説明

扁平つる巻きタイヤコード

平行な、並列関係を維持しながら、つる巻き構成に作り込んだコアフィラメント(10)を有するタイヤコード。これらのコアフィラメント(10)は、捩りまたは撚り合わせてない。高引張り強度の鞘フィラメント(11)も、コアフィラメント(10)を束ねるような張力をコアフィラメント(10)に掛けないように、並列コアフィラメントに巻付けられるように、扁平なつる巻き構成に作り込んである。これらのコアフィラメント(10)は、タイヤコードに空隙ができず且つゴムが貫入できるように、扁平な並列構成に維持される。コアフィラメント(10)の数は、3ないし6でもよく、鞘フィラメント(11)は1ないし7でもよい。このタイヤコードの断面は、扁平で小判形外部境界(21)内に閉込められていて、この小判形外部境界(21)は、長軸と短径によって特徴付けられている。この短軸は、水平対垂直方向のタイヤコードの曲げ弾性係数に適当な差を作るために長軸の60%以下であるのが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマー物品の補強用金属コード、特に、空気入りタイヤの補強に有用であり且つこのタイヤにコーナリング性能と乗り心地の両方が良い特徴を与えるタイヤコードに関する。
【背景技術】
【0002】
スチールベルトタイヤに使う種類のような、スチールタイヤコードは、複数の鞘フィラメントで包んだ複数のコアフィラメントから作ることができる。高強度を達成するためには更なるコアフィラメントを要するが、3本以上のコアフィラメントを要するときは、これらのコアフィラメントを一緒に束ねて、束ねたフィラメントの中心に空隙を作る傾向がある。このコードをゴム層に接着すると、ゴムがこれらの空隙に容易に入り込んでそれらを埋めることはできない。そこでもしこのタイヤに穴が開くと、これらの空隙に水が入り、タイヤコードを腐食するかも知れない。
【0003】
最近のタイヤ設計は、軽量タイヤを作るために薄いゴム厚および/またはベルトの中での広いコード間隔を要求する。これらの設計は、自動車の燃料効率および乗り心地特性のために良いと知られている。
【0004】
その上、乗用車タイヤは、横操縦性、即ち、良いコーナリング、並びに乗り心地および路面との最大接触のために低曲げ剛性をもたらすコードを要求する。所望の横剛性を達成するために、典型的にはタイヤコードの構成に大きい直径のフィラメントを使用する。コーナリングを改善するためにこれらの直径が増すと、タイヤベルトは垂直平面で剛くなり、乗り心地を悪くし、道路との接触面積が小さくなる。
【0005】
典型的なタイヤ構造は、0.15〜0.40mmの真鍮めっきしたスチールフィラメントを使用する。コードに高破壊荷重が要求されるならば、フィラメント数を増すことが必要である。コードが3本以上のフィラメントを撚り合わせたとき、このコードの中心に空隙ができるかも知れない。するとこのコードは、タイヤ加硫中にゴムをこの空隙に入り込ませるに十分なスペースがフィラメント間になく、このコードは、密着性低下に苦しむかも知れない。密着性低下は、タイヤのベルト分離を生ずるかも知れない。更に、コードの中心に空隙があれば、それは、もしベルト領域に何らかの路面障害物が侵入すると、水によって容易に腐食するかも知れない。これは、ベルトの中のコードの全長が空隙を通って吸上がる水によって腐食されるかも知れないので、特に関心事となる。結果としての腐食がコードの機械的特性および疲労抵抗をタイヤ破損が起るかも知れないように低下する。
【0006】
コードの中へのゴムの入り込みを改善し且つこのタイヤコード内の空隙の問題を避けるために種々のタイヤコード構成が開発されている。
(1)開放型構造は、小さい引張りばね型コードを創るためにフィラメントにコードピッチに等しい周波数で大きな振幅の波を予め形成することによって創ったものである。
(2)波形フィラメント構造は、ピッチがコードのピッチより小さい、1本以上の小型波状フィラメントを有する。この構造が創る小さい隙間がゴムのコアへの侵入を可能にする。
