説明

手持ち光美容装置

本発明は、EMRを皮膚に適用し、例えば、皮膚の断片的処置を達成するために利用可能な手持ち光美容装置を開示する。本発明は、非医療および/または非専門家の環境下で消費者による使用のために有効な、断片的光美容装置を開示する。従って、そのような装置の実施形態が本明細書に開示され、1つまたは複数の美容および/または皮膚科の処置を実行可能で、そのような処置に対して効力があり、耐久性があり、比較的安価で、比較的簡単な設計であり、既存の専門家用の装置よりも小さく(いくつかの実施形態では完全に自己充足式かつ手持ち式であり)、非専門家による使用に対し安全であり、および/または使用に苦痛がない(または穏やかな苦痛のみ)、以上の1つまたは複数の属性を有する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願との関係】
【0001】
本出願は、それぞれが、2005年4月1日出願で「組織中にEMR処置された小島の格子を生成し使用するための方法および製品」と題された、米国特許出願11/097,841号、11/098,000号、11/098,036号、および11/098,015号の部分継続出願であり、各出願は、2004年4月9日出願の米国仮出願60/561,052号、2004年9月29日出願の米国仮出願60/614,382号、2005年1月5日出願の米国仮出願60/641,616号、および2004年10月21日出願の米国仮出願60/620,734号に対して、優先権を主張するものであり、かつ、各出願はまた、2001年3月2日出願の米国仮出願60/272,745号に対して優先権を主張する2002年2月22日出願の米国特許出願10/080,652号(現在は放棄)の、部分継続出願である。
【0002】
また、本出願は、それぞれが2006年3月1日出願で「光美容装置」と題された、米国特許出願11/415,363号、11/415,362号、および11/415,359号からの優先権を主張するものであり、各出願は2006年3月10日出願の米国特許仮出願60/781,083号に対して優先権を主張するものである。
【0003】
本出願は、2006年6月27日出願で「手持ち光美容装置」と題された米国特許仮出願60/816,743号、2006年11月6日出願の「組織中にEMR処置された小島の格子を生成し使用するための方法および製品」と題された米国特許仮出願60/857,154号からの優先権を主張するものである。
【0004】
これらの出願のそれぞれに対して、本出願は優先権を主張するものであるが、これによって、これらの出願のそれぞれを本明細書に援用するものである。
【技術分野】
【0005】
本発明は一般に光美容装置に関するものであり、さらに具体的には、例えば消費者によって使用され、電磁放射(「EMR」)を皮膚に適用し美容、皮膚科、歯科、眼科、婦人科、耳鼻咽喉科、および内科の処置を実行可能な断片的(fractional)手持ち光美容装置である。
【背景技術】
【0006】
ほとんどの皮膚科用途では、EMR処置は、標的の組織の表面にEMRを送達する装置で実行される。内科での用途では、EMR処置は、一般に、内面および組織にEMRを送達する内視鏡またはカテーテルと組合せて動作する装置で実行される。一般的な事項として、EMR処置は、一般に、(a)EMRの1つまたは複数の特定の波長(または、特定の連続する範囲の波長)を組織に送達し、特定の化学反応を誘発する、(b)EMRエネルギを組織に送達し温度増加を引き起こす、または(c)皮膚の改造等のために、EMRエネルギを組織に送達し、細胞または細胞外の構造を損傷させるまたは破壊するように設計される。
【0007】
皮膚改造では、水による光学エネルギの吸収が2つのアプローチ、すなわち、典型的にCO(10.6μm)またはEr:YAG(2.94μm)レーザを用いて実行される切除性の皮膚表面付け替え、およびNd:YAGレーザ(1.34μm)、Er:ガラスレーザ(1.56μm)またはダイオードレーザ(1.44μm)からの光を用いて深層皮膚の加熱および表下皮の選択的な損傷のための皮膚表面冷却の組合せを使用する非切除性の皮膚改造、で広く使用される。しかし両方とも、体の治癒反応は、最終的な結果の新
たなコラーゲンの形成および皮膚コラーゲン/エラスチン基質の改良を伴う、限定された熱損傷の結果として開始される。これらの変化は、皺の平滑化、ならびに皮膚外観および肌合い(よく「皮膚若返り」と称される)の一般的な改良において自明である。
【0008】
2つの技術の主な違いは、損傷が開始される体の領域にある。表面付け替えアプローチでは、表皮の全厚さおよび上部真皮部分が切除および/または凝固される。非切除性のアプローチでは、表皮が無傷のまま残されて、凝固領域が組織中に深く移動する。実際には、これは種々の波長、すなわち、切除性の技術では浸透性が非常に浅い波長(CO波長で約900cm−1の吸収係数、およびEr:YAG波長で約13000cm−1の吸収係数)を、非切除性の技術では浸透性が深い波長(5から25cm−1の吸収係数)を使用することによって達成される。さらに、非切除性の技術では接触またはスプレー冷却が皮膚表面に適用され、表皮の熱保護を行う。表面付け替え技術は、著しく高い臨床効力を立証している。欠点の1つは継続した介護が必要な長い術後期間にあり、近年におけるこの処置の普及を非常に限定されたものとした。
【0009】
非切除性の技術は、副作用の危険性がかなり減少し、より術後介護を必要としない。しかし、非切除性の処理の臨床効力は、しばしば、不満足なものである。2つの処理の臨床結果におけるこのような差の理由は完全には理解されていない。しかし、可能性の1つは、表皮への損傷(またはその欠如)が安全性と効力の結果を決定する要因である、とのことだろう。切除性の皮膚表面付け替えの過程における、保護的な外部表皮の障壁の破壊(特に角質層)は、傷の汚染および潜在的な合併症の可能性を増加させる。同時に、表皮細胞による成長因子(特にTGF−α)の放出は、傷の治癒過程、従って最終的には皮膚改造において重要な役割を演じることが示されている。この過程は、表皮が無傷の場合には起こらない。
【0010】
さまざまな皮膚状態の処置のための美容分野では、処置される組織の面域および/または体積の一部に照射または損傷を引き起こす方法および装置が開発されてきた。これらの方法および装置は断片的技術として知られるようになった。小さな一部の体積の中、または処置される大きな体積中の小島の中で損傷が起こるため、断片的技術は美容目的のための安全な皮膚の処置方法と考えられている。小島を囲む組織は損傷から免れる。もたらされる小島は隣接する健康な組織によって囲まれているため、治癒過程は完全で迅速である。皮膚若返り等の美容処理中に皮膚を処置するために使用されてきた装置の例は、Palomar(登録商標)のLuxIRを含み、この装置は、処置の深さの範囲が真皮中1.5mmから3mmの小さく一定に離間した光束アレーとして、皮膚の表面に赤外光を送達する。この断片的加熱は、それぞれの小島が影響を受けていない組織によって囲まれている高熱小島の格子を生成する。断片的技術を採用する他の装置には、Palomar(登録商標)1540 Fractional Handpiece、ReliantFraxel(登録商標)SR Laser、ならびにActiveFX Alma Lasers、Iridex、およびReliant Technologiesによる同様の装置がある。これらの装置は医者等の専門家に販売されて使用される。
