成膜装置
【課題】成膜レートを維持しつつ基板上への異物の落下を抑制する。
【解決手段】チャンバー110と、チャンバー110内で成膜処理される基板の上面と対向する主面を有するターゲット130とを備える。また、ターゲット130を下方から支持してチャンバー110に固定する係合部材140および頭付螺子150と、係合部材140と係合して取り付けられ、係合部材140および頭付螺子150の下方を覆う防着部材160とを備える。ターゲット130は、主面の一部に凹部131を有する。係合部材140および頭付螺子150は、上記凹部130内に位置する。防着部材160は、凹部131を埋めるように位置する。防着部材160のターゲット130と面する裏面とは反対側の表面は、ステージ120の上面と対向して平面である。
【解決手段】チャンバー110と、チャンバー110内で成膜処理される基板の上面と対向する主面を有するターゲット130とを備える。また、ターゲット130を下方から支持してチャンバー110に固定する係合部材140および頭付螺子150と、係合部材140と係合して取り付けられ、係合部材140および頭付螺子150の下方を覆う防着部材160とを備える。ターゲット130は、主面の一部に凹部131を有する。係合部材140および頭付螺子150は、上記凹部130内に位置する。防着部材160は、凹部131を埋めるように位置する。防着部材160のターゲット130と面する裏面とは反対側の表面は、ステージ120の上面と対向して平面である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置に関し、特に、防着板を備えたスパッタリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置および薄膜太陽電池などの半導体デバイスの製造プロセスにおいて、被処理基板上に半導体または金属などからなる薄膜を形成する際に用いられる方法としてスパッタリング法がある。
【0003】
スパッタリング法により基板を処理するスパッタリング装置においては、ターゲットと呼ばれる成膜材料の塊から発生させたスパッタ粒子を基板上に堆積させることで薄膜を形成する。スパッタリング装置により、膜厚および膜質が基板上の面内で均一な薄膜を形成することができる。
【0004】
ターゲットは、一般的にスパッタリング装置のチャンバーの天井または底面に固定されている。ターゲットに対向して設置された基板に向けて放出されたスパッタ粒子が堆積することにより、基板上に薄膜が形成される。
【0005】
スパッタリング装置の構成を開示した先行文献として、特開平3−87358号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載された成膜装置においては、ターゲットをチャンバーの底面側に固定し、チャンバの天井側に基板を設置している。ターゲットは、ターゲット用固定治具によって固定されている。ターゲット用固定治具は、ターゲットの表面から突出するように設けられてられている。
【0006】
ターゲットをチャンバーの天井側に固定する場合は、基板をチャンバーの底面側に設置する構成となる。スパッタリング装置においては、この両方の構成が一般的に用いられているが、ターゲットを天井側に固定した方がスパッタ粒子を重力に逆らわずに下方に向けて放出して成膜できるため成膜レートを高くできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−87358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来型のスパッタリング装置として、ターゲットがチャンバーの天井側に固定されており、基板がチャンバーの底面側にてターゲットと対向して設置されるスパッタリング装置を用いた場合に、以下の技術的課題を見出した。
【0009】
特許文献1に記載のスパッタリング装置のように、ターゲット用固定治具がターゲットの表面から突出している場合、ターゲット用固定治具の突出している部分にターゲット粒子が特に付着しやすいことが分かった。
【0010】
スパッタ粒子のほとんどは基板に向けて放出されるが、一部のスパッタ粒子はターゲットの表面に平行な方向に向けてまばらに放出される。ターゲットの表面よりも突出しているターゲット用固定治具は、上記の一部のスパッタ粒子の放出方向に位置して障害物となる。そのため、ターゲット用固定治具には、まばらに放出されたスパッタ粒子が不均一な塊状に堆積する。
【0011】
ターゲット用固定治具に堆積した塊が剥離して基板上に落下すると、この塊は基板上に成膜された膜の内部または上部に異物として存在することになる。その場合、膜厚および膜質の均一性が低下するとともに、その異物自体が欠陥となって基板上に製造される半導体デバイスの不良要因になる恐れがある。
【0012】
特許文献1に記載のように基板を天井側に設置した場合、異物が基板上に落下することはないが、上記のように成膜レートを高くする観点から基板を天井側に設置する構成にも問題がある。
【0013】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、成膜レートを維持しつつ基板上への異物の落下を抑制できる成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に基づく成膜装置は、チャンバーと、チャンバーの上部に固定され、チャンバー内で成膜処理される基板の上面と対向する下面を有するターゲットと、ターゲットを下方から支持してチャンバーに固定する固定部材と、固定部材と係合して取り付けられ、固定部材の下方を覆う防着部材とを備える。ターゲットは、上記下面の一部に凹部を有する。固定部材は、上記凹部内に位置している。防着部材は、上記凹部を埋めるように位置している。防着部材のターゲットと面する裏面とは反対側の表面は、基板の上面と対向して平面である。
【0015】
本発明の一形態においては、成膜装置は、防着部材を固定部材に固定する防着部材用締結部材をさらに備える。防着部材用締結部材は、基板の上方の領域の外側に位置している。
【0016】
本発明の一形態においては、固定部材が、防着部材と係合する係合部材と、この係合部材を介してターゲットを下方から支持してチャンバーに固定するターゲット用締結部材とを含む。
【0017】
本発明の一形態においては、固定部材が、防着部材と係合する係合部と、この係合部によりターゲットを下方から支持してチャンバーに固定する締結部とを含む。
【0018】
本発明の一形態においては、固定部材が、頭付螺子である。係合部が、頭付螺子の頭部である。締結部が、頭付螺子の螺子部である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、被処理基板の上方でスパッタ粒子が堆積して異物として基板上に落下することを低減することにより、成膜レートを維持しつつ基板上への異物の落下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態1に係るスパッタリング装置の構成を示す断面図である。
【図2】図1の矢印II方向から見た図である。
【図3】防着部材を取り外した状態を図2と同一の方向から見た図である。
【図4】防着部材の構成を示す側面図である。
【図5】防着部材を係合部材に接近させる状態を示す断面図である。
【図6】防着部材を係合部材に当接させた状態を示す断面図である。
【図7】図6の矢印VII方向から見た図である。
【図8】防着部材を係合部材に対してスライドさせて係合させた状態を示す断面図である。
