説明

所望の生物学的特性を与えるクローンを発現ライブラリーから同定する新規方法

【課題】所望の生物学的特性を与えるクローンを発現ライブラリーから同定する方法を提供する。
【解決手段】所望の生物学的特性を与えるクローンのインサートによって発現される(ポリ)ペプチドと特異的に相互作用するリガンドをアレイ形態のクローンの前記ライブラリーの第一レプリカと接触させること、及び前記クローンのライブラリーを相互作用の発生について分析すること、及び/又は所望の生物学的特性を与えるクローンのインサートに特異的な核酸プローブを用いて、アレイ形態に配置された前記クローンのライブラリーの第二レプリカとのハイブリダイゼーション又はオリゴヌクレオチド・フィンガープリントを実施すること、及び前記クローンのライブラリーを特異的なハイブリダイゼーションの発生について分析することからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の生物学的特性を与えるクローンを発現ライブラリーから同定及び/又は特徴づけするための新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質は、機能ユニットへ翻訳されるゲノム配列情報であり、生物学的プロセスを可能にする。大きくて複雑なヒトゲノムの配列を決定しようとする初期の試みは、cDNAレパートリーに代表されるように、発現領域に意図的に注力されてきた(Adams et al., Nature 377 (1995), 3S-174S)。同時に、ほとんどのヒト遺伝子についての発現配列タグ(EST)がヌクレオチドデータベースに集められてきた(Wolfsberg et al., Nucl. Acids Res. 25 (1997), 1626-1632)。しかしながら、機能がこれまでに特定されたのは、これらの配列のごく一部でしかない(Strachan et al., Nature Genet. 16 (1997), 126-132)。この構造-機能の不一致への最も直接的な解決法は、ある組織の機能状態とある遺伝子セットの発現とを直接関連づけることであると考えられる。現在、遺伝子発現の様々なレベルで、この目標に迫る技術がある。転写レベルでは、複雑なプローブ(DeRisi et al., Science 278 (1997), 680-686; Schena et al., Science 270 (1995), 467-470; Bernard et al., Nucl. Acids Res. 24 (1997), 1435-1442; Mallo et al., Int. J. Cancer 74 (1997), 35-44)又は短オリゴヌクレオチドのセット(Velculescu et al., Science 270 (1995), 484-487)とcDNAアレイとのハイブリダイゼーション、SAGE配列決定アプローチ(Wodicka et al., Nature Biotechnol. 15 (1997), 1359-1367)又はオリゴヌクレオチドアレイへのハイブリダイゼーション(Maier et al., Drug Discovery Today 2 (1997), 315-324)によって遺伝子発現パターンが分析されてきた。
【0003】
翻訳レベルでは、タンパク質抽出物が2次元ゲル上に高解像度でマップされた(Klose et al., Electrophoresis 16 (1995), 1034-1059)。配列情報を得るのにタンパク質スポットの質量分析法も使用された(Clauser et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 (1995), 5072-5076)。哺乳類細胞でクローンcDNAを発現させ、そのタンパク質産物を細胞タンパク質の2次元電気泳動パターンに適合させる方法がLeffers et al.(Leffers et al., Electrophoresis 17 (1996), 1713-1719)に記載された。整理されたcDNAライブラリーからプールしたクローンがin vitroの転写/翻訳により発現され、2次元電気泳動によって分析された(Lefkovits et al., Appl. Theor. Electrophor. 5 (1995), 35-42; Behar et al., Appl. Theor. Electrophor. 5 (1995), 99-105; Lefkovits et al., Appl. Theor. Electrophor. 5 (1995), 43-47)。
【0004】
これまで、個々のクローンについてのDNA配列情報から直接タンパク質産物を導き、再び全ゲノムレベルへ戻すための技術はない。そのような方法は、特に生物学的材料の大規模分析に重要であろう。
【0005】
どちらかと言えば、そのような材料の大規模分析用に設計された先行技術の方法は、労力と時間がひどくかかり、さらに、不適切に多数の偽陽性クローンを原理的に与えるものである。従って、本発明の根底にある技術課題は、上記の課題を克服して、特に哺乳類ゲノムのレベルでのライブラリースクリーンにおける偽陽性クローンの数を有意に減らす方法を提供することであった。前記技術課題の解決は、本発明の特許請求で特徴づけられる態様を提供することにより達成される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Adams et al., Nature 377 (1995), 3S-174S
【非特許文献2】Wolfsberg et al., Nucl. Acids Res. 25 (1997), 1626-1632
【非特許文献3】Strachan et al., Nature Genet. 16 (1997), 126-132
【非特許文献4】DeRisi et al., Science 278 (1997), 680-686
【非特許文献5】Schena et al., Science 270 (1995), 467-470
【非特許文献6】Bernard et al., Nucl. Acids Res. 24 (1997), 1435-1442
【非特許文献7】Mallo et al., Int. J. Cancer 74 (1997), 35-44
【非特許文献8】Velculescu et al., Science 270 (1995), 484-487
【非特許文献9】Wodicka et al., Nature Biotechnol. 15 (1997), 1359-1367
【非特許文献10】Maier et al., Drug Discovery Today 2 (1997), 315-324
【非特許文献11】Klose et al., Electrophoresis 16 (1995), 1034-1059
【非特許文献12】Clauser et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 (1995), 5072-5076
【非特許文献13】Leffers et al., Electrophoresis 17 (1996), 1713-1719
【非特許文献14】Lefkovits et al., Appl. Theor. Electrophor. 5 (1995), 35-42
【非特許文献15】Behar et al., Appl. Theor. Electrophor. 5 (1995), 99-105
【非特許文献16】Lefkovits et al., Appl. Theor. Electrophor. 5 (1995), 43-47
【発明の概要】
【0007】
本発明は、所望の生物学的特性を与えるクローンを発現ライブラリーから同定及び/又は特徴づけするための新規な方法に関する。本発明の方法は、そのクローンがアレイ形態で配置されている前記発現ライブラリーのクローンの組換えインサートとともに融合タンパク質として発現されるタグのような、少なくとも1つの(ポリ)ペプチドの発現について分析する工程を含む。前記(ポリ)ペプチドは、前記インサートにN末端か又はC末端で融合し得る。本発明の方法は、前記所望の生物学的特性を与えるクローンのインサートによって発現される(ポリ)ペプチドと特異的に相互作用するリガンドをアレイ形態のクローンの前記ライブラリーの第一レプリカと接触させること、及び前記クローンのライブラリーを相互作用の発生について分析すること、及び/又は所望の生物学的特性を与えるクローンのインサートに特異的な核酸プローブを用いて、アレイ形態に配置された前記クローンのライブラリーの第二レプリカのハイブリダイゼーション又はオリゴヌクレオチド・フィンガープリントを実施すること、及び前記クローンのライブラリーを特異的なハイブリダイゼーションの発生について分析することを含む。最後に、本発明の方法は、工程(a)における少なくとも1つの(ポリ)ペプチド発現、及び/又は工程(b)における相互作用、及び/又は工程(c)におけるハイブリダイゼーション又はオリゴヌクレオチド・フィンガープリントが検出され得るクローンを同定することを必要とする。本発明はまた本発明の方法を実施するのに有用なキットにも関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、高密度フィルター上でRGS・His抗体を用いた、タンパク質発現クローンのRGS-Hisの検出を示す。同一2検体(デュプリケート)でアレイ状態にある27,648個のクローンを示すフィルターをRGS・His抗体でスクリーニングし、His-6タグのついた組換えタンパク質を発現するクローンを検出した。
【図2】図2は、GAPDH発現クローンの同定を示す。(a)同一2検体でアレイ状態にある27,648個のcDNAクローンを表すDNAフィルターをGAPDH特異的DNAプローブでスクリーニングしたもの。(b)(a)と同一のクローンを表す同一のタンパク質フィルターを抗GAPDH抗体でスクリーニングしたもの。対応するフィルター部分が示されている。
【図3】図3は、異なるプローブと抗体によって同定されたクローンのカテゴリーを示すベン図である。各円は、個々のプローブにより同定されたクローンの組合せを表す。共通部分のクローンは複数のプローブによって検出された。
【図4a】図4aは、GAPDH(a)クローンの配列の配列並置を示す。GAPDHのオープンリーディングフレームを空白のボックスとして示す。各ラインは、それぞれのクローンに存在すると予測される配列の長さを示し、より太い部分は、実際に配列を決定して完全長のmRNAに並置されたフラグメントを示す。文字A〜Eは図3のカテゴリーを示す。
【図4b】図4bは、HSP90α(b)クローンの配列の配列並置を示す。HSP90αのオープンリーディングフレームを空白のボックスとして示す。各ラインは、それぞれのクローンに存在すると予測される配列の長さを示し、より太い部分は、実際に配列を決定して完全長のmRNAに並置されたフラグメントを示す。文字A〜Eは図3のカテゴリーを示す。
【図5a】図5aは、RGS・His及び/又はGAPDH(a)に対する特異抗体によって検出されたクローンのタンパク質産物を示す。上部のボックスのシェードと数字は、高密度フィルター上のシグナル強度を示す。細胞のタンパク質全体をクーマシーブルーで染色した。クローンのカテゴリーは図3と同じである。
【図5b】図5bは、RGS・His及び/又はHSP90α(b)に対する特異抗体によって検出されたクローンのタンパク質産物を示す。上部のボックスのシェードと数字は、高密度フィルター上のシグナル強度を示す。細胞のタンパク質全体をクーマシーブルーで染色した。クローンのカテゴリーは図3と同じである。
【図6】図6は、384穴マイクロタイタープレートからPVDF膜へのタンパク質溶液トランスファーのトランスファースタンプを示す。各16個のバネ上げステンレス鋼のピンがPOM(ポリオキシメチレン、ポリホルムアルデヒド、ポリアセテート)本体に取り付けられている。ピン間距離は4.5 mmである。付着末端のチップサイズは250μmと測定された。
【図7A】図7Aは、マイクロアレイでの特定タンパク質の検出感度を示す。等モル濃度(100ピコモル/μl〜1フェムトモル/μl)の精製ヒトGAPDH(同一2検体:19-24及び43-48)、ヒトbHSP90α(同一2検体:7-12及び31-36)及びラットbBIP(同一2検体:13-18及び37-42)を2つの同一系列の同一2検体としてスポットし(5×5 nl)、モノクローナル抗GAPDH抗体を用いて検出した。A:PVDFフィルター膜上のスポットアレイ(128検体/1.9×1.9 cm、4×4垂直式の同一2検体スポッティングパターン、黒い同一2検体はガイドスポット、指定通りに同一2検体を計数)を示す。