【0011】
しかし、非医療および/または非専門家の環境下で消費者によって使用可能な、効果的な断片的装置はない。専門家による使用のために設計された断片的システムは大きく、高価で、複雑で、一般に高価な冷却システムを利用し、一般に、非専門家による使用に対して安全でない。Reliant Fraxelシステムのあるもの等、麻酔および/または染料の適用が必要なシステムもある。
【0012】
一方、現在消費者が利用可能な光ベースの処置装置のほとんどは、効力のある光美容処置を行うには不適切である。そのような装置は、一般に、簡単過ぎて、非常に出力が低い。そのような装置は効力がない、または効力が非常に限定されており満足のゆくものでは
ない。従って、家庭等の非専門家の環境下で消費者によって利用可能な断片的光美容装置に対する要望がある。そのような装置は、好ましくは、1つまたは複数の光美容処置を実行しうるもので、効力があり、耐久性があり、比較的安価で、現在の断片的装置に対して簡単な設計で、既存の専門家用の装置よりも小さく、非専門家による使用に対しても安全で、かつ/または、EMR使用に対して痛みのないものであろう。
【発明の概要】
【0013】
本発明者は、非医療および/または非専門家の環境下で消費者による使用のために有効な、断片的光美容装置の製作に関連した、さまざまな技術的な難点を解決した。従って、そのような装置の実施形態が本明細書に開示され、1つまたは複数の美容および/または皮膚科の処置を実行可能で、そのような処置に対して効力があり、耐久性があり、比較的安価で、比較的簡単な設計であり、既存の専門家用の装置よりも小さく(いくつかの実施形態では完全に自己充足式かつ手持ち式であり)、非専門家による使用に対し安全であり、および/または使用に苦痛がない(または穏やかな苦痛のみ)、以上の1つまたは複数の属性を有する。これらの属性のそれぞれが望ましいが、本発明の実施形態では、そのような属性の全てを有する必要はなく、代わりに、1つまたはこれらの属性の一部を有してよい。
【0014】
さらに、比較的低強度の処置の頻繁な定期的な適用、例えば、小島間の間隔がより大きな、組織の単位面積および/または体積当たりより少ない小島の、および/または、1処置小島当たりの適用が比較的低出力密度の処置は、既存の専門家の処置よりも長期に渡り向上した効力をもたらすことを、本発明者は発見した。このように、本発明のある態様では、断片的装置を使用するための方法が開示される。
【0015】
1つの態様では、本発明は、利用者による組織の断片的処置を実行するための手持ち美容装置を開示し、この装置は、ハウジングと、ハウジング中に配置されたEMR発生源と、光発生源に光学的に結合したハウジング内のEMR送達経路とを含む。EMR送達経路は、EMR発生源によって発生したEMRを組織の処置面域内に位置する複数の離散する位置に適用するように構成され、複数の離散する位置の総面積が処置面積よりも小さい。装置はハウジング内またはハウジング周りに自己充足式であり、実質的に装置全体が利用者によって運転中に手持ち可能であるように構成される。EMR送達経路は複数の微少レンズを含み得る。離散する位置は、所定または無作為パタンに従って分布し得る。複数の位置の総面積は処置面積の約1パーセントと90パーセントとの間、処置面積の約30パーセントと90パーセントとの間、または処置面積の約50パーセントと80パーセントとの間である。ある実施形態では、ローション分配器がハウジングに結合してよい。
【0016】
ある実施形態では、電源がハウジングに結合し、かつEMR発生源と電気的に連通して、この電源がEMR発生源に電力を供給するように構成してよい。本装置は、EMR発生源と電気的に連通し、EMR発生源に電力を供給するように構成された電気コードを含んでよい。好適な実施形態では、電源は電池を含む。電池は再充電可能でよい。
【0017】
ある実施形態では、EMR送達経路は光学走査装置を含む。走査装置が、EMR発生源からのEMRを受けるようになされた導入口と、EMRが通過し前記の位置に送達可能な導出口とを有する少なくとも1つの光学ファイバを含んでよい。走査装置は、ファイバの導出口に結合し導出口を移動してEMRを前記の位置に向けるための走査機構をさらに含んでよい。走査機構は、ファイバの導出口に光学的に結合してよく、EMRを前記の位置に向けるための1つまたは複数の回転可能な鏡をさらに含む。ある実施形態では、走査機構は少なくとも1つの圧電走査要素を有する。例えば、この圧電走査要素は調節可能な多層圧電素子でよい。走査装置は、また、少なくとも1つのステップモータを含む。
【0018】
他の実施形態では、本装置は、導出口を通過したEMRを整形するための導出口に結合した光学系をさらに含む。
【0019】
他の態様では、手持ち光美容装置は、ファイバの導出口の動作に実質的に同期してEMR発生源を制御し、EMRを前記の位置に送達するための制御装置をさらに含んでよい。制御装置はEMR発生源を選択的に作動させてよい。ある実施形態では、制御装置は、発生源から放射されたEMRがファイバの中に入ることを選択的に遮断する。
【0020】
さらに他の実施形態では、手持ち光美容装置は、発生源からの光をファイバの中に向けるために、EMR発生源と光学ファイバとの間に配置された光学カプラをさらに含んでよい。カプラは、発生源からのEMRをファイバの中に焦点形成させる1つまたは複数の焦点形成光学要素を有し得る。焦点形成要素は、約0.5から約3までの範囲内の開口数でEMRをファイバの中に焦点形成させる。カプラは、選択されたEMR発生源と選択された光学ファイバとを選択的に接続するための接続器を含んでよい。発生源によって発生したEMRエネルギの少なくとも約60%、またはEMRエネルギの少なくとも約70%、または、好ましくは、EMRエネルギの少なくとも約80%が光学ファイバの中に結合するように、EMR発生源と光学ファイバの導入口とが位置合わせされる。
【0021】
他の態様では、本発明は、装置の1つまたは複数の運転パラメータを感知するための1つまたは複数のセンサを有する手持ち光美容装置のための安全システムを開示する。センサの少なくとも1つは、装置のEMRを放射する端部と皮膚との間の接触を感知するための接触センサを含んでよい。例えば、接触センサが最小接触閾値より低い接触を感知すると、安全機構が皮膚への光の送達を禁止可能である。最小接触閾値は、EMRを放射する端部の面積の約60%、または約70%、または約80%より大きな接触面積である。接触センサは、導電率センサ、圧電センサ、および機械的センサを含む群から選択してよい。ある実施形態では、安全システムは、装置のEMRを放射する端部が接触する皮膚位置に所定の閾値を超えるEMRエネルギを送達することを禁止する。処置セッション中に、安全システムは、皮膚に所定の閾値を超えるEMRを送達することを禁止可能であり、処置セッションは装置の作動に続く一時的な期間を含む。