【図9】本発明の実施形態2に係るスパッタリング装置の防着部材を下方から見た図である。
【図10】同実施形態に係るスパッタリング装置の構成を示す断面図である。
【図11】本発明の実施形態3に係るスパッタリング装置の上部の構成を示す一部断面図である。
【図12】同実施形態に係るスパッタリング装置の防着部材を下方から見た図である。
【図13】本発明の実施形態4に係るスパッタリング装置の上部の構成を示す一部断面図である。
【図14】同実施形態に係るスパッタリング装置において防着部材を固定部材に取り付ける状態を図13の矢印XIVで示す方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態1に係る成膜装置について説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。本実施形態においては、成膜装置としてマグネトロン方式のスパッタリング装置について説明するが、成膜装置はこれに限られず、プラズマまたはレーザなどを用いてターゲットの粒子を基板に付着させる成膜装置に本発明を適用することができる。
【0022】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るスパッタリング装置の構成を示す断面図である。図2は、図1の矢印II方向から見た図である。図3は、防着部材を取り外した状態を図2と同一の方向から見た図である。なお、図2,3においては、簡単のため、チャンバーの底部および載置台を図示せず、基板10が配置される領域を点線で示している。
【0023】
図1〜3に示すように、本発明の実施形態1に係るスパッタリング装置100は、チャンバー110と、チャンバー110内に位置して、上面に基板10が載置されるステージ120と、チャンバー110の上部に固定され、チャンバー110内で成膜処理される基板10と対向する主面を有するターゲット130とを備える。なお、チャンバー110内には、図示しないマグネトロン装置が配置されている。
【0024】
本実施形態においては、チャンバー110内に配置されたステージ120上に基板10が載置されている。ただし、これに限られず、基板10は、ローラコンベアまたはロボットアームなどにより支持されていてもよい。
【0025】
また、スパッタリング装置100は、ターゲット130を下方から支持してチャンバー110に固定する固定部材と、この固定部材と係合して取り付けられ、固定部材の下方を覆う防着部材160とを備える。
【0026】
本実施形態においては、固定部材は、防着部材160と係合する係合部材140と、この係合部材を介してターゲット130を下方から支持してチャンバー110に固定するターゲット用締結部材である頭付螺子150とを含む。
【0027】
ターゲット130は、基板10上に形成する膜の材料となる材質からなり、たとえば、ZnOまたはITO(Indium Tin Oxide)などから形成されている。ターゲット130は、略直方体の外形を有している。ターゲット130は、主面の一部に凹部131を有し、凹部131の底部に通じる貫通孔132を有している。本実施形態においては、凹部131はターゲット130の中央部に位置している。
【0028】
係合部材140および頭付螺子150は、ターゲット130の凹部131内に位置している。すなわち、係合部材140の下面および頭付螺子150の頭部の下面は、ターゲット130の主面より上方に位置している。
【0029】
本実施形態においては、係合部材140の下面に頭付螺子150の頭部を収容する座繰部が設けられているため、係合部材140の下面と頭付螺子150の頭部の下面とは略同一平面上に位置している。ただし、係合部材140の下面に必ずしも座繰部が設けられている必要はなく、係合部材140の下面と頭付螺子150の頭部の下面とのうち下方に位置する面よりさらに下方にターゲット130の主面が位置していればよい。
【0030】
係合部材140は、防着部材160との係合部141および頭付螺子150の螺子部を挿通するための開口を有して、頭付螺子150の頭部とターゲット130との間に介在している。係合部材140は、ステンレス鋼またはアルミニウムなどの金属、または、耐熱性を有する樹脂などから形成されている。
【0031】
図3に示すように、係合部材140は、長手方向を有している。係合部材140には、長手方向において順に、係合部141より相対的に幅の狭い幅狭部142と、防着部材160と係合する係合部141とが交互に形成されている。図1に示すように、係合部141は、係合部材140の厚さ方向における略中央の一部が、幅方向の外側に突出するように形成されている。
【0032】
平面視において、係合部141の中央に頭付螺子150の螺子部を挿通するための上記開口が形成されている。チャンバー110の天井部には、頭付螺子150の螺子部と螺合する雌螺子部111が設けられている。
【0033】
頭付螺子150の螺子部を係合部材140の開口およびターゲット130の貫通孔132に挿通させてチャンバー110の雌螺子部111と螺合させることにより、ターゲット130をチャンバー110の上部に固定できる。
【0034】
図1に示すように、防着部材160は、ターゲット130の凹部131を埋めるように位置している。防着部材160のターゲット130と面する裏面とは反対側の表面は、ステージ120の上面と対向している。
【0035】
本実施形態においては、防着部材160の表面は、ターゲット130の主面と略同一平面上に位置している。ただし、防着部材160の表面とターゲット130の主面との位置関係はこれに限られず、防着部材160の表面はターゲット130の主面より僅かに上方に位置していてもよい。
【0036】
防着部材160は、ステンレス鋼などの金属材料から形成され、表面がサンドブラスト処理などにより粗面化されている。表面が粗面化されて形成された微細な凹凸により、防着部材160の表面に付着したターゲット130の材料の粒子からなる膜を剥がれ難くすることができる。その結果、防着部材160の下方に位置するステージ120上の基板10に、防着部材160の表面から剥離した膜が落下して付着することを抑制することができる。
【0037】
防着部材160は、スパッタリング装置100の稼動時における装置内の温度変化に伴って、熱膨張と収縮とを繰り返す。防着部材160が熱膨張した際に、防着部材160とターゲット130の内側壁とが接触しないようにするために、開放部133が形成されている。仮に、防着部材160とターゲット130の内側壁とが接触した場合、防着部材160に負荷がかかって防着部材160が変形する恐れがある。開放部133の長さは、防着部材160の膨張による最大変位長さより僅かに長いことが好ましい。なお、開放部133は、後述するように、防着部材160をスライドさせて係合部材140に係合させるためのスライド用スペースも兼ねている。
【0038】
図4は、防着部材の構成を示す側面図である。図1,4に示すように、防着部材160は、係合部材140の係合部141と係合する被係合部161を裏面側に有している。本実施形態においては、被係合部161は、防着部材160の表面から略直角に曲折した側面から、内側に略直角に曲折して形成されている。すなわち、被係合部161は、防着部材160の裏面に位置して、防着部材160の表面と間隔を置いて対向している。
【0039】
防着部材160は、長手方向を有している。防着部材160には、長手方向において順に、被係合部161より相対的に厚さが薄い案内部162と被係合部161とが交互に形成されている。案内部162は、防着部材160の表面から略直角に曲折した側面から構成されている。
