説明

成膜装置

【課題】製膜ポイント以外における不要な粉体の付着を直接的な除去方法によって防止しつつ、直接的に粉体の付着を防止する除去手段への粉体の不要な付着を抑制することが可能な製膜装置を提供すること。
【解決手段】成膜装置APは、基材19の表面における成膜に寄与しない残余微粒子を除去するためのブラシ21を備え、ブラシ21は、複数の単位成膜領域のうち、ノズル15によってエアロゾルが吹きつけられる現成膜領域及びこの現成膜領域に隣接する隣接成膜領域に含まれず、現製膜領域からは離隔した離隔成膜領域の少なくとも一部において基材19の表面に接し、残余微粒子を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾルデポジション法によって成膜対象物の表面に微粒子を吹きつけて成膜する成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超微粒子材料製の膜を製造する技術の一つとして、超微粒子材料を搬送ガスと混合して、ノズルより基板上に吹き付け、膜を形成する超微粒子膜の成膜技術がエアロゾルデポジション法として知られている(例えば、下記特許文献1参照)。下記特許文献1に記載の成膜技術は、表面の不平滑性、不平坦性、密度の不均一性などの問題を解決しうるものであって、膜内の超微粒子材料の接合が充分で、組織が緻密であり、表面が平滑であり、かつ密度の均一な膜を製造することができる成膜装置として提案されている。
【0003】
具体的には、減圧室内の基板表面に超微粒子材料を吹き付ける吹き付け装置を有し、超微粒子材料の吹き付けの流れの基板表面への入射角が所定の角度をなすように構成された成膜装置である。
【0004】
このように超微粒子材料を吹き付けて成膜するエアロゾルデポジション法は、エアロゾル中の微粒子の利用効率が悪く、ノズルから噴射された微粒子のうち成膜に寄与するものは実質的にかなり低い割合に留まるものである。成膜に寄与しなかった微粒子の一部は、基板や基板上の膜に凝集粉として付着する。この凝集粉が膜形成の障害物となり、膜に欠陥が発生する要因にもなりうる。
【0005】
そこで、下記特許文献2に記載の成膜装置では、基板および基板上の膜に付着し、かつ膜形成に寄与しなかった凝集粉を除去するための除去手段を備えている。除去手段の具体例としては、基板に向けてエアーを吹付けるエアーブロー装置や、基板表面をこするブラシや、基板を振動させる基板振動手段が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−20878号公報
【特許文献2】特開2005−76104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
粉体除去力を考えると、エアー、振動、超音波、及び静電気を用いて表面には接触しない間接的な除去方法よりも固体を接触させて表面から粉体をかきとる直接的な除去方法が好ましい。エアロゾルデポジション法で用いる粉体は、その大きさがサブミクロン程度の微細な粒子であるため比表面積が大きく付着力が大きい傾向があり、エアーや振動といった間接的な方法では十分な除去能力を得られないためである。
【0008】
例えば、エアーを使用しつつも除去能力を高めようとすれば、エアーの流量を高める必要がある。このようにエアーを大流量で噴射してしまうと、チャンバー内圧力、特に基板上の製膜ポイントであるエアロゾル到達点における圧力が高くなりすぎる。結果として、エアロゾル中に含まれる微粒子速度の低下が起こり、十分な衝突速度が得られず緻密な膜が形成できなくなる恐れがある。
【0009】
一方、固体を接触させる直接的な除去方法であれば、気流や気圧を乱すことによる製膜への悪影響を回避しつつ確実に粉体を基材表面または膜上から除去することが可能となる。しかしながら、直接的な除去方法を用いた場合、除去手段である固体自体への粉体付着が新たな課題となる。具体的には、この除去方法の場合、製膜ポイントであるエアロゾル到達点のみならず、噴射されたエアロゾルが充満する周辺の領域においても基材表面から不要な粉体を除去する必要がある。このように製膜ポイント以外であって付着した粉体を除去すべき領域に除去手段としての固体を配置すると、この固体の一部分には粉体が付着し続ける。除去手段である固体への粉体の付着を放置し、堆積量が所定量を超えると重力に耐えられなくなった粉体が基材上に落下したり、付着した粉体に阻害されたりして十分な粉体除去能力を発揮できなくなる恐れがある。
【0010】
上述したとおり、噴射する粉体が微粒子であり浮遊しやすいことと、そのように浮遊する微粒子を製膜ポイント以外において除去する必要があることが前提であるため、除去手段としての固体を製膜ポイントから遠くに引き離して粉体付着を防止することは、そもそも除去手段としての意義を没却するものであるため採用しがたい。
