説明

手塗り施工用塗工剤

【課題】十分な使用時間が確保でき、しかも安全性の高い手塗り施工用塗工剤を提供する。
【解決手段】主剤(A)と硬化剤(B)を反応させて得られたウレタン樹脂組成物からなる手塗り施工用塗工剤。(A)3水酸基官能体以上の多水酸基官能体を少なくとも含む分子量200以上の長鎖ポリオール(e)を含むポリオール成分(a)の末端にジフェニルメタンジイソシアネートが結合したイソシアネート基末端プレポリマー(b)と、未結合のジフェニルメタンジイソシアネート(c)とを含有する主剤。(B)分子量200未満の短鎖ポリオール(f)からなる架橋剤(g)と、分子量200以上の長鎖ポリオール(h)とを含有する硬化剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の防水施工などに用いられるウレタン樹脂組成物からなる手塗り施工用塗工剤に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の屋上、ベランダ、廊下などの防水施工に用いられるウレタン樹脂組成物には、コテ、ヘラ等を用いて施工される手塗り施工用と、吹き付けによって施工される吹き付け施工用とがある。
手塗り施工用のウレタン樹脂組成物では、十分な使用可能時間が必要となるため、通常、イソシアネート成分としてトリレンジイソシアネート(TDI)が用いられる。詳細には、TDIとポリオール(ポリエーテルポリオール等)とからなるイソシアネート基末端プレポリマーを含む主剤と、硬化剤とが混合して使用される。
硬化剤としては、DETDA(ジエチルトルエンジアミン)、MOCA(3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン)、変成MOCAなどのアミン類化合物からなる架橋剤を含むものが広く使用されている。
イソシアネート基末端プレポリマーの製造の際には、TDIの有害性を考慮して、モノマー(結合に関与していないTDI)が残らないようにTDIとポリオール化合物とを反応させる。
【0003】
吹きつけ施工用のウレタン樹脂組成物では、通常、イソシアネート成分として、比較的安全性が高いジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が用いられる。詳細には、MDIとポリオールとからなるイソシアネート基末端プレポリマーを含む主剤と、硬化剤とが混合して使用される。
施工の際には、スプレーノズルを有する吹き付け装置を用い、スプレーノズルに設けられた混合装置で主剤と硬化剤とを混合し、スプレーノズルで霧状にして散布する。
イソシアネート成分としてMDIを用いるため使用可能時間は短くなるが、吹きつけ施工では、混合液を混合直後に塗工するため問題は生じない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−284520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
吹きつけ施工には樹脂組成物の飛散という問題があるため、飛散が起こらない手塗り施工が多く採用されている。
しかしながら、手塗り施工用のウレタン樹脂組成物では、使用可能時間の確保のためイソシアネート成分としてTDIが用いられることから、安全性に対する配慮が必要となっている。
比較的安全性が高いMDIを使用することも検討されているが、硬化速度が高くなるため、MDIを手塗り施工に適用するのは難しかった。
このため、TDIを使用しない手塗り施工用の塗工剤が求められていた。
また、硬化剤に用いられる架橋剤としては、DETDA、MOCA、変成MOCAなどのアミン類化合物がある。
これらのうちDETDAを用いる場合には、イソシアネート成分としてMDIを用いると、手塗り施工に必要な使用時間の確保が難しくなることから、TDIを使用せざるを得ない。また、MOCAおよび変成MOCAは、硬化速度を低くでき、使用時間の点で有利であるが、安全性の観点から代替物が求められている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、十分な使用時間が確保でき、しかも安全性の高い手塗り施工用塗工剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の手塗り施工用塗工剤は、次に示す主剤(A)と硬化剤(B)を反応させて得られるウレタン樹脂組成物からなる手塗り施工用塗工剤。(A)3水酸基官能体以上の多水酸基官能体を少なくとも含む分子量200以上の長鎖ポリオール(e)を含むポリオール成分(a)の末端にジフェニルメタンジイソシアネートが結合したイソシアネート基末端プレポリマー(b)と、未結合のジフェニルメタンジイソシアネート(c)とを含有する主剤。(B)分子量200未満の短鎖ポリオール(f)からなる架橋剤(g)と、分子量200以上の長鎖ポリオール(h)とを含有する硬化剤。
前記硬化剤(B)において、前記架橋剤(g)および前記長鎖ポリオール(h)のOH基の合計量に対する前記架橋剤(g)のOH基の配合比は、モル基準で60〜90%であることが好ましい。
前記主剤(A)は、前記ジフェニルメタンジイソシアネートと前記ポリオール成分(a)とを、NCO基の含有率が4〜9質量%となるように配合したものであることが好ましい。
前記主剤(A)において、前記ポリオール成分(a)は、分子量200未満の短鎖ポリオール(d)を含むものであってよい。
前記主剤(A)において、前記長鎖ポリオール(e)は、2水酸基官能体と3水酸基官能体との混合物であってよい。
前記硬化剤(B)において、前記長鎖ポリオール(h)としては、ポリマーポリオールとひまし油ポリオールのうちいずれか一方と、ポリエーテルポリオールとの混合物を用いることができる。
