説明

所定の標的に対して親和性を有するヒトリポカリン2(Lcn2、hNGAL)の突然変異タンパク質

本発明は、突然変異タンパク質生成のための新規ライブラリ、及びヒトリポカリン(Lcn2、hNGAL)に由来して且つ検出可能な親和性を有する所定の非天然標的に結合する突然変異タンパク質に関する。本発明はまた、そのような突然変異タンパク質をエンコードする対応の核酸分子及びその生成方法に関する。本発明はさらに、そのような突然変異タンパク質を製造する方法に関する。例えば、そのような突然変異タンパク質は、アルツハイマー病におけるアミロイドベータペプチドのような天然生体分子の病原学的な形に結合して枯渇するように機能してもよいし、又は、腫瘍新生血管と関連するフィブロネクチンエクストラドメインBを標的としてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突然変異タンパク質を生成するための新規ライブラリに関し、さらにヒトリポカリン2(Lcn2、hNGAL)及び検出可能な親和性で所定の標的に結合する関連タンパク質に由来する新規突然変異タンパク質に関する。また、本発明は、そのような突然変異タンパク質のコードに対応するする核酸分子に関し、さらにそれらを生成する方法に関する。本発明は、さらにそのような突然変異タンパク質を製造する方法に関する。さらに、本発明は、リポカリン突然変異タンパク質を含む医薬組成物に関するとともに、その突然変異タンパク質の様々な使用に関する。
【0002】
本発明によるLcn2突然変異タンパク質は、それぞれの疾患領域において治療及び/又は診断試薬としての可能性を示す。例えば、それらは、アルツハイマー病におけるアミロイドベータペプチドのような天然生体分子の病理学的な形に結合して枯渇するのに役立つ可能性がある。他の例において、それらは、腫瘍新生血管と関連するフィブロネクチンのエキストラドメインBのような疾患関連細胞表面マーカーを様々なラベル又は毒素の特異的な標的にすることに用いられる。本発明によって得られるLcn2突然変異タンパク質の特有な利点に従って、様々な他の応用又は例が可能である。
【背景技術】
【0003】
アルツハイマー病(AD)は、高齢者人口おける認知症の中で最もよくある疾患である。ADに関連付けると、アミロイド前駆体タンパクの不完全な処理によって、40−42残基が含まれるアミロイドベータペプチド(Aβ)の潜在的な神経毒を生じさせる。その後、Aβのオリゴマー及び長い原線維への凝集は、老人斑の形成に至る疾患の経過に極めて重要な影響を与える(非特許文献1)。ADがますます重要となるにもかかわらず、認知症の効果的な治療、予防、治癒、又は軽減に対する要求は依然として満たされていない。
【0004】
現在の抗アミロイドのアプローチは、(i)Aβの形成を予防することと、(ii)Aβの凝集を遮断することと、(iii)脳における可溶性Aβレベルを減少させることと、(iv)既存のアミロイド斑を分解させることとを目的とする。これまで、AD患者の能動免疫付与及び受動免疫付与を含む免疫療法は、この分野で最も有望になっている(非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)。しかし、AD患者の能動免疫付与による最近の臨床試験は、6%の患者に髄膜脳炎を発症するために中止された。これらのFc−介在の免疫学的機能による潜在的副作用のために、アンチカリン(Anticalins)のような非免疫グロブリン(non−Ig)結合試薬は、別の代替薬として提供されている。アミロイドベータに対して特異性を有するアフィボディ(Affibody)分子の同定は、遺伝子工学的non−Ig結合タンパク質の将来性を説明するための一例である(非特許文献5、非特許文献6)。
【0005】
しかし、アフィボディの細菌起源は、ヒト患者における免疫原性の問題を引き起こす可能性がある。
【0006】
フィブロネクチン(FN)は、細胞の接着、移動、増殖、及び分化に極めて重要な役割を果たす。FNは、I型、II型、及びIII型の多重ドメインを有する、大規模なモジュラー二量体の糖タンパク質である。FNの代替スプライスバリアント、例えばFNin7とFNin8ドメインの間に組み込まれるFNのエキストラドメインB(ED−B)は、組織特異的に且つ発達段階依存的に表現される(非特許文献7)。
【0007】
ED−Bは、創傷治癒及び腫瘍性血管新生の期間を除いて、正常成人組織に存在していない。従って、ED−Bを含有するフィブロネクチンは、新血管形成を誘導し、且つ、異常血管形成を受ける多くの異なる腫瘍型において多量に発現される。血管形成におけるED−Bの実際的な生物学的機能は依然として分かりにくい一方、そのFNへの取り込みは腫瘍形成のための優れるマーカーとして機能する。一般的に、悪性組織と健全組織との差別は、薬物を腫瘍組織に直接運ぶ選択的な標的として、局所薬物濃度の増加につながる有利な治療方針である。
【0008】
特異的に検出してED−Bを標的にするために、ファージディスプレイ抗体テクノロジーを用いて、組み換え抗体を増加させる。単離抗体フラグメントの1つとして、L19一本鎖Fvがある(非特許文献8、非特許文献9)。効果的な細胞毒性薬と組み合わせてL19でED−Bをアドレスすることは、現在、癌の治療及び診断への見込みを示している(非特許文献10、非特許文献11)。
【0009】
しかし、L19のscFvフラグメントは、オリゴマー化される傾向がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Haass and Selkoe (2007) Nat. Rev. Mol. Cell. Biol. 8, 101−112
【非特許文献2】Dodel et al. (2003) Lancet Neurology 2, 215−220
【非特許文献3】Lichtlen and Mohajeri (2007) J. Neurochem. 104, 859−874
【非特許文献4】Brody and Holtzmann (2008) Annu. Rev. Neurosci. 31, 175−193
【非特許文献5】Gronwall et al (2007) J. Biotechnol. 128, 162−183
【非特許文献6】Hoyer et al. (2008) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 105, 5099−5104
【非特許文献7】Zardi et al.(1987) EMBO J 6, 2337−2342
【非特許文献8】Carnemolla et al. (1996) Int. J. Cancer 68, 397−405
【非特許文献9】Ebbinghaus et al. (2004) Curr. Pharm. Des. 10, 1537−1549
【非特許文献10】Schliemann and Neri (2007) Biochim. Biophys. Acta 1776, 175−192
【非特許文献11】Kaspar et al. (2006) Int. J. Cancer 118, 1331−1339
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のようにアルツハイマー病の治療、及び腫瘍の診断又は治療に存在する問題により、本発明の目的は、アルツハイマー病の治療、及び腫瘍の診断又は治療に用いられる代替方法及び化合物を提供することにある。
【0012】
本発明者らは、リポカリン2に由来するタンパク質による特異的な突然変異タンパク質は、そのより高い安定性及びより小さいサイズにより魅力的な化合物になることを発見した。本発明者らは、例えば、ED−Bに対する高い親和性及び特異性を示す特異的な位置に突然変異性があるリポカリン2突然変異タンパク質の特異的なグループを同定した。そのようなLcn2突然変異タンパク質は、ヒト細胞にED−B含有フィブロネクチンを高感度で特異的に認識するので、腫瘍疾患の診断及び治療のための治療試薬とする見込みを示す。
【0013】
本発明者らは、また、Aβペプチドに対して高い親和性及び特異性を有する特異的なLcn2突然変異タンパク質を識別することができる。このようなLcn2突然変異タンパク質は、さらにAβの凝集を抑制することができるので、更なる改善及び修飾の上で、ADを治療するための治療試薬とする可能性の見込みを示す。
【0014】
さらに、本発明は、またヒトLcn2骨格に基づく新たなランダムライブラリを説明する。そのランダムライブラリは、一般的に所定の標的に対して高い親和性及び特異性を有する本発明にかかる突然変異タンパク質のような突然変異タンパク質の効果的な生成を可能にする。そのようなライブラリ又はそのセクションの例は、図1及び図2に示される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
1つの実施形態において、hLcn2の直鎖状ポリペプチド配列における任意の配列位置36、40、41、49、5268、70、7273、77、79、81、96、100、103、106、125、127、132、及び134をコードする少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20のヌクレオチドトリプレットでは、ヌクレオチドトリプレットのサブセットによってこの位置における置換を可能にすることでランダム突然変異誘発を行う。ヌクレオチドトリプレットのサブセットは、(a)ヌクレオチドNNN(N=A、T、G、Cの場合、4x4x4=64の可能なトリプレットということになる)によってコードされる64の可能なトリプレット以内、(b)ヌクレオチドNNK又はNNSによってコードされる32の可能なトリプレット以内、(c)全ての20天然タンパク質を構成するアミノ酸をコードするための必需トリプレット以内を参照することができるが、これに限定されるものではない。もう1つの実施形態において、システインをコードするヌクレオチドトリプレットは、突然変異誘発時の置換に用いられない。突然変異誘発は、すでに元の突然変異しない配列に含まらなかった新たなシステインを持つ突然変異タンパク質につながるものではないことを意味する。従って、この実施形態において、この段落に特定される突然変異しようとする位置に導入すべきヌクレオチドトリプレットがどのように見えるかということは特定される(また、実施例1及び図2を参照)。
【0016】
従って、本発明の第1の態様には、ヒトリポカリン2(Lcn2、ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン、hNGAL、又はシデロカリンとしても知られている)に由来する突然変異タンパク質の生成方法を対象にする。この方法で得られる突然変異タンパク質は、検出可能な親和性を有する非天然標的に結合することができる。この方法は、ヒトリポカリン2(Lcn2、hNGAL)をコードする核酸分子を、ヒトリポカリン2の直鎖状ポリペプチド配列における配列位置96、100、及び106に対応する配列位置のうちのいずれかの少なくとも1つをコードするヌクレオチドトリプレットで、突然変異誘発させることを含み、結果として1つ又はそれ以上の突然変異タンパク質核酸分子となる方法である。
【0017】
上述に従って、「ヒトリポカリン2」又は「ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(hNGAL)」という用語は、約60%以上のアミノ酸配列相同性又は配列同一性を有する、他の種由来の、既に同定された又はまだ単離されていない構造的ホモログを含む。好ましくは、上述のこれらのヒトリポカリンは、hNGALの直鎖状ポリペプチド配列における配列位置33、36、40、41、4243、44、46、47、48、49、50、51、5254、55、59、65、68、70、7273、75、77、78、79、80、81、86、87、98、96、99、100、103、106、107、110、111、125、127、132、134、136、及び138に対応する配列位置のいずれか1つにおいて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、1213、14、15、16、又は17の突然変異したアミノ酸残基を含む。「相同性」という用語は本明細書に使用される場合、その通常の意味であり、また、互いに比較される2つのタンパク質の直鎖状アミノ酸配列における同等の位置における、同一のアミノ酸、及び同類置換と見なされるアミノ酸(例えば、グルタミン酸残基のアスパラギン酸残基による置換)を含む。「配列同一性」又は「同一性」という用語は本発明に使用される場合、問題になっている配列と本発明のポリペプチドの配列の相同性アラインメントに従った、これら2つの配列のより長いものにおける残基数について、ペアワイズ同一残基の割合を意味する。
【0018】
配列相同性又は配列同一性の割合は、本明細書ではプログラムBLASTP、version blastp 2.2.5(November 16、2002、 cf. Altschul、S. F. et al. (1997) Nucl. Acids Res. 25、3389−3402を参照)を用いて決定される。相同性の割合は、ペアワイズ比較の参照としてヒトポカリン2を用いた、プロペプチド配列を含む全ポリペプチド配列のアラインメントに基づく(マトリックス:BLOSUM62、ギャップコスト:11.1、切り捨て値を10〜3に設定)。それは、BLASTPプログラムアウトプットでの結果として示される「陽性」(相同アミノ酸)の数を、アラインメントのためにプログラムによって選択されたアミノ酸の総数で除した割合として計算される。これに関して、この選択されたアミノ酸の総数はヒトリポカリン2の長さとは異なり得ることに注意すべきである。
【0019】
ヒトリポカリン2以外のタンパク質が本発明に使用される場合、ヒトリポカリン2に対して与えられた突然変異した配列位置の定義は、公開されている配列アラインメント又は当業者に利用可能なアラインメント方法を用いて、他のリポカリンに割り当てることができる。配列アラインメントは、例えば、Redl, B. (2000) Biochim. Biophys. Acta 1482, 241−248の図1におけるもののように、公開されているアラインメントを用いて、WO99/16873(その中の図3を参照)に説明されるように実施され得る。リポカリンの三次元構造が利用可能な場合、本発明の突然変異誘発の対象となるべきこれらの配列位置の決定のために、構造の重ね合わせもまた使用され得る。多次元核磁気共鳴分光法のような他の構造解析の方法もまた、この目的のために使用され得る。
【0020】
ヒトリポカリン2のホモログはまた、アミノ酸置換が本発明において選択された位置以外の位置に導入されたヒトリポカリン2自体の突然変異タンパク質であり得る。例えば、このような突然変異タンパク質は、タンパク質の溶解性又は安定性を増加させるために、β−バレルの溶媒に露出した表面の位置がヒトリポカリン2の野生型配列と比較して突然変異されたタンパク質であり得る。
【0021】
一般的に、「ヒトリポカリン2」という用語は、ヒトヒトリポカリン2と比較して60%、70%、80%、85%、90%、又は95%以上の配列相同性又は配列同一性を有するすべてのタンパク質を含む。好ましくは、上述のこれらのヒトリポカリンは、hNGALの直鎖状ポリペプチド配列における配列位置33、36、40、41、4243、44、46、47、48、49、50、51、5254、55、59、65、68、70、7273、75、77、78、79、80、81、86、87、98、96、99、100、103、106、107、110、111、125、127、132、134、136及び138に対応する配列位置のいずれか1つにおいて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、1213、14、15、16、又は17の突然変異したアミノ酸残基を含む。
【0022】
従って、更なる態様において、本発明はヒトリポカリン2(例えば、ヒトリポカリン突然変異タンパク質又は突然変異したヒトリポカリン、突然変異した成熟hNGALがあり、ここで、SWISS−PROT データ Bank受入番号P80188、さらに好ましくは配列番号44に示すアミノ酸配列を有する上記成熟hNGALがある)に由来する突然変異タンパク質を提供している。この突然変異タンパク質は、ヒトLcn2の直鎖状ポリペプチド配列における配列位置96、100、及び106に対応する配列位置のいずれか1つでの少なくとも1つ又は二つの突然変異したアミノ酸残基を含み、ここで、その突然変異タンパク質は検出可能な親和性を有する所定の非天然標的に結合する。
【0023】
本明細書に使用される場合、「突然変異タンパク質」、「突然変異した」実体(タンパク質か核酸か)又は「突然変異体」は、それぞれ、天然に存在する(野生型)核酸又はタンパク質「参照」骨格と比べて、1つ又はそれ以上のヌクレオチド又はアミノ酸の置換、欠失、又は挿入を言及する。好ましくは、置換、欠失、又は挿入されるヌクレオチド又はアミノ酸の数は、それぞれ、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又はそれ以上の25、30、35、40、45若しくは50。
【0024】
「ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン」、「hNGAL」、「リポカリン2」、又は「Lcn2」という用語は本発明に使用される場合、SWISS−PROT データ Bank受入番号P80188(ここで、配列番号44として例示される)で供託された成熟hNGALを言及する。
【0025】
この状況において、本発明は、既定の標的に対して十分な親和結合を有する突然変異タンパク質を提供するこれらの上記3つの配列位置における1つ又はそれ以上の位置において、ヒトリポカリン2、ラット2−ミクログロブリン−関連タンパク質(A2m)、及びマウス24p3/uterocalin(24p3)を突然変異誘発をさせるという大変驚くべき発見に基づくことが知られている。ここで、上記既定の標的は、ペプチド、タンパク質、タンパク質のフラグメント又はドメイン、及び有機小分子が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0026】
所定の標的は、任意の所望非天然標的/リガンドであってもよい。一実施形態において、「非天然リガンド」という用語は、生理的条件下で天然成熟hNGALに結合しない化合物を言及する。
【0027】
「有機分子」又は「有機小分子」という用語は、非天然標的のために本明細書に使用される場合、少なくとも2の炭素原子、好ましくは7又は12以下の回転可能な炭素結合を含み、100ダルトン〜2000ダルトン、好ましくは100ダルトン〜1000ダルトンの範囲に分子量を有し、選択的に1又は2の金属原子を含む有機分子を意味する。
【0028】
「ペプチド」という用語は、非天然標的のために本明細書に使用される場合、2〜45のアミノ酸を有するジペプチド又はオリゴペプチドをいう。一実施形態において、このペプチドは、2〜40、2〜35、2〜30、2〜25、2〜20、2〜15、又は2〜10のアミノ酸残基を有する。このペプチドは、天然に存在するペプチド又は合成ペプチドであってもよく、また、20の天然に存在するL−アミノ酸を除いて、D−アミノ酸、非天然に存在するアミノ酸、及びアミノ酸類似体を含んでもよい。一実施形態において、このペプチドはアミロイドベータペプチド(Abeta又はAβ)である。もう1つの実施形態において、このアミロイドベータペプチドはAβ40ペプチド又はAβ42ペプチドである。
【0029】
一実施形態において、この有機小分子は、免疫学的ハプテンの特性を示す化合物である。
【0030】
一実施形態において、タンパク質であるこの非天然標的は、フィブロネクチン又はそのドメインであり、例えば、EB−ドメイン又はEB−ドメインのフラグメントである。
【0031】
本発明にかかるヒトリポカリン2突然変異タンパク質は、突然変異したアミノ酸配列位置の外側に野生型(天然)アミノ酸配列を含んでもよい。他方、本明細書に開示されるリポカリン突然変異タンパク質は、さらにその突然変異が突然変異タンパク質の結合親和性及び折り畳みを妨げない限り、突然変異誘発を受ける配列位置の外側にもアミノ酸の突然変異を含んでもよい。このような突然変異は、確立された標準的な方法(Sambrook、J. et al.(1989) Molecular クローニング: A Laboratory Manual、2nd Ed.、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NYを参照)を用いてDNAレベルで非常に容易に達成されることができる。可能なアミノ酸配列の改変は、挿入又は欠失並びにアミノ酸置換である。このような置換は保存的であってもよく、すなわち、アミノ酸残基は化学的に類似したアミノ酸残基で置換される。保存的置換の例としては、以下の群のメンバー間、すなわち、1)アラニン、セリン、及びトレオニン、2)アスパラギン酸及びグルタミン酸、3)アスパラギン及びグルタミン、4)アルギニン及びリジン、5)イソロイシン、ロイシン、メチオニン、及びバリン、ならびに6)フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンの間での置換である。他方では、アミノ酸配列に非保存的な改変を導入することも可能である。さらに、単一アミノ酸残基を置換する代わりに、ヒトリポカリン2の一次構造の1又はそれ以上の連続的なアミノ酸を挿入するか、それとも欠失させることは、さらに、この欠失又は挿入が安定して折り畳まれた/機能的な突然変異タンパク質を生じさせる限りにおいては可能である。
【0032】
概説として、アミノ酸配列のこのような修飾は、特定の制限酵素に対し切断部位を組み込むことによって、突然変異したリポカリン遺伝子又はその一部のサブクローン化を単純化するために、単一アミノ酸位置の定方向の突然変異誘発を含む。さらに、これらの突然変異は所定の標的に対するリポカリン突然変異タンパク質の親和性をさらに改善するために、さらに組み込まれることができる。さらに、突然変異は必要に応じて、折り畳みの安定性、血清安定性、タンパク質の耐性、若しくは水溶解性を改善する目的、又は凝集傾向を低減する目的のような突然変異タンパク質の特定の特徴を調節する目的で導入されることができる。例えば、ジスルフィド架橋を防止するために、天然に存在するシステイン残基を他のアミノ酸に突然変異してもよい。しかしながら、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、ビオチン、ペプチド又はタンパク質のような化合物に接合する目的、又は非天然に存在するジスルフィド結合を形成する目的で新しい反応基を導入するために、他のアミノ酸配列位置をシステインに意図的に突然変異させることはさらに可能である。システイン残基をヒトリポカリン2突然変異タンパク質の変異タンパク質におけるアミノ酸配列に導入するための、このような突然変異の例示的な可能性は、少なくともhNGALの野生型配列における配列位置14、21、60、84、88、116、141、145、143、146又は158に対応する配列位置の1つにシステイン(Cys)残基を導入することを含む。アミノ酸位置アミノ酸位置14、21、60、84、88、116、141、145、143、146、及び/又は158のいずれかの側で産生されたチオール部分は、変異タンパク質をPEG化又はHES化するために、例えば各々のヒトリポカリン2突然変異タンパク質の血清半減期を増加させるために用いてもよい。
【0033】
一実施形態において、本発明にかかる突然変異タンパク質は、ヒトリポカリン2の直鎖状ポリペプチド配列における配列位置96、100、及び106に対応する配列位置のいずれか二つ又は三つにおいて突然変異したアミノ酸残基を含む。
【0034】
本発明の更なる実施形態において、突然変異タンパク質は、hNGALの直鎖状ポリペプチド配列における配列位置33、36、40、41、4243、44、46、47、48、49、50、51、5254、55、59、65、68、70、7273、75、77、78、79、80、81、86、87、98、96、99、100、103、106、107、110、111、125、127、132、134、136、及び138に対応する配列位置のいずれかにおいて、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、又は17の突然変異したアミノ酸残基を含む。更なる実施形態において、突然変異タンパク質は、hNGALの直鎖状ポリペプチド配列における配列位置33、36、40、41、4243、44、46、47、48、49、50、51、5254、55、59、65、68、70、7273、75、77、78、79、80、81、86、87、98、96、99、100、103、106、107、110、111、125、127、132、134、136、及び138の少なくとも1つにおいて、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17の突然変異したアミノ酸残基を含む。また、更なる実施形態において、突然変異タンパク質は、直鎖状ポリペプチド配列における配列位置33、36、40、41、4243、44、46、47、48、49、50、51、5254、55、59、65、68、70、7273、75、77、78、79、80、81、86、87、98、96、99、100、103、106、107、110、111、125、127、132、134、136、及び138の少なくとも1つにおいて、ヒトリポカリン218、19、又は20の突然変異したアミノ酸残基を含む。
【0035】
本発明の一実施形態において、突然変異タンパク質は、少なくとも上記に挙げられた配列位置の10、14、15、20、22、24、26、28、29、30、31、32、33、35又は全ての45いずれかにおいて突然変異したアミノ酸残基を含む。
【0036】
アミロイドベータペプチドに結合して、Aβ40ペプチド又はAβ42ペプチドのような本発明の突然変異タンパク質は、図17(Lcn2)に示される成熟ヒトリポカリン2の野生型アミノ酸配列について少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12のアミノ酸置換を含んでもよい。そのアミノ酸置換は、Leu36→Val又はCys、Ala40→Tyr又はLys又はVal、Ile41→Thr又はSer又はLeu、Gln49→Leu又はTrp、Leu70→Gly、Arg72→Gly又はAsp、Lys73→Leu又はThr又はAsp、Asp77→Asn又はHis又はLeu、Trp79→Lys、Asn96→He又はArg、TyrlOO→Gin又はArg又はGlu、Leul03→Met又はArg又はGly、Tyrl06→Tyr又はAla又はTrp、Lys125→Thr又はVal又はGlu、Serl27→Gly又はGin又はAla、Tyr132→Met又はSer又はThr、並びに、Lys134→Asnを含むが、これに限定されるものではない。また、このような突然変異タンパク質は、in vitro又はin vivoのAβ凝集を減少させることができる。上述の突然変異タンパク質は、Aβ、好ましくはAβ40に結合してその凝集を抑制し、より好ましくは実施例11に定めるような検定条件(好ましくは突然変異タンパク質:Aβ40は比率1:10である)で行うことが分かる。本発明は、さらに突然変異タンパク質US7と比べて同等の生物学的機能を有する前記のような突然変異タンパク質に関する。「同等の生物学的機能」は、これらの突然変異タンパク質は、およそ40%、30%、20%、15%、10%、5%、2.5%、2%又は1%以下のUS7に対する凝集阻害活性の偏差で、例えば、実施例11に設定される条件(好ましくは、突然変異タンパク質:Aβ40の比例は1:10である)と同じ又は一致する条件において、Aβ、好ましくはAβ40に結合して阻害することができることを意味する。本発明は、さらにアルツハイマー病のような神経変性疾患の治療又は予防に用いられる上述の突然変異タンパク質に関する。
