成長因子−模倣(mimicking)ペプチド及びその用途
本発明は、成長因子活性を示す成長因子−模倣ペプチド、これを含む皮膚状態改善または創傷治療用組成物及び皮膚状態改善または創傷治療方法に関する。本発明の成長因子−模倣ペプチドは、天然のヒト成長因子と同一な機能または作用をすることができ、安定性が天然成長因子と比較して非常に優れており、皮膚透過度に非常に優れている。したがって、本発明のペプチドを含む組成物は、成長因子の活性が要求される疾患または状態を治療、予防または改善するのに非常に優れた効能を発揮する。また、本発明のペプチドの優れた活性及び安定性は、医薬、医薬外品及び化粧品に非常に有利に適用できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成長因子活性を示す成長因子−模倣ペプチド、これを含む皮膚状態改善または創傷治療用組成物及び皮膚状態改善または創傷治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の脳下垂体(pituitary gland)から分泌される成長ホルモンは、細胞成長及び分化に直接的に関与すると知られており、軟骨や骨の成長及び発育促進、筋肉や肝などの臓器復元、傷の再生だけではなく、感染などの免疫機能にも影響を及ぼす。だけではなく、老化が進行されるほど成長ホルモンの生産量がだんだん減少して、60代になると、20代に比べて1/4水準に落ちると報告されており、足りない成長ホルモンを補充する抗老化ホルモン治療の中心として使用され始めている。
【0003】
成長ホルモンは、細胞で成長ホルモン受容体(growth hormone receptor)に直接結合するか、インシュリン様成長因子I(IGF-I: insulin-like growth factor I)の分泌を誘発し、細胞内信号伝達物質であるヤヌスキナーゼ(JAK; Janus kinases)/転写信号伝達剤及び活性化剤(STAT; Signal Transducers and Activators of Transcription)やミトゲン−活性化された蛋白質キナーゼ(MAPK; mitogen-activated protein kinase)、ホスファチジル−3キナーゼ(PI3K; phosphatidyl-3 kinase)などを活性化させて、毛嚢細胞や皮膚内線維芽細胞の成長を促進して、bcl−2−様(bcl-2-like)遺伝子であるbcl−wを通じてアポトーシス(apoptosis)を抑制すると判断されている。このような成長因子の効能は、たくさんの研究者らにより明かされて、その有用度のため、多い企業が商用化をしている。
【0004】
線維芽細胞成長因子(FGF)は、二つの形態、即ち、酸性FGF(aFGF)及び塩基性FGF(bFGF)形態に存在して、これらの二つの形態は、哺乳類の脳から分離及び精製できると明かされた(Thomas and Gimenez-Gallego, TIBS 11:81-84(1986))。
【0005】
特に、成長因子類の中、酸性線維芽細胞成長因子(aFGF)は、154個のアミノ酸から構成された蛋白質であって、動物細胞、特に人間細胞の生長を調節するなど、組織回復及び傷の治癒関する生医学的研究において、主要物質の一つである。酸性線維芽細胞類似分裂物質は、トロウェル(Trowell)ら(J. Exp. Biol. 16:60-70(1939))及びホフマン(Hoffman)(Growth 4:361-376(1940))により最初に記述されて、次いで脳下垂体抽出物も同様に線維芽細胞類に対する強力な類似分裂物質活性を有することが明かされた(Amelin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 70:2702-2706(1973))。
【0006】
数多い細胞株が、精製されたaFGFによる刺激に反応してDNAを合成して分裂するが、その種類は、一次線維芽細胞、血管及び角膜内皮細胞、軟骨細胞、骨髄芽細胞、線筋芽細胞、平滑筋、神経膠細胞及び神経芽細胞が挙げられる(Each et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:6507-6511(1985); Kuo et al., Fed. Proc. 44:695(1985); Gensburger et al., C.R. Acad. Sc. Paris 303:465-468(1986))。また、aFGFは、培養された血管内皮細胞に対する強力な類似分裂物質として作用するだけではなく、生体内で血管生長を誘導する(Thomas. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:6409-6413(1985))。また、精製されたaFGFの類似分裂物質活性は、傷の回復を促進させるに利用できる(Thomas, 米国特許第4,444,760号)。
【0007】
一方、角質細胞成長因子(KGF)は、163個のアミノ酸から構成された蛋白質であって、外皮細胞の分裂を促進し、多様な傷から速い再生を可能にする。KGFは、線維芽細胞成長因子群の一員として多様な種類の細胞類型に影響を及ぼす。KGFは、細胞間の付着、細胞の分裂、そして老化を含んだ多様な原因による細胞の傷害を治癒するのに重要な役割をする。KGFは、毛髪において、毛髪成長初期段階で細胞世代間の架橋役割をするのにおいて重要な役割をする。KGFを、皮膚弾力の増加、毛髪成長の促進、傷治癒促進の他にも、多様なところに使用できる。
【0008】
また、形質転換成長因子(TGF)は、皮膚の深いところでさらに若くて健康に維持するように、皮膚細胞の成長と分化に重要な作用をするサイトカインである。例えば、変換と回復を通じて、老いて傷付けられた細胞は、さらに健康で且つ生産的な細胞に変わるようになる。TGFは、既に傷付けられた細胞の治癒と、これによる組織における傷跡の形成を防止する。これは、EGFの受容体と結合して基底膜蛋白質の合成を増加させて、内皮細胞の成長を刺激する。TGFを使用することにより、皮膚弾力性の増加、毛髪成長の促進、傷治癒の促進、抗老化環境の組成の他に、様々な効果を得ることができる。
【0009】
このような成長因子を大量に生産するために、たくさんの研究者らが大腸菌発現システムを利用した組換え蛋白質の生産を試みているが、この方法は、天然型の成長因子を得るために、リフォールディングという追加工程と時間が要求されて、また精製過程で大腸菌由来の汚染源を除去するための複雑な精製過程を必要とするようになる。このような問題点を解決するために、一部成長因子の一部分のみを固体相合成の方法を利用して生産し、類似機能を得ようとする試みが報告された。例えば、米国特許第5,473,054号でJamesonらは、IGF−1の29−38及び61−70番の断片をそれぞれJB2とJB1と命名して、このペプチド断片の細胞成長効果とJB1の鏡像異性体 であるJB3のIGF−1阻害効果を報告した。また、Teruoらは、WO 03/048192で、IGF−1の33−37の断片とSubstance P由来テトラペプチドと傷治癒における相互補完作用に対して報告している。その他にも、Kodamaらは、Autoimmunity 37:481−487(2004)でIGF−1の50−70の断片がマウスで糖尿病治療に役に立つと報告している。
【0010】
本明細書全体にかけて多数の論文及び特許文献が参照され、その引用が表示されている。引用された論文及び特許文献の開示内容は、その全体が本明細書に参照として取り込まれ、本発明の属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、成長因子の中、ヒト由来の角質細胞成長因子、酸性線維芽細胞成長因子または形質転換成長因子と同一な機能を維持しながらも、天然の成長因子より活性、皮膚透過度及び安定性に優れた物質を開発するために鋭意研究した結果、天然の成長因子のアミノ酸配列に基づいて、上述の特性を示す多数の成長因子模倣(mimicking)ペプチドを合成することにより、本発明を完成した。
【0012】
したがって、本発明の目的は、成長因子活性を示すペプチドを提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、皮膚状態の改善用組成物を提供することにある。
【0014】
本発明のまた他の目的は、創傷治療用組成物を提供することにある。
【0015】
本発明のまた他の目的は、皮膚状態の改善方法を提供することにある。
【0016】
本発明のまた他の目的は、創傷治療方法を提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的及び利点は、発明の詳細な説明、請求の範囲及び図面により、さらに明確にされる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一様態によると、本発明は、成長因子由来であって、配列番号1乃至4に記載のアミノ酸配列から構成された群から選択される1種のアミノ酸配列を含む成長因子活性を示すペプチドを提供する。
【0019】
本発明者らは、成長因子の中、ヒト由来の角質細胞成長因子、酸性線維芽細胞成長因子または形質転換成長因子と同一な機能を維持しながらも、天然の成長因子より活性、皮膚透過度及び安定性に優れた物質を開発するために鋭意研究した結果、天然の成長因子のアミノ酸配列に基づいて、上述の特性を示す多数の成長因子模倣(mimicking)ペプチドを合成した。
【0020】
本発明のペプチドは、ヒト成長因子由来の配列番号1乃至4のアミノ酸配列から構成された群から選択されるアミノ酸配列を含む。好ましくは、本発明におけるペプチドは、配列番号1乃至4のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列で必須的に構成されている。最もこのましくは、本発明におけるペプチドは、配列番号1乃至4のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列から構成されている。