【0022】
ある実施形態では、安全システムは皮膚位置に適用されるEMRエネルギ量を追跡する制御装置を含み、エネルギが閾値に達すると、制御装置は皮膚にEMRを送達することを禁止する。制御装置は、発生源を不作動として皮膚にEMRを送達することを禁止するように構成してよい。
【0023】
手持ち光美容装置のEMR発生源は、約300nmから約11,000nmまでの範囲内の、好ましくは、約300nmから約1,800nmまでの範囲内の1つまたは複数の波長を伴うEMRを発生させてよい。EMR発生源は、単一のダイオードレーザ、複数のダイオードレーザ、または少なくとも1つのダイオードレーザバー等のコヒーレントな光発生源でよい。他の実施形態では、EMR発生源は非コヒーレントな光発生源である。例えば、コヒーレントな光発生源は、発光ダイオード(LED)、アークランプ、フラッシュランプ、蛍光灯、ハロゲンランプ、およびハライドランプからなる群から選択してよい。
【0024】
他の態様では、本発明はハウジングを含む手持ち光美容装置を開示し、このハウジングは、少なくとも2つの分離可能なモジュールを備え、分離モジュールの1つがEMR発生源を収容し、もう1つがEMR送達機構を収容する。モジュールは、取り外し可能かつ再配置可能に互いに係合するための連結接続器を含む。ある実施形態では、本装置は、EMR発生源の型を感知し走査装置にこの型を指示可能なセンサシステムを含む。本装置は、また、EMR発生源に熱的に結合した冷却機構を含んでよい。冷却機構は、EMR発生源
からの熱を除去するための熱電気冷却器、および/または、EMR発生源からの熱を除去するための熱質量を含んでよい。
【0025】
ある実施形態では、手持ち光美容装置は、ハウジング中に配置された再充電可能な電源を含む。ハウジングに結合するようになされると共に電源を再充電するための回路構成を含むドッキングステーションが開示される。
【0026】
他の態様では、本発明は、近位の端部から遠位の端部まで延在する手持ち部分と、手持ち部分の中に配置されたEMR発生源と、複数のEMR送達モジュールとを含み、モジュールのそれぞれが、手持ち部分の遠位の端部に取り外し可能かつ再配置可能に結合するようになされており、発生源からの光を複数の離散分布する皮膚位置に送達する、光美容システムを開示する。光送達モジュールのそれぞれが異なるパタンの離散する位置を形成する。手持ち部分およびモジュールは、取り外し可能かつ再配置可能に互いに係合するための連結接続器を含んでよく、手持ち部分とそれぞれのモジュールとの組み合わせが手持ち装置を形成する。モジュールによって形成されるパタンは面積、間隔、形状、および/または焦点深さが変化する。近位の端部はドッキングステーションと結合可能である。ドッキングステーションは電源を再充電するための回路構成を含む。手持ち部分は電源をさらに含んでよい。
【0027】
さらに他の態様では、本発明は、近位の端部から遠位の端部まで延在するハウジングと、ハウジングの中に配置され、ハウジングの遠位の端部を通して光を複数の分離離散する皮膚位置に向けるように構成された複数の光発生源と、ハウジングに装着され、遠位の部分の皮膚に対する移動速度を感知する動作センサと、動作センサおよび光発生源に連通する制御装置とを含む、光美容装置を開示する。制御装置は、発生源からの光を複数の分離離散する皮膚位置に向けるように、速度に基づいて発生源を制御することができる。ある実施形態では、制御装置は発生源を選択的に作動制御可能である。他の実施形態では、発生源がパルス性であり、制御装置がパルスの繰り返し速度を制御する。
【0028】
本発明は、また、向上した皮膚外観を維持する方法を開示し、この方法には、処置日と処置日との間が0から7日までの間隔で、1日当たり1と3回の間で、装置からのEMRを定期的に適用することを含む。
【0029】
他の態様では、手持ち光美容装置を使用して組織の断片的処置を実行するための方法が開示され、この方法には、第1の処置中に組織の標的面域内の複数の分離した処置スポットをEMRで照射するステップであって、複数の処理スポットの総面積が標的面域の面積よりも小さい、ステップと、第2の処置中に組織の標的面域内の第2の複数の分離した処理スポットをEMRで照射するステップであって、第2の複数の処置スポットの総面積が標的面域の面積よりも小さい、ステップとを含む。第2の照射するステップは第1の照射するステップの後に起こり、少なくとも第2の照射するステップは、自己充足式の手持ち光美容装置を使用して実行される。照射するステップは1日当たり1と5回の間で繰り返され、好ましくは、1日当たり1と3回の間で繰り返し可能である。処置日と処置日との間に0と7日の間の処置しない間隔が存在し得る。照射するステップは、1処置スポット当たり約2mJから30mJまでの範囲内の、好ましくは、1処置スポット当たり約3mJから20mJまでの範囲内の、または1処置スポット当たり約4mJから10mJまでの範囲内のEMR放射を送達するステップを含む。複数の処置スポットは、1処置当たり2から10回の間でEMRで処置してよい。本方法には、照射処置中に約100/cmから約700/cmまでの範囲の処置スポット密度を照射するステップを含んでよい。照射ステップと照射ステップとの間に照射強度を調節してよい。ある実施形態では、照射強度は専門家によって調節される。他の実施形態では、強度は利用者によって調節される。専門家のEMR処置が開示された方法と併せて使用可能である。本方法を使用して、専
門家のEMR処置を通じて得た効果を維持し向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
以下の図面は本発明の実施形態を例示するものであり、請求項によって包含される本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【図1】本発明の1つの実施形態による模範的な手持ち光美容装置を模式的に表す図面である。
【図2A】皮膚表面または皮膚表面から選択された深さに生成可能な離散する位置すなわち小島の2次元長方形格子の模式的な図である。
【図2B】皮膚表面または皮膚表面から選択された深さに生成可能な離散する位置すなわち小島の2次元螺旋格子の模式的な図である。
【図3A】模範的な手持ち光美容装置を模式的に表す図面である。
【図3B】図3Aの装置をさらに詳しく表す図である。
【図3C】図3Bの装置の展開図である。
【図3D】ファイバ移動機構の拡大図であり、また図3Aの装置のファイバ用のガイドも示す。
【図3E】図3Aの装置の中に使用される螺旋走査機構および組み込み接触センサの前面の拡大図である。
【図3F】図3Aの装置の光学ファイバの遠位の端部に形成または取り付け可能な微少光学系の模式図であり、出力光束の整形および/または焦点形成を行う。
【図4A】図3Aの装置の中に使用されるEMR発生源の模式的な図であり、EMRの放出器がマウントに取り付けられる。
【図4B】光学ファイバに結合した図4AのEMR発生源の模式的な図である。
