説明

成長因子の生産方法

【課題】細菌から成長因子を取り出す方法で、グラム陰性菌の外膜であるリポ多糖であり、生物学的作用としては致死性ショック及び発熱等があるエンドトキシンが少ない成長因子を生産する方法を提供する。
【解決手段】細菌及び界面活性剤(A)を含有する培養液を用いて成長因子を分泌生産する成長因子の生産方法。好ましくは、細菌と界面活性剤(A)とを共存させる時間が5〜70時間であり、培養液の体積を基準とした乾燥菌体密度が、0.1g/L〜11.5g/Lである成長因子の生産方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成長因子の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌は、アミノ酸、タンパク質等を生産するために広く利用されている。特に近年は、医薬上・産業上有用なタンパク質の遺伝子を遺伝子工学技術を活用して導入して形質転換された細菌を培養してタンパク質を発現させ、目的のタンパク質を効率的に生産する技術が知られている。生産したタンパク質は、工業用、食品加工用及び医薬品用等のタンパク質として幅広く用いられている。
【0003】
細菌で生産する技術が知られている医薬品用のタンパク質の一つとして、成長因子が挙げられる。成長因子は、特定の細胞の増殖や分化を促進する内因性タンパク質の総称であり、医薬品の他、化粧品等にも利用されている。
【0004】
細菌から成長因子を取り出す方法としては、超音波、高圧ホモジナイザー及びフレンチプレス等の物理的破砕法により細菌を破砕して成長因子を細胞外に溶出させる方法が広く実用化されている(非特許文献1)。しかし、これらの物理的破砕法では、成長因子を取り出す際に、エンドトキシンが混入する問題がある。エンドトキシンとはグラム陰性菌の外膜の成分であるリポ多糖であり、生物学的作用としては致死性ショック及び発熱等がある。このため、物理的破砕法により得た成長因子を、そのまま医薬品等に使用することはできない。また、エンドトキシンを除去する方法も検討されているが、複雑な工程が必要であるという問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ALLEN J.CellSci.Suppl.3,1985,p29−38
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、エンドトキシンが少ない成長因子の生産方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に至った。
すなわち、本発明は細菌及び界面活性剤(A)を含有する培養液を用いて成長因子を分泌生産する成長因子の生産方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の成長因子の生産方法は、生産した成長因子1g当たりのエンドトキシンが少ない成長因子を生産することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】濁度と乾燥菌体密度の比例関係を表したグラフであり、濁度から乾燥菌体密度を算出するための式を導くためのものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の成長因子の生産方法は、細菌及び界面活性剤(A)を含有する培養液を用いて成長因子を分泌生産する生産方法である。
【0011】
本発明における細菌として、以下に例を挙げるがこれに限定するものではない。細菌は、真正細菌及び古細菌が含まれる。真正細菌は、グラム陰性菌及びグラム陽性菌が含まれる。グラム陰性細菌としては、エシェリチア属菌(Escherichia)、サーマス属菌(Thermus)、リゾビウム属菌(Rhizobium)、シュードモナス属菌(Pseudomonas)、シュワネラ属菌(Shewanella)、ビブリオ属菌(Vibrio)、サルモネラ属菌(Salmonella)、アセトバクター属(Acetobacter)、シネコシスティス属(Synechocystis属)等が挙げられる。グラム陽性菌としては、バチルス属(Bacillus)、ストレプトマイセス属(Streptmyces)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、ブレビバチルス属(Brevibacillus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、エンテロコッカス属 (Enterococcus)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、リューコノストック属(Leuconostoc)及びストレプトマイセス属(Streptomyces)等に含まれる細菌が挙げられる。
【0012】
これらのうち、成長因子の生産性の観点から、グラム陰性菌が好ましく、さらに好ましくはエシェリチア属であり、より好ましくは大腸菌である。
【0013】
本発明の成長因子の生産方法で使用される界面活性剤(A)は、両性界面活性剤(A1)、アニオン性界面活性剤(A2)、ノニオン性界面活性剤(A3)及びカチオン界面活性剤(A4)からなる群より選ばれる少なくとも1種の界面活性剤が含まれる。
【0014】
両性界面活性剤(A1)としては、カルボン酸塩型両性界面活性剤(A1−1)、硫酸エステル塩型両性界面活性剤(A1−2)、スルホン酸塩型両性界面活性剤(A1−3)及びリン酸エステル塩型両性界面活性剤(A1−4)等が含まれる。
【0015】
カルボン酸塩型両性界面活性剤(A1−1)としては、アミノ酸型両性界面活性剤(A1−1−1)、ベタイン型両性界面活性剤(A1−1−2)及びイミダゾリン型両性界面活性剤(A1−1−3)等が挙げられる。
【0016】
アミノ酸型両性界面活性剤(A1−1−1)としては、分子内にアミノ基とカルボキシル基を有する両性界面活性剤であり、下記一般式(1)で示される化合物等が挙げられる。
[R−NH−(CH2n−COO-mM (1)
