説明

手動式油圧圧壊装置

【課題】手軽且つ安全に使用可能な手動式油圧圧壊装置の提供
【解決手段】手動式油圧圧壊装置1は、手動式油圧ポンプ機構20,30により作動される単動式油圧シリンダ機構50,60が作動された際に突出する圧壊工具57,67と、被圧壊物収容室96に対する被圧壊物Wの出し入れを許容する開口95を備えた被圧壊物配設筐体部9と、開口95を開閉する蓋部90と、該蓋部が開口を閉じる閉位置E1にある際に蓋部の閉位置E1から開位置E2への移動を禁止する禁止位置F2と該蓋部の閉位置E1から開位置E2への移動を許容する許容位置F1との間で可動な蓋開閉規制部材87と、該蓋開閉規制部材87が許容位置F1に設定されると油圧ポンプ機構の吐出側と油圧シリンダ機構とをつなぐ油路17を油溜に連通させ、該蓋開閉規制部材87が禁止位置F2に設定されると油路17と油溜との連通を断つ戻し弁機構81とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被圧壊物の手動式油圧圧壊装置に係り、より詳しくは、ハードディスク装置のような情報記録体を圧壊して、該情報記録体の保持情報へのアクセスを不能化するに適した手動式油圧圧壊装置に係る。
【0002】
この明細書で、「情報記録体」とは、情報が記録されて該情報を保持するもの全般を指し、ハードディスク装置(以下では「HDD装置」ともいう)やDVDやCDやICカードの如き情報記録媒体だけでなく、携帯電話の如き携帯情報端末等のように情報が記録されて該情報を保持する機器も含む。また、この明細書で、「圧壊」とは、対象物(被圧壊物)の一部(被圧壊部)に対して押圧力を加えて、該被圧壊部を壊すことをいい、押圧力により被圧壊部を壊し得る限り、該被圧壊部に突き刺さったり該被圧壊部を貫通したりすることにより該被圧壊部に穴を明けても、該被圧壊部を少なくとも部分的に押し潰したり凹ませる等のように変形させても割ってもよい。被圧壊物について、「壊す」とは、該被圧壊物が本来の機能を果たし得ないように被圧壊部を機械的に壊すことをいい、被圧壊物が情報記録体である場合には、該情報記録体の保持情報へのアクセスを不能化するように該情報記録体を機械的に壊すことをいう。
【背景技術】
【0003】
油圧ポンプ機構と、該油圧ポンプ機構から吐出される油の油圧により作動される油圧シリンダ機構と、該油圧シリンダ機構のピストンに取付けられ油圧シリンダ機構が作動された際に突出する圧壊工具と、前記油圧シリンダ機構の先端側に被圧壊物の収容室を形成すると共に前記圧壊工具の進退方向に交差する方向に前記収容室に対する被圧壊物の出し入れを許容する開口を備えた被圧壊物配設筐体部とを有し、HDD装置の如き情報記録体等を圧壊する圧壊装置は知られている(例えば、特許文献1)。出願人が、開発し既に製造販売しているこの装置は、情報記録体の廃棄の際における情報記録体の情報漏洩を防止するものとして、市場に定着しつつある。
【0004】
なお、出願人が現に製造・販売している装置は、実際には、油圧ポンプ機構が電動式の油圧ポンプからなるものであることから、小型化に限度があって重さが20Kg程度あり且つ製造コストの低減にも限度があり、情報記録体等の販売店舗などに配置して簡便に使用するには必ずしも適さない。
【0005】
一方、油圧ポンプ機構として、手動式の油圧ポンプ機構を備えた圧壊装置も「記録媒体上のデータ破壊装置」として一応提案されている(特許文献2)。
【0006】
この特許文献2で提案されている圧壊装置は、いわゆる手動式の油圧ジャッキの先端すなわち上端に形成した凹部にピンとしてコンクリート用の釘を挿入載置しておいて、手動で油圧ジャッキを作動させることにより上端の釘をその上に配置したHDD装置等に押込むものである。この釘は、破壊(圧壊)作業終了時には被圧壊物たるHDD装置等に突き刺さったまま残る。このように釘が突き刺さったままでは分解作業が容易ではなく、HDD装置等のリサイクルに支障をきたす虞れがある。
【0007】
このような装置の使用に際して釘の動作領域に手等を近づけると怪我等の危険があるけれども、特許文献2では、そのような危険は一切考慮されていない。
【0008】
なお、特許文献2の発明を製品化した装置は「盤止安心」という商品名で販売されている。この製品化装置では、一応装置本体がケース内に収容されているけれども、この製品化装置においても、ケースの扉を開放した状態でも装置は同様に動作されるので、操作者の危険は変らない。特に、この装置では、破壊(圧壊)作業終了時には、被圧壊物たるHDD装置等をこれに突き刺さったピンと共に取り出す必要があり且つ被圧壊物の装着の前に新たなピンを取り付ける必要があることから、作業を行う度に扉を大きく開くことは必須であり、扉は必ず開かれる。従って、一旦開かれた扉が閉じられないまま作業が行われる虞れがある。
【0009】
また、この製品化装置では、扉には、ジャッキを操作するためのレバーが貫通し且つ該レバーを上下に回動させる長孔が形成されている。ジャッキを作動させるためには、長孔から突出したレバーを押し下げる必要があるけれども、このレバーの押下げの際に、ケースの上部が手前に倒れる虞れがあり、装置の操作が不安定で装置を操作し難くなるのを避け難い。
【0010】
なお、油圧ではなく機械的なリンク機構及びレバーを利用して携帯電話のような携帯端末を破壊するための「携帯端末破壊工具」として、パンチ部が水平方向に進退するようにすると共に、ほぼ上下方向に回動可能な操作レバーを備えたものは、提案されている(特許文献3)。この特許文献3に提案の携帯端末破壊工具は、「ケータイパンチ」という商品名で販売されている。
【0011】
しかしながら、この特許文献3の提案においても製品化装置においても、パンチ部の突出領域への手等のアクセスを妨げる手段は実際上何らなく、操作者等が怪我をする危険がある。
【0012】
以上において言及した先行技術文献をリストすれば次のとおりである。
【特許文献1】特開2004−316841号公報
【特許文献2】実用新案登録第3108834号公報
【特許文献3】特開2005−64629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前記諸点に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、手軽に且つ安全に使用可能な手動式油圧圧壊装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の手動式油圧圧壊装置は、前記目的を達成すべく、手動式の油圧ポンプ機構と、該手動式油圧ポンプ機構から吐出される油の油圧により作動される単動式の油圧シリンダ機構と、該油圧シリンダ機構のピストンに取付けられ油圧シリンダ機構が作動された際に突出する圧壊工具と、前記油圧シリンダ機構の先端側に被圧壊物の収容室を形成すると共に前記圧壊工具の進退方向に交差する方向に前記収容室に対する被圧壊物の出し入れを許容する開口を備えた被圧壊物配設筐体部と、前記開口を開閉する蓋部と、該蓋部が前記開口を閉じる閉位置にある際に該蓋部の閉位置から開位置への移動を禁止する蓋開放禁止位置と該蓋部の閉位置から開位置への移動を許容する蓋開放許容位置との間で可動な蓋開閉規制部材を備えた蓋開閉規制機構と、該蓋開閉規制部材に結合され、該蓋開閉規制部材が蓋開放許容位置に設定されると、油圧ポンプ機構の吐出側と油圧シリンダ機構とをつなぐ油路を油溜に連通させ、該蓋開閉規制部材が蓋開放禁止位置に設定されると、前記油路と油溜との連通を断つ戻し弁機構とを有する。
【0015】
本発明の手動式油圧圧壊装置では、以上のような構成を有するが故に、蓋開閉規制機構の蓋開閉規制部材を蓋開放許容位置に設定して蓋部を開くことにより被圧壊物配設筐体部の開口を露出させ、該開口を介して被圧壊物をその収容室に配設し、次に、蓋部を閉じた後、蓋開閉規制機構の蓋開閉規制部材を蓋開放禁止位置に設定し、更に、手動式油圧ポンプ機構を作動させることにより、油圧シリンダ機構を作動させて、圧壊工具を収容室内にある被圧壊物に強く押付けて、被圧壊物を圧壊し得る。
【0016】
本発明の手動式油圧圧壊装置では、特に、蓋部を開くべく蓋開閉規制機構の蓋開閉規制部材を蓋開放許容位置に設定した際には、蓋開閉規制部材に結合された戻し弁機構が油圧ポンプ機構の吐出側と単動式の油圧シリンダ機構とをつなぐ油路を油溜に連通させるので、油圧シリンダ機構には油圧がかからないから、蓋部が開放可能な状態においては単動式油圧シリンダ機構のピストンが後退する故、被圧壊物の収容室に圧壊工具が突出する虞れがない。従って、操作者が、圧壊工具により不測の怪我をする危険がない。また、本発明の手動式油圧圧壊装置では、蓋部を閉じ且つ該蓋部の開放を禁止する蓋開放禁止位置に蓋開閉規制部材を設定して初めて、油圧ポンプ機構の吐出側と油圧シリンダ機構とをつなぐ油路と油溜との戻し弁機構による連通が断たれ、単動式油圧シリンダ機構の作動が可能になるので、油圧シリンダ機構への油圧の供給が可能で圧壊部材が突出可能な状態では、蓋部は必ず閉まっているから、操作者が誤って被圧壊物の収容室内に手等を入れてしまう虞れがなく、操作者が、圧壊工具により不測の怪我をする危険がない。
【0017】
以上において、蓋部並びに蓋開閉規制機構及び蓋開閉規制部材は、蓋部が前記開口を閉じる閉位置にある際に該蓋部の閉位置から開位置への移動を禁止する蓋開放禁止位置と該蓋部の閉位置から開位置への移動を許容する蓋開放許容位置との間で可動である限り、どのような形状や構造や配置であってもよい。すなわち、蓋部は、被圧壊物配設筐体部の被圧壊物収容室の開口近傍において並進可能でも一軸のまわりで回動可能であってもより複雑な揺動等他の種類の変位をするように被圧壊物配設筐体部に取付けられていてもよい。また、蓋開閉規制部材は、蓋部から離れた箇所にある一軸のまわりで回動可能であっても被圧壊物配設筐体部に対して並進可能でも他の種類の変位をするように該被圧壊物配設筐体部に取り付けられていてもよく、場合によっては、錠前のように蓋部自体に取り付けられていてもよい。なお、蓋開閉規制部材は、戻し弁機構に結合される限り、該戻し弁機構に直接取付けられても蓋開閉規制機構の他の部材等を介して戻し弁機構に間接的に取付けられていてもよい。