(3)1×2および2+2として知られるタイヤコード構造は、完全にゴムが入り込んでいる。
【0007】
上に説明した問題に対応するためのその他の試みに関する情報が以下に記載するように種々の米国特許にあることが分る。
イケハラの米国特許第5,718,783号は、単一つる巻きコアフィラメントおよび5ないし8の鞘フィラメントを含むスチールコードを開示する。このつる巻きコアフィラメントのピッチおよび振幅は、コアフィラメントの直径および鞘フィラメントの数に依ってある範囲に設定してある。
ショヤマの米国特許第6,244,318号は、単一コアフィラメントおよびこのコアの周りのつる巻線によって作った複数の鞘層から作ったタイヤコードを開示する。
【0008】
ニデロストの米国特許第6,089,293号は、補強コードがプライの異なる点で異なる特性を有するゴムプライを開示する。これらの異なる特性は、コードを一緒にしてつる巻き状に捩ってプライの異なる部分でつる巻き直径が異なるようにして達成する。
アルデファーの米国特許第3,802,982号は、単一フィラメントをつる巻き状に作った複数のコードによって補強をもたらすタイヤを開示する。
ベイリービエール外の米国特許第5,285,623号は、各々少なくとも2本のフィラメントの2本の綱を含むスチールコードを開示する。これらの綱を互いの周りに撚り合わせて同じピッチの螺旋体を作る。これらの綱の一つのフィラメントは、ピッチが300mmを超え、即ち、この綱のフィラメントは、それ程撚ってない。
【0009】
しかし、これらのタイヤコードは、全て幾つかの限界がある。開放型構造のフィラメントは、ゆるく撚り合わせてあるので容易に動くことができる。従って、安定なコード形状を保つことは困難であり、このコードは、基本的に均一ではない。カレンダ掛け工程に於ける張力制御も開放型コードには非常に重要で、ゴムの侵入を良くするためには低く保たねばならない。高張力カレンダで開放型構造を使うならば、引き伸し中にコードが閉じると、ゴムの侵入と共に開放性が失われるかも知れない。カレンダシートのゴム厚に伴う問題も開放型コードでは明白である。ゴム侵入を保証するために必要な大きな開放性もコードの直径を増し、このコードのサイズを許容するためにゴム厚の増加を要する。
【0010】
波形構造は、コードの中のフィラメント数の増加を要する高強度用途で良いゴム侵入を維持するにはあまり有効ではない。これは、波形構造がコードに比較的小さい隙間しか創らず、その結果、加硫中に大量のゴムの流れを許容しないからである。
【0011】
1×2および2+2として知られるコード型式も、一定数のフィラメントを要するので、タイヤ設計に問題を呈示する。タイヤベルトに高強度を得るためには、カレンダで大きいフィラメント直径、高張力鋼、またはEPI(インチ(25.4mm)当りの縦糸数)の増加さえも使わなければならない。大きいフィラメント直径および高EPIは、共に軽量タイヤ設計と相容れない。
【0012】
更に最近、コードへのゴムの侵入およびタイヤの横ベルト安定性の要求を満たすためにもう一つの構造が導入されている。この構造は、特開2000−096464号公報に開示してあるように、単一の、細い、低強度巻付けフィラメントで巻いた、全て平行なフィラメントを使用する。しかし、この構造の実際の生産は、非常に短い巻付けピッチを使うのでなければ、この低強度巻付けフィラメントが平行なコアフィラメントを広がらないようには出来ないので、困難である。これは、巻付け機速度が最大機械毎分回転数によって拘束されるので、生産高を落す。更に、この構造は、巻付けフィラメントにフィラメントを扁平に保持するに十分な強度がないので、多数のフィラメントを扁平に保つのが困難である。高破壊荷重コードは、フィラメント数が制限されるので、利用できない。その上、細い巻付けフィラメントは、コードの破壊強度にあまり寄与しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、以下に説明するように、従来技術の限界を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、タイヤコードの少なくとも2本、好ましくは3本のコアフィラメントを、平行な、並列関係に維持しながら、つる巻き構成に作ることによって上に議論した問題を解決する。