説明

成膜装置及び成膜方法

【課題】マスクの強度を低下させずに、大面積の成膜対象物に成膜できる成膜装置及び成膜方法を提供する。
【解決手段】
マスク31は、薄膜材料蒸気が通過する複数の通過孔32が配置された有効領域331〜333と、薄膜材料蒸気を遮蔽する遮蔽領域341〜344とを有し、有効領域331〜333と遮蔽領域341〜343は、長さ方向と、長さ方向と直交する幅方向とを有する四角形状であり、有効領域331〜333と遮蔽領域341〜343とは、有効領域331〜333の幅方向6に沿って互いに隣接して配置され、成膜装置10aは、マスク31と放出装置21とに対し、成膜対象物42を、有効領域331〜333と遮蔽領域341〜344とが並ぶ方向に相対的に移動させる第一の移動装置51を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、発光効率が高く、薄い発光装置を組み立てることができることから、表示装置や照明機器の用途に注目されており、現在、大面積の成膜対象物の表面に所定の形状の有機薄膜を精密に成膜する技術が求められている。
【0003】
図10は従来の成膜装置100の内部側面図である。
従来の成膜装置100は、真空槽111と、放出口122が設けられ、放出口122から薄膜材料蒸気を真空槽111内に放出させる放出装置121と、放出装置121から放出された薄膜材料蒸気が通過する複数の通過孔132が設けられたマスク131とを有している。
【0004】
放出装置121を加熱して、放出装置121内に配置された固体又は液体の薄膜材料141を加熱すると、薄膜材料141から薄膜材料蒸気が生成され、生成された薄膜材料蒸気は放出口122から真空槽111内に放出される。
【0005】
放出装置121の上方には四角形のリング状のマスク保持部材136が配置され、マスク131はマスク保持部材136上に水平に配置されている。マスク131の外周部分はマスク保持部材136に密着して支持されており、マスク131の通過孔132はマスク保持部材136のリングの内側に露出されている。
【0006】
放出口122から薄膜材料蒸気が放出されると、放出された薄膜材料蒸気はマスク131の通過孔132を通過して、マスク131と対面する位置に配置された成膜対象物142の表面に到達し、成膜対象物142の表面に通過孔132と同じ形状の薄膜が形成される。
【0007】
従来の成膜装置100では、通過孔132は、マスク131内で、マスク保持部材136のリングの内側に均一に配置されていた。そのため、成膜対象物142の大面積化に伴ってマスク131が大型化すると、通過孔132の個数が増加して、マスク131内で通過孔132が占める面積が増加し、マスク131の強度が低下するという問題があった。
【0008】
さらに、マスク131は外周部分が四角形のリング状のマスク保持部材136に密着して支持されており、マスク131が大型化すると、マスク131の外周部分のうち互いに対向する二辺の間隔が広がるため、マスク131の中央部分が重力により撓んでしまうという問題があった。
【0009】
また、薄膜形成中に放出装置121からの熱輻射を受けてマスク131の温度が上昇すると、マスク131は熱膨張して、通過孔132は所要位置からずれ、成膜対象物142の表面に形成される薄膜の輪郭が不鮮明になったり、薄膜の位置ずれが生じてしまう。そのため、成膜中にはマスク131を冷却しておく必要がある。
【0010】
従来の成膜装置100では、マスク保持部材136のうちマスク131に密着する面とは逆の面には流路部材138が密着して設けられ、流路部材138内部の流路139に温度管理された伝熱媒体を流して、流路部材138からの熱伝導によりマスク131を冷却していた。
【0011】
しかし、マスク131のうちマスク保持部材136に密着する外周部分は冷却されやすいが、特に大型のマスク131では、マスク131の中心部分は冷却されづらく、中心部分の熱膨張を抑制することは困難であった。
【0012】
またマスク131の中心部分を冷却するために流路139に流す伝熱媒体の温度を下げると、マスク131の外周部分で熱収縮が起こり、通過孔132は所要位置からずれ、成膜対象物142の表面に形成される薄膜の輪郭が不鮮明になったり、薄膜の位置ずれが生じるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−008859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、マスクの強度を低下させずに、大面積の成膜対象物に成膜できる成膜装置及び成膜方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために本発明は、真空槽と、放出口が設けられ、前記放出口から薄膜材料蒸気を前記真空槽内に放出させる放出装置と、前記放出装置から放出された前記薄膜材料蒸気が通過する複数の通過孔が設けられたマスクとを有し、前記マスクと対面する位置に配置された成膜対象物に前記通過孔を通過した前記薄膜材料蒸気を到達させ、前記成膜対象物表面に薄膜を形成する成膜装置であって、前記マスクは、前記通過孔が配置された有効領域と、前記薄膜材料蒸気を遮蔽する遮蔽領域とを有し、前記有効領域と前記遮蔽領域は、長さ方向と、前記長さ方向と直交する幅方向とを有する四角形状であり、前記有効領域と前記遮蔽領域とは、前記有効領域の前記幅方向に沿って互いに隣接して配置され、前記マスクと前記放出装置とに対し、前記成膜対象物を、前記有効領域と前記遮蔽領域とが並ぶ方向に相対的に移動させる第一の移動装置を有する成膜装置である。