前記硬化剤(B)において、前記長鎖ポリオール(h)としては、ポリエーテルポリオールを用いることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の手塗り施工用塗工剤は、建築物の屋上、ベランダ、廊下などに塗布して硬化させることによって、防水性の塗膜(ウレタン防水材)を形成することができる。
硬化速度を抑えることができるため、十分な使用可能時間を確保できることから、コテ、ヘラ、レーキ、スクイージ等の工具を用いて手塗り施工が可能である。
また、人体に対する有害性が低いMDIを用いるため、安全性の点で優れている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の手塗り施工用塗工剤は、少なくとも以下に示す主剤(A)と、硬化剤(B)とを反応させて得られるウレタン樹脂組成物からなる塗工剤である。
(1)主剤(A)
主剤(A)は、ポリオール成分(a)の末端にジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIという)が結合したイソシアネート基末端プレポリマー(b)と、未結合のMDI(c)(以下、余剰MDI(c)という)とを含むものである。
ポリオール成分(a)は、長鎖ポリオール(e)を含むものである。なお、ポリオールとは水酸基を複数有する化合物である。
【0009】
長鎖ポリオール(e)は、分子量(平均分子量)が200以上であるポリオールであり、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールのうち1または2以上を使用できる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどがある。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリエチレンサクシネートジオール、ポリブチレンサクシネートジオールなどがある。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリへキサメチレンカーボネートジオールなどがある。
また、ポリマーポリオール、植物系ポリオール(ひまし油、亜麻仁油等)も使用できる。ポリマーポリオールは、例えばスチレンやアクリロニトリル等のモノマーをポリプロピレングリコールなどの反応溶媒中で重合させて得られるものである。
長鎖ポリオール(e)としては、これらの化合物を単独で用いてもよいし、2以上の混合物を用いてもよい。
本発明において、平均分子量としては、数平均分子量または質量平均分子量を使用できる。
【0010】
長鎖ポリオール(e)は、3水酸基官能体(3官能体)以上の多水酸基官能体(多官能体)を少なくとも含む。
多水酸基官能体としては、3以上の水酸基を有するもの、例えば3〜8水酸基官能体などがある。
長鎖ポリオール(e)は、少なくとも3水酸基官能体を含む長鎖ポリオール(e)を使用する野が好ましい。長鎖ポリオール(e)は3官能体のみからなるものであってもよいし、3官能体と他の多官能体とを含むものであってもよい。他の多官能体は例えば2官能体、4以上の官能体である。具体的には、3官能体と2官能体の混合物を使用できる。
長鎖ポリオール(e)の平均分子量は例えば200〜10000(好ましくは200〜5000)とすることができる。平均分子量をこの範囲とすることで、ゲル化を起こりにくくし、施工時の取り扱い性を良好にできる。
3官能体と他の官能体の混合物を用いる場合には、長鎖ポリオール(e)における3官能体の比率を50%以上(モル比)とするのが好ましい。
【0011】
短鎖ポリオール(d)は、分子量が200未満のポリオールであり、短鎖ジオール、短鎖トリオールなどが使用できる。
短鎖ジオールとしては、例えば1,4ブタンジオール(分子量90)、3メチル1,5ペンタジオール(分子量118)、1,9−ノナンジオール(分子量160)などがある。
短鎖トリオールとしては、例えばトリメチロールプロパン(分子量134)、トリプロピレングリコール(分子量192)などがある。
短鎖ポリオール(d)には、短鎖ジオールと短鎖トリオールのうちいずれか一方のみを用いてもよいし、両方を用いてもよい。具体的には、上記化合物(1,4ブタンジオール、3メチル1,5ペンタジオール、1,9−ノナンジオール、トリメチロールプロパン、トリプロピレングリコール)から選択された1または2以上を用いることができる。
【0012】
ポリオール成分(a)に占める短鎖ポリオール(d)の水酸基(OH基)の比率(短鎖ポリオール(d)のOH基の量がポリオール成分(a)のOH基の全体量に占める割合)(モル比)は、40%以下が好ましく、例えば10〜20%が好適である。
短鎖ポリオール(d)の上記比率を上記範囲とすることによって、硬化速度を抑え、十分な使用可能時間を確保できる。
なお、使用可能時間とは、主剤(A)と硬化剤(B)の混合液を塗工する際に、混合液が十分な流動性を有し、平滑に塗工することが可能な時間をいう。使用可能時間は、例えば粘度が30000mPa・sに達するまでの時間を指標とすることができる。
【0013】
MDIとしては、ピュアMDI、液状MDI等が使用できる。液状MDIは、いわゆるピュアMDIを、ホスホレン系またはアルキルホスフェート系などの公知の触媒を用いて処理し、NCO基の一部を変性させることにより得られるもので、常温で液状である。
例えば、ポリオール成分(a)のOH基に対するモル比率が1:1となるNCO基を含む量のピュアMDIと、余剰MDI(c)となる量の液状MDIを用いることができる。
【0014】
ポリオール成分(a)とMDIとの配合比は、MDIのイソシアネート基(NCO基)のモル数が、ポリオール成分(a)のOH基のモル数より多い状態、すなわちMDIが過剰となるように設定する。
具体的には、ポリオール成分(a)とMDIとの配合比は、主剤(A)におけるNCO基の含有率が、(理論上)4〜9質量%、好ましくは6〜7質量%となるように設定することができる。
