説明

手動利器及び手動利器の柄の製造方法

【解決手段】洋鋏の把持部8,9において、刃体3,4を取着した基部10に対し指掛環11は弾性変形し易い連結部12を介して連結されている。従って、手指の大きさや使い方の異なる使用者に応じて、使用者の使い勝手を考慮した任意の設計により指掛環11の感触や操作性を維持した場合にも、基部10に対する指掛環11の動きを連結部12により維持したまま、指掛環11に触れた指の感触や操作性に変化を持たせることができる。基部10の係止孔14と刃体3,4の係止孔とにロックピン21を挿着し、その係止孔14の蓋孔にも連結部12の樹脂を充填してロックピン21の頭部を蓋部32で閉塞したので、ロックピン21を押して蓋部32を蓋孔から舌片状にめくり上げれば、ロックピン21を係止孔14から離脱させて、把持部8,9と刃体3,4とを互いに分離して分別廃棄することができる。
【効果】より一層使い勝手を良くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋏などの手動利器、並びに、その手動利器の柄の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1にかかる鋏の柄では、金属製の刃体の基端部に樹脂製の基部が取着され、この基部に設けられた樹脂製の内側把持環内に樹脂製の外側把持環が取着されている。この外側把持環は内側把持環よりも軟質の樹脂により成形されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−77869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1にかかる鋏の柄では、刃体の基端部が取着される基部に設けられた内側把持環については強度を必要とする一方で、内側把持環内に取着された外側把持環については触れた指の感触や操作性を良くするために軟質樹脂により成形している。しかし、軟質樹脂により成形された外側把持環に使用者の指を挿入して使用する際、その外側把持環のうち使用者の指が触れた部分だけが変形してその部分だけに対する指の感触を良くすることはできるが、触れた指の感触や操作性を良くするために外側把持環を軟質樹脂により成形する必要があって、外側把持環の材質に制限があるため、外側把持環に触れた指の感触や操作性に変化を持たせることは難しい。
【0005】
この発明は、触れた指の感触や操作性に変化を持たせてより一層使い勝手を良くすることができる鋏などの手動利器、並びに、その手動利器の柄の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
後記実施形態の図面(図1〜10)の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかる手動利器は、機能部3,4を取着した基部10に対し指当部11を変態可能な連結部12で連結した把持部8,9を有する柄6,7を備えている。ここに「変態」とは、変形または変位など、状態が変わることを意味する。請求項1の発明では、基部10に対し指当部11は変態可能な連結部12を介して連結されているため、使用者の使い勝手を考慮した任意の設計により指当部11の感触や操作性を維持した場合にも、基部10に対する指当部11の動きを連結部12により維持したまま、指当部11に触れた指の感触や操作性に変化を持たせてより一層使い勝手を良くすることができる。また、把持部8,9に触れて色々な向きに力を付与しても、基部10及び指当部11より変態し易い連結部12により把持部8,9がその力を和らげることができる。
【0007】
請求項1の発明を前提とする請求項2の発明において、前記連結部12は弾性体で成形されている。請求項2の発明では、弾性体である連結部12により、基部10に対し指当部11を弾性復帰させて指当部11を同じ押圧解除状態で使用することができる。
【0008】
請求項1または請求項2の発明を前提とする請求項3の発明において、手動利器は開閉可能に支持した一対の刀身1,2を備えた鋏であって、それぞれの刀身1,2には前記機能部としての刃体3,4とその刃体3,4に取着した前記把持部8,9とを設けている。請求項3の発明では、請求項1または請求項2の発明の効果を鋏で発揮させることができる。
【0009】
