説明

所要時間提示システム、ナビゲーション装置、移動所要時間の提示方法およびプログラム

【課題】テレマティクスサービスや位置情報提供サービス等に加入していないユーザからも運行情報を入手し、精度の高い移動所要時間を提示する。
【解決手段】所要時間提示システムは、指定された経路に沿って移動する移動体装置の位置と時刻情報を含む運行情報を提供する運行データ提供装置と、第1の無線通信方式を用いて、近隣の移動体装置に対し経路情報を送信し、前記運行データ提供装置への前記経路情報にて指定した経路に沿った運行情報の登録を要求する運行情報登録要求部と、前記運行データ提供装置から受信した運行情報に基づいて、ユーザに対し、前記近隣の移動体装置にて計測された前記経路情報にて指定した経路による所要時間を提示する所要時間提示部と、を備える第1の移動体装置と、前記第1の移動体装置からの前記運行情報の登録要求に応じて、自機の位置及び時刻情報を含む運行情報を登録する運行情報登録部を備える第2の移動体装置と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所要時間提示システム、カーナビゲーションシステム、移動所要時間の提示方法およびプログラムに関し、特に、ユーザから指定された経路の所要時間を提示する所要時間提示システム、カーナビゲーションシステム、移動所要時間の提示方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
カーナビゲーション装置において、VICS(Vehicle Information and Communication System)やテレマティクスサービスを利用可能なものが知られている。VICSは誰でも無料で受信できるメリットがあるが、提供される情報に制限があるためシミュレーションの精度に欠ける。また、テレマティクスは、自動車メーカー等が収集したフローティングカーデータ、プローブカーデータ等に基づく細かく精度の高い交通状況データを得ることができるが、テレマティクスサービスに加入する必要があり、普及率も伸びていないのが現状である。
【0003】
カーナビゲーション装置や、ポータブルナビゲーション装置等(以下、これらを総称して「ナビゲーション装置」という。)の経路探索機能は、年々精度が高くなっているが、時間帯、天候や交通規制の影響等により、実際には所要時間が最短であるとはいえない経路を推奨経路として提示することがある。また、ユーザが所要時間だけでなく、距離、有料道路の有無や道幅等を優先する設定にしている場合もある。このようなことから、後日同じ経路を通る場合などに経路の選択に、真の最短経路を知っておきたいという要請がある。
【0004】
特許文献1には、上記のような事情から、複数の経路のうち、ユーザに選択されなかった経路についても同時進行で模擬走行を実施し、交通状況を比較できるようにした車両経路検証システムが開示されている。具体的には、同文献記載の車両経路検証システムは、検証経路に対する検証要求を受け付けたとき、ターゲット車両選出手段とターゲット車両追跡手段とを用いて、検証経路に沿って、出発地からターゲット車両の選出と追跡を行い、該ターゲット車両が検証経路を逸脱したときにはその位置から次のターゲット車両を選出して追跡し、これを目的地に至るまで繰り返して模擬的な走行を行う。これにより目的地に到達したとき到達報告を出力したり各経路毎のデータを収集する、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−276070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以下の分析は、本発明によって与えられたものである。
しかしながら、特許文献1のように同時進行で模擬走行を実施するためには、ターゲット車両の選択と追跡ができる程度に、車両のリアルタイム測位データ(「フローティングカーデータ」、「プローブカーデータ」ともいう。)を充実させる必要があり、適当なターゲット車両が無い場合には、精度が落ちてしまうという問題点がある。
【0007】
上記問題点は、ターゲット車両として適当な位置を走行しているにも拘らず、対象のテレマティクスサービスに加入していない車両を、ターゲット車両とすることができないという問題点でもある。
【0008】
さらに、上記した事情は、自動車用のカーナビゲーションの分野に止まらず、徒歩や自転車利用者向けの経路案内を行うポータブルナビゲーション装置における最短経路の検証にも妥当する。即ち、位置情報提供サービス等に加入していないユーザ(車両、移動体等)から運行情報を入手できないため、特定の経路の移動に要した実測時間やこれに基づく予測時間を精度よく提供できないという状況が生じている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の視点によれば、指定された経路に沿って移動する移動体装置の位置と時刻情報を含む運行情報を提供する運行データ提供装置と、第1の無線通信方式を用いて、近隣の移動体装置に対し経路情報を送信し、前記運行データ提供装置への前記経路情報にて指定した経路に沿った運行情報の登録を要求する運行情報登録要求部と、前記運行データ提供装置から受信した運行情報に基づいて、ユーザに対し、前記近隣の移動体装置にて計測された前記経路情報にて指定した経路による所要時間を提示する所要時間提示部と、を備える第1の移動体装置と、前記第1の移動体装置からの前記運行情報の登録要求に応じて、前記経路情報にて指定された経路を移動している期間において、前記運行データ提供装置に対し、自機の位置及び時刻情報を含む運行情報を登録する運行情報登録部を備える第2の移動体装置と、を含む所要時間提示システムが提供される。