これらのコアフィラメントは、捩りまたは撚り合わせてない。言換えれば、ピッチ(これらのコアフィラメントの完全な1捩りの長さ)が事実上無限大である。実際には、これは少なくとも300mmのピッチを意味する。鞘フィラメントも、並列コアフィラメントに巻付けられるように、扁平なつる巻き構成に作ってある。この様にして、鞘フィラメントは、コアフィラメントを束ねるような張力をコアフィラメントに掛けない。それどころか、コアフィラメントは、タイヤコードに空隙ができず且つゴムが侵入できるように、扁平な並列構成に維持される。鞘フィラメントとコアフィラメントの両方がタイヤコードの破壊強度に実質的に貢献する。これは、低引張り強度の巻付けフィラメントを複数の平行なコアフィラメントに使う従来技術と異なる。
【0015】
従って、本発明のコアフィラメントは、平行であることと並列関係に維持されていることの両方を特徴とする。3本以上のコアフィラメントを平行な構成に、即ち、捩り合わせずに作ってもよく、一方鞘フィラメントは、このコアの周りに束ねてある。コアフィラメントが並列構成のままであることは、本発明の有意な側面である。並列構成というのは、水平面で縦方向に引き伸したコードを考えることによって説明してもよい。以下に説明するように、コードの扁平なつる巻き構成とは、このコードのどの断面も、水平と考えられる長軸と垂直と考えられる短軸によって特徴付けられた、一般的に小判形の外部境界内に閉込められていることを意味する。これらのコアフィラメントは、コードに沿う各縦方向点で、このコードの長さと直角を成し且つ水平面内にある線がコアフィラメントの各々の中心線を通過するようにできるなら、並列構成にある。
【0016】
この発明は、種々の数のコアフィラメントおよび鞘フィラメントで実施できる。コアフィラメントの数は、2ないし6、鞘フィラメントは1ないし7が望ましい。
【0017】
上述のように、コアフィラメントの扁平な構成および鞘フィラメントの扁平なつる巻き構成が、このタイヤコードのどの断面も扁平で、小判形外部境界内に閉込められることを決め、この小判形外部境界は、長軸に沿う長径および短軸に沿う短径によって特徴付けられていることが分るだろう。この短径は、垂直対水平方向のタイヤコードの曲げ弾性係数に適当な差を作るために長径の60%以下であるのが望ましい。このタイヤコードの断面は、扁平で小判形外部境界内に閉込められていて、この小判形外部境界は、長軸と短径によって特徴付けられている。この短軸は、水平対垂直方向のタイヤコードの曲げ弾性係数に適当な差を作るために長軸の60%以下であるのが望ましい。コーナリングが良いためには水平方向の剛性が大きいのが望ましく、一方乗り心地が良いためには垂直方向の剛性を減らすのが望ましい。
【0018】
本発明の望ましい構成を有するタイヤコードを作るためには、コードおよびフィラメント寸法が以下の数学的関係を満足するのが望ましい。
1.5×d≦(D−2×d)≦m×d+d
但し、
=コアフィラメントの直径、
=水平方向(長軸)を横切る鞘フィラメントの波高値、即ち、長径、
=鞘フィラメントの直径、および
m=コアフィラメントの数。
【0019】
コアフィラメント直径は、鞘フィラメントの直径と異なってもよいが、ある用途ではこれらの直径が同じであるか、ほぼ同じであることが望ましいかも知れない。
【発明の効果】
【0020】
本発明のタイヤコードは、ゴムタイヤベルトに使うとき、良いコーナリング性能、滑らかな乗り心地のための低剛性、コードが完全な状態であるための良いゴム侵入率、および高生産速度への適応性を示す。このタイヤコードは、軽量タイヤを作るために薄いゴム厚および/またはベルト内での広いコード間隔も可能にし、それが自動車の燃料効率および乗り心地特性に貢献する。
【0021】
