説明

扉付構造物

【課題】目隠し効果を奏することができるばかりでなく、扉体に衝突するおそれを低減した扉付構造物を提供する。
【解決手段】扉付構造物であるトイレブース11は、扉受け壁体22と、正面視で左側端部が扉受け壁体22と重なり合う扉体23と、手挟み防止用の間隙26とを備える。扉体23は、正面視で扉受け壁体22と重なり合う先端側重合板部32を有する。扉体23は、開口部20側に向って膨出するように先端側重合板部32よりも厚く形成した膨出板部33を有する。開口部20の閉鎖時には、膨出板部33の前面は、扉受け壁体22の厚さ範囲内で扉受け壁体22の前面と同一平面上に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉体を備える扉付構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば図10に示す扉付構造物であるトイレブースが知られている。
【0003】
この図10に示すトイレブースは、トイレ使用者がトイレ空間部1に対して出入りするための出入口である開口部2を介して、互いに離間対向する左右1対の壁体3,4を備えている。左右1対の壁体3,4中の一方の壁体3には、他方の壁体4から離れる開方向に向って回動して開口部2を開口させかつ他方の壁体4に接近する閉方向に向って回動して開口部2を閉鎖するもので開口部2の閉鎖時に正面視で左側端部が他方の壁体4と重なり合う平板状の扉体5がヒンジ6を介して回動可能に取り付けられている。
【0004】
そして、開口部2の閉鎖時においては、正面視で重なり合う壁体4の右側端部と扉体5の左側端部との間に手挟み防止用の間隙7が位置し、この間隙7によって壁体4と扉体5との間でトイレ使用者が手を挟まないようになっている。
【0005】
しかしながら、この図10に示すトイレブースでは、手挟み防止用の間隙7から、トイレ空間部1(トイレブースの内側)が見えてしまうおそれがある。
【0006】
そこで、例えば図11に示す扉付構造物であるトイレブースが知られている(例えば特許文献1)。
【0007】
この図11に示すトイレブースの扉体5は、図10の平板状のものとは異なり、4箇所に湾曲部5aを有する曲板状のもので、この曲板状の扉体5の幅方向中央側には、開口部2の閉鎖時に開口部2よりトイレブースの外側に張り出してなる張出部5bが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−211516号公報(図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図11に示すトイレブースでは、確かに、手挟み防止用の間隙7からトイレ空間部1が見えず、目隠し効果を奏することができるものの、扉体5の張出部5bが開口部2よりトイレブースの外側に張り出しているため、例えばトイレ使用者が扉体5の張出部5bに衝突するおそれがある。
【0010】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、目隠し効果を奏することができるばかりでなく、扉体に衝突するおそれを低減した扉付構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の扉付構造物は、壁体と、この壁体から離れる開方向に向って回動して開口部を開口させかつ前記壁体に接近する閉方向に向って回動して前記開口部を閉鎖するもので、前記開口部の閉鎖時に正面視で側端部が前記壁体と重なり合う扉体と、前記開口部の閉鎖時に前記壁体と前記扉体との間に位置する手挟み防止用の間隙とを備え、前記扉体は、この扉体の側端部に形成され、前記開口部の閉鎖時に正面視で前記壁体と重なり合う重合板部と、前記開口部側に向って膨出するように前記重合板部よりも厚く形成され、前記開口部の閉鎖時に膨出側の厚さ方向端面が前記壁体の厚さ範囲内に位置する膨出板部とを有するものである。
【0012】
請求項2記載の扉付構造物は、請求項1記載の扉付構造物において、扉体の膨出板部は、開口部の閉鎖時に膨出側の厚さ方向端面が壁体の重合板部と対向する側とは反対側の厚さ方向端面と同一平面上に位置するものである。
【0013】
請求項3記載の扉付構造物は、請求項1または2記載の扉付構造物において、重合板部の壁体と対向する側とは反対側の厚さ方向端面と膨出板部の反膨出側の厚さ方向端面とが、同一平面上に位置するものである。
【0014】
