説明

戸挟み検出装置

【課題】戸閉信号を入力しなくても、車両用ドアが閉鎖状態となることを検知して、戸挟みを検出することができる戸挟み検出装置を提供すること。
【解決手段】一対の車両用のドア2a,2bには、ドア2a,2bの加速度方向を検出する加速度センサがそれぞれ設けられている。そして、コントローラ12は、一対の加速度センサにより出力されたドア2a,2bの加速度方向を示す加速度信号に基づき、ドア2a,2bの加速度方向を判定する。コントローラ12は、加速度方向が、対向する方向である場合には、ドア2a,2bが開放状態から閉鎖状態に移行すると検知し、戸挟みの有無を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアが閉じるときに鞄等が挟まったことを検出する車両用の戸挟み検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道等の車両には、車両用ドアが閉じた際に持ち物等が挟まったことを検出する戸挟み検出装置が設けられているものがある。この戸挟み検出装置は、例えば、車両用ドアの先端部に戸先ゴムが設けられ、車両用ドアが閉じた際の戸先ゴムの押圧状態を検出することにより、戸挟み状態であるか否かを検出する。すなわち、この戸挟み検出装置は、車両用ドアが閉じた際に持ち物等が挟まると、戸先ゴムが通常とは異なった状態で押圧されることから、その戸先ゴムの押圧状態の変化を検出することによって、戸挟み状態を検出する。例えば、特許文献1に開示された戸挟み検出装置は、戸先ゴム内に空間を形成し、空間内の圧力変化を検出することにより、戸先ゴムの変形、即ち押圧状態を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−8121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、戸挟み検出装置は、通常、車両側に備えられている通信装置を介して、車両用ドアが閉じられることを指示する戸閉信号を入力し、当該戸閉信号の入力に基づき、戸挟みを検出するようになっている。しかしながら、戸挟み検出装置を取り付ける車両によっては、戸閉信号を出力しないものや、信号の種類が異なるもの、通信設備が整えられていないもの等、様々な車両があり、取り付けられない場合があった。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、戸閉信号を入力しなくても、車両用ドアが閉鎖状態となることを検知して、戸挟みを検出することができる戸挟み検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、車両の乗降口を開閉する一対のドアの互いに対向する先端にそれぞれ設けられた弾性変形可能な戸先ゴムが有する中空部の内圧に応じた圧力信号を出力する圧力センサと、前記ドアが開放状態から閉鎖される毎に、前記圧力信号の最低値に基づいて戸挟み判定値を演算し、演算した戸挟み判定値と前記圧力センサから出力される圧力信号を比較することに基づいて戸挟みの有無を検出する戸挟み検出手段と、を備えた戸挟み検出装置において、一対のドアには、ドアの加速度方向を検出する加速度センサがそれぞれ設けられ、前記戸挟み検出手段は、一対の前記加速度センサにより検出されたドアの加速度方向が、対向する方向である場合には、前記ドアが開放状態から閉鎖状態に移行すると検知し、戸挟みの有無を検出することを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記戸挟み検出手段は、前記ドアが開放状態から閉鎖状態に移行すると検知したときに、戸挟みしていると検出してから予め決められた時間が経過するまでに戸挟みがなくなったと検出しなかった場合には、ドアを開放させることを指示する開放信号を出力することを要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記戸挟み検出手段は、一対の前記加速度センサにより検出されたドアの加速度方向が、離間する方向である場合には、前記ドアが閉鎖状態から開放状態に移行すると検知し、戸挟みの有無を検出しないことを要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の発明において、前記戸挟み検出手段は、一対の前記加速度センサにより検出されたドアの加速度方向が、同じ方向である場合には、車両が停止状態から走行状態に移行することを検知し、戸挟みの有無を検出することを要旨とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記戸挟み検出手段は、車両が停止状態から走行状態に移行することを検知したとき、戸挟みしていると検出してから予め決められた時間が経過した場合、車両を停止させることを指示する停止信号を出力することを要旨とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は請求項5に記載の発明において、前記戸挟み検出手段は、車両が停止状態から走行状態に移行することを検知してから予め決められた時間が経過したときには、戸挟みの有無を検出しないことを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、戸閉信号を入力しなくても、車両用ドアが閉鎖状態となることを検知して、戸挟みを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】車両の一部側面図。
【図2】戸先ゴムの平断面図。
【図3】車両用ドアの要部を示す縦断面図。
【図4】戸挟み検出装置の電気的構成を示すブロック図。
【図5】(a)〜(c)加速度方向のドアの開閉状態を示す車両の側面図。
【図6】測定ユニットの動作を示すフローチャート。
【図7】コントローラの動作を示すフローチャート。
【図8】コントローラの動作を示すフローチャート。
【図9】ドアの開閉と圧力信号の関係を示すタイミング図。
【図10】ドアの開閉と圧力信号の関係を示す波形図。
【図11】ドアの開閉と圧力信号の関係を示す波形図。
【図12】コントローラの動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図11に従って説明する。