主剤(A)におけるNCO基の含有率は、次のように算出することができる。主剤(A)に添加されるMDIのNCO基の量と、ポリオール成分(a)のOH基の量との差(NCO基−OH基)(モル基準)を、NCO基(OH基と結合していないNCO基)(遊離NCO基)の量(モル基準)とし、これにNCOの分子量(約42)を乗じて得られたNCO基の質量に基づいて、主剤(A)におけるNCO基の含有率(質量基準)を算出することができる。
NCO基の含有率は、低すぎると塗膜表面のベタつきが高くなり、高すぎれば使用可能時間が短くなる傾向があるが、上記範囲に設定することによって、塗膜表面のベタつきを抑え、かつ使用可能時間を十分に確保できる。
余剰MDI(c)の量は、NCO基の含有率が上記範囲となるよう定めることができる。
【0015】
主剤(A)には、溶剤、可塑剤、消泡剤等の添加剤を必要に応じて配合することができる。
溶剤は、粘度等の物性を調整するものであり、トルエン、キシレン、スチレン等の芳香族炭化水素類およびこれらの塩素化物が挙げられる。
可塑剤としては、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、トリメリット酸エステル等のカルボン酸エステルが使用でき、特に、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)等が好ましい。
消泡剤としては、ジメチルシロキサン系消泡剤、ポリアクリレート系消泡剤等が挙げられる。
【0016】
(2)硬化剤(B)について
硬化剤(B)は、短鎖ポリオール(f)からなる架橋剤(g)と、長鎖ポリオール(h)とを含むものである。
短鎖ポリオール(f)は、分子量が200未満のポリオールであり、短鎖ジオール、短鎖トリオールなどが使用できる。
短鎖ジオールとしては、例えば1,4ブタンジオール(分子量90)、3メチル1,5ペンタジオール(分子量118)、1,9−ノナンジオール(分子量160)などがある。
短鎖トリオールとしては、例えばトリメチロールプロパン(分子量134)、トリプロピレングリコール(分子量192)などがある。
短鎖ポリオール(f)には、短鎖ジオールと短鎖トリオールのうちいずれか一方のみを用いてもよいし、両方を用いてもよい。具体的には、上記化合物(1,4ブタンジオール、3メチル1,5ペンタジオール、1,9−ノナンジオール、トリメチロールプロパン、トリプロピレングリコール)から選択された1または2以上を用いることができる。
【0017】
長鎖ポリオール(h)は、分子量(平均分子量)が200以上であるポリオールであり、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールのうち1または2以上を使用できる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどがある。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリエチレンサクシネートジオール、ポリブチレンサクシネートジオールなどがある。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリへキサメチレンカーボネートジオールなどがある。
また、ポリマーポリオール、植物系ポリオール(ひまし油、亜麻仁油等)も使用できる。
【0018】
長鎖ポリオール(h)としては、これらの化合物を単独で用いてもよいし、2以上の混合物を用いてもよい。
長鎖ポリオール(h)としては、2官能体を使用してもよいし、3以上の官能体を使用してもよい。また、これらの混合物を用いてもよい。
【0019】
架橋剤(g)(短鎖ポリオール(f))の配合比については、OH基の比率(架橋剤(g)のOH基の量が、架橋剤(g)と長鎖ポリオール(h)のOH基の全体量に占める割合)(モル比)を例えば60〜90%とすることができ、この範囲とすることで塗膜表面のベタつきを抑制でき、かつ取り扱いを容易にすることができる。
【0020】
硬化剤(B)には、触媒を添加することができる。
触媒としては、ナフテン酸鉛、オクチル酸鉛等の有機金属触媒が使用できる。
短鎖ポリオールは、アミン類化合物に比べて主剤(A)のNCO基に対する反応が遅いが、触媒の添加によって短鎖ポリオール(f)のOH基と主剤(A)のNCO基との反応を促進し、硬化速度を高めることができる。
触媒の添加量は、例えばイソシアネート基末端プレポリマー(b)100質量部に対して0.05〜5質量部とすると、硬化速度を高め、かつ反応時の温度上昇を抑えることができる。
【0021】
硬化剤(B)には、必要に応じて、溶剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、粉黛類、酸化防止剤、紫外線吸収剤、沈降防止剤、顔料等の添加剤を配合することができる。
溶剤は、粘度等の物性を調整するものであり、トルエン、キシレン、スチレン等の芳香族炭化水素類およびこれらの塩素化物が挙げられる。
可塑剤としては、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、トリメリット酸エステル等のカルボン酸エステルが使用でき、特に、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)等が好ましい。
消泡剤としては、ジメチルシロキサン系消泡剤、ポリアクリレート系消泡剤等が挙げられる。
充填剤は重合収縮の減少、増量、硬度向上等を目的として添加されるものであって、炭酸カルシウム、クレー、タルク、シリカ、ケイ藻土等が使用できる。
【0022】
主剤(A)のNCO基と、硬化剤(B)のOH基との配合比NCO基/OH基(モル比)(NCO/OHインデックス)は、1.2〜1.3が好ましい。
NCO/OHインデックスは、上記範囲とすることによって、硬化物の物性を良好にし、かつ主剤(A)と硬化剤(B)とを混合する際の発泡を防止できる。