【0021】
本明細書において用語‘ペプチド’は、ペプチド結合により、アミノ酸残基が互いに結合されて形成された線形の分子を意味する。
【0022】
本発明のペプチドは、当業界に公知された化学的合成方法、特に固相合成技術(solid-phase synthesis techniques)により製造できる(Merrifield, J. Amer. Chem. Soc. 85:2149-54(1963); Stewart, et al., Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd. ed., Pierce Chem. Co.: Rockford, 111(1984))。
【0023】
本発明でペプチドのデザインは、図1に例示されている。
【0024】
成長因子の受容体蛋白質に対する結合可能部位を予測して、この予測された部位のアミノ酸配列を最適化して、本発明のペプチドが製造される。例えば、KGF(角質細胞成長因子)の場合、アミノ酸配列100〜140、aFGFの場合、アミノ酸配列110〜125、そしてTGF−αの場合、アミノ酸配列35〜49を受容体結合可能部位と予測する。そして、前記受容体結合可能部位の配列を参照し、候補ペプチドを製造して、これらの候補ペプチドの中、最も活性に優れたペプチドをスクリーニングすることにより、本発明のペプチドが提供される。
【0025】
配列番号1のペプチドは、天然ヒトKGF(角質細胞成長因子)のアミノ酸配列120〜127由来のものである。配列番号2のペプチドは、天然ヒトaFGFのアミノ酸配列111〜122由来のものである。配列番号3及び4のペプチドは、それぞれ天然ヒトTGF−αのアミノ酸配列10〜20及び38〜49由来のものである。
【0026】
本発明のペプチドは、それ自体が天然の成長因子より安定性に優れているが、アミノ酸の変形により安定性がさらに向上できる。本発明の好ましい具現例によると、ペプチドのC−末端は、ヒドロキシ基(−OH)またはアミノ基(−NH2)に変形されている。
【0027】
本発明の好ましい具現例によると、前記ペプチドのN−末端は、アセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基及びポリエチレングリコール(PEG)からなる群から選択される保護基が結合されている。
【0028】
上述のアミノ酸の変形は、本発明のペプチドの安定性を大きく改善する作用をする。本明細書において用語‘安定性’は、インビボ安定性だけではなく、貯蔵安定性(例えば、常温貯蔵安定性)も意味する。上述の保護基は、生体内のタンパク質切断酵素の攻撃から本発明のペプチドを保護する作用をする。
【0029】
本発明の他の様態によると、本発明は、上述の本発明の成長因子−模倣ペプチドを有効成分として含む、皮膚状態の改善用組成物を提供する。
【0030】
本発明のまた他の様態によると、本発明は、上述の本発明の成長因子−模倣ペプチドを有効成分として含む、創傷治療用組成物を提供する。
【0031】
本発明の他の様態によると、本発明は、上述の本発明のペプチドを有効成分として含む組成物を対象(subject)に投与する段階を含む皮膚状態の改善方法を提供する。
【0032】
本発明の他の様態によると、本発明は、上述の本発明のペプチドを有効成分として含む組成物を対象(subject)に投与する段階を含む創傷治療方法を提供する。
【0033】
本発明の組成物は、上述の本発明の成長因子−模倣ペプチドを有効成分として含むため、その共通する内容は、本明細書の過度なる複雑性を避けるためにその記載を省く。
【0034】
下記の実施例で立証されたように、本発明の成長因子−模倣ペプチドは、天然成長因子(KGF、aFGF及びTGF-α)と非常に優れた線維芽細胞及び角質細胞成長促進能力を有して、また、コラーゲンとフィブロネクチン生成促進を有する。したがって、本発明の組成物は、皮膚状態の改善に非常に有効である。
【0035】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の組成物は、シワの改善、皮膚弾力の改善、皮膚老化の防止、脱毛の防止または発毛の促進、皮膚保湿の改善、シミの除去、またはニキビの治療のような皮膚状態の改善に利用される。
【0036】
興味深いことに、本発明の成長因子−模倣ペプチドは、創傷治療に非常に卓越な効能を発揮し、これは、下記の実施例で立証されている。
【0037】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の組成物は、閉鎖創(closed wound)及び開放創(open wound)の治療に利用される。閉鎖創の例は、挫傷(contusion or Burise)を含み、開放創の例は、擦過傷(abrasion)、裂傷(laceration)、引き抜き(Avulsion)、貫通傷(penetrated wound)及び銃傷(gun shot wound)を含む。
【0038】
本発明の組成物は、薬剤学的組成物と化粧品組成物に製造できる。
【0039】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の組成物は、(a)上述の本発明の成長因子−模倣ペプチドの薬剤学的有効量、及び(b)薬剤学的に許容される担体を含む薬剤学的組成物である。
【0040】
本明細書において用語‘薬剤学的有効量’は、上述のペプチド−模倣ペプチドの効能または活性を達成するのに十分な量を意味する。
【0041】
本発明の薬剤学的組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常的に利用されるものであって、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、及びミネラルオイルなどを含むが、これらに限定されるものではない。本発明の薬剤学的組成物は、前記成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。適合する薬剤学的に許容される担体及び製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences (19th ed., 1995)に詳細に記載されている。
【0042】
本発明の薬剤学的組成物は、経口または非経口、好ましくは、非経口で投与でき、非経口投与の場合は、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、局所投与、経皮投与などにより投与できる。
【0043】
本発明の薬剤学的組成物の適した投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性、病的状態、飲食、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応感応性のような要因により様々である。一方、本発明の薬剤学的組成物の好ましい一日投与量は、0.001〜100mg/kgである。
【0044】
本発明の薬剤学的組成物は、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できる方法により、薬剤学的に許容される担体及び/または賦形剤を利用して製剤化することにより、単位容量形態に製造されるか、または多用量容器内に入れて製造できる。この際、剤形は、オイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液または乳化液の形態であるか、エキス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤またはゲル(例えば、ハイドロゲル)の形態であってもよく、分散剤または安定化剤をさらに含むことができる。
【0045】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の組成物は、(a)上述の本発明の成長因子−模倣ペプチドの化粧品学的有効量(cosmetically effective amount)、及び(b)化粧品学的に許容される担体を含む化粧品組成物である。
【0046】
本明細書において用語‘化粧品学的有効量’は、上述の本発明の組成物の皮膚改善効能を達成するのに十分な量を意味する。
【0047】
本発明の化粧品組成物は、当業界で通常的に製造されるいかなる剤形にも製造でき、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、石鹸、界面活性剤含有クレンジング、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション及びスプレーなどに剤形化することができるが、これに限定されるものではない。より詳しくは、柔軟化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、スプレーまたはパウダーの剤形に製造することができる。
【0048】
本発明の剤形がペースト、クリームまたはゲルである場合は、担体成分として動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルク、または酸化亜鉛などが利用できる。
【0049】
本発明の剤形がパウダーまたはスプレーである場合は、担体成分としてラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケート、またはポリアミドパウダーが利用でき、特にスプレーの場合は、クロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタンまたはジメチルエーテルのような推進体をさらに含むことができる。
【0050】
