説明

手動変速機の変速操作装置

【課題】既存の手動変速機に変速段を1段追加した構造としても、構造の簡素化が実現できるようにする。
【解決手段】シフトレバーを5−6速シフト位置に臨ませると、インナレバー31の先端部31aが5速用シフトヘッド6aの溝部6cに係入し、インナレバー31に形成されているレバー部31bが6速用シフトヘッド7aのレバー受面7dに当接する。この状態から5速へシフトさせると、インナレバー31が5速用シフトヘッド6aのみを移動させて5速直結とする。一方6速へシフトさせると、インナレバー31の先端部31aが5速用シフトヘッド6aを移動させ、且つレバー部31bが6速用シフトヘッド7aのレバー受面7dを移動させる。この場合5速用シフトヘッド6aは5速用反転シフトフォークロッド6に移動自在に挿通されているだけであるため移動しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つのシフトインナレバーで同時に2つのシフトヘッドをスライドさせることのできる手動変速機の変速操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の手動変速機は、ステアリングコラム部に設けられたコラム式シフトレバー、或いは、運転席横のフロアに設けられたフロア式シフトレバーを所定にセレクト操作、及びシフト操作することで所望の変速段を得るようにしている。その際、シフト操作性を良好にするために、隣接する変速段を対向配設する、いわゆるH型のシフトパターンが多く採用されている。例えば、6段変速では1速と2速、3速と4速、5速と6速が互いにセレクト位置を挟んで対向するように構成されている。
【0003】
一方、手動変速機内のギヤ列の配列は、車載性や製造性などの要請に基づいて決められるため、必ずしも隣接する変速段のためのギヤ列が並んで配置されるわけではない。例えば部品の共用化を図るため、5段変速機に新たに6速を追加して6段変速機とする場合、特許文献1(特開平8−114264号公報)等に開示されているように、ギヤ列の上では、5速のギヤ列とリバースのギヤ列とが対向配置されると共に、6速のギヤ列が単独で配置される場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−114264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、既存の5段変速機では、5速とリバースとのギヤ列が各々対向配設されているため、これに6速を追加して6段変速機とする場合には、6速のギヤ列が独立した配設となる。その結果、6速用シフトヘッドを動作させるシフトインナレバーを新たに追加する必要がある。
【0006】
そうすると、5速−6速のシフトでは、2つのシフトインナレバー(シフトインナレバー)を用いて5速用シフトヘッドと6速用シフトヘッドとを相対動作させる必要があり、部品点数の増加、及び構造の複雑化を招き、装置全体が大型化してしまう不都合がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、既存の変速段を有する変速機に、変速段を1段新たに追加する場合であっても、構造の複雑化を招くことなく、部品点数の増加、及び装置全体の大型化を回避することのできる手動変速機の変速操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、セレクト操作に応じて軸回りに回動し、シフト操作に応じて軸線方向へ移動するセレクトシャフトと、前記セレクトシャフトから軸径方向に延在するシフトインナレバーと、前記セレクトシャフトの回動方向に配設されて前記シフトインナレバーの先端部に選択的に係合自在な複数のシフトヘッドと、前記各シフトヘッドに対応して設けられ、前記インナレバーの動作により選択された変速段に係合して入力軸からの動力を出力軸側へ伝達可能とする複数のシンクロ機構とを備える手動変速機の