説明

所定の外周形状に形成された最終製品を薄板から製造する方法

【課題】材料消費を大幅に抑えつつ、全長における異なる範囲でそれぞれ互いに異なる所定の厚さを有する最終製品の製造方法を提供すること。
【解決手段】外周が所定の形状に形成され、かつ、全長L1における異なる範囲でそれぞれ互いに異なる所定の厚さを有する最終製品6を薄板から製造する方法において、まず、一定の厚さを有する前記薄板を、当該初期材料3の形状を交互に組み合わせる形で打ち抜いて初期材料3を製作し、つづいて、該初期材料3をその長手方向に圧延機スタンド5へ導入して最終製品6を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に基づく、所定の外周形状に形成された最終製品を薄板から製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外周が所定の形状に形成された製品は原動機付き車両(以下単に「車両」という。)のボデー用の初期材料として知られており、この初期材料から例えばAピラー、Bピラー、Cピラーなどが製造される。このような部材はその全長における異なる範囲でそれぞれ互いに異なる強度を有しているため、材料消費を抑えつつ全長において異なる大きさの応力に耐え得るよう、部材の全長において所定の範囲ごとに異なる厚さに設定されている。
【0003】
また、コイルを伸ばして金属片を形成し、これを圧延機スタンドに通過させることが知られており、圧延機スタンドにおける圧延厚さ制御は、通過する金属片がその部分ごとに異なる厚さとなるように行われる。その後、この圧延された金属片は、所定の外周形状に打ち抜かれ、更なる加工工程へと案内される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、圧延した後に製品の打抜きを行うこと、及び金属片における互いに異なる厚さを有する範囲がその全長にわたることから、特に外周形状が複雑な場合には、材料のロスが大きくなって不都合であるという問題がある。
【0005】
本発明は上記問題にかんがみてなされたもので、その目的とするところは、材料消費を大幅に抑えつつ、全長における異なる範囲でそれぞれ互いに異なる所定の厚さを有する最終製品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、請求項1記載の特徴によって達成される。すなわち、まず、一定の厚さを有する薄板を、当該初期材料の形状を交互に組み合わせる形で打ち抜いて初期材料を製作する。このとき、初期材料の位置を、該初期材料の外周形状に応じて薄板をできる限り多く使用するように設定するのが好ましい。このような適当な設定により、外周形状により異なるが、金属くずを10〜30%削減することが可能である。これにより、更に大幅なコスト削減を図ることができる。
【0007】
つづいて、初期材料をその長手方向に圧延機スタンドへ導入し、該圧延機スタンド内で、全長における異なる範囲でそれぞれ互いに異なる所定の厚さを有する最終製品が製造される。このとき、初期材料が最終製品へ圧延される間に材料の長さが伸長されるため、この伸長を上記初期材料の位置の設定時に考慮する必要がある。
【0008】
また、最終製品が略T字状に形成するのが好ましい。そこで、請求項2記載の発明は、初期材料を、薄板の長手方向又は該長手方向に対して垂直な方向に、略T字状を交互に組み合わせる形に打ち抜いて略T字状に形成し、最終製品へ圧延することを特徴としている。その後、この最終製品は、例えば車両のAピラー、Bピラー、Cピラーなどのボデー部材に更に加工される。
【0009】
また、最終製品に不都合な形状誤差が生じないよう、請求項3記載の発明は、初期材料を、その長手方向に引張力を作用させつつ圧延機スタンドを通過させることを特徴としている。このとき、引張力を生じさせる装置としては、適当な装置を使用することが考えられる。
【0010】
また、用意した薄板の厚さについて誤差が生じている場合があることを考慮するために、請求項4記載の発明は、圧延機スタンドへの導入前に初期材料の厚さを測定するとともに、圧延機スタンドにおける厚さについての公差を考慮しつつ、最終製品へ圧延することを特徴としている。
【0011】
さらに、初期材料を例えば金属プレートなどの薄板から打ち抜いて形成するか、又は連続的な加工工程に打抜き工程を包含させることが可能である。そして、請求項5記載の発明は、初期材料を、コイルから引き抜いて形成した金属片を打ち抜いて製作することを特徴としている。すなわち、初期材料は、個々に打ち抜かれた後、長手方向に圧延機スタンドへ案内され、全長における異なる範囲でそれぞれ所定の厚さとなるよう圧延され、最終製品に成形される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、金属くずを大幅に削減することが可能であるとともに、大幅なコスト削減も図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】金属片の長手方向部分を示す平面図である。