【図4C】冷却システムに結合したマウントに取り付けられた図4AのEMR発生源の斜視図である。
【図5A】EMR発生源の温度を制御するための熱管理システムの別の実施形態を模式的に表す図である。
【図5B】EMR発生源の温度を制御するための熱管理システムの他の実施形態を模式的に表す図である。
【図6】図3Aの装置の電子系を模式的に表す図である。
【図7A】V溝を使用して、装置からのEMRを、EMR発生源に結合した図3Aの装置の光学ファイバに光学結合させる1つの方法を示す横断面図である。
【図7B】EMR発生源を他の実施形態で使用可能な光学ファイバに光学的に結合させる、他の機構の側面図である。
【図7C】EMR発生源を他の実施形態で使用可能な光学ファイバに光学的に結合させる、他の機構の斜視図である。
【図7D】EMR発生源を他の実施形態で使用可能な光学ファイバに光学的に結合させる、ファイバ束を使用する他の機構の側面図である。
【図7E】図7Dの実施形態の底面図である。
【図7F】ファイバ束を採用する装置の他の実施形態の遠位の端部の拡大側面図である。
【図8】他の実施形態で使用するためのX−Y直線移動システムの側面斜視図である。
【図9】2つの回転可能な鏡を含むEMR送達機構を備える手持ち光美容装置の別の施形態を模式的に表す図である。
【図10】複数の微少レンズを備える手持ち光美容装置の別の施形態を模式的に表す図である。
【図11A】モジュール式の手持ち装置を採用する別の実施形態を模式的に表す図である。
【図11B】図11Aのモジュール式の手持ち装置のモジュールを模式的に表す図である。
【図12A】モジュール式の手持ち装置の別の実施形態の展開図である。
【図12B】組み立てられた図12Aのモジュール式の手持ち装置の側面斜視図である。
【図12C】図12Aのモジュール式の手持ち装置のモジュールの拡大断面図である。
【図13A】モジュール式の手持ち装置の他の実施形態の模式図である。
【図13B】図13Aの2つの分離されたモジュール式の手持ち装置の他の実施形態の模式図である。
【図14】複数のEMR発生源を含む手持ち皮膚科装置の他の実施形態の側面斜視図である。
【図14B】図14AのEMRの装置の前面斜視図である。
【図14C】図14Aおよび14Bの装置の中で使用されるダイオードレーザバーの斜視図である。
【図15A】図14Aの装置での使用に適する機械的センサを表す図である。
【図15B】別の実施形態での使用に適する別の光学センサを表す図である。
【図16A】複数の連続した線状区域を形成するようにEMRが適用される、模範的なパタンを表す図である。
【図16B】離散する小島の組みによって形成される複数の線状区域を形成するようにEMRが適用される、別の模範的なパタンを表す図である。
【図17】ローション分配器を含む手持ち光美容装置の他の施形態を模式的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
電磁放射(EMR)を使用して組織を処置する場合、EMR処置された組織の連続する大きな領域ではなく、EMR処置された離散する位置すなわち小島の格子を組織中に生成するという著しい利点がある。格子は、1次元、2次元または3次元の周期的または非周期的な小島のパタンであり、この小島は、組織のEMR処置の局部的な最大部に対応する。小島は処置されなかった組織(または異なって処置された、またはあまり処置されなかった組織)によって互いに分離されている。EMR処置は、EMRの特定の波長またはスペクトルに暴露された、EMR処置された小島の格子をもたらし、本明細書では、これを「光学小島」の格子と称する。EMRエネルギの吸収がEMR処置された小島中に著しい温度上昇をもたらす場合、本明細書ではこの格子を「熱小島」の格子と称する。細胞構造または細胞間構造を著しく崩壊させるに十分な量のエネルギが吸収される場合、本明細書ではこの格子を「損傷小島」の格子と称する。ある光化学反応を開始させるに十分な量のエネルギ(通常特定の波長で)が送達される場合、本明細書ではこの格子を「光化学小島」の格子と称する。連続する、および/または均一なEMR処置領域ではなく、EMR処置された小島を生成することによって、熱小島または損傷小島を生成することなくより多くのEMRエネルギが小島に送達可能であり、かつ/または、組織全体損傷の危険性を低下可能である。
【0032】
EMR処置された小島は、処置された組織の面域または体積内にも形成可能であり、例えば、より高い強度を有するEMRを使用して面域および/または体積の部分を処置することによって小島が形成される一方、同じまたは異なる波長を有する比較的に低強度のEMRで組織の全体の面域および/または体積が処置される。当業者は、組織内にそのようなEMR処置の局部的な最大部をもたらすパラメータの多くの組み合わせが可能であることを認識するだろう。
【0033】
電磁放射(EMR)を使用して組織を処置する場合、光力学療法、光生体調節、光生体刺激、光生体サスペンジョン、熱刺激、熱凝固、熱切除、または他の用途の目的のいずれ
かにかかわらず、EMR処置された組織の連続する大きな領域ではなく、EMR処置された小島の格子を組織中に生成するという著しい利点がある。EMR処置される組織は、そのような処置が有用で適当な、いかなる硬質または軟質の組織でよく、皮膚組織、粘膜組織(例えば、口の粘膜、胃の粘膜)、眼の組織(例えば、網膜組織)、神経組織、膣組織、腺組織(例えば、前立腺組織)、内臓器官、骨、歯、筋組織、血管、腱、および靱帯が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
格子は、1次元、2次元、または3次元の周期的または非周期的な小島のパタンであり、この小島は、組織のEMR処置の局部的な最大部に対応する。小島は処置されなかった組織(または異なって処置された、またはあまり処置されなかった組織)によって互いに分離されている。EMR処置は、EMRの特定の波長またはスペクトルに暴露された、EMR処置された小島の格子をもたらし、本明細書では、これを「光学小島」の格子と称する。EMRエネルギの吸収がEMR処置された小島中に著しい温度上昇をもたらす場合、本明細書ではこの格子を「熱小島」の格子と称する。細胞構造または細胞間構造を著しく崩壊させるに十分な量のエネルギが吸収される場合、本明細書ではこの格子を「損傷小島」の格子と称する。ある光化学反応を開始させるに十分な量のエネルギ(通常特定の波長で)が送達される場合、本明細書ではこの格子を「光化学小島」の格子と称する。
【0035】
連続するEMR処置領域ではなく、EMR処置された小島を生成することによって、小島を囲む処置されなかった領域(または異なって処置された、またはあまり処置されなかった組織)は熱エネルギの放出部として作用してEMR処置された小島内の温度上昇を減少させ、かつ/または、熱小島または損傷小島を生成することなくより多くのEMRエネルギが小島に送達可能であり、かつ/または、組織全体損傷の危険性を低下可能である。さらに、損傷小島に対しては、傷の縁部(すなわち、損傷した面域と無傷の面域との間の境界面)で体の再生および修復反応が起こり、傷の縁部が体積に対する比はより大きく、従って、損傷した組織の治癒は、よい小さな損傷小島に対してより効果的であることを留意すべきである。