請求項4記載の扉付構造物は、請求項1ないし3のいずれか一記載の扉付構造物において、膨出板部の反膨出側の厚さ方向端面の上部に設けられた凸状の荷物掛け兼用当接体を備え、開口部の開口時に、前記荷物掛け兼用当接体が被当接部と当接することにより前記扉体の開方向への回動が規制されるものである。
【0015】
請求項5記載の扉付構造物は、請求項1ないし4のいずれか一記載の扉付構造物において、扉体は、膨出板部の膨出側の厚さ方向端面に形成された凹状の手掛け部を有するものである。
【0016】
請求項6記載の扉付構造物は、請求項1ないし5のいずれか一記載の扉付構造物において、扉体の重合板部は、平面視で視線が前記重合板部と交わるだけのラップ幅を有するものである。
【0017】
請求項7記載の扉付構造物は、請求項1ないし6のいずれか一記載の扉付構造物において、便器が配設されるトイレ空間部を備えるトイレブースであるものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によれば、扉体は、扉体の側端部に形成され開口部の閉鎖時に正面視で壁体と重なり合う重合板部と、開口部側に向って膨出するように重合板部よりも厚く形成され開口部の閉鎖時に膨出側の厚さ方向端面が壁体の厚さ範囲内に位置する膨出板部とを有するため、目隠し効果を奏することができるばかりでなく、扉体に衝突するおそれを低減できる。
【0019】
請求項2に係る発明によれば、扉体の膨出板部は、開口部の閉鎖時に膨出側の厚さ方向端面が壁体の重合板部と対向する側とは反対側の厚さ方向端面と同一平面上に位置するため、目隠し効果を効果的に奏することができる。
【0020】
請求項3に係る発明によれば、例えば扉体の膨出板部の反膨出側の厚さ方向端面が曲面である場合にはその曲面にまどわされて扉体の接近具合を見誤るおそれがあるが、重合板部の壁体と対向する側とは反対側の厚さ方向端面と膨出板部の反膨出側の厚さ方向端面とが同一平面上に位置するため、扉体の接近具合の見誤りを防止でき、扉体に衝突するおそれをより一層低減できる。
【0021】
請求項4に係る発明によれば、膨出板部の反膨出側の厚さ方向端面の上部に設けられた凸状の荷物掛け兼用当接体を備え、開口部の開口時に荷物掛け兼用当接体が被当接部と当接することにより扉体の開方向への回動が規制されるため、開口部の開口時には荷物掛け兼用当接体にて扉体の開方向への回動を適切に規制でき、開口部の閉鎖時には荷物掛け兼用当接体に荷物を適切に掛けることができる。
【0022】
請求項5に係る発明によれば、扉体は膨出板部の膨出側の厚さ方向端面に形成された凹状の手掛け部を有するため、安全性を確保しつつ、扉体の操作性の向上を図ることができる。
【0023】
請求項6に係る発明によれば、扉体の重合板部は、平面視で視線が前記重合板部の角部と交わるだけのラップ幅を有するため、目隠し効果を適切に奏することができる。
【0024】
請求項7に係る発明によれば、手挟み防止用の間隙からトイレ空間部が見えず、目隠し効果を奏することができるばかりでなく、トイレ使用者が扉体の膨出板部に衝突するようなことがなく、扉体に衝突するおそれを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態に係るトイレブースの概略平面図である。
【図2】同上トイレブースの部分平面図である。
【図3】同上トイレブースの扉体の正面図である。
【図4】同上トイレブースの扉体の側面図である。
【図5】図3のV−V断面図である。
【図6】同上扉体と扉受け壁体とのラップ幅の条件を説明するための説明図である。
【図7】同上扉体と扉受け壁体の好適な形状の一例を示す説明図である。
【図8】本発明の他の実施の形態に係るトイレブースの概略平面図である。
【図9】本発明のさらに他の実施の形態に係るトイレブースの部分平面図である。
【図10】従来のトイレブースの部分平面図である。
【図11】従来のトイレブースの部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0027】
図1において、11は扉付構造物であるトイレブースで、このトイレブース11は、例えば扉内開き式のもので、このトイレブース11の内側に所定の大きさのトイレ空間部12を備えている。そして、トイレ空間部12には、例えば洋式の便器13が配設されている。
【0028】
トイレブース11は、図1に示されるように、トイレ空間部12を介して互いに離間対向する略矩形板状で鉛直状の左右1対の仕切壁部である側板、つまり正面視右側の右側板15および正面視左側の左側板16を備え、これら両側板15,16の後端部が被固定部である壁部17に固定されている。