【図2】金属片から打ち抜かれた初期材料を示す平面図である。
【図3】圧延前、圧延中及び圧延後の初期材料の概略を示す側面図である。
【図4】図3と同様の初期材料の概略を示す平面図である。
【図5】初期材料から成形された最終製品を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
図1には長さが特に特定されていない金属片2の構成部材としての薄板1が示されており、金属片2は、その全長にわたって一定の厚さDとなっている。なお、この金属片2について、これを不図示のコイルから引き抜いて成形することが可能である。
【0016】
しかして、不図示のパンチが移動し、図2に示すような略T字状の外形を有する初期材料3が金属片2から打ち抜かれる。この打抜き作業は、図1に示すように、初期材料3が金属片2の長手方向に対して垂直に交互に組み込まれるような形で行われる。これにより、初期材料3を金属片2の長手方向に打ち抜く実施形態と比べて金属くず4を大幅に削減することが可能である。なお、打ち抜くべき初期材料3の外形が図1において斜線で示されている。
【0017】
また、初期材料3を金属片2の長手方向に交互に組み込まれるような形で打ち抜くような実施形態も考えられる。
【0018】
そして、打ち抜かれた初期材料3は、図3及び図4に示すように長手方向に圧延機スタンド5へ案内され、全長Lにおける異なる範囲A,B,Cでそれぞれ所定の厚さとなるよう圧延され、最終製品6が形成される(図5も参照)。この圧延時には、不図示の装置によって、初期材料3の長手方向に対して引張力Vが作用するようになっている。また、圧延機スタンド5への導入前には初期材料3の厚さD1が測定され、圧延機スタンド5における厚さについての公差が考慮されつつ、図3〜図5に示すように最終製品6へと圧延される。
【0019】
図3〜図5に示す最終製品6は、圧延により初期材料3の長さが引き延ばされるため、その長さL1が初期材料3の長さLよりも長くなっている点で図2〜図4に示す初期材料3と異なっている。
【符号の説明】
【0020】
1 薄板
2 金属片
3 初期材料
4 金属くず
5 圧延機スタンド
6 最終製品
A,B,C 範囲
D 金属片の厚さ
1 圧延機スタンド導入前の初期材料の厚さ
L 初期材料の長さ
1 最終製品の長さ
V 引張力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周が所定の形状に形成され、かつ、全長(L1)における異なる範囲(A,B,C)でそれぞれ互いに異なる所定の厚さを有する最終製品(6)を薄板(1)から製造する方法において、
まず、一定の厚さ(D)を有する前記薄板(1)を、当該初期材料(3)の形状を交互に組み合わせる形で打ち抜いて初期材料(3)を製作し、つづいて、該初期材料(3)をその長手方向に圧延機スタンド(5)へ導入して、該圧延機スタンド(5)内で、全長(L1)における異なる範囲(A,B,C)でそれぞれ互いに異なる所定の厚さを有する前記最終製品(6)を製造することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記初期材料(3)を、前記薄板(1)の長手方向又は該長手方向に対して垂直な方向に、略T字状を交互に組み合わせる形に打ち抜いて略T字状に形成し、前記最終製品(6)へ圧延することを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記初期材料(5)を、その長手方向に引張力(V)を作用させつつ前記圧延機スタンド(5)を通過させることを特徴とする請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
前記圧延機スタンド(5)への導入前に前記初期材料(3)の厚さ(D1)を測定するとともに、前記圧延機スタンド(5)における厚さについての公差を考慮しつつ、前記最終製品(6)へ圧延することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記初期材料(5)を、コイルから引き抜いて形成した金属片(2)を打ち抜いて製作することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−179368(P2010−179368A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24235(P2010−24235)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(504258871)ベンテラー アウトモビールテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (60)
【氏名又は名称原語表記】Benteler Automobiltechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Elsener Strasse 95, D−33102 Paderborn, Germany
【Fターム(参考)】