【0040】
係合部材140の係合部141と防着部材160の被係合部161とが係合することにより、防着部材160が係合部材140と頭付螺子150とからなる固定部材に取り付けられる。
【0041】
図2に示すように、防着部材160が固定部材に取り付けられた状態において、ターゲット130の凹部131の一部である開放部133は、防着部材160に覆われずに開放している。開放部133は、ステージ120の上面のうち基板10が載置される領域の上方の外側に位置している。そのため、防着部材160に覆われていないことにより開放部133に付着した膜が、仮に落下したとしても基板10に付着することを抑制することができる。
【0042】
以下、本実施形態において防着部材160と係合部材140とを係合させる方法について説明する。
【0043】
図5は、防着部材を係合部材に接近させる状態を示す断面図である。図6は、防着部材を係合部材に当接させた状態を示す断面図である。図7は、図6の矢印VII方向から見た図である。図8は、防着部材を係合部材に対してスライドさせて係合させた状態を示す断面図である。図8の矢印II方向から見ると、図2に示す状態となっている。
【0044】
図5に示すように、防着部材160の被係合部161を係合部材140の幅狭部142に対面させ、かつ、防着部材160の案内部162を係合部材140の係合部141に対面させた状態で、防着部材160を係合部材140へ矢印170で示す方向に接近させる。
【0045】
図6に示すように、防着部材160の内面163と係合部材140の下面143とを当接させる。この状態では、図7に示すように、係合部材140の一部が防着部材160に覆われていない。
【0046】
防着部材160を係合部材140に対して図6中の矢印171で示す方向にスライドさせると、図8に示すように、係合部材140の係合部141と防着部材160の被係合部161とが係合する。
【0047】
図8においては、係合部材140の係合部141と防着部材160の被係合部161との間に隙間があるように図示しているが、係合した状態においては、係合部材140の係合部141と防着部材160の被係合部161とは当接している。
【0048】
このようにすることにより、図2に示すように、係合部材140は防着部材160に覆われ、防着部材160に覆われていない凹部131の一部である開放部133が現れる。
【0049】
上記の構成により、防着部材160を係合部材140に容易に着脱させることができるため、防着部材160を容易に交換できる。その結果、防着部材160の交換に要する時間を短縮して、スパッタリング装置100の稼働率を向上することができる。
【0050】
本実施形態に係るスパッタリング装置100においては、防着部材160をターゲット130に取り付けるのではなく、固定部材に取り付けているため、ターゲット130は従来の標準品をそのまま使用することが可能である。そのため、防着部材160を取り付けるために特別な加工を施したターゲットを用意する必要がない。
【0051】
上記のように、基板10の上方に位置する全ての固定部材を、表面が平面である防着部材160で覆うことにより、ターゲット粒子が固定部材に付着することを抑制することができる。また、基板10をターゲット130の上方に設置する必要もない。その結果、成膜レートを維持しつつ基板10上への異物の落下を抑制できる。よって、膜厚および膜質が均一な膜を基板10上に効率よく成膜することができる。
【0052】
なお、開放部133は、基板10の上方の領域の外側に位置しているため、仮に、開放部133にターゲット粒子が付着したとしても、その粒子が基板10上に落下して付着することを抑制することができる。
【0053】
以下、本発明の実施形態2に係るスパッタリング装置について説明する。なお、本実施形態に係るスパッタリング装置は、防着部材を固定部材に固定していることのみ実施形態1に係るスパッタリング装置100と異なるため、他の構成については説明を繰り返さない。
【0054】
(実施形態2)
図9は、本発明の実施形態2に係るスパッタリング装置の防着部材を下方から見た図である。図10は、本実施形態に係るスパッタリング装置の構成を示す断面図である。
【0055】
図9,10に示すように、本実施形態に係るスパッタリング装置においては、防着部材260は、ステージ120の上面のうち基板10が載置される領域の上方の外側において、防着部材260の一部を貫通する防着部材用締結部材である皿螺子250により固定部材に固定されている。
【0056】
具体的には、防着部材260は、長手方向における端部に貫通孔261を有する。貫通孔261は、皿螺子250の頭部と当接するようにテーパ状に形成されている。そのため、皿螺子250で係合部材140を固定した際に、皿螺子250の頭部の下面と、防着部材260の表面とが略同一平面上に位置している。
【0057】
係合部材140には、皿螺子250と螺号する雌螺子部が形成されている。この雌螺子部は、ステージ120の上面のうち基板10が載置される領域の上方の外側に形成されている。
【0058】
防着部材260を係合部材140に係合させた状態で皿螺子250の螺子部を貫通孔261に挿通させて係合部材140の雌螺子部に螺合させることにより、防着部材260を固定部材に含まれる係合部材140に固定することができる。
【0059】
図9に示すように、防着部材260を固定した状態において、ターゲット130の凹部131の長手方向における両端部が開放部232,233となっている。
【0060】
防着部材260は、スパッタリング装置200の稼動時における装置内の温度変化に伴って、熱膨張と収縮とを繰り返す。防着部材260が熱膨張した際に、防着部材260とターゲット130の内側壁とが接触しないようにするために、開放部232,233が形成されている。仮に、防着部材260とターゲット130の内側壁とが接触した場合、防着部材260に負荷がかかって防着部材260が変形する恐れがある。開放部232,233の長さは、防着部材260の膨張による最大変位長さより僅かに長いことが好ましい。
【0061】
なお、開放部232は、実施形態1のスパッタリング装置100の開放部133と同様に、防着部材260をスライドさせて係合部材140に係合させるためのスライド用スペースも兼ねている。
【0062】
本実施形態においては、防着部材260を係合部材140に固定しているため、防着部材260が熱膨張と収縮とを繰り返した際に、防着部材260の位置がずれることを防止することができる。その結果、防着部材260を最も効果的な所定の位置に安定して配置することができる。
【0063】
以下、本発明の実施形態3に係るスパッタリング装置について説明する。なお、本実施形態に係るスパッタリング装置は、ターゲットの凹部がターゲットの縁部に位置することのみ実施形態1に係るスパッタリング装置100と異なるため、他の構成については説明を繰り返さない。
【0064】
(実施形態3)
図11は、本発明の実施形態3に係るスパッタリング装置の上部の構成を示す一部断面図である。図12は、本実施形態に係るスパッタリング装置の防着部材を下方から見た図である。
【0065】
図11,12に示すように、本発明の実施形態3においては、ターゲット330は、主面の一部である縁部に凹部331を有し、凹部331の底部に通じる貫通孔を有している。具体的には、ターゲット330の互いに対向する1組の辺に沿って凹部331が形成されている。
【0066】
本実施形態に係るスパッタリング装置は、ターゲット330を下方から支持してチャンバー110に固定する固定部材と、この固定部材と係合して取り付けられ、固定部材の下方を覆う1組の防着部材360とを備える。
