられている。
【0037】
そして、上記冷媒循環部50とヒータ電源15は例えばコンピュータ等よりなる温度制御部62により制御されることになる。具体的には、この温度制御部62には、処理容器4の温度を検出する温度センサ18と載置台38の温度を検出する温度センサ60との出力が共に入力されており、上記処理容器4と載置台38との間の温度差が所定の温度差以上、例えば50℃以上となるように制御するようになっている。すなわち、載置台38よりも処理容器4の側壁の温度の方が50℃以上高くなるように制御するようになっている。
【0038】
そして、この装置全体の動作、例えば各ガスの供給開始、供給停止、処理容器4内の圧力制御、温度制御部62への動作指令等は、例えばコンピュータ等よりなる装置制御部64により制御される。そして、この装置制御部64は、この装置全体の動作を制御するためのコンピュータにより読み書き可能なプログラムを記憶するための例えばフレキシブルディスク、フラッシュメモリ、ハードディスク、CD−ROM、DVD等よりなる記憶媒体66を有している。
【0039】
次に、以上のように構成された成膜装置2を用いて行なわれる成膜方法及び本発明のクリーニング方法について説明する。上述したように、以下に説明する動作は、上記記憶媒体66に記憶されたプログラムに基づいて行われる。
【0040】
まず、成膜方法について説明すると、例えばシリコンウエハよりなる半導体ウエハWがアンロード状態で成膜装置2が待機状態の時には、処理容器4はプロセス温度、或いはこれより低い温度に維持されており、常温の多数枚、例えば50枚のウエハWが載置された状態のウエハボート6を容器加熱手段14によりホットウォール状態になされた処理容器4内にその下方より上昇させてロードし、蓋部8で処理容器4の下端の開口部4Aを閉じることにより処理容器4内を密閉する。
【0041】
そして、処理容器4内を真空排気系30により真空引きして所定のプロセス圧力に維持すると共に、容器加熱手段14への供給電力を増大させることにより、処理容器4自体の温度とウエハ温度を上昇させて成膜処理用のプロセス温度まで昇温して安定させる。
また、ウエハボート6には、これに設けた内部冷却手段40が予め駆動されて冷媒通路48には冷媒が流れており、各載置台38は所定の温度になされている。
【0042】
すなわち、冷媒循環部50から供給された冷媒は一方の伸縮管58を通ってウエハボート6の支柱36Aに設けた支柱内通路52A内を上昇し、この支柱内通路52Aから各アーム内通路54Aへ分岐してこれを介して各載置台38の載置台通路56内に流れ込み、この載置台自体を冷却する。この載置台通路56内を流れた冷媒は、他方のアーム内通路54Cを通って他方の支柱36Cに設けた支柱内通路52C内で合流し、合流した冷媒は他方の伸縮管58を介して冷媒循環部50へ戻ってくることになる。このようにして、上記冷媒は、ウエハボート6内を循環して各載置台38及びこれに載置されているウエハWを冷却する。
【0043】
そして、このような状態で、ガス供給手段20を駆動し、第1のガス供給系22からキャリアガスと共に搬送されたPMDAを処理容器4内へ導入すると共に、第2のガス供給系24からキャリアガスと共に搬送されたODAを処理容器4内へ導入し、更に真空排気系30によりこの処理容器4内の圧力を所定のプロセス圧力に維持する。これにより、上記両原料ガスを重合反応させてウエハWの表面に対してポリイミド薄膜よりなる薄膜を蒸着、或いは堆積させる。
【0044】
この重合反応による成膜のプロセス時には、処理容器4内のプロセス圧力は、例えば1〜10Torr(133.3〜1333Pa)の範囲内に維持する。そして、上記処理容器4及び載置台38の温度は、それぞれ温度センサ18、60により検出されて上記温度制御部62へ入力されており、この成膜のプロセス時には上記温度制御部62はウエハ温度をプロセス温度に維持すると共に、ヒータ電源15及び冷媒循環部50の双方、或いはいずれか一方を制御して、上記処理容器4の側壁とウエハボート6の一部である載置台38との間の温度差が所定の温度差以上、具体的には50℃以上になるように制御している。
【0045】
換言すれば、載置台38に冷却手段を設けない場合には、この載置台温度が処理容器4の側壁と同じ位の温度まで昇温してしまうので、載置台38側に内部冷却手段40を設けて載置台38の温度よりも処理容器4の温度の方が50℃以上高くなるように制御している。ここで、載置台38上に載置されるウエハWの温度は載置台38の温度と略同じ温度に加熱されている。この時の各部の温度は、例えば処理容器4の側壁の温度が250℃以上に設定され、載置台38、すなわちウエハWの温度は200℃に設定されている。