【0010】
本発明の第2の視点によれば、前記第1の移動体装置、前記第2の移動体装置または前記第1、第2の移動体装置を兼ねるナビゲーション装置が提供される。
【0011】
本発明の第3の視点によれば、ユーザから所要時間の提示要求を受けた装置が、第1の無線通信方式を用いて、近隣の移動体装置に対し経路情報を送信し、所定の運行データ提供装置に対し、前記経路情報にて指定した経路に沿った運行情報の登録を要求するステップと、前記近隣の移動体装置が、前記第1の無線通信方式を介して受信した前記運行情報の登録要求に応じて、前記経路情報にて指定された経路を移動している期間において、前記所定の運行データ提供装置に対し、自機の位置及び時刻情報を含む運行情報を登録するステップと、前記ユーザから所要時間の提示要求を受けた装置が、前記運行データ提供装置から受信した運行情報に基づいて、ユーザに対し、前記経路情報にて指定した経路による所要時間を提示するステップと、を含む移動所要時間の提示方法が提供される。本方法は、ユーザからも要求に応じて、特定の経路で移動していた場合の所要時間を提示するコンピュータという、特定の機械に結びつけられている。
【0012】
本発明の第4の視点によれば、前記第1の移動体装置、前記第2の移動体装置または前記第1、第2の移動体装置を兼ねるナビゲーション装置に搭載されたコンピュータに実行させるプログラムが提供される。なお、このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記録することができる。即ち、本発明は、コンピュータプログラム製品として具現することも可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、テレマティクスサービスや位置情報提供サービス等に加入していないユーザからも運行情報を入手し、これらに基づき精度の高い移動所要時間を提示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の概要を説明するための図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の全体構成を表した図である。
【図3】本発明の第1の実施形態のカーナビゲーション装置が搭載された車載システムの構成例を表したブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態のカーナビゲーション装置の動作(運行情報提供側)を表したフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施形態のカーナビゲーション装置の動作(運行情報要求側)を表したフローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施形態の運行情報提供側のカーナビゲーション装置と運行情報要求側のカーナビゲーション装置の動作を表したシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
はじめに本発明の一実施形態の概要について図面を参照して説明する。なお、この概要に付記した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、本発明を図示の態様に限定することを意図するものではない。
【0016】
本発明は、図1に示すように、第1の無線通信方式を用いて、近隣の移動体装置(例えば、図1の移動体B2)に対し経路情報を送信し、所定の運行データ提供装置10への前記経路情報にて指定した経路に沿った運行情報の登録を要求する運行情報登録要求部12と、前記第1の無線通信方式を介して受信した前記運行情報の登録要求に応じて、前記経路情報にて指定された経路を移動している期間において、前記所定の運行データ提供装置10に対し、自機の位置及び時刻情報を含む運行情報を登録する運行情報登録部22と、前記運行データ提供装置10から受信した運行情報に基づいて、ユーザに対し、前記経路情報にて指定した経路による所要時間を提示する所要時間提示部13と、を備える構成にて実現できる。
【0017】
例えば、移動体A1が、ユーザから、経路Bにて目的地まで移動した場合の所要時間の提示を求められたものとする。この場合、移動体A1の運行情報登録要求部12は、無線通信部11を介して、近隣の移動体に対し、経路情報を送信し、運行データ提供装置10への運行情報の登録を要求する。