【0067】
本実施形態においては、固定部材は、防着部材360と係合する1組の係合部材340と、この係合部材340を介してターゲット330を下方から支持してチャンバー110に固定するターゲット用締結部材である頭付螺子150とを含む。
【0068】
係合部材340および頭付螺子150は、ターゲット330の凹部331内に位置している。すなわち、係合部材340の下面および頭付螺子150の頭部の下面は、ターゲット330の主面より上方に位置している。
【0069】
係合部材340は、防着部材360との係合部341および頭付螺子150の螺子部を挿通するための開口を有して、頭付螺子150の頭部とターゲット330との間に介在している。
【0070】
頭付螺子150の螺子部を係合部材340の開口およびターゲット330の貫通孔に挿通させてチャンバー110の雌螺子部と螺合させることにより、ターゲット330をチャンバー110の上部に固定できる。
【0071】
係合部材340は、長手方向を有している。係合部材340には、長手方向において順に、係合部341より相対的に幅の狭い幅狭部と、防着部材360と係合する係合部341とが交互に形成されている。図11に示すように、係合部341は、係合部材340の厚さ方向における略中央の一部が、幅方向の一方に突出するように形成されている。
【0072】
防着部材360は、係合部材340の係合部341と係合する被係合部361を裏面側に有している。本実施形態においては、被係合部361は、防着部材360の表面から略直角に曲折した側面から、内側に略直角に曲折して形成されている。すなわち、被係合部361は、防着部材360の裏面に位置して、防着部材360表面と間隔を置いて対向している。
【0073】
防着部材360は、長手方向を有している。防着部材360には、長手方向において順に、被係合部361より相対的に厚さが薄い案内部と被係合部361とが交互に形成されている。案内部は、防着部材360の表面から略直角に曲折した側面から構成されている。また、防着部材360は、表面の端部に、頭付螺子150の頭部の側面を抱くように曲折した曲折部362を有する。
【0074】
係合部材340の係合部341と防着部材360の被係合部361とが係合することにより、防着部材360が係合部材340と頭付螺子150とからなる固定部材に取り付けられる。
【0075】
本実施形態に係るスパッタリング装置においても、上記のように、基板10の上方に位置する全ての固定部材を、表面が平面である防着部材360で覆うことにより、ターゲット粒子が固定部材に付着することを抑制することができる。その結果、成膜レートを維持しつつ基板10上への異物の落下を抑制できる。よって、膜厚および膜質が均一な膜を基板10上に効率よく成膜することができる。
【0076】
また、防着部材360を係合部材340に容易に着脱させることができるため、防着部材360を容易に交換できる。その結果、防着部材360の交換に要する時間を短縮して、スパッタリング装置の稼働率を向上することができる。
【0077】
以下、本発明の実施形態4に係るスパッタリング装置について説明する。なお、本実施形態に係るスパッタリング装置は、固定部材が頭付螺子のみから構成されることのみ実施形態3に係るスパッタリング装置と異なるため、他の構成については説明を繰り返さない。
【0078】
(実施形態4)
図13は、本発明の実施形態4に係るスパッタリング装置の上部の構成を示す一部断面図である。図14は、本実施形態に係るスパッタリング装置において防着部材を固定部材に取り付ける状態を図13の矢印XIVで示す方向から見た図である。
【0079】
図13,14に示すように、本発明の実施形態4に係るスパッタリング装置においては、固定部材が頭付螺子450である。頭付螺子450は、防着部材460と係合する係合部となる頭部451を有する。また、頭付螺子450は、頭部451によりターゲット330を下方から支持してチャンバー110に固定する締結部である螺子部452を有する。
【0080】
具体的には、頭部451は、小径部453を有する。防着部材460は、頭部451の小径部453と係合する被係合部461を裏面側に有する。具体的には、頭部451の小径部453の周側面に沿う形状を有した切欠きからなる被係合部461が、防着部材460の裏面の端部に形成されている。被係合部461の厚さは、小径部453の幅より僅かに薄く形成されている。
【0081】
矢印470で示す方向に防着部材460の被係合部461を頭部451の小径部453に接近させて当接させることにより、頭付螺子450の頭部451と防着部材460の被係合部461とが係合して、防着部材460が固定部材である頭付螺子450に取り付けられる。
【0082】
本実施形態に係るスパッタリング装置においても、防着部材460を頭付螺子450に容易に着脱させることができるため、防着部材460を容易に交換できる。その結果、防着部材460の交換に要する時間を短縮して、スパッタリング装置の稼働率を向上することができる。
【0083】
本実施形態に係るスパッタリング装置においても、上記のように、基板10の上方に位置する全ての固定部材を、表面が平面である防着部材460で覆うことにより、ターゲット粒子が固定部材に付着することを抑制することができる。その結果、成膜レートを維持しつつ基板10上への異物の落下を抑制できる。よって、膜厚および膜質が均一な膜を基板10上に効率よく成膜することができる。
【0084】
上記の実施形態において、互いに組み合わせることができる構成については、当然に組み合わせることを想定している。
【0085】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0086】
10 基板、100,200 スパッタリング装置、110 チャンバー、111 雌螺子部、120 ステージ、130,330 ターゲット、131,331 凹部、132,261 貫通孔、133,232,233 開放部、140,340 係合部材、141,341 係合部、142 幅狭部、143 下面、150,450 頭付螺子、160,260,360,460 防着部材、161,361,461 被係合部、162 案内部、163 内面、250 皿螺子、362 曲折部、451 頭部、452 螺子部、453 小径部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置に関し、特に、防着板を備えたスパッタリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置および薄膜太陽電池などの半導体デバイスの製造プロセスにおいて、被処理基板上に半導体または金属などからなる薄膜を形成する際に用いられる方法としてスパッタリング法がある。
【0003】
スパッタリング法により基板を処理するスパッタリング装置においては、ターゲットと呼ばれる成膜材料の塊から発生させたスパッタ粒子を基板上に堆積させることで薄膜を形成する。スパッタリング装置により、膜厚および膜質が基板上の面内で均一な薄膜を形成することができる。
【0004】
ターゲットは、一般的にスパッタリング装置のチャンバーの天井または底面に固定されている。ターゲットに対向して設置された基板に向けて放出されたスパッタ粒子が堆積することにより、基板上に薄膜が形成される。
【0005】
