説明

手動発電装置

【課題】カップリングを省くために、ハンドルの回転力(トルク)が主軸において安定した回転となるようにした手動発電装置を提供する。
【解決手段】前面にハンドルが取り付けられるボックスの内部に中間壁を設け、その内部について中間壁よりも手前は、ハンドルによる駆動軸をその回転操作時にのみ被動軸に接続する自動離合クラッチが構成される第1室となし、他方は、被動軸としての主軸を中心にしてその回転を機械的エネルギー又は位置エネルギーとして蓄える蓄力装置と、その畜力の開放により働く発電機とが内装される第2室となしてあって、第2室には、中間壁を基板としてそれから間を隔てて副基板を設け、主軸をその中間壁と副基板との双方で軸承し、副基板にはさらに発電機を取り付けることにより、発電機の入力軸を主軸に直接接続し、蓄力装置については、クラッチ接続によりハンドルで回転される主軸が、それに前記機械的エネルギー又は位置エネルギーを蓄えるためにハンドルの回転に抗するように一回転方向に常時付勢されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハンドル操作による回転力をゼンマイバネ等の機械的エネルギーや重り等の位置エネルギーとして蓄え、その蓄えた力で発電するようにした手動発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
手動発電装置は、一般的にはハンドルの軸に発電機の変速機(高速機)を接続したもので、携帯用の電灯等に使用されるが、本出願人においては、これまでに、簡易設置式の観光案内ボックスに使用する開発を行ってきた。この観光案内ボックスは、音声により又は音声と画像とにより観光案内を行うものであったから、音声や画像の雑音やブレ等を防止するために、その原因となるミスアライメントを吸収するカップリングをハンドル軸と発電機の入力軸との間に介在させていた。
【0003】
図4は、本出願人において先に開発した音声発生ボックスで、本発明の開発中途の発明に属し未公開のものであるが、これについてもカップリング108について示されている。つまり、ハンドル103が取り付けられる第1室116のボックスに大きなボックスの第2室118を隣接させ、第1室116には自動離合クラッチ105を設け、第2室118では、自動離合クラッチ105を介してハンドル3の回転が伝達される主軸107に、カップリング108を介して変速機109付き発電機110が接続される。そして、主軸107の箇所において主軸7の回転でゼンマイバネ106を巻き取り、その弾力で巻き戻すことで主軸107が逆回転するように、ゼンマイホルダー143を設け、こうして手動発電装置を構成していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような手動発電装置によれば、カップリング108は、主軸107の回転についてミスアライメントを吸収し、音声の発生に信頼性の高い電力を発電機で得るために設けたもので、当初はこれが必要と考えていた。しかしながら、カップリング108およびそれに伴う発電機110の取付板146とによりスペースBが取られるために、ボックスの寸法Aが大きくなることから、カップリング108がコンパクトな設計の障害となっていたので、種々実験を重ねていくうちに、信頼性の高い電力を得る上ではカップリング108は必ずしも要しないことが分かった。
【0005】
つまり、この発明は、カップリングを省くために、ハンドルの回転力(トルク)が主軸において安定した回転となるようにすることを課題としたものであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、この発明は、前面にハンドルが取り付けられるボックスの内部に中間壁を設け、その内部について中間壁よりも手前は、ハンドルによる駆動軸をその回転操作時にのみ被動軸に接続する自動離合クラッチが構成される第1室となし、他方は、被動軸としての主軸を中心にしてその回転を機械的エネルギー又は位置エネルギーとして蓄える蓄力装置と、その畜力の開放により働く発電機とが内装される第2室となしてあって、第2室には、中間壁を基板としてそれから間を隔てて副基板を設け、主軸をその中間壁と副基板との双方で軸承し、副基板にはさらに発電機を取り付けることにより、発電機の入力軸を主軸に直接接続し、蓄力装置については、クラッチ接続によりハンドルで回転される主軸が、それに前記機械的エネルギー又は位置エネルギーを蓄えるためにハンドルの回転に抗するように一回転方向に常時付勢されていることを特徴とする手動発電装置を提供するものである。
【0007】
手動発電装置を上記のように構成したから、ハンドルを回転すると直ちにクラッチが主軸に接続して、それが付勢されている力に抗して回転されることによりエネルギーが蓄積され、ハンドルから手を放すと直ちにクラッチが切断されて、蓄積エネルギーの解放として主軸が付勢されている方向に回転し、その回転が発電機の入力軸に直接伝達される。
【0008】
入力軸に至る回転は、ハンドルから切り離された回転であるため、ハンドル側に発生したブレ等の影響が完全に断たれており、また、主軸の回転の質については、付勢力によるために、突発的な力の発生のない緩和された乱れのない正常な力であり、しかも、主軸がブレることのない軸承部分で入力軸が連結されていることから信頼性が高く、カップリングが介在していなくても、発電機では質の高い音声や画像を生み出す電力を得ることができる。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、この発明によれば、動力源としての主軸と発電機の入力軸との間にカップリングを介在させないにもかかわらず、信頼性の高い安定した電力が得られるので、音声や画像の発生装置ばかりでなく、広くその電力を使用できることはもちろん、カップリングを省くことによる省スペースとなり、ボックスのコンパクト化に適し設計の自由度も高まる等の優れた効果がある。