【0018】
ここでは、近隣の移動体のうち、移動体B2が前記経路情報にて指定された経路に沿って移動したものとする。運行情報の登録要求を受けた移動体B2の運行情報登録部22は、位置情報取得部23にて取得される自機の位置情報を参照して、前記経路情報に適合する経路を移動している期間において、運行データ提供装置10に対し、自機の位置及び時刻情報を含む運行情報を登録する。なお、前記運行情報は、第2の無線通信方式を用いて無線通信網を介して登録できるようにすることが望ましい。このようにすることで、運行情報の登録のための位置的制約を少なくすることができる。
【0019】
所要時間提示部13は、運行データ提供装置10から受信した運行情報に基づいて、ユーザに対し、経路Bで移動していた場合の所要時間を提示する。例えば、移動体B2が経路Bに沿って移動し、目的地到着まで14分掛かった場合、所要時間提示部13は、運行データ提供装置10から経路Bの所要時間14分というデータを得て、ユーザに対して提示する。これにより、ユーザは、例えば、自身が通った経路Aの所要時間との比較を行うことが可能となる。例えば、図1に示すように、経路Aなら15分、経路Bなら14分という結果が得られている場合、次回の検索時に、経路Bを選択したり、検索時の設定を見直すことが可能となる。
【0020】
なお、図1の例では、移動体A1が移動体B2から登録された運行情報の提供を受ける構成が示されているが、移動体A1および移動体B2にそれぞれ運行情報登録要求部12、運行情報登録部22、位置情報取得部23および所要時間提示部13を備えることで、移動体B2が移動体A1から登録された運行情報の提供を受けられるようにすることもできる。
【0021】
[第1の実施形態]
続いて、本発明をカーナビゲーションシステムに適用した本発明の第1の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図2は、本発明の第1の実施形態の全体構成を模式的に表した図である。図2を参照すると、インターネット等の広域ネットワーク50と、広域ネットワーク50への接続を提供するプロバイダ511、512と、携帯電話など移動体に通信回線を提供する公衆網521、522と、情報提供者が送信した運行情報を一時的に蓄えておく運行データ提供装置10と、運行情報を要求や運行情報を提供するカーナビゲーションシステム201a、201bとが示されている。
【0023】
カーナビゲーションシステム201a、201bは、それぞれ公衆網521、522、プロバイダ511、512経由で広域ネットワーク50に接続し、運行データ提供装置10から運行情報を受信可能となっている。また、カーナビゲーションシステム201a、201bは、それぞれ車車間通信部209にて、相手方のカーナビゲーション装置に、運行データ提供装置10への運行情報の登録を要求することが可能となっている。以下、本実施形態では、カーナビゲーションシステム201aが、運行情報の提供側の装置であり、カーナビゲーションシステム201bが運行情報の要求側の装置であるものとして説明する。
【0024】
カーナビゲーションシステム201a(201b)は、所定の車両間情報提供プロトコルに従って、相手方のカーナビゲーション装置に対し運行データ提供装置10への運行情報の登録を要求するメッセージを生成する要求生成部212と、前記運用情報の登録要求メッセージを受理し、応答メッセージを生成する要求受付部211と、前記各メッセージをやり取りする車車間通信部209と、自車の位置情報等を取得し走行中の経路に従った運行情報を生成する運行情報生成部213と、目的の経路と提供された運行情報とを照らし合わせて分析する運行情報分析部214と、運行情報をやり取りする広域ネットワーク通信部210と備えて構成される。
【0025】
なお、上記した要求生成部212および車車間通信部209が、上記した運行情報登録要求部12に相当する。また、運行情報生成部213および広域ネットワーク通信部210が、上記した運行情報登録部22に相当する。また、上記した運行情報分析部214および後記する表示処理部204等の情報表示手段が、上記した所要時間提示部に相当する。
【0026】
また、図2に示したカーナビゲーションシステム201a(201b)の各部(処理手段)は、カーナビゲーションシステム201a(201b)に搭載されたコンピュータに、そのハードウェアを用いて、上記した各処理を実行させるコンピュータプログラムにより実現することもできる。
【0027】
図3は、上記カーナビゲーションシステム201a(201b)が搭載された車載システムの具体的な構成例を表したブロック図である。図3を参照すると、カーナビゲーションシステム201と、自車の位置を測るGPS(Global Positioning System)受信機216と、自車の走行速度を得る車速センサ217と、自車の角速度を得るジャイロ218と、交通情報を受信するVICS受信機219と、カーナビゲーション画面を表示するディスプレイ215と、公衆網521、522に接続する携帯電話220と、近隣の車両と通信する車車間通信機221とを備えた構成が示されている。