【0029】
右側板15の前端部には、トイレ空間部12の正面視右側の前面を覆う略矩形板状で鉛直状の袖パネル等の壁体である扉被取付壁体21が右側板15に対して直交状に固設されている。つまり、一方の壁体である扉被取付壁体21の幅方向端部である右側端部が右側板15の前端部に固定されている。
【0030】
左側板16の前端部には、トイレ空間部12の正面視左側の前面を覆う略矩形板状で鉛直状の袖パネル等の他方の壁体である扉受け壁体22が左側板16に対して直交状に固設されている。つまり、他方の壁体である扉受け壁体22の幅方向端部である左側端部が左側板16の前端部に固定されている。
【0031】
そして、互いに離間対向する左右1対の壁体である前板間、つまり扉被取付壁体21の左側端部と扉受け壁体22の右側端部との間には、トイレ使用者がトイレ空間部12に対して出入りするための出入口である略矩形状の開口部20が位置する。すなわち、開口部20の開口時に、例えば大人であるトイレ使用者(使用者)は、開口した開口部20を通って、トイレ空間部12に対して出入りする。
【0032】
そして、扉被取付壁体21には、扉受け壁体22から離れる開方向(図1では、時計回り)つまりトイレブース11の内側に向って回動して開口部20を開口させかつ扉受け壁体22に接近する閉方向(図1では、反時計回り)に向って回動して開口部20を閉鎖するもので、開口部20の閉鎖時に正面視で幅方向端部である側端部、つまり正面視左側の左側端部が扉受け壁体22の右側端部と前後に重なり合う略矩形板状で鉛直状の内開き式の扉体23がヒンジ24を介して上下方向の軸線Yを中心として回動可能に取り付けられている。
【0033】
つまり、扉体23の幅方向一端部としての戸尻側端部である右側端部が扉被取付壁体21の後面に上下1対のヒンジ24を介して回動可能に取り付けられ、この扉体23の幅方向他端部としての戸先側端部である左側端部が自由端部となっている。
【0034】
扉体23の幅寸法は開口部20の幅寸法(左右方向長さ寸法)より大きく、開口部20の閉鎖時には、扉体23の右側端部が扉被取付壁体21の左側端部の後方に位置してこの扉被取付壁体21の左側端部と正面視で前後に重なり合い、かつ、扉体23の左側端部が扉受け壁体22の右側端部の後方に位置してこの扉受け壁体22の右側端部と正面視で前後に重なり合う。
【0035】
そして、このトイレブース11では、開口部20の閉鎖時に扉体23と扉受け壁体22との間に手挟み防止用の間隙(基端側間隙)26が位置し、この間隙26によって扉体23と扉受け壁体22との間でトイレ使用者が手を挟まないようになっている。
【0036】
また同様に、開口部20の閉鎖時に扉体23と扉被取付壁体21との間に手挟み防止用の間隙(先端側間隙)27が位置し、この間隙27によって扉体23と扉被取付壁体21との間でトイレ使用者が手を挟まないようになっている。
【0037】
ここで、扉体23は、図1ないし図5に示されるように、正面視で略矩形状をなす略左右対称の形状に形成されている。
【0038】
扉体23は、扉体23の右側端部に肉薄状に形成され開口部20の閉鎖時に正面視で扉被取付壁体21の左側端部と前後に重なり合うヒンジ側の重合板部である基端側重合板部31と、扉体23の左側端部に基端側重合板部31と同一厚さをもって肉薄状に形成され開口部20の閉鎖時に正面視で扉受け壁体22の右側端部と前後に重なり合う反ヒンジ側の重合板部である先端側重合板部32と、扉体23の幅方向中央側に開口部20側に向って膨出するように左右両側の重合板部31,32よりも厚く肉厚状に形成され開口部20よりも外側へ非突出状の膨出板部33とを有している。
【0039】
そして、図2から明らかなように、開口部20の閉鎖時には、膨出板部33の膨出側の平面状の厚さ方向端面は、壁体21,22の厚さ範囲内において、扉被取付壁体21の基端側重合板部31と対向する側とは反対側の厚さ方向端面および扉受け壁体22の先端側重合板部32と対向する側とは反対側の厚さ方向端面と同一平面上に位置する。つまり、開口部20の閉鎖時には、膨出板部33の前部で開口部20が閉鎖され、この膨出板部33の前面33aがそれぞれ左右方向に沿って位置する扉被取付壁体21の前面21aおよび扉受け壁体22の前面22aと同一平面上に位置する。このとき、扉被取付壁体21の前面21aと膨出板部33の前面33aとの間には間隙27の一部が位置し、扉受け壁体22の前面22aと膨出板部33の前面33aとの間には間隙26の一部が位置する。
【0040】
