説明

成長ホルモンレセプターに作用する物質に対する治療応答を予測する方法

本発明は、成長ホルモンレセプターに作用する物質に対する対象の治療応答の大きさを予測する方法に関する。好ましい側面は、低身長のヒト対象の身長を増大させるための、そして肥満および末端肥大症を処置するための方法を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、成長ホルモンレセプターに作用する物質に対する対象の治療応答の大きさを予測する方法に関するものである。好ましい側面は、低身長のヒト対象の身長を増大させるための、ならびに肥満および末端肥大症を処置するための方法を包含する。
【背景技術】
【0002】
背景
有意に低身長の子供の殆どは、誘発刺激に対するGHの応答によって古典的定義がなされる成長ホルモン欠乏症(GHD)ではない。低身長の既知原因が除外された後、これらの対象は、家族性低身長、体質性成長遅延、「出生時超低体重」(VLBW)、「特発性」低身長(ISS)を包含する様々な用語で分類される。標準の体格の両親に対して低身長で出生した子供の症例は「子宮内発育遅延」(IUGR)と呼ばれる。在胎齢に対して低身長で出生した子供は「胎内発育遅延」(SGA)と呼ばれる。大規模な長期的研究の結果は報告されていないものの、これらの子供のうち幾らか、そして恐らく多数は、遺伝的に可能な身長に到達しないかも知れない。正常な成長と発達に寄与する因子は非常に数多くあるため、定義されたISS、IUGR、SGAの対象は、低身長の病因に関して異質である。古典的にはGH欠乏症でないにも拘わらず、ISSの子供の殆どは、全て同じように良好に応答する訳ではないにせよGHによる処置に応答する。
【0003】
この一連の対象における自発的GH分泌の障害について多くの研究者が研究を行ってきた。一つの仮説は、これらの対象の幾らかは、生理的条件下で内因性GHの分泌が不充分であるが、従来のGH刺激試験のような薬理刺激に応答したGHの上昇を示し得るということを示唆している。この疾患は「GH神経分泌機能不全」と命名されており、その診断は、長期の血清サンプリングで循環GHパターンの異常を証明することに依存している。数多くの研究者がこのような研究結果を報告しており、この異常がたまにしか存在しないことを見いだしている。これらの対象が「生物不活性GH」を有すると推測する研究者もいるが、これはまだ完全に証明された訳ではない。
【0004】
GHレセプター(GHR)がクローニングされた時、血液中の主たるGH結合活性はGHRと同じ遺伝子から誘導され全長GHRの細胞外ドメインに対応する蛋白によるものである事が示された。成長ホルモン不応(またはLaron)症候群(GHIS)の対象は殆ど全て成長ホルモンレセプター結合活性を欠失し、血中のGH結合蛋白(GHBP)活性が無いか極めて低い。こうした対象は平均身長標準偏差評点(SDS)が約-5ないし-6であり、GH処置に抵抗性であり、そしてGHの血清中濃度が高くインスリン様成長因子(IGF-I)の血清中濃度が低い。彼等はIGF-Iによる処置に応答する。GHRの細胞外ドメインに欠陥のある対象では、循環中の機能的GHBPの欠失がGH不応性のマーカーの役割をし得る。
【0005】
外因性GHで処置されるISS患者は、処置に対して異なる応答率を示した。特に、多くの子供はGH処置に対して幾らかは応答するが完全には応答しない。これらの患者の成長速度増加は、完全に応答する子供のほぼ半分でしかない。故に、これらの子供の一連の処置後の合計身長増加は、処置期間にもよるが、完全に応答する子供に対して低い。完全に応答しない患者の処置を改善する一つの方法はGH用量を増加することであり、これは成長速度および合計の身長増大を幾らか改善する結果となっている。しかしながらGH用量の増加は、副作用の可能性のため、全患者に対して望ましい訳ではない。GH用量増加は費用の増大をも伴う。都合の悪いことに、現在のところ、長期の処置および観察期間に先立って応答性の悪そうな患者を判別する方法はない。
【0006】
故に、当分野において、GHによる処置に対して低い応答率を示す対象の部分集合を判別するのに利用できる方法の必要性がある。さらに、外因性GHに対する応答性の低い対象を処置するための、改善された薬剤の開発を可能にする方法の必要性もまた存在する。また、GHに対して高い応答率を示す対象の部分集合を判別するのに利用できる方法、および、GHに対して高い応答をする対象の処置のための改善された薬剤の開発ができる方法に対する必要性もまた存在する。
【発明の開示】
【0007】
発明の要約
本発明は、外因性GHに対する正の応答の相違に寄与する重要因子としてのGHRアレレおよびイソ型の同定に関するものである。したがって本発明は、GHR経路を介して作用する化合物、または好ましくはGHRに結合する化合物、例えばGH組成物による処置に対する正の応答の程度を予測する方法を提供する。この方法によって、事前に患者を例えば高応答または低応答のいずれかに分類できる。特定対象に対して処置を適合させ得るという事は、経済的利益および/または副作用の低減を導く(例えば、適当な用量のGH組成物を使用、または、低いGHR応答を示さない対象に対して化合物を使用することから)。
【0008】
本発明は、GHRf1アレレについてホモ接合である対象が、GHRd3アレレについてヘテロ接合またはホモ接合の対象よりも高い、GH処置に応答した成長速度および身長変化を示すことを証明する。本発明はさらに、GHRd3アレレについてヘテロ接合の対象は、GHRd3アレレについてホモ接合の対象よりも高い、GH処置に応答した成長速度および身長変化を示すことを証明する。
【0009】
したがって本発明は、処置に対するGHR応答を予測する方法、および低いGHR活性の危険性がある対象を同定する、または低いGHR活性に関連する状態であると診断する方法を包含する、GHR仲介活性を決定または予測する方法を提供する。好ましくは本発明は、GHRポリペプチドと相互作用(例えば、結合)できる物質に対する対象の応答を予測する方法を提供する。
【0010】
したがって或る側面では、本発明は、GHR蛋白に結合できる物質に対する対象の応答を予測する方法であって、その対象におけるGHR遺伝子のアレレの存在または不在を決定し[ここで、このアレレは該物質に対する正の応答が増大または低下する傾向に相関する]、それにより、その対象が、該物質による処置に対する応答の増大または低下傾向を有すると判定することを含む方法を提供する。好ましくはこの方法は、当該対象におけるGHR遺伝子のGHRd3アレレおよび/またはGHRf1アレレの存在または不在を決定することを含む[ここで、GHRd3アレレは、該物質に対する正の応答が低下する傾向に相関し、そしてGHRf1アレレは、該物質に対する正の応答が増大する傾向に相関する]。好ましくは、該物質は対象の身長または成長速度を増大させるために使用される。
【0011】
本発明はさらに、対象の身長または成長速度を増大させる物質に対する該対象の応答を予測する方法であって、その対象におけるGHR遺伝子のアレレの存在または不在を決定し[ここで、このアレレは該物質に対する正の応答が増大または低下する傾向に相関する]、それにより、該対象が該物質による処置への応答が増大する傾向があるか低下する傾向があるかを判定する事を含む方法を提供する。好ましくはこの方法は、当該対象におけるGHR遺伝子のGHRd3アレレおよび/またはGHRf1アレレの存在または不在を決定することを含む[ここで、GHRd3アレレは、該物質に対する正の応答が低下する傾向に相関し、そしてGHRf1アレレは、該物質に対する正の応答が増大する傾向に相関する]。
【0012】
本発明はさらに、GHRが関与する疾患または異常の処置のための物質に対する対象の応答を予測する方法であって、その対象におけるGHR遺伝子のアレレの存在または不在を決定し[ここで、このアレレは該物質に対する正の応答が増大または低下する傾向に相関する]、それにより、該対象が該物質による処置への応答が増大する傾向があるか低下する傾向があるかを判定する事を含む方法を提供する。
【0013】
好ましくは本発明方法は、その対象において、エクソン3に1またはそれ以上の核酸の欠失、挿入もしくは置換を有する、または最も好ましくはエクソン3の実質上全体を欠失しているGHRアレレの存在または不在を決定することを含む。上の方法の好ましい態様では、GHR遺伝子の上記アレレはGHRd3および/またはGHRf1アレレである。
【0014】
好ましくは、当該対象は低身長である。より好ましくは、低身長の当該対象は特発性低身長(ISS)、出生時超低体重(VLBW)、子宮内発育遅延(IUGR)、または胎内発育遅延(SGA)である。さらに好ましくは、当該対象はSGAである。或いは、当該対象はGHRに関与する任意の疾患または異常に罹患している。
【0015】
好ましい態様では、このGHRd3アレレは該物質に対する正の応答が低下する傾向に相関する(GHRf1アレレを持つ対象と比較して)。別の好ましい態様では、このGHRf1アレレは該物質に対する正の応答が増大する傾向に相関する(GHRd3アレレを持つ対象と比較して)。或る態様では、該物質はペグビソマントのようなGHRアンタゴニストである。別の態様では、該物質はGHRアゴニストである。好ましくは、該物質はGH組成物、より好ましくはソマトロピンである。
【0016】
本発明方法は、GHR遺伝子のアレレ、より好ましくはGHRd3および/またはGHRf1アレレの遺伝子型決定を含む処置方法において特に有利に使用できる。この遺伝子型決定は、この治療法の有効性または治療効果を表示する。一例では、本発明方法を使用して対象に投与する薬剤の量を決定する。別の例では、本方法を使用して、治験における対象の治療応答を評価し、または治験に含める対象の選択を行う。例えば本発明方法は、GHR遺伝子のエクソン3における対象の遺伝子型を決定することを含み、ここでこの遺伝子型は、該対象を、治験のサブグループ、または治験に含めるサブグループに入れる。
【0017】
本発明はさらに、GHRが関与する疾患または異常に罹患している対象を処置する方法であって、
(a) その対象におけるGHR遺伝子のアレレの存在または不在を決定し[ここで、このアレレは、GHR蛋白に結合できる、またはGHR経路を介して作用できる物質に対する正の応答が増大または低下する傾向に相関する];そして、
(b) 該対象に投与すべき該物質の有効量を選択または決定する、
事を含む方法を提供する。
【0018】
好ましくは本方法は、GHR遺伝子のGHRd3アレレおよび/またはGHRf1アレレの存在または不在を決定することを含む[ここで、GHRd3アレレは、GHR蛋白に結合できる、またはGHR経路を介して作用できる物質に対する正の応答が低下する傾向に相関し、そしてGHRf1アレレは、該物質に対する正の応答が増大する傾向に相関する]。好ましくは、該物質は対象の身長または成長速度を高めるために使用される。
【0019】
特に好ましい態様では、本発明は対象の成長を増大させる方法であって、
(a) その対象におけるGHR遺伝子のアレレの存在または不在を決定し[ここで、このアレレは、対象の成長を増大させ得る物質に対する正の応答が増大または低下する傾向に相関する];そして、
(b) 該対象に投与すべき該物質の有効量を選択または決定する、
事を含む方法を開示する。
【0020】
好ましい側面では、本発明は、ヒト対象の成長速度を高める方法であって、
(a) その対象が、年齢および性を考慮した正常値よりも低値で約1標準偏差、より好ましくは約2標準偏差より低い身長であるかどうかを検出し、
(b) 該対象のDNAがGHRd3および/またはGHRf1ポリペプチドをコードしているかどうかを検出し;そして、
(c) 該対象に、対象の成長速度を高めるGHの有効量を投与する、
事を含む方法を開示する。
【0021】
本発明の任意の方法に従う、GHR蛋白に結合できる、またはGHR経路を介して作用できる物質は、好ましくはGHRが関与する疾患または異常の処置に有効な物質である。或る態様では、該物質または薬剤はGHRアンタゴニストである。別の態様では、該物質または薬剤はGHRアゴニストである。該物質または薬剤は、好ましくはGH組成物である。好ましい態様では、該物質または薬剤はソマトロピンである。別の好ましい態様では、該物質または薬剤はペグビソマントである。
【0022】
好ましくは、当該対象は低身長である。より好ましくは、低身長の当該対象は特発性低身長(ISS)、出生時超低体重(VLBW)、子宮内発育遅延(IUGR)、または胎内発育遅延(SGA)である。さらに好ましくは、当該対象はSGAである。或いは、当該対象はGHRに関与する任意の疾患または異常に罹患している。
【0023】
好ましい態様では、このGHRd3アレレは該薬剤に対する正の応答の低下に相関する(GHRf1アレレを持つ対象と比較して)。別の好ましい態様では、このGHRf1アレレは該薬剤に対する正の応答の増大に相関する(GHRd3アレレを持つ対象と比較して)。
【0024】
好ましくは、ヒト対象を処置する該方法は、GHRd3アレレについてホモ接合またはヘテロ接合の対象に、GHRf1アレレについてホモ接合である他は同一の対象に投与されるであろう有効用量より多い有効用量の物質または薬剤を投与することを含む。或いは、ヒト対象を処置する該方法は、GHRd3アレレについてホモ接合の対象に、GHRf1アレレについてホモ接合またはヘテロ接合である他は同一の対象に投与されるであろう有効用量より多い有効用量の物質または薬剤を投与することを含む。
【0025】
好ましい側面では、該物質はGH分子である。好ましくは、対象に投与されるGHの有効量は約0.001mg/kg/日および約0.2mg/kg/日の間;より好ましくは、GHの有効量は約0.01mg/kg/日および約0.1mg/kg/日の間である。別の側面では、対象に投与されるGHの有効量は少なくとも約0.2mg/kg/週である。別の側面では、GHの有効量は少なくとも約0.25mg/kg/週である。別の側面では、GHの有効量は少なくとも約0.3mg/kg/週である。好ましくはこのGHは1日に1回投与される。好ましくはこのGHは皮下注射によって投与する。最も好ましくはこの成長ホルモンは約7.4ないし7.8のpHに調合する。
【0026】
本発明の別の側面は、対象からDNA試料を取得し;そのDNA試料が、該薬剤に対する正の応答の増大に関連するGHRf1アレレを含むかどうか、そして/または、そのDNA試料が、該薬剤に対する正の応答の低下に関連するGHRd3アレレを含むかどうかを決定し;そして、そのDNA試料が、該薬剤に対する正の応答の増大に関連するGHRf1アレレを含む場合、そして/または、そのDNA試料が、該薬剤に対する正の応答の低下に関連するGHRd3アレレを欠失する場合には、該対象にその薬剤の有効量を投与することを含む、薬剤の使用方法に関するものである。
【0027】
既に述べたように、この方法は、その対象において、エクソン3に1またはそれ以上の核酸の欠失、挿入もしくは置換を有する、または最も好ましくはエクソン3の実質上全体を欠失しているGHRアレレの存在または不在を決定することを含む。該薬剤に対する正の応答の低下に関連するGHR遺伝子のアレレは、エクソン3を欠失するGHRアレレ、好ましくはGHRd3アレレである。該薬剤に対する正の応答の増大に関連するGHR遺伝子のアレレは、好ましくはエクソン3を含むGHRアレレ(GHRf1)である。
【0028】
本発明はさらに、薬剤の治験のための方法であって、
a) 個体集団に薬剤を投与し;そして、
b) その集団から、そのDNAがGHRd3ポリペプチドイソ型をコードしている個体の第一亜集団、および、そのDNAがGHRd3ポリペプチドイソ型をコードしていない個体の第二亜集団を特定する、
事を含む方法に関連する。
【0029】
或いは、本発明は薬剤の治験のための方法であって、
a) 個体集団に薬剤を投与し;そして、
b) その集団から、そのDNAがGHRf1ポリペプチドイソ型をコードしている個体の第一亜集団、および、そのDNAがGHRf1ポリペプチドイソ型をコードしていない個体の第二亜集団を特定する、
事を含む方法に関連する。
【0030】
この方法はさらに、(a) 前記の第一個体亜集団において該薬剤に対する応答を評価し;そして/または(b) 前記の第二個体亜集団において該薬剤に対する応答を評価する、事を含む。好ましくは、該薬剤に対する応答を、前記第一および第二個体亜集団の両者において評価する。好ましくはこの応答を、前記の第一および第二個体亜集団において別々に評価する。該薬剤に対する応答の評価は、好ましくは対象の身長の変化を測定することを含む。
【0031】
本発明はさらに、薬剤の治験のための方法であって、
(a) そのDNAがGHRd3ポリペプチドをコードしている個体の第一集団、および、そのDNAがGHRd3ポリペプチドをコードしていない個体の第二集団を特定し;そして、
(b) 前記の第一および/または第二個体集団の個体に薬剤を投与する、
事を含む方法に関連する。
【0032】
或る態様では、該薬剤を、前記第一集団の個体には投与するが前記第二集団の個体には投与しない。或る態様では、該薬剤を、前記第二集団の個体には投与するが前記第一集団の個体には投与しない。別の態様では、該薬剤を前記第一および第二集団両方の個体に投与する。
【0033】
或いは、本発明は薬剤の治験のための方法であって、
(a) そのDNAがGHRf1ポリペプチドをコードしている個体の第一集団、および、そのDNAがGHRf1ポリペプチドをコードしていない個体の第二集団を特定し;そして、
(b) 前記の第一および/または第二個体集団の個体に薬剤を投与する、
事を含む方法に関連する。
【0034】
或る態様では、該薬剤を、前記第一集団の個体には投与するが前記第二集団の個体には投与しない。或る態様では、該薬剤を、前記第二集団の個体には投与するが前記第一集団の個体には投与しない。別の態様では、該薬剤を前記第一および第二集団両方の個体に投与する。
【0035】
前述の方法による薬剤は、好ましくは低身長、肥満、感染症、または糖尿病;乳汁産生、糖尿病誘発、脂肪分解および蛋白同化作用に関連し得る末端肥大症または巨人症の状態;ナトリウムおよび水分貯留に関連する状態;メタボリックシンドロム;気分および睡眠障害、癌、心臓病および高血圧の処置のための薬剤である。
【0036】
本発明の好ましい側面は、
a) 個体集団に薬剤、好ましくはヒト対象の成長速度を増大させ得る薬剤を投与し;そして、
b) その集団から、そのDNAがGHRd3ポリペプチドイソ型をコードしている個体の第一亜集団、および、そのDNAがGHRd3ポリペプチドイソ型をコードしていない個体の第二亜集団を特定する、
事を含む、薬剤、好ましくはヒト対象の成長速度を増大させ得る薬剤の治験方法に関連する。
【0037】
本発明の別の好ましい側面は、
a) 個体集団に薬剤、好ましくはヒト対象の成長速度を増大させ得る薬剤を投与し;そして、
b) その集団から、そのDNAがGHRf1ポリペプチドイソ型をコードしている個体の第一亜集団、および、そのDNAがGHRf1ポリペプチドイソ型をコードしていない個体の第二亜集団を特定する、
