説明

手ぶれ補正装置を備えたカメラ

【課題】動きの激しい状況においても合焦精度を高めることができる手ぶれ補正装置を備えたカメラを提供する。
【解決手段】撮影光学系の焦点調節レンズ群を合焦サーチ開始位置から終了位置方向に移動しながら撮像手段により撮像して得た複数位置の画像のコントラストに基づいて合焦位置を検出する合焦サーチ動作をする焦点調節装置と、カメラの振動を検知する振動検知手段と、該信号検知手段によりカメラの振動を検知したときに、前記撮像手段に形成された被写体像が撮像手段に対して移動しないように補正手段を駆動してぶれを補正する手ぶれ補正駆動手段と、前記合焦サーチ動作中に前記振動検知手段が振動を検知したときまたは振動が一定時間以上継続していることを検知したときは、前記焦点調節装置に前記合焦サーチ動作を中断または中止させる制御手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手ぶれ補正装置を備えたカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆるコンパクトデジタルカメラでは、焦点調節レンズ群を近端(最短合焦位置)または無限遠端(無限遠合焦位置)から無限遠端または近端までサーチして焦点状態を検出する画像コントラスト方式の焦点調節装置を備えている(特許文献1)。この種のコンパクトデジタルカメラにおいて、手ぶれ(像ぶれ)を補正する光学要素を備えた手ぶれ補正装置を搭載したものが種々開発されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2002-311325号公報
【特許文献2】特開平08−087047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら従来のカメラでは、フォーカス動作中に撮影者が、またはカメラ自体が激しい動きをした場合、主要被写体がフォーカスフレームから外れるなどして正確なピント位置が得られず、主要被写体に合焦させることができなかったり、主要被写体以外の被写体に誤合焦してしまうという問題があった。
【0004】
本発明はかかる従来のコンパクトデジタルカメラの問題に鑑みてなされたものであって、動きの激しい状況においても合焦精度を高めることができる手ぶれ補正装置を備えたカメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決する本発明は、撮影光学系の焦点調節レンズ群を合焦サーチ開始位置から終了位置方向に移動しながら撮像手段により撮像して得た複数位置の画像のコントラストに基づいて合焦位置を検出する合焦サーチ動作をする焦点調節装置と、カメラの振動を検知する振動検知手段と、該信号検知手段によりカメラの振動を検知したときに、前記撮像手段に形成された被写体像が撮像手段に対して移動しないように補正手段を駆動してぶれを補正する手ぶれ補正駆動手段と、前記合焦サーチ動作中に前記振動検知手段が振動を検知したときまたは振動が一定時間以上継続していることを検知したときは、前記焦点調節装置に前記合焦サーチ動作を中断または中止させる制御手段とを備えたことに特徴を有する。
【0006】
実施形態では、前記制御手段は、前記合焦サーチ動作を中止させたときは、前記焦点調節装置に前記焦点調節レンズ群を合焦サーチ開始位置に戻させる。
【0007】
実際的には、前記制御手段は、前記合焦サーチ動作を中断または中止させたときは、前記振動が前記中断したときよりも小さくなったことを前記振動検知手段が検知したとき、前記振動が収束したことを前記振動検知手段が検知したとき、所定時間経過したときのいずれかのときに前記合焦サーチ動作を再開または再起動させる。
好ましくは、前記制御手段は、前記振動が収束したことまたは中断したときよりも小さい所定値以下になったことを前記振動検知手段が検知したとき、あるいは所定時間が経過したときのいずれか早いときに前記合焦サーチ動作を再開または再起動させる。
【0008】
前記制御手段は、前記中断または中止させた後に前記合焦サーチ動作を再開または再起動させたときは、振動にかかわらず前記中断または中止をさせない。
より実際的には、前記制御手段は、前記中断または中止を所定回以下に制限し、所定回前記中断または中止させた後に前記合焦サーチ動作を再開または再起動させた後は、振動にかかわらず前記中断または中止をさせない。
【0009】