【0028】
カーナビゲーションシステム201は、様々なシステムイベントに応じて、対応する機能を起動するイベント処理部202と、ユーザから各種操作を受け付ける操作ボタン群203と、ディスプレイ215に表示データを出力する表示処理部204と、経路探索や経路誘導を行う経路探索処理部205と、道路ネットワークデータを格納する道路ネットワーク情報データベース(以下、データベースを「DB」と記す。)206と、交通情報を格納する交通情報DB207と、地図情報を格納する地図情報DB208と、上述した車車間通信部209、広域ネットワーク通信部210、上述した要求受付部211、要求生成部212、運行情報生成部213、運行情報分析部214とを備えている。
【0029】
イベント処理部202は、操作ボタン群203からユーザの要求内容に応じて経路探索処理部205に対し経路探索を要求するとともに、経路探索処理部205から応答された内容を表示処理部204に出力させる。また、車車間通信部209を介して他車からの運行情報の登録要求メッセージを受信した場合、イベント処理部202は、要求受付部211に対し、運行情報の登録要求メッセージを入力する。また、ユーザの要求内容が前記検索により候補に挙がった経路の他車の運行情報の提示を求めるものであった場合、イベント処理部202は、要求生成部212に運行情報の登録要求メッセージの生成を依頼する。また、イベント処理部202は、広域ネットワーク通信部210側から運行情報を受信すると、運行情報分析部214に対し、運行情報の受信開始を通知する。運行情報分析部214から、運行情報による分析結果(途中経過や目的地への到達時刻)を受け取ると、その内容を表示処理部204に出力させる。また、イベント処理部202は、GPS受信機216、車速センサ217、ジャイロ218、およびVICS受信機219等の各種センサから寄せられる自車位置情報や交通情報の変化報告等に応じて、交通情報DB207に交通情報の記録等を行う。
【0030】
操作ボタン群203は、イベント処理部202に対し、ユーザによるボタン群の操作内容を通知する。
【0031】
表示処理部204は、イベント処理部202からの要求内容に応じて、経路探索処理部205から提供される経路情報や地図情報DB208から読み出した地図データを用いて画面を生成し、ディスプレイ215に表示する。
【0032】
経路探索処理部205は、イベント処理部202からの要求に従い、道路ネットワーク情報DB206、交通情報DB207および地図情報DB208を参照して、GPS受信機216や車速センサ217およびジャイロ218等の各種センサにより測位された自車位置、あるいはユーザが入力してきた出発地から目的地までの推奨経路を複数本数探索する。
【0033】
車車間通信部209は、車車間通信機221を介して、近傍を走行する車両とメッセージの送受信を行う。他の車両からメッセージを受信した場合、車車間通信部209は、イベント処理部202に当該メッセージを送信する。なお、車車間通信の方式としては、DSRC(Dedicated Short Range Communications)、IEEE802.11pなどが挙げられる。
【0034】
広域ネットワーク通信部210は、携帯電話220等の広域ネットワーク接続手段を介して、運行データ提供装置10に接続する。運行データ提供装置10から運行情報を受信すると、広域ネットワーク通信部210は、イベント処理部202にその内容を送信する。
【0035】
要求受付部211は、イベント処理部202を介して、車車間通信部209から他車からの運行情報の登録要求メッセージを受け取り、車車間通信部209に応答メッセージを渡す。前記運行情報の登録要求メッセージに対し、肯定応答する場合、要求受付部211は、イベント処理部202に対し、当該運行情報の登録要求メッセージにて指示された経路による運行情報の生成開始を依頼する。
【0036】
要求生成部212は、イベント処理部202からの要求に従い、運行情報の登録要求メッセージを生成する。また、他車から前記運行情報の登録要求メッセージに対する肯定応答を受信した場合、要求生成部212は、イベント処理部202に対し、運行情報の受信開始を通知する。運行情報の登録要求メッセージには、運行情報の登録を求める経路情報と、運行情報の登録先となる運行データ提供装置10のアドレスとが含まれる。経路情報のフォーマットは、相手方のカーナビゲーション装置が自機が経路上を移動中であるか否かを判別可能なものであればよく、種々の形態を採ることができる。本実施形態では、経路探索処理部205にて生成された経路を用いるものとする。このような経路情報は、道路ネットワーク情報DB206に保持される道路ネットワーク上のノードや、地図情報DB208上の座標情報を並べたものと同等である。
【0037】