事を含む、薬剤、好ましくはヒト対象の成長速度を増大させ得る薬剤の治験方法に関連する。
【0038】
好ましくは、当該対象は低身長である。より好ましくは、低身長の当該対象は特発性低身長(ISS)、出生時超低体重(VLBW)、子宮内発育遅延(IUGR)、または胎内発育遅延(SGA)である。さらに好ましくは、当該対象はSGAである。或いは、当該対象はGHRに関与する任意の疾患または異常に罹患している。或る態様では、該薬剤を、前記第一集団の個体には投与するが前記第二集団の個体には投与しない。或る態様では、該薬剤を、前記第二集団の個体には投与するが前記第一集団の個体には投与しない。別の態様では、該薬剤を前記第一および第二集団両方の個体に投与する。
【0039】
ヒト対象の成長速度を増大させ得る、またはISS、VLBW、IUGRまたはSGAを改善できる薬剤に対する応答の評価は、個体の身長の変化を評価することを含む。ヒト対象の成長速度の増大は、その対象が、少なくともGHで処置されたGH欠乏対象(即ち、GHDと診断された対象)と同じ最終身長を獲得する状況を包含するのみならず、その対象が、GHで処置されたGH欠乏対象と同じ成長速度で身長が追いつく、または目標身長範囲内の成人身長、即ち両親の中間の目標身長によって決定される、遺伝学的な可能性に合致する最終身長を達成する状況をも意味する。
【0040】
本発明に係る任意の方法の或る側面では、対象のDNAが特定のGHRポリペプチドイソ型をコードしているかどうかを決定する工程を、GHR核酸分子に特異結合する核酸分子を用いて実施できる。別の側面では、対象のDNAがGHRポリペプチドイソ型をコードしているかどうかを決定する工程を、GHR核酸分子に特異結合する核酸分子を用いて実施する。好ましくは本発明方法は、或る個体のDNAがGHRd3蛋白またはポリペプチドをコードしているかどうかを決定することを含む。或いは本発明方法は、或る個体のDNAがGHRf1蛋白またはポリペプチドをコードしているかどうかを決定することを含む。しかしながら本発明方法は、或る個体のDNAがGHRd3およびGHRf1蛋白またはポリペプチドをコードしているかどうかを決定することを含み得る。したがってこれは、或る個体のゲノムDNAがGHRd3またはGHRf1アレレを含むかどうか、または、或る個体から得たmRNAがGHRd3またはGHRf1ポリペプチドをコードしているかどうか、または、その対象がGHRd3またはGHRf1ポリペプチドを発現するかどうかを決定することを含み得る。
【0041】
例えば上の態様のいずれかにおいて、或る個体のDNAがGHRd3またはGHRf1ポリペプチドをコードしているかどうかを決定することは、
a) 生体試料を提供し;
b) その生体試料を、
ii) 緊縮条件下でGHRアレレ、好ましくはGHRd3またはGHRf1核酸とハイブリダイズするポリヌクレオチド;または、
iii) GHRアレレ、好ましくはGHRd3またはGHRf1ポリペプチドと選択的に結合する検出可能なポリペプチド、
と接触させ;そして、
c) 該試料内部での該ポリヌクレオチドおよびRNA種の間のハイブリダイゼーションの存在もしくは不在、または該試料内部のポリペプチドへの前記検出可能なポリペプチドの結合の存在もしくは不在を検出する、
事を含む。
【0042】
好ましくは、この生体試料を、緊縮条件下でGHRd3もしくはGHRf1核酸とハイブリダイズするポリヌクレオチドと、またはGHRd3もしくはGHRf1ポリペプチドと選択的に結合する検出可能なポリペプチドと接触させる[ここで、該ハイブリダイゼーションまたは該結合の検出とは、前記GHRd3またはGHRf1がその試料中で発現されることを指す]。
【0043】
好ましくは、このポリヌクレオチドはプライマーであり、プライマー配列を含む増幅生成物の存在の検出によって前記ハイブリダイゼーションを検出する。好ましくは、前記遺伝子型決定工程は、ポリアクリルアミド電気泳動および銀染色における別々のランを含む。好ましくは、前記検出可能なポリペプチドは抗体である。核酸のGHRd3およびGHRf1ポリペプチドの検出は、任意の適当な方法により実施できる。例えば、GHRd3またはGHRf1の細胞外ドメインの血清中レベルを評価できる(例えば、高親和性GH結合蛋白)。GHRd3ゲノムまたはcDNA配列と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーもまた本発明の一部をなし、このプライマーおよびプローブを用いるDNA増幅および検出法もまた同様である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
詳細な説明
先に述べたようにGH活性はGHレセプター(GHR)によって仲介される。2分子のGHRが1分子のGHと相互作用することが示されている(Cunningham et al., (1991) Science 254:821-825;de Vos et al., (1992) Science 255:306-312;Sundstrom et al., (1996) J. Biol. Chem. 271:32197-32203;およびClackson et al., (1998) J. Mol. Biol. 277:1111-1128)。この結合は、GH上にある2個のユニークなGHR結合部位および2個のレセプターの細胞外ドメインにある共通の結合ポケットにおいて起こる。GH分子上の部位1は部位2より高い親和性を持ち、レセプターの二量体化は、GH上の部位1に1個のレセプターが結合し、その後部位2への第二レセプターの動員が起こるというように連続的に起こると考えられる。Cunningham et al(1991、上記)は、レセプター二量体化が、シグナル活性化を導く重要事象であること、そして二量体化がGH結合によって推進される事を提唱している(Ross et al., J. Clin. Endocrinol. & Metabolism (2001)86(4):1716-171723)。リガンド結合時にGHRは速やかにインターナライズされ(Maamra et al., (1999) J. Biol. Chem 274:14791-14798;およびHarding et al., (1996) J. Biol. Chem. 271:6708-6712)、一部が細胞表面へとリサイクルされる(Roupas et al., (1987) Endocrinol. 121:1521-1530)。
【0045】
最近になって、エクソン3の欠失を含むGHRd3と呼ばれるGHRイソ型が発見された(Urbanek M et al., Mol Endocrinol 1992 Feb;6(2):279-87;Godowski et al (1989) PNAS USA 86:8083-8087)。この欠失は、全長GHRf1イソ型またはエクソン3-欠失GHRd3イソ型のいずれかに対応する、エクソン3排除の保持を導くオルタナティブスプライシング事象の結果であると考えられた。GHRd3イソ型の同定は幾つかの相反する結果となった。GHRd3イソ型は組織特異的スプライシングを受け、発現パターンは発生的調節を受けると提唱する報告があり、また別の報告は、GHRd3イソ型は個体に特異的であると提唱した。スプライシングは、メンデル形質として伝達されスプライシングを変化させる遺伝的多形から引き起こされると示唆する報告もある(Stallings-Mann et al., (1996) P.N.A.S. U.S.A. 94:12394-12399)。最後に、Pantel et al. ((2000), J. Biol. Chem. 275(25):18664-18669)はGHR遺伝子座の解析の際、人間においてGHRd3イソ型が、エクソン3に及ぶ2.7kbゲノム欠失を有するGHRアレレから転写されるという事を証明した。Pantelはさらに、GHRf1のみを発現する個体由来のゲノムDNA試料において、2個の隣接するレトロエレメントを同定したが、GHRd3を発現する個体のDNAでは1個のレトロエレメントしか同定されず、これは、エクソン3の欠失が、同じGHRf1アレレ上に位置する2個のレトロエレメント間の相同的組換え事象であることを示唆している。
【0046】
hGHRd3蛋白は、このレセプターの細胞外ドメイン内の22個のアミノ酸が欠失している点で全長hGHR(GHRf1)と異なっている。GHRd3イソ型は安定且つ機能的なGHR蛋白をコードしている(Urbanek et al., (1993) J. Biol. Chem. 268(25):19025-19032)。Urbanek et al. (1993)は、GHRd3イソ型は細胞膜に安定的に組み込まれ、hGHRと同様に効率的にリガンドと結合しこれをインターナライズすると報告したが、GHRf1イソ型との機能的な相違は確認されなかった。
【0047】
本発明は、エクソン3欠失を有する成長ホルモンレセプター(GHR)アレレ(GHRd3)を持つヒト対象が、GHRd3アレレを持たない対象よりもGHR経路を介して作用する物質による処置に対する正の応答が低いという発見に基づいている。特に、GHRd3アレレを持つ対象は、前記GHRd3アレレを持たない対象よりも、組換え成長ホルモン(GH)による処置に対して低い正の応答を示した。組換えGHによる処置の間、ISS、IUGR、VLBWまたはSGAを有しGHRd3を持つ対象は、ISS、IUGR、VLBWまたはSGAを有しGHRd3アレレを持たない対象に比して成長速度の低減があった。より具体的には、SGA対象は約40%の成長速度の低減を示した。
【0048】
実際に、組換えGHによる処置の治験に参加したSGAの子供71名を、通常のGHRエクソン3変異体と、GHによる処置に対する成長速度の応答との関連について調べた。GHRd3アレレは36名の患者に存在し、そのうち9名はGHRd3/d3ホモ接合であり、27名はGHRd3/f1ヘテロ接合であった。年齢、性、rGH用量を調整した後、GHRf1アレレを持つ子供は、rGHで処置した場合、優れた速度で成長することが判明した。成長速度は、1年間の治療の後、GHRd3/d3遺伝子型の子供で9.12+/-0.50 cm/年であったのに比べ、GHRf1/f1遺伝子型の子供では10.13+/-0.38 cm/年、そしてGHRf1/d3遺伝子型の子供では9.56+/-0.27 cm/年であった。この遺伝子型による群は他の医学的および治療特性に関しては同等であった。したがってGHR配列のゲノム変異はrGH有効性における著しい相違に関連している。
【0049】
先に述べたように、本発明は、診断検定、予測検定、およびモニタリング治験が予測(予想)目的のために使用され、それによって個体を処置する、薬理ゲノム学および予測医学の分野に関連する。したがって本発明の或る側面は、生体試料(例えば、血液、血清、細胞、組織)の状況でGHR蛋白および/または核酸の発現を決定するための診断検定であって、それにより個体のGHR応答、特に外因性GH組成物による処置に対する個体の応答の性質を決定することに関連している。この事は、個体が、GHR応答または活性の低下に関連する疾患または異常に罹患しているかどうか、またはそのような疾患を発症する危険性があるかどうかを検出するためにも有用となり得る。GHR活性が関連している疾患または状態は、低身長、肥満、感染症、または糖尿病;乳汁産生、糖尿病誘発、脂肪分解および蛋白同化作用に関連し得る末端肥大症または巨人症の状態;ナトリウムおよび水分貯留に関連する状態;メタボリックシンドロム;気分および睡眠障害、癌、心臓病および高血圧を包含する。本発明はさらに、個体がGHR蛋白活性に関連する異常を発現する危険性があるかどうかを決定する予測(または予想)検定を提供する。例えば、生体試料中のGHRd3およびGHRf1イソ型を検定できる。このような検定を予測または予想目的に使用して、それにより、例えば、対象が遺伝的可能性に合致する最終身長を達成できるような有効量のGHを投与することにより、GHR応答の低下を特徴とする、またはそれに関連する異常の発症前に個体を予防的に処置することができる。別の側面では、本発明は、GHRd3/GHRf1ヘテロ二量体活性を調節する物質の検出方法を提供する。このような物質は、GHR活性が関連する前記状態または異常の処置に有用となり得る。
【0050】
定義
「物質」という語は、本明細書中、化学化合物、化学化合物の混合物、生物学的巨大分子、好ましくはペプチドもしくは蛋白、または細菌、植物、真菌、または動物(特に哺乳動物)細胞もしくは組織といった生体材料から作製される抽出物を指す。
【0051】
本発明の文脈では、薬剤または物質に対する「正の応答」または「正の治療応答」とは、或る疾患または状態に関連する症状の低下を含むと定義できる。例えば、正の応答は、或る物質の投与時の身長または成長速度の増大であってよい。本発明の文脈では、薬剤に対する「負の応答」とは、その薬剤に対する正の応答の欠失、または薬剤投与後に観察される副作用を導くことのいずれかを含むと定義できる。
【0052】
「ポリペプチド」という語は、そのポリマーの長さに拘わらず、アミノ酸のポリマーを指す。したがって、ペプチド、オリゴペプチド、および蛋白がポリペプチドの定義に包含される。この用語はポリペプチドの発現後修飾を特定または排除するものではなく、例えばグリコシル基、アセチル基、燐酸基、脂質基などの共有結合による結合を含むポリペプチドが、ポリペプチドという語に特に包含される。さらに、1またはそれ以上のアミノ酸類似体(例えば天然に存在しないアミノ酸、無関係な生態系でのみ天然に存在するアミノ酸、哺乳動物系由来の修飾アミノ酸などを包含する)を含むポリペプチド、置換された結合を持つポリペプチド、ならびに天然に存在するおよび天然に存在しない、当分野で既知のその他の修飾が、この定義に包含される。
【0053】
「組換えポリペプチド」という語は本明細書中、人工的に設計され、当初の自然環境では連続したポリペプチド配列として見いだされない少なくとも2個のポリペプチド配列を含むポリペプチド、または、組換えポリヌクレオチドから発現されたポリペプチドを指す。
【0054】
「プライマー」という語は、標的ヌクレオチド配列に相補的であってその標的ヌクレオチド配列とハイブリダイズさせるために使用される特定のオリゴヌクレオチド配列を意味する。プライマーは、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼまたは逆転写酵素のいずれかにより触媒されるヌクレオチド多量体化の開始点としての働きをする。
【0055】
「プローブ」という語は、試料中に存在する特異的ポリヌクレオチド配列の特定に使用できる一定の核酸セグメント(またはヌクレオチド類似体セグメント、例えば本明細書に定義のポリヌクレオチド)を意味し、この核酸セグメントは、特定しようとする特異的ポリヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含む。
【0056】
本明細書中使用する「被験試料」とは、目的とする対象から得られる生体試料を指す。例えば被験試料は、体液(例えば血清)、細胞試料、または組織であってよい。
【0057】
「形質」および「表現型」という語は本明細書では互換的に使用し、臨床的に識別可能、検出可能、またはその他の意味で測定可能な生体の性質、例えば疾患の症状または感受性を指す。典型的には「形質」または「表現型」という語は、本明細書においてGHRに作用する物質に対する個体の応答を指すのに使用する。
【0058】
本明細書中使用する「遺伝子型」という語は、個体または試料に存在するアレレの実体を指す。本発明の状況では、遺伝子型とは、好ましくは個体または試料中に存在するアレレの説明を指す。試料または個体を或るアレレについて「遺伝子型決定する」という語は、個体が持つ特定のアレレを決定することを含む。
【0059】
本明細書中使用する「アレレ」という語は、ヌクレオチド配列の変異体を指す。例えば、GHRヌクレオチド配列のアレレはGHRd3およびGHRf1を包含する。
【0060】
本明細書中使用する「イソ型」および「GHRイソ型」とは、GHR遺伝子の少なくとも1個のエクソンによりコードされているポリペプチドを指す。GHRイソ型の例はGHRd3およびGHRf1ポリペプチドを包含する。
【0061】
本明細書中使用する「多形」という語は、異なるゲノムまたは個体間に2またはそれ以上の代替的ゲノム配列またはアレレが存在する事を指す。「多形の」とは、集団内で特定のゲノム配列に2またはそれ以上の変異体が見いだされる状態を指す。「多形部位」とは、変異が存在する遺伝子座である。多形は、1またはそれ以上のヌクレオチドの置換、欠失または挿入を含み得る。一塩基多形は1個の塩基対の変化である。
【0062】
本明細書中使用する「エクソン」とは、成熟RNA生成物中に示される分断化された遺伝子のセグメントを指す。
【0063】
本明細書中使用する「イントロン」とは、成熟RNA生成物中に示されない分断化された遺伝子のセグメントを指す。イントロンは核の一次転写産物の一部であるが、スプライスされてmRNAを生成し、その後これが細胞質に運搬される。
【0064】
本明細書中使用する「成長ホルモン」または「GH」とは、天然配列または変異型の成長ホルモンであって、天然、合成、または組換えの如何に拘わらず任意の供給源から得られるものを指す。例としてヒト成長ホルモン(hGH)(これは、天然またはヒト天然配列を有する組換えGH(例えばGENOTROPIN(登録商標)、ソマトトロピンまたはソマトロピン)である)、および、組換え成長ホルモン(rGH)(これは、組換えDNA技術によって製造される任意のGHまたはGH変異体を指し、ソマトレム、ソマトトロピン、ソマトロピンおよびペグビソマントを包含する)が挙げられるがこれらに限定される訳ではない。GH分子はGHRにおけるアゴニストまたはアンタゴニストであってよい。特別な態様では、GH分子またはその変異体は修飾され、好ましくはPEG化されている。
【0065】
本明細書中使用する「成長ホルモンレセプター」または「GHR」とは、天然配列または変異体型の成長ホルモンレセプターであって、天然、合成、または組換えの如何に拘わらず任意の供給源から得られるものを指す。「GHR」という語は、GHRf1およびGHRd3イソ型を包含する。例には、ヒト天然配列を有する天然または組換えGHRであるヒト成長ホルモンレセプター(hGHR)がある。本明細書中使用する「GHRd3」とは、GHRのエクソン3欠失イソ型を指す。「GHRf1」という語は、エクソン3含有GHRイソ型を指す。GHRd3という語はUrbanek M et al, Mol Endocrinol 1992 Feb;6(2):279-87(これは引用により本明細書の一部とする)に記載のポリペプチドを包含するがこれに限定されない。GHRf1という語はLeung et al., Nature, 330:537-543(1987)(これは引用により本明細書の一部とする)に記載のポリペプチドを包含するがこれに限定されない。
【0066】
