説明

成膜装置

【課題】従来とは異なった方法で、膜厚にばらつきが無くかつ所望の膜厚の膜を形成することが可能な成膜装置を提供する。
【解決手段】基板S上に配置された液滴Loに照射光を照射し、液滴Loの発光させるようにした。そして、発光する光(蛍光或いは燐光等)の発光強度に基づいて液滴Loの吐出量を測定するようにした。測定された光の発光強度が予め設定された値未満である場合、その液滴配置領域Pを吐出不良であると判断し、その液滴配置領域Pに対して、再度使用した液滴吐出ヘッド21の吐出ノズルNを使用して液滴Loを追加吐出するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」という)素子を用いた有機ELパネルが、軽量、高輝度、高視野角、高コントラスト比で他の表示装置より優れているとして注目されている。こうした有機ELパネルを用いた有機EL表示装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の有機EL表示装置の製造方法においては、EL材料を所定の溶媒に分散または溶解させて液滴化(インク化)し、その液滴を複数のノズルを備えた吐出ヘッドの各ノズルから吐出することで、基板上に液状パターンを形成し、その後、液状パターン中の溶媒を除去してEL材料からなる機能膜を形成するようにした、所謂液滴吐出法がある。この液滴吐出法では、必要な量のEL材料を溶媒に分散または溶解させて使用するので、蒸着法やスパッタ法に比べてEL材料の利用効率を向上させることができるという利点がある。
【特許文献1】特開2002−222695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、液滴吐出法では、形成される機能膜の膜厚にばらつきが生じてしまうことがある。機能膜の膜厚(発光層の膜厚)は、発光輝度に直接関係するので、機能膜の膜厚にばらつきがあると、輝度ムラといった問題が生じてしまう。この主な原因としては、前記吐出ヘッドの各ノズルの形状ばらつきやノズルの濡れの状態等に起因した、前記液滴の吐出量のばらつきが考えられる。
【0005】
そこで、各ノズルから吐出された液滴量を測定し、その吐出量に基づいて、各ノズル毎に設けられた、液滴の吐出を駆動制御する駆動制御機構をフィードバック制御することで、ノズル毎に液滴の吐出量を補正するものがある。具体的には、特定のノズルから前記液滴を吐出させて、その飛翔時の様子をカメラで撮影する。そして、その撮影結果から、前記液滴の大きさや速度を算出して前記液滴の吐出量を算出する方法が知られている。また、特定のノズルから前記液滴を複数回吐出させて、その液滴の重量を測定し、その測定値を吐出回数で割り算して前記液滴の平均吐出量を算出する方法が知られている。しかし、上記各ノズルからの液滴量の測定方法では、何れも、正確に液滴量の吐出量を測定できなかった。また、測定装置が複雑で、測定に時間がかかり、吐出装置を短時間で調整することが難しかった。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、従来とは異なった方法で、膜厚にばらつきが無くかつ所望の膜厚の膜を形成することが可能な成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の成膜装置は、機能性材料を溶媒に溶解または分散させた液滴を吐出する吐出用ノズルを有したノズルヘッドを備え、前記液滴を前記吐出用ノズルから吐出して、基板上に形成された液滴配置領域に前記液滴を配置し、前記液滴配置領域に前記機能性材料からなる膜を形成する成膜装置において、前記基板上に配置された液滴に対して所定の波長領域の光を照射する光照射手段と、前記基板上に配置された液滴から発せられる特定波長領
域の光を測定する光測定手段と、前記光測定手段によって測定された前記液滴から発せられる特定波長領域の光に基づいて前記液滴配置領域内に配置された液滴の液滴量を算出し、その算出された液滴の液滴量が予め設定された液滴量に達しているか否かを判断する算出判断手段と、前記算出判断手段によって前記所定領域に配置された前記液滴の液滴量が予め設定された液滴量に達していないと判断された場合、前記吐出用ノズルから前記液滴を前記液滴配置領域に吐出させるための制御信号を生成する制御回路とを備えた。
【0008】
これによれば、液滴に含まれる溶媒或いは機能性材料中に、蛍光或いは燐光等を発する性質の物質が含まれる場合、その物質を励起する波長領域の光を照射することでその液滴は発光する。液滴から発せられる蛍光或いは燐光等の発光強度は、液滴中に含まれる機能性材料の量に依存するため、蛍光或いは燐光等の波長領域に相当する所定の波長領域の発光を測定することで液滴中の機能性材料の量が分かる。液滴量が予め設定された量に比べて少ない場合、その液滴を吐出したノズルヘッドを使用して再度その所定領域に液滴を吐出することで、所定領域中の液滴の液滴量を適切な量にまで補正することができる。
【0009】
本発明の成膜装置は、第1の吐出用ノズルを有した第1のノズルヘッドを備え、機能性材料を溶媒に溶解または分散させた液滴を前記第1のノズルヘッドの前記第1の吐出用ノズルから吐出して基板上に前記液滴を配置させて前記基板上に膜パターンを形成する成膜装置において、前記基板上の所定領域に配置された液滴に対して所定の波長領域の光を照射する光照射手段と、前記基板上に配置された液滴から発せられる特定波長領域の光を測定する光測定手段と、前記光測定手段によって測定された前記液滴から発せられる特定波長領域の光に基づいて前記基板上に配置された液滴の液滴量を算出し、その算出された液滴の液滴量が予め設定された液滴量に達しているか否かを判断する算出判断手段と、前記算出判断手段によって前記所定領域に配置された前記液滴の液滴量が予め設定された液滴量に達していないと判断された場合、前記液滴を前記所定領域に吐出する第2の吐出用ノズルを備えた第2のノズルヘッドとを備えた。
【0010】
これによれば、液滴に含まれる溶媒或いは機能性材料中に、蛍光或いは燐光等を発する性質の物質が含まれる場合、その物質を励起する波長領域の光を照射することでその液滴は発光する。液滴から発せられる蛍光或いは燐光等の発光強度は、液滴中に含まれる機能性材料の量に依存するため、蛍光或いは燐光等の波長領域に相当する所定の波長領域の発光を測定することで液滴中の機能性材料の量が分かる。液滴量が予め設定された量に比べて少ない場合、第2のノズルヘッドを使用して再度その所定領域に液滴を吐出することで、所定領域中の液滴の液滴量を適切な量にまで補正することができる。
【0011】
また、第1のノズルヘッドのノズルが液滴の吐出が不可能である場合であっても、第2のノズルヘッドを使用して液滴を吐出するので、所定領域上に所望の液滴量の液滴を確実に配置させることができる。
【0012】
この成膜装置において、前記第2のノズルヘッドの第2の吐出用ノズルは、前記第1のノズルヘッドの第1の吐出用ノズルから吐出される液滴量に比べて少ない量の液滴量の液滴を吐出してもよい。