請求項3の発明を前提とする請求項4の発明において、前記指当部は指掛環11であって、前記連結部12は基部10と指掛環11との間でその基部10及び指掛環11に沿って成形された介在部24を有し、この基部10と介在部24と指掛環11とが順次並んでいる。請求項4の発明では、基部10と指掛環11との間で連結部12の介在部24を基部10及び指掛環11に沿って配置して、把持部8,9をコンパクトに設けることができる。
【0010】
請求項5の発明にかかる手動利器の柄6,7の製造方法においては、互いに分離して成形した基部10と指当部11とを金型のキャビティにセットし、そのキャビティに成形材を注入して、機能部3,4を取着する基部10に対し指当部11を変態可能な連結部12で連結した把持部8,9を設ける。請求項5の発明では、機能部3,4を取着した基部10に対し指当部11を変態可能な連結部12で連結した把持部8,9を有する柄6,7を容易に製造することができる。
【0011】
次に、請求項以外の技術的思想について実施形態の図面の符号を援用して説明する。
請求項1から請求項4のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする第6の発明において、前記連結部12は基部10及び指当部11より硬度の小さい柔軟な材料で成形されている。第6の発明では、基部10及び指当部11に対し連結部12を変態させ易い。
【0012】
第6の発明を前提とする第7の発明において、前記指当部11は、基部10より硬度の小さい柔軟な材料で成形されているか、または、同じ硬度の材料で成形されている。第7の発明では、指当部11に対する感触を良くすることができる。
【0013】
請求項1から請求項4のうちいずれか一つの請求項の発明、または第6の発明または第7の発明を前提とする第8の発明において、前記基部10と連結部12と指当部11とはそれぞれ樹脂で成形されている。第8の発明では、基部10と連結部12と指当部11とを容易に成形することができるとともに、基部10と連結部12と指当部11とを変態させ易い。
【0014】
請求項3または請求項4の発明を前提とする第9の発明にかかる鋏の両刀身1,2において、刃体3,4は開閉中心部5で開閉可能に支持され、把持部8,9はその開閉中心部5より基端側で刃体3,4に取着されている。第9の発明では、請求項3または請求項4の発明の効果を洋鋏で発揮させることができる。
【0015】
第9の発明を前提とする第10の発明において、前記連結部12は基部10と指当部11との間でその基部10及び指当部11に沿って成形された一部分24を有している。第10の発明では、基部10と指当部11との間で連結部12の一部分24を基部10及び指当部11に沿って配置して、把持部8,9をコンパクトに設けることができる。
【0016】
第10の発明を前提とする第11の発明において、前記指当部11の厚み方向両面間範囲に連結部12の厚み方向両面を配置して、その指当部11と連結部12との間で段差部28を形成している。第11の発明では、連結部12が指当部11の厚み方向両面から厚み方向へ突出しないため、指当部11に触れた指が連結部12に当たりにくくなって指当部11に対する操作性を良くすることができる。
【0017】
第10の発明または第11の発明を前提とする第12の発明において、前記指当部は指掛環11であって、前記連結部12は指掛環11の外周全体でその指掛環11に沿って成形されている。第12の発明では、指掛環11の外周全体にある連結部12により、指掛環11に対する感触を良くすることができる。
【0018】
第10の発明または第11の発明を前提とする第13の発明において、前記指当部は指掛環11であって、前記連結部12は、基部10と指掛環11との間でその基部10及び指掛環11に沿って成形された内側部分24と、その内側部分24に対する反対側で指掛環に沿って成形された外側部分25とを有し、この基部10と内側部分24と指掛環11と外側部分25とが順次並んでいる。第13の発明では、基部10と指掛環11との間で連結部12の内側部分24を基部10及び指掛環11に沿って配置して把持部8,9をコンパクトに設けることができるとともに、指掛環11にある連結部12の外側部分25により指掛環11に対する感触を良くすることができる。
【0019】