【図7B】図7Bは、マイクロアレイでの特定タンパク質の検出感度を示す。等モル濃度(100ピコモル/μl〜1フェムトモル/μl)の精製ヒトGAPDH(同一2検体:19-24及び43-48)、ヒトbHSP90α(同一2検体:7-12及び31-36)及びラットbBIP(同一2検体:13-18及び37-42)を2つの同一系列の同一2検体としてスポットし(5×5 nl)、モノクローナル抗GAPDH抗体を用いて検出した。B:A(ガイドスポットを除く)の同一2検体の相対平均強度。同一2検体の番号(Aと同じ)、スポットタンパク質の名称と量、及び検出閾値を示す。
【図8A】図8Aは、モノクローナル抗体RGS-His(Qiagen)を用いてマイクロアレイ上に検出された、アレイ状hEx1ライブラリーのクローンに由来するRGS-His6-タグ付き融合タンパク質のハイスループット発現を示す。92クローンの粗濾過溶解液を96穴マイクロタイタープレートからスポットしたが、このうち4穴に対照タンパク質が含まれる(H1、インサートのないベクターpQE-30NST;H2、bHSP90α、クローンN15170、ベクターpQE-BH6;H3、GAPDH、クローンD215、ベクターpQE-30NST;H4、bBIP、ベクターpQE-BH6)。A:同一2検体の相対強度を斜線で示す、検出の再現性;挿入部分:PVDFフィルター膜上のスポットアレイ(図7と同様に、下の二重ガイドスポットは方向付けのもの)。
【図8B】図8Bは、モノクローナル抗体RGS-His(Qiagen)を用いてマイクロアレイ上に検出された、アレイ状hEx1ライブラリーのクローンに由来するRGS-His6-タグ付き融合タンパク質のハイスループット発現を示す。92クローンの粗濾過溶解液を96穴マイクロタイタープレートからスポットしたが、このうち4穴に対照タンパク質が含まれる(H1、インサートのないベクターpQE-30NST;H2、bHSP90α、クローンN15170、ベクターpQE-BH6;H3、GAPDH、クローンD215、ベクターpQE-30NST;H4、bBIP、ベクターpQE-BH6)。B:図7と同様の図。インサートのリーディングフレームが知られている場合の(+)か(-)を示す(特異性の閾値は相対強度7,500に任意設定した)。
【図9A】図9Aは、図8Aのように、アレイ状hEx1ライブラリーのクローンから発現されるRGS-His6-タグ付き融合タンパク質の同一マイクロアレイに対する3種のモノクローナル抗体の特異性試験を示す。A:モノクローナル抗GAPDH(H3、GAPDH、クローンD215、ベクターpQE-30NST);特異性の閾値は相対強度25,000に任意設定した。
【図9B】図9Bは、図8Aのように、アレイ状hEx1ライブラリーのクローンから発現されるRGS-His6-タグ付き融合タンパク質の同一マイクロアレイに対する3種のモノクローナル抗体の特異性試験を示す。B:モノクローナル抗HSP90α(H2、bHSP90α、クローンN15170、ベクターpQE-BH6;H10、60Sリボソームタンパク質、L18A;H3、GAPDH、クローンD215、ベクターpQE-30NST);特異性の閾値は相対強度25,000に任意設定した。
【図9C】図9Cは、図8Aのように、アレイ状hEx1ライブラリーのクローンから発現されるRGS-His6-タグ付き融合タンパク質の同一マイクロアレイに対する3種のモノクローナル抗体の特異性試験を示す。C:モノクローナル抗αチューブリン(F9及びA4、RF(+)αチューブリンクローン;C7、RF(-)αチューブリンクローン;B1及びB12、未知の遺伝子;H3、GAPDH、クローンD215、ベクターpQE-30NST;G1、RF(-)βチューブリンクローン;E5、RPL3リボソームタンパク質、L3;H10、RPL18Aリボソームタンパク質、L18A;E6及びD8、RPS2リボソームタンパク質、S2;F7、RPS3Aリボソームタンパク質、S3A;E3、RPS25リボソームタンパク質、S25);特異性の閾値は相対強度25,000に任意設定した。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な説明
本発明は、以下の工程を含んでなる、所望の生物学的特性を与える発現ライブラリーのクローンを同定及び/又は特徴づけする方法に関する:
(a)アレイ形態で配置されている前記発現ライブラリーのクローンの組換えインサートの発現産物とともに融合タンパク質として発現される少なくとも1つの(ポリ)ペプチドの発現について分析すること、
(b)前記所望の生物学的特性を与えるクローンのインサートによって発現される(ポリ)ペプチドと特異的に相互作用するリガンドを、アレイ形態のクローンの前記ライブラリー又は前記ライブラリーの第一レプリカと接触させること、及び前記クローンのライブラリーを相互作用の発生について分析すること;及び/又は、
(c)所望の生物学的特性を与えるクローンのインサートに特異的な核酸プローブを用いて、アレイ形態に配置されたクローンの前記ライブラリー又は前記第一レプリカ又は前記ライブラリーの第二レプリカとのハイブリダイゼーション又はオリゴヌクレオチド・フィンガープリントを実施すること、及び前記クローンのライブラリーをハイブリダイゼーションの発生について分析すること;及び
(d)工程(a)における少なくとも1つの(ポリ)ペプチドの発現、及び/又は工程(b)における相互作用、及び/又は工程(c)における特異的なハイブリダイゼーション又はオリゴヌクレオチド・フィンガープリントが検出され得るクローンを同定すること及び/又は特徴づけること。
【0010】
本明細書で使用される「組換えインサート」という用語は、前記少なくとも1つの(ポリ)ペプチドをコードする核酸フラグメントとともにオープンリーディングフレームを産生するような、前記発現ライブラリーの製造に使用される発現ベクターのなかに存在する核酸フラグメントを意味するが、前記オープンリーディングフレームが発現すると、前記融合タンパク質を生じる。
【0011】
本明細書で使用される「発現ライブラリーのクローン」という用語は、組換え遺伝物質を含有して発現ライブラリーの一部となる、増殖可能で、本質的にクローン性の生物学的材料を意味する。典型的には、この用語は細菌性の形質転換細胞に言及するが、他の形質転換細胞や組換えウイルス性の物質やバクテリオファージに関することもある。「発現ライブラリー」という用語は、当技術分野でよく理解されている;例えば、Sambrook et al., "Molecular Cloning, a Laboratory Handbook", 2nd edition (1989), CSH Press, Cold Spring Harbor, N. Y.を参照のこと。好ましくは、発現ライブラリーはインデューサーによって誘導され得る。インデューサーは当技術分野で知られていて、例えば、IPTGを包含する。様々なタイプの発現ライブラリーが当技術分野で知られている。これらのタイプのすべてが本発明に含まれる。好ましいタイプのライブラリーは、エクソントラッピングから生じるライブラリー(即ち、エクソンが捕捉されたライブラリー)、又はシャトルベクター(例えば、原核生物及び真核生物のシステム、多重原核生物及び/又は多重真核生物システムにおいて使用され得るベクター)でつくられるライブラリーである。さらに、発現ライブラリーは多種多様な供給源から構築されることがよく知られている。また、本発明は上記の方法におけるすべての前記供給源の使用を想定する。そのような供給源は、例えば、哺乳動物又は他の真核生物の細胞、組織、細菌、他の微生物、植物、酵母、血液、又は細胞系であり得る。
【0012】
「所望の生物学的特性」という用語は、機能的な特性だけでなく構造的な特性のような非機能的な特性も含むように考えられている。機能的な特性は、例えば、抗体やフラグメント、又はそれらの誘導体によって与えられるような結合特性であり得る。別の選択肢では、前記機能的な特性は、酵素活性により提供されるような、標的分子の代謝回転に関する場合がある。一方、非機能的な特性は、例えば核酸ハイブリダイゼーションによって検出され得る核酸の一次構造に関する場合がある。
【0013】
「(ポリ)ペプチド」という用語は、天然に存在するか又は組換え的、化学的又は他の手段によって産生又は修飾されたペプチドとポリペプチドの両方に言及し、所望によりネーティブなタンパク質とほとんど同じようなやり方で、タンパク質の3次元構造をとって、翻訳後にプロセシングを受ける場合もある。
【0014】
「融合タンパク質」という用語は、天然ではそのような(ポリ)ペプチドを形成しない少なくとも2つの(ポリ)ペプチドからなるか又はそれらを含む(ポリ)ペプチドを意味する。DNAレベルでは、2種又はそれ以上のコード配列が正しいフレームで融合している。
【0015】
本明細書で使用される「アレイ形態」という用語は、複製し得る規則的又は不規則な形態に言及する。好ましいのは規則的な形態、特に、例えば Lehrach et al., Interdisciplinary Science Reviews 22 (1997), 37-44 に記載されるような高密度グリッドである。
【0016】
本明細書で使用される「リガンド」という用語は、その3次元構造により所望の(ポリ)ペプチドと特異的に相互作用し得る任意のタイプの分子を含む。その3次元構造に依存して、前記リガンドはまた、組換えインサートにより発現される(ポリ)ペプチドと非特異的に相互作用する。典型的なリガンドの例は、抗体又はホルモン受容体のような他の受容体である。抗体に関して言えば、非特異的な相互作用の典型的な例は交叉反応である。
【0017】
核酸プローブとの「ハイブリダイゼーション」という用語は、特異的又は非特異的なハイブリダイゼーションに言及する。ハイブリダイゼーションが特異的か非特異的であるかは、当技術分野で知られているストリンジェンシー条件次第である。「特異的なハイブリダイゼーション」という用語は、ストリンジェントな条件に関する。前記ハイブリダイゼーション条件は、例えば Sambrook et al., "Molecular Cloning, a Laboratory Handbook", 2nd edition (1989), CSH Press, Cold Spring Harbor, N. Y.; Ausbel, "Current Protocols in Molecular Biology", Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N. Y. (1989);又はHiggins and Hames (eds) "Nucleic acid hybridization, a practical approach" IRL Press Oxford, Washington DC (1985) に記載されている従来のプロトコールにより決定し得る。特異的なハイブリダイゼーション条件の例は、「4×SSC及び0.1%SDS、65℃でハイブリダイゼーション、次いで0.1×SSC及び0.1%SDS、65℃で洗浄」である。他のやり方では、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、例えば「50%ホルムアミド、4×SSC、42℃」である。非特異的な条件は、例えば「4×SSC及び1%SDS、50℃でハイブリダイゼーション、次いで同一条件で洗浄」である。
【0018】
本発明によれば、工程(b)及び/又は(c)は、前記ライブラリー及び/又は前記ライブラリーの第一レプリカ及び/又は第二レプリカ及び/又はそれ以上のレプリカについて実施し得る。前記ライブラリー又は前記第一又は第二又はそれ以上のレプリカが2種の異なる工程で使用される場合、工程(a)及び/又は(b)の間に加えられる、以後の工程に干渉し得る物質は、好ましくは従来のプロトコールにより、以後の工程の実施に先立って、所望により除去し得る。
【0019】
「クローンを同定する」という用語は、関心対象のクローンを同定するのに適したあらゆるタイプの同定工程を含む。例えば、組換えインサートとともに融合タンパク質として発現される(ポリ)ペプチドがグリーン蛍光タンパク質であり、視覚的に検出可能なラベルで(例、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、又はFITC)リガンド又はプローブが標識されていれば、視覚的な手段によりクローンを同定し得る。さらに、ポジティブ・クローンは、当技術分野でよく知られているブルー/ホワイト選別法によっを同定し得る。他のやり方では、核酸プローブが放射活性ラベルで標識されていれば、X腺フィルムへの露出は所望のクローンを同定することに役立ち得る。クローンはまた質量分析法によっても同定され得る。
【0020】
「オリゴヌクレオチド・フィンガープリント」という用語は、核酸、好ましくはDNAの上に数多くのオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせるときに得られるハイブリダイゼーション・パターン(ハイブリダイゼーション/非ハイブリダイゼーション)を分析して得られる配列の、配列依存的で再現可能な、統計的に有意なパターン又はフィンガープリントを産生することを説明する。
