説明

扁平軸を用いた振動−回転変換玩具

【課題】 ガリガリとんぼ等と呼ばれている振動−回転変換玩具は、回転体5の回転を確実にしたり、回転方向を変えるために、支持棒1を指で押さえて擦る等のコツを要する。こうした指による操作を必要とせず、回転体5が容易に、かつ円滑に回転し、回転方向も確実に制御できる振動−回転変換玩具を得る。
【解決手段】 回転体5の軸を扁平軸4とし、扁平軸4の振動方向と扁平軸4の縦断面の長手方向とが傾きを持つようにした。扁平軸4が振動し、回転体の孔6に触れて回転体5を押す時、振動方向と扁平軸4の縦断面の長手方向との傾きによって、回転体5は回転力を受け、単一方向の振動でも、容易に、かつ円滑に回転させることができる。また、この傾きを変えることによって、回転体5の回転方向を変えたり、回転しないようにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガリガリとんぼ等と呼ばれている振動−回転変換玩具について、回転体の回転を容易にし、かつ回転方向を確実に制御する振動−回転変換玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のガリガリとんぼ又はガリガリプロペラ等と呼ばれている振動−回転変換玩具はプロペラ状の回転体を、支持棒の先端に釘等で軸支し、支持棒の凹凸溝を擦り棒で擦ることによって軸に振動を与え、回転体を回転させる玩具である。
【0003】
回転体の軸が、単一方向にのみ振動(例えば縦振動)すると、回転体が回りにくいため、他方向の振動(例えば横振動)が加わるように工夫し、軸が楕円状に動くようにする必要がある。このため、擦り棒を持つ指で支持棒の側面を押さえながら、支持棒の凹凸溝を擦って、回転しやすくしたり、押さえる側面を変えることによって、回転方向を変えている(非特許文献1)。
【0004】
こうした指の操作に代わって、擦り棒を略L字形に切り欠き、支持棒の凹凸溝の上部と側部を同時に擦るようにして、軸に楕円状の運動を与えたり、擦り棒を台形状に切り欠き、接触する側面を変えることで回転方向を切り換える提案がある(特許文献1)。
【0005】
また、支持棒を長方形断面とし、その上面の凹凸溝の2つの角を擦り棒で擦り分けて、回転体の回転方向を変えるものがある。
【0006】
さらに、軸又はその一部を弾性体とし、振動させた時に楕円状に動かそうとする提案がある。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】登実平8−3025464号公報
【特許文献2】特開平15−2003210859号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】里信ほか:「振動−回転変換おもちゃ”ぎりぎりがりがり”の動作機構」、電子情報通信学会技術研究報告94(390)、45−52、1994
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の振動−回転変換玩具では、支持棒の凹凸溝を擦り棒で擦って、単一方向に振動させた時、軸は回転体の孔に接触して押すが、丸棒形状のため、回転体には振動方向である法線方向にしか力が加わらず、回転体は回らない。このため上記のような操作や工夫を加え、軸を楕円状に動かし、回転体との摩擦によって、回転体を回している。
【0010】
そこで、軸を楕円状に運動させることを必要とせずに、回転体を容易に、かつ円滑に回転させ、回転方向も確実に制御できる振動−回転変換玩具を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このため、本発明では回転体の軸を扁平軸とし、扁平軸の振動方向と扁平軸の縦断面の長手方向とが傾きを持つようにした。扁平軸が振動し、回転体の孔に触れて回転体を押す時、この傾きによって、回転体は回転力を受け、回転する。以下、図をもとに詳しく説明する。
【0012】
図2は扁平軸の例を示した縦断面図で、(a)は断面が長方形で、回転し易いようにその短辺部分に丸みを付けた扁平軸、(b)は断面が楕円形の扁平軸である。また、扁平軸の振動方向▲1▼に対し、扁平軸の長手方向▲2▼が角θで傾いていることを示している。
【0013】
図3は回転体と扁平軸の断面を示した正面図である。回転体の孔と扁平軸との遊び及び回転体にかかる重力の影響は少ないと考えられるため、考慮しないで考える。扁平軸は上下方向に振動し、縦断面の長手方向は振動方向と角θ傾いている。扁平軸が振動で上昇し、その上端が回転体の孔部分と点Pで接触して、力Fで押すものとする。この時、点Pと軸心点Oとを結ぶ直線OPは扁平軸の長手方向とほぼ一致するので、直線OPと振動方向との傾きをθとすると、力Fは孔の接線方向の分力Fsinθと法線方向の分力Fcosθとなる。前者は回転体を回転させようとする力であり、後者は扁平軸と回転体間の摩擦力(摩擦係数をμとすると、μFcosθ)となる。扁平軸が下降する時にはその下端が回転体の孔を押し、回転体に上端の時と同方向の回転力が働く。回転体の回転方向は、正面から見て、扁平軸の縦断面の長手方向の傾きが正の時(図3)は反時計方向であり、負の時は時計方向である。
【0014】
傾きθが小さいと摩擦力は大きくなり、回転力を回転体に十分伝えられるが、回転力は小さくなり、0°では回転しない。また、傾きθが大きいと回転力は大きくなるが、摩擦力は小さく、軸と回転体は滑ってしまい、90°では回転しない。
【0015】
回転体が容易に、かつ円滑に回転するには、凹凸溝の形やピッチによる振動形態、扁平軸と回転体の孔との遊びや摩擦係数などが関係するため、扁平軸の適切な形状や振動方向との縦断面の長手方向との傾きは、実際に使用する扁平軸や回転体の材料を用いて試行し、また、強度にも配慮しながら適宜決める。