一般式(1)中、Rは炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。nは1以上の整数である。mは1又は2の整数である。Mはプロトン;又はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム(アミン及びアルカノールアミン等由来のカチオンを含む)及び第4級アンモニウム等の1価又は2価のカチオンである。
また、(A1−1−1)として具体的には、アルキルアミノプロピオン酸型両性界面活性剤(コカミノプロピオン酸ナトリウム、ステアリルアミノプロピオン酸ナトリウム及びラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等);アルキルアミノ酢酸型両性界面活性剤(ラウリルアミノ酢酸ナトリウム等)及びN−ラウロイル−N’−カルボキシメチル−N’−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等が挙げられる。
【0017】
ベタイン型両性界面活性剤(A1−1−2)は、分子内に第4級アンモニウム塩型のカチオン部分とカルボン酸型のアニオン部分を持っている両性界面活性剤である。(A1−1−2)は下記一般式(2)で示される化合物が挙げられる。(A1−1−2)として具体的には、アルキルジメチルベタイン(ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン及びラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等)、アミドベタイン(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等)及びラウリン酸アミドプロピルベタイン等)及びアルキルジヒドロキシアルキルベタイン(ラウリルジヒドロキシエチルベタイン等)、硬化ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
R−N+(CH32−CH2COO- (2)
一般式(2)中、Rは炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。
【0018】
イミダゾリン型両性界面活性剤(A1−1−3)としては、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
【0019】
その他の両性界面活性剤としては、ナトリウムラウロイルグリシン、ナトリウムラウリルジアミノエチルグリシン、ラウリルジアミノエチルグリシン塩酸塩及びジオクチルジアミノエチルグリシン塩酸塩等のグリシン型両性界面活性剤;ペンタデシルスルホタウリン等のスルホベタイン型両性界面活性剤;コールアミドプロピルジメチルアンモニオプロパンスルホン酸(CHAPS)、コールアミドプロピルジメチルアンモニオ2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(CHAPSO);ラウリルジメチルアミンオキサイド等のアルキルアミンオキサイド型両性界面活性剤等が含まれる。
【0020】
アニオン性界面活性剤(A2)としては、エーテルカルボン酸(A2−1)及びその塩、硫酸エステル(A2−2)又はその塩、エーテル硫酸エステル(A2−3)及びその塩、スルホン酸塩(A2−4)、スルホコハク酸塩(A2−5)、リン酸エステル(A2−6)及びその塩、エーテルリン酸エステル(A2−7)及びその塩、脂肪酸塩(A2−8)、アシル化アミノ酸塩並びに天然由来のカルボン酸及びその塩(ケノデオキシコール酸、コール酸及びデオキシコール酸等)等が挙げられる。
【0021】
エーテルカルボン酸(A2−1)又はその塩としては炭化水素基(炭素数8〜24)を有するエーテルカルボン酸及びその塩が含まれる。(A2−1)又はその塩として具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンオクチルエーテル酢酸ナトリウム塩及びラウリルグリコール酢酸ナトリウム塩等が挙げられる。
【0022】
硫酸エステル(A2−2)及びその塩としては、炭化水素基(炭素数8〜24)を有する硫酸エステル及びその塩が含まれる。(A2−2)及びその塩として具体的には、ラウリル硫酸ナトリウム塩及びラウリル硫酸トリエタノールアミン塩等が挙げられる。
【0023】
エーテル硫酸エステル(A2−3)及びその塩としては、炭化水素基(炭素数8〜24)を有するエーテル硫酸エステル及びその塩が含まれる。(A2−3)及びその塩として具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム塩及びポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン塩等が挙げられる。
【0024】
スルホン酸塩(A2−4)としては、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩及びナフタレンスルホン酸ナトリウム塩等が挙げられる。
【0025】
スルホコハク酸塩(A2−5)としては、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸二ナトリウム塩、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム塩及びスルホコハク酸ポリオキシエチレンラウロイルエタノールアミド二ナトリウム塩等が挙げられる。
【0026】
リン酸エステル(A2−6)又はその塩としては、オクチルリン酸二ナトリウム塩及びラウリルリン酸二ナトリウム塩等が挙げられる。
【0027】
エーテルリン酸エステル(A2−7)又はその塩としては、ポリオキシエチレンオクチルエーテルリン酸二ナトリウム塩及びポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸二ナトリウム塩等が挙げられる。
【0028】
