成膜装置
【課題】第1反応ガスと第2反応ガスとの混合を抑制する分離ガスによって第1及び第2反応ガスが希釈されるのを低減できる成膜装置を提供する。
【解決手段】本成膜装置は、基板載置領域を一の面に含む回転テーブル;容器内の第1供給領域に配置され、一の面へ第1反応ガスを供給する第1反応ガス供給部;第2供給領域に配置され、一の面へ第2反応ガスを供給する第2反応ガス供給部;第1及び第2反応ガスを分離する分離ガスを吐出する分離ガス供給部と、分離ガス供給部からの分離ガスを第1及び第2の供給領域へ向けて供給する分離空間を形成する天井面とを含み、第1及び第2供給領域の間に配置される分離領域;第1及び第2供給領域に設けられる第1及び第2排気口;を備え、第1及び第2排気口の少なくとも一方が、対応する供給領域へ向かって分離領域から供給される分離ガスを、反応ガス供給部が延びる方向に沿った方向に導くように配置される。
【解決手段】本成膜装置は、基板載置領域を一の面に含む回転テーブル;容器内の第1供給領域に配置され、一の面へ第1反応ガスを供給する第1反応ガス供給部;第2供給領域に配置され、一の面へ第2反応ガスを供給する第2反応ガス供給部;第1及び第2反応ガスを分離する分離ガスを吐出する分離ガス供給部と、分離ガス供給部からの分離ガスを第1及び第2の供給領域へ向けて供給する分離空間を形成する天井面とを含み、第1及び第2供給領域の間に配置される分離領域;第1及び第2供給領域に設けられる第1及び第2排気口;を備え、第1及び第2排気口の少なくとも一方が、対応する供給領域へ向かって分離領域から供給される分離ガスを、反応ガス供給部が延びる方向に沿った方向に導くように配置される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内にて、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板に供給する供給サイクルを複数回実行することにより、反応生成物の複数の層を積層して薄膜を形成する成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおける成膜手法として、基板である半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)等の表面に真空下で第1の反応ガスを吸着させた後、供給するガスを第2の反応ガスに切り替えて、ウエハ表面での両ガスの反応により1層又は複数層の原子層や分子層を形成し、このサイクルを多数回行うことにより、基板上への成膜を行うプロセスが知られている。このプロセスは、例えばALD(Atomic Layer Deposition)やMLD(Molecular Layer Deposition)などと呼ばれており(以下、ALDと呼ぶ)、サイクル数に応じて膜厚を高精度にコントロールすることができると共に、膜質の面内均一性も良好な点で、半導体デバイスの薄膜化に対応できる有効な手法として期待されている。
【0003】
このような成膜方法として、例えば特許文献1には、ウエハ支持部材(又は回転テーブル)の上に回転方向に沿って4枚のウエハを等角度間隔に配置し、ウエハ支持部材と対向するように第1の反応ガスを吐出する第1の反応ガスノズルと、第2の反応ガスを吐出する第2の反応ガスノズルとを回転方向に沿って等角度間隔に配置し、かつこれらの反応ガスノズルの間に分離ガスノズルを配置して、ウエハ支持部材を水平回転させて成膜処理を行う装置が提案されている。このような回転テーブル式のALD装置においては、分離ガスノズルからの分離ガスにより、第1の反応ガスと第2の反応ガスとの混合を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−254181号公報
【特許文献2】特表2008−516428号公報(又は、米国特許出願公開第2006/0073276号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、分離ガスを用いる場合には、分離ガスによって反応ガスが希釈されてしまい、十分な成膜速度を維持するためには、反応ガスを大量に供給しなければならない事態ともなる。
【0006】
上記の特許文献2は、回転基板ホルダ(回転テーブル)の上方に画成される比較的平坦なギャップ領域に前駆物質(反応ガス)を導入し、この領域における前駆物質の流動を抑制するとともに、この領域の両側に設けられた吸気ゾーンから上向きに前駆物質を排気することで、分離ガス(パージガス)による前駆物質の希釈を防止することができる成膜装置を開示している。
【0007】
しかし、そのような領域に前駆物質を閉じ込めるようにすると、前駆物質によっては、熱分解が生じ、反応生成物がその領域に堆積してしまうことが懸念される。反応生成物の堆積は、パーティクル源となるため、歩留まりの低下といった問題が生じ得る。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされ、第1の反応ガスと第2の反応ガスとの混合を抑制するために使用される分離ガスによって第1の反応ガス及び第2の反応ガスが希釈されるのを低減することができる成膜装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、容器内にて、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板に供給する供給サイクルを複数回実行することにより、反応生成物の複数の層を積層して薄膜を形成する成膜装置が提供される。この成膜装置は、容器内に回転可能に設けられ、基板が載置される基板載置領域を第1の面に含む回転テーブル;容器内の第1の供給領域に配置され、回転テーブルの回転方向と交わる方向に延び、回転テーブルの第1の面へ第1の反応ガスを供給する第1の反応ガス供給部;第1の供給領域から回転テーブルの回転方向に沿って離間する第2の供給領域に配置され、回転方向と交わる方向に延び、回転テーブルの第1の面へ第2の反応ガスを供給する第2の反応ガス供給部;第1の反応ガスと第2の反応ガスとを分離する分離ガスを吐出する分離ガス供給部と、分離ガス供給部からの分離ガスを第1の供給領域及び第2の供給領域へ向けて供給する、第1の面との間に所定の高さを有する分離空間を形成する天井面とを含み、第1の供給領域と第2の供給領域との間に配置される分離領域;第1の供給領域に対して設けられる第1の排気口;及び第2の供給領域に対して設けられる第2の排気口;を備える。第1の排気口及び第2の排気口の少なくとも一方の排気口が、排気口に対応する供給領域へ向かって分離領域から供給される分離ガスを、供給領域の反応ガス供給部が延びる第1の方向に沿う方向に導くように配置される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、第1の反応ガスと第2の反応ガスとの混合を抑制するために使用される分離ガスによって第1の反応ガス及び第2の反応ガスが希釈されるのを低減することができる成膜装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態による成膜装置の断面図である。
【図2】図1の成膜装置の内部の概略構成に示す斜視図である。
【図3】図1の成膜装置の平面図である。
【図4】図1の成膜装置における供給領域及び分離領域の一例を示す断面図である。
【図5】分離領域のサイズを説明するための図である。
【図6】図1の成膜装置の他の断面図である。
【図7】図1の成膜装置のまた別の断面図である。
【図8】図1の成膜装置の一部破断斜視図である。
【図9】図1の成膜装置の真空容器内のガスフローパターンを示す説明図である。
【図10】図1の成膜装置の真空容器内のガスフローパターンを示す他の説明図である。
【図11】図1の成膜装置の供給領域の変形例を示す平面図である。
【図12】図1の成膜装置における反応ガスノズル及びノズルカバーの構成図である。
【図13】図12のノズルカバーが取り付けられた反応ガスノズルを説明する図である。
【図14】ノズルカバーの変形例を説明する図である。
【図15】図1の成膜装置で使用される反応ガスインジェクタを説明する図である。
【図16】図1の成膜装置で使用される反応ガスインジェクタを説明する他の図である。
【図17】反応ガス濃度についてのシミュレーションの結果を示す図である。
【図18】反応ガス濃度についてのシミュレーションの結果を示す他の図である。
【図19】反応ガス濃度についてのシミュレーションの結果を示すまた別の図である。
【図20】反応ガスノズルの変形例を示す図である。
【図21】本発明の他の実施形態による成膜装置の断面図である。
【図22】本発明の実施形態による成膜装置を含む基板処理装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は、部材もしくは部品間の相対比を示すことを目的とせず、したがって、具体的な厚さや寸法は、以下の限定的でない実施形態に照らし、当業者により決定されるべきものである。
【0013】
本発明の実施形態による成膜装置は、図1(図3のA−A線に沿った断面図)及び図2に示すように、概ね円形の平面形状を有する扁平な真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、真空容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備える。真空容器1は、容器本体12と、これから分離可能な天板11とから構成されている。天板11は、例えばOリングなどの封止部材13を介して容器本体12に取り付けられ、これにより真空容器1が気密に密閉される。天板11及び容器本体12は、例えばアルミニウム(Al)で作製することができる。
【0014】
図1を参照すると、回転テーブル2は、中央に円形の開口部を有しており、開口部の周りで円筒形状のコア部21により上下から挟まれて保持されている。コア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。回転軸22は容器本体12の底面部14を貫通し、その下端が当該回転軸22を鉛直軸回りに回転させる駆動部23に取り付けられている。この構成により、回転テーブル2はその中心軸を回転中心として回転することができる。なお、回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。このケース体20はその上面に設けられたフランジ部分を介して真空容器1の底面部14の下面に気密に取り付けられており、これにより、ケース体20の内部雰囲気が外部雰囲気から隔離されている。
【0015】
図2及び図3に示すように、回転テーブル2の上面に、それぞれウエハWが載置される複数(図示の例では5つ)の円形凹部状の載置部24が等角度間隔で形成されている。ただし、図3ではウエハWを1枚のみを示している。
【0016】
図4(a)を参照すると、載置部24と載置部24に載置されたウエハWとの断面が示されている。図示のとおり、載置部24は、ウエハWの直径よりも僅かに(例えば4mm)大きい直径と、ウエハWの厚さに等しい深さとを有している。載置部24の深さとウエハWの厚さがほぼ等しいため、ウエハWが載置部24に載置されたとき、ウエハWの表面は、回転テーブル2の載置部24を除く領域の表面とほぼ同じ高さになる。仮に、ウエハWとその領域との間に比較的大きい段差があると、その段差によりガスの流れに乱流が生じ、ウエハW上での膜厚均一性が影響を受ける。この影響を低減するため、2つの表面がほぼ同じ高さにある。「ほぼ同じ高さ」は、高さの差が約5mm以下であって良いが、加工精度が許す範囲でできるだけゼロに近いと好ましい。
【0017】
図2から図4を参照すると、回転テーブル2の回転方向(例えば図3の矢印RD)に沿って互いに離間した2つの凸状部4が設けられている。図2及び図3では天板11を省略しているが、凸状部4は、図4に示すように天板11の下面に取り付けられている。また、図3から分かるように、凸状部4は、ほぼ扇形の上面形状を有しており、その頂部は真空容器1のほぼ中心に位置し、円弧は容器本体12の内周壁に沿って位置している。さらに、図4(a)に示すように、凸状部4は、その下面44が回転テーブル2から高さh1に位置するように配置される。
【0018】
また、図3及び図4を参照すると、凸状部4は、凸状部4が二分割されるように半径方向に延びる溝部43を有し、溝部43には分離ガスノズル41(42)が収容されている。溝部43は、本実施形態では、凸状部4を二等分するように形成されるが、他の実施形態においては、例えば、凸状部4における回転テーブル2の回転方向上流側が広くなるように溝部43を形成しても良い。分離ガスノズル41(42)は、図3に示すように、容器本体12の周壁部から真空容器1内へ導入され、その基端部であるガス導入ポート41a(42a)を容器本体12の外周壁に取り付けることにより支持されている。
【0019】
分離ガスノズル41(42)は、分離ガスのガス供給源(図示せず)に接続されている。分離ガスはチッ素(N2)ガスや不活性ガスであって良く、また、成膜に影響を与えないガスであれば、分離ガスの種類は特に限定されない。本実施形態においては、分離ガスとしてN2ガスが利用される。また、分離ガスノズル41(42)は、回転テーブル2の表面に向けてN2ガスを吐出するための吐出孔40(図4)を有している。吐出孔40は、長さ方向に所定の間隔で配置されている。本実施形態においては、吐出孔40は、約0.5mmの口径を有し、分離ガスノズル41(42)の長さ方向に沿って約10mmの間隔で配列されている。
【0020】
以上の構成により、分離ガスノズル41とこれに対応する凸状部4とにより、分離空間Hを画成する分離領域D1が提供される。同様に、分離ガスノズル42とこれに対応する凸状部4とにより、分離空間Hを画成する分離領域D2が提供される。また、分離領域D1に対して回転テーブル2の回転方向下流側には、分離領域D1,D2と、回転テーブル2と、天板11の下面45(以下、天井面45)と、容器本体12の内周壁とで概ね囲まれる第1の領域48A(第1の供給領域)が形成されている。さらに、分離領域D1に対して回転テーブル2の回転方向上流側には、分離領域D1,D2と、回転テーブル2と、天井面45と、容器本体12の内周壁とで概ね囲まれる第2の領域48B(第2の供給領域)が形成されている。分離領域D1,D2において、分離ガスノズル41,42からN2ガスが吐出されると、分離空間Hは比較的高い圧力となり、N2ガスは分離空間Hから第1の領域48A及び第2の領域48Bへ向かって流れる。言い換えると、分離領域D1,D2における凸状部4は、分離ガスノズル41,42からのN2ガスを第1の領域48A及び第2の領域48Bへ案内する。
【0021】
また、図2及び図3を参照すると、第1の領域48Aにおいて容器本体12の周壁部から回転テーブル2の半径方向に反応ガスノズル31が導入され、第2の領域48Bにおいて容器本体12の周壁部から回転テーブルの半径方向に反応ガスノズル32が導入されている。これらの反応ガスノズル31,32は、分離ガスノズル41,42と同様に、基端部であるガス導入ポート31a,32aを容器本体12の外周壁に取り付けることにより支持されている。なお、反応ガスノズル31,32は、半径方向に対して所定の角度をなすように導入されてもよい。
【0022】
また、反応ガスノズル31,32は、回転テーブル2の上面(ウエハの載置部24がある面)に向けて反応ガスを吐出するための複数の吐出孔33を有している(図4参照)。本実施形態においては、吐出孔33は約0.5mmの口径を有し、反応ガスノズル31,32の長さ方向に沿って約10mmの間隔で配列されている。