【発明の効果】
【0016】
以上の説明から、本発明にあっては次の効果が得られる。
(1)扁平軸が振動し、回転体の孔に触れて押す時、振動方向と扁平軸の縦断面の長手方向との傾きによって、回転体は回転力を受け、単一方向の振動でも、容易に、かつ円滑に回転する。
(2)振動方向と扁平軸の縦断面の長手方向との傾きを変えることで、回転体の回転方向を変えたり、回転しないようにすることができる。
(3)従来不可能であった、1つの支持棒に並置した回転体や同軸上の複数の回転体を同時に互いに逆方向に回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態を示す一般的な斜視図である。
【図2】本発明の扁平軸の例で、振動方向に対して傾いた状態を示す縦断面図である。
【図3】本発明の回転体と扁平軸の断面を示す正面図で、かつ回転体が回る原理を説明した図である。
【図4】本発明の実施例2を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施例3を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施例4を示す平面図である。
【図7】本発明の実施例5を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
回転体の回転を容易にし、また回転方向を変えたり、回転しないようにするには、扁平軸の振動方向を固定して扁平軸の縦断面の長手方向の傾きを変える方法あるいは扁平軸を固定して扁平軸の振動方向を変える方法がある。以下、本発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は本発明の実施形態を示す一般的な斜視図で、扁平軸4以外は従来の振動−回転変換玩具と同様の構成である。支持棒1の上面の一部に凹凸溝2が付けてある。回転体5はプロペラや円盤等で、その中心には扁平軸4の幅より少し大きい径の孔6が空けてある。扁平軸の振動(上下)方向に対して扁平軸4の縦断面の長手方向を適度に傾けた状態で回転体の孔6に通し、支持棒1の先端に止める。
【0020】
支持棒1をつかみ、凹凸溝2を擦り棒3で擦る。この時、強く擦ったり、凹凸溝2の角を擦ったり、指で支持棒1を押したりといった従来の振動−回転変換玩具で行っていた操作は不要で、擦り棒3で凹凸溝2を軽く擦るだけでよい。支持棒1及びその先端の扁平軸4が上下に振動し、扁平軸4が回転体の孔6に触れて押すことによって、回転体5に回転力が働いて回転する。
【0021】
扁平軸4を軸方向まわりに回転できるようにして、振動方向と扁平軸4の縦断面の長手方向の傾きを変えれば、回転体5の回転方向を変えたり、回転しないようにすることができる。
【実施例2】
【0022】
図4に示すように支持棒1の上面に凹凸溝2−(1)と側面に凹凸溝2−(2)を付け、扁平軸4の縦断面の長手方向を指示棒1の上面に対し概ね45°になるようにする。上面の凹凸溝2−(1)を擦る時と側面の凹凸溝2−(2)を擦る時では、振動方向に対する扁平軸4の縦断面の長手方向の傾きが反転するため、回転体5は逆方向に回転する。また、凹凸溝2−(1)と凹凸溝2−(2)の交わる角部分を擦ると回転体5は回らない。
【実施例3】
【0023】
図5に示すように支持棒1を円柱状にし、凹凸溝2を全周にわたるように付ける。支持棒1をその中心軸まわりに回して、凹凸溝2の擦る周位置を変えると、扁平軸4の振動方向と扁平軸4の縦断面の長手方向との傾きが変わるため、回転体5が回転方向を変えたり、回らなくなる。
【実施例4】
【0024】
図6に示すように支持棒1の先端を分岐させて、回転体5−(1)と回転体5−(2)を並置する。扁平軸4−(1)の縦断面の長手方向を適度に正に傾けて、回転体5−(1)を通して止め、扁平軸4−(2)の縦断面の長手方向を適度に負に傾けて、回転体5−(2)を通して止める。支持棒1の凹凸溝2を擦って振動させると、回転体5−(1)と回転体5−(2)は同時に逆方向に回転する。
【実施例5】
【0025】
図7に示すように同軸に回転体5−(1)と回転体5−(2)を通す。回転体5−(1)の軸部分である扁平軸4−(1)の縦断面の長手方向は適度に正に傾け、回転体5の(2)の軸部分である扁平軸4−(2)の縦断面の長手方向は適度に負に傾ける。支持棒1の凹凸溝2を擦って振動させると、回転体5−(1)と回転体5−(2)は同時に逆方向に回転する。
【実施例6】
【0026】
本発明を特許文献2の玩具に応用し、弾性軸に換えて、傾斜した扁平軸4を用いると、支柱を降下する時の上下の単一方向の振動でも、容易に、かつ円滑にプロペラを回すことが可能となる。
【符号の説明】
【0027】
1 支持棒
2 凹凸溝
3 擦り棒
4 扁平軸
5 回転体
6 回転体の孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動−回転変換玩具の回転体の軸を扁平軸とし、扁平軸の振動方向と扁平軸の縦断面の長手方向とが傾きを持つようにした振動−回転変換玩具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−228491(P2012−228491A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109889(P2011−109889)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(501094867)
【Fターム(参考)】