説明

成膜装置

【課題】原料ガスの供給量の変動を防止し、原料ガスの重合反応により成膜されるポリイミド膜を連続して安定に成膜できる成膜装置を提供する。
【解決手段】基板にポリイミド膜を成膜する成膜装置において、第1の原料ガスを基板に供給するための第1の気化器21と、第2の原料ガスを基板に供給するための第2の気化器41と、第1の気化器の内部の圧力を測定するための第1の圧力計側部M1と、第2の気化器の内部の圧力を測定するための第2の圧力計側部M11と、第1の圧力計側部M1により測定した第1のデータに基づいて第1の原料ガスの供給量を算出し、第2の圧力計側部M11により測定した第2のデータに基づいて第2の原料ガスの供給量を算出し、算出した第1の原料ガスの供給量と算出した第2の原料ガスの供給量とがそれぞれ一定になるように、第1の気化器21及び第2の気化器41を制御する制御部60とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板にポリイミド膜を成膜する成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスに用いられる材料は、近年無機材料から有機材料へと幅を広げつつあり、無機材料にはない有機材料の特質等から半導体デバイスの特性や製造プロセスをより最適なものとすることができる。
【0003】
このような有機材料の1つとして、ポリイミドが挙げられる。ポリイミドは密着性が高く、リーク電流も低い。従って、基板の表面にポリイミドを成膜して得られるポリイミド膜は、絶縁膜として用いることができ、半導体デバイスにおける絶縁膜として用いることも可能である。
【0004】
このようなポリイミド膜を成膜する方法としては、原料モノマーとして例えばピロメリット酸二無水物(PMDA)と、例えば4,4'−オキシジアニリン(ODA)を含む4,4'−ジアミノジフェニルエーテルを用いた蒸着重合による成膜方法が知られている。蒸着重合は、原料モノマーとして用いられるPMDA及びODAを昇華させて基板の表面で重合させる方法である(例えば特許文献1参照)。特許文献1では、PMDA及びODAのモノマーを気化器で蒸発させ、蒸発させたそれぞれの蒸気を蒸着重合室に供給し、基板上で蒸着重合させてポリイミド膜を成膜する成膜方法が開示されている。
【0005】
蒸着重合を用いて膜質に優れたポリイミド膜を安価かつ短時間で成膜するためには、PMDAが気化したPMDAガスと、ODAが気化したODAガスとを、継続的に一定量で基板に供給する必要がある。とりわけ、PMDAは固体原料であり、昇華する性質を有するため、ポリイミド膜を成膜する成膜装置においては、固体原料であるPMDAを昇華させ、気化させた状態で成膜容器に供給するための気化器を成膜容器の外部に設けることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許4283910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このようなPMDAガスとODAガスを基板に供給してポリイミド膜を成膜する成膜装置には、以下のような問題がある。
【0008】
PMDAガスとODAガスとを供給することによって基板の表面にポリイミド膜を成膜するためには、PMDAのモノマーとODAのモノマーとが基板の表面で重合反応することが必要である。しかし、基板の表面におけるPMDAガスの供給量とODAガスの供給量との比が変動すると、ポリイミド膜の成膜速度が変動しやすく、基板の面内におけるポリイミド膜の膜厚、膜質等の均一性に劣るという問題がある。
【0009】
PMDAガスの供給量とODAガスの供給量との比を一定にするには、PMDAガスの供給量及びODAガスの供給量のいずれをも一定にすることが望ましい。しかし、PMDAを気化する気化器の内部の圧力が変動すると、PMDAガスの供給量が変動するという問題がある。また、ODAを気化する気化器の内部の圧力が変動すると、ODAガスの供給量が変動するという問題がある。
【0010】
また、上記した課題は、PMDAガスを含む芳香族酸二無水物よりなる原料ガス、及び、ODAガスを含む芳香族ジアミンよりなる原料ガスを基板に供給してポリイミド膜を成膜する場合にも共通する課題である。
【0011】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、原料ガスの供給量の変動を防止し、原料ガスの重合反応により成膜されるポリイミド膜を連続して安定に成膜できる成膜装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
【0013】
本発明の一実施例によれば、芳香族酸二無水物よりなる第1の原料を気化した第1の原料ガスと、芳香族ジアミンよりなる第2の原料を気化した第2の原料ガスとを、成膜容器内に設置されている基板に供給することによって、前記基板にポリイミド膜を成膜する成膜装置において、内部の圧力が圧力調整可能に設けられており、固体状態の前記第1の原料を気化させ、気化した前記第1の原料ガスを前記基板に供給するための第1の気化器と、内部の圧力が圧力調整可能に設けられており、液体状態の前記第2の原料を気化させ、気化した前記第2の原料ガスを前記基板に供給するための第2の気化器と、前記第1の気化器の内部の圧力を測定するための第1の圧力計側部と、前記第2の気化器の内部の圧力を測定するための第2の圧力計側部と、前記第1の圧力計側部により測定した第1のデータに基づいて前記第1の原料ガスの供給量を算出し、前記第2の圧力計側部により測定した第2のデータに基づいて前記第2の原料ガスの供給量を算出し、算出した前記第1の原料ガスの供給量と算出した前記第2の原料ガスの供給量とがそれぞれ一定になるように、前記第1の気化器及び前記第2の気化器を制御する制御部とを有する成膜装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、原料ガスの供給量の変動を防止し、原料ガスの重合反応により成膜されるポリイミド膜を連続して安定に成膜できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態に係る成膜装置の構成を示す一部縦断面を含む図である。
【図2】実施の形態に係る成膜装置における原料ガス供給部及び制御部の構成図である。
【図3】第1の気化器の構成を示す一部縦断面を含む図である。
【図4】原料貯蔵部の構成を模式的に示す断面図である。
【図5】原料供給カートリッジの構成を模式的に示す断面図である。
【図6】第2の気化器の構成を示す一部縦断面を含む図である。
【図7】実施の形態に係る成膜装置を用いた成膜処理を含む各工程の手順を説明するためのフローチャートである。
【図8】ステップS11における原料ガス供給部の各バルブの開閉状態を示す図である。
【図9】ステップS14における原料ガス供給部の各バルブの開閉状態を示す図である。
【図10】ステップS15における原料ガス供給部の各バルブの開閉状態を示す図である。
【図11】ステップS15における圧力の時間依存性を模式的に示すグラフである。
【図12】ステップS16における原料ガス供給部の各バルブの開閉状態を示す図である。
【図13】PMDAの蒸気圧曲線を模式的に示すグラフである。
【図14】ODAの蒸気圧曲線を模式的に示すグラフである。
【図15】PMDAガスの分圧を時間で積算した値と、PMDAガスの気化量との関係を示す実験結果の一例を示すグラフである。
【図16】ODAガスの分圧を時間で積算した値と、ODAガスの気化量との関係を示す実験結果の一例を示すグラフである。
【図17】実施の形態の第1の変形例に係る成膜装置における原料ガス供給部及び制御部の構成図である。
【図18】実施の形態の第2の変形例に係る成膜装置における原料ガス供給部及び制御部の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態について図面と共に説明する。
(実施の形態)
最初に、本発明の実施の形態に係る成膜装置について説明する。本実施の形態に係る成膜装置は、芳香族酸二無水物よりなる第1の原料を気化した第1の原料ガスと、芳香族ジアミンよりなる第2の原料を気化した第2の原料ガスとを、成膜容器内に設置されている基板に供給することによって、基板にポリイミド膜を成膜する成膜装置である。
【0017】
なお、芳香族酸二無水物として、ピロメリット酸二無水物(Pyromellitic Dianhydride、以下「PMDA」と略す。)であることが好ましく、芳香族ジアミンは、例えば4,4'−オキシジアニリン(4,4'-Oxydianiline、以下「ODA」と略す。)を含む4,4'−ジアミノジフェニルエーテルであることが好ましい。また、ポリイミド膜を成膜する基板を、例えば半導体ウェハ(以下「ウェハW」という。)とすることができる。以下では、一例として、気化したPMDAガスと、気化したODAガスとを、成膜容器内に設置されているウェハWに供給することによって、ウェハWにポリイミド膜を成膜する成膜装置について説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態に係る成膜装置の構成を示す一部縦断面を含む図である。
【0019】
本実施の形態に係る成膜装置10は、成膜容器11、第1の原料ガス供給部20及び第2の原料ガス供給部40及び制御部60を有する。
【0020】
成膜装置10は、不図示の真空ポンプ等により排気が可能なチャンバー11内にポリイミド膜が成膜されるウェハWを複数設置することが可能なウェハボート12を有している。また、チャンバー11内には、気化したPMDA(PMDAガス)及び気化したODA(ODAガス)を供給するためのインジェクタ13及び14を有している。このインジェクタ13及び14の側面には開口部が設けられており、気化器により気化したPMDA(PMDAガス)及びODA(ODAガス)が図面において矢印で示すようにウェハWに供給される。供給された気化したPMDA(PMDAガス)及びODA(ODAガス)は、ウェハW上で反応し蒸着重合によりポリイミド膜が成膜される。なお、ポリイミド膜の成膜に寄与しない気化したPMDA(PMDAガス)及びODA(ODAガス)等は、そのまま流れ、排気口15よりチャンバー11の外に排出される。また、ウェハW上に均一にポリイミド膜が成膜されるように、ウェハボート12は、回転部16により回転するよう構成されている。更に、チャンバー11の外部には、チャンバー11内のウェハWを一定の温度に加熱するためのヒータ17が設けられている。
【0021】
なお、チャンバー11は、本発明における成膜容器に相当する。
【0022】
また、インジェクタ13及び14には、第1の原料ガス供給部20及び第2の原料ガス供給部40が導入部18を介して接続されており、第1の原料ガス供給部20及び第2の原料ガス供給部40より気化したPMDAガス及びODAガスが供給される。
【0023】
第1の原料ガス供給部20は、図2を用いて後述するように、第1の気化器21を有する。第1の気化器21は、PMDAよりなる第1の原料を加熱して昇華(気化)させ、気化して得られたPMDAガスよりなる第1の原料ガスを窒素ガス(Nガス)よりなる第1のキャリアガスとともにチャンバー11に供給する。第1のキャリアガスは、PMDAガスよりなる第1の原料ガスを搬送するためのものである。
【0024】
第2の原料ガス供給部40は、図2を用いて後述するように、第2の気化器41を有する。第2の気化器41は、ODAよりなる第2の原料を加熱して気化させ、気化して得られたODAガスよりなる第2の原料ガスを窒素ガス(Nガス)よりなる第2のキャリアガスとともにチャンバー11に供給する。第2のキャリアガスは、ODAガスよりなる第2の原料ガスを搬送するためのものであるとともに、液体状態のODAをバブリングするためのものでもある。