【0023】
図示を省略するが、反応ガスノズル31は、第1の反応ガスのガス供給源に接続され、反応ガスノズル32は、第2の反応ガスのガス供給源に接続されている。第1の反応ガス及び第2の反応ガスとしては後に述べる組み合わせを始めとして種々のガスを使用できるが、本実施形態においては、第1の反応ガスとしてビスターシャルブチルアミノシラン(BTBAS)ガスが利用され、第2の反応ガスとしてオゾン(O3)ガスが利用される。また、以下の説明において、反応ガスノズル31の下方の領域を、BTBASガスをウエハに吸着させるための処理領域P1といい、反応ガスノズル32の下方の領域を、O3ガスをウエハに吸着したBTBASガスと反応(酸化)させるための処理領域P2という場合がある。
【0024】
再び図4を参照すると、分離領域D1には平坦な低い天井面44があり(図示していないが分離領域D2においても同様)、第1の領域48A及び第2の領域48Bには、天井面44よりも高い天井面45がある。このため、第1の領域48A及び第2の領域48Bの容積は、分離領域D1,D2における分離空間Hの容積よりも大きい。また、後述するように、本実施形態による真空容器1には、第1の領域48A及び第2の領域48Bをそれぞれ排気するための排気口61,62が設けられている。これらにより、第1の領域48A及び第2の領域48Bを、分離領域D1,D2の分離空間Hに比べて低い圧力に維持することができる。この場合、第1の領域48Aにおいて反応ガスノズル31から吐出されるBTBASガスは、分離領域D1,D2の分離空間Hの圧力が高いため、分離空間Hを通り抜けて第2の領域48Bへ到達することができない。また、第2の領域48Bにおいて反応ガスノズル32から吐出されるO3ガスは、分離領域D1,D2の分離空間Hの圧力が高いため、分離空間Hを通り抜けて第1の領域48Aへ到達することができない。したがって、両反応ガスは、分離領域D1,D2により分離され、真空容器1内の気相中で混合されることは殆ど無い。
【0025】
なお、低い天井面44の回転テーブル2の上面から測った高さh1(図4(a))は、分離ガスノズル41(42)からのN2ガスの供給量にもよるが、分離領域D1,D2の分離空間Hの圧力を第1の領域48A及び第2の領域48Bの圧力よりも高くできるように設定される。高さh1は例えば0.5mmから10mmであると好ましく、できる限り小さくすると更に好ましい。ただし、回転テーブル2の回転ぶれによって回転テーブル2が天井面44に衝突するのを避けるため、高さh1は3.5mmから6.5mm程度であって良い。また、凸状部4の溝部43に収容される分離ガスノズル42(41)の下端から回転テーブル2の表面までの高さh2(図4(a))も同様に0.5mm〜4mmであって良い。
【0026】
また、凸状部4は、図5(a)及び(b)に示すように、例えば、ウエハ中心WOが通る経路に対応する円弧の長さLがウエハWの直径の約1/10〜約1/1、好ましくは約1/6以上であると好ましい。これにより、分離領域D1,D2の分離空間Hを確実に高い圧力に維持することが可能となる。
【0027】
以上の構成を有する分離領域D1,D2によれば、回転テーブル2が例えば約240rpmの回転速度で回転した場合であっても、BTBASガスとO3ガスとをより確実に分離することができる。
【0028】
図1、図2、及び図3を再び参照すると、コア部21を取り囲むように天板11の下面に取り付けられた環状の突出部5が設けられている。突出部5は、コア部21よりも外側の領域において回転テーブル2と対向している。本実施形態においては、図7に明瞭に示すように、空間50の下面の回転テーブル2からの高さh15は、空間Hの高さh1よりも僅かに低い。これは、回転テーブル2の中心部近傍での回転ぶれが小さいためである。具体的には、高さh15は1.0mmから2.0mm程度であって良い。なお、他の実施形態においては、高さh15とh1は等しくても良く、また、突出部5と凸状部4は一体に形成されても、別体として形成されて結合されても良い。なお、図2及び図3は、凸状部4を真空容器1内に残したまま天板11を取り外した真空容器1の内部を示している。
【0029】
図1の約半分の拡大図である図6を参照すると、真空容器1の天板11の中心部には分離ガス供給管51が接続されており、これにより、天板11とコア部21との間の空間52にN2ガスが供給される。この空間52に供給されたN2ガスにより、突出部5と回転テーブル2との狭い隙間50は、第1の領域48A及び第2の領域48Bに比べて高い圧力に維持され得る。このため、第1の領域48Aにおいて反応ガスノズル31から吐出されるBTBASガスは、圧力の高い隙間50を通り抜けて第2の領域48Bへ到達することができない。また、第2の領域48Bにおいて反応ガスノズル32から吐出されるO3ガスは、圧力の高い隙間50を通り抜けて第1の領域48Aへ到達することができない。したがって、両反応ガスは、隙間50により分離され、真空容器1内の気相中で混合されることは殆ど無い。すなわち、本実施形態の成膜装置においては、BTBASガスとO3ガスとを分離するために回転テーブル2の回転中心部と真空容器1とにより画成され、第1の領域48A及び第2の領域48Bよりも高い圧力に維持される中心領域Cが設けられている。
【0030】
図7は、図3のB−B線に沿った断面図の約半分を示し、ここには凸状部4と、凸状部4と一体に形成された突出部5が図示されている。図示のとおり、凸状部4は、その外縁においてL字状に屈曲する屈曲部46を有している。屈曲部46は、回転テーブル2と容器本体12との間の空間を概ね埋めており、反応ガスノズル31からのBTBASガスと反応ガスノズル32からのO3ガスとがこの隙間を通して混合するのを阻止する。屈曲部46と容器本体12との間の隙間、及び屈曲部46と回転テーブル2との間の隙間は、例えば、回転テーブル2から凸状部4の天井面44までの高さh1とほぼ同一であって良い。また、屈曲部46があるため、分離ガスノズル41,42(図3)からのN2ガスは、回転テーブル2の外側に向かっては流れ難い。よって、分離領域D1,D2から第1の領域48A及び第2の領域48BへのN2ガスの流れが促進される。なお、屈曲部46の下方にブロック部材71bを設ければ、分離ガスが回転テーブル2の下方まで流れるのを更に抑制することができるため、更に好ましい。
【0031】
なお、屈曲部46と回転テーブル2との間の隙間は、回転テーブル2の熱膨張を考慮し、回転テーブル2が後述のヒータユニットにより加熱された場合に、上記の間隔(h1程度)となるように設定することが好ましい。
【0032】
一方、第1の領域48A及び第2の領域48Bにおいて、容器本体12の内周壁は、図3に示すように外方側に窪み、排気領域6が形成されている。この排気領域6の底部には、図3及び図6に示すように、例えば排気口61,62が設けられている。これら排気口61,62は各々排気管63を介して真空排気装置である例えば共通の真空ポンプ64に接続されている。これにより、主に第1の領域48A及び第2の領域48Bが排気され、したがって、上述の通り、第1の領域48A及び第2の領域48Bの圧力が分離領域D1,D2の分離空間Hの圧力よりも低くすることができる。
【0033】
また、図3を参照すると、第1の領域48Aに対応する排気口61は、回転テーブル2の外側(排気領域6)において反応ガスノズル31の下方に位置している。これにより、反応ガスノズル31の吐出孔33(図4)から吐出されるBTBASガスは、回転テーブル2の上面に沿って、反応ガスノズル31の長手方向に排気口61へ向かって流れることができる。このような配置による利点については、後述する。
【0034】
再び図1を参照すると、排気管63には圧力調整器65が設けられ、これにより真空容器1内の圧力が調整される。複数の圧力調整器65を、対応する排気口61,62に対して設けてもよい。また、排気口61,62は、排気領域6の底部(真空容器1の底部14)に限らず、真空容器の容器本体12の周壁部に設けても良い。また、排気口61,62は、排気領域6における天板11に設けても良い。ただし、天板11に排気口61,62を設ける場合、真空容器1内のガスが上方へ流れるため、真空容器1内のパーティクルが巻き上げられて、ウエハWが汚染されるおそれがある。このため、排気口61,62は、図示のように底部に設けるか、容器本体12の周壁部に設けると好ましい。また、排気口61,62を底部に設ければ、排気管63、圧力調整器65、及び真空ポンプ64を真空容器1の下方に設置することができるため、成膜装置のフットプリントを縮小する点で有利である。
【0035】
図1、及び図6から8に示すように、回転テーブル2と容器本体12の底部14との間の空間には、加熱部としての環状のヒータユニット7が設けられ、これにより、回転テーブル2上のウエハWが、回転テーブル2を介して所定の温度に加熱される。また、ブロック部材71aが、回転テーブル2の下方及び外周の近くに、ヒータユニット7を取り囲むように設けられるため、ヒータユニット7が置かれている空間がヒータユニット7の外側の領域から区画されている。ブロック部材71aより内側にガスが流入することを防止するため、ブロック部材71aの上面と回転テーブル2の下面との間に僅かな間隙が維持されるように配置される。ヒータユニット7が収容される領域には、この領域をパージするため、複数のパージガス供給管73が、容器本体12の底部を貫通するように所定の角度間隔をおいて接続されている。なお、ヒータユニット7の上方において、ヒータユニット7を保護する保護プレート7aが、ブロック部材71aと、後述する隆起部Rとにより支持されており、これにより、ヒータユニット7が設けられる空間にBTBASガスやO3ガスが仮に流入したとしても、ヒータユニット7を保護することができる。保護プレート7aは、例えば石英から作製すると好ましい。
【0036】
図6を参照すると、底部14は、環状のヒータユニット7の内側に隆起部Rを有している。隆起部Rの上面は、回転テーブル2及びコア部21に接近しており、隆起部の上面Rと回転テーブル2の裏面との間、及び隆起部の上面とコア部21の裏面との間に僅かな隙間を残している。また、底部14は、回転軸22が通り抜ける中心孔を有している。この中心孔の内径は、回転軸22の直径よりも僅かに大きく、フランジ部20aを通してケース体20と連通する隙間を残している。パージガス供給管72がフランジ部20aの上部に接続されている。
【0037】
このような構成により、図6に示すように、回転軸22と底部14の中心孔との間の隙間、コア部21と底部14の隆起部Rとの間の隙間、及び底部14の隆起部Rと回転テーブル2の裏面との間の隙間を通して、パージガス供給管72からヒータユニット7の下の空間へN2ガスが流れる。また、パージガス供給管73からヒータユニット7の下の空間へN2ガスが流れる。そして、これらのN2ガスは、ブロック部材71aと回転テーブル2の裏面との間の隙間を通して排気口61へ流れ込む。このように流れるN2ガスは、BTBASガス(O3ガス)の反応ガスが回転テーブル2の下方の空間を回流してO3ガス(BTBASガス)と混合するのを防止する分離ガスとして働く。
【0038】
図2、図3及び図8を参照すると、容器本体12の周壁部には搬送口15が形成されている。ウエハWは、搬送口15を通して搬送アーム10により真空容器1の中へ、又は真空容器1から外へと搬送される。この搬送口15にはゲートバルブ(図示せず)が設けられ、これにより搬送口15が開閉される。また、凹部24の底面には3つの貫通孔(図示せず)が形成されており、これらの貫通孔を通して3本の昇降ピン16(図8)が上下動することができる。昇降ピン16は、ウエハWの裏面を支えて当該ウエハWを昇降させ、ウエハWの搬送アーム10との間で受け渡しを行う。
【0039】
また、この実施形態による成膜装置には、図3に示すように、装置全体の動作のコントロールを行うための制御部100が設けられている。この制御部100は、例えばコンピュータで構成されるプロセスコントローラ100aと、ユーザインタフェース部100bと、メモリ装置100cとを有する。ユーザインタフェース部100bは、成膜装置の動作状況を表示するディスプレイや、成膜装置の操作者がプロセスレシピを選択したり、プロセス管理者がプロセスレシピのパラメータを変更したりするためのキーボードやタッチパネル(図示せず)などを有する。
【0040】
メモリ装置100cは、プロセスコントローラ100aに種々のプロセスを実施させる制御プログラム、プロセスレシピ、及び各種プロセスにおけるパラメータなどを記憶している。また、これらのプログラムには、例えば後述するクリーニング方法を行わせるためのステップ群を有しているものがある。これらの制御プログラムやプロセスレシピは、ユーザインタフェース部100bからの指示に従って、プロセスコントローラ100aにより読み出されて実行される。また、これらのプログラムは、コンピュータ可読記憶媒体100dに格納され、これらに対応した入出力装置(図示せず)を通してメモリ装置100cにインストールしてよい。コンピュータ可読記憶媒体100dは、ハードディスク、CD、CD−R/RW、DVD−R/RW、フレキシブルディスク、半導体メモリなどであってよい。また、プログラムは通信回線を通してメモリ装置100cへダウンロードしてもよい。
【0041】
次に、本実施形態の成膜装置の動作(成膜方法)について説明する。まず、載置部24が搬送口15に整列するように回転テーブル2が回転して、ゲートバルブ(図示せず)を開く。次に、搬送アーム10により搬送口15を介してウエハWを真空容器1内へ搬入される。ウエハWは、昇降ピン16により受け取られ、搬送アーム10が容器1から引き抜かれた後に、昇降機構(図示せず)により駆動される昇降ピン16によって載置部24へと下げられる。上記一連の動作が5回繰り返されて、5枚のウエハWが対応する凹部24に載置される。
【0042】
続いて、真空容器1内が、真空ポンプ64及び圧力調整器65により、予め設定した圧力に維持される。回転テーブル2が上から見て時計回りに回転を開始する。回転テーブル2は、ヒータユニット7により前もって所定の温度(例えば300℃)に加熱されており、ウエハWがこの回転テーブル2に載置されることで加熱される。ウエハWが加熱され、所定の温度に維持されたことが温度センサ(図示せず)により確認された後、BTBASガスが反応ガスノズル31を通して第1の処理領域P1へ供給され、O3ガスが反応ガスノズル32を通して第2の処理領域P2へ供給される。加えて、分離ガスノズル41,42からN2ガスが供給される。さらに、中心領域Cから、すなわち、突出部5と回転テーブル2との間から回転テーブル2の表面に沿ってN2ガスが吐出される。また、分離ガス供給管51、パージガス供給管72,73からもN2ガスが供給される。
【0043】
ウエハWが反応ガスノズル31の下方の第1の処理領域P1を通過するときに、ウエハWの表面にBTBAS分子が吸着し、反応ガスノズル32の下方の第2の処理領域P2と通過するときに、ウエハWの表面にO3分子が吸着され、O3によりBTBAS分子が酸化される。したがって、回転テーブル2の回転により、ウエハWが処理領域P1、P2の両方を一回通過すると、ウエハWの表面に酸化シリコンの一分子層(又は2以上の分子層)が形成される。次いで、ウエハWが領域P1、P2を交互に複数回通過し、所定の膜厚を有する酸化シリコン膜がウエハWの表面に堆積される。所定の膜厚を有する酸化シリコン膜が堆積された後、BTBASガスとO3ガスの供給を停止し、回転テーブル2の回転を停止する。そして、ウエハWは搬入動作と逆の動作により順次搬送アーム10により容器1から搬出され、成膜プロセスが終了する。
【0044】