本発明は成膜装置であって、前記有効領域と前記遮蔽領域は、前記マスク内に、交互に複数配置された成膜装置である。
本発明は成膜装置であって、前記マスクに対し、前記放出装置を、前記有効領域の前記長さ方向に相対的に移動させる第二の移動装置を有する成膜装置である。
本発明は成膜装置であって、前記放出口は、前記有効領域と対面する位置の前記長さ方向に沿った延長線上に配置された成膜装置である。
本発明は、前記成膜装置を用いた成膜方法であって、前記成膜対象物を前記マスクと対面させた状態で、前記放出口から薄膜材料蒸気を放出させ、前記成膜対象物の表面のうち前記有効領域と対面する第一の成膜領域に薄膜を形成する第一の成膜工程と、前記マスクと前記放出装置とに対し、前記成膜対象物を、前記有効領域と前記遮蔽領域とが並ぶ方向に相対的に移動させ、前記第一の成膜領域を前記遮蔽領域と対面させ、前記第一の成膜領域に隣接する第二の成膜領域を前記有効領域と対面させる移動工程と、前記放出口から薄膜材料蒸気を放出させ、前記成膜対象物の表面のうち前記有効領域と対面する前記第二の成膜領域に薄膜を形成する第二の成膜工程と、を有する成膜方法である。
本発明は成膜方法であって、前記第一、第二の成膜工程では、前記マスクと前記成膜対象物とに対し、前記放出装置を、前記有効領域の前記長さ方向に相対的に移動させる成膜方法である。
【発明の効果】
【0016】
マスクの強度が従来のマスクより高くなるので、マスクを大型化してもマスクが損傷する可能性が低減し、大面積の成膜対象物への成膜が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一例の成膜装置の内部側面図
【図2】本発明の第一例の成膜装置の内部平面図
【図3】(a)〜(c):第一、三例の成膜装置を用いた成膜方法を説明するための図
【図4】本発明の第二例の成膜装置の内部側面図
【図5】本発明の第二例の成膜装置の内部平面図
【図6】別構造を放出装置を有する第二例の成膜装置の内部側面図
【図7】マスクの部分拡大図
【図8】(a)〜(e):第二例の成膜装置を用いた成膜方法を説明するための図
【図9】本発明の第三例の成膜装置の内部平面図
【図10】従来の成膜装置の内部側面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第一例の成膜装置の構造>
本発明の第一例の成膜装置の構造を説明する。
図1は第一例の成膜装置10aの内部側面図、図2は同内部平面図である。
【0019】
第一例の成膜装置10aは、真空槽11と、放出口22が設けられ、放出口22から薄膜材料蒸気を真空槽11内に放出させる放出装置21と、放出装置21から放出された薄膜材料蒸気が通過する複数の通過孔32が設けられたマスク31とを有している。
【0020】
放出装置21は、ここでは細長形状の中空容器であり、長手方向を水平に向けた状態で真空槽11内に配置されている。放出装置21の内部には、固体又は液体の薄膜材料41が配置されている。
【0021】
放出装置21の外周には線状のヒーター25が巻き回されて取り付けられており、ヒーター25には加熱用電源26が電気的に接続されている。なお、図2ではヒーター25と加熱用電源26の図示を省略している。
【0022】
加熱用電源26からヒーター25に電流を流すと、ヒーター25は発熱して、熱伝導により放出装置21は加熱され、放出装置21内の薄膜材料41は加熱されて、薄膜材料41から薄膜材料蒸気が生成される。
【0023】
放出口22は、放出装置21の上方を向いた面に、長手方向に沿って複数設けられており、放出装置21内で生成された薄膜材料蒸気は、各放出口22を通って真空槽11内に放出されるようになっている。
【0024】
放出装置21の上方には開口37が設けられたマスク保持部材36が配置されており、マスク31はマスク保持部材36上に水平に配置され、マスク31の通過孔32はマスク保持部材36の開口37と対面して配置されている。
【0025】
放出装置21がマスク31の下方を向いた面と対面する位置に配置されたとき、放出口22から放出された薄膜材料蒸気は、マスク保持部材36の開口37とマスク31の通過孔32とを順に通過して、マスク31の上方を向いた面と対面する位置に配置された成膜対象物42の表面に到達し、成膜対象物42の表面に薄膜が形成される。
【0026】
本発明では、マスク31は、通過孔32が配置された有効領域331〜333と、薄膜材料蒸気を遮蔽する遮蔽領域341〜344とを有している。
有効領域331〜333と遮蔽領域341〜344は、長さ方向と、長さ方向と直交する幅方向とを有する四角形状であり、遮蔽領域341〜344の幅方向の長さは、有効領域331〜333の幅方向の長さ以上にされ、有効領域331〜333と遮蔽領域341〜344とは、有効領域331〜333の幅方向に沿って互いに隣接して配置されている。そのため、マスク31内で通過孔32が占める面積は、従来のマスク131(図10参照)より小さく、マスク31の強度が従来のマスク131より高くなっている。
【0027】
以下では、有効領域331〜333の長さ方向、幅方向を「長さ方向」、「幅方向」と呼び、符号5、6を付して説明する。