また、膨出板部33の前面33aと基端側重合板部31の前面31aとの間には、開口部20の閉鎖時に左右方向に対して傾斜する基端側傾斜面36が形成されている。膨出板部33の前面33aと先端側重合板部32の前面32aとの間には、開口部20の閉鎖時に左右方向に対して傾斜する先端側傾斜面37が形成されている。そして、基端側重合板部31の前面31a、基端側傾斜面36、膨出板部33の前面33a、先端側傾斜面37および先端側重合板部32の前面32aにて、扉体23の幅方向中央側膨出状の前面(閉方向側の面)が構成されている。なお、膨出板部33の一側面が基端側傾斜面36にて構成され、膨出板部33の他側面が先端側傾斜面37にて構成されている。
【0041】
さらに、膨出板部33の反膨出側の厚さ方向端面と、基端側重合板部31の扉被取付壁体21と対向する側とは反対側の厚さ方向端面と、先端側重合板部32の扉受け壁体22と対向する側とは反対側の厚さ方向端面とが、同一平面上に位置する。つまり、基端側重合板部31の後面31bと膨出板部33の後面33bと先端側重合板部32の後面32bとが同一平面上に位置し、これら後面31b,32b,33bにて扉体23の平面状の後面(開方向側の面)が構成されている。
【0042】
また、扉体23の膨出板部33の反膨出側の厚さ方向端面である後面33bには、凸状で棒状の荷物掛け兼用当接体41が後方に向って突設されている。荷物掛け兼用当接体41は、例えば膨出板部33の後面33bの幅方向中央部である左右方向中央部の上端近傍に設けられている。この荷物掛け兼用当接体41の後面33bからの突出長さ寸法は、例えば膨出板部33の厚さ寸法と略同じか或いはそれ以下である。そして、図1の2点鎖線で示すように、開口部20の開口時には、荷物掛け兼用当接体41が右側板15の被当接部42と当接することにより扉体23の開方向への回動が規制され、扉体23が所定の開状態に位置決めされる。
【0043】
さらに、扉体23の膨出板部33の膨出側の厚さ方向端面である前面33aには、凹状の取手部である手掛け部43が形成されている。手掛け部43は、例えば正面視略縦長矩形状で、膨出板部33の前面33aの左側端近傍における上下方向略中央に形成されている。そして、トイレ使用者は、例えば手の指を手掛け部43に挿入して引っ掛けて、扉体23の回動操作を行う。
【0044】
また、扉体23の先端側重合板部32の扉受け壁体22と対向する側の厚さ方向端面である前面32aには、凸状でブロック状の間隙保持体である当接体45が前方に向って突設されている。この戸当たり等の当接体45は、例えば先端側重合板部32の前面32aの左側端近傍における上下方向略中央に設けられている。そして、図1の実線で示すように、開口部20の閉鎖時には、当接体45が扉受け壁体22の被当接部である扉受け部46と当接することにより扉体23の閉方向への回動が規制され、扉体23が所定の閉状態に位置決めされる。
【0045】
さらに、扉体23の先端側重合板部32の後面32bには、施錠手段51の規制部52の下方回動を規制してこの規制部52を規制状態に位置決めする凸状でブロック状の規制部位置決め体48が当接体45と対応する高さ位置で後方に向って突設されている。すなわち例えば規制部位置決め体48は、先端側重合板部32の後面32bの左側端近傍における上下方向略中央に設けられている。
【0046】
施錠手段51は、扉受け壁体22に固設された本体部53と、この本体部53に前後方向(水平方向)の軸線Xを中心として上下方向に回動可能に設けられた規制部52とを有している。そして、規制部52は、開口部20の閉鎖時に軸線Xを中心とする略90度下方回動により規制部位置決め体48と当接して扉体23の開方向への回動を規制する規制状態となり、開口部20の閉鎖時に軸線Xを中心とする略90度上方回動により規制部位置決め体48から離れて扉体23の開方向への回動を許容する許容状態となる。規制状態の規制部52は、扉体23の先端側重合板部32の後面32bと当接係合することにより扉体23の開方向への回動を規制する。
【0047】
本体部53は、扉受け壁体22から前方に突出する略円錐状の前側突出部分54と、扉受け壁体22から後方に突出する略円柱状の後側突出部分55とを有している。間隙26,27の大きさに応じて本体部53の前後方向長さ寸法が調整可能となっている。前側突出部分54には、規制部52が規制状態であるか許容状態であるかを示す表示部56が設けられている。この表示部56は、略扇形状の窓部57から前方に向って露出している。
【0048】