運行情報生成部213は、イベント処理部202から運行情報の送信開始要求を受けると、経路探索処理部205から受信した自車の位置情報を参照して、運行情報の登録要求メッセージにて指示された経路を移動している期間において、運行データ提供装置10に登録するための、自機の位置及び時刻情報を含む運行情報を生成する。また、運行情報生成部213は、イベント処理部202および広域ネットワーク通信部210を介して、運行情報の登録要求メッセージに示されたアドレスを用いて、運行データ提供装置10に前記生成した運行情報を登録する。なお、運行情報生成部213が、運行情報の提供側の車両が要求した経路を走行中であるか否か、目的地に到着したか否か、運行情報の提供が途中で途切れたり、車両が停止状態にある等、不自然な点がないかなどをチェックするようにしても良い。運行情報生成部213の詳細な処理内容は、後に図4を参照して詳細に説明する。
【0038】
運行情報分析部214は、イベント処理部202から運行情報の受信開始通知を受けると、経路探索処理部205から運行情報の登録を要求した経路を取得し、広域ネットワーク通信部210を介して運行データ提供装置10から受信した運行情報を用いて、運行情報の提供元の他車の途中経過(当該時点での他車の位置とその時刻)や他車の目的地への到着時刻をイベント処理部202に報告する。運行情報分析部214の詳細な処理内容は、後に図5を参照して詳細に説明する。
【0039】
ディスプレイ215は、地図情報や他の情報を表示するための情報出力装置である。
【0040】
GPS受信機216は、自車の地球上の位置を得るために人工衛星からの電波を受信する。車速センサ217は、自車の走行速度を得るセンサである。ジャイロ218は、自車の角速度を得るセンサである。VICS受信機219は、交通情報を受信する受信機である。
【0041】
続いて、上記したカーナビゲーション装置が運行情報の提供側となる場合の動作と、上記したカーナビゲーション装置が運行情報の要求側となる場合の動作について図面を参照して詳細に説明する。
【0042】
図4は、運行情報生成部213における処理の流れの一例を表したフローチャートである。図4を参照すると、まず、イベント処理部202から運行情報の送信開始要求を受信すると(ステップS1)、運行情報生成部213は、エンジン停止中であるなど、運行情報を生成可能な状態にあるか否かを判断する(ステップS2)。ここで、例えば、エンジン停止中であった場合、運行情報生成部213は、イベント処理部202に処理中止を応答し、処理を終了する(ステップS2のNo)。また、この場合、イベント処理部202は、車車間通信部209を介して、運行情報の送信元の車両に対し、運行情報を提供しないとの否定応答を返すことになる。
【0043】
ステップS2で運行情報を生成可能であると判断した場合(ステップS2のYes)、運行情報生成部213は、経路探索処理部205から、測位情報および時刻情報を取得する(ステップS3)。
【0044】
次に、運行情報生成部213は、前記測位情報に示された自車の位置が、運行情報の登録要求メッセージにて指示された経路を走行中であるか否かを確認する(ステップS4)。ここで、前記経路を逸脱していると判断した場合(ステップS4のYes)、運行情報生成部213は、イベント処理部202に、当該時点での測位情報および時刻情報を応答し、処理を終了する(ステップS8)。
【0045】
ステップS4で、指定された経路を走行中であると判断した場合(ステップS4のNo)、運行情報生成部213は、自車が前記経路の終端(目的地)に到着しているか否かを確認する(ステップS5)。ここで、前記経路の終端(目的地)に到着していると判断した場合(ステップS5のYes)、運行情報生成部213は、イベント処理部202に、当該時点での測位情報および時刻情報を応答し、処理を終了する(ステップS8)。
【0046】
ステップS5で前記経路の終端(目的地)に到着していないと判断した場合(ステップS5のNo)、運行情報生成部213は、タイマを読み出し、運行情報の送信タイミングが到来しているか否かを判断する(ステップS6)。ここで、運行情報の送信タイミングが到来していないと判断した場合(ステップS6のNo)、運行情報生成部213は、ステップS2に戻って、測位、時刻データの取得を継続する(ステップS2へ)。
【0047】
ステップS6で、運行情報の送信タイミングが到来していると判断した場合(ステップS6のYes)、運行情報生成部213は、イベント処理部202に、当該時点での測位情報および時刻情報を応答する(ステップS7)。
【0048】
図5は、運行情報分析部214における処理の流れの一例を表したフローチャートである。図5を参照すると、まず、イベント処理部202から運行情報の送信開始要求を受信すると(ステップS20)、運行情報分析部214は、ユーザによる中止操作など、他車の運行情報の表示を継続するか否かを判断する(ステップS21)。ここで、例えば、ユーザによる中止操作がなされた場合、運行情報分析部214は、イベント処理部202に処理中止を応答し、処理を終了する(ステップS21のYes)。
【0049】