本実施例では、有効領域331〜333と遮蔽領域341〜344は、マスク31内に、交互に複数配置されており、マスク保持部材36は遮蔽領域341〜344と対向して配置され、遮蔽領域341〜344に密着されている。そのため、マスク31は外周部分だけでなく中央部分もマスク保持部材36に支持されており、マスク31が大型化しても、マスク31の中央部分が重力により下方に撓まないようになっている。
【0028】
第一例の成膜装置10aは、マスク31と放出装置21とに対し、成膜対象物42を、有効領域331〜333と遮蔽領域341〜344とが並ぶ方向(すなわち幅方向6)に相対的に移動させる第一の移動装置51を有している。
【0029】
すなわち、第一例の成膜装置10aは、成膜対象物42とマスク31とを対面して配置し、成膜対象物42の第一の成膜領域を有効領域331〜333と対面させ、第二の成膜領域を遮蔽領域341〜344と対面させた後、マスク31と放出装置21とに対して成膜対象物42を相対的に移動させ、第二の成膜領域を有効領域331〜333と対面させる第一の移動装置51を有している。
【0030】
第一の移動装置51は、ここでは、マスク31の上方に鉛直に配置された棒状の腕部材51aと、腕部材51aを鉛直方向と水平方向にそれぞれ移動させる腕部材移動装置51bとを有している。腕部材51aの下端には水平方向に突出する凸部51cが設けられている。図2では第一の移動装置51の図示を省略している。
【0031】
第一の移動装置51の動作を説明すると、まず、成膜対象物42とマスク31とが対面して配置され、成膜対象物42の第一の成膜領域が有効領域331〜333と対面され、第二の成膜領域が遮蔽領域341〜344と対面された状態で、腕部材移動装置51bにより、腕部材51aを成膜対象物42の外周より外側に移動させ、腕部材51aを下降させて、凸部51cを成膜対象物42表面より下方に位置させる。次いで、腕部材51aを成膜対象物42に近づける方向に水平に移動させて、凸部51cを成膜対象物42表面と対向させた後、腕部材51aを上昇させると、凸部51cは成膜対象物42表面の外周部分と接触して、成膜対象物42は凸部51cに載せられ、マスク31と離間する。次いで、腕部材51aを有効領域331〜333と遮蔽領域341〜344とが並ぶ方向に移動させると、凸部51cに載せられた成膜対象物42も一緒に同方向に移動する。成膜対象物42を、第二の成膜領域が有効領域331〜333と対面する位置で静止させ、腕部材51aを下降させ、凸部51cをマスク31より下方に移動させると、成膜対象物42はマスク31に接触してマスク31上に載せられ、凸部51cから離間する。
【0032】
このようにして、成膜対象物42はマスク31と放出装置21とに対し、有効領域331〜333と遮蔽領域341〜344とが並ぶ方向に相対的に移動される。
なお、第一の移動装置51は、マスク31と放出装置21とに対し、成膜対象物42を、有効領域331〜333と遮蔽領域341〜344とが並ぶ方向に相対的に移動させることができるならば、上記構成に限定されない。
ここでは、有効領域331〜333の幅方向6は放出装置21の長手方向と平行に向けられている。
【0033】
本実施例では、第一例の成膜装置10aは、マスク31に対し、放出装置21を、有効領域331〜333の長さ方向5に相対的に移動させる第二の移動装置53を有している。
第二の移動装置53は、ここでは長さ方向5に沿って延設されたレール53aと、レール53a上に配置された可動部53bとを有している。
【0034】
レール53aには複数の固定電磁石(不図示)が長さ方向5に沿って等間隔に並んで設けられ、可動部53bには可動磁石(不図示)が設けられている。
固定電磁石の磁極を長さ方向5に沿って順に変化させると、可動磁石には長さ方向5と平行な移動力が印加され、可動部53bは長さ方向5に沿って移動される。
【0035】
放出装置21は可動部53bに固定されており、可動部53bを長さ方向5に移動させると、放出装置21も可動部53bと一緒に長さ方向5に移動されるようになっている。放出装置21を長さ方向5にあらかじめ定められた所定の速度で移動させると、マスク31の有効領域331〜333には長さ方向5に沿って均一な量の薄膜材料蒸気が到達し、成膜対象物42の表面には長さ方向5に沿って均一な膜厚の薄膜を形成することができる。
【0036】
なお、マスク31の有効領域331〜333に長さ方向5に沿って均一な量の薄膜材料蒸気を到達できるならば、放出装置21を長さ方向5に沿って複数個配置して、第二の移動装置53を省略してもよい。
【0037】
本実施例では、放出口22は、有効領域331〜333と対面する位置の長さ方向5に沿った延長線上に配置され、遮蔽領域341〜344と対面する位置の長さ方向5に沿った延長線上には配置されていない。
【0038】
第二の移動装置53により、放出装置21を長さ方向5に沿って移動させると、放出口22は有効領域331〜333と対面する範囲内を移動し、遮蔽領域341〜344と対面する範囲内にははみ出さず、放出口22から放出された薄膜材料蒸気は、有効領域331〜333の通過孔32を通って成膜対象物42に到達し、遮蔽領域341〜344に到達して無駄になったり、ダストの原因になることが防止されている。
【0039】
マスク保持部材36のうち遮蔽領域341〜344に密着する面とは逆の面には流路部材38が密着して配置されている。