【0011】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、製膜ポイントにおける気流や気圧を乱すことなくエアロゾルデポジション法による製膜が可能であって、製膜ポイント以外における不要な粉体の付着を直接的な除去方法によって防止しつつ、直接的に粉体の付着を防止する除去手段への粉体の不要な付着を抑制することが可能な製膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明に係る製膜装置は、エアロゾルデポジション法によって成膜対象物の表面に微粒子を吹きつけて成膜する成膜装置であって、成膜対象物を保持する保持手段と、脆性材料によって形成された微粒子をガス中に分散させたエアロゾルを前記成膜対象物の表面に向けて噴射する噴射手段と、前記保持手段と前記噴射手段との相対的な位置関係を変化させ、前記成膜対象物の表面において連続して形成される複数の単位成膜領域に順次エアロゾル吹きつけるための移動手段と、成膜対象物の表面における成膜に寄与しない残余微粒子を除去するための除去手段と、を備える。
【0013】
前記除去手段は、前記成膜対象物の表面に接することで残余微粒子を前記成膜対象物の表面から除去する接触部を有する。前記移動手段は、前記複数の単位成膜領域それぞれに順次成膜するように前記保持手段と前記噴射手段とを相対的に移動させる。前記接触部は、前記複数の単位成膜領域のうち、前記噴射手段によってエアロゾルが吹きつけられる現成膜領域及びこの現成膜領域に隣接する隣接成膜領域に含まれず、前記現製膜領域からは離隔した離隔成膜領域の少なくとも一部において前記成膜対象物の表面に接し、残余微粒子を除去する。
【0014】
本発明では、除去手段が成膜対象物の表面に接することで残余微粒子を成膜対象物の表面から除去する接触部を有するので、成膜対象物の表面に残る微粒子を確実に除去することができる。接触部は、噴射手段によってエアロゾルが吹きつけられる現成膜領域及びこの現成膜領域に隣接する隣接成膜領域に含まれず、現製膜領域からは離隔した離隔成膜領域の少なくとも一部において成膜対象物の表面に接することで、微粒子である粉体の付着を確実に抑制している。具体的には、接触部は、噴射手段によってエアロゾルが吹きつけられる現成膜領域に含まれる単位成膜領域には接しないように構成されているので、噴射手段が吹きつけたエアロゾルが直接接触部に到達することを抑制できる。更に、接触部は、現成膜領域に隣接する隣接成膜領域に含まれる単位制膜領域にも接しないように構成されているので、吹きつけられたエアロゾルが多く存在する隣接成膜領域において接触部にエアロゾルが到達することも抑制できる。このように、接触部は、連続する複数の単位制膜領域を移動する現成膜領域からは離隔した離隔成膜領域の少なくとも一部において成膜対象物の表面に接し、残余微粒子を除去するので、残余微粒子の除去と除去手段への粉体の不要な付着の抑制とを両立することができる。
【0015】
また本発明に係る成膜装置では、前記接触部は、前記隣接成膜領域を挟んで前記現成膜領域とは反対側において前記隣接成膜領域に隣接する離隔成膜領域以外の離隔成膜領域において、前記成膜対象物の表面に接することも好ましい。
【0016】
この好ましい態様では、接触部が、現成膜領域から見て隣接成膜領域の外側に隣接する離隔成膜領域を除く他の離隔成膜領域において表面に接するので、接触部を含む除去手段への粉体の不要な付着を確実に抑制することができる。
【0017】
また本発明に係る成膜装置では、前記複数の単位成膜領域が、2以上の単位成膜領域が列状に繋がる第一成膜領域群と、前記第一成膜領域群に隣接して2以上の単位成膜領域が列状に繋がる第二成膜領域群とを含み、前記噴射手段によって前記第一成膜領域群に含まれる単位成膜領域にエアロゾルが吹きつけられ、その単位成膜領域が前記現成膜領域となっている場合に、前記接触部は、前記第一成膜領域群に含まれない単位成膜領域を含む離隔成膜領域において前記成膜対象物の表面に接することも好ましい。
【0018】
この好ましい態様では、現成膜領域を含む第一成膜領域群に含まれない単位成膜領域を含む離隔成膜領域において、接触部が成膜対象物の表面に接するので、接触部が現成膜領域とは異なる列における単位成膜領域において接することになる。このように、噴射手段が列状の第一成膜領域群をトレースするようにエアロゾルを吹きつける場合に、微粒子が充満しやすいその列とは異なる列における単位成膜領域において接触部が表面に接することで、接触部を含む除去手段への粉体の不要な付着をより確実に抑制することができる。
【0019】
また本発明に係る成膜装置では、前記接触部は、前記第二成膜領域群に含まれる単位成膜領域を含む離隔成膜領域において前記成膜対象物の表面に接することも好ましい。
【0020】
この好ましい態様では、現成膜領域を含む第一成膜領域群に隣接する第二成膜領域群において、接触部が成膜対象物の表面に接するので、接触部が現成膜領域とは異なる隣の列における単位成膜領域において接することになる。このように、噴射手段が列状の第一成膜領域群をトレースするようにエアロゾルを吹きつける場合に、微粒子が充満しやすいその列とは異なる隣の列における単位成膜領域において接触部が表面に接することで、接触部を含む除去手段への粉体の不要な付着をより確実に抑制することができる。更に、接触部は、現成膜領域を含む第一成膜領域群に隣接する第二成膜領域群において表面に接するので、現成膜領域から離れすぎない場所で残余微粒子を除去することになり、残余微粒子の除去も効率的に行うことができる。
【0021】
また本発明に係る成膜装置では、前記接触部は、前記複数の単位成膜領域のうち、現成膜領域よりも後に現成膜領域となる離隔成膜領域であって、前記第二成膜領域群に含まれる離隔成膜領域において、前記成膜対象物の表面に接することも好ましい。
