説明

手動打撃工具

【課題】手動でありながら、打撃対象の溶接部近傍に対してより大きな打撃力を与えることができる手動打撃工具を提供する。
【解決手段】手動打撃工具は、本体11と、本体11の一端部に対して軸方向CLに沿って移動可能な打撃部材17と、本体内に配置され圧縮されることにより打撃用のバネ力を蓄えるための打撃バネ15と、本体内に配置され打撃バネの一端部を保持しているスライドハンマー16と、スライドハンマーが本体内で打撃部材側に移動するのを阻止する阻止手段6と、本体に対してヒンジ部を用いて回転可能に保持され、手動で回転することで打撃バネ15の他端部を押して圧縮してスライドハンマー16との間で打撃バネ15に打撃用のバネ力を蓄える手動回転操作部30と、打撃部材とスライドハンマーの間に配置される戻しバネ21とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動打撃工具に関し、特に手動回転操作で打撃用のバネ力を蓄えて、ロッドのような打撃部材の先端部を用いて打撃対象に打撃力を与える手動打撃工具に関する。
【背景技術】
【0002】
手動打撃具として、特許文献1に開示されているものがある。この手動打撃工具は、ドリル作業の前にドリルの先が踊らないようにするポンチング処理に使用するもので、作業者がケースを保持して、作業者の力でポンチの頭部を打撃対象に押し付けることで、ケース内の打撃バネに打撃力を蓄えてトリガ手段の係止めで保持し、トリガ手段の係止めを解除して打撃バネの打撃力により打撃対象を塑性変形させる。
【特許文献1】特開2004−188540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、厚肉の金属部品に溶接を行なった場合、加わる熱により溶接部近傍の金属組織が影響を受けて残留応力が残り、金属部品の疲労強度が低下することがある。この問題を解消するために、溶接部の外縁部を打撃して塑性変形させ、その変形により生じる押圧側の残留応力により溶接時の引張残留応力を緩和して、溶接による金属部品の疲労強度の低下を小さくする方法がある。
【0004】
このような溶接部の応力緩和処理では、強い打撃を繰返し加える必要があるので、特許文献1に記載の手動打撃具では、打撃力が不足するという問題がある。
そこで、本発明は上記課題を解消するために、手動でありながら、大きな打撃力を与えることができる手動打撃工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解消するために、本発明の手動打撃工具は、打撃対象に対して打撃力を与える手動打撃工具であって、筒状の本体と、前記本体の一端部から一部が突出しており、前記本体の一端部に対して軸方向に沿って移動可能な打撃部材と、前記本体内に配置され圧縮されることにより打撃用のバネ力を蓄える打撃バネと、前記本体内の前記打撃バネより一端側寄りに配置されているスライドハンマーと、前記スライドハンマーが前記本体内で前記打撃部材側に移動するのを阻止する阻止手段と、前記本体に対してヒンジ部を用いて回転可能に保持され、手動で回転することで、前記打撃バネの他端部を押して圧縮して前記スライドハンマーとの間で、前記打撃バネに前記打撃用のバネ力を蓄える手動回転操作部とを備え、前記打撃部材の先端部を前記打撃対象に押し当てて本体内に押し込むことで前記阻止手段による前記スライドハンマーの前記打撃部材側へ移動を解除して、前記打撃バネのバネ力を前記打撃部材に与えて前記打撃対象を打撃することを特徴とする。
【0006】
本発明の手動打撃工具では、前記本体は、本体カバーと、前記本体カバーの第1端部に固定される先端カバーと、前記本体カバーの第2端部に固定される後端カバーとを有し、