「GHR遺伝子」という語は本明細書で使用する場合、任意のGHR蛋白をコードしているゲノム、mRNAおよびcDNA配列を包含し、ゲノムDNAの非翻訳調節領域を包含する。「GHR遺伝子」という語はさらに、GHR遺伝子のアレレ、例えばGHRd3アレレおよびGHRf1アレレを包含する。
【0067】
「緊縮(ストリンジェント)条件下」という語は、プローブが、他の配列に対するよりも検出可能性の点で高い度合いで(例えばバックグラウンドの少なくとも2倍)その標的配列にハイブリダイズする条件を意図する。緊縮条件は配列依存性であり、違った状況では異なる。ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件の緊縮性を制御することにより、プローブに100%相補的な標的配列を同定できる(相同的プロービング)。或いは、より低い程度の類似性が検出されるよう、配列中に若干のミスマッチを許容するように緊縮条件を調節することもできる(ヘテロローガスプロービング)。一般に、プローブは約1000ヌクレオチド未満の長さ、好ましくは500ヌクレオチド未満の長さである。
【0068】
典型的には、緊縮条件は、pH7.0ないし8.3で塩濃度が約1.5M未満のNaイオン、典型的には約0.01ないし1.0MのNaイオン濃度(またはその他の塩)であり、温度が短プローブ(例えば10ないし50ヌクレオチド)に対しては少なくとも約30℃、長プローブ(例えば50ヌクレオチドより長い)に対しては少なくとも約60℃であるような条件である。緊縮条件はさらに、ホルムアミドのような不安定化剤の添加によって達成できる。低緊縮条件の例は、30ないし35%ホルムアミド、1M NaCl、1% SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)より成る緩衝液による37℃でのハイブリダイゼーション、および1xないし2xSSC(20xSSC=3.0M NaCl/0.3Mクエン酸三ナトリウム)中50ないし55℃での洗浄を包含する。中等度緊縮条件の例は、40ないし45%ホルムアミド、1M NaCl、1% SDS中37℃でのハイブリダイゼーション、および0.5xないし1xSSC中55ないし60℃での洗浄を包含する。高緊縮条件の例は、50%ホルムアミド、1M NaCl、1% SDS中37℃でのハイブリダイゼーション、および0.1xSSC中60ないし65℃での洗浄を包含する。ハイブリダイゼーションの持続時間は一般に約24時間未満、通常は約4ないし約12時間である。
【0069】
GHRf1またはGHRd3アレレに対して「特異的」または「特異的に」および「選択的」または「選択的に」という語は、二つのアレレを識別できる抗体または核酸を指す。例えば、GHRf1アレレに特異的な抗体または核酸は、GHRd3アレレとは有意に結合しない。好ましくはこの抗体または核酸の結合比はGHRf1:GHRd3が1000:1である。「有意でない」とは、好ましくは、現在使用されている検出手段ではその結合が検出できないことを意味する。
【0070】
「GHRの関与する疾患または異常」という語は好ましくは、成長ホルモン欠乏症(GHD);成人成長ホルモン欠乏症(aGHD);ターナー症候群;低身長[特に、胎内発育遅延(SGA)、特発性低身長(ISS)、出生時超低体重(VLBW)、および子宮内発育遅延(IUGR)];プラーダー・ヴィリ症候群(PWS);慢性腎不全(CRI);エイズるい痩;加齢;腎不全末期;嚢胞性線維症;勃起不全;HIVリポジストロフィー;線維筋痛症;骨粗鬆症、記憶障害;鬱;クローン病;骨格異形成症;外傷性脳損傷;クモ膜下出血;ヌーナン症候群;ダウン症候群;腎疾患末期(ESRD);骨髄幹細胞レスキュー;メタボリックシンドロム;グルココルチコイドミオパシー;小児のグルココルチコイド処置に起因する低身長;早産児の成長追いつき不良;肥満;感染症;糖尿病;乳汁産生、糖尿病誘発、脂肪分解および蛋白同化作用に関連し得る末端肥大症または巨人症の状態;ナトリウムおよび水分貯留に関連する状態;気分および睡眠障害;癌;心臓病および高血圧より成る群から選ばれる疾患および/または異常を指す。GHRの関与する疾患および異常は、好ましくはGHD、aGHD、SGA、ISS、VLBW、外傷性脳損傷、メタボリックシンドロムおよびヌーナン症候群を包含する。
【0071】
ヒトGHR遺伝子および蛋白
ヒトGHR遺伝子は、5p13-12染色体領域の90kbに跨る単一コピー遺伝子である。これは9個のコード化エクソン(2-10に番号付けされている)および幾つかの翻訳されないエクソンを含んでいる。エクソン2はシグナルペプチドをコードしており、エクソン3ないし7は細胞外ドメインをコードしており、エクソン8は膜貫通ドメインをコードしており、そしてエクソン9および10は細胞質ドメインをコードしている。上に述べたように、hGHRd3蛋白は、このレセプターの細胞外ドメイン内部の22のアミノ酸が欠失している点で肝hGHRと相違している(Godowski et al(1989))。Genbank受理番号AF155912(この配列の内容は引用により本明細書の一部とする)は、GHR遺伝子のエクソン3を取り囲むゲノムDNA領域のヌクレオチド配列を提供している(例えばGHRf1アレレ)。エクソン3ならびにイントロン2および3の一部を含むこの6.8bpフラグメントはさらに、2個の251bpリピートエレメントを含んでいる。これらのリピートエレメントはエクソン3に隣接し、5’および3’リピートエレメントがこのエクソンの577bp上流および1821bp下流に位置する。これらのエレメントは、HERV-Pファミリーに属するヒト内因性レトロウイルス由来の171bpの長い末端反復(LTR)フラグメントで構成されている(Boeke, J. D., and Stoye, J. P. (1997)、Retroviruses(Coffin, J. M., Hughes, S. H., and Varmus, H. E. eds), pp.343-435, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)。LTRの後には中等度反復頻度MER4型配列由来の80bpが続く(Smit, A. F. (1996) Curr. Opin. Genet. Dev. 6, 743-748)。5’および3’リピートと呼ばれる2個の251bp長コピーの配列は99%一致し、このリピートの14、245および246位の3個のヌクレオチドが異なるのみである。特に、Pantel et al (2000)が報告したように、エクソン3の上流に位置するエレメントは14位のシトシンを、そして245位および245位にチミンを持ち、一方エクソン3の下流に位置するエレメントはこれらの位置にグアニン、シトシンおよびアデニンを持つ。さらに、エクソン3に隣接してウイルス起源の他の配列が見いだされている。
【0072】
GHRd3アレレはエクソン3および周囲のイントロン2および3部分の欠失を含む。GHRf1アレレとは異なりGHRd3アレレは、単一の251bp LTRを含み、これはGHRf1アレレ上に同定された3’コピーに対するLTRエレメントの配列と同一である。GHRd3アレレの、除去されているエクソン3領域のゲノムDNA配列がGenbank受理番号AF210633に示されており、この配列の内容は引用により本明細書の一部とする。GHRd3およびGHRf1配列に基づき、GHR核酸またはポリペプチドを検出するための既知の方法を用いて、個体がGHRd3アレレを持っているかどうかを判定することができる。
【0073】
エクソン3の欠失を含むGHRd3蛋白は、このレセプターの細胞外ドメイン内の22のアミノ酸を欠失する点で全長hGHR(GHRf1)と異なっている。したがって既知の任意の方法を用いてGHRd3またはGHRf1蛋白の存在を検出できる。GHRd3およびGHRf1は、ヒトを含む幾つかの種において、血中を循環しGHBPとして機能するGHRの細胞外ドメインを指す、「高親和性成長ホルモン結合蛋白」、「高親和性GHBP」または「GHBP」として、非末端切除型または末端切除型で検出することもできる(Ymer and Herington, (1985) Mol. Cell. Endocrinol. 41:153;Smith and Talamantes, (1988) Endocrinology, 123:1489-1494;Emtner and Roos, Acta Endocrinologica (Copenh.) 122:296-302 (1990))。Baumann et al., J. Clin. Endocrinol. Metab., 62:134-141(1986);EP366710;Herington et al., J. Clin. Invest., 77:1817-1823(1986);Leung et al., Nature, 330:537-543(1987)。血清中の機能的GHBPを測定する様々な方法が存在し、好ましい方法は米国特許第5210017号および本明細書に記載のリガンド仲介免疫機能検定(LIFA)である。
【0074】
診断、治療および薬理遺伝学におけるGHRd3および/またはGHRf1
したがって本発明は、GHRd3アレレについてホモ接合またはヘテロ接合の個体においてGHR応答またはGHR活性の低下を検出および診断する方法を提供する。GHR活性の低下は、例えばGHRのレベル、発現または蛋白活性の低下の結果であり得る。GHRf1アレレについてホモ接合またはヘテロ接合の個体においてGHR応答またはGHR活性の増大を検出および診断する方法もまた提供される。GHR活性の増大または低下の検出は、GHR経路を介して作用する治療薬で処置できる種々の疾患の処置に有用であると予測される。好ましくはこの疾患は、GHRが関与する疾患または異常である。例として、低身長(例えば、好ましくはISS、IUGR、VLBW、またはSGA)、肥満、感染症または糖尿病;乳汁産生、糖尿病誘発、脂肪分解および蛋白同化作用に関連し得る末端肥大症または巨人症の状態;ナトリウムおよび水分貯留に関連する状態;メタボリックシンドロム;気分および睡眠障害、癌、心臓病および高血圧がある。好ましい例は、GHRアゴニストまたはアンタゴニストとして作用する組換えGH組成物のようなGHR蛋白に結合する物質を包含する。
【0075】
好ましい態様では、本発明は、対象が、処置に対する応答の増大もしくは低下、またはGHR活性の増大もしくは低下に関連するGHRアレレを発現するかどうかを決定することを含む。対象がGHRアレレを発現するかどうかの決定は、GHR蛋白または核酸の検出によって実施できる。
【0076】
好ましくは、対象を処置、診断または評価する方法は、対象がGHRd3および/またはGHRf1アレレを発現するかどうかを評価または決定すること、例えば対象がGHRf1アレレについてホモ接合(GHRf1/f1)であるか、GHRd3アレレについてホモ接合(GHRd3/d3)であるか、またはヘテロ接合(GHRd3/f1)であるかを決定することを含む。したがって本発明は、好ましくは、生体試料内部でGHRd3および/またはGHRf1が発現されるかどうかを決定することを含み、その決定は、
a) 該生体試料を、
ii) 緊縮条件下でGHRd3核酸と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドおよび/または緊縮条件下でGHRf1核酸と特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチド;または、
iii) GHRd3ポリペプチドに選択的に結合する検出可能なポリペプチドおよび/またはGHRf1ポリペプチドに選択的に結合する検出可能なポリペプチド、
と接触させ;そして、
b) 該ポリヌクレオチドおよび該試料内部のRNA種の間のハイブリダイゼーションの存在もしくは不在、または該試料内部のポリペプチドへの前記検出可能なポリペプチドの結合の存在もしくは不在を検出する、
事を含む。
【0077】
GHRd3核酸に特異的なポリヌクレオチドとの前記ハイブリダイゼーション、またはGHRd3選択的ポリペプチドの前記結合の検出は、GHRd3アレレまたはイソ型が当該試料内部で発現されていることを示す。同様に、GHRf1核酸に特異的なポリヌクレオチドとの前記ハイブリダイゼーション、またはGHRf1選択的ポリペプチドの前記結合の検出は、GHRf1アレレまたはイソ型が当該試料内部で発現されていることを示す。好ましくはこのポリヌクレオチドはプライマーであり[ここで該ハイブリダイゼーションは、該プライマー配列を含む増幅生成物の存在を検出することによって検出される]、または検出可能なポリペプチドは抗体である。好ましくは、この増幅生成物は、ポリアクリルアミド電気泳動とこれに続くエチジウムブロミドおよび/または銀染色によって検出される。より好ましい態様では、この増幅生成物は、二つの別々のポリアクリルアミド電気泳動[ここで、第一の電気泳動はエチジウムブロミドで染色し、第二の電気泳動は銀染色によって染色する]によって分析される。
【0078】
生体試料中のGHRd3蛋白または核酸の存在または不在を検出する方法の例は、被検対象から生体試料を取得し、その生体試料を、GHRd3蛋白またはGHRd3蛋白をコードしている核酸(例えばmRNA、ゲノムDNA)を検出できる化合物または物質と接触させ、該生体試料中のGHRd3蛋白または核酸の存在を検出する事を含む。GHRd3 mRNAまたはゲノムDNAを検出するための好ましい物質は、GHRd3 mRNAまたはゲノムDNAとハイブリダイズできる標識化核酸プローブである。この核酸プローブは、例えばヒト核酸またはその一部であってよく、例えば少なくとも15、30、50、100、250または500ヌクレオチド長であって、緊縮条件下でGHRd3 mRNAまたはゲノムDNAと特異的にハイブリダイズするに充分なオリゴヌクレオチドである。本発明に係る診断検定における使用のための他の好適なプローブは本明細書に記載する。
【0079】
同様に、生体試料中のGHRf1蛋白または核酸の存在または不在を検出する方法の例は、被検対象から生体試料を取得し、その生体試料を、GHRf1蛋白またはGHRf1蛋白をコードしている核酸(例えばmRNA、ゲノムDNA)を検出できる化合物または物質と接触させ、該生体試料中のGHRf1蛋白または核酸の存在を検出する事を含む。GHRf1 mRNAまたはゲノムDNAを検出するための好ましい物質は、GHRf1 mRNAまたはゲノムDNAとハイブリダイズできる標識化核酸プローブである。この核酸プローブは、例えばヒト核酸またはその一部であってよく、例えば少なくとも15、30、50、100、250または500ヌクレオチド長であって、緊縮条件下でGHRf1 mRNAまたはゲノムDNAと特異的にハイブリダイズするに充分なオリゴヌクレオチドである。本発明に係る診断検定における使用のための他の好適なプローブは本明細書に記載する。
【0080】
GHRd3蛋白を検出するための好ましい物質は、GHRd3蛋白と特異的に結合できる抗体である。GHRf1蛋白を検出するための好ましい物質は、GHRf1蛋白と特異的に結合できる抗体である。好ましくはこの抗体は検出可能な標識を持っている。抗体は、ポリクローナル、またはより好ましくはモノクローナルである。無傷の抗体またはそのフラグメント(例えばFabまたはF(ab’)2)を使用できる。プローブまたは抗体に関する「標識化した」という語は、検出され得る物質をプローブまたは抗体に結合させる(即ち物理的に連結させる)事による、そのプローブまたは抗体の直接的標識化と、直接標識化されている別の試薬との反応性による、そのプローブまたは抗体の間接的標識化を包含することを意図している。間接的標識化の例は、蛍光標識化二次抗体と、蛍光標識化ストレプトアビジンで検出され得るよう、ビオチンで末端標識されたDNAプローブを用いた一次抗体の検出を包含する。
【0081】
「生体試料」という語は、対象から単離された組織、細胞および体液、ならびに対象の内部に存在する組織、細胞および液体の包含を意図する。即ち、本発明に係る検出法を使用して、生体試料中の候補mRNA、蛋白、またはゲノムDNAをインビトロおよびインビボで検出できる。例えば、候補mRNAのインビトロ検出法は、ノーザンハイブリダイゼーションおよびin situハイブリダイゼーションを包含する。候補蛋白のインビトロ検出法は、酵素結合免疫吸着検定(ELISA)、ウェスタンブロット、免疫沈降および免疫蛍光法を包含する。候補ゲノムDNAのインビトロ検出法はサザンハイブリダイゼーションを包含する。さらに、GHRd3またはGHRf1蛋白のインビボ検出法は、対象に標識化抗抗体を導入することを包含する。例えば抗体を、対象中でのその存在および位置が標準的画像技術により検出できる放射性マーカーで標識することができる。
【0082】
或る態様では、この生体試料は被検対象由来の蛋白分子を含有する。或いはこの生体試料は、被検対象由来のmRNAまたは被検対象由来のゲノムDNA分子を含有する。好ましい生体試料は、対象から常套手段により単離された血清試料である。
【0083】
本発明はさらに、生体試料中のGHRd3および/またはGHRf1蛋白、mRNA、またはゲノムDNAの存在を検出するためのキットを包含する。例えばこのキットは、生体試料中のGHRd3蛋白またはmRNAを検出できる標識化化合物または物質、および/または生体試料中のGHRf1蛋白またはmRNAを検出できる標識化化合物または物質;試料中のGHRd3および/またはGHRf1蛋白またはmRNAの量を決定するための手段;ならびに試料中のGHRd3および/またはGHRf1蛋白、mRNA、またはゲノムDNAの量を標準と比較するための手段を含み得る。この化合物または物質は適当な容器に包装することができる。このキットはさらに、GHRd3および/またはGHRf1蛋白または核酸を検出するキットを使用するための取扱説明書を含み得る。
【0084】
最も好ましくは、本明細書に記載の検定、例えば前記診断検定または以下の検定は、GHR応答の低下を有するまたはそれを発現する危険性のある対象の同定に利用できる。特に、GHR応答低下を有するまたはそれを発現する危険性があるものとして、GHRd3ホモ接合またはヘテロ接合の対象を同定する。別の側面では、本明細書に記載の診断法を利用して、異常な、またはより具体的には低下したGHRのレベル、発現または活性に関連する疾患、異常または形質を有するまたはそれを発現する危険性のある対象を同定できる。例えば本明細書に記載の検定、例えば前記診断検定または以下の検定を利用して、GHRのレベル、発現または活性の低下に関連する形質を有するまたはそれを発現する危険性のある対象を同定できる。別の例では、本明細書に記載の検定を利用して、GHRのレベル、発現または活性の低下に関連する形質を有するまたはそれを発現する危険性のある対象を同定できる。先に述べたように、GHRf1/f1ホモ接合体およびGHRf1/d3ヘテロ接合体は、GHRd3/d3ホモ接合体に比較して、増大したGHR応答またはGHR活性を有すると予想される。同様に、GHRf1/f1ホモ接合体は、GHRf1/d3ヘテロ接合体に比較して、増大したGHR応答またはGHR活性を有すると予想される。