脂肪酸塩(A2−8)としては、オクチル酸ナトリウム塩、ラウリル酸ナトリウム塩及びステアリン酸ナトリウム塩等が挙げられる。
【0029】
ノニオン性界面活性剤(A3)としては、アルコールアルキレンオキサイド(以下、アルキレンオキサイドはAOと略記)付加物(A3−1)、アルキルフェノールAO付加物(A3−2)、脂肪酸AO付加物(A3−3)及び多価アルコール型ノニオン性界面活性剤(A3−4)等が含まれる。
【0030】
ノニオン性界面活性剤の親水性及び疎水性を示す尺度としてHLBが知られている。HLBの値が高いほど親水性が高いことを意味する。本発明におけるHLBとは下記式(1)で計算される数値である(藤本武彦著、界面活性剤入門、142頁、三洋化成工業株式会社発行)。
【0031】
HLB=20×{親水基の分子量/界面活性剤の分子量} (1)
【0032】
ノニオン性界面活性剤(A3)のHLBは、分泌効率の観点から、0〜13が好ましく、さらに好ましくは5〜12であり、次にさらに好ましくは8〜12である。
【0033】
アルコールAO付加物(A3−1)としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが含まれる。(A3−1)として具体的には、炭素数8〜24の高級アルコール(デシルアルコール、ドデシルアルコール、ヤシ油アルキルアルコール、オクタデシルアルコール及びオレイルアルコール等)のエチレンオキサイド(以下、エチレンオキサイドはEOと略記)0〜20モル及び/又はプロピレンオキサイド(以下、プロピレンオキサイドはPOと略記)1〜20モル付加物(ブロック付加物及び/又はランダム付加物を含む。以下同様)[例えば、デシルアルコールのEO8モル/PO7モルブロック付加物]が含まれる。(A3−1)としてさらに具体的には、ラウリルアルコールEO7モル付加物(HLB=12.4)、オレイルアルコールEO5モル付加物(HLB=9.0)、オレイルアルコールEO6モル付加物(HLB=10.2)、オレイルアルコールEO7モル付加物(HLB=11.0)及びオレイルアルコールEO10モル付加物(HLB=12.4)、1,2−ドデカンジオールモノオキシエチレン付加物等が挙げられる。
【0034】
アルキルフェノールAO付加物(A3−2)としては、炭素数6〜24のアルキル基を有するアルキルフェノールAO付加物が含まれる。(A3−2)として具体的には、オクチルフェノールのEO1〜20モル及び/又はPO1〜20モル付加物並びにノニルフェノールのEO1〜20モル及び/又はPO1〜20モル付加物等が挙げられる。また、TRITONTMX−114(HLB=12.4)、igepalTMCA−520(HLB=10.0)及びigepalTMCA−630(HLB=13.0)等が市場から容易に入手できる。
【0035】
脂肪酸AO付加物(A3−3)としては、炭素数8〜24の脂肪酸(デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びヤシ油脂肪酸等)のEO1〜20モル及び/又はPO1〜20モル付加物が含まれる。(A3−3)として具体的には、オレイン酸EO9モル付加物(HLB=11.8)、ジオレイン酸EO12モル付加物(HLB=10.4)、ジオレイン酸EO20モル付加物(HLB=12.9)及びステアリン酸EO9モル付加物(HLB=11.9)等が挙げられる。
【0036】
多価アルコール型ノニオン性界面活性剤(A3−4)としては、炭素数2〜36の2〜8価の多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビット及びソルビタン等)のEO及び/又はPO付加物;前記多価アルコールの脂肪酸エステル及びそのEO付加物、並びに、砂糖の脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド(ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド等)及びこれらのAO付加物が含まれる。(A3−4)として具体的には、ソルビタンテトラオレイン酸エステルEO付加物(HLB=11.4)及びソルビタンヘキサオレイン酸エステルEO付加物(HLB=10.2)等が挙げられる。
【0037】
カチオン界面活性剤(A4)としては、アミン塩型カチオン界面活性剤(A4−1)及び第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤(A4−2)等が含まれる。
【0038】
アミン塩型カチオン界面活性剤(A4−1)としては、1〜3級アミンを無機酸(塩酸、硝酸、硫酸、ヨウ化水素酸など)または有機酸(酢酸、ギ酸、蓚酸、乳酸、グルコン酸、アジピン酸、アルキル燐酸など)で中和したものが含まれる。例えば、第1級アミン塩型のものとしては、脂肪族高級アミン(ラウリルアミン、ステアリルアミン、セチルアミン、硬化牛脂アミン、ロジンアミンなどの高級アミン)の無機酸塩または有機酸塩;低級アミン類の高級脂肪酸(ステアリン酸、オレイン酸など)塩などが挙げられる。第2級アミン塩型のものとしては、例えば脂肪族アミンのエチレンオキサイド付加物などの無機酸塩または有機酸塩が挙げられる。また、第3級アミン塩型のものとしては、例えば、脂肪族アミン(トリエチルアミン、エチルジメチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンなど)、脂肪族アミンのエチレンオキサイド(2モル以上)付加物、脂環式アミン(N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルヘキサメチレンイミン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセンなど)、含窒素ヘテロ環芳香族アミン(4−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾール、4,4’−ジピリジルなど)の無機酸塩または有機酸塩;トリエタノールアミンモノステアレート、ステアラミドエチルジエチルメチルエタノールアミンなどの3級アミン類の無機酸塩または有機酸塩などが挙げられる。