【0036】
すなわちEMR処置された部分対、処置されなかった部分(または異なって処置された、またはあまり処置されなかった部分)の組織体積の割合は、光学小島が熱小島、損傷小島、または光化学小島のいずれになるか決定し得る。この割合は「充填係数」と称され、一定の体積の小島の中心と中心の距離を増加させる、および/または、一定の中心と中心の距離の小島の体積を減少させることによって減少させ得る。所与の処置では、処置される面域内で離散する処置スポットすなわち小島の総面積は、処置面積自体よりも小さい。同様に、処置される体積内で離散する処置小島の総体積は、処置される体積自体よりも小さい。
【0037】
処置されなかった組織体積は、熱放出部として作用するため、これらの体積は、自体が熱小島または損傷小島となることなく、処置された体積からエネルギを吸収可能である。このように、比較的に低い充填係数は、全体組織の損傷の発生を防止しつつ、ある体積に高フルエンスのエネルギの送達を可能とする。さらに、処置されなかった組織体積は熱放出部として作用するため、充填係数が減少すると、光学小島が熱小島または損傷小島を生成するような臨界温度に到達する可能性も減少する(EMR出力密度および総暴露量が小島面積に対して変わらなくても)。
【0038】
下に説明する実施形態は、組織中にEMR処置された小島の格子を生成させるための改良された装置およびシステム、ならびに、そのような装置およびシステムの改良された美容用途を提供する。
【0039】
図1は本発明の1つの実施形態による模範的な光美容装置10を模式的に表し、光学お
よび電気部品等の装置のさまざまな部品が配置された手持ちハウジング12を含んでいる。ハウジング12は近位の端部12aから遠位の端部12bまで延在し、これを通して電磁放射(EMR)が皮膚に適用可能である。模範的な装置10は、所望範囲の1つまたは複数の波長を伴うEMRを発生させるEMR発生源14を含む。ある実施では、EMR発生源14はダイオードレーザでよいが、さらに下で一覧されるような、さまざまな他のEMR発生源も採用可能である。EMR発生源は、熱放出部16に熱的に結合し、この放出部は、次に、熱放出部を介して熱を発生源から除去する冷却器18に結合し、発生源の運転温度を許容範囲内に維持可能である。さらに詳しく説明するように、熱電気冷却器または熱質量等のさまざまな冷却器が採用可能である。
【0040】
ハウジングの中に配置され、EMR発生源14に光学的に連通するEMR送達機構20は、発生源によって発生したEMRを受け、EMR伝達窓22(例えばサファイア窓)を通して、複数の離散分布する皮膚位置24までこのEMRを送達する。この実施では、EMR送達機構は、光学エネルギを離散する皮膚位置24に送達するように、発生源14によって発生したEMR光束を皮膚上で走査する光学走査装置であり、さらに下で詳しく説明する。他の実施では、走査装置を利用するのではなく、他の機構、例えば、複数の微少レンズを採用し、EMRを複数の離散分布する皮膚位置に向けることが可能である。
【0041】
装置10は、発生源の作動およ不作動を制御する制御装置26をさらに含み、EMR送達システム20を制御する等の(例えば、送達システムを作動させ、皮膚上のEMR走査速度を制御する)他の機能を提供可能であり、さらに下で詳しく説明する。
【0042】
使用においては、装置10の遠位の部分12bは皮膚部分の表面に接触、または近接して設置可能であり、この装置は、小島24等の離散する位置にEMRを適用するように作動可能である。ある実施では、制御装置26は、走査装置と協調して複数の分離離散する位置24にEMRを送達するように、EMR発生源14を選択的に作動させる(例えば、発生源を周期的に作動させ、発生源に時間的に分離された複数のパルスを放射させる)ことが可能である。ある実施では、一旦作動すると、EMR発生源は連続するレーザパルスを供給可能である。そのような実施では、制御装置は、パルスの繰り返し速度に基づき(連続パルス間の時間間隔に基づき)皮膚上のEMRの走査速度を調節し、EMRパルスを離散する皮膚位置に送達可能である。他の実施では、走査装置と協調して離散する位置にEMRを送達するように、連続波長(CW)または準連続(QCW)発生源(例えば、発生源によって放射されたEMR光束を周期的に遮断可能)によって放射されたEMRの強度をシャッタで変調可能である。
【0043】
EMRが適用される複数の離散する位置は、任意の所望パタンに対応可能である。一例として、図2Aに示すように、離散する位置24は、2次元長方形格子(例えば、この場合10×4の皮膚位置の格子)、または他の場合では正方形格子として、皮膚表面から選択された深さに存在し得る(例えば、組織の表面からの深さは、0〜4mm、0〜50μm、50〜500μm、または500μm〜4mmで、同様にこれらの範囲内の部分的な範囲で変わり得る)。別法として、図2Bに示すように、離散する位置は螺旋パタンに従って分布可能である。他の場合では、複数の離散する位置は、3次元の皮膚部分内に、例えば、それぞれが異なる皮膚の深さに位置する複数の皮膚層を通して分布可能である。多くの実施形態では、EMRが送達された皮膚位置は、発生源からのEMRに暴露されなかった、または異なって照射された皮膚部分によって、互いに分離されている。
【0044】
図1Aを再び参照すると、装置10は、また、安全システム28を含むことが可能であり、1つまたは複数の装置の運転パラメータが許容範囲に留まると共に装置が安全な態様で利用されることを確保する。一例として、安全システム28は、出力窓22と皮膚との間の接触程度を感知する接触センサ(図示せず)を含んでよい。ある実施では、感知され
た接触が所定の閾値より低い場合、安全システムはEMR発生源の作動を禁止し、例えば、制御装置26に信号を送って次に制御装置が光発生源の作動を禁止する、またはEMRを放射している場合には発生源を不作動とするだろう。一例として、接触が検知されない、または皮膚と接触している窓22の面域部分が所定の閾値よりも低い、例えば約20%、30%、50%、70%、または80%よりも低い場合には、発生源は作動しない。ある用途では、所定の接触の閾値は約70%が好ましい場合がある。ある場合では、接触センサは出力窓22と皮膚との間の物理的な直接接触を検知可能であるだけでなく、装置の安全な運転を可能にするよう、皮膚に触れていなくても、出力窓が皮膚に十分に近いかどうかを感知可能である。例えば、窓の所定の部分より多く(例えば80%より多く)が、所定の閾値(例えば1〜10ミクロン)未満しか皮膚から離れていない場合には、発生源は作動可能である。さもなくば、発生源の作動は禁止される。さまざまな接触センサが採用可能である。一例として、センサは機械的、光学的、磁気的、電子的、導電性、および/または圧電的でよい。
【0045】