変速操作装置において、前記複数のシフトヘッドの内の1つのシフトヘッドに該複数のシフトヘッドとは異なる別のシフトヘッドが隣接した状態で配設され、前記別のシフトヘッドの上部のシフト操作方向の一方の面にレバー受面が設けられ、前記シフトインナレバーに、該シフトインナレバーの前記先端部が前記他のシフトヘッドに隣接している前記1つのシフトヘッドに係合している状態で前記レバー受面に当接するレバー部が形成され、前記レバー部の下端が前記複数のシフトヘッドの上端に対して所定に離間された位置に配設されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数のシフトヘッドに別のシフトヘッドを隣接し、この別のシフトヘッドにレバー受面を形成し、このレバー受面に当接するレバー部をシフトインナレバーに形成したので、既存の変速段を有する変速機に、変速段を1段新たに追加する場合であっても、1つのシフトインナレバーで2つのシフトヘッドを動作させることができ、従って、シフトインナレバーを新たに設ける必要がなく、構造の簡素化が図れ、部品点数の増加、及び装置全体の大型化を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】変速操作装置の構成図
【図2】6段変速機のシフトパターン図
【図3】6段変速機のギヤ列を示すスケルトーン図
【図4】図1のIV-IV概略断面図
【図5】図1のV矢視正面図
【図6】図5の斜視図
【図7】5速シフト時の図1相当の構成図
【図8】5速シフト時の6速用フォークシャフトと反転フォークシャフトとの動作を示す説明図
【図9】6速シフト時の図1相当の構成図
【図10】6速シフト時の6速用フォークシャフトと反転フォークシャフトとの動作を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。図1は6段変速の変速操作装置が示されている。この変速操作装置1は、乗用車等の車両に搭載されている手動変速機の変速操作を行うものであり、図示しない変速機ケースに収容されている。本実施形態で採用する手動変速機は、既存の前進5段(但し、5速は直結)の手動変速機に6速(オーバドライブ)を追加して、前進6段、後進1段としたものである。シフトパターンは、いわゆるH型であり、運転者がシフトレバー(フロア式シフトレバー、コラム式シフトレバー)を操作することでセレクト操作及びシフト操作が行われる。
【0012】
図2に前進6段の手動変速機のシフトパターンを示す。同図に示すように、シフトレバーは、X方向のセレクト操作と、当該セレクト操作方向に直交するY方向のシフト操作とが行えるよう構成されており、シフトレバーがセレクト位置にあるときニュートラルNとなる。又、シフト位置は、1―2速シフト、3―4速シフト、5―6速シフトが隣接されて平行に配設されており、更に、1−2速シフトの隣であって、1速と同方向にリバース(Rev)シフトが平行に配列されている。
【0013】
このシフトレバーが変速操作装置1のセレクトシャフト2に、リンク機構(図示せず)を介して連設されている。このセレクトシャフト2が、図示しない軸受け等によって軸周りのX方向(セレクト操作方向)へ回動自在で、且つ軸線のY方向(シフト操作方向)へ移動自在に支持されている。尚、以下の説明では、便宜的に図1の左方向への移動を前方、右方向への移動を後方と称する。
【0014】
このセレクトシャフト2と平行に、1−2速用シフトフォークロッド3、3−4速用シフトフォークロッド4、第3シフトロッドとしての5速−Rev(リバース)用シフトフォークロッド5、及び第2シフトロッドとしての5速用反転シフトフォークロッド6が既存の5段変速機と同様、平行に配列され、更に、第1シフトロッドとしての6速用シフトフォークロッド7が5速用反転シフトフォークロッド6に隣接して平行に配設されている。又、5速−Rev用シフトフォークロッド5と5速用反転シフトフォークロッド6とが反転レバー8を介して連設されており、5速用反転シフトフォークロッド6を後方へ移動させると、反転レバー8が5速−Rev用シフトフォークロッド5を前方へ移動させて直結となる。