本発明のこれらおよびその他の特徴、目的および利点は、以下の好適実施例の詳細な説明および添付の請求項を添付の図面と共に考慮すればより良く理解されよう。
【実施例】
【0022】
本発明のタイヤコードを図1ないし図6に関して説明する。タイヤコード20は、少なくとも3本のコアフィラメント10を有する。これらのコアフィラメントを図3ないし図6ではハッチングを付けて示す。コアフィラメント10の数は、6以下が望ましい。鞘フィラメント11(図3ないし図6にハッチングなしで示す)の数は、1ないし7が望ましい。鞘フィラメント11のフィラメント直径Cは、コアフィラメント11のコア直径Dと異なってもよいが、ある用途では鞘フィラメント直径Cがコアフィラメント直径Dと同じであるか、ほぼ同じであることが望ましいかも知れない。コアフィラメント10は、撚りまたは捩り合わせてない。言換えれば、ピッチ(これらのコアフィラメントの完全な1捩りの長さ)が事実上無限大である。実際には、これは少なくとも300mmのピッチを意味する。
【0023】
鞘フィラメント11とコアフィラメント10の両方がタイヤコード20の破壊強度に実質的に貢献することは、本発明の重要な側面である。ここで使う、“実質的に貢献する”という用語は、本発明のフィラメントを、複数の高引張り強度のコアフィラメントを平行に維持するために低引張り強度の巻付けフィラメントを使うがこの巻付けフィラメントは、タイヤコードの破壊強度に実質的に貢献せず、それが主としてコアフィラメントによって決る従来技術と区別することを意図する。従って、本発明では、鞘フィラメント11がコアフィラメント10と共にタイヤコード20の破壊強度に実質的に貢献し、一方従来技術で、巻付けフィラメントは、タイヤコード20の破壊強度に実質的に貢献しない。鞘フィラメント11の強度は、コアフィラメント10の扁平で、平行な、並列構成の維持にも貢献する。
【0024】
タイヤコード20は、コアフィラメント10がつる巻き線に作ってあり、これらのコアフィラメント10が互いに平行で、“扁平な”並列構成のままであるので、中心に空隙を含まない。“扁平な”並列構成とは、タイヤコード20の縦方向長さに沿う各点で、図3ないし図6に示すように、コアフィラメント10の各々の中心線を通るほぼ直線の直交線12が引けるようなコアフィラメント10の整列を指す。
【0025】
コアフィラメント10の数が2未満ならば、タイヤコード20は、タイヤ強化で曲げ弾性係数改善を達成できず、コアフィラメント10の数が6を超えれば、平行なつる巻き線を維持するのが困難である。コアフィラメント10がつる巻線に従いながら完全に平行であることは必要ない。これらのコアフィラメントが基本的に平行つる巻き線として整列するならば、コアフィラメント10が“位置を変える”幾つかの点は、殆ど影響がなく、タイヤコード20の性質を低下しない。
【0026】
鞘フィラメント11も扁平なつる巻き構成に作ってある。鞘フィラメント11は、鞘フィラメント波の頂上がコアフィラメント波の谷に起り、逆もまた同様であるように、並列コアフィラメント10の周りに巻付けてある。この様にして、鞘フィラメント11は、コアフィラメント10を束ねて中心に空隙を作るような張力をコアフィラメント10に掛けることはない。
【0027】
コアフィラメント10のこの扁平な並列配置およびこれらのコアフィラメント10の周りに巻付けた鞘フィラメント11の扁平なつる巻き構成は、タイヤコード20のどの断面も扁平になっていて、小判形外部境界21内に閉込められることを決め、この小判形外部境界21は、長軸に沿う長径Aおよび短軸に沿う短径Bによって特徴付けられている。この短径Bは、垂直(長軸周り)対水平(短軸周り)方向のタイヤコード20の曲げ弾性係数に適当な差を作るために長径Aの60%以下であるのが望ましい。
【0028】