【0010】
加えて、請求項2の如くであると、主軸が最も安定する両軸承の間に深く形成される軸孔に入力軸が嵌入固定されるから、微小の振れもなくアライメント誤差が発生しない。また、請求項3の如くであると、ホルダーで変速機を包むため、ギアノイズを低減することができ、しかも、発電機を副基板に直接取り付けなく、特に、請求項2との関係において、取付けの組立て、軸の芯出しが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1ないし図3は、観光案内や郷土展示物の案内ないし紹介をする音声発生ボックスVにおいて実施した例を示したもので、そのボックス1の前面には、観光客が案内音声を聴くために操作するハンドル3が設けてある。ボックス1内には、ハンドル3が直接及ぶ自動離合クラッチ5と、それを介して回転力が及ぶ蓄力装置8と、変速機9付き発電機10とが装備される。そのうち、蓄力装置8は、主軸7を中心としてそれに機械的エネルギーが回転力として蓄えられるように、ゼンマイバネ6が装備される。なお、発電機8で発生した電力により音声を発生させる音声発生装置については図示を省略する。
【0013】
ボックス1は、四角立方体であって、前面壁13と後面壁15との間に仕切り状に中間壁17を設け、第1室16と第2室18とに仕切られている。そのうち、第1室16では前面壁13に自動離合クラッチ5が取り付けられ、第2室18において中間壁17に主軸7および変速機9付き発電機10が取り付けられる。20は前面壁13に対して中間壁17を固定する支持杆であって、駆動軸21を中心に複数本配列される。
【0014】
自動離合クラッチ5は、ハンドル3による駆動側に駆動のためのトルクが加われば、蓄力装置8に対して自動的にクラッチが連結し、ハンドル3を放すと、自動的にクラッチが切り離れるようにしたもので、ハンドル3により回転される駆動軸21と、被動軸としての主軸7との間の離合(連結/遮断)として実施される。そして、クラッチ機構の駆動側は、後に具体的に説明するように、傾斜溝22と案内突子23との係合により作動し、それにコイルスプリング31が関係するようになっている。なお、この発明において、自動離合クラッチ5の構造はこれに限定されるものではない。
【0015】
この実施形態による自動離合クラッチ5については、駆動軸21を中心にそれを囲むように、前面壁13に円筒形の外枠27が固定され、外枠27の中において押しブッシュ29が駆動軸21に嵌まり、外枠27と押しブッシュ29との間にコイルスプリング31が介在し、それがハンドル3側へ(開離側へ)押しブッシュ29を常時付勢している。コイルスプリング31は、前端が止板37を介して外枠27の先端に取り付けられるが、押しブッシュ29と同時に回転してはならないので、これに対しては回転自在なフリーリング33を介して取り付けられる。
【0016】
前記した傾斜溝22と案内突子23との関係は、作用的には言わば雌ねじと雄ねじとの関係と同じであって、傾斜溝22は、押しブッシュ29の内周面に押し前進方向へ反時計回りの螺進に沿った斜めに形成され、案内突子23は、駆動軸21の外周面に突設され、クラッチが切り離された状態において(図1)、傾斜溝22の先方端に位置している。なお、案内突子23は、前後方向の位置については常時一定である。そこで、クラッチが解離された図1の状態においてハンドル3により駆動軸21を時計回りに回転すると、案内突子23が押しブッシュ29内周面の傾斜溝22の基端に至ることによって、押しブッシュ29を前進させる一方、傾斜溝の基端で掛止することにより駆動軸21とともに押しブッシュ29を回転させるので、ハンドル3を回すと直ぐにクラッチが連結する。
【0017】
クラッチの連結構造については、押しブッシュ29の先端に駆動プレート33が鍔状に一体成形されており、その前面の外周縁部に沿って数個の摩擦材35,35,35が配設されている。一方、第1室16に突出している主軸7の基端には被動ディスク37が取り付けられているので、摩擦材35,35,35がそれに接触することによりクラッチ接続がなされる。なお、駆動軸21は、一端でのみ軸承されているので、それに嵌まる押しブッシュ29を支持するために、駆動プレート33の外周面に接触する数個のフリクションローラ39,39,39が配置されている。
【0018】
上記したように、案内突子23が傾斜溝22の基端に掛止(停止)することにより駆動軸21から押しブッシュ29に回転力が伝達される(第1接合)。しかし、必ずしもこのような掛止による必要はない。つまり、摩擦材35,35,35が被動ディスク37に接触して停止すると、この停止により案内突子23が傾斜溝22の一定箇所に固定化されるから、これが掛止と同じ作用となり駆動軸21から押しブッシュ29へ回転が伝達される(第2接合)からである。図示の場合は第1第2両接合による。なお、第2接合によることにすれば、駆動軸21と押しブッシュ29とは雌雄ねじ結合によっても良い。次に、第2室18について説明する。
【0019】
第2室18においては、中間壁17を基板として装備され、中間壁17からゼンマイバネ6が幅で納まる程度の間を隔てて副基板41がゼンマイホルダー43を介して設けられる。主軸7は、この中間壁17と副基板41とにベアリング45,47を介して支持され、副基板41ではベアリング47が嵌まる中心抜孔49の中に主軸7の端が納まっている。