【0013】
これによれば、第2のノズルヘッドから吐出される液滴の吐出量を細かく制御することができるので、所定領域に配置される液滴をより正確に所望の量にまですることができる。
【0014】
この成膜装置において、前記第2のノズルヘッドは、前記第1のノズルヘッドと同じキャリッジに搭載されていてもよい。
これによれば、第1のノズルヘッドを使用して液滴を吐出した後に、直ちに第2のノズ
ルヘッドを使用することができる。この結果、短時間で吐出量を所望の量にすることができる。
【0015】
この成膜装置において、前記光測定手段は、前記基板上に配置された前記液滴から発せられる特定波長領域の発光の画像を撮影するようにしてもよい。
これによれば、基板上に配置された液滴は、2次元状の広がりを持っている。このため、特定の位置の発光強度のみを測定しても、液滴量を正確に決定することは難しい。また、複数の点の発光強度を個別に測定すると、測定時間が長くなる。液滴全体の発光の画像を撮影し、その画像データを処理することで液滴量を算出すれば、短時間で効率的に液滴量の測定を行うことができる。
【0016】
この成膜装置において、前記算出判断手段は、前記液滴が配置された領域の発光のピーク強度に基づいて前記ノズルから吐出された液滴の液滴量を算出してもよい。
これによれば、配置された液滴の大きさ、形状がほぼ一定である場合、基板上での液滴の最大の高さは液滴量に依存した量となる。蛍光或いは燐光等による発光の強度は、基板上での液滴の高さに依存するため、ピーク強度を測定することで、液滴の最大高さを求めることができる。従ってその高さより液滴量を求めることができる。このように発光のピーク強度を用いることにより、簡単な計算で液滴量を求めることができる。
【0017】
この成膜装置において、前記算出判断手段は、前記基板上に配置された液滴から発せられた光の信号強度を前記液滴が配置した面積に渡って積算することで前記液滴の液滴量を算出してもよい。
【0018】
これによれば、蛍光或いは燐光による発光の強度は、基板上での液滴の高さに依存するため、ある位置での発光強度はその位置での液滴の高さに依存した量となる。液滴を撮像した画像で、液滴は配置された領域を複数の微小領域、例えば画素毎に分割し、それぞれの平均の発光強度を求める。求められた平均の発光強度からその微小領域の液滴の基板からの高さを求めることができる。各微小領域の面積と、それぞれの高さを掛け合わせ、それらの値を積算することで液滴量を求めることができる。液滴の存在する領域全体で積算することにより、液滴の形状のばらつきが大きい場合でも高い精度で液滴量を求めることができる。
【0019】
この成膜装置において、前記溶媒は、蛍光性を有する有機溶媒を含んでもよい。
これによれば、シクロヘキシルベンゼン、トリメチルベンゼン、キシレン等の有機溶媒には、所定の波長領域の光を照射することで蛍光を発光するものが多い。液滴吐出法に用いられる液状組成物は、溶媒に対する溶質の量は0.5%程度から数%であり、そのほとんどが溶媒である。配置される液滴中での組成比の高い溶媒の蛍光による発光を測定することで、S/Nの高い測定を行うことができる。また、機能性材料が、蛍光或いは燐光等を発光する性質を有していない場合であっても、液滴の測定を行うことができる。
【0020】
この成膜装置において、前記液滴に照射する光は、波長350nm〜450nmの光であってもよい。
これによれば、液滴吐出法に使用される有機溶媒の多くは350nm以下の波長の光を殆ど透過しないものが多い。このため、350nm以下の波長の光を照射した場合、その殆どが液滴の表面付近で吸収されてしまうため、蛍光を発したとしても液滴の表面付近の組成物しか発光に寄与しない。このため、発光からは基板上からの液滴の高さに関する情報を得ることができない。照射する光として、350nm〜450nmの波長の光を用いることで、溶媒に吸収よる吸収の影響を抑えることができる。450nm以上の波長の光を照射した場合では、強い強度の蛍光や燐光等による発光を得ることが難しい。したがって、照射する光として350nm〜450nm波長の光を用いることで液滴量の測定に有
効な発光を得ながら、照射する光を液滴の底の領域まで届かせることができる。このため、S/N比の高く、精度の高い液滴量の測定を行うことができる。
【0021】
この成膜装置において、前記光照射手段は、前記所定の波長領域の光を、前記基板の面に対して45°〜70°の角度で照射し、前記光測定手段は、前記基板の面に対して垂直な方向に出射される光を測定するようにしてもよい。
【0022】
これによれば、液滴に照射する光を基板面に対して70°以下とし、基板面に対して垂直な方向に出射される光を測定することで、液滴による反射光或いは散乱光の影響を抑えながら測定を行うことができる。これにより測定する光の信号のS/N比が向上し、液滴量の測定精度を向上することができる。また、液滴に照射する光を基板面に対し45°以上とすることで、効率良く液滴内部まで照射する光を入射させることができる。従って、高い強度の発光を得ることができる。
【0023】
この成膜装置において、前記光照射手段は、前記液滴に所定の波長領域の光を照射する光源に発光ダイオードを用いてもよい。
これによれば、発光ダイオードは、簡単な構成でありながら比較的狭い波長領域の光を、高い輝度で照射することができる。このため、測定の精度を低下させることなく、測定系とくに照明系をコンパクトに構成することができる。更には高速で点灯、消灯することができるため、光を照射終了後、一定時間後に測定を行う場合に容易に対応することができる。
【0024】
この成膜装置において、前記機能性材料が発光材料、電荷輸送材料を含んでもよい。
これによれば、液滴吐出法で、発光材料や電荷輸送材料を用いたものの場合、安定して液滴を配置することが難しい。特に液低吐出法を用いる場合には、吐出が不安定となり易く、吐出量のばらつきが発生し易い。本発明は、この様なばらつきを即座に検出し、それによる不良の発生を防止しするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る成膜装置について各図に従って説明する。
図1は、本実施形態に係る成膜装置の概略構成を示す斜視図であり、図2は、成膜装置の側面図である。本実施形態の成膜装置は、有機エレクトロルミネッセンス素子の機能層(発光層)を所謂液滴吐出法(インクジェット法)によって形成する際に使用されるものであって、その機能層(発光層)を構成する機能材料を含む液状組成物を基板上に吐出することによって該基板上にその吐出量に応じた膜厚の発光層を形成するための成膜装置である。
【0026】
図1に示すように、成膜装置10は、直方体形状の基台11を備えている。本実施形態では、説明の便宜上、基台11の長手方向を図1中Y矢印方向に、同Y矢印方向と直交する同基台11の短手方向を図1中X矢印方向に合わせてある。
【0027】
