説明

手動利器のハンドル及び剃刀

【解決手段】把持部3で露出する第一指当部11を硬質樹脂により成形するとともに、把持部3で露出する第二指当部12を軟質樹脂により成形した。一対の剃刀のハンドルを互いに結合する際に、相対向する各把持部3を互いに重ね、一方の把持部3の第一指当部11に形成された第一係合部17と、他方の把持部3の第一指当部11に形成された第二係合部22とを互いに着脱可能に係合して一対の把持部3を互いに結合する。その際に、一方の把持部3に設けられた剃刀ヘッド4において剃刀ヘッド本体25に被せられたキャップ26が他方の把持部3の頭部6の背側に当てがわれるとともに、各把持部3の尻部7が互いに並んで揃う。
【効果】ハンドルとしての強度を維持する素材と把持感触を良くする素材とを互いに組み合わせるとともに、剃刀ヘッド4と尻部7との間の剃刀の全長が短くなってその収容時に嵩張りにくくなり、剃刀の使い勝手を良くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は手動利器例えば剃刀のハンドルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1にかかるT型カミソリでは、ハンドルの把持部が硬質プラスチックにより成形され、一対のT型カミソリにおいて、一方のハンドルの背部に他方のハンドルの腹部を重ねた際に、一方のカミソリヘッド上に他方のカミソリヘッドが重なるとともに、各ハンドルの尻部が段差状に並ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭53−32789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1にかかるT型カミソリについては、下記*の問題がある。
* ハンドルの把持部が硬質プラスチックのみにより成形されているので、ハンドルとしての強度は維持し得るが、把持感触が悪くなって使い勝手が悪くなる問題があった。
【0005】
* 各ハンドルを重ねた際に、各カミソリヘッドが段差状に並ぶので、各カミソリヘッドのうち最上のものと各ハンドルの尻部のうち最下のものとの間の寸法が大きくなって、各T型カミソリを互いに重ねて収容した時に嵩張って使い勝手が悪くなる問題があった。
【0006】
* 各ハンドルを重ねた際に、各ハンドルの尻部が段差状に並ぶので、各ハンドルの尻部のうち最下のものと各カミソリヘッドのうち最上のものとの間の寸法が大きくなって、各T型カミソリを互いに重ねて収容した時に嵩張って使い勝手が悪くなる問題があった。
【0007】
この発明は、上記問題を解消して剃刀などの手動利器の使い勝手を良くすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
後記実施形態の図面(図1〜6)の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかる手動利器1のハンドル2は、下記のように構成されている。
硬度の異なる複数の素材により構成した把持部3を有し、この把持部3で露出させた複数の表部11,12のうち、特定表部11に形成されて露出する第一係合部17と、その特定表部11または特定表部以外の表部12に形成されて露出する第二係合部22とを一つの把持部3に有し、複数の把持部3を互いに重ねた際に、その各把持部3のうち、特定把持部3の第一係合部17とその特定把持部3以外の把持部3の第二係合部22とが互いに着脱可能に係合されて、複数の把持部3が互いに結合される。
【0009】
請求項1の発明では、特定把持部3の第一係合部17とその特定把持部3以外の把持部3の第二係合部22とを互いに着脱可能に係合して複数の把持部3を互いに結合する手動利器1のハンドル2において、把持部3で露出する複数の表部11,12を硬度の異なる複数の素材により構成したので、ハンドル2としての強度を維持する素材と把持感触を良くする素材とを互いに組み合わせて手動利器1の使い勝手を良くすることができる。
【0010】