【0022】
この好ましい態様では、現成膜領域よりも後に現成膜領域となる離隔成膜領域であって、第二成膜領域群に含まれる離隔成膜領域において接触部が表面に接するので、これから成膜される領域の残余微粒子を事前に確実に除去することができる。
【0023】
また本発明に係る成膜装置では、前記第一成膜領域群は、それに含まれる単位成膜領域が略円形の列を成すように配列されると共に、前記第二成膜領域群も、それに含まれる単位成膜領域が略円形の列を成すように配列されるものであって、前記噴射手段が、前記第一成膜領域群に含まれる単位成膜領域に順次エアロゾルを吹きつける方向からみて後方側であって、前記第二成膜領域群に含まれる離隔成膜領域において、前記接触部が前記成膜対象物の表面に接することも好ましい。
【0024】
この好ましい態様では、現成膜領域よりも後に現成膜領域となる離隔成膜領域であって、第二成膜領域群に含まれる離隔成膜領域において接触部が表面に接するので、これから成膜される領域の残余微粒子を事前に確実に除去することができる。更に、エアロゾルを吹きつける方向からみて後方側において接触部が表面に接するので、再付着した残余微粒子を確実に除去することができる。
【0025】
また本発明に係る成膜装置では、前記接触部は、その外形が少なくとも前記単位成膜領域の幅以上の幅の長手辺を有するように構成され、前記噴射手段から噴射するエアロゾルが前記成膜対象物の表面に沿って進行する場合に、当該進行方向と前記長手辺の各部とが直交しないように配置されていることも好ましい。
【0026】
この好ましい態様では、噴射手段から噴射するエアロゾルが成膜対象物の表面に沿って進行する場合に、当該進行方向と接触部の長手辺の各部とが直交しないように配置されているので、微粒子が接触部に当たってそのまま留まることなく、接触部以外の領域に放出される。従って、接触部への残余微粒子の付着を確実に抑制することができる。
【0027】
また本発明に係る成膜装置では、前記長手辺は、互いに異なる方向に正対する第一辺部及び第二辺部を有することも好ましい。
【0028】
この好ましい態様では、長手辺が互いに異なる方向に正対する第一辺部及び第二辺部を有するので、例えば、第一辺部にエアロゾルが直交して当たるような状況であっても、第二辺部においては確実にエアロゾルとの直交衝突を回避することができる。
【0029】
また本発明に係る成膜装置では、前記複数の単位成膜領域が、2以上の単位成膜領域が列状に繋がる第一成膜領域群と、前記第一成膜領域群に隣接して2以上の単位成膜領域が列状に繋がる第二成膜領域群とを含み、前記噴射手段によって前記第一成膜領域群に含まれる単位成膜領域にエアロゾルが吹きつけられ、その単位成膜領域が前記現成膜領域となっている場合に、前記接触部は、前記第二成膜領域群に含まれる離隔成膜領域において前記成膜対象物の表面に接するものであって、前記第二成膜領域群に含まれる単位成膜領域の配列方向に前記長手辺が直交するように配置されていることも好ましい。
【0030】
この好ましい態様では、接触部が、第二成膜領域群に含まれる単位成膜領域の配列方向に長手辺が直交するように配置されているので、接触部を配列方向に沿って動かすことで効果的に残余微粒子を除去することができる。更に、第二成膜領域群に含まれる離隔成膜領域において接触部が成膜対象物の表面に接するものであるから、表面を進行するエアロゾルと接触部との直交衝突は確実に回避することができる。
【0031】
また本発明に係る成膜装置では、前記接触部の前記長手辺は、前記離隔成膜領域に接する第一接触部分と、前記第一接触部分が接する離隔成膜領域とは異なる離隔成膜領域に接する第二接触部分とに分割されるように構成されており、前記第一接触部分と前記第二接触部分との間の空隙部分の一部に対応する前記現成膜領域に、前記噴射手段がエアロゾルを吹きつけるように構成されていることも好ましい。
【0032】
この好ましい態様では、第一接触部分と第二接触部分との間の空隙部分の一部に、噴射手段がエアロゾルを吹きつけるように構成されているので、長手辺へのエアロゾルの直交衝突をより確実に回避することができる。
【0033】
また本発明に係る成膜装置では、前記空隙部分は、前記噴射手段から噴射するエアロゾルが前記成膜対象物の表面に沿って進行する場合に、当該エアロゾルと干渉しないように前記成膜対象物の表面からの空隙高さが設定されていることも好ましい。
【0034】
この好ましい態様では、空隙部分がエアロゾルと干渉しない高さまで設けられているので、長手辺へのエアロゾルの直交衝突をより確実に回避することができる。
【0035】
また本発明に係る成膜装置では、前記噴射手段は、前記成膜対象物の表面に直交する方向から前記表面に沿う方向へと傾斜配置されるノズルを有し、このノズルからエアロゾルを噴射するものであって、前記接触部は、前記ノズルから噴射されたエアロゾルが前記成膜対象物の表面に到達する位置よりも、前記ノズル側における前記離隔成膜領域に接することも好ましい。
【0036】