【0046】
この場合、上記処理容器4の側壁の温度及び載置台38の温度は、共に成膜用の原料ガスであるPMDA及びODAが再固化する温度、或いは再液化する温度よりも高く設定され、且つPMDA及びODAが共に熱分解しないような温度範囲内であって、モノマーである両原料ガスが蒸着重合するような温度範囲内に設定する。この場合、上記PMDAの昇華温度は例えば203℃程度であり、熱分解温度は400℃程度である。また上記ODAの液化温度は例えば187℃程度であり、熱分解温度は400℃程度である。
【0047】
上述のように処理容器4の側壁と載置台38、すなわちウエハWとの間に50℃以上の温度差を設けておくことにより、原料モノマーであるガス状のPMDAとODAは共に熱泳動によって温度が低いウエハW側へ主に引き付けられて行くことになり、このウエハWの表面に蒸着重合によって薄膜としてポリイミド薄膜が形成されることになる。また、上記温度差が50℃よりも小さい場合には、熱泳動による原料ガスの引き付けの効果が薄くなってブラウン運動が主体となり、ウエハWの表面と処理容器4の側壁とに略均等に薄膜が形成されてしまって好ましくない。
【0048】
このようにして、温度の高い処理容器4の側壁には原料ガスであるPMDAやODAが引き付けられ難くなるので、この側壁に薄膜が堆積することを防止したり、或いは抑制することができる。
【0049】
上記実施形態ではウエハWの温度を200℃に設定し、且つ処理容器4の側壁の温度を250℃以上に設定したが、これらは単に一例を示したに過ぎず、例えば上記熱泳動による原料ガスの引き付けが50℃よりも小さな温度差でも顕著に生ずれば、より小さな温度差にしてもよい。ただし、ウエハ温度を好ましくは200℃以上に設定することにより、この表面に付着している水分を確実に蒸発させることができてポリイミド薄膜の膜質を向上させることができる。
【0050】
いずれにしても、処理容器4の側壁の温度及びウエハW(載置台38)の温度は、上記温度差を設けつつ両原料ガスが気化状態を維持して熱分解もせず、且つ蒸着重合を生ずるような温度範囲内に維持する。このように、処理容器4側に容器加熱手段14を設け、保持手段であるウエハボート6側に内部冷却手段40を設けて、処理容器の側壁と保持手段との間の温度差が所定の温度差以上、例えば温度差50℃以上になるように制御したので、処理容器4の側壁への不要な付着膜の堆積を抑制しつつ膜質の良好なポリイミド薄膜をウエハWの表面に形成することができる。
【0051】
さて、上述したようなバッチ式の成膜処理を繰り返し行っていると、処理容器4の内壁面等への不要な付着膜の堆積を抑制しているとはいえ、この内壁面やウエハボート6の表面や載置台38の表面等には、剥がれるとパーティクルの原因となる不要な付着膜が次第に堆積してくることは避けられない。
【0052】
そこで、ある程度の複数バッチのウエハWを成膜処理したならば、定期的に、或いは不定期的に上記不要な付着膜(ポリイミド薄膜)を除去するためのクリーニング処理が行われる。ここではクリーニングガスとしてフッ素系ガス、具体的には、4%濃度のフッ素ガスを用いる。このクリーニング処理では、処理容器4内の温度を高くすれば、エッチング反応が促進されて一般にクリーニング速度は向上するが、処理容器4の構成材料やウエハボート6及び載置台38の構成材料の耐熱性やエッチングガスに対する選択性を考慮しなければならない。
【0053】
上記処理容器4の構成材料は石英なので耐熱性は高いが、保持手段であるウエハボート6、例えば各支柱36A〜36Cや支持アーム44A〜44Cや載置台38を構成する材料は、石英に比べて耐熱温度が低いアルミニウム、或いはアルミニウム合金であり、このため、クリーニング温度の上限は300℃程度に設定する。
【0054】
また、これと同時に、上記各材料と不要な薄膜であるポリイミド薄膜とがクリーニングガスに対して高い選択性を有していなければならない。そして、フッ素系ガスは、温度を最適化すればポリイミド薄膜を比較的容易にエッチングでき、更にはアルミニウムやアルミニウム合金及び石英は上記フッ素系ガスに対して強い耐性を有しているので、ポリイミド薄膜のみを選択的に除去することが可能となる。このような理由から、ここでは上述したようにクリーニングガスとしてフッ素系ガス、例えばF ガスを用いる。