タイヤコード20が垂直および水平断面の間の曲げ弾性係数のこの差を達成するならば、このタイヤコード20は、ゴムカレンダシート内に長径Aをこのカレンダシートの幅と整列して配置できる。コーナリングが良いためには水平方向の剛性が大きいのが望ましく、一方乗り心地が良いためには垂直方向の剛性を減らすのが望ましい。このタイヤコード20の短径Bは、通常のタイヤコード構造より小さいので、薄いゴムカレンダシートが達成可能である。更に、このタイヤコード20の長径Aは、通常のタイヤコード構造より大きい。従って、先の構造と同じコード間スペースを維持しながら、カレンダシートのEPIが減るかも知れない。
【0029】
鞘フィラメント直径Cは、コアフィラメント10を実質的に整列した平行、扁平、並列つる巻き線に維持するために十分な巻付け強度を創るに十分大きくなければならない。しかし、鞘フィラメント11の数が7を超えれば、外被間のスペースが小さくなり過ぎるので、コードのゴム侵入が悪い。タイヤコード20は、通常の結束機技術では、平行なコアフィラメント10を結束プロセスでコアを丸め、従って中心に望ましくない空隙を作る傾向があるので、作ることが非常に困難である。本発明のタイヤコード20は、コアフィラメント10にそれらを一緒に束ねさせるような張力を掛けることなく、“扁平な”並列構成に配置したコアフィラメント10の周りに巻付けるために、先のタイヤコード構造より長い鞘フィラメント11を要する。この余分な長さは、鞘フィラメント11をうねらせるために曲げピンを使うことによって、または結束プロセスの前に仮撚り機を使うことによって得られる。しかし、コアフィラメント10もつる巻き波形で曲げられるので、このコードの直径は、鞘フィラメント11の必要な長さに関して効果的に小さくなる。そこでこの関係を以下の式で記述できる。
1.5×d≦(D−2×d)≦m×d+d
但し、
=コアフィラメント直径(D)、
=長径(A)、
=鞘フィラメント直径(C)、および
m=コアフィラメントの数。
【0030】
(D−2×d)が(m×d+d)より大きいならば、結束機で作るのは非常に困難である。(D−2×d)が(1.5×d)より小さければ、このタイヤコードは均一性が悪く、コードの特徴が保証されない。
【0031】
本発明によって作ったタイヤコード20は、良いゴム侵入率、水平面での曲げ剛性に関してコーナリング力に対する大きい抵抗力、およびタイヤの垂直面での低剛性に基づいて接触面積の広い良い乗り心地をもたらす。
【0032】
この例で説明するタイヤコードは、結束機型撚り機で撚り合わせてある。表1は、本発明のタイヤコード20の評価した機械的性質を従来技術の構造と比較する。
【0033】
(表1)
表1
例 従来技術 従来技術 本発明
構造 1x5x0.35 3+2x0.35 3+2x0.35
型式 開放 丸 扁平
Dh-2xds(mm) 0.73
撚りピッチ(mm) 18 18 18
コード直径(mm)
最大 1.24 1.11 1.45
最小 1.20 1.01 0.76
偏平度(%) 96.8 91 53.1
破断荷重(kg) 150 155 155
ゴム侵入率(%) 100 60 100
曲げ剛性 115.8 112.3 101.3/192.1
【0034】
表2Aおよび2Bは、通常のM+N型構造(表2A)対本発明のタイヤコード20(表2B)の評価した機械的性質データを比較する。
【0035】
(表2)
表2A−従来技術
構造 3+5 3+1 6+2
フィラメント直径(mm)
コア 0.35 0.35 0.35
鞘 0.35 0.15 0.35
Dh-2xds(mm) 0.85 1.35 1.23
扁平度(%) 69 92 79
撚りピッチ(mm) 18 14 18
シートの均一性(%) 74 60
ゴム侵入率(%) 50 80 60
コアフィラメントの均一性 良 良 不良
平行度 良 不良 不良
【0036】
(表3)
表2B−本発明
構造 3+2 4+3
フィラメント直径(mm)
コア 0.35 0.35
鞘 0.35 0.35
Dh-2xds(mm) 0.72 1.00
扁平度(%) 53 45
撚りピッチ(mm) 18 18
シートの均一性(%) 100 100
ゴム侵入率(%) 100 100
コアフィラメントの均一性 良 良
平行度 良 良
【0037】