【0023】
次に、上記ウレタン樹脂組成物を製造する方法について説明する。
本発明では、ポリオール成分(a)とMDIとを混合し、イソシアネート基末端プレポリマー(b)を生成させる。
ポリオール成分(a)とMDIとの配合比は、MDIのイソシアネート基(NCO基)のモル数が、ポリオール成分(a)のOH基のモル数より多い状態、すなわちMDIが過剰となるようにする。
具体的には、ポリオール成分(a)とMDIとの配合比は、主剤(A)におけるNCO基の含有率が、(理論上)4〜9質量%、好ましくは6〜7質量%となるように設定することができる。NCO基の含有率(NCO%)を4〜9質量%とすることによって、表面のベタつき、強度などの物性が良好になり、しかも発泡の問題が起こらないウレタン樹脂組成物が得られる。
これによって、ポリオール成分(a)の末端にMDIが結合したイソシアネート基末端プレポリマー(b)と、余剰MDI(c)とを含む主剤(A)が得られる。
【0024】
ポリオール成分(a)は、短鎖ポリオール(d)と長鎖ポリオール(e)とを含むものであるため、イソシアネート基末端プレポリマー(b)は、複数のイソシアネート基末端化合物の混合物となる。
例えば、短鎖ポリオール(d)が短鎖ジオールと短鎖トリオールを含む場合には、短鎖ジオールからは、2つのOH基にそれぞれMDIが結合したイソシアネート基末端化合物が生成し、短鎖トリオールからは、3つのOH基にそれぞれMDIが結合したイソシアネート基末端化合物が生成し、長鎖ポリオール(e)からは、長鎖ポリオール(e)の各OH基にMDIが結合したイソシアネート基末端化合物が生成する。
この場合には、イソシアネート基末端プレポリマー(b)は、第1のイソシアネート基末端化合物(短鎖ジオール由来)と、第2のイソシアネート基末端化合物(短鎖トリオール由来)と、第3のイソシアネート基末端化合物(長鎖ポリオール(e)由来)の混合物となる。
主剤(A)においては、ポリオール成分(a)に短鎖ポリオール(d)が使用されているため、塗膜の機械的強度を高めるとともに、伸びを大きくすることができる。
【0025】
硬化剤(B)は、短鎖ポリオール(f)からなる架橋剤(g)と、長鎖ポリオール(h)と、上記添加剤(触媒等)とを混合することで調製できる。
【0026】
次いで、主剤(A)と硬化剤(B)とを混合し、これらを反応させてウレタン樹脂組成物を生成させる。
このウレタン樹脂組成物は、短鎖ポリオール(f)からなる架橋剤(g)が硬化剤(B)に使用されているため、イソシアネート成分としてMDIが用いられているにもかかわらず硬化速度が抑えられる。
例えば23℃において混合液の粘度が30000mPa・sに到達するまでの時間は、10〜120分とすることができる。この30000mPa・sに到達するまでの時間は、30〜50分が好ましい。
指触乾燥時間(塗膜上に作業者が載っても塗膜に変形が起こらなくなるまでの時間)は、例えば8〜36時間とすることができる。指触乾燥時間は16〜24時間とするのが好ましい。
【0027】
本発明のウレタン樹脂組成物は、建築物の屋上、ベランダ、廊下などに塗布して硬化させることによって、防水性の塗膜(ウレタン防水材)を形成することができる。
硬化速度を抑えることができるため、十分な使用可能時間を確保できることから、コテ、ヘラ、レーキ、スクイージ等の塗工具を用いて手塗り施工が可能であり、手塗り施工用塗工剤として優れている。
また、人体に対する有害性が低いMDIを用いるため、安全性の点で優れている。
なお、本発明において、手塗り施工は、コテ、ヘラ、レーキ、スクイージ等の塗工具を用いた施工に限らない。例えば、主剤を貯留する主剤容器と、硬化剤を貯留する硬化剤容器と、これらから管路を通して個別に送液された主剤および硬化剤を混合するミキサと、吐出部とを有する圧送装置を用いる施工も手塗り施工に含まれる。
圧送装置を用いる施工では、例えば、各容器からそれぞれ管路を通して送液された主剤と硬化剤とをミキサにおいて所定比率で混合し、混合液を吐出部から吐出させて施工対象面に塗工することができる。吐出部は、混合液を噴霧せずに施工対象面に供給できるように構成できる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を、具体例を示して詳細に説明する。なお、配合量を示す「部」は「質量部」を意味する。
<試験例1〜3>
次のようにしてウレタン樹脂組成物を調製した。
(1)主剤(A)の調製
1,4ブタンジオール(三井化学ポリウレタン社製の1,4BD)(短鎖ポリオール(d))、ポリエーテルポリオール(ポリプロピレングリコール)(三井化学ポリウレタン社製のDiol−2000:平均分子量2000の水酸基2官能体)(長鎖ポリオール(e))、ポリエーテルポリオール(変成ポリプロピレングリコール)(三井化学ポリウレタン社製のMN−3050K:平均分子量3000の水酸基3官能体)(長鎖ポリオール(e))からなるポリオール成分(a)と、ピュアMDI(三井化学ポリウレタン社製のコスモネートPH)と、液状MDI(三井化学ポリウレタン製のMDI−LL、イソシアネート含有率29.1質量%)と、アジピン酸ジイソノニル(DINA)(可塑剤)とを混合し、イソシアネート基末端プレポリマー(b)を生成させた。
各成分の配合比を表1に示す。
表1において、NCO/OHインデックスは、MDIのNCO基と、ポリオール成分(a)のOH基との配合比(NCO/OH)(モル比)を示す。
NCO%は、主剤(A)におけるNCO基の含有率(質量%)である。以下、主剤(A)については同様の表記を採用する。
なお、表1ではピュアMDIをイソシアネート基末端プレポリマー(b)の構成材料として示し、液状MDIを余剰MDI(c)の構成材料として示したが、ピュアMDIの一部が余剰MDI(c)となり、液状MDIの一部がイソシアネート基末端プレポリマー(b)の構成材料となることも有り得る。
【0029】
【表1】

