説明

手品用器具

【課題】 カップの中から車両模型を周囲に気づかれないように出現させる道具を提供する。
【解決手段】車両模型9の車輪10a、10bに接触して回動を規制する部位2、3を設けることで車輪10a、10bが発する音を防ぐ。また、車両模型9の後方で上方に突出する部位4を設けることで保持を容易にし、なおかつ、車両模型9とカップ12が接触することにより発する音を防ぐ。さらに車両模型9の車輪10a、10bに接触する部位2、3が、車輪10a、10bに接触して回動を規制する位置と、車輪10a、10bから離間して回動の規制を解除する位置に変位可能とすることで、車両模型9を走行可能状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両模型を用いた手品用の器具に関する。
【背景技術】
【0002】
カップアンドボールやチョップカップと呼ばれる手品の現象の一つに、空のはずのカップの中から物体が出現するというものがある。これは密かに用意した物体を、観客に気付かれないように手に持ったカップに入れ、そのカップを開口部を下に向けた状態でテーブルに置くことにより実現する。
【0003】
従来、この手品で中に入れる物体には以下の条件があった。
【0004】
第一の条件として、カップの中に入れたことが観客に気付かれないように音を出さないもの。
【0005】
第二の条件として、カップの口径に近い直径を持つ、球形に近い形状であることである。これは、カップに物体を入れた後、開口部を下に向けた状態でテーブル上に運ぶが、このとき物体の落下を防ぐために開口部にカップを持つ手の指の一本または二本を当て、物体を受け止める。このとき物体がある程度の大きさを持たないと、指の隙間から落下してしまうためである。
【0006】
このため、レモンやジャガイモ、タマネギなどの果物や野菜が一般的に使用されている。
【0007】
この物体として車両模型を使えば、玩具であるため観客の関心をより惹きつけ、演技の面白さが増すものと期待できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、車両模型を使用する場合には次のような問題があった。
【0009】
車両模型をカップに入れると、車両模型本体とカップがぶつかりカチャカチャと音がして、密かにカップに入れたことが観客に判ってしまった。
【0010】
さらに、車両模型の車輪部分が回動し、同様にカチャカチャと音が発生し、密かにカップに入れたことが判ってしまった。
【0011】
そして、車両模型をカップの中に入れた場合、そのカップを開口部を下に向けた状態にすると、指1本又は2本をカップの開口面に当てて受け止めようとしても、その隙間から落ちてしまい保持が難しかった。
【0012】
また、車両模型をカップの中に入れ、そのカップを開口部を下向きにテーブルに置いたとき、中の車両模型は正立しているとは限らず、カップを取り除いて倒れた状態で出現させた場合、見た目に格好が悪かった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の点を解決するため本発明は、車両模型の車輪に接触して回動を規制する部位と、車両模型の前方もしくは後方で上方に突出する部位を設けた手品用器具である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により以下の効果が期待される。
【0015】
第一の効果として、手品を演じる際、車両模型をカップの中に入れても音が発生せず、密かに入れたことを観客に気付かれにくい。
【0016】
第二の効果として、車両模型がどんなに小さくても、カップを開口部を下に向けた状態で落下することがなく、容易に保持できる。
【0017】
第三の効果として、カップを取り除いて車両模型を出現させた際に、倒れずに正立状態であるので、見た目に格好がよい。
【0018】
第四の効果として、車両模型を出現と同時に走らせる演出も可能であるので面白さが増し、また、観客の目線が車両模型に引き付けられている間に手品師は必要な密かな行動を行える。
【0019】
第五の効果として、車両模型の出現というこれまでになかった新しい演出を行うことができ、また、出現した車両模型を贈り物として観客に渡すこともできるので、観客の満足度を更に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
図1、図2、図3、図4を参照して本発明の形状を説明する。なお、今回は四輪車の車両模型を使用する場合を例にとっているが、本発明の主旨は車輪の数を限定するものではなく、例えば二輪車や六輪車などの車両模型を使用することもできる。
【0022】
図1は、硬質の樹脂製で板状の前輪用車輪押さえ部2、後輪用車輪押さえ部3および取手4を連結部5で一体化した保持具1である。なお、本説明では素材を樹脂を例にとって説明するが、金属など容易に変形しないものであれば様々な物を使用することができる。