前記後端カバーには、前記手動回転操作部が設けられ、前記手動回転操作部は、前記本体カバー内を前記軸方向に移動可能で前記打撃バネの他端部を押して圧縮するための押しピンと、前記後端カバーに対してヒンジピンを用いて回転可能に取り付けられているレバーと、前記レバーの端部と前記押しピンを連結して、前記レバーの回転動作を、前記軸方向に沿って前記押しピンを押して前記打撃バネの他端部を圧縮する動作に変えるリンクバーと、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の手動打撃工具では、前記阻止手段は、前記本体カバー内に突出する段部と、前記スライドハンマーに対して前記軸方向とは直交する方向に移動可能に設けられ、前記段部に当てることで前記スライドハンマーが前記打撃部材側に移動するのを阻止する止めピンと、前記止めピンを、スライドハンマーから突出して前記段部に当たる位置とスライドハンマー内に収まる位置とに切り替える切替え棒と、前記スライドハンマー内に配置されて前記切替え棒と前記スライドハンマーの間に配置される別の戻しバネと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、手動でありながら、大きな打撃力を与えることができる手動打撃工具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の手動打撃工具の好ましい実施の形態を示している側面図であり、図2は、図1に示す手動打撃工具の内部構造例を示す軸方向の断面図である。
図1と図2に示すように、手動打撃工具10は、筒状の本体部5と、打撃バネ15と、スライドハンマー16と、阻止手段6と、打撃部材としてのポンチ17と、第1戻しバネ21と、手動回転操作部30を有している。
【0010】
図2に示すように、本体部5は、円筒状の本体カバー11と、先端カバー12と、後端カバー13を有している。本体カバー11と先端カバー12と後端カバー13は、金属製の部材であり、本体カバー11の第1端部11Bには、先端カバー12がはめ込んで固定されている。本体カバー11の第2端部11Cには、後端カバー13がはめ込んで固定されている。
【0011】
本体カバー11と先端カバー12と後端カバー13で囲まれている空間内には、押しピン14と、打撃バネ15と、スライドハンマー16と、ポンチ17の一部分と、2つの止めピン18と、止めカラー19と、切替え棒20と、第1戻しバネ21と、第2戻しバネ22が収容されている。
【0012】
図2に示すように、手動回転操作部30は、押しピン14と、レバー30Lと、プレート33と、リンクバー34を有する。押しピン14は、本体カバー11内を軸方向CLに移動可能で打撃バネ15の他端部を押して圧縮するための部材である。レバー30Lの端部にはプレート33が一体に固定されており、このプレート33の部分で後端カバー13に対してヒンジピン35を用いて回転可能に取り付けられている。
【0013】
図2に示すように、レバー30Lはにぎり玉31とロッド32を有する。にぎり玉31はロッド32の一端部に固定されている。ロッド32の他端部はプレート33に対してネジ33Nより固定されている。リンクバー34は略L字状で、その一端部は、プレート33に対してヒンジピン36により回転可能に連結されている。リンクバー34の他端部は、押しピン14の端部に対してヒンジピン37により回転可能に連結されている。このリンク部材34により、レバー30Lの回転動作が押しピン14を軸方向CLに沿って押す動作に変わり、これにより押しピン14が打撃バネ15を圧縮する。
【0014】
図2に示す阻止手段6は、段部19Aを形成する止めカラー19と、2つの止めピン18と、切替え棒20と、第2戻しバネ22とで構成されている。止めカラー19は、本体カバー11内に内接して固定された円筒状の部材である。この止めカラー19の端部によって本体カバー11の中に段部19Aが形成されている。
【0015】
止めピン18は両端が丸まった俵状のもので、スライドハンマー16の周壁に開けられた2つの貫通した穴部16Cに1個づつ収められている。これらの止めピン18は、スライドハンマー16に対して軸方向CLとは直交する方向(本体カバー11の直径方向)に移動可能である。これら2つの止めピン18は、止めカラー18の端部により形成される段部19Aに当たることで、スライドハンマー16がポンチ17側(X1方向)に移動するのを阻止する。
【0016】