【0037】
一実施形態において、アミロイドベータペプチド、例えばAβ40ペプチド又はAβ42ペプチドに結合する本発明にかかる突然変異タンパク質は、Leu36→Val、Ala40→Tyr、Ile41→Thr、Gln49→Leu、Leu70→Gly、Lys73→Leu、Asp77→Asn、Trp79→Lys、Asn96→He、TyrlOO→Gin、Leul03→Met、Lysl25→Thr、Serl27→Gly、Tyrl32→Met、及びLys134→Asnのアミノ酸置換を含む。そのようなアミノ酸置換が含まれる突然変異タンパク質の例は、図17に示されるS1−A4(配列番号:39)がある。
【0038】
更なる実施形態において、アミロイドベータペプチド、例えばAβ40ペプチド又はAβ42ペプチドに結合する本発明にかかる突然変異タンパク質は、Leu36→Val、Ala40→Lys、Ile41→Ser、Gln49→Trp、Leu70→Gly、Arg72→Gly、Lys73→Thr、Asp77→His、Trp79→Lys、Asn96→Arg、TyrlOO→Arg、Leul03→Arg、Tyrl06→Ala、Lysl25→Val、Serl27→Gin、Tyrl32→Ser、及びLysl34→Asnのアミノ酸置換を含む。そのようなアミノ酸置換が含まれる突然変異タンパク質の例は、図17に示されるUS7(配列番号:41)がある。
【0039】
本発明は、また本明細書に記載されるように、突然変異した成熟hNGALリポカリン(SWISS−PROT データ Bank受入番号P80188の寄託のように、好ましくは配列番号:40に示すアミノ酸配列を有する)は、野生型hNGALの直鎖状ポリペプチド配列における位置36、40、41、49、70、7273、77、79、96、100、103、106、125、127、132、134に対応する位置に1つ又はそれ以上の突然変異したアミノ酸を含むことが想定される。
【0040】
もう1つの実施形態において、アミロイドベータペプチド、例えばAβ40ペプチド又はAβ42ペプチドに結合する本発明にかかる突然変異タンパク質は、Leu36→Cys、Ala40→Val、Ile41→Leu、Gln49→Leu、Leu70→Gly、Arg72→Asp、Lys73→Asp、Asp77→Leu、Trp79→Lys、Asn96→Arg、TyrlOO→Glu、Leul03→Gly、Tyrl06→Trp、Lys125→Glu、Serl27→Ala、Tyrl32→Thr、及びLys134→Asnのアミノ酸置換を含む。そのようなアミノ酸置換が含まれる突然変異タンパク質の例は、図17に示されるHl−Gl(配列番号:43)がある。
【0041】
もう1つの実施形態において、アミロイドベータペプチド、例えばAβ40ペプチド又はAβ42ペプチドに結合する本発明にかかる突然変異タンパク質は、Leu36→Ala、Ala40→Val、Ile41→Leu、Gln49→Leu、Leu70→Gly、Arg72→Asp、Lys73→Asp、Asp77→Leu、Trp79→Lys、Asn96→Arg、TyrlOO→Glu、Leul03→Gly、Tyrl06→Trp、Lys125→Glu、Serl27→Ala、Tyrl32→Thr、及びLys134→Asnのアミノ酸置換を含む。そのようなアミノ酸置換が含まれる突然変異タンパク質の例は、配列番号:50に示されるH1GAがある。
【0042】
本明細書に記載される上記の突然変異タンパク質は、Aβ、好ましくはAβ40に結合してその凝集を抑制することが好ましく、より好ましくは実施例23に定める検定条件(好ましくはAβ40:H1GAの比率は10:2である)で行う。本発明は、さらに突然変異タンパク質H1GAと比べて同等の生物学的機能を有する前記のような突然変異タンパク質に関する。「同等の生物学的機能」は、これらの突然変異タンパク質は、およそ40%、30%、20%、15%、10%、5%、2.5%、2%又は1%以下のH1GAに対する凝集阻害活性の偏差で、例えば、実施例23に設定される条件(好ましくはAβ40:H1GAの比例は10:2である)と同じ又は一致する条件において、Aβ、好ましくはAβ40に結合して阻害することができることを意味する。本発明は、さらにアルツハイマー病のような神経変性疾患の治療又は予防に用いられる上述の突然変異タンパク質に関する。
【0043】
もう1つの実施形態においてアミロイドベータペプチド、例えばAβ40ペプチド又はAβ42ペプチドに結合する本発明にかかる突然変異タンパク質は、Leu36→Val、Ala40→Val、Ile41→Leu、Gln49→Leu、Leu70→Gly、Arg72→Asp、Lys73→Asp、Asp77→Leu、Trp79→Lys、Asn96→Arg、TyrlOO→Glu、Leul03→Gly、Tyrl06→Trp、Lys125→Glu、Serl27→Ala、Tyrl32→Thr、及びLys134→Asnのアミノ酸置換を含む。そのようなアミノ酸置換が含まれる突然変異タンパク質の例は、配列番号:52に示されるHIGVがある。
【0044】
本明細書に記載される上記の突然変異タンパク質は、実施例21に定める検定条件でAβ40に結合することが好ましい本発明は、さらに突然変異タンパク質HIGVと比べて同等の生物学的機能を有する前記のような突然変異タンパク質に関する。「同等の生物学的機能」は、これらの突然変異タンパク質は、およそ40%、30%、20%、15%、10%、5%、2.5%、2%又は1%以下のHIGVに対する凝集阻害活性の偏差で、例えば実施例21に設定される条件と同じ又は一致する条件において、Aβ、好ましくはAβ40に結合して阻害することができることを意味する。本発明は、さらにアルツハイマー病のような神経変性疾患の治療又は予防に用いられる上述の突然変異タンパク質に関する。
【0045】
更なる実施形態において、エキストラドメインB又はそのフラグメントに結合する本発明にかかる突然変異タンパク質は、Leu36→Lys、Ala40→His、Ile41→Asp、Gln49→Arg、Tyr52→Gin、Ser68→Asn、Leu70→Arg、Arg72→Val、Lys73→His、Asp77→Asn、Trp79→Arg、Arg81→Trp、TyrlOO→Trp、Tyrl06→Trp、Lys125→Arg、Serl27→Tyr、Tyrl32→Leu、Lys134→Glu、及びSerl46→Asnのアミノ酸置換を含む。そのようなアミノ酸置換が含まれる突然変異タンパク質の例は、図17に示されるN7A(配列番号:20)がある。
【0046】
もう1つの実施形態において、エキストラドメインB又はそのフラグメントに結合する本発明にかかる突然変異タンパク質は、Leu36→Arg、Ala40→Met、Ile41→Arg、Gln49→Ala、Tyr52→Val、Ser68→Lys、Leu70→Met、Arg72→Gin、Lys73→Arg、Asp77→Lys、Trp79→Met、Arg81→Asn、Asn96→Ala、TyrlOO→Pro、Leul03→Pro、Tyrl06→Thr、Lysl25→His、Serl27→Phe、及びLysl34→Hisのアミノ酸置換を含む。そのようなアミノ酸置換が含まれる突然変異タンパク質の例は、図17に示されるN9B(配列番号:24)がある。
【0047】
もう1つの実施形態において、エキストラドメインB又はそのフラグメントに結合する本発明にかかる突然変異タンパク質は、Leu36→Ala、Ala40→Thr、Ee41→Trp、Gln49→Tyr、Tyr52→Gin、Ser68→Asn、Arg72→Met、Lys73→Ser、Asp77→Arg、Trp79→Met、Arg81→His、Asn96→Ser、TyrlOO→Trp、Tyrl06→Trp、Lysl25→Arg、Serl27→Tyr、Tyrl32→Phe、及びLysl34→Glyのアミノ酸置換を含む。そのようなアミノ酸置換が含まれる突然変異タンパク質の例は、図17に示されるN10(配列番号:26)がある。
【0048】
更なる実施形態において、エキストラドメインB又はそのフラグメントに結合する本発明にかかる突然変異タンパク質は、Leu36→Glu、Ala40→Ser、Ile41→Leu、Gln49→Arg、Leu70→Arg、Lys73→Ser、Asp77→His、Trp79→Leu、Asn96→Leu、TyrlOO→Lys、Leul03→His、Tyrl06→Phe、Lys125→Thr、Serl27→Ala、及びLys134→Pheのアミノ酸置換を含む。そのようなアミノ酸置換が含まれる突然変異タンパク質の例は、図17に示されるN7E(配列番号:22)がある。
【0049】
図17に示されるような上記の突然変異タンパク質は、さらにアミノ酸置換を含むことができる。その突然変異タンパク質は、さらに、Gln28→His又はCys87→Serが含まれるアミノ酸置換を含むことができるが、当該アミノ酸置換はGln28→His及びCys87→Serに限定されない。他の可能なアミノ酸置換は、Tyr52→GinやVal、Ser68→LysやAsn、又はArg81→TrporAsnやHisを含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0050】
本発明にかかるリポカリン突然変異タンパク質は、検出可能な親和性、例えば少なくとも200nmの解離定数(K)を有する所望の非天然標的に結合することができる。もう1つの実施形態において、この突然変異タンパク質は、1μM以下のK、100μM以下のK、1μM以下のK、500nmのK、200nm以下のK、100nm以下のK、50nm以下のK、10nm以下のK、又は1nM以下のKを有する所定の非天然標的に結合する。もう1つの実施形態において、リポカリン突然変異タンパク質は、少なくとも100、20、1nM又はそれ以下の所定の標的に対する解離定数で所望の標的に結合する。突然変異タンパク質の所望の標的に対する結合親和性は、蛍光滴定、競合ELISA、又は表面プラズモン共鳴(Biacore)のような多数の方法によって測定することができる。
【0051】
標的との複合体形成が結合相手の濃度、競合相手の存在、緩衝系のイオン強度などの多くの因子に依存することは、当業者に容易に発見される。選択及び濃縮は、一般的に、リポカリン突然変異タンパク質の分離が所望の標的と複合して、前述のような解離定数を有することが可能な条件下で行われる。しかしながら、洗浄及び溶出のステップは、可変のストリンジェンシ下で行うことができる。動的特性に関連する選択は同様に可能である。例えば、その選択は、標的からの遅い解離、又は言い換えると低いkoff速度が示される突然変異タンパク質と標的との複合体形成を助ける、複数の条件で行うことができる。また、その選択は、突然変異タンパク質と標的との間の速い複合体形成、又は言い換えると高いkon速度を助ける複数の条件で行うことができる。
【0052】
本発明にかかる突然変異タンパク質は、一般的に、単量体タンパク質として存在する。しかし、本発明のリポカリン突然変異タンパク質は自発的に二量化、又はオリゴマー化する可能性もある。安定な単量体を形成するリポカリン突然変異タンパク質の使用は、例えばさらに速い拡散と良好な組織浸透のためのいくつかの用途に好適にできるが、安定な同質二量体又は多量体を形成するリポカリン突然変異タンパク質の使用は、このような多量体が所定の標的に対する親和性及び/又は結合活性の(更なる)増加を提供できるため、その他の場合に有利になり得る。さらに、リポカリン突然変異タンパク質の低重合体の形成は、さらに遅い解離速度、又は長期の血清半減期を有することができる。
【0053】
各々の突然変異タンパク質とそのリガンドとの間の複合体形成は、また、各々の結合相手の濃度、競合相手の存在、用いられる緩衝系のpH及びイオン強度、及び解離定数Kの測定に用いられる実験的方法(数例だけを挙げると、例えば蛍光滴定、競合ELISA、又は表面プラズモン共鳴)、又は実験データの評価に用いられる数学アルゴリズムのような多くの異なる因子によって影響されることは留意されるべきである。
【0054】
従って、K値(各々の突然変異タンパク質とその標的/リガンドとの間に形成される複合体の解離定数)は、特定の実験範囲内で変更してもよく、所定のリガンドに対する特定のリポカリンの突然変異タンパク質の親和性を決定するのに用いられる方法及び実験設定に依存することはさらに、当業者に明らかである。このことは、測定されたK値にわずかな偏差、若しくは例えば、K値が表面プラズモン共鳴(Biacore)によって、又は、競合ELISAによって決定されるかどうかに依存する許容範囲があり得ることを意味する。
【0055】
一実施形態において、本明細書中に開示された突然変異タンパク質は、N末端又はC末端のいずれかで、ペンタヒスチジンタグ、ヘキサヒスチジンタグ、又はStrep−tag(登録商標)という親和性標識に結合できることは留意すべきである。従って、本出願はさらに、このようなタグを有するすべての明確かつ一般的に記載される突然変異タンパク質を含む。
【0056】
特性リポカリン突然変異タンパク質のフラグメントに関連して、本発明において用いられる用語「フラグメント」は、N末端及び/又はC末端で短縮された、すなわち、N末端及び/又はC末端のアミノ酸のうちの少なくとも1つを欠失する全長の成熟Lcn2から得られたタンパク質又はペプチドに関連する。このようなフラグメントは、成熟Lcn2の一次配列である、好適には少なくとも10個の、より好適には20個の、最も好適には30個以上のアミノ酸を含み、成熟Lcn2の免疫測定において通常検出可能である。
【0057】
本発明の範囲にさらに含まれるのが、上記の突然変異タンパク質であり、その免疫原性について変更されてきた。
【0058】
細胞毒性T細胞は、classIの主要組織適合抗原複合体(MHC)分子と関連して、抗原呈示細胞の細胞表面でペプチド抗原を認識する。ペプチドのMHC分子に結合する能力はアレル特異的であり、その免疫原性と相関する。所定のタンパク質の免疫原性を低減するために、タンパク質中のどのペプチドが所定のMHC分子に結合する可能性を予測する能力は、大きい価値を有する。潜在的なT細胞エピトープを同定するために計算機でのスレッディングアプローチを用いたアプローチは、MHCのclassI分子に対する所定のペプチド配列の結合を予測するために既に述べられている(Altuvia et al.(1995)J.Mol.Biol.249:244−250)。
【0059】
このようなアプローチをさらに用いて、本発明の突然変異タンパク質における潜在的なT細胞エピトープを同定し、免疫原性の予測による特異的な突然変異タンパク質の選択をその使用目的に依存させてもよい。さらには、T細胞エピトープを含むのを予測させるペプチド領域を、更なる突然変異誘発に供して、これらのT細胞エピトープを低減又は除去し、ひいては免疫原性を最小化することが可能であってもよい。遺伝子操作された抗体からの両親媒性のエピトープの除去は述べられてきており(Mateo et al.(2000)、Hybridoma19(6):463−471)、本発明の突然変異タンパク質に適用されてもよい。
【0060】
こうようにして得られた突然変異タンパク質は、最小限の免疫原性を有することができ、以下に記載のような治療及び診断用途での使用が望ましい。
【0061】
いくつかの用途においては、接合形態で本発明の突然変異タンパク質を用いることはさらに有用である。従って、本発明は、また特定の化合物に接合される、リポカリン突然変異タンパク質に関連する。その特定の化合物として、数例のみを挙げると、有機分子、酵素標識、呈色標識、細胞増殖抑制剤、毒素、光力学治療に適用されかつ光活性化され得る標識、蛍光標識、放射性標識、発色標識、発光標識、金属錯体、コロイド金のような金属、ハプテン、ジゴキシゲニン、ビオチン、化学療法用金属(chematherapeutic metal)、又は化学療法用金属を含んでもよいが、これに限定されるものではない。その突然変異タンパク質は、また有機薬物分子に接合されてもよい。このような接合は当該技術分野で周知された従来の方法によって行うことができる。
【0062】
一般的に、適切な化学物質又は酵素で本明細書中に記載のLcn2突然変異タンパク質を標識することは可能であり、化学的、物理的、光学的又は酵素学的な反応で検出可能な化合物又はシグナルを直接的又は間接的に産生する。物理的反応及び同時の光学的反応/標識の例は、照射での蛍光の放出である。アルカリホスファターゼ、ホースラディシュペルオキシダーゼ、又はβ−ガラクトシダーゼは、発色反応産物の形成を触媒する酵素標識(及び同時の光標識)の例である。一般的に、抗体に通常用いられる総ての標識はさらに(免疫グロブリンのFc部分内の糖部分で排他的に用いられるものを除いて)、本発明の突然変異タンパク質への接合のために用いてもよい。本発明の突然変異タンパク質はさらに、例えば、所定の細胞、組織又は器官への標的送達のために、又は周囲の正常細胞に影響を与えることなく細胞、例えば腫瘍細胞を選択的に標的化するために、このような薬剤の任意の好適な治療用活性剤と接合させてもよい。このような治療用活性剤の例は、放射性核種、毒素、小さな有機分子、及び(細胞表面受容体のアゴニスト/アンタゴニストとして作用するペプチド、又は所定の細胞内標的にタンパク質結合部位に対し競合するペプチドなど)治療用ペプチドを含む。好適な毒素の例は限定しないが、百日咳毒素、ジフテリア毒素、リシン、サポリン、緑膿菌外毒素、カリチアマイシン又はその誘導体、タキソイド、マイタンシノイド、ツブリシン、又はドラスタチンアナログを含む。ドラスタチンアナログは、アウリスタチンE、モノメチルアウリスタチンE、アウリスタチンPYE、及びアウリスタチンPHEであってもよい。分裂停止剤の例は限定しないが、シスプラチンと、カルボプラチンと、オキサリプラチンと、5−フルオロウラシルと、タキソテール(ドセタキセル)と、パクリタキセルと、アントラサイクリン(ドキソルビシン)と、メトトレキサートと、ビンブラスチンと、ビンクリスチンと、ビンデシンと、ビノレルビンと、ダカルバジンと、シクロホスファミドと、エトポシドと、アドリアマイシンと、カンプトテシンと、コンブレタスタチンA−4関連化合物と、スルホンアミドと、オキサジアゾリンと、ベンゾ[b]チオフェンと、合成型スピロケタールピランと、モノテトラヒドロフラン化合物と、クラシン及びクラシン誘導体と、メトキシエストラジオール誘導体と、ロイコボリンとを含む。本発明のリポカリン突然変異タンパク質はさらに、アンチセンス核酸分子、低分子干渉RNA、マイクロRNA、又はリボザイム治療用活性核酸で接合させてもよい。このような接合体は当該技術分野で周知の方法によって産生できる。
【0063】
一実施形態においては、本発明の突然変異タンパク質は、さらに本発明の突然変異タンパク質を身体内の所望の領域又は区域に送達するために、特異的な身体領域を標的とする標的部分に連結してもよい。このような修飾が所望されうる一実施例は、血液脳関門の通過である。血液脳関門を通過するために、本発明の突然変異タンパク質はこのバリアを通過する能動輸送を促進する部分に連結できる(Gaillard PJ,et al.,Diphtheria−toxin receptor−targeted brain drug delivery.InteRNAtional Congress Series.2005 1277;185−198、又はGaillard PJ,et al.,Targeted delivery across the blood−brain barrier.Expert Opin Drug Deliv.2005 2(2):299−309参照)。このような化合物は、例えば、商品名2B−Trans(登録商標)(オランダ国ライデンのto−BBB technologies BV5社)で入手可能である。本発明の突然変異タンパク質に結合できる他の例示的な標的分子は、所望の標的分子に対して親和性を有する抗体、抗体フラグメント、又はリポカリン突然変異タンパク質を含む。標的部分の標的分子は、例えば、細胞表面抗原であってもよい。細胞表面抗原は、例えば、癌細胞のような細胞又は組織型に対して特異的であってもよい。このような細胞表面タンパク質の説明に役立つ実例として、HER−2、又はNEU−2のようなプロテオグリカンがある。
【0064】
上述のように、本発明の突然変異タンパク質はいくつかの実施形態においては、突然変異タンパク質の血清半減期を延長する化合物に接合されうる(これに関しては、さらに、国際公開第2006/56464号参照のこと。このような接合ストラテジは、CTLA−4に対する結合親和性を有するヒト好中球ゼラチナーゼ結合性突然変異タンパク質について述べられている)。血清半減期を延長する化合物は数例のみを挙げると、ポリエチレン(PEG)又はその活性誘導体のようなポリアルキレングリコール分子、ヒドロキシエチルデンプン、パルミチン酸のような脂肪酸分子(Vajo & Duckworth (2000) Pharmacol. Rev. 521−9)、免疫グロブリンのFc化合物、免疫グロブリンのCH3ドメイン、免疫グロブリンのCH4ドメイン、アルブミン又はそのフラグメント、アルブミン結合ペプチド、又は、アルブミン結合タンパク質であってもよい。アルブミン結合タンパク質は、細菌性のアルブミン結合タンパク質、抗体、ドメイン抗体を含む抗体フラグメント(例えば、米国特許第6,696,245号参照)、又はアルブミンに対して結合活性を有するリポカリン突然変異タンパク質を含む。従って、本発明のリポカリン突然変異タンパク質の半減期を延長するための好適な接合相手は、アルブミン(Osborn et al. (2002) J. Pharmacol. Exp. Ther. 303, 540-548)、又は、例えば、連鎖球菌性プロテインGのもののような細菌性アルブミン結合ドメインのような、アルブミン結合タンパク質(Konig, T. and Skerra, A. (1998) J. Immunol. 方法s 218, 73-83)を含む。接合相手として用いられうるアルブミン結合ペプチドの別の例は、例えば、Cys−Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Cysの共通配列を有するものであり、米国特許出願第2003/0069395号又はDennisら(Dennis et al. (2002) J. Biol. Chem. 277, 35035−35043)に記載のように、Xaa1はAsp、Asn、Ser、Thr、又はTrpであり、Xaa2はAsn、Gln、His、Ile、Leu、又はLysであり、Xaa3はAla、Asp、Phe、Trp、又はTyrであり、Xaa4はAsp、Gly、Leu、Phe、Ser、又はThrである。
【0065】
他の実施形態において、アルブミン自体又はアルブミンの生物学的活性のフラグメントは、突然変異タンパク質の血清半減期を延長する本発明のリポカリン突然変異タンパク質の化合物として用いられうる。用語「アルブミン(albumin)」は、ヒト血清アルブミン、又はウシ血清アルブミン、又はラットアルブミンのような総ての哺乳類アルブミンを含む。アルブミン又はそのフラグメントは、米国特許第5,728,553号、又は欧州特許出願EP0330451及びEP0361991に記載のように組換えて産生されうる。タンパク質安定剤として用いられる組換えヒトアルブミン(Recombumin(登録商標)は、例えばNovozymes Delta社(英国、ノッティンガム)から入手できる。
【0066】
アルブミン結合タンパク質が抗体フラグメントである場合は、ドメイン抗体であってもよい。ドメイン抗体(dAbs)は生物物理学的な特性にわたる正確な制御を可能にするように操作され、生体内での半減期は、最適な安全性及び産生効率特性を生成するように設計される。ドメイン抗体は例えば、Domantis社(英国ケンブリッジ及び米国マサチューセッツ州)から商業上入手可能である。
【0067】
本発明の突然変異タンパク質の血清半減期を延長する部分としてトランスフェリンを使用する場合、突然変異タンパク質は非グリコシル化トランスフェリンのN又はC末端、又はその双方に遺伝学的に融合できる。非グリコシル化トランスフェリンは14ないし17日の半減期を有し、トランスフェリン融合タンパク質は延長された半減期を同様に有する。担体であるトランスフェリンはさらに、高いバイオアベイラビリティ、体内分布、及び循環安定性を提供する。この技術はBioRexis(米国ペンシルベニア州のBioRexis Pharmaceutical Corporation社)から商業上入手可能である。タンパク質安定剤として用いるための組換えヒトトランスフェリン(DeltaFerrin(登録商標))はさらに、Novozymes Delta社(英国ノッティンガム)から商業上入手可能である。
【0068】
免疫グロブリンのFc部分が本発明の突然変異タンパク質の血清半減期を延長するために用いられる場合、Syntonix Pharmaceuticals社(米国マサチューセッツ州)から商業上入手可能なSyn融合(登録商標)の技術を用いてもよい。このFc融合技術の使用によって、長時間作用する生物製剤の産生が可能となり、例えば抗体のFc領域に結合される突然変異タンパク質の2のコピーからなり、薬物動態、溶解性、及び産生効率を改善することができる。
【0069】
本発明の突然変異タンパク質の半減期を延長するためのさらに別の選択肢は、本発明の突然変異タンパク質のN又はC末端に、長く不定形でフレキシブルなグリシンリッチな配列(例えば、約20ないし80個の連続的なグリシン残基を有するポリグリシン)を融合することである。国際公開第2007/038619号に公開されたこのアプローチはさらに、例えば、用語「rPEG(組換えPEG)」等である。
【0070】
ポリアルキレングリコールが本発明の突然変異タンパク質の血清半減期を延長する化合物として用いられる場合、ポリアルキレングリコールは置換型又は非置換型であってもよい。ポリアルキレングリコールはさらに、活性化したポリアルキレン誘導体にできる。好適な化合物の例はインターフェロンに関連して、国際公開第99/64016号、米国特許第6,177,074号、又は米国特許第6,403,564号に記載のような、又は、PEG修飾アスパラギナーゼ、PEG−アデノシンデアミナーゼ(PEG−ADA)、又はPEG−スーパーオキシドジスムターゼのような他のタンパク質について記載されたような(例えば、Fuertgesら(1990)The Clinical Efficacy of Poly(Ethylene Glycol)−Modified Proteins J.Control.Release11,139−148参照)、ポリエチレングリコール(PEG)分子である。このような高分子、好適にはポリエチレングリコールの分子量は、約300ダルトン〜約70.000ダルトンの範囲にでき、例えば約10.000、約20.000、約30.000、又は約40.000ダルトンの分子量を有するポリエチレングリコールを含む。さらに、例えば米国特許第6,500,930号、又は6,620,413号に記載されるように、デンプン又はヒドロキシエチルデンプン(HES)のような炭水化物の低重合体及び高分子は血清半減期延長のために本発明の突然変異タンパク質に接合できる。