【0030】
(2)硬化剤(B)の調製
1,4ブタンジオール(三井化学ポリウレタン社製の1,4BD)(短鎖ポリオール(f))からなる架橋剤(g)、ポリマーポリオール(3官能体)(三洋化成工業社製KC900)(長鎖ポリオール(h))(平均分子量:5000)、ポリエーテルポリオール(2官能体)(三井化学ポリウレタン社製アクトコールED−37B)(長鎖ポリオール(h))(平均分子量:3000)、ナフテン酸鉛(日本化学産業社製ナフテックスPb−24)(触媒(i))、消泡剤(共栄社化学製のフローレンAC1190)、ターペン(溶剤)、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)(可塑剤)、炭酸カルシウム(日東粉化製のNS200)(充填剤)を混合して硬化剤(B)とした。
各成分の配合比を表2に示す。表2において、NCO/OHインデックスは、主剤(A)のNCO基と、硬化剤(B)のOH基(架橋剤(g)および長鎖ポリオール(h)のOH基)との配合比NCO基/OH基(モル比)を示す。以下、硬化剤(B)については同様の表記を採用する。
【0031】
【表2】

【0032】
主剤(A)と硬化剤(B)とを混合して得られたウレタン樹脂組成物を硬化させ、硬化物について以下の物性を測定した。結果を表3に示す。
・引張強度:JIS A6021−2000に規定する引張強さ[N/mm
・伸び率:JIS A6021−2000に規定する破断時の伸び率[%]
・引裂強度:JIS A6021−2000に規定する引裂強さ[N/mm]
表面のベタつき:混合してから24時間後の表面のベタつきを調べた。表面のベタつきを、ベタつきが全くない状態(◎)、ベタつきがごくわずか残る状態(○)、実用上問題ない程度のベタつきが残る状態(△)、実用上問題があるベタつきが残る状態(×)のうちいずれかに評価した。
【0033】
【表3】

【0034】
表3より、硬化剤(B)に、架橋剤(g)として短鎖ポリオール(f)を用いたことによって、強度、伸び率などの機械的特性に優れた硬化物が得られ、しかも短時間で表面のベタつきが小さくなったことがわかる。
また、長鎖ポリオール(e)に3官能体を使用することによって、優れた物性が得られた。
【0035】
<試験例4、5>
次のようにしてウレタン樹脂組成物を調製した。
(1)主剤(A)の調製
短鎖ポリオール(d)、ポリエーテルポリオール(2官能体)(Diol−2000)(長鎖ポリオール(e))、ポリエーテルポリオール(3官能体)(MN−3050K)(長鎖ポリオール(e))からなるポリオール成分(a)と、ピュアMDI(コスモネートPH)と、液状MDI(MDI−LL)と、アジピン酸ジイソノニル(DINA)(可塑剤)とを混合し、イソシアネート基末端プレポリマー(b)を生成させた。
短鎖ポリオール(d)としては、1,4ブタンジオール(1,4BD)、または3メチル1,5ペンタジオール(MPD)を用いた。
各成分の配合比を表4に示す。
【0036】
【表4】

【0037】
(2)硬化剤(B)の調製
1,4ブタンジオール(1,4BD)(短鎖ポリオール(f))からなる架橋剤(g)、ポリマーポリオール(3官能体)(KC900)(長鎖ポリオール(h))、ポリエーテルポリオール(2官能体)(ED−37B)(長鎖ポリオール(h))、に、試験例1と同様の添加剤(触媒、消泡剤、溶剤、可塑剤、充填剤)と、タルク(富士タルク社製のPK50)(充填剤)とを混合して硬化剤(B)とした。
各成分の配合比を表5に示す。
【0038】
【表5】

【0039】
主剤(A)と硬化剤(B)とを混合して得られたウレタン樹脂組成物を硬化させ、硬化物について物性を測定した結果を表6に示す。
【0040】
【表6】

【0041】
表6より、1,4ブタンジオール、3メチル1,5ペンタジオールのいずれを用いた場合でも、良好な物性が得られたことがわかる。
【0042】
<試験例6〜12>
次のようにしてウレタン樹脂組成物を調製した。
(1)主剤(A)の調製
1,4ブタンジオール(1,4BD)(短鎖ポリオール(d))、ポリエーテルポリオール(2官能体)(Diol−2000)(長鎖ポリオール(e))、ポリエーテルポリオール(3官能体)(MN−3050K)(長鎖ポリオール(e))からなるポリオール成分(a)と、ピュアMDI(コスモネートPH)と、液状MDI(MDI−LL)と、アジピン酸ジイソノニル(DINA)(可塑剤)とを混合し、イソシアネート基末端プレポリマー(b)を生成させた。
各成分の配合比を表7に示す。
【0043】
【表7】