規制部52は、本体部53の後側突出部分55に軸線Xを中心として回動可能に設けられた略円板状の回動部分58と、この回動部分58に軸線Xに対して直交する方向に向って突設された鉛直板状のアーム部分59と、このアーム部分59の先端部に設けられ規制部52の規制状態時に規制部位置決め体48と当接する鉛直板状の当接部分60と、この当接部分60に後方に向って突設されトイレ使用者が手で摘む水平板状の操作部分である摘み部分61とを有している。
【0049】
また、図4に示されるように、扉体23および扉被取付壁体21間の間隙27のトイレ空間部12側の側端開口は、間隙27からトイレ空間部12が見えないようにするための目隠し板である弾性変形可能なゴム板63によって閉鎖されている。ゴム板63は、例えば扉体23の基端側重合板部31の前面31aの右側端のうちヒンジ24が取り付けられていない部分に固設されている。
【0050】
さらに、図3および図5に示されるように、扉体23の膨出板部33の上部には上部開口部65が形成され、この上部開口部65は板状の閉鎖体であるガラス板66にて閉鎖されている。扉体23の膨出板部33の上部の厚さ方向中央部には、膨出板部33の上端面から上方に向って開口し上部開口部65と連通する板挿入空間部67が形成されている。そして、膨出板部33の上方側からガラス板66が板挿入空間部67に挿入されて膨出板部33に取り付けられることにより、このガラス板66にて膨出板部33の上部開口部65が閉鎖されている。
【0051】
また、扉体23の膨出板部33の下部には下部開口部70が形成され、この下部開口部70には換気手段であるがらり71が配設されている。
【0052】
がらり71は、略矩形環状の枠部材72と、この枠部材72に取り付けられ上下方向に等間隔で並ぶ断面略逆V字状の複数の羽板73と、枠部材72を膨出板部33の下部開口部70の周辺部に取り付けるための前後の取付枠74,75とを有している。前側の取付枠74が枠部材72に溶接等によって固定され、前側の取付枠74と後側の取付枠75とがねじ76にて連結され、これら前後の取付枠74,75にて膨出板部33の下部開口部70の周辺部が挟持されている。
【0053】
なお、図2に示されるように、基端側重合板部31の前面31aと扉被取付壁体21との間の間隙27の寸法Aと先端側重合板部32の前面32aと扉受け壁体22との間の間隙26の寸法Aとは、同一寸法であり、例えば13.1mm以上である。また、膨出板部33の基端側傾斜面36と扉被取付壁体21との間の間隙27の寸法Bと膨出板部33の先端側傾斜面37と扉受け壁体22との間の間隙26の寸法Bとは、同一寸法であり、例えば13.1mm以上である。
【0054】
また、少なくとも基端側重合板部31の前面31a、扉被取付壁体21の後面21bのうち基端側重合板部31の前面31aと対向する部分、先端側重合板部32の前面32a、および、扉受け壁体22の後面22bのうち先端側重合板部32の前面32aと対向する部分は、所定の表面処理が施されることにより光を反射しない非反射面となっている。
【0055】
なお、図6は、扉体23と扉受け壁体(壁パネル)22とのラップ幅(重なり幅)の条件を説明するための説明図である。
【0056】
この図6に示されるように、間隙26からトイレ空間部が見えないようにするためには、平面視で、扉体23の膨出板部33の角部の点P1と扉受け壁体22の角部の点P2とを結んだ直線状の線(視線)Sが、扉体23の重合板部32の角部と交わる必要がある。すなわち、重合板部32の左右方向長さ寸法であるラップ幅dは、d≧a×c/bを満たす必要がある。
【0057】
なお、aは膨出板部33および扉受け壁体22間における間隙26の寸法(つまり扉受け壁体22の前面22aと膨出板部33の前面33aとの間に位置する間隙26の一部の寸法)であり、bは扉受け壁体22の厚さ寸法であり、cは重合板部32および扉受け壁体22間における間隙26の寸法である。
【0058】
また、「d≧a×c/b…式(1)」となる根拠について説明すると、線Sが扉体23の重合板部32の角部(端部)と交わる点を点P3とし、重合板部32の表面と点P2からの垂線とが交わる点を点P2´とし、重合板部32の表面を図6で言えば左方に延長した面と点P1からの垂線とが交わる点を点P1´とすれば、三角形P1・P3・P1´と三角形P2・P3・P2´とは相似形となる。したがって、(d+a):d=(c+b):cが成立し、これによりd=a×c/bとなる。すなわち、d≧a×c/bを満足すれば、線Sが扉体23の重合板部32の少なくとも角部(端部)と交わることとなる。なお、膨出板部33の膨出側の厚さ方向端面が壁体21,22の厚さ範囲内に位置する場合には、bの値として膨出板部33と扉受け壁体22(または扉被取付壁体21)とのオーバーラップ分の厚みの値であるb´に替えた値を採用してdを求めればよい。ただし、膨出板部33の前面33aと、扉被取付壁体21の後面21bおよび扉受け壁体22の後面22bとが、同一平面上に位置する場合には、b´=0となるので、この場合は除く。