【0071】
もう1つの実施形態において、上述の化合物のうちの1つを本発明の突然変異タンパク質に接合すべく好適なアミノ酸側鎖を提供するために、人工アミノ酸は突然変異誘発によって導入してもよい。一般的に、このような人工アミノ酸はより反応性に、ひいては所望の部分への接合を促進するように設計される。人工tRNAを介して導入できるこのような人工アミノ酸の一例はパラアセチルフェニルアラニンである。
【0072】
本明細書中で開示される突然変異タンパク質のいくつかの用途について、融合タンパク質の形態で用いることは有利になりうる。いくつかの実施形態においては、本発明のヒト涙液突然変異タンパク質は、そのN末端及び/又はそのC末端で、タンパク質、タンパク質ドメイン、又はシグナル配列及び/又は親和性標識のようなペプチドに融合される。
【0073】
薬学的な用途のために、本発明の突然変異タンパク質は、突然変異タンパク質の生体内での血清半減期を延長する融合パートナーに融合されうる(国際公開第2006/56464号を再度参照。好適な融合パートナーは、CTLA−4に対し結合親和性を有するヒト好中球ゼラチナーゼ結合性突然変異タンパク質について記載されている)。上述の接合化合物と同様に、融合パートナーは数例のみを挙げると、免疫グロブリンのFc部分、免疫グロブリンのCH3ドメイン、免疫グロブリンのCH4ドメイン、アルブミン、アルブミン結合ペプチド、又はアルブミン結合タンパク質であってもよい。また、アルブミン結合タンパク質は細菌性のアルブミン結合タンパク質、又はアルブミンに対し結合活性を有するリポカリン突然変異タンパク質であってもよい。従って、本発明のリポカリン突然変異タンパク質の半減期を延長するための好適な融合パートナーはアルブミン(Osborn,B.L.et al.(2002)上記を参照、J.Pharmacol.Exp.Ther.303,540−548)、例えば、連鎖球菌性プロテインGのもののような細菌性アルブミン結合ドメインのような、アルブミン結合タンパク質(Konig,T.及びSkerra,A.(1998)上記を参照、J.Immunol.Methods218,73−83)を含む。Cys−Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Cysの共通配列を有し、Xaa1はAsp、Asn、Ser、Thr、又はTrpであり、Xaa2はAsn、Gln、His、Ile、Leu、又はLysであり、Xaa3はAla、Asp、Phe、Trp、又はTyrであり、Xaa4はAsp、Gly、Leu、Phe、Ser、又はThrである、Dennis(2002)ら、上記を参照、又は米国特許出願第2003/0069395号に記載のアルブミン結合ペプチドはさらに、融合パートナーとして用いられうる。本発明のリポカリン突然変異タンパク質の融合パートナーとしてアルブミン自体、又はアルブミンの生物学的な活性フラグメントを用いることはさらに可能である。用語「アルブミン」はヒト血清アルブミン、又はウシ血清アルブミン、又はラット血清アルブミンのような総ての哺乳類アルブミンを含む。アルブミン又はそのフラグメントの組換え産生は当該技術分野の当業者に公知であり、例えば米国特許第5,728,553号、欧州特許出願EP0330451又はEP0361991に記載されている。
【0074】
本発明のリポカリン突然変異タンパク質に酵素活性又は他の分子に対する結合親和性などの新たな性質を付与しうる。適切な融合タンパク質の例は、アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、プロテインGのアルブミン結合ドメイン、プロテインA、抗体断片、オリゴマー化ドメイン、同一又は異なる結合特異性のリポカリン突然変異タンパク質(その結果、「duocalin」の形成を引き起こす。Schlehuber,S.及びSkerra,A.(2001),Duocalins,engineered ligand−binding proteins with dual specificity derived from the lipocalin fold.Biol.Chem.382,1335−1342参照。)の突然変異タンパク質、又は毒素である。
【0075】
特に、得られた融合タンパク質の両方の「成分」がともに特定の治療標的上に作用できるように、本発明のリポカリン突然変異タンパク質を別個の酵素活性部位と融合することが可能でありうる。リポカリン突然変異タンパク質の結合ドメインは、疾患の原因となる標的に結合し、酵素ドメインがその標的の生物学的機能を止めることを可能にする。
【0076】
融合パートナー、また、組換えタンパク質の容易な検出及び/又は精製を可能にする、Strep−tag(登録商標)又はStlep−tag(登録商標)II(Schmidt, T.G.M.ら(1996) J. Mol. Biol. 255, 753−766)、mycタグ、FLAGタグ、His6タグ又はHAタグ、又はグルタチオンS−トランスフェラーゼのようなタンパク質などの親和性タグは、好ましい融合パートナーの更なる例である。最後に、緑色蛍光タンパク質(GFP)又は黄色蛍光タンパク質(YFP)などの発色特性又は蛍光特性を有するタンパク質は、同様に、本発明のリポカリン突然変異タンパク質に適した融合パートナーである。
【0077】
本明細書において使用される場合、「融合タンパク質」という用語はまた、シグナル配列を含む本発明のリポカリン突然変異タンパク質を含む。ポリペプチドのN末端でのシグナル配列は、このポリペプチドを特定の細胞内区画、例えば、E.coliのペリプラズム又は真核細胞の小胞体に指向させる。多数のシグナル配列が当技術分野において知られている。E.coliのペリプラズムへのポリペプチドの分泌のための好ましいシグナル配列はOmpAシグナル配列である。
【0078】
本発明は、また本明細書に記載されるように、突然変異タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子(DNA及びRNA)に関する。遺伝子コードの縮重はあるコドンを同一のアミノ酸を指定する他のコドンに置換することを許容するので、本発明は、本発明の融合タンパク質をコードする特定の核酸分子に限定されず、機能的な融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むすべての核酸分子を含む。
【0079】
従って、本発明はさらに、Lcn2の直鎖状ポリペプチド配列におけるアミノ酸配列位置96、100、及び106のいずれかの少なくとも1のコドンに突然変異を有する、本発明により突然変異タンパク質をコード化する核酸配列を含む。
【0080】
本明細書中に開示される発明はさらに、Lcn2突然変異タンパク質をコード化する核酸分子を含み、実験的な突然変異誘発の確定配列位置の外側に更なる突然変異を含む。このような突然変異は、例えば突然変異タンパク質の折り畳み効率、血清安定性、熱安定性、又はリガンド結合親和性の改善に寄与する場合、多くの場合許容されるか、又はさらに有利にもなり得る。
【0081】
本出願に開示された核酸分子は、この核酸分子の発現を可能にするように、制御配列(又は複数の制御配列)に「動作可能に結合(operably linked)」できる。
【0082】
DNAのような核酸分子は、転写及び/又は翻訳制御に関する情報を有する配列要素を含む場合、「核酸分子を発現可能である」と見なされるか、又は「ヌクレオチド配列の発現を許容」できると見なされ、このような配列はポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列に「動作可能に結合」される。動作可能な結合は、制御配列要素及び発現すべき配列が遺伝子発現を可能にする方法で結合される結合部のことである。遺伝子発現に必要な制御領域の詳細な性質は種の間で変りうるが、一般的にはこれらの領域は、原核生物においてはプロモータ自体、すなわち、転写の開始に関するDNA要素、並びにRNAに転写されるときに翻訳の開始を伝えるDNA要素の双方を有するプロモータを含む。このようなプロモータ領域は通常、原核生物における−35/−10ボックス及びシャインダルガノ配列、又は真核生物におけるTATAボックス、CAAT配列、及び5’キャッピング配列のような、転写及び翻訳に関連する5’非コード配列を含む。これらの領域はさらに、エンハンサ又はリプレッサ配列、並びに宿主細胞の特異的な区画を天然型ポリペプチドが標的にするための翻訳シグナル及びリーダ配列を含みうる。
【0083】
さらに、3’非コード配列は転写終結又はポリアデニル化に関する制御配列を含んでもよい。しかしながら、これらの終結配列が特定の宿主細胞において十分に機能的ではない場合、その細胞内で機能的な信号と置換されうる。
【0084】
従って、本発明の核酸分子は制御配列、好適にはプロモータ配列を含むことができる。別の好適な実施形態においては、本発明の核酸分子はプロモータ配列と、転写終結配列とを含む。好適な原核生物のプロモータは例えば、tetプロモータ、lacUV5プロモータ、又はT7プロモータである。真核細胞の発現に有用なプロモータの例は、SV40プロモータ又はCMVプロモータである。
【0085】
本発明の核酸分子はさらに、プラスミド、ファージミド、ファージ、バキュロウイルス、コスミド、又は人工染色体のような、ベクターの一部又は任意のその他のクローニング媒体にできる。
【0086】
一実施形態において、核酸分子はファスミドに含まれる。ファスミドベクターは、M13又はf1のような溶原性ファージの遺伝子間領域をコード化するベクターか、又は対象のcDNAに融合されるその機能的部分を意味する。このようなファージミドベクター、及び好適なヘルパーファージ(例えば、M13K07、VCS−M13、又はR408)での細菌性宿主細胞の重感染後に、無傷のファージ粒子が産生され、これによってファージ表面に表示されたその対応するポリペプチドへの、コード化した異種cDNAの物理的結合を可能にする(例えば、Kay,B.K.et al.(1996)ファージ Display of Peptides and Proteins − A Laboratory Manual,1st Ed.,Academic Press,New York NY;Lowman,H.B.(1997)Annu.Rev.Biophys,Biomol.Struct.26,401−424;又はRodi,D.J., 及びMakowski,L.(1999)Curr.Opin.Biotechnol.10,87−93に概説)。
【0087】
このようなクローニング媒体は、上述の制御配列、及び本発明のリポカリン突然変異タンパク質をコード化する核酸配列とは別に、発現用に用いられる宿主細胞と種から得られる互換性のある複製及び制御配列と、形質転換又は形質移入された細胞上に選択可能な表現型を与える選択マーカーとを含みうる。多数の好適なクローニングベクターは当該技術分野で周知であり、商業上利用可能である。
【0088】
本発明のリポカリン突然変異タンパク質をコード化するDNA分子、特にこのようなリポカリン突然変異タンパク質を含むクローニングベクターは、遺伝子を発現可能な宿主細胞に形質転換されうる。形質転換は標準的な技術を用いて行われ得る(Sambrook,J.et al.(1989)、上記を参照)。
【0089】
従って、本発明は本明細書中に記載のように、核酸分子を含む宿主細胞に関する。
【0090】
形質転換された宿主細胞は本発明の融合タンパク質をコード化するヌクレオチド配列の発現に好適な条件下で培養される。好適な宿主細胞は、大腸菌(E.coli)又は枯草菌のような原核細胞か、又はサッカロマイセスセレビシエ、ピキアパストリス、SF9若しくはHigh5昆虫細胞、哺乳類の不死化細胞株(例えば、HeLa細胞若しくはCHO細胞)、又は哺乳類の初代細胞のような真核細胞にできる。
【0091】
本発明はさらに、本発明の突然変異タンパク質の産生方法に関し、突然変異タンパク質、突然変異タンパク質のフラグメント、又は突然変異タンパク質と別のポリペプチドとの融合タンパク質は、遺伝子工学的方法によって、突然変異タンパク質をコードする核酸から産生される。本方法は生体内で行うことができ、突然変異タンパク質は例えば細菌性又は真核の宿主生物で産生し、次いでこの宿主生物又はその培養物から分離できる。生体外、例えば生体外の翻訳系の使用によって、タンパク質を産生することはさらに可能である。
【0092】
生体内で突然変異タンパク質を産生する場合、本発明の突然変異タンパク質をコード化する核酸は、(上に既に概説したように)組換えDNA技術によって、好適な細菌性又は真核の宿主生物に導入される。この目的のために、確立した標準的な方法を用いて(Sambrook,J.et al.(1989)、上記を参照)、宿主細胞は、本発明の突然変異タンパク質をコード化する核酸分子を含むクローニングベクターで最初に形質転換される。宿主細胞は次いで、複数の条件下で培養され、異種DNAの発現、ひいては対応するポリペプチドの合成を可能にする。その後、ポリペプチドは細胞から、又は培養培地のいずれかから回収される。
【0093】
一実施形態において、本発明は、本発明の突然変異タンパク質を生成する方法に関し、その生成方法は、
(a)ヒトリポカリン2をコードする核酸分子に、Lcn2の直鎖状ポリペプチド配列における配列位置96、100、及び106に対応する配列位置のうちのいずれかの少なくとも1つをコードするヌクレオチドトリプレットで、突然変異誘発を受けさせることによって、1つ又はそれ以上の突然変異タンパク質核酸分子を生じるステップを含む。
【0094】
上記の方法はさらに、
(b)(a)で得られた1つ以上の突然変異タンパク質核酸分子を適切な発現系で発現させるステップ、及び、
(c)所定の標的に対して検出可能な結合親和性を有する1つ又はそれ以上の突然変異タンパクを、選択及び/又は単離によって濃縮するステップ、を含んでもよい。
【0095】
「突然変異誘発」という用語は本明細書において用いられる場合、Lcn2(hNGAL、SWISS−PROT データ Bank受入番号P80188)の特定の配列位置に天然に存在するアミノ酸が、それぞれの天然のポリペプチド配列においてこの特異的な位置に存在しない少なくとも1つのアミノ酸によって置換され得るように、実験条件が選択されることを意味する。「突然変異誘発」という用語はまた、1以上のアミノ酸の欠失又は挿入による配列セグメントの長さの(更なる)改変を含む。従って、例えば、選択された配列位置の1つのアミノ酸が一続きの3つのランダム突然変異によって置換され、野生型タンパク質のそれぞれのセグメントの長さと比較して2アミノ酸残基の挿入を生じることは、本発明の範囲内である。このような挿入又は欠失は、本発明において突然変異誘発の対象となり得る任意のペプチドセグメントにおいて、互いに独立に導入されうる。本発明の1つの例示的な実施形態では、いくつかの突然変異の挿入は、選択されたリポカリン骨格のループABに導入される(それぞれ、実施例2及び28参照)。「ランダム突然変異誘発」という用語は、所定の単一アミノ酸(突然変異)は特定の配列位置に存在しないが、少なくとも2のアミノ酸が、突然変異誘発の際に、既定の配列位置にある確率で取り込まれうることを意味する。
【0096】
ヒトリポカリン2は、本発明で選択されるペプチドセグメントの突然変異誘発のための開始点として用いられる。列挙されたアミノ酸位置の突然変異誘発について、当該技術分野の当業者は自由裁量で、部位特異的突然変異誘発のための様々に確立された標準的な方法を有する(Sambrook,J.et al.(1989)、上記を参照)。通常用いられる技術は、合成オリゴヌクレオチドの混合物を用いた、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)による突然変異の導入であり、所望の配列位置に変性した塩基組成物を有する。例えば、コドンNNK又はNNS(ここで、N=アデニン、グアニン、又はシトシン、又はチミン;K=グアニン又はチミン;S=アデニン又はシトシン)の使用は、20の総てのアミノ酸に加え、終止コドンであるアンバーの取り込みを、突然変異誘発中に可能にするが、一方、コドンVVSはアミノ酸Cys、Ile、Leu、Met、Phe、Trp、Tyr、Valがポリペプチド配列の選択された位置に取り込まれるのを排除するために、取り込まれるアミノ酸の最大数を12に限定し、例えば、コドンNMS(ここで、M=アデニン又はシトシン)の使用は、アミノ酸Arg、Cys、Gly、Ile、Leu、Met、Phe、Trp、Valが選択された配列位置に取り込まれるのを排除するために、選択された配列位置でのアミノ酸の最大数を11に限定する。この点において、セレノシステイン又はピロールリジンのような(天然に存在する通常の20のアミノ酸以外の)アミノ酸用のコドンはさらに、突然変異タンパク質の核酸に取り込んでもよいことは留意すべきである。さらに、Wang,L.ら(2001)Science292,498−500、又はWang,L.及びSchultz,P.G.(2002)Chem.Comm.1,1−11に記載されるように、他の特異的なアミノ酸、例えば、o−メチル−L−チロシン又はp−アミノフェニルアラニンを挿入するために、終止コドンとして通常認識される、UAGのような「人工的な(artificial)」コドンを用いることは可能である。
【0097】
例えば、イノシン、8−オキソ−2’デオキシグアノシン、又は6(2−デオキシ−β−D−リボフラノシル)−3,4−ジヒドロ−8H−ピリミド(pyrimindo)−1,2−オキサジン−7−オン(Zaccolo et al.(1996)J.Mol.Biol.255,589−603)のような、還元型の塩基対特異性を有するヌクレオチド構成要素の使用は、選択された配列セグメントへの突然変異の導入のための、他の選択肢である。
【0098】
更なる可能性はいわゆる三塩基組での突然変異誘発(triplet−mutagenesis)である。この方法は、別個のヌクレオチドの三塩基組の混合物を用いており、その各々が1のアミノ酸について、コード配列への取り込みのためにコードされる(Virnekas B,Ge L,Pluckthun A,Schneider KC,Wellnhofer G,Moroney SE.1994 Trinucleotide phosphoramidites:ideal 試薬s for the synthesis of mixed oligonucleotides for random mutagenesis.Nucleic Acids Res22,5600−5607)。
【0099】
各ポリペプチドの選択された領域に突然変異を導入するための1の可能なストラテジは、4のオリゴヌクレオチドの使用に基づいており、その各々は、変異導入すべき対応する配列セグメントのうちの1つから部分的に得られる。これらのオリゴヌクレオチドを合成する場合、当該技術分野の当業者は、総ての天然アミノ酸をコード化するコドンがランダムに生じるように、変異導入すべきアミノ酸位置に対応する、ヌクレオチドの三塩基組の合成用の核酸構成要素の混合物を用いることができ、最終的にはリポカリンのペプチドライブラリを産生する。例えば、第1のオリゴヌクレオチドはその配列中において、突然変異した位置から離れ、ペプチドセグメントがリポカリンのポリペプチドの最もN末端の位置で変異導入される、コーディング鎖に対応する。従って、第2のオリゴヌクレオチドは、ポリペプチド配列に続く第2の配列セグメント用の非コーディング鎖に対応する。第3のオリゴヌクレオチドはさらに、対応する第3の配列セグメント用のコーディング鎖に対応する。最後に第4のオリゴヌクレオチドは、第4の配列セグメント用の非コーディング鎖に対応する。ポリメラーゼ連鎖反応は、第1及び第2のオリゴヌクレオチドの各々で実行でき、別個に必要に応じて、第1及び第2のオリゴヌクレオチドの各々で実行してもよい。
【0100】
これらの反応の双方の増幅産物は、第1ないし第4の配列セグメントの配列を含む単一核酸に、様々な所定の方法によって結合でき、突然変異は選択された位置で導入されていた。このため、産物の双方は、例えば隣接するオリゴヌクレオチド、並びに1又はそれ以上のメディエータの核酸分子を用いて、新しいポリメラーゼ連鎖反応に供することができ、第2及び第3の配列セグメント間の配列を提供する。突然変異誘発に用いられるオリゴヌクレオチドの配列内の数及び配列の選択において、当該技術分野の当業者は自由裁量で、数多くの選択肢を有する。
【0101】
上記に規定された核酸分子は、リポカリンのポリペプチドをコード化する、欠損した核酸の5’−及び3’−配列及び/又はベクターでの核酸連結によって結合でき、周知の宿主生物中でクローン化できる。多数の確立した手順が核酸連結及びクローン化用に利用可能である(Sambrook,J.et al.(1989)上記参照)。例えば、クローニングベクターの配列中にさらに存在する制限エンドヌクレアーゼの認識配列は、合成オリゴヌクレオチドの配列で操作されうる。従って、各々のPCR産物の増幅及び酵素切断後に、得られたフラグメントは対応する認識配列を用いて容易にクローン化されうる。
【0102】
突然変異誘発用に選択されたタンパク質のためにコード化する遺伝子内の長い配列セグメントはさらに、例えば、誤差率の増加条件下でのポリメラーゼ連鎖反応の使用によって、化学的な突然変異誘発によって、又は細菌性の突然変異誘発株を用いることによって、周知の方法を介してランダムな突然変異誘発に供されうる。このような方法はさらに、リポカリン突然変異タンパク質の標的の親和性又は特異性の更なる最適化のために用いられうる。実験的な突然変異誘発のセグメント外部に場合により生じる突然変異は多くの場合許容され、例えばリポカリン突然変異タンパク質の折り畳みの効率又は折り畳みの安定性の改善に貢献する場合、利点にさえなりうる。
【0103】
本発明の一実施形態によると、上記の方法は、少なくとも上記に示されるヒトリポカリン2の配列位置のいずれかをコードする2又は3のヌクレオチドトリプレットで、突然変異誘発を受けさせることを含む。
【0104】
更なる1つの実施形態において、その方法はさらに、hNGALの直鎖状ポリペプチド配列における配列位置33、36、40、41、4243、44、46、47、48、49、50、51、5254、55、59、65、68、70、7273、75、77、78、79、80、81、86、87、98、96、99、100、103、106、107、110、111、125、127、132、134、136、及び138に対応する配列位置のいずれかをコードする少なくとも1つのヌクレオチドトリプレットで、核酸分子に突然変異誘発を受けさせることを含む。
【0105】
更なる1つの実施形態において、その方法は、ヒトリポカリン2の直鎖状ポリペプチド配列における配列位置33、36、40、41、4243、44、46、47、48、49、50、51、5254、55、59、65、68、70、7273、75、77、78、79、80、81、86、87、98、96、99、100、103、106、107、110、111、125、127、132、134、136、及び138に対応する配列位置の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20をコードするヌクレオチドトリプレットで、核酸分子に突然変異誘発を受けさせることを含む。
【0106】
本発明の方法によると、突然変異タンパク質はhNGALをコード化する核酸から得られる。このような核酸は突然変異誘発に供されて、組換えDNA技術によって、好適な細菌性又は真核性の宿主生物に導入される。ヒトリポカリン2の核酸ライブラリを得ることは、抗体様の特性を有するリポカリン突然変異タンパク質、すなわち、所定の標的に対する親和性を有する突然変異タンパク質を産生するのに好適な、当該技術分野の当業者に周知の任意の技術を用いて行われることができる。このような組合せ型の方法の実施例は例えば、開示内容全体が本明細書中に引用によって取り込まれる、国際公開第99/16873号、国際公開第00/75308号、国際公開第03/029471号、国際公開第03/029462号、国際公開第03/029463号、国際公開第2005/019254号、国際公開第2005/019255号、国際公開第2005/019256号、又は国際公開第2006/56464号に詳細に記載されている。これらの特許出願の各々の内容は参照によりその全体において本明細書に組み込まれている。適切な宿主中で突然変異誘発に供された核酸配列の発現後、複数の各リポカリン突然変異タンパク質用の遺伝情報を保有するクローンは、所定の標的を結合し、得られたライブラリから選択されることができる。ファージディスプレイ(Kay,B.K.et al.(1996)上記を参照;Lowman,H.B.(1997)上記を参照;又はRodi,D.J.及びMakowski,L.(1999)上記参照;に概説)、コロニースクリーニング(Pini,A.et al.(2002)Comb.Chem.High Throughput Screen.5,503−510;に概説)、リボソームディスプレイ(Amstutz,P.et al.(2001)Curr,Opin.Biotechnol.12,400−405;に概説)、又はWilson,D.S.et al.(2001)Proc.Natl.Acad.Sci USA 98,3750−3755;に報告されるようなmRNAディスプレイ、又は、開示内容全体が本明細書中に引用によって取り込まれる、国際公開第99/16873号、国際公開第00/75308号、国際公開第03/029471号、国際公開第03/029462号、国際公開第03/029463号、国際公開第2005/019254号、国際公開第2005/019255号、国際公開第2005/019256号、又は国際公開第2006/56464号に記載される公知の技術は、これらのクローンの選択用に用いられることができる。
【0107】
この開示によると、ステップ(c)はさらに、上記の方法の別の実施形態において、
(i)所定の標的/リガンドとして、免疫学的ハプテンの特性が示される遊離型又はコンジュゲート型の化学化合物、ペプチド、タンパク質、又は、例えば多糖、核酸分子(例えば、DNA又はRNA)、若しくは全ウイルス粒子やウイロイド等の他の高分子からなる群より選択される化合物を提供するステップと、
(ii)上記標的/リガンドと、当該標的/リガンドに対し結合親和性を有する突然変異タンパク質との間で複合体の形成を可能にするように、複数の突然変異タンパク質を上記リガンドと接触させるステップと、
(iii)結合親和性を有さない、又は実質的に有さない突然変異タンパク質を除去するステップと、
を備える。
【0108】
本発明の特異的な実施形態において、標的/リガンドは非天然標的を含み、その非天然標的はペプチド、タンパク質、タンパク質のフラグメント若しくはドメイン、又は有機小分子含むが、これに限定されるものではない。一実施形態において、その有機小分子は、免疫学的ハプテンの特性が示される化合物である。更なる実施形態において、そのペプチドは、Aβ40ペプチドやAβ42ペプチドのようなアミロイドベータペプチドである。また、更なる実施形態において、その非天然標的は、EB−ドメインやEB−ドメインのフラグメントのような、フィブロネクチン又はそのドメインである。
【0109】