【0021】
本発明の方法は従来技術の方法に優る意義深い利点を示し、哺乳類及び/又は植物及び/又は他の真核生物のゲノムを効率的に分析することに特に適しているが、勿論、他の発現ライブラリー、例えば原核生物や他の微生物由来のゲノムDNA発現ライブラリーの分析にも適用し得る。この新しい方法は発現ライブラリーのスクリーニングにおける偽陽性クローンのバックグラウンドを顕著に減少させる。特に1つ又はそれ以上のライブラリーのなかにある多数のクローンがスクリーニングされるときは、結局は所望の生物学的特性を有さないことが判明するクローンを同定するという時間のかかる作業を回避することが可能になる。当然ながら、これにより、ゲノム及び/又はタンパク質分析におけるコスト要因も有意に減少されるだろう。本発明のさらに特別な利点は、所望のクローンについてライブラリーをスクリーニングするための核酸プローブとリガンドを研究者が選択できることである。工程(a)、(b)及び(c)を組み合わせることにより、本当に所望されるクローンを同定する本発明の方法の信頼性が増すことだろう。驚くべきことに、形質転換細胞のアレイにおける最初のスポッティングに次いでコロニーが増殖すると、前記検出可能な(ポリ)ペプチドがアレイ構造に妨害されずに検出され得ることが、本発明により示し得るのである。このことは、コロニーが約18時間培養されたとしても有効である。
【0022】
前記発現ライブラリーのクローンの組換えインサートとともに融合タンパク質として発現される(ポリ)ペプチドについて言えば、留意すべきは、前記融合タンパク質へ組込まれた1つ又はそれ以上の前記(ポリ)ペプチドの使用を本発明が想定していることである。付帯の実施例から明らかなように、(ポリ)ペプチドをN末端に融合させれば、原則として、N末端(ポリ)ペプチドと正しいフレーム状態にないインサートは速やかに細胞質内で分解されるので、正しいフレームで発現されるインサートを検出することが可能になる。一方、前記(ポリ)ペプチドをC末端に融合させ、前記(ポリ)ペプチドを検出すれば、完全長のインサートを選別することが可能になる。また、本発明は、インサートのN末端及びC末端に融合した1つ又はそれ以上の(ポリ)ペプチドの複合物を想定する。
【0023】
留意すべきは、工程(a)〜(d)を実行するに先立って、試験される生物学的材料へ接近し得る形態でクローンを提示すべきことである。クローンが、例えば細菌の形質転換細胞であれば、前記形質転換細胞は、好ましくは溶解されるべきであろう。そのような溶菌法は当技術分野でよく知られている。
【0024】
本発明の方法にコンピュータ関連技術を適用することにより、1つのライブラリーにつきスクリーニングを1回だけすればよいことが可能になる。これは、後の分析、例えば配列決定により個々のクローンについて産生されたデータをこのスクリーニングに戻して関連づけられるからである。従って、cDNAライブラリーのような発現ライブラリーからタンパク質ライブラリーへの速やかな移行が可能になった。これにより、遺伝子カタログと機能的タンパク質/(ポリ)ペプチドカタログとの直接的な連関が創出される。上記に加え、反応を繰り返しスクリーニングすること又は延長してスクリーニングすることにより、偽陽性クローンを排除する可能性をさらに高めることが可能である。
【0025】
本発明によれば、本方法はまた既知の核酸分子を特徴づけるために使用され得る。
【0026】
本発明の方法の好ましい態様では、前記組換えインサートの前記発現産物とともに融合タンパク質の一部として発現される前記(ポリ)ペプチドは、抗体又はフラグメント又はそれらの誘導体、タグ、酵素、ファージタンパク質又はそのフラグメント、又は融合タンパク質である。
【0027】
上記に特定された(ポリ)ペプチドの任意の態様を検出する方法は当技術分野でよく知られているか、又は当業者によって容易に設計し得る。例えば、抗体は、検出可能なように標識されている抗-抗体によって検出され得る。抗体フラグメント又はその誘導体に関して言えば、これはF(ab’)2、Fab、Fv又はscFvフラグメントを包含し得る。例えば、Harlow and Lane, "Antibodies, A Laboratory Manual", CHS Press (1988), Cold Spring Harbor, N. Y. を参照のこと。さらに、従来法によりタグが検出され得る。同じことは、例えば特定の基質と反応させ、例えば発色反応を検出すること、又は前記酵素に特異的な検出可能に標識された抗体を使用することによって検出され得る酵素にも有効である。抗体はファージ又はそのフラグメントを検出するためにも使用され得る。抗体のラベルはまた当技術分野でよく知られていて、アルカリホスファターゼ(ATTPPHOS)、CSPD、西洋ワサビペルオキシダーゼ、FITC及び放射活性を包含する。また、上記に特定される(ポリ)ペプチドの任意の態様を検出するのに質量分析法も使用され得る。
【0028】
本発明の方法のさらに好ましい態様では、工程(a)における(ポリ)ペプチドの発現についての前記分析は、特異的に相互作用する工程(b)のリガンドとは異なるリガンドを前記(ポリ)ペプチドと接触させ、前記クローンのライブラリーを特定の相互作用の出現について分析することによって達成される。工程(a)で使用されるリガンドは工程(b)で使用されるリガンドと同じクラスであってよいが、リガンドの実際の分子構造は、この2つのリガンドを差別化し得るためには、2つの工程で異なるべきである。
【0029】
本発明の方法の別の好ましい態様では、工程(a)の(ポリ)ペプチド発現についての前記分析が視覚的な手段によって達成される。有利にも、前記(ポリ)ペプチドの発現は、蛍光、生物発光又は燐光のような視覚的手段によって検出され得る。対応するシグナルは、コンピュータ・ユニットに付属し得る写真撮影の手段により保管され得る。対応するシグナルは、高解像CCD検出システムを用いて画像化され、イメージファイルとしてコンピュータにセーブされて保管され、ポジティブ・クローンを記録するカスタムソフトウェアを用いて解析される。
【0030】
前記視覚手段は質量分析法を利用することが最も好ましい。例えば、アレイ状タンパク質の質量分析では、DNA、mRNA及び/又は複雑なハイブリダイゼーションの成果を2-D-PAGEの成果へつなげる架け橋として、タンパク質アレイが使用される。このことは、アレイ・タンパク質(例えば、チップ、質量分析ターゲット又はマトリックス)の質量スペクトルをとり、この質量スペクトルを2-Dゲル上のスポットから得た質量スペクトルと比較することによってなされる。このアプローチを用いると、細胞の(cDNAライブラリーを介した)mRNAレパートリーを(遺伝子の活性を最も直接的に反映する)遺伝子発現の第一レベルとして研究し、細胞、組織、植物、微生物及び/又は生物のタンパク質全体の分析であるプロテオーム分析に関連づけることができる。
【0031】
現在では、1-D及び2-Dゲルからの単離タンパク質は、質量分析法を用いて配列データベースにおいて同定される。しかしながら、わずかな数の既知タンパク質にこれが限定されていることは明らかである。有利にも、発現ライブラリーのクローンによって発現される各タンパク質が「最小タンパク質識別子」(MPI)と命名される構造情報の最小セットにより特定されるという本発明のコンセプトにより、この制限は克服される。MPIの内容、ペプチドマップ、及び追加の構造データは、明白なタンパク質の同定及び質量分析によるハイスループット定量という2通りのやり方で最適化し得る。
【0032】
一度記録されれば、MPIにより、単に測定データを比較することによって、生物学的サンプルにおいて遺伝子産物を跡付けることが促進される。このようにすれば、タンパク質の認識は、タンパク質が「知られている」(即ち、現在のデータベースに存在している)か又は「知られていない」(即ち、現在のデータベースに存在していない)かによらない。これらのスペクトルは、例えば、1-D及び2-D電気泳動ゲルから分離したタンパク質のような、他の供給源に由来するタンパク質の分析から次いで得られるスペクトルを同定するために使用され得る。
【0033】
このことにより、2-D電気泳動により特徴づけられるタンパク質を、対応するmRNA及び遺伝子(cDNA)と結びつける架け橋が提供される。2-Dゲルから採取されるすべてのMPIは、コンピュータをベースとする方法(in silico)によって、組換えタンパク質ライブラリーから得られるMPIと比較され、逆も真なりである。それにより、何千もの生物学的に活性な遺伝子産物がその遺伝子に関連づけられる。この関連性は配列情報と無関係であり、従って、他の生物の機能性プロテオーム分析にも魅力的である。
【0034】
既存の戦略に比較した場合、本発明の戦略にあるもう1つの利点は、質量分析データを、DNA又はタンパク質の配列から予測されるデータとではなく、質量分析データと比較するので、タンパク質の同定に信頼性が増すことにある。前者のアプローチの主な欠点は、基質依存性プロテアーゼの性能、ペプチドの溶解度、質量分析における最終的なシグナル抑制が考慮されていないことである。
【0035】
さらに、本発明のタンパク質アレイにより、安定同位体で標識した組換え相同体を用いることによって、2-Dゲルからとった数千もの異なるタンパク質の質量分析データを研究することが可能になる。さらに、複雑なハイブリダイゼーションによってmRNAレベルをプロファイルするために用いられるcDNAマイクロアレイを産生する無尽蔵の供給源が提供される。
【0036】
本発明の方法の別の好ましい態様では、前記生物学的特性は、細胞、組織又は発生段階の細胞又は組織、微生物、好ましくは細菌、植物又は生物への特異性である。
【0037】
本発明のこの好ましい態様では、例えば細胞、組織又は生物の発生状況や、細胞又は組織の、例えばその起源に関する特異性に関する情報を研究者に提供する特別の比較をなし得る。このことは、あるマーカータンパク質の存在について、起源の異なる2種の組織を比較することによってなし得る。例えば、ある生物の発生状況に関し、6日齢のマウス胚のアレイcDNA発現ライブラリーと9日齢のマウス胚のアレイcDNA発現ライブラリーとの発現プロフィールを比較して、分化により発現される遺伝子を同定して特徴づけることにより、異なる発生段階で発現されるタンパク質を解明することが可能である。
【0038】
本発明の方法のさらに好ましい態様では、前記細胞又は組織は、正常な細胞又は組織、病的な細胞又は組織、又は前処理された細胞又は組織である。
【0039】
細胞又は組織に組み合わせて使用される「前処理された」という用語は、前記細胞又は組織が薬物、アクチベータ、又はリガンドなどにさらされたことを意味する。前記前処理は、原則として、細胞の経路に影響を及ぼし、所望により、前処理されてない細胞に比較して少なくとも1つの表現型の変化をもたらすものである。前記少なくとも1つの表現型の変化は、本発明の方法を用いて検出されることが想定されている。また、病的な組織又は細胞は、健全な組織又は細胞に比較して表現型の違いを示し、本発明の方法で検出され得ると期待される。
【0040】
本発明の方法のもう1つの好ましい態様では、前記クローンは細菌の形質転換細胞、組換えファージ、形質転換された哺乳類、昆虫、真菌、酵母又は植物の細胞である。
【0041】
細菌の形質転換細胞は、好ましくは形質転換された E. coli 細胞であり、組換えファージは、好ましくはM13又はfdファージに由来し、形質転換されたか又はトランスフェクトされた哺乳類細胞はヒーラ細胞か又はCOS細胞であり得る。昆虫細胞に関しては、Spodoptera frugiperda 又は Drosophila melanogaster の細胞が好ましい。好ましい真菌細胞がAspergillus 細胞を含むのに対し、前記酵母細胞は、好ましくは Pichia pastoris 又は Saccharomyces cerevisiae に由来する。留意すべきは、本発明では「形質転換された」と「トランスフェクトされた」という用語が、交換可能なように使用されていることである。
【0042】
前記細菌の形質転換細胞が形質転換された E. coli細胞である場合、以下の実施例で説明されるようなE. coli SCS1細胞が使用されることが最も好ましい。もう1つの最も好ましい態様では、E. coli細胞は、誘導される発現を可能にする、好ましくはまた前記融合タンパク質の一部としてタグを発現するベクター、好ましくは以下の実施例で説明されるようなpQE-30NSTベクターへクローン化されたライブラリーで形質転換される。しかしながら、当業者は、実施例で説明されるようなE. coli細胞及び/又はベクターの構造上及び/又は機能上の特徴についてよく知っているので、本質的に同一の構造上及び/又は機能上の特徴を示す任意のE. coli細胞及び/又はベクターは本発明に含まれる。
【0043】
本発明のもう1つの好ましい態様は、前記アレイ形態が工程(a)〜(c)において実質的に同一のフォーマットを有する方法に関する。
【0044】