この好ましい態様では、噴射手段は、成膜対象物の表面に直交する方向から表面に沿う方向へと傾斜配置されるノズルを有し、このノズルからエアロゾルを噴射するものであるから、微粒子はノズルが表面に向かう方向に沿って進行する。一方、接触部は、エアロゾルに含まれる微粒子が表面に到達する位置よりもノズル側における離隔成膜領域において表面に接するので、微粒子の進行方向における衝突を確実に回避することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、製膜ポイントにおける気流や気圧を乱すことなくエアロゾルデポジション法による製膜が可能であって、製膜ポイント以外における不要な粉体の付着を直接的な除去方法によって防止しつつ、直接的に粉体の付着を防止する除去手段への粉体の不要な付着を抑制することが可能な製膜装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態である成膜装置の構成を概念的に示す概略構成図である。
【図2】図1に示す成膜装置において、成膜対象物に対するエアロゾル吹付ポイントの軌跡を例示する図である。
【図3】図2に示す軌跡において、ノズルに対するブラシの位置関係を説明するための図である。
【図4】ブラシの変形例を示す図である。
【図5】ブラシの配置態様の一例を示す図である。
【図6】ブラシの配置態様の一例を示す図である。
【図7】ブラシの変形例を示す図である。
【図8】ブラシの変形例を示す図である。
【図9】図1に示す成膜装置において、成膜対象物に対するエアロゾル吹付ポイントの軌跡を例示する図である。
【図10】図9に示す軌跡において、ノズルに対するブラシの位置関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0040】
本発明の実施形態である成膜装置について、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態である成膜装置APの構成を概念的に示す概略構成図である。図1に示すように、成膜装置APは、ガス供給機構11と、配管12a,12bと、エアロゾル発生器13と、形成室14と、ノズル15(噴射手段)と、排気ポンプ17と、ステージ18(保持手段、移動手段)と、ブラシ21(除去手段、接触部)と、を備えている。
【0041】
ガス供給機構11とエアロゾル発生器13とは、配管12aによって繋がれている。ガス供給機構11から送り出されるガスは、配管12aを通ってエアロゾル発生器13に供給される。エアロゾル発生器13は、脆性材料によって形成された微粒子をガス中に分散させ、エアロゾルを生成する装置である。
【0042】
エアロゾル発生器13とノズル15とは、配管12bによって繋がれている。エアロゾル発生器13が生成したエアロゾルは、配管12bを通ってノズル15に供給される。ノズル15は、形成室14内に設けられている。形成室14内には、ステージ18が配置されている。ステージ18は、成膜対象となる基材19を保持すると共に、ノズル15に対して基材19が相対的に移動するように、回転させたり平行移動させたりすることが可能なものである。ノズル15に供給されたエアロゾルは、エアロゾル流16となって基材19に向かって噴射される。基材19に衝突したエアロゾル流16は、一部が構造物20となって成膜される。
【0043】
ノズル15から噴射され基材19に到達するエアロゾル流16の内、不要なものを除去するために除去手段としてブラシ21が設けられている。ブラシ21は、ノズル15から噴射されるエアロゾル流16が基材19に衝突するポイントから所定距離離れた位置において、基材19又は構造物20に接触するように構成されている。ノズル15から噴射されたものの、成膜に寄与しなかった残部のエアロゾルは、排気ポンプ17によって形成室14の外部に排出される。
【0044】
上述したように本実施形態に係る成膜装置APでは、ノズル15から噴射されるエアロゾルの基材19への到達ポイントであるエアロゾルの吹付ポイントの軌跡は、円弧を描くようになっても、ジグザグに平行移動するようになってもよいものである。まず、エアロゾルの吹付ポイントの軌跡が円弧を描く場合について説明する。図2は、成膜装置APにおいて、成膜対象物である円形の基材19aに対するエアロゾル吹付ポイントの円弧軌跡を例示する図である。図2においては、円形の基材19aの回転中心を原点として、紙面に沿ってxy平面が形成されるように直交座標軸であるx軸及びy軸を設定している。
【0045】
図2に示すように、円形の基材19aは、矢印Rd方向に回転させられている。円形の基材19aに対して、ノズル15から噴射されたエアロゾルは、吹付ポイントr0に到達するように調整されている。吹付ポイントr0は、円形の基材19a表面のx軸上のポイントである。円形の基材19aが矢印Rd方向に回転するのに伴って、円形の基材19aに対してノズル15が外側に移動するように、ステージ18を調整する。円形の基材19aが一回転すると、スタート地点である吹付ポイントr0から距離Δrだけ外側にずれた吹付ポイントr1において、ノズル15から噴射されたエアロゾルが円形の基材19aに到達するように調整されている。この動作を繰り返すことで、吹付ポイントrnまで、ノズル15から噴射されたエアロゾルが移動するように調整し、円形の基材19aの所定範囲に成膜する。
【0046】