【0023】
前輪用車輪押さえ部2と後輪用車輪押さえ部3の中間部分の連結部5には、左右に一対の刻みを入れることで、車輪規制用輪ゴム掛け7を形成する。
【0024】
前輪用車輪押さえ部2と連結部5の境界部にも、連結部5の左右に一対の刻みを入れることで、車輪開放用輪ゴム掛け8を形成する。
【0025】
この保持具1を用いるときは、図2に示すように、車両模型9の車体下部に輪ゴム13をテンションをかけた状態で取り付け、その輪ゴム13に保持具1を通す。なお、本説明では輪ゴムを例にとって説明を行うが、輪ゴム以外にスプリングなどの弾性体を用いて取り付けることも可能である。
【0026】
車両模型9の車輪10a、10bの回動を規制する場合は、輪ゴム13を車輪規制用輪ゴム掛け7に掛ける。
【0027】
このとき、前輪用車輪押さえ部2は前輪10aに、後輪用車輪押さえ部3は後輪10bに接触する位置に設ける。
【0028】
また、保持具1が車輪10a、10bの回動を規制した状態において、車両模型9と取手4の間にはカップ12の縁が容易に入る程度の間隔を設けている。
【0029】
取手4の下方には、カップ12の縁が掛かるように孔6を設ける。
【0030】
車両模型9の車輪10a、10bの回動の規制を解除する場合は、図3に示すように、輪ゴム13を車輪開放用輪ゴム掛け8に掛ける。
【0031】
このとき、前輪用車輪押さえ部2と後輪用車輪押さえ部3および連結部5の寸法は、全ての車輪10a、10bに接触しないように設定する。
【0032】
図4に示すように、車輪規制用輪ゴム掛け7の刻みの形状はくさび形とし、その後輪用車輪押さえ部3側の辺は連結部5に直角にする。
【0033】
車輪開放用輪ゴム掛け8の刻みの形状もくさび形とし、その前輪用車輪押さえ部2側の辺は連結部5に直角にする。
【0034】
こうすることで車輪規制用輪ゴム掛け7に掛かっている輪ゴム13は、保持具1を取手4側の方向へ引くことにより、車輪規制用輪ゴム掛け7から外れ車輪開放用輪ゴム掛け8に掛かる。そして、更に保持具1を引いても車輪開放用輪ゴム掛け8から外れない。
【0035】
すなわち、保持具1は、取手4側の方向へ引くことにより、車輪10a、10bに接触して回動を規制する位置から、車輪10a、10bから離間して回動の規制を解除する位置に変位可能である。
【0036】
ぜんまいが巻かれた自走式の車両模型9を使用した場合、保持具1に、トルクを持つ車輪10a、10bから、取手4側の方向へ押し動かされる力が働くので、輪ゴム13が車輪規制用輪ゴム掛け7から自然に外れないように、車輪規制用輪ゴム掛け7のくさび形の刻みの角度は、やや鋭角に設定する。
【0037】
車輪開放用輪ゴム掛け8を車輪規制用輪ゴム掛け7に近接させるため、車輪開放用輪ゴム掛け8のくさび形の刻みの車輪規制用輪ゴム掛け7側の片の外側の端を車輪規制用輪ゴム掛け7に近接させる。
【0038】
こうすることにより、車輪規制用輪ゴム掛け7から外れた輪ゴム13は、直後に近接した車輪開放用輪ゴム掛け8の一部分に掛かる。さらに、輪ゴム13の収縮力により、連結部5の幅が広い側から狭い側に向けて保持具1が変移する。これにより、車輪10a、10bを規制する位置から離れた保持具1は中途半端な位置にとどまらず、車輪10a、10bに接触しない適切な個所で安定する。
【0039】
車輪10a、10bの回動の規制を解除した状態から、回動を規制する状態へ戻す場合は、保持具1を前輪用車輪押さえ部2側の方向へ引くことにより、輪ゴム13が車輪開放用輪ゴム掛け8から外れ、車輪規制用輪ゴム掛け7に掛かる。そして、更に保持具1を引いても車輪規制用輪ゴム掛け7から外れず、車輪10a、10bの回動を規制した状態で保持具1は固定される。
【0040】
図5、図6を参照して本発明の取り付け方法の一例を説明する。
【0041】
図5に示すように、車両模型9のシャーシ部11に輪ゴム13をテンションをかけた状態で取り付ける。取り付ける位置は、車体のシャーシ部11の前輪10aと後輪10bの間とする。輪ゴム13が2箇所、外部に出る。
【0042】
保持具1は、外部に出た輪ゴム13の後輪10bに近い方の1条に通して、車両模型9に取り付ける。このとき、車輪規制用輪ゴム掛け7に輪ゴム13を掛ける。
【0043】
こうすることで、輪ゴム13のテンションにより前輪用車輪押さえ部2と後輪用車輪押さえ部3が車輪10a、10bに押圧し、車輪10a、10bの自由な回動を規制する。すなわち、車輪10a、10bからカチャカチャとした音が発生しなくなる。さらに、その位置に保持具1は固定される。また、ぜんまいによる自走式の車両模型9の場合、ぜんまいを巻き上げておいても走り出すことなく保持される。
【0044】
そして、車輪10a、10bの回動を開放するときは、図6に示すように、取手4をつまむなどして保持具1を車両模型9の後部方向に引く。
【0045】
すると、輪ゴム13から車輪規制用輪ゴム掛け7が外れ、新たに車輪開放用輪ゴム掛け8部分が掛かる。