流路部材38の内部には流路39が設けられ、流路39には伝熱媒体導入部46aと伝熱媒体排出部46bとがそれぞれ接続されている。伝熱媒体導入部46aから流路39内に温度管理された伝熱媒体を導入し、流路39内を流れた伝熱媒体を伝熱媒体排出部46bから排出すると、伝熱媒体との熱伝導により流路部材38は伝熱媒体と同じ温度に加熱又は冷却され、流路部材38に密着するマスク保持部材36とマスク保持部材36に密着するマスク31も伝熱媒体と同じ温度に加熱又は冷却される。
【0040】
流路部材38は遮蔽領域341〜344と対向する範囲内に配置され、有効領域331〜333と対向する範囲内にははみ出しておらず、有効領域331〜333に入射する薄膜材料蒸気が流路部材38で遮られることはない。
【0041】
有効領域331〜333と遮蔽領域341〜344は交互に配置され、すなわち有効領域331〜333と流路部材38は交互に配置されている。そのため、有効領域331〜333の中心と流路部材38との距離が従来のマスク131(図10参照)より短く、有効領域331〜333の加熱又は冷却効率が高くなっており、有効領域331〜333の通過孔32が熱により変形することが防止されている。
【0042】
放出装置21の上方を向いた面のうち、放出口22の外側の部分は熱輻射防止部材29で覆われている。熱輻射防止部材29は、放出装置21の輻射熱がマスク31に到達して、マスク31が熱膨張することを防止している。
【0043】
<第一例の成膜装置を用いた成膜方法>
第一例の成膜装置10aを用いた成膜方法を説明する。
(準備工程)
図3(a)を参照し、あらかじめ、成膜対象物42の表面に、マスク31の有効領域331〜333と同じ形状、同じ大きさ、同じ数の第一、第二の成膜領域431〜433、441〜443を、一の成膜領域の幅方向に沿って互いに隣接して交互に定めておく。
【0044】
真空排気装置12を動作させて真空槽11内を真空排気し、真空雰囲気を形成する。以後、真空排気装置12の動作を継続して、真空槽11内の真空雰囲気を維持する。
真空槽11内の真空雰囲気を維持しながら、成膜対象物42を真空槽11内に搬入し、マスク31と対面して配置し、成膜対象物42の第一の成膜領域431〜433を有効領域331〜333と対面させ、第二の成膜領域441〜443を遮蔽領域342〜344と対面させる。
【0045】
流路部材38の流路39内にあらかじめ定められた所定温度の伝熱媒体を流して、マスク31を伝熱媒体と同じ温度にする。以後、流路39内に伝熱媒体を流すことを継続し、マスク31の温度を伝熱媒体と同じ温度に維持する。
【0046】
第二の移動装置53を動作させて、放出装置21をマスク31と対面する範囲より外側に配置しておく。放出装置21内に薄膜材料41を配置しておく。
ヒーター25を発熱させて、放出装置21を加熱させ、薄膜材料41を加熱して、放出口22から薄膜材料蒸気を放出させる。
【0047】
(第一の成膜工程)
第二の移動装置53により、放出装置21を長さ方向5に沿って移動させ、マスク31と対面する位置を通過させると、放出口22から放出された薄膜材料蒸気は有効領域331〜333に入射し、通過孔32を通って、成膜対象物42の第一の成膜領域431〜433に到達し、図3(b)に示すように、第一の成膜領域431〜433に通過孔32と同形状の薄膜45が形成される。
【0048】
マスク31は伝熱媒体と同じ温度に維持されており、放出装置21の輻射熱により通過孔32が変形することはなく、薄膜45の輪郭が不鮮明になったり、薄膜の位置ずれが生じることはない。
【0049】
第二の成膜領域441〜443は遮蔽領域342〜344と対面しており、薄膜材料蒸気は第二の成膜領域441〜443には到達しない。
第二の移動装置53により、放出装置21を長さ方向5に沿って複数回往復移動させて、第一の成膜領域431〜433に形成される薄膜45をあらかじめ定められた所定の膜厚になるまで積層させてもよい。
【0050】
(移動工程)
図1、2を参照し、放出装置21をマスク31と対面する範囲より外側に配置した状態で、第一の移動装置51を動作させて、マスク31と放出装置21とに対して成膜対象物42を、有効領域331〜333と遮蔽領域341〜344とが並ぶ方向(幅方向6)に相対的に移動させ、第二の成膜領域441〜443を有効領域331〜333と対面させ、第一の成膜領域431〜433を遮蔽領域341〜343と対面させる。
成膜対象物42の移動中は、放出装置21はマスク31と対面する範囲より外側に配置されており、成膜対象物42表面に蒸気が到達することはない。
【0051】
(第二の成膜工程)
第二の移動装置53により、放出装置21を長さ方向5に沿って移動させ、マスク31と対面する位置を通過させると、放出口22から放出された薄膜材料蒸気は有効領域331〜333に入射し、通過孔32を通って、成膜対象物42の第二の成膜領域441〜443に到達し、図3(c)に示すように、第二の成膜領域441〜443に通過孔32と同形状の薄膜が形成される。第一の成膜領域431〜433は遮蔽領域341〜343と対面しており、薄膜材料蒸気は第一の成膜領域431〜433には到達しない。
【0052】
第二の移動装置53により、放出装置21を長さ方向5に沿って複数回往復移動させて、第二の成膜領域441〜443に形成される薄膜45をあらかじめ定められた所定の膜厚になるまで積層させてもよい。
このようにして、成膜対象物42の第一、第二の成膜領域431〜433、441〜443に薄膜が形成される。
【0053】
