説明

手動式接点開閉システム

【課題】 手動操作装置で接点の開閉をする開閉システムであっても、接地を解除する前に誤って接点を閉じてしまうことを抑制する。
【解決手段】 断路器用の手動操作装置9の付近に、端子板ケース15を配置する。端子板ケースは、フレーム内の接地導体に接地される。操作レバー6を操作して回転軸11を回転させて断路器を開放する(図示の状態)。この状態から、操作レバーを取り外し、主回路導線に接続された接地リード線7の先端に取り付けた端子板20を端子板ケースに装着すると、作業接地された状態となる。この状態では、端子板が回転軸の穴部11aの手前に位置し、操作レバーの穴部への装着を阻止する。よって、作業接地の状態で手動操作装置を操作して断路器を投入することが抑止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断路器その他の開閉装置の接点を開閉(切入)する接地機能付きの手動式接点開閉システムに関するもので、接地操作を確実に行える技術に関する。
【背景技術】
【0002】
キュービクル式高圧受電設備その他の受変電設備を点検する場合、作業者は、点検作業を実施できるよう遮断器により負荷電流を遮断し、 次に断路器を開放して点検箇所を無電圧状態にし、更に主回路導体に作業接地を取り付けて、作業の安全を確保してから点検を開始する。また作業終了後は、作業接地を取り外した後に断路器の投入および遮断器の投入を実施し復電を行う。
【0003】
作業接地は、接地リード線の両端に例えばワニロクリップ状のアースフックを取り付けたものを用意し、一方のアースフックを主回路導体の所定位置に挟み込んで固定して電気的に導通させるとともに、他方のアースフックをキュービクル式高圧受電設備の筐体(フレーム)の所定位置(通常、底面側近傍の接地導体)に挟み込んで固定して電気的に導通させている。また、作業終了後は、主回路導体および筐体の所定位置に取り付けたアースフックを取り外して作業接地を取り外す。
【0004】
断路器の投入/開放を行うための装置としては、電気的なスイッチ操作に伴い断路器の接点の開閉(切入)操作を行う「電動操作装置」と、本発明が対象とする着脱可能な操作レバーを装着しそれを手動操作により回転動作させて断路器の接点の開閉動作を行う「手動操作装置」がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−340073
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、点検作業終了後は、作業接地を取り外した後で断路器を投入するが、このとき誤って作業接地を取り外さないまま断路器を投入した場合、地絡事故となり受変電設備の損傷さらには人命に関わる重大な事故につながるおそれがある。そこで、係る事故の発生を未然に防止するため、電動操作装置の場合には、特許文献1等に開示された操作ロック機能を付加し、作業接地された状態では断路器が投入されないようにしている。
【0007】
しかし、本発明が対象とする手動操作装置の場合、係る操作ロック機能はなく、断路器の投入前に作業接地を解除することは、もっぱら作業者の注意にゆだねているのが現状であり、手動操作装置においても作業接地状態では断路器の投入がされないような構成にしたいという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、(1)開閉装置の接点を開閉する手動操作装置と、その手動操作装置の周囲に配置される接地機構と、を備え、前記手動操作装置は、回転軸に設けた装着部に操作レバーを着脱自在に装着し、その操作レバーを、前記回転軸を中心に正逆回転することで前記接点の開閉を行うように構成し、前記接地機構は、常時接地されている端子板ケースと、その端子板ケースに対して着脱自在に装着される端子板とを備え、前記端子板は、前記開閉装置に接続される主回路に導通されるとともに、前記端子板ケースに装着された前記端子板は、前記接点が開のときに位置する前記装着部に対する前記操作レバーの装着を阻止するように構成した。開閉装置は、実施形態では断路器に対応する。
【0009】
この発明では、接点を開いた状態(実施形態では、断路器が開放(切)の状態)で端子板を端子板ケースに装着すると、主回路が端子板から端子板ケースを経由して接地される。この状態では、装着部に操作レバーを装着できないため、回転軸を回転させることができず、接点が開から閉に切り替えられてしまうことが阻止できる。よって、主回路が接地されているときに誤って開閉装置の接点が閉じてしまい、地絡事故を発生することを未然に防止できる。
【0010】