【0015】
各シフトフォークロッド3,4に、1−2速用シフトヘッド3a、3−4速用シフトヘッド4aがそれぞれ軸着されている。更に、各シフトフォークロッド5,7に、Rev用シフトヘッド5a、別のシフトヘッドとしての6速用シフトヘッド7aがそれぞれ軸着されている。更に、5速用反転シフトフォークロッド6に、1つのシフトヘッドとしての5速用シフトヘッド6aが軸方向へ移動自在に軸装されている。この5速用反転シフトフォークロッド6の5速用シフトヘッド6aの後方に係止部としてのリング状フランジ6dが形成されている。又、この5速用シフトヘッド6aは、5速用反転シフトフォークロッド6に並設されている6速用シフトフォークロッド7にも移動自在に軸装されている。
【0016】
図8、図10に示すように、この5速用シフトヘッド6aと両シフトフォークロッド6,7にワンウェイ機構11が設けられている。一方、両シフトフォークロッド6,7の前方軸端部にはインタロック機構12が設けられている。このインタロック機構12は5速用反転シフトフォークロッド6と6速用シフトフォークロッド7との一方がスライドした際に他方を固定して二重の噛み合いを防止するものであり、インタロックボール12aと、両シフトフォークロッド6,7に形成されて、インタロックボール12aを掛止する凹部12b,12cとで構成されている。
【0017】
又、ワンウェイ機構11は、5速用シフトヘッド6aを5速用反転シフトフォークロッド6と6速用シフトフォークロッド7との一方にのみ連結して一体的に移動させるようにするものであり、ワンウェイボール11aと、5速用シフトヘッド6aに穿設されてワンウェイボール11aを収容する孔部11bと、両シフトフォークロッド6,7に形成されてワンウェイボール12aを掛止する凹部11c,11dとで構成されている。ニュートラルN時には、5速用シフトヘッド6aの後端が5速用反転シフトフォークロッド6に形成されているリング状フランジ6dに当接されると共に、孔部11bに対して凹部11c,11dとが対面するように配列される。このとき、インタロック機構12の凹部12b,12cも対面するように配置される。
【0018】
5速シフト操作に伴って、5速用シフトヘッド6aを後方へスライドさせると、この後端がリング状フランジ6dを押圧し、5速用反転シフトフォークロッド6を同方向へ移動させる。ワンウェイ機構11のワンウェイボール11aは5速用シフトヘッド6aに穿設されている孔部11bと共に移動し、6速用シフトフォークロッド7の外周面に乗り上げて、5速用反転シフトフォークロッド6の凹部11cと6速用シフトフォークロッド7の外周面との間に挟持される。又、この状態では、インタロック機構12のインタロックボール12aが5速用反転フォークロッド6の外周面に乗り上げて、6速用シフトフォークロッド7の凹部12cとの間に挟持され、6速用シフトフォークロッド7が固定される。
【0019】
一方、6速シフト操作に伴って6速用シフトヘッド7aを前方へスライドさせるとき、後述するように、5速用シフトヘッド6aも同時に移動するため、ワンウェイボール11aは5速用シフトヘッド6aに穿設されている孔部11bと共に移動し、5速用反転シフトフォークロッド6の外周面に乗り上げて、6速用シフトフォークロッド7の凹部11dと5速用反転シフトフォークロッド6の外周面との間に挟持される。
【0020】
又、この状態では、インタロック機構12のインタロックボール12aが6速用シフトフォークロッド7の外周面に乗り上げて、5速用反転シフトフォークロッド6の凹部12bとの間に挟持され、5速用反転シフトフォークロッド6が固定される。
【0021】