請求項4の発明または第12の発明または第13の発明を前提とする第14の発明において、前記連結部12は指掛部27a,29を有している。第14の発明では、連結部12の指掛部27a,29に指を当てがってより一層使い勝手を良くすることができる。
【0020】
請求項4の発明、または第12〜14の発明のうちいずれか一つの発明を前提とする第15の発明において、前記連結部12は薄肉部31を有している。第15の発明では、薄肉部31により連結部12を変態させ易い。
【0021】
請求項4の発明、または第9〜15の発明のうちいずれか一つの発明を前提とする第16の発明において、前記把持部8,9の基部10は刃体3,4に対しロック手段14,19,21,32により取着されている。第16の発明では、ロック手段14,19,21,32により刃体3,4に対する基部10の離脱を抑制することができる。
【0022】
第16の発明を前提とする第17の発明において、前記ロック手段は基部10を刃体3,4に取着するロック部材21を有し、前記連結部12は、刃体3,4に対する基部10の離脱を抑制するようにロック部材21に対し係合する抑制部32を有している。第17の発明では、ロック部材21に係合する抑制部32を連結部12に設けて刃体3,4に対する基部10の離脱を抑制することができる。
【0023】
第16の発明を前提とする第18の発明において、前記ロック手段は、基部10及び刃体3,4に形成した係止孔14,19と、その係止孔14,19に挿着したロックピン21とを有している。第18の発明では、係止孔14,19とロックピン21とによる簡単なロック手段により刃体3,4に対する基部10の離脱を抑制することができる。
【0024】
第18の発明を前提とする第19の発明において、前記連結部12は、ロックピン21の両端部のうち少なくとも一端部側を被覆して刃体3,4に対する基部10の離脱を抑制する抑制部32を有している。第19の発明では、ロックピン21の少なくとも一端部側を被覆して基部10に対するロックピン21の離脱を連結部12の抑制部32により抑制することにより、刃体3,4に対する基部10の離脱を抑制することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、触れた指の感触や操作性に変化を持たせてより一層使い勝手を良くすることができる鋏などの手動利器、並びに、その手動利器の柄6,7の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)は本実施形態にかかる洋鋏において両刀身を互いに組み付けた状態を示す正面図であり、(b)は(a)のA−A線断面図であり、(c)は(a)のB−B線断面図である。
【図2】(a)(b)は上記両刀身の把持部において刃体が取着される基部を示す斜視図であり、(c)はその基部の断面図である。
【図3】(a)(b)は上記両刀身において刃体を示す斜視図である。
【図4】(a)(b)は上記刃体を把持部の基部に挿入した状態を示す斜視図であり、(c)はその基部の断面図である。
【図5】(a)(b)は上記刃体を基部に固定するロックピンを示す斜視図である。
【図6】(a)(b)は上記刃体を基部に固定した状態を示す斜視図であり、(c)はその基部の断面図である。
【図7】(a)(b)は上記両刀身の把持部において指掛環を示す斜視図である。
【図8】(a)(b)は上記両刀身の把持部において互いに分離して成形した基部と指掛環とを金型にセットする状態を示す斜視図である。
【図9】(a)(b)は上記両刀身の把持部において基部と指掛環とを連結部により連結した状態を示す斜視図であり、(c)(d)はその把持部の断面図である。
【図10】(a)(b)はそれぞれ上記両刀身において把持部と刃体とを分離する途中状態を示す部分断面図であり、(c)は同じくそれらの分離状態を斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1(a)に示すように、手動利器である洋鋏は一対の刀身1,2を備え、それぞれの刀身1,2においては、機能部としての刃体3,4が開閉中心部5(回動中心5a)で回動可能に支持され、その開閉中心部5より基端側で刃体3,4に取着された把持部8,9を有する柄6,7が設けられている。それぞれの把持部8,9は、刃体3,4の基端部3a,4aが挿着された基部10と、指当部としての指掛環11と、その基部10に対し指掛環11を連結する連結部12とを有している。