【0039】
第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤(A4−2)としては、3級アミン類と4級化剤(メチルクロライド、メチルブロマイド、エチルクロライド、ベンジルクロライド、ジメチル硫酸などのアルキル化剤;エチレンオキサイドなど)との反応で得られるものが含まれる。例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジオクチルジメチルアンモニウムブロマイド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロマイド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(塩化ベンザルコニウム)、セチルピリジニウムクロライド、ポリオキシエチレントリメチルアンモニウムクロライド、ステアラミドエチルジエチルメチルアンモニウムメトサルフェートなどが挙げられる。
【0040】
界面活性剤(A)としては、分泌効率の観点から、両性界面活性剤、アニオン系界面活性剤及びHLBが0〜13のノニオン系界面活性剤が好ましく、さらに好ましくはカルボン酸塩型両性界面活性剤(A1−1)、エーテルカルボン酸(A2−1)、スルホン酸塩(A2−4)、高級アルコールAO付加物(A3−1)及び多価アルコール型ノニオン性界面活性剤(A3−4)であり、特に好ましくはポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム塩(ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸(A2−1)のナトリウム塩)、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド(A3−4)、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(A1−1−2)、1,2−ドデカンジオールモノオキシエチレン付加物(A3−1)、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(A1−1−2)、硬化ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(A1−1−2)、コカミノプロピオン酸ナトリウム(A1−1−1)、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム塩(A2−4)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム塩(ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸(A2−1)のナトリウム塩)、高級アルコールEO付加物(A3−1)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム塩(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸(A2−3)のナトリウム塩)、デシルアルコールEO付加物(A3−1)である。
【0041】
本発明において界面活性剤(A)は、界面活性剤(A)をそのまま使用してもよいし、必要により水と混合して、水性希釈液(水溶液状又は水分散液状)として用いてもよい。
水性希釈液における、界面活性剤(A)の合計濃度は、対象となる微生物、生理活性物質の種類及び抽出方法の種類によって適宜選択されるが、成長因子の分泌性及びハンドリング性の観点から、水性希釈液の重量を基準として、0.1〜99重量%が好ましく、好ましくは1〜50重量%である。
【0042】
本発明の界面活性剤を用いて成長因子の生産を行った場合の分泌効率(%)は、生産性の観点から、1〜100が好ましく、さらに好ましくは5〜100、次にさらに好ましくは10〜100、特に好ましくは50〜100である。
【0043】
界面活性剤の分泌効率とは、界面活性剤により細菌内の成長因子が細菌外(培養液中)へ分泌されること示している。
なお、本発明においては、下記式によって定義される。
分泌効率(%)=100×{(X/Y)−Z}
X:遠心分離による菌体除去後に残る培養液中の成長因子
Y:培養液中の全成長因子
Z:溶菌した細菌の割合を示し、下記の式によって定義される。
Z=Z1/Z2
Z1:遠心分離による菌体除去後に残る培養液中の細胞質内局在物質
Z2:培養液中の全細胞質内局在物質
なお細胞質内局在物質とは、細胞質内に存在している物質であり、溶菌によって培養液中に溶出される物質をさす。
【0044】
分泌効率は、例えば細菌内で生産された成長因子がよりペリプラズム移行するようにすれば分泌効率は上がり、よりペリプラズム移行しないようにすれば分泌効率は下がる。また、スクリーニングによって分泌効率の高い界面活性剤を選定することにより分泌効率を上げることができる。
【0045】
本発明の成長因子の生産方法で使用される界面活性剤(A)の使用量(重量%)は、対象となる微生物、生産される成長因子の種類及び抽出方法の種類によって適宜選択されるが、培養液の重量を基準として、分泌効率及び成長因子の変性のさせにくさの観点から、0.0001〜10が好ましく、さらに好ましくは0.005〜10、次にさらに好ましくは0.1〜5である。
【0046】
界面活性剤(A)はあらかじめ培養液と混合して使用する以外に、微生物を懸濁させた培養液に後から添加しても良い。培養液との混合は、4℃〜99℃で培養液に界面活性剤(A)を添加し、撹拌羽根又はスターラー等で撹拌することで行うことができる。後から混合する際は、撹拌羽根等で撹拌しながら添加することで行うことができる。
【0047】
界面活性剤(A)の使用にあたっては、上記界面活性剤を単独で用いる以外に、数種類を混合して用いても良い。
【0048】