前記制御手段が合焦サーチ動作を中断または中止させる振動は、前記撮影光学系の現焦点距離に応じた所定値以上の振動とすることが好ましい。より好ましくは、前記現焦点距離に応じた所定値以上の振動は、焦点距離が長いほど小さく設定する。
【0010】
前記制御手段は、前記合焦サーチ動作が所定範囲以上終了していたときは前記振動にかかわらず前記中断または中止をしない。
【0011】
本発明の手ぶれ補正装置を備えたカメラは、前記撮影光学系によって形成された被写体像を撮像する撮像手段を備えたデジタルカメラに適用した場合は、前記補正手段は前記撮像手段を含み、前記手ぶれ補正駆動手段は、前記撮像手段を光軸と直交する方向に運動させて前記手ぶれを補正する。
また本発明は、前記補正手段は前記撮影光学系中に配置された補正光学素子であって、前記手ぶれ補正駆動手段が前記補正光学素子を光軸と直交する方向に運動させて前記手ぶれを補正する手ぶれ補正装置を備えたカメラに適用できる。
【0012】
さらに本発明は、前記手ぶれ補正駆動手段をオン/オフ設定する手ぶれスイッチ手段を備え、前記制御手段は、前記焦点調節装置が前記合焦サーチ動作を開始するときは前記手ぶれスイッチ手段による設定にかかわらず前記振動検知手段及び前記手ぶれ補正駆動手段を作動させる。
【発明の効果】
【0013】
以上の通り本発明によれば、合焦サーチ動作中に振動検知手段が振動を検知したときは合焦サーチ動作を中断または中止するので、主要被写体に対して非合焦となったり誤合焦してしまうおそれがない。
【0014】
合焦サーチ動作中に振動検知手段が振動を検知したときは、合焦サーチ動作を中止して合焦サーチ開始位置まで焦点調節レンズ群を移動するので、合焦サーチ動作のやり直しが短時間で可能になる。合焦サーチ動作を中止して合焦サーチ開始位置まで焦点調節レンズ群を移動した後、所定時間経過したときに合焦サーチ動作を再開する場合は、撮影者が電車等に載っていて撮影者自体が振動している場合でも、迅速に合焦サーチ動作を再開させることが可能になり、カメラ振動が収まったときに合焦サーチ動作を再開する場合は、撮影者が微妙な構図調整を行った場合でも構図調整後迅速に合焦サーチ動作を再開させることが可能になる。いずれの場合も手ぶれ補正動作しているので正確な合焦が可能なる。
【0015】
手ぶれ補正駆動手段をオン/オフする操作スイッチを備えたカメラに適用した本発明によれば、操作スイッチがオフしていても、合焦サーチ動作を実行するときは手ぶれ補正駆動手段をオンするので、手ぶれの影響が小さくなり、正確な合焦サーチが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明について、添付図面に示した実施形態を参照して詳述する。図1は、本発明を適用した、手ぶれ補正装置及びコントラストAF方式の焦点調節装置を備えたコンパクトデジタルカメラの要部構成をブロックで示す図、図2は同デジタルカメラの背面図である。
【0017】
このデジタルカメラは、主にズーミングに寄与するズームレンズ群L1、主に焦点調節に寄与する焦点調節レンズ群L2を含むズームレンズLにより被写体像を、撮像手段としての撮像素子(CCDイメージセンサ)11の受光面に形成する。撮像素子11は、それぞれに原色フィルターが配置された多数の画素(光電変換素子)を有し、露光時には受光した被写体像を各画素が電荷に変換して蓄積(積分)する。露光が終了すると、蓄積した電荷が画素単位で画像信号として信号処理回路13に出力する。信号処理回路13は、入力した画像信号を増幅し、ホワイトバランス調整等所定の調整処理、A/D変換処理を施してR(赤色)、G(緑色)、B(青色)のデジタル画像データを画像信号処理回路15及びコントラストAF演算回路23に出力する。
【0018】
画像信号処理回路15は、入力したRGBデジタル画像信号に基づいて公知の画像信号処理を施して、キャッシュメモリ17への書き込み、モニタ19への表示、及び記録媒体としてのメモリカード21への書き込みを実行する。なお、以上の画像信号処理回路15による処理は、制御部(CPU)25によって制御される。
【0019】