(2)前記回転軸の回転に連動して前記端子板ケースの開口部を開閉するシャッターを設け、前記接点が閉のときには開口部を閉じて前記端子板の前記端子板ケースへの装着を阻止し、前記接点が開のときには開口部を開いて前記端子板の前記端子板ケースへの装着を可能とするように構成するとよい。開口部を開くとは端子板ケースへ端子板を挿入可能にできることを意味し、開口部を閉じるとは端子板ケースへ端子板を挿入不可にすることを意味する。よって、本発明では、開口部にシャッターが接触する必要はなく、前方所定位置に位置していても良い。
【0011】
このようにすると、接点が閉のときには端子板を端子板ケースに挿入できないので、接点が閉じているときに(接点を開く前に)誤って端子板を端子板ケースに装着してしまうおそれを未然に防止できる。
【0012】
(3)前記端子板ケースへの前記端子板の装着の有無を検知するセンサを設けるとよい。センサは、実施形態では、マイクロスイッチとしているが、近接センサその他各種のセンサを用いることができる。このようにすると、センサの出力に基づき所定の出力手段から端子板の装着状態を報知することができるので、端子板の装着の有無、すなわち、接地(作業接地)の有無をより確実に知らせることができる。
【0013】
(4)前記端子板ケースへ装着した前記端子板を固定する固定機構を備えるとよい。固定機構は、実施形態では、ハンドル17付きの固定ネジ17a等により実現される。このようにすると、点検作業中等において端子板が不用意に端子ケースから離脱して接地が解除されてしまうおそれが可及的に抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、手動操作装置で接点の開閉をする開閉システムであっても、接地を解除する前に誤って接点を閉じてしまうことが抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好適な一実施形態を示す全体構成図である。
【図2】要部を拡大して示す側面図である。
【図3】その平面図である。
【図4】その斜視図である。
【図5】その斜視図である。
【図6】変形例1を示す側面図である。
【図7】その平面図である。
【図8】変形例2を示す側面図である。
【図9】その平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施形態・変形例に共通する基本的な構成]
図1は、本発明の好適な一実施形態であるキュービクル式高圧受電設備における配電盤1の側面図を示している。この配電盤1の外壁を構成するフレーム2内の所定位置に配置された主回路導体3に断路器4が挿入される。断路器4は、連結ロッド5を介してフレーム2の直近に配置された手動操作装置9に連携される。この手動操作装置9の動作に連動して、断路器4の「入」「切」が切り替わる。
【0017】
すなわち、手動操作装置9は、操作レバー6が着脱自在に装着されるようになっており、その操作レバー6の先端を装着した状態で当該先端の装着した部分を中心に操作レバー6を正逆回転させることで、その動作に追従してリンク機構を構成する連結ロッド5が所定の軌跡で移動して断路器4の投入(入)/開放(切)を行う。操作レバー6の手前側(作業員が持つ操作ハンドル部)を下に位置させると断路器4は投入されて「入」の状態となり、当該手前側を上に位置させると断路器4は開放されて「切」の状態になる。係る動作を行うための具体的な構造は、以下の通りである。
【0018】
図2〜図5に示すように、上下方向に延び、適宜位置で折り曲げられて構成されるベースプレート10が、その上下端にてフレーム2に連結された連結プレート14に固定される。ベースプレート10の中央部位10aは、連結プレート14の取付面と反対側に突出するように構成される。その中央部位10aには、複数の支柱13を介して平板矩形状の保持プレート12が取り付けられる。そして、この中央部位10aと保持プレート12間に渡るように回転軸11が正逆回転可能に取り付ける。図5に示すように、この回転軸11の周面の所定位置には、操作レバー6の装着部たる穴部11aが設けられている。この穴部11a内に操作レバー6の先端が挿入され、回転軸11と操作レバー6が一体化する。また、回転軸11aの先端は保持プレート12の外側に突出しており、当該先端が連結ロッド5のリンクを構成する連結レバー5aと連結される。ここでは、ボルト・ナットにより締結しており、回転軸11と連結レバー5aが一体に回転する。つまり、回転軸11の穴部11a(操作レバー6)と連結レバー5aの相対角度が固定され、操作レバー6により回転軸11が回転すると連結レバー5aも回転軸11を中心に回転する。これにともない、連結レバー5aその他の部品とともにリンクを構成するに連結ロッド5が移動し、断路器4の「入」「切」を制御する。
【0019】