又、上述した各シフトフォークロッド3,4,5,7にシフトフォーク3b,4b,5b,7bがそれぞれ軸着されている。図4には、その代表として5速用反転シフトフォークロッド6に軸着されているシフトフォーク6bを示す。周知のように、この各シフトフォーク3b,4b,5b,7bは、シンクロ機構を移動させて1速〜6速、或いはリバースのギヤ列を選択的に接続して、所望の変速段が成立される。
【0022】
図3に6段変速機のギヤ列を示す。図中の符号21は入力軸であり、クラッチを介してエンジンからの出力が入力される。この入力軸21と同軸上に出力軸22が支持されており、更に、この両シャフト21,22と平行にカウンタ軸23が支持されている。入力軸21とカウンタ軸23とが、両シャフト21,22に各々軸着されている入力ギヤ列GIを介して連設されている。
【0023】
更に、カウンタ軸23と出力軸22との間に、リバースギヤ列GR、4速ギヤ列G4、3速ギヤ列G3、2速ギヤ列G2、1速ギヤ列G1、及び6速ギヤ列G6が各々配列されている。ギヤ列GR,G2,G1は、出力軸22側のギヤが回動自在に軸支されており、カウンタ軸23側のギヤが固定されている。一方、ギヤ列G4,G3,G6は、カウンタ軸23側のギヤが回動自在に軸支されており、出力軸22側のギヤが固定されている。尚、本実施形態で採用する手動変速機は5速直結タイプであるため5速ギヤ列を有していない。
【0024】
又、出力軸22側の入力ギヤ列GIのギヤとリバースギヤ列GRのギヤとの間、2速ギヤ列G2のギヤと1速ギヤ列G1のギヤとの間、及びカウンタ軸23の4速ギヤ列G4のギヤと3速ギヤ列G3のギヤとの間、6速ギヤ列G6のギヤ側に、運転者のシフトレバー操作によって選択した変速段のギヤ列を動力伝達状態にするシンクロ機構26a〜26dが配設されている。この各シンクロ機構26a〜26dが、上述した各シフトフォーク5b,3b,4b,7bによって選択的に軸方向へ移動されて、何れかのギヤ列が動力伝達状態になると、当該ギヤ列を介して入力軸21からの動力が出力軸22側へ所定に変速された状態(直結の場合はそのままの状態)で出力される。
【0025】
又、図4〜図6に示すように、セレクトシャフト2には、上述した各シフトヘッド3a,4a,5a,7aに対して、選択的に係合自在なシフトインナレバー31が軸径方向に延在した状態で固設されている。セレクトシャフト2はシフトレバーのセレクト操作方向(X方向)への移動に追従して回動し、シフト操作方向(Y方向)への移動に追従して軸方向にスライドする。シフトインナレバー31はセレクトシャフト2と一体に回動及びスライドする。このシフトインナレバー31のセレクト操作方向(回動方向)であって、シフト操作方向と交差する位置に、5速用シフトヘッド6a、3−4速用シフトヘッド4a、1−2速用シフトヘッド3a、Rev用シフトヘッド5aの上端部が配設されている。更に、5速用シフトヘッド6aの隣(3−4速用シフトヘッド4aとは逆側)に6速用シフトヘッド7aの上端部が配設されている。
【0026】
この各シフトヘッド7a,6a,4a,3a,5aの上端部には、シフトインナレバー31の先端部31aに係合する溝部6c,4c,3c,5cが形成されている。尚、シフトレバーのセレクト操作方向(X方向)の移動範囲は、シフトインナレバー31の先端部31aが溝部6c,4c,3c,5cに係合する範囲に限られており、6速用シフトヘッド7aに形成されている溝部7cには係合されない。又、6速用シフトヘッド7aに形成されている溝部7cの、一方のシフト操作方向である6速にシフトさせる側の上部にレバー受面7dが突設されている。
【0027】
一方、シフトインナレバー31には、このレバー受面7dに当接する6速用レバー部31bが幅方向に突出された状態で形成されている。この6速用レバー部31bの下端は、上述した各溝部6c,4c,3c,5cの上端、及び6速用シフトヘッド7aの溝部7cの5速側へのシフト操作方向に面している上端に対して所定に離間した位置に設けられている。従って、シフトインナレバー31をシフト操作方向(Y方向)へスライドさせても、6速用レバー部31bが各溝部6c,4c,3c,5cの上端、及び6速用シフトヘッド7aの溝部7cの5速側へのシフト操作方向に面している上端と干渉することがない。