【0018】
以上の如く構成される本発明の手動式油圧圧壊装置では、動力源として電力を要しないので、どこでも手軽に使用可能である。但し、所望ならば、信号制御のために小型の電池等で動作される制御機器が組込まれてもよい。
【0019】
本発明の手動式油圧圧壊装置では、典型的には、前記蓋開閉規制部材が、前記被圧壊物配設筐体部を含む筐体の外壁に対して回動可能なレバー部材であって、回動中心から扇形に拡がった外縁を備えたものからなる。
【0020】
この場合、扇により規定される角度範囲内でレバー部材が回動される限り、レバー部材が、典型的には蓋部の側縁に係合して、蓋部の開放を禁止し得る。従って、レバー部材が通常採るべき蓋開放禁止位置の基本位置からある程度レバー部材が回動されても、レバー部材が蓋部の開放を確実に禁止し得る。但し、所望ならば、レバー部材が閉位置にある蓋部の外表面の外側に配置されて該外表面の外側への変位を規制することにより蓋部の開放を規制する場合には、レバー部材は、扇形の代わりに単なる棒状など他の形状を有していてもよい。
【0021】
なお、ここで、筐体は手動式油圧圧壊装置の筐体を指し、被圧壊物配設筐体部を内部に含んでいても、被圧壊物配設筐体部の表面が手動式油圧圧壊装置の筐体の表面の一部になるように被圧壊物配設筐体部を筐体の一部として組込んであるものであってもよい。
【0022】
本発明の手動式油圧圧壊装置では、典型的には、前記蓋部が、外向きに突出した凸部を備えると共に蓋開閉規制部材に近接する側の側縁において該蓋部の表面と平行な回動中心軸線のまわりで回動可能に取付けられている。
【0023】
この場合、蓋開閉規制部材がその扇形の外縁で蓋部の凸部の側縁に係合し易いので、蓋部の開放が、蓋開閉規制部材によって確実に禁止され得る。また、蓋部の外表面に凸部を形成することにより、蓋部の内表面に凹部を形成することが可能になるから、被圧壊部材収容室の容積を最大限に大きく採り得る。
【0024】
但し、所望ならば、蓋開閉規制部材が蓋開放禁止位置を採る際に蓋開閉規制部材の先端部分が蓋部の外表面の外側に位置するようにしておいてもよく、その場合、蓋部は凸部を有していなくてもよく、また、蓋部が蓋開閉規制部材に近接する側の側縁の代わりに蓋開閉規制部材から離れた側の側縁において被圧壊物配設筐体部に対して回動可能に取付けられていてもよい。
【0025】
本発明の手動式油圧圧壊装置では、典型的には、前記蓋開閉規制機構が前記蓋開閉規制部材の回動中心に沿って該蓋開閉規制部材に取付けられた回動中心軸部を有し、該回動中心軸部が筐体に螺合されたねじ部を備え、該回動中心軸部の回動に応じて該回動中心軸部が戻し弁機構の弁部材を開位置に変位し得るように構成されている。
【0026】
この場合、レバー部材が所定の角度範囲にわたる蓋開放禁止位置(蓋開放禁止領域)において蓋開放許容位置に向かって回動される際に、該回動により戻し弁機構の弁部材に徐々に近接せしめられる。また、レバー部材が更に回動されることにより回動中心軸部が戻し弁機構の弁部材に当接して蓋開放許容領域に入った後該弁部材に徐々に増加する変位力を加えて戻し弁機構を開くことが可能になる。
【0027】
本発明の手動式油圧圧壊装置では、典型的には、前記油圧ポンプ機構の吐出側と前記油圧シリンダ機構とをつなぐ前記油路の圧力が所定圧壊圧に達すると該圧壊圧の圧油によって変位されて該圧壊圧への到達を知らせる圧壊作業終了報知機構を更に有する。
【0028】
この場合、圧壊部材による圧壊状況を外部から視認できなくても、圧壊作業の終了を確実に知り得る。また、この場合、圧壊部材の変位が所望変位に達したか否かではなく、作動圧が所定圧力に達したか否かによって、圧壊を制御するので、被圧壊物の状況に応じた所望の圧壊を行い得る。即ち、圧壊部材が被圧壊物の所望の強度(弱さ)の被圧壊部に押付けられる場合には、作動圧が所定圧力に達することにより、圧壊部材は被圧壊物の被圧壊部を圧壊し得る。特に、圧壊部材が被圧壊物を貫通しなくても、被圧壊物に所望の変形を加えたこと確実に検出し得る。一方、圧壊部材が偶々被圧壊物のうち所望の被圧壊部とは異なって剛性の高い部位に押付けられた場合には、実際上圧壊できないので、過度に大きな作動圧を発生する前に、圧壊作業を停止することが可能になる。
【0029】
加えて、圧壊作業終了報知機構は、油圧ポンプ機構の吐出側と油圧シリンダ機構とをつなぐ油路の圧力が所定圧壊圧に達すると該圧壊圧の圧油によって変位されて該圧壊圧への到達を知らせるものであるから、電気的な制御を要しないので、手動環境の油圧ポンプと相俟って、電気的なエネルギ源がなくても、動作可能である。勿論、所望ならば、電池のような電源を備えていてもよい。
【0030】
このような圧壊作業終了報知機構は、典型的には、弾性手段により閾圧力が規定されたプランジャ状部材又はこれに結合されたピン状部材からなる。その場合、作動圧が所定の圧力に達すると弾性手段の弾性偏倚力に打ち勝ったプランジャ部材の変位を検出することにより、所定作動圧への到達を検出し得る。この場合、典型的には、所定作動圧に達すると、プランジャ部材(又はピン状部材)の先端部が、筐体の表面から突出することにより、圧壊作業の終了が視認され得る。勿論、プランジャ部材等の変位は、先端部の突出の代わりに、窓内における着色部の移動や発音体の発音その他の報知手段で報知されてもよい。
【0031】
本発明の手動式油圧圧壊装置では、典型的には、前記油溜を構成する油室及びこれに連通した空気室を形成する室形成壁部と、前記油圧ポンプ機構の壁部本体部と、油圧シリンダ機構の壁部本体部とが、単一の一体のブロックにより形成され、前記油圧シリンダ機構の壁部本体部が該ブロック内において水平方向に延び、前記油室が前記ブロック内で油圧シリンダ機構の下側において水平方向に延び、前記空気室が前記ブロック内で油圧シリンダ機構の上側において水平方向に延びている。
【0032】
この手動式油圧圧壊装置では、「油溜を構成する油室及びこれに連通する空気室を形成する室形成壁部と、油圧ポンプ機構の壁部本体部と、油圧シリンダ機構の壁部本体部とが単一の一体のブロックにより形成され」ているので、液密な油路が容易且つ確実に形成され得る。また、この手動式油圧圧壊装置では、「油圧シリンダ機構の本体部が前記ブロック内において水平方向に延び」ているので、ブロックが安定に支持され得る。また、この手動式油圧圧壊装置では、更に、「油室が前記ブロック内で油圧シリンダ機構の下側において水平方向に延び、空気室が前記ブロック内で油圧シリンダ機構の上側において水平方向に延びている」ので、ブロックがコンパクトに形成され得るだけでなく、空気室が油溜の上方に効率的に配置され得る。また、この場合、少なくとも、ブロックの左右上部及び左右下部にブロックの固定のための領域を確保し得るから、ブロックと被圧壊物収容室形成用の被圧壊物配設筐体部とを確実に連結・固定し易い。なお、ここで、空気室は、可変容積室を形成し得る限り、その内部に油溜に連通された可撓性袋が配置されていても、空気室に両端で連通された可撓性のチューブ又は袋等がブロックの外側に配置されていてもよい。ゴムチューブの如き可撓性チューブがブロックの外側に配置される場合には、ブロックのコンパクトさを保ちながら、占有スペースを最小限にして可変容積室を確保し得る。
【0033】
但し、所望ならば、油溜や空気室と手動式ポンプと油圧シリンダ機構とのうちの少なくとも一部又は全てを別体で形成して配管でつないでもよい。また、所望ならば、手動ポンプに力を加えた際の載置安定性を別途確保する場合には、油圧シリンダ機構を水平に延在させる代わりに上下方向に延在させたり斜め方向に延在させてもよい。
【0034】
本発明の手動式油圧圧壊装置では、典型的には、前記単動式油圧シリンダ機構が、並列に配置され相互に独立に油圧を受ける複数の単動式油圧シリンダ機構部からなり、前記被圧壊物配設筐体部が、油圧シリンダ機構部の上下で且つ前記低圧油室形成壁部及び空気室形成壁部の左右において、前記一体ブロックに取付固定されており、前記圧壊工具が各油圧シリンダ機構部のピストンに取付けられている。
【0035】
この手動式油圧圧壊装置では、単動式油圧シリンダ機構として並列に配置され相互に独立に油圧を受ける複数の単動式油圧シリンダ機構部を備え、前記圧壊工具が各油圧シリンダ機構部のピストンに取付けられているので、複数の圧壊工具のうち一部の圧壊工具が被圧壊物の対応する部位を圧壊できなくても、複数の圧壊工具のうちの残りの圧壊工具が被圧壊物の対応する部位を圧壊し得るから、被圧壊物を確実に圧壊し易い。また、複数の油圧シリンダ機構部が二つの油圧シリンダ機構部からなる場合、該二つの油圧シリンダ機構部は、典型的には、水平に並設される。この手動式油圧圧壊装置では、油圧シリンダ機構部が複数あっても、油圧シリンダ機構部の上下で且つ前記油室形成壁部及び空気室形成壁部の左右において、ブロックの連結・固定領域を確保し易いから、ブロックの連結・固定を確実に行い得る。なお、所望ならば、単動式油圧シリンダ機構部が三つ以上並設されて相互に独立に油圧を受けるようになっていてもよい。複数の油圧シリンダ機構部は、典型的には同一の特性を有するけれども、所望ならば、異なる特性を有していてもよい。
【0036】
本発明の手動式油圧圧壊装置では、典型的には、手動式油圧ポンプ機構を作動させる操作レバーが、該操作レバーの先端の把持部をほぼ上下方向に変位させ得るように筐体の上側に配置されている。
【0037】
この手動式油圧圧壊装置では、油圧シリンダ機構が水平方向に延びていることと相俟って、装置が安定に載置された状態で、操作レバーを操作し得、作動圧を確実に発生し易い。なお、操作レバーの腕部を長く採るように、操作レバーの回動端部(基端部)は装置の筐体の長手方向の一端近傍に位置し、操作レバーの把持部(先端部)は筐体の他端近傍に位置する。操作レバーに押圧力をかけた際における装置の安定性を保証し得るように、操作レバーの把持部は、典型的には、筐体の前記他端側の脚部(支持底部)よりも内側に位置する。