本実施形態では、円形の基材19aの所定範囲に成膜するに当たって、ノズル15から噴射されたエアロゾルが直接当たる単位領域を含む範囲を単位成膜領域と定義し、この単位成膜領域を順次成膜することで円形の基材19aの所定範囲を成膜するものとしている。単位成膜領域の設定にあたっては、ノズル15から噴射されたエアロゾルが直接当たる単位領域を含むものであれば、厳密にエアロゾルが直接当たる単位領域に合致させる必要はない。後述するように、この単位成膜領域を設定することで、ブラシ21をノズル15から適切に離隔配置し、残余粉体を確実に除去しつつブラシ21への粉体の付着を抑制することを目的としているので、この目的を達成できる範囲において、単位成膜領域は設定可能なものである。
【0047】
図3は、円形の基材19aに対して、単位成膜領域を設定する一例について説明するための図である。図3に示すように、吹付ポイントr0からスタートして吹付ポイントr1に至るまでを、複数の単位成膜領域R0a,R0b,R0c,R0d,R0e,R0f,R0g,R0h,R0i,R0j,R0k,R0l,R0m,R0n,R0o,R0p,R0q,R0r,R0sに分割している。ノズル15から噴射されたエアロゾルは、これらの単位成膜領域R0a〜R0sを順次成膜する。本実施形態では、単位成膜領域R0a〜R0sを、成膜領域群R0としている。
【0048】
同様に、吹付ポイントr1からスタートして吹付ポイントr2に至るまでを、複数の単位成膜領域R1a,R1b,R1c,R1d,R1e,R1f,R1g,R1h,R1i,R1j,R1k,R1l,R1m,R1n,R1o,R1p,R1q,R1r,R1sに分割している。ノズル15から噴射されたエアロゾルは、これらの単位成膜領域R1a〜R1sを順次成膜する。本実施形態では、単位成膜領域R1a〜R1sを、成膜領域群R1としている。
【0049】
同様に、吹付ポイントr2からスタートして吹付ポイントr3に至るまでを、複数の単位成膜領域R2a,R2b,R2c,R2d,R2e,R2f,R2g,R2h,R2i,R2j,R2k,R2l,R2m,R2n,R2o,R2p,R2q,R2r,R2sに分割している。ノズル15から噴射されたエアロゾルは、これらの単位成膜領域R2a〜R2sを順次成膜する。本実施形態では、単位成膜領域R2a〜R2sを、成膜領域群R2としている。尚、吹付ポイントr3以降においても、同様に設定されるものである。以下の説明では、説明の便宜上、単位成膜領域R0a〜R2sを対象に説明するが、吹付ポイントr3以降においても同様に設定されるものである。
【0050】
本実施形態の成膜装置APでは、ブラシ21は、複数の単位成膜領域R0a〜R2sのうち、ノズル15によってエアロゾルが吹きつけられる現成膜領域及びこの現成膜領域に隣接する隣接成膜領域に含まれず、現製膜領域からは離隔した離隔成膜領域の少なくとも一部において成膜対象物である基材19の表面に接し、残余微粒子を除去するものである。例えば、単位成膜領域R1gが現成膜領域である場合、単位成膜領域R1f,R1h,R0g,R2gが隣接成膜領域となる。
【0051】
従って、ノズル15に対するブラシ21の位置関係は、ノズル15が単位成膜領域R1gにエアロゾルを吹き付けている場合、隣接成膜領域である単位成膜領域R1f,R1h,R0g,R2gには接触しないように配置される。ノズル15に対してブラシ21は過度に離れないことが好ましいものであるから、この場合は、単位成膜領域R0f,R0h,R2h,R2fに接するように設けられることが好ましく、単位成膜領域R1e,R1iに接するように設けられることも好ましい。
【0052】
更に、ブラシ21は、隣接成膜領域である単位成膜領域R1f,R1h,R0g,R2gを挟んで現成膜領域である単位成膜領域R1gとは反対側において隣接成膜領域に隣接する離隔成膜領域以外の離隔成膜領域(例えば、単位成膜領域R0d,R1d,R2d,R0j,R1j,R2j)において、成膜対象物である基材19aの表面に接することも好ましい。このように構成することで、ブラシ21が、現成膜領域から見て隣接成膜領域の外側に隣接する離隔成膜領域を除く他の離隔成膜領域において表面に接するので、ブラシ21への粉体の不要な付着を確実に抑制することができる。
【0053】
また本実施形態では、ノズル15によって成膜領域群R1(第一成膜領域群)に含まれる単位成膜領域R1a〜R1sにエアロゾルが吹きつけられ、その単位成膜領域R1a〜R1sが現成膜領域となっている場合に、ブラシ21は、成膜領域群R1に含まれない単位成膜領域において基材19aの表面に接することが好ましい。この好ましい態様の一つとして、ブラシ21は、成膜領域群R1に隣接する成膜領域群R0,R2に含まれる単位成膜領域R0a〜R0s,R2a〜R2sにおいて基材19aに接触することが好ましい。
【0054】
このように、現成膜領域を含む成膜領域群R1に含まれない単位成膜領域を含む離隔成膜領域において、ブラシ21が基材19aの表面に接するので、ブラシ21が現成膜領域とは異なる列における単位成膜領域において接することになる。このように、ノズル15が列状の成膜領域群R1をトレースするようにエアロゾルを吹きつける場合に、微粒子が充満しやすいその列とは異なる列における単位成膜領域において接触部が表面に接することで、ブラシ21への粉体の不要な付着をより確実に抑制することができる。
【0055】