スパッタリング装置の構成を開示した先行文献として、特開平3−87358号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載された成膜装置においては、ターゲットをチャンバーの底面側に固定し、チャンバの天井側に基板を設置している。ターゲットは、ターゲット用固定治具によって固定されている。ターゲット用固定治具は、ターゲットの表面から突出するように設けられてられている。
【0006】
ターゲットをチャンバーの天井側に固定する場合は、基板をチャンバーの底面側に設置する構成となる。スパッタリング装置においては、この両方の構成が一般的に用いられているが、ターゲットを天井側に固定した方がスパッタ粒子を重力に逆らわずに下方に向けて放出して成膜できるため成膜レートを高くできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−87358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来型のスパッタリング装置として、ターゲットがチャンバーの天井側に固定されており、基板がチャンバーの底面側にてターゲットと対向して設置されるスパッタリング装置を用いた場合に、以下の技術的課題を見出した。
【0009】
特許文献1に記載のスパッタリング装置のように、ターゲット用固定治具がターゲットの表面から突出している場合、ターゲット用固定治具の突出している部分にターゲット粒子が特に付着しやすいことが分かった。
【0010】
スパッタ粒子のほとんどは基板に向けて放出されるが、一部のスパッタ粒子はターゲットの表面に平行な方向に向けてまばらに放出される。ターゲットの表面よりも突出しているターゲット用固定治具は、上記の一部のスパッタ粒子の放出方向に位置して障害物となる。そのため、ターゲット用固定治具には、まばらに放出されたスパッタ粒子が不均一な塊状に堆積する。
【0011】
ターゲット用固定治具に堆積した塊が剥離して基板上に落下すると、この塊は基板上に成膜された膜の内部または上部に異物として存在することになる。その場合、膜厚および膜質の均一性が低下するとともに、その異物自体が欠陥となって基板上に製造される半導体デバイスの不良要因になる恐れがある。
【0012】
特許文献1に記載のように基板を天井側に設置した場合、異物が基板上に落下することはないが、上記のように成膜レートを高くする観点から基板を天井側に設置する構成にも問題がある。
【0013】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、成膜レートを維持しつつ基板上への異物の落下を抑制できる成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に基づく成膜装置は、チャンバーと、チャンバーの上部に固定され、チャンバー内で成膜処理される基板の上面と対向する下面を有するターゲットと、ターゲットを下方から支持してチャンバーに固定する固定部材と、固定部材と係合して取り付けられ、固定部材の下方を覆う防着部材とを備える。ターゲットは、上記下面の一部に凹部を有する。固定部材は、上記凹部内に位置している。防着部材は、上記凹部を埋めるように位置している。防着部材のターゲットと面する裏面とは反対側の表面は、基板の上面と対向して平面である。
【0015】
本発明の一形態においては、成膜装置は、防着部材を固定部材に固定する防着部材用締結部材をさらに備える。防着部材用締結部材は、基板の上方の領域の外側に位置している。
【0016】
本発明の一形態においては、固定部材が、防着部材と係合する係合部材と、この係合部材を介してターゲットを下方から支持してチャンバーに固定するターゲット用締結部材とを含む。
【0017】
本発明の一形態においては、固定部材が、防着部材と係合する係合部と、この係合部によりターゲットを下方から支持してチャンバーに固定する締結部とを含む。
【0018】
本発明の一形態においては、固定部材が、頭付螺子である。係合部が、頭付螺子の頭部である。締結部が、頭付螺子の螺子部である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、被処理基板の上方でスパッタ粒子が堆積して異物として基板上に落下することを低減することにより、成膜レートを維持しつつ基板上への異物の落下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態1に係るスパッタリング装置の構成を示す断面図である。
【図2】図1の矢印II方向から見た図である。
【図3】防着部材を取り外した状態を図2と同一の方向から見た図である。
【図4】防着部材の構成を示す側面図である。
【図5】防着部材を係合部材に接近させる状態を示す断面図である。
【図6】防着部材を係合部材に当接させた状態を示す断面図である。
【図7】図6の矢印VII方向から見た図である。
【図8】防着部材を係合部材に対してスライドさせて係合させた状態を示す断面図である。
【図9】本発明の実施形態2に係るスパッタリング装置の防着部材を下方から見た図である。
【図10】同実施形態に係るスパッタリング装置の構成を示す断面図である。
【図11】本発明の実施形態3に係るスパッタリング装置の上部の構成を示す一部断面図である。
【図12】同実施形態に係るスパッタリング装置の防着部材を下方から見た図である。
【図13】本発明の実施形態4に係るスパッタリング装置の上部の構成を示す一部断面図である。
【図14】同実施形態に係るスパッタリング装置において防着部材を固定部材に取り付ける状態を図13の矢印XIVで示す方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態1に係る成膜装置について説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。本実施形態においては、成膜装置としてマグネトロン方式のスパッタリング装置について説明するが、成膜装置はこれに限られず、プラズマまたはレーザなどを用いてターゲットの粒子を基板に付着させる成膜装置に本発明を適用することができる。
【0022】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るスパッタリング装置の構成を示す断面図である。図2は、図1の矢印II方向から見た図である。図3は、防着部材を取り外した状態を図2と同一の方向から見た図である。なお、図2,3においては、簡単のため、チャンバーの底部および載置台を図示せず、基板10が配置される領域を点線で示している。
【0023】
図1〜3に示すように、本発明の実施形態1に係るスパッタリング装置100は、チャンバー110と、チャンバー110内に位置して、上面に基板10が載置されるステージ120と、チャンバー110の上部に固定され、チャンバー110内で成膜処理される基板10と対向する主面を有するターゲット130とを備える。なお、チャンバー110内には、図示しないマグネトロン装置が配置されている。
【0024】
本実施形態においては、チャンバー110内に配置されたステージ120上に基板10が載置されている。ただし、これに限られず、基板10は、ローラコンベアまたはロボットアームなどにより支持されていてもよい。
【0025】
また、スパッタリング装置100は、ターゲット130を下方から支持してチャンバー110に固定する固定部材と、この固定部材と係合して取り付けられ、固定部材の下方を覆う防着部材160とを備える。
【0026】
本実施形態においては、固定部材は、防着部材160と係合する係合部材140と、この係合部材を介してターゲット130を下方から支持してチャンバー110に固定するターゲット用締結部材である頭付螺子150とを含む。