本発明のこの態様が特に有用であるのは、1つのマスタープレートからレプリカを産生し、1:1のスケールで結果を比較することができるからである。一方、あまり好ましくないが、アレイ形態は、様々なレプリカ上のクローンを明白に関連づけることが可能である限りにおいて、工程(a)〜(c)の少なくとも2つにおいてスケールが異なるような、異なるフォーマットをとってもよい。
【0045】
本発明の方法のさらに好ましい態様では、前記アレイ形態はグリッド形態である。
【0046】
グリッドは、本明細書の上記考察によれば、発現ライブラリーのクローンの高密度アレイを可能にすべきである。それはさらに、好ましくは、上記Lehrachに記載されたグリッドのフォーマットを有すべきである。
【0047】
本発明の方法の最も好ましい態様では、前記グリッドは、マイクロタイタープレート、シリカウェーハー、チップ、質量分析ターゲット、又はマトリックスのディメンジョンを有する。
【0048】
上記のディメンジョンを使用すれば、従来の実験材料を本発明の方法に利用することが可能である。さらに、上記のディメンジョンは、多数のクローンを小スケール装置で簡便に分析することを可能にする。
【0049】
本発明の方法のもう1つの好ましい態様では、前記クローンは固形支持体に固定されている。
【0050】
固形支持体は、可撓性か不撓性であり得る。この態様は、発現ライブラリーのアレイ状クローンの簡便な保管と輸送を特に考慮する。特に好ましい態様は、前記固形支持体に固定されている凍結乾燥クローンに関する。
【0051】
本発明の方法のさらに好ましい態様は、前記固形支持体がフィルター、膜、磁気ビーズ、シリカウェーハー、ガラス、金属、チップ、質量分析ターゲット又はマトリックスである方法に関する。
【0052】
フィルター又は膜に関しては、PVDF又はナイロンから生産されるものが特に好ましい。フィルター又は膜に関しては、高いDNA結合能力を有するナイロン膜フィルター(例えば、Hybond N+、アマシャム)の上でDNA又はDNA含有クローンがスポット/グリッドされ、増殖すること、及び高いタンパク質結合能力を有するポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜フィルター(例えば、Hybond PVDF、アマシャム)の上でタンパク質又はタンパク質発現クローンがスポット/グリッドされ、増殖することが特に好ましい。
【0053】
本発明の方法のさらに好ましい態様では、前記リガンドの少なくとも1つは、(ポリ)ペプチド、ファージ又はそのフラグメント、血液、血清、毒素、阻害剤、医薬品又は医薬品候補物質、非タンパク質又は部分的にタンパク質である受容体、触媒ポリマー、酵素、核酸、PNA、ウイルス又はその部分、細胞又はその部分、無機化合物、結合体、色素、組織又は前記リガンドを含む結合体である。
【0054】
従って、リガンドは多種多様な性質のものであり得る。重要にも、様々なタイプのリガンドが直接的又は間接的に検出され得るので、所望されるクローンの同定が可能になる。
【0055】
本発明の方法のもう1つの好ましい態様では、前記(ポリ)ペプチドは抗体又はフラグメント又はその誘導体、ホルモン又はそのフラグメント、又は酵素又はフラグメント又はその誘導体である。
【0056】
上記に使用されるような、「フラグメント又はその誘導体」という用語は、抗体、ホルモン又は酵素が、そのある部分を欠損するように修飾されてもリガンドとして機能するその能力を本質的に維持し得ることを意味するものである。
【0057】
上記の好ましい(ポリ)ペプチドは、特に用途が広く、扱いやすく、多くの異なる数で提供され得る。
【0058】
本発明の方法のさらに好ましい態様では、工程(b)での前記相互作用は特異的な相互作用である。
【0059】
この状態の例は、抗体が1つのエピトープ又は(ポリ)ペプチド配列と特異的に結合する場合であり、例えば抗ヒスチジン抗体は、6×-ヒスチジンタグ、5×-ヒスチジンタグ、RGS-6×-ヒスチジンタグ、又は1つのタンパク質にのみ見出されるエピトープと特異的に結合する。
【0060】
本発明の方法の追加的な好ましい態様では、工程(b)の前記相互作用は非特異的な相互作用である。
【0061】
この状態の例は、同一のDNA配列からはコードされないが、類似の3次元構造、電荷などを共有し、別のタンパク質上に存在し得るエピトープに抗体が非特異的に結合する場合である。本発明によって示し得るように、本発明の応用は、抗体のようなリガンドの選択性又は交叉反応性を決定することであり得る。抗体が必ずしもタンパク質のライブラリー全体に対して試験されるわけではないので、タンパク質のマイクロアレイ上で抗体の交叉反応性を検出することは驚くにあたらない。潜在可能な抗原のアレイに対して抗体をスクリーニングして共通のエピトープを検出する本発明の方法は、様々な構造バッテリーに直面する、細胞全体や組織の免疫組織化学や生理学的研究に使用される試薬にとって、特に重要であり得る。他のやり方、又は追加的なやり方では、抗原特異性が知られていない抗体(例えば、リンパ腫のタンパク質)を、タンパク質分子のごく多様なレパートリーに対する結合についてスクリーニングし得る。これらタンパク質はいずれもアレイ状cDNAライブラリーの単離クローンから発現されるので、対応するインサートを容易に配列決定して、抗原コード遺伝子を同定することが可能である。本発明によれば、抗体、血清などの結合性及び/又は非特異性を特徴づける方法を、タンパク質ファミリーに関する相同性の研究、及び/又は結合ドメインやエピトープを決定することのために使用することが想定されている。さらに、この技術は抗原-抗体スクリーニングに限定されず、任意のリガンド-受容体システムへ適用し得る。
【0062】
本発明の方法のもう1つの好ましい態様では、工程(c)での前記ハイブリダイゼーションはストリンジェントな条件で起こる。他のやり方では、工程(c)の前記ハイブリダイゼーションは非ストリンジェントな条件で起こることが好ましい。
【0063】
ストリンジェント/非ストリンジェントなハイブリダイゼーションの意義や適用に関して言えば、特異的/非特異的な相互作用の考察に関連して説明したこととほとんど同じことが当てはまる。
【0064】
本発明の方法の特に好ましい態様では、前記タグは、c-myc、His-タグ、FLAG、アルカリホスファターゼ、EpiTagTM、V5タグ、T7タグ、XpressTMタグ又はStrep-タグ、融合タンパク質、好ましくはGST、セルロース結合ドメイン、グリーン蛍光タンパク質、マルトース結合タンパク質又はlacZである。本発明によれば、2種又はそれ以上のタグが融合タンパク質に含まれ得る。
【0065】
本発明の方法に利用される発現ライブラリーは、様々な供給源から構築され得る。例えば、それはゲノムライブラリーか抗体ライブラリーであり得る。好ましくは、前記クローンのライブラリーはcDNAライブラリーを含む。
【0066】
アレイ形態は、好ましくは自動化装置を用いて産生される。
【0067】
本発明の方法の特に好ましい態様では、前記ライブラリーの前記アレイ形態及び/又は前記レプリカは、ピッキングロボット及び/又はスポッティングロボット及び/又はグリッディングロボットによって産生される。
【0068】
本発明のもう1つの好ましい態様は、前記所望されるクローンの核酸インサートを配列決定することをさらに含んでなる方法に関する。前記クローンの配列決定により、多くの場合、本発明の方法で得られる最終的に所望される情報が提供される。DNA又はRNAの配列決定プロトコールは当技術分野でよく知られていて、例えば Sambrook、上記に記載されている。
【0069】
本発明の方法の最後の好ましい態様では、本方法は所望されるクローンのインサートによってコードされる(ポリ)ペプチドを同定することを含む。所望されるクローンから発現される前記(ポリ)ペプチドの同定は、多種多様な方法により達成され得る。そのような方法は、アフィニティークロマトグラフィー、SDS-PAGE、ELISA、RIA等のような標準的な生化学の方法として、特に知られている。(ポリ)ペプチドを十分特徴づければ、医薬応用(例えばペプチド模擬体)のために、対応する化学成分を設計し得る。
【0070】
本発明はまた、所望によりベクターに含まれるインサート又は所望の生物学的特性を与えるクローンのインサートの発現産物を製剤化することを含んでなる、医薬組成物を製造する方法に関する。ここで、前記インサート又は発現産物は上記に開示した本発明の方法によって同定及び/又は特徴づけされる。
【0071】
さらに、本発明は、本発明の方法により製造される医薬組成物に関する。
【0072】
本発明の医薬組成物は、製剤的に許容される担体をさらに含み得る。好適な製剤用担体の例は当技術分野でよく知られていて、リン酸緩衝化生理食塩水、水、水中油型エマルジョンのようなエマルジョン、様々なタイプの湿潤剤、無菌溶液などが含まれる。そのような担体を含んでなる組成物は、よく知られた従来法によって製剤化され得る。これら医薬組成物は、好適な用量で被検者へ投与され得る。好適な組成物の投与は、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所又は皮内投与といった様々な方法により達成し得る。投与方式は、担当医や種々の臨床要因によって決定される。医学上の技術でよく知られているように、ある患者への投与量は、患者のサイズ、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性、投与の時間と経路、一般健康状態、同時投与される他の薬剤を包含する多くの要因に依存する。概して言えば、医薬組成物を定期的に投与する場合の治療方式は、1日につき1μg〜10 mg単位の範囲にあるべきである。治療方式が連続注入であれば、1分につき体重キログラムあたり、それぞれ1μg〜10 mg単位の範囲にあるべきである。進捗度合いは定期評価によってモニターし得る。用量は変わり得るが、DNAを静脈内投与するときの好ましい投与量は、DNA分子の約106〜1012コピーである。本発明の組成物は、局所的又は全身的に投与し得る。投与は概して腸管外、例えば静脈内であろうが、DNAは、例えば内部/外部標的部位への生物的(biolistic)デリバリー又は動脈内部位へのカテーテルによって標的部位へ直接投与してもよい。腸管外投与用の調製物には、無菌の水性又は非水性溶液、懸濁液及びエマルジョンが含まれる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、及びオレイン酸エチルのような注射し得る有機エステルである。水性の担体には、水、アルコール/水溶液、生理食塩水や緩衝化媒質を含むエマルジョン又は懸濁液が含まれる。腸管外投与の担体には塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース/塩化ナトリウム、乳酸リンゲル、又は固定油が含まれる。静脈内投与の担体には、体液や栄養補充物、電解質補充物(リンゲルデキストロースに基づいたもの)、等が含まれる。例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガスといった保存剤や他の添加剤もあってよい。
【0073】
本発明には、所望によりベクターに含まれる様々なインサートが、単独か又は標準ベクター及び/又は遺伝子デリバリーシステムを用いる組合せのいずれかで、及び所望により製剤的に許容される担体又は賦形剤とともに投与されることが想定されている。投与に続き、前記ポリヌクレオチド又はベクターは、被検者のゲノムへ安定的に組み込まれ得る。また、ある種の細胞又は組織に特異的であり、前記細胞に存続するウイルスベクターが使用される場合がある。好適な医薬担体や賦形剤は当技術分野でよく知られている。本発明により製造される医薬組成物は様々な種類の疾患(例えばB細胞及び/又はT細胞に関連した免疫欠損や悪性腫瘍に関連した疾患、悪性/非悪性の細胞/組織の疾患、及び/又は病原微生物と非病原微生物、疾患抵抗性及び/又はウイルス抵抗性の植物と非抵抗性の植物といった様々な系統の生物の間にある疾患、及び/又は細胞、組織、生物、微生物、植物、ウイルス、ファージ、細菌、酵母などの任意の2系統の間にある疾患)を予防又は治療、又は遅延させるために使用され得る。
【0074】
さらに、本発明のポリヌクレオチド又はベクターを含む本発明の医薬組成物を遺伝子治療に使用することが可能である。好適な遺伝子デリバリーシステムは、リポソーム、受容体介在性のデリバリーシステム、裸のDNA、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ関連ウイルスといったウイルスベクターをとりわけ包含し得る。遺伝子治療のために核酸を体内の特定部位へデリバリーすることは、Williams (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88 (1991), 2726-2729)により記載されるような生物的デリバリーシステムを用いても達成され得る。