ヒーター25による放出装置21の加熱を停止し、放出口22からの薄膜材料蒸気の放出を停止する。
真空槽11内の真空雰囲気を維持しながら、成膜済みの成膜対象物42を真空槽11の外側に搬出し、次いで、未成膜の成膜対象物42を真空槽11内に搬入し、上述の各工程を繰り返して、複数枚の成膜対象物42に順に薄膜を形成する。
【0054】
マスク31は伝熱媒体と同じ温度に維持されており、複数枚の成膜対象物42に対して薄膜形成を繰り返してもマスク31の熱による変形は発生せず、各成膜対象物42に形成される薄膜45の輪郭が不鮮明になったり、薄膜の位置ずれが生じることはない。
【0055】
<第二例の成膜装置の構造>
本発明の第二例の成膜装置の構造を説明する。
図4は第二例の成膜装置10bの内部側面図、図5は同内部平面図である。
【0056】
第二例の成膜装置10bの構成のうち、第一例の成膜装置10aの構成と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略する。
第二例の成膜装置10bは、第一例の成膜装置10aの放出装置21の代わりに、符号21h、21dの放出装置を有している。図4では符号21dの放出装置の図示を省略している。
符号21h、21dの放出装置の構造は互いに同じであり、符号21hの放出装置で代表して説明する。
【0057】
放出装置21hは、ここでは細長形状の中空容器であり、長手方向を有効領域331〜333の幅方向6と平行に向けられた状態で真空槽11内に配置されている。
放出装置21hには、薄膜材料蒸気を放出するガス放出部60hが接続され、ガス放出部60hから放出装置21h内に薄膜材料蒸気が導入されるようになっている。
【0058】
本実施例では、ガス放出部60hは、赤、緑、青色薄膜材料蒸気を放出する赤、緑、青色蒸発源61hR、61hG、61hBと、赤、緑、青色蒸発源61hR、61hG、61hBに接続された開閉可能な赤、緑、青色バルブ62hR、62hG、62hBとを有している。
【0059】
赤、緑、青色バルブ62hR、62hG、62hBを開状態にすると、赤、緑、青色蒸発源61hR、61hG、61hBから放出装置21h内に赤、緑、青色薄膜材料蒸気がそれぞれ導入され、閉状態にすると、放出装置21h内への蒸気の導入が停止されるようになっている。
【0060】
放出装置21hの上方を向いた面には、長手方向に沿って放出口22hが複数設けられている。放出装置21h内に導入された蒸気はそれぞれ、各放出口22hを通って真空槽11内に放出される。
【0061】
なお、放出装置21hは、ガス放出部60hから薄膜材料蒸気が導入され、導入された薄膜材料蒸気が放出口22hから真空槽11内に放出されるならば、上記構成に限定されない。
【0062】
図6は、別構造の放出装置21hを有する第二例の成膜装置10bの内部側面図である。
この放出装置21hは、第一乃至第n(nは二以上の自然数)の分岐管591、592からなるn段縦続の分岐構造を有し、第一乃至第nの分岐管591、592の各々は、ガス放出部60h又は前段の分岐管591の出口に接続された入口と、薄膜材料蒸気を二系統に分流させる二本の分岐管体と、二本の分岐管体のそれぞれに設けられた出口とを有している。
【0063】
本実施例では、放出装置21hは、第一、第二の分岐管591、592からなる二段縦続の分岐構造を有している。
第一の分岐管591は、ガス放出部60hに接続された入口と、薄膜材料蒸気を二系統に分流させる二本の分岐管体と、二本の分岐管体のそれぞれに設けられた出口とを有している。
【0064】
第二の分岐管592は、第一の分岐管591の出口に接続された入口と、薄膜材料蒸気を二系統に分流させる二本の分岐管体と、二本の分岐管体のそれぞれに設けられた出口とを有している。
各分岐管591、592では、二本の分岐管体の入口から出口までの薄膜材料蒸気の流路長さが互いに等しくされている。
放出口22hは第二の分岐管592の出口に設けられている。
【0065】
ガス放出部60hから第一の分岐管591の入口に導入された薄膜材料蒸気は、第一の分岐管591により均等に二系統に分流されて、各第二の分岐管592の入口に導入され、第二の分岐管592により均等に二系統に分流されて、第二の分岐管592の出口に設けられた放出口22hから真空槽11内に流出される。
よって、放出装置21hに導入された薄膜材料蒸気は、各放出口22hから互いに同じ流量で流出し、成膜対象物42の表面に成膜される薄膜の膜厚は、成膜対象物42の表面内で均一になる。
【0066】
図4、6を参照し、放出装置21hには線状のヒーター25hが巻き回されて取り付けられており、ヒーター25hには加熱用電源26hが電気的に接続されている。加熱用電源26hからヒーター25hに電流を流すと、ヒーター25hは発熱して、熱伝導により放出装置21hは加熱されて、放出装置21h内に導入された蒸気は壁面に凝縮しないようになっている。
【0067】
図5を参照し、符号21h、21dの放出装置は、有効領域331〜333の長さ方向5に隣接して配置され、第二の移動装置53の同一の可動部53bに固定されており、可動部53bをレール53aに沿って移動させると、放出装置21h、21dは一緒にレール53aに沿って移動するようになっている。
【0068】
各放出装置21h、21dの放出口22h、22dは、有効領域331〜333と対面する位置の長さ方向5に沿った延長線上に配置され、遮蔽領域341〜344と対面する位置の長さ方向5に沿った延長線上には配置されていない。