基台11の上面11aには、Y矢印方向に延びる一対の案内凹溝12が同Y矢印方向全幅に渡って形成されている。その基台11の上側には、図示しない直動機構を備えたステージ14が取付けられている。このステージ14は、該ステージ14内部に内蔵された駆動装置D1(図4参照)によって案内凹溝12に沿って移動制御されるようになっている。このステージ14の駆動装置D1は、公知の直動機構であって、例えば案内凹溝12に沿ってY矢印方向に延びるネジ軸(駆動軸)と、同ネジ軸と螺合するボールナットを備えたネジ式直動機構を備えている。そして、そのネジ軸がステップモータよりなるY軸モータに連結され、所定のステップ数に相対する駆動信号がY軸モータに入力されると、Y軸
モータが正転又は逆転して、ステージ14が同ステップ数に相当する分だけ、Y矢印方向に沿って所定の速度で往動又は復動する(Y矢印方向に移動する)ようになっている。尚、本実施形態では、ステージ14が案内凹溝12(基台11)の最も手前側に配置する位置(図1における実線位置)を往動位置として、同案内凹溝12(基台11)の最も奥側に配置する位置(図1における2点鎖線位置)を復動位置とする。 ステージ14の上面には、図示しない吸引式の基板チャック機構を備えた載置面14aが形成されている。この載置面14a上に基板Sを載置し前記基板チャック機構を作動させることによって、基板Sが載置面14a上に位置決め固定される。尚、基板Sは、たとえばガラス基板であって、その図3中Z矢印方向側の面(上面)側にマトリクス状に撥液処理が施された複数の液滴配置領域Pが配置形成されている。
【0028】
基台11のX矢印方向両側には、一対の支持アーム15a,15bが立設され、その支持アーム15a,15bには、X矢印方向に延びる案内部材16が架設されている。
案内部材16には、収容タンク17が配設されている。収容タンク17には、液状組成物Lが収納されている。液状組成物Lは、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層を作成するのに一般的に用いられる機能性材料を溶媒中に溶解または分散してなる液状体である。具体的には、本実施形態では、機能性材料としてポリフルオレン系高分子誘導体を、溶媒としてトリメチルベンゼンを用いたものである。尚、ポリフルオレン系高分子誘導体は、400nm〜450nmの波長領域の光を照射すると、特定波長(540nm〜600nm)の光を発する性質を有した有機材料である。
【0029】
また、案内部材16の上側には、制御回路としての制御回路部18が配設されている。制御回路部18は、メモリ及びCPUを備え、成膜装置10全体の動作を統括制御するための各種演算処理を行うものである。
【0030】
一方、案内部材16の下側には、X矢印方向に延びる上下一対の案内レール19がX矢印方向全幅に渡って設けられている。案内レール19には、キャリッジプレートCPがX矢印方向及び反X矢印方向に往復移動可能となるように取付けられている。このキャリッジプレートCPの移動は、該キャリッジプレートCPの内部に内蔵された駆動装置D2(図4参照)によって駆動制御されるようになっている。尚、このキャリッジプレートCPの駆動装置D2は、公知の直動機構であって、例えば案内レール19に沿ってX矢印方向に延びるネジ軸(駆動軸)と同ネジ軸と螺合するボールナットを備えたネジ式直動機構を備えている。そして、そのネジ軸がステップモータよりなるX軸モータに連結され、所定のステップ数に相対する駆動信号がX軸モータに入力されると、X軸モータが正転又は逆転して、キャリッジプレートCPが同ステップ数に相当する分だけX矢印方向に沿って往動又は復動する。
【0031】
図2に示すように、キャリッジプレートCPは、ノズルヘッドとしての液滴吐出ヘッド21、光測定手段としての撮像装置22、光照射手段としての照明装置23を備えている。そして、各液滴吐出ヘッド21、撮像装置22、照明装置23は、キャリッジプレートCPの移動に伴って、基板Sに対してX矢印方向及び反X矢印方向に沿って相対移動する。
【0032】
液滴吐出ヘッド21は公知の液滴吐出ヘッドであって、詳しくは、図3に示すように、枠体24Aと、収容ケース24Bと、枠体24Aと収容ケース24Bとに挟まれて固定された振動板25とを備えるとともに、枠体24Aの図3中反Z矢印方向側、即ち、ステージ14側の面(下面)には、吐出用ノズルとしてのノズルNを有したノズルプレート26を備えている。さらに、液滴吐出ヘッド21は、収容ケース24Bに収容支持された圧電素子(ピエゾ素子)27を備えている。
【0033】
振動板25は、例えば、厚さが約2μmからなるポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルムであって、Z矢印方向及び反Z矢印方向(上下方向)に振動可能に貼り付けられている。また、枠体24Aは、収容タンク17(図1参照)と図示しないチューブを介して連結されている。さらに、枠体24Aによって液状組成物Lを保持する保持室28が形成されている。保持室28は、前記チューブを介して供給される液状組成物Lを一時的に保持するためのものである。また、圧電素子(ピエゾ素子)27は前記制御回路部18によってその駆動が制御されるようになっている。
【0034】
そして、圧電素子(ピエゾ素子)27に、制御回路部18にて生成された駆動電圧が供給されて駆動すると、それまで伸びていた圧電素子(ピエゾ素子)27が縮んでもとの状態に戻るように歪み、それに伴って、振動板25が変形する。すると、保持室28に保持されていた液状組成物LがノズルNを通過して粒状に形成された液滴Loとして吐出される。本実施形態では、1回の吐出動作で、3ピコリットルの液滴量の液滴Loが吐出されるように圧電素子(ピエゾ素子)27に供給される駆動電圧が予め調整されている。
【0035】
撮像装置22は、たとえば、複数の画素を備えた公知のCCDカメラであって、光学系31及びバンドパスフィルタ32を備えている。光学系31は、たとえば数十倍から数百倍程度の適当な倍率を有した光学系である。この光学系31によって基板S上の所定の領域(液滴配置領域)P上に配置された液滴Loが適当な大きさで撮影される。バンドパスフィルタ32は、特定波長の画像のみを撮影するフィルタであって、本実施形態では、多層膜による干渉フィルタで構成されている。また、撮像装置22は、撮影した光学画像を電気信号に変換しその電気信号を前記制御回路部18に供給するようになっている。
【0036】
照明装置23は、光源33、光学系34及びバンドパスフィルタ35を備えている。光源33は、所定の強度で必要な波長領域の照射光Rを発生するものであって、前記制御回路部18によってその発光タイミングが制御されるようになっている。本実施形態の光源33は、発光ダイオードで構成されている。発光ダイオードは発光の制御が容易であり、照射光Rの照射のタイミングを制御する場合には有効である。尚、光源33としては、発光ダイオードの他に、ハロゲンランプ、放電灯、各種レーザ等を用いることが可能である。ハロゲンランプや放電灯は、発光の波長領域が広いため、バンドパスフィルタ35との組み合わせで照射光Rとして用いる光の波長領域にする必要がある。