【0075】
導入されたインサートやベクターが前記細胞への導入後に遺伝子産物を発現し、好ましくは前記細胞の生存中にそのままの状態で残存することが理解されるべきである。例えば、適切な調節配列の制御下でポリヌクレオチドを安定的に発現する細胞系は、当技術分野の当業者によく知られている方法によって工学処理され得る。宿主細胞は、ウイルスの複製起点を含有する発現ベクターを使用するよりは、同一のプラスミドか別個のプラスミドのいずれかにある本発明のポリヌクレオチドと選択マーカーを用いて形質転換され得る。異種DNAの導入後、工学処理した細胞を栄養豊富な培地で1〜2日間増殖させた後、選択培地へ移される。組換えプラスミド内の選択マーカーが選択抵抗性をもたらすので、その染色体にプラスミドが安定的に組込まれ、クローン化されて細胞系へ拡張し得るフォーカスを形成するまで増殖する細胞を選択することが可能になる。そのような工学処理された細胞系はまた、例えばB細胞/T細胞相互作用に関わる化合物を検出するスクリーニング方法においても特に有用である。
【0076】
限定しないが、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler, Cell 11 (1977), 233)、ヒポキサンチンーグアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48 (1962), 2026)、及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy, Cell 22 (1980), 817)(それぞれ、tk-、hgprt-又はaprt-細胞の系)を包含する、数多くの選択システムが使用され得る。また、代謝拮抗剤への抵抗性は、メトトレキセート抵抗性をもたらすdhfr(Wigler, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77 (1980), 3567; O'Hare, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78 (1981), 1527);マイコフェノール酸抵抗性をもたらすgpt(Mulligan, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78 (1981), 2072);アミノグリコシドG-418抵抗性をもたらすneo(Colberre-Garapin, J. Mol. Biol. 150 (1981), 1);ヒグロマイシン(Santerre, Gene 30 (1984), 147)又はピューロマイシン(pat、ピューロマイシンN-アセチルトランスフェラーゼ)抵抗性をもたらすhygroを選択する基礎として使用され得る。これまでに記載されている追加の選択遺伝子には、例えば、細胞がトリプトファンの代わりにインドールを利用することを可能にするtrpB;細胞がヒスチジンの代わりにヒスチノールを利用することを可能にするhisD(Hartman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85 (1988), 8047);オルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤の2-(ジフルオロメチル)-DL-オルニチン、DFMOへの抵抗性をもたらすODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)(McConlogue, 1987, In: Current Communications in Molecular Biology, Cold Spring Harbor Laboratory ed.)がある。
【0077】
本発明はまた、固形支持体に固定していると上記に言及されるような発現ライブラリーの少なくとも2つのレプリカを含んでなるキットにも関する。本発明のキットは、本発明の方法を実行するのに特に適している。本明細書では、様々なタイプの可能で好ましい固形支持体を上記に規定した。好ましくは、本発明のキットは、上記に規定したようにさらに少なくとも1種のリガンドを含む。
【0078】
本発明のキットの成分は、所望により緩衝液及び/又は溶液に溶けた状態で、バイアルのような容器にパッケージされ得る。1つ又はそれ以上の前記成分は、1つの同一容器に適宜パッケージされ得る。
【0079】
本明細書に引用した文献は参照により本明細書に組込まれている。
【0080】

以下の実施例は説明のためであって、本発明を限定しない。これらは使用され得る典型的なものであるが、当技術分野の当業者に知られている他の方法も代替的に使用され得る。
【実施例】
【0081】
実施例1:アレイ状ヒトcDNA発現ライブラリーの構築
指向性にクローン化したヒト胎児脳のcDNAライブラリー(hEx1)を、His6-タグ付き融合タンパク質のIPTG誘導発現ベクターであるpQE-30NSTにおいて構築した。pQE-30NSTは、ファージT5プロモーター及びIPTG誘導組換えタンパク質を発現させる2つのlacオペレーターを担う、pBR322をベースとする発現ベクターであるpQE-30(Qiagen)より、以下のようにして構築した;第一工程では、pQE-30の唯一のPstI部位へ、BGlII及びNotl部位を担う合成オリゴヌクレオチドを挿入することによりpQE-30Nを産生した。次の工程では、SP6プロモーターを担うSP6プロモーターオリゴヌクレオチドを、pQE-30NのBamHIとSalI部位の間に挿入した後、T7プロモーターを担う第二のオリゴヌクレオチドを、HindIIIとNotI部位の間に挿入した。得られたベクター、pQE-30NSTは、SalIとNotIの突出を有するcDNAのクローニングに使用し得る。このインサートは、SP6 RNAポリメラーゼを用いてセンス方向に、T7 RNAポリメラーゼを用いてアンチセンス方向に、in vitroで転写され得る。
【0082】
14種のクローンのPCR分析により、約1.4 kbの平均インサートサイズが得られた。
【0083】
pSE111を担っているE. coli SCS(Stratagene)を宿主株として使用し、この発現ライブラリーを構築した。pSE111は、pSBETcから構築した(Schenk et al., BioTechniques 19(2)(1995), 196-198)。pSBETcはpACYC177をベースとする発現ベクターであり、カナマイシン抵抗遺伝子のargU遺伝子、及び組換えタンパク質を発現させるT7 RNAポリメラーゼのプロモーター部位を担う(Schenk et al., BioTechniques 19 (1995), 196ff)。ヘルパープラスミドのpSE111は、lacリプレッサー遺伝子、及びAGAとAGGのアルギニンコドンを認識する稀なtRNAをコードするargU(dnaY)遺伝子を担うが(Brinkmann et al., Gene 85 (1989), 109-114)、pSBETから2つの工程で構築した。
【0084】
Xmnl-EcoRVフラグメント、ヌクレオチドの2041-2521位をpSBETcから切出して、T7プロモーター領域を除去した。
【0085】
lacIQ遺伝子を含有する1.2 kbのEcoRIフラグメントをプラスミドpVH1(Haring et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82 (1985), 6090-6094)から切出し、工程(i)から得られるプラスミドの唯一のEcoRI部位へ挿入した。lacIQインサートを2つの可能な配向で有する5.1 kbのプラスミドが得られたが、lacIQ遺伝子のpSE111転写は、公表されたpSBETcのマップ(Schenk et al., BioTechniques 19 (1995), 196ff)では時計方向であった。このプラスミドは、cDNA発現ライブラリーの宿主株として使用されるE. coli SCS1株(Stratagene)に存在していた。
【0086】
ピッキング/グリッディングロボットを用いて、80,640個のクローンを384穴マイクロタイタープレートへ刺し入れ、ナイロン/ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)フィルターの上に高密度でグリッドした。ナイロンフィルターをDNAハイブリダイゼーション用に処理し(DNAフィルター)、PVDFフィルターは、タンパク質発現を誘導するIPTGを含有する寒天プレート上に移し、タンパク質検出用に処理した(タンパク質フィルター)。
【0087】
実施例2:高密度フィルター上でのタンパク質発現スクリーニング
pQE-30NSTベクターから過剰発現される組換え融合タンパク質のN末端配列、RGSH6を認識するモノクローナルRGS・His抗体を用いて、hEx1ライブラリーの高密度タンパク質フィルターをスクリーニングした(図1)。約20%のポジティブ・クローン(シグナル強度1、2又は3)を1〜3へ分類した。これらのクローンは推定タンパク質発現クローンと考えられた(図1)。Superscript Plasmid Systemキット(ライフテクノロジーズ)を使用するオリゴ(dT)プライミング(Gubler et al., Gene 25 (1983), 263)によって、ヒト胎児脳の組織からhEx1ライブラリーを調製した。ゲル濾過によりcDNAをサイズで分画し、発現ベクターpQE-30NTのSalIとNotI部位の間で各分画を連結した。ヘルパープラスミドのpSE111を担うE. coli SCS1(Stratagene)を宿主株として使用した。エレクトロポレーションによる形質転換の後で、四角い寒天プレート(Nunc Bio Assay Dish)上にこのライブラリーをまき、37℃で一晩増殖させた。自動ロボットシステム(Lehrach et al., Interdisciplinary Science Reviews 22 (1997), 37-44)を使用して、アンピシリン100μg/ml、カナマイシン15μg/ml、2%グルコース及び凍結ミックス(0.4 mM MgSO4、1.5 mMNa3-クエン酸、6.8 mM (NH42SO4、3.6%グリセロール、13 mM KH2PO4、27 mM K2HPO4、[pH7.0])を含有する2×YT培地を満たした384穴マイクロタイタープレート(Genetix)へクローンを刺し入れた。37℃で一晩、マイクロタイター穴で細菌を増殖させ、384ピン複製ツール(Genetix)を使用して新しいマイクロプレートへ複製した。すべてのコピーを-80℃で冷凍保存した。
【0088】
実施例3:対応するフィルターセット上での遺伝子とタンパク質の同定
実施例のタンパク質としてGAPDHとHSP90αを選択した。GAPDH(Swiss-Prot P04406)のオープンリーディングフレームは1,008 bp、35,922ダルトンであり、HSP90α(Swiss-Prot P07900)のそれは2,199 bp、84,542ダルトンである。
【0089】
hEx1ライブラリーの3種の高密度DNAフィルター(80,640クローン)セットを、遺伝子特異的cDNAプローブでスクリーニングした。高密度フィルターは、文献のように、ロボットスポッティングにより調製した(Maier et al., Drug Discovery Today 2 (1997), 315-324; Lehrach et al., Interdisciplinary Science Reviews 22 (1997), 37-44)。細菌コロニーを、DNA分析用にはナイロン膜フィルター(Hybond N+、アマーシャム)上に、タンパク質分析用にはポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜フィルター(Hybond PVDF、アマーシャム)上にグリッドした(フィルターフォーマット:222 mm×222 mm)。クローンは、フィルターあたり27,648個の密度で、インクガイドドットを囲むように、同一2検体(デュプリケート)パターンでスポットした。アンピシリン100μg/ml、カナマイシン15μg/ml、2%グルコースを含有する四角い2×YT寒天プレート(Nunc Bio Assay Dish)上に、高密度フィルターを置いた。
【0090】
DNA分析に使用するフィルターを37℃で一晩増殖させ、次いで既報のように処理した(Hoheisel et al., J. Mol. Biol. 220 (1991), 903-914)。タンパク質分析に使用するフィルターを30℃で一晩増殖させ、次いで、1 mM IPTGを補充した寒天プレートへ移し、37℃で3時間の誘導で、タンパク質発現を誘導した。0.5 M NaOH、1.5 M NaClに浸したブロッティングペーパーの上に10分間(5分間×2)、1 Mトリス-HCl、pH7.5、1.5 M NaClに5分間、最後に2×SSCに15分間、このフィルターを置くことにより、発現されたタンパク質をフィルター上に固定した。フィルターを空気乾燥し、室温保存した。