切替え棒20は、止めピン18をスライドハンマー15から突出させて段部19Aに当てる第1位置と、スライドハンマー15内に止めピン18を収容して段部19Aに当てないようにしてスライドハンマー16をポンチ17側(X1方向)へ移動可能にする第2位置と、を切り替えるための棒状の部材である。第2戻しバネ22は、スライドハンマー16の底付き穴内に配置されており、切替え棒20の端部とスライドハンマー16の内底部の間に配置されている。
【0017】
ここで、手動打撃工具10の各構成部材の形状例を、図3〜図6を参照して説明する。
図3は、本体カバー11と先端カバー12の形状を示している。本体カバー11は、円筒状の部材であり、第1端部11Bと第2端部11Cは開放端部である。先端カバー12は、先細り部分12Bと嵌め込み部分12Cを有しており、図2に示すように、先端カバー12の内部には、通し穴12Dを有している。この通し穴12Dには、ポンチ17の太径部17Bが軸方向CLに沿って移動できる。
【0018】
図3に示すように、本体カバー11の第1端部11Bには、先端カバー12の嵌め込み部分12Cを嵌め込んで固定するための凹部11Dが形成されている。図3に示す本体カバー11の第2端部11Cには、図2に示す後端カバー13の嵌め込み部分13Bを嵌め込んで固定するための凹部11Fが形成されている。本体カバー11の第1端部11Bには、穴部11Hが形成され、この穴部11Hには六角穴付きネジ11Pがねじ込まれている。このネジ11Pが止めカラー19を本体カバー11内に固定している。
【0019】
図4は、図2に示すポンチ17と切替え棒20の形状を示している斜視図である。金属製のポンチ17は、太径部17Bと、先端部17Cと、細径部17Dと、ストッパ部17Fと、当接部17Gを有する。先端部17Cは半球状であり、円盤状のストッパ部17Fは、図2に示す先端カバー12の内端部12Kに突き当ることで、ポンチ17がX1方向へ移動するのを阻止する。
【0020】
図4に示す切替え棒20は鼓状のもので、太径の当接部20B、20Cと細径の中間部20Dとを有している。切替え棒20の当接部20Bは、ポンチ17の当接部17Gに対して突き当てられている。当接部20Cは、図2に示すように第2戻しバネ22の一端部22Bに突き当てられている。
【0021】
図5(A)は、図2に示すスライドハンマー16の形状を示す断面図である。スライドハンマー16は、金属製の底付き筒状の部材であり、第2戻しバネ22を収容する空間部16Bと、止めピン18を1個づつ収容する2つの穴部16Cを有している。穴部16Cは、スライドハンマー16の中央部の周壁に軸方向CLと直行する向きに開けられている。第2戻しバネ22の他端部22Cは、空間部16Bの内底部16Dに固定されている。スライドハンマー16の底側の端部には突起16Tが設けられている。
【0022】
図5(B)は、図2に示す止めカラー19の形状例を示している。止めカラー19は、金属製の円筒部材であり、図2に示すように本体カバー11の第1端部11Bの内周部に対して密接するようにして固定されている。止めカラー19の他端は段部19Aを形成する部分で、内周側が面取りされ斜面になっている。図5(C)は、図2に示す止めピン18の形状を示している。
【0023】
図6(A)は、図2に示す押しピン14の形状を示す斜視図である。押しピン14の一端部には突起14Bが設けられ、他端部にはヒンジピン37を通すための穴部14Cが形成されている。
図6(B)は、図2に示すリンクバー34の形状を示しており、リンクバー34はほぼL字型を有しており、リンクバー34の一端部と他端部にはそれぞれヒンジピン36,37を通すための穴部34B、34Cが形成されている。
図6(C)は、図2に示すレバー30Lのにぎり玉31と、ロッド32と、プレート33を示す斜視図である。プレート33には、ヒンジピン35,36をそれぞれ通すための穴部33B、33Cが形成されている。
【0024】
図2に示す打撃バネ15は、ポンチ17を打撃対象に対して打撃するための打撃力を蓄えるためコイルスプリングである。
図2に示すポンチ17の太径部17Bは、先端カバー12の通し穴12Dに通っており、切替え棒20の当接部20Bは、ポンチ17の当接部17Gに対して突き当てられている。第1戻しバネ21は、ポンチ17に対して軸方向CLに沿って同軸状に配置されており、第1戻しバネ21は、ポンチ17のストッパ部17Fとスライドハンマー16のストッパ部16Kの間に配置されている。