【0046】
さらに、輪ゴム13はその収縮力により、車輪開放用輪ゴム掛け8の刻みが最も深い個所に掛かり、保持具1は適切な位置に固定される。
【0047】
この結果、前輪用車輪押さえ部2と後輪用車輪押さえ部3が車輪10a、10bから完全に離れ、車輪10a、10bは回動可能になり、車両模型9は動けるようになる。ぜんまいによる自走式の車両模型9の場合、予めぜんまいを巻き上げておけば走り出す。
【0048】
以上説明したように、本実施の形態の保持具1は、車両模型9に輪ゴム13によってテンションをかけた状態で取り付けられる保持具1であって、前輪10aに接触して回動を規制すると前輪用車輪押さえ部2と、後輪10bに接触して回動を規制すると後輪用車輪押さえ部3と車両模型9の後方で上方に突出する4を一体的に設けた保持具1である。
【0049】
図2、図7、図8を参照して本発明の使用方法の一例を説明する。まず、車両模型9をカップ12に入れる時は、図2に示すように、車輪10a、10bの回動を規制した状態にする。こうすることで、車輪10a、10bの回動によるカチャカチャという音の発生を防ぐことができる。
【0050】
次に、取手4をカップ12の縁に掛け、図7に示すように、取手4をカップ12の外側から指で押さえて保持する。取手4中央には孔6が設けられているので、円形のカップ12の縁に押し当てても、保持具1はぐらつかず、安定した保持が可能である。こうすることで、車両模型9本体とカップ12がぶつからず、カチャカチャという音が発生しないので、密かにカップに入れたことを観客に気づかれない。なお、図7は説明の便宜上透視図だが実際の使用においては不可視であり、観客からはカップ12内にある車両模型9が確認できないようになっている。
【0051】
そして、カップ12を開口部を下向きにした状態でテーブルに置くと、車両模型9は正立した状態でテーブル上に置かれる。
【0052】
さらに、カップ12から出ている取手4をカップ12の外側の方向に引き、車両模型9の車輪10a、10bの回動の規制を解除し、車両模型9を動ける状態にする。
【0053】
最後に、図8に示すように、カップ12を持ち上げると、車両模型9が正立状態で観客の前に出現する。出現の際カップ12の内側の端で車両模型9をコツンと弾くと車両模型9は走り出る。
【0054】
ぜんまいを巻き上げた自走式の車両模型9を用いる場合は、カップ12を持ち上げると同時に観客の前に走り出る。さらに、カップ12が紙コップのように軽い場合はカップ12をかぶったままでも走行可能であるので、伏せたカップ12がひとりでに動きだすなどという、今までになかった新しい演出を行うことも可能になる。
【0055】
なお、本発明を用いれば、車両模型9のみならず人形など別の物体も同様に正立させた状態で出現させることも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の手品用器具を示す斜視図
【図2】本発明の手品用器具が車両模型の車輪に接触する位置にある場合の断面図
【図3】本発明の手品用器具が車両模型の車輪に接触しない位置にある場合の断面図
【図4】本発明の手品用器具が車両模型の車輪に接触しない位置にある場合の底面図
【図5】本発明の手品用器具が車両模型の車輪に接触する位置にある場合の斜視図
【図6】本発明の手品用器具が車両模型の車輪に接触しない位置にある場合の斜視図
【図7】本発明の手品用器具の使用状態を示す説明図
【図8】本発明の手品用器具の使用状態を示す説明図
【符号の説明】
【0057】
1 保持具
2 前輪用車輪押さえ部
3 後輪用車輪押さえ部
4 取手
5 連結部
6 孔
7 車輪規制用輪ゴム掛け
8 車輪解放用輪ゴム掛け
9 車両模型
10a 前輪
10b 後輪
11 シャーシ部
12 カップ
13 輪ゴム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両模型の車輪に接触して回動を規制する部位と、車両模型の前方もしくは後方で上方に突出する部位を設けた手品用器具
【請求項2】
車両模型の車輪に接触する部位が、車輪に接触して回動を規制する位置と、車輪から離間して回動の規制を解除する位置に変位可能である請求項1に記載の手品用器具

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−283999(P2008−283999A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128898(P2007−128898)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【特許番号】特許第4129563号(P4129563)
【特許公報発行日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(398000934)
【Fターム(参考)】