【0091】
ジゴキシゲニン標識PCRプローブとAttophosアルカリホスファターゼ基質(JBLサイエンティフィック、サンルイ、オビスポ)を用いるDNAハイブリダイゼーションを既報のように実施した(Maier et al., J. Biotechnol. 35 (1994), 191-203)。ジゴキシゲニン標識ハイブリダイゼーションのプローブは、ヒトGAPDHの完全なオープンリーディングフレームを含有するクローンとHSP90αのC末端部分を含有するIMAGEクローン343722号(GenBank:W69361)のPCR増幅により製造した。
【0092】
ヒトGAPDHプローブ(図2a)については、206個(0.26%)のクローンがポジティブであった(表1)(図2a)。2回目のハイブリダイゼーションで202個を確認するとともに、さらに35個の追加クローンを検出した(全体で237個へ増加、表1)。ヒトHSP90αプローブでは56個(0.07%)のクローンが同定された。対応するタンパク質フィルターでは、GAPDHとHSP90αでそれぞれ56個(27%)と14個(25%)のポジティブ・クローンがRGS・His抗体により認識された。
【0093】
高密度フィルター上での抗体スクリーニングを以下のように実施した:ウサギ抗GAPDH血清を既報のようにアフィニティー精製した(Gu et al., BioTechniques 17 (1994), 257-262)。抗HSP90(トランスダクション・ラボラトリーズ、レキシントン)は、HSP90αのアミノ酸586〜732に向けられている。乾燥したタンパク質フィルターをエタノールに浸し、TBS-T(20 mM トリス-HCl、pH7.5、0.5 M NaCl、0.05% Tween 20、0.5%Triton X-100)に浸したペーパータオルで細菌の残滓を拭き取った。このフィルターをブロッキング緩衝液(非脂肪の乾燥乳粉末3%/TBS、150 mM NaCl、10 mMトリス-HCl、pH7.5)中で1時間ブロックし、5000倍希釈した抗HSP抗体又は抗GAPDH抗体50 ng/mlとともに一晩インキュベートした。TBS-Tでの洗浄を10分2回、TBSでの洗浄を10分1回した後、アルカリホスファターゼ(AP)が接合した二次抗体とともにフィルターを1時間インキュベートした。TBST-Tで10分3回、TBSで10分1回、AP緩衝液(1 mM MgCl2、0.1 Mトリス-HCl、pH9.5)で10分1回洗浄した後、フィルターを0.5 mM Attophos(JBLサイエンティフィック、サンルイ、オビスポ)/AP緩衝液で10分間インキュベートした。長波長UV光でフィルターを発光させ、高解像CCD検出システムを用いて画像化した(Maier et al., Drug Discovery Today 2 (1997), 315-324)。カスタム画像分析ソフトウェアを用いてポジティブ・クローンを計数した。ポリクローナル抗GAPDH抗体(図2b)では、39個のクローンがポジティブだった(表2)。これらはいずれもRGS・His抗体で検出されたが、GAPDH特異的DNAプローブでポジティブと計数されたのは32個のクローンだけである。しかしながら、2回目のDNAハイブリダイゼーションでは、計数されなかった7個のクローンのうち5個が検出された。モノクローナル抗HSP90抗体でスクリーニングすると32個のポジティブ・クローンが得られ、そのうち28個はHSP90αのDNAプローブにより検出され、10個はHSP90αのDNAプローブとRGS・His抗体のいずれでもポジティブであった。2回目の抗HSP90スクリーニングでは、30個のクローンが確認され、新たに12個のクローンが検出されたが、これらはいずれもHSP90αのDNAプローブでポジティブであった。
【0094】
実施例4:検出されたクローンの配列とウェスタンブロット分析
図3は、GAPDHとHSP90αについて得られたフィルターデータを要約する。カテゴリーA〜Eのクローンを、そのcDNAインサートの5’末端の配列決定(図4)、及びウェスタンブロット(図5)により分析した。以下の実験プロトコールを実行した。
【0095】
(A)全般的ポジティブ・クローン
DNAプローブ、抗GAPDH及びRGS・His抗体で同定された10個のGAPDHクローンの配列を決定し、正しい読み枠にGAPDH配列を含有することを見出した。9個のクローンが、5’-UTRのついた完全なGAPDH配列とベクターアミノ酸(mRNAの5’-UTRとベクターによりコードされるアミノ酸)に広がる組換えHis6-タグ付きタンパク質を発現した。
【0096】
HSP90αのDNAプローブ、RGS・His及び抗HSP抗体でポジティブな10個のクローンは、いずれもHSP90αの配列を正しい読み枠で有していた。しかしながら、完全なコーディング領域を供するものは1つもなく、HSP90α配列の様々なサイズのC末端部分から翻訳されるHis6-タグ付き融合タンパク質を発現することが示されたのは5個のクローンである。
【0097】
(B)特異抗体ネガティブ・クローン
フィルター上のGAPDH特異抗体にネガティブな7個のGAPDHクローンの配列が、GAPDHのGenBank配列と重なることが示された。上記クローンの2つは正しい読み枠でインサートを有し、ウェスタンブロットで抗GAPDH抗体によって染色されるGAPDHフラグメント(24 kD)を発現した(図5a、B、レーン11、12)。GAPDHインサートは他の5種のクローンでは正しくない読み枠にあり、6.5〜16.7 kDのポリペプチド範囲にあって、発現が推定されるペプチドの発現を示唆した(図5a、B、レーン13-17)。これらクローンのシグナル強度は、高密度フィルターにRGS・His抗体でプローブした場合、概して低かった。4種のHSP90αクローンのうち3つは正しくない読み枠にインサートを有し、抗HSP90抗体と反応しない短ペプチドを発現した(図5b、レーン6、8に2つのクローンを示す)。残りのクローンは正しい読み枠にインサートを有し、ウェスタンブロット上で計算されるサイズ(56.0 kD)のバンドを示し、二回目の高密度フィルタースクリーニングで抗HSP90抗体により検出された。
【0098】
(C)DNAプローブだけポジティブなクローン
12個の無作為に選択したGAPDHクローンのうち11個は正しくない読み枠でGAPDHインサートを含有し、恐らくは3.4〜9.1 kDの範囲のペプチドを発現していることが示された。クローンMPMGp800A1755は、正しい読み枠でインサートを有したが、5’-UTRの-8位に点突然変異があり、停止コドンと推定4.7 kDのペプチドをもたらした。DNA配列分析は、12個のHSP90αクローンのうち11個が正しくない読み枠にインサートを含み、分子量2.8〜5.4 kDと計算されるペプチドを恐らく発現していることを示した。正しい読み枠にインサートを有し、78.7 kDサイズのタンパク質を発現し、二回目の抗HSP90抗体スクリーニングでポジティブだったのは、クローンMPMGp800I13115だけである。
【0099】
GAPDH又はHSP90αのDNAプローブについては偽陽性クローンは見出されなかった。
【0100】
(D)DNAプローブネガティブ・クローン
4個のGAPDHクローンが、DNAプローブの偽陰性を表す正しいインサートを有することが示されたが、2回目のDNAハイブリダイゼーション実験で検出された。2個のクローンは、ヒトポリユビキチン(GenBank D63791)とヒトHZF10(PIR S47072)の配列を含有していた。
【0101】
4個のHSP90αクローンはすべてウェスタンブロットで検出されるポリペプチドを発現した(図5b、D)。クローンMPMGp800G06207(レーン12)は46 bp欠損部分を担うHSP90αインサートを含有し、明らかにHSP90α・DNAプローブの偽陰性であった。残り3つのクローンでは、マウス子宮特異的プロリンリッチ酸性タンパク質(GenBank U28486;レーン9、10)との配列相同性、又は機能不明のEST配列(レーン11)に対する同一性がインサートに認められた。
【0102】
(E)DNAプローブ及び特異抗体ポジティブ(RGS・Hisネガティブ)・クローン
HSP90αのDNAプローブと抗HSP90抗体によって認識されるが、RGS・His抗体では認識されない10種のクローンの配列を決定し、正しくない読み枠で挿入されたHSP90α配列を含有することを見出した。これらのクローンから発現されるHis6-タグ付きポリペプチドは、3.2〜6.1 kDの計算量を有するはずであり、ウェスタンブロットでは見出されなかった(図5b、E)。対照的に、抗HSP90抗体についてはバンドの適合パターンが観察された。
【0103】
cDNAクローンを含有する細菌を、アンピシリン100μg/ml、カナマイシン15μg/ml及び2%グルコースを含有する2×YT培地2 mlにおいて振盪して増殖させた。O.D.600=0.4のときにIPTGを最終濃度が1 mMになるように加え、37℃で3時間、インキュベーションを続けた。細胞全体のタンパク質抽出液を15%SDS-PAGEにかけた後、Laemmli(Laemmli, Nature 227 (1970), 680-685)により、クーマシーブルー染色した。
【0104】
SDS-PAGEの後で、製造業者の推奨により、半乾燥電気輸送装置(Hoefarファルマシアバイオテク、サンフランシスコ)を用いて、20 mMトリス、150 mMグリシン、0.1% SDS、10%メタノールにおいて、タンパク質をPVDF膜(Immobilon P、ミリポア)へ移した。
【0105】
プライマーpQE65(TGAGCGGATAACAATTTCACACAG)及びpQE276(GGCAACCGAGCGTTCTGAAC)を使用し、アニーリング温度65℃で、PCRによりcDNAインサートを増幅した。我々の研究所のサービス部門により、pQEプライマーとABIシークエンサー(パーキンエルマー)を用いるダイターミネーターサイクルシークエンス法によりPCR産物の配列が決定された。
【0106】
実施例5:ベクター構築体
pQE-30NST(GenBank 受入番号AF074376)については記載されている(Bussow et al., Nucleic Acids Res. 26 (1998), 5007-5008)。MRGSとpQE-30(Qiagen)のHis6との間にタンパク質配列LNDIFEAQKIEWをコードするオリゴヌクレオチドを挿入するために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いてpQE-BH6を構築して、RGS-His6エピトープの2つの部分を分離した。
【0107】
実施例6:抗体
以下の製造業者のモノクローナル抗体を指定の通りに希釈して使用した:マウス抗RGS-His(Qiagen、1:2,000)、マウス抗ウサギGAPDH(Research Diagnostics社、クローン6C5、1:5,000)、マウス抗HSP90(トランスダクション・ラボラトリーズ、クローン68、1:2,000)、ラット抗αチューブリン(セロテック社、クローンYL1/2、1:2,000)。
【0108】
二次抗体は、マウスとラットのモノクローナルをそれぞれ検出する、5,000倍希釈したF(ab’)2ウサギ抗マウスIgG-HRP(シグマ)とF(ab’)2ウサギ抗ラットIgG-HRP(セロテック社)であった。
【0109】
実施例7:大規模なタンパク質発現と精製
タンパク質は、E. coli(SCS1株)の液体培養で発現させた。アンピシリン100μg/ml及びカナマイシン15μg/mlを含有するSB培地(バクト-トリプトン12 g/l、酵母抽出物24 g/l、17 mM KH2PO4、72 mM K2HPO4、0.4%(v/v)グリセロール)900 mlへ一晩培養物10 mlを接種し、OD600が0.8に達するまで37℃で振盪した。イソプロピル-b-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)を最終濃度が1 mMとなるように加えた。この培養液を37℃で3.5 h振盪し、氷上で4℃に冷却した。2,100 g、10分間の遠心分離により細胞を採取し、リン酸緩衝液(50 mM NaH2PO4、0.3 M NaCl、pH8.0)100 mlに再懸濁し、再び遠心分離した。湿重量1 gにつき3 mlのリゾチーム(0.25 mg/ml)含有溶解緩衝液(50 mM トリス、300 mM NaCl、0.1 mM EDTA、pH8.0)において、氷上、30分で細胞を溶解した。超音波ホモジェナイザー(Sonifier 250、ブランソン・ウルトラソニックス、ダンベリー、USA)を用いて、氷上、3×1分間、50%のパワーでDNAを剪断した。10,000 g、30分間の遠心分離により、溶解液を澄明にした。Ni-NTAアガロース(Qiagen)を加え、4℃、1時間振盪して混合した。この混合液をカラムに注ぎ込み、次いで、10倍ベッド量の20 mMイミダゾール含有溶解緩衝液で洗浄した。250 mMイミダゾール含有溶解緩衝液でタンパク質を溶出し、4℃で一晩、TBS(10 mMトリス-HCl、150 mM NaCl、pH7.4)に対して透析した。