【0055】
まず、クリーニングに際しては、ウエハボート6上には、半導体ウエハWを何ら載置しないで空状態とし、このような空状態のウエハボート6を処理容器4内へ挿入し、内部を密閉状態とする。この状態で、容器加熱手段14により処理容器4及びウエハボート6自体を加熱して、これらの温度を例えば200℃程度に維持する。この場合、処理容器4を形成する石英とウエハボート6を形成するアルミニウム合金等では熱吸収率が異なるので、必要に応じて内部冷却手段40の冷媒循環部50を駆動してウエハボート6内に冷媒を流すなどして、このウエハボート6を所望の温度、例えば200℃程度に維持する。
【0056】
これと同時に、ガス供給手段20のクリーニングガス供給系26を動作させて、この第3のガスノズル26AからクリーニングガスであるF ガスを流量制御しつつ処理容器4内へ導入する。この処理容器4内へ導入されたF ガスは、この処理容器4内を上昇しつつ、ウエハボート6や載置台38の表面や処理容器4の内壁面に付着堆積していた不要な膜であるポリイミド薄膜と接触して反応し、これをフッ化させてエッチング除去することになる。
【0057】
このエッチングに際しては、上記処理容器4や載置台38を含むウエハボート6の各温度を例えば200℃程度に維持することにより最適化しているので、この処理容器4やウエハボート6にダメージを与えることなく、不要な薄膜であるポリイミド薄膜のみを選択的に、且つ効率的に除去することができる。
【0058】
この場合、上記処理容器4の温度や載置台38を含むウエハボート6の温度は、150〜300℃の温度範囲内に設定し、好ましくは200〜250℃の温度範囲内に設定する。上記載置台38を含むウエハボート6の温度を300℃よりも高く設定すると、これらを構成するアルミニウム、或いはアルミニウム合金自体は、F ガスに対しては十分な耐性を有しているが、熱的にダメージを受けてしまうので好ましくない。
【0059】
また処理容器4を構成する石英は、この温度が300℃よりも高くなると、ポリイミド薄膜に対する選択性が急激に劣化してしまって、F ガスによりポリイミド薄膜のみならず石英自体も激しく削り取られてしまうので好ましくない。また、処理容器4の温度や載置台38を含むウエハボート6の温度が150℃よりも低い場合には、ポリイミド薄膜のエッチングレートが急激に低下してしまってクリーニング処理に長時間を要し、スループットが大幅に低下して好ましくない。
【0060】
このように、本発明では、成膜装置の処理容器4内に付着した不要な高分子薄膜、例えばポリイミド薄膜をクリーニング処理により除去するに際して、クリーニングガスとしてフッ素系ガス、例えばF ガスを使用することにより、処理容器自体や被処理体を保持する保持手段であるウエハボート6にダメージを与えることなく不要な高分子薄膜のみを選択的に且つ効率的に除去することができる。
【0061】
<エッチングの選択性の評価>
ここでポリイミド薄膜と石英に対するF ガスのエッチング時の選択性について実験を行ったので、その評価結果について説明する。図4はポリイミド薄膜と石英に対するF ガスのエッチング時の選択性を示すグラフである。ここでは横軸にエッチング(クリーニング)時間をとり、左側縦軸にPI(ポリイミド薄膜)のエッチング膜厚をとり、右側縦軸に石英のエッチング膜厚をとっている。尚、ここで左側縦軸と右側縦軸は2桁異なっている点に注意されたい。
【0062】
またエッチングに際しては、エッチングガス(クリーニングガス)として4%濃度のF ガスを用い、エッチング対象物の温度を200℃に設定し、圧力は150Torrに設定している。この図から明らかなように、石英のエッチング膜厚は、時間の経過と共に直線的に上昇しており、エッチングレートが常に一定になっていることが理解できる。この場合、エッチングレートは0.3nm/min程度であり、非常に小さい。
【0063】
これに対して、ポリイミド薄膜(PI)のエッチング膜厚は、エッチング開始の当初は少ないが、時間の経過と共に、例えば2次曲線的に次第に増加していることが理解できる。この場合、例えばエッチング開始当初の10分程度までのエッチングレートは20nm/min程度であるのに対して、エッチング開始後の20分から30分までの10分間のエッチングレートは75nm/min程度に急激に増加している。この理由は、ポリイミド薄膜がエッチングされる時の反応メカニズムが、”膜のフッ化”と”過剰にフッ化された表面付近の揮発”の2ステップからなっているからである、と考えられる。