図1に示すように、列車の車両1には2枚のドア2a,2bが車両1の前後方向(図1の左右方向)へスライド可能に取着されている。両ドア2a,2bはドアモータ等のアクチュエータ(図示略)に機械的に連結され、アクチュエータの駆動に基づいて前後方向へスライドし、車両1の乗降口3を開閉する。
【0015】
各ドア2a,2bの先端部には、ドア2a,2bの略全高に亘って戸先ゴム5a,5bが取着されている。各ドア2a,2bの戸先ゴム5a,5bは、ドア閉止時において、両ドア2a,2bの取付状態に応じて、互いに密着した状態、又は所定の隙間を空けて対向する。両戸先ゴム5a,5bが密着した状態、より詳しくは、先端同士が干渉して弾性変形した状態になると、両ドア2a,2b間の合わせ部分を隙間無く塞ぐようになる。
【0016】
ドア2aには、測定ユニット11が取着されている。測定ユニット11は、例えばドア2aの上部に配置されている。測定ユニット11は、図4に示すように、圧力センサ10を有し、この圧力センサ10にて戸先ゴム5aに形成した弾性変形可能な中空部の内圧を検出する。そして、測定ユニット11は、検出した圧力に応じた圧力信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換する信号変換部11aを備えており、変換後の圧力信号を車両1に取着されたコントローラ12に送信する。なお、測定ユニット11とコントローラ12は通信ケーブル13にて信号を送受信できるように接続されている。また、測定ユニット11は、ドア2aの加速度方向を測定する加速度センサ14を備えており、加速度センサ14により計測された加速度方向を指示する加速度信号をコントローラ12に送信するようになっている。
【0017】
コントローラ12は、制御手段としてのCPU,ワークエリアとして機能するRAM,制御プログラムが予め記録されたROMなどが備えられている。コントローラ12は、制御プログラムを実行することにより、ドア2a,2bの開閉状態や、戸挟みを検出するようになっている。また、コントローラ12は、戸挟み検出信号を出力するようになっている。車両1には図示しない制御装置及び表示ランプが備えられ、その制御装置は、コントローラ12から出力される戸挟み検出信号及び戸先ゴム検知信号に応答して表示ランプを点灯または消灯させる。例えば、制御装置は、戸挟み検出信号に基づいて、戸挟みがある旨の信号(例えばHレベル)に応答して異常表示ランプを点灯させ、戸挟みがない旨の信号(例えばLレベル)に応答して異常表示ランプを消灯させる。なお、ドア2b及び戸先ゴム5bについても、ドア2a及び戸先ゴム5aと同様に構成されているため、以下の説明では、ドア2b、戸先ゴム5b、ドア2bに設けられた測定ユニット11等に対する説明を省略する。
【0018】
次に、戸先ゴム5aの構成を説明する。
図2に示すように、ドア2aの先端部には凹部4が形成されている。これら凹部4は上面が開口するものであり、凹部4内には戸先ゴム5aの取付部21が装着されている。この取付部21は凹部4内に上方から圧入されることに基づいて凹部4内に固定されたものであり、取付部21の中央部には基準圧力室22が形成されている。この基準圧力室22は、図3に示すように、上下面が開口する縦長な空間状をなすものであり、基準圧力室22内には下端部に位置して2個の栓23が圧入され、2個の栓23は基準圧力室22の下端部を気密状態に塞いでいる。
【0019】
図2に示すように、取付部21には、幅狭部24が一体形成されており、幅狭部24には凹部4の外部に位置して断面略半円筒形状の戸当り部25が一体形成されている。この戸当り部25は上下面が開口する縦長な筒状をなすものである。戸当り部25は、ドア2aの上下方向に沿って延びるとともに、ドア2aの凹部4を覆うように形成された板状の基部25aと、基部25aの図面上下両端に接続された半円状の当接部25bとから構成されている。戸当り部25の内周面(基部25a)には規制壁部26が一体形成されている。この規制壁部26は戸当り部25の前後方向の中心から車外側へ偏った部分に位置するものであり、規制壁部26の厚さ寸法は戸当り部25の厚さ寸法より厚く設定されている。
【0020】
戸当り部25の内周面には第1の連結板27および第2の連結板28が一体形成されている。第1の連結板27の基端部は基部25aと一体的に接続され、第2の連結板28の基端部は当接部25bと一体的に接続されている。これら第1の連結板27および第2の連結板28の先端部には中空部に相当する縦長な円筒部29が一体形成されており、第1の連結板27および第2の連結板28は円筒部29を戸当り部25の前後方向の中心から車内側へ偏った部分に保持している。この円筒部29は上下面が開口する空間状の検出用圧力室30を形成するものであり、検出用圧力室30内には、図3に示すように、下端部に位置して2個の栓31が圧入され、2個の栓31は検出用圧力室30の下面を気密状態に塞いでいる。
【0021】
戸当り部25はドア2aの閉鎖時にドア2aが相手側のドア2aに衝突するときの衝撃を緩和したり、戸当り部25間に鞄等の異物が挟まったときの衝撃を緩和したりするものであり、戸当り部25間に異物が挟まったときには下記の挙動を呈する。尚、図2において、戸先ゴム5aの図面上方を車外、戸先ゴム5aの図面下方を車内とする。
【0022】
戸当り部25間に異物が挟まると、当接部25bが車外及び車内の少なくとも一方に向って膨らみ、第1の連結板27の基端部と、第2の連結板28の基端部との位置関係が相対的に変化する。具体的には、第1の連結板27の基端部と第2の連結板28の基端部との間の距離が変化する。その結果、第1の連結板27の先端部と第2の連結板28の先端部が接続された円筒部29が潰されるので、検出用圧力室30の体積が変化する、つまり検出用圧力室30の内圧が変化する。このとき、取付部21には当接部25bを変形する力が作用しないので、取付部21が一定形状に保持されるため、基準圧力室22の内圧は変化しない。
【0023】
なお、当接部25bが規制壁部26に当接すると、当接部25bのそれ以上の変形が防止される。このため、第1の連結板27の基端部と第2の連結板28の基端部との相対的な移動が規制される、つまり円筒部29の変形量(潰し量)が規制される。従って、規制壁部26は、検出用圧力室30の内圧の上限を設定する。また、規制壁部26は、円筒部29の破損を防止する。
【0024】