【0025】
第1の原料ガス供給部20から供給されたPMDAガス及び第2の原料ガス供給部40から供給されたODAガスは、それぞれインジェクタ13及び14内に供給される。そして、それぞれインジェクタ13及び14よりPMDAガス及びODAガスが、チャンバー11内に供給されて、ウェハW上において反応し、ポリイミド膜が成膜される。
【0026】
なお、本実施の形態では、一例としてウェハWを複数枚積層するように保持した状態で一括して成膜処理を行うバッチ処理を行う成膜装置について説明する。しかし、成膜装置は、バッチ処理を行う成膜装置に限定するものではなく、ウェハWを一枚ずつ成膜する枚葉処理を行う成膜装置であってもよい。
【0027】
図2は、本実施の形態に係る成膜装置における原料ガス供給部20、40及び制御部60の構成図である。
【0028】
前述したように、第1の原料ガス供給部20は、PMDAガスを供給し、第2の原料ガス供給部40は、ODAガスを供給する。
【0029】
第1の原料ガス供給部20は、第1の気化器21及び第1のキャリアガス供給部22を有する。
【0030】
第1の気化器21は、内部の圧力が圧力調整可能に設けられており、固体状態のPMDAを加熱して昇華(気化)させ、気化して得たPMDAガスをチャンバー11に供給するためのものである。第1の気化器21は、PMDAガスが流れるための第1の供給流路23を介してチャンバー11内のインジェクタ13に接続されている。第1の気化器21は、後述するように、第1の加熱部24及び第1の供給部25を有する。
【0031】
第1のキャリアガス供給部22は、第1の気化器21に搬送用の第1のキャリアガスを供給するためのものである。第1のキャリアガス供給部22は、第1のキャリアガスが流れるための第1のキャリアガス供給流路26を介して第1の気化器21のチャンバー11側と反対側に接続されている。第1のキャリアガスとして、例えば260℃の高温に加熱された窒素(N)ガスを用いることができる。
【0032】
第1の気化器21と第1のキャリアガス供給部22との間における第1のキャリアガス供給流路26には、第1のキャリアガス供給部22からの第1のキャリアガスの供給を開始又は停止するためのバルブV1が設けられている。第1の気化器21のチャンバー11側における第1の供給流路23には、第1の気化器21からのPMDAガスの供給を開始又は停止するためのバルブV2が設けられている。
【0033】
第1の供給流路23には、圧力計M1が設けられている。後述するように、第1の原料ガスの供給量は、圧力計M1により測定された圧力P1に依存する。従って、圧力計M1により測定された圧力P1に基づいて、第1の原料ガスの供給量を算出することができる。
【0034】
なお、圧力計M1は、第1の供給流路23であって、バルブV2のチャンバー11側に設けられていることが好ましい。これにより、後述する第1のバイパス流路27を設けたとき、バルブV1、V2を閉じることによって、第1の気化器21を迂回して第1のキャリアガスを流すことができる。
【0035】
また、図2に示すように、第1の供給流路23であって、バルブV2の第1の気化器21側には、圧力計M2が設けられていてもよい。このとき、バルブV2は、開いた状態のバルブV2によって第1の供給流路23が絞られるように、設けられていることが好ましい。バルブV2に絞られることによって、第1の供給流路23では、バルブV2の両側、すなわち圧力計M1により測定された圧力P1と圧力計M2により測定された圧力P2とに圧力差が生じる。また、その圧力差は、第1の供給流路23を流れる流体の流量に依存する。従って、圧力計M1により測定された圧力P1と、圧力計M2により測定された圧力P2とに基づいて、第1の供給流路23の流量とコンダクタンスとを算出することができる。
【0036】
なお、バルブV2は、本発明における第1の絞り部に相当する。あるいは、例えばニードルバルブ等の別の絞り部を第1の供給流路23にバルブV2と直列に設け、バルブV2が開いているときの第1の供給流路23を絞るようにしてもよい。
【0037】
また、第1のキャリアガス供給流路26には、圧力計M3が設けられていてもよい。このとき、第1のキャリアガスの流量が変動すると、圧力計M2により測定された圧力P2、及び、圧力計M3により測定された圧力P3が変動する。また、第1の気化器21における原料粉末の充填量又は充填状態が変動すると、第1の気化器21のコンダクタンスが変動し、圧力計M2により測定された圧力P2と圧力計M3により測定された圧力P3との圧力差が変動する。従って、圧力計M2により測定された圧力P2と、圧力計M3により測定された圧力P3とに基づいて、第1のキャリアガスの流量、及び、第1の気化器21のコンダクタンスを算出することができる。
【0038】
なお、圧力計M1、M2、M3は、本発明における第1の圧力計測部に相当する。
【0039】
また、図2に示すように、バルブV1の第1のキャリアガス供給部22側における第1のキャリアガス供給流路26と、バルブV2のチャンバー11側における第1の供給流路23とは、第1の気化器21を迂回する第1のバイパス流路27を介して接続されていてもよい。このとき、第1のバイパス流路27の途中には、第1のキャリアガス供給部22と第1の供給流路23との間を、第1の気化器21を介して接続するか、又は、第1のバイパス流路27を介して接続するかを切り替えるための、バルブV3が設けられていることが好ましい。第1のバイパス流路27は、バルブV3の第1のキャリアガス供給部22側で、第1のキャリアガス供給流路26と分岐するように設けられていることが好ましい。また、第1のバイパス流路27は、バルブV2のチャンバー11側における分岐点D1で、第1の供給流路23に合流するように設けられていることが好ましい。
【0040】
なお、第1のバイパス流路27は、本発明における第1の迂回流路に相当する。
【0041】
バルブV1、V2が開いており、かつ、第1のバイパス流路27が設けられている場合においてバルブV3が閉じているときは、圧力計M1は、第1の供給流路23におけるPMDAガスの分圧と第1のキャリアガスの分圧との合計に相当する圧力を測定することができる。また、バルブV1、V2が閉じており、かつ、第1のバイパス流路27が設けられている場合においてバルブV3が開いているときは、圧力計M1は、第1の供給流路23における第1のキャリアガスの分圧に相当する圧力を測定することができる。
【0042】
第1の原料ガス供給部20は、第1の気化器21にチャンバー11と切り替え可能に接続された、第1の排出部28を有していてもよい。第1の排出部28は、第1の気化器21からPMDAガスを排出するためのものである。第1の排出部28は、第1の供給流路23の途中で、第1の供給流路23と分岐して接続されるように設けられていることが好ましい。更に、図2に示すように、第1の排出部28は、分岐点D1において、第1の排出流路29を介して第1の供給流路23に接続するように設けられていることが好ましい。このとき、第1の供給流路23の分岐点D1よりもチャンバー11側にバルブV4が設けられていてもよい。また、第1の排出流路29の分岐点D1と第1の排出部28との間にバルブV5が設けられていてもよい。バルブV4、V5は、第1の気化器21に、チャンバー11と切り替え可能に第1の排出部28を接続するためのものである。
【0043】
第1の原料ガス供給部20は、PMDAガスを搬送するキャリアガスの流量を調整するための第1の流量調整用ガスを供給する第1の調整用ガス供給部30を有していてもよい。第1の調整用ガス供給部30は、第1の気化器21からチャンバー11にPMDAガスが流れる第1の供給流路23の途中で第1の供給流路23に合流するように接続されていることが好ましい。更に、図2に示すように、第1の調整用ガス供給部30は、分岐点D1よりもチャンバー11側における合流点G1において、第1の調整用ガス供給流路31を介して第1の供給流路23に接続するように設けられていることが好ましい。このとき、第1の調整用ガス供給流路31の合流点G1と第1の調整用ガス供給部30との間にバルブV6が設けられていてもよい。
【0044】
なお、第1の供給流路23、第1のキャリアガス供給流路26及び第1の調整用ガス供給流路31を構成する配管は、断熱材で囲まれていてもよい。また、第1の気化器21に常温より高温例えば260℃に加熱された第1のキャリアガスを導入できるとともに、第1の気化器21から導出したPMDAガス及び第1のキャリアガスの温度が低下しないように、断熱材には、図示しない加熱機構も備えられていてもよい。
【0045】
また、バルブV1、V2が開いているときに、第1のキャリアガス供給部22からの第1のキャリアガスの流量を調整するか、又は、第1の排出部28により第1の気化器21を排気することにより、第1の気化器21の内部が圧力調整可能に構成されている。
【0046】
第2の原料ガス供給部40は、第2の気化器41及び第2のキャリアガス供給部42を有する。
【0047】
第2の気化器41は、内部の圧力が圧力調整可能に設けられており、液体状態のODAを加熱するとともにバブリングして気化させ、気化して得たODAガスをチャンバー11に供給するためのものである。第2の気化器41は、ODAガスが流れるための第2の供給流路43を介してチャンバー11内のインジェクタ14に接続されている。第2の気化器41は、後述するように、第2の加熱部44及び第2の供給部45を有する。
【0048】
第2のキャリアガス供給部42は、第2の気化器41に搬送用及びバブリング用の第2のキャリアガスを供給するためのものである。第2のキャリアガス供給部42は、第2のキャリアガスが流れるための第2のキャリアガス供給流路46を介して第2の気化器41のチャンバー11側と反対側に接続されている。第2のキャリアガスとして、例えば220℃の高温に加熱された窒素(N)ガスを用いることができる。
【0049】
第2の気化器41と第2のキャリアガス供給部42との間における第2のキャリアガス供給流路46には、第2のキャリアガス供給部42からの第2のキャリアガスの供給を開始又は停止するためのバルブV11が設けられている。第2の気化器41のチャンバー11側における第2の供給流路43には、第2の気化器41からのODAガスの供給を開始又は停止するためのバルブV12が設けられている。
【0050】
第2の供給流路43には、圧力計M11が設けられている。後述するように、第2の原料ガスの供給量は、圧力計M11により測定された圧力P11に依存する。従って、圧力計M11により測定された圧力P11に基づいて、第2の原料ガスの供給量を算出することができる。
【0051】
なお、圧力計M11は、第2の供給流路43であって、バルブV12のチャンバー11側に設けられていることが好ましい。これにより、後述する第2のバイパス流路47を設けたとき、バルブV11、V12を閉じることによって、第2の気化器41を迂回して第2のキャリアガスを流すことができる。
【0052】
また、図2に示すように、第2の供給流路43であって、バルブV12の第2の気化器41側には、圧力計M12が設けられていてもよい。このとき、バルブV12は、開いた状態のバルブV12によって第2の供給流路43が絞られるように、設けられていることが好ましい。バルブV12に絞られることによって、第2の供給流路43では、バルブV12の両側、すなわち圧力計M11により測定された圧力P11と圧力計M12により測定された圧力P12とに圧力差が生じる。また、その圧力差は、第2の供給流路43を流れる流体の流量に依存する。従って、圧力計M11により測定された圧力P11と、圧力計M12により測定された圧力P12とに基づいて、第2の供給流路43の流量とコンダクタンスとを算出することができる。