【0027】
ターゲット130は、基板10上に形成する膜の材料となる材質からなり、たとえば、ZnOまたはITO(Indium Tin Oxide)などから形成されている。ターゲット130は、略直方体の外形を有している。ターゲット130は、主面の一部に凹部131を有し、凹部131の底部に通じる貫通孔132を有している。本実施形態においては、凹部131はターゲット130の中央部に位置している。
【0028】
係合部材140および頭付螺子150は、ターゲット130の凹部131内に位置している。すなわち、係合部材140の下面および頭付螺子150の頭部の下面は、ターゲット130の主面より上方に位置している。
【0029】
本実施形態においては、係合部材140の下面に頭付螺子150の頭部を収容する座繰部が設けられているため、係合部材140の下面と頭付螺子150の頭部の下面とは略同一平面上に位置している。ただし、係合部材140の下面に必ずしも座繰部が設けられている必要はなく、係合部材140の下面と頭付螺子150の頭部の下面とのうち下方に位置する面よりさらに下方にターゲット130の主面が位置していればよい。
【0030】
係合部材140は、防着部材160との係合部141および頭付螺子150の螺子部を挿通するための開口を有して、頭付螺子150の頭部とターゲット130との間に介在している。係合部材140は、ステンレス鋼またはアルミニウムなどの金属、または、耐熱性を有する樹脂などから形成されている。
【0031】
図3に示すように、係合部材140は、長手方向を有している。係合部材140には、長手方向において順に、係合部141より相対的に幅の狭い幅狭部142と、防着部材160と係合する係合部141とが交互に形成されている。図1に示すように、係合部141は、係合部材140の厚さ方向における略中央の一部が、幅方向の外側に突出するように形成されている。
【0032】
平面視において、係合部141の中央に頭付螺子150の螺子部を挿通するための上記開口が形成されている。チャンバー110の天井部には、頭付螺子150の螺子部と螺合する雌螺子部111が設けられている。
【0033】
頭付螺子150の螺子部を係合部材140の開口およびターゲット130の貫通孔132に挿通させてチャンバー110の雌螺子部111と螺合させることにより、ターゲット130をチャンバー110の上部に固定できる。
【0034】
図1に示すように、防着部材160は、ターゲット130の凹部131を埋めるように位置している。防着部材160のターゲット130と面する裏面とは反対側の表面は、ステージ120の上面と対向している。
【0035】
本実施形態においては、防着部材160の表面は、ターゲット130の主面と略同一平面上に位置している。ただし、防着部材160の表面とターゲット130の主面との位置関係はこれに限られず、防着部材160の表面はターゲット130の主面より僅かに上方に位置していてもよい。
【0036】
防着部材160は、ステンレス鋼などの金属材料から形成され、表面がサンドブラスト処理などにより粗面化されている。表面が粗面化されて形成された微細な凹凸により、防着部材160の表面に付着したターゲット130の材料の粒子からなる膜を剥がれ難くすることができる。その結果、防着部材160の下方に位置するステージ120上の基板10に、防着部材160の表面から剥離した膜が落下して付着することを抑制することができる。
【0037】
防着部材160は、スパッタリング装置100の稼動時における装置内の温度変化に伴って、熱膨張と収縮とを繰り返す。防着部材160が熱膨張した際に、防着部材160とターゲット130の内側壁とが接触しないようにするために、開放部133が形成されている。仮に、防着部材160とターゲット130の内側壁とが接触した場合、防着部材160に負荷がかかって防着部材160が変形する恐れがある。開放部133の長さは、防着部材160の膨張による最大変位長さより僅かに長いことが好ましい。なお、開放部133は、後述するように、防着部材160をスライドさせて係合部材140に係合させるためのスライド用スペースも兼ねている。
【0038】
図4は、防着部材の構成を示す側面図である。図1,4に示すように、防着部材160は、係合部材140の係合部141と係合する被係合部161を裏面側に有している。本実施形態においては、被係合部161は、防着部材160の表面から略直角に曲折した側面から、内側に略直角に曲折して形成されている。すなわち、被係合部161は、防着部材160の裏面に位置して、防着部材160の表面と間隔を置いて対向している。
【0039】
防着部材160は、長手方向を有している。防着部材160には、長手方向において順に、被係合部161より相対的に厚さが薄い案内部162と被係合部161とが交互に形成されている。案内部162は、防着部材160の表面から略直角に曲折した側面から構成されている。
【0040】
係合部材140の係合部141と防着部材160の被係合部161とが係合することにより、防着部材160が係合部材140と頭付螺子150とからなる固定部材に取り付けられる。
【0041】
図2に示すように、防着部材160が固定部材に取り付けられた状態において、ターゲット130の凹部131の一部である開放部133は、防着部材160に覆われずに開放している。開放部133は、ステージ120の上面のうち基板10が載置される領域の上方の外側に位置している。そのため、防着部材160に覆われていないことにより開放部133に付着した膜が、仮に落下したとしても基板10に付着することを抑制することができる。
【0042】
以下、本実施形態において防着部材160と係合部材140とを係合させる方法について説明する。
【0043】
図5は、防着部材を係合部材に接近させる状態を示す断面図である。図6は、防着部材を係合部材に当接させた状態を示す断面図である。図7は、図6の矢印VII方向から見た図である。図8は、防着部材を係合部材に対してスライドさせて係合させた状態を示す断面図である。図8の矢印II方向から見ると、図2に示す状態となっている。
【0044】
図5に示すように、防着部材160の被係合部161を係合部材140の幅狭部142に対面させ、かつ、防着部材160の案内部162を係合部材140の係合部141に対面させた状態で、防着部材160を係合部材140へ矢印170で示す方向に接近させる。
【0045】
図6に示すように、防着部材160の内面163と係合部材140の下面143とを当接させる。この状態では、図7に示すように、係合部材140の一部が防着部材160に覆われていない。
【0046】
防着部材160を係合部材140に対して図6中の矢印171で示す方向にスライドさせると、図8に示すように、係合部材140の係合部141と防着部材160の被係合部161とが係合する。
【0047】
図8においては、係合部材140の係合部141と防着部材160の被係合部161との間に隙間があるように図示しているが、係合した状態においては、係合部材140の係合部141と防着部材160の被係合部161とは当接している。
【0048】
このようにすることにより、図2に示すように、係合部材140は防着部材160に覆われ、防着部材160に覆われていない凹部131の一部である開放部133が現れる。
【0049】
上記の構成により、防着部材160を係合部材140に容易に着脱させることができるため、防着部材160を容易に交換できる。その結果、防着部材160の交換に要する時間を短縮して、スパッタリング装置100の稼働率を向上することができる。
【0050】