【0064】
すなわち、エッチングの開始当初は膜のフッ化にF ガスが消費されて膜が劣化し、ある程度までフッ化が進行すると、フッ化した膜が急激に昇華して取れ出すことによりエッチングが遅れて生じ、その後は、急激な昇華状態を維持してエッチングが進行して行くことになる。
【0065】
いずれにしても、この図4に示すグラフより、処理時間20分以上の領域では石英のエッチングレートは、ポリイミド薄膜のエッチング量、或いはエッチングレートよりも2桁程度低い値に抑えることができた。この結果、石英をほとんど削らないでポリイミド薄膜を選択的に除去できることが判る。換言すれば、ポリイミド薄膜を石英よりも選択比で2桁(100倍)程度効率的に除去できることが判る。
【0066】
そして、この時の膜厚方向の元素濃度を調べて、また膜厚の断面を写真にとったので、その結果を示す。図5はシリコン基板上に形成されたポリイミド薄膜(PI)の膜厚方向の元素濃度を示し、図6はシリコン基板上に形成されたポリイミド薄膜(PI)の膜厚方向の電子顕微鏡写真を示す。尚、元素濃度の測定はXPS(X線光電子分光法)を用いた。図5において、横軸は膜表面からの膜厚の深さを示し、縦軸は元素濃度を示し、図中には、炭素(C)、フッ素(F)、酸素(O)、窒素(N)、シリコン(Si)の各元素濃度がそれぞれ示されている。
【0067】
図5に示すように、膜表面から深さ800nm程度まではF濃度が高い状態で入っており、膜がフッ化されてフッ化ポリイミド薄膜(F化PI膜)となっている。そして、深さ800nmを越えて更に深くなると、C濃度が急激に増加する一方、F濃度は急激に減少しており、この部分はフッ化されていないピュアなポリイミド薄膜(PI膜)となっている。そして、深さが1600nmを越えて更に深くなると、Si濃度が急激に上昇しており、Si基板に達したことを理解することができる。
【0068】
図6はこの時の電子顕微鏡写真を示しており、下側よりSi基板、PI膜及びF化PI膜の3層構造になっているのが判る。ここでPI膜とF化PI膜との合計膜厚は1601nm程度であり、この膜厚の初期値は1600nm程度であり、膜が取れ出す前にF化が進行している。
【0069】
<フッ素濃度及び温度依存性の評価>
次に、エッチング時のフッ素濃度及び温度依存性について検討したので、その評価結果について説明する。図7はエッチング時のフッ素濃度及び温度依存性を示す図であり、ポリイミド膜(PI)のエッチングレート、SiO 膜(石英)のエッチングレート及び両者の選択比を示している。ここではエッチング時のプロセス圧力は全て400Torr(53320Pa)に設定している。
【0070】
図7に示すように、フッ素濃度依存性の実験の場合には、プロセス温度を全て200℃に設定し、F 濃度を1.5%、8%、20%の3種類に亘って変化させている。これによれば、PI膜とSiO 膜との選択比は上記F 濃度の範囲内ならば2桁以上である。また、F 濃度が1番少ない1.5%の場合でもPI膜のエッチングレートは0.03μm/minであって十分に大きい値であり、有効な濃度である。ただし、より効率的にPI膜を除去するためには、F 濃度を8%以上に設定してエッチングレートを0.31μm/min以上にするのが好ましい。この場合、F 濃度を高くすればする程、PI膜のエッチングレートは大きくなる。
【0071】
また、温度依存性の実験の場合には、F 濃度を8%と20%の2種類とし、プロセス温度をそれぞれの濃度に関して150℃、200℃、250℃の3種類について行った。この場合には、選択比は、F 濃度が20%で、温度250℃の時の”77”を除き、全て2桁以上の大きな値となっており、全ての選択比が好ましい結果を示していることが判る。
【0072】
また、PI膜のエッチングレートは、温度が150℃の場合には、F 濃度が8%の時に0.03μm/min、F 濃度が20%の時に0.12μm/minであって共に低く、これに対して、温度が200℃及び250℃の場合には、F 濃度が8%の時でも0.31μm/min〜1.6μm/minであって、上記温度150℃の場合よりもかなり高くなっており、優れた特性を示していることが判る。従って、エッチング時(クリーニング時)の最適な温度は150℃以上であり、好ましくはポリイミド薄膜のエッチングレートがより大きくなる200℃以上となる。