【0028】
従って、例えば、ニュートラルの状態から、シフトインナレバー31の先端部31aを5速用シフトヘッド6aの溝部6cに係合させた後、5速側へシフトさせると、シフトインナレバー31の先端部31aが5速用シフトヘッド6aを介して5速用反転シフトフォークロッド6を、図7に示すように後方へスライドさせるが、このとき、6速用シフトヘッド7aの溝部7cの上端が、シフトインナレバー31の6速用レバー部31bと干渉しない位置にあるため、6速用シフトフォークロッド7は移動しない。一方、シフトインナレバー31をニュートラルの状態からシフトインナレバー31の先端部31aを5速用シフトヘッド6aの溝部6cに係合させた後、6速側へシフトさせると、溝部6cがシフトインナレバー31の先端部31aで押圧され、又、6速用シフトヘッド7aの先端に形成されているレバー受面7dが、シフトインナレバー31に形成されている6速用レバー部31bにて押圧される。但し、5速用シフトヘッド6aは5速用反転シフトフォークロッド6に対して移動自在にされているため、6速用シフトフォークロッド7のみがスライドする。
【0029】
次に、このような構成による本実施形態の作用について説明する。運転者がシフトレバーを、図2に示すシフトパターンのセレクト操作方向(X方向)へ移動させると、このシフトレバーに連設するセレクトシャフト2が回動する(図4参照)。そして、このシフトレバーを1−2速シフト位置に臨ませると、セレクトシャフト2に固設されているシフトインナレバー31の先端部31aが、1−2速用シフトヘッド3aの先端に形成された溝部3cに係入される。又、シフトインナレバー31に形成されている6速用レバー部31bの下端は、1−2速用シフトヘッド3aの上端よりも上方にあるため、この6速用レバー部31bが他のシフトヘッド4a,6a,7a等と干渉することはない。
【0030】
その後、シフトレバーを1速にシフトさせると、1−2速用シフトヘッド3aの溝部3cに係入されているシフトインナレバー31の先端部31aが、1−2速用シフトヘッド3aを軸着する1−2速用シフトフォークロッド3を、図1の右方向(後方)へスライドさせる。すると、図3に示すように、この1−2速用シフトフォークロッド3にシフトフォーク3bを介して連設されているシンクロ機構26bが出力軸22をスライドし、1速ギヤ列G1に係入して、1速ギヤ列G1と出力軸22とを連結して動力伝達状態にする。又、シフトレバーを2速にシフトさせると、1−2速用シフトフォークロッド3が、図1の左方向(前方)へ移動し、シンクロ機構26bが2速ギヤ列G2に係入して、2速ギヤ列G2と出力軸22とを連結して動力伝達状態にする。
【0031】
又、シフトレバーを3−4速シフト位置へ移動させると、シフトインナレバー31の先端部31aが3−4速用シフトヘッド4aの溝部4cに係入され、この状態からシフトレバーを3速にシフトさせると、シフトインナレバー31の先端部31aが、3−4速用シフトヘッド4aを押圧し、この3−4速用シフトヘッド4aを固設する3−4速用シフトフォークロッド4を図1の左方向(後方)へスライドさせる。すると、この3−4速用シフトフォークロッド4に固設されているシフトフォーク4bを介してシンクロ機構26cがカウンタ軸23上をスライドして、3速ギヤ列G3に係入し、この3速ギヤ列3Gとカウンタ軸23とを連結して動力伝達状態にする。更に、シフトレバーを4速にシフトさせると、3−4速用シフトフォークロッド4が、図1の左方向(前方)へ移動し、シンクロ機構26cが4速ギヤ列G4とカウンタ軸23とを連結して動力伝達状態にする。
【0032】