【0028】
図2に示す前記基部10は、樹脂により一体成形され、前記開閉中心部5の回動中心線5aに沿う方向の両側で上端部10e側から下端部10f側へ延びる外面10a,10bと、この回動中心線5aに直交する方向の両側で上端部10e側から下端部10f側へ延びる外面10c,10dとを有している。この基部10内には前記刃体3,4の基端部3a,4aを挿着するための支持孔13が上端部10eから下端部10f側へ延びるように形成されて上端部10eで外側へ開放されている。この基部10の上端部10eには支持孔13を貫通する係止孔14が両外面10a,10b間で形成されている。この係止孔14の一端部側では軸孔14aより直径の大きい頭孔14bが形成されているとともにこの頭孔14bより直径の大きい蓋孔14cが形成されて外面10aの外側へ開放されている。この基部10の外面10cには突条部15が上端部10eから下端部10f側へ延びるように形成されてこの突条部15の両端部に小孔15aが貫設されている。この基部10の外面10dには上端部10eと下端部10fとの間で当接部16が突設されている。
【0029】
図3に示す前記刃体3,4においては、前記開閉中心部5の回動中心孔17より先端側に刃部18が形成され、その刃部18から延設された基端部3a,4aに係止孔19が貫設されている。この刃部18の相対向面側には図1(c)に示すように互いに噛み合う刃縁部20が段差状に形成されている。図示しないが、一対の刃体の素材となる一枚の板をプレスで打抜成形して、その板の長手方向両端部のうち一方の側に一方の基端部形成部分を設けるとともに他方の側に他方の基端部形成部分を設け、それらの基端部形成部分間に刃部形成部分を設けた後、その刃部形成部分をプレス成形して、その刃部形成部分の幅方向中央部に段差状の刃縁部形成部分を互いに隣接して繋いだ状態で設ける。次に、その刃縁部形成部分を打抜成形するか切削加工して幅方向両側で分断し、段差状の刃縁部を有する一対の刃体素材を設けた後、その刃体素材の刃縁部摺接部分を平面研削するとともにその刃縁部を刃付け研削して、前記刃体3,4を成形する。これらの刃体3,4では、段差状の刃縁部20の相対向摺接面のみが互いに摺接するため、接着剤付きのテープなどを切断した際にその接着剤が刃体3,4に付着しにくい。なお、刃縁部20に対し反対側になる刃体3,4の背部にも段差部を形成してそれらの段差部も互いに摺接するようにしてもよいが、それらの段差部を省略して段差状の刃縁部20のみを形成することが好ましい。
【0030】
図4に示すように、前記刃体3,4の基端部3a,4aは前記基部10の支持孔13に対しある程度の摩擦抵抗を持たせて挿着され、その基端部3a,4aの係止孔19が基部10の係止孔14に合致する。図5に示す樹脂製のロックピン21(ロック部材)は図6に示すようにそれらの係止孔14,19に対しある程度の摩擦抵抗を持たせて挿着される。その際、ロックピン21の軸部21aが係止孔14の軸孔14aに挿嵌されて基部10の外面10bに露出するとともに、ロックピン21の頭部21bが係止孔14の頭孔14bに挿嵌されて係止孔14の蓋孔14cに露出する。
【0031】
図7に示す前記指掛環11は、樹脂により一体成形され、指掛孔11aを囲う内側部分11bと外側部分11cと上側部分11dと下側部分11eとを有している。指掛環11の下側部分11eの外周には切欠凹部22が形成されている。この切欠凹部22及び内側部分11bを除く指掛環11の外周には突条部23が形成されている。
【0032】
図8に示すように、互いに分離して成形された基部10と指掛環11とは、図示しない金型のキャビティに互いに並べられてセットされる。その際、基部10の外面10cにおける突条部15が指掛環11の内側部分11bに対し間隔をあけて面する。そのキャビティに成形材として樹脂を注入すると、図9に示すように、ロックピン21により刃体3,4に固定された基部10に対し指掛環11が前記連結部12で連結されて前記把持部8,9が設けられる。
【0033】