ある実施では、装置は速度センサを含んでよい。例えば、センサは、患者の皮膚の標的面域に渡る装置の移動速度を決定可能である。装置はセンサと連通し、処置の小島が患者の皮膚の標的面域上に形成されるように、患者の皮膚の標的面域に渡る装置の移動速度に基づき発生源を制御するための回路構成を含み得る。例えば、この回路構成は装置の速度を制御装置26に通信可能であり、制御装置は、この速度に基づき、走査装置と協調して複数の分離離散する位置24にEMRを送達するように、EMR発生源14を選択的に作動させることができる。ある態様では、センサは容量性の撮像アレーまたは光学エンコーダでよい。ある実施形態では、運動学的な動作センサが単独でまたは、光学的な動作センサを補助するために使用可能である。運動学的な動作センサは、例えば、出力窓22が皮膚の表面上を移動すると回転し、走査速度を示唆する信号を制御装置26に供給するホイールでよい。ある実施形態では、発生源および/または走査装置は、動作センサによって測定されるような皮膚を渡る移動速度、または温度センサによって皮膚で測定された温度、または温度センサによって測定された光発生源の温度に基づき制御可能であってよい。
【0046】
多くの型の速度センサが、皮膚の表面に対する装置の速度を測定するために使用可能である。例えば、速度センサは光学マウス、レーザマウス、ホイール/光学エンコーダ、または光学マウスに使用されるものと同様なフローアルゴリズムと組み合わせた容量性の撮像アレーでよい。容量性の撮像アレーは、装置の速度の測定と処置面域の像の生成の両方に使用可能である。容量性の撮像アレーは、一般に、保安目的のための親指の指紋認証、ならびにラップトップコンピュータ等のさまざまな他の電子製品に使用される。しかし、容量性の撮像アレーは、また、皮膚の表面に渡る装置の速度を測定するために使用可能である。比較的高いフレーム速度(例えば、毎秒100〜2000フレーム)で皮膚の表面の容量性の像を取得することによって、フローアルゴリズムを使用して像内のある特徴の動作を追跡し速度を計算可能である。
【0047】
本明細書に記載した実施形態を理解し実施するに有用な、そのようなセンサと用途は、2001年8月14日発行の皮膚科処置のための方法および装置と題された米国特許第6,273,884号により充実して開示されており、これを本明細書に援用する。動作センサおよび温度センサに関するさらなる開示は、「光美容装置のための冷却システム」と題された米国特許第7,204,832号、「冷却剤および局所物質と共に使用するための光処置装置」と題された米国特許第7,135,033号、「電磁放射皮膚科のためのシステムおよびそれと共に使用するためのヘッド」と題された米国特許第6,508,813号、および、2005年4月1日出願の「組織中にEMR処置された小島の格子を生成させそれを使用するるための方法および製品」と題された同時係属中の米国特許出願第11/097,841、11/098036、11/098,015、11/098,000号の中に非常に詳細に説明されており、これらを本明細書に援用する。
【0048】
他の多くのセンサおよびフィードバック機構が可能である。例えば、装置は1つまたは複数の特定の利用者のために処置プロファイルをプログラム可能である。個々の利用者を識別するために、コードまたは生体識別子(例えば指紋)が使用可能である。
【0049】
種々の多くの診断用センサーも使用可能である。例えば、皮膚の弾性、着色、表面粗度、または組織の他の特性を測定するセンサが使用可能である。これらのセンサは、処置の制御または状態を、装置内で、または利用者に示唆するフィードバックを供給する。1つの模範的なセンサは、処置される組織の面域が処置に適当であるかどうか分析して決定するための映像を供給するような、開口部に近接して設置されたCCDカメラであろう。例えば、装置が着色または血管障害を処置するように設計されており、皮膚の面域がそのような障害の十分な兆候を欠くことを、像から装置が決定する場合には、この装置は、適する面域に接するまでは動作しないようにプログラム可能であろう。同様に、例えば振動および/または音のフィードバック信号を利用者に発し、装置に近接する組織が処置に適しないことを示すことが可能であろう。
【0050】
装置は1つまたは複数のタイミング機構を含み処置を補助することも可能であろう。例えば、装置が処置の後に規定の時間内に使用されることを防止するタイマを装置に含み得るだろう。装置は、その後の処置が必要である/適当であることを利用者に注意喚起するようなフィードバック機構を含み得るだろう。例えば、装置は、一日のある時間(例えば午前6:00)に開始し、一定の時間(1時間等)連続した音を発するように設定またはプログラム可能であろう。このように、利用者は、利用者がいつも処置を実行する典型的な時間に合わせて、処置の注意喚起をプログラム可能であろう。
【0051】
追加のセンサおよびフィードバック機構を採用して装置の安全性を向上可能である。さらに下で詳細に説明するように、安全システム28は、装置の1つまたは複数のパラメータをモニタするための他のセンサを含んでよい。例えば、温度センサ28aは、装置内の周囲温度、および/または、EMR発生源の温度をモニタ可能である。センサによって検知された温度が所定の値を超える場合、安全システムが制御装置に信号を送り、制御装置にEMR発生源を不作動とさせることが可能である。一例として、温度センサは装置10の遠位の部分12bに装着または、その中に埋め込み、表面温度が選択された範囲外の場合には装置10が使用されないことを確保することが可能である。センサは、装置10の外面中または装置内に埋め込まれた熱電対であって、例えば、装置に装着されたLEDまたは他の適当な表示器に結合している、または、この色が関連する範囲内で温度で変化する粘着性の細片であって、細片の温度が表面温度、装置内の周囲温度、および/またはEMR発生源の温度を示唆する。例えば、システムの蓄熱器の温度は、回路基板上に一体化可能なサーミスタでモニタ可能であり、さらに下で説明を行う。さらに、他の適当なセンサも利用可能である。温度センサは、また、ローション分配器(下に説明)に信号を送りバルブにローションを放出させる、信号を送り熱電気冷却器(TEC)の作動を制御する、および/または、LED指示器に信号を送り、例えば、装置の過熱を指示することも可能であり、さらに下で説明する。温度センサの例は、「電磁放射皮膚科のためのシステムおよびそれと共に使用するためのヘッド」と題された米国特許第6,508,813号、「表面温度を制御するための方法および装置」と題された米国特許第6,648,904号、および「電磁放射皮膚科のためのシステムおよびそれと共に使用するためのヘッド」と題された米国特許第6,878,144号の中に見ることができ、これらを本明細書に援用する。
【0052】
他のさまざまな安全機構もまた、ハードウェアおよび/またはソフトウェア中に含ませることが可能であり、さらに下で説明を行う。例えば、そのような安全機構の1つは、セッション(例えば、装置の電源投入後、EMR発生源の初期作動に続く所定の時間間隔と
して定義される)中に蓄積されたEMRエネルギをモニタし、皮膚に送達された総エネルギが所定の閾値を超え始めるようであれば、発生源を不作動にすることができる。
【0053】