【0037】
光学系34は、光源33から出射した照射光Rを基板S上に配置された液滴Loに均一に照射するためのものであって、本実施形態では、フライアイレンズや散乱板等を用いて構成されている。つまり、本実施形態では、照射光Rをほぼ平行な光にして、光学系34から基板S上の液滴Loまで距離が変わっても光量が変化しないようにしている。
【0038】
バンドパスフィルタ35は、基板S上に配置された液滴Loに特定波長の照射光Rを照射するためのものであって、本実施形態では、着色ガラスと多層膜干渉フィルタを組み合わせたものを使用することによって540nm〜580nmの波長領域の光を透過するようにしている。
【0039】
また、照明装置23は、光源33から出射した照射光Rを、基板Sの面(素子形成面)Saに対してθ=50°の角度で液滴Loに傾いて入射するように配置されている。このようにすることで、θ=50°未満の角度で入射させた場合に比べて、液滴Loに入射する照射光Rの量を多くすることができる。また、液滴Lo表面の凹凸による光の入射への影響を小さくすることができる。この結果、液滴Lo全体に均一に光を入射させることができる。さらに、θ=50°以上の角度で入射させた場合に比べて、液滴Loに浸透せず表面にて図3中Z矢印方向(垂直方向)に反射する反射光等を小さくすることができる。
【0040】
次に、成膜装置10の電気的構成について説明する。
図4は、液滴吐出ヘッド21、撮像装置22、照明装置23、ステージ14及びキャリッジプレートCPの制御系を示したものである。図4に示すように、液滴吐出ヘッド21、撮像装置22、照明装置23、ステージ14の駆動装置D1及びキャリッジプレートCPの駆動装置D2は、それぞれ前記制御回路部18に電気的に接続され、同制御回路部18にて生成される制御信号Q1〜Q5に従って各装置の駆動タイミングが統合的に制御されるようになっている。
【0041】
詳しくは、制御回路部18は、制御プログラム、算出判断プログラム及び補正プログラムを格納している。制御プログラムは、ステージ14の載置面14a上に基板Sが載置されたことを確認し基板チャック機構を作動させた後、ステージ14及びキャリッジプレートCPを移動させて、液滴吐出ヘッド21の吐出ノズルNを液滴配置領域Pに対向する位置に順次移動させるためのプログラムを含んでいる。また、制御プログラムは、圧電素子(ピエゾ素子)27に給電しノズルNから液滴Loを吐出させるためのプログラムを含んでいる。さらに、照明装置23の光源33を作動させて基板S上に配置した液滴Loに対して照射光Rを所定期間照射させるためのプログラムを含んでいる。さらにまた、制御プログラムは、撮像装置22を駆動させて基板S上に配置した液滴Loから発せられる特定波長領域(波長:540nm〜580nm)の画像(光)を撮影(測定)するためのプログラムを含んでいる。
【0042】
算出判断プログラムは、撮像装置22によって撮影(測定)された画像(光)に基づいて基板S上に配置された液滴Loの液滴量を算出するためのプログラムを含んでいる。また、算出判断プログラムは、その算出された液滴Loの液滴量が予め設定された液滴量に達しているか否かを判断するためのプログラムを含んでいる。
【0043】
補正プログラムは、前記算出判断プログラムによって算出された液滴Loの液滴量が予め設定された液滴量に達していない(吐出不良)と判断された場合、ステージ14及びキャリッジプレートCPを駆動し、液滴吐出ヘッド21の吐出ノズルNをその吐出不良の液滴配置領域Pに対向する位置に移動させて、再度ノズルNから液滴Loを追加吐出させるためのプログラムである。
【0044】
図5は、キャリッジプレートCPの移動のタイミング、液滴吐出ヘッド21の液滴吐出のタイミング、照明装置23の光源33の点灯/消灯のタイミング及び撮像装置22の撮影のタイミングの関係を示した図である。
【0045】
図5に示すように、制御回路部18は、制御プログラムに従ってステージ14の載置面14a上に基板Sが載置されたことを確認すると、光源33を点灯させる旨の光源制御信号Q4を生成し照明装置23へ出力する。この結果、照明装置23から照射光Rが基板S上の所定の液滴配置領域Pに向かって照射される。
【0046】
続いて、制御回路部18は、制御プログラムに従って液滴吐出ヘッド制御信号Q3を生成し液滴吐出ヘッド21へ出力する。この結果、ノズルNから液滴Loが基板S上の液滴配置領域Pに吐出される。本実施形態では、連続して6回液滴Loが同一の液滴配置領域Pに対して吐出されるようになっている。つまり、本実施形態の液滴吐出ヘッド21は、1回の液滴Loの吐出量が3ピコリットルとなるように設定されているので、3ピコリットル×6回=18ピコリットルの液滴Loが一つの液滴配置領域Pに対して配置されるように設定されている。また、このとき、照射光Rは液滴Loが配置される液滴配置領域Pに予め照射されているので、ノズルNから吐出された液滴Loは基板Sに配置した時点から照射光Rに照射され始める。
【0047】
また、制御回路部18は、液滴吐出ヘッド制御信号Q2を液滴吐出ヘッド21へ出力した時点を、液滴Loが基板S上に配置された時刻(吐出開始時刻)として認識し、吐出開始時刻を基準としたそれ以降の経過時間t2をカウントし始める。
【0048】
その後、制御回路部18は、制御プログラムに従って光源33を消灯させる旨の光源制御信号Q4を生成し、照明装置23に出力する。この結果、液滴Loに対する照射光Rの照射が終了する。すると、液滴Loは、照射された照射光Rを吸収したことにより、特定波長(540nm〜600nm)の光を発する。制御回路部18は、光源33を消灯させる旨の光源制御信号Q4を照明装置23へ出力した時刻を、液滴Loが発光を開始した時刻(発光開始時刻)として認識し、発光開始時刻を基準としたそれ以降の時間t1をカウントし始める。
【0049】
続いて、制御回路部18は、吐出開始時刻を基準とした経過時間t2が予め設定された値に到達したと判断すると、制御プログラムに従って、撮像装置制御信号Q5を生成し撮像装置22へ出力する。この結果、撮像装置22が駆動され撮影が実行される。このとき、撮像装置22は、液滴Loから発せられる光のうち、基板Sの面に対して垂直な方向に出射される光を測定する。このような制御を行うことにより、吐出開始時刻を基準に経過時間t2が常に予め定めた値になったときに、撮像装置制御信号Q5を出力するため、撮影が行われるまでの間に蒸発する液滴Lo中の溶媒成分の量を一定に保つことが可能となる。この結果、液滴Loから溶媒が蒸発することによる測定への影響を低減することができる。
【0050】
