説明

扉引き込まれ防止装置

【課題】理解や判断を必要とせずに乗場扉と乗場三方枠の隙間またはかご扉と出入口柱の隙間に乗客が引き込まれることを防止する扉引き込まれ防止装置を得る。
【解決手段】扉引き込まれ防止装置は、エレベータの各階床の乗場に設けられた乗場扉と乗場三方枠またはかごに設けられたかご扉と出入口柱との隙間に人が引き込まれないように防止する扉引き込まれ防止装置において、上記乗場三方枠と上記乗場扉または上記出入口柱と上記かご扉との隙間を臨む放送範囲にだけ不快音を放送する超指向性スピーカと、上記乗場扉または上記かご扉が開放するときだけ上記超指向性スピーカから上記不快音を放送するように制御する放送機器と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータの乗場またはかご内で扉が開く際に人が引き込まれないように防止する扉引き込まれ防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータの乗場に設置された障害物検出装置では、光軸を乗場戸の乗場側の面に沿って通過するように構成し、乗場出入口を通過する乗客又は荷物の有無を検出して、乗場戸の動きを制御するようにしている。
また、戸開直前に音声を発報して、乗場扉と乗場三方枠の隙間に、乗客の体の一部が引き込まれることを防止するため注意を促すようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−139333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、子供や高齢者の場合、注意を促すアナウンスの内容を理解するまでの時間が長かったり、理解ができなかったりするために、罹災防止が困難になるという問題がある。
【0005】
この発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、理解や判断を必要とせずに乗場扉と乗場三方枠またはかご扉と出入口柱の隙間に乗客が引き込まれることを防止する扉引き込まれ防止装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る扉引き込まれ防止装置は、エレベータの各階床の乗場に設けられた乗場扉と乗場三方枠またはかごに設けられたかご扉と出入口柱との隙間に人が引き込まれないように防止する扉引き込まれ防止装置において、上記乗場三方枠と上記乗場扉または上記出入口柱と上記かご扉との隙間を臨む放送範囲にだけ不快音を放送する超指向性スピーカと、上記乗場扉または上記かご扉が開放するときだけ上記超指向性スピーカから上記不快音を放送するように制御する放送機器と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る扉引き込まれ防止装置では、乗場扉と乗場三方枠の隙間またはかご扉と出入口柱の隙間に近いところに人が立つと人が逃げたくなるような不快音が聞こえてくるので、不快音から逃げようと無条件に動き、結果として乗場扉と乗場三方枠の隙間またはかご扉と出入口柱の隙間から遠ざかるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明に係る乗場扉引き込まれ防止装置の構成図である。
【図2】乗場の床の放送範囲を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態に係る乗場扉引き込まれ防止手順を示すフローチャートである。
【図4】この発明に係るかご扉引き込まれ防止装置の構成図である。
【図5】かごの床の放送範囲を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態に係るかご扉引き込まれ防止手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の扉引き込まれ防止装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明に係る乗場扉引き込まれ防止装置の構成図である。図2は、乗場の床の放送範囲を示す図である。
この発明に係る乗場扉引き込まれ防止装置は、エレベータの各階床の乗場に設けられる乗場三方枠1の上枠1aの乗場三方枠1の縦枠1bに近いところに設置された超指向性スピーカ2、および乗場扉3が開かれるときに不快音を超指向性スピーカ2に送る放送機器4を備える。
【0010】
超指向性スピーカ2として、例えば三菱電機エンジニアリング株式会社製の放射器MSP−50Eを適用することができ、超指向性スピーカ2は上枠1aの下面に音の放射方向が床に向くように下向きに固定してある。そして、この超指向性スピーカ2の半減全角は、例えば25°であるので、図1の円錐内が放送範囲8となり、この放送範囲8内に居る人に超指向性スピーカ2からの音を聞かせることができる。この放送範囲8は乗場三方枠1の縦枠1bに近いので、乗場扉3と乗場三方枠1との隙間に近づく乗客はこの放送範囲8内に居ることになる。
【0011】
放送機器4は、不快音が録音されている例えばCDなどの記録媒体を再生するプレーヤ5および指向性を持たせるために変調する例えば三菱電機エンジニアリング株式会社製の変調器MSP−30Mからなる超指向性スピーカ制御部6を有する。
このCDなどの記録媒体に録音されている不快音は、人が不快と感じる音であり、例えば物体同士の摩擦により出るスティックスリップ音やスピーカからの出力の一部がマイクに帰還されたことにより生ずるハウリング音などであるが、これらに限るものではない。
【0012】
超指向性スピーカ制御部6は、エレベータを制御しているエレベータ制御盤7からエレベータの運行のデータを取得し、エレベータのかごが当該階に停止し且つ乗場扉3が開いていないときには音量を弱として不快音を放送し、当該階のかご戸開釦または乗場釦が押されたときには音量を強として不快音を放送する。
【0013】
図3は、この発明の実施の形態に係る乗場扉引き込まれ防止手順を示すフローチャートである。
次に、この発明の実施の形態に係る乗場扉引き込まれ防止手順を説明する。
ステップS101で、エレベータが無方向で且つ戸閉停止状態か否かを判断し、エレベータが無方向で且つ戸閉停止状態のときステップS102に進み、それ以外のときステップS109に進む。
ステップS102で、停止している階床は当該階であるか否かを判断し、停止している階床が当該階であるときステップS103に進み、停止している階床が当該階でないときステップS101に戻る。
ステップS103で、不快音を音量弱で放送しながらステップS104に進む。
【0014】
ステップS104で、「他階の乗場呼びまたはかご呼び」の発生が無いか否かを判断し、発生が無ければステップS105に進み、発生があればステップS108に進む。
ステップS105で、「当該階のかご戸開釦または乗場釦」が押されたか否かを判断し、押されたらステップS106に進み、押されなければステップS103に戻る。
ステップS106で、不快音を音量強で放送しながらステップS107に進む。
ステップS107で、乗場扉3が全開したか否かを判断し、全開したときステップS108に進み、全開に至っていないときステップS106に戻る。
ステップS108で、不快音放送を停止して一連の乗場扉引き込まれ防止手順を終了する。
【0015】
ステップS109で、走行中か否かを判断し、走行中のときステップS110に進み、走行中でないときステップS101に戻る。
ステップS110で、当該階への停止検出がされたか否か判断し、停止検出がされたときにはステップS111に進み、停止検出がされないときにはステップS101に戻る。
ステップS111で、不快音を音量強で放送しながらステップS107に進む。
【0016】
上述のように乗場扉3と乗場三方枠1の隙間に臨む円錐部分を放送範囲8とする超指向性スピーカ2から乗場扉3が開放されるときに不快音が放送されており、その放送範囲8に入った人はその音から逃げようとするので、放送音の内容を理解したり判断したりしなくても咄嗟に体を引き込まれ易い場所から待避することができる。
また、不快音が限られた放送範囲8だけに放送されるので、関係ない人が不快音を聞いて不快を感じることがない。
【0017】
実施の形態2.
図4は、この発明に係るかご扉引き込まれ防止装置の構成図である。図5は、かごの床の放送範囲を示す図である。
この発明に係るかご扉引き込まれ防止装置は、かごの出入口に設けられる出入口上板11の出入口柱12に近いところに設置された超指向性スピーカ2、およびかご扉13が開かれるときに不快音を超指向性スピーカ2に送る放送機器4Bを備える。なお、超指向性スピーカ2は、実施の形態1において説明したものと同様であるので、説明は省略する。
【0018】
放送機器4Bは、不快音が録音されているCDを再生するプレーヤ5および指向性を持たせるために変調する例えば三菱電機エンジニアリング株式会社製の変調器MSP−30Mからなる超指向性スピーカ制御部6Bを有する。なお、超指向性スピーカ2は、実施の形態1において説明したものと同様であるので、説明は省略する。また、不快音も実施の形態1において説明したものと同様であるので、説明は省略する。
【0019】
図6は、この発明の実施の形態に係るかご扉引き込まれ防止手順を示すフローチャートである。
次に、この発明の実施の形態に係るかご扉引き込まれ防止手順を説明する。
ステップS201で、エレベータのかごが無方向で且つ戸閉停止状態か否かを判断し、エレベータのかごが無方向で且つ戸閉停止状態のときステップS202に進み、それ以外のときステップS207に進む。
ステップS202で、不快音を音量弱で放送しながらステップS203に進む。
【0020】
ステップS203で、「当該階のかご戸開釦または乗場釦」が押されたか否かを判断し、押されたらステップS204に進み、押されなければステップS202に戻る。
ステップS204で、不快音を音量強で放送しながらステップS205に進む。
ステップS205で、かご扉13が全開したか否かを判断し、全開したときステップS206に進み、全開に至っていないときステップS204に戻る。
ステップS206で、不快音放送を停止して一連のかご扉引き込まれ防止手順を終了する。
【0021】
ステップS207で、走行中か否かを判断し、走行中のときステップS208に進み、走行中でないときステップS201に戻る。
ステップS208で、不快音を音量弱で放送しながらステップS209に進む。
ステップS209で、停止検出がされたか否か判断し、停止検出がされたときにはステップS204に進み、停止検出がされないときにはステップS208に戻る。
【0022】
上述のようにかご扉13と出入口柱12の隙間に臨む円錐部分を放送範囲8とする超指向性スピーカ2からかご扉13が開放されるときに不快音が放送されており、その放送範囲8に入った人はその音から逃げようとするので、放送音の内容を理解したり判断したりしなくても咄嗟に体を引き込まれ易い場所から待避することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 乗場三方枠、1a (乗場三方枠の)上枠、1b (乗場三方枠の)縦枠、
2 超指向性スピーカ、3 乗場扉、4、4B 放送機器、5 プレーヤ、6、6B 超指向性スピーカ制御部、7 エレベータ制御盤、8 放送範囲、11 出入口上板、12 出入口柱、13 かご扉。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの各階床の乗場に設けられた乗場扉と乗場三方枠またはかごに設けられたかご扉と出入口柱との隙間に人が引き込まれないように防止する扉引き込まれ防止装置において、
上記乗場三方枠と上記乗場扉または上記出入口柱と上記かご扉との隙間を臨む放送範囲にだけ不快音を放送する超指向性スピーカと、
上記乗場扉または上記かご扉が開放するときだけ上記超指向性スピーカから上記不快音を放送するように制御する放送機器と、
を備えることを特徴とする扉引き込まれ防止装置。
【請求項2】
上記放送機器は、上記エレベータが到着し且つ上記乗場扉が閉まっているとき音量を弱にして上記不快音を放送することを特徴とする請求項1に記載の扉引き込まれ防止装置。
【請求項3】
上記不快音は、スティックスリップ音またはハウリング音であることを特徴とする請求項1または2に記載の扉引き込まれ防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−260654(P2010−260654A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110649(P2009−110649)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】