本発明の成長因子の生産方法において、エンドトキシン量を少なくする及び成長因子を大量に得る観点から、細菌と界面活性剤(A)とを共存させる時間は1〜70時間が好ましく、さらに好ましくは3〜30時間であり、特に好ましくは5〜10時間である。
【0049】
成長因子としては、上皮成長因子(EGF)、塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF)、酸性繊維芽細胞成長因子(aFGF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、幹細胞因子(SCF)、形質転換増殖因子(TGF−α)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、胎盤成長因子(PIGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、皮膚由来T細胞誘因ケモカイン(CTACK)インターフェロンα、インターフェロンβ、インターロイキン1〜12、成長ホルモン、エリスロポエチン、インスリン、顆粒状コロニー刺激因子(G−CSF)、ソマトメジン、グルカゴン及び成長ホルモン放出因子等が挙げられる。
【0050】
成長因子のうち、エンドトキシンを少なくする観点から、上皮成長因子(EGF)、塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF)、酸性繊維芽細胞成長因子(aFGF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、幹細胞因子(SCF)、インスリン、ソマトメジンが好ましく、さらに好ましくは上皮成長因子(EGF)、塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF)、酸性繊維芽細胞成長因子(aFGF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)インスリン、ソマトメジンであり、特に好ましくはインスリン、ソマトメジン及び上皮成長因子(EGF)である。
【0051】
成長因子が細菌内で発現した後、一部又は全てがペリプラズムへ移行する性質を成長因子が有している事が好ましい。さらに好ましくはペリプラズムへの移行に必要なシグナル配列をORF中にコードしている成長因子である。
ペリプラズムとは、細菌の細胞質膜より外側で細菌の最表面までの空間の事である。
ペリプラズムへの移行に必要なシグナル配列としては、Sec分泌シグナル配列やTAT分泌シグナル等が挙げられる。
【0052】
本発明において乾燥菌体密度とは、成長因子の分泌生産において、培養開始時から培養終了時までのいずれかの時点における培養液1L中に含まれる細菌の重量を表す。なお、この細菌の重量は、乾燥させた状態の細菌の重量である。
乾燥菌体密度は、次の手順(1)〜(5)により求める。
手順(1):あらかじめ容器(遠心チューブ)の重量を測定しておく。
手順(2):培養液100mlを手順(1)で重量を測定した容器に入れ、遠心分離(4,000G、15分、4℃)して、上澄みを抜き取り、細菌を集菌する。
手順(3):容器中の集菌した細菌を、0.9重量%NaCl水溶液[手順(2)で使用した培養液と同じ体積]で洗い、再度遠心分離(4,000G、15分、4℃)して、上澄みを抜き取り、細菌を集菌する。
手順(4):手順(3)で得られた細菌を容器にいれたままの状態で、105℃で10時間乾燥させた後、容器と細菌の合計の重量を測定する。
手順(5):手順(4)の後さらに105℃で2時間乾燥させた後、容器と細菌の合計の重量を測定して重量変化が無いことを確認する。さらに重量が減少するなら重量変化が無くなるまで105℃で乾燥を持続する。
手順(5)と手順(1)の測定値と手順(2)で使用した培養液の体積(L)を下記式に当てはめることにより、乾燥菌体密度を求める。
乾燥菌体密度(g/L)=([手順(5)の測定値]−[手順(1)の測定値])/0.1
【0053】
本発明の成長因子の生産方法における乾燥菌体密度は、培養液の体積を基準として0.1〜11.5g/Lが好ましく、さらに好ましくは1g/L〜8g/Lであり、特に好ましくは1.8〜6g/Lである。乾燥菌体密度が0.1g/L以上であることで成長因子を効率よく生産することができ、11.5g/L以下であることでエンドトキシン量がさらに少なくなる。
本発明において、培養開始時とは、前培養した細菌を、本培養する培養液へ添加した時点をいう。
本発明において、培養終了時とは、培養液から菌体を除いた時点をいう。
【0054】
本発明の成長因子の生産方法において、成長因子を効率よく生産する及びエンドトキシンの量を少なくする観点から、乾燥菌体密度が上記範囲内である時間が、成長因子を分泌させる工程に要する時間の10%以上であることが好ましく、さらに好ましくは50%以上、特に好ましくは90%以上、最も好ましくは100%である。
また本発明の生産方法において、乾燥菌体密度は、エンドトキシンの量を少なくする観点から、成長因子を分泌させる工程に要する時間の100%において、培養液の体積を基準として11.5g/L以下であることが好ましい。
【0055】
乾燥菌体密度は、例えば十分な通気条件下で半回分培養法を用いて適切な速度で流加を行うことによって増加させることができ、制限した通気条件下で回分培養を行うことによって減らすことができる。また、培養開始から界面活性剤を入れるまでの時間を長くすることによって増加し、培養開始から界面活性剤を入れるまでの時間を短くすることによって減らすことができる。
【0056】
本発明の成長因子の生産方法としては、タンパク質として成長因子を生産する以外は、従来の細菌及び界面活性剤(A)を含有する培養液を用いてタンパク質を分泌生産する生産方法を使用することができる。
本発明の成長因子の生産方法には、下記工程(a)及び(b)を含む細胞外分泌生産方法が含まれる。下記工程において、成長因子を分泌させる工程は工程(a)である。