本明細書中で用いられるような競合条件は、突然変異タンパク質及びヒトリポカリン2の所定の非天然型リガンド(標的)が更なるリガンドの存在時に接触する少なくとも1のステップを、突然変異タンパク質の選択が含みうることを意味し、それは突然変異タンパク質の標的への結合と競合する。この更なるリガンドは、標的の生理学的リガンド、標的そのものの過剰、又は本発明の突然変異タンパク質を認識するエピトープに、重複するエピトープを少なくとも結合し、ひいては突然変異タンパク質の標的結合と干渉する標的のその他の非生理学的リガンドであってもよい。また、この更なるリガンドは、アロステリック効果により、突然変異タンパク質の標的への結合部位と異なるエピトープを複合体化することによって、突然変異タンパク質の結合と競合する。
【0110】
溶原性のM13ファージを用いた、ファージディスプレイ技術の、ある実施形態(Kay,B,K.et al.(1996)上記を参照;Lowman,H.B.et al.(1997)上記を参照;又は、Rodi,D.J.及びMakowski,L.(1999)上記を参照;に概説)は、本発明で用いられうる選択方法のある実施例として提供される。本発明の突然変異タンパク質の選択に用いられうるファージディスプレイ技術の別の実施形態は、Brodersによって記載のようなハイパーファージ(hyperファージ)のファージ技術である(Brodersら(2003)“Hyperファージ.Improving antibody presentation in ファージ display.”Methods Mol.Biol,205:295−302)。f1のような他の溶原性ファージ、又はT7のような溶菌性ファージは同様に用いてもよい。例示的な選択方法について、N末端でシグナル配列、好適にはOmpAシグナル配列を有し、かつ、C末端でファージカプシドに組み込まれうる、ファージM13のカプシドタンパク質pIII、又はそのフラグメントを有するシグナル配列融合タンパク質として、変異導入されるリポカリンの核酸配列の発現を可能にするM13ファージミドが産生される。野生型の配列のアミノ酸217ないし406を含むファージカプシドタンパク質のC末端のフラグメントΔpIIIは、融合タンパク質を産生するのに好適に用いられる。一実施形態において特に好適であるのは、pIIIのC末端のフラグメントであり、位置201でのシステイン残基は欠損しているか、又は別のアミノ酸に置換される。
【0111】
従って、本発明の方法の更なる実施形態は、ヒトリポカリン2の複数の突然変異タンパク質をコード化する核酸を動作可能に融合するステップと、所定のリガンドの結合用の少なくとも1の突然変異タンパク質を選択するように、M13ファミリの線維状ファージのコートタンパク質pIIIか、又はこのコートタンパク質のフラグメントをコード化する遺伝子で、3’末端での突然変異誘発を生じさせるステップとを含む。
【0112】
融合タンパク質は親和性標識のような更なる成分を含んでもよく、融合タンパク質又はその一部分の固定化、検出、及び/又は精製を可能にする。さらに、終止コドンは、リポカリン又はその突然変異タンパク質をコード化する配列領域と、ファージカプシド遺伝子又はそのフラグメントとの間に配置でき、終止コドン、好適にはアンバーの終止コドンは、好適なサプレッサー株における翻訳時に、アミノ酸に少なくとも部分的に翻訳される。
【0113】
例えば、本明細書に記載のように、pTlc27とも呼ばれるファスミドベクターpTLPC27は、ヒトリポカリン2突然変異タンパク質をコード化するファージミドライブラリの調製に用いられうる。hNGAL突然変異タンパク質をコード化する本発明の核酸分子は、2のBstXI制限部位を用いてベクターに挿入される。核酸連結後、大腸菌のXL1−Blueのような好適な宿主株は、多数の別個のクローンを産生するために、得られた核酸混合物で形質転換される。各ベクターは必要に応じて、ハイパーファージミド(hyperファージミド)ライブラリの調製のために産生できる。
【0114】
得られたライブラリはその後、機能的なファージミドを産生するために、液体培養中に適切なM13ヘルパーファージ又はハイパーファージに重感染する。組換え型ファージミドは、コートタンパク質pIII又はそのフラグメントを有する融合物としてその表面上にリポカリン突然変異タンパク質を表示する一方、融合タンパク質のN末端のシグナル配列は通常切断される。他方、ヘルパーファージによって供給される天然型カプシドタンパク質pIIIの1又はそれ以上のコピーをさらに有し、従ってレシピエント、一般的にはF−又はF’−プラスミドを保有する菌種を感染させることができる。ハイパーファージディスプレイの場合において、ハイパーファージミドは感染性のコートタンパク質pIIIを有するが、天然型カプシドタンパク質を有しない融合物として、その表面にリポカリン突然変異タンパク質を表示する。ヘルパーファージ又はハイパーファージの感染中又はその後に、リポカリン突然変異タンパク質とカプシドタンパク質との間での融合タンパク質の遺伝子発現が、例えばアンヒドロテトラサイクリンの添加によって誘発できる。誘発条件は、実質的に一部分の得られたファージミドが、その表面上に少なくとも1のリポカリン突然変異タンパク質を表示するように選択される。ハイパーファージディスプレイの場合においては、誘発条件は、リポカリン突然変異タンパク質とカプシドタンパク質pIIIとからなる、3ないし5の融合タンパク質を保有するハイパーファージミドの集団を生じさせる。様々な方法がポリエチレングリコールでの沈殿のようなファージミドを分離することで知られる。分離は一般的に、6時間〜8時間のインキュベーション期間後に生じる。
【0115】
分離されたファスミドはその後、所望の標的とのインキュベーションによって選択に供することができ、標的はそれらのコート中の融合タンパク質として、所望の結合活性を有する突然変異タンパク質を保有する、そのファージミドの少なくとも一時的な固定化を可能にする形態で示される。当該技術分野の当業者に周知の様々な実施形態の間で、標的は例えば、血清アルブミンのような担体タンパク質と接合され、この担体タンパク質を介してタンパク質結合面、例えばポリスチレンに結合されうる。ELISA技術に好適なマイクロタイタープレート、又はいわゆる「イムノスティック」は好適には、このような標的の固定化のために用いられうる。また、ビオチンのような他の結合基での標的の接合が用いられうる。標的はその後、例えばマイクロタイタープレート、又はストレプトアビジン、ニュートラアビジン、若しくはアビジンでコーティングされた常磁性粒子のような、この群を選択的に結合する表面に固定化できる。標的が免疫グロブリンのFc部分に融合される場合、固定化はさらに、例えばマイクロタイタープレート又は常磁性粒子のような、プロテインA又はプロテインGでコーディングされた表面で得られうる。
【0116】
表面にある非特異的なファージミド結合部位は、ELISA法で知られるようにブロッキング溶液で飽和できる。ファージミドは次いで、一般的には、生理学的バッファーの存在下で表面に固定化される標的と接触する。結合されないファージミドは複数の洗浄によって除去される。表面上に残ったファージミド粒子はその後溶出される。溶出では、いくつかの方法が可能である。例えば、ファージミドはプロテアーゼの添加によって、又は酸、塩基、界面活性剤、若しくはカオトロピック塩の存在下で、又は適度な変性条件下で溶出できる。好適な方法は、pH2.2のバッファーを用いた溶出であり、溶出物はその後中和される。また、遊離型の標的の溶液は、ファージミドへの結合用に固定化された標的と競合するように添加でき、標的特異性のファージミドは、対象の標的に特異的に結合する免疫グロブリン又は天然型リガンドのタンパク質との競合によって溶出できる。
【0117】
その後、大腸菌細胞は溶出されたファージミドに感染する。また、核酸は溶出されたファージミドから抽出でき、別の方法においては細胞の配列解析、増幅、又は形質転換のために用いられうる。この方法で得られた大腸菌クローンから、新しいファージミド又はハイパーファージミドが上述の方法によって、M13ヘルパーファージ又はハイパーファージでの重感染によってさらに産生され、この方法で増幅されたファージミドは再度、固定化された標的の選択に供される。複数の選択サイクルは多くの場合、十分に濃縮された形態での本発明の突然変異タンパク質で、ファージミドを得るために必要である。選択サイクルの数は、その後の機能解析において、少なくとも0.1%の調査されたクローンが所定の標的に対する検出可能な親和性を有する突然変異タンパク質を産生するように、好適に選択される。用いられるライブラリの大きさ、すなわち、複雑度に依存して、2ないし8のサイクルが一般的にはこのために要求される。
【0118】
選択された突然変異タンパク質の機能解析では、大腸菌株は、選択サイクルから得られるファージミドによって感染され、対応する二本鎖のファスミドDNAが分離される。このファスミドDNAから、又はさらにファージミドから抽出される単鎖DNAから、本発明の選択された突然変異タンパク質の核酸配列は、当該技術分野に周知の方法によって決定でき、アミノ酸配列はそれから推定されうる。変異導入された領域、又はhNGAL突然変異タンパク質全体の配列は、別の発現ベクターでサブクローン化され、好適な宿主生物で発現されうる。例えば、現在pTlc26とも呼ばれるpTlc26は、大腸菌TG1のような大腸菌株中の発現のために用いられうる。このように産生されたヒトリポカリン2突然変異タンパク質は、様々な生化学的方法によって調製されうる。例えばpTlc26で産生されたhNGAL突然変異タンパク質は、そのC末端で親和性ペプチドのStrep−tag(登録商標)II(Schmidt et al.上記参照)を保有し、従ってストレプトアビジン親和性クロマトグラフィよって好適に調製されることができる。
【0119】
その選択はさらに、他の方法によって行われうる。多くの対応する実施形態が当該技術分野の当業者に周知であるか、又は文献中に記載されている。さらに、方法の組合せが適用されうる。例えば、「ファージディスプレイ」によって選択されるか、又は少なくとも濃縮されるクローンはさらに、「コロニースクリーニング」に供されうる。この手順は、標的に対する検出可能な結合親和性を有するヒトリポカリン2突然変異タンパク質の産生に対して、直接的に分離されうるのような利点を有する。
【0120】
「ファージディスプレイ」技術又は「コロニースクリーニング」法における宿主生物としての大腸菌の使用に加えて、他の菌種、酵母、又はさらに昆虫細胞又は哺乳類細胞はこの目的に用いられうる。上述のようなランダムのライブラリからの、ヒトリポカリン2突然変異タンパク質の選択に加えて、突然変異誘発の限定を含む発展的方法はさらに、標的に対する親和性又は特異性について、標的に対する結合活性を既に有する突然変異タンパク質を最適化するために適用できる。
【0121】
所定の標的に対して親和性を有する突然変異タンパク質は一度選択されると、さらに高い親和性の変異体、又は、高い熱安定性、血清安定性の改善、熱力学的安定性、溶解性の改善、単量体の挙動の改善、熱変性、化学変性、タンパク質分解、若しくは界面活性剤に対する耐性の改善等のような改善された特性を有する変異体を次に選択するために、このような突然変異タンパク質を別の突然変異誘発に供することがさらに可能である。この更なる突然変異誘発は、高親和性を目的とする場合においては生体内での「親和性成熟(affinity maturation)」とみなしうるが、合理的設計に基づく部位特異的な突然変異、又はランダムな突然変異によって得られる。より高い親和性又は改善された特性を得るための別の可能なアプローチは、エラープローンPCRの使用であり、リポカリン突然変異タンパク質の配列位置の選択した範囲にわたる点突然変異が生じる。エラープローンPCRはZaccoloら(1996)J.Mol.Biol.255,589−603:で記載されるもののような任意の周知のプロトコルによって行われうる。この目的に好適な他のランダムな突然変異誘発方法は、Murakami,H et al.(2002)Nat.Biotechnol.20,76−81:で記載のようなランダムな挿入/欠失(RID)か、又はBittker,J.Aら(2002)Nat.Biotechnol.20,1024−1029:で記載のような非相同性のランダムな組換えを含む。必要に応じて、親和性成熟はさらに、国際公開第00/75308号、又はSchlehuber,S.et al.(2000)J.Mol.Biol.297,1105−1120:に記載の手順によって行うことができ、ジゴキシゲニンに対し高親和性を有するビリン結合型のタンパク質の突然変異タンパク質が得られた。親和性を改善する更なるアプローチは、位置的な飽和突然変異誘発を行うことである。このアプローチにおいて、「小さな」核酸ライブラリは、アミノ酸交換/突然変異が任意の4のループセグメント内の単一位置にのみ導入されて産生されうる。これらのライブラリはその後、更なるパニングのラウンドなしに、選択ステップ(親和性スクリーニング)に直接的に供される。このアプローチによって、所望の標的の結合の改善に寄与する残基の同定が可能となり、結合に重要な「ホットスポット(hot spot)」の同定が可能となる。
【0122】
一実施形態において、突然変異タンパク質を改良するための上記方法は、さらに、ヒトリポカリン2の野生型配列における配列位置14、21、60、84、88、116、141、145、143、146、又は158に対応する配列位置のいずれかの少なくとも1つでCys残基を導入すること、及びhNGALの野生型配列における配列位置14、21、60、84、88、116、141、145、143、146、又は158に対応する配列位置のいずれかの少なくとも1つで導入されたCys残基のチオール基によって、上記突然変異タンパク質の血清半減期を改良できる部分を接合することを含む。上記突然変異タンパク質の血清半減期を改良できる部分は、ポリアルキレングリコール分子、及びヒドロキシエチルデンプンからなる群より選ばれてもよい。
【0123】
更なる実施形態においては、本発明はヒトリポカリン2の所定の非天然リガンド対して検出可能な結合親和性を有するヒトリポカリン2の突然変異タンパク質に関し、上に詳述した本発明の方法によって取得可能であるか、又は取得される。
【0124】
いくつかの本発明のヒトリポカリン2突然変異タンパク質においては、Cys76とCys175との間に天然に存在するジスルフィド結合が除去される。従って、このような突然変異タンパク質(又は分子内ジスルフィド結合を含まないその他のヒトリポカリン2突然変異タンパク質)は、還元した酸化還元環境を有する細胞区画中、例えばグラム陰性菌の細胞質中に産生できる。
【0125】
本発明のリポカリン突然変異タンパク質が分子内ジスルフィド結合を含む場合、適切なシグナル配列を用いて、酸化した酸化還元環境を有する細胞区画に新生ポリペプチドを向けることが好ましい。このような酸化環境は、グラム陽性菌の細胞外環境において、又は真核細胞の小胞体の内腔において、大腸菌のようなグラム陰性菌のペリプラズムによって提供してもよく、通常、構造的なジスルフィド結合の形成を支持する。
【0126】
しかしながら、宿主細胞、好適には大腸菌の細胞質ゾルにおいて本発明の突然変異タンパク質を産生することはさらに可能である。この場合においては、ポリペプチドは溶解可能及び折り畳まれた状態で直接的に得られるか、又は封入体の形態で回収して、その後生体外で復元するかのいずれかにできる。更なる選択肢は酸化した細胞内環境を有する特異的な宿主株の使用であり、このように細胞質ゾル中のジスルフィド結合の形成を可能にする(Venturi et al. (2002) J. Mol. Biol. 315, 1−8.)。
【0127】
しかしながら、本発明の突然変異タンパク質は、遺伝子工学の使用のみによって産生又は生成されるとは限らない。逆に、リポカリン突然変異タンパク質はさらに、Merrifieldの固相ポリペプチド合成のような化学合成によって、又は生体外での転写及び翻訳によって得ることができる。例えば、有望な突然変異は分子モデリングを用いて同定され、その後、生体外で所望の(設計された)ポリペプチドを合成し、所定の標的に対する結合活性を検討することが可能である。タンパク質の固相及び/又は溶液相合成のための方法は当該技術分野に公知である(例えば、Lloyd−Williams,P.et al.(1997)Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins.CRC Press,Boca Raton;Fields,G.B.及びColowick,S.P.(1997)Solid−Phase Peptide Synthesis.Academic Press,San Diego;又はBruckdorfer,T.et al.(2004)Curr.Pharm.Biotechnol.5,29−43に概説)。
【0128】
もう1つの実施形態において、本発明の突然変異タンパク質は、当該技術分野の当業者に周知の確立した方法を用いて、生体外での転写/翻訳によって産生してもよい。
【0129】
本発明は、さらに請求項に示される本発明の突然変異タンパク質の少なくとも1つ又はその融合タンパク質若しくはその接合体と、選択的に、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0130】
129
本発明によるリポカリン突然変異タンパク質は、タンパク薬剤で治療上有効である任意の非経口的又は非経口的ではない(腸内)経路を介して投与できる。非経口的な適用方法は例えば、注射液、輸液、又はチンキ剤の形態のような皮内、皮下、筋肉内、又は静脈内の注射及び注入技術と、煙霧混合物、噴霧、又は粉末の形態でのような煙霧導入及び吸入とを含む。非経口ではない送達モードは、例えば経口的に、丸剤、錠剤、カプセル剤、溶剤、若しくは懸濁剤のような形態、又は直腸的に坐剤のような形態である。本発明の突然変異タンパク質は、従来の非毒性で薬学的に許容可能な、所望されるような賦形剤又は担体、添加剤、及び媒体を含む剤形で全身的又は局所的に投与できる。
【0131】
本発明の一実施形態においては、医薬品は哺乳類、特にヒトに非経口的に投与される。対応する投与方法は限定しないが、例えば、注射液、輸液、又はチンキ剤の形態のような皮内、皮下、筋肉内、又は静脈内の注射及び注入技術と、煙霧混合物、噴霧、又は粉末の形態のような煙霧導入及び吸入とを含む。静脈内及び皮下の注入及び/又は注射の組合せは、比較的短い血清半減期を有する化合物の場合に最も好都合になりうる。医薬組成物は水溶液、水中油型乳剤、又は油中水型乳剤であってもよい。
【0132】
131
11(4):312−316;に記載の、例えばイオン導入、超音波導入、又はマイクロニードル式の経皮送達技術はさらに、本明細書中に記載の突然変異タンパク質の経皮送達に用いられうることは留意すべきである。非経口ではない送達モードは例えば経口的に、丸剤、錠剤、カプセル剤、溶剤、若しくは懸濁剤のような形態の経口投与、又は坐剤のような形態の直腸投与である。本発明の突然変異タンパク質は、従来の非毒性で薬学的に許容可能な、種々の賦形剤又は担体、添加剤、及び媒体を含む剤形で全身的又は局所的に投与できる。
【0133】
132
適用される突然変異タンパク質の用量は、所望の予防効果又は治療反応を得るために、の突然変異タンパク質とリガンドとの間の複合体の半減期とに依存する。さらに、最適な用量は突然変異タンパク質又はその融合タンパク質若しくはその接合体の体内分布と、投与モードと、治療中の疾患/障害の重症度と、患者の医学的状態とに依存する。例えば、局所塗布用に軟膏で用いられる場合、高濃度のヒトリポカリン2突然変異タンパク質が用いられうる。しかしながら所望される場合、突然変異タンパク質はさらに、例えば、PolyActive(登録商標)又はOctoDEX(登録商標)(cf. Bos et al., Business Briefing: Pharmatech 2003: 1-6)のような、リポソーム分散液又はヒドロゲルを基剤とした高分子ミクロスフェアなどの徐放性製剤で提供してもよい。
【0134】
従って、本発明の突然変異タンパク質は、薬学的に許容可能な成分ならびに確立された調整方法を用いた組成物に調剤できる(Gennaro,A.L.及びGennaro,A.R.(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Ed.,Lippincott Williams & Wilkins,Philadelphia,PA)。医薬組成物を調製するために、薬学的に不活性な無機又は有機賦形剤が用いられうる。例えば、丸剤、粉末、ゼラチンカプセル剤、又は坐剤を調製するために、例えばラクトース、滑石、ステアリン酸及びその塩、脂肪、ろう、固体又は液体ポリオール、天然及び硬化油は用いることができる。使用前に溶剤又は煙霧混合物に再構成するための溶剤、懸濁剤、乳剤、煙霧混合物、又は粉末の産生に好適な賦形剤は、水、アルコール、グリセロール、及びその好適な混合物、ならびに植物油を含む。
【0135】
医薬組成物はさらに、例えば充填剤、結合剤、湿潤剤、流動促進剤、安定剤、保存剤、乳化剤のような添加剤と、更なる溶剤若しくは可溶化剤、又は畜性効果を得るための薬剤とを含んでもよい。後者は、リポソーム及びマイクロカプセルのような緩効系若しくは徐放系又は標的送達系に取り込まれてもよいものである。
【0136】
製剤は細菌保持性フィルタを通した濾過を含む多数の手段によって、又は、使用の直前に滅菌水若しくは他の滅菌手段で溶解又は分散できる無菌の固体組成物の形態で、滅菌剤を組み込むことによって滅菌できる。
【0137】
本発明の突然変異タンパク質、又はその融合タンパク質若しくは接合体は、多くの用途に用いられうる。一般的に、このような突然変異タンパク質は、Fc部分の糖鎖付加に特異的に依拠するものを除いて、抗体が用いられる総ての用途で用いられうる。
【0138】
従って、本発明の別の態様においては、本発明のヒトリポカリン2の突然変異タンパク質は、ヒトリポカリン2の所定の非天然リガンドの結合及び/又は検出に用いられる。このような使用は、好適な条件下で所定のリガンドを有するとされるサンプルと突然変異タンパク質を接触させて、これによって、突然変異タンパク質と所定のリガンドとの間の複合体の形成を可能にして、好適なシグナルによって複合体化された突然変異タンパク質を検出するステップを具えてもよい。
【0139】
検出可能なシグナルは、上に説明されるような標識によって、さらに結合、すなわち複合体形成そのものによる物理的特性の変化によって生じうる。一例は表面プラズモン共鳴であり、その値は、一方が金箔のような表面上に固定される結合相手の結合時に変更される。
【0140】
本明細書中に開示されるヒトリポカリン2の突然変異タンパク質はさらに、ヒトリポカリン2の所定の非天然リガンドの分離に用いられてもよい。このような使用は、好適な条件下で前記リガンドを含むとされるサンプルと突然変異タンパク質を接触させ、これによって、突然変異タンパク質と所定のリガンドとの間で複合体の形成を可能にし、サンプルから突然変異タンパク質/リガンドの複合体を分離するステップを具えてもよい。
【0141】
本発明のヒトリポカリン2突然変異タンパク質はさらに、事前選択された部位を化合物が標的とするように用いてもよい。このような一実施形態においては、ヒトヒトリポカリン2突然変異タンパク質は、生物又は組織中の事前選択された部位を薬学的に能動的な化合物が標的にするのに用いられ、
a)突然変異タンパク質を前記化合物と接合するステップと、
b)突然変異タンパク質/化合物の複合体を事前選択された部位に送達するステップと、
を備える。
【0142】
このような目的のために、突然変異タンパク質は複合体形成を可能にするように所望の化合物と接触する。次いで、突然変異タンパク質と、対象の化合物とを含む複合体は事前選択された部位に送達される。これは、例えば、所望の標的に対して結合親和性を有する抗体、抗体フラグメント、又はリポカリン突然変異タンパク質若しくはリポカリン突然変異タンパク質のフラグメントのような、標的部分に突然変異タンパク質を接合することによって実現できる。
【0143】
この使用は限定しないが、薬剤で治療されることとなる、感染した身体部分、組織又は器官のような、生物における事前選択された部位に(選択的に)薬剤を送達するのに特に好適である。突然変異タンパク質と対象の化合物との間での複合体の形成の他に、突然変異タンパク質はさらに所定の化合物と反応させて、突然変異タンパク質と化合物との接合体を提供できる。上の複合体と同様に、このような接合体は化合物を事前選択された標的部位に送達するのに好適であってもよい。突然変異タンパク質と化合物とのこのような複合体はさらに、突然変異タンパク質と化合物とを相互に共有結合するリンカを含んでもよい。選択的に、このようなリンカは血流中で安定であるが、細胞内環境においては切断可能である。
【0144】
本明細書中で開示される突然変異タンパク質及びその誘導体は従って、抗体又はそのフラグメントと同様、多くの分野で用いられうる。担体に結合させる使用に加えて、所定の突然変異タンパク質の標的、又はこの標的の接合体若しくは融合タンパク質を固定化又は分離するのが可能であるため、突然変異タンパク質は酵素、抗体、放射性物質、又は生化学的活性若しくは規定される結合特性を有するその他の群で標識されるように用いられうる。そのようにすることによって、各々の標的、又はその接合体若しくは融合タンパク質は検出又は接触できる。例えば、本発明の突然変異タンパク質は確立した分析方法(例えば、ELISA又はWエステルn Blot)によって、又は顕微鏡若しくは免疫センサによって、化学的構造を検出するのに役立つ。ここで検出シグナルは、好適な突然変異タンパク質、接合体又は融合タンパク質の使用によって直接的に、又は抗体を介して結合された突然変異タンパク質の免疫化学的検出によって間接的に、のいずれかで産生できる。
【0145】
本発明の突然変異タンパク質について可能な多数の用途がさらに医学に存在する。生体外での診断及び薬剤送達における使用に加えて、本発明の変異ポリペプチドは、例えば組織特異型又は腫瘍特異型の細胞表面分子を結合して産生されることができる。このような突然変異タンパク質は、例えば接合形態で、又は融合タンパク質として、「腫瘍イメージング」に又は直接に癌治療に用いられてもよい。
【0146】
従って、本発明は、また本発明にかかるヒトリポカリン2突然変異タンパク質の、所定の非天然リガンド又は標的と複合体を形成するための使用を含む。
【0147】
更なる実施形態において、本発明はまた、本発明による突然変異タンパク質の、医薬組成物の製造への使用を含む。このようにして得られた医薬組成物は、アルツハイマー病のような神経変性疾患の治療に適用されてもよい。その医薬組成物は、また癌の治療、線維症の治療、又は炎症の治療に用いられることができる。その医薬組成物は、単剤療法又は併用療法として用いられてもよい。
【0148】
また、他の実施形態において、本発明は本発明による突然変異タンパク質が含有される診断又は分析キットを特徴とする。
【0149】
本発明の他の実施形態において、神経変性疾患、癌、線維症、又は炎症を患う対象者を治療するために、各々の本発明の突然変異タンパク質、又は本発明の突然変異タンパク質が含有される医薬組成物を必要に応じて対象者投与することを含む方法に関する。
【0150】
治療を必要とする対象者はいくつかの例示のみを挙げると、ヒト、イヌ、マウス、ラット、ブタ、カニクイザルのようなサルなどの哺乳類であってもよい。、
また、他の実施形態において、本発明は、対象者において生体内撮像を行うために、本発明の突然変異タンパク質又は本発明の突然変異タンパク質が含まれる医薬組成物を、上記対象者に投与することを含む方法を特徴とする。その対象者は、上記のように定義されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0151】
本発明は以下の限定されない実施例及び添付の図面によってさらに例示される。