【0110】
実施例8:ハイスループット小規模タンパク質発現
アレイ状のヒト胎児脳cDNA発現ライブラリーhEx1の選択クローンからタンパク質を発現させた(Bussow et al., Nucleic Acids Res. 26 (1998), 5007-5008)。IPTG誘導によりHis6-タグ付き融合タンパク質を発現させるために、pQE-30NST中にこのライブラリーを指向性にクローン化した。2 mlの中空部分を有する96穴マイクロタイタープレート(StoreBloch, Zinsser)を、アンピシリン100μg/ml及びカナマイシン15μg/mlを補充したSB培地100μlで満たした。-80℃に保存した384穴ライブラリープレート(Genetix, Christchurch, U.K.)由来のE. coli SCS1細胞を培養液に接種した。接種には、96個の鋼製ピン(長さ6 cm)が付いた複製装置を用いた。激しく振盪しながら37℃で一晩増殖させた後、前もって加温した培地900μlをこの培養液へ加え、インキュベーションを1時間続けた。タンパク質発現を誘導するために、最終濃度が1 mMになるようにIPTGを加えた。遠心分離も含め、以下のあらゆる工程は、96穴フォーマットにおいてもなされた。1,900 g(3,400 rpm)、10分間の遠心分離により細胞を採取し、リン酸緩衝液の再懸濁により洗浄し、5分間遠心分離して緩衝液A(6 Mグアニジウム-HCl、0.1 M NaH2PO4、0.01 Mトリス-HCl,pH8.0)150μlに再懸濁して溶菌させた。4,000 rpm、15分間の遠心分離によって細菌の残滓をペレット化した。真空濾過マニホルド(Multiscreen、ミリポア)上に、空孔サイズ0.65μmの非タンパク質結合性PVDF膜(Durapore MADV N65、ミリポア)を含有する96穴フィルタープレートを通して、上澄液を濾過した。
【0111】
実施例9:自動化フィルタースポッティング
前もって切断した(25×75 mm)ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)フィルター片(Immobilon P、ミリポア)を96%エタノールに浸し、蒸留水で1分間濯いだ。湿ったフィルター片5枚をテープで230×230 mmプラスチックトレイ上に固定した。x-y-zの方向に5μm刻みで定位し得るモーター付きのトランスファースタンプ(Linear Drives, Basildon, UK)(図6)によりスポッティングをした。これにより、約300サンプル/cm2の密度の同一2検体パターンでスポットすることが可能になる。このトランスファースタンプには、4.5 mm間隔のバネ上げピンがそれぞれ4×4で16個、本体に取り付けられている。この間隔が384穴プレートの間隔に適合しているので、このツールにより384穴マイクロタイタープレートからの高密度スポッティングが可能になる。ステンレス鋼製ピンの平滑末端のチップサイズは250μmである。各トランスファーに先立って、スポッティング装置を30%エタノール浴で洗浄し、次いでファン乾燥して相互汚染を防いだ。ここで示す実験については、各ピンで4×4のパターンをスポットした。各パターンには、4個のインクガイドスポットと、それを囲んで同一2検体でスポットされる6個のサンプルが含まれる(全部で12サンプルのスポット、図7A)。各スポットは、同一のタンパク質サンプルを5回(各5 nl)ロードした。前もってスポッティングの高さを調整したが、この96サンプルのスポッティングで5つの同一タンパク質マイクロアレイを産生するのに約20分を要した。
【0112】
実施例10:抗体検出と画像分析
スポッティングの後、フィルターをエタノールに1分間浸し、蒸留水で濯ぎ、TBST(TBS、0.1% Tween 20)で1分間洗浄し、2%ウシ血清アルブミン(BSA)/TBSTに60分間ブロックし、2%BSA/TBSTにおいてモノクローナル抗体とともに室温で1時間インキュベートした後、TBSTで10分2回洗浄し、2%BSA/TBSTにおいて二次抗体とともに1時間インキュベートした。次いで、TBST 20 mlにおいてフィルターを一晩洗浄し、CN/DAB溶液(Pierce)2 mlにおいて1〜10分間インキュベートして、ポジティブな反応を黒いスポットとして検出した。画像化には冷却したCCDカメラ(Fuji LHS、Raytest、ドイツ)を用いた。Fujinon対物レンズ(f:0.8,50 mm)を用いて20 msの積算時間で写真を撮った。スポット認識と定量化のために、AIDAパッケージ(Raytest、ドイツ)を用いて画像を分析した。得られたスポット値をExcelのスプレッドシート(マイクロソフト, USA)へ移し、図7、8、9の図表を作成した。
【0113】
実施例11:タンパク質マイクロアレイの製造
液体の細菌培養物においてタンパク質を発現させ、粗溶解液としてか又はNi-NTA固定化金属アフィニティー・クロマトグラフィー(IMAC)により精製した後で、PDVFフィルター上に溶液をスポットした(Hochuli et al., J. Chromatography, 411 (1987), 177-184)。PVDFフィルター膜を使用したのは、その優れたタンパク質結合能と機械強度(ニトロセルロースに比較して)、及びこれまでの満足な実績のためである(Bussow et al., Nucleic Acids Res. 26 (1998), 5007-5008)。新しいトランスファースタンプ(図6)はチップサイズ250μmのピンを含むが、これはin situタンパク質発現フィルターの産生にこれまで用いられてきた450μmピンのほぼ半分のサイズである(Bussow et al., Nucleic Acids Res. 26 (1998), 5007-5008)。我々の最初の試験結果としての図7、8及び9は、我々のin situフィルターとほとんど同じスポッティング密度を示すが、ピン先端の径が小さくなるほど高密度のスポッティングが可能になる。222×222 mmのin situフィルターは27,648個のクローン(1つのガイドスポットにつき5×5の同一2検体スポッティングパターン)を供するが、この新しいトランスファースタンプを用いれば、同一の領域に100,000個以上のサンプルを置くことが可能である。このことにより、アレイサイズ全体を簡便な微視的スライドフォーマット(2,400個の同一2検体に相当する4,800個のサンプル/25×75 mm)へ実質的に減らせる。このミニチュア化した組立てにより、フィルターをカバーするのにずっと少ない緩衝液量で済むので、溶液をインキュベートするときに試薬をごく経済的かつ高濃度で使用することが可能になる。in situフィルターとは対照的に、マイクロアレイ上で得られるシグナルは、鋭い上に十分局在化している。タンパク質チップ製造への次の工程として、我々は、修飾したガラス表面上への高速ピコリットルスポッティング(インクジェッティング)を用いることによりさらに密度を高めることを想定している。タンパク質マイクロアレイに代わるアプローチについては、シラン単層の写真製版(Mooney et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 93 (1996), 12287-12291)か、ポリスチレンフィルムへのインクジェッティング(Ekins, Clin. Chem. 44 (1998), 2015-2030; Silzel et al., Clin. Chem. 44 (1998), 2036-2043)のいずれかを用いることが報告されている。我々のライブラリースポッティング技術とは対照的に、これらの最新技術は、単一タンパク質(例えば、BSA、アビジン、又は抗IgGモノクローナル抗体)のパターニングによりミニチュア化したイムノアッセイフォーマットを製造することに注目している。
【0114】
実施例12:特定タンパク質の検出感度
マイクロアレイ上での特定タンパク質の検出感度を、3種の精製タンパク質、ヒトグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH、Swiss-Prot P04406)、ヒト熱ショックタンパク質90α(HSP90α、Swiss-Prot P07900)のC末端フラグメント(40.3 kd)及びラット免疫グロブリンH鎖結合タンパク質(BIP、Swiss-Prot P06761)を様々な濃度でスポットすることにより評価した。次いで、マイクロアレイをモノクローナル抗GAPDH抗体、ウサギ抗マウスIgG-HRP及びHRP基質CN/DABとともにインキュベートした(図7A)。バックグラウンド以上の明らかに目視できる特定スポットをもたらす最低濃度(検出閾値)としての検出感度は、10フェムトモル/μlと算定されたが、これは5×5 nlにスポットしたGAPDHの250アトモル又は10 pgに相当する(図7B)。
【0115】
実施例13:タンパク質発現のハイスループットスクリーニング
すでにin situフィルター上でモノクローナル抗体RGS-His(Quiagen)によりタンパク質エクスプレッサーとして同定された、アレイ状ヒト胎児脳cDNAライブラリーhEx1(Bussow et al., Nucleic Acids Res. 26 (1998), 5007-5008)の92クローンの粗溶解液を4つの対照サンプル及びインクガイドスポットと並んで同一2検体でスポットした。同一の抗体を使用して、RGS-His6-タグ付き融合タンパク質の発現についてマイクロアレイをスクリーニングした(図8A、挿入部分)。同一2検体の相対強度(図7A参照)を互いにプロットすると、得られた斜線は、この検出法の良好な再現性を示す(図8A)。従って、同一2検体の平均を全96サンプルについてプロットし、ポジティブ同定の特異性閾値を相対強度7,500に任意設定した(図8B)。以上の条件では、陰性対照(H1、インサートのないベクターpQE-30NST)は明らかにネガティブ(相対強度1,500)であり、分割されたRGS-His6エピトープを特徴とするHSP90αクローン(H2、ベクターpQE-BH6;相対強度0)でもそれは同様であった。RGS-His6-タグ付きGAPDHクローン(H3、ベクターpQE-30NST)の溶解液を陽性対照として使用したが、これは相対強度21,000のシグナルをもたらした。ラットBIPクローン(H4、ベクターpQE-BH6)で得られた明らかにポジティブな結果(相対強度15,000)が驚くべきなのは、このクローンが分割されたRGS-His6エピトープも特徴とするからである。この反応性は、BIPのコンフォメーション特性によるRGS-His6エピトープの部分的な再構成により説明できるかもしれない。
【0116】
推定hEx1発現クローン92個のうち54クローンのcDNAインサートはヒト遺伝子のGenBankエントリーとの相同性を示す(Bussow, 学位論文、化学部、ベルリン自由大学(1998))。これらインサートの読み枠(RF)を、ベクターにコードされるRGS-His6タグ配列に関連して調べた。正しい読み枠(RF+)でクローン化されていたのが34インサート(63%)であるのに対し、正しくない読み枠(RF-)のものは20個(37%)であり、これらのクローンでは予測されるタンパク質の発現は期待し得なかった。しかしながら、全92個のクローンは、モノクローナル抗体RGS-Hisとの明らかにポジティブなシグナルによりin situフィルター上のタンパク質エクスプレッサーとして元々選択されたものである[強度レベル2及び3、(Bussow, 学位論文、化学部、ベルリン自由大学(1998))]。マイクロアレイ上では、タンパク質エクスプレッサーとして同定される読み枠が正しくないクローンの数は70%減少し、依然ポジティブとして確定されたRF(-)クローンは6個だけである(図8B)。このことは、この新しいマイクロアレイ技術が、正しくない読み枠のクローンを排除する優れた能力によりin situフィルター法より進歩していることを示す。一方、明らかに特異性の閾値以下でこのスクリーニングでは見落とされることになるRF(+)クローンが1つだけあったが、これはマイクロタイターの穴において発現したタンパク質の量が不十分であったためだろう。このことにより、配列決定及び/又はタンパク質の特徴づけにより確定される「ポジティブ」にのみ基づいている我々のアプローチの本質が再び強調される。
【0117】
