説明

成膜装置

【課題】被成膜材料の有無を検出する検出機能を確保することができる成膜装置を提供する。
【解決手段】成膜装置1は、ワークWに成膜材料を成膜する成膜装置であって、ワークWを収納し成膜処理を行う成膜室2と、成膜室2の内部に設けられ、ワークWを搬送する搬送装置7と、成膜室2を画成する壁3aに設けられ、光を透過する防着ガラス27を有し、成膜室2の外部から内部への投光を可能とするビューポート13と、成膜室2の外部に設けられ、ビューポート13の防着ガラス27を透過させてセンサー光を投光し成膜室2の内部のワークWの有無を検出する走行センサ11と、防着ガラス27への成膜材料の堆積を抑制するためのヒータ31と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被成膜材に成膜材料を成膜する成膜装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、下記特許文献1に記載の成膜装置が知られている。この成膜装置は、真空容器内に被成膜材を収容し、被成膜材表面に成膜材料を成膜するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−217767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の成膜装置では、真空容器内における被成膜材の移動を制御すべく、所定の位置における被成膜材の有無を検出する必要がある。このような検出手段としては、例えば、被成膜材を載置するトレイ等に光を当てて検出するタイプのセンサー等が考えられる。しかしながら、このタイプのセンサーを真空容器の外側に配置して用いる場合、少なくとも真空容器の壁にセンサー光を透過する透過部を設ける必要がある。ところが、真空容器中には成膜材料が浮遊しているので透過部にも成膜材料が付着しうる。そして、成膜材料が透過部に付着し堆積することにより、当該透過部の光透過性が失われ、センサーによる検出機能を確保できなくなる場合がある。
【0005】
この問題に鑑み、本発明は、被成膜材料の有無を検出する検出機能を確保することができる成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の成膜装置は、被成膜材に成膜材料を成膜する成膜装置であって、被成膜材を収納し成膜処理を行う成膜室と、成膜室の内部に設けられ、被成膜材を搬送する搬送手段と、成膜室を画成する壁部に設けられ、光を透過する透過部を有し、成膜室の外部から内部への投光を可能とする窓部と、成膜室の外部に設けられ、窓部の透過部を透過させてセンサー光を投光し成膜室の内部の被成膜材の有無を検出する検出手段と、透過部への成膜材料の堆積を抑制する堆積抑制手段と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
この成膜装置は、透過部への成膜材料の堆積が、堆積抑制手段によって抑制されるので、堆積した成膜材料によるセンサー光の透過状態の悪化を抑制することができ、その結果、被成膜材料の有無を検出する検出機能を確保することができる。
【0008】
また、具体的には、堆積抑制手段は、透過部へ付着した成膜材料を蒸発させると共に、透過部への成膜材料の付着を抑制することとしてもよい。
【0009】
更に具体的には、堆積抑制手段は、透過部を加熱する加熱部を備えることとしてもよい。この構成によれば、透過部に付着した成膜材料を加熱して蒸発させ、付着を抑制することができる。
【0010】
また、加熱部は、壁部よりも成膜室の内部の側に設けられていることとしてもよい。加熱部を壁部よりも内部の側に設けることとすれば、加熱に係る透過部周辺の構造の複雑化を抑えることができる。
【0011】
また、具体的な構成として、窓部は、壁部よりも成膜室の内部の側に設けられるとともに中空部にセンサー光を通過させる筒状部を備え、筒状部の中空部に透過部が設けられており、加熱部は、筒状部の端部の側面と透過部とを囲むように設けられていることとしてもよい。この構成によれば、加熱部の熱が筒状部を通じて透過部に効率良く伝達される。
【0012】
また、加熱部は、壁部よりも成膜室の外部の側に設けられていることとしてもよい。加熱部を壁部よりも外部の側に設けることとすれば、成膜室内のスペースを節約することができる。
【0013】
また、具体的な構成として、窓部は、壁部よりも成膜室の外部の側に設けられるとともに中空部にセンサー光を通過させる筒状部を備え、筒状部の中空部に透過部が設けられており、加熱部は、筒状部の端部の側面と透過部とを囲むように設けられていることとしてもよい。この構成によれば、加熱部の熱が筒状部を通じて透過部に効率良く伝達される。
【0014】