本発明の剤形が溶液または乳濁液の場合は、担体成分として、溶媒、溶解化剤または乳濁化剤が利用されて、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3−ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコール、またはソルビタンの脂肪酸エステルがある。
【0051】
本発明の剤形が懸濁液である場合は、担体成分として、水、エタノールまたはプロピレングリコールのような液状の希釈剤、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル及びポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁剤、微小結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガーまたはトラガカントなどが利用できる。
【0052】
本発明の剤形が界面活性剤含有クレンジングである場合は、担体成分として、脂肪族アルコールサルフェート、脂肪族アルコールエーテルサルフェート、スルホコハク酸モノエステル、イソチオネート、イミダゾリウム誘導体、メチルタウレート、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテルサルフェート、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性油、ラノリン誘導体、またはエトキシル化グリセロール脂肪酸エステルなどが利用できる。
【0053】
本発明の化粧料組成物に含まれる成分は、有効成分としてのbFGF変異体と担体成分の他に、化粧品組成物に通常的に利用される成分を含むが、例えば、抗酸化剤、安定化剤、溶解化剤、ビタミン、顔料及び香料のような通常的な補助剤を含むことができる。
【発明の効果】
【0054】
本発明の特徴及び利点を要約すると、次のようである:
(a)本発明の成長因子−模倣ペプチドは、天然のヒト成長因子と同様な機能または作用をすることができる。
(b)本発明のペプチドは、その安定性が、天然成長因子に比べ非常に優れており、また皮膚透過度が非常に高い。
(c)したがって、本発明のペプチドを含む組成物は、成長因子の活性が要求される疾患または状態を治療、予防、または改善するのに非常に優れた効能を発揮する。
(d)上述の本発明のペプチドの優れた活性及び安定性は、医薬、医薬外品及び化粧品に非常に有利に適用できるようにする。
【0055】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明するが、これら実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれら実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】成長因子のアミノ酸配列及び本発明のペプチドとして選定された部位を示す。
【図2a】本発明の合成例により製造された配列番号1のペプチドの高性能液体クロマトグラフィー分析結果を示すグラフである。
【図2b】本発明の合成例により製造された配列番号2のペプチドの高性能液体クロマトグラフィー分析結果を示すグラフである。
【図2c】本発明の合成例により製造された配列番号3のペプチドの高性能液体クロマトグラフィー分析結果を示すグラフである。
【図2d】本発明の合成例により製造された配列番号4のペプチドの高性能液体クロマトグラフィー分析結果を示すグラフである。
【図3a】本発明の合成例により製造されたペプチド1−4を処理した角質細胞の細胞成長促進効果を示したグラフである。
【図3b】本発明の合成例により製造されたペプチド1−4を処理した線維芽細胞の細胞成長促進効果を示したグラフである。
【図4】本発明のペプチド1−4を処理した線維芽細胞と角質細胞の細胞成長促進効果を顕微鏡で確認した写真である。
【図5a】本発明のペプチド1−4が処理された角質細胞における増加されたコラーゲン生成量を示したグラフである。
【図5b】本発明のペプチド1−4が処理された角質細胞における増加されたフィブロネクチン生成量を示したグラフである。
【図6】本発明のペプチド及び天然酸性繊維芽細胞成長因子(aFGF)の熱安定性を比較したグラフである。
【図7】本発明のペプチドを含有したハイドロゲルの写真である。
【図8】本発明のペプチドを含有したハイドロゲルを10日間マウスの傷部位に処理して、傷部位組織を切開し、傷治療効果を検鏡した組織写真である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
合成例1:Ac-Tyr-Lys-Ser-Lys-Lys-Gly-Gly-Trp-Thr-His(配列番号1)の合成
クロロトリチルクロライドレジン(chloro trityl chloride resin;CTL resin, Nova Biochem Cat No. 01-64-0021)700mgを反応容器に入れて、メチレンクロライド(MC)10mlを加えて3分間攪拌した。溶液を除去し、ジメチルホルムアミド(DMF)を10ml入れて3分間攪拌した後、再び溶媒を除去した。反応器に10mlのジクロロメタン溶液を入れて、Fmoc-His(Trt)-OH(Bachem, スイス)200mmole及びジイソプロピルエチルアミン(DIEA)400mmoleを入れた後、攪拌してよく溶かして、1時間攪拌しながら反応させた。反応後、洗浄して、メタノールとDIEA(2:1)をDCMに溶かして10分間反応した後、過量のDCM/DMF(1:1)で洗浄した。溶液を除去し、ジメチルホルムアミド(DMF)を10ml入れて3分間攪拌した後、再び溶媒を除去した。脱保護溶液(20%のピペリジン/DMF)10mlを反応容器に入れて、10分間常温で攪拌した後、溶液を除去した。同量の脱保護溶液を入れて、再び10分間反応を維持した後、溶液を除去し、DMFで2回、MCで1回、再びDMFで3分間1回洗浄して、His-(Trt)-CTLレジンを製造した。新しい反応器に10mlのDMF溶液を入れて、Fmoc-Thr(tBu)-OH(Bachem, スイス)200mmole、HoBt 200mmole及びBop 200mmoleを入れた後、攪拌してよく溶解させた。反応器に400mmoleのDIEAを分画で2回に分けて入れて、全ての固体が溶解されるまで少なくとも5分間攪拌した。溶解されたアミノ酸混合溶液を、脱保護されたレジンが入っている反応容器に入れて、1時間常温で攪拌しながら反応させた。反応液を除去し、DMF溶液で5分間ずつ3回攪拌して除去した。反応レジンを少量取って、カイザーテスト(Ninhydrine test)を利用して反応程度を点検した。脱保護溶液で上記と同様に2回脱保護反応し、Thr(tBu)-His(Trt)-CTL Resinを製造した。DMFとMCで十分洗浄し、再びカイザーテストを行った後、上記と同様に下記のアミノ酸付着実験を行った。図1のように選定されたアミノ酸配列に基づき、Fmoc-Trp, Fmoc-Gly, Fmoc-Gly, Fmoc-Lys(Boc), Fmoc-Lys(Boc), Fmoc-Ser(tBu), Fmoc-Lys(Boc), 及びFmoc-Tyr(tBu)の順に連鎖反応を行った。Fmoc-保護基を脱保護溶液で10分間ずつ2回反応した後、よく洗浄して除去した。無水酢酸とDIEA、HoBtを入れて一時間アセチル化を行った後、製造されたペプチジルレジンをDMF、MC及びメタノールでそれぞれ3回洗浄し、窒素空気を徐々に流して乾燥した後、P2O5下で真空に減圧して完全に乾燥した後、脱漏溶液[トリフルオロ化酢酸(TFA)81.5%、蒸留水5%、チオアニソール5%、フェノール5%、EDT2.5%、TIS 1%]30mlを入れて、常温で時々振りながら2時間反応を維持した。フィルタリングでレジンを濾過し、レジンを少量のTFA溶液で洗浄した後、母液と合わせた。減圧を利用して、全体容量が半分ぐらい残るように蒸留して、50mlの冷たいエーテルを加えて沈澱を誘導した後、遠心分離して沈澱を集め、さらに2回冷たいエーテルで洗浄した。母液を除去して窒素下で十分乾燥し、精製前のAc-YKSKKGGWTHペプチド1を1.18g合成した(収率72.6%)。分子量測定器を利用して測定時、分子量1233.8(理論値1233.4)が得られた。
【0058】
合成例2:他のペプチドの合成
前記合成例1と同様な方法により合成するが、アミノ酸は、配列に符合するアミノ酸を使用して、配列番号2−4のペプチドを合成した。配列番号2(Tyr-Ile-Ser-Lys-Lys-His-Ala-Gly-Lys-Asn-Trp-Phe: YISKKHAGKNWF)は、aFGFF 111−122配列、配列番号3(Asp-Ser-His-Thr-Gln- Tyr-Cys-Phe-His-Gly-Thr: DSHTQYCFHGT)は、TGFα 10−20、配列番号4(Gly-Tyr-Val-Gly-Val-Arg-Cys-Glu-Ala-Ala-Asp-Leu-Asp-Ala: GYVGVRCEAADLDA)は、TGFαのアミノ酸残基38−49に該当する。合成されたペプチドに対する分子量測定器による測定値は、表1に示した通りである:
【0059】
【表1】
【0060】
試験例1:合成ペプチドのHaCaT角質細胞及びNIH3T3線維芽細胞成長促進効果の分析
合成例1及び2に記載の4種のペプチドに対する成長因子−1の類似効能を分析するために、Rizzinoらの方法(Rizzino, et al. Cancer Res., 48:4266(1988))などを参照し、HaCaT角質細胞株とNIH3T3線維芽細胞を利用したSRB(Sulforhodamine B)の比色法を利用して測定した。
【0061】