【0044】
(2)硬化剤(B)の調製
1,4ブタンジオール(1,4BD)(短鎖ポリオール(f))からなる架橋剤(g)、ポリマーポリオール(3官能体)(KC900)(長鎖ポリオール(h))、ポリエーテルポリオール(2官能体)(ED−37B)(長鎖ポリオール(h))、に、試験例1と同様の添加剤(触媒、消泡剤、溶剤、可塑剤、充填剤)を混合して硬化剤(B)とした。
各成分の配合比を表8に示す。表8において、「ポリオール成分のOH基中のモル比」は、架橋剤(g)および長鎖ポリオール(h)のOH基の合計に対する各成分のOH基の比率を示す。以下、硬化剤(B)については同様の表記を採用する。
【0045】
【表8】

【0046】
試験例6(短鎖ポリオール(f)のOH基のモル比95%)では、硬化剤(B)が固体に近い性状となり、取り扱いが難しくなった。
主剤(A)と硬化剤(B)とを混合して得られたウレタン樹脂組成物を硬化させ、硬化物について物性を測定した。結果を表9に示す。
【0047】
【表9】

【0048】
表9より、硬化剤(B)において架橋剤(g)(短鎖ポリオール(f))の比率は、高いほど硬化物表面のベタつきや強度などの物性が良好になる傾向があり、特に前記比率を60%以上とすることによって、硬化物表面のベタつきが小さくなり、伸びおよび引き裂き強度も良好になったことがわかる。
また、架橋剤(g)(短鎖ポリオール(f))の比率が90%以下である試験例では、取り扱い性が良好であった。
よって、前記比率を60〜90%とすることによって、表面のベタつき、強度などの物性が良好になり、しかも取り扱い性の点で問題がないウレタン樹脂組成物が得られたことがわかる。
【0049】
<試験例13〜15>
次のようにしてウレタン樹脂組成物を調製した。
(1)主剤(A)の調製
1,4ブタンジオール(1,4BD)(短鎖ポリオール(d))、ポリエーテルポリオール(2官能体)(Diol−2000)(長鎖ポリオール(e))、ポリエーテルポリオール(3官能体)(MN−3050K)(長鎖ポリオール(e))からなるポリオール成分(a)と、ピュアMDI(コスモネートPH)と、液状MDI(MDI−LL)と、アジピン酸ジイソノニル(DINA)(可塑剤)とを混合し、イソシアネート基末端プレポリマー(b)を生成させた。
各成分の配合比を表10に示す。
【0050】
【表10】

【0051】
(2)硬化剤(B)の調製
短鎖ポリオール(f)からなる架橋剤(g)、ポリマーポリオール(3官能体)(KC900)(長鎖ポリオール(h))、ポリエーテルポリオール(2官能体)(ED−37B)(長鎖ポリオール(h))、に、試験例1と同様の添加剤(触媒、消泡剤、溶剤、可塑剤、充填剤)を混合して硬化剤(B)とした。
短鎖ポリオール(f)としては、1,4ブタンジオール(1,4BD)、3メチル1,5ペンタジオール(MPD)、1,9−ノナンジオール(1,9−ND)のうち1つを用いた。
各成分の配合比を表11に示す。
【0052】
【表11】

【0053】
主剤(A)と硬化剤(B)とを混合して得られたウレタン樹脂組成物を硬化させ、硬化物について物性を測定した。結果を表12に示す。
【0054】
【表12】

【0055】
表12より、硬化剤(B)にいずれの短鎖ポリオール(f)を用いた場合でも、各物性が良好になったことがわかる。
【0056】
<試験例16〜18>
次のようにしてウレタン樹脂組成物を調製した。
(1)主剤(A)の調製
1,4ブタンジオール(1,4BD)(短鎖ポリオール(d))、ポリエーテルポリオール(2官能体)(Diol−2000)(長鎖ポリオール(e))、ポリエーテルポリオール(3官能体)(MN−3050K)(長鎖ポリオール(e))からなるポリオール成分(a)と、ピュアMDI(コスモネートPH)と、液状MDI(MDI−LL)と、アジピン酸ジイソノニル(DINA)(可塑剤)とを混合し、イソシアネート基末端プレポリマー(b)を生成させた。
各成分の配合比を表13に示す。
【0057】
【表13】

【0058】
(2)硬化剤(B)の調製
1,4ブタンジオール(1,4BD)(短鎖ポリオール(f))からなる架橋剤(g)、長鎖ポリオール(h)、に、試験例1と同様の添加剤(触媒、消泡剤、溶剤、可塑剤、充填剤を混合して硬化剤(B)とした。
長鎖ポリオール(h)としては、ポリマーポリオール(3官能体)(KC900)、ポリエーテルポリオール(三井化学ポリウレタン社製のMN−5000:平均分子量5000の水酸基3官能体)、ひまし油変成ポリオール(伊藤製油社製のH1824:水酸基2官能体・3官能体混合)(平均分子量:1900)のうちいずれかと、ポリエーテルポリオール(2官能体)(ED−37B)との混合物を用いた。
各成分の配合比を表14に示す。
【0059】
【表14】