【0085】
本明細書に記載の予測検定を使用して、或る疾患または異常を処置するためにGHR経路を介して作用する物質を対象に投与すべきかどうか、そして/またはいかなる投与方法で投与すべきかを決定することができる。したがって本発明は、GHR経路を介して作用する物質によって対象が効果的に処置できるかどうかを決定するための方法を提供し、その方法においては、被験試料を取得し、GHRd3および/またはGHRf1蛋白または核酸の発現または活性を検出する。場合によってはGHRf1蛋白または核酸の発現または活性のみを検出する。或いはGHRd3蛋白または核酸の発現または活性のみを検出する。GHRd3およびGHRf1蛋白または核酸の発現または活性を両方検出する事もできる。上に述べたように、GHRd3蛋白または核酸を示す対象は、GHRd3蛋白または核酸を示さない対象に比較して、該物質に対する正の応答が低下していると予想される。
【0086】
主に、GHR仲介経路を介して作用する物質の投与を、該物質に対する高いまたは低い応答性を持つ対象に適合させ得るという理由により、個体におけるGHR活性の低下に対する感受性の検出は極めて重要である。該物質はGHR蛋白に対し、必ずしも直接作用する必要はなく、GHR蛋白の上流に作用、例えば最終的にGHR蛋白と相互作用する別の分子に作用してもよい。好ましい態様では、該物質はGHR蛋白に直接作用する物質である。最も好ましくは該物質は、GHR蛋白に結合し、アゴニストまたはアンタゴニストいずれかとして作用する物質である。最も好ましくは該物質は、GHR蛋白を活性化できるGH蛋白またはその変異体、例えばソマトロピンである。別の態様では、該物質は、GHR蛋白に結合できるがこれを活性化しないGH蛋白、例えばペグビソマントである。
【0087】
DNAがGHRd3蛋白および/またはGHRf1蛋白をコードしているかどうかを決定する試験を行う個体からDNA試料を取得する。このDNA試料を分析して、GHRd3配列および/またはGHRf1配列を含むかどうかを判定する。GHRd3蛋白をコードしているDNAは該薬剤による処置に対する正の応答の低下に関連し、GHRd3アレレをコードしているDNAの欠失は、GHRd3個体に比較して、より大きな正の応答に関連する。
【0088】
本発明方法は薬剤の治験の評価および実施にも有用である。したがって本方法は、前記薬剤に正の応答をする第一個体集団、および、前記薬剤に負の応答をする、または第一個体集団に比較して該薬剤に対する正の応答が低下している第二個体集団を同定することを含む。或る態様では、DNA試料が該薬剤による処置に対する正の応答に関連する1またはそれ以上のアレレを含む場合、そして/またはDNA試料が該薬剤による処置に対する負のもしくは低下した正の応答に関連する1またはそれ以上のアレレを欠失する場合、この薬剤を治験において対象に投与することができる。別の態様では、DNA試料が該薬剤による処置に対する負のもしくは低下した正の応答に関連する1またはそれ以上のアレレを含む場合、そして/またはDNA試料が該薬剤による処置に対する正のもしくは増大した正の応答に関連する1またはそれ以上のアレレを欠失する場合、この薬剤を治験において対象に投与することができる。
【0089】
したがって、本発明方法を使用して、薬物治験対象間のGHR応答の差異を考慮することにより、薬物の有効性を評価することができる。所望により、薬物有効性の評価のための治験を、実質上、該薬剤に対して好ましい応答をする傾向のある個体を含む集団に、または、別の集団よりも該薬剤に対して好ましさのより低い応答をする傾向のある個体を含む集団に実施できる。例えば、GH蛋白含有組成物を、GHRd3個体の集団またはGHRf1個体の集団いずれかにおいて評価できる。別の側面では、GH応答低下に罹患している個体を処置するために設計された薬剤を、GHRd3個体の集団において有利に評価することができる。
【0090】
GHRd3およびGHRf1の検出
GHR遺伝子における他の突然変異を、特定核酸のヌクレオチド変化を検出することにより、本発明に従って特定できると考えられる(米国特許第4988617号。引用により本明細書の一部とする)。これに関連して、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH;米国特許第5633365号および米国特許第5665549号。それぞれ引用により本明細書の一部とする)、直接DNA配列決定、PFGE分析、サザンまたはノーザンブロッティング、一本鎖コンホメーション分析(SSCA)、RNアーゼ保護検定、アレレ特異的オリゴヌクレオチド(ASO、例えば米国特許第5639611号)、ドットブロット分析、変性勾配ゲル電気泳動(例えば米国特許第5190856号。引用により本明細書の一部とする)を包含する(但しこれらに限定されない)種々の異なった検定が企図できる。RFLP(例えば米国特許第5324631号。引用により本明細書の一部とする)およびPCR-SSCP。例えば体液中の遺伝子配列を検出および定量する方法が米国特許第5496699号に記載されており、これを引用により本明細書の一部とする。
【0091】
プライマーおよびプローブ
本明細書で定義するプライマーという語は、鋳型依存的方法で新生核酸の合成を開始させることのできる任意の核酸を包含することを意味する。典型的には、プライマーは長さが10ないし20塩基対のオリゴヌクレオチドであるが、より長い配列も使用できる。プライマーは二本鎖または一本鎖の形で提供できるが、一本鎖型が好ましい。プローブはプライマーとして作用することもできるが、別途定義する。プローブは、恐らくプライミングも可能であるが、標的DNAまたはRNAに結合するよう設計されており、増幅反応に使用される必要はない。
【0092】
配列番号3および4は、GHR遺伝子においてエクソン3周囲またはエクソン3の部位を欠失するゲノムDNA配列を示す。GHRf1 cDNA配列を配列番号1に示す。個体における特定のGHRアレレを検出および識別するため、GHRd3およびGHRf1アレレヌクレオチド配列間の任意の相違を本発明方法に利用できる。GHRf1ゲノムDNAまたはcDNA分子を同定するため、エクソン3核酸にハイブリダイズするプライマーを設計できる。GHRd3ゲノムDNAを同定するため、GHRd3アレレのゲノムDNA配列中に発見されたGHR遺伝子のイントロン2および3の接合部に跨るようなプライマーまたはプローブを設計し、それにより、エクソン3を含むGHRf1アレレおよびエクソン3を含まないGHRd3アレレを識別できる。別の例では、エクソン2および4の接合部に跨るプライマーまたはプローブを設計することによりGHRd3 cDNA分子を同定し、それにより、エクソン3を含むGHRf1 cDNA分子およびエクソン3を含まないGHRd3 cDNA分子を識別できる。GHRd3検出に好適なその他のプライマー例は、Pantel et al.(上記)および下記の実施例1に列挙されている。
【0093】
本発明は、本発明方法においてプライマーおよびプローブとして使用するためのポリヌクレオチドを包含する。これらのポリヌクレオチドは、本明細書に記載する任意の配列およびそれに相補的な配列(その相補物)由来の、連続した一つながりのヌクレオチドで構成され、または本質的に構成され、またはそれらを含む。この「連続したつながり」とは、それらの長さを持つ連続したつながりが、特定の配列IDの長さに矛盾しない範囲内で、少なくとも25、35、40、50、70、80、100、250、500または1000ヌクレオチドの長さであってよい。本発明に係るポリヌクレオチドは、目的の標的配列周囲の正確な隣接配列を持つもの(配列表に列挙してある)に限定されない事に留意すべきである。むしろ、この多形を取り囲む隣接配列、または本発明に係るプローブのプライマー(これらはマーカーから、より遠方にある)は、それらの意図する用途に適合する範囲内で延長または短縮でき、本発明はそのような配列を個別的に企図しているという事が理解できるであろう。本明細書で言及するポリヌクレオチドは、それらの意図する用途に適合する任意の長さのものであってよいという事が理解できるであろう。また、連続したつながりの外の隣接領域は、ヒト対象に実際に存在する天然の隣接配列に相同的である必要はない。そのヌクレオチドの意図する用途に適合する任意のヌクレオチド配列の付加を個々に企図できる。好ましいポリヌクレオチドは、配列番号1、3または4に由来する配列およびこれらに相補的な配列の、連続した一つながりのヌクレオチドで構成され、または本質的に構成され、またはそれらを含み得る。この「連続したつながり」とは、少なくとも8、10、12、15、50、70、80、100、250、500または1000ヌクレオチド長であってよい。
【0094】
本発明に係るプローブは、当分野で既知の任意の方法、特に、本明細書に開示された特定の配列またはマーカーが存在するかどうかを試験できる方法のための、開示されている配列から設計できる。好ましいプローブの組は、当分野で既知の任意の方法で、本発明に係るハイブリダイゼーション検定での使用のために、任意の特定検定条件下でそれらが多形の或るアレレには選択的に結合するが、別のアレレには結合しないように設計できる。
【0095】
本発明に係るいかなるポリヌクレオチドも、所望により分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、または化学的手段で検出可能な標識を組み込むことによって標識できる。例えば、有用な標識は、放射性物質、蛍光色素またはビオチンを包含する。好ましくはポリヌクレオチドの3’および5’末端を標識する。プライマーまたはプライマー伸張生成物、例えば増幅されたDNAの、固体支持体への固定化を容易にするため、プライマーを捕捉するための標識を使用することもできる。捕捉標識はプライマーまたはプローブに結合するがこれは、固相試薬の特異的結合成員と結合対を形成する特異的結合成員であってよい(例えばビオチンおよびストレプトアビジン)。故に、ポリヌクレオチドまたはプローブにより担持されている標識の種類に応じて、これらを、標的DNAを捕捉または検出するために使用できる。さらに、本明細書に記載のポリヌクレオチド、プライマーまたはプローブは、これら自身、捕捉標識として働き得ることが理解できるであろう。例えば、固相試薬の結合成員が核酸配列である場合には、それらがプライマーまたはプローブの相補的部分に結合し、それにより固相にそのプライマーまたはプローブを固定できるよう、それらを選択する。ポリヌクレオチドプローブ自身が結合成員として働く場合には、当業者は、そのプローブが標的に相補的でない配列または「尾」を含むという事が理解できるであろう。ポリヌクレオチドプライマー自身が捕捉標識として働く場合には、プライマーの少なくとも一部が、固相上の核酸とハイブリダイズするために遊離状態となっている。DNA標識化技術は当業者に周知である。
【0096】
本発明に係る任意のポリヌクレオチド、プライマーおよびプローブを、都合良く固相に固定化することができる。固体支持体は当業者に既知であり、反応皿のウェル壁、試験管、ポリスチレンビーズ、磁性ビーズ、ニトロセルロース片、膜、ラテックス粒子のような微粒子、ヒツジ(または他の動物の)赤血球、duracyte)などを包含する。固体支持体は最重要ではなく、当業者により選択できる。したがって、ラテックス粒子、微粒子、磁性または非磁性ビーズ、膜、プラスチック管、微量定量ウェルの壁、ガラスもしくはシリコンチップ、ヒツジ(または他の適当な動物の)赤血球およびduracyteは全て好適な例である。固相に核酸を固定化するための好適な方法は、イオン性、疎水性、共有結合的相互作用などを包含する。本明細書で使用する固体支持体とは、不溶性、またはその後の反応により不溶性となり得る任意の材料を指す。固体支持体は、捕捉試薬を引きつけ固定化する固有能力を考慮して選択できる。或いは、固相は、捕捉試薬を引きつけ固定化する能力を有するさらなるレセプターを保持できる。このさらなるレセプターは、捕捉試薬に関して、または捕捉試薬にコンジュゲートした荷電物質に関して逆に荷電した荷電物質を包含する。さらに別の選択枝として、レセプター分子は、固体支持体に固定化される(結合する)、そして特異的結合反応により捕捉試薬を固定化する能力を持つ任意の特異的結合成員であってもよい。レセプター分子は、検定の実行前または検定の実行中に、捕捉試薬を固体支持体材料に間接的に結合させることを可能にする。したがってこの固相は、プラスチック、誘導体化されたプラスチック、磁性または非磁性金属、試験管のガラスまたはシリコン表面、微量定量ウェル、シート、ビーズ、微粒子、チップ、ヒツジ(または他の適当な動物の)赤血球、duracyteおよびその他の当業者が知悉する形状であってよい。本発明に係るポリヌクレオチドは、固体支持体上に個別的に、または少なくとも2、5、8、10、12、15、20、または25の本発明に係る個別ヌクレオチドより成る群で、単一の固体支持体に結合または固定化することができる。さらに、本発明に係るポリヌクレオチドとは別のポリヌクレオチドを、1またはそれ以上の本発明に係るポリヌクレオチドと同じ固体支持体に結合させることもできる。
【0097】
本発明で提供される任意のポリヌクレオチドを、固体支持体の部分重複領域またはランダムな位置に結合させることができる。或いは本発明に係るポリヌクレオチドを、秩序アレイの状態で結合させる[この場合、各ポリヌクレオチドが、他のいかなるポリヌクレオチドの結合部位とも重複していない、固体支持体の明確な領域に結合する]こともできる。好ましくは、このようなポリヌクレオチドの秩序アレイを、「アドレス可能」[この場合、その明確な位置が記録され、検定操作の一部としてアクセス可能である]であるよう設計する。アドレス可能なポリヌクレオチドアレイは、典型的には、基質表面の既知の異なる位置に結合した複数の異なるオリゴヌクレオチドプローブを含む。各ポリヌクレオチド位置の正確な知識により、これらの「アドレス可能な」アレイがハイブリダイゼーション検定において特に有用となる。当分野で既知の任意のアドレス可能アレイ技術を本発明に係るポリヌクレオチドと共に使用することができる。これらのポリヌクレオチドアレイの特別な態様がGenechipとして知られており、米国特許5143854;PCT公開公報WO90/15070および92/10092に一般的に記載されている。これらのアレイは一般に、機械的合成法または、光リソグラフ法と固相オリゴヌクレオチド合成の組み合わせを取り入れた光指向合成法を用いて製造できる(Fodor et al., Science, 251:767-777, 1991)。固体支持体へのオリゴヌクレオチドアレイの固定化は、一般に「超大規模固定化ポリマー合成」(VLSIPS)として認められる技術の開発によって可能となったが、この技術においては、典型的には、チップの固体表面に高密度アレイのプローブを固定化する。VLSIPS技術の例は、米国特許5143854および5412087ならびにPCT公開公報WO90/15070、WO92/10092およびWO95/11995に記載されており、これらは、光指向合成技術のような技術によってオリゴヌクレオチドアレイを生成する方法を記載している。固体支持体に固定化されたヌクレオチドアレイの提供を目指す戦略を設計するにあたり、ハイブリダイゼーションパターンおよび配列情報を最大化すべく、オリゴヌクレオチドアレイをチップ上に配列し提示するさらなる提示戦略が開発された。このような提示戦略の例は、PCT公開公報WO94/12305、WO94/11530、WO97/29212およびWO97/31256に記載されている。
【0098】
鋳型依存増幅法
与えられた鋳型試料に存在するマーカー配列を増幅するため、幾つかの鋳型依存的方法が利用できる。既知の最良の増幅法の一つはポリメラーゼ連鎖反応(PCRと呼称)であり、これは米国特許第4683195、4683202、および4800159号、ならびにInnis et al., PCR Protocols, Academic Press, Inc. San Diego Calif., 1990に詳細に記載されており、これらの各々は引用によりその全体を本明細書の一部とする。
【0099】
簡潔に述べると、PCRでは、マーカー配列の反対の相補鎖上の領域に相補的な2個のプライマー配列を製造する。反応混合物に、DNAポリメラーゼ、例えばTaqポリメラーゼと共に過剰のデオキシヌクレオシド三燐酸を加える。もしマーカー配列が試料に存在すれば、このプライマーはマーカーに結合し、ポリメラーゼが、ヌクレオチドへの添加によりマーカー配列に沿ったプライマーの伸張を惹起する。反応混合物の温度を上下させることにより、伸張したプライマーがマーカーから解離して反応生成物を生成し、過剰のプライマーはマーカーおよび反応生成物と結合し、このプロセスが反復される。
【0100】
増幅されたmRNAを定量するため、逆転写酵素PCR増幅法を実施できる。RNAをcDNAに逆転写する方法は周知であり、Sambrook et al., Molecular Cloning. A Laboratory Manual. 2d Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989に記載されている。逆転写のための別法は、熱安定性のRNA依存性DNAポリメラーゼを利用するものである。これらの方法はWO90/07641に記載されている。ポリメラーゼ連鎖反応の方法論は当分野で周知である。
【0101】
もう一つの増幅法は、リガーゼ連鎖反応である(「LCR」。米国特許第5494810、5484699号、EPO No.320308。各々引用により本明細書の一部とする)。LCRでは、2組の相補的プローブ対を作製すると、標的配列の存在下で、各々の対が標的の反対の相補鎖に結合してそれらが隣接するようになる。リガーゼの存在下ではこの2組のプローブ対が連結して1個の単位を形成する。
【0102】
PCRの場合のように、温度循環により、結合しライゲーションした単位は標的から解離し、しかる後、過剰のプローブ対のライゲーションのための「標的配列」として働く。米国特許第4883750号は、プローブ対を標的配列に結合させるためのLCRに類似の方法を記載している。
【0103】
RNA指向RNAポリメラーゼであるQβ-レプリカーゼを本発明においてさらに別の増幅法として使用できる。この方法では、標的に相補的な領域を持つRNAの複製配列を、RNAポリメラーゼの存在下で試料に添加する。このポリメラーゼは複製配列をコピーし、それが検出される。同様の方法が米国特許第4786600号(引用により本明細書の一部とする)にも記載されており、その方法は、RNA指向RNAポリメラーゼによる相補的一本鎖分子の合成のための鋳型として働くことのできる組換えRNA分子に関するものである。そのようにして形成された生成物分子は、元の組換えRNA分子のさらなるコピーを合成する鋳型として働くこともできる。
【0104】