HaCaT角質細胞株(The Korean Cell Line Bank)及びNIH3T3線維芽細胞(The Korean Cell Line Bank)を、それぞれ250ml容量の組織培養用フラスコを利用し、100%FBS(fetal bovine serum)の含有されたEMEM(Eagle's minimal essential media, Gibco, U.S.A.)で培養した。培養された細胞株を、0.25%トリプシン溶液で培養容器の底から取り外した後、遠心分離して細胞沈殿物のみを集めた。これを、FBSが含有されていないEMEM培養液に再び懸濁した後、96ウェル組織培養用平板に、各ウェル当たり4×103細胞となるように入れて、24時間37℃、7%CO2条件下で培養した。24時間後、血清を完全に排除した同一な培養液で培地を入れ替えた後、標準を取るための空試料、ヒトの酸性線維芽細胞成長因子(NIBSC、UK)、合成ペプチドの4種を、水と10%DMSOに滅菌状態で溶解した後、10ngと1,000ngの濃度で72時間、上記の同一条件で培養した。培養が完了した後、培養上清液を除去して、PBSで1回洗浄した。洗浄溶液を除去した後、比色SRB溶液で処理し、PBSで十分洗浄した後、顕微鏡で細胞を観察し、生存細胞の状態を観察して、紫外線590nmで吸光度を測定し、細胞の生存状態を測定した。
【0062】
図3a及び図3bは、それぞれ角質細胞及び線維芽細胞の成長に対する結果が示されており、図4には、細胞にペプチドを処理後、72時間後に細胞の生存状態を顕微鏡で検鏡して、線維芽細胞及び角質細胞の成長を確認した。
【0063】
図3aから分かるように、本発明の4種のペプチドは、角質細胞の成長を増進させた。特に、ペプチド1、3及び4が角質細胞の成長に対して優れた促進効果を示した。また、図3bから分かるように、本発明の4種のペプチドは、線維芽細胞の成長を増進させた。特に、ペプチド1及び2が線維芽細胞の成長に対して優れた促進効果を示した。また、顕微鏡観察結果である図4から分かるように、本発明のペプチドは、角質細胞及び線維芽細胞の成長を大きく促進させることが分かる。
【0064】
試験例2:合成ペプチドのコラーゲン及びフィブロネクチン生成促進効果の分析
48時間を培養したHaCaTに、合成したペプチド4種を処理して、72時間経過後、皮膚シワ改善の標識であるプロコラーゲン及びフィブロネクチンの濃度を測定した。濃度測定は、Procollagen ELISAキット(Takara、Japan)及びFibronectinキット(CHEMICON、米国)を利用して行った。図5aから分かるように、本発明の4種のペプチドは、角質細胞のプロコラーゲン生成を増加させた。特に、ペプチド2が最も優れたプロコラーゲン生成促進能を示した。また、図5bから分かるように、本発明の4種ペプチドは、角質細胞のフィブロネクチン生成を増加させた。特に、ペプチド1及び4の優れたプロコラーゲン生成促進能を示した。
【0065】
試験例1及び2の実験結果からみると、本発明のペプチドは、非常に優れた皮膚改善効能を発揮するということが分かる。
【0066】
試験例3:製造されたペプチドの熱安定性
合成例1及び2を通じて製造された4種のペプチドとNIBSC(英国)で購入した標準品成長因子(KGF, aFGF及びTGF-α)を0.11mg/mlの濃度にPhosphate緩衝液で調製した。用意された溶液を1mlずつガラスバイアルに入れた後、37℃で静置した。37℃に静置された溶液を0, 5, 10, 20, 25, 30, 40, 60そして100日目にサンプリングして、日付別に遠心分離して変性されたペプチドや蛋白質を除去して、上澄液を取って、HPLCを利用して定量をした(図6)。合成ペプチドの場合、天然の成長因子より残存量が高くて、これを試料として試験例1と同一な方法で細胞に処理した後、MTT方法(Scudiero, D. A., et al. Cancer Res. 48:4827-4833(1988))を使用して、残存している活性を測定することによりペプチドの熱安定性を分析した結果、全ての場合、成長因子類より活性度がさらに高いことが分かった。
【0067】
実施例1:ナノ化ペプチドの製造
前記合成例から得られたペプチド4種を、50mgをそれぞれ正確に秤量した後、蒸留水500mlで十分に攪拌して溶解した。配合体溶液を、レシチン5g、オレイン酸ナトリウム(sodium oleate)0.3ml、エタノール50ml及び少量のオイルと共に混合した後、総量が1Lとなるように蒸留水で調節した後、マイクロ流動化装置(microfluidizer)を利用して高圧で乳化し、大きさ100nm程度のナノソームを製造した。製造されたナノソームは、最終濃度が約50ppmで、単独あるいは複合的に化粧品製造用に使用された。
【0068】
剤形例1:柔軟化粧水
前記実施例1で製造された4種のペプチドナノソームの中、少なくとも一種類のナノソームを含み、下記組成からなる柔軟化粧水を、一般的な化粧水製造方法により製造した。
【0069】
【表2】
【0070】
剤形例2:栄養クリーム
前記実施例1で製造された4種のペプチドナノソームの中、少なくとも一種類のナノソームを含み、下記組成からなる栄養クリームを、一般的な栄養クリームの製造方法により製造した。
【0071】
【表3】
【0072】
剤形例3:栄養化粧水
前記実施例1で製造された4種のペプチドナノソームの中、少なくとも一種類のナノソームを含み、下記組成からなる栄養化粧水を、一般的な化粧水の製造方法により製造した。
【0073】
【表4】
【0074】
剤形例4:エッセンス
前記実施例1で製造された4種のペプチドナノソームの中、少なくとも一種類のナノソームを含み、下記組成からなるエッセンスを、一般的なエッセンスの製造方法により製造した。
【0075】
【表5】
【0076】
剤形例5:傷治療用ハイドロゲル
前記実施例1で製造された4種のペプチドナノソームを同時に含み、下記組成からなるハイドロゲルパッチを製造した(図7)。ドクターブレードとローラーで加工した後、焼成し、1×1cm2のハイドロゲル薄片を作って、実験に使用した。その薄片を図7に記載した。
【0077】
【表6】
【0078】
試験例4:製造されたペプチドナノソームの動物モデルにおける傷治癒効果
Balb/Cマウスの背中部位の毛を除毛した後、手術用使い捨てナイフで約3mm〜5mmになるように傷を付けた。一日が経った後、製造された複合ペプチドハイドロゲルパッチと陽性対照群としてのaFGFをそれぞれの傷部位に塗布した。三日後、同量のペプチドを含むハイドロゲルパッチとaFGFを前の傷部位に再び付着した。7日後に傷治癒効果を肉眼で識別して確認し、その結果を図8に示した。図8から分かるように、何の処理もしなかった傷部位(陰性対照群)に比べて、複合ペプチド処理をした傷部位では傷治癒効果が肉眼で確認されて、特にペプチド接合体処理をした傷部位は、経過時間が長いほど、aFGF処理をした傷部位よりも著しく治療効果が高いことが肉眼で識別が可能であった。これは、本発明のペプチドが、天然の成長因子より体外でさらに安定して、長期間にかけて傷部位に作用をしたから出た結果と判断される。さらに、本発明のペプチドを含有した化粧品及びハイドロゲルの場合、成長因子の活性を維持しながら、増加された成体内半減期による皮膚改善効果及び創傷などの治療効果が明白であると判断される。
【0079】
以上、本発明の望ましい具現例を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者にとっては、このような具体的な記述はただ望ましい具現例に過ぎなく、これに本発明の範囲が限定されないことは明らかである。従って、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とその等価物により定義されると言える。
【技術分野】
【0001】
本発明は、成長因子活性を示す成長因子−模倣ペプチド、これを含む皮膚状態改善または創傷治療用組成物及び皮膚状態改善または創傷治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の脳下垂体(pituitary gland)から分泌される成長ホルモンは、細胞成長及び分化に直接的に関与すると知られており、軟骨や骨の成長及び発育促進、筋肉や肝などの臓器復元、傷の再生だけではなく、感染などの免疫機能にも影響を及ぼす。だけではなく、老化が進行されるほど成長ホルモンの生産量がだんだん減少して、60代になると、20代に比べて1/4水準に落ちると報告されており、足りない成長ホルモンを補充する抗老化ホルモン治療の中心として使用され始めている。
【0003】
成長ホルモンは、細胞で成長ホルモン受容体(growth hormone receptor)に直接結合するか、インシュリン様成長因子I(IGF-I: insulin-like growth factor I)の分泌を誘発し、細胞内信号伝達物質であるヤヌスキナーゼ(JAK; Janus kinases)/転写信号伝達剤及び活性化剤(STAT; Signal Transducers and Activators of Transcription)やミトゲン−活性化された蛋白質キナーゼ(MAPK; mitogen-activated protein kinase)、ホスファチジル−3キナーゼ(PI3K; phosphatidyl-3 kinase)などを活性化させて、毛嚢細胞や皮膚内線維芽細胞の成長を促進して、bcl−2−様(bcl-2-like)遺伝子であるbcl−wを通じてアポトーシス(apoptosis)を抑制すると判断されている。このような成長因子の効能は、たくさんの研究者らにより明かされて、その有用度のため、多い企業が商用化をしている。
【0004】
線維芽細胞成長因子(FGF)は、二つの形態、即ち、酸性FGF(aFGF)及び塩基性FGF(bFGF)形態に存在して、これらの二つの形態は、哺乳類の脳から分離及び精製できると明かされた(Thomas and Gimenez-Gallego, TIBS 11:81-84(1986))。
【0005】