次に、制御回路部18は、算出判断プログラムに従って撮像装置22によって撮影(測定)された画像(光)から液滴Loの液滴量を算出する。詳しくは、算出判断プログラムに従って撮像装置22より得た電気信号より、まず液滴Loが配置した領域を決定する。これには、一般的な画像処理での輪郭検出の手順が有効である。つまり、液滴Loが配置されている領域の端では急激に測定される電気信号の強度が高くなるため、隣接する無発光領域の電気信号の信号強度とは大きな差が生じる。このため、この差を計算し、一定値以上の値を有する箇所を求めることで、輪郭を検出することができる。そして、その輪郭に相当する撮像の内側に相当する領域を、液滴Loが配置されている領域と認識する。続いて、液滴Loが配置されている領域内の電気信号の強度を、各画素毎に比較していくことにより、その最大値(ピーク強度)を求める。この電気信号のピーク強度と、予め実験により求めておいた発光のピーク強度から液滴量を換算し、液滴配置領域Pに配置されている液滴Loの液滴量を求める。
【0051】
次に、その算出された液滴Loの液滴量が予め設定された液滴量に達しているか否かを判断する。つまり、本実施形態では、1回で吐出される液滴量は3ピコリットルであり、1つの液滴配置領域P上に対して6回吐出されることで合計18ピコリットルの液滴量が配置されることになっている。そこで、算出された液滴Loの液滴量が15ピコリットル未満であると判断された場合、吐出不良と判断され、一方、算出された液滴Loの液滴量が15ピコリットル以上であると判断された場合、吐出良好と判断されるようになっている。
【0052】
続いて、制御回路部18は、算出された液滴Loの液滴量が吐出不良であると判断された場合、補正プログラムに従って、液滴吐出ヘッド21の吐出ノズルNをその吐出不良の液滴配置領域Pに対向する位置に移動させる旨の制御信号Q2を生成し、キャリッジプレートCPの駆動装置D2へ出力する。この結果、キャリッジプレートCPが駆動しその吐出ノズルNが、その吐出不良の液滴配置領域Pに対向する位置に移動する。そして、制御回路部18は、制御プログラムに従って液滴吐出ヘッド制御信号Q3を生成し液滴吐出ヘッド21へ出力し、ノズルNから液滴Loが基板S上の液滴配置領域Pに追加吐出される
。このとき、算出判断プログラムに従って算出された液滴量が3ピコリットル以上6ピコリットル未満である場合は4回、6ピコリットル以上9ピコリットル未満である場合は3回、9ピコリットル以上12ピコリットル未満である場合は2回、12ピコリットル以上15ピコリットル未満である場合は1回だけ液滴Loをその液滴配置領域Pに対して吐出するようになっている。この結果、算出された液滴量が3ピコリットル以上6ピコリットル未満である液滴配置領域Pには、3ピコリットル×4回=12ピコリットルの液滴Loが追加されることとなる。
【0053】
また、算出された液滴量が6ピコリットル以上9ピコリットル未満である液滴配置領域Pには、3ピコリットル×3回=9ピコリットルの液滴Loが追加されることとなる。従って、この液滴配置領域Pには15ピコリットル以上18ピコリットル未満の液滴Loが配置されることとなる。さらに、算出された液滴量が9ピコリットル以上12ピコリットル未満である液滴配置領域Pには、3ピコリットル×2回=6ピコリットルの液滴Loが追加されることとなる。さらにまた、算出された液滴量が12ピコリットル以上15ピコリットル未満である液滴配置領域Pには、3ピコリットル×1回=3ピコリットルの液滴Loが追加されることとなる。
【0054】
一方、算出された液滴Loの液滴量が吐出良好であると判断された場合、制御回路部18は、制御プログラムに従って、光源33を点灯させる旨の光源制御信号Q4を生成し照明装置23へ出力する。その後、続いて、液滴吐出ヘッド21の吐出ノズルNを新たな液滴配置領域Pに対向する位置に移動させる旨の液滴吐出ヘッド制御信号Q3を生成し、キャリッジプレートCPの駆動装置D2へ出力する。この結果、キャリッジプレートCPが駆動しその吐出ノズルNが、その新たな液滴配置領域Pに対向する位置に移動する。そして、その新たな液滴配置領域Pに対して照射光Rが照射された状態で、液滴Loが吐出される。
【0055】
上記したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)本実施形態によれば、基板S上に配置された液滴Loに照射光Rを照射し、液滴Loの発光させるようにした。このとき、発光する光(蛍光或いは燐光等)の発光強度は、液滴Lo中に含まれる機能性材料の量に依存するので、蛍光或いは燐光等の波長領域に相当する所定の波長領域の発光を測定することで液滴Lo中の機能性材料の量を測定することができる。
【0056】
(2)本実施形態によれば、液滴配置領域P上に配置された液滴Loから発せられる光の発光強度が予め設定された値未満である場合、その液滴配置領域Pを吐出不良であると判断し、その液滴配置領域Pに対して、再度使用した液滴吐出ヘッド21の吐出ノズルNを使用して液滴Loを追加吐出するようにした。従って、各液滴配置領域P毎によってその液滴Loの吐出量にはムラがないので、各液滴配置領域P間で膜厚が均一な膜を形成することができる。
【0057】
(3)本実施形態では、液滴吐出ヘッド21を使用して液滴Loを吐出した後、その吐出量が予め設定された値未満である場合、同じ液滴吐出ヘッド21を再度使用して、液滴Loを追加吐出するようにした。従って、キャリッジプレートCPを小さくすることができるにで、成膜装置10全体をコンパクトにすることができる。
【0058】
(4)本実施形態によれば、撮像装置22によって撮影した液滴Loの発光のピーク強度により液滴Loの液滴量を算出するようにした。この結果、簡単な計算で吐出不良量である液滴配置領域Pを見出すことができる。
【0059】
(5)本実施形態によれば、液状組成物Lを、機能性材料を溶媒に溶解または分散させ
たものとした。従って、液滴吐出ヘッド21から液状組成物Lを吐出させてその吐出量に応じた膜厚の膜を形成するようにした、所謂液滴吐出法によって膜を形成する場合、その液滴Loの吐出量を測定することができることから、形成する膜の膜厚や膜質の均一性を向上させることができる。
【0060】
(6)本実施形態によれば、液滴Loを構成する溶媒は蛍光性を有する有機溶媒である。従って、溶媒に対する溶質の量は0.5%程度から数%であり、そのほとんどが溶媒である。この結果、液滴Lo中での組成比の高い溶媒の蛍光による発光を測定することで、S/Nの高い測定を行うことができる。また、液滴Loを構成する機能性材料が、蛍光或いは燐光等を発光する性質を有していない場合であっても、液滴Loの液滴量の測定を行うことができる。
【0061】
(7)本実施形態によれば、照射光Rの波長を350nm〜450nmとした。従って、液滴Loの底の領域まで液滴Lo内部に均一に照射光Rを照射することができるので、液滴Loからの発光を液滴Lo全体からの発光とすることができる。この結果、S/N比の高く、精度の高い液滴Loの液滴量の測定を行うことができる。
【0062】