【0059】
また、図7は扉体23と扉受け壁体22の好適な形状の一例を示す説明図であり、この場合、間隙26からトイレ空間部が見えないようにするためには、ラップ幅Lは、L≧(13.1+r1+r2)×(13.1/t)+r3を満たす必要がある。
【0060】
なお、r1は膨出板部33の角部を円弧面で形成した場合におけるその円弧面の半径であり、r2は扉受け壁体22の角部を円弧面で形成した場合におけるその円弧面の半径であり、r3は重合板部32の角部を円弧面で形成した場合におけるその円弧面の半径であり、tは扉受け壁体22の厚さ寸法である。膨出板部33の円弧面の半径は、2点鎖線で示すr1´でもよい。また、線Sは、r1,r2に対する接線である。
【0061】
また、「L≧(13.1+r1+r2)×(13.1/t)+r3…式(2)」となる根拠について説明すると、図6において、aを13.1+r1+r2として、式(1)に当てはめれば、d≧(13.1+r1+r2)×13.1/tとなる。なお、aに相当する間隔は13.1+r1+r2よりも狭いが、間隔が広い方がラップ幅を大きくとる必要があることに注意すれば、重合板部32の必要とする長さを若干多めに見積もっていることとなる。また、重合板部32の先端部が丸みを帯びていることを考慮して、dの値にさらにr3を加えておけば、重合板部32の必要とする長さを若干多めに見積もっていることとなる。すなわち、図7において、L≧(13.1+r1+r2)×(13.1/t)+r3を満足すれば、線Sが扉体23の重合板部32の角部と交わることとなる。なお、13.1mmを寸法aや寸法cとして一般化すれば、L≧(a+r1+r2)×(c/t)+r3としてもよい。なお、実用面を考慮すれば、若干程度はトイレ空間部12内が見えても支障がない場合もあるので、この場合においては簡略化した式である式(1)で代用してラップ幅を設定してもよい。
【0062】
さらに、上述した式(1)および式(2)を満足する重合板部32の長さは、線Sが扉体23の重合板部32で遮られることを考慮しているが、利用目的や製造コスト等に応じて長さをより短くしてもよい。例えば、便器13や壁部17は視線である線Sが遮られて見えないようにするが、両側板15,16の全部または一部が見えることは許容するような長さに構成してもよい。なお、開口部20を閉鎖しようとする時に、途中で重合板部32が両側板15,16に当接してしまうほど長いのは意味がないので、開口部20を閉鎖できる範囲の適切な値に設定する必要があるのは当然である。
【0063】
次に、トイレブース11の作用等を説明する。
【0064】
例えばトイレ使用者は、施錠手段51の表示部56を確認してから、扉体23を後方に押して開方向に回動させることにより開口部20を開口させ、トイレ空間部12に入る。
【0065】
トイレ空間部12に入ったトイレ使用者は、扉体23を前方に押してまたは自動回動機構を有していれば手を扉体23から離して、扉体23を閉方向に回動させることによりその扉体23で開口部20を閉鎖する。このとき、扉被取付壁体21と扉体23との間には間隙27が形成されかつ扉受け壁体22と扉体23との間には間隙26が形成されるため、トイレ使用者は、扉被取付壁体21と扉体23との間および扉受け壁体22と扉体23との間で、手の指を挟まない。
【0066】
次いで、トイレ使用者は、施錠手段51を解錠状態から施錠状態に手動で切り換える。つまり、許容状態の規制部52をその当接部分60が規制部位置決め体48に当接するまで本体部53に対して下方回動させて許容状態から規制状態に切り換える。
【0067】
このような施錠手段51の施錠状態時において、例えば誰かがいたずら等で、トイレブース11の外側から施錠手段51を不正解錠しようとしても、間隙26に挿入した手の指(挿入物)は規制状態の規制部52には届かず、規制部52を上方回動できない。このため、トイレブース11の外側からの不正解錠が防止される。
【0068】