これらの最大および最小タイヤコード直径は、厚さダイヤルゲージで各タイヤコードを回転することによって測定した。扁平度は、次のように計算した、最小コード直径/最大コード直径×100%である。破壊荷重は、被覆してないコードを破損するまで伸す引張試験機を使って測定した。ゴム侵入率は、最初にタイヤコードをゴムに埋めてから、鞘フィラメントをコアフィラメントから除去し、残る裸線領域を観察することによって評価した。結果を完全被覆範囲の百分率で記録した。
【0038】
曲げ剛性は、以下の方法によって測定した。
1.ある長さのコード(>10cm)をゴムに埋め、加硫する。
2.ナイフでこのコードからゴムを切取る。コードを10cmに切る。
3.サンプルを5cmの距離で平行に配置したピボットバーの上に置く。
4.サンプルの中間に撓みが3mmに等しくなるまで下向き力を加える。
5.サンプルを3mm曲げるために要した力を測定する。
【0039】
表1は、従来技術のタイヤコードを本発明のタイヤコード20と比較する。本発明のタイヤコード20の曲げ剛性を二つの数字で表示する。高い数値は、コードを短軸周りに撓めるときの曲げ剛性に関係する。小さい数値は、長軸周りの曲げ剛性に対応する。表示するデータから、本発明のタイヤコードは、路面との接触面積が広い良い乗り心地と、曲げ剛性に関する良いコーナリング性能の両方を提供できる特性を示す。
【0040】
カレンダシートの配向の均一性を評価するために、このカレンダシートのx線写真を撮り、次に最大コード直径が見えたときに、埋めたコードを数えた。表示するデータは、次のように計算した、(数えたコード数/全コード数)×100%である。100%という点数は、全てのコードが最大コード直径の側面がx線で見えるように配置してあることを意味する。
【0041】
平行度は、コアフィラメント10がどれ程効果的に同じつる巻き経路を追従するかを評価する。“良”は、コアフィラメント10が実質的に同じ経路を追従することを示す。コアフィラメント10がこの評価基準を満たさないならば、そのサンプルを“不良”と評価した。
【0042】
本発明のタイヤコード20は、優れたゴム侵入率、有意な曲げ剛性差、およびカレンダシートに埋めたときの配向能力の諸特性を示す。
【0043】
本発明の代替実施例を図7A、7B、8Aおよび8Bに関して示す。タイヤコードフィラメントが平行状態にあるとき、接触は線に沿い、それで応力は高度には集中しない。しかし、フィラメントが交差するとき、点接触であり、それで応力がその点に集中する。そのような高応力は、摩耗率を望ましくなく上昇し、それがこれらの応力集中点での破損の可能性を増す。タイヤコードフィラメントを大きなピッチのつる巻き線に作り、および小さいピッチの第2つる巻き線も作ることによって、タイヤコードへのゴムの侵入率を改善し、疲労抵抗を改善することが知られている。この技術は、米国特許第5,319,915号明細書に例示してある。そこでこの二重渦巻きフィラメントは、断続的にだけ隣接するフィラメントに接触する。
【0044】
この技術を本発明に適応させてもよい。図7Aおよび7Bに示すように、コアフィラメント10(図7A、7B、8Aおよび8Bにハッチングを付けて示す)は、扁平で、平行な、並列構成に作ってある。鞘フィラメント11は、コアフィラメント11に巻付く。図8Aおよび8Bの代替実施例で、鞘フィラメント11は、これらの鞘フィラメント11がコアフィラメント10に巻付くピッチより小さいピッチで作ってある。それで鞘フィラメント11は、各々円形断面領域30内に閉込められている。この断面領域30は、この発明の先の実施例で鞘フィラメント11に関して先に説明した経路を辿り、一方鞘フィラメント11は、二重渦巻き経路を辿る。それで鞘フィラメント11は、他のフィラメントとの点間接触が少ない。これは、疲労抵抗を改善し、タイヤコードへのゴム侵入率も良くする。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のタイヤコードは、ゴムタイヤベルトに使うとき、良いコーナリング性能、滑らかな乗り心地のための低剛性、コードが完全な状態であるための良いゴム貫入率、および高生産速度への適応性を示す。このタイヤコードは、軽量タイヤを作るために薄いゴム厚および/またはベルト内での広いコード間隔も可能にし、それが自動車の燃料効率および乗り心地特性に貢献する。