【0038】
但し、所望ならば、操作レバーが水平な引上げ位置と手前(把持部)側程下方に位置する押圧位置との間で回動されるように筐体に取付けられていてもよい。その場合、大きな押圧力を加え易い。その場合、装置の筐体が手前側程低い位置を採ることになるので、油圧シリンダ機構を奥側に斜めに配置してもよい。但し、載置安定性を確保するような手段を講じておく(例えば、底部を手前に長く採ったり、装置の筐体を構造物などで支える)ことが好ましい。
【0039】
また、操作レバーに加える力が比較的小さな力でよい場合には、所望ならば、操作レバーの先端の把持部をほぼ上下方向に変位させるようにする代わりに、操作レバーを水平面内で回動させるようにしておいてもよい。
【0040】
本発明の手動式油圧圧壊装置では、典型的には、圧壊部材が被圧壊物に突き刺さり得る先細の先端部と、被圧壊物の表面に当接して該表面部を凹ませるべく該先端部の基端に形成された鍔状部とを備える。
【0041】
この手動式油圧圧壊装置では、圧壊部材が先細の先端部を備えるので、被圧壊物の被圧壊部に大きな局所的な応力を加え得るから被圧壊部を壊し易い。また、この手動式油圧圧壊装置では、圧壊部材の先端部を含む先端部分が被圧壊物の被圧壊部に深く貫入されたり該被圧壊部を突き抜けてしまうことを鍔状部により抑制し得、更に先端部が先細になっているので、圧壊作業の終了により作動圧の供給が解除されて油圧が下がった場合、圧壊部材の先端部が被圧壊物の対応する被圧壊部から容易且つ確実に抜け得る。従って、圧壊済みの被圧壊物の取出が容易であるだけでなく、被圧壊物のリサイクルのための分解も容易に行われ得る。
【0042】
本発明の手動式油圧圧壊装置では、典型的には、被圧壊物が廃棄用の情報記録体である。
【0043】
この場合、情報記録体の圧壊により、情報記録体からの情報の漏洩の虞れを避け得る状態で、情報記録体を廃棄し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本発明の好ましい一実施の形態を添付図面に示した好ましい実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0045】
図1から図4には、本発明の好ましい一実施例の手動式油圧圧壊装置1が示され、図5及び図6には手動式油圧圧壊装置1の低圧及び高圧ポンプ部が示され、図7には手動式油圧圧壊装置1の大半の部分を構成する一体化ブロックが示され、図8には、手動式油圧圧壊装置1の油圧回路が模式的に示されている。
【0046】
手動式油圧圧壊装置1は、筐体2内に、一体化ブロック3と、被圧壊物配設筐体部4とを有する。以下では、説明の簡明化のために、筐体2に固定された三次元直交座標系X,Y,Zを用いて、方向を表す。ここで、XY平面が水平面で、Z軸が上向き、X軸が図1で見て、水平方向右向きであるとする。
【0047】
図2〜図4及び図7からわかるように、一体化ブロック3は、例えばアルミニウム製の円柱状体からなり、その内部に作動油収容領域形成部(壁部)5と、手動式ポンプ形成部(壁部)6と、油圧シリンダ機構形成部(壁部)7とを一体的に備える。ブロック3には、各種の穴が形成されており、以下では、穴自体の配置等について説明すると共に該穴等が作動油等の流路であるとして説明する。以下において、穴の端部の封止については個別には説明せずまた図面でもその封止状態の表示を省いている箇所があるけれども、各穴本来の役割(機能)からして、穴の端部は必要に応じて封止されている。
【0048】
作動油収容領域形成部5は、ブロック3の水平方向中央部の下部において水平にブロック3の中心軸線の延在方向(即ちX方向)に延びた円柱状室の形態を有する油溜としての作動油収容タンク11と、YZ平面に平行な平面で見て該ブロック3の水平方向中央部の上部において水平にブロック3の延在方向Xに延びた円柱状室の形態を有する空気タンク12と、作動油収容タンク11と空気タンク12とを連通する二本以上の上下方向孔13,13と、空気タンク12の上端を外部に連通させる二本以上の大気連通孔14,14とを有する。大気連通孔14,14は、タンク11に作動油を入れるための孔であるけれども、外部に対して密閉された容積可変室を形成するために利用されてもよい。その場合、大気連通孔14,14は、例えば、図3において想像線15で示したように例えばゴムチューブの如き可撓性チューブにより接続される。典型的には、油溜11には作動油が満たされ、空気タンク12には空気が満たされている。勿論、空気タンク12の一部に作動油が入っていても、油溜11の一部に空気が入っていてもよい。空気タンク12は、油溜11よりも短い。なお、油溜11の奥端(X2方向端部)の小径部分11aには、フィルタ(図示せず)が配設されている。一例では、油タンク11の容積は100〜120cm程度で、空気タンク12の容積はその半分程度である。但し、所望量の油が容易に供給され得且つ作動油11が吐出された際に過度に減圧される虞れがない限り、夫々の容積や相対的な大きさは異なっていてもよい。
【0049】
図3、図5及び図6、並びに図7からわかるように、手動ポンプ形成部6は、低圧ポンプ形成部21及び高圧ポンプ形成部31を含む。
【0050】
図3、図5及び図7からわかるように、低圧ポンプ形成部21は、上端22で開口し上下方向Zに延びた大径シリンダ穴23と該シリンダ穴23の下端の一縁から上下方向Zに延びた細い上下方向低圧穴24と、該低圧穴24に連通しブロック3の横断方向Yに水平に延びた水平方向低圧穴25と、該水平方向低圧穴25の一端側で該穴25に斜めに交差した低圧ポンプ用弁形成穴26と、該水平方向低圧穴25の他端側で該穴25に斜めに交差した低圧リリーフ弁形成穴27とを含む。大径シリンダ穴23には、ポンプ用大径プランジャないしピストン部23Aが上下方向Z1,Z2に摺動可能に嵌合されている。低圧ポンプ用弁形成穴26には低圧用吸込弁部26A及び低圧用吐出弁部26Bが形成されている。低圧用吸込弁部26Aは、ボールの形態の低圧用吸込弁部材26Aa及びばね部26Abからなる。低圧用吐出弁部26Bは、低圧で開くチェック弁であり、ボールの形態の低圧用吐出弁部材26Ba及び逆止用ばね部26Bbからなる。低圧リリーフ弁形成穴27には、低圧リリーフ弁部27Aが形成されている。低圧用リリーフ弁部27Aは、低圧用リリーフ弁部材27Aa及び低圧ポンプのリリーフ圧を規定するばね部27Abからなる。この例では、低圧用リリーフ圧は、例えば、2MPaである。低圧ポンプ用弁形成穴26は、低圧用吸込弁部26Aの吸込側においてX方向に延び油溜11につながった吸込穴16に連通され、低圧用吐出弁部26Bの吐出側においてX方向に延びた高低圧連通穴17に連通されている。低圧リリーフ弁形成穴27は、低圧用リリーフ弁部27Aの吐出側において、X方向に延びたリリーフ戻し穴18を介して油溜11に連通されている。以上において、低圧ポンプ本体28は、シリンダ穴23及びこれに嵌合された低圧ピストン23Aと、穴23及び25をつなぐ穴24と、リリーフ弁27Aで閉じられた穴25と、穴25に連通した穴26のうち吸込弁26Aと吐出弁26Bとの間の領域とからなる。低圧ポンプ本体28では、おおまかには、穴24,25,26の関連部分の容積は無視してもよい。
【0051】
以上のように構成された低圧ポンプ20では、大径ピストン部23AがZ1方向に引上げられると低圧用吸込弁部26Aが開かれて油溜11の作動油が吸込穴16から吸込まれ、大径ピストン部23AがZ2方向に押下げられると低圧リリーフ圧(例えば2MPa)以下では低圧用吐出弁部26Bが開かれて作動油が高低圧連通穴17に吐出される。圧力が低圧リリーフ圧を越えると、低圧用リリーフ弁部27Aが開かれて、作動油がリリーフ戻し穴18を介して油溜11に戻される。
【0052】
高圧ポンプ形成部31も低圧ポンプ形成部21と同様に構成されている。即ち、図3、図6及び図7からわかるように、高圧ポンプ形成部31は、上端32で大径シリンダ穴23の下端の中央部に連通し上下方向Zに延びた小径シリンダ穴33と該シリンダ穴33の下部により規定され上下方向Zに延びた上下方向高圧穴34と、該高圧穴34に連通しブロック3の横断方向Yに水平に延びた水平方向高圧穴35と、該水平方向高圧穴35の一端側で該穴35に斜めに交差した高圧ポンプ用弁形成穴36と、該水平方向高圧穴35の他端側で該穴35に斜めに交差した高圧リリーフ弁形成穴37とを含む。小径シリンダ穴33には、上端で大径ピストン部23Aの下端部に一体的につながった高圧ポンプ用小径プランジャないしピストン部33Aが上下方向Z1,Z2に摺動可能に嵌合されている。高圧ポンプ用弁形成穴36には高圧用吸込弁部36A及び高圧用吐出弁部36Bが形成されている。高圧用吸込弁部36Aは、ボールの形態の高圧用吸込弁部材36Aa及びばね部36Abからなる。高圧用吐出弁部36Bは、高圧で開くチェック弁であり、ボールの形態の高圧用吐出弁部材36Ba及び逆止用ばね部36Bbからなる。高圧リリーフ弁形成穴37には、高圧リリーフ弁部37Aが形成されている。高圧用リリーフ弁部37Aは、高圧用リリーフ弁部材37Aa及び高圧ポンプのリリーフ圧を規定するばね部37Abからなる。この例では、高圧用リリーフ圧は、例えば、17MPaである。高圧ポンプ用弁形成穴36は、高圧用吸込弁部36Aの吸込側においてX方向に延び油溜11につながった吸込穴16に連通され、高圧用吐出弁部36Bの吐出側においてX方向に延びた高低圧連通穴17に連通されている。高圧リリーフ弁形成穴37は、高圧用リリーフ弁部37Aの吐出側において、X方向に延びたリリーフ戻し穴18を介して油溜11に連通されている。以上において、高圧ポンプ本体38は、シリンダ穴33に嵌合された高圧ピストン33Aと、穴33の下端部により規定され穴35につながった穴部34と、リリーフ弁37Aで閉じられた穴35と、穴35に連通した穴36のうち吸込弁36Aと吐出弁36Bとの間の領域とからなる。