【図1】図1は、成熟Lcn2のアミノ酸配列における20のアミノ酸位置36、40、41、49、52、68、70、72、73、77、79、81、96、100、103、106、125、127、132、及び134(下線付き及び番号付き)の同時ランダム突然変異誘発のためのPCR組み立て法を示す。これらの20の位置は4つの配列サブセットに分かれる。各サブセットにおけるアミノ酸のランダム化のために、ヌクレオチドのNNK混合物が突然変異したコドンで採用されたオリゴデオキシヌクレオチドは合成された(配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4)。Nは全ての4つの塩基A、C、G、及びTの混合物を意味する一方、Kは2つの塩基G及びTの混合物を意味する。それ故に、このようなトリプレットは、全ての20の天然アミノ酸だけでなく、ファージミド生産及び遺伝子発現に用いられるE.coli supE−strains XLl−blue(Bullock et al., BioTechniques 5 (1987), 376−378)又はTGI(Sambrook et al., Molecular クローニング. A Laboratory Manual (1989), Cold Spring Harbor Press)においてグルタミンとして翻訳されるアンバー終止コドンTAGもコードした。4つの追加のオリゴデオキシヌクレオチド(配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8)は、また、集合反応に用いられる。その4つの追加のオリゴデオキシヌクレオチドは、非コード鎖(DNA二本鎖配列の3′−5′方向において記入される)に対応して上記のオリゴデオキシヌクレオチド同士の間のギャップをフィリングする固定のヌクレオチド配列を有する。過剰に添加してかつビオチングループを運ぶ2つの短い隣接オリゴデオキシヌクレオチド(配列番号:9及び配列番号:10)は、組立てされ、かつ完全に合成された遺伝子フラグメントのPCR増幅のためのプライマーとしての機能を果たす。その2つの隣接プライマーは、それぞれBstXI制限酵素認識部位(CCANNNNNNTGG)を包み、酵素消化物の上に互換性のないオーバーハングを生じさせた。制限酵素認識部位のこの特別配置は、合成遺伝子の特に効果的なライゲーション及びクローニングを可能にする。最初のLcn2配列に対してアミノ酸Gln28のHisへの置換は、第一のBstXI部位を導入することが必要である一方、第二のBstXI部位がLcn2のcDNAにおいて自然に発生した。さらに、不対残基Cys87は、遺伝子組立ての間にSerによって置換された。ワンポットPCRの後、得られた遺伝子フラグメントは、Lcn2構造遺伝子の欠落部分を提供するベクターに挿入した。この図面はまた、二本鎖DNAシークエンシングに役立つ2つのBstXI制限酵素認識部位によって挟まれたカセットの上流及び下流のそれそれにおける2つの短いプライマー(配列番号:45及び配列番号:46)を示す。
【図2】図2は、合成Lcn2遺伝子(図1に示すように、中央のカセットのみを2つのBstXI制限酵素認識部位によって挟まれる)のライブラリにおけるヌクレオチド配列を示す。この遺伝子フラグメントは、Sloning BioTechnology GmbHによって製造された。図1に示すDNAライブラリと比べて、2つの相違点がある。第一は、いつでもE.coli発現に最適化可能なコドンが非突然変異したアミノ酸位置にわたって用いられることである。第二は、Cysを除く異なるアミノ酸をそれぞれコードする19の異なるトリプレット(GAC、TTC、CTG、CAC、AAT、AGC、ACC、GCA、ATG、CCT、GTT、TGG、GAG、CAA、ATC、GGA、CGT、GCA、TAC)の混合物は、図1に示すものと同じである20のランダム化位置で採用されることである。アミノ酸の番号付けはここでSloning BioTechnology GmbHに採用される内部方式に対応することで、GlyNO.1は直接に上流のBstXI制限酵素認識部位に従う第一のアミノ酸コドンとする。
【図3】図3は、E.coliにおいて発現された後の組み換え型Aβ融合タンパク質Trx−Aβ28(A)及びMBP−Aβ40(B)のSEC溶出プロフィールを示す。合成型Aβ40と組み換え型Aβ融合タンパク質両方の純度は、SDS−PAGE分析(C)によって評価される。両方の融合タンパク質は、E.coli JM83の細胞質で発現された。French Pressure Cellで細胞を破壊された後、タンパク質はHis6-タグ親和性クロマトグラフィーによって精製された。その後、さらに、Trx−Aβ28の場合はSuperdex75HR10/30columnに適用し、ΜΒΡ−Aβ40の場合はSuperdex200HR10/30columnに適する。両方のタンパク質は、サイズ排除クロマトグラフィーにおいて主に単量体として溶出し、精製した後で本質に均質になる。Aβ40はKeck Foundationから得られ、HFIPで処理され、SpeedVacで蒸発し、最後に蒸留水に溶解された。15%ゲルはHFIP処理された後のAβ40、Trx−Aβ28、並びにIMAC精製及びSECで処理された後のMBP-Aβ40のサンプルを示す。Mはゲルの左側に表示されたkDaで対応するバンドのサイズを有する分子量マーカーを示す。
【図4】図4は、Lcn2突然変異タンパク質Hl−Gl、S1−A4、及びUS7(A)のSEC溶出プロフィールのオーバーレイと、15%SDS−PAGE(B)によって精製されたタンパク質の分析とを示す。その3つのLcn2突然変異タンパク質Hl−Gl、S1−A4、及びUS7は、E.coli JM83又はTGl−Fのペリプラズムにおいて発現し(ここに示すように)、且つStrep−tagII親和性クロマトグラフィーによって精製された。全ての3つの突然変異タンパク質は、主に単量体タンパク質としてSuperdex75HR10/30columnから10ml〜11mlの保持容量で溶出した。ピーク強度は所定の突然変異タンパク質の発現量によって異なる。(B)はStrep−tagII親和性精製及びSECで処理された、組み換え型野生型Lcn2(lanes1、5)及び突然変異タンパク質US7(lanes2、6)、Hl−Gl(lanes3、7)、並びにS1−A4(lanes4、8)の15%SDS−PAGE分析を示す。Lanes1〜4は2-メルカプトエタノールで還元されたLcn2突然変異タンパク質を示し、lanes5〜8は非還元条件におけるタンパク質を示す。Mはゲルの左側に表示されたkDaで対応するバンドのサイズを有する分子量マーカーを示す。
【図5】図5は、Lcn2突然変異タンパク質Hl−Gl、S1−A4、及びUS7がキャプチャーELISAsにおいて異なるビオチニル化Aβ標的との結合活性を示す。10g/mlのStrepMAB−Immoはマイクロタイタープレートに固定され、Strep−tagIIによって1μMLcn2突然変異タンパク質の獲得に用いられる。図A〜図Cには、Lcn2突然変異タンパク質S1−A4及びUS7の、(A)ビオチニル化Aβ40、(B)ビオチニル化TrxAβ28、及び(C)ビオチニル化ΜΒΡ−Aβ40への結合が示される。その結合は、ExtrAvidin/APによる培養及び後続のpNPPとの発色反応によって検出された。オボアルブミン(Ova)、チオレドキシン(Trx)、及びマルトース結合タンパク質(MBP)は陰性対照として用いられる。さらに、野生型(wt)リポカリンの結合は試験された。そのデータは一価結合モデルに適合される。図Dはターゲットとして、Lcn2Hl−Gl、ビオチニル化Aβ40、及びTrx−Aβ28で行われる同じELISAセットアップを示す。Aβ40に対して決定されるK値は、S1−A4の場合は2.7nM、US7の場合は6.8nM、及びHl−Glの場合は16.2nmであり、Trx−Aβ28に対応する値はそれぞれ1.9nM、2.4nM及び24.3nMである。MBP−Aβ40への結合は、S1−A4の場合は4.7nMのK値、及びUS7の場合は11.4nMのK値が示される。従って、Aβ16〜27の場合のK値は2.6nM及び2.1nMである。
【図6】図6は、直接ELISAにおいてLcn2突然変異タンパク質S1−A4とUS7との結合活性を示す。Aβ標的Trx−Aβ28及びMBP−Aβ40は、制御タンパク質マルトース結合タンパク質(MBP)と同様に、2μMでPBSに一晩固定された。結合したLcn2突然変異タンパク質は、NPPによる発色反応の後でストレプトアビジン/APを用いてこれらのStrep−tagIIによって検出された。コントロールとして、野生型(wt)リポカリンの結合は試験された。そのデータは一価結合モデルに適合される。Trx−Aβ28に対して決定されるK値は、S1−A4の場合は16.2nm、US7の場合は9.6nMであり、MBP-Aβ40に対応する値は149nM及び49.7nMである。
【図7】図7は、競合ELISAにおいてLcn2突然変異タンパク質S1−A4(A)とUS7(B)との結合活性を示す。StrepMAB−Immoは10g/mlでマイクロタイタープレートに固定され、Strep−tagIIによって1μΜLcn2突然変異タンパク質の獲得に用いられる。競合のために、トレーサーとして定濃度のビオチニル化Trx−Aβ28は種々の濃度の非標識Trx−Aβ28と混合された。結合したビオチニル化Trx−Aβ28は、続いて、NPPによる発色反応の後でExtrAvidin/APによる培養によって検出された。データはシグモイドの式を用いて適合される。K値は、S1−A4の場合は21.7nM、US7の場合は76.9nMである。
【図8】図8は、Biacore計測器によって10μl/minの流量で測定されたLcn2突然変異タンパク質S1−A4(A)及びUS7(B)の動態実時間解析を示す。MBP-Aβ40融合タンパク質は、アミン化学によってCMD200Iチップ(ARU=1455)に連結され、精製されたLcn2突然変異タンパク質のそれぞれは一連の異なる濃度で適用された。いずれの場合にも、測定信号はグレイラインとして示されるのに対して、曲線適合はブラックラインとして示される。両方の突然変異タンパク質のkon及びkoff速度は有意差がある(kon(Sl−A4)=0.48・10−1−1、kon(US7)=2.02・10−1−1、koff(Sl−A4)=8.36・10-5−1、koff(US7)=25.2・10-5−1)。しかし、全体のK値は、S1−A4の場合は1.74nM及びUS7の場合は1.25nMとして非常に類似している。
【図9】図9は、チオフラビンT凝集アッセイで試験されたLcn2突然変異タンパク質S1−A4及びUS7の機能活性を示す。100μMのAβ40は、37℃において振とうせずに、10μMのUS7、S1−A4、及び野生型(wt)リポカリンで、又はPBSで培養された。指定された時点でそれぞれ採取した20μlの各サンプルは、180μlの5μΜチオフラビンTと混合され、蛍光が450nmの励起波長及び482nmの発光波長で測定された。Lcn2突然変異タンパク質US7は、1:10の比率(US7:A40)で凝集の強力な抑制作用を示す。S1−A4はこの比例で凝集を著しく抑制できないが、1:2の比率(81-A4:Aβ40)で(図示せず)明確な抑制作用を発揮した。野生型Lcn2は、Aβ凝集に対する抑制効果を解明しなかった。
【図10】図10は、イオン交換クロマトグラフィーで処理された組み換え型ED−B(lane1)、FN7B8(lane2)クマシーブリリアントブルー、及びFN789(lane3)の、クマシーブリリアントブルーで染色した後のSDS−PAGE分析を示す。すべてのサンプルは、2-メルカプトエタノールによって還元された。M:分子量マーカー(Fermentas、St.Leon−Rot、Germany)。
【図11】図11は、Strep−tagII親和性精製したLcn2突然変異タンパク質N7A(lane1)、N7E(lane2)、N9B(lane3)、及びN10D(lane4)の、クマシーブリリアントブルーで染色した後のSDS−PAGE分析を示す。すべてのサンプルは、2-メルカプトエタノールによって還元された。M:分子量マーカー(Fermentas、St. Leon−Rot、Germany)。
【図12】図12は、ELISAにおける結合活性を示す。マイクロタイタープレートは、精製したタンパク質FN7B8及びFN789でコーティングされ、選択したLcn2突然変異タンパク質の希釈系列で培養され、続いてストレプトアビジン−アルカリ−ホスファターゼ結合及びpNPP基質で検出された。組み換え型Lcn2突然変異タンパク質N7A、N9B、及びN10Dは、ED−Bが欠失して、且つ陰性対照として機能することで、このアッセイにおいてFN789に対して無視できるシグナルを解明した。
【図13】図13は、Biacore計測器で測定されたLcn2突然変異タンパク質N9Bの動態実時間解析を示す。FN7B8は、アミン化学によってCMD200mセンサーチップ(ARU=500)に連結され、精製されたLcn2突然変異タンパク質は種々の濃度で適用された。いずれの場合にも、測定信号はグレイラインとして示されるのに対して、曲線適合はブラックラインとして示される。この一連の曲線から決定された速度定数は表2(実施例17)に記載される。
【図14】図14は、Biacore計測器で測定されたLcn2突然変異タンパク質N7Eの動態実時間解析を示す。FN7B8は、アミン化学によってCMD200mセンサーチップ(ARU=500)に連結され、精製されたLcn2突然変異タンパク質は種々の濃度で適用された。いずれの場合にも、測定信号はグレイラインとして示されるのに対して、曲線適合はブラックラインとして示される。この一連の曲線から決定された速度定数は表2(実施例17)に記載される。
【図15】図15は、Biacore計測器で測定されたLcn2突然変異タンパク質N7Aの動態実時間解析を示す。FN7B8は、アミン化学によってCMD200mセンサーチップ(ARU=500)に連結され、精製されたLcn2突然変異タンパク質は種々の濃度で適用された。いずれの場合にも、測定信号はグレイラインとして示されるのに対して、曲線適合はブラックラインとして示される。この一連の曲線から決定された速度定数は表2(実施例17)に記載される。
【図16】図16は、Biacore計測器で測定されたLcn2突然変異タンパク質N10Dの動態実時間解析を示す。FN7B8は、アミン化学によってCMD200mセンサーチップ(ARU=500)に連結され、精製されたLcn2突然変異タンパク質は種々の濃度で適用された。いずれの場合にも、測定信号はグレイラインとして示されるのに対して、曲線適合はブラックラインとして示される。この一連の曲線から決定された速度定数は表2(実施例17)に記載される。
【図17】図17は、ヒトLcn2突然変異タンパク質に指定された、Sl−A4(配列番号:39)、US7(配列番号:41)、Hl−Gl(配列番号:43)、N7A(配列番号:20)、N7E(配列番号:22)、N9B(配列番号:24)、及びN10D(配列番号:26)とLcn2との配列アラインメントを示す。配列の下方における最後の一列は、リポカリンの二次構造特性(Schonfeld et al. (2009) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 106, 8198−8203)を示す。
【図18】図18は、Lcn2突然変異タンパク質HIGA及びHIGV(A)のSEC溶出プロフィールのオーバーレイと、15%SDS−PAGE(B)によって精製されたタンパク質の分析とを示す。その2つのLcn2突然変異タンパク質HIGA及びHIGVは、E.coli JM83において発現し、且つStrep−tagII親和性クロマトグラフィーによって精製された。両方の突然変異タンパク質は、主に単量体タンパク質としてSuperdex75HR10/30columnから10ml〜11mlの保持容量で溶出した。ピーク強度は突然変異タンパク質の発現量によって異なる。(B)はStrep−tagII親和性精製及びSECで処理された、組み換え型Lcn2突然変異タンパク質Hl−Gl、HIGA及びHIGVの15%SDS−PAGE分析を示す。全ての3つのLcn2突然変異タンパク質は、2-メルカプトエタノールで還元条件において示される。Mは分子量マーカーを表す。
【図19】図19は、Lcn2突然変異タンパク質HIGA、HIGV、及びHl−GlがキャプチャーELISAsにおいてビオチニル化Aβ標的Aβ40(A)及びTrx−Aβ28(B)との結合活性を示す。StrepMAB−Immoは10g/mlをマイクロタイタープレートに固定され、Strep−tagIIによって1μMLcn2突然変異タンパク質の獲得に用いられる。希釈系列に適用されたビオチニル化標的の結合は、その後、ExtrAvidin/APによる培養及び後続のpNPPとの発色反応によって検出された。ビオチニル化オボアルブミン(Ova)及びチオレドキシン(Trx)は陰性対照として用いられ、Lcn2突然変異タンパク質との結合がないと示される(図示せず)。そのデータは一価結合モデルに適合される。Aβ40に対して決定されるK値は、HIGAの場合は4.2nm、H1GVの場合は4.9nM、Hl−Glの場合は21.5nMであり、Trx−Aβ28に対応する値はそれぞれ3.8nM、4.2nm、及び24.4nMである。
【図20】図20は、BiacoreX計測器によって20μl/minの流量で測定されたLcn2突然変異タンパク質HIGA(A)及びH1GV(B)の動態実時間解析を示す。MBP-Aβ40融合タンパク質は、アミン化学によってCMD200Iチップ(ARU=1316)に連結され、精製されたLcn2突然変異タンパク質のそれぞれは一連の様々な濃度で適用された。いずれの場合にも、測定信号はグレイラインとして示されるのに対して、曲線適合はブラックラインとして示される。両方の突然変異タンパク質のkon及びkoff速度は以下のように計算される。即ち、kon(HlGA)=5.77・10−1−1、kon(HlGV)=6.84・10−1−1、koff(HlGA)=2.75・10-5−1、koff(HlGV)=7.26・10-5−1。全体のK値は、HIGAの場合は0.476nM、H1GVの場合は1.06nMである。
【図21】図21は、高濃度で測定されたトレースのために延長した解離時間を用いて固定されたAβ40によって、BiacoreT100計測器で測定されたLcn2突然変異タンパク質HIGAの動態実時間解析を示す。標的ペプチドAβ40は、アミン化学によってBiacoreCM5チップ(ARU=325)に連結され、精製されたLcn2突然変異タンパク質HIGAは30μl/minの流量で適用された。低いkoff速度を正確に測定するため、解離は試験された最高濃度で7200s行われ、kon速度はLcn2突然変異タンパク質HIGAの希釈系列を用いて300sの会合及び解離時間で測定された。HIGAの動態値は以下のように決定される。即ち、kon=1.25・10−1−1、koff=1.18・10-5−1、K=0.095nM。
【図22】図22(A)は、チオフラビンT凝集アッセイで試験されたLcn2突然変異タンパク質HIGAの機能活性を示す。500μlの1mg/ml単量体Aβは、異なるモル比のLcn2突然変異タンパク質HIGAの欠失又は存在下で、37℃にて0.5xPBSにおいて攪拌しながら培養された。凝集反応は3連で調製された。蛍光測定のために定期的な間隔で採取した20μlのサンプルは、それぞれ0.5xPBSにおいて50μMの終末濃度で180μlThTと混合され、450nmの励起波長及び482nmの発光波長で分析された。Lcn2突然変異タンパク質HIGAは、等モル比で凝集の強力阻害作用を示す。10:2(Aβ40:H1GA)のサブモル比で、凝集は依然として大幅に減少した。(B)は対照的に、陰性対照として等モル量のBSAもLcn2もないものは、Aβ40の凝集に対する抑制作用を持っている。
【図23】図23は、異なるELISAセットアップ及びLcn2突然変異タンパク質HIGA及びH1GVに対する表面プラズモン共鳴測定で検出されたK値をまとめた図である。
【図24】図24は、Lcn2突然変異タンパク質S1−A4(配列番号:39)、US7(配列番号:41)、Hl−Gl(配列番号:43)、H1GA(配列番号:50)、H1GV(配列番号:52)、N7A(配列番号:20)、N7E(配列番号:22)、N9B(配列番号:24)、及びN10D(配列番号:26)とLcn2(配列番号:44)との配列アラインメントを示す。
【図25】図25は、突然変異タンパク質H1GA(配列番号:50)及びH1GV(配列番号:52)とそれらの前駆体Hl−Gl(配列番号:43)及びwtLcn2(配列番号:44)との相互配列アラインメント。
【図26】図26は、ELISAにおいてLcn2変異N7EのFN7B8に対する特異的な結合活性を示す。マイクロタイタープレートは、FN7B8、FN789、BSA又はオボアルブミンでコーティングされ、N7Eの希釈系列によって培養され、続いてストレプトアビジン−アルカリ−ホスファターゼ結合及びpNPP基質で検出された。Lcn2変異N7Eは、このアッセイにおいてFN789、BSA、及びオボアルブミンに対して無視できるシグナルを解明した。
【図27】図27は、BiacoreX計測器によって測定されたLcn2変異N7A(A)、N7E(B)、N9B(C)、及びN10D(D)の動態実時間解析を示す。単一のフィブロネクチンドメインED−Bは、アミン化学によってCMD200mセンサーチップ(ARU=180)に連結され、精製されたLcn2変異は、種々の濃度で適用された。測定信号は、曲線適合とともにトレースとして示される。これらのセンサーグラムから決定された速度定数は表3(実施例24)に記載される。
【図28】図28は、Lcn2変異N7A(A)、N10D(B)、N9B(C)、及びN7E(D)の分析用サイズ排除クロマトグラフィーを示す。アフィニティー精製したタンパク質は、TBSと平衡されてスーパーデックスS75 10/30 カラムに適用された。矢印は、カラムの排除体積(6.7ml)を示す。分析用ゲルろ過は、4つのLcn2変異のそれぞれに対して顕著なピークを生じさせる。そのタンパク質の見掛け分子量は、N7Aの場合は21.0kDa、N10Dの場合は21.3kDa、N9Bの場合は21.7kDa、N7Eの場合は21.7kDaであり、単量体形態のみ存在することが示される。
【発明を実施するための形態】
【0152】
(実施例1)
突然変異体Lcn2ファージディスプレイライブラリの構造
Lcn2変異のコンビナトリアルライブラリは、クローン化cDNA(Breustedt et al. (2006) Biochim. Biophys. Acta 1764, 161−173)に基づいて生成された。そのクローン化cDNAは、シングル不対チオール側鎖(Goetz et al. (2000) Biochemistry 39, 1935−1941)を除去するためにアミノ酸置換Cys87Serを運ぶとともに、第2のBstXl制限酵素認識部位を導入するためにアミノ酸置換Gln28Hisを運んだ。この領域の突然変異誘発及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アセンブリは、基本的に(Beste et al. (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96, 1898−1903、 Skerra (2001) J. Biotechnol. 74, 257−275)に公開された方法に従って行っており、このとき、図1に示すように、オリゴデオキシヌクレオチド(配列番号:1-10)とのワンポット増幅反応を使用した。オリゴデオキシヌクレオチドは、配列番号:1-4のプライマーがコード鎖に対応してかつそれぞれアミノ酸位置36、40、41、49、52、68、70、72、73、77、79、81、96、100、103、106、125、127、132、又は134で縮重したコドンを運ぶ一方、配列番号:5-8のプライマーが非コード鎖に対応して且つ縮重したコドンやアンチコドンを運ばないように設計された。配列番号:9及び配列番号:10の2つの隣接するプライマーは、過剰に使用され、組み立てられたランダム化遺伝子フラグメントの増幅に役立つ。上記のように(Schlehuber et al. (2000) J. Mol. Biol. 297, 1105−1120)、全てのPCRステップは、Go−TaqホットスタートDNAポリメラーゼ(Promega, Mannheim, Germany)を用いて行った。
【0153】
縮重したコドンを運ばないオリゴデオキシヌクレオチドは、HPLCグレードでMetabion(Munich, Germany)から購入された。NNK含有オリゴデオキシヌクレオチドは、同じベンダーから脱塩して得られ、さらに尿素PAGEによって精製された。得られたDNAライブラリは、BstXI(Promega, Mannheim, Germany)で切断され、ファージミドベクターphNGAL102(配列番号:11)にクローニングされた。ここで、ファージミドベクターphNGAL102は、遺伝子発現ベクターpASKl l l(Vogt and Skerra (2001) J. Mol. Recognit. 14 (1), 79-86)に基づいて、OmpAシグナルペプチド、アンバーコドンに続く変性された成熟Lcn2、及び糸状バクテリオファージM13の遺伝子III外被タンパク質におけるC末端フラグメントからなる融合タンパク質、即ち、上記のようなビリン結合タンパク質(Beste et al., supra、 Skerra, supra)に類似する融合タンパク質をコードした。8.4μgの消化PCR産物と94μgの消化プラスミドDNAとのライゲーション混合物によってE.coli XLl−Blue(Bullock et al. (1987)Biotechniques 5,376−378)をエレクトロポレーションした後、1x1010の形質転換細胞を得た。
【0154】
また、図2に示されるクローニングされた合成Lcn2ランダムライブラリは、Sloning BioTechnology社のGmbH(Puchheim, Germany)から得られた。その2つのBstXI制限酵素認識部位に挟まれた中央遺伝子カセットは、適切なプライマー(配列番号:9及び配列番号:10)を用いて20サイクルでPCRを介して増幅するとともに、1.7x1010の独立した形質転換細胞に対応して複雑性を有するライブラリが得られるphNGAL108(配列番号:12)にサブクローニングした。遺伝子発現ベクターpASK75(Skerra (1994) 遺伝子 151、131〜135)に基づくphNGAL108は、OmpAシグナルペプチド、変性した成熟Lcn2、及びアンバーコドンに続くStrep−tag、及び糸状バクテリオファージM13(Vogt and Skerra (2004) ChemBioChem 5, 191−199)の全長の遺伝子III外被タンパク質からなる融合タンパク質をコードした。
【0155】