制限エンドヌクレアーゼおよびリガーゼを用いて、制限部位の片方の鎖にヌクレオチド5’-[α-チオ]-三燐酸を含む標的分子の増幅を達成する等温増幅もまた、本発明における核酸の増幅に有用となり得る(Walker et al., (1992), Proc. Nat’l Acad Sci. USA, 89:392-396;米国特許第5270184号。引用により本明細書の一部とする)。米国特許第5747255号(引用により本明細書の一部とする)は、ポリヌクレオチド検出のための、開裂可能なオリゴヌクレオチドを用いた等温増幅を記載している。そこに記載された方法では、互いに相補的な配列を含む、そして、その連結を含み完全にマッチングした二本鎖が形成された場合には常に開裂する、切れやすい連結を少なくとも1個含む、別々のオリゴヌクレオチド集団が提供される。標的ポリヌクレオチドが第一オリゴヌクレオチドに接触すると開裂が起こって第一のフラグメントが生成し、これが第二のオリゴヌクレオチドとハイブリダイズできる。こうしたハイブリダイゼーションの際、第二のオリゴヌクレオチドが開裂して第二のフラグメントを放出し、次いでこれが標的ポリヌクレオチドと同様の方法で第一のオリゴヌクレオチドとハイブリダイズできる。
【0105】
鎖置換増幅(SDA)は、多数回の鎖置換および合成、即ちニック翻訳を含む、核酸の等温増幅を実施するもう一つの方法である(例えば、米国特許第5744311;5733752;5733733;5712124号)。鎖修復反応(RCR)と呼ばれる類似の方法は、増幅の標的となる領域全体にわたる幾つかのプローブのアニーリング、およびこれに続く、4種の塩基のうち2種類だけが存在する修復反応を含む。他の2種類の塩基は、検出を容易にするためビオチン化誘導体として添加できる。同様のアプローチがSDAで用いられる。標的特異的配列は周期的プローブ反応(CPR)を用いて検出することもできる。CPRでは、非特異的DNAの3’および5’配列ならびに特異的RNAの中間配列を持つプローブを、試料中に存在するDNAにハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーションの際、この反応をRNアーゼHで処理し、このプローブの生成物を、消化後に放出される明確な生成物として特定する。元の鋳型を別循環のプローブとアニーリングし、反応を反復する。
【0106】
GB出願第2202328号およびPCT出願第PCT/US89/01025号(それぞれ引用によりその全体を本明細書の一部とする)に記載のさらに別の増幅法を、本発明に従って使用できる。前者の出願では、「修飾された」プライマーを、PCRに似た鋳型および酵素依存合成で使用する。プライマーを、捕捉部分(例えばビオチン)および/または検出部分(例えば酵素)で標識することによって修飾できる。後者の出願では、過剰の標識化プローブを試料に添加する。標的配列の存在下では、このプローブが結合し、触媒により開裂する。開裂後、標的配列が無傷で放出され、過剰のプローブと結合する。標識化プローブの開裂が標的配列の存在を示す。
【0107】
他の核酸増幅法には、核酸配列型増幅(NASBA)および3SRを包含する転写型増幅系(TAS)がある(Kwok et al., (1989) Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA, 86:1173;およびWO88/10315(引用によりその全体を本明細書の一部とする))。NASBAでは、標準的フェノール/クロロホルム抽出、臨床試料の熱変性、溶解緩衝液ならびにDNAおよびRNAまたはRNAの塩化グアニジニウム抽出物の単離のためのミニスピンカラムによる処理によって増幅用核酸を調製できる。これらの増幅技術は、標的特異的配列を持つプライマーをアニーリングすることを含む。重合化の後、DNA/RNAハイブリッドをRNアーゼHで消化し、一方、二本鎖DNA分子を再度熱変性させる。いずれの場合においても、第二の標的特異的プライマーを加え重合化することにより、一本鎖DNAが完全に二本鎖化される。次いでこの二本鎖DNA分子をT7またはSP6といったRNAポリメラーゼにより複数回転写する。周期的等温反応では、RNAを一本鎖DNAに逆転写し、次にこれを二本鎖DNAに変換し、その後T7またはSP6といったRNAポリメラーゼで再度転写する。末端切除されているにせよ完全なものであるにせよ、得られる生成物は標的特異的配列を示す。
【0108】
Davey et al., EPO No.329822(引用によりその全体を本明細書の一部とする)は、一本鎖RNA(「ssRNA」)、ssDNA;および二本鎖DNA(dsDNA)を循環的に合成することを含む核酸増幅プロセスを開示しており、このプロセスは本発明に従って使用できる。ssRNAは第一のプライマーオリゴヌクレオチドのための鋳型であり、これが逆転写酵素(RNA依存DNAポリメラーゼ)により伸張される。次に、得られたDNA:RNA二本鎖から、リボヌクレアーゼH(RNアーゼH。DNAまたはRNAのいずれかと二本鎖を形成しているRNAに特異的なRNアーゼ)の作用によってこのRNAを除去する。得られたssDNAは第二のプライマーのための鋳型であり、この第二プライマーは、RNAポリメラーゼプロモーター(例えばT7 RNAポリメラーゼ)5’の配列をも含んでいる。このプライマーを次にDNAポリメラーゼ(例えば、E.coli DNAポリメラーゼIの大「Klenow」フラグメント)で伸張し、元のRNAのプライマー間の配列と同一配列を有し、さらに一端にプロモーター配列を有する、二本鎖DNA(「dsDNA」)分子を得る。このプロモーター配列を使用して、適当なRNAポリメラーゼにより、当該DNAのRNAコピーを数多く作製できる。次いでこれらのコピーを再び循環内に入れ、極めて迅速な増幅を導くことができる。酵素を適切に選択する事により、この増幅を、各サイクルで酵素を添加せずに等温で実施することができる。このプロセスの循環的性質のため、出発配列はDNAまたはRNAいずれの形態にも選択できる。
【0109】
PCT出願WO89/06700(引用によりその全体を本明細書の一部とする)は、標的一本鎖DNA(「ssDNA」)へのプロモーター/プライマー配列のハイブリダイゼーション、およびこれに続く該配列の多数のRNAコピーの転写に基づく核酸配列増幅スキームを開示している。このスキームは循環的でなく、即ち、生成するRNA転写物から新しい鋳型が生産されない。その他の増幅法は「RACE」および「一側PCR」を包含する(Frohman, PCR Protocols. A Guide To Methods And Applications, Academic Press, N.Y., 1990;およびO’hara et al., (1989) Proc. Nat’l Acad. Sci. USA, 86:5673-5677(それぞれ引用によりその全体を本明細書の一部とする)。
【0110】
得られる「ジ-オリゴヌクレオチド」の配列を有する核酸の存在下での、2個(またはそれ以上)のオリゴヌクレオチドのライゲーションに基づく方法(それによりこのジ-オリゴヌクレオチドが増幅される)もまた本発明に係る増幅工程で使用できる(Wu et al., (1989) Genomics, 4:560(引用により本明細書の一部とする))。
【0111】
サザン/ノーザンブロッティング
ブロッティング技術は当業者に周知である。サザンブロッティングは標的にDNAの使用を含むのに対してノーザンブロッティングは標的にRNAの使用を含む。それぞれが異なる種類の情報を提供するが、cDNAブロッティングは多くの面でブロッティングまたはRNA種に類似している。
【0112】
簡潔に述べると、プローブを用いて、適当なマトリックス、しばしばニトロセルロースフィルター上に固定化されたDNAまたはRNA種を標的化する。分析を容易にするため、異なる種は空間的に分離されているべきである。これはしばしば核酸種のゲル電気泳動およびその後のフィルター上への「ブロッティング」によって達成する。
【0113】
続いて、ブロッティングされた標的を、変性と再ハイブリダイゼーションを促進する条件下でプローブ(通常、標識されている)と共にインキュベートする。このプローブは標的と塩基対を形成するよう設計されているため、再生条件下で標的配列の一部に結合する。次いで、結合していないプローブを除去し、上記のように検出を達成する。
【0114】
分離方法
特異的増幅が起こったかどうかを判定する目的のため、いろいろな段階で、鋳型および過剰のプライマーから増幅生成物を分離することが通常望ましい。或る態様では、増幅生成物を、アガロース、アガロース-アクリルアミドまたはポリアクリルアミドゲル電気泳動により標準法を用いて分離する。Sambrook et al., 1989を参照されたい。
【0115】
或いは、分離を行うのにクロマトグラフィー技術が使用できる。本発明で使用できる多種類のクロマトグラフィー(吸着、分離、イオン交換および分子篩)があり、これらを使用するための、カラム、ペーパー、薄層およびガスクロマトグラフィーを包含する多くの特化された技術がある(Freifelder, Physical Biochemistry Applications to Biochemistry and Molecular Biology, 2nd ed. Wm. Freeman and Co., New York, N.Y., 1982)。
【0116】
検出方法
マーカー配列の増幅を確認するため、生成物を視覚化することができる。一つの典型的な視覚化法は、ゲルをエチジウムブロミドで染色し、UV光の下に視覚化することを含む。或いは、増幅生成物が放射性または蛍光標識ヌクレオチドで全体的に標識されている場合、分離後に増幅生成物をX線フィルムに暴露するか、適当な刺激スペクトルの下に視覚化することができる。
【0117】
或る態様では、視覚化を間接的に達成する。増幅生成物を分離した後、標識された核酸プローブを増幅されたマーカー配列と接触させる。プローブは好ましくは発色団にコンジュゲートさせるが、放射標識してもよい。別の態様では、プローブを結合相手、例えば抗体またはビオチンにコンジュゲートさせ、結合相手の他の成員が、検出され得る部分を担持している。
【0118】
或る態様では、検出は標識化プローブによる。関係する技術は当業者に周知であり、分子プロトコルに関する多くの標準的書物に見いだすことができる。Sambrook et al., 1989を参照されたい。例えば、発色団または放射標識プローブまたはプライマーが、増幅中または増幅後に標的を特定する。
【0119】
前記の事柄の一例が、米国特許第5279721号(引用により本明細書の一部とする)に記載されており、これは、核酸の自動電気泳動および移動のための装置および方法を開示している。この装置は、ゲルを外部から操作せずに電気泳動およびブロッティングする事が可能であり、本発明方法の実施に理想的に適合している。
【0120】
さらに、上記の増幅生成物を、標準的配列分析技術を用いる配列分析に付して、特別な種類の変異を同定することができる。或る方法では、最適な配列決定のために設計されたプライマーの組を用いる配列分析により、徹底的な遺伝子分析がなされる(Pignon et al., (1994) Hum. Mutat., 3:126-132, 1994)。本発明は、任意のまたは全てのこのような種類の分析を使用する方法を提供する。本明細書に開示する配列を使用して、GHR遺伝子全体の配列増幅を可能にするオリゴヌクレオチドプライマーを設計し、次いでそれを直接配列決定により分析することができる。
【0121】
当分野で既知の様々な配列決定反応のいずれかを使用して、試料の配列を、対応する野生型(対照)配列と比較することにより、GHR遺伝子を直接配列決定することができる。配列決定反応の例は、Maxam and Gilbert((1977) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74:560)またはSanger((1977) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74:5463)により開発された技術に基づくものを包含する。診断検定を実施する場合に種々の自動化配列決定法のうち任意の方法を利用できるということも考えられる。
【0122】
キットの構成成分
GHRおよびその変異体を検出および配列決定するために必要な必須材料および試薬を全てキットにまとめることができる。これは一般に、前もって選択されたプライマーおよびプローブを含む。様々なポリメラーゼ(RT、Taq、Sequenase(登録商標)等)を包含する、核酸の増幅に好適な酵素、デオキシヌクレオチドおよび増幅に必要な反応混合物を提供するための緩衝液もまた包含され得る。このようなキットは一般に、適当な手段により、個々の試薬および酵素ならびに各プライマーまたはプローブの各々を入れる別個の容器をも含む。
【0123】
相対的定量的RT-PCR(登録商標)のための設計および理論的考察
RNAからcDNAへの逆転写(RT)およびこれに続く相対的定量的PCR(RT-PCR)を用いて、対照から単離した特定のmRNA種の相対濃度を決定することができる。特定のmRNA種の濃度が異なるということを確定することにより、その特定mRNA種をコードしている遺伝子が異なって発現されるということが示される。例えば、GHR活性の低下に罹患している疑いのある、または好ましくは低身長、肥満、感染症、または糖尿病;乳汁産生、糖尿病誘発、脂肪分解および蛋白同化作用に関連し得る末端肥大症または巨人症の状態;ナトリウムおよび水分貯留に関連する状態;メタボリックシンドロム;気分および睡眠障害、癌、心臓病および高血圧に罹患している対象において、GHR経路を介して作用する物質で処置されるべき対象中のGHRd3およびGHRf1 mRNAの相対レベルの調査に、定量的PCRが有用である。
【0124】
PCRでは、増幅された標的DNA分子の数が、何らかの試薬が制約されるまで、反応サイクル毎に2に近い係数で増加する。その後、増幅率は次第に低下し、サイクル間に増幅される標的の増加が無くなるに至る。サイクル数をX軸に、そして増幅された標的DNA濃度の対数をY軸にとるグラフをプロットすると、プロットされた点をつなぐことにより特徴的な形状の曲線が形成される。最初のサイクルから始まって、この線の傾きは正であり一定である。これをこの曲線の直線部分と言う。試薬が制約され始めると線の傾きは低下し始め、最終的にゼロとなる。この時点で、増幅された標的DNAの濃度は或る一定の値に漸近的となる。これをこの曲線のプラトー部分と言う。
【0125】
PCR増幅の直線部分における標的DNAの濃度は、反応開始前の標的の出発濃度に直接比例する。同数のサイクルを完了しその直線範囲にあるPCR反応における標的DNAの増幅生成物の濃度を決定することにより、最初のDNA混合物中の特定標的配列の相対濃度を決定することが可能である。DNA混合物が異なる組織または細胞から単離されたRNAから合成されたcDNAである場合、標的配列の誘導された特定mRNAの相対量を、それぞれの組織または細胞について決定できる。PCR生成物濃度と相対的mRNA量の間のこの直接的比例関係は、PCR反応の直線範囲でのみ当てはまる。
曲線のプラトー部分における標的DNAの最終濃度は反応混合物における試薬の利用可能性によって決定され、標的DNAの始発濃度に依存しない。故に、RNA集団を収集するためにRT-PCRによりmRNA種の相対量を決定する前に満足すべき第一の条件は、増幅されたPCR生成物の濃度を、そのPCR反応が曲線の直線部分にある時にサンプリングすることである。
【0126】
特定のmRNA種の相対量をうまく決定するためのRT-PCR実験のために満足すべき第二の条件は、増幅可能なcDNAの相対濃度を何らかの独立した標準に対して正規化せねばならないという事である。RT-PCR実験の目的は、試料中の全mRNA種の平均量に対する特定のmRNA種の量を決定することである。下記の実験では、GHRf1のmRNAを、GHRd3 mRNAの相対量を比較する標準として使用できる。
【0127】
殆どの競合的PCRのプロトコルは、標的とほぼ同じくらい多量にある内部PCR標準を使用する。この戦略は、そのPCR増幅の生成物が直線相の間にサンプリングされる場合に有効である。反応がプラトー相に近づきつつある時に生成物がサンプリングされると、より少量の生成物が相対的に過剰に示される。差次的発現についてRNA試料を調べる場合のような、多くの異なるRNA試料について行われる相対量の比較は、RNAの相対量の差が実際よりも少なく見えるように歪曲されるようになる。これは、内部標準が標的よりずっと多量にあるならば、重要な問題ではない。内部標準が標的より多量にある場合、RNA試料の間で直接一次比較ができる。
【0128】
上の論考は、臨床的に誘導された材料のためのRT-PCRについての理論的考察を表現している。臨床試料に内包される問題は、それが可変的な量であること(正規化を不確かにする)、そしてそれが可変的品質であること(信頼できる内部対照の、好ましくは標的よりも大量の同時増幅が必要となる)である。これらの問題はいずれも、RT-PCRが内部標準を伴う相対的定量的RT-PCRとして実行される(この場合、内部標準は、標的cDNAフラグメントよりも大きな増幅可能cDNAフラグメントであり、その内部標準をコードしているmRNAの量は、標的をコードしているmRNAのほぼ100倍である)ならば、克服できる。この検定は、それぞれのmRNA種の絶対量でなく相対量を測定する。
【0129】
外部標準プロトコルを用いる、より常套的な相対的定量的RT-PCR検定を用いて、別の研究を実施することもできる。これらの検定は、増幅曲線の直線部分でPCR生成物をサンプリングする。サンプリングに最適なPCRサイクルの数は、各標的cDNAフラグメントに対して実験的に決定せねばならない。さらに、種々の組織試料から単離される各RNA集団の逆転写生成物を、等濃度の増幅可能cDNAについて注意深く正規化せねばならない。この検定はmRNAの絶対量を測定するものであるため、この配慮は極めて重要である。mRNAの絶対量は、正規化試料においてのみ差次的遺伝子発現の尺度として使用できる。増幅曲線の直線範囲を実験的に決定しcDNA調製を正規化することは冗長で時間のかかるプロセスであるが、結果実現するRT-PCR検定は、内部標準を用いる相対的定量的RT-PCR検定から誘導されるものより優れている。
【0130】
この有利性の一つの理由は、内部標準/競合物質が無いと、全ての試薬が増幅曲線の直線範囲で単一のPCR生成物に変換され、その結果、検定の感度が上がることである。もう一つの理由は、ただ一つのPCR生成物であると、電気泳動ゲルまたはその他のディスプレー法における生成物のディスプレーが、より複雑でなくなり、バックグラウンドが下がり、そして解釈がより容易になることである。
【0131】
チップテクノロジー