【0053】
以上のように構成された高圧ポンプ30では、大径ピストン部23AのZ1方向の引上げに応じて小径ピストン部33AがZ1方向に引上げられると、高圧用吸込弁部36Aが開かれて油溜11の作動油が吸込穴から吸込まれ、大径ピストン部23AのZ2方向の押下げに応じて小径ピストン部33AがZ2方向に押下げられると、高圧リリーフ圧(例えば17MPa)以下では高圧用吐出弁部36Bが開かれて作動油が高低圧連通穴17に吐出される。油圧が高圧リリーフ圧を越えると、高圧用リリーフ弁部37Aが開かれて、作動油がリリーフ戻し穴18を介して油溜11に戻される。
【0054】
従って、高低圧連通穴17の油圧が2MPa以下の当初の状態では、低圧ポンプ20による作動油が大量に高低圧連通穴17に吐出され、高低圧連通穴17の油圧が2MPaを越えると、高圧の作動油が高圧ポンプ30により少しづつ高低圧連通穴17に吐出される。なお、この例では、手動式のポンプ機構が、低圧ポンプ20及び高圧ポンプ30の二種類のポンプを含むけれども、場合によっては、一種類のみでも三種類以上でも、組合せが変更可能でもよい。
【0055】
図3からわかるように、大径ピストン23Aは、連結機構41を介して操作レバー40に連結されている。より詳しくは、図示の例では、操作レバー40は、レバー本体42と、該レバー本体42の基端に一体的に形成された操作レバー連結部43とを備える。操作レバー連結部43は、筐体2から突設された支柱部44に対して支持軸部45のまわりで所定角度範囲内でA1,A2方向に回動可能に連結されると共に、連結ピン46を例えばその両端部で回転自在に支持している。支柱44は、ブロック3の支柱配設穴3jに下端部が挿設され、ブロック3のピン挿通穴3kに挿通された固定ピン3mによりブロック3に固定されている。連結ピン46は、軸方向中間部に面取りされた係合軸部46aを備え、該係合軸部46aがピストン23Aの上端の係合部47にX1,X2方向に摺動可能に係合されている。この係合部47は、この例では、凹部を備えた「コ」の字状端部47aと、該「コ」の字状端部47aの両側の壁部の上端に取付けられたピン47bとからなる。従って、操作レバー40がA1,A2方向に回動され及び連結ピン46が軸45のまわりで円弧に沿って回動される際、連結ピン46の面取り係合軸部46aは、該ピン47bの下面と「コ」の字状端部47aの凹部の底面との間で、ピストン23Aの上端係合部47に対してX1,X2方向に摺動可能である。
【0056】
その結果、操作レバー40のレバー本体42が、支持軸部45のまわりで、A1,A2方向に往復回動されると、大径ピストン23Aが大径シリンダ穴23内で、上下方向Z1,Z2方向に往復動される。操作レバー40がA方向に回動可能な角度範囲は、例えば、30度程度である。なお、操作レバー本体42は、図3において実線で示した下方回動位置にある際、実際上、X方向に延び、先端が筐体2のX方向端部の支持脚部2aとX方向のほぼ同じ位置にくるような長さを有する。所望ならば、支柱44を高めに突設しておいて、操作レバー40の下方位置では、操作レバー40の把持部42aが連結部側端部よりも下方に位置するようにしてもよい。
【0057】
図4及び図7からわかるように、ブロック3には、更に、上下方向Zに関して油溜11と空気タンク12との中間で且つ左右方向Yに関して油溜11及び空気タンク12の両側に油圧シリンダ機構形成用シリンダ形成穴51,61が形成されている。図2及び図7からわかるように、シリンダ形成穴51,61は、X方向に延び、ブロック3のX方向端面3aで開口している。シリンダ形成穴51,61には、剛性や摺動性や耐磨耗性を付与するための金属製の内張り金属筒52,62が嵌着されている。この内張り金属筒52,62は、ピストン53,63がX1,X2方向に摺動自在に嵌合されるシリンダ穴を形成する大径穴部54,64と、段差部を介して大径穴部54,64につながった小径穴部55,65とを有する。ピストン53,63と被圧壊物配設筐体部9の後述する隣接壁部98との間には戻しばね56,66が配設されている。
【0058】
また、ピストン53,63には、圧壊工具ないし圧壊部材57,67が基端部で固定されている。勿論、その代わりに、ピストン53,63に一端で固定されたピストンロッドの突出端に圧壊部材57,67が基端部で固定されているとみなしてもよい。圧壊部材57,67は、細長い棒状の軸部57a,67aと、先端の圧壊作業部58,68とからなり、軸部57a,67aは、小径穴部55,65を貫通して突出する。圧壊作業部58,68は、先細の先端押込み部58a,68aと、軸部57a,67aの先端により規定される鍔状部58b,68bとを含む。先端押込み部58a,68aは、この例では、先端側の頂角の大きい円錐状部58c,68cと、これに連続的につながった基端側の頂角の小さい円錐台状部58d,68dとを有する。
【0059】
シリンダ形成穴51,61は、ピストン53,63の基端側において作動油圧付与用の油室として働く小径穴部51a,61aにおいて、ポンプ20,30の逆止弁26B,36Bの吐出側につながった高低圧連通穴17に、直接又は連通穴19を介して連通されている。
【0060】
より詳しくは、ブロック3のX1方向端部には、被圧壊物配設筐体部9が配置され、ブロック3のX方向端面3aに取付けられている。被圧壊物配設筐体部9は、−Y方向(Y2方向)端部に開口95を備えた直方体状の被圧壊物収容室96を形成する周壁部97を有する。従って、被圧壊物Wは、開口95を介して、被圧壊物収容室96にY1,Y2方向に差込まれたり該室96から取出されたりされ得る。
【0061】
被圧壊物配設筐体部9は、周壁部97のうち−X方向(X2方向)端部に位置する壁部98で、ブロック3の端面3aに対して該ブロック3の四箇所のボルト取付穴3e(図7の(c)参照)においてボルト3f(図3参照)により固定されている。なお、ブロック3のうち油タンク11及び空気タンク12は端面3aで開口した穴からなり、該穴の開口部が壁部98の対応部分によりシールリングを介して気密に閉じられることによって、油タンク11及び空気タンク12が形成されている。被圧壊物配設筐体部9は、脚部2a,2b等と共に、止めねじ(図示せず)でケースないし筐体2に固定されると共に頂部の止めねじで筐体2に固定されている。また、ブロック3が、ケース取付穴3n,3n(図7の(j))に固定される止めねじにより一端でケースないし筐体2に固定されている。
【0062】
壁部98は、油圧シリンダ機構部50,60の小径穴部55,65と一列に並んだ貫通孔98a,98bを有し、圧壊部材57,67が、該孔98a,98bを貫通して、被圧壊物収容室96内にX1方向に突出可能(X2方向に引込み可能)である。
【0063】
周壁部97のうち+X方向(X1方向)端部に位置する壁部99は、隣接周壁部98c,98d,98e等(図2に加えて図3参照)に支持されて、被圧壊物Wを背後から支える。なお、壁部99の内面99aは、圧壊部材57,67が最大限X方向に突出された際(図2において想像線57i,67iで示した状態)でも圧壊部材圧壊部材57,67の先端との間に間隙Gが残るような位置を採る。これにより、圧壊部材57,67の先端部58,68が被圧壊物Wを完全に突抜けるのを避け、作業終了時の圧壊部材57,67の抜取りを容易にして被圧壊物Wの圧壊後の廃棄・リサイクル等のための分解を容易にすると共に、過度の押圧力をかけるのを避け得るようにしている。間隙Gの大きさは例えば2〜3mm程度である。但し、用途ないし圧壊対象物Wの種類やサイズ等に応じて、より大きくてもより小さくてもよい。
【0064】
筐体2には開口95を開閉する蓋90が設けられている。蓋90は、中心軸線Dを規定するピン状軸部91のまわりでD1,D2方向に回動可能に一側縁92で筐体2に取付けられている。蓋90は、箱状の本体部93を備え、蓋90が閉じた状態(図2において実線で示した位置)E1では箱状本体部93の内側の凹部94が被圧壊物収容室96に臨む。蓋90が閉じた状態E1では、箱状本体部93の側壁93b,93cは、Y方向に突出した壁部を形成する。従って、被圧壊物収容室96内の被圧壊物Wは箱状本体部93の底壁93aの近傍までY2方向に突出し得る。また、この蓋90ではピン状軸部91が蓋本体部93の左側(筐体中央部側)に位置するので、蓋90は、開かれる際にD2方向に回動し、図2において想像線で示した状態E2を採る。蓋90は、閉位置E1及び開位置E2において、蓋90又は筐体2に設けた永久磁石で、筐体2に軽く吸着・保持され得る。
【0065】
以上のように構成された単動式の油圧シリンダ機構50,60では、作動レバー40のA方向の往復回動により圧油が高低圧連通穴17を介して小径穴部ないし油室51a,61aに送り込まれると、ピストン53,63がX1方向に押出されると共に該ピストン53,63と一体的な圧壊部材57,67がX1方向に押出されて、被圧壊物収容室96内に収容された被圧壊物Wに対する所望の圧壊作業が行われる。圧壊作業が終了して小径穴部ないし油室51a,61aへの油圧の付与が解除されると、ピストン53,63及び圧壊部材57,67は、戻しばね56,66により引込み位置にX2方向に戻される。なお、この例では、二つの同一の単動式油圧シリンダ機構部50,60が並列に配置されているけれども、場合によっては、一つの単動式油圧シリンダ機構のみがあっても、三つ以上の単動式油圧シリンダ機構が並列に配置されていてもよい。また、単動式油圧シリンダ機構が複数ある場合、その特性は相互に又は一部(三つ以上の場合)が異なっていてもよい。
【0066】