又、シフトレバーを5−6速シフト位置に臨ませると、シフトインナレバー31の先端部31aが、5速用シフトヘッド6aの溝部6cに係入する(図4〜図6参照)。次いで、シフトレバーを5速にシフトさせると、シフトインナレバー31の先端部31aが5速用シフトヘッド6aの溝部6cを後方へ押圧する。すると、5速用シフトヘッド6aが5速用反転シフトフォークロッド6に沿って、図7の右方向(後方)へスライドする。尚、このとき、上述したように、シフトインナレバー31に形成されている6速用レバー部31bの下端が、Rev用シフトヘッド5aの上端面よりも上方にあるため、この6速用レバー部31bが隣接する6速用シフトヘッド7aに干渉することはない。
【0033】
そして、5速用シフトヘッド6aが後方へスライドすると、この5速用シフトヘッド6aの後端が5速用反転シフトフォークロッド6に設けたリング状フランジ6dに当接しているため、このリング状フランジ6dを介して5速用反転シフトフォークロッド6が同方向へ移動する。このとき、ワンウェイ機構11のワンウェイボール11aは、5速用シフトヘッド6aに穿設されている孔部11bと共に移動し、6速用シフトフォークロッド7の外周面に乗り上げて、5速用反転シフトフォークロッド6の凹部11cとの間に挟持される。
【0034】
すると、この5速用反転シフトフォークロッド6に連設する反転レバー8が回動し、この反転レバー8の回動により5速−Rev用シフトフォークロッド5が、図7の左方向(前方)へスライドして、この5速−Rev用シフトフォークロッド5に連設するシフトフォーク5bに支持されている5速−Rev用シンクロ機構26aが出力軸22をスライドし、この出力軸22と入力軸21とを連結させて直結状態にする。
【0035】
ところで、シフトレバーを5速にシフトして、5速用反転シフトフォークロッド6を後方へスライドさせると、インタロック機構12が動作する。すなわち、図8に示すように、インタロックボール12aが、5速用反転シフトフォークロッド6の外周面に乗り上げ、6速用シフトフォークロッド7の凹部12cとの間に挟持され、6速用シフトフォークロッド7が固定される。
【0036】
その後、シフトレバーを5速からニュートラル位置へ戻すと、シフトインナレバー31の先端部31aが5速用シフトヘッド6aをニュートラル方向へ戻す。この5速用シフトヘッド6aと5速用反転シフトフォークロッド6とは、5速用反転シフトフォークロッド6に形成された凹部11cに掛止されているワンウェイボール11aを介して一体動作するため、5速用反転シフトフォークロッド6も同方向へスライドする。その結果、反転レバー8が逆方向へ回動し、5速−Rev用シフトフォークロッド5を後方へ戻し、ニュートラル状態にする。
【0037】
図4〜図6に示すように、シフトレバーが5−6速シフト位置に臨まされた状態では、先端部31aが5速用シフトヘッド6aの溝部6cに係入され、6速用レバー部31bの前面が、6速用シフトヘッド7aの上部に形成されたレバー受面7dに当接されている。従って、この状態で、シフトレバーを6速にシフトすると、5速用シフトヘッド6aと6速用シフトヘッド7aとが一体で前方へスライドする。
【0038】
6速用シフトヘッド7aは6速用シフトフォークロッド7に軸着されているため、この6速用シフトフォークロッド7も同方向へ一体に移動する。その結果、6速用シフトフォークロッド7に固設されている6速用シフトフォーク7bを介してシンクロ機構26dがカウンタ軸23をスライドし、6速ギヤ列G6に係入し、この6速ギヤ列G6とカウンタ軸23とを連結して、動力伝達状態にする。
【0039】
ところで、6速用シフトヘッド7aと5速用シフトヘッド6aとが一体でスライドすると、ワンウェイボール11aは5速用シフトヘッド6aに穿設されている孔部11bと共に移動し、5速用反転シフトフォークロッド6の外周面に乗り上げて、6速用シフトフォークロッド7の凹部11dとの間に挟持される。又、インタロック機構12のインタロックボール12aが6速用シフトフォークロッド7の外周面に乗り上げて、5速用反転シフトフォークロッド6の凹部12bとの間に挟持されるため、5速用反転シフトフォークロッド6がスライドすることなく固定される。