請求項1の発明を前提とする請求項2の発明において、前記特定表部11はその特定表部11以外の表部12よりも硬度の大きい素材により構成されている。請求項2の発明では、硬度の大きい素材により構成された特定表部11により、ハンドル2としての強度を維持することができる。
【0011】
請求項1または請求項2の発明を前提とする請求項3の発明において、前記特定把持部3とその特定把持部3以外の把持部3とを互いに重ねた際に相対向する重合部のうち、特定把持部3の重合部に形成した第一係合部17と、特定把持部3以外の把持部3の重合部に形成した第二係合部22とを相対向させて互いに着脱可能に係合する。請求項3の発明では、第一係合部17を有する重合部と第二係合部22を有する重合部とを相対向して互いに重ねたので、第一係合部17と第二係合部22とを互いに着脱可能に係合させ易い。
【0012】
請求項3の発明を前提とする請求項4の発明において、前記把持部3にはその長手方向Xの両側のうち一方の側に頭部6を設けるとともに他方の側に尻部7を設け、刃体5を組み込んだ剃刀ヘッド4をこの把持部3の頭部6に設け、この把持部3は、その刃体5の刃先5aが向く腹側である腹部8と、その腹側に対する反対側の背側である背部7と、その刃先5aの延設方向の両側である側部10とを頭部6と尻部7との間に有し、前記特定表部11の重合部をこの把持部3の腹部8に形成するとともに、前記特定表部11以外の表部12の重合部をこの把持部3の背部9に形成した。請求項4の発明では、剃刀1を互いに重合させることができる。
【0013】
請求項5の発明にかかる剃刀は、下記のように構成されている。
ハンドル2の把持部3にはその長手方向Xの両側のうち一方の側に頭部6を設けるとともに他方の側に尻部7を設け、刃体5を組み込んだ剃刀ヘッド4をこの把持部3の頭部6に設け、この把持部3は、その刃体5の刃先5aが向く腹側である腹部8と、その腹側に対する反対側の背側である背部9と、その刃先5aの延設方向の両側である側部10とを頭部6と尻部7との間に有している。一対のハンドル2の把持部3のうち一方の把持部3の腹部8と他方の把持部3の背部9とを互いに重ねた際に相対向する腹部8の重合部と背部9の重合部とを互いに着脱可能に係合し、一方の把持部3に設けられた剃刀ヘッド4において剃刀ヘッド本体25に被せられたキャップ26が他方の把持部3の頭部6の背側に当てがわれる。
【0014】
請求項5の発明では、各剃刀1のハンドル2を互いに重ねた際に剃刀ヘッド4と尻部7との間で長手方向Xの全長が従来と比較して短くなってその収容時に嵩張りにくくなり、剃刀1の使い勝手を良くすることができる。
【0015】
請求項6の発明にかかる剃刀1においては、複数のハンドル2の把持部3を互いに重ねて相対向する各把持部3の重合部を互いに着脱可能に係合した際に、各把持部3の尻部7が互いに並んで揃う。
【0016】
請求項6の発明では、各ハンドル2を互いに重ねた際に剃刀1の全長が従来と比較して短くなってその収容時に嵩張りにくくなり、剃刀1の使い勝手を良くすることができる。
次に、請求項以外の技術的思想について実施形態の図面の符号を援用して説明する。
【0017】
請求項1または請求項2または請求項3の発明を前提とする第7の発明において、前記第一係合部17と第二係合部22とはいずれも特定表部11に形成されている。第7の発明では、第一係合部17と第二係合部22とを同じ素材の特定表部11に形成したので、第一係合部17及び第二係合部22を構成し易い。
【0018】
請求項1または請求項2または請求項3の発明または第7の発明を前提とする第8の発明において、前記特定表部11とその特定表部11以外の表部12とは互いに接合されている。例えば、この特定表部11とその特定表部11以外の表部12とのうち一方は他方に被覆されている。第8の発明では、一つの把持部3で特定表部11とその特定表部11以外の表部12とを一体化して把持感触を良くすることができる。
【0019】
請求項3の発明を前提とする第9の発明において、前記特定把持部3の重合部には第一係合部17を有する特定表部11を長手方向Xに沿って延設し、前記特定把持部3以外の把持部3の重合部には特定表部11以外の表部12を長手方向Xに沿って延設して、特定表部11に形成した第二係合部22を特定表部11以外の表部12から露出させた。第9の発明では、同じ素材により構成された特定表部11に第一係合部17と第二係合部22とを形成したので、第一係合部17及び第二係合部22を構成し易いとともに、特定表部11以外の表部12に影響されることなく第一係合部17と第二係合部22とを互いに着脱可能に係合させ易い。