換言すると、回転軸11は、断路器4の投入(入),開放(切)のための操作レバー6の回転動作に伴い回転する。そして、遮断器4が「切」のときには回転軸11に設けた穴部11aも斜め上を向いた第1位置に位置し、遮断器4が「切」のときには回転軸11に設けた穴部11aも斜め下を向いた第2位置に位置する。なお、係る構成は従来公知のものであるので、その詳細な説明を省略する。
【0020】
[実施形態の特徴]
ここで本実施形態では、この手動操作装置9の付近に、フレーム2の接地導体に常時導通している端子板ケース15を設ける。操作レバー6を操作して回転軸11を回転させて断路器4を開放する(図4,図5参照)。この状態から、操作レバー6を取り外すことで、端子板ケース15に端子板20が装着可能となる。
【0021】
そこで、接地リード線7の一端にワニ口クリップ状のアースフック8を備え、他端に平板状の端子板20を備えた接地用補助具を用意し、当該アースフック8を主回路導体3に挟み込んで導通するとともに、端子板20を端子板ケース15に装着する。端子板ケース15並びに端子板20は金属製の導電体から構成しているため、端子板20を端子板ケース15に装着することで、主回路導体3→アースフック8→接地リード線7→端子板20→端子板ケース15→フレーム2の接地導体と導通するため、主回路導体3は接地される(前提として、上述したように断路器4が開放している)。
【0022】
端子板ケース15はL字プレートから構成しており、折り曲げられた先端15bをフレーム2の所定位置に面接触させ、その状態でボルト・ナット等を用いて固定する。この先端15bをフレーム2の接地導体と接触させると、上記のボルト・ナット等による機械的な固定と同時に電気的な導通が行える。なお、端子板ケース15の先端15bが当該接地導体に接触しない場合、リード線等を用いて接地導体に導通させる。
【0023】
端子板ケース15は、その上下にガイドレール16を備え、端子板20はそのガイドレール16に案内・支持され、端子板20の長手方向に沿って着脱自在に往復移動する。さらに端子ケース15には、ハンドル17付きの固定ネジ17aが取り付けられている。この固定ネジ17aに符合するように、端子板20の先端にはU字状の切欠部20aが形成される。これにより、端子板20を端子板ケース15に装着すると、切欠部20a内に固定ネジ17aが入り込むので、その状態でハンドル17を所定方向に回転して固定ネジ17aを締め付けることで、ハンドル17と端子板ケース15との間で端子板20を挟み付けて固定できる。よって、点検作業中において、端子板20が端子板ケース15から離脱して作業接地が解除されることが抑止できる。
【0024】
そして、端子板20を端子板ケース15に装着した状態では、少なくとも第1位置にある穴部11aの前方を端子板20が覆い、操作レバー6を穴部11aに装着できないようにしている(図2等参照)。これにより、端子板20を端子板ケース15に装着した作業接地の状態では、第1位置に位置している回転軸11の穴部11aに操作レバー6を装着することができないので、回転軸11を回転させて断路器4を投入して「入」にすることもできない。よって、断路器4を投入する前には、その前工程として端子板20を端子板ケース15から取り外す必要がある。この工程を行うことで、作業接地の状態が解除されるため、作業接地状態の時に誤って断路器4を投入してしまう事故の発生を未然に防止できる。
【0025】
さらに本実施形態では、端子板ケース15の所定位置に貫通孔15aを設け、その貫通孔15aの後側にマイクロスイッチ19を設けている。貫通孔15aには、マイクロスイッチ19のセンサ部を配置している。これにより、端子板20を端子板ケース15に装着すると、マイクロスイッチ19が端子板20を検知して検知信号を出力する。よって、係る検知信号に基づき、例えば図示省略するランプを点灯させたり、表示パネルに所定のメッセージを出力させたりすることができる。
【0026】
本実施形態では、端子板ケース15並びに端子板20が、手動操作装置9の付近、すなわち、フレーム2に近接して配置されているので、作業員は、端子板20が端子板ケース15に装着されているか否かを視認して確認することが容易にできる。よって、作業接地の有無を確認し、現在の状態に適しているか否かを認識して適切な状態にすることができる。
【0027】
[変形例1](シャッター付き)
上記の実施形態では、端子板20を端子板ケース15に挿入している場合には、操作レバー6を回転軸11の穴部11aに挿入できず、作業接地の状態で断路器4が投入されて「入」状態になるのを抑止している。しかし、断路器が「入」の状態で端子板20を端子板ケース15に装着して作業接地の状態になるおそれが残る。
【0028】