特に、成長因子類の中、酸性線維芽細胞成長因子(aFGF)は、154個のアミノ酸から構成された蛋白質であって、動物細胞、特に人間細胞の生長を調節するなど、組織回復及び傷の治癒関する生医学的研究において、主要物質の一つである。酸性線維芽細胞類似分裂物質は、トロウェル(Trowell)ら(J. Exp. Biol. 16:60-70(1939))及びホフマン(Hoffman)(Growth 4:361-376(1940))により最初に記述されて、次いで脳下垂体抽出物も同様に線維芽細胞類に対する強力な類似分裂物質活性を有することが明かされた(Amelin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 70:2702-2706(1973))。
【0006】
数多い細胞株が、精製されたaFGFによる刺激に反応してDNAを合成して分裂するが、その種類は、一次線維芽細胞、血管及び角膜内皮細胞、軟骨細胞、骨髄芽細胞、線筋芽細胞、平滑筋、神経膠細胞及び神経芽細胞が挙げられる(Each et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:6507-6511(1985); Kuo et al., Fed. Proc. 44:695(1985); Gensburger et al., C.R. Acad. Sc. Paris 303:465-468(1986))。また、aFGFは、培養された血管内皮細胞に対する強力な類似分裂物質として作用するだけではなく、生体内で血管生長を誘導する(Thomas. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:6409-6413(1985))。また、精製されたaFGFの類似分裂物質活性は、傷の回復を促進させるに利用できる(Thomas, 米国特許第4,444,760号)。
【0007】
一方、角質細胞成長因子(KGF)は、163個のアミノ酸から構成された蛋白質であって、外皮細胞の分裂を促進し、多様な傷から速い再生を可能にする。KGFは、線維芽細胞成長因子群の一員として多様な種類の細胞類型に影響を及ぼす。KGFは、細胞間の付着、細胞の分裂、そして老化を含んだ多様な原因による細胞の傷害を治癒するのに重要な役割をする。KGFは、毛髪において、毛髪成長初期段階で細胞世代間の架橋役割をするのにおいて重要な役割をする。KGFを、皮膚弾力の増加、毛髪成長の促進、傷治癒促進の他にも、多様なところに使用できる。
【0008】
また、形質転換成長因子(TGF)は、皮膚の深いところでさらに若くて健康に維持するように、皮膚細胞の成長と分化に重要な作用をするサイトカインである。例えば、変換と回復を通じて、老いて傷付けられた細胞は、さらに健康で且つ生産的な細胞に変わるようになる。TGFは、既に傷付けられた細胞の治癒と、これによる組織における傷跡の形成を防止する。これは、EGFの受容体と結合して基底膜蛋白質の合成を増加させて、内皮細胞の成長を刺激する。TGFを使用することにより、皮膚弾力性の増加、毛髪成長の促進、傷治癒の促進、抗老化環境の組成の他に、様々な効果を得ることができる。
【0009】
このような成長因子を大量に生産するために、たくさんの研究者らが大腸菌発現システムを利用した組換え蛋白質の生産を試みているが、この方法は、天然型の成長因子を得るために、リフォールディングという追加工程と時間が要求されて、また精製過程で大腸菌由来の汚染源を除去するための複雑な精製過程を必要とするようになる。このような問題点を解決するために、一部成長因子の一部分のみを固体相合成の方法を利用して生産し、類似機能を得ようとする試みが報告された。例えば、米国特許第5,473,054号でJamesonらは、IGF−1の29−38及び61−70番の断片をそれぞれJB2とJB1と命名して、このペプチド断片の細胞成長効果とJB1の鏡像異性体 であるJB3のIGF−1阻害効果を報告した。また、Teruoらは、WO 03/048192で、IGF−1の33−37の断片とSubstance P由来テトラペプチドと傷治癒における相互補完作用に対して報告している。その他にも、Kodamaらは、Autoimmunity 37:481−487(2004)でIGF−1の50−70の断片がマウスで糖尿病治療に役に立つと報告している。
【0010】
本明細書全体にかけて多数の論文及び特許文献が参照され、その引用が表示されている。引用された論文及び特許文献の開示内容は、その全体が本明細書に参照として取り込まれ、本発明の属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、成長因子の中、ヒト由来の角質細胞成長因子、酸性線維芽細胞成長因子または形質転換成長因子と同一な機能を維持しながらも、天然の成長因子より活性、皮膚透過度及び安定性に優れた物質を開発するために鋭意研究した結果、天然の成長因子のアミノ酸配列に基づいて、上述の特性を示す多数の成長因子模倣(mimicking)ペプチドを合成することにより、本発明を完成した。
【0012】
したがって、本発明の目的は、成長因子活性を示すペプチドを提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、皮膚状態の改善用組成物を提供することにある。
【0014】
本発明のまた他の目的は、創傷治療用組成物を提供することにある。
【0015】
本発明のまた他の目的は、皮膚状態の改善方法を提供することにある。
【0016】
本発明のまた他の目的は、創傷治療方法を提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的及び利点は、発明の詳細な説明、請求の範囲及び図面により、さらに明確にされる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一様態によると、本発明は、成長因子由来であって、配列番号1乃至4に記載のアミノ酸配列から構成された群から選択される1種のアミノ酸配列を含む成長因子活性を示すペプチドを提供する。
【0019】
本発明者らは、成長因子の中、ヒト由来の角質細胞成長因子、酸性線維芽細胞成長因子または形質転換成長因子と同一な機能を維持しながらも、天然の成長因子より活性、皮膚透過度及び安定性に優れた物質を開発するために鋭意研究した結果、天然の成長因子のアミノ酸配列に基づいて、上述の特性を示す多数の成長因子模倣(mimicking)ペプチドを合成した。
【0020】
本発明のペプチドは、ヒト成長因子由来の配列番号1乃至4のアミノ酸配列から構成された群から選択されるアミノ酸配列を含む。好ましくは、本発明におけるペプチドは、配列番号1乃至4のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列で必須的に構成されている。最もこのましくは、本発明におけるペプチドは、配列番号1乃至4のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列から構成されている。
【0021】
本明細書において用語‘ペプチド’は、ペプチド結合により、アミノ酸残基が互いに結合されて形成された線形の分子を意味する。
【0022】
本発明のペプチドは、当業界に公知された化学的合成方法、特に固相合成技術(solid-phase synthesis techniques)により製造できる(Merrifield, J. Amer. Chem. Soc. 85:2149-54(1963); Stewart, et al., Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd. ed., Pierce Chem. Co.: Rockford, 111(1984))。
【0023】
本発明でペプチドのデザインは、図1に例示されている。
【0024】
成長因子の受容体蛋白質に対する結合可能部位を予測して、この予測された部位のアミノ酸配列を最適化して、本発明のペプチドが製造される。例えば、KGF(角質細胞成長因子)の場合、アミノ酸配列100〜140、aFGFの場合、アミノ酸配列110〜125、そしてTGF−αの場合、アミノ酸配列35〜49を受容体結合可能部位と予測する。そして、前記受容体結合可能部位の配列を参照し、候補ペプチドを製造して、これらの候補ペプチドの中、最も活性に優れたペプチドをスクリーニングすることにより、本発明のペプチドが提供される。
【0025】
配列番号1のペプチドは、天然ヒトKGF(角質細胞成長因子)のアミノ酸配列120〜127由来のものである。配列番号2のペプチドは、天然ヒトaFGFのアミノ酸配列111〜122由来のものである。配列番号3及び4のペプチドは、それぞれ天然ヒトTGF−αのアミノ酸配列10〜20及び38〜49由来のものである。
【0026】
本発明のペプチドは、それ自体が天然の成長因子より安定性に優れているが、アミノ酸の変形により安定性がさらに向上できる。本発明の好ましい具現例によると、ペプチドのC−末端は、ヒドロキシ基(−OH)またはアミノ基(−NH2)に変形されている。
【0027】
本発明の好ましい具現例によると、前記ペプチドのN−末端は、アセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基及びポリエチレングリコール(PEG)からなる群から選択される保護基が結合されている。
【0028】
上述のアミノ酸の変形は、本発明のペプチドの安定性を大きく改善する作用をする。本明細書において用語‘安定性’は、インビボ安定性だけではなく、貯蔵安定性(例えば、常温貯蔵安定性)も意味する。上述の保護基は、生体内のタンパク質切断酵素の攻撃から本発明のペプチドを保護する作用をする。
【0029】
本発明の他の様態によると、本発明は、上述の本発明の成長因子−模倣ペプチドを有効成分として含む、皮膚状態の改善用組成物を提供する。
【0030】
本発明のまた他の様態によると、本発明は、上述の本発明の成長因子−模倣ペプチドを有効成分として含む、創傷治療用組成物を提供する。
【0031】
本発明の他の様態によると、本発明は、上述の本発明のペプチドを有効成分として含む組成物を対象(subject)に投与する段階を含む皮膚状態の改善方法を提供する。