コントラストAF演算回路23は、コントラストAF処理において、信号処理回路35からフォーカスエリア内のデジタル画像信号を入力してコントラストを演算し、コントラストデータを制御部25に出力する。制御部25は、AF駆動回路27を介して焦点調節レンズ群L2を移動させながらコントラストAF演算回路23から入力した被写体画像のコントラストデータに基づいてコントラストを演算して内蔵RAM25bに書き込む処理を、焦点調節レンズ群L2を所定の可動範囲内においてステップ駆動しながら繰り返し実行するAFサーチ処理を実行する。そうして、AFサーチ処理が終了すると、最短撮影距離から無限遠まで所定間隔で得たコントラストに基づいてコントラストのピークが得られる焦点調節レンズ群L2の位置を演算し、演算した位置に焦点調節レンズ群L2を移動させてコントラストAF処理を終了する。
【0020】
制御部25は、メインスイッチ37のON操作を受けて起動し、レリーズボタン39の半押しに連動する測光スイッチSWSのON操作を受けて前記コントラストAF処理を実行し、レリーズボタン39の全押しに連動するレリーズスイッチSWRのON操作を受けて、CCD11が撮像した画像信号をメモリカード21に書き込む。
【0021】
このデジタルカメラはさらに、カメラボディの振動、チルト及びパーンを検出する振動検出手段として角速度センサ33を備えている。この角速度センサ33は、カメラボディが正位置に構えられた状態で、光軸Oが水平面内で振れる横方向(水平)振れを検知する第1角速度センサ33aと、光軸Oが垂直面内で振れる縦方向(垂直)振れを検知する第2角速度センサ33bを備えている。第1、第2角速度センサ33a、33bの各検知信号は、アンプ・ハイパスフィルタ回路35で増幅され、低周波成分が除去されて手ぶれ検知信号Vx、Vyとして制御部25に出力される。前記検知出力から低周波成分を除去することにより、撮影者が、例えば移動する主要被写体を追っている場合カメラをチルト、またはパーンさせた場合に生じるチルト、パーンのぶれ成分が除去される。
【0022】
制御部25は、入力した手ぶれ検知信号Vx、Vyと、ズームレンズLの現在の焦点距離に基づいて、CCDイメージセンサ11上に投影された被写体像がCCDイメージセンサ11に対して移動しないように、つまり被写体像と一緒にイメージセンサ11を移動させるために必要なCCDイメージセンサ11の移動方向及び移動速度を演算し、防振駆動回路31を介してCCDイメージセンサ11を移動させる。なお、ズームレンズLの現在の焦点距離は、ズーミングレンズ群L1の位置を検知して焦点距離を求める公知のズームコード検知手段によって検知する。このデジタルカメラではCCDイメージセンサ11が手ぶれ補正装置の補正要素を構成しているが、補正要素はこれに限定されず、ズームレンズL中の光学要素を補正要素として光軸と直交方向に運動させてもよい。
【0023】
また、制御部25は、ズームスイッチ41の操作を受けてズーム駆動回路29を介してズームレンズ群L1を駆動し、ズーミングし、十字キースイッチ43の操作を受けて、撮影モード、記録モードなど種々のモード等の設定や、防振動作(手ぶれ補正動作)をオン/オフする。なお、防振動作のオン/オフは、別個に手ぶれスイッチ45を設け、この手ぶれスイッチ45がオンされる毎に、手ぶれ機能をオン/オフする構成としてもよい。
【0024】
次に、フォーカスエリア内に入っていた被写体像が、手ぶれによってフォーカスエリアから外れてしまう様子を図3(A)、(B)に示した。図4(A)、(B)には、AFサーチ処理中に、手ぶれを生じ無かった場合と手ぶれを生じた場合の被写体像とフォーカスエリアとの関係を示した。図4(C)は、手ぶれを生じ無かった場合の焦点調節レンズ群L2の移動軌跡を示し、図4(D)には手ぶれを検知した場合の焦点調節レンズ群L2の移動軌跡を示した。
【0025】
主要被写体55が撮像画面51内のフォーカスエリア53内に入るように構図決めされ(図3(A))、シャッタボタン39が半押し(測光スイッチSWSがON)されると、制御部25はAFサーチ処理を開始する。この実施形態では、焦点調節レンズ群L2をサーチ開始端点(最短撮影位置)に移動し、サーチ開始端点からサーチ終了端点(無限遠合焦位置)まで、CCDイメージセンサ11による撮像、フォーカスエリア41内の画素信号読み込み及びコントラスト演算、及び焦点調節レンズ群L2のステップ駆動を繰り返す(図4(C))。ここで、AFサーチ開始から終了まで主要被写体55がフォーカスエリア53内に収まっていた場合は、図4(A)に示したようにコントラストのピークPが得られる。このピークPが得られた焦点調節レンズ群L2の位置が合焦位置である。
【0026】