図2に示す止めカラー19は、本体カバー11の第1端部11Bの内周面に密着して六角穴付きネジ11Pを用いて固定されている。スライドハンマー16の外径は止めカラー19の内径よりもやや小さいく、スライドハンマー16は止めカラー19の内周面において軸方向CLに沿って移動可能である。
【0025】
図2に示す第2戻しバネ22はスライドハンマー16内に収容されており、第2戻しバネ22の一端部は切替え棒20の当接部20Cに突き当てられ、第2戻しバネ22の他端部はスライドハンマー16内に固定されている。2つの止めピン18は図5に示すスライドハンマー16の穴部16Cに、軸方向CLと直行する方向に摺動自在にはめ込まれている。図2に示すように、2つの止めピン18は止めカラー19の端部が形成する段部19Aに突き当たり、本体カバー11の内周面に当たっている。
図2に示すように、スライドハンマー16の突起16Tと押しピン14の突起14Bの間には、打撃バネ15が保持されている。第1戻しバネ21、第2戻しバネ22、打撃バネ15は、軸方向CLに沿って配列されている。
【0026】
次に、図7〜図10を参照して、手動打撃工具10の使用例を説明する。
この手動打撃工具10は、概略、手動によりレバー30Lをヒンジピン35を中心としてR方向に回すことにより、打撃バネ15を圧縮して打撃用のバネ蓄力を蓄え、ポンチ17を打撃対象に押しつけると、この打撃バネ15のバネ蓄力が開放され、ポンチ17の先端部17が打撃対象を打撃力するものである。
【0027】
図7では、打撃バネ15には打撃用のバネ蓄力が蓄えられておらず、初期の開放状態であり、無負荷時の状態を示している。
図7に示す無負荷時の状態では、レバー30Lのロッド32は、本体カバー11の軸方向CLに対して角度θで保持されている。
【0028】
使用者が一方の手で本体カバー11を保持し、他方の手でにぎり玉31を持って、図7に示すロッド32を図7に示すヒンジピン35を中心としてR方向に回して、図8に示すようにほぼ軸方向CLに平行になるようにすると、打撃バネ15に打撃用のバネ蓄力が蓄えられる。
【0029】
すなわち、図7と図8により比較して明らかなように、レバー30Lの端部と押しピン14を連結するリンクバー34は、レバー30Lの回転動作を、押しピン14をX1方向に直線移動させる動作に変える。これにより、軸方向CLに沿って押しピン14を押して打撃バネ15の他端部を圧縮する。
【0030】
他方、止めカラー19の端部に形成された段部19Aにより止めピン18が押さえられていることで、スライドハンマー16は、X1方向には移動できずに位置が固定されたままであり、スライドハンマー16と本体カバー11とは軸方向CLについての相対的な位置の移動がなく、スライドハンマー16は固定されている。この結果、打撃バネ15は、押しピン14とスライドハンマー16との間で圧縮され、打撃バネ15に打撃用のバネ蓄力を簡単に確実に蓄えることができる。
【0031】
次の図9はスライドハンマー16のX1方向への移動が許容された状態、図10はポンチ17により打撃対象を打撃している状態を示す図である。
【0032】
図9に示すように、使用者がポンチ17の先端部17Cを打撃対象100に対して当てて接触させた状態で、使用者がこの打撃工具10をX1方向に押すと、ポンチ17が先端カバー12の内側からX2方向に入り込み、切替え棒20がX2方向に押される。このため、図8の状態から図9の状態を比較して分かるように、第1戻しバネ21と第2戻しバネ22が圧縮される。
【0033】
また、切替え棒20がスライドハンマー16内に押し込まれる。この結果、2つの止めピン18が当接する位置が、切替え棒20の太径の当接部20Cの外周面から細径の中間部20Dの外周面に移り、2つの止めピン18は、半径方向内側に移動することが可能になる。
【0034】