【0060】
主剤(A)と硬化剤(B)とを混合して得られたウレタン樹脂組成物を硬化させ、硬化物について物性を測定した。結果を表15に示す。
【0061】
【表15】

【0062】
表15より、硬化剤(B)の長鎖ポリオール(h)としてポリマーポリオールまたはひまし油を用いた場合でも、各物性が良好になったことがわかる。
【0063】
<試験例19〜21>
次のようにしてウレタン樹脂組成物を調製した。
(1)主剤(A)の調製
1,4ブタンジオール(1,4BD)(短鎖ポリオール(d))、ポリエーテルポリオール(2官能体)(Diol−2000)(長鎖ポリオール(e))、ポリエーテルポリオール(3官能体)(MN−3050K)(長鎖ポリオール(e))からなるポリオール成分(a)と、ピュアMDI(コスモネートPH)と、液状MDI(MDI−LL)と、アジピン酸ジイソノニル(DINA)(可塑剤)とを混合し、イソシアネート基末端プレポリマー(b)を生成させた。
各成分の配合比を表16に示す。
【0064】
【表16】

【0065】
(2)硬化剤(B)の調製
1,4ブタンジオール(1,4BD)(短鎖ポリオール(f))からなる架橋剤(g)、ポリマーポリオール(3官能体)(KC900)(長鎖ポリオール(h))、ポリエーテルポリオール(2官能体)(ED−37B)(長鎖ポリオール(h))、に、試験例1と同様の添加剤(触媒、消泡剤、溶剤、可塑剤、充填剤)を混合して硬化剤(B)とした。
各成分の配合比を表17に示す。
【0066】
【表17】

【0067】
主剤(A)と硬化剤(B)とを混合して得られたウレタン樹脂組成物を硬化させ、硬化物について物性を測定した。結果を表18に示す。
主剤(A)のNCO基と硬化剤(B)のOH基との配合比NCO基/OH基(モル比)(NCO/OHインデックス)が1.3を越えた場合には、主剤(A)と硬化剤(B)とを混合する際に、発泡が起こりやすくなることが確認された。
【0068】
【表18】

【0069】
表18より、NCO/OHインデックスは、1.2〜1.3が好ましいことがわかる。
【0070】
<試験例22>
次のようにしてウレタン樹脂組成物を調製した。
(1)主剤(A)の調製
1,4ブタンジオール(1,4BD)(短鎖ポリオール(d))、ポリエーテルポリオール(2官能体)(Diol−2000)(長鎖ポリオール(e))、ポリエーテルポリオール(3官能体)(MN−3050K)(長鎖ポリオール(e))からなるポリオール成分(a)と、ピュアMDI(コスモネートPH)と、液状MDI(MDI−LL)と、アジピン酸ジイソノニル(DINA)(可塑剤)とを混合し、イソシアネート基末端プレポリマー(b)を生成させた。
各成分の配合比を表19に示す。
【0071】
【表19】

【0072】
(2)硬化剤(B)の調製
1,4ブタンジオール(1,4BD)(短鎖ポリオール(f))からなる架橋剤(g)、ポリマーポリオール(3官能体)(KC900)(長鎖ポリオール(h))、ポリエーテルポリオール(2官能体)(ED−37B)(長鎖ポリオール(h))、ポリエーテルポリオール(2官能体)(Diol−2000)(長鎖ポリオール(h))、に、試験例1と同様の添加剤(触媒、消泡剤、溶剤、可塑剤、充填剤)を混合して硬化剤(B)とした。
各成分の配合比を表20に示す。
【0073】
【表20】

【0074】
<試験例23>
架橋剤として、1,4ブタンジオール(1,4BD)(短鎖ポリオール(f))に代えて、DETDA(ジエチルトルエンジアミン)を用いて主剤(A)を調製した。
その他の条件は試験例22に準じた。
【0075】
主剤(A)と硬化剤(B)とを混合して得られたウレタン樹脂組成物を硬化させた。23℃において混合液の粘度が30000mPa・sに到達するまでの時間(30000mPa・s到達時間)と、指触乾燥時間(硬化物上に作業者が載っても硬化物に変形が起こらなくなるまでの時間)を表21に示す。
試験例23では、粘度上昇速度が非常に高く、わずか十数秒で硬化したため、30000mPa・s到達時間の正確な測定ができなかったが、試験例22に比べ短時間で硬化したことが確認された。
【0076】
【表21】

【0077】
表21より、架橋剤としてDETDAを用いた場合に比べ、短鎖ポリオール(f)を架橋剤(g)として用いた試験例では、粘度上昇速度を抑え、指触乾燥時間を長くできたことがわかる。
【0078】
<試験例24〜29>
次のようにしてウレタン樹脂組成物を調製した。
(1)主剤(A)の調製
1,4ブタンジオール(1,4BD)(短鎖ポリオール(d))、ポリエーテルポリオール(2官能体)(Diol−2000)(長鎖ポリオール(e))、ポリエーテルポリオール(3官能体)(MN−3050K)(長鎖ポリオール(e))からなるポリオール成分(a)と、ピュアMDI(コスモネートPH)と、液状MDI(MDI−LL)と、必要に応じてアジピン酸ジイソノニル(DINA)(可塑剤)とを添加、混合し、イソシアネート基末端プレポリマー(b)を生成させた。
各成分の配合比を表22に示す。
【0079】
【表22】