本実施形態に係るスパッタリング装置100においては、防着部材160をターゲット130に取り付けるのではなく、固定部材に取り付けているため、ターゲット130は従来の標準品をそのまま使用することが可能である。そのため、防着部材160を取り付けるために特別な加工を施したターゲットを用意する必要がない。
【0051】
上記のように、基板10の上方に位置する全ての固定部材を、表面が平面である防着部材160で覆うことにより、ターゲット粒子が固定部材に付着することを抑制することができる。また、基板10をターゲット130の上方に設置する必要もない。その結果、成膜レートを維持しつつ基板10上への異物の落下を抑制できる。よって、膜厚および膜質が均一な膜を基板10上に効率よく成膜することができる。
【0052】
なお、開放部133は、基板10の上方の領域の外側に位置しているため、仮に、開放部133にターゲット粒子が付着したとしても、その粒子が基板10上に落下して付着することを抑制することができる。
【0053】
以下、本発明の実施形態2に係るスパッタリング装置について説明する。なお、本実施形態に係るスパッタリング装置は、防着部材を固定部材に固定していることのみ実施形態1に係るスパッタリング装置100と異なるため、他の構成については説明を繰り返さない。
【0054】
(実施形態2)
図9は、本発明の実施形態2に係るスパッタリング装置の防着部材を下方から見た図である。図10は、本実施形態に係るスパッタリング装置の構成を示す断面図である。
【0055】
図9,10に示すように、本実施形態に係るスパッタリング装置においては、防着部材260は、ステージ120の上面のうち基板10が載置される領域の上方の外側において、防着部材260の一部を貫通する防着部材用締結部材である皿螺子250により固定部材に固定されている。
【0056】
具体的には、防着部材260は、長手方向における端部に貫通孔261を有する。貫通孔261は、皿螺子250の頭部と当接するようにテーパ状に形成されている。そのため、皿螺子250で係合部材140を固定した際に、皿螺子250の頭部の下面と、防着部材260の表面とが略同一平面上に位置している。
【0057】
係合部材140には、皿螺子250と螺号する雌螺子部が形成されている。この雌螺子部は、ステージ120の上面のうち基板10が載置される領域の上方の外側に形成されている。
【0058】
防着部材260を係合部材140に係合させた状態で皿螺子250の螺子部を貫通孔261に挿通させて係合部材140の雌螺子部に螺合させることにより、防着部材260を固定部材に含まれる係合部材140に固定することができる。
【0059】
図9に示すように、防着部材260を固定した状態において、ターゲット130の凹部131の長手方向における両端部が開放部232,233となっている。
【0060】
防着部材260は、スパッタリング装置200の稼動時における装置内の温度変化に伴って、熱膨張と収縮とを繰り返す。防着部材260が熱膨張した際に、防着部材260とターゲット130の内側壁とが接触しないようにするために、開放部232,233が形成されている。仮に、防着部材260とターゲット130の内側壁とが接触した場合、防着部材260に負荷がかかって防着部材260が変形する恐れがある。開放部232,233の長さは、防着部材260の膨張による最大変位長さより僅かに長いことが好ましい。
【0061】
なお、開放部232は、実施形態1のスパッタリング装置100の開放部133と同様に、防着部材260をスライドさせて係合部材140に係合させるためのスライド用スペースも兼ねている。
【0062】
本実施形態においては、防着部材260を係合部材140に固定しているため、防着部材260が熱膨張と収縮とを繰り返した際に、防着部材260の位置がずれることを防止することができる。その結果、防着部材260を最も効果的な所定の位置に安定して配置することができる。
【0063】
以下、本発明の実施形態3に係るスパッタリング装置について説明する。なお、本実施形態に係るスパッタリング装置は、ターゲットの凹部がターゲットの縁部に位置することのみ実施形態1に係るスパッタリング装置100と異なるため、他の構成については説明を繰り返さない。
【0064】
(実施形態3)
図11は、本発明の実施形態3に係るスパッタリング装置の上部の構成を示す一部断面図である。図12は、本実施形態に係るスパッタリング装置の防着部材を下方から見た図である。
【0065】
図11,12に示すように、本発明の実施形態3においては、ターゲット330は、主面の一部である縁部に凹部331を有し、凹部331の底部に通じる貫通孔を有している。具体的には、ターゲット330の互いに対向する1組の辺に沿って凹部331が形成されている。
【0066】
本実施形態に係るスパッタリング装置は、ターゲット330を下方から支持してチャンバー110に固定する固定部材と、この固定部材と係合して取り付けられ、固定部材の下方を覆う1組の防着部材360とを備える。
【0067】
本実施形態においては、固定部材は、防着部材360と係合する1組の係合部材340と、この係合部材340を介してターゲット330を下方から支持してチャンバー110に固定するターゲット用締結部材である頭付螺子150とを含む。
【0068】
係合部材340および頭付螺子150は、ターゲット330の凹部331内に位置している。すなわち、係合部材340の下面および頭付螺子150の頭部の下面は、ターゲット330の主面より上方に位置している。
【0069】
係合部材340は、防着部材360との係合部341および頭付螺子150の螺子部を挿通するための開口を有して、頭付螺子150の頭部とターゲット330との間に介在している。
【0070】
頭付螺子150の螺子部を係合部材340の開口およびターゲット330の貫通孔に挿通させてチャンバー110の雌螺子部と螺合させることにより、ターゲット330をチャンバー110の上部に固定できる。
【0071】
係合部材340は、長手方向を有している。係合部材340には、長手方向において順に、係合部341より相対的に幅の狭い幅狭部と、防着部材360と係合する係合部341とが交互に形成されている。図11に示すように、係合部341は、係合部材340の厚さ方向における略中央の一部が、幅方向の一方に突出するように形成されている。
【0072】
防着部材360は、係合部材340の係合部341と係合する被係合部361を裏面側に有している。本実施形態においては、被係合部361は、防着部材360の表面から略直角に曲折した側面から、内側に略直角に曲折して形成されている。すなわち、被係合部361は、防着部材360の裏面に位置して、防着部材360表面と間隔を置いて対向している。
【0073】
防着部材360は、長手方向を有している。防着部材360には、長手方向において順に、被係合部361より相対的に厚さが薄い案内部と被係合部361とが交互に形成されている。案内部は、防着部材360の表面から略直角に曲折した側面から構成されている。また、防着部材360は、表面の端部に、頭付螺子150の頭部の側面を抱くように曲折した曲折部362を有する。
【0074】
係合部材340の係合部341と防着部材360の被係合部361とが係合することにより、防着部材360が係合部材340と頭付螺子150とからなる固定部材に取り付けられる。
【0075】
本実施形態に係るスパッタリング装置においても、上記のように、基板10の上方に位置する全ての固定部材を、表面が平面である防着部材360で覆うことにより、ターゲット粒子が固定部材に付着することを抑制することができる。その結果、成膜レートを維持しつつ基板10上への異物の落下を抑制できる。よって、膜厚および膜質が均一な膜を基板10上に効率よく成膜することができる。