(8)本実施形態によれば、照射光Rが基板Sの面(素子形成面)Saに対して50°の角度で入射するように照明装置23をキャリッジプレートCPに搭載した。そして、基板Sの面Sa対して垂直な方向に出射される光を撮像装置22によって撮影するようにした。従って、液滴Lo表面での反射光或いは散乱光の影響を抑えられる。この結果、測定する画像(光)のS/N比が向上し、液滴Loの液滴量の測定精度を向上させることができる。また、照射光Rを液滴Loの内部まで効率良く照射させることができるので、高い強度の発光を得ることができる。
【0063】
(9)本実施形態によれば、照射光Rの光源13Aを発光ダイオードとした。従って、発光ダイオードは、簡単な構成でありながら比較的狭い波長領域の光を、高い輝度で照射することができるため、測定の精度を低下させることなく、照明装置13をコンパクトに構成することができる。更には、高速で点灯、消灯することができるため、照射光Rを照射終了後、一定時間後に測定を行う場合に容易に対応することができる。
【0064】
(10)本実施形態によれば、液滴Lo(液状組成物L)を構成する機能性材料は、発光材料、電荷輸送材料を含んでいる。従って、一般に、発光材料、電荷輸送材料を含んでなる液滴Lo(液状組成物)は、吐出が不安定となり易く、吐出量のばらつきが発生し易いが、この様なばらつきを即座に検出し、それによる不良の発生を防止することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る成膜装置について図6〜図8に従って説明する。本実施形態の成膜装置の構成は、そのキャリッジプレートCPに2つの液滴吐出ヘッドを設けている他は、上記第1実施形態に係る成膜装置と同じである。従って、上記第1実施形態に係る成膜装置10と同じ部材については、同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0065】
図6に示すように、本実施形態に係るキャリッジプレートCPには、第1のノズルヘッドとしての液滴吐出ヘッド21、撮像装置22、照明装置23に加えて第2のノズルヘッドとしての第2の液滴吐出ヘッド41が液滴吐出ヘッド21に隣接して図6中反Y矢印方向側に設けられている。以下、本実施形態においては、説明の便宜上、液滴吐出ヘッド21を第2の液滴吐出ヘッド41と区別するために、「第1の液滴吐出ヘッド21」と記載する。
【0066】
第2の液滴吐出ヘッド41は、第1の液滴吐出ヘッド21と同じ構造である。つまり、第2の液滴吐出ヘッド41は、枠体42Aと、収容ケース42Bと、枠体42Aと収容ケース42Bとで挟まれて固定された振動板43とを備えるとともに、枠体42Aの図3中反Z矢印方向側、即ち、ステージ14側の面(下面)に第2の吐出用ノズルとしてのノズルNoを有したノズルプレート44を備えている。さらに、第2の液滴吐出ヘッド41は、収容ケース42Bに収容支持された圧電素子(ピエゾ素子)45を備えている。
【0067】
また、枠体42Aによって液状組成物Lを保持する保持室48が形成されている。保持室48は、前記チューブを介して供給される液状組成物Lを一時的に保持するためのものである。また、圧電素子(ピエゾ素子)45は前記制御回路部18によってその駆動が制御されるようになっている。
【0068】
第2の液滴吐出ヘッド41は、第1の液滴吐出ヘッド21から吐出される液滴Loの吐出量に比べて少ない量の液滴Loが吐出されるようになっている。第1の液滴吐出ヘッド21は、3ピコリットルの液滴Loが吐出されるように設定されているので、第2の液滴吐出ヘッド41からは3ピコリットル未満の液滴量の液滴Loが吐出されるように設定されている。本実施形態では1回の吐出動作で1ピコリットルの液滴量の液滴Loが吐出されるように圧電素子(ピエゾ素子)45に供給される駆動電圧が予め調整されている。
【0069】
次に、本実施形態に係る成膜装置10の電気的構成について説明する。
図7は、第1の液滴吐出ヘッド21、第2の液滴吐出ヘッド41、撮像装置22、照明装置23、ステージ14及びキャリッジプレートCPの制御系を示したものである。図7に示すように、第1及び第2の液滴吐出ヘッド21,41、撮像装置22、照明装置23、ステージ14の駆動装置D1及びキャリッジプレートCPの駆動装置D2は、それぞれ前記制御回路部18に電気的に接続され、同制御回路部18にて生成される制御信号Q1〜Q6に従って各装置の駆動タイミングが統合的に制御されるようになっている。
【0070】
制御回路部18は、制御プログラム、算出判断プログラム及び補正プログラムを格納している。制御プログラム及び算出判断プログラムは、上記第1実施形態と同じである。本実施形態の補正プログラムは、算出判断プログラムによって算出された液滴Loの液滴量が予め設定された値に達していないと判断された場合、吐出不良であると認識する。そして、ステージ14及びキャリッジプレートCPを駆動し、第2の液滴吐出ヘッド41の吐出ノズルNoをその吐出不良の液滴配置領域Pに対向する位置に移動させて、同吐出ノズルNoから液滴Loを追加吐出させるためのプログラムである。
【0071】
図8は、本実施形態に係るキャリッジプレートCPの移動のタイミング、第1及び第2の液滴吐出ヘッド21,41の液滴吐出のタイミング、照明装置23の光源33の点灯/消灯のタイミング及び撮像装置22の撮影のタイミングの関係を示した図である。図8に示すように、制御回路部18は、上記第1実施形態と同様にして制御プログラムに従って光源33を点灯させる旨の光源制御信号Q4を出力した状態で、第1の液滴吐出ヘッド21を駆動させる旨の第1の液滴吐出ヘッド制御信号Q2を出力しそのノズルNから液滴Loを、連続して6回同一の液滴配置領域Pに対して吐出させる。そして、制御回路部18は、吐出開始時刻を基準とした経過時間t2が予め設定された値に到達したと判断すると、制御プログラムに従って、撮像装置制御信号Q5を生成し撮像装置22を駆動させて撮影を実行する。そして、上記第1実施形態と同様にして、制御回路部18は、算出判断プログラムに従って撮像装置22によって撮影(測定)された画像(光)に基づいて液滴Loの液滴量を算出する。
【0072】
次に、制御回路部18は、算出された液滴Loの液滴量が吐出不良であると判断された場合、補正プログラムに従って、第2の液滴吐出ヘッド41の吐出ノズルNoをその吐出
不良の液滴配置領域Pに対向する位置に移動させる旨の第2の液滴吐出ヘッド制御信号Q6を生成し、キャリッジプレートCPの駆動装置D2へ出力する。この結果、キャリッジプレートCPが駆動しその吐出ノズルNoが、その吐出不良の液滴配置領域Pに対向する位置に移動する。そして、制御回路部18は、制御プログラムに従って液滴吐出ヘッド制御信号Q3を生成し第2の液滴吐出ヘッド41へ出力し、ノズルNoから液滴Loを基板S上の液滴配置領域Pに吐出する。このとき、算出判断プログラムに従って算出された液滴量が17ピコリットルの場合は1回、16ピコリットルの場合は2回、15ピコリットルの場合は3回、・・・、0ピコリットルの場合は18回その液滴配置領域Pに対して吐出すようになっている。この結果、吐出不良の液滴配置領域Pには、18ピコリットルの液滴Loが配置されることとなる。
【0073】