【0053】
なお、バルブV12は、本発明における第2の絞り部に相当する。あるいは、例えばニードルバルブ等の別の絞り部を第2の供給流路43にバルブV12と直列に設け、バルブV12が開いているときの第2の供給流路43を絞るようにしてもよい。
【0054】
また、第2のキャリアガス供給流路46には、圧力計M13が設けられていてもよい。このとき、第2のキャリアガスの流量が変動すると、圧力計M12により測定された圧力P12、及び、圧力計M13により測定された圧力P13が変動する。また、第2の気化器41における液体原料の充填量又は充填状態が変動すると、第2の気化器41のコンダクタンスが変動し、圧力計M12により測定された圧力P12と圧力計M13により測定された圧力P13との圧力差が変動する。従って、圧力計M12により測定された圧力P12と、圧力計M13により測定された圧力P13とに基づいて、第1のキャリアガスの流量、及び、第2の気化器41のコンダクタンスを算出することができる。
【0055】
なお、圧力計M11、M12、M13は、本発明における第2の圧力計測部に相当する。
【0056】
また、図2に示すように、バルブV11の第2のキャリアガス供給部42側における第2のキャリアガス供給流路46と、バルブV12のチャンバー11側における第2の供給流路43とは、第2の気化器41を迂回する第2のバイパス流路47を介して接続されていてもよい。このとき、第2のバイパス流路47の途中には、第2のキャリアガス供給部42と第2の供給流路43との間を、第2の気化器41を介して接続するか、又は、第2のバイパス流路47を介して接続するかを切り替えるための、バルブV13が設けられていることが好ましい。第2のバイパス流路47は、バルブV13の第2のキャリアガス供給部42側で、第2のキャリアガス供給流路46と分岐するように設けられていることが好ましい。また、第2のバイパス流路47は、バルブV12のチャンバー11側における分岐点D2で、第2の供給流路43に合流するように設けられていることが好ましい。
【0057】
なお、第2のバイパス流路47は、本発明における第2の迂回流路に相当する。
【0058】
バルブV11、V12が開いており、かつ、第2のバイパス流路47が設けられている場合においてバルブV13が閉じているときは、圧力計M2は、第2の供給流路43におけるODAガスの分圧と第2のキャリアガスの分圧との合計に相当する圧力を測定することができる。また、バルブV11、V12が閉じており、かつ、第2のバイパス流路47が設けられている場合においてバルブV13が開いているときは、圧力計M2は、第2の供給流路43における第2のキャリアガスの分圧に相当する圧力を測定することができる。
【0059】
第2の原料ガス供給部40は、第2の気化器41にチャンバー11と切り替え可能に接続された、第2の排出部48を有していてもよい。第2の排出部48は、第2の気化器41からODAガスを排出するためのものである。第2の排出部48は、第2の供給流路43の途中で、第2の供給流路43と分岐して接続されるように設けられていることが好ましい。更に、図2に示すように、第2の排出部48は、分岐点D2において、第2の排出流路49を介して第2の供給流路43に接続するように設けられていることが好ましい。このとき、第2の供給流路43の分岐点D2よりもチャンバー11側にバルブV14が設けられていてもよい。また、第2の排出流路49の分岐点D2と第2の排出部48との間にバルブV15が設けられていてもよい。バルブV14、V15は、第2の気化器41に、チャンバー11と切り替え可能に第2の排出部48を接続するためのものである。
【0060】
第2の原料ガス供給部40は、ODAガスを搬送するキャリアガスの流量を調整するための第2の流量調整用ガスを供給する第2の調整用ガス供給部50を有していてもよい。第2の調整用ガス供給部50は、第2の気化器41からチャンバー11にODAガスが流れる第2の供給流路43の途中で第2の供給流路43に合流するように接続されていることが好ましい。更に、図2に示すように、第2の調整用ガス供給部50は、分岐点D2よりもチャンバー11側における合流点G2において、第2の調整用ガス供給流路51を介して第2の供給流路43に接続するように設けられていることが好ましい。このとき、第2の調整用ガス供給流路51の合流点G2と第2の調整用ガス供給部50との間にバルブV16が設けられていてもよい。
【0061】
なお、第2の供給流路43、第2のキャリアガス供給流路46及び第2の調整用ガス供給流路51を構成する配管は、断熱材で囲まれていてもよい。また、第2の気化器41に常温より高温例えば220℃に加熱された第2のキャリアガスを導入できるとともに、第2の気化器41から導出したODAガス及び第2のキャリアガスの温度が低下しないように、断熱材には、図示しない加熱機構も備えられていてもよい。
【0062】
また、バルブV11、V12が開いているときに、第2のキャリアガス供給部42からの第2のキャリアガスの流量を調整するか、又は、第2の排出部48により第2の気化器41を排気することにより、第2の気化器41の内部が圧力調整可能に構成されている。
【0063】
制御部60は、例えば、演算処理部61、記憶部62及び表示部63を有する。演算処理部61は、例えばCPU(Central Processing Unit)を有するコンピュータである。記憶部62は、演算処理部61に、各種の処理を実行させるためのプログラムを記録した、例えばハードディスクにより構成されるコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。表示部63は、例えばコンピュータの画面よりなる。演算処理部61は、記憶部62に記録されたプログラムを読み取り、そのプログラムに従って、第1の原料ガス供給部20を構成する各部、及び、第2の原料ガス供給部40を構成する各部に制御信号を送り、後述するような成膜処理を実行する。
【0064】
また、演算処理部61は、演算部61a、検知部61b、警報発生部61cを有する。
【0065】
演算部61aは、圧力計M1〜M3により測定された圧力P1〜P3に基づいて第1の原料ガスの供給量を算出する。同様に、演算部61aは、圧力計M11〜M13により測定された圧力P11〜P13に基づいて第2の原料ガスの供給量を算出する。
【0066】
また、演算部61aは、圧力計M2により測定された圧力P2と、圧力計M1により測定された圧力P1とに基づいて第1の原料ガスの供給量を算出してもよい。同様に、演算部61aは、圧力計M12により測定された圧力P12と、圧力計M11により測定された圧力P11とに基づいて第2の原料ガスの供給量を算出してもよい。
【0067】
また、演算部61aは、圧力計M3により測定された圧力P3と、圧力計M1により測定された圧力P1とに基づいて第1の気化器21のコンダクタンスを算出してもよい。同様に、演算部61aは、圧力計M13により測定された圧力P13と、圧力計M11により測定された圧力P11とに基づいて第2の気化器41のコンダクタンスを算出してもよい。
【0068】
記憶部62には、正常運転時において予め圧力計M1〜M3、M11〜M13により測定された圧力P1〜P3、P11〜P13を基準データとして記憶し、準備しておいてもよい。そして、検知部61bは、後述する成膜処理毎に、圧力計M1〜M3により測定された圧力P1〜P3を、記憶部62から読み出した基準データと比較することによって、第1の原料ガスの供給量が所定範囲内にあるか否かを検知してもよい。同様に、検知部61bは、後述する成膜処理毎に、圧力計M11〜M13により測定された圧力P11〜P13を、記憶部62から読み出した基準データと比較することによって、第2の原料ガスの供給量が所定範囲内にあるか否かを検知してもよい。
【0069】
なお、成膜処理毎に測定される圧力P1〜P3は、本発明における第1のデータに相当し、成膜処理毎に測定される圧力P11〜P13は、本発明における第2のデータに相当する。
【0070】
次に、第1の気化器21について説明する。
【0071】
第1の気化器21は、成膜装置10にPMDAガスを供給するための気化器である。
【0072】
図3は、第1の気化器21の構成を示す一部縦断面を含む図である。
【0073】
本実施の形態に係る第1の気化器21は、第1の加熱部24、第1の供給部25、第1のガス導入部32及び第1のガス導出部33を有する。第1の加熱部24は、内部の圧力が圧力調整可能に設けられており、PMDAを加熱して昇華させる(以下「昇華」を「気化」ともいう。)ためのものである。第1の供給部25は、第1の加熱部24の上方に設けられており、第1の加熱部24にPMDAを供給するためのものである。第1のガス導入部32は、第1の加熱部24に、第1の加熱部24で気化したPMDAガスを搬送するための第1のキャリアガスC1を導入する。第1のガス導出部33は、第1の加熱部24から、第1のキャリアガスC1とともに気化したPMDAガスPM1を導出する。
【0074】
第1の加熱部24は、PMDA原料を固体の状態(以下「PMDA原料粉末」という。)で充填し、充填したPMDA原料粉末PM1を加熱して気化するための空間である。
【0075】
第1の加熱部24の上部は、後述する第1の供給部25の仕切り弁部70と連通している。第1の加熱部24は、仕切り弁部70の下側原料供給管72を介し、第1の加熱部24の例えば略中心点等の所定の位置を落下点として、第1の供給部25によりPMDA原料粉末が落下供給されるように構成されている。このとき、第1の加熱部24は、第1の加熱部24の内部に充填されているPMDA原料粉末が、落下点を頂点とし、水平から例えば45度の安息角だけ傾斜した円錐状の上面を有する形状を保持するように、第1の供給部25によりPMDA原料粉末が落下供給されるように構成してもよい。
【0076】
第1の加熱部24は、側面下部にメッシュ部34を有していてもよい。メッシュ部34は、第1の加熱部24内に充填されたPMDA原料粉末を保持するとともに、第1の加熱部24の外側と内側との間でガスが通過可能にするためのものである。メッシュ部34は、例えばアルミニウム等の金属のメッシュよりなる。メッシュ部34のメッシュのサイズは、PMDA原料粉末の粒径より小さくすることができる。第1の供給部25に充填されたPMDA原料粉末は、メッシュ部34を含む内壁35で囲まれた第1の加熱部24の内部に充填された状態になる。
【0077】
なお、PMDA原料粉末の粒度分布は、例えば平均粒径が200〜300μm程度、100μm以下の粒径を有する粒子の含有率が1%程度である。また、このような粒度分布を有するPMDA原料粉末を使用する場合は、例えばメッシュ部34のメッシュのサイズを100μm程度とすることができる。
【0078】
第1の加熱部24は、断熱材36で囲まれている。断熱材36の一部であって、第1の加熱部24の近傍には加熱機構37が設置されており、第1の加熱部24の内部に充填されたPMDA原料粉末を加熱し、昇華(気化)できるようになっている。加熱機構37としてヒータ等を用いることができる。また、第1の加熱部24を加熱することができればよく、加熱機構37は、第1の加熱部24の近傍でなく、第1の気化器21の任意の場所に設けることができる。
【0079】