【0032】
本発明の他の様態によると、本発明は、上述の本発明のペプチドを有効成分として含む組成物を対象(subject)に投与する段階を含む創傷治療方法を提供する。
【0033】
本発明の組成物は、上述の本発明の成長因子−模倣ペプチドを有効成分として含むため、その共通する内容は、本明細書の過度なる複雑性を避けるためにその記載を省く。
【0034】
下記の実施例で立証されたように、本発明の成長因子−模倣ペプチドは、天然成長因子(KGF、aFGF及びTGF-α)と非常に優れた線維芽細胞及び角質細胞成長促進能力を有して、また、コラーゲンとフィブロネクチン生成促進を有する。したがって、本発明の組成物は、皮膚状態の改善に非常に有効である。
【0035】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の組成物は、シワの改善、皮膚弾力の改善、皮膚老化の防止、脱毛の防止または発毛の促進、皮膚保湿の改善、シミの除去、またはニキビの治療のような皮膚状態の改善に利用される。
【0036】
興味深いことに、本発明の成長因子−模倣ペプチドは、創傷治療に非常に卓越な効能を発揮し、これは、下記の実施例で立証されている。
【0037】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の組成物は、閉鎖創(closed wound)及び開放創(open wound)の治療に利用される。閉鎖創の例は、挫傷(contusion or Burise)を含み、開放創の例は、擦過傷(abrasion)、裂傷(laceration)、引き抜き(Avulsion)、貫通傷(penetrated wound)及び銃傷(gun shot wound)を含む。
【0038】
本発明の組成物は、薬剤学的組成物と化粧品組成物に製造できる。
【0039】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の組成物は、(a)上述の本発明の成長因子−模倣ペプチドの薬剤学的有効量、及び(b)薬剤学的に許容される担体を含む薬剤学的組成物である。
【0040】
本明細書において用語‘薬剤学的有効量’は、上述のペプチド−模倣ペプチドの効能または活性を達成するのに十分な量を意味する。
【0041】
本発明の薬剤学的組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常的に利用されるものであって、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、及びミネラルオイルなどを含むが、これらに限定されるものではない。本発明の薬剤学的組成物は、前記成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。適合する薬剤学的に許容される担体及び製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences (19th ed., 1995)に詳細に記載されている。
【0042】
本発明の薬剤学的組成物は、経口または非経口、好ましくは、非経口で投与でき、非経口投与の場合は、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、局所投与、経皮投与などにより投与できる。
【0043】
本発明の薬剤学的組成物の適した投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性、病的状態、飲食、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応感応性のような要因により様々である。一方、本発明の薬剤学的組成物の好ましい一日投与量は、0.001〜100mg/kgである。
【0044】
本発明の薬剤学的組成物は、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できる方法により、薬剤学的に許容される担体及び/または賦形剤を利用して製剤化することにより、単位容量形態に製造されるか、または多用量容器内に入れて製造できる。この際、剤形は、オイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液または乳化液の形態であるか、エキス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤またはゲル(例えば、ハイドロゲル)の形態であってもよく、分散剤または安定化剤をさらに含むことができる。
【0045】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の組成物は、(a)上述の本発明の成長因子−模倣ペプチドの化粧品学的有効量(cosmetically effective amount)、及び(b)化粧品学的に許容される担体を含む化粧品組成物である。
【0046】
本明細書において用語‘化粧品学的有効量’は、上述の本発明の組成物の皮膚改善効能を達成するのに十分な量を意味する。
【0047】
本発明の化粧品組成物は、当業界で通常的に製造されるいかなる剤形にも製造でき、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、石鹸、界面活性剤含有クレンジング、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション及びスプレーなどに剤形化することができるが、これに限定されるものではない。より詳しくは、柔軟化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、スプレーまたはパウダーの剤形に製造することができる。
【0048】
本発明の剤形がペースト、クリームまたはゲルである場合は、担体成分として動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルク、または酸化亜鉛などが利用できる。
【0049】
本発明の剤形がパウダーまたはスプレーである場合は、担体成分としてラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケート、またはポリアミドパウダーが利用でき、特にスプレーの場合は、クロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタンまたはジメチルエーテルのような推進体をさらに含むことができる。
【0050】
本発明の剤形が溶液または乳濁液の場合は、担体成分として、溶媒、溶解化剤または乳濁化剤が利用されて、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3−ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコール、またはソルビタンの脂肪酸エステルがある。
【0051】
本発明の剤形が懸濁液である場合は、担体成分として、水、エタノールまたはプロピレングリコールのような液状の希釈剤、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル及びポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁剤、微小結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガーまたはトラガカントなどが利用できる。
【0052】
本発明の剤形が界面活性剤含有クレンジングである場合は、担体成分として、脂肪族アルコールサルフェート、脂肪族アルコールエーテルサルフェート、スルホコハク酸モノエステル、イソチオネート、イミダゾリウム誘導体、メチルタウレート、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテルサルフェート、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性油、ラノリン誘導体、またはエトキシル化グリセロール脂肪酸エステルなどが利用できる。
【0053】
本発明の化粧料組成物に含まれる成分は、有効成分としてのbFGF変異体と担体成分の他に、化粧品組成物に通常的に利用される成分を含むが、例えば、抗酸化剤、安定化剤、溶解化剤、ビタミン、顔料及び香料のような通常的な補助剤を含むことができる。
【発明の効果】
【0054】
本発明の特徴及び利点を要約すると、次のようである:
(a)本発明の成長因子−模倣ペプチドは、天然のヒト成長因子と同様な機能または作用をすることができる。
(b)本発明のペプチドは、その安定性が、天然成長因子に比べ非常に優れており、また皮膚透過度が非常に高い。
(c)したがって、本発明のペプチドを含む組成物は、成長因子の活性が要求される疾患または状態を治療、予防、または改善するのに非常に優れた効能を発揮する。
(d)上述の本発明のペプチドの優れた活性及び安定性は、医薬、医薬外品及び化粧品に非常に有利に適用できるようにする。
【0055】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明するが、これら実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれら実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】成長因子のアミノ酸配列及び本発明のペプチドとして選定された部位を示す。
【図2a】本発明の合成例により製造された配列番号1のペプチドの高性能液体クロマトグラフィー分析結果を示すグラフである。
【図2b】本発明の合成例により製造された配列番号2のペプチドの高性能液体クロマトグラフィー分析結果を示すグラフである。
【図2c】本発明の合成例により製造された配列番号3のペプチドの高性能液体クロマトグラフィー分析結果を示すグラフである。