一方、算出された液滴Loの液滴量が吐出良好であると判断された場合(即ち、18ピコリットルであると判断された場合)、制御回路部18は、上記第1実施形態と同様に、制御プログラムに従って、光源33を点灯させる旨の光源制御信号Q4を生成し照明装置23へ出力する。その後、続いて、第1の液滴吐出ヘッド21の吐出ノズルNを新たな液滴配置領域Pに対向する位置に移動させる旨の制御信号Q1を生成し、キャリッジプレートCPの駆動装置D2へ出力する。
【0074】
上記したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)本実施形態によれば、第1の液滴吐出ヘッド21を使用して液滴Loを吐出した後、その吐出量が予め設定された量ではない場合、第2の液滴吐出ヘッド41を使用して、再度吐出不良の液滴配置領域Pに対して液滴Loを吐出するようにした。従って、第1の液滴吐出ヘッド21から液滴Loが吐出されない場合であっても、液滴配置領域Pに対して所望の量の液滴Loを配置させることができる。
【0075】
(2)本実施形態によれば、第1の液滴吐出ヘッド21の吐出ノズルNから吐出される液滴Loの吐出量を3ピコリットルとし、第2の液滴吐出ヘッド41の吐出ノズルNoから吐出される液滴Loの吐出量を1ピコリットルとした。従って、第2の液滴吐出ヘッド41の吐出回数を制御することで、液滴Loの吐出量を1ピコリットルずつ制御することができるので、液滴Loの吐出量をより正確に所望の量に補正することができる。
【0076】
(3)本実施形態によれば、第2の液滴吐出ヘッド41は、第1の液滴吐出ヘッド21と同じキャリッジプレートCPに搭載した。従って、第1の液滴吐出ヘッド21を使用して液滴Loを吐出した後に、直ちに、第2の液滴吐出ヘッド41を使用して吐出不良な液滴配置領域Pに対して液滴Loを追加吐出することができる。この結果、短時間で液滴Loの吐出量を均一にすることができる。
【0077】
尚、発明の実施形態は、上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように実施してもよい。
・上記第1及び第2実施形態では、液滴Loの液滴量を算出する方法として、液滴Loが配置されている領域内の電気信号の強度を比較して行くことにより、その最大値(ピーク強度)を求め、この発光信号のピーク強度と、予め実験により求めておいた発光のピーク強度から液滴量を換算して、液滴配置領域Pに配置されている液滴Loの液滴量を求めるようにした。本発明は、これに限定されるものではなく、以下のようにして求めてもよい。まず、上記第1及び第2実施形態と同様にして、液滴Loが配置されている領域を求める。これにより、液滴Loが存在する面積を見積もることができる。つぎに別途実験により求めておいた電気信号の強度と液滴の厚さ(液量)の関係より、液滴配置領域P内の各画素からの電気信号の強度を、液滴Loの厚さ(液量)に換算する。さらに、この各画素の液滴Loの厚さと、画素の面積に相当する値を掛け合わせ、その値を液滴Loが配置されている領域内の全ての画素に関して積算することにより、液滴配置領域Pに配置され
ている液滴Loの液滴量を求める。このようにすることにより、液滴配置領域Pに配置された液滴Loの表面状態が変化し易い場合であっても液滴Loの液滴量を正確に算出することができる。
【0078】
・上記第2実施形態では、第1の液滴吐出ヘッド21と第2の液滴吐出ヘッド41とを同じキャリッジプレートCPに搭載した1台の成膜装置であったが、本発明はこれに限定されない。第1の液滴吐出ヘッド21と第2の液滴吐出ヘッド41とが、それぞれ異なったキャリッジプレートに搭載されていてもよい。
【0079】
・上記第1及び第2実施形態では、照明装置23は、着色ガラスと多層膜干渉フィルタを組み合わせたバンドパスフィルタ35を備え、光源33から出射した光のうち540nm〜580nmの波長領域の光のみを照射光Rとして液滴Loに照射するようにした。本発明は、これに限定されるものではなく、たとえば、特に、光源33を各種レーザダイオード等といった波長領域の狭い光を出射するもので構成されている場合では、このバンドパスフィルタ35を省略することも可能である。
【0080】
・上記第1及び第2実施形態では、光源33を発光ダイオードで構成したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、ハロゲンランプや放電灯で光源33を構成してもよい。この場合、複数の多層の干渉フィルタを備えてそれらを切り替えるようにしたり、透過する波長領域を可変とするフィルタを用いたりすることで、異なる波長領域の光を照明に用いることができる。また、ハロゲンランプ等の点灯、消灯の制御が困難なものを用いる場合には、照射光Rを照射するタイミングを制御するためのシャッター機構を備えても良い。このようにすることで、液滴Loの配置から撮影までの精度の高いタイミングの制御が可能となり、測定精度の向上を図ることができる。
【0081】
・上記第1及び第2実施形態では、照明装置23は、着色ガラスと多層膜干渉フィルタを組み合わせたバンドパスフィルタ35を備えたが、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、回折格子の角度を変化させる機能を有するモノクロメータを用いてもよい。このようにすることで、照射光Rの波長領域を変えながら測定を行うことができるので、照射光Rとして適している波長領域を求めるのに有効である。
【0082】
・上記第1及び第2実施形態では、液滴Loに含まれる機能性材料として、緑色(540nm〜600nm)の発光を有するポリフルオレン系高分子誘導体を、溶媒としてトリメチルベンゼンを用いたものを使用したが、本発明はこれに限定されるものではない。たとえば、有機エレクトロルミネッセンス装置の発光層の材料として知られるポリパラフェニレンビニレン誘導体やポリフェニ誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素等を上げることができる。また、有機エレクトロルミネッセンス装置の正孔注入層の材料として知られるポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体、ポリエチレンスルフォン酸(PSS)を用いることもできる。さらに、カラーフィルタ等に用いられる各種染料や顔料を用いることも可能である。溶媒としては、シクロヘキシルベンゼン、ジハドロベンゾフラン、テトラメチルベンゼン、トルエン、キシレン等各種の有機溶媒をあげることができる。また、水、イソプロピルアルコール、ノルマルブタノール等の極性溶媒を用いることも可能である。
【0083】
・上記第1及び第2実施形態では、制御回路部18は、吐出開始時刻を基準に経過時間t2が常に予め定めた値になったときに、撮像装置制御信号Q5を出力するようにしたが、これを、発光開始時刻を基準に経過時間t1が常に予め定めた値になったときに、撮像装置制御信号Q5を出力するようにしてもよい。要は、照明装置23からの照射光Rの照射が終了した後に撮像装置22が撮影を開始すればよい。