工程(a):成長因子を生産する細菌(グラム陰性細菌等)を培養する培養液と界面活性剤(A)を同時に存在させて成長因子を細胞外(培養液中)に分泌させる工程。
工程(b):工程(a)の後、培養液から成長因子を分離する工程。
【0057】
以下に本発明の界面活性剤を使用する成長因子の生産方法の一例を示す。
(i)遺伝子組み換え
(i−1)目的タンパク質を発現している細胞からメッセンジャーRNA(mRNA)を分離し、該mRNAから単鎖のcDNAを、次に二重鎖DNAを合成し、該二本鎖DNAをファージDNA又はプラスミドに組み込む。得られた組み換えファージ又はプラスミドを宿主大腸菌に形質転換しcDNAライブラリーを作成する。
(i−2)目的とするDNAを含有するファージDNA又はプラスミドをスクリーニングする方法としては、ファージDNA又はプラスミドと目的タンパク質遺伝子又は相補配列の一部をコードするDNAプローブとのハイブリダイゼーション法が挙げられる。
(i−3)スクリーニング後のファージ又はプラスミドから目的とするクローン化DNA又はその一部を切りだし、該クローン化DNA又はその一部を発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することによって、目的遺伝子の発現ベクターを作成することができる。内膜を移行させるシグナル配列(ペリプラズムに目的物質を発現させるシグナル配列)をコードするDNAを同時に連結することもできる。
(i−4)目的とするDNA配列は合成し、発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することによって、目的遺伝子の発現ベクターを作成することができる。内膜を移行させるシグナル配列(ペリプラズムに目的物質を発現させるシグナル配列)をコードするDNAを同時に連結することもできる。
(ii)培養
(ii−1)宿主細菌を発現ベクターで形質転換して組み換え細菌を作成し、組み換え細菌を前培養する。前培養は寒天培地上で通常15〜43℃で3〜72時間行う。
(ii−2)成長因子の生産に用いる培養液を121℃、20分間オートクレーブ滅菌を行い、ここに寒天培地で前培養した組み換え細菌を培養する。培養は、通常15〜43℃で3〜100時間行う。なお、培養開始と同時に界面活性剤(A)を使用する場合は、界面活性剤(A)と培養液を混合し均一化したものを、培養液として用いて同様の操作を行う。また、培養後3〜72時間後に界面活性剤(A)を加える場合は、界面活性剤を加えてから0.5〜100時間培養を継続する。
本工程において、細菌と界面活性剤(A)とを共存させる時間は、エンドトキシン量を少なくする及び成長因子を大量に得る観点から、1〜70時間が好ましく、さらに好ましくは3〜30時間であり、特に好ましくは5〜10時間である。
(iii)精製
(iii−1)培養液中に分泌されたタンパク質は、遠心分離、中空糸分離、ろ過等で微生物及び微生物残さと分離される。
(iii−2)成長因子を含む培養液は、イオン交換カラム、ゲルろ過カラム、疎水カラム、アフィニティカラム及び限外カラム等のカラム処理を繰り返し、エタノール沈殿、硫酸アンモニウム沈殿及びポリエチレングリコール沈殿等の沈殿処理を必要に応じ適宜行うことによって分離精製される。
【0058】
(iii−1)で分離された宿主細胞は、その後、新たに培養液を供給することにより、さらに培養することができる。その培養液等をさらに(iii)の工程に供し精製、培養を繰り返すことにより、成長因子の連続生産を行うことができる。
【0059】
上記の(iii)の成長因子の分離・取り出し工程におけるカラムクロマトグラフィーに使用される充填剤としては、シリカ、デキストラン、アガロース、セルロース、アクリルアミド及びビニルポリマー等が挙げられ、市販品ではSephadexシリーズ、Sephacrylシリーズ、Sepharoseシリーズ(以上、Pharmacia社)、Bio−Gelシリーズ(Bio−Rad社)等がある。
【0060】
本発明の成長因子の生産方法を使用することにより、低エンドトキシンの成長因子を得ることができる。また、本発明の成長因子の生産方法は、成長因子が培養液中に分泌されるため、成長因子の精製が容易である。
【0061】
本発明の生産方法で得られる成長因子は、上記の方法で得られるため、従来よりもエンドトキシンの混入が少ない。
【0062】
本発明の成長因子生産方法は、細菌内で作成した有用物質が細菌のペリプラズムに移行している場合に特に有効である。有用物質がペリプラズムに移行していることによって、成長因子が培養液中に分泌されやすくなり、かつエンドトキシンが低減される。
【実施例】
【0063】
以下の実施例、比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特記しない限り、部は重量部を意味する。
【0064】
株の作成、菌体重量の測定、ELISAアッセイ及びSDS−PAGE等は当業者が行う標準的な方法に基づいて行った。
【0065】
<製造例1>
pMXベクターに組み込まれた合成ヒト由来上皮成長因子(hEGF)遺伝子(Invitrogen社)をpET−22bプラスミド(Novagen社)のNdeI制限酵素サイトとBamHI制限酵素サイトに結合した。その後λDE3 Lysogenization Kit(Novagen社)を用いて、大腸菌株AG1(ToYoBo社)を改変して作成したAG1(DE3)大腸菌株にこのプラスミドを形質転換してヒト由来上皮成長因子発現株(α)を作成した。発現したヒト由来上皮成長因子がペリプラズム画分に局在することをMETHODS IN ENZYMOLOGY 353巻 2002年 121頁の方法に基づいて解析し確認した。
【0066】
<製造例2>
pMXベクターに組み込まれた合成ヒト由来インスリン様成長因子1(hIGF−1)遺伝子(Invitrogen社)をpET−22bプラスミド(Novagen社)のNdeI制限酵素サイトとBamHI制限酵素サイトに結合した。その後λDE3 Lysogenization Kit(Novagen社)を用いて、大腸菌株AG1(ToYoBo社)を改変して作成したAG1(DE3)大腸菌株にこのプラスミドを形質転換してヒト由来インスリン様成長因子1発現株(β)を作成した。発現したヒト由来インスリン様成長因子1がペリプラズム画分に局在することをMETHODS IN ENZYMOLOGY 353巻 2002年 121頁の方法に基づいて解析し確認した。