また、現成膜領域を含む成膜領域群R1に隣接する成膜領域群R0,R2(第二成膜領域群)において、ブラシ21が基材19aの表面に接するので、ノズル15が現成膜領域とは異なる隣の列における単位成膜領域において接することになる。このようにすることで、ブラシ21への粉体の不要な付着をより確実に抑制することができる。更に、ブラシ21は、現成膜領域を含む成膜領域群R1に隣接する成膜領域群R0,R2において表面に接するので、現成膜領域から離れすぎない場所で残余微粒子を除去することになり、残余微粒子の除去も効率的に行うことができる。
【0056】
また本実施形態では、ブラシ21は、現成膜領域よりも後に現成膜領域となる離隔成膜領域であって、成膜領域群R2に含まれる離隔成膜領域において、基材19aの表面に接することも好ましい。この好ましい態様では、現成膜領域よりも後に現成膜領域となる離隔成膜領域であって、成膜領域群R2に含まれる離隔成膜領域において接触部が表面に接するので、これから成膜される領域の残余微粒子を事前に確実に除去することができる。
【0057】
また本実施形態では、上述したように基材19aが円形であり、単位成膜領域R0a〜R2sが略円形の列を成すように配列される場合に、ノズル15が、成膜領域群R1に含まれる単位成膜領域に順次エアロゾルを吹きつける方向からみて後方側であって、成膜領域群R0,R2に含まれる離隔成膜領域において、ブラシ21が基材19aの表面に接することも好ましい。具体的には、現成膜領域が単位成膜領域R1gである場合に、単位成膜領域R0d,R2dにおいて接触するように配置する。
【0058】
この好ましい態様では、現成膜領域よりも後に現成膜領域となる離隔成膜領域であって、成膜領域群R2に含まれる離隔成膜領域(単位成膜領域R2d)においてブラシ21が表面に接するので、これから成膜される領域の残余微粒子を事前に確実に除去することができる。更に、エアロゾルを吹きつける方向からみて後方側においてブラシ21が表面に接するので、再付着した残余微粒子を確実に除去することができる。この好ましい態様の具体例を図4に示す。
【0059】
図4に示すように、ブラシ21aは、ノズル15よりも後方側(紙面に対して奥側)に配置されている。ブラシ21aは、ノズル15に対応する位置に切り欠き21aaが設けられている。このように構成することで、ノズル15が、単位成膜領域R1gにエアロゾルを吹き付けている場合に、ブラシ21aは、単位成膜領域R0d,R2dにおいて接触することができる。
【0060】
このように、ブラシ21aの長手辺に切り欠き21aaを設けることで、離隔成膜領域に接する第一接触部分21abと、第一接触部分21abが接する離隔成膜領域とは異なる離隔成膜領域に接する第二接触部分21acとに分割されるように構成される。従って、第一接触部分21abと第二接触部分21acとの間の空隙部分である切り欠き21aaの一部に対応する位置に、ノズル15がエアロゾルを吹きつけるように構成されている。このように構成することで、第一接触部分21abと第二接触部分21acとの間の空隙部分である切り欠き21aaの一部に相当する位置(紙面に向かって奥側にずれた位置)に、ノズル15がエアロゾルを吹きつけるように構成されているので、長手辺へのエアロゾルの直交衝突をより確実に回避することができる。
【0061】
またブラシ21aでは、切り欠き21aaは、ノズル15から噴射するエアロゾルが基材19の表面に沿って進行する場合に、当該エアロゾルと干渉しないように基材19の表面からの空隙高さhが設定されている。このように、空隙部分がエアロゾルと干渉しない高さまで設けられているので、長手辺へのエアロゾルの直交衝突をより確実に回避することができる。
【0062】
また本実施形態では、ブラシ21,21aは、成膜領域群R1にノズル15がエアロゾルを吹き付けている場合に、成膜領域群R0,R2に含まれる離隔成膜領域において基材19の表面に接するものであって、成膜領域群R0,R2に含まれる単位成膜領域の配列方向に長手辺が直交するように配置されていることも好ましい。このように配置することで、ブラシ21,21aを配列方向に沿って動かすことのみで効果的に残余微粒子を除去することができる。
【0063】
また本実施形態では、ノズル15は、基材19の表面に直交する方向から表面に沿う方向へと傾斜配置され、ブラシ21,21aは、ノズル15から噴射されたエアロゾルが基材19の表面に到達する位置よりも、ノズル15側における離隔成膜領域に接することも好ましい(図5参照)。このように構成することで、微粒子はノズル15が表面に向かう方向に沿って進行する。一方、ブラシ21,21aは、エアロゾルに含まれる微粒子が表面に到達する位置よりもノズル15側における離隔成膜領域において表面に接するので、微粒子の進行方向における衝突を確実に回避することができる。
【0064】
また本実施形態では、ブラシ21は、その外形が少なくとも単位成膜領域R1a〜R1sの幅以上の幅の長手辺を有するように構成され、ノズル15から噴射するエアロゾルが基材19aの表面に沿って進行する場合に、当該進行方向と長手辺の各部とが直交しないように配置されていることも好ましい。具体的には、図6に示すように、ブラシ21が矩形状に植毛されている場合に、その矩形の長手辺211がエアロゾルの進行方向D1に対して斜めになるように配置されていることが好ましい。
【0065】