図3及び図7からわかるように、ブロック3は、更に、作動油の圧力が所定の作動圧ないし圧壊圧に達したことを検出する圧力センサ形成部71を備える。圧力センサ形成部71は、油圧シリンダ機構部50,60の駆動側の油室の一部を形成する小径穴部51a,61aにつながった連通穴19に下端で連通し+Z方向に延びた作動油圧感知穴部72と、これにつながりブロック3の周面の頂部で開口したセンサ本体配置穴部73とを備える。センサ本体配置穴部73には、圧力センサ本体74が装着されている。圧力センサ本体74は、この例では、作動油感知穴部72に挿設された圧力感知ピン75と該ピン75の基端に取付けられた圧力表示体76と、該圧力表示体76を下向きZ2方向に押えるばね部77と、該ばね部77の押圧力が調整可能なようにブロック3のセンサ本体配置穴部73に螺合されたセンサ筐体部78とを有する。75aはシール部材である。圧力表示体76は、センサ筐体部78の頂部の貫通孔78aに挿入された細長いピン状表示部79を上端部に備える。連通穴19の油圧が所定の圧力すなわち所定の圧壊圧(例えば、15MPa、但し、より大きくても、より小さくてもよい)に達すると、圧力表示体76が、圧力感知ピン75にかかる力によりばね部77のばね力に抗してZ1方向に押上げられ、ピン状表示部79がセンサ筐体部78の貫通孔78aの上端開口78bから筐体2の外部に突出する。この突出長は、容易に視認し得る程度であればよく、例えば、3mm程度である。但し、より大きくてもより小さくてもよい。ピン状表示部79の先端は赤色等に着色されていてもよい。また、所望ならば、作動圧で作動される圧電素子等により短時間発光するLED等が突出位置で駆動されて光を発するようになっていてもよい。
【0067】
以上の如く構成された圧壊作業終了報知機構としての圧力センサ70では、油圧シリンダ機構部50,60にかかる油圧が所定の圧壊圧に達すると、ピン状表示部79が突出するので、操作者は、圧壊作業の終了を容易に視認し得る。
【0068】
図2からわかるように、高低圧連通穴17には、該高低圧連通穴17と油溜11との間を連通遮断する戻し弁81が設けられている。この戻し弁81は、図2及び図3からわかるように、ブロック3内でZ方向に延び油溜11につながった戻し穴82とブロック3内でX方向に延びた高低圧連通穴17との間において、ブロック3内でY方向に延びた戻し弁形成穴83に形成されている。該戻し弁形成穴83は、中径穴部83a,83bと、該穴部83a,83bをつなぐ小径穴部83cと、中径穴部83a,83bの両端側に形成された大径穴部83d,83eとを含む。中径穴部83aは高低圧連通穴17と交差・連通し、中径穴部83bは戻し穴82と交差・連通している。中径穴部83aには、弁ボール84a及び弁ばね84bが配置され、該中径穴部83aと小径穴部83cとの間に形成された弁座部84cに対して、弁ばね部84bの弾性力及び連通穴17内の油圧により、ボール84aが押付けられて、弁流路を閉じる。84dは、大径穴部83dに螺着され弁ばね84bを支える封止壁部である。
【0069】
戻し弁81には、該戻し弁81の作動機構85が結合されている。戻し弁作動機構85は、先端がボール84aに係合可能で基端が筐体2の外に突出した作動軸部86を有する。作動軸部86は、押しピン86aと、中径軸部86bと、大径ねじ部86cと、戻しレバー取付端部86dとを備える。押しピン86aは、小径穴部83cに遊嵌され先端部がボール84aに押付け可能ないし係合可能である。中径軸部86bは、中径穴部83b内に相対動可能に且つ液密に嵌合され先端部に押しピン86aの基端側部分が嵌合又は嵌着される穴部を備える。大径ねじ部86cは、中径軸部86bの基端側に一体的に形成され、大径穴部83eの雌ねじ部に螺合される。この例では、大径ねじ部86cのねじは、左ねじである。戻しレバー取付端部86dは、大径ねじ部86cの基端側に形成され、筐体2の外側に位置する。
【0070】
従って、戻しレバー取付端部86dが、中心軸線BのまわりでB1方向に回動されると、作動軸部86がY1方向に押込まれ、押しピン86aがボール84aをY1方向に押して戻し弁81を開き、高低圧連通穴17と戻し穴82とを連通させる。一方、戻しレバー取付端部86dが、B2方向に回動されると、作動軸部86がY2方向に後退し、ボール84aが弁座部84cに当接して戻し弁81が閉じられ、高低圧連通穴17と戻し穴82との連通が遮断される。
【0071】
戻しレバー取付端部86dには、蓋開閉規制部材としての戻しレバー87が取付けられ、その外側には、戻しレバー87の回動範囲を規制する回動規制部88が設けられている。この例では、蓋開閉規制機構は、蓋開閉規制部材としての戻しレバー87及びその回動中心軸部として働く作動軸部86と、回動規制部88とからなる。図1及び図2からわかるように、戻しレバー87は扇形の外形を有し、扇87aを規定する基端部87bと、相互に角度Qをなす側縁87c,87dと、円弧状の外縁87eとを備え、更にほぼ三角形状ないし扇形の開口87fを備える。回動規制部88は、円板88aと、部位88b,88cにおいて該円板88aと筐体2とをつなぐ棒状連結部88d,88eと、部位88fにおいて円板88aと筐体2とをつなぐこれらと同様な別の棒状連結部88gとを有する。
【0072】
戻しレバー87がB1方向に回動される場合、戻しレバー87の側縁87cが回動規制部88の部位88bにある棒状連結部88dに当接する位置(図1において想像線87iaで示す位置)F1で、戻しレバー87のB1方向回動が規制され停止される。この位置は、戻し弁81が大きく開かれる位置すなわち弁開放許容位置のうち弁全開位置に対応する。一方、戻しレバー87がB2方向に回動される場合、戻しレバー87の側縁87dが回動規制部88の部位88cにある棒状連結部88eに当接する位置(図1において実線で示す位置)F2で、戻しレバー87のB2方向回動が停止される。なお、図1において想像線87icで示した戻しレバー87の位置F3が、戻し弁81の開閉の限界位置(B1方向に回動させる場合についていえば戻し弁81が開き始める位置で、B2方向に回動させる場合についていえば戻し弁81が実際上閉じる位置)に対応する。すなわち、戻しレバー87が、位置F3よりもB1方向に回動された位置を採ると戻し弁81が開かれた状態を採り、戻しレバー87が位置F3から遠く位置F1に近い回動位置を採る程、戻し弁81の弁開度が大きくなる。位置F1では戻し弁81が実際上全開状態になる。一方、戻しレバー87が、位置F3よりもB2方向に回動された位置を採ると戻し弁81は閉じた状態を採る。戻しレバー87が位置F3から遠く位置F2に近い回動位置を採る程、作動軸部86の押しピン86aと戻し弁81の弁ボール84aとの間隙が大きくなる。
【0073】
ここで、戻しレバー87の限界位置F3は、図1の想像線87icからわかるように、丁度、蓋90のD2方向開放が可能(又は不可能)になる境界の位置である。位置F2と位置F3との間の回動角度は例えば30度程度であり、位置F3と位置F1との間の回動角度は例えば90度程度である。但し、一方若しくは他方又は両方がより大きくてもより小さくてもよい。
【0074】
戻しレバー87が位置F2と位置F3との間にある場合、戻しレバー87の円弧状外縁部87eが、閉状態E1にある蓋90の側縁部93bの変位を実際上禁止する。また、戻しレバー87が位置F3よりもF1側に回動された位置を採る場合に限り、蓋90がD2方向に開き得る。従って、この例では、厳密には、蓋開放禁止位置は、位置F2と位置F3との間の位置(位置F2を含む)をいい、蓋開放許容位置は、位置F1と位置F3との間の位置(位置F1を含む)をいう。但し、典型的又はおおまかには、安定な位置F2を蓋開放禁止位置とみなし得、安定な位置F1を蓋開放許容位置とみなし得る。
【0075】
即ち、この手動式油圧圧壊装置1では、被圧壊物収容室96内に手等を入れ得る程度に蓋90が開放可能な状態では、戻しレバー87は、臨界位置F3よりもB1方向にズレた位置を採り、戻し弁81が開かれる。従って、ポンプ20,30の吐出側に位置し油圧シリンダ機構部50,60に作動油圧を与える高低圧連通穴17が戻し穴82に連通され、油圧シリンダ機構部50,60には油圧がかからず、圧壊部材57,67は作動されず、X2方向に引込んだままである。換言すれば、油圧シリンダ機構部50,60に油圧をかけ圧壊部材57,67を作動させるためには、戻しレバー87を位置F3よりもB2方向に回動させる必要があり、そのためには、蓋90を実際上閉位置E1に閉じる必要がある。すなわち、蓋90を閉じない限り、油圧シリンダ機構部50,60には油圧がかからず、圧壊部材57,67は作動されない。
【0076】
一方、蓋90が閉位置E1に移動されると、戻しレバー87を位置F3よりもB2方向に回動し得る。この状態では、戻し弁81が閉じられ、油圧シリンダ機構部50,60に油圧をかけ、圧壊部材57,67を作動させ得る。このように、戻し弁81が閉じられ、油圧シリンダ機構部50,60に油圧をかけ圧壊部材57,67を作動させ得る状態では、戻しレバー87が位置F3よりもB2方向に回動した位置を採るので、蓋90をD2方向に回動させようとすると、蓋90の本体部93の側縁93bが戻しレバー87の円弧状縁部87eに当たる。それ故、蓋90のD2方向回動が禁止され、蓋90は閉じた状態E1のまま保たれる。すなわち、油圧シリンダ機構部50,60に油圧をかけ圧壊部材57,67を作動させ得る状態では、蓋90の開放は、戻しレバー87により禁止される。
【0077】
従って、操作者が被圧壊物収容室96内に手等を入れた際に、圧壊部材57,67により不測の怪我などをする虞れがない。
【0078】
なお、手等の挿入が実際上不可能であるある限り、蓋90が閉位置E1から開位置E2に向かって多少とも開かれるのを許容する位置、即ち位置F3よりも多少B1方向に回動した所望位置に戻しレバー87が設定されてはじめて(換言すれば、戻しレバー87が前記所望位置よりもB1方向にずれた位置を採る場合に限り)、戻し弁81が閉じられるようになっていてもよい。また、より安全性を確保するために、蓋90のD2開動作が可能になる前に戻し弁81が開かれるように、蓋90D2方向の開動作を許容する限界位置F3よりも更にB2方向に多少回動した位置が戻し弁81の開閉の臨界位置になっていてもよい。