【図2d】本発明の合成例により製造された配列番号4のペプチドの高性能液体クロマトグラフィー分析結果を示すグラフである。
【図3a】本発明の合成例により製造されたペプチド1−4を処理した角質細胞の細胞成長促進効果を示したグラフである。
【図3b】本発明の合成例により製造されたペプチド1−4を処理した線維芽細胞の細胞成長促進効果を示したグラフである。
【図4】本発明のペプチド1−4を処理した線維芽細胞と角質細胞の細胞成長促進効果を顕微鏡で確認した写真である。
【図5a】本発明のペプチド1−4が処理された角質細胞における増加されたコラーゲン生成量を示したグラフである。
【図5b】本発明のペプチド1−4が処理された角質細胞における増加されたフィブロネクチン生成量を示したグラフである。
【図6】本発明のペプチド及び天然酸性繊維芽細胞成長因子(aFGF)の熱安定性を比較したグラフである。
【図7】本発明のペプチドを含有したハイドロゲルの写真である。
【図8】本発明のペプチドを含有したハイドロゲルを10日間マウスの傷部位に処理して、傷部位組織を切開し、傷治療効果を検鏡した組織写真である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
合成例1:Ac-Tyr-Lys-Ser-Lys-Lys-Gly-Gly-Trp-Thr-His(配列番号1)の合成
クロロトリチルクロライドレジン(chloro trityl chloride resin;CTL resin, Nova Biochem Cat No. 01-64-0021)700mgを反応容器に入れて、メチレンクロライド(MC)10mlを加えて3分間攪拌した。溶液を除去し、ジメチルホルムアミド(DMF)を10ml入れて3分間攪拌した後、再び溶媒を除去した。反応器に10mlのジクロロメタン溶液を入れて、Fmoc-His(Trt)-OH(Bachem, スイス)200mmole及びジイソプロピルエチルアミン(DIEA)400mmoleを入れた後、攪拌してよく溶かして、1時間攪拌しながら反応させた。反応後、洗浄して、メタノールとDIEA(2:1)をDCMに溶かして10分間反応した後、過量のDCM/DMF(1:1)で洗浄した。溶液を除去し、ジメチルホルムアミド(DMF)を10ml入れて3分間攪拌した後、再び溶媒を除去した。脱保護溶液(20%のピペリジン/DMF)10mlを反応容器に入れて、10分間常温で攪拌した後、溶液を除去した。同量の脱保護溶液を入れて、再び10分間反応を維持した後、溶液を除去し、DMFで2回、MCで1回、再びDMFで3分間1回洗浄して、His-(Trt)-CTLレジンを製造した。新しい反応器に10mlのDMF溶液を入れて、Fmoc-Thr(tBu)-OH(Bachem, スイス)200mmole、HoBt 200mmole及びBop 200mmoleを入れた後、攪拌してよく溶解させた。反応器に400mmoleのDIEAを分画で2回に分けて入れて、全ての固体が溶解されるまで少なくとも5分間攪拌した。溶解されたアミノ酸混合溶液を、脱保護されたレジンが入っている反応容器に入れて、1時間常温で攪拌しながら反応させた。反応液を除去し、DMF溶液で5分間ずつ3回攪拌して除去した。反応レジンを少量取って、カイザーテスト(Ninhydrine test)を利用して反応程度を点検した。脱保護溶液で上記と同様に2回脱保護反応し、Thr(tBu)-His(Trt)-CTL Resinを製造した。DMFとMCで十分洗浄し、再びカイザーテストを行った後、上記と同様に下記のアミノ酸付着実験を行った。図1のように選定されたアミノ酸配列に基づき、Fmoc-Trp, Fmoc-Gly, Fmoc-Gly, Fmoc-Lys(Boc), Fmoc-Lys(Boc), Fmoc-Ser(tBu), Fmoc-Lys(Boc), 及びFmoc-Tyr(tBu)の順に連鎖反応を行った。Fmoc-保護基を脱保護溶液で10分間ずつ2回反応した後、よく洗浄して除去した。無水酢酸とDIEA、HoBtを入れて一時間アセチル化を行った後、製造されたペプチジルレジンをDMF、MC及びメタノールでそれぞれ3回洗浄し、窒素空気を徐々に流して乾燥した後、P2O5下で真空に減圧して完全に乾燥した後、脱漏溶液[トリフルオロ化酢酸(TFA)81.5%、蒸留水5%、チオアニソール5%、フェノール5%、EDT2.5%、TIS 1%]30mlを入れて、常温で時々振りながら2時間反応を維持した。フィルタリングでレジンを濾過し、レジンを少量のTFA溶液で洗浄した後、母液と合わせた。減圧を利用して、全体容量が半分ぐらい残るように蒸留して、50mlの冷たいエーテルを加えて沈澱を誘導した後、遠心分離して沈澱を集め、さらに2回冷たいエーテルで洗浄した。母液を除去して窒素下で十分乾燥し、精製前のAc-YKSKKGGWTHペプチド1を1.18g合成した(収率72.6%)。分子量測定器を利用して測定時、分子量1233.8(理論値1233.4)が得られた。
【0058】
合成例2:他のペプチドの合成
前記合成例1と同様な方法により合成するが、アミノ酸は、配列に符合するアミノ酸を使用して、配列番号2−4のペプチドを合成した。配列番号2(Tyr-Ile-Ser-Lys-Lys-His-Ala-Gly-Lys-Asn-Trp-Phe: YISKKHAGKNWF)は、aFGFF 111−122配列、配列番号3(Asp-Ser-His-Thr-Gln- Tyr-Cys-Phe-His-Gly-Thr: DSHTQYCFHGT)は、TGFα 10−20、配列番号4(Gly-Tyr-Val-Gly-Val-Arg-Cys-Glu-Ala-Ala-Asp-Leu-Asp-Ala: GYVGVRCEAADLDA)は、TGFαのアミノ酸残基38−49に該当する。合成されたペプチドに対する分子量測定器による測定値は、表1に示した通りである:
【0059】
【表1】
【0060】
試験例1:合成ペプチドのHaCaT角質細胞及びNIH3T3線維芽細胞成長促進効果の分析
合成例1及び2に記載の4種のペプチドに対する成長因子−1の類似効能を分析するために、Rizzinoらの方法(Rizzino, et al. Cancer Res., 48:4266(1988))などを参照し、HaCaT角質細胞株とNIH3T3線維芽細胞を利用したSRB(Sulforhodamine B)の比色法を利用して測定した。
【0061】
HaCaT角質細胞株(The Korean Cell Line Bank)及びNIH3T3線維芽細胞(The Korean Cell Line Bank)を、それぞれ250ml容量の組織培養用フラスコを利用し、100%FBS(fetal bovine serum)の含有されたEMEM(Eagle's minimal essential media, Gibco, U.S.A.)で培養した。培養された細胞株を、0.25%トリプシン溶液で培養容器の底から取り外した後、遠心分離して細胞沈殿物のみを集めた。これを、FBSが含有されていないEMEM培養液に再び懸濁した後、96ウェル組織培養用平板に、各ウェル当たり4×103細胞となるように入れて、24時間37℃、7%CO2条件下で培養した。24時間後、血清を完全に排除した同一な培養液で培地を入れ替えた後、標準を取るための空試料、ヒトの酸性線維芽細胞成長因子(NIBSC、UK)、合成ペプチドの4種を、水と10%DMSOに滅菌状態で溶解した後、10ngと1,000ngの濃度で72時間、上記の同一条件で培養した。培養が完了した後、培養上清液を除去して、PBSで1回洗浄した。洗浄溶液を除去した後、比色SRB溶液で処理し、PBSで十分洗浄した後、顕微鏡で細胞を観察し、生存細胞の状態を観察して、紫外線590nmで吸光度を測定し、細胞の生存状態を測定した。
【0062】
図3a及び図3bは、それぞれ角質細胞及び線維芽細胞の成長に対する結果が示されており、図4には、細胞にペプチドを処理後、72時間後に細胞の生存状態を顕微鏡で検鏡して、線維芽細胞及び角質細胞の成長を確認した。
【0063】
図3aから分かるように、本発明の4種のペプチドは、角質細胞の成長を増進させた。特に、ペプチド1、3及び4が角質細胞の成長に対して優れた促進効果を示した。また、図3bから分かるように、本発明の4種のペプチドは、線維芽細胞の成長を増進させた。特に、ペプチド1及び2が線維芽細胞の成長に対して優れた促進効果を示した。また、顕微鏡観察結果である図4から分かるように、本発明のペプチドは、角質細胞及び線維芽細胞の成長を大きく促進させることが分かる。
【0064】
試験例2:合成ペプチドのコラーゲン及びフィブロネクチン生成促進効果の分析
48時間を培養したHaCaTに、合成したペプチド4種を処理して、72時間経過後、皮膚シワ改善の標識であるプロコラーゲン及びフィブロネクチンの濃度を測定した。濃度測定は、Procollagen ELISAキット(Takara、Japan)及びFibronectinキット(CHEMICON、米国)を利用して行った。図5aから分かるように、本発明の4種のペプチドは、角質細胞のプロコラーゲン生成を増加させた。特に、ペプチド2が最も優れたプロコラーゲン生成促進能を示した。また、図5bから分かるように、本発明の4種ペプチドは、角質細胞のフィブロネクチン生成を増加させた。特に、ペプチド1及び4の優れたプロコラーゲン生成促進能を示した。
【0065】
試験例1及び2の実験結果からみると、本発明のペプチドは、非常に優れた皮膚改善効能を発揮するということが分かる。
【0066】
試験例3:製造されたペプチドの熱安定性