次に、図9を参照しながら、真空容器1内のガスのフローパターンを説明する。分離領域D1の分離ガスノズル41から吐出されるN2ガスは、回転テーブル2の半径方向とほぼ直交するように、凸状部4と回転テーブル2との間の分離空間H(図4(a)参照)から第1の領域48A及び第2の領域48Bへと流出する。分離領域D1から第1の領域48Aへ流れ出たN2ガスは、排気口61により吸引されて、中心領域CからのN2ガスとともに、排気口61へ流入する。このため、反応ガスノズル31の近くでは、N2ガスは反応ガスノズル31のほぼ長手方向に沿って流れることとなる。したがって、分離領域D1から第1の領域48Aへ流れ出たN2ガスが、反応ガスノズル31の下方の第1の処理領域P1を横切ることは殆ど無い。故に、反応ガスノズル31から回転テーブル2へ向けて吐出されたBTBASガスが、N2ガスにより希釈されるのが抑制され、高い濃度でウエハWに吸着され得る。
【0045】
また、分離領域D2の分離ガスノズル42から吐出されて、分離領域D2の分離空間Hから第1の領域48Aへ流れ出るN2ガスもまた排気口61に吸引されて、反応ガスノズル31の長手方向に沿うようにして排気口61へ流れ込む。よって、分離領域D2からのN2ガスもまた反応ガスノズル31の下方の第1の処理領域P1を横切ることが殆ど無い。したがって、BTBASガスのN2ガスによる希釈がより確実に抑制される。
【0046】
一方、分離領域D2から第2の領域48Bへ流れ出たN2ガスは、中心領域CからのN2ガスにより外側へ流されながらも、排気口62に向かって流れ、これに流入する。また、第2の領域48Bの反応ガスノズル32から吐出されるO3ガスもまた同様に流れて排気口62へ流入する。
【0047】
この場合、N2ガスは第2の領域48Bの反応ガスノズル32の下方の処理領域P2を通過し得るため、反応ガスノズル32から吐出されるO3ガスが希釈される可能性がある。しかし、本実施形態においては、第2の領域48が第1の領域よりも広く、反応ガスノズル32を排気口62からできる限り離して配置しているため、O3ガスは、反応ガスノズル32から吐出されて排気口62に流入するまでの間に、ウエハW上に吸着したBTBAS分子と十分に反応(酸化)することができる。すなわち、本実施形態においては、O3ガスのN2ガスによる希釈の影響は限定的である。
【0048】
なお、反応ガスノズル32から吐出されたO3ガスの一部は、分離領域D2へ向かって流れ得るが、分離領域D2の分離空間Hは、上述のとおり、第2の領域48Bに比べて圧力が高いため、そのO3ガスは分離領域D2へ侵入することができず、分離領域D2からのN2ガスとともに流れて排気口62へ至る。また、反応ガスノズル32から排気口62へ向かって流れるO3ガスの一部が、分離領域D1へ向かって流れ得るが、上記と同様に、この分離領域D1へ侵入することができない。すなわち、O3ガスは、分離領域D1,D2を通り抜けて第1の領域48Aへ到達することができず、よって、両反応ガスの混合が抑制される。
【0049】
また、本実施形態では、分離領域D1,D2から第1の領域48Aへ回転テーブル2の半径方向にほぼ直交する方向に流れ出るN2ガスの流れの方向を、反応ガスノズル31の長手方向に沿う方向に変えることにより、N2ガスが反応ガスノズル31の下方の第1の処理領域P1を横切らないようにすることができる限りにおいて、排気口61は反応ガスノズル31の直下ではなく、反応ガスノズル31からずれて配置されても良い。この場合、排気口61は、回転テーブル2の回転方向の上流側及び下流側のいずれにずれても良いが、回転テーブル2の回転方向を考慮すると、分離領域D1から第1の領域48Aへより大量のN2ガスが流れ出るから、このN2ガスが第1の処理領域P1を横切らないようにするためには上流側がより好ましい。また、排気口61は、反応ガスノズル31の下方と分離領域D1との間に配置されても良い。
【0050】
また、排気口61,62(及び後述する排気口63)は、図示の例では円形の開口を有しているが、楕円形又は矩形の開口を有しても良い。さらに、排気口61(又は63)は、反応ガスノズル31(又は32)の下方から回転テーブル2の回転方向上流側へ向かって、容器本体12の内周壁の曲率に沿って延びる開口を有しても良い。さらにまた、排気領域6において、反応ガスノズル31(又は32)の下方に一の排気口を設け、この一の排気口に対して回転テーブル2の回転方向の上流側に一つ又は2以上の他の排気口を設けても良い。
【0051】
なお、図10に示すように、回転テーブル2の外側において反応ガスノズル32の下方に排気口63を設けても良い。これによれば、O3ガスについても、反応ガスノズル32から吐出されるO3ガスのN2ガスによる希釈が抑制され、O3ガスが高い濃度でウエハWに到達することができる。図9の配置と図10の配置は、O3ガスに応じて、適宜選択して良い。また、反応ガスノズル31と反応ガスノズル32の両方の下方に排気口を設けても良い。
【0052】
なお、反応ガスノズル31,32を容器本体12の周壁部から導入するのではなく、真空容器1の中心側から導入する場合は、反応ガスノズル31,32は、回転テーブル2の外周端の上方で終端して良く、この場合、排気口は、そのような反応ガスノズルの長手方向の延長上に配置されて良い。これによっても、上述の効果が発揮される。
【0053】
さらに、図11(a)に示すように、反応ガスノズル31を第1の領域48Aの中央に配置し、回転テーブル2の外側(排気領域6)において反応ガスノズル31の下方に排気口61を配置しても良い。さらに、第1の領域48Aの幅は、任意に設定することができ、例えば、図11(b)に示すように、他の図に示した第1の領域48Aよりも狭くしても良い。このようにすれば、第1の領域48A及び第2の領域48Bに加えて、他の反応ガスに対応した他の領域を真空容器1内に画定し易くなり、多元化合物のALD成膜も可能となる。
【0054】
次に、図12を参照しながら、反応ガスをより高い濃度でウエハW(回転テーブル2)に供給するための構成について説明する。図12には、反応ガスノズル31,32に取り付けられるノズルカバー34が図示されている。ノズルカバー34は、反応ガスノズル31,32の長手方向に沿って延び、コ字型の断面形状を有する基部35を有している。基部35は、反応ガスノズル31,32を覆うように配置されている。基部35における上記長手方向に延びる2つの開口端の一方には、整流板36Aが取り付けられ、他方には、整流板36Bが取り付けられている。
【0055】
図12(b)に明瞭に示されるように、本実施形態においては、整流板36A,36Bは、反応ガスノズル31,32の中心軸に対して左右対称に形成されている。また、整流板36A,36Bの回転テーブル2の回転方向に沿った長さは、回転テーブル2の外周部に向かうほど長くなっており、このため、ノズルカバー34は、概ね扇形状の平面形状を有している。ここで、図12(b)に点線で示す扇の開き角度は、分離領域D1,D2の凸状部4のサイズをも考慮して決定されるが、例えば5°以上90°未満であると好ましく、具体的には例えば8°以上10°未満であると更に好ましい。
【0056】
図13は、真空容器1の内部を、反応ガスノズル31の長手方向外側から見た図である。図示のとおり、上述のように構成されるノズルカバー34は、整流板36A,36Bが回転テーブル2の上面に対してほぼ平行に近接するように、反応ガスノズル31,32に取り付けられている。ここで、例えば高い天井面45の回転テーブル2の上面からの高さ15mm〜150mmに対して、整流板36Aの回転テーブル2の上面からの高さh3は例えば0.5mm〜4mmであって良く、ノズルカバー34の基部35と高い天井面45との間隔h4は例えば10mm〜100mmであって良い。また、回転テーブル2の回転方向に対して反応ガスノズル31,32の上流側に整流板36Aが配置され、下流側に整流板36Bが配置されている。このような構成により、凸状部4と回転テーブル2との間の分離空間Hから第1の領域48Aへ流れ出るN2ガスは、整流板36Aにより、反応ガスノズル31の上方の空間へ流れ易く、下方の処理領域P1へ侵入し難くなるため、反応ガスノズル31からのBTBASガスのN2ガスによる希釈が更に抑制される。
【0057】
なお、回転テーブル2の回転による遠心効果のため、N2ガスは回転テーブル2の外縁近傍において大きなガス流速を有し得るから、外縁近傍においては第1の空間へのN2ガスの侵入抑制効果が低下するとも思われる。しかし、図12(b)に示すように、整流板36Aは、回転テーブル2の外縁部に向かうに従って幅が広くなるため、N2ガスの侵入抑制効果の低下を相殺することができる。
【0058】
また、図13では、反応ガスノズル31に取り付けられたノズルカバー34を示しているが、ノズルカバー34は、反応ガスノズル32に取り付けられても良く、両方の反応ガスノズル31,32に取り付けられても良い。また、図9に示すように、反応ガスノズル32の下方に排気口が設けられていない場合に、この反応ガスノズル32にのみノズルカバー34を取り付けても良い。
【0059】
以下、ノズルカバー34の変形例について図14を参照しながら説明する。図14(a)及び14(b)に示すように、基部35(図12)を用いずに、整流板37A,37Bを反応ガスノズル31,32に対して直接に取り付けても良い。この場合であっても、整流板37A,37Bは、回転テーブル2の上面から高さh3の位置に配置することができるため、上述のノズルカバー34と同様の効果が得られる。この例においても、整流板37A,37Bは、図12に示した整流板36A,36Bと同様に、上方から見てほぼ扇形状をなしていると好ましい。
【0060】
また、整流板36A,36B,37A,37Bは、必ずしも回転テーブル2と平行でなくても良い。例えば、回転テーブル2(ウエハW)からの高さh3が維持されて、反応ガスノズル31,32の上方の第2の空間へN2ガスを流れ易くすることができる限り、図14(c)に示すように、整流板37A,37Bは反応ガスノズル31の上部から回転テーブル2へ向かうように傾斜していても良い。図示の整流板37Aは、N2ガスを第2の空間Rへガイドすることができる点でも好ましい。
【0061】
続いて、ノズルカバーの更なる変形例について、図15及び図16を参照しながら説明する。これらの変形例は、ノズルカバーと一体化された反応ガスノズル、又はノズルカバーの機能を有する反応ガスノズルとも言うことができる。このため、以下の説明では反応ガスインジェクタと称呼する。
【0062】
図15(a)及び(b)を参照すると、反応ガスインジェクタ3Aは、反応ガスノズル31,32と同様に円筒形状を有する反応ガスノズル321を含み、反応ガスノズル321が真空容器1の容器本体(図1)の周壁部を貫通するように設けることができる。反応ガスノズル321は、反応ガスノズル31,32と同様に、約0.5mmの内径を有し、例えば10mmの間隔で反応ガスノズル321の長手方向に配列される複数の吐出孔323を有している。ただし、反応ガスノズル321は、複数の吐出孔323が回転テーブル2の上面に対して所定の角度で開口している点で、反応ガスノズル31,32と異なる。また、反応ガスノズル321の上端部には案内板325が取り付けられている。案内板325は、反応ガスノズル321の円筒の曲率よりも大きい曲率を有しており、曲率の相違により、反応ガスノズル321と案内板325との間にはガス流路316が形成されている。図示しないガス供給源から反応ガスノズル321へ供給された反応ガスは、吐出孔323から吐出され、ガス流路316を通って回転テーブル2上に載置されるウエハW(図13)に到達する。
【0063】
また、案内板325の下端部には回転テーブル2の回転方向上流側に延びる整流板37Aが設けられ、反応ガスノズル321の下端部には回転テーブル2の回転方向下流側に延びる整流板37Bが設けられている。
【0064】
このように構成される反応ガスインジェクタ3Aは、整流板37A,37Bが回転テーブル2の上面に近接しているため、分離領域D1,D2からのN2ガスが、反応ガスノズル321の下方の処理領域へ侵入し難くなる。したがって、反応ガスノズル321からの反応ガスのN2ガスによる希釈がより確実に抑制される。
【0065】
なお、反応ガスは、反応ガスノズル321から反応ガス流出孔323を通してガス流路316へ到達するときに、案内板325に吹き付けられるため、図15(b)の複数の矢印で示すように、反応ガスノズル321の長手方向に広がることとなる。このため、ガス流路326内において、ガス濃度が均一化される。すなわち、この変形例は、ウエハWに堆積される膜の膜厚を均一化できる点で好ましい。
【0066】
図16(a)を参照すると、反応ガスインジェクタ3Bは、方形管により構成される反応ガスノズル321を有している。反応ガスノズル321は、図16(b)に示すように、例えば内径0.5mmを有し、反応ガスノズル321の長手方向に沿って例えば5mm間隔で配置される複数の反応ガス流出孔323を一方の側壁に有している。また、反応ガス流出孔323が形成された側壁には、逆L字形状を有する案内板325が、当該側壁との間に所定の間隔(例えば0.3mm)をおいて取り付けられている。
【0067】
また、図16(b)に示すように、反応ガスノズル321には、真空容器1の容器本体12の周壁部(例えば図2を参照)から導入されたガス導入管327が接続されている。これにより、反応ガスノズル321が支持されるとともに、例えばBTBASガスはガス導入管327を通して反応ガスノズル321へ供給されて、複数の反応ガス流出孔323からガス流路326を通して、回転テーブル2に向けて供給される。また、この例の反応ガスノズル321は、ガス流路326が回転テーブル2の回転方向上流側に位置するように、配置されている。
【0068】
このように構成される反応ガスインジェクタ3Bは、反応ガスノズル321の下面が回転テーブル2の上面から高さh3の位置に配置され得るため、分離領域D1,D2からのN2ガスは、反応ガスインジェクタ3Bの上方へ流れ易く、下方の処理領域へ侵入し難くなる。また、反応ガスノズル321の下面が、ガス流路326に対して回転テーブル2の回転方向下流側に配置されているため、ガス流路326から供給されるBTBASガスを回転テーブル2と反応ガスノズル321との間に比較的長く滞留させることができるため、ウエハWへのBTBASガスの吸着効率を向上することができる。また、反応ガス流出孔323から流出した反応ガスが案内板325に衝突し、図16(b)に矢印で示すように広がるため、ガス流路326の長手方向に沿って反応ガスの濃度が均一化される。
なお、反応ガスノズル321は、ガス流路326が回転テーブル2の回転方向下流側に位置するように配置しても良い。この場合、反応ガスノズル321の下面が、ガス流路326に対して回転テーブル2の回転方向上流側に配置され、N2ガスの反応ガスノズル321の下方への侵入を妨げるのに寄与し得るため、反応ガスのN2ガスによる希釈がより確実に抑制される。
なお、図15及び図16に示す反応ガスインジェクタ3A,3Bは、例えばO3ガスを回転テーブル2の表面に向けて供給するために使用されて良い。
【0069】
次に、図17から図19を参照しながら、回転テーブル2の上面近傍における反応ガスの濃度について行ったシミュレーションの結果を説明する。図17(a)は、図中に示すように排気領域6における反応ガスノズル31の下方に排気口61が配置された場合に、反応ガスノズル31からのBTBASガスが回転テーブル2上でどのように広がるかを示している。一方、図17(b)は、排気口61が反応ガスノズル31の下方から、回転テーブル2の回転方向下流側に大きくずれて配置された場合に、反応ガスノズル31からの反応ガスが回転テーブル2上でどのように広がるかを示している。このシミュレーションは、