ライブラリ生成に次のステップは、Lcn2ライブラリの両方に対して同様に行われた。ファージ錠剤の融合タンパク質としてリポカリン突然変異タンパク質ライブラリをそれぞれコードするphNGAL102又はphNGAL108の基質にナナフシのベクターと形質転換された細胞を含む100mlの培養物は、無菌三角フラスコに移され、抗生物質選択圧がない2YT培地において、160rpm、37℃で1時間培養した。VCS−M13ヘルパーファージによって感染する前に、培養物は、対応する抗生物質を添加し、0.6のOD550に達するまで同一の条件下でさらに培養することことで、2YT培地において0.1のOD550に希釈した。約10の感染の多重度でVCS−M13ヘルパーファージ(Agilent Technologies, La Jolla, USA)によって感染された後、その培養物は、37℃、100rpmでさらに30分間振り混ぜた。その後、培養器温度が26℃に低下させて且つシェーカー速度が再び160rpmに増加させ、25μg/l(ジメチルホルムアミドに200μg/mlの原液125μl、培養物1リットル当たりのDMF)のアンヒドロテトラサイクリン(ACROS Organics, Geel, Belgium)を添加することによって遺伝子発現を誘導した後、10分間後でカナマイシン(70μg/ml)を添加した。培養は26℃、160rpmでさらに12時間〜15時間続いた。
【0156】
完全培養物からの細胞を遠心分離(30分間、18000g、4℃)によって沈殿させた。ファージミド粒子を含む上清は、滅菌濾過(0.45μM)され、1/4量の20%(w/v)PEG8000、15%(w/v)のNaClと混合され、さらに氷上で少なくとも2時間培養した。遠心分離(30分間、18000g、4℃)した後、1リットルの培養物から沈殿したファージミド粒子を、50mMのベンズアミジン(Sigma)及び1μg/mlのペファブロック(Roth, Karlsruhe, Germany)が含まれる冷BBS/E(200mMのホウ酸ナトリウム、160mMのNaCl、1mMのEDTA(pH 8.0))30mlに溶解させた。溶液を1時間氷上で培養した。未溶解成分(10分間、43000g、4℃)を遠心分離した後、各上清を新しい反応容器に移した。
【0157】
1/4量の20%(w/v)PEG8000、15%(w/v)のNaClを加え、ファージミドがアリコートされたまでファージミド粒子を再沈殿させるように氷上で60分間培養し、さらに貯蔵するために−80℃で凍結した。最初の選択サイクルファージミドを解凍して遠心分離(30分間、34000g、4℃)させるため、上清を除去し、沈殿したファージミド粒子を50mMベンズアミジンが含まれるPBS合計で400μlに溶解させ混合した。氷上で30分間培養した後、残留凝集物を除去するために溶液を遠心分離し(5分間、18500g、4℃)、さらに上清をファージディスプレイ選択に直接に用いた。
(実施例2)
異なるフォーマットでAβ標的の調製
成熟β−アミロイド配列(Dodel et al. (2003) Lancet Neurology 2, 215−220)のアミノ酸1〜40に対応するAβ40ペプチド(配列番号:29)は、リジンスペーサ(Peptide Speciality Laboratory, Heidelberg, Germany)を介して接続されたC末端ビオチン基を有するとともに非標識の形(W. M. Keck Laboratory, New Haven, USA)で凍結乾燥されたペプチドの合成品として購入された。均一単量体のAβ40は5mg以下のペプチドを0.5mlの1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP、 Sigma−Aldrich, Steinheim, Germany)に室温で少なくとも0.5時間溶解させることによって得られた。その後、HFIPをSpeedVac濃縮器で蒸発させ、Aβ40は冷水で15分間超音波処理(Bandelin, Sonorex, RK100, Germany)された後、適当量の蒸留水に溶解した。0.22μMフィルター(Spin−X Centrifuge Tube filter、 Corning, USA)ろ過した後、タンパク質の濃度は、1490M−1cm−1の計算された吸光係数を用いて280nmで吸収測定によって検出された(Gasteiger et al. (2003) ExPASy: the proteomics server for in−depth protein knowledge and analysis. Nucleic Acids Res. 31, 3784−3788, http://www.expasy.ch/tools/protparam.html)。
【0158】
N−末端ペプチドAβ1-11(配列番号:30)及び中央ペプチドAβ16-27(配列番号:31)のようなβ−アミロイドペプチドの短いバージョンは、また、Peptide Speciality Laboratoryから購入した。これらの短いバージョンは、予めHFIP処理されなかった選択のバッファーに溶解した。
【0159】
合成ペプチドに加えて、異なる組み換え型Aβ融合タンパク質をコードする2つのベクターは、細菌発現の目的で構成された。即ち、その1つは、マルトース結合タンパク質(MBP,pMBP−His,配列番号:32)を有する融合タンパク質はHortschanskyら((2005)Protein Sci. 14, 1753−1759)によって構成され、pASK75−MBP−Abeta40(配列番号:33)を得た。もう1つは、成熟アミロイド ペプチドのアミノ酸1〜28がチオレドキシン(Trx, pASK75−TrxH6, 配列番号:35)の活性部位ループに挿入されたpASK75−TrxAbeta28H6(配列番号:34)は、Morettoら((2007) J. Biol. Chem. 28211436−11445)によって構成された。
【0160】
マルトース結合タンパク質の遺伝子でフレームに延長したN末端を運ぶヒトAβ40の連続クローニングは、ベクターpASK75(Skerra (1994)Gene 151, 131−135)の誘導体である新たなプラスミドpA8K75−MBP−Aβ40を得られた。このベクターは、簡易なタンパク質精製のためのHis6−tag、融合タンパク質を切断するためのタバコエッチ病ウィルス(TEV)認識部位、及びヒトAβ40の配列が付けられるマルトース結合タンパク質の融合タンパク質をコードした。そのベクターは、テトラサイクリンプロモーター/オペレーターシステムの厳密な制御下にあり、高収率でE.coliの細胞質に融合蛋白質の発現を可能にする。
【0161】
成熟アミロイドペプチド(Aβ28)のアミノ酸 1〜28をコードする配列は、ベクターpASK75−Trx−Abeta28H6が得られるチオレドキシン(ヌクレオチド位置99〜105、アミノ酸残基34及び35に対応する)の活性部位ループにおけるユニークなCpol部位によって、チオレドキシンループに挿入された。
【0162】
Aβ融合タンパク質、Τrx−Aβ28、及びMBP-Aβ40は、ともに非融合制御タンパク質Trx 及びMBPと同様に、37℃でE.coli JM83 (Yanisch−Perron et al. (1985)Gene 33, 103−119)において発現した。タンパク質発現は、200μg/lのアンヒドロテトラサイクリン(aTc、 Acros, Geel, Belgium)を加えて無水ジメチルホルムアミド(DMF、Sigma−Aldrich, Steinheim, Germany)に溶解され、さらに攪拌しながら3時間継続的な培養されることによって、0.5の光学濃度OD550で誘導された。細胞は、4200gで4℃ において20分間遠心分離することによって回収された。2Lの培養物からの細胞ペレットを、20mlの溶解バッファー(100mM Tris/HCl pH 8.0、50mM NaCl、1mM EDTA)に再懸濁し、得られた懸濁液をFrench Pressure Cellを介して3つの通路によって均質化させた。不溶性物質を遠心分離(34500g、4℃、20分間)で除去し、上清を0.45μMフィルター (Filtropur S 0.45; Sarstedt, Nuembrecht, Germany)で濾過し、さらに各タンパク質のHis6−tagによって親和性精製に用いた。固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)で処理された融合タンパク質を、さらにサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって精製した。
【0163】
タンパク質濃度は、MBP(配列番号:32)用66350 M−1cm−1、ΜΒΡ−Aβ40(配列番号:33)用69330M−1cm−1、Τrx−Aβ28 (配列番号:34)用15470M−1cm−1、及びTrx (配列番号:35)用13980M−1cm−1(Gasteiger et al., supra)の計算された吸光係数を用いて280nmでの吸収測定によって検出された。
【0164】
次の実験のためにAβ融合タンパク質、TrxAβ28、MBP-Aβ40は、ともに制御タンパク質として機能するオボアルブミン(Ova、 Sigma− Aldrich, Steinheim, Germany)、Trx、及びMBPと同様に、モル比2:1(標識試薬: 標的タンパク質)でビオチン又はジゴキシゲニン(DIG)によって標識された。
【0165】
そのため、無水ジメチルホルムアミド(DMF ; Sigma−Aldrich, Steinheim, Germany)又はジメチルスルホキシド(DMSO ; Sigma−Aldrich, Steinheim, Germany)に溶解されたD−ビオチノイル−e−アミノカプロン酸−N−ヒドロキシルスクシンイミドエステル(Roche Diagnostics, Mannheim, Germany)又はジゴキシゲニン−3−0−メチルカルボニル−e−アミノカプロン酸−N−ヒドロキシルスクシンイミドエステル(Roche Diagnostics, Mannheim, Germany)を、タンパク質に対して2倍量モル比でPBS(4mM KHP0、16mM NaHP0、115mM NaCl、pH7.4)に加えた。その混合物を室温で1時間回転させた。その後、1M Tris/HCl pH8.0を10mMの終末濃度まで添加し、残留活性NHSエステル基を飽和させるように10分間培養し、さらに標識されたタンパク質をSuperdex 75 HR 10/30 column(Amersham−Pharmacia, Freiburg, Germany)でSECによって精製された。標的としてファージディスプレイ選択に用いられるために、まず、Τrx−Aβ28をジゴキシゲニンでで、1時間標識し、その後、任意の不対Cys残基をブロックするするためにモルで50倍過剰のヨードアセトアミド(Sigma−Aldrich, Steinheim, Germany)を加えた後、1時間培養した。その後、変異したタンパク質を、1M Tris/HCl pH8.0で処理して上記のように精製した。
(実施例3)
ファージディスプレイによるAβ40ペプチドに対する親和性を有するLcn2突然変異タンパク質の選択
各パニングサイクルのために、PBS(4mM KHP0、16mM NaHP0、115mM NaCl、pH7.4)における約1012組み換え型ファージミドは、PBS/T(0.1%(v/v)のTween20[ポリオキシエチレン ソルビタンラウリン酸モノエステルを含むPBS、AppliChem, Darmstadt, Germany])において2%(w/v)BSAで1時間ブロッキングされた。50の部分及び25μLのストレプトアビジン被覆電磁ビーズ懸濁液(Dynaビーズ M−280 Streptavidin; Dynal Biotech, Invitrogen, Karlsruhe, Germany and Streptavidin Magnetic Particles; Roche Diagnostics, Mannheim, Germany)は、それぞれPBS/Tで洗浄され、さらにPBS/Tにおいて2%(w/v)BSAで1時間ブロックされた。25のブロックされたビーズは、ビーズの特異的なファージミドを除去するためにブロックされたファージミドの前吸着に用いられ、50のブロックされたビーズは、その後、選択サイクルに用いられる。
【0166】
ブロックされたファージミドを、洗浄され且つブロックされた25のストレプトアビジン被覆磁気ビーズとともに30分間培養した。ビーズは、その後、単一チューブ磁気スタンド(Promega, Mannheim, Germany)で2分間引き下ろされ、ビーズに結合しないファージミドを含有する上清は、全量400μLを100nmの実施例2からのビオチニル化されたAβ40で1〜2時間培養された。続いて、ファージミドとペプチド標的との混合物は50のブロックされたビーズで0.5時間培養された後、単一チューブ磁気スタンで2分間引き下ろされた。非結合ファージミドを含有する上清を捨てた。電磁ビーズに結合した標的/ファージミド複合体は、400μLのPBS/Tで10回洗浄された後、結合したファージミドは350μLの0.1M、pH2.2グリシン/HClで、10分間回転しながら溶出し、続いて55μLの0.5Mトリス塩基で即時中和された。また、溶出は変性条件においてPBSに400μLの4M尿素で30分間行った後、1mlのPBSで希釈された。変性条件におて酸や尿素でされた溶出は選択サイクル1及び2に適用される一方、選択サイクル3及び4の溶出は、400μLの100μM非ビオチニル化されたAβ40を結合したファージミドを有するビーズに加えて1時間回転させることによって競争条件において行った。合計で、4回の選択サイクルを行った。
【0167】
溶出したファージミドを増幅されるため、E.coli XL−1 Blueの指数増殖期培養物を37℃で30分間感染させた。残りのビーズに結合したファージミドは、指数増殖期のE.coli XL−1 Blueを直接にそのビーズに加えることによって溶出した。4℃で遠心分離した後、細菌ペレットを適当量の2x YT培地(16g/L Bacto Tryptone、10g/L Bacto Yeast Extract、5g/L NaCl、pH7.5)に再懸濁し、LB−Cam plates(10g/L Bacto Tryptone、5g/L Bacto Yeast Extract、5g/L NaCl、15g/L Bacto Agar、35mg/L クロラムフェニコール、pH7.5)に播種し、そして、32℃で14〜16時間培養した。 次に、細胞をプレートから掻き取り、組換えファージミドの脱出や再増幅のために用いる。
【0168】
濃縮したファージミドプールのスクリーニングは、第4のパニングステップの後でスクリーニングELISA(実施例5)によって行った。
(実施例4)
ファージディスプレイによるTrx−Αβ28融合タンパク質に対して親和性を有するLcn2突然変異タンパク質の選択
各パニングサイクルのために、まず、PBS(4mMKHP0、16mMNaHP0、115mM NaCl、pH7.4)における約1012の組み換え型ファージミドをサイクル1及び2のPBS/T(0.1%(v/v)のTween20を含有するPBS)に2%(w/v)のBSAで1時間ブロックした。選択サイクル3以降、PBS/Tにおける2%(w/v)のスキムミルク(Sucofin, TSI, Zeven, Germany)をブロッキング試薬として用いた。50及び25μLのanti−DIG−IgG被覆電磁ビーズ懸濁液(Europa Bioproducts Ltd, Cambridge, UK)は、PBS/Tで洗浄され、PBS/T又はスキムミルクに2%(w/v)のBSAでそれぞれ1時間ブロックした。
【0169】
ブロックされたファージミドを、洗浄され且つブロックされた25μLのanti-DIG-IgG被覆電磁ビーズとともに30分間培養した。ビーズは、その後、単一チューブ磁気スタンド(Promega, Mannheim, Germany)で2分間引き下ろされ、ビーズに結合しないファージミドを含有する上清は、Trx特異的なファージミドを除去するために、15μMの実施例2からの非標識Trxで30分間培養された。実施例2からの、脱酸素され且つルボキシメチル化したTrx−Aβ28を、100nMの終末濃度まで加え、混合液を全量400μLで1時間〜2時間培養した。その後、ファージミドとTrxとTrx−Aβ28との混合物を、50μL部分からの乾燥且つブロックされたビーズで0.5時間培養した。ビーズ は、その後、単一チューブ磁気スタンドで2分間引き下ろされた。結合しないファージミドを含有する上清を捨てた。結合したファージミドを含有する電磁ビーズは500μLのPBS/Tで10回洗浄された。 その後、結合したファージミドはPBSに400μLの4Mの尿素で30分間回転しながら溶出した後、1mlのPBSで希釈された。合計で、6回の選択サイクルを行った。
【0170】
溶出したファージミドを増幅されるために、E.coli XL−1Blueの指数増殖期培養物を37℃で30分間感染させた。残りのビーズに結合したファージミドは、指数増殖期のE.coli XL−1 Blueを直接にそのビーズに加えることによって溶出した。4℃で遠心分離した後、細菌ペレットを適当量の2x YT培地(16g/L Bacto Tryptone、10g/L Bacto Yeast Extract、5g/L NaCl、pH7.5)に再懸濁し、LB−Cam plates(10g/L Bacto Tryptone、5g/L Bacto Yeast Extract、5g/L NaCl、15g/L Bacto Agar、35mg/L クロラムフェニコール、pH7.5)に播種し、そして、32℃で14〜16時間培養した。次に、細胞をプレートから掻き取り、組換えファージミドの脱出や再増幅のために用いる。
【0171】
濃縮したファージミドプールのスクリーニングは、第6のパニングステップの後でフィルタサンドイッチコロニースクリーニングアッセイ(実施例6)によって行った。
(実施例5)
スクリーニングELISAによるAβに対して特異性を有するLcn2突然変異タンパク質の同定
実施例3に示すように、Aβ40とファージミド選択の4つのサイクル後、Lcn2突然変異タンパク質の濃縮したプールはphNGAL98(配列番号:27)にサブクローニングされ、E.coliスーパ株TG1−Fの形質転換に用いられ(a derivative of E.coli K12 TGI (Kim et al. (2009) J. Am. Chem. Soc. 131, 3565−3576)、そして、スクリーニングELISAに供した。
【0172】
このため、濃縮したプールからの単一コロニーは、96− well plates (Multiple Well Plate 96 round bottom with lid、 Sarstedt, Nuembrecht, Germany)において、100μLのTB−Amp培地(12g/LのBacto Tryptone、24g/Lの 、55mMグリセロール、17mMのKHP0、72mMのKHP0、100 mg/Lのアンピシリン)に37℃で一晩成長した。100μLのTB−Amp培地を有する新たなプレートに一晩培養した培養物を接種し、22℃又は37℃で指数増殖期まで成長させた。Lcn2突然変異タンパク質のペリプラズム発現は、無水ジメチルホルムアミド(DMF、Sigma− Aldrich、Steinheim, Germany)に溶解して、20μLの0.2μg/mlアンヒドロテトラサイクリン(aTc、 Acros, Geel, Belgium)によって20℃で13〜17時間誘導した。ペリプラズムタンパク質は、1mg/mlのリゾチームを含有するBBS(800mMのホウ酸ナトリウム、640mMのNaCl、8mMのEDTA、pH8.0)40μLで4℃において、750rpm(Thermomixer Comfort, Eppendorf, Hamburg, Germany)で1時間攪拌しながら培養することによって放出された。40μLの10 %(w/v)BSAでPBS/T(4mMのKHP0、16mMのNaHP0、115mMのNaCl、pH7.4、0.05 %(v/v)のTween 20)に4℃、750rpmで1時間ブロッキングした後、そのプレートを4 ℃、3000gで10分間遠心分離した。 その上清をELISAに用いた。
【0173】
C末端のStrep−tag II (Schmidt and Skerra (2007) Nat. Protoc. 2, 1528−1535)を運ぶLcn2突然変異タンパク質を選択的に獲得するために、96−wellMaxiSorp ポリスチレンマイクロタイタープレート(Nunc, Langenselbold, Germany)は、10μg/mlのStrepMAB−Immo (IB A, Gottingen, Germany)でPBSに4℃において一晩コーティングされ、3%(w/v)のBSAでPBS/T(0.1 %(v/v)のTween 20を有するPBS)に室温において1時間ブロックした。PBS/Tで3回の洗浄ステップの後、上記するような120μLの細胞抽出物をそれぞれのウエルに提供して300rpmで1.5時間培養した。洗浄した後、実施例2からのビオチニル化されたAβ40を0.5μMの濃度で加えて1時間培養した。コントロールとして、Aβ40の代わりにビオチニル化されたOvaを用いた。そのウエルを再び洗浄し、結合したビオチニル化ペプチド又はタンパク質 を、1:5000希釈された50μLのExtrAvidin/AP接合物(Sigma−Aldrich, Steinheim, Germany)でPBS/Tに1時間検出した後、100μLの0.5mg/mlパラニトロフェニルリン酸塩(AppliChem, Darmstadt, Germany)の存在下で、100mMのTris/HCl、pH8.8、100mMのNaCl、5mMのMgClに1時間シグナル形成した。405nmでの吸収はSpectraMax 250 reader (Molecular Devices, SunnyVale, USA)に測定された。
【0174】
また、実施例2からの0.5μMの非ビオチニル化されたAβ40は、96−well MaxiSorpポリスチレンマイクロタイタープレート(Nunc, Langenselbold, Germany)で直接に固定されてブロッキングされた。上記のよな細胞抽出物によって培養して洗浄した後、結合したLcn2突然変異タンパク質は、1:1500 希釈されたStreptactin/AP接合物(IB A, Gottingen, Germany)を用いるStrep−tag IIによって検出された。コントロールとして、0.5μMのOvaをELISA plateで固定した。
(実施例6)
フィルターサンドイッチコロニースクリーニングアッセイによるTrx−Aβ28に対して特異性を有するLcn2突然変異タンパク質の同定
実施例4に示すように、Trx−Aβ28とファージミド選択の6つのサイクル後、突然変異したLcn2遺伝子カセットは、BstXI(Fermentas、St. Leon−Rot、Germany)によって、プラスミドphNGAL124(配列番号: 42)でサブクローニングされた。そのプラスミドphNGAL124(配列番号: 42)は、OmpAシグナルペプチドの融合物と、C末端Strep−tag II (Schmidt 及び Skerra (2007) Nat. Protoc. 2, 1528−1535)の後にアンバー終止コドンを有するLcn2コーディング領域と、連鎖球菌性のタンパク質G(Schlehuber ら. (2000) J. Mol. Biol. 297, 1105−1120)からのアルブミン結合ドメイン(ABD)のための遺伝子とをコードする。
【0175】
その後、フィルターサンドイッチコロニースクリーニングアッセイを行った。ここでは、Lcn2−ABD融合タンパク質は、親水性フィルター膜(PVDF type GVWP,0.22μL、Millipore,Schwalbach,Germany)に播かれたコロニーから放出され、Schlehuberら((2000) J.Mol.Biol. 297,1105-1120) に詳細に記載された手順で、ヒト血清アルブミン(HSA, Sigma- Aldrich,Steinheim,Germany)によりコートされた基礎の第2の膜(Immobilon-P膜,0.45μL、Millipore,Schwalbach,Germany)に機能的に捕獲された。この膜は、実施例2からの100nMのDIGで標識されたTrx−Aβ28のPBS/T溶液を用いて1時間プローブされた。結合した標的接合体は、抗DIG Fab/アルカリホスファターゼ(AP)接合体(Roche Diagnostics,Mannheim,Germany)を用い、続いて、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸塩、4−トルイジン塩(BCIP、AppliChem,Darmstadt,Germany)及びニトロブルーテトラゾリウム(NBT、AppliChem,Darmstadt, Germany)を用いた発色反応により検出された。この膜における強い発色シグナルを用いてスポットを同定して、対応するコロニーが第1のフィルターから回収され、2次的なコロニースクリーンにおける対象比較のための増殖を行った。
【0176】
この目的のため、単離された細菌、及び野生型リポカリン等のコントロールLcn2突然変異タンパク質を発現する細菌は、新しい親水性の膜に点刻され、小さいコロニーが見えるまで増殖される。結合は、DIGで標識されたTrx−Aβ28、並びにDIGで標識された制御タンパク質であるTrx及びOVaの両方で試験された。この2次的なスクリーンにおけるTrx−Aβ28標的のための特異的なシグナルを起こしたlcn2突然変異タンパク質は、さらにプラスミドの単離及びその後の配列分析のために増やされた。
(実施例7)
Aβ及びED−Bに特異的なLcn2突然変異タンパク質の可溶性物質の生成及びその精製
組み換え型Lcn2及びその突然変異タンパク質は、E.coli BL21(Studier及びMoffat(1986)J.Mol.Biol.189,113−130),E.coli W3110(Bachmann (1990) Microbiol.Rev.54,130−197),E.coli JM83 (Yanisch−Perron ら.(1985) Gene 33,103−119)又はE.coli supE strain TG1−F(アクリジニウムオレンジを用いてそのエピソームから取り除かれたE.coli K12 TGIの誘導体 [Kimら. (2009)J.Am.Chem.Soc.131,3565−3576])におけるペリプラズム分泌により産生された。可溶性タンパク質の発現のために、成熟Lcn2タンパク質を有するOmpAシグナルペプチド(配列番号:28)とC末端Strep−tag IIの融合体をコードするプラスミドphNGAL98(配列番号:27)が用いられた。そのプラスミドは、突然変異した遺伝子カセットの一方向性サブクローニングのための2つの互換性のないBstXI制限酵素認識部位を有する。
【0177】
可溶性タンパク質は、Strep−tag II(Schmidt及びSkerra (2007) Nat.Protoc.2,1528−1535)により、また、その後のPBSバッファーを用いるSuperdex 75 HR 10/30カラムでのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)(Amersham−Pharmacia,Freiburg,Germany)によりアフィニティー精製された。タンパク質の純度は、SDS−PAGE(Fling及びGregerson (1986) Anal.Biochem. 155,83−88)により確認された。タンパク質濃度は、野生型Lcn2(配列番号:44)では31400M−1cm−1、Aβ特異的突然変異タンパク質H1−G1(配列番号:43)では26930M−1cm−1、S1−A4(配列番号:38)では24410M−1cm−1、及びUS7(配列番号:41)では26930M−1cm−1の算出された吸光係数を用いた280nmの吸収測定により決定された。ED−B特異的Lcn2突然変異タンパク質の算出された吸光係数は、突然変異タンパク質N7A(配列番号:20)では37930M−1cm−1、N7E(配列番号:22)では22920M−1cm−1、N9B(配列番号:24)では21430M−1cm−1、及びN10D(配列番号:26)では39420M−1cm−1であった(上記Gasteigerら )。