また具体的な構成として、窓部は、透過部よりも成膜室の内部の側に設けられ、センサー光を通過させる中空部を有する筒体と、中空部内に設けられセンサー光を透過する第2の透過部とを備え、透過部は、筒体と第2の透過部とによって成膜材料が浮遊する空間から仕切られており、第2の透過部は、筒体に対して着脱自在に設けられていることとしてもよい。この場合、第2の透過部が堆積抑制手段として機能する。また、第2の透過部が筒体から着脱自在であるので、第2の透過部に成膜材料が堆積した場合にも、第2の透過部を容易に交換することができ、センサー光の透過状態を確保することができる。
【0015】
また、成膜材料はセレンであることとしてもよい。セレンは、透過部に厚く付着する性質があり、また付着した場合の光の透過度も低いので、透過部における光透過の阻害になりやすい。よって、成膜材料がセレンである場合には、特に上述の堆積抑制手段の必要性が高い。
【発明の効果】
【0016】
本発明の成膜装置によれば、被成膜材料の有無を検出する検出機能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る成膜装置を側方から見た断面図である。
【図2】図1の成膜装置を上方から見た断面図である。
【図3】図1の成膜装置で行われる多元蒸着法を説明する図である。
【図4】CIGS発電層を備えるCIGS太陽電池の断面図である。
【図5】静止成膜方法による多元蒸着法を行う成膜装置の断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る成膜装置を側方から見た断面図である。
【図7】図6の成膜装置を上方から見た断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る成膜装置を側方から見た断面図である。
【図9】図8の成膜装置を上方から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る成膜装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、必要な場合には、各図に示すように、Z軸を鉛直軸としXY平面を水平面とするXYZ座標系を設定し、X、Y、Zを便宜的に説明に用いる場合がある。また、Z方向を上向きとして、「上」、「下」の概念を含む語を説明に用いる場合がある。
【0019】
(第1実施形態)
図1及び図2に示す成膜装置1は、真空の成膜室2を内部に画成するチャンバー3を備えており、成膜室2に収容されたワーク(被成膜材)Wに対し、多元蒸着法(MSD)により、セレン等を成膜材料とした成膜処理を施す装置である。例えば、成膜装置1は、太陽電池の材料であるガラス基板にセレン蒸着膜を成膜する用途で用いられる。
【0020】
図3に示すように、本実施形態の成膜装置1で行われる多元蒸着法は、マスクを施したワークWを成膜室2内で搬送しながら行われる。図に示すように、成膜装置1の成膜室2内で、ワークWの搬送路の上方にヒータ44が配置されている。更に、ワークWの搬送路の下方には、2つのセレン蒸着源ユニット45,45がY方向に配列され設けられている。セレン蒸着源ユニット45,45には、成膜室2外に設置されるセレン蒸着源45aが接続されている。
【0021】
また、セレン蒸着源ユニット45,45の下方には、他の蒸着物質(銅、インジウム、ガリウム)の蒸着源46,47,48が設けられている。なお、図3で、蒸着源46,47,48が、紙面に垂直なY方向に配列されているため重なって見えるが、平面視では、2つのセレン蒸着源ユニット45,45の間で、蒸着源46,47,48が順にY方向に配列されている。ワークWを載置するトレイ5には開口部(図示せず)が設けられており、セレン蒸着源ユニット45及び蒸着源46,47,48から発生する蒸着物質は、上記開口部を通じてワークWの下面に主に蒸着され、ワークWにセレン蒸着膜が形成される。
【0022】
図1及び図2に示すように、成膜装置1の成膜室2内には、上記ワークWを成膜室2内で移動させるべく、ワークWを上面に載置して移動するトレイ5と、当該トレイ5を搬送する搬送装置7とが設けられている。搬送装置7はモータを動力源とする公知のものであり、成膜室2内において、Y方向に配列された複数のトレイ5を、Y方向に連続的に搬送することができる。トレイ5の搬送下流には、成膜室2からの出口があり、成膜室2内の圧力制御用の開閉可能な扉が存在する。例えば、この扉の開閉のタイミング等を制御するために、トレイ5が所定の位置に到達したか否か、ひいてはワークWが所定の位置に存在するか否かを検出する必要がある。
【0023】