図3に示すように、戸当り部25内には、上下端部に位置して芯ゴム32が固定されている。芯ゴム32は、その先端が、規制壁部26の先端よりも突出するように形成されている。従って、芯ゴム32は、図1に示すように、ドア2a,2bを閉じたドア閉止時において、両ドア2a,2bの先端にそれぞれ取着された芯ゴム32が互いの当接部25bを介して当接することにより、両ドア2a,2bの移動を規制するとともに、両ドア2a,2b間の合わせ部分を隙間無く塞ぐ。
【0025】
また、芯ゴム32は、当接部25bが互いに干渉してわずかに弾性変形した状態とする。上記したように、当接部25bの変形により、円筒部29が潰れ、検出用圧力室30の内圧が変化する。従って、芯ゴム32は、ドア閉止時における検出用圧力室30の内圧を、ドア閉止時以外における検出用圧力室30の内圧よりもわずかに高くする。なお、ドア閉止時においても、取付部21には当接部25bを変形する力が作用しないので、取付部21が一定形状に保持され、基準圧力室22の内圧は変化しない。
【0026】
戸先ゴム5aの基準圧力室22内には、測定ユニット11の取着位置に対応して上端部に位置して基準チューブ41の第1端部が圧入され、基準チューブ41の第2端部は基準パイプ42の第1端部に接続されている。基準パイプ42の第2端部は基準チューブ43の第1端部に接続され、基準チューブ43の第2端部は測定ユニット11に接続されている。測定ユニット11は、ドア2aの上端面に例えばねじ止めされている。基準チューブ41,43はシリコンゴムを材料に形成されている。基準パイプ42は金属を材料に形成されたものであり、基準パイプ42には第1の圧抜孔(図示略)が形成されている。これら基準チューブ43は基準パイプ42および基準チューブ41と共に第1の圧力通路44を構成する。つまり、戸先ゴム5aの基準圧力室22は、第1の圧力通路44を介して測定ユニット11に接続されている。
【0027】
戸先ゴム5aの検出用圧力室30内には上端部に位置して検出チューブ45の第1端部が圧入され、検出チューブ45の第2端部は検出パイプ46の第1端部に接続されている。検出パイプ46の第2端部は検出チューブ47の第1端部に接続され、検出チューブ47の第2端部は測定ユニット11に接続されている。これら検出チューブ45,47はシリコンゴムを材料に形成されている。検出パイプ46は金属を材料に形成されたものであり、検出パイプ46には第2の圧抜孔(図示略)が形成されている。検出チューブ47は検出パイプ46および検出チューブ45と共に第2の圧力通路48を構成する。つまり、戸先ゴム5aの検出用圧力室30は、第2の圧力通路48を介して測定ユニット11に接続されている。
【0028】
ドア2aには、固定部材49が取着されている。固定部材49には、基準パイプ42及び検出パイプ46が挿通されており、これらパイプ42,46は固定部材49を構成する合成樹脂製のパイプベース、取付金具、及び取付金具内に固定された接着性を有するシール材により、移動不能に支持されている。そして、各パイプ42,46にそれぞれ形成された第1及び第2の圧抜孔(図示略)は、接着性のシール材により、気密状態に塞がれている。
【0029】
次にコントローラ12及び測定ユニット11における処理について説明する。
まず、加速度センサにて検出された加速度方向に応じて出力された加速度信号に基づき、ドア2a,2bの開閉状態の判定について図5に基づき説明する。コントローラ12は、所定周期毎に、ドア2a,2bの加速度センサから加速度信号をそれぞれ入力し、当該加速度信号に基づき、開閉状態を判定するようになっている。
【0030】
より詳しく説明すると、測定ユニット11は、加速度センサがドア2a,2bの加速度方向を検出すると、当該加速度方向を示す加速度信号を出力する。コントローラ12は、当該加速度信号を入力すると、入力した加速度信号に基づき、ドア2a,2bの加速度方向をそれぞれ特定する。コントローラ12は、特定したドア2a,2bの加速度方向が対向する方向を向いている場合(図5(a)参照)、ドア2a,2bが開放状態から閉鎖状態に移行すると判定する。また、コントローラ12は、特定したドア2a,2bの加速度方向が離間する方向を向いている場合(図5(b)参照)、ドア2a,2bが閉鎖状態から開放状態に移行すると判定する。また、コントローラ12は、特定したドア2a,2bの加速度方向が同じ方向を向いている場合(図5(c)参照)、車両1が走行状態にあると判定する。
【0031】
次に、測定ユニット11の圧力信号送信態様について図6に基づき説明する。
測定ユニット11は、所定周期毎に、測定開始信号の入力の有無を判定する(ステップS31)。そして、この判定結果が肯定の場合(測定開始信号を入力した場合)には、測定ユニット11は、圧力センサ10により圧力値を検出する(ステップS32)。この圧力値は図3の基準圧力室22の内圧と検出用圧力室30の内圧との差圧を示すものである。測定ユニット11は、圧力値を検出すると、圧力値に応じた圧力信号Pをコントローラ12に出力する(ステップS33)。
【0032】
次に、コントローラ12による戸挟み検出について図7〜図11に基づき説明する。コントローラ12による戸挟み検出処理は、電源が投入されてから実行されるようになっている。
【0033】
コントローラ12は、戸挟み検出処理が実行されると、まず、入力した加速度信号が存在するか否かを判定し、入力していた場合、入力した加速度信号により、ドア2a,2bの加速度方向が離間方向であるか否かを判定する(ステップS1)。すなわち、コントローラ12は、ドア2a,2bが閉鎖状態から開放状態に移行するか否かについて判定する。この判定結果が肯定の場合(開放状態に移行すると判定した場合)、コントローラ12は、開放時最低圧力値P1として最大値P1max を設定(P1max →P1)する(ステップS2)。この最大値P1max は、ドア2a,2bが閉鎖状態から開放状態に移行するときの閉開圧力の最大値(初期値)である。尚、最大値P1max はコントローラ12のROMに予め記録されたものである。コントローラ12は、「P1max →P1」を実行すると、測定ユニット11に測定開始信号を出力し、圧力信号Pを入力する(ステップS3)。
【0034】