【0067】
<乾燥菌体密度の測定>
培養終了時の乾燥菌体密度は、次の手順(1)〜(5)により求めた。
手順(1):あらかじめ容器(遠心チューブ)の重量を測定した。
手順(2):培養液100mlを手順(1)で重量を測定した容器に入れ、遠心分離(4,000G、15分、4℃)して、上澄みを抜き取り、細菌を集菌した。
手順(3):容器中の集菌した細菌に、手順(2)で使用した培養液と等量の体積の0.9%NaCl水溶液で洗い、再度遠心分離(4,000G、15分、4℃)して、上澄みを抜き取り、細菌を集菌した。
手順(4):手順(3)で得られた細菌を容器にいれたままの状態で、105℃で10時間乾燥させた後、容器と細菌の合計の重量を測定した。
手順(5):手順(4)の後、さらに105℃で2時間乾燥させ、容器と細菌の合計の重量を測定して重量変化が無いことを確認した。重量が減少する場合は、重量変化が無くなるまで乾燥を持続した。
手順(5)と手順(1)の測定値と手順(2)で使用した培養液の体積(0.1L)を下記式に当てはめることにより、乾燥菌体密度を求めた。
乾燥菌体密度(g/L)=([手順(5)の測定値]−[手順(1)の測定値])/0.1
この方法は数回行い培養液の濁度と乾燥菌体密度が比例関係にあることが明らかになったので培養液の濁度から乾燥菌体密度を算出した。
【0068】
<培養液の濁度の測定>
乾燥菌体密度を測定した培養液と同じ培養液を用いて、濁度計(島津社製、UV−1700)を用いて、1mlの石英セルを用いて濁度の測定を行った。
培養液は、適切な吸光度になるように生理食塩水で希釈して測定を行った。細菌を含まないこと以外は同じ培養液を、上記と同じ希釈率で希釈して吸光度を測定してブランクとした。培養液の濁度は下記式によって算出した。
培養液の濁度=[(希釈した培養液の濁度測定値)−(ブランクの濁度測定値)]×希釈倍率
乾燥菌体密度と培養液の濁度をプロットし、図1を得た。図1から、乾燥菌体密度と培養液の濁度の関係を表す次式を導いた。
乾燥菌体密度=0.28×(培養液の濁度)
【0069】
<エンドトキシン量の測定>
ToxinSensor Chromogenic LAL Endotoxin Assay Kit(GenScript社)を用いて、実施例及び比較例の各サンプリングの時間におけるエンドトキシン量を測定した。
【0070】
<成長因子の生産量の測定>
比較例1〜2および実施例1〜4で得られた成長因子抽出液もしくは培養上清を当業者が行うSDS−PAGEで解析し、タンパク質バンドの定量から生産した成長因子を定量した。
【0071】
<エンドトキシンと成長因子との比>
上記により得られたエンドトキシン量及び成長因子の生産量から、エンドトキシン量と成長因子の量との比(エンドトキシン/成長因子(KEU/g))を求めた。
【0072】
<比較例1>
製造例1で得た大腸菌(α)の終夜培養液1mlをそれぞれ作成し、0.5mlをLB培養液(アンピシリン 100mg/L含有)5mlに植菌して30℃3時間振とう培養を行い前培養液を作成した。前培養液を50mLの培養液(酵母エキス(日本製薬社製)1.2g、ポリペプトン(日本製薬社製)0.6g、リン酸2カリウム0.47g、リン酸1カリウム0.11g、硫酸アンモニウム0.35g、リン酸2ナトリウム12水和物0.66g、クエン酸ナトリウム2水和物0.02g、グリセロール0.2g、ラクトアルブミン水解物1.5g、消泡剤(信越シリコーン製、「KM−70」)0.3g、1mM硫酸マグネシウム、微量金属溶液(塩化カルシウム18.9μg、塩化鉄(III)500μg、硫酸亜鉛7水和物9.0μg、硫酸銅5.1μg、塩化マンガン4水和物6.7μg、塩化コバルト4.9μg、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム200μg)、100mg/Lアンピシリン)に植菌し微生物培養装置(エイブル社製、製品名「BioJr.8」)を用いてpH6.8、30℃を維持したまま培養を開始した。培養開始3時間後1M IPTG(イソプロピル−β−チオガラクトピラノシド)を0.15mLを加えた。培養開始14時間後から、グリセリン/タンパク質溶液(50% グリセリン、50g/L ラクトアルブミン水解物、33g/L 消泡剤(信越シリコーン製、「KM−70」)、100mg/L アンピシリン)の滴下を開始し、培養を開始した。
培養開始後、培養液をサンプリングし、濁度を測定し、乾燥菌体密度を算出した。培養開始後、9時間で乾燥菌体密度が1g/Lになったので、培養液を回収した。培養液を遠心分離(4,000G、15分、4℃)して、上澄みを抜き取り、細菌を集菌した。集菌した細菌を当業者が行う一般的な超音波破砕法によって破砕し、成長因子抽出液(X’−1)を得た。(X’−1)を用いて、エンドトキシン量及び生産した成長因子の量を測定した。結果を表1にまとめた。
【0073】
<比較例2>
比較例1において、「培養開始後、9時間で乾燥菌体密度が1g/Lになった」を「培養開始後、20時間で乾燥菌体密度が10g/Lになった」とする以外は同様に実施して、成長因子抽出液(X’−2)を得た。測定したエンドトキシン量及び生産した成長因子の量の結果を表1にまとめた。
【0074】
<比較例3>
比較例1において、「製造例1で得た大腸菌(α)」に変えて、「製造例2で得た大腸菌(β)」を用いる以外は比較例1と同様に実施して成長因子抽出液(X’−3)を得た。測定したエンドトキシン量及び生産した成長因子の量の結果を表1にまとめた。
【0075】
<比較例4>
比較例1において、「製造例1で得た大腸菌(α)」に変えて、「製造例2で得た大腸菌(β)」を用いて、「培養開始後、9時間で乾燥菌体密度が1g/Lになった」を「培養開始後、20時間で乾燥菌体密度が10g/Lになった」とする以外は同様に実施して成長因子抽出液(X’−4)を得た。測定したエンドトキシン量及び生産した成長因子の量の結果を表1にまとめた。