【0069】
第二の移動装置53により、放出装置21h、21dを長さ方向5に沿って移動させると、各放出装置21h、21dの放出口22h、22dは有効領域331〜333と対面する範囲内を移動し、遮蔽領域341〜344と対面する範囲内にははみ出さず、各放出口22h、22dから放出された薄膜材料蒸気は、有効領域331〜333の通過孔32を通って成膜対象物42に一緒に到達し、遮蔽領域341〜344に到達して無駄になったり、ダストの原因になることが防止されている。
【0070】
<第二例の成膜装置を用いた成膜方法>
第二例の成膜装置10bを用いた成膜方法を説明する。
(準備工程)
図7は、マスク31の部分拡大図である。本実施例で用いるマスク31は、一枚で三色の発光層の形成に用いられるものであり、各通過孔32の幅方向6の長さdは、幅方向6に隣り合う二つの通過孔32の中心間隔Lの3分の1以下の長さに形成されている。
【0071】
図8(a)を参照し、あらかじめ、成膜対象物42の表面に、マスク31の有効領域331〜333と同じ形状、同じ大きさ、同じ数の第一、第二の成膜領域431〜433、441〜443を、一の成膜領域の幅方向に沿って互いに隣接して交互に定めておく。また、各第一、第二の成膜領域431〜433、441〜443内では、通過孔32と同じ形状、同じ大きさ、同じ数の赤、緑、青色成膜領域を、この順に幅方向6に隣接して定めておく。
【0072】
図5を参照し、各ガス放出部60h、60dの赤、緑、青色バルブ62hR、62hG、62hB、62dR、62dG、62dBを閉状態にしておく。
真空排気装置12を動作させて真空槽11内を真空排気し、真空雰囲気を形成する。以後、真空排気装置12の動作を継続して、真空槽11内の真空雰囲気を維持する。
【0073】
真空槽11内の真空雰囲気を維持しながら、成膜対象物42を真空槽11内に搬入し、マスク31と対面して配置し、成膜対象物42の第一の成膜領域431〜433を有効領域331〜333と対面させ、第二の成膜領域441〜443を遮蔽領域342〜344と対面させる。ここでは第一の成膜領域431〜433の赤色成膜領域を有効領域331〜333の各通過孔32と対面させる。
【0074】
流路39内にあらかじめ定められた所定温度の伝熱媒体を流して、マスク31を伝熱媒体と同じ温度にする。以後、流路39内に伝熱媒体を流すことを継続し、マスク31の温度を伝熱媒体と同じ温度に維持する。
【0075】
第二の移動装置53を動作させて、各放出装置21h、21dをマスク31と対面する範囲より外側に配置しておく。不図示のヒーターにより各放出装置21h、21dを加熱して、蒸気の凝縮温度以上に昇温する。以後、ヒーターによる加熱を継続して、各放出装置21h、21dの温度を蒸気の凝縮温度以上に維持する。
【0076】
(赤色発光層成膜工程)
各ガス放出部60h、60dの赤色バルブ62hR、62dRを開状態にして、各放出装置21h、21d内に赤色ホスト薄膜材料蒸気と赤色ドーパント薄膜材料蒸気をそれぞれ導入し、各放出装置21h、21dの放出口22h、22dから真空槽11内に放出させる。
【0077】
上述の第一の成膜工程と同じ工程を行って、各放出装置21h、21dを長さ方向5に沿って一緒に移動させ、マスク31と対面する位置を通過させると、各放出装置21h、21dの放出口22h、22dから放出された赤色ホスト薄膜材料蒸気と赤色ドーパント薄膜材料蒸気は有効領域331〜333に入射し、各通過孔32を通って、成膜対象物42の第一の成膜領域431〜433の赤色成膜領域に一緒に到達し、図8(b)に示すように、第一の成膜領域431〜433の赤色成膜領域に通過孔32と同形状の赤色発光層45Rが形成される。
【0078】
次いで、上述の移動工程と同じ工程を行って、マスク31と放出装置21h、21dとに対して成膜対象物42を幅方向6に相対的に移動させ、第二の成膜領域441〜443を有効領域331〜333と対面させ、第一の成膜領域431〜433は遮蔽領域341〜343と対面させる。ここでは第二の成膜領域441〜443の赤色成膜領域を有効領域331〜333の各通過孔32と対面させる。
【0079】
次いで、上述の第二の成膜工程と同じ工程を行って、各放出装置21h、21dを長さ方向5に沿って一緒に移動させ、マスク31と対面する位置を通過させると、各放出装置21h、21dの放出口22h、22dから放出された赤色ホスト薄膜材料蒸気と赤色ドーパント薄膜材料蒸気は有効領域331〜333に入射し、各通過孔32を通って、成膜対象物42の第二の成膜領域441〜443の赤色成膜領域に一緒に到達し、図8(c)に示すように、第二の成膜領域441〜443の赤色成膜領域に通過孔32と同形状の赤色発光層45Rが形成される。
【0080】
各放出装置21h、21dをマスク31と対面する範囲より外側に配置した状態で、各ガス放出部60h、60dの赤色バルブ62hR、62dRを閉状態にして、各放出装置21h、21d内への赤色ホスト薄膜材料蒸気と赤色ドーパント薄膜材料蒸気の導入を停止し、各放出装置21h、21dの放出口22h、22dから真空槽11内への蒸気の放出を停止する。
【0081】
(緑色発光層成膜工程)
次いで、第一の移動装置51を動作させて、マスク31と放出装置21h、21dとに対して成膜対象物42を幅方向6に相対的に移動させ、第一の成膜領域431〜433を有効領域331〜333と対面させ、第二の成膜領域441〜443は遮蔽領域342〜344と対面する。ここでは第一の成膜領域431〜433の緑色成膜領域を有効領域331〜333の各通過孔32と対面させる。