【0079】
以上の如く構成された本発明による好ましい一実施例の手動式油圧圧壊装置1の操作及び動作について、被圧壊物WとしてHDD装置(例えば、いわゆる3.5インチのもの)を圧壊する場合を例にとって、より詳しく説明する。
【0080】
まず、手動式油圧圧壊装置1を店舗や事務所等のテーブルや台等の上に載せる。なお、装置1の持ち運びや移動を容易にすべく、図1において想像線8で示したように、操作レバー40の把持部42aに取外し可能に引掛ける係止手段を設けておいてもよく、その場合、操作レバー40の腕部42bを手で掴んで持ち上げるだけで、装置1を持ち運んだり移動させたりし得る。この例で示した手動式油圧圧壊装置1は、筐体2の高さ及び幅が夫々15〜20cm程度で長さが25〜30cm程度のものである場合、10kg程度の重さで形成され得るので、その持ち運びや移動は容易に行われ得る。
【0081】
次に、係止手段8を外すと共に、戻しレバー87をB1方向に回動させて準備位置F1に設定する。なお、装置1の非使用時には戻しレバー87はどの位置にあってもよいけれども、典型的には、蓋90を閉状態に保つ位置F2に設定される。
【0082】
戻しレバー87を準備位置F1に設定した状態では、戻し弁81が開かれるので、操作レバー40の状態にかかわらず、油圧シリンダ機構部50,60には作動圧はかからない。従って、油圧シリンダ機構部50,60に一体化された圧壊部材ないし圧壊工具57,67は、単動式油圧シリンダ機構部50,60の戻しばね56,66により、X2方向に引っ込められた状態を採り、圧壊工具57,67が被圧壊物収容室96内に突出することはない。また、圧力センサ70の圧力表体76は、ばね77によりZ2方向に押込まれた位置を採るので、該圧力表示体76のピン状表示部79も孔78a内に引込んだ位置を採る。
【0083】
次に、閉位置E1にある蓋90を開いて開位置E2に設定する。なお、蓋90がD2方向に開放可能であるためには、装置1では、戻しレバー87が準備位置F1と戻し弁開閉境界位置F3との間にある必要がありその場合戻し弁81が開かれているので、蓋90が多少なりとも(実際上)開状態にある限り、油圧シリンダ機構部50,60が油圧で作動される虞れはなく、蓋90が開いている状態で、手等を被圧壊物収容室96内に入れても、怪我などをする虞れはない。
【0084】
次に、例えば廃棄しようとしているHDD装置Wからの情報の漏洩を防ぐために該HDD装置Wの記録情報の読取の不能化を目的としてHDD装置Wを機械的に壊すべく、HDD装置Wを開口95から被圧壊物収容室96内に挿入し、被圧壊物収容室96内に載置する。このとき、典型的には、室96の奥にあたるまで挿入する。HDD装置Wが3.5インチのものであっても、そのHDD装置Wの筐体内での各種部品等の配置が異なることにより剛性(硬さないし機械的強度)の分布が異なり得るけれども、この圧壊装置1では、並列に配置された油圧シリンダ機構部50,60が二つあるので、いずれか一方の油圧シリンダ機構部50又は60に結合された圧壊部材57又は67で圧壊が行われ得るから、HDD装置の種類や挿入の向きは多くの場合無視してもよい。なお、HDD装置がよりサイズの小さいHDD装置である場合、HDD装置の圧壊されるべきディスク等が圧壊部材57,67に対面する高さ位置にくるように、例えば、高さ位置や奥行きを調整し得る治具となる基台に被圧壊物Wを載せて被圧壊物収容室96内に挿設するようにしてもよい。
【0085】
前述のように、蓋90が開いている状態では、戻し弁81が開いた状態であるので、圧壊部材57,67は被圧壊物収容室96内に突出していることはないから、被圧壊物たるHDD装置Wは、圧壊部材57,67等によって妨げられることなく被圧壊物収容室96内の所望位置に挿設され得る。また、蓋90が開いている状態では、戻し弁81が開いた状態であるので、油圧シリンダ機構50,60には油圧がかからないから、別の人が誤って操作レバー40をA1,A2方向に往復動させても、圧壊部材57,67が室96内に突然突出してくるようなこともない。
【0086】
HDD装置Wの配設が終了すると、蓋90を閉じ、更に、戻しレバー87を準備位置F1からB2方向に回動させて作業位置F2に設定する。戻しレバー87が作業位置F2に設定されると、戻し弁81は完全な閉状態に設定される。なお、蓋90が閉位置E1に完全に位置決めされてしまった状態でない限り、戻しレバー87が蓋90にぶつかるので、戻しレバー87が境界位置F3を越えて作業位置F2に設定されることはない。すなわち、蓋90が完全に閉まっていない限り、戻しレバー87は作業位置F2に設定され得ない。ここで、位置F3とF2との間の回動範囲における蓋90の開放禁止は、円弧状部87eによって保証される。
【0087】
戻しレバー87が作業位置F2に設定されると、今度は、作業位置F2にある戻しレバー87が蓋90の開くのを妨げる。すなわち、戻しレバー87が作業位置F2にある限り、蓋90は開かない。
【0088】
次に、操作レバー40の本体部42の把持部42aを手で握って、操作レバ40ーをA1方向に回動させる。なお、筐体2は全体として10kg程度の重量があるので、操作レバー40の回動操作に際して筐体2が動いてしまう虞れは少ないけれども、作業者が力を加え易くするためには、典型的には、操作レバー40の把持部42aを持っていない方の手(他方の手)で筐体2を押える。但し、該他方の手は筐体2が載置されているテーブルや台の上に載せてもよい。
【0089】
操作レバー40をA1方向に回動させるように把持部42aをA1方向に引き上げると、ピストン23A及びこれと一体的な高圧ピストン33AがZ1方向に引上げられ、吸込弁26A,36A及び吸込穴16を介して油溜11の作動油が低圧及び高圧ポンプ20,30内に吸込まれ、操作レバー40をA2方向に回動させるように把持部42aをA2方向に押さえつけると、ピストン23A及びこれと一体的な高圧ピストン33AがZ2方向に押込まれ、ポンプ20,30内の作動油が吐出用逆止弁26B,36B及び高低圧連通穴17を介して油圧シリンダ機構部50,60の室51a,61aに送られ、これにより、ピストン53,63がX1方向に押出され、圧壊部材57,67がX1方向に押出される。圧壊部材57,67の先端部が被圧壊物収容室96内のHDD装置Wの隣接表面(X2方向に向いた表面)に当接するまでは、油圧シリンダ機構部50,60に負荷が実際上かからないので、このような操作・動作が繰返され得る(なお、HDD装置Wの背面が室96の背後の壁部99の壁面99aから離れている場合には、圧壊部材57,67はHDD装置Wの背面が室96の背後の壁部99の壁面99aに当接するまで実際上無負荷に近い状態でHDD装置WをX1方向に押すことになる)。この間は、主として、低圧ポンプ20による作動油の高速(大量)送給が主体である。典型的には、操作レバー40を一回だけA1,A2方向に往復動させる程度で、圧壊部材57,67の先端が被圧壊物Wに当たる。但し、被圧壊物が比較的薄いものである場合、往復操作を一回より多く(例えば複数回)繰返して初めて圧壊部材57,67の先端が被圧壊物Wに当たることもあり得る。
【0090】
背面が壁部99の壁面99aに当接した状態の被圧壊物Wに圧壊部材57,67の両方の先端が当たると、多くの場合、圧壊部材57,67のX1方向の突出に対する負荷が急激に増大するから、油室51a,61a及びこれにつながった高低圧連通路17の油圧が上がり、操作レバー40のA2方向の押下げ工程において低圧ポンプ20のリリーフ弁27Aが開くようになり、操作レバー40のA1,A2方向の往復操作による作動油の送出しは、もっぱら高圧ポンプ30によって行われるようになる。
【0091】
操作レバー40のA2方向の押し下げに要する力は、高低圧連通孔17や油室51a,61a内の作動油の圧力の上昇と共に大きくなるけれども、この手動式油圧圧壊装置1では、筐体2の脚部2a,2bの範囲内に操作レバー40が位置するので、操作レバー40の把持部42aの押し下げの際、装置1が安定に支えられ得る。
【0092】
操作レバー40のA1,A2方向の往復回動を繰返すと、操作レバー40のA2方向の押下げの度毎に、圧壊部材57,67のうちの少なくとも一方(被圧壊物Wのうち該圧壊部材57,67にX方向に対面する部位又はその近傍の局所的領域の剛性がそれ程高くない部位に押込まれようとしている圧壊部材)が、被圧壊部材Wの対面部位を局所的に壊したり押し潰したりしながらX1方向に突出されて、被圧壊部材Wの圧壊が進行する。圧壊が現に進行する部位では、この圧壊の際に、圧壊部材57,67の先端部68が被圧壊部に差し込まれる。但し、圧壊部材57,67の差込みは、先端部68の基端にある鍔状部ないし段差部58b,68bが非圧壊物Wの表面に当接する状態で停止され、圧壊部材57,67のそれ以上のX1方向の突出に際しては、鍔状部ないし段差部58b,68bが該表面をへこませながら進行する。
【0093】
被圧壊物Wの被圧壊部位ないし部分の剛性が装置1の設定圧よりも小さい場合、圧壊作業は、圧壊工具57,67が、図2において想像線57i,67iで示したように、被圧壊物収容室96の背後の表面99aに対して多少の間隙G,Gを残して被圧壊物収容室96内に突出する位置で、終了する。この状態では、油圧シリンダ機構部50,60のピストン53,63が大径穴54,64のX1方向端部の段差部に実際上当たることにより、負荷が急激に増大する。
【0094】