ステップS21で、他車の運行情報の表示を継続すると判断した場合(ステップS21のNo)、運行情報分析部214は、タイマを読み出し、運行情報の取得タイミングが到来しているか否かを判断する(ステップS22)。ここで、運行情報の取得タイミングが到来していないと判断した場合(ステップS22のNo)、運行情報分析部214は、ステップS21に戻る(ステップS21へ)。
【0050】
ステップS22で、運行情報の取得タイミングが到来していると判断した場合(ステップS22のYes)、運行情報分析部214は、イベント処理部202経由で、運行データ提供装置10から運行情報を受信する(ステップS23)。
【0051】
次に、運行情報分析部214は、受信した運行情報から、運行情報の提供元の車両の測位情報と時刻情報を取得する(ステップS24)。
【0052】
運行情報分析部214は、当該運行情報の提供元の車両が指定した経路の終端(目的地)に到着しているか否かを確認する(ステップS25)。ここで、当該運行情報の提供元の車両が指定した経路の終端(目的地)に到着していると判断した場合(ステップS25のYes)、運行情報分析部214は、イベント処理部202に対し、当該運行情報の提供元の車両が指定した経路の終端(目的地)に到着した旨と、前記運行情報から取り出した時刻情報とを出力し、処理を終了する(ステップS26)。
【0053】
ステップS25で当該運行情報の提供元の車両が指定した経路の終端(目的地)に到着していないと判断した場合(ステップS25のNo)、運行情報分析部214は、当該運行情報の提供元の車両が指定した経路を走行中であるか否かを確認する(ステップS27)。ここで、経路を逸脱していないと判断した場合(ステップS27のNo)、運行情報分析部214は、イベント処理部202に対し、途中経過として、前記運行情報から取り出した時刻情報を出力した後(ステップS28)、ステップS21に戻って処理を継続する(ステップS21へ)。
【0054】
ステップS27で、指定された経路を逸脱していると判断した場合(ステップS27のYes)、運行情報分析部214は、指定した経路と、運行情報の測位情報や時刻情報に基づいて、運行情報の提供元の車両が情報提供を中止している、経路を完全に逸脱しているなどを判断する(ステップS29)。ここで、運行情報の提供元の車両が情報提供を中止している、経路を完全に逸脱しているなどの状態にあると判断した場合(ステップS29のYes)、運行情報分析部214は、処理を終了する。一方、運行情報の提供元の車両が、トンネルに入った、一時的に経路を逸脱したなど、情報提供を中止している、経路を完全に逸脱しているなどの状態にないと判断した場合、運行情報分析部214は、ステップS21に戻って処理を継続する(ステップS21へ)。
【0055】
続いて、上記した運行情報提供側のカーナビゲーション装置と運行情報要求側のカーナビゲーション装置との間でやり取りされる一連のメッセージおよび処理内容について図面を参照して詳細に説明する。
【0056】
図6は、運行情報提供側のカーナビゲーション装置と運行情報要求側のカーナビゲーション装置の動作を表したシーケンス図である。図6を参照すると、ユーザから指定された経路の他車運行情報の提示要求操作が行われると(ステップS31)、運行情報要求側車両に搭載されたカーナビゲーションシステム201bは、運行情報の登録要求メッセージを生成し、車車間通信部209経由で、車車間通信可能な範囲に位置する車両に送信する(ステップS32)。
【0057】
運行情報の登録要求メッセージを受信したカーナビゲーションシステム201aは、運行情報の登録要求メッセージを解釈し、自車の状態等に基づいて、運行情報を提供するか提供しないかを応答する(ステップS33)。以下、カーナビゲーションシステム201aは、運行情報を提供するとの応答メッセージを返したものとして説明する。
【0058】
また、運行情報の登録要求メッセージを受信したカーナビゲーションシステム201aは、運行情報生成部213に、運行情報の生成開始を指示する(ステップS35)。
【0059】
一方、カーナビゲーションシステム201bは、前記応答メッセージを受信すると(ステップS34)、運行情報分析部214に、運行情報の分析開始を指示する(ステップS36)。
【0060】
前記ステップS31〜S36の車車間通信を用いた要求・応答シーケンスにおいて運行情報の要求側と運行情報の提供側の関係が確立すると、その後は、広域ネットワーク50を介した運行情報の授受が開始される。
【0061】
具体的には、カーナビゲーションシステム201aの運行情報生成部213は、図4に示した手順で、運行情報の登録要求メッセージにて指定された運行データ提供装置10に、指定された経路の運行情報を登録する(ステップS371〜S373)。
【0062】
カーナビゲーションシステム201bの運行情報分析部214は、図5に示した手順で、運行データ提供装置10から、指定した経路の運行情報を取得する(ステップS381〜S383)。
【0063】
その後、運行情報の提供元の車両が指定した経路の終端(目的地)に到着すると、カーナビゲーションシステム201bの運行情報分析部214は、当該経路による目的地到達時刻を表示する(ステップS39)。