そして、このトイレブース11によれば、扉体23が基端側重合板部31と先端側重合板部32とこれら両重合板部31,32間の膨出板部33とにて構成され、開口部20の閉鎖時には扉体23の膨出板部33の前面33aが扉被取付壁体21の前面21aおよび扉受け壁体22の前面22aと同一平面上に位置しかつ間隙27のトイレ空間部12側の側端開口がゴム板63にて閉鎖されるため、間隙26,27から内部空間であるトイレ空間部12つまりトイレブース11の内側が見えず、目隠し効果を奏することができるばかりでなく、例えば外部空間からトイレ空間部12に入ろうとするトイレ使用者が扉体23の膨出板部33に衝突するおそれがなく、扉体23に衝突するおそれを低減でき、しかも、扉体23の意匠性の向上を容易に図ることができる。
【0069】
また、例えば扉体23の膨出板部33の反膨出側の厚さ方向端面が凹湾曲状の曲面である場合にはその曲面にまどわされて扉体23の接近具合を見誤るおそれがあるが、このトイレブース11では、基端側重合板部31の後面31bと膨出板部33の後面33bと先端側重合板部32の後面32bとが同一平面上に位置するため、扉体23の接近具合の見誤りを防止でき、扉体23に衝突するおそれをより一層低減できる。
【0070】
さらに、扉体23の膨出板部33の後面33bの上部に設けられた荷物掛け兼用当接体41を備え、開口部20の開口時に荷物掛け兼用当接体41が被当接部42と当接することにより扉体23の開方向への回動が規制されるため、開口部20の開口時には荷物掛け兼用当接体41にて扉体23の開方向への回動を適切に規制でき、開口部20の閉鎖時には荷物掛け兼用当接体41に荷物を適切に掛けることができる。なお、例えば図11の扉体5の張出部5bの後面に荷物掛け兼用当接体41を突設する場合に比べて、荷物掛け兼用当接体41の突出長さを短くできる。
【0071】
また、例えば扉体23の膨出板部33の前面33aに凸状の手掛け部を形成した場合にはその手掛け部にトイレ使用者が衝突するおそれがあるが、このトイレブース11では、膨出板部33の前面33aに凹状の手掛け部43が形成されているため、安全性を確保しつつ、扉体の操作性の向上を図ることができる。
【0072】
さらに、扉体23の膨出板部33が左右両側の薄板部である重合板部31,32よりも厚く肉厚状に形成されているため、上部開口部65や下部開口部70を形成しても膨出板部33は所望の強度を確保できるとともに、膨出板部33にガラス板66やがらり71を容易に設けることができ、しかも肉厚状の膨出板部33を種々の材料で構成することができる。
【0073】
なお、トイレブース11は、扉体23がトイレブース11の内側に向って回動する扉内開き式のものには限定されず、例えば図8に示すように、扉体23がトイレブース11の外側に向って回動する扉外開き式のもの等であっても、同様の作用効果を奏し得る。
【0074】
この図8の例では、扉体23の右側端部が扉被取付壁体21の前面にヒンジ24を介して回動可能に取り付けられ、この扉体23の後面が幅方向中央側膨出状となっている。そして、開口部20の閉鎖時には、膨出板部33の後部で開口部20が閉鎖され、この膨出板部33の後面が扉被取付壁体21の後面および扉受け壁体22の後面と同一平面上に位置する。
【0075】
また、扉体23が基端側重合板部31、先端側重合板部32および膨出板部33にて構成されたものには限定されず、例えば扉体23が先端側重合板部32および膨出板部33のみで構成され、この膨出板部33の基端側の側端部が扉被取付壁体21にヒンジ24を介して回動可能に取り付けられた構成等でもよい。
【0076】
さらに、膨出板部33の一側面が基端側傾斜面36にて構成されかつ膨出板部33の他側面が先端側傾斜面37にて構成されたものには限定されず、例えば膨出板部33の側面が円弧面或いは湾曲面にて構成されたもの(図7参照)や、膨出板部33の側面が前後方向に沿った面にて構成されたもの等でもよい。
【0077】
また、開口部20の閉鎖時に膨出板部33の前面(膨出側の厚さ方向端面)33aがそれぞれ左右方向に沿って位置する扉被取付壁体21の前面21aおよび扉受け壁体22の前面22aと同一平面上に位置する構成には限定されず、例えば開口部20の閉鎖時に膨出板部33の前面33aが扉被取付壁体21の前面21aおよび扉受け壁体22の前面22aと扉被取付壁体21の後面21bおよび扉受け壁体22の後面22bとの間に位置する構成であればよい。換言すれば、膨出板部33の前面33aが壁体21,22の前面21a,22aおよび後面21b,22bを含む厚さ範囲内に位置する構成であればよい。そして、膨出板部33の前面33aが壁体21,22の厚さ範囲内に位置する構成であれば、膨出板部33の前面33aが壁体21,22の前面21a,22aと同一平面上に位置する場合と略同様の効果を奏する。
