説明

手保護具

【課題】ねじ止め作業を行うにあたって、雄ねじ部材の位置及び姿勢の保持をきめ細かく行えるようにしつつ使用者の手指の保護を図る。
【解決手段】使用者の手の少なくとも上方を被覆する保護壁2を有し、この保護壁2に、雄ねじ部材B、又は雄ねじ部材Bを駆動する工具たる電動ドライバDを挿通可能な挿通孔3aを設けてなる手保護具1を用意する。保護壁2が、外部から内部を視認可能な透光性を有する。使用者の手に固定するためのバンドを取り付けるためのバンド取付部31を保護壁2に設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ドライバ等の工具を使用する際に使用者の手を保護する手保護具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種作業中において手指を保護するための保護具が種々提案されている(例えば、特許文献1を参照)。ここで、前記特許文献1記載のもののような保護具は、内部に指保護空間を有し、この指保護空間内に使用者の指を挿入させるようにしている。そして、この保護具を装着した際に、使用者の指は全周にわたって保護具に被覆されている。
【0003】
しかして、例えば電動ドライバを利用してねじ止め作業を行う場合、作業者は雄ねじ部材を雌ねじ孔の直上となるように保持するが、この作業の際に、電動ドライバの位置がずれて作業者の手指に当たらないよう注意する必要がある。そこで、作業者の手指を電動ドライバから保護する保護具を装着することにより前述した注意を払う必要性を少なくし、作業をより迅速に行うようにすることが考えられる。ところが、前記特許文献1記載の保護具を使用した場合、手指が全周にわたって保護具に被覆されているので、雄ねじ部材を素手で扱うことができず、雄ねじ部材の位置及び姿勢の保持をきめ細かく行うことが難しくなるという別の不具合が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−291555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上の点に着目し、このような課題を解決すること、すなわち、雄ねじ部材の位置及び姿勢の保持をきめ細かく行えるようにしつつ使用者の手指の保護を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る手保護具は、使用者の手の少なくとも上方を被覆する保護壁を有し、この保護壁に、雄ねじ部材、又は雄ねじ部材を駆動する工具を挿通可能な挿通孔を設けてなることを特徴とする。
【0007】
このようなものであれば、使用者の手を前記保護壁の下方に位置付けた状態で雄ねじ部材を把持してその位置及び姿勢の調整を行うとともに、前記保護壁の挿通孔に雄ねじ部材又は雄ねじ部材を駆動する電動ドライバ等の工具を挿通させてねじ止め作業を行うようにできるので、ねじ止め作業の際に工具の位置がずれて作業者の手指に当たることを注意する必要性を低くし、作業効率の向上を図ることができる。
【0008】
特に、前記保護壁が、外部から内部を視認可能な透光性を有するものであれば、このような手保護具を装着したままで雄ねじ部材の位置及び姿勢を視認しつつその調整を行うことができる。
【0009】
また、使用者の手に固定するためのバンドを取り付けるためのバンド取付部を前記保護壁に設けてなるものであれば、このバンド取付部にバンドを取り付けてこのバンドにより手保護具を使用者の手に固定することにより、手保護具が外れて使用者の手指を保護できなくなる不具合の発生を防止できる。
【0010】
さらに、前記バンド取付部が前記保護壁の外面から突出してなる1対の突起であるとともに、これらの突起にリング状をなす前記バンドを掛けることが可能なものであれば、前記1対の突起の一方にバンドを引っ掛け、バンドを手保護具に巻き回して他方の突起にバンドを引っ掛ける簡単な操作により、この手保護具の使用者の手への固定を行うことができる。
【0011】
また、前記保護壁の少なくとも一部に、前記バンド取付部と奥行き方向位置が略一致させて凹部を設けているものであれば、この凹部内にバンドを位置付けることによりバンドのずれ止めを行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の手保護具の構成によれば、使用者の手を保護壁の下方に位置付けた状態で雄ねじ部材を把持してその位置及び姿勢の調整を行い、前記保護壁の挿通孔に雄ねじ部材又は雄ねじ部材を駆動する電動ドライバ等の工具を挿通させてねじ止め作業を行うようにできるので、工具の位置がずれて作業者の手指に当たることに注意する必要性を低くし、作業効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る手保護具を示す全体斜視図。
【図2】同実施形態に係る手保護具を示す平面図。
【図3】同実施形態に係る手保護具を示す側面図。
【図4】同実施形態に係る手保護具の使用態様を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態に係る手保護具1は、図1〜図3に示すように、使用者の手の少なくとも上方を被覆する保護壁2を具備する。
【0015】
この保護壁2は、外部から内部を視認可能な透光性を有し、例えば合成樹脂により形成している無色透明のものである。また、この保護壁2は、使用者の手の上方に位置する上壁部3と、使用者の手の両側方にそれぞれ位置する左右の側壁部4、4と、使用者の指先の前方に位置する前壁部5とを備えている。そして本実施形態では、上壁部3、左右の側壁部4、4、及び前壁部5により区画される手挿入空間6の内部に使用者の手を挿入可能にしている。
【0016】
さらに詳述すると、前記図1及び図2に示すように、前記上壁部3は略矩形板状をなし、その平面視中央部に、この手保護具1を使用者の手に固定するための輪ゴム等のリング状のバンドBBを引っ掛けることが可能なバンド取付部たるバンド取付突起31、31を設けている。このバンド取付突起31、31は、本実施形態では左右1対に設けてなり、各バンド取付突起31、31が、前記上壁部3の上面から上方に起立する起立部311と、この起立部311の起立端から相寄る方向に突出する爪部312とを有する。しかして本実施形態では、前記上壁部3の前部の幅方向中央より右寄りの部位に、雄ねじ部材B又は雄ねじ部材Bを駆動する工具である電動ドライバD(のビット)を挿通可能な挿通孔3aを設けてなる。すなわち、図4に示すように、手挿入空間6の内部に使用者の手を挿入し、かつ使用者が雄ねじ部材Bを把持した状態で、使用者が把持した雄ねじ部材B、又はこの雄ねじ部材Bのねじ頭に予め係合させた電動ドライバDがこの挿通孔3aを通過するようにしている。ここで、前記挿通孔3aは、本実施形態では前記バンド取付突起31、31よりも前方に設けている。そして、この上壁部3の両側縁の下方に、前記左右の壁部4、4を配している。
【0017】
前記左右の側壁部4、4は、前記図1及び図3に示すように、いずれも略矩形板状をなし、前記上壁部3と後端縁を一致させている。また、これら左右の側壁部4、4には、奥行き方向中央近傍、すなわち前記バンド取付突起31、31と略一致する奥行き方向位置に前記バンドBBを収納可能な凹部4aをそれぞれ設けている。この凹部4aは、その外側面を側壁部4の他の部位の外側面よりも内方に陥没させて設けている。また、この凹部4aは、側壁部4の高さ寸法略全域にわたってそれぞれ設けている。さらに本実施形態では、この側壁部4と前記上壁部3との境界に面取りを施している。そして、これら両側壁部4の前端縁間を、前壁部5を介して接続している。
【0018】
前記前壁部5は、前記図1に示すように、略矩形平板状をなし、前記両側壁部4と下端縁を一致させている。また、本実施形態では、この前壁部5の上端縁と前記上壁部3の前端縁との間を、側面視4分の1円弧状の部分円筒面状を有する曲面部51を介して接続している。また、この前壁部5と前記両側壁部4、4との境界、及び前記曲面部51と前記両側壁部4との境界にも、それぞれ面取りを施している。
【0019】
ここで、本実施形態に係る手保護具1の使用方法について、前記図4を参照しつつ以下に説明する。
【0020】
まず、前記保護壁2内部に作業者の手を挿入する。次いで、保護壁2の上方から雄ねじ部材Bを挿通孔3aに挿通させてこの雄ねじ部材Bを把持する。それから、輪ゴムの一端部を前記1対のバンド取付突起31、31のうち一方に引っ掛け、輪ゴムを使用者の手に巻き回した後、輪ゴムの他端部を他方の前記バンド取付突起31、31に引っ掛けてこの手保護具1を作業者の手に固定する。そして、雄ねじ部材Bの頭部が前記挿通孔3aより上方に突出している場合は、雄ねじ部材Bの位置及び姿勢を調整した後、電動ドライバDによりねじ止めを行う。一方、雄ねじ部材Bの頭部が前記挿通孔3aより上方に突出していない場合は、雄ねじ部材Bの位置及び姿勢を調整した後、電動ドライバDのビットを先記挿通孔3aに挿通させて雄ねじ部材Bの頭部に係合させ、その後ねじ止めを行う。
【0021】
以上に述べたように、本実施形態に係る手保護具1の構成によれば、使用者の手の少なくとも上方を被覆する保護壁2を有し、この保護壁2に、雄ねじ部材B、又は雄ねじ部材Bを駆動する工具を挿通可能な挿通孔3aを設けてなるので、この保護壁2により使用者の手の上方を被覆した状態で雄ねじ部材Bを把持してその位置及び姿勢の調整を行いつつ、前記保護壁2の上壁部3の挿通孔3aに雄ねじ部材B又は電動ドライバDを挿通させてねじ止め作業を行うことができる。従って、ねじ止め作業の際に電動ドライバDの位置がずれて作業者の手指に当たることに注意を払う必要性を低くし、作業効率の向上を図ることができる。
【0022】
また、前記保護壁2が、外部から内部を視認可能な透光性を有するものであれば、このような手保護具1を装着したままで雄ねじ部材Bの位置及び姿勢を視認しつつその調整を行うことができる。
【0023】
さらに、前記保護壁2の上壁部3に使用者の手に固定するためのバンドBBを取り付けるためのバンド取付突起31、31を設けているので、このバンド取付突起31、31にバンドBBを取り付けてこのバンドBBにより手保護具1を使用者の手に固定することにより、手保護具1が外れて使用者の手指を保護できなくなる不具合の発生を防止できる。
【0024】
加えて、前記バンドBBが輪ゴム等のリング状のものであって、前記上壁部3の上面から突出してなる2個のバンド取付突起31、31によりバンドBBを寄りつけるようにしているので、一方のバンド取付突起31、31にバンドBBを引っ掛け、バンドBBを手保護具1に巻き回して他方のバンド取付突起31、31にバンドBBを引っ掛ける簡単な操作により、この手保護具1の使用者の手への固定を行うことができる。
【0025】
そして、前記両側壁部4に、前記バンド取付突起31、31と奥行き方向位置を略一致させて凹部4aを設けているので、この凹部4a内にバンドBBを位置付けることによりバンドBBのずれ止めを行うことができる。
【0026】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限られない。
【0027】
例えば、上述した実施形態における保護壁は無色透明であるが、着色透明のものでもよく、また、半透明のものであってもよい。さらに、雄ねじ部材の把持態様を視認可能にすべく保護壁の一部のみに透光性を有する窓部を設け、他の部分は透光性を有しない態様を採用してもよく、また、保護壁の全体を透光性を有しない材料により形成しつつその一部に雄ねじ部材の把持態様を視認可能にすべく切り欠きを設ける態様を採用してもよい。
【0028】
また、上述した実施形態では、バンド取付部は保護壁の上面から上方に突出させて設けているが、保護壁の下面から下方に突出させて設けてもよく、また、雄ねじ部材を挿通させる挿通孔と別の箇所に保護壁を貫通して設けたバンド取付孔を利用してバンド取付部を設けてもよい。また、輪ゴム等の全体がリング状をなすバンドに替えて、帯状のバンド本体及びこのバンド本体の長手方向両端に設けてなりバンド取付部に係合可能な係合爪又は係合リングを有するバンドを採用してもよく、前記バンド取付孔に帯状又は紐状のバンドを挿通させ、このバンドの両端を結んで使用者の手に取り付ける態様を採用してもよい。
【0029】
さらに、上述した実施形態では、バンドの位置決めを行うべく保護壁の両側壁部に凹部を設けてこの凹部内にバンドを終了するようにしているが、例えば、バンドを装着した状態においてバンドを挟んでその幅方向両側となるべき位置に対をなすバンド位置決め突起を設け、対をなすバンド位置決め突起間にバンドを配置するようにしても、バンドの位置決めを行うことはできる。
【0030】
加えて、バンドを省略し、使用者の手を置くことが可能な底壁を設けるようにしてもよい。この場合、雄ねじ部材を通過可能にすべく底壁の前記挿通孔の直下の部位に下挿通孔を設けてもよく、また、底壁の前記挿通孔の直下の部位を除く部位のみに底壁を設けるようにしてもよい。
【0031】
そして、上述した実施形態のように保護壁が上壁部、両側壁部、及び前壁部を備える必要はなく、例えば前壁部を省略する態様を採用してもよい。また、半円筒状の板状の部材に雄ねじ部材を挿通可能な挿通孔を形成してなる保護壁を採用し、この保護壁により使用者の手の上方及び両側方を保護する態様を採用してもよい。
【0032】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変形してよい。
【符号の説明】
【0033】
1…手保護具
2…保護壁
31…バンド取付突起(バンド取付部)
3a…挿通孔
4a…凹部
B…雄ねじ部材
D…電動ドライバ(工具)
BB…バンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の手の少なくとも上方を被覆する保護壁を有し、この保護壁に、雄ねじ部材、又は雄ねじ部材を駆動する工具を挿通可能な挿通孔を設けてなることを特徴とする手保護具。
【請求項2】
前記保護壁が、外部から内部を視認可能な透光性を有する請求項1記載の手保護具。
【請求項3】
使用者の手に固定するためのバンドを取り付けるためのバンド取付部を前記保護壁に設けてなる請求項1又は2記載の手保護具。
【請求項4】
前記バンド取付部が前記保護壁の外面から突出してなる1対の突起であるとともに、これらの突起にリング状をなす前記バンドを掛けることが可能な請求項3記載の手保護具。
【請求項5】
前記保護壁の少なくとも一部に、前記バンド取付部と奥行き方向位置が略一致させて凹部を設けている請求項3又は4記載の手保護具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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