そこで、成膜装置1は、成膜室2内の所定位置にトレイ5が存在するか否かを検出する検出手段を備えている。当該検出手段は、成膜室2の外部に設けられた走行センサー(検出手段)11と、当該走行センサー11から出射されるセンサー光を通過させ成膜室2の内部に導くビューポート(窓部)13とを備えている。ビューポート13の存在により、成膜室2の外部の走行センサー11から成膜室2内部への投光が可能となる。走行センサー11及びビューポート13は、チャンバー3の隔壁のうちYZ平面に平行な壁3aに設けられている。
【0024】
走行センサー11から成膜室2の内部に向けて出射されたセンサー光は、ビューポート13を通過してX方向に出射される。当該センサー光の光軸は、符号「A」で図示されている。壁3aに対向する壁3dには、光軸A上に位置するビューポート13’と受光部17とが設けられており、上記センサ光がビューポート13’を透過して受光部17に入射する位置関係にある。ビューポート13’の詳細な図示は省略しているが、ビューポート13’はビューポート13と同様の構成を有してもよい。上記受光部17にセンサー光が入射することで、走行センサー11と受光部17との間の所定位置にトレイ5が存在しないことが認識される。そして、成膜室2内の所定位置にトレイ5が存在するときには、トレイ5の遮光部5aが光軸Aに位置し上記センサー光を遮ることで、受光部17にセンサー光が入射しなくなり、所定位置にあるトレイ5の存在が認識される。
【0025】
続いて、上記ビューポート13について、更に詳細に説明する。以下、ビューポート13の構成要素の説明においては、成膜室2の内部の側(図1、図2においては左側)を「前」、成膜室2の外部の側(図1、図2においては右側)を「後」として、位置関係の説明に「前」、「後」の語の用いる場合がある。
【0026】
ビューポート13は、成膜室2の真空と外部の大気とを仕切る透明の仕切ガラス21を備えている。仕切ガラス21は、Oリング21aを介して壁3aの外側に固定され、光軸A上に位置し、センサー光を透過する。仕切ガラス21は、例えば厚さ6mm以上の透明な耐熱ガラスである。更に、ビューポート13は、仕切ガラス21の前方において、壁3aよりも成膜室2の内部の側に位置するSUS製の筒状部23を備えている。光軸Aは、筒状部23の中空部23aを通過している。筒状部23の後端側は、壁3aに埋め込まれており、筒状部23の前端側には、光軸A上に位置する防着ガラス(透過部)27が中空部23a内に嵌め込まれている。防着ガラス27はセンサー光を透過する。なお、筒状部23の上部には連通孔23bが設けられているので、中空部23a内も成膜室2と同様に真空とされる。以上のビューポート13の構成により、走行センサー11から出射されるセンサー光は、仕切ガラス21を透過し、中空部23aを通過し、更に防着ガラス27を通過して成膜室2内に照射される。
【0027】
成膜室2には成膜材料が浮遊しており、仕切ガラス21や防着ガラス27のような透明部材上に成膜材料が付着し堆積すると、センサー光の透過状態が悪化し、トレイ5の有無の検出ができなくなってしまう。この成膜装置1では、仕切ガラス21の前方に防着ガラス27を設置することで、仕切ガラス21上への成膜材料の堆積を抑制するものであるが、この場合、防着ガラス27への成膜材料の付着・堆積が同様の問題を発生させる。よって、防着ガラス27への成膜材料の堆積を抑制する手段が望まれる。特に、成膜装置1で成膜材料として使用されるセレンは、防着ガラス27等に厚く付着する性質があり、また付着した場合の光の透過度も低いので、防着ガラス27における光透過の阻害になりやすい。よって、成膜材料としてセレンを用いる場合には、特に堆積抑制の必要性が高い。
【0028】
そこで、成膜装置1のビューポート13は、防着ガラス27を加熱するためのヒータ(加熱部、堆積抑制手段)31を備えている。ヒータ31は、筒状部23の前端側の側面の周囲に巻き付けられている。そして、給電部33からヒータ31に給電することで、筒状部23を加熱し、間接的に防着ガラス27を加熱する。ヒータ31が筒状部23側面と防着ガラス27とを囲むように設けられているので、ヒータ31の熱が効率良く防着ガラス27に伝達される。また、筒状部23がSUS製であることも、伝熱効率を高める要因となる。更に、ヒータ31の周りを囲むように、ヒータ31からの放射熱を反射する反射板35が設けられており、防着ガラス27への伝熱効率を更に高めている。
【0029】
この構成によれば、防着ガラス27が加熱されるので、防着ガラス27に付着した成膜材料が、防着ガラス27の熱で昇華(蒸発)する。また、防着ガラス27に付着しようとする成膜材料も付着直後に昇華することになるので、防着ガラス27への成膜材料の付着自体が抑制される。よって、防着ガラス27への成膜材料の堆積が抑制され、堆積した成膜材料によるセンサー光の透過状態の悪化を抑制することができる。その結果、走行センサー11の検出機能を確保することができ、ワークW搬送の正確な制御が可能になる。なお、このような作用効果を得るためには、セレンの蒸発温度(120℃)を考慮し、防着ガラス27の加熱温度は約150℃とされる。また、他の成膜材料が用いられる場合には、その成膜材料の蒸発温度を考慮して、防着ガラス27の加熱温度を適宜設定すればよい。