【0078】
すなわち例えば、図9に示すように、開口部20の閉鎖時に膨出板部33の前面33aがそれぞれ左右方向に沿って位置する扉被取付壁体21の後面21bおよび扉受け壁体22の後面22bと同一平面上に位置する構成でもよい。
【0079】
なお、本明細書における「同一平面上に位置する」とは、製造誤差、施工誤差、意匠上の模様による表面上の若干の凹凸等は許容してもよく、利用目的の範囲内において実質的に同一平面上に位置すればよいという趣旨である。
【0080】
また、全面が同一平面上(壁体の厚さ範囲内)になっていることは必須ではなく、利用目的の範囲内において、ある一部の範囲の面がそのように構成されていればよい。例えば、当接防止を重視すれば一般の大人の背高よりも下方の範囲(例えば180cm以下の範囲)を同一平面上(壁体の厚さ範囲内)としたり、視線を重視すれば下半身よりも上方で目の位置よりも下方の範囲(例えば60cm以上で160cm以下の範囲)等に重合板部を設けるように構成してもよい。
【0081】
また一方、トイレブース11は、それぞれ区画形成され左右方向に並ぶ複数のトイレ空間部12を有する構成等でもよい。
【0082】
さらに、扉付構造物は、トイレブース11には限定されず、例えば展示会場等のブースや、プレハブ、或いは建物の出入口に設けられる扉装置等でよく、またブースの一部(扉装置)等でもよい。
【符号の説明】
【0083】
11 扉付構造物であるトイレブース
12 トイレ空間部
13 便器
20 開口部
22 壁体である扉受け壁体
23 扉体
26 間隙
32 重合板部である先端側重合板部
33 膨出板部
41 荷物掛け兼用当接体
42 被当接部
43 手掛け部
S 視線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁体と、
この壁体から離れる開方向に向って回動して開口部を開口させかつ前記壁体に接近する閉方向に向って回動して前記開口部を閉鎖するもので、前記開口部の閉鎖時に正面視で側端部が前記壁体と重なり合う扉体と、
前記開口部の閉鎖時に前記壁体と前記扉体との間に位置する手挟み防止用の間隙とを備え、
前記扉体は、
この扉体の側端部に形成され、前記開口部の閉鎖時に正面視で前記壁体と重なり合う重合板部と、
前記開口部側に向って膨出するように前記重合板部よりも厚く形成され、前記開口部の閉鎖時に膨出側の厚さ方向端面が前記壁体の厚さ範囲内に位置する膨出板部とを有する
ことを特徴とする扉付構造物。
【請求項2】
扉体の膨出板部は、開口部の閉鎖時に膨出側の厚さ方向端面が壁体の重合板部と対向する側とは反対側の厚さ方向端面と同一平面上に位置する
ことを特徴とする請求項1記載の扉付構造物。
【請求項3】
重合板部の壁体と対向する側とは反対側の厚さ方向端面と膨出板部の反膨出側の厚さ方向端面とが、同一平面上に位置する
ことを特徴とする請求項1または2記載の扉付構造物。
【請求項4】
膨出板部の反膨出側の厚さ方向端面の上部に設けられた凸状の荷物掛け兼用当接体を備え、
開口部の開口時に、前記荷物掛け兼用当接体が被当接部と当接することにより前記扉体の開方向への回動が規制される
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の扉付構造物。
【請求項5】
扉体は、膨出板部の膨出側の厚さ方向端面に形成された凹状の手掛け部を有する
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載の扉付構造物。
【請求項6】
扉体の重合板部は、平面視で視線が前記重合板部と交わるだけのラップ幅を有する
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一記載の扉付構造物。
【請求項7】
便器が配設されるトイレ空間部を備えるトイレブースである
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一記載の扉付構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−132789(P2011−132789A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295657(P2009−295657)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000239714)文化シヤッター株式会社 (657)
【Fターム(参考)】