【0076】
【表1】

【0077】
<実施例1>
培養を開始するまでは比較例1と同様に実施した。
培養開始後、培養液をサンプリングし、濁度を測定し、乾燥菌体密度を算出した。培養開始後、9時間で乾燥菌体密度が1g/Lになったので、培養液の重量を基準として1重量%になるように界面活性剤(A)としてラウリン酸ジメチルアミノプロピルアミドを加えた。
界面活性剤を加えて1時間、3時間、5時間、7時間、10時間、30時間、70時間に培養液のサンプリングを行い、培養液の濁度、エンドトキシンの量及び生産した成長因子の量を測定した。
エンドトキシン量及び生産した成長因子の量は、サンプリングした培養液を遠心分離(4,000G、15分、4℃)して、培養上清(X−1−1)〜(X−1−7)を得て、培養上清(X−1−1)〜(X−1−7)中のエンドトキシン量及び生産した成長因子の量を測定することにより求めた。結果を表2にまとめた。
【0078】
<実施例2>
培養を開始するまでは比較例1と同様に実施した。
培養開始後、培養液をサンプリングし、濁度を測定し、乾燥菌体密度を算出した。培養開始後、14時間で乾燥菌体密度が5g/Lになったので、培養液の重量を基準として1重量%になるように界面活性剤(A)としててラウリン酸ジメチルアミノプロピルアミドを加えた。界面活性剤を加えて1時間、3時間、5時間、7時間、10時間、30時間、70時間に培養液のサンプリングを行い、培養液の濁度、エンドトキシンの量及び生産した成長因子の量を測定した。
エンドトキシン量及び生産した成長因子の量は、サンプリングした培養液を遠心分離(4,000G、15分、4℃)して、培養上清(X−2−1)〜(X−2−7)を得て、培養上清(X−2−1)〜(X−2−7)中のエンドトキシン量及び生産した成長因子の量を測定することにより求めた。結果を表2にまとめた。
【0079】
<実施例3>
培養を開始するまでは比較例1と同様に実施した。
培養開始後、培養液をサンプリングし、濁度を測定し、乾燥菌体密度を算出した。培養開始後、20時間で乾燥菌体密度が10g/Lになったので、培養液の重量を基準として1重量%になるように界面活性剤(A)としてラウリン酸ジメチルアミノプロピルアミドを加えた。界面活性剤を加えて1時間、3時間、5時間、7時間、10時間、30時間、70時間に培養液のサンプリングを行い、培養液の濁度、エンドトキシンの量及び生産した成長因子の量を測定した。
エンドトキシン量及び生産した成長因子の量は、サンプリングした培養液を遠心分離(4,000G、15分、4℃)して、培養上清(X−3−1)〜(X−3−7)を得て、培養上清(X−3−1)〜(X−3−7)中のエンドトキシン量及び生産した成長因子の量を測定することにより求めた。結果を表2にまとめた。
【0080】
<実施例4>
比較例1において、「製造例1で得た大腸菌(α)」に変えて、「製造例2で得た大腸菌(β)」を用いて、培養を開始するまでは比較例1と同様に実施した。
培養開始後、培養液をサンプリングし、濁度を測定し、乾燥菌体密度を算出した。培養開始後、9時間で乾燥菌体密度が1g/Lになったので、培養液の重量を基準として1重量%になるように界面活性剤(A)としてラウリン酸ジメチルアミノプロピルアミドを加えた。界面活性剤を加えて1時間、3時間、5時間、7時間、10時間、30時間、70時間に培養液のサンプリングを行い、培養液の濁度、エンドトキシンの量及び生産した成長因子の量を測定した。
エンドトキシン量及び生産した成長因子の量は、サンプリングした培養液を遠心分離(4,000G、15分、4℃)して、培養上清(X−4−1)〜(X−4−7)を得て、培養上清(X−4−1)〜(X−4−7)中のエンドトキシン量及び生産した成長因子の量を測定することにより求めた。結果を表2にまとめた。
【0081】
<実施例5>
比較例1において、培養を開始するまでは比較例1と同様に実施した。
培養開始後、培養液をサンプリングし、濁度を測定し、乾燥菌体密度を算出した。培養開始後、35時間で乾燥菌体密度が20g/Lになったので、培養液の重量を基準として1重量%になるように界面活性剤(A)としてラウリン酸ジメチルアミノプロピルアミドを加えた。界面活性剤を加えて1時間、3時間、5時間、7時間、10時間、30時間、70時間に培養液のサンプリングを行い、培養液の濁度、エンドトキシンの量及び生産した成長因子の量を測定した。
エンドトキシン量及び生産した成長因子の量は、サンプリングした培養液を遠心分離(4,000G、15分、4℃)して、培養上清(X−5−1)〜(X−5−7)を得て、培養上清(X−5−1)〜(X−5−7)中のエンドトキシン量及び生産した成長因子の量を測定することにより求めた。結果を表2にまとめた。
【0082】
【表2】

【0083】
表1及び表2の結果から、本発明の成長因子の生産方法は、従来の菌体破砕による成長因子抽出法に比べて、生産した成長因子1g当たりのエンドトキシンの量が極めて少ないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の成長因子の製造方法は、エンドトキシンが少ない成長因子を製造することができる。また、本発明の製造方法で得られた成長因子は、化粧品、医薬品及び医薬部外品などとして好適に使用できる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌及び界面活性剤(A)を含有する培養液を用いて成長因子を分泌生産する成長因子の生産方法。
【請求項2】
細菌と界面活性剤(A)とを共存させる時間が1〜70時間である請求項1に記載の成長因子の生産方法。
【請求項3】
培養液の体積を基準とした乾燥菌体密度が0.1g/L〜11.5g/Lである請求項1又は2に記載の成長因子の生産方法。

【図1】
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