また、第1の加熱部24は、加熱機構37により温度調整されることにより、第1の加熱部24の内部が圧力調整可能に設けられていてもよい。あるいは、第1の加熱部24は、第1のキャリアガス供給部22からの第1のキャリアガスの流量を調整することにより、第1の加熱部24の内部が圧力調整可能に設けられていてもよい。
【0080】
第1のガス導入部32は、ガス導入管32a、ガス導入口32b、ガス導入室32c及び断熱材32dを有する。ガス導入管32aは、PMDAガスを搬送する第1のキャリアガスC1を第1の加熱部24の外部から第1の加熱部24の内部へ導入するための配管である。ガス導入管32aは、一端がガス導入口32bに接続されるとともに、他端が第1のキャリアガス供給流路26に接続されている。ガス導入口32bは、ガス導入室32cに形成された開口である。ガス導入室32cは、第1の気化器21の内部に、第1の加熱部24と隣接して設けられている。
【0081】
ガス導入管32aは、断熱材32dで囲まれていてもよい。また、第1の加熱部24に常温より高温に加熱された第1のキャリアガスC1を導入できるように、断熱材32dには、図示しない加熱機構が備えられていてもよい。
【0082】
第1のガス導出部33は、ガス導出室33a、ガス導出口33b及びガス導出管33cを有する。ガス導出室33aは、第1の気化器21の内部に、第1の加熱部24と隣接し、かつ、第1の加熱部24を中心として第1のガス導入部32と反対側に設けられている。ガス導出口33bは、ガス導出室33aに形成された開口である。ガス導出管33cは、PMDAガスPM1及び第1のキャリアガスC1を第1の気化器21の内部から第1の気化器21の外部へ導出するための配管である。ガス導出管33cは、一端がガス導出口33bに接続されるとともに、他端が第1の供給流路23に接続されている。
【0083】
ガス導出管33cは、断熱材33dで囲まれていてもよい。また、第1の加熱部24から常温より高温に加熱されたPMDAガスPM1及び第1のキャリアガスC1を導出できるように、断熱材33dには、図示しない加熱機構が備えられていてもよい。
【0084】
第1の供給部25は、第1の加熱部24の上方に設けられており、第1の加熱部24にPMDA原料粉末を落下供給するものである。第1の供給部25は、仕切り弁部70及び原料貯蔵部80を有する。第1の加熱部24の上方に仕切り弁部70が設けられ、仕切り弁部70の更に上方に原料貯蔵部80が設けられる。
【0085】
仕切り弁部70は、仕切り弁71、下側原料供給管72及び落下ガイド機構73を有する。仕切り弁71及び下側原料供給管72は、上方側から下方側に向かって、仕切り弁71、下側原料供給管72の順に配置されるように構成されている。仕切り弁71は、第1の加熱部24側と第1の供給部25側とを連通又は遮断する開閉機構である。下側原料供給管72は、仕切り弁71から第1の加熱部24に向かって、すなわち上方から下方に向かって延在するように設けられており、原料貯蔵部80から仕切り弁部70へPMDA原料粉末を落下供給するためのものである。なお、下側原料供給管72の周囲は断熱材72aで囲まれている。また、下側原料供給管72は、後述する下側拡散防止部91bを有する。
【0086】
なお、仕切り弁71は、加熱されていてもよい。
【0087】
落下ガイド機構73は、下側原料供給管72の上側の部分に、上方から下方に向かって管の内径が減少するように設けられた、テーパ形状の絞りである。落下ガイド機構73により、原料貯蔵部80から落下するPMDA原料粉末を、第1の加熱部24の例えば略中心点等の所定の位置を落下点として安定して供給することができる。その結果、第1の供給部25は、第1の加熱部24の内部に充填されているPMDA原料粉末が、落下点を頂点とし、水平から例えば45度の安息角だけ傾斜した円錐状の上面を有する形状を保持するように、PMDA原料粉末を第1の加熱部24に充填することができる。
【0088】
図4は、原料貯蔵部80の構成を模式的に示す断面図である。なお、図4では、原料貯蔵部80とともに仕切り弁部70の仕切り弁71、下側原料供給管72及び落下ガイド機構73及び第1の加熱部24の一部も図示している。
【0089】
原料貯蔵部80は、貯蔵室81及び上側原料供給管82を有する。貯蔵室81及び上側原料供給管82は、上方側から下方側に向かって、貯蔵室81、上側原料供給管82の順に配置されるように構成されている。
【0090】
貯蔵室81は、外部からPMDA原料粉末を原料貯蔵部80に貯蔵する空間である。貯蔵室81は、粉タンク83、ピストンプレート84及び底板部材85よりなるピストン式供給機構86を備えている。
【0091】
なお、ピストン式供給機構86は、本発明における供給機構に相当する。
【0092】
貯蔵室81の上部であって、粉タンク83の上面には、上蓋83aが設けられており、外部からPMDA原料粉末を補給可能に構成されている。粉タンク83の下側は、上方から下方に向かって径が減少する漏斗状の形状を有しており、下端には第1の開口83bが設けられている。
【0093】
なお、成膜装置10は、外部から貯蔵室81にPMDA原料粉末を補給する原料供給カートリッジを別体として備えていてもよい。原料供給カートリッジ及び原料供給カートリッジを用いた原料供給方法は、後述する図5を用いて説明する。
【0094】
ピストンプレート84は、粉タンク83の下端に設けられた第1の開口83bの下方に、例えば水平方向に往復動可能に設けられた平板であり、貯蔵室81の外方に設けられた例えばエアシリンダ84aにより往復動される。ピストンプレート84には、粉タンク83に設けられた第1の開口83bと略同一の内径を有し、ピストンプレート84を上下に貫通する貫通孔84bが形成されている。
【0095】
ピストンプレート84は、第1の位置PS1にあるときに、貫通孔84bが粉タンク83に設けられた第1の開口83bと連通するように構成されている。また、ピストンプレート84の下側には底板部材85が設けられている。そして、底板部材85は、ピストンプレート84が第1の位置PS1にあるときに、貫通孔84bを下方から塞ぐように構成されている。
【0096】
なお、貫通孔84bと底板部材85により画成される空間は、粉タンク83からPMDA原料粉末を受け取って収容するための収容部に相当する。
【0097】
底板部材85には、貫通孔84bと略同一の内径を有する第2の開口85aが形成されており、第2の開口85aの下側には、下方に延在し、上側原料供給管82とほぼ同心に設けられた導入管85bが連通している。
【0098】
ピストンプレート84は、第1の位置PS1と異なる第2の位置PS2にあるときに、貫通孔84bが第2の開口85aと連通するとともに、第1の開口83bを下方から塞ぐように構成されている。
【0099】
ピストン式供給機構86は、第1の位置PS1と第2の位置PS2との間におけるピストンプレート84の往復動に伴って、貫通孔84bの容積と略等しい体積の(所定量の)PMDA原料粉末を第1の開口83bから第2の開口85aへ輸送する。すなわち、ピストン式供給機構86は、第1の位置PS1と第2の位置PS2との間でピストンプレート84を往復動させることによって、粉タンク83から貫通孔84bと底板部材85により構成される収容部にPMDA原料粉末を受け取り、受け取ったPMDA原料粉末を収容部から上側原料供給管82へ落下供給する。従って、ピストンプレート84の動作周期を調整することによって、単位時間当たりのPMDA原料粉末の供給量を自在に調整可能である。
【0100】
なお、貫通孔84bと底板部材85により画成される空間の体積を変えることにより、ピストンプレート84の一回の往復動の際に、収容部が粉タンク83からPMDA原料粉末を受け取って上側原料供給管82へ落下供給する供給量を調整することができる。
【0101】
なお、粉タンク83は、本発明における貯蔵部に相当する。
【0102】
粉タンク83の上蓋83aは、貯蔵室81の内部を気密に保持できるように構成されている。そして、粉タンク83の内部も含め、貯蔵室81には図示しない排気機構を設けるか、あるいは、後述する上側原料供給管82の拡散防止ガス導出口92を介して拡散防止ガス排出部94により排気することによって、貯蔵室81内を真空気密に保持することができる。
【0103】
貯蔵室81には、拡散防止ガス導入口87が形成されている。拡散防止ガス導入口87には、導入配管88を介し、拡散防止ガスを供給するための拡散防止ガス供給部89が接続されている。
【0104】
また、貯蔵室81には、粉タンク83に貯蔵されているPMDA原料粉末の温度を調整するための図示しない温度調整部が設けられていてもよい。そのときは、PMDA原料粉末を例えば60℃程度の温度に保持することができる。
【0105】
上側原料供給管82は、貯蔵室81の底面に形成された開口81aと連通されるとともに、貯蔵室81から仕切り弁71に向かって、すなわち上方から下方に向かって延在するように設けられており、貯蔵室81から仕切り弁71へPMDA原料粉末を落下供給するためのものである。
【0106】
上側原料供給管82は、上部管部材82aと下部管部材82bとに分割されている。上部管部材82aの下端は、下部管部材82bと熱的に接触しないように設けられている。これにより、上部管部材82aの温度が下部管部材82bからの熱伝導によって上昇することを防止することができ、貯蔵室81よりも下方からの貯蔵室81への熱侵入量を低減することができる。
【0107】
上部管部材82aの上側であって開口81aと接続する部分には、上方から下方に向かって管の内径が減少するようにテーパ形状の絞りが設けられており、この絞りによって、貯蔵室81から上側原料供給管82へのPMDA原料粉末の落下供給を安定化することができる。
【0108】
原料貯蔵部80は、拡散防止機構90を有する。拡散防止機構90は、拡散防止ガス導入口87、下部管部材82bに設けられた上側拡散防止部91a、下側原料供給管72に設けられた下側拡散防止部91b、及び拡散防止ガス導出口92を有する。拡散防止機構90は、第1の加熱部24から第1の供給部25の貯蔵室81へのPMDAガスの拡散を防止するためのものである。
【0109】
拡散防止ガス導出口92は、下部管部材82bの途中に形成されている。拡散防止ガス導出口92には、導出配管93を介し、拡散防止ガスを排出するための拡散防止ガス排出部94が接続されている。導出配管93の途中には、拡散防止ガス排出部94と下部管部材82bとの接続を連通又は遮断する開閉機構93aが設けられている。
【0110】
仕切り弁71が閉まっており、第1の加熱部24と第1の供給部25の貯蔵室81とが連通されていないとき、すなわち第1の供給部25から第1の加熱部24へPMDA原料粉末を供給していないときは、開閉機構93aは開いている。仕切り弁71が閉まっているとき、拡散防止ガス導入口87から導入された例えばNガスよりなる拡散防止ガスは、下部管部材82bを通り、拡散防止ガス導出口92へと流れる。これにより、PMDAガスが上側拡散防止部91a側から貯蔵室81側へ拡散することを防止できる。
【0111】
上側拡散防止部91aは、下部管部材82bの上端から拡散防止ガス導出口92までの長さL1をLとし、拡散防止ガスの流速(代表速度)をU、PMDAガスの拡散係数をdとするとき、
Pe=UL/d (1)
で表されるペクレ数Peが10以上100以下であることが好ましい。これにより、PMDAガスが上側拡散防止部91a側から貯蔵室81側へ拡散することを確実に防止できる。また、式(1)で表されるペクレ数Peが30以上100以下であることが更に好ましい。これにより、PMDAガスが上側拡散防止部91a側から貯蔵室81側へ拡散することを更に確実に防止できる。
【0112】