そして、コントローラ12は、入力した圧力信号Pが示す値を閉開圧力値P1aとして設定する(ステップS4)。次に、コントローラ12は、開放時最低圧力値P1と、設定した閉開圧力値P1aを比較する(ステップS5)。具体的には、コントローラ12は、設定した閉開圧力値P1a(入力した圧力信号Pが示す値)が、開放時最低圧力値P1以下の値であるか否かについて判定する(ステップS5)。ステップS5の判定結果が肯定の場合(「開放時最低圧力P1≧閉開圧力P1a」であると判定した場合)には、コントローラ12は、閉開圧力値P1aを新たな開放時最低圧力値P1として設定(P1a→P1)する(ステップS6)。そして、ステップS5の判定結果が否定の場合、又はステップS6の処理を実行した場合、コントローラ12は、次に、所定時間の間、加速度信号を入力していないか否かについて判定する(ステップS7)。より詳しくは、コントローラ12は、ドア2a,2bの加速度方向が、所定時間経過するまで「0」であるか否か、つまり、ドア2a,2bが動いていない、或いは車両1が動いていないか否かを判定する。ステップS7の判定結果が否定の場合には、コントローラ12は、ステップS3に移行する。一方、ステップS7の判定結果が肯定の場合、コントローラ12は、ステップS1に移行する。すなわち、コントローラ12は、ステップS3〜ステップS7の処理により、ドア2a,2bが閉鎖状態から開放状態に移行する間(例えば、図9の期間K2)における開放時最低圧力値P1を設定するようになっている。
【0035】
次に、ステップS1の判定結果が否定の場合(離間方向でない場合)について説明する。
コントローラ12は、入力した加速度信号が存在するか否かを判定し、入力していた場合、入力した加速度信号により、ドア2a,2bの加速度方向が対向方向であるか否か、又は同一方向であるか否かを判定する(ステップS8)。すなわち、コントローラ12は、ドア2a,2bが開放状態から閉鎖状態に移行するか否か、又は車両1が停止状態から走行状態に移行するか否かについて判定する。
【0036】
この判定結果が肯定の場合(対向方向である場合、又は同一方向である場合)、コントローラ12は、測定開始信号を出力し、圧力信号Pを入力する(ステップS9)。そして、コントローラ12は、入力した圧力信号Pが示す値を閉鎖時初期圧力値P2として設定する(ステップS10)。この閉鎖時初期圧力値P2は、ドア2a,2bの閉鎖開始時、又は車両1の走行開始時における圧力値である。
【0037】
そして、コントローラ12は、測定開始信号を出力し、圧力信号Pを入力する(ステップS11)。そして、コントローラ12は、入力した圧力信号Pが示す値を検出圧力値P2aとして設定する(ステップS12)。検出圧力値P2aは、ドア2a,2bが開放状態から閉鎖状態に移行する間における圧力値、又は車両1の停止状態から走行状態に移行する間における圧力値である。そして、コントローラ12は、検出圧力値P2aが、閉鎖時初期圧力値P2以下の値であるか否かについて判定する(ステップS13)。つまり、コントローラ12は、ドア2a,2bが開放状態から閉鎖状態に移行する間における圧力値が閉鎖開始時の初期値以下の値であるか否かについて、又は車両1の停止状態から走行状態に移行する間における圧力値が走行開始時の初期値以下の値であるか否かについて判定する。なお、初期値以下である場合には、挟み込みがないと判断することができる。
【0038】
この判定結果が肯定の場合、コントローラ12は、戸挟み検出信号の出力をオフ(戸挟み検出信号を出力しない)とする(ステップS14)。そして、コントローラ12は、所定時間、加速度信号を入力していないか否かについて判定する(ステップS15)。より詳しくは、コントローラ12は、ドア2a,2bの加速度方向が予め決められた所定時間が経過するまで、「0」であるか否か、つまり、ドア2a,2bが動いていない或いは車両1が動いていないか否かを判定する。ステップS15の判定結果が否定の場合には、コントローラ12は、ステップS11に移行する。一方、ステップS15の判定結果が肯定の場合、コントローラ12は、ドア2a,2bが閉鎖状態となったと判定し、測定開始信号を出力し、圧力信号Pを入力する(ステップS16)。そして、コントローラ12は、入力した圧力信号Pが示す値を閉鎖時圧力値P0として設定する(ステップS17)。つまり、加速度方向が対向方向であるときから加速度方向が「0」となったとき、或いは加速度方向が同一方向であるときから加速度方向が「0」となったときには、ドア2a,2bが閉鎖状態であると判定することができる。そして、コントローラ12は、その時の圧力値をドア2a,2bが(挟み込みがない状態で)閉鎖したときの閉鎖時圧力値P0として設定する。そして、コントローラ12は、ステップS1の処理に移行する。
【0039】
次に、ステップS13の判定結果が否定の場合(検出圧力値P2aが、閉鎖時初期圧力値P2より大きい場合)について説明する。
ステップS13の判定結果が否定の場合、コントローラ12は、下記(1)式を演算することに基づいて戸挟み判定値P3を算出する。
P3=(P0−P1)+P2+しきい値ΔP …(1)
この判定値P3は、閉鎖時初期圧力値P2に、閉鎖時圧力値P0から開放時最低圧力値P1を減算して算出した値及び予め決められたしきい値ΔPを加算したものである。コントローラ12は戸挟み判定値P3を算出すると、ステップS12で記録した検出圧力値P2aをステップS18で算出した戸挟み判定値P3と比較する。詳しくは、コントローラ12は、検出圧力値P2aが、戸挟み判定値P3よりも小さいか否かについて判定する(ステップS19)。この処理により、コントローラ12は、現在の状況に応じて(気温による内圧の変化や戸先ゴム5a,5bの状態など)に応じて、より正確に戸挟みを検出することができる。この判定結果が肯定であると判定した場合(検出圧力値P2aが、戸挟み判定値P3よりも小さい場合)、コントローラ12は、戸挟みがないと判定してステップS14に移行して、戸挟み検出信号の出力をオフする(この場合には戸挟み検出信号は出力されない)。一方、ステップS19の判定結果が否定の場合(検出圧力値P2aが、戸挟み判定値P3以上である場合)、コントローラ12は、戸挟み検出信号の出力をオンする、つまり、この場合には戸挟み検出信号は出力する(ステップS20)。次に、コントローラ12は、入力した加速度信号が存在するか否かを判定し、入力していた場合、入力した加速度信号により、ドア2a,2bの加速度方向が離間方向であるか否かを判定する(ステップS21)。すなわち、コントローラ12は、異常を検知した乗務員により、ドア2a,2bの開放操作が行われ、その結果、ドア2a,2bが閉鎖状態から開放状態に移行したか否かについて判定する。この判定結果が否定の場合、コントローラ12は、ステップS20に移行して、戸挟み検出信号の出力を継続する。一方、ステップS21の判定結果が肯定の場合、コントローラ12は、ステップS11の処理に移行する。以上のように、ステップS11〜ステップS21の処理により、ドア2a,2bが閉鎖状態となるまで、或いは車両1が停止状態となるまで戸挟みを検出し、異常がなく、閉鎖状態又は停止状態となった場合には、そのときにおける閉鎖時圧力値P0を設定するようになっている。以上により、コントローラ12が、戸挟み検出手段となる。