この把持部8,9において基部10と指掛環11と連結部12とはいずれも樹脂で成形されてそれらの色は互いに異なる。基部10及びロックピン21は共に硬質樹脂(例えばポリプロピレン樹脂)により成形されている。指掛環11は硬度ショアA50以上ショアD50以下のエラストマー樹脂(弾性体)、連結部12は硬度ショアA10以上ショアA60以下のエラストマー樹脂(弾性体)でそれぞれ成形されている。連結部12は基部10及び指掛環11より硬度の小さい柔軟な材料で成形されているため、連結部12は基部10及び指掛環11より変形し易い。また、指掛環11は基部10より硬度の小さい柔軟な材料で成形されているため、指掛環11は基部10より変形(変態)し易い。なお、指掛環11の硬度を基部10の硬度と等しくしてもよい。
【0034】
前記連結部12は、指掛環11の外周全体でその指掛環11に沿って成形され、基部10の外面10cと指掛環11の内側部分11bとの間でそれらに沿う内側部分24(介在部)と、その内側部分24に対する反対側で指掛環11の外側部分11cに沿う外側部分25と、その内側部分24と外側部分25との間で基部10の上端部10eに隣接して指掛環11の上側部分11dに沿う上側部分26と、その内側部分24と外側部分25との間で基部10の下端部10fに隣接して指掛環11の下側部分11eに沿う下側部分27とを有している。この基部10と連結部12の内側部分24と指掛環11の内側部分11bと指掛孔11aと指掛環11の外側部分11cと連結部12の外側部分25とは順次並んでいる。
【0035】
図1(b)に示すように、指掛環11の外周全体(内側部分11bと外側部分11cと上側部分11dと下側部分11e)でその厚み方向両面間範囲に連結部12(内側部分24と外側部分25と上側部分26と下側部分27)の厚み方向両面が配置されて、その指掛環11の外周全体と連結部12との間で僅かな段差部28が形成されている。この連結部12の下側部分27には指掛部27aが指掛環11の下側部分11eにおける切欠凹部22に沿って形成されている。この連結部12の上側部分26には、指掛部29が形成されているとともに、この指掛部29と指掛環11の上側部分11dとの間で両凹み30により薄肉部31が形成されている。この薄肉部31に代えて貫通孔や空洞などを形成してもよい。前記基部10の突条部15及び指掛環11の突条部23は連結部12内に埋設され、この突条部15の両小孔15a内にも連結部12の樹脂が充填されているため、基部10及び指掛環11と連結部12との間の接触面積を増やし、それらの間の密着性を向上させたり結合強度を高めることができる。
【0036】
前記基部10の係止孔14における蓋孔14cにも連結部12の樹脂が充填されてロックピン21の頭部21bを閉塞する蓋部32(抑制部)が形成されている。図10(a)(b)に示すように、ドライバー33などによりロックピン21の頭部21bに対する反対側からロックピン21の軸部21aを強く押すと、ロックピン21の頭部21bでこの蓋部32が押されて舌片状にめくれ上がり、ロックピン21を係止孔14,19から離脱させることができる。そのため、図10(c)に示すように、ロックピン21を係止孔14,19から離脱させて刃体3,4の基端部3a,4aを支持孔13から離脱させ、把持部8,9と刃体3,4とを互いに分離することができる。従って、刃体3,4と把持部8,9とを分別廃棄することができる。
【0037】
本実施形態は下記の効果を有する。
(1) 洋鋏の把持部8,9において、刃体3,4を取着した基部10に対し指掛環11は弾性変形し易い連結部12を介して連結されている。従って、手指の大きさや使い方の異なる使用者に応じて、使用者の使い勝手を考慮した任意の設計により指掛環11の感触や操作性を維持した場合にも、基部10に対する指掛環11の動きを連結部12により維持したまま、指掛環11に触れた指の感触や操作性に変化を持たせて、より一層使い勝手を良くすることができる。本実施形態では、指掛環11の指掛孔11aに指を入れてその内側部分11bや外側部分11cや上側部分11dや下側部分11eを指で押圧すると、それらと並んで連結された連結部12の内側部分24や外側部分25や上側部分26や下側部分27が指掛環11とともに弾性変形し、指掛環11を使用者の好みに合わせた任意の設計にした場合でも、基部10に対する指掛環11の動きを維持してより一層使い勝手を良くすることができる。なお、それらの外側部分11c,25を指掛孔11a側へ押圧すると、それらの外側部分11c,25は、比較的小さな力で指掛孔11a側へ大きく突出するように湾曲し、その押圧解除により弾性復帰する。