一方、仕切り弁71が開いており、第1の加熱部24と第1の供給部25の貯蔵室81とが連通されているとき、すなわち第1の供給部25から第1の加熱部24へPMDA原料粉末を供給しているときは、開閉機構93aは閉じている。仕切り弁71が開いているとき、拡散防止ガス導入口87から導入された例えばNガスよりなる拡散防止ガスは、下部管部材82b、下側原料供給管72及び第1の加熱部24を通り、第1の供給流路23へと流れる。これにより、PMDAガスが第1の加熱部24側から下側拡散防止部91bを通って貯蔵室81側へ拡散することを防止できる。
【0113】
下側拡散防止部91bは、落下ガイド機構73の下端から第1の加熱部24の上端までの長さL2をLとするとき、式(1)で表されるペクレ数Peが10以上100以下であることが好ましい。これにより、PMDAガスが第1の加熱部24側から下側拡散防止部91bを通って貯蔵室81側へ拡散することを確実に防止できる。また、式(1)で表されるペクレ数Peが30以上100以下であることが更に好ましい。これにより、PMDAガスが第1の加熱部24側から下側拡散防止部91bを通って貯蔵室81側へ拡散することを更に確実に防止できる。
【0114】
次に、前述した、成膜装置10に備えられた原料供給カートリッジ100について説明する。図5は、原料供給カートリッジ100の構成を模式的に示す断面図である。
【0115】
原料供給カートリッジ100は、上蓋部101、補充用治具102、ハンドル部103を有する。
【0116】
上蓋部101は、原料供給カートリッジ100を貯蔵室81に取り付ける際に、前述した上蓋83aに代え、粉タンク83の上面に取り付けられる。
【0117】
補充用治具102は、材料瓶110の開口111と上蓋部101に設けられた開口部101aとを接続し、その内部を通って原料粉末が材料瓶110から粉タンク83に落下可能に設けられている。補充用治具102は、キャップ部104、落下ガイド部105、蛇腹部106、バルブ部107を有する。キャップ部104は、補充用治具102の材料瓶110側に、材料瓶110の開口111に嵌合するように設けられている。落下ガイド部105は、キャップ部104の上蓋部101側に設けられている。落下ガイド部105の上側は、上方から下方に向かって径が減少する漏斗状の形状を有している。また、落下ガイド部105の下側には、円筒状の供給管部108が設けられている。蛇腹部106は、落下ガイド部105と上蓋部101とを接続するように設けられるとともに、上下方向に伸縮可能に設けられている。すなわち、キャップ部104及び落下ガイド部105は、蛇腹部106を介して上蓋部101に対して上下方向に相対変位可能に接続されている。
【0118】
バルブ部107は、上蓋部101に固定されるとともに、落下ガイド部105の漏斗状の部分に係合するように設けられている。キャップ部104及び落下ガイド部105が上側の位置にあるときは、落下ガイド部105とバルブ部107とが係合しており、材料瓶110と粉タンク83とは連通しない。一方、キャップ部104及び落下ガイド部105が下側の位置にあるときは、落下ガイド部105とバルブ部107とは係合せず、材料瓶110と粉タンク83とが連通する。
【0119】
ハンドル部103は、上蓋部101の上方側に設けられており、材料瓶110を原料供給カートリッジ100に取り付けているときに、材料瓶110が倒れないように案内支持するためのものである。また、ハンドル部103は、原料供給カートリッジ100を移動又は上下反転させるときに、持ち手としても機能する部分である。
【0120】
なお、上蓋部101には、原料供給カートリッジ100が貯蔵室81に取り付けられ、原料粉末を粉タンク83に補充する際に、発生する粉塵を排気するための排気ポート101bが設けられていてもよい。
【0121】
上記した原料供給カートリッジ100により、材料瓶110から粉タンク83に原料粉末を供給する方法は、例えば以下のように行うことができる。
【0122】
まず、材料瓶110の開口111を上向きにした状態で、材料瓶110のキャップを取り外す。そして、原料供給カートリッジ100を図5に示す向きと上下反対向きにした状態で、補充用治具102のキャップ部104を材料瓶110の開口111に嵌め込むようにして取り付ける。次いで、粉タンク83の上蓋83aを取り外す。次いで、補充用治具102と材料瓶110とを一体にした状態で上下反転させ、上蓋部101が粉タンク83の上面を覆うように、取り付ける。このとき、キャップ部104及び落下ガイド部105は上側の位置にあり、落下ガイド部105とバルブ部107とが係合しており、材料瓶110と粉タンク83とは連通していない。
【0123】
次いで、排気ポート101bに、例えば掃除機等の図示しない排気装置を取り付ける。そして、材料瓶110と補充用治具102とを一体で下方側に押し込んで、下側の位置に移動させることによって、落下ガイド部105とバルブ部107とが係合しないようにし、材料瓶110と粉タンク83とを連通させる。これにより、材料瓶110から粉タンク83に原料粉末が供給される。
【0124】
その後、材料瓶110及び補充用治具102の押し込みを停止し、例えば蛇腹部106のばね力等により材料瓶110と補充用治具102とを上側の位置に移動させ、落下ガイド部105とバルブ部107とを係合させ、材料瓶110と粉タンク83との連通を遮断する。そして、例えば掃除機等の排気装置により、排気ポート101bを介して舞い上がった粉を吸い出す。その後、原料供給カートリッジ100を粉タンク83の上面から取り外し、補充用治具102と材料瓶110とを一体にした状態で上下反転させる。粉タンク83の上面には、上蓋83aを取り付ける。そして、材料瓶110の開口111から補充用治具102のキャップ部104を取り外すことによって、原料供給カートリッジ100を材料瓶110から取り外し、材料瓶110の開口111にキャップを取り付ける。
【0125】
次に、第2の気化器41について説明する。
【0126】
第2の気化器41は、成膜装置10にODAガスを供給するための気化器である。
【0127】
図6は、第2の気化器41の構成を示す一部縦断面を含む図である。
【0128】
本実施の形態に係る第2の気化器41は、第2の加熱部44、第2の供給部45、第2のガス導入部52及び第2のガス導出部53を有する。第2の加熱部44は、内部の圧力が圧力調整可能に設けられており、ODAを気化させるためのものである。第2の供給部45は、第2の加熱部44の上方に設けられており、第2の加熱部44にODAを供給するためのものである。第2のガス導入部52は、第2の加熱部44に、第2の加熱部44で気化したODAガスを搬送するための第2のキャリアガスC2を導入する。第2のガス導出部53は、第2の加熱部44から、第2のキャリアガスC2とともに気化したODAガスPM2を導出する。
【0129】
第2の加熱部44は、ODA原料を液体状態(以下「ODA液」という。)で充填し、充填したODA液PM2を加熱して気化するための、内壁55で囲まれた内部空間を有する。
【0130】
第2の加熱部44は、断熱材56で囲まれている。断熱材56の一部であって、第2の加熱部44の近傍には加熱機構57が設置されており、第2の加熱部44に充填されたODA液を加熱・気化できるようになっている。なお、加熱機構57としてヒータ等を用いることができる。また、第2の加熱部44を加熱することができればよく、加熱機構57は、第2の加熱部44の近傍でなく、第2の気化器41の任意の場所に設けることができる。
【0131】
第2のガス導入部52は、ガス導入管52a及びガス導入口52bを有する。ガス導入管52aは、ODAガスを搬送する第2のキャリアガスC2を第2の加熱部44の外部から第2の加熱部44の内部へ導入するための配管である。ガス導入管52aは、第2の加熱部44の上面を貫通するように第2の加熱部44の上面に取り付けられるとともに、第2の加熱部44の内部を上方から下方に延在するように設けられている。また、ガス導入管52aは、一端が第2の加熱部44の底部において開口するとともに、他端が第2の加熱部44の外方で第2のキャリアガス供給流路46に接続されている。ガス導入口52bは、ガス導入管52aの下端に形成された開口である。
【0132】
図6では、ガス導入口52bがODA液PM2の液面よりも下方にあり、ガス導入口52bから供給された第2のキャリアガスC2がODA液PM2をバブリングする場合を例示している。しかし、ガス導入口52bは、ODA液PM2の液面よりも上方にあってもよく、ガス導入口52bから供給された第2のキャリアガスC2がODA液PM2をバブリングしなくてもよい。
【0133】
ガス導入管52aは、断熱材52cで囲まれていてもよい。また、第2の加熱部44に常温より高温に加熱された第2のキャリアガスC2を導入できるように、断熱材52cには、図示しない加熱機構が備えられていてもよい。
【0134】
第2のガス導出部53は、ガス導出口53a及びガス導出管53bを有する。ガス導出管53bは、ODAガスPM2および第2のキャリアガスC2を第2の気化器41の内部から第2の気化器41の外部へ導出するための配管である。ガス導出管53bは、第2の加熱部44の上面を貫通するように第2の加熱部44の上面に取り付けられている。また、ガス導出管53bは、一端が第2の加熱部44の内部上方で開口されるように設けられており、他端が第2の加熱部44の外方で第2の供給流路43に接続されている。ガス導出口53aは、ガス導出管53bの下端に形成された開口である。
【0135】
ガス導出管53bは、断熱材53cで囲まれていてもよい。また、第2の加熱部44から常温より高温に加熱したODAガスPM2及び第2のキャリアガスC2を導出できるように、断熱材53cには、図示しない加熱機構が備えられていてもよい。
【0136】
第2の供給部45は、第2の加熱部44の上方に設けられており、第2の加熱部44にODA原料を固体状態(以下「ODA原料粉末」という。)で落下供給するものである。第2の供給部45は、仕切り弁部70a及び原料貯蔵部80aを有する。第2の加熱部44の上方に仕切り弁部70aが設けられ、仕切り弁部70aの更に上方に原料貯蔵部80aを有する。第2の気化器41における第2の供給部45は、第1の気化器21における第1の供給部25と同様の構造を有してもよく、PMDA原料粉末に代えODA原料粉末を供給する点を除き、例えば図4を用いて前述した第1の供給部25と同様に構成することができる。
【0137】
次に、図7から図12を参照し、本実施の形態に係る成膜装置を用いた成膜処理の一例について説明する。
【0138】
図7は、本実施の形態に係る成膜装置を用いた成膜処理を含む各工程の手順を説明するためのフローチャートである。図8は、ステップS11における原料ガス供給部20、40の各バルブの開閉状態を示す図である。図9は、ステップS14における原料ガス供給部20、40の各バルブの開閉状態を示す図である。図10は、ステップS15における原料ガス供給部20、40の各バルブの開閉状態を示す図である。図11は、ステップS15における圧力の時間依存性を模式的に示すグラフである。図12は、ステップS16における原料ガス供給部20、40の各バルブの開閉状態を示す図である。
【0139】
予め、ステップS11では、成膜装置の各供給流路のコンダクタンスを確認する。
【0140】
図8に一例を示すように、第1の原料ガス供給部20では、バルブV1、V2、V5を閉じた状態で、バルブV3、V4を開き、第1のキャリアガス供給部22をチャンバー11に接続する。この状態で、第1のキャリアガス供給部22により第1のキャリアガスを第1の気化器21を迂回してチャンバー11に供給する。そして、圧力計M1により測定された圧力P1を、予め準備した基準データと比較することによって、第1のキャリアガス供給流路26及び第1の供給流路23のコンダクタンスが所定範囲内にあるか否かを検知する。