【0064】
以上のように、本実施形態によれば、情報センタによる経路付近を走行中の登録車両の位置情報を把握したり、情報提供車両を選定することなく、別経路を採った場合の途中経過や目的地までの所要時間をユーザに提示することが可能となる。
【0065】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の基本的技術的思想を逸脱しない範囲で、更なる変形・置換・調整を加えることができる。例えば、上記した実施形態では、本発明をカーナビゲーションシステムに適用した例を挙げて説明したが、本発明は、カーナビゲーションシステムに限られるものではなく、歩行者に対し、徒歩や交通機関を利用した目的地までの経路を案内するポータブルナビゲーションシステムにも適用することが可能である。
【0066】
また、上記した実施形態では、運行情報の登録要求メッセージとその応答メッセージは、車車間通信を用いて授受するものとして説明したが、これらのメッセージを近傍の移動体と授受可能な通信方式であれば特に限定されない(第1の無線通信方式)。例えば、車車間通信に代えて、近距離無線通信方式を用いることも可能である。
【0067】
また、上記した実施形態では、携帯電話を用い公衆網経由で、運行データ提供装置10にアクセスするものとして説明したが、WiMAX網や無線LANアクセスポイント経由で、運行データ提供装置10にアクセスできるようにしてもよい(前記第1の無線通信方式とは異なる第2の無線通信方式)。また例えば、路車間通信で、運行データ提供装置10にアクセスする構成とすることもできる。
【0068】
また、上記した実施形態では、経路検索の結果、候補に挙がった経路について、他車の運行情報の提示を求めるものとして説明したが、その他、ユーザが過去に経路検索をした際に候補に挙がった経路について、所要時間の提示を求めることができるようにしてもよい。
【0069】
また、上記した実施形態では、カーナビゲーションシステム201bが一つのカーナビゲーションシステム201aに運行情報の登録要求を行うものとして説明したが、カーナビゲーションシステム201bが複数のカーナビゲーションシステムに運行情報の登録要求を行うこととしてもよい。同様に、一つのカーナビゲーションシステム201bが複数のカーナビゲーションシステムから運行情報の登録要求に応じることとしてもよい。
【0070】
また、上記した実施形態では、運行情報の提供側のカーナビゲーションシステム201aが指定された経路から外れた場合等に、処理を終了するものとして説明したが、そのような場合、運行データ提供装置10が、これを補完する運行情報(例えば、過去の近似条件での同一経路の運行情報)を提供するようにしてもよい。
【0071】
また、上記した実施形態では、カーナビゲーションシステム201a、201bがそれぞれ同等の構成であるものとして説明したが、図1にも示したように、一方のカーナビゲーションシステムが、運行情報の提供機能のみを有し、他方のカーナビゲーションシステムが、運行情報の要求機能のみを有するといった構成も採用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 移動体A
2 移動体B
10 運行データ提供装置
11、21 無線通信部
12 運行情報登録要求部
13 所要時間提示部
22 運行情報登録部
23 位置情報取得部
50 広域ネットワーク
201、201a、201b カーナビゲーションシステム
202 イベント処理部
203 操作ボタン群
204 表示処理部
205 経路探索処理部
206 道路ネットワーク情報DB
207 交通情報DB
208 地図情報DB
209 車車間通信部
210 広域ネットワーク通信部
211 要求受付部
212 要求生成部
213 運行情報生成部
214 運行情報分析部
215 ディスプレイ
216 GPS受信機
217 車速センサ
218 ジャイロ
219 VICS受信機
220 携帯電話
221 車車間通信機
511、512 プロバイダ
521、522 公衆網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指定された経路に沿って移動する移動体装置の位置と時刻情報を含む運行情報を提供する運行データ提供装置と、
第1の無線通信方式を用いて、近隣の移動体装置に対し経路情報を送信し、前記運行データ提供装置への前記経路情報にて指定した経路に沿った運行情報の登録を要求する運行情報登録要求部と、
前記運行データ提供装置から受信した運行情報に基づいて、ユーザに対し、前記近隣の移動体装置にて計測された前記経路情報にて指定した経路による所要時間を提示する所要時間提示部と、を備える第1の移動体装置と、
前記第1の移動体装置からの前記運行情報の登録要求に応じて、前記経路情報にて指定された経路を移動している期間において、前記運行データ提供装置に対し、自機の位置及び時刻情報を含む運行情報を登録する運行情報登録部を備える第2の移動体装置と、を含むこと、
を特徴とする所要時間提示システム。