(実施例8)
ELISA試験における種々のAβ標的の結合活性の測定
C末端Strep−tag IIを有するLcn2突然変異タンパク質の選択的捕獲(Schmidt及びSkerra (2007) Nat.Protoc.2,1528−1535)のために、96−well MaxiSorp ポリスチレンマイクロタイタープレート(Nunc,Langenselbold,Germany)は、10μg/ml StrepMAB−Immo(IBA,Gottingen,Germany) のPBS溶液を用いて4℃で一晩中コートされ、3%(w/v)BSAのPBS/T溶液を用いて室温で1時間ブロッキングされた。PBS/Tを用いた3回の洗浄ステップの後、実施例7からの精製されたLcn2突然変異タンパク質の1μM溶液50μlが1時間全てのWellにアプライされた。洗浄後、実施例2からのビオチニル化標的Aβ40、ΜΒΡ−Aβ40又はTrx−Aβ28の希釈系列の50μlが加えられ、1時間インキュベートされた。ここで、実施例2からのOva、MBP及びTrxのビオチニル化型は、陰性対照タンパク質として用いられた。Wellは、再度洗浄され、結合した接合体は、50μlの1:5000でPBS/Tにより希釈されたExtrAvidin/AP 接合体(Sigma−Aldrich,Steinheim,Germany)を用いて1時間検出され、続いて、100mM Tris/HCl,pH8.8,100mM NaCl,5mM MgCl中の0.5mg/mlパラニトロフェニルリン酸塩(AppliChem,Darmstadt,Germany)100μlの存在下でシグナルが生成された。405nmでの吸収ΔΑ/Δtのタイムコースは、SpectraMax 250リーダー(Molecular Devices,SunnyVale,USA)で測定され、データは、KaleidaGraphソフトウェア(Synergy software,Reading,PA)を用いて以下の方程式に適合された。
ΔΑ=ΔAmaxx[L]tot/(K+[L]tot
上記式において、[L]totは、アプライされたリガンド接合体の濃度を表し、Kは解離定数である(Voss及びSkerra(1997)Protein Eng.10,975−982)。
【0178】
また、「直接」のELISAのために、実施例2の2μΜ非標識Aβ40標的は、96−well MaxiSorp ポリスチレンマイクロタイタープレート(Nunc,Langenselbold,Germany)に吸着され、精製されたLcn2突然変異タンパク質と共にインキュベートされた。それは、1:1500の比で希釈したストレプトアビジン/AP接合体(GE Healthcare UK Ltd,Buckinghamshire,UK)を用いて、Strep−tagIIを介して検出された。コントロールとして、実施例2の2μΜのMBPがELISAプレートに吸着された。405nmの吸収は、SpectraMax 250 reader (Molecular Devices,SunnyVale,USA)により測定された。
【0179】
また、「競合」のELISAは、上記の「キャプチャー」と同様の方法で行われた。さらに、StrepMAB−Immoの固定及び洗浄の後、実施例7の精製されたLcn2突然変異タンパク質の1μΜ溶液の50μlは、1時間、全てのwellにアプライされた。 洗浄後、実施例2のビオチニル化 標的Trx−Aβ28は、競合相手として種々の濃度の遊離非標識Trx−Aβ28標的の存在下において、5nM(S1−A4)又は40nm(US7)の固定濃度でアプライされた。100倍の過剰量を用いて開始して、競合相手の濃度は、3倍の段階希釈がなされた。この場合、そのデータは、下記のシグモイド式に適応された。
【0180】
ΔΑ=(ΔAmax−ΔAmin)/(1+([L]totfree)+ΔAmin
この式では、更なるパラメータとして曲線の傾きp(Hill係数)を有する。
【0181】
以下の表1は、種々のELISA機構及び表面プラズモン共鳴(実施例9を参照)により決定されたK値をまとめている。
【0182】
(表1)


(実施例9)
表面プラズモン共鳴(SPR)を介したAβへの結合活性の測定
Lcn2突然変異タンパク質のリアルタイム分析は、ランニングバッファーとしてPBS/T(0.005%(v/v)Tween20を含むPBS)を用いて、Biacore X system (Biacore,Uppsala,Sweden)で行われる。10mM Na酢酸塩,pH4.5に溶解した、実施例2のΜΒΡ−Aβ40の50μg/ml溶液は、標準のアミンカップリング化学を用いてCMD200Iチップ(Xantec,Dusseldorf,Germany)に固定されて、リガンド濃度は1455共鳴単位(RU)であった。実施例7の精製されたLcn2突然変異タンパク質のS1−A4及びUS7は、10μL/minの流速で、2nMから125nMまでの濃度範囲でアプライされた。センサーグラムは、エタノールアミンを用いて活性化及び抑制されたコントロールチャンネルで測定された対応する信号を差し引くことにより校正された。キネティクスデータの評価は、BIAevaluationソフトウェアV 3.0を用いてフィッティングすることにより行われた(Karlssonら.(1991) J.Immunol.Methods 145,229−240)。このステップの間、kon及びk0ffの比率は、全体的にフィットされ、一方、最大反応差Rmaxは、各曲線に局所的にフィットされる。
(実施例10)
SPOT膜におけるエピトープマッピングを介したAβエピトープの決定
Lcn2突然変異タンパク質S1−A4及びUS7のAβエピトープのマッピングのためのSPOT膜(Amino−PEG500−UC540シート,100x150mm, Mavis,Koln,Germany)は、MultiPep RS計測器(Intavis,Koln,Germany)及び同一の販売業者から得た活性化アミノ酸を用いて、Frank((2002) J.Immunol.Methods 26213−26)に記載されているように、自動化手順で準備された。Aβ40のアミノ酸配列(配列番号:29)は、一連のヘキサマー、デカマー及びペンタデカマーのそれぞれの1アミノ酸を転位して全体の配列をカバーして、膜において合成された。これらのペプチドのC末端は、膜に共有結合され、一方、それらのN末端は、アセチル化された。固定されたStrep−tag II は、検出方法の陽性対照として用いられた。
【0183】
側鎖の脱保護は、95%トリフルオロ酢酸(Sigma−Aldrich,Steinheim,Germany)、3%トリイソプロピルシラン(Sigma−Aldrich, Steinheim,Germany)、及び2%蒸留水を用いて2時間行われた。ジクロロメタン(Sigma−Aldrich,Steinheim,Germany)を用いて4回、ジメチルホルムアミド(Sigma−Aldrich,Steinheim,Germany)を用いて2回、及びエタノールを用いて2回膜を洗浄した後、膜を空気乾燥した。
使用の前に、膜は、エタノールで1回、PBS(4mM KHP0,16mM NaHP0,115mM NaCl,pH 7.4)で3回洗浄し、3%(w/v)BSAのPBS/T溶液(0.1%(v/v)Tween20を含むPBS)で1時間ブロッキングされた。PBS/Tで3回洗浄した後、膜は、PBS/Tに溶解されたLcn2突然変異タンパク質S1−A4(50nm)、US7(100nm)又は野生型Lcn2(100nm)と共に1時間インキュベートされ、PBS/Tで3回洗浄された。その後、Strep−tag IIを介したタンパク質検出のために、膜は、PBS/Tが溶媒である1:1500希釈されたストレプトアビジン/AP接合体(GE Healthcare,Buckinghamshire,UK)と共に1時間インキュベートされた。その後、膜は、PBS/Tで3回洗浄され、APバッファー(100mM Tris/HCl,pH 8.8,100mM NaCl,5mM MgCl)で1回洗浄された後、Schlehuberら.((2000)J.Mol.Biol.297,1105−1120)に記載されているように、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸塩、4−トルイジン塩(BCIP、AppliChem,Darmstadt,Germany)及びニトロブルーテトラゾリウム(NBT、AppliChem,Darmstadt,Germany)のAPバッファー溶液を用いて発色反応を行った。
【0184】
S1−A4及び野生型Lcn2のそれぞれとインキュベートされた膜を比較してS1−A4と共に、野生型Lcn2の非存在下で膜をインキュベートすることでのみ生じる明確なスポットが得られた。ペンタデカマーAβ40フラグメントで、LVFFAEDモチーフはS1−A4の結合のために本質的であることが明らかとなった。より短ヘキサマー及びデカマーペプチド配列を用いて、S1−A4に結合する最小のモチーフのVFFAED及びFFAEDVが検出された。Lcn2突然変異タンパク質US7は、このアッセイにおいて、非常に類似のエピトーププロファイルを示した。
(実施例11)
ThT凝集アッセイにおけるAβへの親和性を有するLcn2突然変異タンパク質の機能分析
実施例2からの、可溶化され、均質な単量体の非ビオチニル化Aβ40に対して、様々なLcn2突然変異タンパク質の存在下又は非存在下において、チオフラビンT凝集アッセイを行った。チオフラビンT(ThT、Sigma−Aldrich,Steinheim,Germany)は、β−シートリッチのアミロイド原線維及びオリゴマー前駆体に特異的に結合するが、Aβペプチドに結合せず、それは、ThT蛍光の増大を伴う(Khurana ら.(2005)J.Struct.Biol.151,229−238)。
【0185】
そのため、ThTは1mMの濃度になるように蒸留水に溶解された。希釈標準溶液は、5mMグリシン/NaOH,pH8.5を用いて1mM原液を5μΜの終末濃度にまで希釈することにより調製された。500μlの蒸留水に溶解された200μΜ Aβ40(実施例2に従って溶解)と実施例7のPBSに溶解された20μΜのLcn2突然変異タンパク質との1:1の混合液は、37℃で撹拌することなくインキュベートされた。種々の時点における各蛍光測定の前に、サンプルは、短時間で10回ボルテックスされ、20μlの各サンプルは、180μlのThT希釈標準溶液と混合された。蛍光強度は、発光分光計(LS50B,Perkin Elmer,Waltham,USA)で、450nmの励起波長及び482nmの発光波長を用いて測定された。
【0186】
図9に示すように、Lcn2突然変異タンパク質US7は、1:10の比率でAβ40の凝集の強力阻害作用を示した。
(実施例12)
エキストラドメインB(ED−B)を含む組み換え型フィブロネクチンフラグメントの調製
ヒトフィブロネクチンの3つの異なる組み換え型フラグメントは、選択のための標的として用いられた:単独のエキストラドメインB(ED−Bと呼ばれる、Zardiら.(1987)EMBO Journal,6,2337−2342)、その隣接するドメイン7及び8に関連して同一のドメイン(FN7B8と呼ばれる)、並びに従来型ドメイン7、8及び9を含み、ED−Bを欠失しているFN789(Carnemollaら. (1996), Int.J.Cancer,68,397−405、 Leahy ら. (1994) Proteins 19,48−54)。
【0187】
FN7B8、FN789及びED−Bコード配列は、pASK75(Skerra (1994) Gene 151,131−135)又はその誘導体pASG−IBA−33 (IBA,Gottingen,Germany)のベクターに基づいて,pASK75−FN7B8(配列番号:13)、pASK75−FN789(配列番号:17)、及び pASG−IBA−33−EDB(配列番号:15)ベクターのそれぞれを産生するようにクローニングされた。全てのコンストラクトは、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(EVIAC)を介して精製されるために、カルボキシ末端にHis6タグが付けられ、E.coli TG1/F[E.coli K12 TGIの誘導体(Gibson (1984) Studies on the Epstein−Barr virus genome,Cambridge University,EngLand)] 又はBL21(Studier及びMoffatt (1986), 189, 113−130)の細胞質における可溶性タンパク質として産生された。従って、発現プラスミドを有するE.coliの2−Lインキュベートは、100μg/mlアンピシリンを含むLB培地を用いて37℃において、中間対数期で増殖された。200μg/Lアンヒドロテトラサイクリン(Acros,Geel,Belgium)の添加後に、増殖が37℃で5時間から7時間続けられた。細胞は、遠心分離により濃縮され、35mlの氷冷クロマトグラフィーバッファー(40mM Hepes/NaOH, 1M NaCl,pH7.5)に再懸濁され、超音波処理(S250D,Branson,Danbury CT,USA)により溶解された。
【0188】
以下の精製プロトコルは、3つ全ての組み換え型フィブロネクチンフラグメントにおいて同一である。清澄な溶解液は、10mM ZnS0で充填され、40mM Hepes/NaOH,1M NaCl,pH7.5で平衡化されたZn2+/IDAセファロースカラム (GE Healthcare,Munich Germany)にアプライされた。結合したタンパク質は、0から300mMまでのイミダゾール(HC1を用いてpHが調整された)が溶解したクロマトグラフィーバッファー溶液の勾配を用いて溶出された。組み換え型タンパク質を含む分画は、SDS−PAGEにより同定され、EDTAを用いて1mMの終末濃度に混合され、一晩中20mM Hepes/NaOH、pH7.4で透析分離された。 その後、そのタンパク質は、20又は40mM Hepes/NaOH,pH7.4を用いて平衡化されたイオン交換クロマトグラフィーカラム(Resource Q,GE Healthcare,Munich,Germany)にロードされた。結合したフィブロネクチンフラグメントを溶出するために、0から300mMまでのNaCl勾配が用いられた。
【0189】
最後に、タンパク質の純度は、SDS−PAGE分析及びサイズ排除クロマトグラフィーにより確認された。280nmにおける吸収の測定によりタンパク質の濃度を決定するために、続いて算出された吸光係数(Gasteiger ら.(2003) nucleic Acids Res. 31, 3784−3788)が用いられた:FN7B8では31,400M−1cm−1、FN789では28420M−1cm−1、及びED−Bでは11460 M−1cm−1。通常、約10から20mgの精製タンパク質が2−L振とうインキュベートで得られた。精製タンパク質は、4℃で保存され、全ての試験のために用いられた。
【0190】
精製フィブロネクチンフラグメントは、供給業者の説明書に従って、室温で1時間、過剰(4:1モル比)のジゴキシゲニン−3−O−メチルカルボニル−ε−アミノカプロン酸−N−ヒドロキシルスクシンイミドエステル(Roche Diagnostics, Mannheim, Germany)を用いてジゴキシゲニン標識された。遊離ジゴキシゲニンを除去するために、タンパク質溶液は、40mM Tris/HCl,115 mM NaCl及び1mM EDTA, pH7.5を用いて平衡化されたPD−10脱塩カラム(GE Healthcare, Munich, Germany)にアプライされた。成功したジゴキシゲニン化及びタンパク質の完全性は、SDS−PAGE、ESI質量分析又は抗ジゴキシゲニン−AP,Fabフラグメント(Roche Diagnostics,Mannheim,Germany)を用いた染色を介したドットブロットにより確認された。
(実施例13)
ファージディスプレイによるED−Bに対する親和性を有するLcn2変異体の選択
全部で4つのファージミドディスプレイ選択サイクルは、実施例1に記載されたように、Sloning BioTechnology GmbH により最初に合成された合成遺伝子コレクションに基づくLcn2ランダムファージミドライブラリを用いて行われた。第1の選択サイクルのために、300μlのTBS/E(40mM Tris/HCl,115mM NaCl、及び1mM EDTAに溶解され、50mMベンズアミジンが添加された約5×1012の組み換え型ファージミドは、0.4%(v/v)Tween 20[ポリオキシエチレンソルビタンラウリン酸モノエステル、AppliChem,Darmstadt,Germany])を含むTBSに溶解された8%(w/v)BSA(Sigma−Aldrich,Munich,Germany)を100μl加えることにより30分間ブロッキングされた。その後、この溶液は、2%(w/v)BSAのTBS/T(0.1%(v/v)Tween20を含むTBS)溶液により1時間ブロッキングされた抗ジゴキシゲニンIgG電磁ビーズ(Europa Bioproducts,Cambridge,UK)と共に1時間インキュベートされ、400μlの0,1μΜジゴキシゲニン標識組み換え型FN7B8でチャージされた(実施例12を参照)。
【0191】
磁石を用いてビーズを回収し、上清を除去した後、TBS/Tを用いた10回の洗浄ステップが行われ、結合維持したファージミドは400μlの0.1Mトリエチルアミン (pH 調整せず)を用いて6分間の第1溶出が行われ、続いて、350μlの0.1M グリシン/HCl,pH2.2を用いて8分間の第2溶出が行われた。溶出液は回収され、2M酢酸又は50μlの0.5M Tris塩基の適量をそれぞれ組み合わせて用い、すぐに中和され、対数増殖期のE.coli XLl−Blueに移すために用いられた。ファージミドは、以下の公開されたプロトコル(Besteら.(1999)PNAS 96, 1898−903、 Schlehuberら.(2000) J Mol Biol 297 1109−20)の次のパニングステップの前に、力価が上げられ、増幅された。
【0192】
第2回の選択のために、約2×10−12に増幅されたファージミドが用いられ、結合したファージミドの溶出は、400μlの231nmol/ml遊離組み換え型ED−Bを用いた競合により75分間行われた。
【0193】
第3及び第4の選択サイクルにおいて、約2×10−12に増幅されたファージミドは、100nmのジゴキシゲニン標識FN7B8を用いて1時間の第1インキュベートされた。 その後、ファージミド−抗原複合体は、抗ジゴキシゲニンIgG電磁ビーズに20分間捕獲された。TBS/Tを用いてビーズを10回洗浄した後、結合したファージミドは、140から231nmol/mlまでの遊離組み換え型ED−B400μlによる競合により、室温で75分間溶出された。
(実施例14)
スクリーニングELISAによるED−Bに対する親和性を有するLcn2変異体の選択
実施例13に記載されたファージディスプレイ選択から生じた、標的タンパク質ED−Bに特異的に結合するLcn2突然変異タンパク質の濃縮は、スクリーニングELISA
により観察された。最後のパニングステップからのファスミドのプールされた調製液を用いて、突然変異遺伝子カセットが発現プラスミドphNGAL98のBstXIを介してサブクローニングされた。それは、E.coliにおけるペリプラズム生産のためのOmpAシグナルペプチドとC末端Strep−tagIIを有するLcn2コーディング領域との融合体をコードする(Schmidt及びSkerra (2007)Nat. Protoc.2,1528−1535)。96−wellプレートにおける個々のLcn2突然変異タンパク質の可溶性発現は、以下のように行われた:100μg/mlアンピシリンを含む100μlTB培地(Tartof及びHobbs(1987)Bethesda Research Laboratory Focus 9,12)に、ランダムに選択された単一コロニーが播かれ、37℃で5時間振とう培養した(500rpmから800rpm、 Thermomixer comfort、Eppendorf,Hamburg,Germany)。各クローンのために、100μlの新鮮培地に、この培養液の10μlを播き、37℃で1時間から2時間振とう培養された後、22℃まで温度を下げられた。2時間から4時間の更なる培養の後に、Lcn2突然変異タンパク質の発現が、0.2μg/mlアンヒドロテトラサイクリン(Acros,Geel,Belgium)を添加して12時間から14時間の対数増殖期細胞において誘導された。タンパク質のペリプラズム放出は、1mg/mlリゾチーム(Roche Diagnostics,Mannheim,Germany)を含む40μlの2×BBS(0.2M ホウ酸塩/NaOH,160mM NaCl,1mM EDTA,pH8.0)を加えて室温で1時間振とう培養することにより生じた。溶解液は、40μlの10%w/v BSA(Applichem,Darmstadt,Germany)のTBS溶液及び0,5% Tween−20を用いて1時間ブロッキングされ、細胞破片は、10分間の遠心分離により粗抽出物から除去された。
【0194】
FN7B8又はFN789を96−well Nunc Maxisorpプレート (Thermo Fisher Scientific,Langenselbold, Germany)の表面に吸着するために、50μlのTBSに溶解された100μg/mlタンパク質溶液が各wellに加えられ、4℃で一晩中インキュベートされた。E.coliからの粗抽出物への暴露の前に、TBS/Tを用いた3回の洗浄ステップの後に、wellはTBS/Tに溶解された2%(w/v)BSAを用いて室温で3時間ブロッキングされ、繰り返し洗浄された。ELISAのために、50μlの清澄な溶解液はwellにアプライされ、1時間インキュベートされ、続いて、TBS/Tを用いて3回洗浄された。結合したLcn2突然変異タンパク質は、4−ニトロフェニルリン酸塩基質 (pNPP, 0.5mg/ml、 AppliChem GmbH, Darmstadt, Germany)を用い、0.1M Tris/HCl,0.1M NaCl,5mM MgCl,pH8.8に溶解されたストレプトアビジン−アルカリ−ホスファターゼ結合体(TBS/Tで1:1500希釈、 GE Healthcare,Munich,Germany)を用いて検出された(実施例16を参照)。
【0195】
4つのクローンは、このスクリーニングELISAで同定された。後続の試験(実施例16−18を参照)において、それら4つのLcn2突然変異タンパク質は、ELISA、 SPR分析、及び免疫蛍光顕微鏡でのED−Bポジティブヒト結腸癌細胞の観察により、FN7B8の特異的な結合活性をも示すことが分かった。これらLcn2突然変異タンパク質は、N7A(配列番号:20)、N7E(配列番号:22)、N9B(配列番号:24)及びN10D(配列番号:26)と呼ばれる。
(実施例15)
Lcn2及びその変異体の可溶性タンパク質の産生及び精製
詳細は実施例7を参照。
(実施例16)
ELISAにおけるED−Bへの結合活性の測定
96−well Nunc Maxisorp プレート(Thermo Fisher Scientific,Langenselbold,Germany)の表面へのFN7B8又はFN789の吸着のために、TBS/Eに溶解された50μlの100μg/mlタンパク質溶液は、各wellに加えられ、室温で2時間インキュベートされた。 さらに、コントロールタンパク質を含むために、ブランクwellは120μlのTBS/ETに溶解された2%(w/v)BSA(AppliChem,Darmstadt,Germany)に暴露された。3回の洗浄ステップの後に、TBS/ETに溶解された120μlの2%(w/v)BSA(AppliChem,Darmstadt,Germany)を用いて室温で2時間ブロッキングされ、繰り返し洗浄され、50μlの精製Lcn2突然変異タンパク質の希釈系列が加えられ、1時間インキュベートされた。wellは再度洗浄され、結合したLcn2突然変異タンパク質は、TBS/Tで1:1500希釈された50μlのストレプトアビジン−アルカリ−ホスファターゼ結合体(GE Healthcare,Munich,Germany)を用いて1時間検出され、続いて、100mM Tris/HCl,100 mM NaCl,5mM MgCl,pH 8.8が溶媒である50μlの0.5mg/mlパラニトロフェニルリン酸塩の存在下でシグナルを生成した。405nmにおける吸収ΔΑ/Δtの経時変化は、SpectraMax 250 リーダー(Molecular Devices,SunnyVale,CA)で測定され、データはKaleidaGraphソフトウェアを用いて下記の式に適応させた。
【0196】
ΔΑ=ΔAmaxx[L]tot/(K+[L]tot
この式において、[L]totはアプライされたリガンド接合体の濃度を表し、Kは解離定数(Voss及びSkerra(1997)Protein Eng.10,975−982)を表す。Lcn2変異体N7A、N9B及びN10Dのそれぞれは、14.8nM(N7A)、40.1nM(N9B)、30.0nm(N7E)及び51.2(N10D)のK値でFN7B8に特異的に結合するが、FN789又はBSAに結合しないことが分かった。
(実施例17)
表面プラズモン共鳴(SPR)を介した組み換え型フィブロネクチンFN7B8への結合活性の測定
Lcn2突然変異タンパク質のリアルタイム分析は、ランニングバッファーとして、HBS/ET(0.005%(v/v)Tween20を含む20mM Hepes,pH 7.5,150mM NaCl,1mM EDTA)を用いてBiacore X system(Biacore,Uppsala,Sweden)で実行された。10mM Na酢酸塩,pH4.0が溶媒である200μg/ml組み換え型FN7B8溶液は、標準のアミンカップリング化学(Biacore,Uppsala,Sweden)を用いて、CMD200mセンサーチップ(XanTec bioanalytics,Duesseldorf,Germany)に固定されて、リガンド濃度は約500共鳴単位(RU)であった。精製Lcn2突然変異タンパク質は、2.5から最大で160nMの濃度において、25μl/minの流量でアプライされた。Theセンサーグラムは、コントロールチャンネルのために測定される対応するシグナルを差し引くことにより 校正された。それは、エタノールアミンを用いて活性化又は抑制された。キネティクスデータの評価は、BIAevaluationソフトウェアV4.1を用いた全体的なフィッティングにより行われた(Karlssonら.(1991) J.Immunol.Methods 145,229−240)。
(表2)表面プラズモン共鳴により測定された、選択したLcn2突然変異タンパク質のFN7B8に対するキネティクス結合データ


(実施例18)
ED−BポジティブCaCo2細胞の免疫染色