ところが、AFサーチ中に手ぶれを生じて主要被写体55がフォーカスエリア53から外れてしまうと、フォーカスエリア53内に収まった他の被写体のコントラストを求めてしまう。例えば本来ピークが得られるレンズ位置前後で手ぶれを生じて主要被写体がフォーカスエリアから外れてしまうと、フォーカスエリア内入った主要被写体以外の被写体のコントラストを検出してしまい、ピークが得られないこととなる。そのため、例えば図3(B)に示したように主要被写体がフォーカスエリア53内に収まっていたなら得られたであろうピークPが得られなくなる場合や、ピーク検知できずに合焦不能になる場合または他のピークを誤検知して誤合焦してしまう場合がある(図4(B))。
【0027】
そこで本実施形態では、AF処理中に手ぶれを検出、本実施形態では手ぶれが所定時間以上継続していることを検出したときは、AFサーチ処理を中止する。そうして、AFサーチ開始位置まで焦点調節レンズ群L2を戻して所定時間経過するのを待つか、手ぶれが小さくなるのを待ち、所定時間経過したときまたは手ぶれが小さくなったときのいずれか早いときにAFサーチ処理を再開する。
【0028】
本発明の他の実施形態では、AFサーチ途中で手ぶれを検出したときは直ちにAFサーチを中断し、所定時間内に手ぶれが収まったらその中断状態からAFサーチを継続し、待ち時間内に手ぶれが収まらなかったらAFサーチ開始位置まで焦点調節レンズ群L2を戻してさらに所定時間経過するのを待つか、手ぶれが小さくなるのを待ち、所定時間経過したときまたは手ぶれが小さくなったときのいずれか早いときにAFサーチ処理を再開する。
【0029】
次に、このデジタルカメラにおけるコントラストAF動作について、図5乃至図8に示したフローチャートを参照してより詳細に説明する。図5は、このデジタルカメラのメインシーケンスをフローチャートで示す図である。このメインシーケンスには、バッテリ(図示せず)が装填され、メインスイッチ37が電源ON操作されたときに、ROM25aに書き込まれたプログラムを読み込んで実行する。
【0030】
メインシーケンスに入ると、先ずステップ(以下「S」と略する)101において、内蔵RAM25b、ポート、変数などハード、ソフト的な初期化を実行しする。そうして、メニューモードが選択されているか、撮像モードが選択されているか、再生モードが選択されているかチェックする(S103)。この実施形態ではデフォルトは撮像モードとし、十字キースイッチ43が操作されたときに操作に応じてメニュー処理(S105)、再生モード(S107)が選択される。
【0031】
メニュー処理が選択された場合はモニタ19にメニュー画面を表示して、防振(手ぶれ補正)ON/OFF設定、記録モードなどの各種モード選択を可能にし、終了操作されたらS137に飛ぶ。再生モードが選択された場合は、メモリカード21に書き込まれた画像データを読み込んでモニタ19に表示する再生処理を実行し、終了操作されたらS137に飛ぶ。以上のようにこの実施形態では、防振、つまり手ぶれ補正のON/OFFを十字キー43操作によって設定する。
【0032】
撮像モードの場合は、S109以下の処理を実行する。S109では、CCDイメージセンサ11により定期的に撮像して撮像した画像をモニタ19に表示するスルー処理を開始する。
【0033】
次に、防振駆動ON設定か否かチェックする(S111)。防振駆動ON設定で無い場合(S111:NO)は防振駆動OFF処理し(S113)、防振駆動ON設定の場合(S111:YES)は防振駆動ON処理を実行する(S115)。防振駆動ON処理では、ぶれ検知センサ33を作動させて像ぶれしないように防振駆動回路31を介してCCDイメージセンサ11を光軸と垂直な面内において運動させる。防振駆動OFF処理では、CCDイメージセンサ11を初期位置に戻す処理を実行する。初期位置とは、CCDイメージセンサ11の撮像面中心が光軸と一致する位置をいう。
【0034】
そうして、測光スイッチSWSがONされたか否かチェックし(S117)、ONされていなければS103に戻る。
【0035】
測光スイッチSWSがONすると(S117:YES)、防振OFF設定か否かチェックし(S119)、防振OFF設定の場合(S119:YES)は防振駆動ON処理を実行してS123に進み、防振OFF設定でなければ(S119:NO)そのままS123に進む。つまり、AFサーチ処理中は防振駆動をONして、手ぶれの影響を除去して正確な焦点検出処理を可能にする。
【0036】