・反応ガスノズル31からのBTBASガスの供給量: 100sccm
・分離ガスノズル41,42からのN2ガスの供給量: 14,500sccm
・回転テーブル2の回転速度: 20rpm
・反応ガスノズル31と回転テーブル2との間の間隔: 4mm
・反応ガスノズル31の吐出孔33の内径: 0.5mm
・吐出孔33の間隔(ピッチ): 10mm
という条件で行った。なお、反応ガスノズル31にはノズルカバー34(図12、図14)は取り付けられていない。
【0070】
図17(a)に示すように、反応ガスノズル31の下方に排気口61を配置する場合は、反応ガスノズル31の長手方向の全体において狭い範囲で、反応ガス濃度が約10%以上となっている。また、反応ガスは、回転テーブル2の回転方向下流側においても、あまり広い範囲に広がっていない。さらに、反応ガスノズル31よりも回転テーブル2の回転方向上流側に僅かに広がっていることが分かる。これに対して、排気口61が反応ガスノズル31の下方から大きくずれる場合には、図17(b)に示すように、反応ガス濃度が10%以上の範囲は無く、また、反応ガスが回転テーブル2の回転方向下流側に広がっていることが分かる。しかも、反応ガスは回転テーブル2の回転方向上流側に広がることがない。
【0071】
これらの結果から、図17(b)の場合は、特に反応ガスノズル31の上流側(図2等における分離領域D1)からのN2ガスにより、反応ガスノズル31からの反応ガスが押し流されて、反応ガスが広い範囲に広がってガス濃度が低下する一方、図17(a)の場合は、N2ガスによって反応ガスが押し流されることがないため、狭い範囲に高濃度で存在できることが分かる。すなわち、排気口61が反応ガスノズル31の下方に配置される場合は、N2ガスは、分離領域D1,D2から第1の領域48Aへ流れ出た後に、反応ガスノズル31の長手方向に沿った方向に向きを変えて排気口61へ流入するため、反応ガスノズル31の下方の第1の処理領域P1を横切ることがなく、反応ガスを希釈することがない。また、反応ガスは、反応ガスノズル31の長手方向に沿った方向に流れるN2ガスに挟まれるように、当該長手方向に流れて排気口61へ流入していると考えられる。このような流れにより反応ガスは高濃度に保たれ、したがって、第1の処理領域を通過するウエハWに確実に吸着されることとなる。
【0072】
また、図17(a)の場合、反応ガスが高濃度で狭い範囲に限定されて広がらないことから、反応ガスどうしの気相中での混合がより確実に抑制される。さらに、反応ガスを狭い範囲に限定できるから、分離領域D1(又はD2)の分離ガスノズル41(又は42)からのN2ガスの流量を大きくして分離空間Hの圧力を過剰に高くしなくても、両反応ガスを十分に分離することが可能となる。このため、N2ガスの流量及び排気装置の負荷を低減してランニングコストを低減できる点でも有利である。
【0073】
次に、図15に示す反応ガスインジェクタ3Aを用いた場合のシミュレーションについて説明する。このシミュレーションは、反応ガスノズル31の代わりに反応ガスインジェクタ3Aを使用する以外は、図17(b)の場合と同一の条件で行った。すなわち、排気口61は、反応ガスインジェクタ3Bの下方から大きくずれている。図18(a)に、シミュレーション結果を示す。図17(b)の場合と顕著な差は認められないものの、反応ガス濃度が4.5〜6%の範囲は広くなっている。これは、整流板37A,37B及び案内板325により、反応ガスインジェクタ3Aの下方の第1の処理領域P1を横切るN2ガスが低減されたためと考えることができる。
【0074】
また、図18(b)は、図16に示す反応ガスインジェクタ3Bを用いた場合のシミュレーションの結果を示している。このシミュレーションは、反応ガスノズル31の代わりに反応ガスインジェクタ3Bを使用する以外は、図17(b)の場合と同一の条件で行った。図示のとおり、反応ガスインジェクタ3Bからの反応ガスは、回転テーブル2の回転方向下流側に大きく広がっているものの、図17(b)に比べると、ガス濃度の高い範囲が広い。特に真空容器(図2)の中央に近い側で反応ガス濃度が高くなっている。これは、反応ガスインジェクタ3Bの反応ガスノズル321の下面が回転テーブル2の上面に近接し、第1の反応領域P1へ侵入するN2ガスを低減できるためと考えられる。図示の結果から、排気口61を反応ガスインジェクタ3Bの下方に配置すれば、図17(a)の場合よりも更に高いガス濃度が実現されると考えられる。
【0075】
図19は、図17(a)から図18(b)までに対応した、反応ガス濃度の回転テーブル2の半径方向に沿った濃度分布を示している。図18(a)に示した、排気口61が反応ガスノズル31の下方に配置される場合は、回転テーブル2の半径方向の中央付近で反応ガス濃度が30%を超えており、他の場合よりも大幅に高い反応ガス濃度が実現されていることが分かる。なお、図19の曲線A,Bが周期的に増減しているのは、反応ガスノズル31の吐出孔33の分布によるものである。すなわち、吐出孔33の直下でガス濃度が高くなっていることを示している。一方、曲線C,Dにおいては、このような増減は顕著ではない。これは、反応ガスインジェクタ3A,3Bにおける反応ガスノズル321の吐出孔323から吐出した反応ガスが案内板325に衝突し、ガス流路326において反応ガスインジェクタ3A,3Bの長手方向にガス濃度が均一化されるためである。
【0076】
また、曲線A(排気口61が反応ガスノズル31の下方に配置される場合)において、回転テーブル2の半径方向の中央付近で濃度が高くなるのは、反応ガスノズル31の先端(真空容器1の中心に近い側)から基端部へ向かって反応ガスが流れるため、その流れの下流方向へ向かって反応ガス濃度が高くなる一方、その流れの下流側では排気口61により排気されるため、その方向に沿って反応ガス濃度が低くなるためと考えることができる。
【0077】
このような反応ガス濃度分布は、図20に示すように、反応ガスノズル31の吐出孔33の間隔を調整することにより、平坦化することが可能である。図20(a)を参照すると、反応ガスノズル31の先端側では吐出孔33が高密度で形成され、基端部側では低密度で形成されている。また、用いる反応ガスによっては、図20(b)に示すように、反応ガスノズル31の先端側にのみ吐出孔33を形成しても良い。また、基端部側に吐出孔を高密度に形成しても良い。反応ガスが反応ガスノズル31の長手方向に流れる場合、反応ガスがウエハWの表面に吸着することにより、反応ガスの流れの方向に沿って反応ガス濃度が低下することとなるが、基端部側に高密度で吐出孔を形成すれば、この濃度低下を相殺することができる。
【0078】
ここで、本発明の他の実施形態による成膜装置を説明する。図21を参照すると、容器本体12の底部14は、中央開口を有し、ここには収容ケース80が気密に取り付けられている。また、天板11は、中央凹部80aを有している。支柱81が収容ケース80の底面に載置され、支柱81の状端部は中央凹部80aの底面にまで到達している。支柱81は、反応ガスノズル31から吐出されるBTBASガスと反応ガスノズル32から吐出されるO3ガスとが真空容器1の中央部を通して互いに混合するのを防止する。
【0079】
また、回転スリーブ82が、支柱81を同軸状に囲むように設けられている。回転スリーブ82は、支柱81の外面に取り付けられた軸受け86,88と、収容ケース80の内側面に取り付けられた軸受け87とにより支持されている。さらに、回転スリーブ82は、その外面にギヤ部85が取り付けられている。また、環状の回転テーブル2の内周面が回転スリーブ82の外面に取り付けられている。駆動部83が収容ケース80に収容されており、駆動部83から延びるシャフトにギヤ84が取り付けられている。ギヤ84はギヤ部85と噛み合う。このような構成により、回転スリーブ82ひいては回転テーブル2が駆動部83により回転される。
【0080】
パージガス供給管74が収容ケース80の底に接続され、収容ケース80へパージガスが供給される。これにより、反応ガスが収容ケース80内へ流れ込むのを防止するために、収容ケース80の内部空間を真空容器1の内部空間よりも高い圧力に維持することができる。したがって、収容ケース80内での成膜が起こらず、メンテナンスの頻度を低減できる。また、パージガス供給管75が、真空容器1の上外面から凹部80aの内壁まで至る導管75aにそれぞれ接続され、回転スリーブ82の上端部に向けてパージガスが供給される。このパージガスのため、BTBASガスとO3ガスは、凹部80aの内壁と回転スリーブ82の外面との間の空間を通して混合することができない。図21には、2つのパージガス供給管75と導管75aが図示されているが、供給管75と導管75aの数は、BTBASガスとO3ガスとの混合が凹部80aの内壁と回転スリーブ82の外面との間の空間近傍において確実に防止されるように決定されて良い。
【0081】
図21に示す、本発明の他の実施形態による成膜装置では、凹部80aの側面と回転スリーブ82の上端部との間の空間は、分離ガスとしてのN2ガスを吐出する吐出孔に相当し、そしてこの分離ガス吐出孔、回転スリーブ82及び支柱81により、真空容器1の中心部に位置する中心領域が構成される。
【0082】
このような構成を有する、本発明の他の実施形態による成膜装置においても、反応ガスノズル31,32の少なくとも一方と、これに対応する排気口との位置関係は、上記の実施形態における位置関係と同様である。このため、この成膜装置においても上述の効果が発揮される。
【0083】
また、本発明の実施形態による成膜装置(種々の部材の変形例を含む)は、基板処理装置に組み込むことができ、その一例が図22に模式的に示されている。基板処理装置は、搬送アーム103が設けられた大気搬送室102と、雰囲気を真空と大気圧との間で切り替え可能なロードロック室(準備室)104,105と、2つの搬送アーム107a、107bが設けられた搬送室106と、本発明の実施形態にかかる成膜装置108,109とを含む。ロードロック室104,105及び成膜装置108,109と、搬送室106との間は、開閉可能なゲート弁Gにより結合され、ロードロック室104,105と大気搬送室102との間も開閉可能なゲート弁Gにより結合されている。また、この基板処理装置は、たとえばFOUPなどのウエハカセット101が載置されるカセットステージ(図示せず)を含んでいる。ウエハカセット101は、カセットステージの一つに運ばれ、カセットステージと大気搬送室102との間の搬入出ポートに接続される。次いで、開閉機構(図示せず)によりウエハカセット(FOUP)101の蓋が開けられて、搬送アーム103によりウエハカセット101からウエハが取り出される。次に、ウエハはロードロック室104(105)へ搬送される。ロードロック室104(105)が排気された後、ロードロック室104(105)内のウエハは、搬送アーム107a(107b)により、真空搬送室106を通して成膜装置108,109へ搬送される。成膜装置108,109では、上述の方法でウエハ上に膜が堆積される。基板処理装置は、同時に5枚のウエハを収容可能な2つの成膜装置108,109を有しているため、高いスループットで分子層成膜を行うことができる。
【0084】
本発明の実施形態による成膜装置は、酸化シリコン膜の成膜に限らず、窒化シリコンの分子層成膜にも適用することができる。また、トリメチルアルミニウム(TMA)とO3ガスを用いた酸化アルミニウム(Al2O3)の分子層成膜、テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム(TEMAZr)とO3ガスを用いた酸化ジルコニウム(ZrO2)の分子層成膜、テトラキスエチルメチルアミノハフニウム(TEMAHf)とO3ガスを用いた酸化ハフニウム(HfO2)の分子層成膜、ストロンチウムビステトラメチルヘプタンジオナト(Sr(THD)2)とO3ガスを用いた酸化ストロンチウム(SrO)の分子層成膜、チタニウムメチルペンタンジオナトビステトラメチルヘプタンジオナト(Ti(MPD)(THD))とO3ガスを用いた酸化チタン(TiO2)の分子層成膜などを行うことができる。また、O3ガスではなく、酸素プラズマを利用することも可能である。これらのガスの組み合わせを用いても、上述の効果が奏されることは言うまでもない。
【0085】
以上、本発明を実施形態により説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0086】
W・・・ウエハ、1・・・真空容器、2・・・回転テーブル、21・・・コア部、24・・・凹部(基板載置領域)、31,32・・・反応ガスノズル、34・・・ノズルカバー、36A,36B,37A,37B・・・整流板、P1・・・第1の処理領域、P2・・・第2の処理領域、D・・・分離領域、C・・・中心領域、41,42・・・分離ガスノズル、3A,3B・・・反応ガスインジェクタ、4・・・凸状部、51・・・分離ガス供給管、61,62,63・・・排気口、63・・・排気管、65・・・圧力調整器、7・・・ヒータユニット、72,73・・・パージガス供給管、81・・・分離ガス供給管。
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内にて、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板に供給する供給サイクルを複数回実行することにより、反応生成物の複数の層を積層して薄膜を形成する成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおける成膜手法として、基板である半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)等の表面に真空下で第1の反応ガスを吸着させた後、供給するガスを第2の反応ガスに切り替えて、ウエハ表面での両ガスの反応により1層又は複数層の原子層や分子層を形成し、このサイクルを多数回行うことにより、基板上への成膜を行うプロセスが知られている。このプロセスは、例えばALD(Atomic Layer Deposition)やMLD(Molecular Layer Deposition)などと呼ばれており(以下、ALDと呼ぶ)、サイクル数に応じて膜厚を高精度にコントロールすることができると共に、膜質の面内均一性も良好な点で、半導体デバイスの薄膜化に対応できる有効な手法として期待されている。
【0003】
このような成膜方法として、例えば特許文献1には、ウエハ支持部材(又は回転テーブル)の上に回転方向に沿って4枚のウエハを等角度間隔に配置し、ウエハ支持部材と対向するように第1の反応ガスを吐出する第1の反応ガスノズルと、第2の反応ガスを吐出する第2の反応ガスノズルとを回転方向に沿って等角度間隔に配置し、かつこれらの反応ガスノズルの間に分離ガスノズルを配置して、ウエハ支持部材を水平回転させて成膜処理を行う装置が提案されている。このような回転テーブル式のALD装置においては、分離ガスノズルからの分離ガスにより、第1の反応ガスと第2の反応ガスとの混合を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−254181号公報
【特許文献2】特表2008−516428号公報(又は、米国特許出願公開第2006/0073276号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、分離ガスを用いる場合には、分離ガスによって反応ガスが希釈されてしまい、十分な成膜速度を維持するためには、反応ガスを大量に供給しなければならない事態ともなる。