Hacia et al.,((1996) Nature Genetics, 14:441-447)およびShoemaker et al.,((1996) Nature Genetics 14:450-456)が記載したようなチップに基づくDNAテクノロジーが本発明者等によって特別に検討された。簡潔に述べると、これらの技術は多数の遺伝子を迅速且つ正確に分析する定量法を含む。遺伝子にオリゴヌクレオチドで標識することにより、または固定化プローブアレイの使用により、チップテクノロジーを用いて標的分子を高密度アレイとして分離し、これらの分子をハイブリダイゼーションを基準にスクリーニングすることができる。Pease et al.,((1994) Proc. Nat’l Acad Sci. USA, 91:5022-5026);Fodor et al.,((1991) Science, 251:767-773)をも参照されたい。
【0132】
GHRd3またはGHRf1蛋白を検出する方法
ELISAおよびウェスタンブロッティングのような技術により、抗体を使用して組織のGHRd3および/またはGHRf1含有量を特性決定することができる。GHRd3およびGHRf1ポリペプチドの取得法は既知の方法を用いて実施できる。同様に、GHRd3およびGHRf1イソ型に選択的に結合できる抗体を製造する方法を、本明細書にさらに記載する。
【0133】
一例では、GHRd3、GHRf1を包含するGHR抗体およびGHRd3とGHRf1を識別しないGHR抗体をELISA検定で使用できる。例えば、抗GHR抗体を、選択された表面、好ましくはポリスチレン微量定量プレートのウェルのような蛋白親和性を示す表面に固定化する。不完全に吸着された物質を除去するために洗浄した後、被検抗血清に関して抗原的に中性であるとわかっている非特異蛋白、例えば牛血清アルブミン(BSA)、カゼインまたは粉乳溶液を検定プレートのウェルに結合させ、またはそれで被覆するのが望ましい。これにより固定化表面上の非特異的吸着部位をブロックでき、その結果、該表面上への抗原の非特異結合が惹起するバックグラウンドが低下する。
【0134】
抗体をウェルに結合させた後、バックグラウンドを低下させるため、非反応性物質を被覆し、非結合物質を洗浄除去し、免疫複合体(抗原/抗体)の形成をもたらす方法で固定化表面を被験試料と接触させる。
【0135】
被検試料および結合した抗体の間に特異的免疫複合体を形成させ、その後洗浄した後、これを、第一の抗体とは異なるGHRへの特異性を持つ第二抗体にさらすことにより、免疫複合体の存在および量までもが決定できる。好適な条件は、好ましくは試料をBSA、牛ガンマグロブリン(BGG)および燐酸緩衝化生理食塩水(PBS)/Tweenのような希釈剤で希釈することを包含する。これらの添加物質は、非特異的バックグラウンドの低減を助ける傾向もある。次に、積層された抗血清を、好ましくは約25℃ないし約27℃程度の温度で約2ないし約4時間インキュベートする。抗血清に接触させた表面を洗浄して免疫複合体形成していない物質を除去する。好ましい洗浄法は、PBS/Tweenまたは硼酸塩緩衝液といった溶液による洗浄を包含する。
【0136】
検出手段を提供するため、第二抗体は好ましくは適当な発色性基質と共にインキュベートする時に発色する関連酵素を有する。したがって、例えば第二抗体結合表面をウレアーゼ-またはペルオキシダーゼ-コンジュゲート抗ヒトIgGと接触させ、これと共に、免疫複合体の形成に好適な条件下で一定時間インキュベートするのが望ましい(例えば、PBS/TweenのようなPBS含有溶液中、室温で2時間のインキュベーション)。
【0137】
第二酵素タグ抗体とインキュベートし、引き続き洗浄して非結合物質を除去した後、発色性基質、例えば尿素およびブロモクレゾール紫または、酵素標識がペルオキシダーゼの場合は2,2’-アジノ-ジ-(3-エチルベンズチアゾリン)-6-スルホン酸(ABTS)およびH2O2と共にインキュベートすることにより、標識を定量する。次いで、例えば可視スペクトル分光光度計を用いて色素生成の程度を測定することにより、定量を達成する。
【0138】
試料を最初に検定プレートに結合させることにより、前記フォーマットを変更できる。一次抗体を検定プレートと共にインキュベートし、その後、一次抗体に対する特異性を有する標識化二次抗体を用いて、結合した一次抗体を検出する。
【0139】
その他種々の有用な免疫検出法の工程が、科学文献、例えばNakamura et al., Handbook of Experimental Immunology(4th Ed.), Weir. E., Herzenberg, L. A. Blackwell, C., Herzenberg, L.(eds). Vol. 1. Chapter 27, Blackwell Scientific Publ., Oxford, 1987(引用により本明細書の一部とする)に記載されている。最も単純且つ直接的意義において、免疫検定は結合検定である。幾つかの好ましい免疫検定は、様々な種類のラジオイムノアッセイ(RIA)および免疫ビーズ捕捉検定である。組織切片を用いる免疫組織化学的検出もまた特に有用である。しかしながら、検出はこうした技術に限定される訳ではなく、ウェスタンブロッティング、ドットブロッティング、FACS分析などもまた本発明に関連して使用できる。
【0140】
好ましい例では、上記の方法を用いてGHRd3特異抗体を使用してGHRd3レベルを検出できる。別の方法では、GHRの総量を、GHRd3およびGHRf1を区別せずに測定し、GHRf1量を決定する。非識別GHRおよびGHRf1の量の違いが、存在するGHRd3量を示す。
【0141】
これに代わる例では、上記の方法を用いてGHRf1特異抗体を使用してGHRf1レベルを検出できる。別の方法では、GHRの総量を、GHRf1およびGHRd3を区別せずに測定し、GHRd3量を決定する。非識別GHRおよびGHRd3の量の違いが、存在するGHRf1量を示す。
【0142】
別の例では、GHRd3特異抗体を用いてGHRd3レベルを検出し、GHRf1特異抗体を使用してGHRf1レベルを検出できる。
【0143】
好ましくは、このような方法は循環中のGHBP(例えばGHRd3またはGHRf1の細胞外部分)を検出する。好ましい方法例は、非識別GHR(例えばGHRf1と比較した非識別GHR総量からGHRd3を推定する)の検出、GHRd3の検出、および/またはGHRf1の検出ができる。そのような方法は、ELISA検定、リガンド仲介免疫機能検定(LIFA)およびラジオイムノアッセイ(RIA)を包含する。
【0144】
非識別(例えばGHRd3またはGHRf1)GHRを検出するためのLIFAは、Pflaum et al.((1993) Exp. Clin. Endocrinol. 101. (Suppl. 1):44)およびKratzsch et al.((2001) Clin. Endocrinol. 54:61-68)の方法に従って実施できる。簡潔に述べると、一つの例では、微量定量プレートを被覆するモノクローナル抗rGHBP抗体を用いて、非識別GHRを検出する。血清試料またはグリコシル化rGHBP標準を、10ng/ウェルのhGHおよびビオチン化トレーサーとしてのhGHに対するモノクローナル抗体と共にインキュベートする。ユーロピウム標識化ストレプトアビジン系でシグナルを増幅し、蛍光光度計を用いて測定する。別の例では、Kratsch et al.((1995) Eur. J. Endocrinol. 132:306-312)に記載のように、抗rhGHBP抗体、rhGHBP標準および標識化抗原としての125I-rhGHBPを使用する競合的ラジオイムノアッセイ(RIA)を実施して非識別GHBPを検出する。
【0145】
Kratzsch et al.((2001) Clin. Endocrinol. 54:61-68)に記載された別の例では、微量定量プレートを、hGH結合部位の外でGHBPに結合する、50nmol//l燐酸ナトリウム緩衝液(pH9.6)中の100μlのモノクローナル抗体10B8で被覆することによって非識別GHBPを検出する(Rowlinson et al. (1999))。洗浄工程の後、検定緩衝液75μl(50mM トリス-(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、150mM NaCl、0.05% NaN3、0.01% Tween 40、0.5% BSA、0.05%牛γ-グロブリン、20μmol/lジエチレントリアミンペンタ酢酸)中の試料または標準25μlおよびビオチン標識化抗GHGBP mAb 5C6(これはhGH結合部位の内部でGHBPに結合する(Rowlinson et al (1999)))50ngを加え、一晩インキュベートする。次いでGHBPのエクソン3を含むf1型に特異的な抗体を用いてGHRf1の量を決定する。簡潔に述べると、非識別GHBPの場合と同様にmAb 10B8を微量定量プレート上に固定化する。洗浄工程の後、試料または標準25μlおよびKratzsch et al. (2001)に記載のGHRd3ペプチドに対するウサギポリクローナル抗体75μl(1:10000に希釈)を加え、一晩インキュベートする。各ウェルにビオチン化マウス抗ウサギIgG 20ngを加え、2時間インキュベートし、その後繰り返しすすぐ。ユーロピウム標識したストレプトアビジン系でシグナルを増幅し、蛍光光度計を用いて測定する。ヒツジ血清で希釈した組換え非グリコシル化hGHBPを標準として使用する。
【0146】
本発明に従って使用するためのGHRd3に特異的な抗体は既知の方法で取得できる。単離されたGHRd3蛋白またはその一部もしくはフラグメントを免疫原に使用し、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体製造の標準技術を用いて、GHRd3に結合する抗体を作製する。GHRd3蛋白を使用することができ、或いは本発明は、免疫原としてGHRd3の抗原性ペプチドフラグメントを提供する。
【0147】
GHRd3ポリペプチドは、個体から取得した生体試料からの精製によって、またはより好ましくは組換えポリペプチドとして、既知の方法を用いて製造できる。GHRf1アミノ酸配列は配列番号2に示してあり、GHRd3は、エクソン3によりコードされている22のアミノ酸が欠失している点でGHRf1とは異なっている。GHRd3の抗原性ペプチドは、好ましくは配列番号2に示すアミノ酸配列の少なくとも8アミノ酸残基を含み、ここで、少なくとも1個のアミノ酸が、前記エクソン3コード化アミノ酸残基の外にある。この抗原性ペプチドは、GHRd3のエピトープを包含し、その結果、このペプチドに対して作製された抗体はGHRd3と特異的免疫複合体を形成する。好ましくはこの抗体はGHRd3に選択的または優先的に結合し、GHRf1とは実質上結合しない。好ましくは、この抗原性ペプチドは少なくとも10のアミノ酸残基、より好ましくは少なくとも15アミノ酸残基、さらに好ましくは少なくとも20アミノ酸残基、最も好ましくは少なくとも30アミノ酸残基を含む。
【0148】
この抗原性ペプチドが包含する好ましいエピトープは、該蛋白の表面に位置するGHRd3の領域、例えば親水性領域である。
【0149】
GHRd3免疫原は典型的には、適当な対象(例えばウサギ、ヤギ、マウスまたはその他の哺乳動物)をこの免疫原で免疫することによって抗体を作製するのに使用する。適当な免疫原性調製物は、例えば組換え発現されたGHRd3蛋白または化学合成されたGHRd3ポリペプチドを含み得る。この調製物はさらに、アジュバント、例えば完全フロイントアジュバントまたは不完全アジュバント、または類似の免疫刺激物質を含むことができる。免疫原性GHRd3調製物による適当な対象の免疫は、ポリクローナル抗GHRd3抗体反応を誘発する。
【0150】
したがって、本発明の別の側面は、抗GHRd3抗体に関連する。本明細書で使用する「抗体」という語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、即ち、抗原に特異的に結合する(免疫反応する)抗原結合部位を含む分子、例えばGHRd3を指す。免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分の例は、抗体をペプシンのような酵素で処理することにより生成できるF(ab)およびF(ab’)2フラグメントを包含する。本発明はGHRd3に結合するポリクローナルおよびモノクローナル抗体を提供する。本明細書で使用する「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という語は、GHRd3の特定エピトープと免疫反応できるただ1種の抗原結合部位を含む抗体分子の集団を指す。したがってモノクローナル抗体組成物は、典型的には、それが免疫反応を行う特定のGHRd3蛋白について単一の結合親和性を示す。
【0151】
本発明は、ポリクローナルまたはモノクローナルの、少なくとも6個の、好ましくは少なくとも8ないし10個の、より好ましくは少なくとも12、15、20、25、30、40、50、もしくは100個の連続した配列番号2のアミノ酸のつながりを含むエピトープ含有ポリペプチドに選択的に結合するもしくは結合することができる抗体組成物に関するものであり、この連続したつながりは、好ましくはGHR遺伝子のエクソン3によりコードされている22のアミノ酸のつながりの外にある少なくとも1個のアミノ酸を含む。
【0152】
ポリクローナル抗GHRd3抗体は上記のように、適当な対象をGHRd3免疫原で免疫することによって作製できる。免疫された対象の抗GHRd3抗体価は、標準技術、例えば固定化されたGHRd3を用いる酵素結合免疫吸着検定(ELISA)により時間を追って監視できる。所望により、GHRd3に対する抗体分子を哺乳動物から(例えば血液から)単離し、周知の技術、例えばプロテインAクロマトグラフィーによりさらに精製してIgG画分を得ることもできる。免疫後適当な時間、例えば抗GHRd3抗体価が最高になった時に、その対象から抗体産生細胞を取得し、標準技術、例えばKohler and Milstein(1975)Nature 256:495-497が最初に記載したハイブリドーマ技術(Brown et al. (1981) J. Immunol. 127:539-46;Brown et al. (1980) J. Biol. Chem. 255:4980-83;Yeh et al. (1976) PNAS 76:2927-31;およびYeh et al. (1982) Int. J. Cancer 29:269-75をも参照されたい)、より最近のヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor et al. (1983) Immunol Today 4:72)、EBV-ハイブリドーマ技術(Cole et al. (1985), Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp.77-96)またはトリオーマ技術によりモノクローナル抗体の作製に使用することができる。モノクローナル抗体ハイブリドーマを製造するテクノロジーは周知である(一般にR. H. Kenneth, Monoclonal Antibodies: A New Dimension in Biological Analyses, Plenum Publishing Corp., New York, N.Y.(1980);E. A. Lerner(1981) Yale J. Biol. Med., 54:387-402;M. L. Gefter et al.(1977) Somatic Cell Genet. 3:231-36を参照されたい)。簡潔に述べると、不死セルライン(典型的には骨髄腫)を、上記のGHRd3免疫原で免疫した哺乳動物から得たリンパ球(典型的には脾細胞)と融合させ、得られたハイブリドーマ細胞の培養上清をスクリーニングして、GHRd3に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定する。
【0153】
リンパ球と不死化セルラインを融合させるための数多くの周知のプロトコルのうち、いかなるものも、抗GHRd3モノクローナル抗体産生目的に適用できる(例えば、G. Galfre et al.(1977) Nature 266:55052;Gefter et al. Somatic Cell Genet., 上記引用;Lerner, Yale J. Biol. Med., 上記引用;Kenneth, Monoclonal Antibodies, 上記引用、を参照されたい)。さらに、当業者は、そのような方法の変法が数多くあり、それらもまた有用であることが理解できるであろう。典型的には、不死セルライン(例えば骨髄腫セルライン)は、リンパ球と同じ哺乳動物種から誘導する。例えば、マウスハイブリドーマは、本発明に係る免疫原性調製物で免疫したマウスから得たリンパ球を、不死化マウスセルラインと融合させることによって作製できる。好ましい不死セルラインは、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含有する培養基(「HAT培地」)に感受性のマウス骨髄腫セルラインである。幾つかの骨髄腫セルラインのうち任意のもの、例えばP3NS1/1-Ag4-1、P3-x63-Ag8.653またはSp2/O-Ag14骨髄腫株を、標準技術に従い融合相手として使用できる。これらの骨髄腫株はATCCから入手できる。典型的には、HAT-感受性マウス骨髄腫細胞を、ポリエチレングリコール(「PEG」)を用いてマウス脾細胞に融合させる。次に、この融合で得られたハイブリドーマ細胞を、融合していないおよび非生産的に融合した骨髄腫細胞を殺滅するHAT培地を用いて選択する(融合していない脾細胞は、形質転換されないため、数日後に死滅する)。本発明に係るモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞を、例えば標準ELISA検定を用いて、ハイブリドーマ培養上清をGHRd3に結合する抗体についてスクリーニングすることによって検出する。
【0154】