S123では、コントラストAF処理を実行して、フォーカスエリア53内の主要被写体55に対するコントラストのピークをサーチし、コントラストのピークが得られた合焦位置に焦点調節レンズ群L2を移動して主要被写体55に対して合焦させる(S123)。
【0037】
コントラストAF処理が終了すると、合焦状態で撮像した画像信号に基づいて、適正なシャッタ速度及び絞り値を設定するAE処理及びホワイトバランス調整するオートホワイトバランス(AWB)処理を実行する(S125)。
【0038】
続いて、防振OFF設定か否かチェックし(S127)、防振OFF設定でない場合はそのままS131に進み、防振OFF設定の場合は防振駆動OFF処理を実行してS131に進む。防振駆動OFF処理では、CCDイメージセンサ11を初期位置に戻して防振駆動回路31をOFFし、防振駆動ON設定の場合は、防振駆動を継続する。
【0039】
S131では測光スイッチSWSがONしているか否かチェックし、ONしていない場合はS103に戻る。測光スイッチSWSがONしている場合(S131:YES)は、レリーズスイッチSWRがONしている否かチェックし(S133)、ONしていない場合(S133:NO)はS131に戻る。レリーズスイッチSWRがONすると(S133:YES)、S125で求めたシャッタ速度及び絞り値で撮像する撮像処理、及び同AWBで信号補正処理を行って、設定された記録フォーマットでメモリカード21に書き込む記録処理を実行する(S135)。その後、メインスイッチ37が電源オフ処理されたか否かチェックし(S137)、電源オフ処理でない場合(S137:NO)はS103に戻り、電源オフ処理の場合(S137)はこのフローチャートを終了する。なお、終了すると、電源をオフしてメインスイッチ37の状態を定期的にチェックするチェック処理を実行する。
【0040】
次に、S123で実行されるコントラストAF処理について、図6に示したフローチャートを参照して詳細に説明する。コントラストAF処理では、焦点調節レンズ群L2を最短撮影位置(至近短)であるサーチ開始位置まで移動して、サーチ終了位置までステップ駆動しながらCCDイメージセンサ11によって撮像し、フォーカスエリア53内の被写体画像データに基づいてコントラスト値を検出するサーチ動作(スキャン、AFスキャン)を実行する。そうして、コントラスト値のピークを求めてピークが得られたレンズ位置を合焦位置として焦点調節レンズ群L2と移動させることを基本動作としている。
【0041】
コントラストAF処理に入ると、まず各変数等の初期化を実行する(S201)。例えばこの実施形態では、各ステータスのクリア、コントラスト値のクリア、レンズ位置パルス数PNの初期化(PN=0)、コントラストの最大値=0、最小値=FFFFFFFFのセット、再スキャンフラグ(Flg_ReScan)のクリア、再スキャン回数(ReScanNo)のクリア等を実行する。
【0042】
ここで、主要な変数、フラグ等は次の通り定義される。
コントラスト値は、各焦点検出エリア、サポートエリア内の画素から得られた実際に得られたコントラスト値である。
レンズ位置パルス数PNは、焦点調節レンズ群L2が初期位置である最短撮影位置に停止しているときを0として、無限遠位置方向にAF駆動回路17を駆動したときに駆動に応じて出力されるレンズ位置パルスのカウント値である。そうして、焦点調節レンズ群L2を無限遠位置方向に駆動するときは所定駆動量ごとに1カウントアップされ、最短撮影位置方向に駆動するときは所定量駆動ごとに1カウントダウンされるものとする。
再スキャンフラグはスキャンを他途中で停止した後に再開したスキャンであるか否かを識別し、再スキャンの場合を"1"、そうでない場合を"0"とする。
再スキャン回数RescanNoは、何回目の再スキャンであるかを示す変数である。
【0043】
次に、フォーカスイニシャライズ処理を実行する(S203)。フォーカスイニシャライズ処理は、焦点調節レンズ群L2をサーチ開始端点まで駆動する処理である。
【0044】
次に、サーチ開始端点における画像データを取得してコントラスト値算出処理を実行する(S205)。つまり、撮像素子11から入力した画像データに基づいて、サーチ開始端点におけるコントラスト値P[0]を算出し、コントラスト値の最大値、最小値を更新する。
【0045】