【0006】
上記の特許文献2は、回転基板ホルダ(回転テーブル)の上方に画成される比較的平坦なギャップ領域に前駆物質(反応ガス)を導入し、この領域における前駆物質の流動を抑制するとともに、この領域の両側に設けられた吸気ゾーンから上向きに前駆物質を排気することで、分離ガス(パージガス)による前駆物質の希釈を防止することができる成膜装置を開示している。
【0007】
しかし、そのような領域に前駆物質を閉じ込めるようにすると、前駆物質によっては、熱分解が生じ、反応生成物がその領域に堆積してしまうことが懸念される。反応生成物の堆積は、パーティクル源となるため、歩留まりの低下といった問題が生じ得る。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされ、第1の反応ガスと第2の反応ガスとの混合を抑制するために使用される分離ガスによって第1の反応ガス及び第2の反応ガスが希釈されるのを低減することができる成膜装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、容器内にて、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板に供給する供給サイクルを複数回実行することにより、反応生成物の複数の層を積層して薄膜を形成する成膜装置が提供される。この成膜装置は、容器内に回転可能に設けられ、基板が載置される基板載置領域を第1の面に含む回転テーブル;容器内の第1の供給領域に配置され、回転テーブルの回転方向と交わる方向に延び、回転テーブルの第1の面へ第1の反応ガスを供給する第1の反応ガス供給部;第1の供給領域から回転テーブルの回転方向に沿って離間する第2の供給領域に配置され、回転方向と交わる方向に延び、回転テーブルの第1の面へ第2の反応ガスを供給する第2の反応ガス供給部;第1の反応ガスと第2の反応ガスとを分離する分離ガスを吐出する分離ガス供給部と、分離ガス供給部からの分離ガスを第1の供給領域及び第2の供給領域へ向けて供給する、第1の面との間に所定の高さを有する分離空間を形成する天井面とを含み、第1の供給領域と第2の供給領域との間に配置される分離領域;第1の供給領域に対して設けられる第1の排気口;及び第2の供給領域に対して設けられる第2の排気口;を備える。第1の排気口及び第2の排気口の少なくとも一方の排気口が、排気口に対応する供給領域へ向かって分離領域から供給される分離ガスを、供給領域の反応ガス供給部が延びる第1の方向に沿う方向に導くように配置される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、第1の反応ガスと第2の反応ガスとの混合を抑制するために使用される分離ガスによって第1の反応ガス及び第2の反応ガスが希釈されるのを低減することができる成膜装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態による成膜装置の断面図である。
【図2】図1の成膜装置の内部の概略構成に示す斜視図である。
【図3】図1の成膜装置の平面図である。
【図4】図1の成膜装置における供給領域及び分離領域の一例を示す断面図である。
【図5】分離領域のサイズを説明するための図である。
【図6】図1の成膜装置の他の断面図である。
【図7】図1の成膜装置のまた別の断面図である。
【図8】図1の成膜装置の一部破断斜視図である。
【図9】図1の成膜装置の真空容器内のガスフローパターンを示す説明図である。
【図10】図1の成膜装置の真空容器内のガスフローパターンを示す他の説明図である。
【図11】図1の成膜装置の供給領域の変形例を示す平面図である。
【図12】図1の成膜装置における反応ガスノズル及びノズルカバーの構成図である。
【図13】図12のノズルカバーが取り付けられた反応ガスノズルを説明する図である。
【図14】ノズルカバーの変形例を説明する図である。
【図15】図1の成膜装置で使用される反応ガスインジェクタを説明する図である。
【図16】図1の成膜装置で使用される反応ガスインジェクタを説明する他の図である。
【図17】反応ガス濃度についてのシミュレーションの結果を示す図である。
【図18】反応ガス濃度についてのシミュレーションの結果を示す他の図である。
【図19】反応ガス濃度についてのシミュレーションの結果を示すまた別の図である。
【図20】反応ガスノズルの変形例を示す図である。
【図21】本発明の他の実施形態による成膜装置の断面図である。
【図22】本発明の実施形態による成膜装置を含む基板処理装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は、部材もしくは部品間の相対比を示すことを目的とせず、したがって、具体的な厚さや寸法は、以下の限定的でない実施形態に照らし、当業者により決定されるべきものである。
【0013】
本発明の実施形態による成膜装置は、図1(図3のA−A線に沿った断面図)及び図2に示すように、概ね円形の平面形状を有する扁平な真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、真空容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備える。真空容器1は、容器本体12と、これから分離可能な天板11とから構成されている。天板11は、例えばOリングなどの封止部材13を介して容器本体12に取り付けられ、これにより真空容器1が気密に密閉される。天板11及び容器本体12は、例えばアルミニウム(Al)で作製することができる。
【0014】
図1を参照すると、回転テーブル2は、中央に円形の開口部を有しており、開口部の周りで円筒形状のコア部21により上下から挟まれて保持されている。コア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。回転軸22は容器本体12の底面部14を貫通し、その下端が当該回転軸22を鉛直軸回りに回転させる駆動部23に取り付けられている。この構成により、回転テーブル2はその中心軸を回転中心として回転することができる。なお、回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。このケース体20はその上面に設けられたフランジ部分を介して真空容器1の底面部14の下面に気密に取り付けられており、これにより、ケース体20の内部雰囲気が外部雰囲気から隔離されている。
【0015】
図2及び図3に示すように、回転テーブル2の上面に、それぞれウエハWが載置される複数(図示の例では5つ)の円形凹部状の載置部24が等角度間隔で形成されている。ただし、図3ではウエハWを1枚のみを示している。
【0016】
図4(a)を参照すると、載置部24と載置部24に載置されたウエハWとの断面が示されている。図示のとおり、載置部24は、ウエハWの直径よりも僅かに(例えば4mm)大きい直径と、ウエハWの厚さに等しい深さとを有している。載置部24の深さとウエハWの厚さがほぼ等しいため、ウエハWが載置部24に載置されたとき、ウエハWの表面は、回転テーブル2の載置部24を除く領域の表面とほぼ同じ高さになる。仮に、ウエハWとその領域との間に比較的大きい段差があると、その段差によりガスの流れに乱流が生じ、ウエハW上での膜厚均一性が影響を受ける。この影響を低減するため、2つの表面がほぼ同じ高さにある。「ほぼ同じ高さ」は、高さの差が約5mm以下であって良いが、加工精度が許す範囲でできるだけゼロに近いと好ましい。
【0017】
図2から図4を参照すると、回転テーブル2の回転方向(例えば図3の矢印RD)に沿って互いに離間した2つの凸状部4が設けられている。図2及び図3では天板11を省略しているが、凸状部4は、図4に示すように天板11の下面に取り付けられている。また、図3から分かるように、凸状部4は、ほぼ扇形の上面形状を有しており、その頂部は真空容器1のほぼ中心に位置し、円弧は容器本体12の内周壁に沿って位置している。さらに、図4(a)に示すように、凸状部4は、その下面44が回転テーブル2から高さh1に位置するように配置される。
【0018】
また、図3及び図4を参照すると、凸状部4は、凸状部4が二分割されるように半径方向に延びる溝部43を有し、溝部43には分離ガスノズル41(42)が収容されている。溝部43は、本実施形態では、凸状部4を二等分するように形成されるが、他の実施形態においては、例えば、凸状部4における回転テーブル2の回転方向上流側が広くなるように溝部43を形成しても良い。分離ガスノズル41(42)は、図3に示すように、容器本体12の周壁部から真空容器1内へ導入され、その基端部であるガス導入ポート41a(42a)を容器本体12の外周壁に取り付けることにより支持されている。
【0019】
分離ガスノズル41(42)は、分離ガスのガス供給源(図示せず)に接続されている。分離ガスはチッ素(N2)ガスや不活性ガスであって良く、また、成膜に影響を与えないガスであれば、分離ガスの種類は特に限定されない。本実施形態においては、分離ガスとしてN2ガスが利用される。また、分離ガスノズル41(42)は、回転テーブル2の表面に向けてN2ガスを吐出するための吐出孔40(図4)を有している。吐出孔40は、長さ方向に所定の間隔で配置されている。本実施形態においては、吐出孔40は、約0.5mmの口径を有し、分離ガスノズル41(42)の長さ方向に沿って約10mmの間隔で配列されている。
【0020】
以上の構成により、分離ガスノズル41とこれに対応する凸状部4とにより、分離空間Hを画成する分離領域D1が提供される。同様に、分離ガスノズル42とこれに対応する凸状部4とにより、分離空間Hを画成する分離領域D2が提供される。また、分離領域D1に対して回転テーブル2の回転方向下流側には、分離領域D1,D2と、回転テーブル2と、天板11の下面45(以下、天井面45)と、容器本体12の内周壁とで概ね囲まれる第1の領域48A(第1の供給領域)が形成されている。さらに、分離領域D1に対して回転テーブル2の回転方向上流側には、分離領域D1,D2と、回転テーブル2と、天井面45と、容器本体12の内周壁とで概ね囲まれる第2の領域48B(第2の供給領域)が形成されている。分離領域D1,D2において、分離ガスノズル41,42からN2ガスが吐出されると、分離空間Hは比較的高い圧力となり、N2ガスは分離空間Hから第1の領域48A及び第2の領域48Bへ向かって流れる。言い換えると、分離領域D1,D2における凸状部4は、分離ガスノズル41,42からのN2ガスを第1の領域48A及び第2の領域48Bへ案内する。
【0021】
また、図2及び図3を参照すると、第1の領域48Aにおいて容器本体12の周壁部から回転テーブル2の半径方向に反応ガスノズル31が導入され、第2の領域48Bにおいて容器本体12の周壁部から回転テーブルの半径方向に反応ガスノズル32が導入されている。これらの反応ガスノズル31,32は、分離ガスノズル41,42と同様に、基端部であるガス導入ポート31a,32aを容器本体12の外周壁に取り付けることにより支持されている。なお、反応ガスノズル31,32は、半径方向に対して所定の角度をなすように導入されてもよい。
【0022】
また、反応ガスノズル31,32は、回転テーブル2の上面(ウエハの載置部24がある面)に向けて反応ガスを吐出するための複数の吐出孔33を有している(図4参照)。本実施形態においては、吐出孔33は約0.5mmの口径を有し、反応ガスノズル31,32の長さ方向に沿って約10mmの間隔で配列されている。
【0023】
図示を省略するが、反応ガスノズル31は、第1の反応ガスのガス供給源に接続され、反応ガスノズル32は、第2の反応ガスのガス供給源に接続されている。第1の反応ガス及び第2の反応ガスとしては後に述べる組み合わせを始めとして種々のガスを使用できるが、本実施形態においては、第1の反応ガスとしてビスターシャルブチルアミノシラン(BTBAS)ガスが利用され、第2の反応ガスとしてオゾン(O3)ガスが利用される。また、以下の説明において、反応ガスノズル31の下方の領域を、BTBASガスをウエハに吸着させるための処理領域P1といい、反応ガスノズル32の下方の領域を、O3ガスをウエハに吸着したBTBASガスと反応(酸化)させるための処理領域P2という場合がある。
【0024】
再び図4を参照すると、分離領域D1には平坦な低い天井面44があり(図示していないが分離領域D2においても同様)、第1の領域48A及び第2の領域48Bには、天井面44よりも高い天井面45がある。このため、第1の領域48A及び第2の領域48Bの容積は、分離領域D1,D2における分離空間Hの容積よりも大きい。また、後述するように、本実施形態による真空容器1には、第1の領域48A及び第2の領域48Bをそれぞれ排気するための排気口61,62が設けられている。これらにより、第1の領域48A及び第2の領域48Bを、分離領域D1,D2の分離空間Hに比べて低い圧力に維持することができる。この場合、第1の領域48Aにおいて反応ガスノズル31から吐出されるBTBASガスは、分離領域D1,D2の分離空間Hの圧力が高いため、分離空間Hを通り抜けて第2の領域48Bへ到達することができない。また、第2の領域48Bにおいて反応ガスノズル32から吐出されるO3ガスは、分離領域D1,D2の分離空間Hの圧力が高いため、分離空間Hを通り抜けて第1の領域48Aへ到達することができない。したがって、両反応ガスは、分離領域D1,D2により分離され、真空容器1内の気相中で混合されることは殆ど無い。
【0025】
なお、低い天井面44の回転テーブル2の上面から測った高さh1(図4(a))は、分離ガスノズル41(42)からのN2ガスの供給量にもよるが、分離領域D1,D2の分離空間Hの圧力を第1の領域48A及び第2の領域48Bの圧力よりも高くできるように設定される。高さh1は例えば0.5mmから10mmであると好ましく、できる限り小さくすると更に好ましい。ただし、回転テーブル2の回転ぶれによって回転テーブル2が天井面44に衝突するのを避けるため、高さh1は3.5mmから6.5mm程度であって良い。また、凸状部4の溝部43に収容される分離ガスノズル42(41)の下端から回転テーブル2の表面までの高さh2(図4(a))も同様に0.5mm〜4mmであって良い。
【0026】
また、凸状部4は、図5(a)及び(b)に示すように、例えば、ウエハ中心WOが通る経路に対応する円弧の長さLがウエハWの直径の約1/10〜約1/1、好ましくは約1/6以上であると好ましい。これにより、分離領域D1,D2の分離空間Hを確実に高い圧力に維持することが可能となる。
【0027】
以上の構成を有する分離領域D1,D2によれば、回転テーブル2が例えば約240rpmの回転速度で回転した場合であっても、BTBASガスとO3ガスとをより確実に分離することができる。
【0028】
図1、図2、及び図3を再び参照すると、コア部21を取り囲むように天板11の下面に取り付けられた環状の突出部5が設けられている。突出部5は、コア部21よりも外側の領域において回転テーブル2と対向している。本実施形態においては、図7に明瞭に示すように、空間50の下面の回転テーブル2からの高さh15は、空間Hの高さh1よりも僅かに低い。これは、回転テーブル2の中心部近傍での回転ぶれが小さいためである。具体的には、高さh15は1.0mmから2.0mm程度であって良い。なお、他の実施形態においては、高さh15とh1は等しくても良く、また、突出部5と凸状部4は一体に形成されても、別体として形成されて結合されても良い。なお、図2及び図3は、凸状部4を真空容器1内に残したまま天板11を取り外した真空容器1の内部を示している。
【0029】