従って、高低圧連通穴17の油圧が上がり、圧力センサ70で設定した油圧に達する。その結果、圧力センサ70の圧力表示体76が急激にZ1方向に変位され、表示体76のピン状表示部79が急激にZ1方向に最大突出長まで突出する。典型的には、ピン状表示部79は、視認が容易なように赤色等に表面が着色されており、その突出が容易に視認され得る。なお、ピン状表示部79が突出する部位は、操作レバー40を往復操作する操作者の顔が通常向いているところにあるから、操作者はピン状表示部79が丁度目の前に突出するのを直ちに視認し得る。この例の場合、空気タンク12を油タンク11よりも短くすることにより、空気タンク12とポンプ20,30との間の領域を効果的に圧力感知領域として利用し、ブロック3のサイズを最低限に抑えている。
【0095】
圧壊部材57,67の圧壊の際かかる押圧力は、例えば、夫々、7kN程度(700kgf程度)である。但し、より大きくしておいても、より小さくしておいてもよい。
【0096】
勿論、圧力センサ70による設定圧への到達を、音や光など他の報知手段で同時に又はピン79の代わりに報知するようにしておいてもよい。また、圧力センサ70は、報知に適する部位でピン79の突出を報知し得る限り、筐体2の他の箇所に設けられていてもよい。いずれの場合であっても、圧力センサ70は、高低圧連通穴17又はこれに直接連通した箇所の油圧を検出するように、圧力センサ70の圧力感知ピン75が感知するに都合のよい箇所に高低圧連通穴17に連通する穴72を形成しておけばよい。
【0097】
操作者は、圧力センサ70のピン状表示部79の突出を視認することにより、圧壊作業の終了を容易に知り得る。なお、典型的には、高低圧連通穴17の油圧が急激に上がるので、油圧が圧力センサ70の設定圧力(例えば、15MPa)に達した後更に上昇して高圧ポンプ30の側のリリーフ弁37Aのリリーフ圧(例えば、17MPa)に達するから、リリーフ弁37Aもその後速やかに開かれる。従って、高低圧連通路17や油室51a,61aの油圧は、実際上、リリーフ圧に一致する圧力まで上昇したところで、その上昇が止まる。このリリーフ弁37Aの開放は、通常、比較的大きな音として聞こえるので、この音自体も圧壊作業の終了を念押し的に報知する役割を果たす。なお、操作レバー40の押下げのタイミング次第では、場合によっては、圧力センサ70の設定圧力には達してもリリーフ弁37Aのリリーフ圧に達する前に圧壊作業の終了が視認されることもあり得る。その場合、当該終了に視認で操作レバー40による手動ポンプ駆動操作を停止すればよい。
【0098】
なお、例えば、被圧壊物たるHDD装置Wのうち圧壊部材67に対面する部位の剛性が極めて高い場合(例えば、アームがあったり、剛性の高いスピンドル部があるような場合)、最大設定圧力に達しても、圧壊部材67が、図2において想像線67iaで示したように、HDD装置Wの表面に当接した位置で停止したり当該表面部を僅かに凹ませるだけで停止してしまうこともあり得る。その場合でも、典型的には、他方の圧壊部材57が図2において想像線57iで示すような位置またはそれに近い位置まで達して圧壊作業を行うので、HDD装置W内のハードディスクに対して、その情報の読取りが不能になるような機械的破壊を行い得る。
【0099】
なお、以上のような圧壊作業の際に、作動油が高低圧連通穴17を介して油室51a,61aに導入され、ピストン53,63をX1方向に突出させるべく該油室51a,61aに連通したシリンダ室に導入される際に、油タンク11及び空気タンク12を含む領域の容積が増大することにより、空気タンク12内の空気が減圧されるけれども、この装置1では、空気タンク12の穴14,14を連通させる可撓性チューブ15が設けられているので、容積の増加に伴う減圧に応じて、チューブ15が凹むように変形され得る。その結果、減圧を避け得るか最低限に押え得る。
【0100】
勿論、所望ならば、その代わりに、空気タンク12内に穴13,13で油タンク11に連通する可撓性袋を配置する等他の手段を採っておいてもよい。また、密閉した体積可変室を形成するために可撓性チューブをブロック3の外側に接続する場合でも、ブロック3の詳細を表す図7に示したように、空気室12につながった軸方向延在穴3g,3gをこれに連通した別の穴3h,3hで外部に開口させ、該穴3h,3hの開口部を可撓性チューブでつないでもよい。その場合、穴14,14は作動油の充填後封止される。
【0101】
操作者は、ピン状表示部79の突出により圧壊作業の終了を知ると、操作レバー40の操作を止め、戻しレバー87をB1方向に回動させて作業位置F2から準備位置F1に戻す。この戻しレバー87のB1方向回動に従って、戻し弁81が開かれる。すなわち、戻しレバー87が作業位置F2から境界位置F3に達し、該境界位置F3を越えてB1方向に回動されると、戻し弁81が開き始め、戻しレバー87が準備位置F1まで回動されると、戻し弁81は全開状態になっている。その結果、高低圧連通穴17及びこれにつながった油室51a,61aが、油溜11に連通されて圧力が下がる。従って、油圧シリンダ機構部50,60の戻しばね56,66によってピストン53,63がX2方向に戻され、高低圧連通穴17及びこれにつながった油室51a,61aの作動油が油溜11に戻される。一方、ピストン53,63のX2方向変位に従って圧壊部材57,67もX2方向に引っ込められる。なお、この手動式油圧圧壊装置1では、圧壊部材57,67の先端部58,68に鍔状ないしフランジ状の段差部58b,68bが形成されているので、圧壊部材57,67の圧壊作業部58,68の被圧壊物Wへの差込が鍔状ないしフランジ状の段差部58b,68bで規制され且つ圧壊作業部58,68の先細先端部58a,68aの先端部分58c,68cが基端側部分58d,68dよりも頂角の大きい円錐状形状を有するので、戻し弁81を開いて油圧を解除した際における圧壊部材57,67の被圧壊物Wからの引抜きが容易且つ確実に行われ得る。なお、この引抜きの際、被圧壊物収容室96のX2側の壁部98に被圧壊物Wが押えられた状態で、圧壊部材57,67のX2方向変位が行われることも引抜きを容易にしている。従って、戻しレバー87を作業位置F2から準備位置F1に戻した後直ちに蓋90を開いていも、蓋90を開いたときには、圧壊部材57,67は確実に被圧壊物収容室96からX2方向に引込んだ後退位置に戻っている。それ故、作業者は、圧壊部材57,67の存在を実際上意識しなくてもよい。勿論、戻しレバー87を境界位置F3を越えて戻さない限りすなわち油圧を解除しない限り蓋90が開かないので、圧壊部材57,67が油圧下で被圧壊物収容室96内に突出した状態で、蓋90が開かれることはない。
【0102】
圧壊作業が終了すると、作業者は戻しレバー87をF1に戻した後、蓋90を開けて、被圧壊物収容室96内で圧壊済みのHDD装置Wを開口95から取出す。この手動式油圧圧壊装置1では、圧壊部材57,67が圧壊済みのHDD装置Wに突き刺さったまま残る虞れが実際上ないから、圧壊済みのHDD装置Wの取出が圧壊部材57,67によって妨げられる虞れがなく、その取出が容易に行われ得る。また、蓋90が開いた状態では、戻しレバー87が油圧解除位置F3〜F1に位置するので、操作レバー40の位置や状態にかかわらず、作業者が被圧壊物収容室96内に手等を入れた際に圧壊部材57,67が突出してくる虞れはなく、取出が安全に行われ得る。なお、取出されたHDD装置Wは、表面の一部(典型的には片側)に穴が明き且つ部分的に凹むように変形された状態であるから、その分解が容易に行われ得るので、圧壊済みHDD装置Wの部品や素材の種類別等のリサイクルも容易に行われ得る。被圧壊物Wが他の装置等である場合も同様である。
【0103】
所望ならば、別の被圧壊物Wに対して次の圧壊作業を繰返す。
【0104】
作業が終了すると、典型的には、操作レバー40をA2方向に押し下げて係止手段8で係止した後、蓋90を閉めて閉位置E1に設定し、戻しレバー87を蓋90をロックする位置F1に設定する。
【0105】
なお、所望ならば、蓋90を閉めて閉位置E1に設定し戻しレバー87を蓋90をロックする位置F2に設定した後、操作レバー40をA2方向に押下げて係止手段8で係止してもよい。但し、その場合、主として低圧ポンプ20により作動油が高低圧連通穴17を介して油室51a,61aに導入されるので、ピストン53,63及び圧壊部材57,67がX方向に多少突出した位置を採り、高低圧連通穴17を介して油室51a,61a内に多少油圧がかかった状態になる。これを避けるためには、蓋90を閉じた状態のまま戻しレバー87を一旦境界位置F3を越えてB1方向に回動(典型的には準備位置F1まで回動)した後、再度、ロック位置F2に戻せばよい。これにより、戻し弁81が一旦開かれて高低圧連通穴17を介して油室51a,61aの油圧が解除されるので、ピストン53,63及び圧壊部材57,67は油圧のかかっていない状態で、X2方向に後退した初期位置を採り得る。
【0106】
この手動式油圧圧壊装置1では、戻しレバー87が扇形87aに形成されているので、戻しレバー87の広い回動範囲において蓋90の開放を禁止し得る。所望ならば、例えば、係止ピンとしても働く棒状連結部88eをより下方に位置させてもよい。その場合、円板88aの取付安定性の観点では、円板88aの中心が部位88b,88c,88fで形成される三角形の内部に位置することが好ましい。但し、作業感覚とのズレは生じるけれども、板88aを円形にする代わりに他の形状にして、部位88fを図1においてより左下方に位置させてもよい。また、所望ならば、操作レバー87を単純な扇形にする代わりに、側縁87dが係止ピンとして働く棒状連結部88eよりも半径方向外側においてより下方に突出するようにして、より広い角度範囲の円弧の円弧状係止部87eを形成しておいてもよい。その場合、蓋90のD2方向開放を許容する境界位置F3は、よりB2方向に変位した位置になり得る。
【0107】
なお、この例では、蓋90が枢支される例について説明したけれども、その代わりに、蓋90が閉位置と開位置との間でX2,X1方向に並進されるようにしておいてもよい。また、蓋90がY方向に突出する代わりに、蓋90を平板状にし、図1の左端(左側縁部)の代わりに右端(右側縁部)で枢支されて開かれるようにしておいてもよい。その場合、蓋90の左縁部が開くのを、戻しレバー87で規制することになる。