【0040】
次に作用について説明する。
まず、戸先ゴムに亀裂や孔等が生じていない場合であって、戸挟みが無い場合について図9に基づき説明する。
【0041】
図9に示すように、車両1が停止状態であって、ドア2a,2bが閉鎖状態である期間K1において、コントローラ12は、ステップS1及びステップS8の処理を繰り返し実行することにより、加速度方向に変化がないかについて繰り返し判定する。そして、ドア2a,2bが閉鎖状態から開放状態に移行する期間K2において、コントローラ12は、ステップS1〜S7の処理を実行して、期間K2における最低の圧力値が開放時最低圧力値P1となるように、入力した圧力信号Pに基づき、開放時最低圧力値P1を更新し続ける。なお、期間K2では、図9に示すように、ドア2a,2bの開放に伴い、圧力信号Pが示す値が低下し、その後、一定値となるようになっている。そして、ドア2a,2bが開放状態となった期間K3においては、コントローラ12は、ステップS1及びステップS8の処理を繰り返し実行して、加速度方向に変化がないかについて繰り返し判定する。
【0042】
そして、ドア2a,2bが開放状態から閉鎖状態に移行する期間K4の開始時において、コントローラ12は、閉鎖時初期圧力値P2を設定する。また、ドア2a,2bが開放状態から閉鎖状態に移行する期間K4において、コントローラ12は、検出圧力値P2aを所定時間毎に設定し、検出圧力値P2aが閉鎖時初期圧力値P2よりも大きくなったか否か、又は判定値P3以上となったか否かを判定することにより、戸挟みを検出する。なお、図9では、戸挟みがないため、圧力信号Pが示す値は、ドア2a,2bの閉鎖に伴い、上昇し、その後、一定値となるものの、判定値P3よりも大きくなることはない。従って、図9では、戸挟みがないため、閉鎖状態に移行した期間K5において、コントローラ12は、ドア2a,2bが閉鎖状態となったと判定して、閉鎖時圧力値P0を設定する。また、期間K5において、コントローラ12は、ステップS1及びステップS8の処理を繰り返し実行することにより、加速度方向に変化がないかについて繰り返し判定する。
【0043】
車両1が走行状態となった期間K6の開始時において、コントローラ12は、閉鎖時初期圧力値P2を設定する。また、走行状態に移行する期間K6において、コントローラ12は、検出圧力値P2aを所定時間毎に設定し、検出圧力値P2aが期間K6開始時に設定した閉鎖時初期圧力値P2よりも大きくなったか否か、又は判定値P3以上となったか否かを判定することにより、戸挟みを検出する。なお、図9では、戸挟みがないため、圧力信号Pが示す値は、一定値となり、戸挟み検出信号は出力されない。
【0044】
次に、戸先ゴムに亀裂や孔等が生じていない場合であって、戸挟みがある場合について図10に基づき説明する。なお、期間K11〜K13までは、図9における期間K1〜K3と同じであるため、説明は省略する。
【0045】
ドア2a,2bが開放状態から閉鎖状態に移行する期間K14の開始時において、コントローラ12は、閉鎖時初期圧力値P2を設定する。また、ドア2a,2bが開放状態から閉鎖状態に移行する期間K14において、コントローラ12は、検出圧力値P2aを所定時間毎に設定し、検出圧力値P2aが閉鎖時初期圧力値P2よりも大きくなったか否か、又は判定値P3以上となったか否かを判定することにより、戸挟みを検出する。図10では、戸挟みがあることを前提としているため、戸挟みが生じることに基づいて圧力信号Pが急激に高まり、一定の異常値に保持される(期間K14)。このため、コントローラ12は、戸挟みがあることを検出して戸挟み検出信号を出力する。これに応じて、ドア2a,2bが閉鎖状態から開放状態に移行されると、期間K15に示すように、圧力信号Pが急激に小さくなり、ドア2aの開放状態で一定の通常値になる。このため、コントローラ12は、ステップS11の処理に移行して、新たに戸挟みを検出する。ここで、戸挟みがない場合には、コントローラ12は、戸挟み検出信号の出力を停止する。
【0046】
次に、戸先ゴムに亀裂や孔等が生じた場合であって、戸挟みがある場合について図11に基づき説明する。なお、期間K21〜K23までは、図9における期間K1〜K3と同じであるため、説明は省略する。
【0047】
ドア2a,2bが開放状態から閉鎖状態に移行する期間K24の開始時において、コントローラ12は、閉鎖時初期圧力値P2を設定する。また、ドア2a,2bが開放状態から閉鎖状態に移行する期間K24において、コントローラ12は、検出圧力値P2aを所定時間毎に設定し、検出圧力値P2aが閉鎖時初期圧力値P2よりも大きくなったか否か、又は判定値P3以上となったか否かを判定することにより、戸挟みを検出する。図11では、戸挟みがあることを前提としているため、戸挟みが生じることに基づいて圧力信号Pが急激に高まり、一定の異常値に保持される(期間K24)。このため、コントローラ12は、戸挟みがあることを検出して戸挟み検出信号を出力する。なお、図11に示すように、戸先ゴムに亀裂や孔等が生じているため、圧力信号Pは、その後低下するようになっている。しかしながら、加速度方向が離間方向となるまで、コントローラ12は、ステップS20,S21を繰り返し実行し、戸挟み検出信号を出力するようになっている。これに応じて、乗務員がドア2a,2bの開放操作を行うと、ドア2a,2bが閉鎖状態から開放状態に移行される。このとき、期間K25に示すように、円筒部29に作用していた押潰力が小さくなるので、円筒部29が弾性復帰する。そして、圧力信号Pが急激に低下し、負圧になる。この後、戸当り部25内の空気が圧力差で円筒部29内に亀裂等を通して流入することに基づいて圧力信号Pが高まり、通常値になる。
【0048】
そして、コントローラ12は、この期間K25において、ステップS11で圧力信号Pを検出し、ステップS12で圧力信号Pを検出圧力値P2aに設定し、ステップS18で検出圧力値P2aと閉鎖時初期圧力値P2とを比較する。この検出圧力値P2aは、負圧又は通常値の範囲内であり、通常時の閉鎖時初期圧力値P2より小さい。従って、コントローラ12は、戸挟み検出信号の出力を停止する。
【0049】
以上詳述したように、本実施形態は、以下の効果を有する。
(1)加速度センサにより検出されたドア2a,2bの加速度方向が対向方向である場合には、ドア2a,2bが開放状態から閉鎖状態に移行すると判定した。これにより、車両1に備えられている通信装置などから戸閉信号を入力しなくても、ドア2a,2bが開放状態から閉鎖状態に移行する期間を判定し、ドア2a,2bの挟み込みを検出することができる。これにより、戸閉信号の種類が異なる場合や、戸閉信号の出力や、信号の入出力のための信号線などが無い場合であっても、車両1にコントローラ12及び測定ユニット11からなる戸挟み検出装置を設けることができる。
【0050】
(2)加速度センサにより検出されたドア2a,2bの加速度方向が離間方向である場合には、ドア2a,2bが閉鎖状態から開放状態に移行すると判定した。これにより、車両に備えられている通信装置などから戸開信号を入力しなくても、ドア2a,2bが閉鎖状態から開放状態に移行する期間を判定することができる。これにより、戸開信号の種類が異なる場合や、戸開信号の出力や、信号の入出力のための信号線などが無い場合であっても、ドア2a,2bが閉鎖状態から開放状態に移行する期間を判定することができる。また、これにより、ドア2a,2bが閉鎖状態から開放状態に移行する期間における開放時最低圧力値P1を設定することができ、設定した開放時最低圧力値P1を判定値P3の算出時に補正値として利用することができ、より正確に戸挟みを検出することができる。
【0051】
(3)加速度センサにより検出されたドア2a,2bの加速度方向が同一方向である場合には、車両1が停止状態から走行状態に移行すると判定した。これにより、車両1に備えられている通信装置などから走行信号を入力しなくても、車両1が停止状態から走行状態に移行する期間を判定し、車両1が停止状態から走行状態に移行する際に、ドア2a,2bの挟み込みを検出することができる。これにより、走行信号の種類が異なる場合や、走行信号の出力や、信号の入出力のための信号線などが無い場合であっても、車両1にコントローラ12及び測定ユニット11からなる戸挟み検出装置を設けることができる。
【0052】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、コントローラ12は、圧力信号Pの値を基準値と比較することにより戸先ゴム5a,5bに異常が生じているか否かを判定するようにしてもよい。また、戸先ゴム5a,5bに異常が生じている場合、圧力信号Pの値は、空気の漏れに従って低下する。従って、コントローラ12は、ドア2a,2bが閉鎖した後や戸挟みを検出した後に、所定のタイミングで圧力信号Pの値を記憶し、次の所定期間経過した後(例えばタイマ機能により時間を計測する)の圧力信号Pの値と記憶した値とを比較し、圧力信号Pの値が低くなっているときに戸先ゴム5aに異常が生じていると判定するようにしても良い。
【0053】
また、戸先ゴム5a,5bに異常が生じている場合、時間経過に従って圧力信号Pの値は一定の通常値になる。従って、コントローラ12は、圧力信号Pの値が一旦上昇することを検知した後、所定時間経過した後に圧力信号Pの値が通常値であることを検知し、異常と判定してもよい。
【0054】
また、戸先ゴム5a,5bに生じる亀裂が大きい場合、圧力信号Pの値が上昇しない場合がある。このような場合、ドア2aの開閉に関わらず圧力信号Pの値が変化しないことにより、戸先ゴム5a,5bに異常が生じていると判定するようにしてもよい。
【0055】
また、コントローラ12は、圧力信号Pの値を基準値と比較することにより戸先ゴム5a,5bに異常が生じているか否かを複数回判定するようにし、同じ比較結果が複数回連続した場合に異常が生じていると判定するようにしてもよい。また、圧力信号Pの値を複数記憶し、その複数の値を処理(例えば、平均化、積分)した値と基準値とを比較するようにしてもよい。
【0056】
・上記実施形態においては、戸先ゴム5a,5bに基準圧力室22を形成したが、これに限定されるものではなく、基準圧力室22を省略しても良い。この構成の場合、圧力センサ10から検出用圧力室30の内圧のみに応じた圧力信号Pを出力し、圧力信号Pに基づいて戸挟みの有無を検出すると良い。
【0057】
・上記各実施形態においては、戸挟み判定値P3を開放時最低圧力値P1に基づいて補正したが、これに限定されるものではなく、例えば加速度方向が離間開始してから設定時間が経過したときの閉開圧力値P1aに基づいて戸挟み判定値P3を補正しても良い。この場合、閉鎖時初期圧力値P2の更新の可否を判定するにあたって、検出圧力値P2aを加速度方向が離間開始してから設定時間が経過したときの閉開圧力値P1aと比較すると良い。
【0058】
・上記各形態においては、ドア2aが閉鎖位置から開放されるときの最低圧力値として閉鎖時初期圧力値P2を用いたが、これに限定されるものではなく、例えば閉鎖時初期圧力値P2の次に小さい圧力値を用いても良く、要はドア2a,2bが閉鎖位置から開放されるときの最低付近の圧力値を使用すれば良い。請求項に記載された「圧力信号の最低値」は当該概念で定義されるものである。また、戸当り部25内に円筒部29を設け、円筒部29の内圧を検出する構成としたが、これに限定されるものではなく、例えば規制壁部26,第1の連結板27,第2の連結板28,円筒部29を廃止し、戸当り部25の内圧を検出しても良い。
【0059】
・上記各形態においては、コントローラ12と、測定ユニット11は、無線で通信しても良く、また、コイルなどを利用して電磁誘導方式などにより信号を入出力しても良い。
・上記各形態では、測定ユニット11等をドアの上部に配置したが、配置位置は上部に限定されず、例えばドアの下部に配置してもよい。
【0060】
・上記各形態においては、本発明を列車のドア2a,2bに適用したが、これに限定されるものではなく、例えばバスのドア,船舶のドア,飛行機のドア等の車両のドア全般に適用してもよい。
【0061】
・上記実施形態では、加速度方向から車両1が走行状態となる期間を特定したが、少なくともドア2a,2bが開放状態から閉鎖状態に移行する期間を特定できれば、検出しなくても良い。同様に、加速度方向からドア2a,2bが閉鎖状態から開放状態に移行する期間を特定したが、少なくともドア2a,2bが開放状態から閉鎖状態に移行する期間を特定できれば、特定しなくても良い。
【0062】
・上記実施形態では、ドア2a,2bの加速度方向が対向方向である場合には、ドア2a,2bが開放状態から閉鎖状態に移行すると判定したが、ドア2a,2bの加速度方向が対向方向となってから所定時間経過するまでを、ドア2a,2bが開放状態から閉鎖状態に移行する期間として判定しても良い。そして、その期間において、コントローラ12は、ステップS8〜ステップS21の処理を実行するようにすればよい。
【0063】
・上記実施形態では、ドア2a,2bの加速度方向が対向方向である場合には、ドア2a,2bが開放状態から閉鎖状態に移行すると判定したが、ドア2a,2bの加速度方向が対向方向となってから加速度方向を検出しなくなるまでを、ドア2a,2bが開放状態から閉鎖状態に移行する期間として判定しても良い。そして、その期間において、コントローラ12は、ステップS8〜ステップS21の処理を実行するようにすればよい。
【0064】
・上記実施形態では、ドア2a,2bの加速度方向が対向方向である場合には、ドア2a,2bが開放状態から閉鎖状態に移行すると判定したが、ドア2a,2bの加速度方向が対向方向となってから離間方向となるまでを、ドア2a,2bが開放状態から閉鎖状態に移行する期間として判定しても良い。そして、その期間において、コントローラ12は、ステップS8〜ステップS21の処理を実行するようにすればよい。
【0065】
・上記実施形態では、ドア2a,2bの加速度方向が離間方向である場合には、ドア2a,2bが閉鎖状態から開放状態に移行すると判定したが、ドア2a,2bの加速度方向が離間方向となってから所定時間経過するまでを、ドア2a,2bが閉鎖状態から開放状態に移行する期間として判定しても良い。そして、その期間において、コントローラ12は、ステップS1〜ステップS7の処理を実行するようにすればよい。
【0066】
・上記実施形態では、ドア2a,2bの加速度方向が対向方向である場合には、ドア2a,2bが開放状態から閉鎖状態に移行すると判定したが、正常に閉鎖するときにおける加速度方向の変化態様を予め記憶しておき、この変化態様と同じである場合には、ドア2a,2bが開放状態から閉鎖状態に移行すると判定してもよい。また、加速度方向の変化態様が記憶された変化態様と異なる場合には、異常が生じたと判定しても良い。
【0067】
・上記実施形態では、ステップS8において、対向方向又は同一方向であるか否かを判定し、この判定結果が肯定の場合には、同じステップS9〜ステップS21の処理を実行したが、異なる処理で戸挟みを検出するようにしても良い。つまり、ドア2a,2bが閉鎖状態に移行するときの戸挟み検出処理と、車両1が走行状態に移行するときの戸挟み検出処理を異ならせても良い。
【0068】
具体的には、図12に示すように、戸挟み検出処理において、ステップS1の判定結果が否定の場合、ステップS100に移行し、コントローラ12は、入力した加速度信号が存在するか否かを判定し、入力していた場合、入力した加速度信号により、ドア2a,2bの加速度方向が対向方向であるか否かを判定する(ステップS100)。この判定結果が肯定の場合、コントローラ12は、前述したステップS9〜ステップS21の処理を実行する。なお、ステップS9〜ステップS21の処理については、前述同様であるため、説明及び図面の記載を省略する。
【0069】
一方、ステップS100の判定結果が否定の場合、コントローラ12は、入力した加速度信号が存在するか否かを判定し、入力していた場合、入力した加速度信号により、ドア2a,2bの加速度方向が同一方向であるか否かを判定する(ステップS101)。この判定結果が否定の場合には、コントローラ12は、ステップS1に移行する。一方、ステップS101の判定結果が肯定の場合、コントローラ12は、測定開始信号を出力し、圧力信号Pを入力する(ステップS102)。次に、コントローラ12は、ステップS18の処理と同様にして、戸挟み判定値P3を算出する(ステップS103)。なお、このとき、コントローラ12は、直前のステップS18にて使用したパラメータを使用して、戸挟み判定値P3を算出する。コントローラ12は、戸挟み判定値P3を算出すると、入力した圧力信号Pにより示される値が、戸挟み判定値P3よりも小さいか否かについて判定する(ステップS104)。
【0070】
この判定結果が肯定であると判定した場合、コントローラ12は、戸挟みがないと判定してステップS105に移行して、戸挟み検出信号の出力をオフする(この場合には戸挟み検出信号は出力されない)。そして、コントローラ12は、走行状態となってから所定時間(例えば、1分)経過したか否かを判定する(ステップS106)。この判定結果が否定の場合、コントローラ12は、ステップS102の処理に移行する。一方、ステップS106の判定結果が肯定の場合、コントローラ12は、戸挟み検出処理を終了する。
【0071】
また、ステップS104の判定結果が否定の場合、コントローラ12は、戸挟み検出信号の出力をオンする、つまり、この場合には戸挟み検出信号は出力する(ステップS107)。そして、コントローラ12は、異常を知らせて車両1の緊急停車を指示する異常信号を出力する(ステップS108)。そして、コントローラ12は、戸挟み検出処理を終了する。なお、図12の戸挟み検出処理は、実行されていない場合、所定周期で実行されるようになっている。
【0072】
・上記実施形態において、コントローラ12は、ドア2a,2bが開放状態から閉鎖状態に移行すると検知したときに、戸挟みしていると検出してから予め決められた時間が経過するまでに戸挟みがなくなったと検出しなかった場合には、ドア2a,2bを開放させることを指示する開放信号を出力してもよい。つまり、コントローラ12は、戸挟みしていると検出している状態が予め決められた時間以上継続している場合には、ドア2a,2bを開放させることを指示する開放信号を出力してもよい。その場合、車両1側の制御装置は、当該開放信号を入力した場合には、ドアの開放操作が行われない場合であっても、強制的にドア2a,2bを開放させることとなる。
【0073】
・上記実施形態において、コントローラ12は、車両1が停止状態から走行状態に移行することを検知したとき、戸挟みしていると検出してから予め決められた時間が経過した場合、車両を停止させることを指示する異常信号を出力してもよい。この場合、車両1側の制御装置は、当該異常信号を入力した場合には、車両1に対する停止操作が行われない場合であっても、強制的に車両1を停止させることとなる。