この好ましい態様では、ノズル15から噴射するエアロゾルが成膜対象物の表面に沿って進行する場合に、当該進行方向D1とブラシ21の長手辺211の各部とが直交しないように配置されているので、微粒子がブラシ21に当たってそのまま留まることなく、ブラシ21以外の領域に放出される。従って、ブラシ21への残余微粒子の付着を確実に抑制することができる。
【0066】
また本実施形態では、長手辺は、互いに異なる方向に正対する第一辺部及び第二辺部を有することも好ましい。具体的な一例は、図7に示すように、ブラシ21bを円弧状に植毛されたものとすることである。円弧状に構成することで、長手辺211bは、第一辺部212bと第二辺部213bとを有する。第一辺部212bが正対する方向D2は、第二辺部213bが正対する方向D3とは異なる方向であり、方向D2も方向D3も、エアロゾルの進行方向D1とは異なる方向である。また、具体的な別例は、図8に示すように、ブラシ21cをV字状に植毛されたものとすることである。V字状に構成することで、長手辺211cは、第一辺部212cと第二辺部213cとを有する。第一辺部212cが正対する方向D2は、第二辺部213cが正対する方向D3とは異なる方向であり、方向D2も方向D3も、エアロゾルの進行方向D1とは異なる方向である。
【0067】
このように構成することで、長手辺211b,211cが互いに異なる方向に正対する第一辺部212b,212c及び第二辺部213b,213cを有するので、例えば、第一辺部212b,212cにエアロゾルが直交して当たるような状況であっても、第二辺部213b,213cにおいては確実にエアロゾルとの直交衝突を回避することができる。
【0068】
上述した説明では、基材19を円形の基材19aとしたが、基材19は矩形でも同様である。矩形の基材19bを用いた場合について、図9及び図10を参照しながら説明する。図9は、成膜装置APにおいて、成膜対象物である矩形の基材19bに対するエアロゾル吹付ポイントの軌跡を例示する図である。図9においては、矩形の基材19b外の任意点を原点として、紙面に沿ってxy平面が形成されるように直交座標軸であるx軸及びy軸を設定している。
【0069】
図9に示すように、矩形の基材19bは、矢印Yd方向に直線移動され、その後矢印Xd方向に直線移動されている。この移動を組み合わせることで、矩形の基材19bに対して、ノズル15から噴射されたエアロゾルは、吹付ポイントp0から吹付ポイントp1に到達するように調整されている。この動作を繰り返すことで、吹付ポイントpendまで、ノズル15から噴射されたエアロゾルが移動するように調整し、矩形の基材19bの所定範囲に成膜する。
【0070】
図10は、矩形の基材19bに対して、単位成膜領域を設定する一例について説明するための図である。図10に示すように、吹付ポイントp0からスタートして吹付ポイントp1に至るまでを、複数の単位成膜領域P0a,P0b,P0c,P0d,P0e,P0f,P0g,P0h,P0iに分割している。ノズル15から噴射されたエアロゾルは、これらの単位成膜領域P0a〜P0iを順次成膜する。本実施形態では、単位成膜領域P0a〜P0iを、成膜領域群P0としている。
【0071】
同様に、吹付ポイントp1からスタートして吹付ポイントp2に至るまでを、複数の単位成膜領域P1a,P1b,P1c,P1d,P1e,P1f,P1g,P1h,P1iに分割している。ノズル15から噴射されたエアロゾルは、これらの単位成膜領域P1a〜P1iを順次成膜する。本実施形態では、単位成膜領域P1a〜P1iを、成膜領域群P1としている。
【0072】
同様に、吹付ポイントp2からスタートして吹付ポイントp3に至るまでを、複数の単位成膜領域P2a,P2b,P2c,P2d,P2e,P2f,P2g,P2h,P2iに分割している。ノズル15から噴射されたエアロゾルは、これらの単位成膜領域P2a〜P2iを順次成膜する。本実施形態では、単位成膜領域P2a〜P2iを、成膜領域群P2としている。尚、吹付ポイントp3以降においても、同様に設定されるものである。
【0073】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0074】
11:ガス供給機構
12a,12b:配管
13:エアロゾル発生器
14:形成室
15;ノズル
16:エアロゾル流
17:排気ポンプ
18:ステージ
19:基材
19a:基材
19b:基材
20:構造物
21,21a:ブラシ
21ab:第一接触部分
21ac:第二接触部分
21b:ブラシ
21c:ブラシ
211:長手辺
211b,211c:長手辺
212b,212c:第一辺部
213b,213c:第二辺部
AP:成膜装置
D1:進行方向
D2:方向
D3:方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾルデポジション法によって成膜対象物の表面に微粒子を吹きつけて成膜する成膜装置であって、
成膜対象物を保持する保持手段と、
脆性材料によって形成された微粒子をガス中に分散させたエアロゾルを前記成膜対象物の表面に向けて噴射する噴射手段と、
前記保持手段と前記噴射手段との相対的な位置関係を変化させ、前記成膜対象物の表面において連続して形成される複数の単位成膜領域に順次エアロゾル吹きつけるための移動手段と、
成膜対象物の表面における成膜に寄与しない残余微粒子を除去するための除去手段と、を備え、
前記除去手段は、前記成膜対象物の表面に接することで残余微粒子を前記成膜対象物の表面から除去する接触部を有し、