【0020】
ゼンマイホルダー43は、副基板41と同じ広さの厚板にゼンマイバネ6が納まる大きな穴を収納室55として開けたもので、ボルト57により中間壁17にネジ止めされ、ゼンマイホルダー43にはボルト59により副基板41がネジ止めされる。ゼンマイバネ6の装着については、図2および図3に示すように、その取付け作業が容易で安定した装着状態となるように工夫した。すなわち、主軸7の外周面に断面において切欠12を設けるとともに、切欠12をゼンマイバネ6の弾力が働く方向に(正面からは時計回りの回転方向に)掛止角となり逆方向に迎え入れ角となる形状に形成され、その切欠12にゼンマイバネ6の基端に固着される掛止ピン51がバネ6の弾力で常時納まっている。また、収納室55の上端にゼンマイバネ6の先端部6aの引出口50を開口するとともに、引っ掛かり側の開口縁に円弧状の反転面53を形成し、ゼンマイホルダー43の上面に反転させた先端部6aを押え板52で押さてボルトネジ56で締めつけてある。
【0021】
発電機10は、変速機9が一体化されたもので、変速機9に入力軸61が偏心して突設された形態のものである。そして、入力軸61が主軸7と直接に接続され、その状態で発電機10がホルダー63により副基板41(これにはコスト高となる専用の取付板を使用する必要はない)に固定されている。接続の構造については、主軸7の先端部には、端面に開口する軸孔65が形成されているので、軸孔65に筒金若しくはワンウェイクラッチ67を嵌入し、入力軸61がその筒金67に嵌入されることにより筒金67を介して主軸7に一体連結される。或いは、ワンウェイクラッチを介して、一回転方向に関して一体連結される。
【0022】
副基板41に対する発電機10の取付けについては、変速機9の端面にそれよりも小径の発電機10が突出している形態であるので、ホルダー63は、変速機9が丁度納まる筒形に形成され、変速機9を押さえ止めるリング状の掛止板69が発電機10に嵌め込まれ、複数の取付ボルト71により、ホルダー63が掛止板69の上から副基板41に押さえ止められ回転止めされている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】音声発生ボックスに実施したこの発明の手動発電装置を示す断面図である。
【図2】同手動発電装置の背面を示す断面図である。
【図3】ゼンマイバネの先端部の止め方を示す図2のY部の拡大断面図である。
【図4】この発明の開発途中における音声発生ボックスを比較例として示す断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 ボックス
3 ハンドル
5 自動離合クラッチ
6 ゼンマイバネ
7 主軸(被動軸)
8 蓄力装置
9 変速機
10 発電機
16 第1室
17 中間壁
18 第2室
21 駆動軸
41 副基板
45,47 ベアリング
49 中心抜孔
51,53 ゼンマイバネの掛止部としての掛止ピンおよび反転面
55 収納室
61 入力軸
63 ホルダー
65 軸孔
67 筒金、(ワンウェイクラッチ)
69 掛止板
71 取付ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面にハンドルが取り付けられるボックスの内部に中間壁を設け、その内部について中間壁よりも手前は、ハンドルによる駆動軸をその回転操作時にのみ被動軸に接続する自動離合クラッチが構成される第1室となし、他方は、被動軸としての主軸を中心にしてその回転を機械的エネルギー又は位置エネルギーとして蓄える蓄力装置と、その畜力の開放により働く発電機とが内装される第2室となしてあって、第2室には、中間壁を基板としてそれから間を隔てて副基板を設け、主軸をその中間壁と副基板との双方で軸承し、副基板にはさらに発電機を取り付けることにより、発電機の入力軸を主軸に直接接続し、蓄力装置については、クラッチ接続によりハンドルで回転される主軸が、それに前記機械的エネルギー又は位置エネルギーを蓄えるためにハンドルの回転に抗するように一回転方向に常時付勢されていることを特徴とする手動発電装置。
【請求項2】
発電機の入力軸を主軸に直接接続する構造について、副基板ではベアリングが嵌まる中心抜孔の中に主軸の端が納まっており、中間壁と副基板との前記両軸承間にわたる深い軸孔を主軸に形成し、軸孔に入力軸を深く嵌入して直接固定し、または軸孔に嵌まる筒金若しくはワンウェイクラッチを介して固定したことを特徴とする請求項1記載の手動発電装置。
【請求項3】
発電機の取付けについては、発電機が大径の変速機付きであって、変速機が丁度納まる筒形のホルダーの端面に発電機に嵌まるリング状の掛止板を当てるとともに、掛止板の上から取付ボルトをホルダーに通して副基板に螺入することにより、副基板に変速機を固定したことを特徴とする請求項1又は2記載の手動発電装置。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−13856(P2009−13856A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175717(P2007−175717)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(303031169)東洋ゼンマイ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】