モノクローナル抗体分泌ハイブリドーマの製造に代わり、組換え組み合わせ免疫グロブリンライブラリー(例えば抗体ファージディスプレーライブラリー)をGHRd3でスクリーニングし、それによりGHRd3に結合する免疫グロブリンライブラリー成員を単離することにより、モノクローナル抗GHRd3抗体を同定し単離することもできる。ファージディスプレーライブラリーを作製しスクリーニングするためのキットが市販されている(例えば、Pharmacia Recombinant Phage Antibody System, カタログNo.27-9400-01;およびStratagene SurfZAP.TM. Phage Display Kit, カタログNo.240612)。加えて、抗体ディスプレーライブラリーの製造およびスクリーニングに使用するための特に適当な方法および試薬の例が、例えばLadner et al. 米国特許第5223409号;Kang et al. PCT国際公開WO92/18619号;Dower et al. PCT国際公開WO91/17271号;Winter et al. PCT国際公開WO92/20791号;Markland et al. PCT国際公開WO92/15679号;Breitling et al. PCT国際公開WO93/01288号;McCafferty et al. PCT国際公開WO92/01047号;Garrard et al. PCT国際公開WO92/09690号;Ladner et al. PCT国際公開WO90/02809号;Fuchs et al.(1991) Bio/Technology 9:1370-1372;Hay et al.(1992) Hum. Antibod. Hybridomas 3:81-85;Huse et al.(1989) Science 246:1275-1281;Griffiths et al.(1993) EMBO J 12:725-734;Hawkins et al. (1992) J. Mol. Biol. 226:889-896;Clarkson et al.(1991) Nature 352:624-628;Gram et al.(1992) PNAS 89:3576-3580;Garrad et al.(1991) Bio/Technology 9:1373-1377;Hoogenboom et al. (1991) Nuc. Acid Res. 19:4133-4137;Barbas et al. (1991) PNAS 88:7978-7982;およびMacCafferty et al. Nature (1990) 348:552-554に見いだされる。
【0155】
抗GHRd3抗体(例えばモノクローナル抗体)は、標準技術、例えばアフィニティクロマトグラフィーまたは免疫沈降によりGHRd3を単離するのに使用できる。抗GHRd3抗体は細胞からの天然GHRd3の精製および宿主細胞で発現される組換え産生されたGHRd3の精製を容易にすることができる。さらに抗GHRd3抗体は、GHRd3蛋白発現の量およびパターンを評価するためにGHRd3蛋白(例えば細胞溶解液または細胞上清中の)を検出するのに使用できる。抗GHRd3抗体は、例えば与えられた処置計画の有効性を決定するために、治験手段の一部として診断的に使用して、組織中の蛋白レベルを監視することができる。この抗体を検出可能な物質に結合させる(即ち物理的に連結させる)ことにより、検出を容易にすることができる。検出可能な物質の例は、種々の酵素、置換基、蛍光物質、ルミネセンス物質、生物ルミネセンス物質、および放射性物質を包含する。好適な酵素の例は、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼを包含し;好適な置換基複合体の例は、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンを包含し;好適な蛍光物質の例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミン フルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリスリンを包含し;ルミネセンス物質の例はルミノールを包含し;生物ルミネセンス物質の例は、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンを包含し、そして好適な放射性物質の例は125I、131I、35Sまたは3Hを包含する。
【0156】
好ましい例では、実質上純粋なGHRd3蛋白またはポリペプチドを取得する。最終調製物中の蛋白濃度は、例えばAmiconフィルター装置上での濃縮によってmlあたり数マイクログラムのレベルにまで調節する。次に、この蛋白に対するモノクローナルまたはポリクローナル抗体が以下のように製造できる:GHRd3中のエピトープまたはその一部に対するハイブリドーマ融合モノクローナル抗体によるモノクローナル抗体産生は、Kohler およびMilstein(Nature, 256:495, 1975)の古典的方法またはその誘導法(Harlow and Lane, Antibodies A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, pp.53-242, 1988)に従い、マウスハイブリドーマから製造できる。
【0157】
簡潔に述べると、数マイクログラムのGHRd3またはその一部を数週間にわたりマウスに繰り返し接種する。次いでこのマウスを殺し、脾臓の抗体産生細胞を単離する。この脾細胞をポリエチレングリコールによってマウス骨髄腫細胞と融合させ、アミノプテリンを含む選択培地(HAT培地)上でこの系を増殖させる事により、過剰の非融合細胞を破壊した。うまく融合した細胞を希釈し、希釈液のアリコートを微量定量プレートのウェルに入れ、培養の増殖を継続する。抗体産生クローンを、免疫検定法、例えばEngvall, E., Meth. Enzymol. 70:419(1980)によって最初に記載されたELISAにより、ウェルの上清液中の抗体を検出することによって同定する。選択された陽性クローンを拡張し、それらのモノクローナル抗体生成物を使用のために収穫した。モノクローナル抗体産生のための詳細な操作はDavis, L. et al. Basic Methods in Molecular Biology Elsevier, New York. Section 21-2に記載されている。
【0158】
本発明に係る抗体組成物は、免疫ブロットまたはウェスタンブロット分析において優れた用途が見いだせる。この抗体は、例えばニトロセルロース、ナイロンまたはそれらの組み合わせといった固体支持体マトリックス上に固定化された蛋白を同定するための高親和性一次試薬として使用できる。抗原の検出に使用される二次試薬がその抗原に対して望ましくないバックグラウンドを惹起するような抗原の検出に使用するための一段階試薬として、これらを、免疫沈降と結びつけて、ゲル電気泳動後に使用できる。ウェスタンブロットと結びつけて使用するための免疫学に基づく検出法は、酵素標識、放射性標識、または蛍光標識した、毒素部分に対する二次抗体を包含するが、これらはこの点で特に有用であると考えられる。このような標識の使用に関する米国特許は、米国特許第3817837号;3850752号;3939350号;3996345号;4277437号;4275149号および4366241号を包含し、それぞれ引用により本明細書の一部とする。無論、当分野で知られるように、二次抗体またはビオチン/アビジンリガンド結合配置のような二次結合リガンドの使用により、さらなる利点を見いだすこともあり得る。
【0159】
GH組成物の投与
本発明に従って使用すべきGHは天然配列であっても変異型であってもよく、天然、合成、または組換えの如何を問わずいかなる起源のものであってもよい。例には、ヒト天然配列を持つ天然または組換えGHであるヒト成長ホルモン(hGH)(GENOTROPIN(登録商標)、ソマトトロピンまたはソマトロピン)、ならびに、ソマトレム、ソマトトロピンおよびソマトロピンを包含する、組換えDNA技術により産生された任意のGHまたはGH変異体を指す組換え成長ホルモン(rGH)がある。本発明においてヒトへの使用が好ましいのは、組換えヒト天然配列、N末端にメチオニンを持つまたは持たない成熟GHである。最も好ましいのは、組換えヒトGHポリペプチドであるGENOTROPIN(登録商標)(Pharmacia, U.S.A.)である。米国特許第4755465号(1988年7月5日登録)およびGoeddel et al., Nature, 282:544(1979)に記載のプロセスによりE.coliで産生されるメチオニルヒト成長ホルモン(met-hGH)もまた好ましい。PROTROPIN(登録商標)(Genentech, Inc. U.S.A.)として販売されているmet-hGHは、N末端メチオニン残基の存在を除いて天然ポリペプチドと同一である。もう一つの例は、NUTROPIN(登録商標)(Genentech, Inc., U.S.A.)として販売されている組換えhGHである。この後者のhGHはこのメチオニン残基を欠き、天然ホルモンと同じアミノ酸配列を有する。Gray et al., Biotechnology 2:161(1984)を参照されたい。別のGH例は、米国特許第4670393号に記載のような、純粋な体形成活性を持ち乳汁産生活性を持たない、胎盤型GHであるhGH変異体である。例えばWO90/04788およびWO92/09690に記載のようなGH変異体も包含される。その他の例には、GHRアンタゴニストとして作用するGH組成物、例えば末端肥大症の処置に使用できるペグビソマント(SOMAVERT(登録商標)、Pharmacia, U.S.A.)がある。
【0160】
GHは、非経口的、経鼻、肺内、経口、または皮膚を介した吸収を包含する任意の適当な技術により対象に直接投与できる。これらは局所または全身的に投与できる。非経口投与の例は、経皮、筋肉内、静脈内、動脈内、および腹腔内投与を包含する。好ましくはこれらは毎日の皮下注射により投与する。
【0161】
治療に使用するGHは、製剤化し、個々の対象の臨床状態(特にGHのみによる処置の副作用)、そのGH組成物(群)のデリバリー部位、投与方法、投与スケジュール、および医師が知悉するその他の因子を考慮して、良好な医療に則った方法で投与する。したがって本発明の目的のための各成分の「有効量」は、このような配慮により決定され、それは対象の成長速度を増大させる量である。
【0162】
GHに関して、好ましくは約0.2mg/kg/週よりも高い用量、より好ましくは約0.25mg/kg/週よりも高い用量、さらに好ましくは約0.3mg/kg/週よりも高いもしくはこれに等しい用量を使用する。或る態様では、GHの用量範囲は約0.3ないし1.0mg/kg/週であり、別の態様では0.35ないし1.0mg/kg/週である。
【0163】
好ましくは、GHを1日に1回皮下投与する。好ましい側面では、GHの用量は約0.001および0.2mg/kg/日の間である。さらに好ましくは、GHの用量は約0.010および0.10mg/kg/日の間である。
【0164】
上記のように、GHRf1アレレについてホモ接合またはヘテロ接合である対象は、GHRd3アレレについてホモ接合の対象よりもGH処置に対する正の応答がより大きいと予測できる。好ましい側面では、GHRd3アレレについてホモ接合の対象に投与される用量は、GHRd3アレレについてヘテロ接合の対象に投与される用量より高く、GHRd3アレレについてヘテロ接合の対象に投与される用量は、GHRf1アレレについてホモ接合の対象に投与される用量より高い。
【0165】
GHは、適切に、例えば特定の回数(例えば1日に1回)、特定用量の注射という形態で、連続的または非連続的に投与し、この場合、注射の時点で血漿中のGH濃度が上昇し、その後次回の注射の時点まで血漿中GH濃度が下降する。別の非連続的投与法は、PLGAミクロスフェアおよび多くの利用可能なインプラント器具の使用に由来するものであり、これらは、例えば活性成分の不連続放出、例えば初期バーストとその後の放出前の遅延を提供する。例えば米国特許第4767628号を参照されたい。
【0166】
GHは、血中に連続的に存在させてGH投与を持続させるように投与することもできる。これは、例えば浸透圧ミニポンプのようなミニポンプによる連続注入によって達成するのが最も好ましい。或いはこれは、GHの頻回注射(即ち、1日に1回以上、例えば1日に2回または3回)を利用して適切に達成される。
【0167】
さらに別の態様では、血液からのGHのクリアランスを遅延させる、または例えば注射部位からのGHの緩徐放出を惹起する、長時間作用GH製剤を用いてGHを投与できる。GHの血漿クリアランスを延長する長時間作用性製剤は、巨大分子、例えば1またはそれ以上のGHの結合蛋白(WO92/08985)、または、PEGおよびポリプロピレングリコールホモポリマーおよびポリオキシエチレンポリオールから選ばれる水溶性ポリマー、即ち室温で水溶性であるポリマーと複合体形成させたまたは共有結合させた(可逆的または非可逆的結合による)GHの形態とすることができる。これとは別にGHは、その循環半減期を増大させるため、ポリマーに複合体形成または結合させることもできる。この目的に有用なポリエチレンポリオールおよびポリオキシエチレンポリオールの例は、ポリオキシエチレングリセロール、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビトール、ポリオキシエチレングルコースなどを包含する。ポリオキシエチレングリセロールのグリセロールバックボーンは、例えば動物およびヒトのモノ、ジ、およびトリグリセリドに存在するものと同じバックボーンである。
【0168】
このポリマーは特別な分子量である必要はないが、分子量は約3500および100000の間、より好ましくは5000および40000の間であるのが好ましい。好ましくはPEGホモポリマーは非置換であるが、一端がアルキル基で置換されていてもよい。好ましくはこのアルキル基はC1-C4アルキル基、最も好ましくはメチル基である。最も好ましくは、このポリマーはPEGの非置換ホモポリマー、PEGのモノメチル置換ホモポリマー(mPEG)、またはポリオキシエチレングリセロール(POG)であり、約5000ないし40000の分子量を有する。
【0169】
主として反応条件、ポリマーの分子量などによるが、このGHは、GHの1またはそれ以上のアミノ酸残基を介してポリマーの末端反応基に共有結合している。反応基を有するポリマーは、本明細書では活性化ポリマーと称する。反応基は、GH上の遊離アミノ基またはその他の反応基と選択的に反応する。しかしながら、最適な結果を得るために選択される反応基の種類および量、ならびに使用されるポリマーの種類は、使用される個別的GHに依存し、その結果、その反応基がGH上の多すぎる特定の活性基と反応することが回避される。これを完全に回避することは不可能であるかも知れないので、蛋白濃度に応じて一般に、蛋白1モルにつき約0.1ないし1000モル、好ましくは2ないし200モルの活性ポリマーを使用する事が推奨される。蛋白1モルあたりの活性ポリマーの最終量は、可能ならばその蛋白の循環半減期を最適化しつつ同時に最適な活性を維持するための均衡量である。
【0170】
残基は、当該蛋白上の任意の反応性アミノ酸、例えば1またはそれ以上のシステインまたはN末端アミノ酸基とすることができるが、好ましくはこの反応性アミノ酸は、その遊離ε-アミノ基を介して活性化ポリマーの反応基に結合するリジンであるか、または、アミド結合を介してポリマーに結合するグルタミン酸もしくはアスパラギン酸である。
【0171】
共有結合的修飾反応は、生物活性材料を不活性ポリマーと反応させるために一般的に使用される任意の適当な方法によって、好ましくは約pH5-9,より好ましくは、GH上の反応基がリジン基である場合pH7-9で起こすことができる。一般にこのプロセスは、活性化ポリマー(少なくとも1個の末端ヒドロキシ基を有する)を製造し、このポリマーから活性物質を製造し、その後GHをこの活性物質と反応させて製剤化にとって好適なGHを作製することを含む。上の修飾反応は幾つかの方法で遂行でき、1またはそれ以上の工程を含み得る。一段階反応で活性化ポリマーを製造するために用いられる修飾試薬の例は、シアヌル酸クロリド(2,4,6-トリクロロ-S-トリアジン)およびシアヌル酸フルオリドを包含する。
【0172】
或る態様では、この修飾反応は二工程で起こり、その場合、まずポリマーを、無水琥珀酸またはグルタル酸のような酸無水物と反応させてカルボン酸を製造し、次にこのカルボン酸をカルボン酸と反応できる化合物と反応させ、GHと反応できる反応性エステル基を有する活性化ポリマーを形成させる。このような化合物の例は、N-ヒドロキシスクシンイミド、4-ヒドロキシ-3-ニトロベンゼンスルホン酸などを包含し、好ましくはN-ヒドロキシスクシンイミドまたは4-ヒドロキシ-3-ニトロベンゼンスルホン酸を使用する。例えば、モノメチル置換PEGを高温、好ましくは100-110℃で、無水グルタル酸と4時間反応させることができる。このようにして製造されたモノメチルPEG-グルタル酸を、次に、ジシクロヘキシルまたはイソプロピルカルボジイミドのようなカルボジイミド試薬の存在下にN-ヒドロキシスクシンイミドと反応させて活性化ポリマー、メトキシポリエチレングリコリル-N-スクシンイミジルグルタラートを製造し、その後これをGHと反応させることができる。この方法はAbuchowski et al., Cancer Biochem. Biophys., 7:175-186(1984)に詳細が記載されている。別の例では、モノメチル置換PEGを無水グルタル酸と反応させ、その後ジシクロヘキシルカルボジイミドの存在下に4-ヒドロキシ-3-ニトロベンゼンスルホン酸(HNSA)と反応させて活性化ポリマーを製造する。HNSAはBhatnagar et al., Peptides: Synthesis-Structure-Function, Proceedings of the Seventh American Peptide Symposium, Rich et al. (eds.) (Pierce Chemical Co., Rockford, III., 1981), p.97-100および”Novel Agent for Coupling Synthetic Peptides to Carriers and its Applications.” なる表題のNitecki et al., High-Technology Route to Virus Vaccines (American Society for Microbiology: 1986)に記載されている。
【0173】
PEGにコンジュゲートされたGHを製造する特異的方法は、PEG-GHに関しては米国特許第4179337号に記載されており、また、GHに可逆的且つ共有結合したPEGを開示している米国特許第4935465号に記載されている。
【0174】
GHはさらに、持続放出系によって適切に投与できる。本発明において有用な持続放出組成物の例は、成形された物品の形態の半透過性ポリマーマトリックス、例えばフィルムまたはマイクロカプセルを包含する。持続放出マトリックスは、ポリアクチド(米国特許第3773919号、EP58481)、L-グルタミン酸およびγ-エチル-L-グルタミン酸塩のコポリマー(Sidman et al., Biopolymers, 22, 547-556(1983))、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリラート)(Langer et al., J. Biomed. Mater. Res., 15:167-277(1981);Langer, Chem. Tech., 12:98-105(1982))、エチレンビニルアセタート(Langer et al., 上記)またはポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸(EP133988)、またはPLGAミクロスフェアを包含する。