そこでこの変形例1では、図6,図7に示すように、端子板ケース15の端子板20の挿入側を開閉するシャッター25を設けた。つまり、図中実線で示すように、操作レバー6が下側に位置(穴部11aが第2位置に位置)して断路器4が「入」の場合、シャッター25は、端子板ケース15の開口部の前に位置し閉塞する。この状態では、端子板20を端子板ケース15に挿入できないため、断路器4が「入」の場合に誤って作業接地状態になることはない。
【0029】
シャッター25は、回転軸11に連携されており、回転軸11の正逆回転に追従して移動し、実線で示す端子板ケース15の開口部を閉塞する位置と、90度回転して二点鎖線で示す端子板ケース15の開口部を開放する位置の間を正逆回転する。よって、操作レバー6の手前側(作業員が持つ操作ハンドル部)を上に持ち上げて断路器4を開放すると、端子板ケース15の開口部も開放するので、端子板20を挿入して作業接地を行うことが可能となる。
なお、その他の構成並びに作用効果は、上述した実施形態と同様であるため、対応する部材に同一符号を付し、その詳細を説明する。
【0030】
[変形例2](マイクロスイッチ無し)
図8,図9は、さらに別の変形例を示している。図示の例は、上述した実施形態を基本とし、マイクロスイッチを設けない構成とした。これにより、構成が簡略化する。なお、その他の構成並びに作用効果は、上述した実施形態と同様であるため、対応する部材に同一符号を付し、その詳細を説明する。また、具体的な図示は省略するが、上記の変形例1に示すシャッター付きのタイプにおいてマイクロスイッチを設けない構成を採っても良い。
【0031】
[その他の変形例]
上述した実施形態並びに変形例では、装着部として回転軸11に穴部11aを設け、当該穴部11a内に操作レバー6の先端を挿入するようにしたが、穴部に替えて回転軸11の周面に突起を設けるとともに操作レバーの先端に設けた凹部を設け、当該突起と凹部を符合させるようにしてもよい。このように装着部は、操作レバーが回転軸に連結できればよく、その形状は穴部・突起はもちろん各種の構造をとることができる。
【0032】
[他の装置への適用]
上述した実施形態並びに変形例では、キュービクル式高圧受電設備に実装される断路器を開閉するシステムに適用した例を説明したが、本発明はこれに限ることはなく、負荷開閉器,遮断器,その他の各種の開閉装置に適用することができる。また、容量の大小も問わないし、設置場所は、受電設備、発電所、変電所等の各所に適用できる。
【符号の説明】
【0033】
1 配電盤
2 フレーム
3 主回路導体
4 断路器
5 連結ロッド
6 操作レバー
7 接地リード線
8 アースフック
9 手動操作装置
10 ベースプレート
11 回転軸
11a 穴部
12 保持プレート
13 支柱
14 連結プレート
15 端子板ケース
16 ガイドレール
17 ハンドル
17a 固定ネジ
19 マイクロスイッチ
20 端子板
20a 切欠部
25 シャッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉装置の接点を開閉する手動操作装置と、
その手動操作装置の周囲に配置される接地機構と、を備え、
前記手動操作装置は、回転軸に設けた装着部に操作レバーを着脱自在に装着し、その操作レバーを、前記回転軸を中心に正逆回転することで前記接点の開閉を行うように構成し、
前記接地機構は、常時接地されている端子板ケースと、その端子板ケースに対して着脱自在に装着される端子板とを備え、
前記端子板は、前記開閉装置に接続される主回路に導通されるとともに、前記端子板ケースに装着された前記端子板は、前記接点が開のときに位置する前記装着部に対する前記操作レバーの装着を阻止するように構成したことを特徴とする手動式接点開閉システム。
【請求項2】
前記回転軸の回転に連動して前記端子板ケースの開口部を開閉するシャッターを設け、
前記接点が閉のときには開口部を閉じて前記端子板の前記端子板ケースへの装着を阻止し、前記接点が開のときには開口部を開いて前記端子板の前記端子板ケースへの装着を可能とするように構成したことを特徴とする請求項1に記載の手動式接点開閉システム。
【請求項3】
前記端子板ケースへの前記端子板の装着の有無を検知するセンサを設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の手動式接点開閉システム。
【請求項4】
前記端子板ケースへ装着した前記端子板を固定する固定機構を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の手動式接点開閉システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate