説明

扉開閉判定装置、カゴ内状態監視装置、扉開閉判定方法およびプログラム

【課題】扉が開状態にあるか閉状態にあるかを示す信号を必要とせずに、当該扉が開状態にあるか閉状態にあるかを検出できるようにする。
【解決手段】撮像画像取得部110が、判定対象の扉の閉状態において当該扉の所定の部分に対応する固定の撮像範囲である判定対象範囲の撮像画像を取得する。そして、開閉判定部120は、撮像画像取得部110が取得する判定対象範囲の撮像画像の明るさに基づいて、判定対象の扉が開状態にあるか閉状態にあるかを判定(検出)する。このように、開閉判定部120は、判定対象の扉の画像を含む撮像画像を用いて判定を行うので、扉が開状態にあるか閉状態にあるかを示す信号を必要としない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉開閉判定装置、カゴ内状態監視装置、扉開閉判定装置の扉開閉判定方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターのカゴ内またはエレベーターホールなど、扉で区切られる空間を撮像し、撮像画像を用いて人や物の動静を解析する幾つかの技術が提案されている。
例えば、特許文献1に記載のエレベーターシステムでは、熱画像検出手段が、エレベーターホールの温度分布を計測して熱画像データを出力する。そして、この熱画像データに基づいてエレベーターホールにおける利用者の位置、動き及び人数が検出される。これにより、比較的構造が簡単で、かつ低コストの熱画像検出手段を用いたシステムでエレベーターホールの人体を検出し、効率的な運転制御を行えるとされている。
【0003】
また、特許文献2に記載のエレベーター扉の安全装置は、出入口枠の上部に設置され、扉や敷居を含む出入口近傍を撮像するカメラと、このカメラから得られた画像を処理して異物の有無を判断する画像処理装置と、画像処理装置の異物検出信号を用いて扉の開閉動作を制御する扉開閉制御装置を備える。そして、扉の前縁に開閉中の動作位置を認識できるマーク部を配置し、扉の開閉に応じて移動するこれらマーク部の内側を異物検出領域として設定することにより、扉そのものを異物と誤検出するなどの惧がないとされている。
【0004】
また、エレベーターのカゴ内を撮像し、撮像画像を解析することで、カゴ内における暴れ行動を検出するなどカゴ内の状態を監視することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−165375号公報
【特許文献2】特開2009−280362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
扉で区切られる空間を撮像し、撮像画像を用いて人や物の動静を解析する際、扉が開状態にある場合と閉状態にある場合とで、人の動作等が異なることが考えられる。かかる場合、解析精度を高めるために、扉の状態(開状態または閉状態)を解析結果に反映させることが有効である。
例えば、エレベーターのカゴ内における暴れ行動を検出する際、扉が開いた状態における人の出入りによるカゴ内の動作量の増大を、暴れ行動と誤検出するおそれがある。かかる誤検出を防止する方法として、エレベーターの扉が開状態にあるか閉状態にあるかを示す情報を用いて、扉が開状態にある場合は、暴れ行動の検出を抑制することが考えられる。
【0007】
ここで、エレベーターの扉が開状態にあるか閉状態にあるかを示す信号をエレベーターから取得することで、扉が開状態にある場合に暴れ行動の検出を抑制することが考えられる。しかしながら、当該信号を出力するための改造をエレベーター(例えば、エレベーターの制御盤)に加える必要があり、費用がかかってしまう。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、扉が開状態にあるか閉状態にあるかを示す信号を必要とせずに、当該扉が開状態にあるか閉状態にあるかを検出可能な扉開閉判定装置、カゴ内状態監視装置、扉開閉判定方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、本発明の一態様による扉開閉判定装置は、扉が開状態にあるか閉状態にあるかを判定する扉開閉判定装置であって、前記扉の閉状態において当該扉の所定の部分に対応する固定の撮像範囲である判定対象範囲の撮像画像を取得する撮像画像取得部と、前記撮像画像取得部が取得する前記判定対象範囲の撮像画像の明るさに基づいて、前記扉が開状態にあるか閉状態にあるかを判定する開閉判定部と、を具備することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様による扉開閉判定装置は、上述の扉開閉判定装置であって、前記扉の前記所定の部分は、前記扉の閉状態において前記撮像画像取得部が取得する前記判定対象範囲の撮像画像の明るさが所定の明るさよりも暗くなる明度を有し、前記開閉判定部は、前記撮像画像取得部が取得する前記判定対象範囲の撮像画像の明るさが前記所定の明るさ以上に明るい場合に、前記扉が開状態にあると判定し、前記撮像画像取得部が取得する前記判定対象範囲の撮像画像の明るさが前記所定の明るさよりも暗い場合に、前記扉が閉状態にあると判定する、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様による扉開閉判定装置は、上述の扉開閉判定装置であって、前記扉は貫通式エレベーターの扉であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様による扉開閉判定装置は、複数の前記扉の各々が開状態にあるか閉状態にあるかを判定する上述の扉開閉判定装置であって、前記撮像画像取得部は、前記複数の扉の各々について、当該扉の閉状態において当該扉の所定の部分に対応する固定の撮像範囲である判定対象範囲の撮像画像を取得し、前記開閉判定部は、前記複数の扉の各々について、当該扉の閉状態において当該扉の所定の部分に対応する前記判定対象範囲の撮像画像の明るさに基づいて、当該扉が開状態にあるか閉状態にあるかを判定する、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一態様による扉開閉判定装置は、上述の扉開閉判定装置であって、前記扉の前記所定の部分には、当該扉の閉状態において前記撮像画像取得部が取得する前記判定対象範囲の撮像画像の明るさが前記所定の明るさよりも暗くなる明度を有するシートが貼られていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一態様によるカゴ内状態監視装置は、貫通式エレベーターの扉の閉状態において当該扉の所定の部分に対応する固定の撮像範囲である判定対象範囲の撮像画像を取得する撮像画像取得部と、前記撮像画像取得部が取得する前記判定対象範囲の撮像画像の明るさに基づいて、前記扉が開状態にあるか閉状態にあるかを判定する開閉判定部と、前記扉が閉状態にあると前記開閉判定部が判定した場合に、前記撮像画像取得部が取得する前記エレベーターのカゴ内の撮像画像に基づいて、前記エレベーターのカゴ内における人または物の動作量を算出し、当該動作量に基づいて、前記エレベーター内のカゴ内における人または物の状態を判定するカゴ内状態判定部と、を具備することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の一態様による扉開閉判定方法は、扉が開状態にあるか閉状態にあるかを判定する扉開閉判定装置の扉開閉判定方法であって、前記扉の閉状態において当該扉の所定の部分に対応する固定の撮像範囲である判定対象範囲の撮像画像を取得する撮像画像取得ステップと、前記撮像画像取得ステップにて取得する前記判定対象範囲の撮像画像の明るさに基づいて、前記扉が開状態にあるか閉状態にあるかを判定する開閉判定ステップと、を具備することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の一態様によるプログラムは、扉が開状態にあるか閉状態にあるかを判定する扉開閉判定装置としてのコンピュータに、前記扉の閉状態において当該扉の所定の部分に対応する固定の撮像範囲である判定対象範囲の撮像画像を取得する撮像画像取得ステップと、前記撮像画像取得ステップにて取得する前記判定対象範囲の撮像画像の明るさに基づいて、前記扉が開状態にあるか閉状態にあるかを判定する開閉判定ステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、扉が開状態にあるか閉状態にあるかを示す信号を必要とせずに、当該扉が開状態にあるか閉状態にあるかを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態における扉開閉判定装置の機能構成を示す概略ブロック図である。
【図2】同実施形態におけるカゴ内状態監視装置の機能構成を示す概略ブロック図である。
【図3】同実施形態におけるカゴ内状態監視装置を具備するエレベーターシステムの機器構成を示す概略構成図である。
【図4】同実施形態における前扉をカゴの内側から見た形状の概略を示す正面図である。
【図5】同実施形態における後扉をカゴの内側から見た形状の概略を示す正面図である。
【図6】同実施形態で、扉にシートが貼られていない状態における、撮像装置による撮像画像の例を示す図である。
【図7】同実施形態で、扉にシートが貼られ、前扉および後扉が閉じた状態における、撮像装置による撮像画像の例を示す図である。
【図8】同実施形態で扉にシートが貼られ、前扉が閉じて後扉が開いた状態における、撮像装置による撮像画像の例を示す図である。
【図9】同実施形態において、開閉判定部が扉開閉判定を行う処理手順を示すフローチャートである。
【図10】同実施形態において、開閉判定部が前扉または後扉の各々について開閉判定を行う処理手順を示すフローチャートである。
【図11】同実施形態における、カゴ内状態監視装置による暴れ動作状態検出の例を示すグラフである。
【図12】同実施形態において、カゴ内状態監視装置が暴れ動作状態を検出する処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態における扉開閉判定装置の機能構成を示す概略ブロック図である。同図において、扉開閉判定装置10は、撮像画像取得部110と、開閉判定部120とを具備する。
扉開閉判定装置10は、扉の撮像画像に基づいて、当該扉が開状態にあるか閉状態にあるかの判定(以下、「扉開閉判定」または「開閉判定」と称する)を行う。
【0020】
撮像画像取得部110は、判定対象範囲の撮像画像を取得する。ここでいう判定対象範囲は、扉開閉判定の対象となっている扉(以下、「対象扉」と称する)の閉状態において、当該扉の所定の部分に対応する固定の撮像範囲である。
例えば、撮像画像取得部110は、対象扉が設けられた出入口の近傍に設置されたカメラが、撮像方向固定かつ画角固定にて当該出入口を撮像した撮像画像を取得する。そして、この撮像画像のうち所定の範囲が、判定対象範囲として予め設定されている。より詳細には、判定対象範囲は、対象扉が閉じた状態において対象扉の所定の部分の画像を含むように設定されている。
なお、ここでいう対象扉の所定の部分は、対称扉の任意の部分でよいが、対象扉の比較的上部に設定されていることが好ましい。カメラが、出入口より出入する人に遮られて所定の部分の撮像に失敗することを防止するためである。
【0021】
開閉判定部120は、撮像画像取得部110が取得する判定対象範囲の撮像画像の明るさに基づいて、対象扉が開状態にあるか閉状態にあるかを判定する(扉開閉判定を行う)。
例えば、開閉判定部120は、撮像画像取得部110が取得する撮像画像から、判定対象範囲に含まれる各画素の輝度値を抽出し、抽出した輝度値の平均値を、判定対象範囲の撮像画像の明るさとして算出する。そして、開閉判定部120は、算出した平均値と所定の閾値を比較することで扉開閉判定を行う。扉開閉判定の、より詳細については後述する。
【0022】
次に、図2〜12を参照して、本発明をカゴ内状態監視装置に適用した場合を例に、本発明の実施形態についてさらに詳細に説明する。
図2は、本実施形態におけるカゴ内状態監視装置の機能構成を示す概略ブロック図である。同図において、カゴ内状態監視装置100は、撮像画像取得部110と、開閉判定部120と、カゴ内状態判定部130と、音声信号出力部140と、判定結果送信部150とを具備する。また、カゴ内状態判定部130は、カゴ500に設置された撮像装置610と接続されている。音声信号出力部140は、カゴ500に設置されたスピーカー620と接続されている。また、カゴ500は、前扉510と、後扉520と、操作入力盤530とを具備する。
【0023】
カゴ500は、エレベーター(Elevator、昇降機)が具備する、人(エレベーター利用者)や荷物を積載するための構造物である。このカゴ500は、駅構内に設置されたいわゆる貫通式エレベーター(対向する2方向に出入口を有するエレベーター)のカゴであり、前扉510と後扉520との2つの扉を有する。
【0024】
撮像装置610は、カゴ500の天井に設置された監視カメラ(ITV(Industrial Television)カメラ)であり、カゴ500の内部を撮像方向固定かつ画角固定にて常時撮像して、撮像画像を撮像画像取得部110に出力する。撮像装置610による撮像画像には、前扉510の閉状態において前扉510の画像が含まれ、後扉520の閉状態において後扉520の画像が含まれる。
【0025】
また、撮像装置610の撮像範囲には、前扉510に対する判定対象範囲(図7で後述する前扉判定対象範囲A11)と、後扉520に対する判定対象範囲(図7で後述する後扉判定対象範囲A12)とが予め設定されている。そして、前扉510の閉状態において、前扉510の所定の部分が、前扉510に対する判定対象範囲に含まれて撮像される。同様に、後扉520の閉状態において、後扉520の所定の部分が、後扉520に対する判定対象範囲に含まれて撮像される。
【0026】
なお、既設のエレベーターにカゴ内状態監視装置100を設置する場合、撮像装置610は、既設の監視カメラであってもよいし、カゴ内状態監視装置100の設置に際して新たに設置されたものであってもよい。
【0027】
前扉510と後扉520とは、それぞれ本発明における対象扉の一例である。この前扉510と後扉520とは、互いに異なる階において開く。例えば、前扉510がホーム階において開き、後扉520が改札階において開く。
【0028】
また、前扉510は所定の部分を含む。この所定の部分は、前扉510の閉状態において、撮像装置610の撮像範囲に設定された、前扉510に対する判定対象範囲に含まれて撮像される。そして、この所定の部分は、前扉510の閉状態において撮像画像取得部110が取得する、前扉510に対する判定対象範囲の撮像画像(撮像装置610による撮像画像のうち当該判定対象範囲に設定された部分)の明るさが、所定の明るさよりも暗くなる明度を有する。具体的には、前扉510の所定の部分には、前扉510の閉状態において撮像画像取得部110が取得する、前扉510に対する判定対象範囲の撮像画像の明るさが、所定の明るさよりも暗くなる明度を有するシートが貼られている。
【0029】
同様に、後扉520は所定の部分を含む。この所定の部分は、後扉520の閉状態において、撮像装置610の撮像範囲に設定された、後扉520に対する判定対象範囲に含まれて撮像される。そして、この所定の部分は、後扉520の閉状態において撮像画像取得部110が取得する、後扉520に対する判定対象範囲の撮像画像(撮像装置610による撮像画像のうち当該判定対象範囲に設定された部分)の明るさが、所定の明るさよりも暗くなる明度を有する。具体的には、後扉520の所定の部分には、後扉520の閉状態において撮像画像取得部110が取得する、後扉520に対する判定対象範囲の撮像画像の明るさが、所定の明るさよりも暗くなる明度を有するシートが貼られている。
【0030】
操作入力盤530は、行き先階指定用の押ボタンや扉開指示用の押ボタンなど、各種押ボタンを有して入力操作を受け付ける。
スピーカー620は、カゴ500の天井に設置されており、音声信号出力部140から電気信号にて出力される音声信号に従って音声を出力する。
なお、既設のエレベーター400にカゴ内状態監視装置100を設置する場合、スピーカー620は、既設のスピーカーであってもよいし、カゴ内状態監視装置100の設置に際して新たに設置されたものであってもよい。
【0031】
カゴ内状態監視装置100は、本発明における扉開閉判定装置(図1の扉開閉判定装置10)の一例であり、複数の扉(前扉510および後扉520)の各々が開状態にあるか閉状態にあるかを判定する。すなわち、カゴ内状態監視装置100は、前扉510と、後扉520との各々について、扉開閉判定を行う。
【0032】
そして、カゴ内状態監視装置100は、扉開閉判定結果を用いて、カゴ500内の状態を監視する。具体的には、カゴ内状態監視装置100は、カゴ500内における要注意状態を検出する(要注意状態の有無を判定する)。ここでいう要注意状態は、エレベーターのカゴ内において通常見受けられる状態(例えば、扉開時におけるカゴへの出入や、カゴ昇降時におけるカゴ内への滞留などが行われている状態)以外の状態である。カゴ内状態監視装置100は、要注意状態として、カゴ500内における暴れ動作状態の有無を判定する。ここでいう暴れ動作は、腕を振り回したり脚を振り上げたりするなど、体を大きく動かすことを継続的に行う動作である。また、暴れ動作状態は、暴れ動作が行われている状態である。この暴れ動作は、カゴ500内にいる他者(他の利用者)に対して迷惑となるおそれが大きい。そこで、カゴ内状態監視装置100は、暴れ動作状態にあると判定すると(すなわち、暴れ動作を検出すると)、暴れ動作を止めるよう要求するメッセージ音声をスピーカー620に出力させ、また、図3を用いて後述するように、暴れ動作を検出したことを示す情報を、駅務室のモニターに表示させる。
【0033】
撮像画像取得部110は、図1で説明したように、判定対象範囲の撮像画像を取得する。より具体的には、撮像画像取得部110は、エレベーターの複数の扉(前扉510および後扉520)の各々について、判定対象範囲の撮像画像を取得する。
【0034】
開閉判定部120は、図1で説明したように、撮像画像取得部110が取得する判定対象範囲の撮像画像の明るさに基づいて、対象扉が開状態にあるか閉状態にあるかを判定する(扉開閉判定を行う)。より具体的には、開閉判定部120は、複数の扉(前扉510および後扉520)の各々について、当該扉の閉状態において当該扉の所定の部分に対応する判定対象範囲の撮像画像の明るさに基づいて、当該扉が開状態にあるか閉状態にあるかを判定する。
【0035】
さらに具体的には、開閉判定部120は、撮像画像取得部110が取得する、前扉510に対する判定対象範囲の撮像画像の明るさが、所定の明るさ以上に明るい場合に、前扉510が開状態にあると判定する。一方、開閉判定部120は、撮像画像取得部110が取得する、前扉510に対する判定対象範囲の撮像画像の明るさが、所定の明るさよりも暗い場合に、前扉510が閉状態にあると判定する。
同様に、開閉判定部120は、撮像画像取得部110が取得する、後扉520に対する判定対象範囲の撮像画像の明るさが、所定の明るさ以上に明るい場合に、後扉520が開状態にあると判定する。一方、開閉判定部120は、撮像画像取得部110が取得する、後扉520に対する判定対象範囲の撮像画像の明るさが、所定の明るさよりも暗い場合に、後扉520が閉状態にあると判定する。
【0036】
カゴ内状態判定部130は、前扉510および後扉520が閉状態にあると開閉判定部120が判定した場合に、撮像画像取得部110が取得するカゴ500内の撮像画像に基づいて、カゴ500内における人または物の動作量を算出し、当該動作量に基づいて、カゴ500内における要注意状態の有無を判定する。ここでいう動作量は、カゴ500内など所定の空間内における人または物の動静を定量的に示す指標である。カゴ内状態判定部130は、撮像画像取得部110が取得する撮像画像(撮像装置610が撮像するカゴ500内の撮像画像)における各画素の画素値の変化の大きさ(変化量の絶対値)を算出し、算出した変化の大きさを、撮像画像取得部110が取得する撮像画像の全画素について合計し、得られた値を動作量として用いる。
本実施形態では、カゴ内状態判定部130は、カゴ500内における要注意状態の有無として、カゴ500内における暴れ動作状態の有無を判定する。カゴ内状態判定部130が行う判定の詳細については後述する。
【0037】
音声信号出力部140は、スピーカー620に音声信号を出力することで、スピーカー620に音声を出力させる。特に、音声信号出力部140は、カゴ内状態判定部130が暴れ動作状態を検出すると、暴れ動作を止めるよう要求するメッセージの音声信号をスピーカー620に出力して当該メッセージ音声を出力させる。
【0038】
図3は、カゴ内状態監視装置100を具備するエレベーターシステム1の機器構成を示す概略構成図である。同図において、エレベーターシステム1は、エレベーター400と、駅務室700に配置されたITVモニター710と、昇降機監視用モニター720と、録画機器730とを具備する。エレベーター400は、信号送受信盤420と、カゴ500とを具備する。カゴ500は、前扉510と、後扉520と、操作入力盤530とを具備する。また、カゴ500には、カゴ内状態監視装置100と、撮像装置用BOX410と、撮像装置610と、スピーカー620とが設置されている。
同図において、図2の各部と同一の部分には同一の符号(100、500、510、520、530、610、620)を付して説明を省略する。
【0039】
エレベーター400は、駅構内に設置された貫通式のエレベーターであり、図2で説明したカゴ500に人や荷物を積載してホーム階と改札階との間を移送する。
信号送受信盤420は、エレベーター400をモニターするための各種信号を、エレベーター400の外部に送信し、また、エレベーター400の外部から送信される、エレベーター400に対する制御信号を受信する。特に、信号送受信盤420は、カゴ内状態監視装置100(カゴ内状態判定部130)が暴れ動作ありと判定すると、暴れ動作状態を検出したことを示す信号を昇降機監視用モニター720に送信する。
撮像装置用BOX410は、撮像装置610から出力される撮像画像の信号を、例えばMPEG(Moving Picture Experts Group)など伝送用の画像信号に変換してITVモニター710および録画機器730に出力する。
【0040】
駅務室700は、駅員が、エレベーター400の監視を含む駅務を行うための場所である。
ITVモニター710は、撮像装置610による撮像画像を表示する。
昇降機監視用モニター720は、エレベーター400のモニター情報を表示する。特に、昇降機監視用モニター720は、カゴ内状態監視装置100(カゴ内状態判定部130)が暴れ動作ありと判定すると、暴れ動作状態を検出したことを示す情報を表示する。
録画機器730は、撮像装置610による撮像画像を録画する。
【0041】
次に、図4および図5を参照して、扉の明度について説明する。
図4は、前扉510が閉じた状態において当該前扉510をカゴ500の内側から見た形状の概略を示す正面図である。同図において、前扉510は、前左扉511と、前右扉512と、前左扉用シート513と、前右扉用シート514とを具備する。
前左扉511と前右扉512とは、それぞれ、ホーム階においてカゴ500内側から見て左と右とに開く扉である。
前左扉用シート513と前右扉用シート514とは、それぞれ、前左扉511と前右扉512とに貼られたシートである。
【0042】
ここで、前左扉511および前右扉512は、白っぽい色で彩色されており、比較的明るい明度を有する。このため、撮像装置610による撮像画像において、前扉510(前左扉511および前右扉512)は、比較的明るく撮像される。
また、ホーム階にはエレベーター400(カゴ500)の内部よりも明るい照明が設けられている。このため、前扉510が開いた状態(前左扉511および前右扉512が開いた状態)の撮像装置610による撮像画像において、エレベーター400の外部の画像も、比較的明るく撮像される。
【0043】
このため、前扉510が閉じた状態と開いた状態とで、撮像装置610による撮像画像における明るさ(画素値)の差が小さく、開閉判定部120が、扉開閉判定を正確に行えなくなるおそれがある。
そこで、前扉510(前左扉511または前右扉512)に黒っぽいシート(前左扉用シート513または前右扉用シート514)を貼るなど、前扉510の明度を暗くする(黒っぽくする)。これにより、前扉510が閉じた状態と開いた状態とで、撮像装置610による撮像画像における明るさの差を大きくでき、開閉判定部120が、より正確に扉開閉判定を行えるようにできる。
【0044】
ここで、前扉510を暗くする際、図4に示すように、前扉510の一部のみを暗くする(例えば前左扉用シート513および前右扉用シート514を貼る)ことで、前扉510全体を暗くする場合よりも、カゴ500内を明るくすることができる。
また、図4に示すように、前扉510の上部を暗くすることで、撮像装置610が、カゴ500内の人または荷物等に遮られて当該暗い部分を撮像できないおそれを低減させることができる。これにより、開閉判定部120の扉開閉判定の精度向上を図ることができる。
【0045】
図5は、後扉520が閉じた状態において当該後扉520をカゴ500の内側から見た形状の概略を示す正面図である。同図において、後扉520は、後左扉521と、後右扉522と、後左扉用シート523と、後右扉用シート524とを具備する。
後左扉521と後右扉522とは、それぞれ、改札階においてカゴ500内側から見て左と右とに開く扉である。
後左扉用シート523と後右扉用シート524とは、それぞれ、後左扉521と後右扉522とに貼られたシートである。
【0046】
図4で説明した前扉510の場合と同様、後左扉521および後右扉522は、白っぽい色で彩色されており、比較的明るい明度を有する。このため、撮像装置610による撮像画像において、後扉520(後左扉521および後右扉522)は、比較的明るく撮像される。
また、改札階にはエレベーター400(カゴ500)の内部よりも明るい照明が設けられている。このため、後扉520が開いた状態(後左扉521および後右扉522が開いた状態)の撮像装置610による撮像画像において、エレベーター400の外部の画像も、比較的明るく撮像される。
【0047】
このため、後扉520が閉じた状態と開いた状態とで、撮像装置610による撮像画像における明るさの差が小さく、開閉判定部120が、扉開閉判定を正確に行えなくなるおそれがある。
そこで、後扉520(後左扉521または後右扉522)に黒っぽいシート(後左扉用シート523または後右扉用シート524)を貼るなど、後扉520の明度を暗くする。これにより、後扉520が閉じた状態と開いた状態とで、撮像装置610による撮像画像における明るさの差を大きくし、開閉判定部120が、より正確に扉開閉判定を行えるようにできる。
【0048】
ここで、後扉520を暗くする際、図5に示すように、後扉520の一部のみを暗くする(例えば後左扉用シート523および後右扉用シート524を貼る)ことで、後扉520全体を暗くする場合よりも、カゴ500内を明るくすることができる。
また、図5に示すように、後扉520の上部を暗くすることで、撮像装置610が、カゴ500内の人または荷物等に遮られて当該暗い部分を撮像できないおそれを低減させることができる。これにより、開閉判定部120の扉開閉判定の精度向上を図ることができる。
【0049】
なお、扉に貼るシート(例えば、前左扉用シート513や、前右扉用シート514や、後左扉用シート523や、後右扉用シート524)として、暗い明度を有する様々な色のシート(例えば、ブラック(黒)や、エボニー(濃い茶色)や、プルシャンブルー(濃い紺色)などのシート)を用いることができる。扉の色や駅構内の壁などの色に応じたシートを用いることで、美観を損なわずに開閉判定部120の扉開閉判定の精度向上を図ることができる。
【0050】
次に、図6〜図8を参照して、判定対象範囲における撮像画像の輝度について説明する。
図6は、扉にシートが貼られていない状態における、撮像装置610による撮像画像の例を示す図である。同図において、撮像装置610が撮像するカゴ500内の撮像画像には、前扉510(前左扉511および前右扉512)の画像と、後扉520(後左扉521および後右扉522)の画像と、操作入力盤530の画像とが含まれている。
同図に示す、扉にシートが貼られていない状態では、前扉510および後扉520は比較的明るく撮像されている。
【0051】
図7は、扉にシートが貼られ、前扉510および後扉520が閉じた状態における、撮像装置610による撮像画像の例を示す図である。同図において、図6の各部と同一の部分には同一の符号(500、510、511、512、520、521、522、530)を付して説明を省略する。図7に示す撮像画像では、図6に示す撮像画像の各部に加えて、前右扉512に貼られた前右扉用シート514の画像と、後左扉521に貼られた後左扉用シート523の画像と、後右扉522に貼られた後右扉用シート524の画像とが含まれている。
【0052】
また、撮像装置610による撮像画像には、前扉判定対象範囲A11と、後扉判定対象範囲A12とが設定されている。前扉判定対象範囲A11は、前扉510の閉状態において、前右扉用シート514の画像の一部を含む。後扉判定対象範囲A12は、後扉520の閉状態において、後左扉用シート523の画像の一部を含む。
前右扉512に前右扉用シート514が貼られていることで、前扉判定対象範囲A11の画像が比較的暗くなっている。同様に、後右扉522に後左扉用シート523が貼られていることで、後扉判定対象範囲A12の画像が比較的暗くなっている。
【0053】
図8は、扉にシートが貼られ、前扉510が閉じて後扉520が開いた状態における、撮像装置610による撮像画像の例を示す図である。同図において、図7の各部と同一の部分には、同一の符号(500、510、511、512、514、530、A11、A12)を付して説明を省略する。
図8に示す撮像画像では、後扉520が開状態にあることで、図7に示す撮像画像の場合よりも後扉判定対象範囲A12の撮像画像が明るく撮像されている。
ここで、後左扉521に後左扉用シート523が貼られていることで、図7の場合と図8の場合との後扉判定対象範囲A12の明るさの差が、図6の該当部分と図8の後扉判定対象範囲A12との明るさの差よりも大きくなっている。これにより、開閉判定部120が行う後扉520の開閉判定の精度向上を図ることができる。
【0054】
次に、図9〜図12を参照して、カゴ内状態監視装置100の動作について説明する。まず、図9および図10を参照して、開閉判定部120が行う扉開閉判定について説明する。
図9は、開閉判定部120が扉開閉判定を行う処理手順を示すフローチャートである。開閉判定部120は、定期的に同図の処理を行う。より具体的には、開閉判定部120は、後述する図12のステップS304において、同図の処理を行う。
【0055】
図9の処理において、開閉判定部120は、まず、前扉510の開閉判定を行う(ステップS101)。前扉510の開閉判定の詳細については、図10を用いて後述する。
次に、開閉判定部120は、ステップS101での判定結果に基づいて分岐を行う(ステップS102)。前扉510が閉状態にあると判定した場合(ステップS102:YES)、開閉判定部120は、後扉520の開閉判定を行う(ステップS111)。後扉520の開閉判定の詳細については、図10を用いて後述する。
【0056】
次に、開閉判定部120は、ステップS111での判定結果に基づいて分岐を行う(ステップS112)。後扉520が閉状態にあると判定した場合(ステップS112:YES)、開閉判定部120は、扉開閉判定の判定結果を閉状態とする(ステップS121)。すなわち、開閉判定部120は、前扉510、後扉520共に閉状態にあると判定する。
その後、同図の処理を終了する。
【0057】
一方、ステップS102において、前扉510が開状態にあると判定した場合(ステップS102:NO)、および、ステップS112において、後扉520が開状態にあると判定した場合(ステップS112:NO)、開閉判定部120は、扉開閉判定の判定結果を開状態とする(ステップS131)。すなわち、開閉判定部120は、前扉510、後扉520のいずれかが開状態にあると判定する。
その後、同図の処理を終了する。
【0058】
図10は、開閉判定部120が前扉510または後扉520の各々について開閉判定を行う処理手順を示すフローチャートである。開閉判定部120は、図9のステップS102において、前扉510について図10の処理を行い、ステップS111において、後扉520について図10の処理を行う。
【0059】
図10の処理において、開閉判定部120は、まず、撮像装置610が撮像して撮像画像取得部110が取得する撮像画像のうち判定対象範囲の平均輝度値を算出する(ステップS201)。
より具体的には、開閉判定部120は、前扉510の開閉判定では、図7および図8で説明した前扉判定対象範囲A11の平均輝度値を算出する。また、開閉判定部120は、後扉520の開閉判定では、図7および図8で説明した後扉判定対象範囲A12の平均輝度値を算出する。例えば、撮像装置610による撮像画像における各画素の画素値が、明るい画素ほど大きい画素値を示すように設定されており、開閉判定部120は、平均輝度値として画素値の平均を算出する。
【0060】
次に、開閉判定部120は、ステップS201で算出した平均輝度値が、予め(開閉判定開始前に)記憶する輝度閾値以上に明るいことを示す値か否かを判定する(ステップS202)。例えば、開閉判定部120は、ステップS201で平均輝度値として算出した画素値の平均が、輝度閾値として予め記憶する画素値以上か否かを判定する。
【0061】
なお、開閉判定部120が、前扉510と後扉520とに共通の閾値を記憶するようにしてもよいし、それぞれに個別の閾値を記憶するようにしてもよい。例えば、前扉510と後扉520とで、貼られているシートの明度が異なる場合や、照明の当たり具合によってシートの照度が異なる場合、開閉判定部120が、前扉510と後扉520とに個別の閾値を記憶しておいて開閉判定を行うことで、より正確に開閉判定を行い得る。
また、ホーム階と改札階とで使用されている照明が異なるなど、前扉510が開状態にある場合と後扉520が開状態にある場合とで、エレベーター400の外部の明るさが異なる場合も、開閉判定部120が、前扉510と後扉520とに個別の閾値を記憶しておいて開閉判定を行うことで、より正確に開閉判定を行い得る。
一方、開閉判定部120が、前扉510と後扉520とに共通の閾値を記憶することで、必要な記憶容量を少なくできる。
【0062】
ステップS202において、平均輝度値が輝度閾値以上に明るいことを示す値であると判定した場合(ステップS202:YES)、開閉判定部120は、判定対象の扉の開閉判定結果を開状態とする(ステップS211)。
その後、同図の処理を終了する。
一方、ステップS202において、平均輝度値が輝度閾値よりも暗いことを示す値であると判定した場合(ステップS202:NO)、開閉判定部120は、判定対象の扉の開閉判定結果を閉状態とする(ステップS221)。
その後、同図の処理を終了する。
【0063】
次に、図10および図11を参照して、カゴ内状態監視装置100が行う暴れ動作状態の検出について説明する。
図11は、カゴ内状態監視装置100(カゴ内状態判定部130)による暴れ動作状態検出の例を示すグラフである。同図(a)の線L11は、開閉判定部120による扉開閉判定の結果を示す。同図(b)の線L12は、カゴ内状態判定部130が算出する動作量を示す。同図(b)の閾値h11(以下、「検出用動作量閾値」h11と称する)は、暴れ動作状態検出(すなわち、暴れ動作検出)のための動作量の閾値である。以下では、検出用動作量閾値h11以上の動作量を「暴れ被疑動作量」と称する。
【0064】
同図(c)の線L13は、扉開閉判定の結果が閉状態であり、かつ、カゴ内状態判定部130が暴れ被疑動作量を検出(算出)した状態の累積時間である検出累積時間を示す。同図(c)の閾値h12(以下、「検出用時間閾値」h12と称する)は、暴れ動作検出のための時間の閾値である。同図(c)の閾値h13(以下、「リセット用時間閾値」h13と称する)は、カゴ内状態判定部130が検出累積時間をリセットする基準時間を示す閾値である。
同図(d)の線L14は、カゴ内状態判定部130による暴れ動作の有無の判定結果を示す。
【0065】
同図(c)に示すように、カゴ内状態判定部130は、扉開閉判定の結果が閉状態であり、かつ、暴れ被疑動作量を検出した状態の累積時間(検出累積時間)を測定する。
ここで、扉開閉判定結果が開状態である場合(前扉510または後扉520が開いている場合)、エレベーター利用者の乗降により、カゴ内状態判定部130が算出する動作量が大きくなることが考えられる。
そこで、カゴ内状態判定部130は、扉開閉判定結果が開状態である場合を検出累積時間の測定対象から除外することで、エレベーター利用者の乗降を暴れ動作として検出する誤検出を防止している。
【0066】
また、カゴ500内においてエレベーター利用者が立ち位置を変えた場合や荷物を移動させた場合など、エレベーター利用者が単発的な動作を行った場合、カゴ内状態判定部130が、暴れ被疑動作量、すなわち検出用動作量閾値h11以上の動作量を検出し得る。かかる単発的な動作は、必ずしも他者に迷惑となる動作ではなく、当該動作に対してスピーカー620が警告メッセージを出力すると、かえってエレベーター利用者に不快感を与えてしまうおそれがある。
そこで、カゴ内状態判定部130は、単発的な動作量(例えば暴れ被疑動作量)ではなく、累積時間(本実施形態では検出累積時間)に基づいて暴れ動作を検出することで、単発的な動作の検出を抑制している。
【0067】
また、カゴ内状態判定部130が検出累積時間を測定する対象時間が長いと、カゴ内状態判定部130が、単発的な動作の累積時間に基づいて暴れ動作を検出することが考えられる。この場合、カゴ内状態判定部130は、単発的な動作を暴れ動作として検出することになる。上記と同様、当該単発的な動作に対してスピーカー620が警告メッセージを出力すると、かえってエレベーター利用者に不快感を与えてしまうおそれがある。
そこで、カゴ内状態判定部130は、暴れ被疑動作量を検出しない連続時間(以下、「非検出連続時間」と称する)がリセット用時間閾値h13以上となると、検出累積時間を0に設定(ゼロリセット)することで、単発的な動作の検出を抑制している。
【0068】
図12は、カゴ内状態監視装置100が暴れ動作状態を検出する処理手順を示すフローチャートである。カゴ内状態監視装置100は、カゴ内状態監視装置100自らの電源を接続(ON)されて起動すると同図の処理を開始する。
同図の処理において、まず、カゴ内状態判定部130は、検出累積時間を0に設定する(ステップS301)。また、カゴ内状態判定部130は、非検出連続時間を0に設定する(ステップS302)。
【0069】
次に、撮像画像取得部110は、撮像装置610から出力される撮像画像を取得して、開閉判定部120とカゴ内状態判定部130とに出力する(ステップS303)。そして、開閉判定部120は、撮像画像取得部110から出力される撮像画像に基づいて、図9で説明した扉開閉判定を行い、判定結果をカゴ内状態判定部130に出力する(ステップS304)。
【0070】
そして、カゴ内状態判定部130は、開閉判定部120から出力される判定結果に基づいて分岐を行う(ステップS305)。判定結果が閉状態である場合(ステップS305:YES)、カゴ内状態判定部130は、撮像画像取得部110から出力される撮像画像に基づいて、カゴ500内における人または物の動作量を算出する(ステップS311)。
【0071】
そして、カゴ内状態判定部130は、算出した動作量が検出用動作量閾値以上か否かを判定する(ステップS312)。検出用動作量閾値以上であると判定した場合(ステップS312:YES)、カゴ内状態判定部130は、検出累積時間をカウントアップする(ステップS321)。例えば、開閉判定部120が、一定時間周期で扉開閉判定を行っており、カゴ内状態判定部130は、この周期時間を検出累積時間に加算することで、検出累積時間のカウントアップを行う。
また、カゴ内状態判定部130は、非検出連続時間を0に設定する(ステップS322)。
【0072】
次に、カゴ内状態判定部130は、検出累積時間が検出用時間閾値以上か否かを判定する(ステップS323)。検出用時間閾値以上であると判定した場合(ステップS323:YES)、カゴ内状態判定部130は、暴れ動作状態を検出したことを示す暴れ検出信号を判定結果送信部150に出力し、判定結果送信部150は、暴れ検出信号を、信号送受信盤420(図3)を介して昇降機監視用モニター720に送信する(ステップS331)。そして、昇降機監視用モニター720は、暴れ動作状態を検出したことを示すメッセージを表示する。
【0073】
また、カゴ内状態判定部130は、暴れ検出信号を音声信号出力部140に出力し、音声信号出力部140は、暴れ動作を止めるよう要求するメッセージ音声をスピーカー620に出力させる(ステップS332)。
その後、カゴ内状態監視装置100は、開閉判定部120が扉開閉判定を行う周期時間として設定されている所定時間の経過を待って(ステップS333)、ステップS303に戻る。
【0074】
一方、ステップS305において、扉開閉判定結果が開状態である場合(ステップS305:NO)、および、ステップS312において、動作量が検出用動作量閾値未満であると判定した場合(ステップS312:NO)、カゴ内状態判定部130は、非検出連続時間をカウントアップする(ステップS341)。例えば、ステップS321で説明した検出累積時間のカウントアップと同様、カゴ内状態判定部130は、開閉判定部120が扉開閉判定を行う周期時間を非検出連続時間に加算することで、非検出連続時間のカウントアップを行う。
【0075】
そして、カゴ内状態判定部130は、非検出連続時間がリセット用時間閾値以上か否かを判定する(ステップS342)。リセット用時間閾値以上であると判定した場合(ステップS342:YES)、カゴ内状態判定部130は、検出累積時間を0に設定する(ステップS351)。
その後、ステップS333に進む。
【0076】
一方、ステップS323において、検出累積時間が検出用時間閾値未満であると判定した場合(ステップS323:NO)、および、ステップS342において、非検出連続時間がリセット用時間閾値未満であると判定した場合(ステップS342:NO)、ステップS333に進む。
【0077】
以上のように、扉開閉判定装置10は、扉の撮像画像に設定された判定対象範囲の明るさに基づいて扉開閉判定を行うので、扉が開状態にあるか閉状態にあるかを示す信号を、外部から取得する必要がない。例えば、カゴ内状態監視装置100(開閉判定部120)は、カゴ500内の撮像画像に設定された判定対象範囲(前扉判定対象範囲A11や後扉判定対象範囲A12)の明るさに基づいて、扉(前扉510や後扉520)の開閉判定を行うので、扉が開状態にあるか閉状態にあるかを示す信号を、エレベーター400から取得する必要がない。
【0078】
従って、当該信号をやり取りするための改造を外部の機器に加える必要がないので、既設の扉に対しても容易に扉開閉判定装置10を適用でき、また、扉開閉判定装置10を適用することで改造費用を抑制できる。例えば、扉が開状態にあるか閉状態にあるかを示す信号を出力するための改造をエレベーター400(例えば、エレベーター400の制御盤)に加える必要がないので、既設のエレベーター400に対しても容易にカゴ内状態監視装置100を適用でき、また、カゴ内状態監視装置100をエレベーター400に適用することで改造費用を抑制できる。
【0079】
ここで、製造会社が異なる複数のエレベーターの制御盤に改造を加える場合、製造会社毎に制御盤が異なり製造会社毎に改造の設計が必要となって、改造費用が特に高くなるおそれがある。これに対して、扉開閉判定装置10(例えばカゴ内状態監視装置100)は、様々な製造会社のエレベーターに適用可能であり、かかる改造費用を抑制できる。
【0080】
また、扉開閉判定装置10が、扉が開状態にあるか閉状態にあるかを示す信号を取得する必要が無い点で、扉開閉判定装置10と他の機器との通信量が少なくて済む。例えば、扉が開状態にあるか閉状態にあるかを示す信号を、エレベーター400がカゴ内状態監視装置100に送信する必要がないので、エレベーター400とカゴ内状態監視装置100との通信量が少なくて済む。
【0081】
また、複数の扉に対して扉開閉判定装置10を適用する場合、いずれの扉についても開状態にあるか閉状態にあるかを示す信号を取得する必要が無い点で、扉開閉判定装置10と他の機器との通信量が特に少なくて済む。例えば、カゴ内状態監視装置100は、前扉510と後扉520とのいずれについても、開状態にあるか閉状態にあるかを示す信号を取得する必要が無い点で、エレベーター400とカゴ内状態監視装置100との通信量が特に少なくて済む。
【0082】
また、1台の撮像装置で複数の扉を撮像し、当該撮像装置の撮像画像に各扉の判定対象範囲を設定することで、扉開閉判定装置10が扉開閉判定を行うために必要な撮像装置の台数を少なくできる。例えば、前扉510と後扉520とを1台の撮像装置610で撮像し、撮像装置610による撮像画像に前扉判定対象範囲A11と後扉判定対象範囲A12とを設定することで、カゴ内状態監視装置100(開閉判定部120)が扉開閉判定を行うために必要な撮像装置の台数を1台にできる。
【0083】
また、扉の開状態における判定対象範囲の撮像画像が明るい場合、暗い明度を有するシートを扉に貼るという簡単な作業で、カゴ内状態監視装置100が、より正確に扉開閉判定を行うようにできる。より具体的には、暗い明度を有するシートが、扉の閉状態において撮像対象範囲にかかるように(シートの画像の一部が撮像対象範囲に含まれるように)扉に貼られていることで、扉の開状態と閉状態とにおける撮像対象範囲の画像の明るさの差を大きくでき、開閉判定部120は、より正確に扉開閉判定を行うことができる。例えば、図4〜図8で説明したように、前右扉512に前右扉用シート514が貼られていることで、カゴ内状態監視装置100(開閉判定部120)は、より正確に前扉510の開閉判定を行うことができ、後左扉521に後左扉用シート523が貼られていることで、カゴ内状態監視装置100は、より正確に後扉520の開閉判定を行うことができる。
【0084】
また、カゴ内状態判定部130は、開閉判定部120の扉開閉判定結果を用いて要注意状態の有無を判定するので、扉の開状態におけるエレベーター利用者の乗降を暴れ動作として検出することによる要注意状態の誤検出を抑制できる。その際、カゴ内状態判定部130が、開閉判定部120の扉開閉判定結果を用いることで、扉が開状態にあるか閉状態にあるかを示す信号を、エレベーター400から取得する必要がなく、改造費用の抑制や通信量の抑制など、上述した各効果を得られる。
【0085】