【請求項2】
前記第1の無線通信方式は、車車間通信または近距離無線通信である請求項1の所要時間提示システム。
【請求項3】
前記運行データ提供装置に対する前記運行情報の登録は、無線通信網を介した第2の無線通信方式で行われる請求項1または2の所要時間提示システム。
【請求項4】
前記所要時間提示部は、途中経過として、前記運行データ提供装置から受信した前記近隣の移動体装置の位置および時刻情報を提示する請求項1から3いずれか一の所要時間提示システム。
【請求項5】
運行情報登録部は、自機の位置が前記経路情報に適合する経路から外れた場合、前記運行情報の登録を中止する請求項1から4いずれか一の所要時間提示システム。
【請求項6】
前記第1の移動体装置は、指定された始点から目的地までの経路を検索する検索機能と、前記検索機能により検索された複数の経路の所要時間の提示機能とを備えたナビゲーションシステムである請求項1から5いずれか一の所要時間提示システム。
【請求項7】
前記第2の移動体装置は、前記第1の移動体装置からの要求に応じて、運行情報の登録を行うナビゲーションシステムである請求項1から6いずれか一の所要時間提示システム。
【請求項8】
指定された経路に沿って移動する移動体装置の位置と時刻情報を含む運行情報を提供する運行データ提供装置と、接続可能であり、
第1の無線通信方式を用いて、近隣の移動体装置に対し経路情報を送信し、前記運行データ提供装置への前記経路情報にて指定した経路に沿った運行情報の登録を要求する運行情報登録要求部と、
前記運行データ提供装置から受信した運行情報に基づいて、ユーザに対し、前記近隣の移動体装置にて計測された前記経路情報にて指定した経路による所要時間を提示する所要時間提示部と、を備える第1の移動体装置。
【請求項9】
指定された経路に沿って移動する移動体装置の位置と時刻情報を含む運行情報を提供する運行データ提供装置と、接続可能であり、
第1の無線通信方式を介して近隣の移動体装置から受信した前記運行情報の登録要求に応じて、前記経路情報にて指定された経路を移動している期間において、前記運行データ提供装置に対し、自機の位置及び時刻情報を含む運行情報を登録する運行情報登録部を備える第2の移動体装置。
【請求項10】
指定された経路に沿って移動する移動体装置の位置と時刻情報を含む運行情報を提供する運行データ提供装置と、接続可能であり、
第1の無線通信方式を用いて、近隣の移動体装置に対し経路情報を送信し、前記運行データ提供装置への前記経路情報にて指定した経路に沿った運行情報の登録を要求する運行情報登録要求部と、
前記運行データ提供装置から受信した運行情報に基づいて、ユーザに対し、前記近隣の移動体装置にて計測された前記経路情報にて指定した経路による所要時間を提示する所要時間提示部と、
前記第1の無線通信方式を介して近隣の移動体装置から受信した前記運行情報の登録要求に応じて、前記経路情報にて指定された経路を移動している期間において、前記運行データ提供装置に対し、自機の位置及び時刻情報を含む運行情報を登録する運行情報登録部と、を備えるナビゲーション装置。
【請求項11】
ユーザから所要時間の提示要求を受けた装置が、第1の無線通信方式を用いて、近隣の移動体装置に対し経路情報を送信し、所定の運行データ提供装置に対し、前記経路情報にて指定した経路に沿った運行情報の登録を要求するステップと、
前記近隣の移動体装置が、前記第1の無線通信方式を介して受信した前記運行情報の登録要求に応じて、前記経路情報にて指定された経路を移動している期間において、前記所定の運行データ提供装置に対し、自機の位置及び時刻情報を含む運行情報を登録するステップと、
前記ユーザから所要時間の提示要求を受けた装置が、前記運行データ提供装置から受信した運行情報に基づいて、ユーザに対し、前記経路情報にて指定した経路による所要時間を提示するステップと、
を含む移動所要時間の提示方法。
【請求項12】
第1の無線通信方式を用いて、近隣の移動体装置に対し経路情報を送信し、所定の運行データ提供装置に対し、前記経路情報にて指定した経路に沿った運行情報の登録を要求する処理と、
前記運行データ提供装置から受信した運行情報に基づいて、ユーザに対し、前記経路情報にて指定した経路による所要時間を提示する処理と、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項13】
第1の無線通信方式を介して近隣の移動体装置から受信した前記運行情報の登録要求に応じて、前記経路情報にて指定された経路を移動している期間において、所定の運行データ提供装置に対し、自機の位置及び時刻情報を含む運行情報を登録する処理をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−36938(P2013−36938A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175296(P2011−175296)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】