【0046】
本発明をある好適および代替実施例を参照して説明したが、それらは例示に過ぎず、添付の請求項に示す本発明の全範囲を限定することを意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明のタイヤコードの側面図である。
【図2】本発明のタイヤコードの平面図である。
【図3】図1および図2のタイヤコードの図1および図2の線3−3に沿った断面図である。
【図4】図1および図2のタイヤコードの図1および図2の線4−4に沿った断面図である。
【図5】図1および図2のタイヤコードの図1および図2の線5−5に沿った断面図である。
【図6】図1および図2のタイヤコードの図1および図2の線6−6に沿った断面図である。
【図7A】本発明の代替実施例を示し、先の図面で説明したコアフィラメントが扁平で、平行な、並列構成に作ってあり、鞘フィラメントが与えられたピッチでコアフィラメントに巻付いている。
【図7B】本発明の代替実施例を示し、先の図面で説明したコアフィラメントが扁平で、平行な、並列構成に作ってあり、鞘フィラメントが与えられたピッチでコアフィラメントに巻付いている。
【図8A】本発明の代替実施例を示し、鞘フィラメントは、更に、これらの鞘フィラメントがコアフィラメントに巻付くピッチより小さいピッチで作ってある。
【図8B】本発明の代替実施例を示し、鞘フィラメントは、更に、これらの鞘フィラメントがコアフィラメントに巻付くピッチより小さいピッチで作ってある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー物品の補強に適するタイヤコードであって、
3ないし6のコアフィラメント数を有し且つ縦方向に沿ってつる巻き線を形成し、前記コアフィラメントが捩り合わせてなく且つ前記コアフィラメントが実質的に平行な、実質的に並列の構成に配置してある第1グループのフィラメント、および
1ないし7の鞘フィラメント数を有し且つ前記コアフィラメントの前記つる巻き線と同じ向きに扁平なつる巻き線を形成する第2グループのフィラメントで、前記コアフィラメントの前記つる巻き線と同じ向きに前記第1グループの周りに撚り合わせてあるフィラメントを含み、
前記コアフィラメントおよび前記鞘フィラメントの各々が前記タイヤコードの破壊強度に実質的に貢献し、
前記コアフィラメントの各々はコアフィラメント直径に特徴があり、および前記鞘フィラメントの各々は鞘フィラメント直径に特徴があり、
前記縦方向に沿う前記タイヤコードのどの断面も長軸に沿う長径と短軸に沿う短径によって特徴付けられた一般的に小判形の外部境界内に含まれるタイヤコード。
【請求項2】
タイヤコードに於いて、前記短径が前記長径の60%以下である請求項1に記載されたタイヤコード。
【請求項3】
タイヤコードに於いて、次の式を満足する請求項1に記載されたタイヤコード、
1.5×dc≦(Dh−2×ds)≦m×dc+ds
但し、
c=前記コアフィラメント直径、
h=前記長径、
s=前記鞘フィラメント直径、および
m=コアフィラメントの数。
【請求項4】
タイヤコードに於いて、次の式を満足する請求項2に記載されたタイヤコード、
1.5×dc≦(Dh−2×ds)≦m×dc+ds
但し、
c=前記コアフィラメント直径、
h=前記長径、
s=前記鞘フィラメント直径、および
m=コアフィラメントの数。
【請求項5】
タイヤコードに於いて、前記鞘フィラメント直径が前記コアフィラメント直径と実質的に同じである請求項1に記載されたタイヤコード。
【請求項6】
エラストマー物品の補強に適するタイヤコードであって、
2ないし6のコアフィラメント数を有し且つ縦方向に沿ってつる巻き線を形成し、前記コアフィラメントが捩り合わせてなく且つ前記コアフィラメントが実質的に平行な、実質的に並列の構成に配置してある第1グループのフィラメント、および