【0082】
各ガス放出部60h、60dの緑色バルブ62hG、62dGを開状態にして、各放出装置21h、21d内に緑色ホスト薄膜材料蒸気と緑色ドーパント薄膜材料蒸気をそれぞれ導入し、各放出装置21h、21dの放出口22h、22dから真空槽11内に放出させる。
【0083】
上述の赤色発光層成膜工程と同じ工程で各放出装置21h、21dを一緒に移動させ、図8(d)に示すように、第一、第二の成膜領域431〜433、441〜443の緑色成膜領域に、通過孔32と同形状の緑色発光層45Gを形成する。
【0084】
各放出装置21h、21dをマスク31と対面する範囲より外側に配置した状態で、各ガス放出部60h、60dの緑色バルブ62hG、62dGを閉状態にして、各放出装置21h、21d内への緑色ホスト薄膜材料蒸気と緑色ドーパント薄膜材料蒸気の導入を停止し、各放出装置21h、21dの放出口22h、22dから真空槽11内への蒸気の放出を停止する。
【0085】
(青色発光層成膜工程)
次いで、第一の移動装置51を動作させて、マスク31と放出装置21h、21dとに対して成膜対象物42を幅方向6に相対的に移動させ、第一の成膜領域431〜433を有効領域331〜333と対面させ、第二の成膜領域441〜443は遮蔽領域342〜344と対面する。ここでは第一の成膜領域431〜433の青色成膜領域を有効領域331〜333の各通過孔32と対面させる。
【0086】
各ガス放出部60h、60dの青色バルブ62hB、62dBを開状態にして、各放出装置21h、21d内に青色ホスト薄膜材料蒸気と青色ドーパント薄膜材料蒸気をそれぞれ導入し、各放出装置21h、21dの放出口22h、22dから真空槽11内に放出させる。
【0087】
上述の赤又は緑色発光層成膜工程と同じ工程で各放出装置21h、21dを一緒に移動させ、図8(e)に示すように、第一、第二の成膜領域431〜433、441〜443の青色成膜領域に、通過孔32と同形状の青色発光層45Bを形成する。
【0088】
各放出装置21h、21dをマスク31と対面する範囲より外側に配置した状態で、各ガス放出部60h、60dの青色バルブ62hB、62dBを閉状態にして、各放出装置21h、21d内への青色ホスト薄膜材料蒸気と青色ドーパント薄膜材料蒸気の導入を停止し、各放出装置21h、21dの放出口22h、22dから真空槽11内への蒸気の放出を停止する。
【0089】
このようにして、成膜対象物42の第一、第二の成膜領域431〜433、441〜443の赤、緑、青色成膜領域に赤、緑、青色発光層45R、45G、45Bがそれぞれ形成される。
【0090】
真空槽11内の真空雰囲気を維持しながら、成膜済みの成膜対象物42を真空槽11の外側に搬出し、次いで、未成膜の成膜対象物42を真空槽11内に搬入し、上述の各工程を繰り返して、複数枚の成膜対象物42に順に赤、緑、青色発光層45R、45G、45Bをそれぞれ形成する。
【0091】
<第三例の成膜装置の構造>
本発明の第三例の成膜装置の構造を説明する。
図9は第三例の成膜装置10cの内部平面図である。
第三例の成膜装置10cの構成のうち、第一例の成膜装置10aの構成と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0092】
第三例の成膜装置10cは、第一例の成膜装置10aの放出装置21と同じ構造の第一、第二の放出装置211、212を有しており、第一例の成膜装置10aの第二の移動装置53とは別構造の第二の移動装置53’を有している。
第一の放出装置211と、第一の移動装置51と、第二の放出装置212は、長さ方向5に沿ってこの順に配置されている。
【0093】
第二の移動装置53’はここでは複数の回転ローラ57を有している。回転ローラ57は回転軸線を幅方向6と平行に向けた状態で、第一、第二の放出装置211、212の放出口221、222から放出された蒸気を遮らない位置に、長さ方向5に沿って二列に並んで配置されている。
【0094】
回転ローラ57上にマスク31と成膜対象物42とを重ねて配置した状態で、回転ローラ57を回転させると、マスク31と成膜対象物42は一緒に長さ方向5に沿って移動して、第一の放出装置211と対向する位置と、第一の移動装置51と対向する位置と、第二の放出装置212と対向する位置とを順に通過するようになっている。
【0095】
<第三例の成膜装置を用いた成膜方法>
第三例の成膜装置10cを用いた成膜方法を説明する。
図3(a)を参照し、あらかじめ、成膜対象物42の表面に、マスク31の有効領域331〜333と同じ形状、同じ大きさ、同じ数の第一、第二の成膜領域431〜433、441〜443を、互いに幅方向に隣接して交互に定めておく。
【0096】
真空排気装置12を動作させて真空槽11内を真空排気し、真空雰囲気を形成する。以後、真空排気装置12の動作を継続して、真空槽11内の真空雰囲気を維持する。
マスク31上に成膜対象物42を配置し、成膜対象物42の第一の成膜領域431〜433を有効領域331〜333と対面させ、第二の成膜領域441〜443を遮蔽領域342〜344と対面させた状態で、図9を参照し、真空槽11内の真空雰囲気を維持しながら、マスク31と成膜対象物42とを一緒に真空槽11内に搬入し、第一の放出装置211より長さ方向5の始点側に位置する回転ローラ57上に配置する。