まとめると、マイクロアレイ上でのハイスループットタンパク質発現スクリーニングの偽陰性率は2%以下である(全54クローンにつき1個の非検出RF(+)クローン)。正しくない読み枠でタンパク質を発現している偽陽性クローンの率は、in situフィルター法の37%に比較して11%まで減少した(Bussow, 学位論文、化学部、ベルリン自由大学(1998))。これにより、タンパク質マイクロアッセイは、ごく高感度のタンパク質発現スクリーニングにとって経済的なツールとなる。
【0118】
実施例14:抗体特異性のスクリーニング
92個のhEx1発現クローンと4個の対照(上記参照)の同一試験セットを特徴づけるタンパク質マイクロアッセイを、ヒトのタンパク質であるGAPDH、HSP90α及びαチューブリンについて、モノクローナル抗体を用いてスクリーニングした。抗GAPDH抗体がその標的抗原のみを検出した(H3、図9A)のに対し、抗HSP90αは選択的にその標的抗原を認識した(H2、図9B)ものの、少なくとも2個の他のクローン(H10、60Sリボソームタンパク質L18AとH3、GAPDH)とやや交叉反応性を示した。抗体の交叉反応性は、抗αチューブリンのスクリーニングでずっと顕著であった(図9C)。試験セット内の2個のRF(+)αチューブリンクローン(F9とA4)が特異的に認識され、RF(-)クローン(C7)だけが検出されないままだったのに対し、他の9個のクローンは任意の特異性閾値より高い抗αチューブリン反応性を示した。これらクローンのうち2つ(B1及びB12)は未知の遺伝子を表し、G1はRF(-)βチューブリンのクローンである。H3は図8のGAPDH陽性対照クローンであり(上記参照)、おそらくはタンパク質発現のレベルが例外的に高いために、ある程度は非特異的に交叉反応するようである(図9B及び9C)。驚くべきことに、閾値以上の他のクローン(5個)はいずれも正しい読み枠でリボソームタンパク質を発現する(E5、RPL3;H10、RPL18A;E6及びD8、RPS2;F7、RPS3A)。抗αチューブリン反応性を示さなかったのは試験セットの唯一の追加リボソームタンパク質(E3、RPS25)だけである。抗αチューブリン抗体(YL1/2、(Kilmartin et al., J. Cell Biol. 93 (1982), 576-582))により認識されるエピトープは、チロシン化αチューブリンのカルボキシ末端残基を含む直線状の配列として同定された(Wehland et al., EMBO J. 3 (1984), 1295-1300)。この著者らによれば、ジペプチド研究により決定されるような最少配列条件は、終端から2番目の位置に陰電荷の側鎖があり、フリーのカルボン酸基を必ず有する芳香族の残基がこれに続くことである。我々のマイクロアレイ上で交差反応するリボソームタンパク質で上記の要件を満たすものはないので、他の(例えば構造上の)エピトープがこの抗原特異性を模倣しているのかもしれない。
【0119】
表1は、hEx1・cDNA発現ライブラリーについての様々なスクリーニングオプションの評価を示す。クローンカテゴリーは図3に同じ。括弧内の数は第二スクリーニングでの数を表す。
【0120】
表2は、hEx1・cDNA発現ライブラリーについての様々なスクリーニングオプションの評価を示す。クローンカテゴリーは図2に同じ。括弧内の数は第二スクリーニングでの数を表す。
【0121】
【表1】

【0122】
【表2】

【0123】
態様の説明
態様1:
以下の工程を含んでなる、所望の生物学的特性を与える発現ライブラリーのクローンを同定及び/又は特徴づけする方法:
(a)アレイ形態で配置されている前記発現ライブラリーのクローンの組換えインサートの発現産物とともに融合タンパク質として発現される少なくとも1つの(ポリ)ペプチドの発現について分析すること;及び
(b)前記所望の生物学的特性を与えるクローンのインサートによって発現される(ポリ)ペプチドと特異的に相互作用するリガンドを、アレイ形態のクローンの前記ライブラリー又は前記ライブラリーの第一レプリカと接触させること、及び前記クローンのライブラリーを相互作用の発生について分析すること;及び/又は、
(c)所望の生物学的特性を与えるクローンのインサートに特異的な核酸プローブを用いて、アレイ形態に配置されたクローンの前記ライブラリー又は前記第一レプリカ又は前記ライブラリーの第二レプリカとのハイブリダイゼーション又はオリゴヌクレオチド・フィンガープリントを実施すること、及び前記クローンのライブラリーをハイブリダイゼーションの発生について分析すること;及び
(d)工程(a)における少なくとも1つの(ポリ)ペプチドの発現、及び/又は工程(b)における相互作用、及び/又は工程(c)における特異的なハイブリダイゼーション又はオリゴヌクレオチド・フィンガープリントが検出され得るクローンを同定すること及び/又は特徴づけること。
【0124】
態様2:
前記組換えインサートの前記発現産物とともに融合タンパク質の一部として発現される前記(ポリ)ペプチドが、抗体又はフラグメント又はそれらの誘導体、タグ、酵素、ファージタンパク質又はそのフラグメント、又は融合タンパク質である、態様1に記載の方法。
【0125】
態様3:
工程(a)における(ポリ)ペプチドの発現についての前記分析が、特異的に相互作用する工程(b)のリガンドとは異なるリガンドを前記(ポリ)ペプチドと接触させること、及び前記クローンのライブラリーを特定の相互作用の出現について分析することによって達成される、態様1又は2に記載の方法。
【0126】
態様4:
工程(a)の(ポリ)ペプチドの発現についての前記分析が視覚的な手段、好ましくは質量分析法によって達成される、態様1〜3のいずれかに記載の方法。
【0127】
態様5:
前記所望の生物学的特性が、細胞、組織又は発生段階の細胞又は組織、微生物、好ましくは細菌、植物又は生物への特異性である、態様1〜4のいずれかに記載の方法。
【0128】
態様6:
前記細胞又は組織が、正常な細胞又は組織、病的な細胞又は組織、又は前処理された細胞又は組織である、態様5に記載の方法。
【0129】
態様7:
前記クローンが細菌の形質転換細胞、組換えファージ、形質転換された哺乳類、昆虫、真菌、酵母又は植物の細胞である、態様1〜6のいずれかに記載の方法。
【0130】
態様8:
前記アレイ形態が工程(a)〜(c)において実質的に同一のフォーマットを有する、態様1〜7のいずれかに記載の方法。
【0131】
態様9:
前記アレイ形態がグリッド形態である、態様1〜8のいずれかに記載の方法。
【0132】
態様10:
前記グリッドが、マイクロタイタープレート、シリカウェーハー、チップ、質量分析ターゲット、又はマトリックスのディメンジョンを有する、態様9に記載の方法。
【0133】
態様11:
前記クローンが固形支持体に固定されている、態様1〜10のいずれかに記載の方法。
【0134】
態様12:
前記固形支持体がフィルター、膜、磁気ビーズ、シリカウェーハー、ガラス、金属、チップ、質量分析ターゲット又はマトリックスである、態様11に記載の方法。
【0135】
態様13:
前記リガンドの少なくとも1つが、(ポリ)ペプチド、ファージ又はそのフラグメント、血液、血清、毒素、阻害剤、医薬品又は医薬品候補物質、非タンパク質又は一部タンパク質である受容体、触媒ポリマー、酵素、核酸、PNA、ウイルス又はその部分、細胞又はその部分、無機化合物、結合体、色素、組織又は前記リガンドの結合体である、態様1〜12のいずれかに記載の方法。
【0136】
態様14:
前記(ポリ)ペプチドが抗体又はフラグメント又はその誘導体、ホルモン又はそのフラグメント、又は酵素又はフラグメント又はその誘導体である、態様13に記載の方法。
【0137】
態様15:
工程(b)での前記相互作用が特異的な相互作用である、態様1〜14のいずれかに記載の方法。
【0138】
態様16:
工程(b)での前記相互作用が非特異的な相互作用である、態様1〜14のいずれかに記載の方法。
【0139】
態様17:
工程(c)での前記ハイブリダイゼーションがストリンジェントな条件で起こる、態様1〜16のいずれかに記載の方法。
【0140】
態様18:
工程(c)での前記ハイブリダイゼーションが非ストリンジェントな条件で起こる、態様1〜16のいずれかに記載の方法。
【0141】
態様19:
前記タグが、c-myc、His-タグ、FLAG、アルカリホスファターゼ、EpiTagTM、V5タグ、T7タグ、XpressTMタグ又はStrep-タグ、融合タンパク質、好ましくはGST、セルロース結合ドメイン、グリーン蛍光タンパク質、マルトース結合タンパク質又はlacZである、態様2〜18のいずれかに記載の方法。
【0142】
態様20:
前記クローンのライブラリーがcDNAライブラリーを含む、態様1〜19のいずれかに記載の方法。
【0143】
態様21:
前記ライブラリー及び/又は前記レプリカの前記アレイ形態が自動化装置によって産生される、態様1〜20のいずれかに記載の方法。
【0144】
態様22:
前記自動化装置がピッキングロボット及び/又はスポッティングロボット及び/又はグリッディングロボットである、態様21に記載の方法。
【0145】
態様23:
前記所望されるクローンの核酸インサートを配列決定することをさらに含んでなる、態様1〜22のいずれかに記載の方法。
【0146】
態様24:
所望されるクローンのインサートによってコードされる(ポリ)ペプチドを同定すること及び/又は特徴づけることをさらに含んでなる、態様1〜22のいずれかに記載の方法。
【0147】
態様25:
所望によりベクターに含まれるインサート、又は所望の生物学的特性を与える所望されるクローンのインサートの発現産物を製剤化することを含んでなる、医薬組成物を製造する方法であって、前記インサート又は発現産物が態様1〜24のいずれかに記載の方法により同定される及び/又は特徴づけられる前記方法。
【0148】
態様26:
態様25に記載の方法によって製造される医薬組成物。
【0149】
態様27:
固形支持体に固定している態様1〜22のいずれかに記載されるような発現ライブラリーの少なくとも2つのレプリカを含んでなるキット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
(a)アレイ形態で配置されている発現ライブラリーのクローンの組換えインサートの発現産物とともに融合タンパク質として発現される少なくとも1つのポリペプチドおよび/またはペプチドの発現について検出すること;及び
(b)前記ポリペプチドおよび/またはペプチドを発現する1またはそれ以上のクローンを選択しまたは再配列すること;
(c)工程(b)の選択されまたは再配列されたクローンを、所望の生物学的特性を有するクローンの組換えインサートの発現産物と特異的に相互作用することができる第一のリガンドと接触させ、第一のリガンドと工程(b)の選択されまたは再配列されたクローンの組換えインサートの発現産物とのあいだの相互作用を検出すること;及び/又は、
(d)所望の生物学的特性を有するクローンの組換えインサートの発現産物に対して特異的な核酸プローブを用いて、工程(b)の選択されまたは再配列されたクローンのハイブリダイゼーション又はオリゴヌクレオチド・フィンガープリントを実施して、プローブと工程(b)の選択されまたは再配列された組換えインサートとのあいだのハイブリダイゼーションを検出するか、または工程(b)の選択されまたは再配列された組換えインサートのオリゴヌクレオチド・フィンガープリントを検出すること;及び
(e)工程(c)または工程(d)において検出される、工程(b)において選択されまたは再配列されたクローンを同定すること及び/又は特徴づけること:
を含む方法により同定及び/又は特徴づけされる、所望の生物学的特性を与える発現ライブラリーの、固形支持体に固定されている少なくとも2つのレプリカを含む、キット。
【請求項2】
少なくとも一つのポリペプチドおよび/またはペプチドを、発現ライブラリのクローンの組換えインサートとの融合タンパク質として発現する、クローンの発現ライブラリを含むアレイであって、前記発現ライブラリのクローンが所望の生物学的特性を付与し、そしてアレイ形態がグリッド形態である、前記アレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【公開番号】特開2010−227109(P2010−227109A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110861(P2010−110861)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【分割の表示】特願2000−547262(P2000−547262)の分割
【原出願日】平成11年4月30日(1999.4.30)
【出願人】(390040420)マックス−プランク−ゲゼルシャフト・ツア・フェルデルング・デア・ヴィッセンシャフテン・エー・ファオ (54)
【氏名又は名称原語表記】Max−Planck−Gesellschaft zur Foerderung der Wissenschaften e.V.
【住所又は居所原語表記】Berlin, Germany
【Fターム(参考)】