再スキャンフラグが"1"かどうかチェックする(S209)。"0"の場合(1回目の場合は"0")(S209:NO)は、S215に進んでAF駆動回路27を介して焦点調節レンズ群L2を1ステップ分遠方向駆動する。再スキャンフラグが"1"の場合(S209:YES)は、スキャン途中で停止しているのでスキャン再開判定処理(S211)を実行し、再スキャン開始フラグ(Rescanstart)に"1"がセットされたかどうかチェックする(S213)。再スキャン開始フラグに"1"がセットされていない場合(S213:NO)はS211に戻ってスキャン再開判定処理を実行し、再スキャン開始フラグに"1"がセットされた場合(S213:YES)はS215に進む。
【0046】
S215ではAF駆動回路27を介して焦点調節レンズ群L2を1ステップ分遠方向駆動し、続いて再スキャンチェック処理を実行する(S215)。再スキャンチェック処理では(図7参照)、ぶれ検知センサ31の出力Vx、Vyが、ズーム位置に応じたレベル未満であるか否かチェックする(S301)。いずれもが未満の場合(S301:YES)は再スキャンフラグに"0"をセットしてリターンし(S303、RETURN)、いずれかが未満で無い場合(S301:NO)は再スキャンフラグに"1"をセットして終了(リターン)する(S305:RETURN)。
ぶれ検知センサ31の出力Vx、Vyのズーム位置に応じたレベルは、現焦点距離が短い程大きく、現焦点距離が長いほど小さくなるように設定されている。長焦点距離ほど手ぶれの影響が大きいからである。
【0047】
再スキャンチェック処理が終了すると、再スキャンフラグに"1"がセットされているか否かチェックする(S219)。再スキャンフラグに"1"がセットされていない場合(S219:NO)は、撮像素子11から画像データを入力してコントラスト値P[PN]を算出し、コントラスト値の最大値、最小値を更新するコントラスト値算出処理を実行し(S227)、レンズ位置パルスPNを1インクリメントする(S229)。次に、得られたコントラスト値P[PN]が設定条件を満足するピーク値であるかどうかをチェックするピークチェック処理を実行する(S231)。その後、スキャン終了端点か否かチェックし(S233)、スキャン終了端点で無い場合(S233:NO)はS215に戻り、スキャン終了端点の場合(S233:YES)は、ピーク値が得られたレンズ位置を挟む遠近の複数レンズ位置のコントラストに基づいて真のピーク値及びそのピーク値が得られるレンズ位置を近似演算し(S237)、演算したレンズ位置に焦点調節レンズ群L2を移動する合焦駆動処理を実行してリターンする(S239、RETURN)。
【0048】
再スキャンチェック処理におけるS305(図7)において、再スキャンフラグに"1"がセットされた場合は、S219からS221に進む(S219:YES、S221)。S221では、再スキャン回数を1インクリメントし、続いて再スキャン回数が予め設定されているN回以下か否かチェックする(S223)。再スキャン回数がN回以下で無い場合(S223:NO)はS227に戻ってAFスキャン処理を継続し、再スキャン回数がN回以上の場合(S223:YES)は再開用タイマをスタートさせて(S225)からS203のフォーカスイニシャライズ処理に戻る。
【0049】
再スキャン回数をN回以下をAFスキャンを再スタートさせる条件としたのは、再スキャン回数がN回以下で無い場合は、手ぶれを検知してから短時間しか経過していないので主要被写体がフォーカスエリア内にある可能性が高いが、再スキャン回数がN回を超えている場合は手ぶれが長く続いており、主要被写体がフォーカスエリアから外れている可能性が高いからである。
【0050】
再開用タイマをスタートさせS203に戻ると、焦点調節レンズ群L2をサーチ開始端点に戻し、防振動作をオンし(S205)、コントラスト値算出処理を実行し(S207)、再スキャンフラグに"1"がセットされているので(S209:YES)スキャン再開判定処理に入る(S211)。スキャン再開判定処理の詳細について、図8に示したフローチャートを参照して説明する。
【0051】
スキャン再開判定処理に入ると、先ず、再開用タイマ値が予め設定された経過時間Tms以内であるか否かチェックする(S401)。経過時間Tms以内である場合(S401:YES)は、ぶれ検知センサ31の出力Vx、Vyが、ズーム位置に応じたレベル未満であるか否かチェックする(S403)。いずれかが未満で無い場合(S403:NO)は、再スキャン開始フラグに"0"をセットしてリターンする(S405:RETURN)。