【0108】
また、この例では、連通部のシールを最低限に抑えると共に全体をコンパクトにして重量を最低限に抑えるために、油タンク及び空気タンクと、油圧ポンプの本体部と、油圧シリンダ機構とが一体的なブロック内に形成された例について説明したけれども、所望ならば、そのうちの一部又は全部が別体で形成され、配管で連通されるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明による好ましい一実施例の手動式油圧圧壊装置の正面説明図。
【図2】図1の手動式油圧圧壊装置のII−II線断面説明図(但し、Y方向中央部においては、Y方向両側部分よりもX側で破断してある)。
【図3】図2の手動式油圧圧壊装置のIII−III線断面説明図。
【図4】図2の手動式油圧圧壊装置のIV−IV線断面説明図。
【図5】図2の手動式油圧圧壊装置のV−V線断面説明図。
【図6】図2の手動式油圧圧壊装置のVI−VI線断面説明図。
【図7】図1の手動式油圧圧壊装置のブロックを示したもので、(a)は(c)のVIIA−VIIA線断面説明図(図1の装置に関する図2の断面に相当)、(b)は(f)の矢印VIIB方向の説明図(ブロックの平面説明図)、(c)は(b)の矢印VIIC方向の端面説明図(ブロックの油圧シリンダ機構側端面の説明図)、(d)は(b)のVIID−VIID線断面説明図、(e)は(b)のVIIE−VIIE線断面説明図、(f)は(b)のVIIF−VIIF線断面説明図(図1の装置に関する図3の断面に相当)、(g)は(b)のVIIG−VIIG線断面説明図(高圧ポンプに対応する部分であって図1の装置に関する図6の断面に相当)、(h)は(b)のVIIH−VIIH線断面説明図(低圧ポンプに対応する部分であって図1の装置に関する図5の断面に相当)、(j)は(f)の矢印VIIJ方向の一部破断端面説明図(ブロックの操作レバー取付部側端面の説明図)
【図8】本発明の手動式油圧圧壊装置の油圧回路の模式的な説明図。
【符号の説明】
【0110】
1 手動式油圧圧壊装置
2 筐体
3 一体化ブロック
3a X方向端面
4 被圧壊物配設筐体部
5 作動油収容領域形成部
6 手動式ポンプ形成部
7 油圧シリンダ機構形成部
9 被圧壊物配設筐体部
11 作動油収容タンク(油溜)
12 空気タンク
13 上下方向孔
14 大気連通孔
15 可撓性チューブ
16 吸込穴
17 高低圧連通穴
18 リリーフ戻し穴
20 低圧ポンプ
21 低圧ポンプ形成部
23 大径シリンダ穴
23A 大径プランジャ部(大径ピストン部)
24 上下方向低圧穴
25 水平方向低圧穴
26 低圧ポンプ用弁形成穴
26A 低圧用吸込弁部
26B 低圧用吐出弁部
27 低圧リリーフ弁形成穴
27A 低圧用リリーフ弁部
28 低圧ポンプ本体
30 高圧ポンプ
31 高圧ポンプ形成部
33 小径シリンダ穴
34 上下方向高圧穴
35 水平方向高圧穴
36 高圧ポンプ用弁形成穴
36A 高圧用吸込弁部
36B 高圧用吐出弁部
37 高圧リリーフ弁形成穴
37A 高圧用リリーフ弁部
38 高圧ポンプ本体
40 操作レバー
41 連結機構
42 レバー本体
43 操作レバー連結部
44 支柱部
45 支持軸部
46 連結ピン
47 ピストン上端の係合部
50,60 油圧シリンダ機構
51,61 油圧シリンダ機構形成用シリンダ形成穴
51a,61a 小径穴部(油室)
52,62 内張り金属筒
53,63 ピストン
54,64 大径穴部
55,65 小径穴部
56,66 戻しばね
57,67 圧壊部材
57a,67a 圧壊部材の棒状軸部
58,68 圧壊部材の先端の圧壊作業部
58a,68a 圧壊部材の先細の先端押込み部
58b,68b 圧壊部材の鍔状部(段差部)
58c,68c 圧壊部材の先端押込み部の先端側の円錐状部
58d,68d 圧壊部材の先端押込み部の基端側の円錐台状部
70 圧力センサ
71 圧力センサ形成部
72 作動油圧感知穴部
73 センタ本体配置穴部
74 圧力センサ本体
75 圧力感知ピン
76 圧力表示体
77 ばね部
78 センサ筐体部
78a 貫通孔
79 ピン状表示部
81 戻し弁
82 戻し穴
83 戻し弁形成穴
83a,83b 中径穴部
83c 小径穴部
83d,83e 大径穴部
84a 弁ボール
84b 弁ばね
84c 弁座部
84d 封止壁部
85 戻し弁作動機構
86 作動軸部
86a 押しピン
86b 中径軸部
86c 大径ねじ部
86d 戻しレバー取付端部
87,87i,87ic 戻しレバー
87a 扇
87b 基端部
87c,87d 側縁
87e 円弧状外縁
87f 開口
88 回動規制部
88a 円板
88b,88c,88f 配設部位
88d,88e 棒状連結部(ストッパ)
88g 棒状連結部
90 蓋
91 ピン状軸部
92 側縁
93 箱状本体部
93a 底壁
93b,93c 側壁
94 凹部
95 開口
96 被圧壊物収容室
97 周壁部
98,99 壁部
98a,98b 貫通孔
98c,98d,98e 周壁部
99a 内面
A,A1,A2 操作レバーの回動方向
B1,B2 戻しレバーの回動方向
D 中心軸線
D1,D2 蓋の回動方向
E1 閉位置
E2 開位置
F1,F2,F3 操作レバーの回動位置
G 間隙
W HDD装置(被圧壊物)
X,Y,Z 座標系
X1,X2,Y1,Y2,Z1,Z2 向き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動式の油圧ポンプ機構と、
該手動式油圧ポンプ機構から吐出される油の油圧により作動される単動式の油圧シリンダ機構と、
該油圧シリンダ機構のピストンに取付けられ油圧シリンダ機構が作動された際に突出する圧壊工具と、
前記油圧シリンダ機構の先端側に被圧壊物の収容室を形成すると共に前記圧壊工具の進退方向に交差する方向に前記収容室に対する被圧壊物の出し入れを許容する開口を備えた被圧壊物配設筐体部と、
前記開口を開閉する蓋部と、
該蓋部が前記開口を閉じる閉位置にある際に該蓋部の閉位置から開位置への移動を禁止する蓋開放禁止位置と該蓋部の閉位置から開位置への移動を許容する蓋開放許容位置との間で可動な蓋開閉規制部材を備えた蓋開閉規制機構と、
該蓋開閉規制部材に結合され、該蓋開閉規制部材が蓋開放許容位置に設定されると、油圧ポンプ機構の吐出側と油圧シリンダ機構とをつなぐ油路を油溜に連通させ、該蓋開閉規制部材が蓋開放禁止位置に設定されると、前記油路と油溜との連通を断つ戻し弁機構と
を有する手動式油圧圧壊装置。
【請求項2】
前記蓋開閉規制部材が、前記被圧壊物配設筐体部を含む筐体の外壁に対して回動可能なレバー部材であって、回動中心から扇形に拡がった外縁を備えたものからなる請求項1に記載の手動式油圧圧壊装置。
【請求項3】
前記蓋部が、外向きに突出した凸部を備えると共に蓋開閉規制部材に近接する側の側縁において該蓋部の表面と平行な回動中心軸線のまわりで回動可能に取付けられている請求項2に記載の手動式油圧圧壊装置。
【請求項4】
前記蓋開閉規制機構が前記蓋開閉規制部材の回動中心に沿って該蓋開閉規制部材に取付けられた回動中心軸部を有し、該回動中心軸部が筐体に螺合されたねじ部を備え、該回動中心軸部の回動に応じて該回動中心軸部が戻し弁機構の弁部材を開位置に変位し得るように構成された請求項2又は3に記載の手動式油圧圧壊装置。
【請求項5】
前記油圧ポンプ機構の吐出側と前記油圧シリンダ機構とをつなぐ前記油路の圧力が所定圧壊圧に達すると該圧壊圧の圧油によって変位されて該圧壊圧への到達を知らせる圧壊作業終了報知機構を更に有する請求項1から4までのいずれか一つの項に記載の手動式油圧圧壊装置。
【請求項6】
前記油溜を構成する油室及びこれに連通した空気室を形成する室形成壁部と、前記油圧ポンプ機構の壁部本体部と、油圧シリンダ機構の壁部本体部とが、単一の一体のブロックにより形成され、前記油圧シリンダ機構の壁部本体部が該ブロック内において水平方向に延び、前記油室が前記ブロック内で油圧シリンダ機構の下側において水平方向に延び、前記空気室が前記ブロック内で油圧シリンダ機構の上側において水平方向に延びている請求項1から5までのいずれか一つの項に記載の手動式油圧圧壊装置。
【請求項7】
前記単動式油圧シリンダ機構が、並列に配置され相互に独立に油圧を受ける複数の単動式油圧シリンダ機構部からなり、前記被圧壊物配設筐体部が、油圧シリンダ機構部の上下で且つ前記低圧油室形成壁部及び空気室形成壁部の左右において、前記一体ブロックに取付固定されており、前記圧壊工具が各油圧シリンダ機構部のピストンに取付けられている請求項6に記載の手動式油圧圧壊装置。
【請求項8】
手動式油圧ポンプ機構を作動させる操作レバーが、該操作レバーの先端の把持部をほぼ上下方向に変位させ得るように筐体の上側に配置された請求項6又は7に記載の手動式油圧圧壊装置。
【請求項9】
圧壊部材が被圧壊物に突き刺さり得る先細の先端部と、被圧壊物の表面に当接して該表面部を凹ませるべく該先端部の基端に形成された鍔状部とを備える請求項1から8までのいずれか一つの項に記載の手動式油圧圧壊装置。
【請求項10】
被圧壊物が廃棄用の情報記録体である請求項1から9までのいずれか一つの項に記載の手動式油圧圧壊装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−319733(P2007−319733A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−149702(P2006−149702)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(303015505)三央工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】