【0020】
第9の発明を前提とする第10の発明において、前記特定把持部3の重合部には複数の仕切部15を長手方向Xに沿って並設してその各仕切部15のうち少なくとも一つの仕切部15に前記第一係合部17を形成し、前記特定把持部3以外の把持部3の重合部には複数の仕切部21を長手方向Xに沿って並設してその各仕切部21のうち少なくとも一つの仕切部21に隣接して前記第二係合部22を露出させた。第10の発明では、各仕切部15,21が把持部3の滑り止め機能を果たすとともに、第一係合部17と第二係合部22とを把持部3に形成し易い。
【0021】
第9の発明を前提とする第11の発明において、前記特定表部11の第二係合部22は、その特定表部11以外の表部12の内側で露出している。例えば、表部12の最外表面より外側へ突出しないようにその最外表面上またはその最外表面の内側で露出している。第11の発明では、第二係合部22を把持部3に形成し易い。また、把持部3を把持する際に第二係合部22に触れることがないので、把持部3を把持し易い。
【0022】
第9の発明を前提とする第12の発明において、前記特定表部11の第二係合部22は、その特定表部11以外の表部12に形成した周壁部19,21に囲まれている。第12の発明では、第二係合部22を把持部3に形成し易い。また、把持部3を把持した際の感触を良くすることができる。
【0023】
第10の発明を前提とする第13の発明において、前記特定把持部3とその特定把持部3以外の把持部3とを互いに重ねた際に、前記特定把持部3の重合部に形成した複数の仕切部15を、前記特定把持部3以外の把持部3の重合部に形成した複数の仕切部21間に形成した凹部23に入れた。第13の発明では、特定把持部3の重合部と特定把持部3以外の把持部3の重合部とを互いに重合させ易い。
【0024】
請求項4の発明を前提とする第14の発明において、前記把持部3の腹部8の第一係合部17と、前記把持部3の背部9の第二係合部22とは、それぞれ、把持部3の頭部6と尻部7との間の中央位置よりも尻部7側に形成されている。第14の発明では、互いに重合された把持部3を位置決めする際、剃刀ヘッド4から離れた尻部7側に形成された第一係合部17と第二係合部22とを互いに係合させ易い。
【0025】
請求項4の発明または第14の発明を前提とする第15の発明において、前記特定把持部3とその特定把持部3以外の把持部3とを互いに重ねた際に、各把持部3の尻部7が互いに並んで揃う。第15の発明では、各剃刀1のハンドル2を互いに重ねた際に剃刀ヘッド4と尻部7との間で長手方向Xの全長が従来と比較して短くなってその収容時に嵩張りにくくなり、剃刀1の使い勝手を良くすることができる。
【0026】
第15の発明を前提とする第16の発明において、前記剃刀ヘッド4は剃刀ヘッド本体25とキャップ26とからなり、前記特定把持部3とその特定把持部3以外の把持部3とを互いに重ねた際に、特定把持部3側の剃刀ヘッド4のキャップ26が特定把持部3以外の把持部3の頭部6の背側に当てがわれる。第16の発明では、各剃刀1のハンドル2を互いに重ねた際に剃刀ヘッド4と尻部7との間で長手方向Xの全長が従来と比較して短くなってその収容時に嵩張りにくくなり、剃刀1の使い勝手を良くすることができる。
【0027】
第16の発明を前提とする第17の発明において、前記剃刀ヘッド本体25は把持部3の頭部6に対し傾動可能に支持され、キャップ26は剃刀ヘッド本体25に被せられた際に剃刀ヘッド本体25の傾動を阻止するストッパ33を有している。第17の発明では、剃刀ヘッド4を把持部3の頭部6の背側に対し安定的に当てがうことができる。
【0028】
請求項5の発明を前提とする第18の発明において、前記各把持部3の尻部7は腹部8と背部9とを結ぶ厚み方向Zへ互いに並んで揃う。第18の発明では、各剃刀1のハンドル2を互いに重ねた際に剃刀ヘッド4と尻部7との間で長手方向Xの全長が従来と比較して短くなってその収容時に嵩張りにくくなり、剃刀1の使い勝手を良くすることができる。
【0029】
請求項5の発明または第16の発明または第18の発明を前提とする第19の発明において、前記キャップ26は頭部6の背側に当てがわれた際にその頭部6の背側に係止される係止部34を有している。第19の発明では、キャップ26の係止部34を利用して、剃刀1の頭部6側の動きを規制することができる。
【0030】
第19の発明を前提とする第20の発明において、前記係止部34は貫通孔34bを有している。第20の発明では、係止部34の貫通孔34bがキャップ26の空気通路にもなる。例えば、剃刀ヘッド4に取着されたシェービング補助材がキャップ26により覆われている場合、この貫通孔34bが空気の通り道となってシェービング補助材の乾燥を早め、シェービング補助材の性能を維持することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、剃刀1などの手動利器の使い勝手を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】(a)は本実施形態にかかるキャップ付き剃刀を背側から見た斜視図であり、(b)は同じくキャップ付き剃刀を腹側から見た斜視図である。
【図2】(a)は上記キャップ付き剃刀のハンドルを背側から見た背面図であり、(b)は上記キャップ付き剃刀のハンドルを腹側から見た正面図である。
【図3】(a)は上記キャップ付き剃刀のハンドルを側方から見た側面図であり、(b)は上記キャップ付き剃刀のハンドルを側方から見た断面図であり、(c)はキャップを取り外した剃刀のハンドルを側方から見た断面図である。
【図4】(a)は図3(b)の部分拡大断面図であり、(b)は図3(c)の部分拡大断面図である。
【図5】(a)は一対のキャップ付き剃刀を互いに重ねた状態を示す側面図であり、(b)はこの状態を側方から見た断面図である。
【図6】(a)は図5(b)の部分拡大断面図であり、(b)は図5(b)の部分拡大断面図である。
【図7】(a)は別例にかかる剃刀ヘッド本体を示す断面図であり、(b)はこの剃刀ヘッド本体に組み込んだスペーサの上側を示す斜視図であり、(c)はこのスペーサの下側を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態にかかる手動利器である剃刀のハンドルについて図面を参照して説明する。
図1〜3に示す剃刀1は、把持部3を有するハンドル2と、図4に示すように刃体5を組み込んだ剃刀ヘッド4とを備えている。このハンドル2において、把持部3にはその長手方向Xの両側のうち一方の側に頭部6が設けられているとともに他方の側に尻部7が設けられている。前記剃刀ヘッド4はこの把持部3の頭部6側でハンドル2に対し支持されている。この把持部3は、その刃体5の刃先5aが向く腹側である腹部8と、その腹側に対する反対側の背側である背部9と、その刃先5aの延設方向の両側である側部10とをその頭部6と尻部7との間に有している。
【0034】
前記ハンドル2の把持部3は、ABS樹脂等の硬質樹脂からなる第一指当部11(特定表部)を頭部6と尻部7と腹部8と側部10とにわたり一体に有しているとともに、この第一指当部11と同系色のエラストマ樹脂等の軟質樹脂からなる第二指当部12(特定表部以外の表部)を頭部6と尻部7との間で背部9と側部10とにわたり一体に有し、この腹側の第一指当部11と背側の第二指当部12とが互いに一体成形されて接合されている。
【0035】
前記第一指当部11は、頭部6と尻部7との間で幅方向Yの両側の側部10にある側壁部13と、頭部6と尻部7との間でこの両側壁部13間に形成された底壁部14と、この両側壁部13及び底壁部14の内側で互いに間隔をあけて把持部3の長手方向Xに沿って並設された複数の仕切部15とを有している。この各仕切部15と両側壁部13と底壁部14との間には凹部16が形成されて腹側へ開放されている。この各仕切部15のうち、頭部6と尻部7との中間位置にある一つの仕切部15と、尻部7に面する一つの仕切部15とには、それぞれ、第一係合部17が露出して形成されている。この第一係合部17は、両側壁部13側に延びる部分17aと凹部16側(把持部3の長手方向X側)へ突出する部分17bとにより十字状をなす。この各仕切部15と両第一係合部17とは凹部16から外側へ若干突出している。この両側壁部13の外側には頭部6と尻部7との間で複数の突部18が互いに間隔をあけて把持部3の長手方向Xに沿って並設されている。この各仕切部15と両第一係合部17と各突部18とは滑り止め機能も果たす。
【0036】
前記第二指当部12は、頭部6と尻部7との間で幅方向Yの両側の側部10にある側壁部19と、頭部6と尻部7との間でこの両側壁部19間に形成された底壁部20と、この両側壁部19及び底壁部20の内側で互いに間隔をあけて把持部3の長手方向Xに沿って並設された複数の仕切部21とを有している。この各仕切部21のうち、頭部6と尻部7との中間位置にある両仕切部21間と、尻部7と仕切部21との間には、それぞれ、第二係合部22が露出して形成されている。この第二係合部22は、腹側へ突設された前記第一係合部17に対し厚み方向Zで反対側になる背側へ前記第一指当部11の底壁部14から一体に突設されて把持部3の長手方向Xで間隔をあけて相対向する一対の仕切部22aと、この両仕切部22aの相対向部で底壁部20側へ延びるように形成された溝部22bとを有している。この各仕切部21及び各仕切部22aと両側壁部19と底壁部20とからなる周壁部間には凹部23が形成されて背側へ開放されている。この両側壁部19の外側には頭部6と尻部7との間で滑り止め機能も果たす複数の突部24が互いに間隔をあけて把持部3の長手方向Xに沿って並設されている。この第二指当部12の底壁部20は前記第一指当部11の底壁部14の背側に対し一体成形時に接合され、この第二指当部12の両側壁部19はその底壁部20から前記第一指当部11の両側壁部13側へ延びてその両側壁部13の外側に被覆され、この両側壁部19の各突部24とこの両側壁部13の各突部18とが腹部8と背部9とを結ぶ厚み方向Zで互いに並んでいる。
【0037】
前記剃刀ヘッド4は、刃体5が組み込まれた剃刀ヘッド本体25と、その剃刀ヘッド本体25に被せられるキャップ26とからなる。前記ハンドル2の頭部6に形成された両支持腕部27は、剃刀ヘッド本体25に形成された回動支点部28に支持されている。このハンドル2の頭部6には両壁部29間で形成された凹所30内で片持梁状の弾性板部31が形成され、剃刀ヘッド本体25に形成された押圧部32にこの弾性板部31の自由端部が当接し得る。この剃刀ヘッド本体25は、ハンドル2の頭部6に対し着脱不能に支持され、弾性板部31の弾性力によりまたはその弾性力に抗して、両支持腕部27を中心に傾動して首振りし得る。キャップ26を剃刀ヘッド本体25に被せると、キャップ26の裏壁部33(ストッパ)が弾性板部31の撓みを抑制して剃刀ヘッド本体25の傾動を阻止する。キャップ26の下側には区画部34aを介して一対の貫通孔34bを有する係止部34が形成されている。
【0038】
図5(a)に示すように一対の剃刀1において一方の把持部3(特定把持部)の腹部8と他方の把持部3(特定把持部以外の把持部)の背部9とを互いに重ねると、図5(b)及び図6(a)に示すように、それらの重合部で第一係合部17が第二係合部22に係入されるとともに、各仕切部15が各仕切部21間の凹部23に挿入される。また、図5(b)及び図6(b)に示すように、キャップ26が頭部6の背側に当てがわれ、キャップ26の係止部34の区画部34aが頭部6の凹所30に係止される。従って、各把持部3の尻部7が腹部8と背部9とを結ぶ厚み方向Zへ互いに並んで揃うとともに、各剃刀ヘッド4もその厚み方向Zへ互いに並んで揃い、またその各尻部7及び各剃刀ヘッド4が長手方向Xで互いに位置ずれせずに揃う。各剃刀1のハンドル2を互いに重ねた際に剃刀ヘッド4と尻部7との間の長手方向Xの全長は、それぞれの剃刀1における長手方向Xの全長とほぼ同じになっている。なお、図5(a)の想像線で示すように3本の剃刀1を互いに重ねたり、図示しないが、4本以上の剃刀1を互いに重ねたりしてもよい。
【0039】