【0052】
再開用タイマ値が予め設定された経過時間Tms以内では無い場合(S401:NO)、経過時間Tms以内であっても(S401:YES)ぶれ検知センサ31の出力Vx、Vyがいずれもズーム位置に応じたレベル未満の場合(S403:YES)は、再スキャン開始フラグに"1"をセットしてリターンする(S407、S409、RETURN)。
【0053】
以上のスキャン再開判定処理により、所定時間経過したとき、または手ぶれが収まったときのいずれか早いときにAFスキャンが再開されるので、手ぶれ後、迅速に、主要被写体に対して精度の高い合焦が可能になる。
【0054】
また、AFスキャンが終了した範囲に応じて、振動を検知したときに中断または中止するかしないかを設定してもよい。例えば、AFスキャンが全スキャン領域の(2/3)以上終了していた場合、あるいはコントラストが上昇していた場合、所定量上昇した後に下降していた場合は、焦点検出レンズ群L2の駆動を停止(中断)させても焦点検出レンズ群L2をスキャン開始位置まで戻さない構成にしてもよい。この場合は、停止する直前までに取得したコントラストデータは保存し、AFスキャンを再開するときはこの停止位置でコントラストデータを取得して再開する。以上の構成によれば、非合焦、誤合焦の確率を低く抑えかつ合焦に要する時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明を適用したコンパクトタイプのデジタルカメラの実施形態の主要構成をブロックで示す図である。
【図2】同デジタルカメラの背面図である。
【図3】同デジタルカメラの撮像画面におけるフォーカスエリアと主要被写体との関係を説明する図であって、(A)は主要被写体がフォーカスエリア内に収まっている様子を示す図、(B)は主要被写体がフォーカスエリア外に存在する様子を示す図である。
【図4】同デジタルカメラにおいて、コントラストAF処理におけるAFスキャン処理を説明する図であって、(A)は手ぶれ無しの状態でAFスキャン処理を実行した場合のレンズ位置とコントラストの関係をグラフで示す図、(B)AFスキャン途中で手ぶれが発生した場合のレンズ位置とコントラストの関係をグラフで示す図、(C)は通常AFスキャン処理における焦点調節レンズ群の移動軌跡を示す図、(D)は本発明の実施形態のAFスキャン処理における焦点調節レンズ群の移動軌跡を示す図である。
【図5】同デジタルカメラおける電源ON後のメイン処理をフローチャートで示す図である。
【図6】同メイン処理において実行されるコントラストAF処理をフローチャートで示す図である。
【図7】同コントラストAF処理において実行される再スキャンチェック処理をフローチャートで示す図である。
【図8】同コントラストAF処理において実行されるスキャン再開判定処理をフローチャートで示す図である。
【符号の説明】
【0056】
11 撮像素子(撮像手段)
13 信号処理回路
15 画像信号処理回路
23 コントラストAF演算回路
25 CPU(比較手段、焦点検出装置)
27 AF駆動回路
29 ズーム駆動回路
31 防振駆動回路(手ぶれ補正駆動回路)
L2 焦点調節レンズ群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光学系の焦点調節レンズ群を合焦サーチ開始位置から終了位置方向に移動しながら撮像手段により撮像して得た複数位置の画像のコントラストに基づいて合焦位置を検出する合焦サーチ動作をする焦点調節装置と、
カメラの振動を検知する振動検知手段と、
該信号検知手段によりカメラの振動を検知したときに、前記撮像手段に形成された被写体像が撮像手段に対して移動しないように補正手段を駆動してぶれを補正する手ぶれ補正駆動手段と、
前記合焦サーチ動作中に前記振動検知手段が振動を検知したときまたは振動が一定時間以上継続していることを検知したときは、前記焦点調節装置に前記合焦サーチ動作を中断または中止させる制御手段とを備えたことを特徴とする手ぶれ補正装置を備えたカメラ。
【請求項2】
請求項1記載の手ぶれ補正装置を備えたカメラにおいて、前記制御手段は、前記合焦サーチ動作を中止させたときは、前記焦点調節装置に前記焦点調節レンズ群を合焦サーチ開始位置に戻させる手ぶれ補正装置を備えたカメラ。
【請求項3】