すると、止めカラー19の端部内側を面取りすることで形成した斜面と前述の圧縮されている打撃バネ15の初期の伸長との協同作用により、止めピン18がスライドハンマー16内に入り、段部19Aと止めピン18の係止が解除される。その結果、スライドハンマー16は、止めカラー19内に入る込むことができるようになる。つまり、すなわち、2つの止めピン18は、スライドハンマー16の中に互いに近づくように入り込み、スライドハンマー16がX1方向に沿って(ポンチ17の先端部17C側に向かって)止めカラー19の内側に入り込むことができる状態となる。
【0035】
このため、図10に示すように、打撃バネ15の打撃用のバネ蓄力は、スライドハンマー16のX1方向への移動によりポンチ17に直接的に伝わり、ポンチ17の先端部17Cは打撃対象100を打撃する。
なお、図9から図10に示す状態では、第1戻しバネ21と第2戻しバネ22はそれぞれ圧縮された状態になっている。
【0036】
この打撃工具10では、使用者は一方の手で本体カバー11を保持し、他方の手でにぎり玉31を押さえ付けたままにする。使用者はにぎり玉31を手で持ってレバー30Lを支えることができるので、ポンチ17を打撃対象100に対して安定して容易に支えながら押し付けることができる。これにより、手動打撃工具10は、打撃対象100に対して確実に安定して打撃を与えることができる。
【0037】
1回の打撃作業が終わり、使用者がレバー30Lを図10の状態から図7に示す状態にR1方向に回転して戻すと、図7に示す初期の状態に戻る。すなわち、第1戻しバネ21と第2戻しバネ22の圧縮戻し力は、スライドハンマー16をX2方向に沿って元の位置に戻す。また、第2戻しバネ22の圧縮戻し力は、切替え棒20をスライドハンマー16から押し出す。すると、2つの止めピン18と接する位置が、切替え棒20の細径の中間部20Dの外周面から太径の当接部20Cの外周面に移るので、止めピン18がスライドハンマー16の周壁から押出される。これらの結果、2つの止めピン18はX2方向に移動すると共に、止めカラー19の端部で形成された段部19Aに係止する
以上説明した手動打撃工具10は、レバー30Lを図10の状態から図7に示す状態に戻して、図8〜図10の動作を繰り返すことにより、使用者は打撃対象100に対して複数回の打撃を与えることができる。
【0038】
従来の手動打撃具では単に使用者が軸方向に押してバネに打撃力を蓄えるのに比べて、本発明の手動打撃具10ではレバー30Lを所定角度回転させるだけで、てこの原理を用いて打撃バネ15に対して大きな打撃用のバネ蓄力を蓄えることができる。このため、溶接部の応力緩和処理で溶接部近傍を打撃するのに必要な大きな打撃力を得ることができる。また、打撃対象に対して多数回の打撃を容易に与えることができる。
【0039】
すなわち、上記実施形態の手動打撃工具は、手動回転操作部30を操作することで、手動でありながら、打撃対象に対してより大きな打撃力を与えることができる。
【0040】
上記実施形態の手動打撃工具では、使用者がレバー30Lを回転するだけで、押しピンを介して打撃バネに対して打撃用のバネ蓄力を簡単に蓄えることができる。
【0041】
上記実施形態の本発明の手動打撃工具では、前述の通り、阻止手段が、本体カバー内に突出する段部19Aと止めピン18と切替え棒20と第2の戻しバネ22で構成されているので、打撃時に打撃バネのバネ蓄力を確実に打撃対象に与えることができる。
【0042】
上記実施形態の手動打撃工具では、レバーは、ロッドと、ロッドの端部に固定されたにぎり玉と、を有する。これにより、使用者はにぎり玉を持ってレバーを確実に回転して、しかも打撃部材側に押し付ける作業を行うことができる。
【0043】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されず種々の変形例を採用できる。例えば、本体カバー11は、使用者が片手でより持ち易いようにするために、円筒状部材以外の形状であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の手動打撃工具の好ましい実施の形態を示している側面図である。
【図2】図1に示す手動打撃工具の内部構造例を示す軸方向の断面図である。
【図3】本体カバーと先端カバーの形状を示す図である。
【図4】図2に示すポンチと切替え棒の形状を示す斜視図である。