【0040】
その後、シフトレバーを6速からニュートラル位置へ戻すと、シフトインナレバー31の先端部31aが5速用シフトヘッド6aをニュートラル方向へ戻す。この5速用シフトヘッド6aと6速用シフトフォークロッド7とは、6速用シフトフォークロッド7に形成された凹部11dに掛止されているワンウェイボール11aを介して一体動作するため、5速用シフトヘッド6の移動に伴って6速用シフトフォークロッド7も同方向へスライドして戻される。又、6速用シフトヘッド7aは6速用シフトフォークロッド7に固定されているため、この6速用シフトヘッド7aも戻される。
【0041】
又、シフトレバーをRevシフト位置に臨ませると、シフトインナレバー31の先端部31aが5速−Rev用シフトヘッド5aの溝部5cに係入される。そこから、シフトレバーをリバースにシフトすると、5速−Rev用シフトヘッド5aが、図1の右方向(後方)へ移動し、この5速−Rev用シフトヘッド5aに一体の5速−Rev用シフトフォークロッド5が同方向へスライドする。その結果、この5速−Rev用シフトフォークロッド5に固設されているシフトフォーク5bが5速−Rev用シンクロ機構26aを出力軸22に沿ってスライドさせ、リバースギヤ列GRに係入し、このリバースギヤ列GRと出力軸22とを連結して、動力伝達状態にする。又、シフトレバーをニュートラル位置へ戻せば、上述と逆の動作で、リバースギヤ列GRから5速−Rev用シンクロ機構26aが外れ、変速機はニュートラル状態となる。
【0042】
ところで、5速−Rev用シフトフォークロッド5が後方へ移動すると、反転レバー8を介して5速用反転シフトフォークロッド6が前方へスライドする。すると、この5速用反転シフトフォークロッド6に設けられているリング状フランジ6dが5速用シフトヘッド6aを同方向へ押圧する。その結果、ワンウェイボール11aが5速用反転フォークロッド6の凹部11cに収まった状態で6速用シフトフォークロッド7の外周面に乗り上げて挟持される。又、この状態では、インタロック機構12のインタロックボール12aが、5速用反転シフトフォークロッド6の外周面に乗り上げて、6速用シフトフォークロッド7の凹部12cとの間に挟持され、6速用シフトフォークロッド7が固定される。
【0043】
一方、この状態からシフトレバーをニュートラル位置に戻すと、5速−Rev用シフトフォークロッド5を介して反転レバー8が逆転し、5速用反転シフトフォークロッド6を戻そうとする。このとき、この5速用シフトヘッド6aと5速用反転シフトフォークロッド6とは、5速用反転シフトフォークロッド6に形成された凹部11cに掛止されているワンウェイボール11aを介して一体動作するため、5速用シフトヘッド6aもニュートラル位置に戻される。
【0044】
このように、本実施形態によれば、既存の5段変速機に6速を追加して6段変速機とした場合であっても、6速へのシフト操作は1つのシフトインナレバー31を用いてできるため、構造の複雑化を招くことがなく、部品点数の増加、及び装置全体の大型化を回避することができる。
【0045】
又、6速用シフトヘッド7aを戻す際には、5速用シフトヘッド6aを動作させ、ワンウェイ機構11を介して6速用シフトヘッド7aを戻すようにしたので、構造をより簡素化させることができる。
【0046】
尚、本発明は上述した実施形態に限るものではなく、例えば、5速は直結タイプである必要はなく5速をギヤ列で構成しても良い。又、追加するギヤは6速等の高速側に限らず、既存の1速よりも低速側のスーパーローであっても良い。この場合、上述した6速用シフトヘッド7aをスーパーロー用シフトヘッドとして、5速−Rev用シフトヘッド5aの隣に配設し、このスーパーロー用シフトヘッドと5速−Rev用シフトヘッド5aとを1つのシフトインナレバー31で操作するようにする。
【符号の説明】
【0047】
1…変速操作装置、
2…セレクトシャフト、
5…5速−Rev用シフトフォークロッド、