【0074】
・上記実施形態において、コントローラ12は、車両1が停止状態から走行状態に移行することを検知してから予め決められた時間が経過したときには、戸挟みの有無を検出しないようにしてもよい。具体的には、コントローラ12は、予め決められた時間が経過したときには、戸挟み検出処理を終了しても良い。また、コントローラ12は、予め決められた時間が経過したときには、各種信号を入力した場合であっても、入力を無効としても良い。
【0075】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ)前記戸挟み検出手段は、一対の前記加速度センサにより検出されたドアの加速度方向が対向する方向となってから所定時間経過するまでの時間が、前記ドアが開放状態から閉鎖状態に移行する時間であると検知し、その間、戸挟みの有無を検出することを特徴とする請求項1に記載の戸挟み検出装置。
【0076】
(ロ)前記戸挟み検出手段は、一対の前記加速度センサにより検出されたドアの加速度方向が離間する方向となってから所定時間経過するまでの時間が、前記ドアが閉鎖状態から開放状態に移行する時間であると検知し、その間、戸挟みの有無を検出しないことを特徴とする請求項3に記載の戸挟み検出装置。
【0077】
(ハ)前記戸挟み検出手段は、一対の前記加速度センサにより検出されたドアの加速度方向が対向する方向となってから加速度方向を検出しなくなるまでの間が、前記ドアが開放状態から閉鎖状態に移行する時間であると検知し、その間、戸挟みの有無を検出することを特徴とする請求項1に記載の戸挟み検出装置。
【0078】
(ニ)前記戸挟み検出手段は、一対の前記加速度センサにより検出されたドアの加速度方向が対向方向となってから離間方向となるまでの間が、前記ドアが開放状態から閉鎖状態に移行する時間であると検知し、その間、戸挟みの有無を検出することを特徴とする請求項1に記載の戸挟み検出装置。
【0079】
(ホ)車両の乗降口を開閉する一対のドアにドアの加速度方向を検出する加速度センサがそれぞれ設けられた戸挟み検出装置において、前記ドアが開放状態から閉鎖される毎に、戸挟みの有無を検出する戸挟み検出手段と、を備え、前記戸挟み検出手段は、一対の前記加速度センサにより検出されたドアの加速度方向の変化態様が、予め決められた変化態様と異なる場合には、異常が生じたと判定することを特徴とする戸挟み検出装置。
【0080】
(ヘ)前記ドアが閉鎖状態であるとき、所定のタイミングで前記圧力センサから出力される圧力信号を取り込み、この圧力信号に基づき戸先ゴムの破断を判定して、異常信号を出力する破断検知手段を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項6のうちいずれか一項に記載の戸挟み検出装置。
【符号の説明】
【0081】
2a,2b…ドア、3…乗降口、5a,5b…戸先ゴム、10…圧力センサ、11…測定ユニット、12…コントローラ、14…加速度センサ、22…基準圧力室、29…円筒部(中空部)、30…検出用圧力室、P…圧力信号、P0…閉鎖時圧力値、P1…開放時最低圧力値、P2…閉鎖時初期圧力値、P3…戸挟み判定値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗降口を開閉する一対のドアの互いに対向する先端にそれぞれ設けられた弾性変形可能な戸先ゴムが有する中空部の内圧に応じた圧力信号を出力する圧力センサと、
前記ドアが開放状態から閉鎖される毎に、前記圧力信号の最低値に基づいて戸挟み判定値を演算し、演算した戸挟み判定値と前記圧力センサから出力される圧力信号を比較することに基づいて戸挟みの有無を検出する戸挟み検出手段と、を備えた戸挟み検出装置において、
一対のドアには、ドアの加速度方向を検出する加速度センサがそれぞれ設けられ、
前記戸挟み検出手段は、一対の前記加速度センサにより検出されたドアの加速度方向が、対向する方向である場合には、前記ドアが開放状態から閉鎖状態に移行すると検知し、戸挟みの有無を検出することを特徴とする戸挟み検出装置。
【請求項2】
前記戸挟み検出手段は、前記ドアが開放状態から閉鎖状態に移行すると検知したときに、戸挟みしていると検出してから予め決められた時間が経過するまでに戸挟みがなくなったと検出しなかった場合には、ドアを開放させることを指示する開放信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の戸挟み検出装置。
【請求項3】
前記戸挟み検出手段は、一対の前記加速度センサにより検出されたドアの加速度方向が、離間する方向である場合には、前記ドアが閉鎖状態から開放状態に移行すると検知し、戸挟みの有無を検出しないことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の戸挟み検出装置。
【請求項4】
前記戸挟み検出手段は、一対の前記加速度センサにより検出されたドアの加速度方向が、同じ方向である場合には、車両が停止状態から走行状態に移行することを検知し、戸挟みの有無を検出することを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の戸挟み検出装置。
【請求項5】
前記戸挟み検出手段は、車両が停止状態から走行状態に移行することを検知したとき、戸挟みしていると検出してから予め決められた時間が経過した場合、車両を停止させることを指示する停止信号を出力することを特徴とする請求項4に記載の戸挟み検出装置。
【請求項6】
前記戸挟み検出手段は、車両が停止状態から走行状態に移行することを検知してから予め決められた時間が経過したときには、戸挟みの有無を検出しないことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の戸挟み検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−63699(P2013−63699A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203312(P2011−203312)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000106221)パナソニック デバイスSUNX株式会社 (578)
【Fターム(参考)】