【0073】
また、クリーニング時の温度の上限は前述したように、載置台38を含むウエハボート6の構成材料であるアルミニウムやアルミニウム合金の耐熱温度である300℃であり、好ましくは耐熱性に対するマージンを見込んで250℃以下に設定する。以上の結果より、クリーニング時における処理容器4やウエハボート6や載置台38の各温度は、前述したように150〜300℃の範囲内、より好ましくは200〜250℃の範囲内に設定するようにする。
【0074】
以上の実施形態ではクリーニングガスに用いるフッ素系ガスとしてF ガスを用いたが、これに限定されず、フッ素系ガスとしては、F 、NF 、ClF 、C よりなる群から選択される1以上のガスを用いることができる。また、本実施形態では、高分子薄膜として有機薄膜のポリイミド薄膜を形成する場合を例にとって説明したいが、これに限定されず、有機薄膜としてポリ尿素薄膜を成膜する場合にも、本発明を適用することができる。このポリ尿素薄膜を形成する際の複数の原料ガスとしては、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)と4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)とを用いることができる。
【0075】
また更に、モノマーの重合プロセスによって形成される高分子薄膜としては有機薄膜に限定されず、無機薄膜よりなる高分子薄膜を形成する場合にも、本発明を適用することができる。このような無機薄膜としては、例えばSiO膜、SiN膜等が挙げられ、更にSiOCH膜、SiNCH膜等の有機・無機ハイブリッド膜等も挙げることができる。
【0076】
また、ここでは一度に複数枚のウエハを処理する、いわゆるバッチ式の成膜装置を例にとって説明したが、これに限定されず、処理容器4及び保持手段であるウエハボート6の高さをそれぞれ小さく設定してウエハを1枚ずつ処理するようにした、いわゆる枚葉式の成膜装置にも、本発明を適用することができる。
【0077】
また、ここでは被処理体として半導体ウエハを例にとって説明したが、この半導体ウエハにはシリコン基板やGaAs、SiC、GaNなどの化合物半導体基板も含まれ、更にはこれらの基板に限定されず、液晶表示装置に用いるガラス基板やセラミック基板等にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0078】
2 成膜装置
4 処理容器
6 ウエハボート(保持手段)
8 蓋部
12 昇降機構
14 容器加熱手段
20 ガス供給手段
22 第1の原料ガス供給系
24 第2の原料ガス供給系
26 クリーニングガス供給手段
30 真空排気系
36A〜36C 支柱
38 載置台
40 内部冷却手段
44A〜44C 支持アーム
48 冷媒通路
50 冷媒循環部
52A,52C 支柱内通路
54A,54C アーム内通路
56 載置台内通路
58 伸縮管
62 温度制御部
64 装置制御部
66 記憶媒体
W 半導体ウエハ(被処理体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体の表面に高分子薄膜を形成する成膜装置において、
前記被処理体を収容する処理容器と、
前記処理容器内で前記被処理体を保持する保持手段と、
前記処理容器内を真空引きする真空排気系と、
前記処理容器内へ前記高分子薄膜の複数の原料ガスを供給するガス供給手段と、
前記処理容器内へクリーニングガスとしてフッ素系ガスを供給するクリーニングガス供給手段と、
前記処理容器を加熱する容器加熱手段と、
を備えたことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記保持手段は、アルミニウム製或いはアルミニウム合金製であり、前記クリーニング処理時の温度は、150〜300℃の範囲内であることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
前記処理容器は、石英により形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の成膜装置。
【請求項4】