ヒト結腸癌細胞(CaCo2細胞は、H.Daniel,Technische Universitat Miinchen,Germanyにより快く提供された;Pujuguet ら., Am.J.Pathol.148,579−592)は、細胞コンフルエンスが約50から70%となるまで37℃の湿気環境で、10%ウシ胎児血清、1x MEM非必須Lアミノ酸及び50μg/mlゲンタマイシン(PAA Laboratories,Pasching,Austria)が添加されたEarle塩及びL−グルタミンを含むMEMにおいて、Nunc Lab−TekTM II chamber slideTM system(各スライドに4つのチャンバ、Thermo Fisher Scientific,Langenselbold,Germany)で培養された。カバースライドに付着された細胞単層は、PBS(Dulbecco’s Ca2+及びMg2+非含有、 PAA Laboratories, Pasching, Austria)を用いて洗浄され、続いて蒸留水で洗浄され、その後5μg/ml DAPI(4’,6−ジアミノ−2−フェニルインドール、Sigma−Aldrich,Munich,Germany)を含む氷冷メタノールを用いて5分間固定及び対比染色された。
【0197】
全ての後続のインキュベーションは、暗室で行われた。固定化細胞は、洗浄され、500μlの1μΜ野生型Lcn2、Lcn2突然変異タンパク質、PBS又はED−B特異的抗体scFv−L19(Piniら.(1998)J.Biol.Chem.273,21769−21776)を用いて1時間インキュベートされた。これらの試薬の全ては、Strep−tag II融合タンパク質として精製された(上記Schmidt及びSkerra)。細胞はPBSを用いて洗浄され、非標識抗体StrepMABimmo(PBSを溶媒として5μg/ml、IBA,Gottingen,Germany)と共に1時間インキュベートされ、続いて、2回の洗浄ステップを行った。最後に、CaCo2細胞に対する特異的な結合は、2次抗体としてPBSで1:200希釈された蛍光標識抗マウスIgG(H+L)F(ab’)フラグメントDylight−488接合体 (Cell Signaling Technology,Danvers,USA)を用いて検出された。
【0198】
Axiovert 40 CFL顕微鏡(Carl Zeiss,Gottingen, Germany)による観察において、全てのLcn2変異体及び抗体scFv−L19は、特異的な細胞染色を示した。その一方、組み換え型野生型Lcn2及びPBSは、このアッセイにおける無視できるシグナルを示した。
(実施例19)
H1−G1の配列位置36におけるフリーシステイン残基の置換によるAβ特異的Lcn2突然変異タンパク質H1GA及びH1GVの生成
Cys36は、部位特異的突然変異誘発によりAla又はValに置換された。そのために、PCRは縮重したオリゴデオキシヌクレオチドDH−4(配列番号:45)、第2のオリゴデオキシヌクレオチドJ08rev(配列番号:48)、及び鋳型としてLcn2突然変異タンパク質H1−G1をコードするプラスミドDNA(配列番号:37)を用いて行われた。増殖されたフラグメントは、発現プラスミドphNGAL98におけるBstXIを介してサブクローニングされ、個々の置換変異体を同定するために配列決定された。アミノ酸置換の導入により生じたLcn2変異体は、H1GA(配列番号:49,50)及びH1GV(配列番号:51,52)と名付けられた。
(実施例20)
高光学濃度を有するE.coli培養物を用いる新規のAβ特異的Lcn2突然変異タンパク質H1GA及びH1GVの可溶性物質及びその精製
組み換え型Lcn2及びその突然変異タンパク質は、E.coli JM83におけるペリプラズム分泌により産生された。可溶性タンパク質の発現のために、H1GA(配列番号:49)又はH1GV(配列番号:51)のいずれかをコードする対応するBstXI挿入を有するプラスミドphNGAL98が用いられた。
【0199】
培養体は、100mg/Lアンピシリン(Amp)を含む2L LB培地により22℃で振とう培養された。 遺伝子発現は、終末濃度が0.2mg/Lになるようにアンヒドロテトラサイクリン(aTc)を加えることにより、OD550=2.5の細胞濃度で誘導された。5時間の培養後、細胞は遠心分離により回収され、0.1mg/mlリゾチームを含む40ml氷冷ペリプラズム分別バッファー(0.5Mスクロース,1mM EDTA,100mM Tris−HCl pH8.0)に再懸濁され、30分間氷上でインキュベートされた。生じたスフェロプラストは、遠心分離を繰り返して沈殿され、可溶性 組み換え型タンパク質を含む上清が回収された。
【0200】
可溶性タンパク質は、Strep−tag IIを用い、その後、PBSバッファー(4mM KHP0,16mM NaHP0,115mM NaCl,pH7.4)を用いたSuperdex75HR10/30カラムでのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によりアフィニティー精製された。タンパク質純度は、SDS−PAGEにより確認された。タンパク質濃度は、Aβ特異的突然変異タンパク質H1GA(配列番号:50)及びH1GV(配列番号:52)において、27055M−1cm−1の算出された吸光係数を用いて、280nmでの吸収測定により決定された。
(実施例21)
BiacoreX計測器での表面プラズモン共鳴を介したΜΒΡ−Aβ40に対する結合活性の測定
Lcn2突然変異タンパク質H1GA又はH1GVとΜΒΡ−Aβ40(配列番号:33)との相互作用のリアルタイム分析は、ランニングバッファーとしてPBS/T(0.005%(v/v)Tween20を含む4mM KHP0,16mM NaHP0, 115mM NaCl,pH7.4)を用いて、Biacore X systemで行われた。10mM Na酢酸塩,pH4.5を溶媒とした実施例2からの15μg/mlΜΒΡ−Aβ40溶液は、標準のアミンカップリング化学を用いてCMD200Iチップ(Xantec,Dusseldorf,Germany)に固定されて、リガンド濃度は1316共鳴単位(RU)であった。実施例20の精製Lcn2突然変異タンパク質H1GA及びH1GVは、20μL/minの流量で、4nMから128nMまでの濃度範囲でアプライされた。そのデータは、エタノールアミンを用いて活性化及び抑制されたコントロールチャンネルの測定された対応する信号を差し引くこと、及びバッファー注入の平均の測定信号を差し引くことにより2重参照された。キネティクスデータは、BIAevaluationソフトウェアV 3.0を用いて全体的に適合された(Karlssonら.(1991)J.Immunol.Methods 145,229−240)。
(実施例22)
Biacore T100計測器測定における表面プラズモン共鳴を介したAβ40の結合活性の測定
Lcn2突然変異タンパク質H1GAとAβ40(配列番号:29)との相互作用のリアルタイム分析は、ランニングバッファーとしてPBS/P(0.005%(v/v)Surfactant P20を含む4mM KHP0,16mM NaHP0,115mM NaCl,pH7.4)を用いて、Biacore T100 system (Biacore,Uppsala,Sweden)で行われた。10mM酢酸ナトリウム pH4.5を溶媒とした実施例2からの10μg/ml Aβ40溶液は、標準のアミンカップリング化学を用いて、CM5チップ(Biacore,Uppsala,Sweden)に固定化されて、リガンド濃度は325RUであった。実施例20の精製Lcn2突然変異タンパク質H1GAは、30μl/minの流量で、1nMから32nMまでの濃度範囲でアプライされた。H1GAの希釈系列は、konの情報を得るために、300sの結合及び解離時間の両方を用いて導入された。低k0ff比の正確な測定のために、最高濃度は、7200sの解離時間を用いて分析された。そのデータは、実施例21のように2重参照された。結合反応のkon及びkQffは、データ処理及びキネティクスフィッティングのためにBiacore T100 Evaluationソフトウェア V2.0.3を用いて全体のデータセットから決定された。そのデータは、1:1結合モデルを用いて、全体的に適合された。
(実施例23)
ThT凝集アッセイによるLcn2突然変異タンパク質H1GAの機能分析
チオフラビンT(ThT)凝集アッセイのために、合成Aβペプチド(配列番号:29)は、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP、Sigma−Aldrich,Steinheim,Germany)に12時間溶解された。HFIPは、真空下で蒸発され、Aβは適量の蒸留水に溶解され、4℃で15分間超音波処理され、濾過された(Costar Spin−X遠心管フィルターセルロース酢酸塩膜,0.45μM;Corning Inc.,Corning,NY)。可溶化単量体Aβは、その後すぐに、凝集アッセイに用いられた。
【0201】
500μlの1mg/ml Aβは、種々のモル比の様々なLcn2突然変異タンパク質又はBSAを含む0.5xPBSの非存在又は存在下において、37℃で撹拌しながらインキュベートされた。凝集反応は、3つ組で準備された。蛍光測定のために、20μlの定期的に取られたサンプルは、0.5xPBSに含まれる50μΜの終末濃度で180μl ThTと混合され、FluoroMax−3分光蛍光光度計を用いて(HORIBA Jobin Yvon,Grasbrunn,Germany)、450nmの励起波長及び482nmの発光波長で分析された。
(実施例24)
表面プラズモン共鳴(SPR)を介した組み換え型フィブロネクチン単一ドメインED−Bへの結合活性の測定測定
Lcn2突然変異タンパク質のリアルタイム相互作用分析は、ランニングバッファーとして、HBS/ET(0.005%(v/v)Tween 20を含む20mM Hepes,pH 7.5,150mM NaCl,1mM EDTA)を用いて、Biacore X計測器で行われた。10mM Na酢酸塩,pH40が溶媒である100μg/ml組み換え型ED−B溶液は、標準のアミンカップリング化学を用いて、CMD200mセンサーチップに固定化されて、リガンド濃度は約180共鳴単位(RU)であった。精製Lcn2突然変異タンパク質は、25μl/minの流量で、2.5から160nmまでの濃度でアプライされた。センサーグラムは、エタノールアミンを用いて活性化及び抑制されたコントロールチャンネルの測定された対応するシグナルを差し引くことにより校正された。キネティクスデータの評価は、BIAevaluationソフトウェア V4.1を用いて全体的にフィッティングすることにより行われた(Karlssonら.(1991)J.Immunol.Methods 145,229−240)。N10Dの場合において、異種検体競合反応モデルは、データフィッティングのために用いられ、2つの速度定数を生じた。
(表3)表面プラズモン共鳴により測定されたLcn2突然変異タンパク質のED−Bに対するキネティクス結合データ




【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出可能な親和性を有する所定の非天然標的に結合することができ、ヒトリポカリン2(Lcn2、hNGAL)に由来する突然変異タンパク質の生成方法であって、
ヒトLcn2タンパク質をコードする核酸分子を、ヒトLcn2の直鎖状ポリペプチド配列における配列位置96、100、及び106に対応する配列位置のうちのいずれかの少なくとも1つをコードするヌクレオチドトリプレットで突然変異誘発させて、1つ又はそれ以上の突然変異タンパク質核酸分子を生じるステップ(a)を備えている方法。
【請求項2】
請求項1の方法において、
ステップ(a)で得られた1つ以上の突然変異タンパク質核酸分子を適切な発現系で発現させるステップ(b)と、
所定の標的に対して検出可能な結合親和性を有する1つ又はそれ以上の突然変異タンパクを、選択及び/又は単離によって濃縮するステップ(c)とをさらに備えている方法。
【請求項3】
請求項1又は2の方法において、
前記核酸分子を、前記Lcn2の配列位置96、100、及び106のいずれかをコードするヌクテオチドトリプレットの少なくとも1つ、2つ又は3つ全てで突然変異誘発させることをさらに備えている方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項の方法において、
前記核酸分子を、hLcn2の直鎖状ポリペプチド配列における配列位置36、40、41、49、52、68、70、72、73、77、79、81、103、125、127、132及び134のいずれかをコードする少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16又は17全てのヌクレオチドトリプレットで突然変異誘発させることをさらに備えている方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項の方法において、
ヌクレオチドトリプレットのサブセットによって置換を可能にすることのみによって、hLcn2の直鎖状ポリペプチド配列における配列位置36、40、41、49、52、68、70、72、73、77、79、81、96、100、103、106、125、127、132及び134のいずれかをコードする少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20のヌクレオチドトリプレットでランダム突然変異誘発させることをさらに備えている方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項の方法において、
システインをコードするヌクレオチドトリプレットは、突然変異誘発時の置換に用いられない方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項の方法により得られるLcn2タンパク質由来の突然変異タンパク質であって、
Lcn2の直鎖状ポリペプチド配列における配列位置96、100、及び106に対応する配列位置のうちのいずれかにおける少なくとも1つの突然変異したアミノ酸残基を備え、検出可能な親和性を有する所定の非天然標的に結合することができる突然変異タンパク質。
【請求項8】
請求項7の突然変異タンパク質において、
Lcn2の直鎖状ポリペプチド配列における配列位置96、100、及び106に2つ又は3つの突然変異したアミノ酸残基を備えている突然変異タンパク質。
【請求項9】
請求項7又は8の突然変異タンパク質において、
hLcn2の直鎖状ポリペプチド配列における配列位置36、40、41、49、52、68、70、72、73、77、79、81、103、125、127、132及び134に対応する配列位置のいずれかで少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16又は17の突然変異したアミノ酸残基をさらに備えている突然変異タンパク質。
【請求項10】
請求項8又は9の突然変異タンパク質において、
Lcn2の直鎖状ポリペプチド配列における配列位置36、40、41、49、52、68、70、72、73、77、79、81、96、100、103、106、125、127、132及び134のいずれかで少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16又は17の突然変異したアミノ酸残基をさらに備えている突然変異タンパク質。
【請求項11】
請求項10の突然変異タンパク質において、
Lcn2の直鎖状ポリペプチド配列における配列位置36、40、41、49、52、68、70、72、73、77、79、81、96、100、103、106、125、127、132及び134のいずれかで18、19又は20の突然変異したアミノ酸残基をさらに備えている突然変異タンパク質。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれか1項の突然変異タンパク質において、
前記非天然標的は、ペプチド、タンパク質、タンパク質のフラグメント又はドメイン、及び有機小分子からなる群から選択される突然変異タンパク質。
【請求項13】
請求項12の突然変異タンパク質において、
前記有機小分子は、免疫学的ハプテンの特性を示す化合物である突然変異タンパク質。
【請求項14】
請求項12の突然変異タンパク質において、
前記ペプチドは、2〜45アミノ酸の長さを有する突然変異タンパク質。
【請求項15】
請求項14の突然変異タンパク質において、
前記ペプチドは、アミロイドベータペプチドである突然変異タンパク質。
【請求項16】
請求項15の突然変異タンパク質において、
前記アミロイドベータペプチドは、Aβ40ペプチド又はAβ42ペプチドである突然変異タンパク質。
【請求項17】
請求項15又は16の突然変異タンパク質において、
成熟hLcn2の野生型アミノ酸配列について、Leu36→Val又はCys、Ala40→Tyr又はLys又はVal、Ile41→Thr又はSer又はLeu、Gln49→Leu又はTrp、Leu70→Gly、Arg72→Gly又はAsp、Lys73→Leu又はThr又はAsp、Asp77→Asn又はHis又はLeu、Trp79→Lys、Asn96→Ile又はArg、Tyr100→Gln又はArg又はGlu、Leu103→Met又はArg又はGly、Tyr106→Tyr又はAla又はTrp、Lys125→Thr又はVal又はGlu、Serl27→Gly又はGln又はAla、Tyr132→Met又はSer又はThr、及びLys134→Asnからなる群から選択される、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12のアミノ酸置換を含む突然変異タンパク質。
【請求項18】
請求項17の突然変異タンパク質において、
配列番号39(S1−A4)又は配列番号41(US7)又は配列番号43(H1−G1)の配列を有する突然変異タンパク質。
【請求項19】
請求項12の突然変異タンパク質において、
前記タンパク質は、フィブロネクチン又はそのドメインである突然変異タンパク質。
【請求項20】
請求項19の突然変異タンパク質において、
前記フィブロネクチンドメインは、エキストラドメインB又はそのフラグメントである突然変異タンパク質。
【請求項21】
請求項19又は20の突然変異タンパク質において、
成熟hLcn2の野生型アミノ酸配列について、Leu36→Lys又はGlu又はArg又はAla、Ala40→His又はMet又はThr又はSer、Ile41→Asp又はArg又はTrp又はLeu、Gln49→Arg又はAla又はTyr、Leu70→Leu又はArg又はMet、Arg72→Val又はArg又はGln又はMet、Lys73→His又はArg又はSer、Asp77→Asn又はHis又はLys又はArg、Trp79→Arg又はMet又はLeu、Asn96→Lys又はAla又はSer、Tyr100→Trp又はPro又はLys、Leu103→His又はPro、Tyr106→Phe又はTrp又はThr、Lys125→Arg又はHis又はThr、Ser127→Thr又はPhe又はAla、Tyr132→Leu又はPhe、Lys134→Glu又はHis又はGly又はPhe、及びSer146→Asnからなる群から選択される、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12のアミノ酸置換を含む突然変異タンパク質。
【請求項22】
請求項21の突然変異タンパク質において、
配列番号20(N7A)又は配列番号22(N7E)又は配列番号24(N9B)又は配列番号26(N10D)の配列を有する突然変異タンパク質。
【請求項23】
請求項7〜22のいずれか1項の突然変異タンパク質において、
成熟hLcn2の野生型アミノ酸配列について、Glu28→His、及びCys87→Serからなる群から選択されるアミノ酸置換をさらに含む突然変異タンパク質。
【請求項24】
請求項7〜23のいずれか1項の突然変異タンパク質において、
Lcn2の直鎖状ポリペプチド配列における配列位置137及び145に対応する配列位置のいずれかで突然変異したアミノ酸残基を備えていない突然変異タンパク質。
【請求項25】
請求項7〜24のいずれか1項の突然変異タンパク質において、
成熟hLcn2の野生型アミノ酸配列について、Tyr52→Gln又はVal、Ser68→Lys又はAsn、及びArg81→Trp又はAsn又はHisからなる群から選択されるアミノ酸置換を含む突然変異タンパク質。
【請求項26】
請求項7〜25のいずれか1項の突然変異タンパク質において、
有機分子、酵素標識、放射性標識、呈色標識、蛍光標識、発色標識、発光標識、ハプテン、ジゴキシゲニン、ビオチン、細胞増殖抑制剤、毒素、金属錯体、金属及びコロイド金からなる群から選択される化合物に接合された突然変異タンパク質。
【請求項27】
請求項7〜26のいずれか1項の突然変異タンパク質において、
融合パートナーであるタンパク質、タンパク質ドメイン、又はペプチドに、そのN末端及び/又はそのC末端で融合された突然変異タンパク質。
【請求項28】
請求項7〜26のいずれか1項の突然変異タンパク質において、
血清半減期を延長する化合物に接合された突然変異タンパク質。
【請求項29】
請求項28の突然変異タンパク質において、
前記化合物は、ポリアルキレングリコール分子、ヒドロエチルデンプン、免疫グロブリンのFc部分、免疫グロブリンのCH3ドメイン、免疫グロブリンのCH4ドメイン、アルブミン結合ペプチド、又はアルブミン結合タンパク質からなる群から選択される血清半減期を延長する突然変異タンパク質。
【請求項30】
請求項29の突然変異タンパク質において、
前記ポリアルキレングリコールは、ポリエチレン(PEG)又はその活性誘導体である突然変異タンパク質。
【請求項31】
請求項27の突然変異タンパク質において、
前記融合パートナーは、前記突然変異タンパク質の血清半減期を延長するタンパク質ドメインである突然変異タンパク質。
【請求項32】
請求項31の突然変異タンパク質において、
前記タンパク質ドメインは、免疫グロブリンのFc部分、免疫グロブリンのCH3ドメイン、免疫グロブリンのCH4ドメイン、アルブミン結合ペプチド、又はアルブミン結合タンパク質である突然変異タンパク質。
【請求項33】
請求項29又は32の突然変異タンパク質において、
前記アルブミン結合タンパク質は、細菌性アルブミンドメイン又はリポカリン突然変異タンパク質である突然変異タンパク質。
【請求項34】
請求項33の突然変異タンパク質において、
前記細菌性アルブミン結合ドメインは、連鎖球菌性タンパク質Gのアルブミン結合ドメインである突然変異タンパク質。
【請求項35】
請求項29又は32の突然変異タンパク質において、
前記アルブミン結合ペプチドは、Cys−Xaa1−Xaa2−Xaa3−Xaa4−Cysの式を有し、Xaa1はAsp、Asn、Ser、Thr又はTrpであり、Xaa2はAsn、Gln、His、Ile、Leu又はLysであり、Xaa3はAla、Asp、Phe、Trp又はTyrであり、Xaa4はAsp、Gly、Leu、Phe、Ser又はThrである突然変異タンパク質。
【請求項36】
請求項1〜35のいずれか1項の突然変異タンパク質において、
1μM若しくはそれ以下、100μM若しくはそれ以下、1μM若しくはそれ以下、500nM若しくはそれ以下、200nM若しくはそれ以下、100nM若しくはそれ以下、50nM若しくはそれ以下、10nM若しくはそれ以下、又は1nM若しくはそれ以下のK値で非天然標的に結合する突然変異タンパク質。
【請求項37】
請求項7〜36のいずれか1項の突然変異タンパク質をコードするヌクレオチド配列を備えている核酸分子。
【請求項38】
請求項37の核酸分子において、
前記核酸分子の発現を可能にする制御配列に動作可能に結合された核酸分子。
【請求項39】
請求項37又は38の核酸分子において、
ベクターの中に含まれている核酸分子。
【請求項40】
請求項37又は38の核酸分子において、
ファージミドベクターの中に含まれている核酸分子。
【請求項41】
請求項37〜40のいずれか1項の核酸分子を含む宿主細胞。
【請求項42】
請求項7〜36のいずれか1項の突然変異タンパク質の産生方法であって、
前記突然変異タンパク質、前記突然変異タンパク質のフラグメント、又は前記突然変異タンパク質と他のポリペプチドとの融合タンパク質は、遺伝子工学的方法によって、前記突然変異タンパク質をコードする核酸から産生される方法。
【請求項43】
請求項42の方法において、
前記突然変異タンパク質は、細菌性又は真核の宿主生物で産生され、この宿主生物又はその培養物から分離される方法。
【請求項44】
請求項7〜36のいずれか1項の少なくとも1つの突然変異タンパク質を含む医薬組成物。
【請求項45】
所定の標的を結合して検出するための請求項7〜36のいずれか1項の突然変異タンパク質の使用であって、
前記標的を含むと予想される試験サンプルに前記突然変異タンパク質を接合するステップ(a)と、
適切なシグナルによって前記突然変異タンパク質/標的複合体を検出するステップ(b)とを備えている突然変異タンパク質の使用。
【請求項46】
事前選択された部位を化合物が標的とするための請求項7〜36のいずれか1項の突然変異タンパク質の使用であって、
前記化合物に前記突然変異タンパク質を接合するステップ(a)と、
前記事前選択された部位に前記突然変異タンパク質/化合物複合体を送達するステップ(b)とを備えている突然変異タンパク質の使用。
【請求項47】
所定の標的との複合体形成のための請求項7〜36のいずれか1項の突然変異タンパク質の使用。
【請求項48】
医薬組成物の製造のための請求項7〜36のいずれか1項の突然変異タンパク質の使用。
【請求項49】
請求項15〜18のいずれか1項の突然変異タンパク質の使用であって、
前記医薬組成物は、神経変性疾患の治療に用いられる突然変異タンパク質の使用。
【請求項50】
請求項47の使用において、
前記神経変性疾患は、アルツハイマー病である使用。
【請求項51】
請求項19〜22のいずれか1項の突然変異タンパク質の使用であって、
前記医薬組成物は、癌の治療、線維症の治療、神経変性疾患を含む疾患の治療、又は炎症の治療に用いられる突然変異タンパク質の使用。
【請求項52】
請求項7〜36のいずれか1項の突然変異タンパク質を含む診断又は分析キット。
【請求項53】
請求項15〜18のいずれか1項の突然変異タンパク質の有効量を哺乳類に投与することを含む哺乳類の神経変性疾患の治療方法。
【請求項54】
請求項17〜20のいずれか1項の突然変異タンパク質の有効量を哺乳類に投与することを含む哺乳類の癌、線維症及び炎症からなる群から選択される疾患の治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公表番号】特表2013−512683(P2013−512683A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542505(P2012−542505)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069028
【国際公開番号】WO2011/069992
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(512029319)ピエリス アーゲー (3)
【氏名又は名称原語表記】PIERIS AG
【Fターム(参考)】