1ないし7の鞘フィラメント数を有し且つ前記コアフィラメントの前記つる巻き線と同じ向きに扁平なつる巻き線を形成する第2グループのフィラメントで、前記コアフィラメントの前記つる巻き線と同じ向きに前記第1グループの周りに撚り合わせてあるフィラメントを含み、
前記コアフィラメントおよび前記鞘フィラメントの各々が前記タイヤコードの破壊強度に実質的に貢献し、
前記コアフィラメントの各々はコアフィラメント直径に特徴があり、および前記鞘フィラメントの各々は鞘フィラメント直径に特徴があり、そして
前記縦方向に沿う前記タイヤコードのどの断面も長軸に沿う長径と短軸に沿う短径によって、前記短径が前記長径の60%以下であるように特徴付けられた一般的に小判形の外部境界内に含まれるタイヤコード。
【請求項7】
次の式を満足する請求項6に記載されたタイヤコード、
1.5×dc≦(Dh−2×ds)≦m×dc+ds
但し、
c=前記コアフィラメント直径、
h=前記長径、
s=前記鞘フィラメント直径、および
m=コアフィラメントの数。
【請求項8】
前記鞘フィラメント直径が前記コアフィラメント直径と実質的に同じである請求項6に記載されたタイヤコード。
【請求項9】
エラストマー物品の補強に適するタイヤコードであって、
2ないし6のコアフィラメント数を有し且つ縦方向に沿ってつる巻き線を形成し、前記コアフィラメントが捩り合わせてなく且つ前記コアフィラメントが実質的に平行な、実質的に並列の構成に配置してある第1グループのフィラメント、および
1ないし7の鞘フィラメント数を有し且つ前記コアフィラメントの前記つる巻き線と同じ向きに扁平なつる巻き線を形成する第2グループのフィラメントであって、前記コアフィラメントの前記つる巻き線と同じ向きに前記第1グループの周りに撚り合わせてあるフィラメントを含み、
前記コアフィラメントおよび前記鞘フィラメントの各々が前記タイヤコードの破壊強度に実質的に貢献し、
前記コアフィラメントの各々はコアフィラメント直径に特徴があり、および前記鞘フィラメントの各々は、次の式を満足する鞘フィラメント直径に特徴があり、
1.5×dc≦(Dh−2×ds)≦m×dc+ds
但し、
c=前記コアフィラメント直径、
h=前記長径、
s=前記鞘フィラメント直径、および
m=コアフィラメントの数であり、および
前記縦方向に沿う前記タイヤコードのどの断面も長軸に沿う長径と短軸に沿う短径によって、前記短径が前記長径の60%以下であるように特徴付けられた一般的に小判形の外部境界内に含まれるタイヤコード。
【請求項10】
前記鞘フィラメント直径が前記コアフィラメント直径と実質的に同じである請求項9に記載されたタイヤコード。
【請求項11】
前記鞘フィラメントが前記扁平なつる巻き線を形成する第1ピッチと前記第1ピッチより小さい第2ピッチに特徴がある請求項1に記載されたタイヤコード。
【請求項12】
前記鞘フィラメントが前記扁平なつる巻き線を形成する第1ピッチと前記第1ピッチより小さい第2ピッチに特徴がある請求項6に記載されたタイヤコード。
【請求項13】
前記鞘フィラメントが前記扁平なつる巻き線を形成する第1ピッチと前記第1ピッチより小さい第2ピッチに特徴がある請求項9に記載されたタイヤコード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【公表番号】特表2006−507414(P2006−507414A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−584534(P2003−584534)
【出願日】平成15年4月7日(2003.4.7)
【国際出願番号】PCT/US2003/010824
【国際公開番号】WO2003/087620
【国際公開日】平成15年10月23日(2003.10.23)
【出願人】(504376522)トクセン ユー.エス.エー.、インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】