5a…5速−Rev用シフトヘッド、
6…5速用反転シフトフォークロッド、
6a…5速用シフトヘッド、
6c,7c…溝部、
6d…リング状フランジ、
7…6速用シフトフォークロッド、
7a…6速用シフトヘッド、
7d…レバー受面、
8…反転レバー、
11…ワンウェイ機構、
11a…ワンウェイボール、
11b…孔部、
11c,11d…凹部、
12…インタロック機構、
12a…インタロックボール、
12b,12c…凹部、
21…入力軸、
22…出力軸、
26a…5速−Rev用シンクロ機構、
26d…6速用シンクロ機構、
31…シフトインナレバー、
31a…先端部、
31b…6速用レバー部、
G6…6速ギヤ列、
GI…入力ギヤ列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セレクト操作に応じて軸回りに回動し、シフト操作に応じて軸線方向へ移動するセレクトシャフトと、
前記セレクトシャフトから軸径方向に延在するシフトインナレバーと、
前記セレクトシャフトの回動方向に配設されて前記シフトインナレバーの先端部に選択的に係合自在な複数のシフトヘッドと、
前記各シフトヘッドに対応して設けられ、前記シフトインナレバーの動作により選択された変速段に係合して入力軸からの動力を出力軸側へ伝達可能とする複数のシンクロ機構と
を備える手動変速機の変速操作装置において、
前記複数のシフトヘッドの内の1つのシフトヘッドに該複数のシフトヘッドとは異なる別のシフトヘッドが隣接した状態で配設され、
前記別のシフトヘッドの上部のシフト操作方向の一方の面にレバー受面が設けられ、
前記シフトインナレバーに、該シフトインナレバーの前記先端部が前記他のシフトヘッドに隣接している前記1つのシフトヘッドに係合している状態で前記レバー受面に当接するレバー部が形成され、
前記レバー部の下端が前記複数のシフトヘッドの上端に対して所定に離間された位置に配設されている
ことを特徴とする手動変速機の変速操作装置。
【請求項2】
前記別のシフトヘッドが前記セレクトシャフトと同方向へ平行に延出する第1シフトロッドに固設され、
前記1つのシフトヘッドが前記第1シフトロッド及び該第1シフトロッドと同方向へ平行に延出する第2シフトロッドに移動自在に支持され、
前記第1シフトロッドに、前記1つのシフトヘッドの前記シフト操作方向の他方の面に当接する掛止部が設けられ、
前記1つのシフトヘッドに、該1つのシフトロッドに対して前記第1シフトロッドと前記第2シフトロッドとの一方を選択的に連結させる機構が設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の手動変速機の変速操作装置。
【請求項3】
前記第1シフトロッドと前記複数のシフトヘッドの内の他の1つのシフトヘッドを固設する第3シフトロッドとが反転レバーを介して連設されている
ことを特徴とする請求項2記載の手動変速機の変速操作装置。
【請求項4】
前記1つのシフトヘッドが5速用シフトヘッド、前記別のシフトヘッドが6速用シフトヘッド、前記第1シフトロッドが5速用反転シフトフォークロッド、前記第2シフトロッドが6速用シフトフォークロッド、前記第3シフトロッドが5速−リバース用シフトフォークロッドであり、
前記5速−リバース用シフトフォークロッドが5速と該5速に対向配設されたリバースとの間に配設されたシンクロ機構に連設され、6速用シフトフォークロッドが6速ギヤ列側に配設された他のシンクロ機構に連設されている
ことを特徴とする請求項3記載の手動変速機の変速操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−113387(P2013−113387A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260689(P2011−260689)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】