なお、剃刀1において、剃刀ヘッド4と尻部7との間で長手方向Xの全長は約115mm、キャップ26を含む幅方向Yの全幅は約44mmにそれぞれ設定されている。
本実施形態は下記の効果を有する。
【0040】
(1) 把持部3で露出する第一指当部11と第二指当部12とのうち、第一指当部11を硬質樹脂により成形するとともに第二指当部12を軟質樹脂により成形したので、ハンドル2としての強度を維持する素材と把持感触を良くする素材とを組み合わせて剃刀1の使い勝手を良くすることができる。
【0041】
(2) 一対の剃刀1のハンドル2を互いに結合する際に、相対向する各把持部3の重合部を互いに重ね、一方の把持部3の第一指当部11に形成された第一係合部17と、他方の把持部3の第一指当部11に形成された第二係合部22とを互いに着脱可能に係合して一対の把持部3を互いに結合することができ、剃刀1の使い勝手を良くすることができる。
【0042】
(3) 一対のハンドル2の把持部3を互いに重ねて相対向する各把持部3の重合部を互いに着脱可能に係合した際に、一方の把持部3に設けられた剃刀ヘッド4において剃刀ヘッド本体25に被せられたキャップ26が他方の把持部3の頭部6の背側に当てがわれるとともに、各把持部3の尻部7が互いに並んで揃うので、各剃刀1のハンドル2を互いに重ねた際に剃刀ヘッド4と尻部7との間で長手方向Xの全長が従来と比較して短くなってその収容時に嵩張りにくくなり、複数の剃刀1をコンパクトに整列して保管したり運搬したりすることができる。従って、剃刀1の使い勝手を良くすることができる。
【0043】
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
・ 前述した実施形態では、第一係合部17と第二係合部22とを共に第一指当部11に形成したが、それらを共に第二指当部12に形成したり、一方を第一指当部11に形成するとともに他方を第二指当部12に形成したりしてもよい。
【0044】
・ 硬質樹脂部の外周全体を軟質樹脂部により囲んで被覆し、その軟質樹脂部に第一指当部(特定表部)と第二指当部(特定表部以外の表部)を設けてもよい。
・ 図7に示す剃刀ヘッド本体25では、刃台35と天板36との間に下刃体37とスペーサ38と上刃体39とが順次積層されて挟持され、天板36に形成された複数の支軸36aが上刃体39とスペーサ38と下刃体37を通して刃台35に挿着されている。スペーサ38においては、支軸36aが通る各支持孔40の外周で上側に各突帯部41が形成されているとともに、その各突帯部41に隣接して各突起部42が形成されている。上刃体39はこの各突帯部41及び各突起部42に載置されてスペーサ38の上側との間で隙間43を生じる。下刃体37はスペーサ38の下側に当てがわれる。ちなみに、下刃体37及び上刃体39の厚みについては、0.05〜0.25mmに設定することが好ましく、例えば0.076mmに設定している。また、従来は例えば0.5mmの厚みを有する板材に対しスペーサの外形及び孔を打ち抜いていたが、材料の節約のため、より薄い例えば0.4mmの厚みを有する板材に対しスペーサ38をプレス機で打ち抜き、さらに例えば0.1mmの高さを有する前記各突帯部41及び各突起部42をプレス機による打ち抜き時に同時に成形することによって、従来のように例えば0.5mmの厚みを有するスペーサと同様な機能を持たせている。
【0045】
・ 剃刀ヘッド4をハンドル2に対し着脱不能に支持するばかりでなく、剃刀ヘッド4を交換できるように着脱可能に支持してもよい。また、剃刀ヘッド本体25をハンドル2に対し首振り可能に支持するばかりでなく首振り不能に支持してもよい。
【0046】
・ 前記第一指当部11はABS樹脂等の硬質樹脂からなり、前記第二指当部12はエラストマ樹脂等の軟質樹脂からなるが、これらの樹脂以外の硬質材や軟質材を用いてもよい。また、硬質樹脂と軟質樹脂とを同系色でなく異系色にしてもよい。
【0047】
・ 前記第一係合部17と第二係合部22とは、把持部3の頭部6と尻部7との間の中間位置と尻部7との二箇所に形成しているが、把持部3の頭部6と尻部7との間で一箇所にまたは三箇所以上に形成してもよい。