【0084】
・上記第1及び第2実施形態では、制御回路部18を案内部材16上に配設したが、本発明は、この制御回路部18の配設位置に限定されるものではない。たとえば、案内部材16と独立して別途設けられた部材に制御回路部18を内蔵してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】成膜装置の全体斜視図。
【図2】成膜装置の側面図。
【図3】第1実施形態に係る液滴吐出ヘッド、撮影装置及び照射装置の構成を説明するための図。
【図4】第1実施形態に係る成膜装置の電気的構成図。
【図5】第1実施形態に係る成膜装置の動作を説明するためのタイミングチャート。
【図6】第2実施形態に係る液滴吐出ヘッド、撮影装置及び照射装置の構成を説明するための図。
【図7】第2実施形態に係る成膜装置の電気的構成図。
【図8】第2実施形態に係る成膜装置の動作を説明するためのタイミングチャート。
【符号の説明】
【0086】
CP…キャリッジとしてのキャリッジプレート、Lo…液滴、N…吐出用ノズルとしてのノズル吐出用ノズル及び第1の液滴吐出用ノズル、No…第2の吐出用ノズルとしてのノズル、P…液滴配置領域、Q3…制御信号としての液滴吐出ヘッド制御信号、Q6…制御信号としての第2の液滴吐出ヘッド制御信号、S…基板、10…成膜装置、18…算出判断手段及び制御回路としての制御回路部、21…ノズルヘッド及び第1のノズルヘッドとしての液滴吐出ヘッド、22…光測定手段としての撮像装置、23…光照射手段としての照明装置、41…第2のノズルヘッドとしての液滴吐出ヘッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性材料を溶媒に溶解または分散させた液滴を吐出する吐出用ノズルを有したノズルヘッドを備え、前記液滴を前記吐出用ノズルから吐出して、基板上に形成された液滴配置領域に前記液滴を配置し、前記液滴配置領域に前記機能性材料からなる膜を形成する成膜装置において、
前記基板上に配置された液滴に対して所定の波長領域の光を照射する光照射手段と、
前記基板上に配置された液滴から発せられる特定波長領域の光を測定する光測定手段と、
前記光測定手段によって測定された前記液滴から発せられる特定波長領域の光に基づいて前記液滴配置領域内に配置された液滴の液滴量を算出し、その算出された液滴の液滴量が予め設定された液滴量に達しているか否かを判断する算出判断手段と、
前記算出判断手段によって前記所定領域に配置された前記液滴の液滴量が予め設定された液滴量に達していないと判断された場合、前記吐出用ノズルから前記液滴を前記液滴配置領域に吐出させるための制御信号を生成する制御回路と
を備えたことを特徴する成膜装置。
【請求項2】
第1の吐出用ノズルを有した第1のノズルヘッドを備え、機能性材料を溶媒に溶解または分散させた液滴を前記第1のノズルヘッドの前記第1の吐出用ノズルから吐出して基板上に前記液滴を配置させて前記基板上に膜パターンを形成する成膜装置において、
前記基板上の所定領域に配置された液滴に対して所定の波長領域の光を照射する光照射手段と、
前記基板上に配置された液滴から発せられる特定波長領域の光を測定する光測定手段と、
前記光測定手段によって測定された前記液滴から発せられる特定波長領域の光に基づいて前記基板上に配置された液滴の液滴量を算出し、その算出された液滴の液滴量が予め設定された液滴量に達しているか否かを判断する算出判断手段と、
前記算出判断手段によって前記所定領域に配置された前記液滴の液滴量が予め設定された液滴量に達していないと判断された場合、前記液滴を前記所定領域に吐出する第2の吐出用ノズルを備えた第2のノズルヘッドと
を備えたことを特徴する成膜装置。
【請求項3】
請求項2に記載の成膜装置において、
前記第2のノズルヘッドの第2の吐出用ノズルは、前記第1のノズルヘッドの第1の吐出用ノズルから吐出される液滴量に比べて少ない量の液滴量の液滴を吐出することを特徴する成膜装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の成膜装置において、
前記第2のノズルヘッドは、前記第1のノズルヘッドと同じキャリッジに搭載されていることを特徴とする成膜装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の成膜装置において、
前記光測定手段は、前記基板上に配置された前記液滴から発せられる特定波長領域の発光の画像を撮影することを特徴とする成膜装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つに記載の成膜装置において、
前記算出判断手段は、前記液滴が配置された領域の発光のピーク強度に基づいて前記ノズルから吐出された液滴の液滴量を算出することを特徴とする成膜装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一つに記載の成膜装置において、
前記算出判断手段は、前記基板上に配置された液滴から発せられた光の信号強度を前記液滴が配置した面積に渡って積算することで前記液滴の液滴量を算出することを特徴とする成膜装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つに記載の成膜装置において、
前記溶媒は、蛍光性を有する有機溶媒を含むことを特徴とする成膜装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の成膜装置において、
前記液滴に照射する光は、波長350nm〜450nmの光であることを特徴とする成膜装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の成膜装置において、
前記光照射手段は、前記所定の波長領域の光を、前記基板の面に対して45°〜70°の角度で照射し、
前記光測定手段は、前記基板の面に対して垂直な方向に出射される光を測定することを特徴とする成膜装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の成膜装置において、
前記光照射手段は、前記液滴に所定の波長領域の光を照射する光源に発光ダイオードを用いることを特徴とする成膜装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の成膜装置において、
前記機能性材料が発光材料、電荷輸送材料を含むことを特徴とする成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−179880(P2007−179880A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−377158(P2005−377158)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】