請求項1または2記載の手ぶれ補正装置を備えたカメラにおいて、前記制御手段は、前記合焦サーチ動作を中断または中止させたときは、前記振動が前記中断したときよりも小さくなったことを前記振動検知手段が検知したときに前記合焦サーチ動作を再開または再起動させる手ぶれ補正装置を備えたカメラ。
【請求項4】
請求項1または2記載の手ぶれ補正装置を備えたカメラにおいて、前記制御手段は、前記合焦サーチ動作を中断または中止させたときは、前記振動が収束したことを前記振動検知手段が検知したときに前記合焦サーチ動作を再開または再起動させる手ぶれ補正装置を備えたカメラ。
【請求項5】
請求項1記載または2記載の手ぶれ補正装置を備えたカメラにおいて、前記制御手段は、前記合焦サーチ動作を中断させたときは、所定時間経過したときに前記合焦サーチ動作を再開または再起動させる手ぶれ補正装置を備えたカメラ。
【請求項6】
請求項1または2記載の手ぶれ補正装置を備えたカメラにおいて、前記制御手段は、前記合焦サーチ動作を中断または中止させたときは、前記振動が収束したことまたは中断したときよりも小さい所定値以下になったことを前記振動検知手段が検知したとき、あるいは所定時間が経過したときのいずれか早いときに前記合焦サーチ動作を再開または再起動させる手ぶれ補正装置を備えたカメラ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項記載の手ぶれ補正装置を備えたカメラにおいて、前記制御手段は、前記中断または中止させた後に前記合焦サーチ動作を再開または再起動させたときは、振動にかかわらず前記中断または中止をさせない手ぶれ補正装置を備えたカメラ。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか一項記載の手ぶれ補正装置を備えたカメラにおいて、前記制御手段は、前記中断または中止を所定回以下に制限し、所定回前記中断または中止させた後に前記合焦サーチ動作を再開または再起動させた後は、振動にかかわらず前記中断または中止をさせない手ぶれ補正装置を備えたカメラ。
【請求項9】
請求項3記載の手ぶれ補正装置を備えたカメラにおいて、前記制御手段が合焦サーチ動作を中断または中止させる振動は、前記撮影光学系の現焦点距離に応じた所定値以上の振動である手ぶれ補正装置を備えたカメラ。
【請求項10】
請求項9記載の手ぶれ補正装置を備えたカメラにおいて、前記現焦点距離に応じた所定値以上の振動は、焦点距離が長いほど小さく設定されている手ぶれ補正装置を備えたカメラ。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項記載の手ぶれ補正装置を備えたカメラにおいて、前記制御手段は、前記合焦サーチ動作が所定範囲以上終了していたときは前記振動にかかわらず前記中断または中止をしない手ぶれ補正装置を備えたカメラ。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか一項記載の手ぶれ補正装置を備えたカメラは、前記撮影光学系によって形成された被写体像を撮像する撮像手段を備えたデジタルカメラであって、前記補正手段は前記撮像手段を含み、前記手ぶれ補正駆動手段は、前記撮像手段を光軸と直交する方向に運動させて前記手ぶれを補正する手ぶれ補正装置を備えたカメラ。
【請求項13】
請求項1乃至請求項11のいずれか一項記載の手ぶれ補正装置を備えたカメラにおいて、前記補正手段は前記撮影光学系中に配置された補正光学素子であって、前記手ぶれ補正駆動手段は、前記補正光学素子を光軸と直交する方向に運動させて前記手ぶれを補正する手ぶれ補正装置を備えたカメラ。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一項記載の手ぶれ補正装置を備えたカメラはさらに、前記手ぶれ補正駆動手段をオン/オフ設定する手ぶれスイッチ手段を備え、前記制御手段は、前記焦点調節装置が前記合焦サーチ動作を開始するときは前記手ぶれスイッチ手段による設定にかかわらず前記振動検知手段及び前記手ぶれ補正駆動手段を作動させる手ぶれ補正装置を備えたカメラ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−107665(P2008−107665A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−291897(P2006−291897)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】