【0141】
同様に、第2の原料ガス供給部40でも、バルブV11、V12、V15を閉じた状態で、バルブV13、V14を開き、第2のキャリアガス供給部42をチャンバー11に接続する。この状態で、第2のキャリアガス供給部42により第2のキャリアガスを第2の気化器41を迂回してチャンバー11に供給する。そして、圧力計M11により測定された圧力P11を、予め準備した基準データと比較することによって、第2のキャリアガス供給流路46及び第2の供給流路43のコンダクタンスが所定範囲内にあるか否かを検知する。
【0142】
なお、図8に示すように、第1の原料ガス供給部20において、バルブV6を開き、第1の調整用ガス供給部30により、流量調整用ガスをチャンバー11に供給してもよい。同様に、第2の原料ガス供給部40において、バルブV16を開き、第2の調整用ガス供給部50により、流量調整用ガスをチャンバー11に供給してもよい。また、コンダクタンスが所定範囲内にないときは、警報発生部61cにより警報を発生してもよい。そして、ステップS11では、警報が発生したとき、その後の成膜処理を中止し、メンテナンス作業を行うようにしてもよい。
【0143】
そして、ステップS12では、チャンバー11にウェハWを搬入する(搬入工程)。図1に示した成膜装置10の例では、例えばウェハボート12をチャンバー11の下側外方に下降させ、下降したウェハボート12にウェハWを載置し、ウェハWを載置したウェハボート12を再び上昇してチャンバー11内に挿入することにより、ウェハWを搬入することができる。
【0144】
次に、ステップS13では、チャンバー11の内部を減圧する(チャンバー減圧工程)。排気口15に接続されている図示しない排気機構の排気能力又は排気機構と排気口15との間に設けられている図示しない流量調整バルブの開度を調整することにより、チャンバー11を排気する排気速度を増大させる。そして、チャンバー11の内部を所定圧力例えば大気圧(760Torr)から例えば0.1Torrに減圧する。
【0145】
次に、ステップS14では、キャリアガスの分圧を計測する。
【0146】
図9に一例を示すように、第1の原料ガス供給部20では、バルブV1、V2、V4を閉じた状態で、バルブV3、V5を開き、第1のキャリアガス供給部22を第1のバイパス流路27を介して第1の排出部28に接続する。この状態で、第1のキャリアガス供給部22からの第1のキャリアガスを、第1の排出部28により第1の気化器21を迂回して排出し、圧力計M1により圧力P1を測定する。測定された圧力をP1nbとすると、圧力P1nbは、第1のキャリアガスの分圧に等しい。
【0147】
同様に、第2の原料ガス供給部40では、バルブV11、V12、V14を閉じた状態で、バルブV13、V15を開き、第2のキャリアガス供給部42を第2のバイパス流路47を介して第2の排出部48に接続する。この状態で、第2のキャリアガス供給部42からの第2のキャリアガスを、第2の排出部48により第2の気化器41を迂回して排出し、圧力計M11により圧力P11を測定する。測定された圧力をP11nbとすると、圧力P11nbは、第2のキャリアガスの分圧に等しい。
【0148】
次に、ステップS15では、原料ガスの分圧を計測する。
【0149】
予め、第1の気化器21の第1の加熱部24の温度を所定温度例えば260℃とし、第1の加熱部24の圧力を所定圧力とし、所定時間保持しておく。所定圧力を例えば大気圧(760Torr)としてもよく、大気圧以下の圧力(減圧)としてもよい(以下の「所定圧力」も同様)。そして、図10に一例を示すように、第1の原料ガス供給部20では、バルブV4を閉じ、バルブV5を開いた状態で、バルブV3を閉じ、バルブV1、V2を開き、第1のキャリアガス供給部22及び第1の気化器21を第1の排出部28に接続する。この状態で、第1のキャリアガス供給部22からの第1のキャリアガスを、第1の排出部28により第1の気化器21を介して排出し、圧力計M1により圧力P1を測定する。
【0150】
図11に一例を示すように、測定開始後、第1の加熱部24の圧力は所定圧力から徐々に減少する。例えば所定時間経過後に測定された圧力P1をP1vapとすると、圧力P1vapは、PMDAガスの分圧と第1のキャリアガスの分圧との合計に等しい。従って、PMDAガスの分圧ΔP1は、ΔP1=P1vap−P1nbにより算出することができる。
【0151】
そして、測定されたPMDAガスの分圧ΔP1を、予め準備した基準データと比較することによって、PMDAガスの分圧ΔP1が所定範囲内にあるか否かを検知する。また、PMDAガスの分圧ΔP1が所定範囲内にないときは、警報発生部61cにより警報を発生してもよい。そして、ステップS15では、警報が発生したとき、その後の成膜処理を中止し、メンテナンス作業を行うようにしてもよい。
【0152】
同様に、第2の気化器41の第2の加熱部44の温度を所定温度例えば220℃とし、第2の加熱部44の圧力を所定圧力例えば大気圧(760Torr)とし、所定時間保持しておく。そして、図10に一例を示すように、第2の原料ガス供給部40でも、バルブV14を閉じ、バルブV15を開いた状態で、バルブV13を閉じ、バルブV11、V12を開き、第2のキャリアガス供給部42及び第2の気化器41を第2の排出部48に接続する。この状態で、第2のキャリアガス供給部42からの第2のキャリアガスを、第2の排出部48により第2の気化器41を迂回して排出し、圧力計M11により圧力P11を測定する。
【0153】
図11に一例を示すように、測定開始後、第2の加熱部44の圧力は所定圧力から徐々に減少する。例えば所定時間経過後に測定された圧力P11をP11vapとすると、圧力P11vapは、ODAガスの分圧と第2のキャリアガスの分圧との合計に等しい。従って、ODAガスの分圧ΔP11は、ΔP11=P11vap−P11nbにより算出することができる。
【0154】
そして、測定されたODAガスの分圧ΔP11を、予め準備した基準データと比較することによって、ODAガスの分圧ΔP11が所定範囲内にあるか否かを検知する。また、ODAガスの分圧ΔP11が所定範囲内にないときは、警報発生部61cにより警報を発生してもよい。そして、ステップS15では、警報が発生したとき、その後の成膜処理を中止し、メンテナンス作業を行うようにしてもよい。
【0155】
次に、ステップS16では、ポリイミド膜を成膜する(成膜工程)。図12に一例を示すように、バルブV3を閉じ、バルブV1、V2を開いた状態で、バルブV5を閉じ、バルブV4を開き、第1のキャリアガス供給部22及び第1の気化器21をチャンバー11に接続する。この状態で、第1の原料ガス供給部20により、PMDAガス及び第1のキャリアガスをチャンバー11に供給する。また、図12に一例を示すように、バルブV13を閉じ、バルブV11、V12を開いた状態で、バルブV15を閉じ、バルブV14を開き、第2のキャリアガス供給部42及び第2の気化器41をチャンバー11に接続する。この状態で、第2の原料ガス供給部40により、ODAガス及び第2のキャリアガスをチャンバー11に供給する。そして、ウェハWの表面でPMDAとODAを重合反応させ、ポリイミド膜を成膜する。
【0156】
このときの、PMDAとODAとの重合反応は、次の式(2)に従う。
【0157】
【化1】

図12に示すように、第1の原料ガス供給部20において、バルブV6を開き、第1の調整用ガス供給部30により、流量調整用ガスをチャンバー11に供給してもよい。例えば第1のキャリアガスの流量を50sccmとし、流量調整用ガスの流量を850sccmとすることができる。
【0158】
また、図12に示すように、第2の原料ガス供給部40において、バルブV16を開き、第2の調整用ガス供給部50により、流量調整用ガスをチャンバー11に供給してもよい。例えば第2のキャリアガスの流量を700sccmとし、流量調整用ガスの流量を200sccmとすることができる。
【0159】
成膜時の第1の気化器21の温度及び圧力並びに第2の気化器41の温度及び圧力は、図13及び図14を用いて説明することができる。
【0160】
図13は、PMDAの蒸気圧曲線を模式的に示すグラフである。図13では、横軸において、絶対温度Tの逆数(1/T)がリニアスケールになるように温度を示し、縦軸において、圧力の対数がリニアスケールになるように圧力を示している。すると、所定範囲において、PMDAの蒸気圧曲線は、略直線で示される。そして、PMDAの大気圧(760Torr)における液化温度は287℃であるため、第1の加熱部24において固体状態のPMDA原料(PMDA原料粉末)を加熱して気化させるためには、温度が287℃以下であって、圧力がその温度における蒸気圧曲線上の圧力以下の圧力であることが好ましい。すなわち、第1の気化器21の内部の温度、圧力が、図13において着色した領域Iに含まれるように、第1の気化器21を制御することが好ましい。そして、PMDAガスの供給量を増加させるためには、第1の気化器21の内部の温度、圧力が、領域Iの部分であってなるべく圧力が高い領域に含まれるように、第1の気化器21を制御することが好ましい。
【0161】
図14は、ODAの蒸気圧曲線を模式的に示すグラフである。図14でも、横軸において、絶対温度Tの逆数(1/T)がリニアスケールになるように温度を示し、縦軸において、圧力(分圧)の対数がリニアスケールになるように圧力を示している。すると、所定範囲において、ODAの蒸気圧曲線は、略直線で示される。そして、ODAの大気圧(760Torr)における液化温度は193℃であるため、第2の加熱部44において液体状態のODA原料(ODA液)を加熱して気化させるためには、温度が193℃以上であって、圧力がその温度における蒸気圧曲線上の圧力以下の圧力であることが好ましい。すなわち、第2の気化器41の内部の温度、圧力が、図14において着色した領域IIに含まれるように、第2の加熱部44を制御することが好ましい。そして、ODAガスの供給量を増加させるためには、第2の気化器41の内部の温度、圧力が、領域IIの部分であってなるべく圧力が高い領域に含まれるように、第2の気化器41を制御することが好ましい。
【0162】
更に、第1の気化器21で気化したPMDAガス及び第2の気化器41で気化したODAガスをチャンバー11に供給して重合反応させるためには、第1の気化器21及び第2の気化器41の温度、圧力ができるだけ近いことが好ましい。このような条件を考慮して、第1の加熱部24及び第2の加熱部44の温度、圧力を決定することができる。
【0163】
図13に示すように、第1の気化器21の内部の温度が例えば240〜260℃であることが好ましく、第1の気化器21の内部の圧力がその温度領域に対応する蒸気圧曲線上の圧力である2〜6Torrであることが好ましい。また、図14に示すように、第2の気化器41の内部の温度が例えば200〜220℃であることが好ましく、第2の気化器41の内部の圧力がその温度領域に対応する蒸気圧曲線上の圧力である0.5〜1.2Torrであることが好ましい。
【0164】
一方、成膜工程の際に必要なPMDAモノマーの流量F1は、例えば以下のように算出される。ここでは、一例として、直径300mmφのウェハ25枚を一括して成膜処理を行い、1μm厚のポリイミド膜を成膜する場合を考える。すると、成膜に必要なPMDA原料粉末の量及び必要なPMDAモノマーの流量は、例えば以下のように算出される。
【0165】
ウェハの面積Sは、式(3)
S=π×15cm×15cm=707cm (3)