【0076】
また、防着部材360を係合部材340に容易に着脱させることができるため、防着部材360を容易に交換できる。その結果、防着部材360の交換に要する時間を短縮して、スパッタリング装置の稼働率を向上することができる。
【0077】
以下、本発明の実施形態4に係るスパッタリング装置について説明する。なお、本実施形態に係るスパッタリング装置は、固定部材が頭付螺子のみから構成されることのみ実施形態3に係るスパッタリング装置と異なるため、他の構成については説明を繰り返さない。
【0078】
(実施形態4)
図13は、本発明の実施形態4に係るスパッタリング装置の上部の構成を示す一部断面図である。図14は、本実施形態に係るスパッタリング装置において防着部材を固定部材に取り付ける状態を図13の矢印XIVで示す方向から見た図である。
【0079】
図13,14に示すように、本発明の実施形態4に係るスパッタリング装置においては、固定部材が頭付螺子450である。頭付螺子450は、防着部材460と係合する係合部となる頭部451を有する。また、頭付螺子450は、頭部451によりターゲット330を下方から支持してチャンバー110に固定する締結部である螺子部452を有する。
【0080】
具体的には、頭部451は、小径部453を有する。防着部材460は、頭部451の小径部453と係合する被係合部461を裏面側に有する。具体的には、頭部451の小径部453の周側面に沿う形状を有した切欠きからなる被係合部461が、防着部材460の裏面の端部に形成されている。被係合部461の厚さは、小径部453の幅より僅かに薄く形成されている。
【0081】
矢印470で示す方向に防着部材460の被係合部461を頭部451の小径部453に接近させて当接させることにより、頭付螺子450の頭部451と防着部材460の被係合部461とが係合して、防着部材460が固定部材である頭付螺子450に取り付けられる。
【0082】
本実施形態に係るスパッタリング装置においても、防着部材460を頭付螺子450に容易に着脱させることができるため、防着部材460を容易に交換できる。その結果、防着部材460の交換に要する時間を短縮して、スパッタリング装置の稼働率を向上することができる。
【0083】
本実施形態に係るスパッタリング装置においても、上記のように、基板10の上方に位置する全ての固定部材を、表面が平面である防着部材460で覆うことにより、ターゲット粒子が固定部材に付着することを抑制することができる。その結果、成膜レートを維持しつつ基板10上への異物の落下を抑制できる。よって、膜厚および膜質が均一な膜を基板10上に効率よく成膜することができる。
【0084】
上記の実施形態において、互いに組み合わせることができる構成については、当然に組み合わせることを想定している。
【0085】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0086】
10 基板、100,200 スパッタリング装置、110 チャンバー、111 雌螺子部、120 ステージ、130,330 ターゲット、131,331 凹部、132,261 貫通孔、133,232,233 開放部、140,340 係合部材、141,341 係合部、142 幅狭部、143 下面、150,450 頭付螺子、160,260,360,460 防着部材、161,361,461 被係合部、162 案内部、163 内面、250 皿螺子、362 曲折部、451 頭部、452 螺子部、453 小径部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバーと、
前記チャンバーの上部に固定され、前記チャンバー内で成膜処理される基板の上面と対向する下面を有するターゲットと、
前記ターゲットを下方から支持して前記チャンバーに固定する固定部材と、
前記固定部材と係合して取り付けられ、前記固定部材の下方を覆う防着部材と
を備え、
前記ターゲットは、前記下面の一部に凹部を有し、
前記固定部材は、前記凹部内に位置し、
前記防着部材は、前記凹部を埋めるように位置し、
前記防着部材の前記ターゲットと面する裏面とは反対側の表面は、前記基板の上面と対向して平面である、成膜装置。
【請求項2】
前記防着部材を前記固定部材に固定する防着部材用締結部材をさらに備え、
前記防着部材用締結部材は、前記基板の上方の領域の外側に位置している、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記固定部材が、前記防着部材と係合する係合部材と、該係合部材を介して前記ターゲットを下方から支持して前記チャンバーに固定するターゲット用締結部材とを含む、請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記固定部材が、前記防着部材と係合する係合部と、該係合部により前記ターゲットを下方から支持して前記チャンバーに固定する締結部とを含む、請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記固定部材が、頭付螺子であり、
前記係合部が、前記頭付螺子の頭部であり、
前記締結部が、前記頭付螺子の螺子部である、請求項4に記載の成膜装置。
【請求項1】
チャンバーと、
前記チャンバーの上部に固定され、前記チャンバー内で成膜処理される基板の上面と対向する下面を有するターゲットと、
前記ターゲットを下方から支持して前記チャンバーに固定する固定部材と、
前記固定部材と係合して取り付けられ、前記固定部材の下方を覆う防着部材と
を備え、
前記ターゲットは、前記下面の一部に凹部を有し、
前記固定部材は、前記凹部内に位置し、
前記防着部材は、前記凹部を埋めるように位置し、
前記防着部材の前記ターゲットと面する裏面とは反対側の表面は、前記基板の上面と対向して平面である、成膜装置。
【請求項2】
前記防着部材を前記固定部材に固定する防着部材用締結部材をさらに備え、
前記防着部材用締結部材は、前記基板の上方の領域の外側に位置している、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記固定部材が、前記防着部材と係合する係合部材と、該係合部材を介して前記ターゲットを下方から支持して前記チャンバーに固定するターゲット用締結部材とを含む、請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記固定部材が、前記防着部材と係合する係合部と、該係合部により前記ターゲットを下方から支持して前記チャンバーに固定する締結部とを含む、請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記固定部材が、頭付螺子であり、
前記係合部が、前記頭付螺子の頭部であり、
前記締結部が、前記頭付螺子の螺子部である、請求項4に記載の成膜装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−36092(P2013−36092A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173877(P2011−173877)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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