【0048】
・ 前記第一係合部17は把持部3の腹部8に形成され、第二係合部22は把持部3の背部9に形成されているが、それらを腹部8や背部9以外に例えば把持部3の側部10などに形成してもよい。
【0049】
・ 前記第一係合部や第二係合部としては、凹凸部による係合以外に、面ファスナーや磁石を採用してもよい。
・ 本発明を剃刀1以外に彫刻刀やカッターや鋏や爪切りや包丁や医療用器具(メス等)などの各種手動利器のハンドルに採用してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…剃刀(手動利器)、2…ハンドル、3…把持部、4…剃刀ヘッド、5…刃体、5a…刃先、6…頭部、7…尻部、8…腹部、9…背部、10…側部、11…第一指当部(特定表部)、12…第二指当部(特定表部以外の表部)、17…第一係合部、22…第二係合部、25…剃刀ヘッド本体、26…キャップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬度の異なる複数の素材により構成した把持部を有し、この把持部で露出させた複数の表部のうち、特定表部に形成されて露出する第一係合部と、その特定表部または特定表部以外の表部に形成されて露出する第二係合部とを一つの把持部に有し、複数の把持部を互いに重ねた際に、その各把持部のうち、特定把持部の第一係合部とその特定把持部以外の把持部の第二係合部とが互いに着脱可能に係合されて、複数の把持部が互いに結合されることを特徴とする手動利器のハンドル。
【請求項2】
前記特定表部はその特定表部以外の表部よりも硬度の大きい素材により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の手動利器のハンドル。
【請求項3】
前記特定把持部とその特定把持部以外の把持部とを互いに重ねた際に相対向する重合部のうち、特定把持部の重合部に形成した第一係合部と、特定把持部以外の把持部の重合部に形成した第二係合部とを相対向させて互いに着脱可能に係合することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の手動利器のハンドル。
【請求項4】
前記把持部にはその長手方向の両側のうち一方の側に頭部を設けるとともに他方の側に尻部を設け、刃体を組み込んだ剃刀ヘッドをこの把持部の頭部に設け、この把持部は、その刃体の刃先が向く腹側である腹部と、その腹側に対する反対側の背側である背部と、その刃先の延設方向の両側である側部とを頭部と尻部との間に有し、前記特定表部の重合部をこの把持部の腹部に形成するとともに、前記特定表部以外の表部の重合部をこの把持部の背部に形成したことを特徴とする請求項3に記載の手動利器のハンドル。
【請求項5】
ハンドルの把持部にはその長手方向の両側のうち一方の側に頭部を設けるとともに他方の側に尻部を設け、刃体を組み込んだ剃刀ヘッドをこの把持部の頭部に設け、この把持部は、その刃体の刃先が向く腹側である腹部と、その腹側に対する反対側の背側である背部と、その刃先の延設方向の両側である側部とを頭部と尻部との間に有し、
一対のハンドルの把持部のうち一方の把持部の腹部と他方の把持部の背部とを互いに重ねた際に相対向する腹部の重合部と背部の重合部とを互いに着脱可能に係合し、一方の把持部に設けられた剃刀ヘッドにおいて剃刀ヘッド本体に被せられたキャップが他方の把持部の頭部の背側に当てがわれる
ことを特徴とする剃刀。
【請求項6】
複数のハンドルの把持部を互いに重ねて相対向する各把持部の重合部を互いに着脱可能に係合した際に、各把持部の尻部が互いに並んで揃うことを特徴とする剃刀。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−40314(P2012−40314A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186426(P2010−186426)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000001454)株式会社貝印刃物開発センター (123)