合成例1及び2を通じて製造された4種のペプチドとNIBSC(英国)で購入した標準品成長因子(KGF, aFGF及びTGF-α)を0.11mg/mlの濃度にPhosphate緩衝液で調製した。用意された溶液を1mlずつガラスバイアルに入れた後、37℃で静置した。37℃に静置された溶液を0, 5, 10, 20, 25, 30, 40, 60そして100日目にサンプリングして、日付別に遠心分離して変性されたペプチドや蛋白質を除去して、上澄液を取って、HPLCを利用して定量をした(図6)。合成ペプチドの場合、天然の成長因子より残存量が高くて、これを試料として試験例1と同一な方法で細胞に処理した後、MTT方法(Scudiero, D. A., et al. Cancer Res. 48:4827-4833(1988))を使用して、残存している活性を測定することによりペプチドの熱安定性を分析した結果、全ての場合、成長因子類より活性度がさらに高いことが分かった。
【0067】
実施例1:ナノ化ペプチドの製造
前記合成例から得られたペプチド4種を、50mgをそれぞれ正確に秤量した後、蒸留水500mlで十分に攪拌して溶解した。配合体溶液を、レシチン5g、オレイン酸ナトリウム(sodium oleate)0.3ml、エタノール50ml及び少量のオイルと共に混合した後、総量が1Lとなるように蒸留水で調節した後、マイクロ流動化装置(microfluidizer)を利用して高圧で乳化し、大きさ100nm程度のナノソームを製造した。製造されたナノソームは、最終濃度が約50ppmで、単独あるいは複合的に化粧品製造用に使用された。
【0068】
剤形例1:柔軟化粧水
前記実施例1で製造された4種のペプチドナノソームの中、少なくとも一種類のナノソームを含み、下記組成からなる柔軟化粧水を、一般的な化粧水製造方法により製造した。
【0069】
【表2】
【0070】
剤形例2:栄養クリーム
前記実施例1で製造された4種のペプチドナノソームの中、少なくとも一種類のナノソームを含み、下記組成からなる栄養クリームを、一般的な栄養クリームの製造方法により製造した。
【0071】
【表3】
【0072】
剤形例3:栄養化粧水
前記実施例1で製造された4種のペプチドナノソームの中、少なくとも一種類のナノソームを含み、下記組成からなる栄養化粧水を、一般的な化粧水の製造方法により製造した。
【0073】
【表4】
【0074】
剤形例4:エッセンス
前記実施例1で製造された4種のペプチドナノソームの中、少なくとも一種類のナノソームを含み、下記組成からなるエッセンスを、一般的なエッセンスの製造方法により製造した。
【0075】
【表5】
【0076】
剤形例5:傷治療用ハイドロゲル
前記実施例1で製造された4種のペプチドナノソームを同時に含み、下記組成からなるハイドロゲルパッチを製造した(図7)。ドクターブレードとローラーで加工した後、焼成し、1×1cm2のハイドロゲル薄片を作って、実験に使用した。その薄片を図7に記載した。
【0077】
【表6】
【0078】
試験例4:製造されたペプチドナノソームの動物モデルにおける傷治癒効果
Balb/Cマウスの背中部位の毛を除毛した後、手術用使い捨てナイフで約3mm〜5mmになるように傷を付けた。一日が経った後、製造された複合ペプチドハイドロゲルパッチと陽性対照群としてのaFGFをそれぞれの傷部位に塗布した。三日後、同量のペプチドを含むハイドロゲルパッチとaFGFを前の傷部位に再び付着した。7日後に傷治癒効果を肉眼で識別して確認し、その結果を図8に示した。図8から分かるように、何の処理もしなかった傷部位(陰性対照群)に比べて、複合ペプチド処理をした傷部位では傷治癒効果が肉眼で確認されて、特にペプチド接合体処理をした傷部位は、経過時間が長いほど、aFGF処理をした傷部位よりも著しく治療効果が高いことが肉眼で識別が可能であった。これは、本発明のペプチドが、天然の成長因子より体外でさらに安定して、長期間にかけて傷部位に作用をしたから出た結果と判断される。さらに、本発明のペプチドを含有した化粧品及びハイドロゲルの場合、成長因子の活性を維持しながら、増加された成体内半減期による皮膚改善効果及び創傷などの治療効果が明白であると判断される。
【0079】
以上、本発明の望ましい具現例を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者にとっては、このような具体的な記述はただ望ましい具現例に過ぎなく、これに本発明の範囲が限定されないことは明らかである。従って、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とその等価物により定義されると言える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成長因子由来であって、配列番号1乃至4に記載のアミノ酸配列から構成された群から選択される1種のアミノ酸配列からなる成長因子活性を示すペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドのC−末端は、ヒドロキシ基(-OH)またはアミノ基(-NH2)に変形されたことを特徴とする、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記ペプチドのN−末端は、アセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基及びポリエチレングリコール(PEG)からなる群から選択される保護基が結合されていることを特徴とする、請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のペプチドを有効成分として含む、皮膚状態の改善用組成物。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載のペプチドを有効成分として含む、創傷治療用組成物。
【請求項6】
前記皮膚状態の改善は、シワの改善、皮膚弾力の改善、皮膚老化の防止、脱毛の防止または発毛の促進、皮膚保湿の改善、シミの除去、またはニキビの治療であることを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれかに記載のペプチドを有効成分として含む組成物を対象(subject)に投与する段階を含む皮膚状態の改善方法。
【請求項8】
請求項1乃至3のいずれかに記載のペプチドを有効成分として含む組成物を対象(subject)に投与する段階を含む創傷治療方法。
【請求項1】
成長因子由来であって、配列番号1乃至4に記載のアミノ酸配列から構成された群から選択される1種のアミノ酸配列からなる成長因子活性を示すペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドのC−末端は、ヒドロキシ基(-OH)またはアミノ基(-NH2)に変形されたことを特徴とする、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記ペプチドのN−末端は、アセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基及びポリエチレングリコール(PEG)からなる群から選択される保護基が結合されていることを特徴とする、請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のペプチドを有効成分として含む、皮膚状態の改善用組成物。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載のペプチドを有効成分として含む、創傷治療用組成物。
【請求項6】
前記皮膚状態の改善は、シワの改善、皮膚弾力の改善、皮膚老化の防止、脱毛の防止または発毛の促進、皮膚保湿の改善、シミの除去、またはニキビの治療であることを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれかに記載のペプチドを有効成分として含む組成物を対象(subject)に投与する段階を含む皮膚状態の改善方法。
【請求項8】
請求項1乃至3のいずれかに記載のペプチドを有効成分として含む組成物を対象(subject)に投与する段階を含む創傷治療方法。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2011−519358(P2011−519358A)
【公表日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503898(P2011−503898)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【国際出願番号】PCT/KR2009/001134
【国際公開番号】WO2009/125925
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(510271129)ケアジェン カンパニー,リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】CAREGEN CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】690−3 Geumjeong−dong,Gunpo−si,Gyeonggi−do 435−050,Republic of Korea
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【国際出願番号】PCT/KR2009/001134
【国際公開番号】WO2009/125925
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(510271129)ケアジェン カンパニー,リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】CAREGEN CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】690−3 Geumjeong−dong,Gunpo−si,Gyeonggi−do 435−050,Republic of Korea
【Fターム(参考)】
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