前記高分子薄膜は、有機薄膜又は無機薄膜よりなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記有機薄膜は、ポリイミド薄膜又はポリ尿素薄膜よりなることを特徴とする請求項4記載の成膜装置。
【請求項6】
前記ポリイミド薄膜を形成する時の前記複数の原料ガスは、ピロメリット酸二無水物(PMDA)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)とよりなることを特徴とする請求項5記載の成膜装置。
【請求項7】
前記ポリイミド尿素薄膜を形成する時の前記複数の原料ガスは、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)と4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)とよりなることを特徴とする請求項5記載の成膜装置。
【請求項8】
前記フッ素系ガスは、F 、NF 、ClF 、C よりなる群から選択される1以上のガスよりなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項9】
被処理体の表面に高分子薄膜を形成するために用いられる請求項1乃至8のいずれか一項に記載の成膜装置のクリーニング方法において、
保持手段を処理容器内へ搬入した状態で前記処理容器内へクリーニングガスとしてフッ素系ガスを供給してクリーニング処理を行うようにしたことを特徴とする成膜装置のクリーニング方法。
【請求項10】
前記保持手段は、アルミニウム製或いはアルミニウム合金製であり、前記クリーニング処理時の温度は、150〜300℃の範囲内であることを特徴とする請求項9記載の成膜装置のクリーニング方法。
【請求項11】
前記処理容器は、石英により形成されていることを特徴とする請求項9又は10記載の成膜装置のクリーニング方法。
【請求項12】
前記高分子薄膜は、有機薄膜又は無機薄膜よりなることを特徴とする請求項9乃至11のいずれか一項に記載の成膜装置のクリーニング方法。
【請求項13】
前記有機薄膜は、ポリイミド薄膜又はポリ尿素薄膜よりなることを特徴とする請求項12記載の成膜装置のクリーニング方法。
【請求項14】
前記ポリイミド薄膜を形成する時の前記複数の原料ガスは、ピロメリット酸二無水物(PMDA)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)とよりなることを特徴とする請求項13記載の成膜装置のクリーニング方法。
【請求項15】
前記ポリイミド尿素薄膜を形成する時の前記複数の原料ガスは、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)と4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)とよりなることを特徴とする請求項13記載の成膜装置のクリーニング方法。
【請求項16】
前記フッ素系ガスは、F 、NF 、ClF 、C よりなる群から選択される1以上のガスよりなることを特徴とする請求項9乃至15のいずれか一項に記載の成膜装置のクリーニング方法。
【請求項17】
被処理体を収容する処理容器と、
前記処理容器内で前記被処理体を保持する保持手段と、
前記処理容器内を真空引きする真空排気系と、
前記処理容器内へ高分子薄膜の複数の原料ガスを供給するガス供給手段と、
前記処理容器内へクリーニングガスとしてフッ素系ガスを供給するクリーニングガス供給手段と、
前記処理容器を加熱する容器加熱手段と、
装置全体の動作を制御する装置制御部と、
を備えて前記被処理体の表面に高分子薄膜を形成するようにした成膜装置をクリーニングするに際して、
請求項9乃至16のいずれか一項に記載したクリーニング方法を実施するように前記成膜装置を制御する、コンピュータに読み取り可能なプログラムを記憶するようにしたことを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−238907(P2012−238907A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−186364(P2012−186364)
【出願日】平成24年8月27日(2012.8.27)
【分割の表示】特願2008−229074(P2008−229074)の分割
【原出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】