【0030】
また、ヒータ31、筒状部23及び防着ガラス27が、壁3aよりも成膜室2の内部の側の位置に設けられるので、ビューポート13において成膜室2を真空封止する構造も複雑にならず、部品点数の増加を抑えることができる。
【0031】
ここで、センサー光の透過状態を確保するための他の構成としては、防着ガラス27を省略し、仕切ガラス21を加熱する加熱手段を設ける構成も考えられる。ところが、仕切ガラス21は、真空の成膜室2を大気から封止するものであるために、Oリング21aを介して取り付けられる。従って、仕切ガラス21を加熱する構成を採用する場合には、Oリング21aの熱劣化による封止機能の劣化を避けるために、熱劣化が少ない材質からなる特殊なOリング21aを採用することが必要になる。このような特殊なOリング21aを採用すれば、仕切ガラス21を直接加熱して仕切ガラス21への成膜材料の付着を抑制することができ、防着ガラス27やその周囲の構成要素を省略して部品点数を減少させることができる。
【0032】
これに対し、上述した成膜装置1では、上記のような特殊なOリングを不要とすべく、防着ガラス27を仕切ガラス21の前方に設けて、成膜材料が希薄な空間(中空部23a)を防着ガラス27と仕切ガラス21との間に形成した上で、防着ガラス27を加熱する構成としたものである。防着ガラス27は、圧力が異なる空間同士の仕切ではなくOリングは不要であるので、防着ガラス27を加熱してもOリングの劣化といったような問題は発生しない。
【0033】
以上説明した成膜装置1は、好適な一適用例として、例えば、CIGS太陽電池のCIGS発電層の成膜に用いられる。図4に、CIGS太陽電池の一例を示す。同図に示すように、CIGS太陽電池70は、ソーダライムガラス71上に、Mo裏面電極72と、CIGS発電層73と、バッファ層74と、透明導電膜75と、が順に成膜され積層されてなる。Mo裏面電極72はスパッタ法で成膜され、CIGS発電層73はセレン化法又は多元蒸着法で成膜され、バッファ層74はスパッタ法で成膜され、透明導電膜75はRPD法、スパッタ法、又はCVD法で成膜される。このうち、CIGS発電層73の成膜が、多元蒸着法を用いて成膜装置1により行われる。
【0034】
なお、成膜装置1を用いる方法以外にも、一般的な他の多元蒸着法としては、ワークを搬送せずに静止させて行う静止成膜方法もある。静止成膜方法では、図5に示すように、マスクを施したワークWを成膜装置51の成膜室52内に設置して行われる。例えば、成膜室52内で、ワークWの上方に温度センサー53及びヒータ54を順次に配置し、ワークWの下方には開口部56aを有する開口板56及びシャッタ58を順次に配置する。そして、シャッタの下方に、第1〜第nの蒸着源60a,60b,60c,…が配置される。セレン蒸着膜を生成する場合において、第1〜第nの蒸着源(成膜材料)には、銅、インジウム、ガリウム及びセレンが適用される。多元蒸着法は公知の方法であるので、更なる詳細な説明は省略する。
【0035】
(第2実施形態)
図6及び図7に示す成膜装置201は、上記成膜装置1におけるビューポート13に代えて、ビューポート213を備えている。以下、成膜装置201において、前述の成膜装置1と同一又は同等な構成部分には同一符号を付し重複する説明を省略する。
【0036】
ビューポート213は、チャンバー3の壁3aを貫通する防着管251を有している。光軸Aは、防着管251の中空部251aを通過する。防着管251の後端部の直ぐ後方に防着ガラス(透過部)227が設けられている。更に、ビューポート213は、防着管251の後方に設けられたSUS製の筒状部(筒状部)223を備えている。防着ガラス227は、筒状部223の前端部において中空部223aに嵌め込まれている。そして、筒状部223の後方に、仕切ガラス221が設けられ、その仕切ガラス221の後方に走行センサー11が設けられている。以上のビューポート213の構成により、走行センサー11から出射されるセンサー光は、仕切ガラス221を透過し、筒状部223の中空部223aを通過し、防着ガラス227を透過し、防着管251の中空部251aを通過して、成膜室2の内部に照射される。なお、成膜装置1(図1)と同様に、壁3aに対向する壁3dには、光軸A上に位置するビューポート13’及び受光部17が設けられているが、その図示は省略している。
【0037】
また、この成膜装置201においては、防着管251の中空部251aが成膜室2内の成膜材料に晒されるので、成膜材料が中空部251aの内壁面に付着していく。従って、中空部251aに付着堆積した成膜材料がセンサ光を遮らないように、定期的に防着管251を交換する運用とする。