【0080】
(2)硬化剤(B)の調製
1,4ブタンジオール(1,4BD)(短鎖ポリオール(f))からなる架橋剤(g)、ポリマーポリオール(3官能体)(KC900)(長鎖ポリオール(h))、ポリエーテルポリオール(2官能体)(ED−37B)(長鎖ポリオール(h))、に、試験例1と同様の添加剤(触媒、消泡剤、溶剤、可塑剤、充填剤)を混合して硬化剤(B)とした。
各成分の配合比を表23に示す。
【0081】
【表23】

【0082】
主剤(A)と硬化剤(B)とを混合して得られたウレタン樹脂組成物を硬化させ、硬化物について物性を測定した。結果を表24に示す。
試験例29では、主剤(A)と硬化剤(B)とを混合する際に発泡が起こりやすいことが確認された。
【0083】
【表24】

【0084】
表24より、主剤(A)のNCO%は、特に4質量%以上で、硬化物表面のベタつきが小さくなり、伸びおよび引き裂き強度も良好になったことがわかる。
また、NCO%が9質量%以下の場合は、発泡の問題は起こらなかった。
よって、主剤(A)のNCO%を4〜9質量%とすることによって、表面のベタつき、強度などの物性が良好になり、しかも発泡の問題が起こらないウレタン樹脂組成物が得られたことがわかる。
【0085】
<試験例30〜32>
次のようにしてウレタン樹脂組成物を調製した。
(1)主剤(A)の調製
短鎖ポリオール(d)、ポリエーテルポリオール(2官能体)(Diol−2000)(長鎖ポリオール(e))、ポリエーテルポリオール(3官能体)(MN−3050K)(長鎖ポリオール(e))からなるポリオール成分(a)と、ピュアMDI(コスモネートPH)と、液状MDI(MDI−LL)と、アジピン酸ジイソノニル(DINA)(可塑剤)とを混合し、イソシアネート基末端プレポリマー(b)を生成させた。
短鎖ポリオール(d)としては、1,4ブタンジオール(1,4BD)、トリプロピレングリコール(TPG)のうちいずれか一方または両方を用いた。
各成分の配合比を表25に示す。
【0086】
【表25】

【0087】
(2)硬化剤(B)の調製
1,4ブタンジオール(1,4BD)(短鎖ポリオール(f))からなる架橋剤(g)、ポリマーポリオール(3官能体)(KC900)(長鎖ポリオール(h))、ポリエーテルポリオール(2官能体)(ED−37B)(長鎖ポリオール(h))、に、試験例1と同様の添加剤(触媒、消泡剤、溶剤、可塑剤、充填剤)とを混合して硬化剤(B)とした。
各成分の配合比を表26に示す。
【0088】
【表26】

【0089】
主剤(A)と硬化剤(B)とを混合して得られたウレタン樹脂組成物を硬化させ、硬化物について物性を測定した結果を表27に示す。
【0090】
【表27】

【0091】
表27より、短鎖ポリオール(d)の種類によらず、良好な物性が得られたことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次に示す主剤(A)と硬化剤(B)を反応させて得られるウレタン樹脂組成物からなる手塗り施工用塗工剤。
(A)3水酸基官能体以上の多水酸基官能体を少なくとも含む分子量200以上の長鎖ポリオール(e)を含むポリオール成分(a)の末端にジフェニルメタンジイソシアネートが結合したイソシアネート基末端プレポリマー(b)と、未結合のジフェニルメタンジイソシアネート(c)とを含有する主剤。
(B)分子量200未満の短鎖ポリオール(f)からなる架橋剤(g)と、分子量200以上の長鎖ポリオール(h)とを含有する硬化剤。
【請求項2】
前記硬化剤(B)において、前記架橋剤(g)および前記長鎖ポリオール(h)のOH基の合計量に対する前記架橋剤(g)のOH基の配合比は、モル基準で60〜90%であることを特徴とする請求項1に記載の手塗り施工用塗工剤。
【請求項3】
前記主剤(A)は、前記ジフェニルメタンジイソシアネートと前記ポリオール成分(a)とを、NCO基の含有率が4〜9質量%となるように配合したものであることを特徴とする請求項1または2に記載の手塗り施工用塗工剤。
【請求項4】
前記主剤(A)において、前記ポリオール成分(a)は、分子量200未満の短鎖ポリオール(d)を含むことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の手塗り施工用塗工剤。
【請求項5】
前記主剤(A)において、前記長鎖ポリオール(e)は、2水酸基官能体と3水酸基官能体との混合物であることを特徴とする請求項4に記載の手塗り施工用塗工剤。
【請求項6】
前記硬化剤(B)において、前記長鎖ポリオール(h)として、ポリマーポリオールとひまし油ポリオールのうちいずれか一方と、ポリエーテルポリオールとの混合物を用いることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の手塗り施工用塗工剤。
【請求項7】
前記硬化剤(B)において、前記長鎖ポリオール(h)として、ポリエーテルポリオールを用いることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の手塗り施工用塗工剤。

【公開番号】特開2011−80018(P2011−80018A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235613(P2009−235613)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(000133342)株式会社ダイフレックス (24)
【Fターム(参考)】