図1の約半分の拡大図である図6を参照すると、真空容器1の天板11の中心部には分離ガス供給管51が接続されており、これにより、天板11とコア部21との間の空間52にN2ガスが供給される。この空間52に供給されたN2ガスにより、突出部5と回転テーブル2との狭い隙間50は、第1の領域48A及び第2の領域48Bに比べて高い圧力に維持され得る。このため、第1の領域48Aにおいて反応ガスノズル31から吐出されるBTBASガスは、圧力の高い隙間50を通り抜けて第2の領域48Bへ到達することができない。また、第2の領域48Bにおいて反応ガスノズル32から吐出されるO3ガスは、圧力の高い隙間50を通り抜けて第1の領域48Aへ到達することができない。したがって、両反応ガスは、隙間50により分離され、真空容器1内の気相中で混合されることは殆ど無い。すなわち、本実施形態の成膜装置においては、BTBASガスとO3ガスとを分離するために回転テーブル2の回転中心部と真空容器1とにより画成され、第1の領域48A及び第2の領域48Bよりも高い圧力に維持される中心領域Cが設けられている。
【0030】
図7は、図3のB−B線に沿った断面図の約半分を示し、ここには凸状部4と、凸状部4と一体に形成された突出部5が図示されている。図示のとおり、凸状部4は、その外縁においてL字状に屈曲する屈曲部46を有している。屈曲部46は、回転テーブル2と容器本体12との間の空間を概ね埋めており、反応ガスノズル31からのBTBASガスと反応ガスノズル32からのO3ガスとがこの隙間を通して混合するのを阻止する。屈曲部46と容器本体12との間の隙間、及び屈曲部46と回転テーブル2との間の隙間は、例えば、回転テーブル2から凸状部4の天井面44までの高さh1とほぼ同一であって良い。また、屈曲部46があるため、分離ガスノズル41,42(図3)からのN2ガスは、回転テーブル2の外側に向かっては流れ難い。よって、分離領域D1,D2から第1の領域48A及び第2の領域48BへのN2ガスの流れが促進される。なお、屈曲部46の下方にブロック部材71bを設ければ、分離ガスが回転テーブル2の下方まで流れるのを更に抑制することができるため、更に好ましい。
【0031】
なお、屈曲部46と回転テーブル2との間の隙間は、回転テーブル2の熱膨張を考慮し、回転テーブル2が後述のヒータユニットにより加熱された場合に、上記の間隔(h1程度)となるように設定することが好ましい。
【0032】
一方、第1の領域48A及び第2の領域48Bにおいて、容器本体12の内周壁は、図3に示すように外方側に窪み、排気領域6が形成されている。この排気領域6の底部には、図3及び図6に示すように、例えば排気口61,62が設けられている。これら排気口61,62は各々排気管63を介して真空排気装置である例えば共通の真空ポンプ64に接続されている。これにより、主に第1の領域48A及び第2の領域48Bが排気され、したがって、上述の通り、第1の領域48A及び第2の領域48Bの圧力が分離領域D1,D2の分離空間Hの圧力よりも低くすることができる。
【0033】
また、図3を参照すると、第1の領域48Aに対応する排気口61は、回転テーブル2の外側(排気領域6)において反応ガスノズル31の下方に位置している。これにより、反応ガスノズル31の吐出孔33(図4)から吐出されるBTBASガスは、回転テーブル2の上面に沿って、反応ガスノズル31の長手方向に排気口61へ向かって流れることができる。このような配置による利点については、後述する。
【0034】
再び図1を参照すると、排気管63には圧力調整器65が設けられ、これにより真空容器1内の圧力が調整される。複数の圧力調整器65を、対応する排気口61,62に対して設けてもよい。また、排気口61,62は、排気領域6の底部(真空容器1の底部14)に限らず、真空容器の容器本体12の周壁部に設けても良い。また、排気口61,62は、排気領域6における天板11に設けても良い。ただし、天板11に排気口61,62を設ける場合、真空容器1内のガスが上方へ流れるため、真空容器1内のパーティクルが巻き上げられて、ウエハWが汚染されるおそれがある。このため、排気口61,62は、図示のように底部に設けるか、容器本体12の周壁部に設けると好ましい。また、排気口61,62を底部に設ければ、排気管63、圧力調整器65、及び真空ポンプ64を真空容器1の下方に設置することができるため、成膜装置のフットプリントを縮小する点で有利である。
【0035】
図1、及び図6から8に示すように、回転テーブル2と容器本体12の底部14との間の空間には、加熱部としての環状のヒータユニット7が設けられ、これにより、回転テーブル2上のウエハWが、回転テーブル2を介して所定の温度に加熱される。また、ブロック部材71aが、回転テーブル2の下方及び外周の近くに、ヒータユニット7を取り囲むように設けられるため、ヒータユニット7が置かれている空間がヒータユニット7の外側の領域から区画されている。ブロック部材71aより内側にガスが流入することを防止するため、ブロック部材71aの上面と回転テーブル2の下面との間に僅かな間隙が維持されるように配置される。ヒータユニット7が収容される領域には、この領域をパージするため、複数のパージガス供給管73が、容器本体12の底部を貫通するように所定の角度間隔をおいて接続されている。なお、ヒータユニット7の上方において、ヒータユニット7を保護する保護プレート7aが、ブロック部材71aと、後述する隆起部Rとにより支持されており、これにより、ヒータユニット7が設けられる空間にBTBASガスやO3ガスが仮に流入したとしても、ヒータユニット7を保護することができる。保護プレート7aは、例えば石英から作製すると好ましい。
【0036】
図6を参照すると、底部14は、環状のヒータユニット7の内側に隆起部Rを有している。隆起部Rの上面は、回転テーブル2及びコア部21に接近しており、隆起部の上面Rと回転テーブル2の裏面との間、及び隆起部の上面とコア部21の裏面との間に僅かな隙間を残している。また、底部14は、回転軸22が通り抜ける中心孔を有している。この中心孔の内径は、回転軸22の直径よりも僅かに大きく、フランジ部20aを通してケース体20と連通する隙間を残している。パージガス供給管72がフランジ部20aの上部に接続されている。
【0037】
このような構成により、図6に示すように、回転軸22と底部14の中心孔との間の隙間、コア部21と底部14の隆起部Rとの間の隙間、及び底部14の隆起部Rと回転テーブル2の裏面との間の隙間を通して、パージガス供給管72からヒータユニット7の下の空間へN2ガスが流れる。また、パージガス供給管73からヒータユニット7の下の空間へN2ガスが流れる。そして、これらのN2ガスは、ブロック部材71aと回転テーブル2の裏面との間の隙間を通して排気口61へ流れ込む。このように流れるN2ガスは、BTBASガス(O3ガス)の反応ガスが回転テーブル2の下方の空間を回流してO3ガス(BTBASガス)と混合するのを防止する分離ガスとして働く。
【0038】
図2、図3及び図8を参照すると、容器本体12の周壁部には搬送口15が形成されている。ウエハWは、搬送口15を通して搬送アーム10により真空容器1の中へ、又は真空容器1から外へと搬送される。この搬送口15にはゲートバルブ(図示せず)が設けられ、これにより搬送口15が開閉される。また、凹部24の底面には3つの貫通孔(図示せず)が形成されており、これらの貫通孔を通して3本の昇降ピン16(図8)が上下動することができる。昇降ピン16は、ウエハWの裏面を支えて当該ウエハWを昇降させ、ウエハWの搬送アーム10との間で受け渡しを行う。
【0039】
また、この実施形態による成膜装置には、図3に示すように、装置全体の動作のコントロールを行うための制御部100が設けられている。この制御部100は、例えばコンピュータで構成されるプロセスコントローラ100aと、ユーザインタフェース部100bと、メモリ装置100cとを有する。ユーザインタフェース部100bは、成膜装置の動作状況を表示するディスプレイや、成膜装置の操作者がプロセスレシピを選択したり、プロセス管理者がプロセスレシピのパラメータを変更したりするためのキーボードやタッチパネル(図示せず)などを有する。
【0040】
メモリ装置100cは、プロセスコントローラ100aに種々のプロセスを実施させる制御プログラム、プロセスレシピ、及び各種プロセスにおけるパラメータなどを記憶している。また、これらのプログラムには、例えば後述するクリーニング方法を行わせるためのステップ群を有しているものがある。これらの制御プログラムやプロセスレシピは、ユーザインタフェース部100bからの指示に従って、プロセスコントローラ100aにより読み出されて実行される。また、これらのプログラムは、コンピュータ可読記憶媒体100dに格納され、これらに対応した入出力装置(図示せず)を通してメモリ装置100cにインストールしてよい。コンピュータ可読記憶媒体100dは、ハードディスク、CD、CD−R/RW、DVD−R/RW、フレキシブルディスク、半導体メモリなどであってよい。また、プログラムは通信回線を通してメモリ装置100cへダウンロードしてもよい。
【0041】
次に、本実施形態の成膜装置の動作(成膜方法)について説明する。まず、載置部24が搬送口15に整列するように回転テーブル2が回転して、ゲートバルブ(図示せず)を開く。次に、搬送アーム10により搬送口15を介してウエハWを真空容器1内へ搬入される。ウエハWは、昇降ピン16により受け取られ、搬送アーム10が容器1から引き抜かれた後に、昇降機構(図示せず)により駆動される昇降ピン16によって載置部24へと下げられる。上記一連の動作が5回繰り返されて、5枚のウエハWが対応する凹部24に載置される。
【0042】
続いて、真空容器1内が、真空ポンプ64及び圧力調整器65により、予め設定した圧力に維持される。回転テーブル2が上から見て時計回りに回転を開始する。回転テーブル2は、ヒータユニット7により前もって所定の温度(例えば300℃)に加熱されており、ウエハWがこの回転テーブル2に載置されることで加熱される。ウエハWが加熱され、所定の温度に維持されたことが温度センサ(図示せず)により確認された後、BTBASガスが反応ガスノズル31を通して第1の処理領域P1へ供給され、O3ガスが反応ガスノズル32を通して第2の処理領域P2へ供給される。加えて、分離ガスノズル41,42からN2ガスが供給される。さらに、中心領域Cから、すなわち、突出部5と回転テーブル2との間から回転テーブル2の表面に沿ってN2ガスが吐出される。また、分離ガス供給管51、パージガス供給管72,73からもN2ガスが供給される。
【0043】
ウエハWが反応ガスノズル31の下方の第1の処理領域P1を通過するときに、ウエハWの表面にBTBAS分子が吸着し、反応ガスノズル32の下方の第2の処理領域P2と通過するときに、ウエハWの表面にO3分子が吸着され、O3によりBTBAS分子が酸化される。したがって、回転テーブル2の回転により、ウエハWが処理領域P1、P2の両方を一回通過すると、ウエハWの表面に酸化シリコンの一分子層(又は2以上の分子層)が形成される。次いで、ウエハWが領域P1、P2を交互に複数回通過し、所定の膜厚を有する酸化シリコン膜がウエハWの表面に堆積される。所定の膜厚を有する酸化シリコン膜が堆積された後、BTBASガスとO3ガスの供給を停止し、回転テーブル2の回転を停止する。そして、ウエハWは搬入動作と逆の動作により順次搬送アーム10により容器1から搬出され、成膜プロセスが終了する。
【0044】
次に、図9を参照しながら、真空容器1内のガスのフローパターンを説明する。分離領域D1の分離ガスノズル41から吐出されるN2ガスは、回転テーブル2の半径方向とほぼ直交するように、凸状部4と回転テーブル2との間の分離空間H(図4(a)参照)から第1の領域48A及び第2の領域48Bへと流出する。分離領域D1から第1の領域48Aへ流れ出たN2ガスは、排気口61により吸引されて、中心領域CからのN2ガスとともに、排気口61へ流入する。このため、反応ガスノズル31の近くでは、N2ガスは反応ガスノズル31のほぼ長手方向に沿って流れることとなる。したがって、分離領域D1から第1の領域48Aへ流れ出たN2ガスが、反応ガスノズル31の下方の第1の処理領域P1を横切ることは殆ど無い。故に、反応ガスノズル31から回転テーブル2へ向けて吐出されたBTBASガスが、N2ガスにより希釈されるのが抑制され、高い濃度でウエハWに吸着され得る。
【0045】
また、分離領域D2の分離ガスノズル42から吐出されて、分離領域D2の分離空間Hから第1の領域48Aへ流れ出るN2ガスもまた排気口61に吸引されて、反応ガスノズル31の長手方向に沿うようにして排気口61へ流れ込む。よって、分離領域D2からのN2ガスもまた反応ガスノズル31の下方の第1の処理領域P1を横切ることが殆ど無い。したがって、BTBASガスのN2ガスによる希釈がより確実に抑制される。
【0046】
一方、分離領域D2から第2の領域48Bへ流れ出たN2ガスは、中心領域CからのN2ガスにより外側へ流されながらも、排気口62に向かって流れ、これに流入する。また、第2の領域48Bの反応ガスノズル32から吐出されるO3ガスもまた同様に流れて排気口62へ流入する。
【0047】
この場合、N2ガスは第2の領域48Bの反応ガスノズル32の下方の処理領域P2を通過し得るため、反応ガスノズル32から吐出されるO3ガスが希釈される可能性がある。しかし、本実施形態においては、第2の領域48が第1の領域よりも広く、反応ガスノズル32を排気口62からできる限り離して配置しているため、O3ガスは、反応ガスノズル32から吐出されて排気口62に流入するまでの間に、ウエハW上に吸着したBTBAS分子と十分に反応(酸化)することができる。すなわち、本実施形態においては、O3ガスのN2ガスによる希釈の影響は限定的である。
【0048】
なお、反応ガスノズル32から吐出されたO3ガスの一部は、分離領域D2へ向かって流れ得るが、分離領域D2の分離空間Hは、上述のとおり、第2の領域48Bに比べて圧力が高いため、そのO3ガスは分離領域D2へ侵入することができず、分離領域D2からのN2ガスとともに流れて排気口62へ至る。また、反応ガスノズル32から排気口62へ向かって流れるO3ガスの一部が、分離領域D1へ向かって流れ得るが、上記と同様に、この分離領域D1へ侵入することができない。すなわち、O3ガスは、分離領域D1,D2を通り抜けて第1の領域48Aへ到達することができず、よって、両反応ガスの混合が抑制される。
【0049】
また、本実施形態では、分離領域D1,D2から第1の領域48Aへ回転テーブル2の半径方向にほぼ直交する方向に流れ出るN2ガスの流れの方向を、反応ガスノズル31の長手方向に沿う方向に変えることにより、N2ガスが反応ガスノズル31の下方の第1の処理領域P1を横切らないようにすることができる限りにおいて、排気口61は反応ガスノズル31の直下ではなく、反応ガスノズル31からずれて配置されても良い。この場合、排気口61は、回転テーブル2の回転方向の上流側及び下流側のいずれにずれても良いが、回転テーブル2の回転方向を考慮すると、分離領域D1から第1の領域48Aへより大量のN2ガスが流れ出るから、このN2ガスが第1の処理領域P1を横切らないようにするためには上流側がより好ましい。また、排気口61は、反応ガスノズル31の下方と分離領域D1との間に配置されても良い。
【0050】
また、排気口61,62(及び後述する排気口63)は、図示の例では円形の開口を有しているが、楕円形又は矩形の開口を有しても良い。さらに、排気口61(又は63)は、反応ガスノズル31(又は32)の下方から回転テーブル2の回転方向上流側へ向かって、容器本体12の内周壁の曲率に沿って延びる開口を有しても良い。さらにまた、排気領域6において、反応ガスノズル31(又は32)の下方に一の排気口を設け、この一の排気口に対して回転テーブル2の回転方向の上流側に一つ又は2以上の他の排気口を設けても良い。
【0051】
なお、図10に示すように、回転テーブル2の外側において反応ガスノズル32の下方に排気口63を設けても良い。これによれば、O3ガスについても、反応ガスノズル32から吐出されるO3ガスのN2ガスによる希釈が抑制され、O3ガスが高い濃度でウエハWに到達することができる。図9の配置と図10の配置は、O3ガスに応じて、適宜選択して良い。また、反応ガスノズル31と反応ガスノズル32の両方の下方に排気口を設けても良い。
【0052】
なお、反応ガスノズル31,32を容器本体12の周壁部から導入するのではなく、真空容器1の中心側から導入する場合は、反応ガスノズル31,32は、回転テーブル2の外周端の上方で終端して良く、この場合、排気口は、そのような反応ガスノズルの長手方向の延長上に配置されて良い。これによっても、上述の効果が発揮される。
【0053】
さらに、図11(a)に示すように、反応ガスノズル31を第1の領域48Aの中央に配置し、回転テーブル2の外側(排気領域6)において反応ガスノズル31の下方に排気口61を配置しても良い。さらに、第1の領域48Aの幅は、任意に設定することができ、例えば、図11(b)に示すように、他の図に示した第1の領域48Aよりも狭くしても良い。このようにすれば、第1の領域48A及び第2の領域48Bに加えて、他の反応ガスに対応した他の領域を真空容器1内に画定し易くなり、多元化合物のALD成膜も可能となる。
【0054】
次に、図12を参照しながら、反応ガスをより高い濃度でウエハW(回転テーブル2)に供給するための構成について説明する。図12には、反応ガスノズル31,32に取り付けられるノズルカバー34が図示されている。ノズルカバー34は、反応ガスノズル31,32の長手方向に沿って延び、コ字型の断面形状を有する基部35を有している。基部35は、反応ガスノズル31,32を覆うように配置されている。基部35における上記長手方向に延びる2つの開口端の一方には、整流板36Aが取り付けられ、他方には、整流板36Bが取り付けられている。
【0055】
図12(b)に明瞭に示されるように、本実施形態においては、整流板36A,36Bは、反応ガスノズル31,32の中心軸に対して左右対称に形成されている。また、整流板36A,36Bの回転テーブル2の回転方向に沿った長さは、回転テーブル2の外周部に向かうほど長くなっており、このため、ノズルカバー34は、概ね扇形状の平面形状を有している。ここで、図12(b)に点線で示す扇の開き角度は、分離領域D1,D2の凸状部4のサイズをも考慮して決定されるが、例えば5°以上90°未満であると好ましく、具体的には例えば8°以上10°未満であると更に好ましい。
【0056】
図13は、真空容器1の内部を、反応ガスノズル31の長手方向外側から見た図である。図示のとおり、上述のように構成されるノズルカバー34は、整流板36A,36Bが回転テーブル2の上面に対してほぼ平行に近接するように、反応ガスノズル31,32に取り付けられている。ここで、例えば高い天井面45の回転テーブル2の上面からの高さ15mm〜150mmに対して、整流板36Aの回転テーブル2の上面からの高さh3は例えば0.5mm〜4mmであって良く、ノズルカバー34の基部35と高い天井面45との間隔h4は例えば10mm〜100mmであって良い。また、回転テーブル2の回転方向に対して反応ガスノズル31,32の上流側に整流板36Aが配置され、下流側に整流板36Bが配置されている。このような構成により、凸状部4と回転テーブル2との間の分離空間Hから第1の領域48Aへ流れ出るN2ガスは、整流板36Aにより、反応ガスノズル31の上方の空間へ流れ易く、下方の処理領域P1へ侵入し難くなるため、反応ガスノズル31からのBTBASガスのN2ガスによる希釈が更に抑制される。
【0057】
なお、回転テーブル2の回転による遠心効果のため、N2ガスは回転テーブル2の外縁近傍において大きなガス流速を有し得るから、外縁近傍においては第1の空間へのN2ガスの侵入抑制効果が低下するとも思われる。しかし、図12(b)に示すように、整流板36Aは、回転テーブル2の外縁部に向かうに従って幅が広くなるため、N2ガスの侵入抑制効果の低下を相殺することができる。
【0058】
また、図13では、反応ガスノズル31に取り付けられたノズルカバー34を示しているが、ノズルカバー34は、反応ガスノズル32に取り付けられても良く、両方の反応ガスノズル31,32に取り付けられても良い。また、図9に示すように、反応ガスノズル32の下方に排気口が設けられていない場合に、この反応ガスノズル32にのみノズルカバー34を取り付けても良い。
【0059】
以下、ノズルカバー34の変形例について図14を参照しながら説明する。図14(a)及び14(b)に示すように、基部35(図12)を用いずに、整流板37A,37Bを反応ガスノズル31,32に対して直接に取り付けても良い。この場合であっても、整流板37A,37Bは、回転テーブル2の上面から高さh3の位置に配置することができるため、上述のノズルカバー34と同様の効果が得られる。この例においても、整流板37A,37Bは、図12に示した整流板36A,36Bと同様に、上方から見てほぼ扇形状をなしていると好ましい。
【0060】
また、整流板36A,36B,37A,37Bは、必ずしも回転テーブル2と平行でなくても良い。例えば、回転テーブル2(ウエハW)からの高さh3が維持されて、反応ガスノズル31,32の上方の第2の空間へN2ガスを流れ易くすることができる限り、図14(c)に示すように、整流板37A,37Bは反応ガスノズル31の上部から回転テーブル2へ向かうように傾斜していても良い。図示の整流板37Aは、N2ガスを第2の空間Rへガイドすることができる点でも好ましい。
【0061】
続いて、ノズルカバーの更なる変形例について、図15及び図16を参照しながら説明する。これらの変形例は、ノズルカバーと一体化された反応ガスノズル、又はノズルカバーの機能を有する反応ガスノズルとも言うことができる。このため、以下の説明では反応ガスインジェクタと称呼する。
【0062】
図15(a)及び(b)を参照すると、反応ガスインジェクタ3Aは、反応ガスノズル31,32と同様に円筒形状を有する反応ガスノズル321を含み、反応ガスノズル321が真空容器1の容器本体(図1)の周壁部を貫通するように設けることができる。反応ガスノズル321は、反応ガスノズル31,32と同様に、約0.5mmの内径を有し、例えば10mmの間隔で反応ガスノズル321の長手方向に配列される複数の吐出孔323を有している。ただし、反応ガスノズル321は、複数の吐出孔323が回転テーブル2の上面に対して所定の角度で開口している点で、反応ガスノズル31,32と異なる。また、反応ガスノズル321の上端部には案内板325が取り付けられている。案内板325は、反応ガスノズル321の円筒の曲率よりも大きい曲率を有しており、曲率の相違により、反応ガスノズル321と案内板325との間にはガス流路316が形成されている。図示しないガス供給源から反応ガスノズル321へ供給された反応ガスは、吐出孔323から吐出され、ガス流路316を通って回転テーブル2上に載置されるウエハW(図13)に到達する。
【0063】
また、案内板325の下端部には回転テーブル2の回転方向上流側に延びる整流板37Aが設けられ、反応ガスノズル321の下端部には回転テーブル2の回転方向下流側に延びる整流板37Bが設けられている。
【0064】
このように構成される反応ガスインジェクタ3Aは、整流板37A,37Bが回転テーブル2の上面に近接しているため、分離領域D1,D2からのN2ガスが、反応ガスノズル321の下方の処理領域へ侵入し難くなる。したがって、反応ガスノズル321からの反応ガスのN2ガスによる希釈がより確実に抑制される。
【0065】
なお、反応ガスは、反応ガスノズル321から反応ガス流出孔323を通してガス流路316へ到達するときに、案内板325に吹き付けられるため、図15(b)の複数の矢印で示すように、反応ガスノズル321の長手方向に広がることとなる。このため、ガス流路326内において、ガス濃度が均一化される。すなわち、この変形例は、ウエハWに堆積される膜の膜厚を均一化できる点で好ましい。
【0066】
図16(a)を参照すると、反応ガスインジェクタ3Bは、方形管により構成される反応ガスノズル321を有している。反応ガスノズル321は、図16(b)に示すように、例えば内径0.5mmを有し、反応ガスノズル321の長手方向に沿って例えば5mm間隔で配置される複数の反応ガス流出孔323を一方の側壁に有している。また、反応ガス流出孔323が形成された側壁には、逆L字形状を有する案内板325が、当該側壁との間に所定の間隔(例えば0.3mm)をおいて取り付けられている。
【0067】
また、図16(b)に示すように、反応ガスノズル321には、真空容器1の容器本体12の周壁部(例えば図2を参照)から導入されたガス導入管327が接続されている。これにより、反応ガスノズル321が支持されるとともに、例えばBTBASガスはガス導入管327を通して反応ガスノズル321へ供給されて、複数の反応ガス流出孔323からガス流路326を通して、回転テーブル2に向けて供給される。また、この例の反応ガスノズル321は、ガス流路326が回転テーブル2の回転方向上流側に位置するように、配置されている。
【0068】
このように構成される反応ガスインジェクタ3Bは、反応ガスノズル321の下面が回転テーブル2の上面から高さh3の位置に配置され得るため、分離領域D1,D2からのN2ガスは、反応ガスインジェクタ3Bの上方へ流れ易く、下方の処理領域へ侵入し難くなる。また、反応ガスノズル321の下面が、ガス流路326に対して回転テーブル2の回転方向下流側に配置されているため、ガス流路326から供給されるBTBASガスを回転テーブル2と反応ガスノズル321との間に比較的長く滞留させることができるため、ウエハWへのBTBASガスの吸着効率を向上することができる。また、反応ガス流出孔323から流出した反応ガスが案内板325に衝突し、図16(b)に矢印で示すように広がるため、ガス流路326の長手方向に沿って反応ガスの濃度が均一化される。
なお、反応ガスノズル321は、ガス流路326が回転テーブル2の回転方向下流側に位置するように配置しても良い。この場合、反応ガスノズル321の下面が、ガス流路326に対して回転テーブル2の回転方向上流側に配置され、N2ガスの反応ガスノズル321の下方への侵入を妨げるのに寄与し得るため、反応ガスのN2ガスによる希釈がより確実に抑制される。
なお、図15及び図16に示す反応ガスインジェクタ3A,3Bは、例えばO3ガスを回転テーブル2の表面に向けて供給するために使用されて良い。
【0069】
次に、図17から図19を参照しながら、回転テーブル2の上面近傍における反応ガスの濃度について行ったシミュレーションの結果を説明する。図17(a)は、図中に示すように排気領域6における反応ガスノズル31の下方に排気口61が配置された場合に、反応ガスノズル31からのBTBASガスが回転テーブル2上でどのように広がるかを示している。一方、図17(b)は、排気口61が反応ガスノズル31の下方から、回転テーブル2の回転方向下流側に大きくずれて配置された場合に、反応ガスノズル31からの反応ガスが回転テーブル2上でどのように広がるかを示している。このシミュレーションは、
・反応ガスノズル31からのBTBASガスの供給量: 100sccm
・分離ガスノズル41,42からのN2ガスの供給量: 14,500sccm
・回転テーブル2の回転速度: 20rpm
・反応ガスノズル31と回転テーブル2との間の間隔: 4mm
・反応ガスノズル31の吐出孔33の内径: 0.5mm
・吐出孔33の間隔(ピッチ): 10mm
という条件で行った。なお、反応ガスノズル31にはノズルカバー34(図12、図14)は取り付けられていない。
【0070】
図17(a)に示すように、反応ガスノズル31の下方に排気口61を配置する場合は、反応ガスノズル31の長手方向の全体において狭い範囲で、反応ガス濃度が約10%以上となっている。また、反応ガスは、回転テーブル2の回転方向下流側においても、あまり広い範囲に広がっていない。さらに、反応ガスノズル31よりも回転テーブル2の回転方向上流側に僅かに広がっていることが分かる。これに対して、排気口61が反応ガスノズル31の下方から大きくずれる場合には、図17(b)に示すように、反応ガス濃度が10%以上の範囲は無く、また、反応ガスが回転テーブル2の回転方向下流側に広がっていることが分かる。しかも、反応ガスは回転テーブル2の回転方向上流側に広がることがない。
【0071】
これらの結果から、図17(b)の場合は、特に反応ガスノズル31の上流側(図2等における分離領域D1)からのN2ガスにより、反応ガスノズル31からの反応ガスが押し流されて、反応ガスが広い範囲に広がってガス濃度が低下する一方、図17(a)の場合は、N2ガスによって反応ガスが押し流されることがないため、狭い範囲に高濃度で存在できることが分かる。すなわち、排気口61が反応ガスノズル31の下方に配置される場合は、N2ガスは、分離領域D1,D2から第1の領域48Aへ流れ出た後に、反応ガスノズル31の長手方向に沿った方向に向きを変えて排気口61へ流入するため、反応ガスノズル31の下方の第1の処理領域P1を横切ることがなく、反応ガスを希釈することがない。また、反応ガスは、反応ガスノズル31の長手方向に沿った方向に流れるN2ガスに挟まれるように、当該長手方向に流れて排気口61へ流入していると考えられる。このような流れにより反応ガスは高濃度に保たれ、したがって、第1の処理領域を通過するウエハWに確実に吸着されることとなる。
【0072】
また、図17(a)の場合、反応ガスが高濃度で狭い範囲に限定されて広がらないことから、反応ガスどうしの気相中での混合がより確実に抑制される。さらに、反応ガスを狭い範囲に限定できるから、分離領域D1(又はD2)の分離ガスノズル41(又は42)からのN2ガスの流量を大きくして分離空間Hの圧力を過剰に高くしなくても、両反応ガスを十分に分離することが可能となる。このため、N2ガスの流量及び排気装置の負荷を低減してランニングコストを低減できる点でも有利である。
【0073】
次に、図15に示す反応ガスインジェクタ3Aを用いた場合のシミュレーションについて説明する。このシミュレーションは、反応ガスノズル31の代わりに反応ガスインジェクタ3Aを使用する以外は、図17(b)の場合と同一の条件で行った。すなわち、排気口61は、反応ガスインジェクタ3Bの下方から大きくずれている。図18(a)に、シミュレーション結果を示す。図17(b)の場合と顕著な差は認められないものの、反応ガス濃度が4.5〜6%の範囲は広くなっている。これは、整流板37A,37B及び案内板325により、反応ガスインジェクタ3Aの下方の第1の処理領域P1を横切るN2ガスが低減されたためと考えることができる。
【0074】
また、図18(b)は、図16に示す反応ガスインジェクタ3Bを用いた場合のシミュレーションの結果を示している。このシミュレーションは、反応ガスノズル31の代わりに反応ガスインジェクタ3Bを使用する以外は、図17(b)の場合と同一の条件で行った。図示のとおり、反応ガスインジェクタ3Bからの反応ガスは、回転テーブル2の回転方向下流側に大きく広がっているものの、図17(b)に比べると、ガス濃度の高い範囲が広い。特に真空容器(図2)の中央に近い側で反応ガス濃度が高くなっている。これは、反応ガスインジェクタ3Bの反応ガスノズル321の下面が回転テーブル2の上面に近接し、第1の反応領域P1へ侵入するN2ガスを低減できるためと考えられる。図示の結果から、排気口61を反応ガスインジェクタ3Bの下方に配置すれば、図17(a)の場合よりも更に高いガス濃度が実現されると考えられる。
【0075】
図19は、図17(a)から図18(b)までに対応した、反応ガス濃度の回転テーブル2の半径方向に沿った濃度分布を示している。図18(a)に示した、排気口61が反応ガスノズル31の下方に配置される場合は、回転テーブル2の半径方向の中央付近で反応ガス濃度が30%を超えており、他の場合よりも大幅に高い反応ガス濃度が実現されていることが分かる。なお、図19の曲線A,Bが周期的に増減しているのは、反応ガスノズル31の吐出孔33の分布によるものである。すなわち、吐出孔33の直下でガス濃度が高くなっていることを示している。一方、曲線C,Dにおいては、このような増減は顕著ではない。これは、反応ガスインジェクタ3A,3Bにおける反応ガスノズル321の吐出孔323から吐出した反応ガスが案内板325に衝突し、ガス流路326において反応ガスインジェクタ3A,3Bの長手方向にガス濃度が均一化されるためである。
【0076】
また、曲線A(排気口61が反応ガスノズル31の下方に配置される場合)において、回転テーブル2の半径方向の中央付近で濃度が高くなるのは、反応ガスノズル31の先端(真空容器1の中心に近い側)から基端部へ向かって反応ガスが流れるため、その流れの下流方向へ向かって反応ガス濃度が高くなる一方、その流れの下流側では排気口61により排気されるため、その方向に沿って反応ガス濃度が低くなるためと考えることができる。
【0077】
このような反応ガス濃度分布は、図20に示すように、反応ガスノズル31の吐出孔33の間隔を調整することにより、平坦化することが可能である。図20(a)を参照すると、反応ガスノズル31の先端側では吐出孔33が高密度で形成され、基端部側では低密度で形成されている。また、用いる反応ガスによっては、図20(b)に示すように、反応ガスノズル31の先端側にのみ吐出孔33を形成しても良い。また、基端部側に吐出孔を高密度に形成しても良い。反応ガスが反応ガスノズル31の長手方向に流れる場合、反応ガスがウエハWの表面に吸着することにより、反応ガスの流れの方向に沿って反応ガス濃度が低下することとなるが、基端部側に高密度で吐出孔を形成すれば、この濃度低下を相殺することができる。
【0078】
ここで、本発明の他の実施形態による成膜装置を説明する。図21を参照すると、容器本体12の底部14は、中央開口を有し、ここには収容ケース80が気密に取り付けられている。また、天板11は、中央凹部80aを有している。支柱81が収容ケース80の底面に載置され、支柱81の状端部は中央凹部80aの底面にまで到達している。支柱81は、反応ガスノズル31から吐出されるBTBASガスと反応ガスノズル32から吐出されるO3ガスとが真空容器1の中央部を通して互いに混合するのを防止する。
【0079】
また、回転スリーブ82が、支柱81を同軸状に囲むように設けられている。回転スリーブ82は、支柱81の外面に取り付けられた軸受け86,88と、収容ケース80の内側面に取り付けられた軸受け87とにより支持されている。さらに、回転スリーブ82は、その外面にギヤ部85が取り付けられている。また、環状の回転テーブル2の内周面が回転スリーブ82の外面に取り付けられている。駆動部83が収容ケース80に収容されており、駆動部83から延びるシャフトにギヤ84が取り付けられている。ギヤ84はギヤ部85と噛み合う。このような構成により、回転スリーブ82ひいては回転テーブル2が駆動部83により回転される。
【0080】
パージガス供給管74が収容ケース80の底に接続され、収容ケース80へパージガスが供給される。これにより、反応ガスが収容ケース80内へ流れ込むのを防止するために、収容ケース80の内部空間を真空容器1の内部空間よりも高い圧力に維持することができる。したがって、収容ケース80内での成膜が起こらず、メンテナンスの頻度を低減できる。また、パージガス供給管75が、真空容器1の上外面から凹部80aの内壁まで至る導管75aにそれぞれ接続され、回転スリーブ82の上端部に向けてパージガスが供給される。このパージガスのため、BTBASガスとO3ガスは、凹部80aの内壁と回転スリーブ82の外面との間の空間を通して混合することができない。図21には、2つのパージガス供給管75と導管75aが図示されているが、供給管75と導管75aの数は、BTBASガスとO3ガスとの混合が凹部80aの内壁と回転スリーブ82の外面との間の空間近傍において確実に防止されるように決定されて良い。
【0081】
図21に示す、本発明の他の実施形態による成膜装置では、凹部80aの側面と回転スリーブ82の上端部との間の空間は、分離ガスとしてのN2ガスを吐出する吐出孔に相当し、そしてこの分離ガス吐出孔、回転スリーブ82及び支柱81により、真空容器1の中心部に位置する中心領域が構成される。
【0082】
このような構成を有する、本発明の他の実施形態による成膜装置においても、反応ガスノズル31,32の少なくとも一方と、これに対応する排気口との位置関係は、上記の実施形態における位置関係と同様である。このため、この成膜装置においても上述の効果が発揮される。
【0083】
また、本発明の実施形態による成膜装置(種々の部材の変形例を含む)は、基板処理装置に組み込むことができ、その一例が図22に模式的に示されている。基板処理装置は、搬送アーム103が設けられた大気搬送室102と、雰囲気を真空と大気圧との間で切り替え可能なロードロック室(準備室)104,105と、2つの搬送アーム107a、107bが設けられた搬送室106と、本発明の実施形態にかかる成膜装置108,109とを含む。ロードロック室104,105及び成膜装置108,109と、搬送室106との間は、開閉可能なゲート弁Gにより結合され、ロードロック室104,105と大気搬送室102との間も開閉可能なゲート弁Gにより結合されている。また、この基板処理装置は、たとえばFOUPなどのウエハカセット101が載置されるカセットステージ(図示せず)を含んでいる。ウエハカセット101は、カセットステージの一つに運ばれ、カセットステージと大気搬送室102との間の搬入出ポートに接続される。次いで、開閉機構(図示せず)によりウエハカセット(FOUP)101の蓋が開けられて、搬送アーム103によりウエハカセット101からウエハが取り出される。次に、ウエハはロードロック室104(105)へ搬送される。ロードロック室104(105)が排気された後、ロードロック室104(105)内のウエハは、搬送アーム107a(107b)により、真空搬送室106を通して成膜装置108,109へ搬送される。成膜装置108,109では、上述の方法でウエハ上に膜が堆積される。基板処理装置は、同時に5枚のウエハを収容可能な2つの成膜装置108,109を有しているため、高いスループットで分子層成膜を行うことができる。
【0084】
本発明の実施形態による成膜装置は、酸化シリコン膜の成膜に限らず、窒化シリコンの分子層成膜にも適用することができる。また、トリメチルアルミニウム(TMA)とO3ガスを用いた酸化アルミニウム(Al2O3)の分子層成膜、テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム(TEMAZr)とO3ガスを用いた酸化ジルコニウム(ZrO2)の分子層成膜、テトラキスエチルメチルアミノハフニウム(TEMAHf)とO3ガスを用いた酸化ハフニウム(HfO2)の分子層成膜、ストロンチウムビステトラメチルヘプタンジオナト(Sr(THD)2)とO3ガスを用いた酸化ストロンチウム(SrO)の分子層成膜、チタニウムメチルペンタンジオナトビステトラメチルヘプタンジオナト(Ti(MPD)(THD))とO3ガスを用いた酸化チタン(TiO2)の分子層成膜などを行うことができる。また、O3ガスではなく、酸素プラズマを利用することも可能である。これらのガスの組み合わせを用いても、上述の効果が奏されることは言うまでもない。
【0085】
以上、本発明を実施形態により説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0086】
W・・・ウエハ、1・・・真空容器、2・・・回転テーブル、21・・・コア部、24・・・凹部(基板載置領域)、31,32・・・反応ガスノズル、34・・・ノズルカバー、36A,36B,37A,37B・・・整流板、P1・・・第1の処理領域、P2・・・第2の処理領域、D・・・分離領域、C・・・中心領域、41,42・・・分離ガスノズル、3A,3B・・・反応ガスインジェクタ、4・・・凸状部、51・・・分離ガス供給管、61,62,63・・・排気口、63・・・排気管、65・・・圧力調整器、7・・・ヒータユニット、72,73・・・パージガス供給管、81・・・分離ガス供給管。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内にて、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板に供給する供給サイクルを複数回実行することにより、反応生成物の複数の層を積層して薄膜を形成する成膜装置であって、
前記容器内に回転可能に設けられ、基板が載置される基板載置領域を第1の面に含む回転テーブル;
前記容器内の第1の供給領域に配置され、前記回転テーブルの回転方向と交わる方向に延び、前記回転テーブルの前記第1の面へ第1の反応ガスを供給する第1の反応ガス供給部;
前記第1の供給領域から前記回転テーブルの前記回転方向に沿って離間する第2の供給領域に配置され、前記回転方向と交わる方向に延び、前記回転テーブルの前記第1の面へ第2の反応ガスを供給する第2の反応ガス供給部;
前記第1の反応ガスと前記第2の反応ガスとを分離する分離ガスを吐出する分離ガス供給部と、該分離ガス供給部からの前記分離ガスを前記第1の供給領域及び前記第2の供給領域へ向けて供給する、前記第1の面との間に所定の高さを有する分離空間を形成する天井面とを含み、前記第1の供給領域と前記第2の供給領域との間に配置される分離領域;
前記第1の供給領域に対して設けられる第1の排気口;及び
前記第2の供給領域に対して設けられる第2の排気口;
を備え、
前記第1の排気口及び前記第2の排気口の少なくとも一方の排気口が、当該排気口に対応する供給領域へ向かって前記分離領域から供給される前記分離ガスを、当該供給領域の反応ガス供給部が延びる第1の方向に沿う方向に導くように配置される成膜装置。
【請求項2】
前記少なくとも一方の排気口が、当該排気口に対応する供給領域の反応ガス供給部の前記第1の方向上の位置から、当該反応ガス供給部に対して前記回転方向上流側の前記分離領域までの間に配置される、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記第1の反応ガス供給部及び前記第2の反応ガス供給部の少なくとも一方の反応ガス供給部に取り付けられる流路画成部材であって、当該反応ガス供給部と前記第1の面との間に前記分離ガスが流れ込むのを抑制する板部材を含む当該流路画成部材を更に備える、請求項1又は2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記第1の反応ガス供給部及び前記第2の反応ガス供給部の少なくとも一方の反応ガス供給部が、
当該反応ガス供給部から前記第1の面へ向かう方向からずれた方向に開口し、対応する反応ガスを吐出する吐出孔と、
前記吐出孔から吐出された当該反応ガスを前記第1の面へ案内する案内板と
を含む、請求項1又は2に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記所定の高さが、前記分離空間の圧力を記第1の供給領域及び前記第2の供給領域の圧力よりも高く維持し得るように設定される、請求項1から4のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項1】
容器内にて、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板に供給する供給サイクルを複数回実行することにより、反応生成物の複数の層を積層して薄膜を形成する成膜装置であって、
前記容器内に回転可能に設けられ、基板が載置される基板載置領域を第1の面に含む回転テーブル;
前記容器内の第1の供給領域に配置され、前記回転テーブルの回転方向と交わる方向に延び、前記回転テーブルの前記第1の面へ第1の反応ガスを供給する第1の反応ガス供給部;
前記第1の供給領域から前記回転テーブルの前記回転方向に沿って離間する第2の供給領域に配置され、前記回転方向と交わる方向に延び、前記回転テーブルの前記第1の面へ第2の反応ガスを供給する第2の反応ガス供給部;
前記第1の反応ガスと前記第2の反応ガスとを分離する分離ガスを吐出する分離ガス供給部と、該分離ガス供給部からの前記分離ガスを前記第1の供給領域及び前記第2の供給領域へ向けて供給する、前記第1の面との間に所定の高さを有する分離空間を形成する天井面とを含み、前記第1の供給領域と前記第2の供給領域との間に配置される分離領域;
前記第1の供給領域に対して設けられる第1の排気口;及び
前記第2の供給領域に対して設けられる第2の排気口;
を備え、
前記第1の排気口及び前記第2の排気口の少なくとも一方の排気口が、当該排気口に対応する供給領域へ向かって前記分離領域から供給される前記分離ガスを、当該供給領域の反応ガス供給部が延びる第1の方向に沿う方向に導くように配置される成膜装置。
【請求項2】
前記少なくとも一方の排気口が、当該排気口に対応する供給領域の反応ガス供給部の前記第1の方向上の位置から、当該反応ガス供給部に対して前記回転方向上流側の前記分離領域までの間に配置される、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記第1の反応ガス供給部及び前記第2の反応ガス供給部の少なくとも一方の反応ガス供給部に取り付けられる流路画成部材であって、当該反応ガス供給部と前記第1の面との間に前記分離ガスが流れ込むのを抑制する板部材を含む当該流路画成部材を更に備える、請求項1又は2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記第1の反応ガス供給部及び前記第2の反応ガス供給部の少なくとも一方の反応ガス供給部が、
当該反応ガス供給部から前記第1の面へ向かう方向からずれた方向に開口し、対応する反応ガスを吐出する吐出孔と、
前記吐出孔から吐出された当該反応ガスを前記第1の面へ案内する案内板と
を含む、請求項1又は2に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記所定の高さが、前記分離空間の圧力を記第1の供給領域及び前記第2の供給領域の圧力よりも高く維持し得るように設定される、請求項1から4のいずれか一項に記載の成膜装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2011−135004(P2011−135004A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295392(P2009−295392)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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