再び図1Aを参照すると、装置10は、装置のさまざまな部品に電源を供給可能な再充電可能な電源30(例えば、充電可能な電池)をさらに含む。手持ち装置10はドッキングステーションと係合し、例えば、さらに下で説明する方法で、再充電可能な電源を充電することを可能とする。別法として、電源コードを電気コンセントに挿し、装置に電源を供給するために使用可能である。これは、長期間に渡り持続する電源、より高いピーク電力、および/またはより高い平均電力を必要とする実施形態で好ましいだろうし、さらに、大きな冷却量を必要とし、そのため、大きな冷却システムが必要であろう実施形態中で場所を節約することに役立ち得る。
【0054】
皮膚に適用されたEMRは、さまざまな電磁波長、例えば、約0.29ミクロンから約12ミクロンまでの範囲の波長を含み得る。短い波長も可能であるが、紫外光で組織を放射することに関連する潜在的な危険性のため、0.29より長い波長の使用が好ましい。本明細書に説明した多くの実施形態に対して好ましい波長範囲は、約1.1ミクロンから約1.85ミクロンまでであるが、約1.54ミクロンから約1.06ミクロンまでの範囲の波長が好ましい。ある実施では、EMR発生源は、網膜損傷を引き起こす可能性の低い波長、例えば、水によって吸収される波長(例えば、約600〜680nmの範囲の波長、または、ほとんどが赤である波長を有する、または、光のスペクトルが水の吸収ピークの範囲内またはその周り、例えば、970nm、1200nm、1470nm、1900nm、2940nm)を伴うEMRを供給する。
【0055】
EMR発生源は、さまざまなコヒーレントおよび非コヒーレントなEMR発生源でよく、これらは、個別に、または他の発生源と組み合わせて採用可能である。ある実施形態では、EMR発生源はレーザであり、固体レーザ、色素レーザ、ダイオードレーザ、または、他のコヒーレントな光発生源等である。例えば、EMR発生源はダイオードレーザ、Nd:YAGレーザ等のネオジム(Nd)レーザ、クロム(Cr)レーザ、または、イッテルビウム(Yt)レーザが可能である。コヒーレントなEMR発生源の他の例には、波長可変レーザがある。例えば、波長可変放射を与える非コヒーレントまたはコヒーレントなポンピングを伴う色素レーザが採用可能である。典型的な可変波長帯域は、約0.1から10nmの範囲の帯域幅を備える約400から約1200nmまでの波長範囲に渡る。さらに、種々の色素の混合物は多波長放射を与え得る。ある実施形態では、EMR発生源はファイバレーザである。そのようなレーザの波長範囲は、典型的には、約1100nmから約3000nmの範囲である。この範囲は、第2高調波発生(SHG)、または、ファイバレーザ出力に光学的に接続された光学パラメトリック発振器(OPO)を利用して、拡張可能である。他の実施形態では、ダイオードレーザを使用して、例えば、約400〜100,000nmの範囲の波長を伴うEMRを発生可能である。非切除性の皮膚改造に対して本発明のシステムが採用される実施形態のあるものは、表面を冷却して表皮の損傷を防止しながら、発生源からのEMRが皮膚に適用可能である。
【0056】
別法として、ある実施形態では、白熱ランプ、ハロゲンランプ、電球、リニアフラッシュランプ、またはアークランプ等の、非コヒーレントなEMR発生源が使用可能である。一例として、化学的な要素から輝線を発生させる、中空陰極ランプ(HCL)、無電極放電ランプ(EDL)等の単色ランプが使用可能である。
【0057】
さらに、EMRは一般にパルス状で適用されるが、他の方法で適用可能であり、連続波(CW)および準連続波(QCW)を含む。
【0058】
本発明の手持ち皮膚科装置はさまざまな異なる方法で実施可能である。さらなる例示と
して、図3A、3B、3C、3Dおよび3Eは本発明の1つの実施形態による手持ち光美容装置32を模式的に表しており、例えば装置の再充電可能な電池を充電するようなドッキングステーション36と係合可能な手持ちハウジング34、34A、34Bを含む。使用においては、この手持ち装置はドッキングステーションから取り外して利用し、上に説明した態様でEMRを皮膚に適用可能であるが、さらに下で詳述する。利用者が操作できるようにハウジング上に配置されたボタン38は、装置の電源入切りを可能とし、他のボタン40は装置のEMR発生源を作動させEMRを皮膚に適用する。複数のLED指示器40a、40b、40cは、障害が発生した(例えば、過熱、低電池電圧)、システムの使用準備ができている、システムの電源が入っている、電池が充電中、または、電池充電が完了している等、装置の特性についての情報を利用者に与える。
【0059】
模範的な装置32は、装置のさまざまな部品に電力を供給するための再充電可能な電池31をさらに含み、この電池は、ドッキングステーション36中に配置された充電回路を用い銅製のコイル42を介し誘導結合を通じて充電するこができる。装置32は、EMR光発生源44、この例ではダイオードレーザをさらに含み、EMRに所望範囲の1つまたは複数の波長を供給する。
【0060】
図4A,4B、および4Cを参照すると、ダイオードレーザ44はマウント46の上、この場合では大きな組立体のサブマウントまたは基台の上に装着される。このマウントは、好ましくは、熱伝導性の材料で形成される。マウント46は、次に、熱放出部48、例えばこの模範的な実施では蓄熱器、の凹み部48a中に配置される。マウント46と同様に蓄熱器48に熱的に結合する熱電気冷却器(「TEC」)50は、EMR発生源によって発生した熱を取り除き、発生源の温度が許容範囲内(例えば、約60℃より低く)に留まることを確保可能である。
【0061】
ある実施では、EMR発生源の熱管理は、冷却流体の流れ(例えば空気流)および/または熱質量と併せてTECを利用することによって達成する。例えば、図5AはEMR発生源44の温度を制御するための熱管理システム52を模式的に表しており、EMR発生源に熱的に接触するTEC50を含む。TECは、貯蔵部56中に収容された熱質量54(例えば、パラフィンまたは水)に熱的に連通する。熱質量はTECによって発生源から除去された熱の発散に役立つ。貯蔵部に配置された熱伝導性の要素58は、TECと貯蔵部内の熱質量との間で熱連動させる。熱伝導性の要素58は複数のフィン58aを含み、フィンはこの要素と貯蔵部内の熱質量との間の接触面積を増加させ、これによって、TECと熱質量との間の熱の移動を容易にする。図5BはEMR発生源44の温度を制御するための他の熱管理システム60を模式的に表しており、TEC50が熱を発生源から除去する。この場合、熱伝導性の要素58はTECから熱の移動除去を容易にし、ファン62によって発生した空気流によってより迅速に発散されるようにする。
【0062】
他の場合では、相変化材料が利用可能であり、相変化を介して発生源からの熱を除去する。EMR発生源の冷却に使用するための、そのような相変化材料およびシステムの例は、例えば、「冷却剤および局所物質と共に使用するための光処置装置」と題された米国特許第7,135,033号の中に見ることができ、これを本明細書に援用する。
【0063】