前記移動手段は、前記複数の単位成膜領域それぞれに順次成膜するように前記保持手段と前記噴射手段とを相対的に移動させ、
前記接触部は、前記複数の単位成膜領域のうち、前記噴射手段によってエアロゾルが吹きつけられる現成膜領域及びこの現成膜領域に隣接する隣接成膜領域に含まれず、前記現製膜領域からは離隔した離隔成膜領域の少なくとも一部において前記成膜対象物の表面に接し、残余微粒子を除去することを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記接触部は、前記隣接成膜領域を挟んで前記現成膜領域とは反対側において前記隣接成膜領域に隣接する離隔成膜領域以外の離隔成膜領域において、前記成膜対象物の表面に接することを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記複数の単位成膜領域が、2以上の単位成膜領域が列状に繋がる第一成膜領域群と、前記第一成膜領域群に隣接して2以上の単位成膜領域が列状に繋がる第二成膜領域群とを含み、
前記噴射手段によって前記第一成膜領域群に含まれる単位成膜領域にエアロゾルが吹きつけられ、その単位成膜領域が前記現成膜領域となっている場合に、
前記接触部は、前記第一成膜領域群に含まれない単位成膜領域を含む離隔成膜領域において前記成膜対象物の表面に接することを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記接触部は、前記第二成膜領域群に含まれる単位成膜領域を含む離隔成膜領域において前記成膜対象物の表面に接することを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記接触部は、前記複数の単位成膜領域のうち、現成膜領域よりも後に現成膜領域となる離隔成膜領域であって、前記第二成膜領域群に含まれる離隔成膜領域において、前記成膜対象物の表面に接することを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記第一成膜領域群は、それに含まれる単位成膜領域が略円形の列を成すように配列されると共に、前記第二成膜領域群も、それに含まれる単位成膜領域が略円形の列を成すように配列されるものであって、
前記噴射手段が前記第一成膜領域群に含まれる単位成膜領域に順次エアロゾルを吹きつける方向からみて後方側であって、前記第二成膜領域群に含まれる離隔成膜領域において、前記接触部が前記成膜対象物の表面に接することを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記接触部は、その外形が少なくとも前記成膜領域の幅以上の幅の長手辺を有するように構成され、
前記噴射手段から噴射するエアロゾルが前記成膜対象物の表面に沿って進行する場合に、当該進行方向と前記長手辺の各部とが直交しないように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記長手辺は、互いに異なる方向に正対する第一辺部及び第二辺部を有することを特徴とする請求項7に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記複数の成膜領域が、2以上の単位成膜領域が列状に繋がる第一成膜領域群と、前記第一成膜領域群に隣接して2以上の単位成膜領域が列状に繋がる第二成膜領域群とを含み、
前記噴射手段によって前記第一成膜領域群に含まれる単位成膜領域にエアロゾルが吹きつけられ、その単位成膜領域が前記現成膜領域となっている場合に、
前記接触部は、前記第二成膜領域群に含まれる離隔成膜領域において前記成膜対象物の表面に接するものであって、前記第二成膜領域群に含まれる単位成膜領域の配列方向に前記長手辺が直交するように配置されていることを特徴とする請求項7に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記接触部の前記長手辺は、前記離隔成膜領域に接する第一接触部分と、前記第一接触部分が接する離隔成膜領域とは異なる離隔成膜領域に接する第二接触部分とに分割されるように構成されており、
前記第一接触部分と前記第二接触部分との間の空隙部分の一部に対応する前記現成膜領域に、前記噴射手段がエアロゾルを吹きつけるように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の成膜装置。
【請求項11】
前記空隙部分は、前記噴射手段から噴射するエアロゾルが前記成膜対象物の表面に沿って進行する場合に、当該エアロゾルと干渉しないように前記成膜対象物の表面からの空隙高さが設定されていることを特徴とする請求項9に記載の成膜装置。
【請求項12】
前記噴射手段は、前記成膜対象物の表面に直交する方向から前記表面に沿う方向へと傾斜配置されるノズルを有し、このノズルからエアロゾルを噴射するものであって、
前記接触部は、前記ノズルから噴射されたエアロゾルが前記成膜対象物の表面に到達する位置よりも、前記ノズル側における前記離隔成膜領域に接することを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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