【0038】
更に、ビューポート213は、防着ガラス227を加熱するためのヒータ(加熱部、堆積抑制手段)231を備えている。ヒータ231は、筒状部223の前端側の側面の周囲に巻き付けられている。そして、給電部233からヒータ231に給電することで、筒状部223を加熱し、間接的に防着ガラス227を加熱する。ヒータ231が筒状部223側面と防着ガラス227とを囲むように設けられているので、ヒータ231の熱が効率良く防着ガラス227に伝達される。また、筒状部223がSUS製であることも、伝熱効率を高める要因となる。更に、ヒータ231の周りを囲むように、ヒータ231からの放射熱を反射する反射板235が設けられており、防着ガラス227への伝熱効率を更に高めている。
【0039】
また、このようなビューポート213の構成では、筒状部223、防着ガラス227及びヒータ231が成膜室2の外部に設けられるので、これらを収容するための真空ケース部253が、壁3aから外側に張り出して設けられている。仕切ガラス221は、Oリング221aを介して真空ケース部253の後端部に取り付けられており、真空の成膜室2を大気から封止している。ヒータ231の熱によるOリング221aの劣化を抑制すべく、真空ケース部253の後端部を冷却するため、冷却水を流動させる冷却水路253aが、真空ケース部253の後端部に設けられている。
【0040】
成膜装置201では、防着ガラス227をヒータ231で加熱することにより、前述の成膜装置1と同様の作用効果が奏される。すなわち、センサー光の透過状態の悪化を抑制することができ、走行センサー11の検出機能を確保することができ、ワークW搬送の正確な制御が可能になる。また、筒状部223、防着ガラス227及びヒータ231を壁3aよりも成膜室2の外部の側に設ける構成を採用しているので、成膜室2の内部のスペースを節約することができる。さらに、既存の成膜装置にビューポートを追加する場合に、成膜室2の内部にスペースの余裕がない場合であっても、壁3aの外側にビューポート213の上記各要素を取り付けることができる。
【0041】
(第3実施形態)
図8及び図9に示す成膜装置301は、上記成膜装置1におけるビューポート13に代えて、ビューポート313を備えている。以下、成膜装置301において、前述の成膜装置1,201と同一又は同等な構成部分には同一符号を付し重複する説明を省略する。
【0042】
ビューポート313は、仕切ガラス21の前方に設けられた防着管(筒体)351を備えている。光軸Aは、防着管351の中空部351aを通過している。防着管351の後端側は、壁3aに形成された貫通孔3bに挿入されている。防着管351の長手方向中央部には、防着ガラス(第2の透過部)327が、着脱自在に取り付けられている。例えば、防着管351には、YZ平面に平行な板状の防着ガラス327を、上方から挿入させるスリットが形成され、当該スリットに防着ガラス327を挿抜することができる構成とされている。防着ガラス327は、防着管351の中空部351aを前後に分断するように挿入され、光軸Aを横切るように配置される。走行センサー11からのセンサー光は、仕切ガラス21を透過し、貫通孔3bを通過する。更に、センサー光は、防着管351の中空部351aを通過するときに防着ガラス327を透過して、成膜室2内に照射される。なお、成膜装置1(図1)と同様に、壁3aに対向する壁3dには、光軸A上に位置するビューポート13’及び受光部17が設けられているが、その図示は省略している。
【0043】
この構成によれば、仕切ガラス(透過部)21の前方に、防着管351が設けられ、当該防着管351の中空部351aに防着ガラス(堆積抑制手段)327が存在しているので、仕切ガラス21は、成膜材料が浮遊する成膜室2の空間から仕切られている。よって、成膜室2に浮遊する成膜材料は、仕切ガラス21まで到達し難い。従って、仕切ガラス21への成膜材料の堆積が抑制され、仕切ガラス21に堆積した成膜材料によるセンサー光の透過状態の悪化を抑制することができる。この場合、防着ガラス327には成膜材料が比較的接触し易いが、当該防着ガラス327に成膜材料が堆積した場合にも、防着ガラス327を容易に着脱し交換することができ、センサー光の透過状態を回復させることができる。また、定期的に防着ガラス327を交換することにより、防着ガラス327におけるセンサー光の透過状態を良好に維持することができる。その結果、走行センサー11の検出機能を確保することができ、ワークW搬送の正確な制御が可能になる。
【0044】