【0175】
持続放出GH組成物はさらに、リポソームに捕捉されたGHを包含する。GHを内包するリポソームは自体既知の方法で製造できる:DE3218121;Epstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:3688-3692(1985);Hwang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4030-4034(1980);EP52322;EP36676;EP88046;EP143949;EP142641;日本国特許出願83-118008;米国特許第4485045および4544545号;ならびにEP102324。通常、リポソームは、脂質含有量が約30モルパーセントコレステロールより大である、小さな(約200-800オングストローム)単層型のものであり、選択される割合は最適な治療を目指して調節される。加えて、生物活性持続放出製剤を、米国特許第4857505号に記載のように、活性化多糖類に共有結合させたGHの付加物から製造することができる。さらに、米国特許第4837381号は、徐放のための、脂肪もしくはロウまたはそれらの混合物とGHのミクロスフェア組成物を記載している。
【0176】
別の態様では、上に同定された対象を、有効量のIGF-Iによっても処置する。一般的な案として、非経口投与されるIGF-Iの1用量当たりの薬学的総有効量は、約50ないし240μg/kg/日、好ましくは100ないし200μg/kg/日(対象の体重)の範囲となるが、上に記載したように、これはかなり治療上の裁量に任される。また、IGF-Iは皮下注射によって1日に1回または2回投与するのが好ましい。さらなる態様では、IGF-IおよびGHの両方を、それぞれ有効量で、またはそれぞれ最適量以下であるが合した時に有効となる量で対象に投与することができる。好ましくは約0.001ないし0.2mg/kg/日、またはより好ましくは約0.01ないし0.1mg/kg/日のGHを投与する。好ましくは、IGF-IおよびGH両方の投与は、例えば静脈内または皮下手段を用いる注射による。より好ましくは、この投与はIGF-IおよびGH両方について皮下注射で、最も好ましくは連日注射で行う。
【0177】
IGF-IおよびGH両者の用量を案出する医師は、これらのホルモンによる処置の既知副作用を考慮すべきである。GHについては、副作用には、ナトリウム貯留および細胞外容量の拡大(ikkos et al., Acta Endocrinol. (Copenhagen), 32:341-361(1959);Biglieri et al., J. Clin. Endocrinol. Metab., 21:361-370(1961))、ならびに高インスリン血症および高血糖がある。IGF-Iの主たる明らかな副作用は低血糖である。Guler et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:2868-2872(1989)。事実、IGF-IとGHの組み合わせは、両物質の望ましくない副作用(例えばIGF-Iの低血糖およびGHの高インスリン血症)の低減、および血中GHレベルの保持(GHの分泌がIGF-Iにより抑制される)を導く。
【0178】
或る態様では、非経口投与のため、一般的には、所望純度のGHを、単位用量の注射可能な形態(溶液、懸濁液、またはエマルジョン)で、薬学上許容し得る担体、即ち使用する用量および濃度においてレシピエントにとって非毒性であり、当該製剤の他の成分と共存可能である担体と混合することによって製剤化する。例えばこの製剤は、好ましくは、酸化剤や、ポリペプチドにとって有害であることが知られているその他の化合物を含まない。一般にこの製剤は、GHを液体担体もしくは微粉化した固体担体またはその両者と接触させることによって製造する。次いで、必要ならば生成物を所望の製剤に成形する。好ましくは、担体は非経口用担体、より好ましくはレシピエントの血液と等張である溶液である。このような担体媒質の例は、水、生理食塩水、リンゲル液、およびデキストロース溶液を包含する。不揮発性油およびオレイン酸エチルのような非水性媒質もまたリポソームと同様本発明において有用である。
【0179】
担体は、少量の添加物、例えば等張性および化学的安定性を高める物質を含有させるのが好適である。このような物質は使用される用量および濃度においてレシピエントにとって非毒性であり、緩衝剤、例えば燐酸塩、クエン酸塩、琥珀酸塩、酢酸、およびその他の有機酸またはそれらの塩;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、例えばポリアルギニンまたはトリペプチド;蛋白、例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、またはアルギニン;単糖類、二糖類、および、セルロースもしくはその誘導体、グルコース、マンノース、またはデキストリンを包含するその他の炭水化物;キレート化剤、例えばEDTA;糖アルコール、例えばマンニトールまたはソルビトール;対イオン、例えばナトリウム;および/または非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート、ポロキサマー、またはPEGを包含する。
【0180】
GHは典型的にはこのような媒質中で個別に、約0.1mg/mLないし100mg/mL、好ましくは1-10mg/mLの濃度、pH約4.5ないし8で製剤化する。GHは好ましくはpH7.4-7.8である。前記の賦形剤、担体、または安定剤の幾つかを使用してGH塩の製剤が製造されることが理解できるであろう。
【0181】
GHは任意の適当な方法で製剤化できるが、GHの好ましい製剤は以下のとおりである。好ましいhGH(GENOTROPIN(登録商標))については、単一用量の注射筒に0.2mg、0.4mg、0.6mg、0.8mg、1.0mg、1.2mg、1.4mg、1.6mg、1.8mgまたは2.0mgの組換えソマトロピンを入れる。このGENOTROPIN(登録商標)注射筒はさらに、グリシン0.21mg、マンニトール12.5mg、燐酸一ナトリウム0.045mg、燐酸二ナトリウム0.025mgを含み、水を加えて0.25mlとしてある。
【0182】
met-GH(PROTROPIN(登録商標))については、前凍結乾燥したバルク溶液は、met-GH 2.0mg/mL、マンニトール16.0mg/mL、燐酸ナトリウム(一塩基性一水和物)1.6mg/mLを含有し、pH7.8である。met-GHの5mgバイアルは、met-GH 5mg、マンニトール40mg、および全燐酸ナトリウム(乾燥重量)(二塩基性無水)1.7mgを含有し、pH7.8である。10mgバイアルは、met-GH 10mg、マンニトール80mg、および全燐酸ナトリウム(乾燥重量)(二塩基性無水)3.4mgを含有し、pH7.8である。
【0183】
無met-GH(NUTROPIN(登録商標))については、前凍結乾燥したバルク溶液は、GH 2.0mg/mL、マンニトール18.0mg/mL、グリシン0.68mg/mL、燐酸ナトリウム0.45mg/mL、および燐酸ナトリウム(一塩基性一水和物)1.3mg/mLを含有し、pH7.4である。5mgバイアルは、GH 5mg、マンニトール40mg、グリシン1.7mg、および全燐酸ナトリウム(乾燥重量)(二塩基性無水)1.7mgを含有し、pH7.4である。10mgバイアルは、GH 10mg、マンニトール90mg、グリシン3.4mg、および全燐酸ナトリウム(乾燥重量)(二塩基性無水)3.4mgを含有する。
【0184】
或いは、NUTROPIN(登録商標) hGHの液体製剤を使用できる。例えばrhGH 5.0±0.5mg/mL;塩化ナトリウム8.8±0.9mg/mL;ポリソルベート20 2.0±0.2mg/mL;フェノール2.5±0.3mg/mL;クエン酸ナトリウム二水和物2.68±0.3mg/mL;および無水クエン酸0.17±0.02mg/mL(合計の無水クエン酸ナトリウム/クエン酸は2.5mg/mL、または10mM);pH6.0±0.3。この製剤を適切に10mgバイアルに入れるが、これは、3ccのガラスバイアル中、上記製剤2.0mLの充填量である。或いは、上記製剤の入った10mg(2.0mL)カートリッジを、対象に液体GHを注射するための注射ペンに装着できる。
【0185】
治療的投与に使用されるGH組成物は好ましくは無菌である。無菌性は、滅菌濾過メンブレン(例えば0.2ミクロンメンブレン)による濾過によって容易に達成できる。治療用GH組成物は一般に、無菌アクセス口を有する容器、例えば静脈用溶液バッグまたは皮下注射針を突き刺すことのできる栓を有するバイアルに入れる。
【0186】
GHは通常、水溶液または再構成用凍結乾燥製剤として、単位または多用量容器、例えば封入アンプルまたはバイアルに保存する。凍結乾燥製剤の例として、バイアルに滅菌濾過(w/v)GH水溶液を充填し、得られた混合物を凍結乾燥する。注入溶液は、静菌性注射用水を用いてこの凍結乾燥GHを再構成することによって製造する。
【0187】
本発明は、以下の実施例を参照することにより、さらに完全に理解できる。しかしながらこれらは本発明の範囲を限定するものと解してはならない。全ての文献および特許引用文は引用により陳述的に本明細書の一部とする。
【実施例】
【0188】
実施例1
GHRd3およびGHRf1の遺伝子型決定
Lahiri and Nurnberger(Nucl Ac Res 1991; 19:5444)に記載の方法に従い、患者由来のゲノムDNAを末梢血から取得した。SGA患者におけるGHR依存性成長ホルモン応答の可能性を調べるため、Stalling-Mann et al(Proc Nat Acad Sci USA 1996; 93:12394-12399)によりGHR遺伝子のエクソン3周辺領域であると報告されている、GHRf1-GHRd3多形を含む3248bpセグメントの増幅を実施した。Pantel et al(J Biol Chem 2000; 25:18664-18669)により記載された多重戦略を改変したものを用いて、DNAをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅した。簡潔に述べると、ゲノムDNA 200ngを、MgCl2 1.5mM、各dNTP 0.5mM、各プライマー0.2μM、およびPhusion High-Fidelity DNAポリメラーゼ(Finnzymes, Espoo, Finland)0.5Uより成る反応混合物50μlに加えた。G1、G2およびG3プライマーはGenBankTM受理番号AF155912に記載されている。循環条件は以下のとおりである:98℃30秒間の最初の変性工程、続いて98℃、10秒間;60℃、30秒間;72℃、1分30秒より成る40サイクル、その後7分間の最終伸張工程。
【0189】
増幅生成物を、前もって作製した48ウェル1.2%アガロースゲル含有エチジウムブロミド(Ready-to-run Agarose Gel, Amersham Biosciences, San Francisco, CA)上での電気泳動(90v、25℃の室温で15分間)により分析した。
【0190】
ホモ接合のGHRd3/GHRd3遺伝子型が検出された場合、G1およびG3のみを用いる新たなPCR増幅を同条件でDNAから実施し、多重反応で軽度増幅すると935bp生成物が出現した。
【表1】

注:
【0191】
本発明者等は、自動配列決定により、各変異体についてホモ接合DNAから選択された2つのPCR生成物の存在を確認した。
【0192】
この検定に用いられるPhusion High-Fidelity DNAポリメラーゼ(Finnzymes, Espoo, Finland)は、短時間且つ高い変性温度(98℃)で強固な増幅を可能にする。
【0193】
第一のシリーズで本発明者等は、幾つかの疑わしいヘテロ接合試料中の軽微な935bpバンドをより良好に視覚化するため、PAGE上の第二の電気泳動とこれに続く銀染色を実施した。さらに、G1およびG3プライマーによる第二のPCR増幅が、疑わしい試料について確定的結果をもたらす事を検証し、したがって本発明者等は、GHRd3/GHRd3遺伝子型を確立するためにはこの第二のPCRを実行することを推奨する。この検証は、より正確、迅速且つ安価である。
【0194】
実施例2
GH応答に関連するGHRd3アレレの検出
組換えGHによる処置の治験に参加していた71名のSGA患者を、一般的なGHRエクソン3変異体およびGHによる処置に対する成長速度の応答の関連について調査した。この研究に参加する患者は以下の参加および除外基準に従って選択した。
【0195】
参加基準
1. 出生時体重および/または身長が<P10であると評価された、IGR病歴を持つ男児または女児(Delgado et al. Anal Esp Ped. Medicina Fetal y Neonatologica 1996;.44:50-59)。
2. 超音波検査または最終月経日(DLP)、および新生児の臨床評価により35週以上の在胎齢であると評価されている事。
3. 3年以上の暦年令。
4. 現在の身長がパーセンタイル3もしくは-1.88 SDS以下、またはこれらに等しい事(Hernandez, .Madrid. Editorial Garsi, 1988)。
5. 暦年令に関して現在の成長速度がパーセンタイル50以下またはこれに等しい事(Hernandez, .Madrid. Editorial Garsi, 1988)。
6. 女児における正常な核型。
7. 親/法定代理人から書面でインフォームド・コンセントを取得している事。
【0196】
除外基準
1. 虚血後新生児脳障害。
2. 補充療法実施中の甲状腺機能低下症を除く関連内分泌病理。
4. 長期ステロイド処置。
5. 重篤な慢性疾患(血液病理、肺疾患、肝病理、吸収不良、神経学的変性、等)。
6. 新生物。
7. 頭蓋内照射の履歴。
6. シルバー・ラッセルを除く症候群(骨異形成症、胎児アルコール症候群、ターナー、ゼッケルおよびその他の形成異常症候群)。
7. 染色体変異。
8. かつて成長ホルモンで処置された両親。
【0197】
実施例1に記載の方法を用いて、71名の患者群についてGHRd3についての遺伝子型を決定した。結果を表1および表2に示す。
【表2】

【表3】

【0198】
用量1.4(U.kg.週)のrhGHで患者を処置した。rhGHによる処置の間、成長速度を1年間追跡した(表3)。GHRd3変異体を持つ患者はrGHで処置した場合、よりゆっくりと成長した。故に、GHR配列のゲノム変異はrGH処置後の成長速度増加における著明な相違と関連している。
【0199】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
GHR蛋白に結合できる物質に対する対象の応答を予測する方法であって、その対象におけるGHR遺伝子のGHRd3アレレおよび/またはGHRf1アレレの存在または不在を決定し、ここで、GHRd3アレレは該物質に対する正の応答が低下する傾向に相関し、GHRf1アレレは該物質に対する正の応答が増大する傾向に相関する、それにより、その対象が、該物質による処置に対する応答の低下または増大傾向を有すると判定することを含む方法。
【請求項2】
対象が、特発性低身長(ISS)、出生時超低体重(VLBW)、子宮内発育遅延(IUGR)、または胎内発育遅延(SGA)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
対象がSGAである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該物質がGHRアゴニストである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
GHRアゴニストがGH、好ましくはソマトロピンである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
該物質がGHRアンタゴニストである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
GHRアンタゴニストがペグビソマントである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
GHRが関与する疾患または異常に罹患している対象を処置する方法であって、
(a) その対象におけるGHR遺伝子のGHRd3アレレおよび/またはGHRf1アレレの存在または不在を決定し、ここで、GHRd3アレレは、GHR蛋白に結合できる、またはGHR経路を介して作用できる物質に対する正の応答が低下する傾向に相関し、GHRf1アレレは、該物質に対する正の応答が増大する傾向に相関する;そして、
(b) その対象に投与すべき該物質の有効量を選択または決定する、
事を含む方法。
【請求項9】
低身長の対象が、特発性低身長(ISS)、出生時超低体重(VLBW)、子宮内発育遅延(IUGR)、または胎内発育遅延(SGA)である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
対象がSGAである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
該物質がGHRアゴニストである、請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
GHRアゴニストがGH、好ましくはソマトロピンである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
該物質がGHRアンタゴニストである、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
GHRアンタゴニストがペグビソマントである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
(c) 対象に該物質の有効量を投与することをさらに含む、請求項8〜14のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2008−505634(P2008−505634A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519913(P2007−519913)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【国際出願番号】PCT/IB2005/002086
【国際公開番号】WO2006/006072
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(504396379)ファルマシア・アンド・アップジョン・カンパニー・エルエルシー (130)
【Fターム(参考)】