【0097】
第一、第二の放出装置211、212を加熱して、第一、第二の放出装置211、212の放出口221、222から薄膜材料蒸気を放出させる。
回転ローラ57を回転させて、マスク31と成膜対象物42とを一緒に長さ方向5の終点側に向かって移動させ、第一の放出装置211と対向する位置を通過させると、放出口221から放出された薄膜材料蒸気は通過孔32を通って、成膜対象物42の表面に到達し、図3(b)に示すように、第一の成膜領域431〜433に通過孔32と同形状の薄膜45が形成される。
【0098】
図9を参照し、回転ローラ57を回転させて、マスク31と成膜対象物42とを一緒に長さ方向5に沿って移動させ、第一の移動装置51と対向する位置で静止させる。第一の移動装置51を動作させて、マスク31と第一、第二の放出装置211、212とに対して成膜対象物42を幅方向6に相対的に移動させ、第二の成膜領域441〜443を有効領域331〜333と対面させ、第一の成膜領域431〜433を遮蔽領域341〜343と対面させる。
【0099】
次いで、回転ローラ57を回転させて、マスク31と成膜対象物42とを一緒に長さ方向5に沿って移動させ、第二の放出装置212と対向する位置を通過させると、放出口222から放出された薄膜材料蒸気は通過孔32を通って、成膜対象物42の表面に到達し、図3(c)に示すように、第二の成膜領域441〜443に通過孔32と同形状の薄膜45が形成される。
【0100】
このようにして、成膜対象物42の第一、第二の成膜領域431〜433、441〜443に薄膜が形成される。
なお、第一、第二の放出装置211、212は上記構成に限定されず、第二例の成膜装置10bの放出装置21h、21dと同じ構造であり、外部のガス放出部から薄膜材料蒸気がそれぞれ供給されるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0101】
5……長さ方向
6……幅方向
10a、10b、10c……成膜装置
11……真空槽
21、21h、21d、211、212……放出装置
22、22h、22d、221、222……放出口
31……マスク
32……通過孔
331〜333……有効領域
341〜344……遮蔽領域
42……成膜対象物
51……第一の移動装置
53……第二の移動装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空槽と、
放出口が設けられ、前記放出口から薄膜材料蒸気を前記真空槽内に放出させる放出装置と、
前記放出装置から放出された前記薄膜材料蒸気が通過する複数の通過孔が設けられたマスクとを有し、
前記マスクと対面する位置に配置された成膜対象物に前記通過孔を通過した前記薄膜材料蒸気を到達させ、前記成膜対象物表面に薄膜を形成する成膜装置であって、
前記マスクは、前記通過孔が配置された有効領域と、前記薄膜材料蒸気を遮蔽する遮蔽領域とを有し、
前記有効領域と前記遮蔽領域は、長さ方向と、前記長さ方向と直交する幅方向とを有する四角形状であり、
前記有効領域と前記遮蔽領域とは、前記有効領域の前記幅方向に沿って互いに隣接して配置され、
前記マスクと前記放出装置とに対し、前記成膜対象物を、前記有効領域と前記遮蔽領域とが並ぶ方向に相対的に移動させる第一の移動装置を有する成膜装置。
【請求項2】
前記有効領域と前記遮蔽領域は、前記マスク内に、交互に複数配置された請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
前記マスクに対し、前記放出装置を、前記有効領域の前記長さ方向に相対的に移動させる第二の移動装置を有する請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の成膜装置。
【請求項4】
前記放出口は、前記有効領域と対面する位置の前記長さ方向に沿った延長線上に配置された請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の成膜装置。
【請求項5】
請求項1記載の成膜装置を用いた成膜方法であって、
前記成膜対象物を前記マスクと対面させた状態で、前記放出口から薄膜材料蒸気を放出させ、前記成膜対象物の表面のうち前記有効領域と対面する第一の成膜領域に薄膜を形成する第一の成膜工程と、
前記マスクと前記放出装置とに対し、前記成膜対象物を、前記有効領域と前記遮蔽領域とが並ぶ方向に相対的に移動させ、前記第一の成膜領域を前記遮蔽領域と対面させ、前記第一の成膜領域に隣接する第二の成膜領域を前記有効領域と対面させる移動工程と、
前記放出口から薄膜材料蒸気を放出させ、前記成膜対象物の表面のうち前記有効領域と対面する前記第二の成膜領域に薄膜を形成する第二の成膜工程と、
を有する成膜方法。
【請求項6】
前記第一、第二の成膜工程では、前記マスクと前記成膜対象物とに対し、前記放出装置を、前記有効領域の前記長さ方向に相対的に移動させる請求項5記載の成膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−40355(P2013−40355A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175839(P2011−175839)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】