本発明は、上述した第1〜第3実施形態に限定されるものではない。例えば、第1及び第2実施形態においては、防着ガラス27,227を加熱するために光周波ヒータを用いてもよい。また、防着ガラス27,227にヒータを内蔵しヒータを直接加熱してもよい。また、成膜材料の付着・堆積を抑制する手段としては、防着ガラス27,227の加熱に限られず、防着ガラス27,227を帯電させてもよい。また、第1〜第3実施形態では、ワークWの有無を間接的に検出すべく、トレイ5の有無を検出しているが、センサー光をワークWに照射しワークWの有無を直接検出してもよい。また、第1〜第3実施形態では、検出手段として透過型のセンサーを用いているが、反射型のセンサを用いてもよい。また、第1〜第3実施形態では、多元蒸着法(MSD)を用いる成膜装置に本発明を適用したが、他の成膜法(例えば、プラズマ成膜法、スパッタ法)を用いる成膜装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1,201,301…成膜装置、2…成膜室、3…チャンバー、3a…壁部、5…トレイ、7…搬送装置(搬送手段)、11…走行センサー(検出手段)、13,213,313…ビューポート(窓部)、21…仕切ガラス、23,223…筒状部、23a,223a…筒状部の中空部、27,227…防着ガラス(透過部)、31,231,331…ヒータ(加熱部、堆積抑制手段)、327…防着ガラス(第2の透過部)、351…筒体、351a…筒体の中空部、W…ワーク(被成膜材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被成膜材に成膜材料を成膜する成膜装置であって、
前記被成膜材を収納し成膜処理を行う成膜室と、
前記成膜室の内部に設けられ、前記被成膜材を搬送する搬送手段と、
前記成膜室を画成する壁部に設けられ、光を透過する透過部を有し、前記成膜室の外部から内部への投光を可能とする窓部と、
前記成膜室の外部に設けられ、前記窓部の前記透過部を透過させてセンサー光を投光し前記成膜室の内部の前記被成膜材の有無を検出する検出手段と、
前記透過部への前記成膜材料の堆積を抑制する堆積抑制手段と、
を備えていることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記堆積抑制手段は、前記透過部へ付着した成膜材料を蒸発させると共に、前記透過部への前記成膜材料の付着を抑制することを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記堆積抑制手段は、前記透過部を加熱する加熱部を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記加熱部は、前記壁部よりも前記成膜室の内部の側に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記窓部は、前記壁部よりも前記成膜室の内部の側に設けられるとともに中空部に前記センサー光を通過させる筒状部を備え、
前記筒状部の前記中空部に前記透過部が設けられており、
前記加熱部は、前記筒状部の前記端部の側面と前記透過部とを囲むように設けられていることを特徴とする請求項4に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記加熱部は、前記壁部よりも前記成膜室の外部の側に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記窓部は、前記壁部よりも前記成膜室の外部の側に設けられるとともに中空部に前記センサー光を通過させる筒状部を備え、
前記筒状部の前記中空部に前記透過部が設けられており、
前記加熱部は、前記筒状部の前記端部の側面と前記透過部とを囲むように設けられていることを特徴とする請求項6に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記窓部は、
前記透過部よりも前記成膜室の内部の側に設けられ、前記センサー光を通過させる中空部を有する筒体と、
前記中空部内に設けられ前記センサー光を透過する第2の透過部とを備え、
前記透過部は、前記筒体と前記第2の透過部とによって前記成膜材料が浮遊する空間から仕切られており、
前記第2の透過部は、前記筒体に対して着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記成膜材料はセレンであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−184457(P2012−184457A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46565(P2011−46565)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】