【図5】スライドハンマーと、止めカラーと、止めピンを示す図である。
【図6】押しピン、リンクバー等を示す図である。
【図7】打撃バネには打撃用のバネ蓄力が蓄えられておらず、無負荷時の状態を示す図である。
【図8】打撃バネに打撃用のバネ蓄力が蓄えられた状態を示す図である。
【図9】ポンチの先端部が打撃対象に接触され、2つの止めピンが開放された状態を示す図である。
【図10】ポンチにより打撃対象に対して打撃している状態を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
5 本体部
6 阻止手段
10 手動打撃工具
11 本体カバー
12 後端カバー
14 押しピン
15 打撃バネ
16 スライドハンマー
17 ポンチ(打撃部材)
18 止めピン
19 止めカラー
21 第1戻しバネ
22 第2戻しバネ
30 手動回転操作部
30L レバー
31 にぎり玉
32 ロッド
33 プレート
34 リンクバー
35 ヒンジピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
打撃対象に対して打撃力を与える手動打撃工具であって、
筒状の本体と、
前記本体の一端部から一部が突出しており、前記本体の一端部に対して軸方向に沿って移動可能な打撃部材と、
前記本体内に配置され圧縮されることにより打撃用のバネ力を蓄える打撃バネと、
前記本体内の前記打撃バネより一端側寄りに配置されているスライドハンマーと、
前記スライドハンマーが前記本体内で前記打撃部材側に移動するのを阻止する阻止手段と、
前記本体に対してヒンジ部を用いて回転可能に保持され、手動で回転することで、前記打撃バネの他端部を押して圧縮して前記スライドハンマーとの間で、前記打撃バネに前記打撃用のバネ力を蓄える手動回転操作部とを備え、
前記打撃部材の先端部を前記打撃対象に押し当てて本体内に押し込むことで前記阻止手段による前記スライドハンマーの前記打撃部材側へ移動を解除して、前記打撃バネのバネ力を前記打撃部材に与えて前記打撃対象を打撃することを特徴とする手動打撃工具。
【請求項2】
前記本体は、本体カバーと、前記本体カバーの第1端部に固定される先端カバーと、前記本体カバーの第2端部に固定される後端カバーとを有し、
前記後端カバーには、前記手動回転操作部が設けられ、
前記手動回転操作部は、
前記本体カバー内を前記軸方向に移動可能で前記打撃バネの他端部を押して圧縮するための押しピンと、
前記後端カバーに対してヒンジピンを用いて回転可能に取り付けられているレバーと、
前記レバーの端部と前記押しピンを連結して、前記レバーの回転動作を、前記軸方向に沿って前記押しピンを押して前記打撃バネの他端部を圧縮する動作に変えるリンクバーと、
を有することを特徴とする請求項1に記載の手動打撃工具。
【請求項3】
前記阻止手段は、
前記本体カバー内に突出する段部と、
前記スライドハンマーに対して前記軸方向とは直交する方向に移動可能に設けられ、前記段部に当てることで前記スライドハンマーが前記打撃部材側に移動するのを阻止する止めピンと、
前記止めピンを、スライドハンマーから突出して前記段部に当たる位置とスライドハンマー内に収まる位置とに切り替える切替え棒と、
前記スライドハンマー内に配置されて前記切替え棒と前記スライドハンマーの間に配置される別の戻しバネと、を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の手動打撃工具

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−142907(P2010−142907A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323266(P2008−323266)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(508125184)古河パワーコンポーネンツ株式会社 (6)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】