により表され、ポリイミド膜の体積Vは、式(4)
V=S×1×10−4=7.07×10−2cm (4)
により表される。そして、ポリイミドの密度を1.42g/cmとすると、ウェハ1枚当たりの成膜に必要なポリイミドの質量w0は、
w0=V×1.42=0.100g (5)
により表される。そして、ポリイミド膜中においてPMDAモノマー(分子量218)とODAモノマー(分子量200)が略等モル比で混合されるとすると、各モノマーの必要な質量は、約w0/2となる。更に、ウェハ25枚を一括して成膜処理するものとし、供給したPMDAモノマーのうち10%が成膜に用いられるものと仮定すると、1回の成膜処理に必要なPMDAモノマーの質量w1は、
w1=w0/2×25/(10/100)=12.5g (6)
となる。そして、成膜時間tを10分とするとき、第1の気化器21から供給されるPMDAガスの流量F1は、
F1=w1/t=12.5g/10分=1.25g/分
となる。
【0166】
図15は、PMDAガスの分圧を時間で積算した値と、PMDAガスの気化量との関係を示す実験結果の一例を示すグラフである。図15に示すように、PMDAガスの気化量は、PMDAガスの分圧を時間で積算した値に比例する。これより、PMDAガスの流量F1は、前述したPMDAガスの分圧ΔP1に比例する。従って、PMDAガスの分圧ΔP1を所定値に調整することによって、成膜工程においてウェハWに供給されるPMDAモノマーの質量を所定値に調整することができる。
【0167】
図16は、ODAガスの分圧を時間で積算した値と、ODAガスの気化量との関係を示す実験結果の一例を示すグラフである。図16に示すように、ODAガスの気化量は、ODAガスの分圧を時間で積算した値に比例する。これより、ODAガスの流量F2は、前述したODAガスの分圧ΔP11に比例する。従って、ODAガスの分圧ΔP11を所定値に調整することによって、成膜工程においてウェハWに供給されるODAモノマーの質量を所定値に調整することができる。
【0168】
本実施の形態では、第1の原料ガス供給部20において圧力計M2を設けることが好ましい。これにより、圧力計M1により測定された圧力P1と圧力計M2により測定された圧力P2とに基づいて、PMDAガスの気化量が所定範囲内にあるか否か、第1の供給流路23のコンダクタンスが所定範囲内にあるか否かを検知することができる。
【0169】
一例として、PMDAガスの気化量が100sccm、第1のキャリアガスの流量が50sccmのとき、圧力P1と圧力P2の差圧を2Torrとすることができる。ここで、PMDAガスの気化量が10%増加して110sccmになったと仮定する。すると、圧力P1と圧力P2の差圧は0.17Torr上昇し、2.17Torrとなる。また、圧力計M1の分解能は0.01Torrであり、圧力が安定している状態での測定値のばらつきが0.03Torrであると仮定する。そうすると、圧力計M1、M2を用いることにより、PMDAガスの気化量の±10%程度の変動について検知できる。
【0170】
同様に、本実施の形態では、第2の原料ガス供給部40において圧力計M12を設けることが好ましい。これにより、圧力計M11により測定された圧力P11と圧力計M12により測定された圧力P12とに基づいて、ODAガスの気化量が所定範囲内にあるか否か、第2の供給流路43のコンダクタンスが所定範囲内にあるか否かを検知することができる。また、圧力計M11、M12を用いることにより、ODAガスの気化量の±10%程度の変動についても検知できる。
【0171】
また、本実施の形態では、第1の原料ガス供給部20において圧力計M3を設けることが好ましい。これにより、圧力計M1により測定された圧力P1と圧力計M3により測定された圧力P3とに基づいて、PMDAガスの気化量が所定範囲内にあるか否か、第1の気化器21のコンダクタンスが所定範囲内にあるか否かを検知することができる。
【0172】
また、本実施の形態では、第2の原料ガス供給部40において圧力計M13を設けることが好ましい。これにより、圧力計M11により測定された圧力P11と圧力計M13により測定された圧力P13とに基づいて、ODAガスの気化量が所定範囲内にあるか否か、第2の気化器41のコンダクタンスが所定範囲内にあるか否かを検知することができる。
【0173】
このとき、各圧力計により測定された圧力を予め準備した基準データと比較し、各圧力が所定範囲内にあるか否かを検知することによって、各原料ガスの気化量及び各供給流路のコンダクタンスが所定範囲内にあるか否かを検知してもよい。そして、各圧力が所定範囲内にないときは、警報発生部61cにより警報を発生してもよい。また、ステップS16では、警報が発生しても成膜処理を中止せず、警報の発生を記録し、そのときの成膜処理を最後まで行ってから、メンテナンス作業を行うようにしてもよい。
【0174】
ステップS16(成膜工程)の後、ステップS17では、バルブV1、V2、V4を閉じ、第1の気化器21の第1の加熱部24の圧力を所定圧力例えば大気圧(760Torr)Torrに復圧する。また、バルブV11、V12、V14を閉じ、第2の気化器41の第2の加熱部44の圧力を所定圧力例えば大気圧(760Torr)に復圧する。そして、チャンバー11の内部を大気圧に復圧する(チャンバー復圧工程)。排気口15に接続されている図示しない排気機構の排気能力又は排気機構と排気口15との間に設けられている図示しない流量調整バルブの開度を調整することにより、チャンバー11を排気する排気速度を減少させる。そして、チャンバー11の内部を例えば0.1Torrから例えば大気圧(760Torr)に復圧する。
【0175】
次に、ステップS18では、チャンバー11からウェハWを搬出する(搬出工程)。図1に示した成膜装置10の例では、例えばウェハボート12をチャンバー11の下側外方に下降させ、下降したウェハボート12からウェハWを取り外し、ウェハWを取り外したウェハボート12を再び上昇してチャンバー11内に挿入することにより、ウェハWを搬出することができる。
【0176】
次に、ステップS19では、PMDAを供給するか判定する。例えば、前回の供給から所定回数の成膜工程が行われたか、あるいは、前回の供給から所定時間が経過したか、等の判定を行い、PMDA原料粉末を供給すべきであると判定したときは、ステップS20に進み、PMDA原料粉末を供給しなくてもよいと判定したときは、ステップS21に進む。
【0177】
ステップS20では、第1の気化器21にPMDAを供給する(供給工程)。拡散防止ガス供給口87から拡散防止ガスを供給し、供給した拡散防止ガスを拡散防止ガス導出口92から排出した状態で、仕切り弁部70の仕切り弁71を開く。そして、ピストン式供給機構86により粉タンク83から上側原料供給管82にPMDA原料粉末を所定の供給量で所定回数落下供給することによって、PMDA原料粉末を貯蔵室81から第1の加熱部24へ供給する。
【0178】
次に、ステップS21では、所定回数の成膜工程が行われたか判定する。成膜工程が所定回数行われたときは、成膜処理を終了する。成膜工程が所定回数行われていないときは、ステップS11に戻る。
【0179】
本実施の形態では、拡散防止機構90により第1の加熱部24から貯蔵室81へ気化したPMDAガスが拡散することを防止できるとともに、ピストン式供給機構86により貯蔵室81から第1の加熱部24へ供給するPMDA原料粉末の供給量を精度よく調整することができる。
【0180】
なお、本実施の形態では、ODAを供給するか判定するODA判定工程及び第2の気化器41にODAを供給するODA供給工程については、説明を省略した。しかし、ODA判定工程及びODA供給工程については、PMDAを供給するか判定する工程及びPMDAを供給する工程と全く同様にして行うことができる。
【0181】
以上、本実施の形態では、原料ガスの供給量の変動を防止し、原料ガスの重合反応により成膜されるポリイミド膜を連続して安定に成膜できる。
【0182】
また、前述したように、バッチ処理を行う成膜装置に代え、枚葉処理を行う成膜装置を用いた場合でも、PMDAガス及びODAガスのそれぞれのガスの供給量の変動を防止し、PMDAとODAとの重合反応により成膜されるポリイミド膜を連続して安定に成膜できる。
【0183】
なお、本実施の形態において、第1のバイパス流路27、第1の調整用ガス供給部30、第1の調整用ガス供給流路31を省略してもよい。また、第2のバイパス流路47、第2の調整用ガス供給部50、第2の調整用ガス供給流路51を省略してもよい。
(実施の形態の第1の変形例)
次に、図17を参照し、本発明の実施の形態の第1の変形例に係る成膜装置について説明する。
【0184】
本変形例に係る成膜装置は、圧力計M3、M13が設けられていない点で、実施の形態に係る成膜装置と相違する。それ以外の部分については、実施の形態に係る成膜装置と同様であり、説明を省略する。
【0185】
図17は、本変形例に係る成膜装置における原料ガス供給部20、40及び制御部60の構成図である。
【0186】
本変形例では、第1の原料ガス供給部20に圧力計M3が設けられていない。しかし、図17に示すように、第1の供給流路23であって、バルブV2のチャンバー11側には、圧力計M1が設けられており、バルブV2の第1の気化器21側には、圧力計M2が設けられている。そして、第1の供給流路23がバルブV2に絞られることによって、第1の供給流路23では、バルブV2の両側、すなわち圧力計M1により測定された圧力P1と圧力計M2により測定された圧力P2とに圧力差が生じる。従って、圧力計M1により測定された圧力P1と、圧力計M2により測定された圧力P2とに基づいて、第1の供給流路23の流量とコンダクタンスとを算出することができる。
【0187】
同様に、本変形例では、第2の原料ガス供給部40に圧力計M13が設けられていない。しかし、図17に示すように、第2の供給流路43であって、バルブV12のチャンバー11側には、圧力計M11が設けられており、バルブV12の第2の気化器41側には、圧力計M12が設けられている。そして、第2の供給流路43がバルブV12に絞られることによって、第2の供給流路43では、バルブV12の両側、すなわち圧力計M11により測定された圧力P11と圧力計M12により測定された圧力P12とに圧力差が生じる。従って、圧力計M11により測定された圧力P11と、圧力計M12により測定された圧力P12とに基づいて、第2の供給流路43の流量とコンダクタンスとを算出することができる。
【0188】
本変形例に係る成膜方法も、ステップS16を除き、実施の形態に係る成膜方法と同様にすることができる。
【0189】
本変形例では、第1の原料ガス供給部20に圧力計M3が設けられていない。しかし、ステップS16において、圧力計M1により測定された圧力P1と圧力計M2により測定された圧力P2とに基づいて、PMDAガスの気化量が所定範囲内にあるか否か、第1の供給流路23のコンダクタンスが所定範囲内にあるか否かを検知することができる。また、第2の原料ガス供給部40に圧力計M13が設けられていない。しかし、ステップS16において、圧力計M11により測定された圧力P11と圧力計M12により測定された圧力P12とに基づいて、ODAガスの気化量が所定範囲内にあるか否か、第2の供給流路43のコンダクタンスが所定範囲内にあるか否かを検知することができる。
【0190】
このとき、各圧力計により測定された圧力を予め準備した基準データと比較し、各圧力が所定範囲内にあるか否かを検知することによって、各原料ガスの気化量及び各供給流路のコンダクタンスが所定範囲内にあるか否かを検知してもよい。そして、各圧力が所定範囲内にないときは、警報発生部61cにより警報を発生してもよい。また、ステップS16では、警報が発生しても、成膜処理を中止せず、警報の発生を記録し、そのときの成膜処理を最後まで行ってから、メンテナンス作業を行うようにしてもよい。
【0191】
本変形例でも、原料ガスの供給量の変動を防止し、原料ガスの重合反応により成膜されるポリイミド膜を連続して安定に成膜できる。
(実施の形態の第2の変形例)
次に、図18を参照し、本発明の実施の形態の第2の変形例に係る成膜装置について説明する。
【0192】
本変形例に係る成膜装置は、圧力計M2、M3、M12、M13が設けられていない点で、実施の形態に係る成膜装置と相違する。それ以外の部分については、実施の形態に係る成膜装置と同様であり、説明を省略する。
【0193】
図18は、本変形例に係る成膜装置における原料ガス供給部20、40及び制御部60の構成図である。
【0194】
本変形例では、第1の原料ガス供給部20に圧力計M2、M3が設けられていない。しかし、図18に示すように、第1の供給流路23であって、バルブV2のチャンバー11側には、圧力計M1が設けられている。そして、第1の原料ガスの供給量は、圧力計M1により測定された圧力P1に依存する。従って、圧力計M1により測定された圧力P1に基づいて、第1の原料ガスの供給量を算出することができる。
【0195】
同様に、本変形例では、第2の原料ガス供給部40に圧力計M12、M13が設けられていない。しかし、図18に示すように、第2の供給流路43であって、バルブV12のチャンバー11側には、圧力計M11が設けられている。そして、第2の原料ガスの供給量は、圧力計M11により測定された圧力P11に依存する。従って、圧力計M11により測定された圧力P11に基づいて、第2の原料ガスの供給量を算出することができる。
【0196】
本変形例に係る成膜方法も、ステップS16を除き、実施の形態に係る成膜方法と同様にすることができる。
【0197】
本変形例では、第1の原料ガス供給部20に圧力計M2、M3が設けられていない。しかし、ステップS16において、圧力計M1により測定された圧力P1に基づいて、PMDAガスの気化量が所定範囲内にあるか否かを検知することができる。また、第2の原料ガス供給部40に圧力計M12、M13が設けられていない。しかし、ステップS16において、圧力計M11により測定された圧力P11に基づいて、ODAガスの気化量が所定範囲内にあるか否かを検知することができる。
【0198】
このとき、各圧力計により測定された圧力を予め準備した基準データと比較し、各圧力が所定範囲内にあるか否かを検知することによって、各原料ガスの気化量が所定範囲内にあるか否かを検知してもよい。そして、各圧力が所定範囲内にないときは、警報発生部61cにより警報を発生してもよい。また、ステップS16では、警報が発生しても、成膜処理を中止せず、警報の発生を記録し、そのときの成膜処理を最後まで行ってから、メンテナンス作業を行うようにしてもよい。
【0199】
本変形例でも、原料ガスの供給量の変動を防止し、原料ガスの重合反応により成膜されるポリイミド膜を連続して安定に成膜できる。
【0200】
以上、本発明の好ましい実施の形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0201】
10 成膜装置
11 チャンバー
20 第1の原料ガス供給部
21 第1の気化器
22 第1のキャリアガス供給部
24 第1の加熱部
25 第1の供給部
30 第1の調整用ガス供給部
40 第2の原料ガス供給部
41 第2の気化器
42 第2のキャリアガス供給部
44 第2の加熱部
45 第2の供給部
50 第2の調整用ガス供給部
60 制御部
M1〜M3 圧力計(第1の圧力計側部)
M11〜M13 圧力計(第2の圧力計側部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族酸二無水物よりなる第1の原料を気化した第1の原料ガスと、芳香族ジアミンよりなる第2の原料を気化した第2の原料ガスとを、成膜容器内に設置されている基板に供給することによって、前記基板にポリイミド膜を成膜する成膜装置において、
内部の圧力が圧力調整可能に設けられており、固体状態の前記第1の原料を気化させ、気化した前記第1の原料ガスを前記基板に供給するための第1の気化器と、
内部の圧力が圧力調整可能に設けられており、液体状態の前記第2の原料を気化させ、気化した前記第2の原料ガスを前記基板に供給するための第2の気化器と、
前記第1の気化器の内部の圧力を測定するための第1の圧力計側部と、
前記第2の気化器の内部の圧力を測定するための第2の圧力計側部と、
前記第1の圧力計側部により測定した第1のデータに基づいて前記第1の原料ガスの供給量を算出し、前記第2の圧力計側部により測定した第2のデータに基づいて前記第2の原料ガスの供給量を算出し、算出した前記第1の原料ガスの供給量と算出した前記第2の原料ガスの供給量とがそれぞれ一定になるように、前記第1の気化器及び前記第2の気化器を制御する制御部と
を有する成膜装置。
【請求項2】
前記制御部は、測定した前記第1のデータを予め準備した第1の基準データと比較することによって、前記第1の原料ガスの供給量が第1の所定範囲内にあるか否かを検知し、測定した前記第2のデータを予め準備した第2の基準データと比較することによって、前記第2の原料ガスの供給量が第2の所定範囲内にあるか否かを検知するものである、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記第1の圧力計側部は、前記第1の気化器から前記成膜容器に前記第1の原料ガスが流れる第1の供給流路に設けられた第1の圧力計を有し、
前記第2の圧力計側部は、前記第2の気化器から前記成膜容器に前記第2の原料ガスが流れる第2の供給流路に設けられた第2の圧力計を有する、請求項1又は請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記第1の圧力計側部は、前記第1の気化器と前記第1の圧力計との間の前記第1の供給流路に設けられた第3の圧力計と、前記第1の圧力計と前記第3の圧力計との間の前記第1の供給流路を絞る第1の絞り部とを有し、
前記第2の圧力計側部は、前記第2の気化器と前記第2の圧力計との間の前記第2の供給流路に設けられた第4の圧力計と、前記第2の圧力計と前記第4の圧力計との間の前記第2の供給流路を絞る第2の絞り部とを有し、
前記制御部は、前記第3の圧力計により測定された圧力と、前記第1の圧力計により測定された圧力とに基づいて前記第1の原料ガスの供給量を算出し、前記第4の圧力計により測定された圧力と、前記2の圧力計により測定された圧力とに基づいて前記第2の原料ガスの供給量を算出するものである、請求項3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第3の圧力計により測定された圧力又は前記第1の圧力計により測定された圧力に基づいて、前記第1の気化器のコンダクタンスを算出し、前記第4の圧力計により測定された圧力又は前記第2の圧力計により測定された圧力に基づいて、前記第2の気化器のコンダクタンスを算出するものである、請求項4に記載の成膜装置。
【請求項6】
第3の供給流路を介して前記第1の気化器と接続されており、前記第1の原料ガスを搬送する第1のキャリアガスを前記第1の気化器に供給する第1のキャリアガス供給部と、
第4の供給流路を介して前記第2の気化器と接続されており、前記第2の原料ガスを搬送する第2のキャリアガスを前記第2の気化器に供給する第2のキャリアガス供給部と
を有し、
前記第1の圧力計側部は、前記第3の供給流路に設けられた第5の圧力計を有し、
前記第2の圧力計側部は、前記第4の供給流路に設けられた第6の圧力計を有し、
前記制御部は、前記第5の圧力計により測定された圧力に基づいて、前記第1の気化器のコンダクタンスを算出し、前記第6の圧力計により測定された圧力に基づいて、前記第2の気化器のコンダクタンスを算出するものである、請求項4又は請求項5に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記第1の圧力計は、前記第1のキャリアガス供給部と前記成膜容器とが前記第1の気化器を迂回する第1の迂回流路を介して接続されているときに、前記第1の迂回流路の圧力を測定可能な位置に設けられており、
前記第2の圧力計は、前記第2のキャリアガス供給部と前記成膜容器とが前記第2の気化器を迂回する第2の迂回流路を介して接続されているときに、前記第2の迂回流路の圧力を測定可能な位置に設けられている、請求項6に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記第1のキャリアガス供給部に、前記第1の気化器を介して前記成膜容器と切り替え可能に接続されているとともに、前記第1の迂回流路を介して前記成膜容器と切り替え可能に接続されており、ガスを排出するための排出部を有し、
前記第1の圧力計は、前記第1のキャリアガス供給部と前記排出部が前記第1の気化器を介して接続されているときに前記第1の気化器から流れるガスの圧力を測定可能であるとともに、前記第1のキャリアガス供給部と前記排出部が前記第1の迂回流路を介して接続されているときに前記第1の迂回流路の圧力を測定可能な位置に設けられており、
前記制御部は、前記第1のキャリアガス供給部から前記第1の気化器を介して前記第1のキャリアガスを前記排出部により排出しているときに前記第1の圧力計により測定された圧力と、前記第1のキャリアガス供給部から前記第1の迂回流路を介して前記第1のキャリアガスを前記排出部により排出しているときに前記第1の圧力計により測定された圧力とに基づいて、前記第1の原料ガスの供給量を算出するものである、請求項7に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記第1の供給流路に合流するように接続されており、前記第1の原料ガスを搬送するキャリアガスの流量を調整するための流量調整用ガスを供給する調整用ガス供給部を有する、請求項6から請求項8のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項10】
前記第1の気化器は、
前記第1の原料を加熱して気化させる第1の加熱部と、
前記第1の加熱部の上方に設けられた、前記第1の加熱部に前記第1の原料を落下供給する第1の供給部と
を有するものである、請求項1から請求項9のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項11】
前記第2の気化器は、
前記第2の原料を加熱して気化させる第2の加熱部と、
前記第2の加熱部の上方に設けられた、前記第2の加熱部に前記第2の原料を落下供給する第2の供給部と
を有するものである、請求項1から請求項10のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項12】
前記芳香族酸二無水物は、ピロメリット酸二無水物であり、
前記芳香族ジアミンは、4,4'−ジアミノジフェニルエーテルである、請求項1から請求項11のいずれかに記載の成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−146924(P2012−146924A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6057(P2011−6057)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】