なお、以上では、エレベーターの扉に本発明を適用する場合を例に説明したが、本発明は、様々な扉に適用可能である。例えば、店舗の扉に本発明を適用して店舗の扉の開状態を検出して店員に通知することで、店員が利用客の出入を見落とすおそれを低減させることができ、サービスの向上を図ることができる。
【0086】
また、以上では、暴れ動作状態の検出に本発明を適用する場合を例に説明したが、本発明は、様々な要注意状態の検出に適用可能である。
例えば、エレベーター利用者がカゴ内に長時間滞留する状態である滞留状態の検出に本発明を適用することができる。例えば、駅構内に設置されてホーム階と改札階とを往復するエレベーターでは、いずれかの階に到着して扉が開く毎に全ての乗客がカゴ外に退出するのが通常であり、滞留状態は一種の要注意状態であると考えられる。特に、上述したエレベーター400のように、到着階によって開く扉が異なる貫通式エレベーターでは、利用者が、扉が開いたことに気付かずに滞留する事態が見受けられる。
そこで、カゴ内状態監視装置100が、滞留状態を検出し、扉が開いていることをカゴ内の利用者に通知することで、利用者を補助することができる。例えば、貫通式エレベーターにおいて、カゴ内状態監視装置100が、滞留状態を検出し、入場時と反対側の扉が開いていることをカゴ内の利用者に通知することで、貫通式エレベーターに不慣れな利用者を補助することができる。
【0087】
なお、扉開閉判定装置10またはカゴ内状態監視装置100の、全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0088】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0089】
10 扉開閉判定装置
100 カゴ内状態監視装置
110 撮像画像取得部
120 開閉判定部
130 カゴ内状態判定部
140 音声信号出力部
150 判定結果送信部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉が開状態にあるか閉状態にあるかを判定する扉開閉判定装置であって、
前記扉の閉状態において当該扉の所定の部分に対応する固定の撮像範囲である判定対象範囲の撮像画像を取得する撮像画像取得部と、
前記撮像画像取得部が取得する前記判定対象範囲の撮像画像の明るさに基づいて、前記扉が開状態にあるか閉状態にあるかを判定する開閉判定部と、
を具備することを特徴とする扉開閉判定装置。
【請求項2】
前記扉の前記所定の部分は、前記扉の閉状態において前記撮像画像取得部が取得する前記判定対象範囲の撮像画像の明るさが所定の明るさよりも暗くなる明度を有し、
前記開閉判定部は、前記撮像画像取得部が取得する前記判定対象範囲の撮像画像の明るさが前記所定の明るさ以上に明るい場合に、前記扉が開状態にあると判定し、前記撮像画像取得部が取得する前記判定対象範囲の撮像画像の明るさが前記所定の明るさよりも暗い場合に、前記扉が閉状態にあると判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の扉開閉判定装置。
【請求項3】
前記扉は貫通式エレベーターの扉であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の扉開閉判定装置。
【請求項4】
複数の前記扉の各々が開状態にあるか閉状態にあるかを判定する前記扉開閉判定装置であって、
前記撮像画像取得部は、前記複数の扉の各々について、当該扉の閉状態において当該扉の所定の部分に対応する固定の撮像範囲である判定対象範囲の撮像画像を取得し、
前記開閉判定部は、前記複数の扉の各々について、当該扉の閉状態において当該扉の所定の部分に対応する前記判定対象範囲の撮像画像の明るさに基づいて、当該扉が開状態にあるか閉状態にあるかを判定する、
ことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の扉開閉判定装置。
【請求項5】
前記扉の前記所定の部分には、当該扉の閉状態において前記撮像画像取得部が取得する前記判定対象範囲の撮像画像の明るさが前記所定の明るさよりも暗くなる明度を有するシートが貼られていることを特徴とする請求項3に記載の扉開閉判定装置。
【請求項6】
貫通式エレベーターの扉の閉状態において当該扉の所定の部分に対応する固定の撮像範囲である判定対象範囲の撮像画像を取得する撮像画像取得部と、
前記撮像画像取得部が取得する前記判定対象範囲の撮像画像の明るさに基づいて、前記扉が開状態にあるか閉状態にあるかを判定する開閉判定部と、
前記扉が閉状態にあると前記開閉判定部が判定した場合に、前記撮像画像取得部が取得する前記エレベーターのカゴ内の撮像画像に基づいて、前記エレベーターのカゴ内における人または物の動作量を算出し、当該動作量に基づいて、前記エレベーター内のカゴ内における人または物の状態を判定するカゴ内状態判定部と、
を具備することを特徴とするカゴ内状態監視装置。
【請求項7】
扉が開状態にあるか閉状態にあるかを判定する扉開閉判定装置の扉開閉判定方法であって、
前記扉の閉状態において当該扉の所定の部分に対応する固定の撮像範囲である判定対象範囲の撮像画像を取得する撮像画像取得ステップと、
前記撮像画像取得ステップにて取得する前記判定対象範囲の撮像画像の明るさに基づいて、前記扉が開状態にあるか閉状態にあるかを判定する開閉判定ステップと、
を具備することを特徴とする扉開閉判定方法。
【請求項8】
扉が開状態にあるか閉状態にあるかを判定する扉開閉判定装置としてのコンピュータに、
前記扉の閉状態において当該扉の所定の部分に対応する固定の撮像範囲である判定対象範囲の撮像画像を取得する撮像画像取得ステップと、
前記撮像画像取得ステップにて取得する前記判定対象範囲の撮像画像の明るさに基づいて、前記扉が開状態にあるか閉状態にあるかを判定する開閉判定ステップと、
を実行させるためのプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−56754(P2013−56754A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196369(P2011−196369)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人 日本鉄道車両機械技術協会、「ROLLING STOCK & MACHINERY」、Vol.19、No.8、2011年8月1日
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(398038720)システム・プロダクト株式会社 (6)
【出願人】(593092482)JR東日本メカトロニクス株式会社 (85)
【Fターム(参考)】