【0038】
(2) 互いに分離して成形した基部10と指掛環11とを金型のキャビティにセットし、そのキャビティには前述した連結部12を成形するエラストマー樹脂を注入して、前記把持部8,9を有する柄6,7を容易に製造することができる。
【0039】
(3) 基部10の係止孔14と刃体3,4の係止孔19とにロックピン21を挿着し、その係止孔14の蓋孔14cにも連結部12の樹脂を充填してロックピン21の頭部21bを蓋部32で閉塞したので、ドライバー33などによりロックピン21の頭部21bに対する反対側からロックピン21の軸部21aを強く押してロックピン21の頭部21bでこの蓋部32を舌片状にめくり上げれば、ロックピン21の頭部21bが開放され、ロックピン21を係止孔14,19から離脱させて、把持部8,9と刃体3,4とを互いに分離して分別廃棄することができる。
【0040】
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
・ 基部10に対し指掛環11を回動可能な連結部で変位させるようにしてもよい。
・ 基部10と指掛環11の内側部分11bとの間にコイルばねや板ばねなどの弾性体を連結部として介在させることができる。
【0041】
・ 連結部12を基部10と指掛環11の内側部分11bとの間にのみ介在させることができる。
・ 連結部12を基部10と指掛環11の上側部分11d及び下側部分11eとの間にのみ介在させ、基部10と指掛環11の内側部分11bとの間には空隙を設けてもよい。
【0042】
・ 基部10と指掛環11とを一体成形して基部10と指掛環11の内側部分11bとの間を薄肉部で繋ぎ、指掛環11の外周全体に連結部12を成形して連結部12内にその薄肉部を埋設してもよい。
【0043】
・ 刃体3,4の基端部3a,4aを基部10内及び連結部12内に挿着してもよい。
・ ドライバー33などにより蓋部32を舌片状にめくり上げて、ロックピン21を係止孔14,19から離脱させてもよい。
【0044】
・ 本実施形態にかかる洋鋏以外に、和鋏や、鋏以外のナイフや彫刻刀や包丁やカッターナイフや医療用刃物や剃刀などの各種手動利器の柄に本発明を応用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1,2…刀身、3,4…刃体(機能部)、6,7…柄、8,9…指掛環(把持部)、10…基部、11…指掛環(指当部)、12…連結部、14…基部の係止孔、19…刃体の係止孔、21…ロックピン(ロック部材)、24…連結部の介在部、32…連結部の蓋部(抑制部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能部を取着した基部に対し指当部を変態可能な連結部で連結した把持部を有する柄を備えたことを特徴とする手動利器。
【請求項2】
前記連結部は弾性体で成形されていることを特徴とする請求項1に記載の手動利器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の手動利器は、開閉可能に支持した一対の刀身を備えた鋏であって、それぞれの刀身には前記機能部としての刃体とその刃体に取着した前記把持部とを設けたことを特徴とする手動利器。
【請求項4】
前記指当部は指掛環であって、前記連結部は基部と指掛環との間でその基部及び指掛環に沿って成形された介在部を有し、この基部と介在部と指掛環とが順次並んでいることを特徴とする請求項3に記載の手動利器。
【請求項5】
互いに分離して成形した基部と指当部とを金型のキャビティにセットし、そのキャビティに成形材を注入して、機能部を取着する基部に対し指当部を変態可能な連結部で連結した把持部を設けることを特徴とする手動利器の柄の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−182820(P2011−182820A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48141(P2010−48141)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000001454)株式会社貝印刃物開発センター (123)
【Fターム(参考)】