図3C、3D、4Aおよび4Bを再び参照すると、発生源によって放射されたEMRは、光学カプラ64を介し、光学ファイバ66にその近位の端部66aで結合させるが、さらに下で詳細に説明する。ファイバの遠位の端部66bは走査機構68と係合し、走査機構はファイバの遠位の端部を皮膚上で物理的に、例えば、この実施では螺旋軌道に沿って移動させる。
【0064】
図3C、3Dおよび3Eを参照すると、この模範的な実施形態では、走査機構68は、
螺旋軌道に沿って移動するように、光学ファイバ66の遠位の先端が結合可能なファイバガイド70を含む。さらに具体的には、ファイバガイド70は歯車72を含み、歯車は、歯車72の凹み部内に配置されるガイド要素74およびファイバの遠位の端部を受けるための開口部72aを有する。ガイド要素74は、ファイバの遠位の端部がそれに沿って移動可能な螺旋溝74aを含む。さらに具体的には、フェルール76は歯車78を伴う歯車72に係合し、歯車78はステップモータ80によって回転可能である。歯車の回転は、螺旋溝を通してファイバ先端を移動させる。
【0065】
引き続き図3cを参照すると、環状の形状を有する接触センサ84(例えば、容量性接触センサ)を受けるように構成された環状の前カバー82は、走査機構を囲む。環状のセンサは、EMR伝達出力窓86(本明細書では、前光学系とも称する)のための座を与え、EMR伝達出力窓を通してファイバ先端からのEMRの放射物が皮膚に適用可能である。
【0066】
模範的な手持ち光美容装置32は、例えば、ホスト制御装置90(例えば、マイクロプロセッサとその関連した回路構成)、1つまたは複数のセンサ、等を利用することによって回路基板上に実施される制御/センサモジュール88をさらに含む。制御/センサモジュールは、制限はないが、さまざまな部品への電源の配分、EMR発生源の作動と不作動、走査装置の制御、さまざまな運転パラメータのモニタ、および安全規約の実施を含み、装置の運転を制御および/またはモニタ可能である。一例として、図6を参照すると、ホスト制御装置(例えばマイクロプロセッサ)90は発生源を作動または不作動にするためのスイッチ92(例えば、この実施形態ではトランジスタスイッチ)に命令信号を供給する(例えば、この場合、スイッチはダイオードレーザのための電流源94を電力変換器96に結合または非結合にさせてレーザを作動または非作動とする)。制御装置は、EMR発生源の温度を許容範囲内に維持するように、TEC50を制御可能(例えば、TECに電源投入および切断可能)である。さらに、制御装置90はステップモータ80のためのステップ駆動部98と通信可能であり、皮膚上で軌道(例えば、この場合螺旋軌道)に沿って光学ファイバの遠位の端部の走査を制御する。例えば、制御装置は信号を駆動部に送出することによって走査を開始することができる。制御装置は、さらには、適当な信号を駆動部に加えモータの回転速度を変化させることによって走査の速度を制御する。さらに、制御装置はレーザの温度をモニタするためにセンサ980から情報を受信し、レーザの温度が所定の閾値を超え始める場合には適切な対応(例えば、レーザを不作動にする)を取る。さらには、制御装置90と連通し装置の内部の周囲温度を送信する温度センサ99を任意選択的に備えてよい。制御装置は、また、視覚的および聴覚的な指示器(例えば、LED100および/またはスピーカ102)を作用させ、装置のさまざまな運転状態を利用者に伝達可能である。制御装置は、例えば、シリアルインターフェース104および割り込み線106を介し、利用者から命令を受信することも可能である。例えば、利用者は容量デジタル変換器(CCD)101および割り込み線106を介して制御装置に信号を送信し、発生源を不作動にすることが可能である。例えばCCD101およびインターフェース線104を介して通信される他の命令には、例えば、装置の電源投入の要求、またはEMR発生源を作動させEMRを皮膚に適用することを含み得る。
【0067】
多くの実施形態では、発生源からEMRを光学ファイバの中に結合する光学カプラは、高い光学結合効率(例えば約80%より大きい)を与える。これは、EMRをより効率的に皮膚へ送達することを可能とし有利である。
【0068】
一例として、図7Aを参照すると、この模範的な実施形態に利用されている光学カプラ64は、EMR発生源44と光学ファイバ66bの近位の先端66aとの間のV溝110の中に配置された棒状レンズ108(例えば、速軸の棒状レンズ)を含む。速軸コリメートレンズ(FAC)等のコリメートレンズは、EMRを発生源(例えばレーザダイオード
)から少なくとも1つの光学ファイバ(例えばマルチモードファイバ)の中に結合させるために有用である。別法として、互いに垂直な一対の円柱レンズは、レーザダイオードから来る高発散の非点収差光束をコリメート可能である。2つの別個の円柱レンズは、それぞれの方向でレンズの適切な焦点形成を通じて、レーザダイオードに固有の非点収差を完全に除去することを可能にする。レーザにより近いレンズはダイオードの速軸をコリメートするため、このレンズは高い開口数(NA)を有し、速軸光束の発散に適合しなければならない。もう1つのレンズはレーザダイオードの遅軸をコリメートし、従って、水平面におけるレーザダイオードからの光は発散が少ないため非常に高いNAは必要としない。
【0069】
多くの実施では、光学カプラ64は、約80%より大きな光学結合率(発生源によって放射された光学エネルギの光学ファイバに入る割合として定義される)を与え、好ましくは約85%より大きく、さらに好ましくは約90%より大きい。そのような高い光学結合率は、皮膚の離散する位置のそれぞれに光学エネルギをより効率的に送達することを可能とし、換言すると、短時間で大きな光美容の結果をもたらすことが可能である。さらに、そのような高い光学結合効率はEMR発生源を手持ちハウジングの中に一体化することを容易にし、手持ち装置を提供する。
【0070】
図7Bは、本発明の他の実施形態を示し、EMR発生源542、光学反射器546、1つまたは複数の光学フィルタ548、光ダクト550(すなわち集光器)、および冷却板(図示せず)を含む。集光器550の遠位の端部544は、出力光の空間的な変調および集光を引き起こし、従って、患者の皮膚中に処置の小島を形成するようなアレー形状を含み得る。例えば、遠位の端部544は、出力光の空間的な変調および集光のために、角錐、円錐、半球、溝、プリズム、または他の構造のアレーを含んでよい。従って、遠位の端部は、出力変調および集光を引き起こし処置の小島を生成させる、マイクロプリズム等の任意の型のアレーから製作可能である。
【0071】
図7Bの実施形態では、光ガイド550は、希土類金属のイオンをドープした光学ファイバ580の束から製作可能である。例えば、光ガイド550はEr3+をドープしたファイバの束から製作可能である。光ガイドコア582の内部の活性イオンは蛍光(または超蛍光)変換体として働き、所望の空間的な変調およびスペクトル変換を行う。このように、図7Bの実施形態中の光ガイド550は、処置の小島を生成するようにEMRの空間的な変調を生成可能である。
【0072】
図7C、7D、および7Eは、光学ファイバ580中に光を結合させるように光学ファイバ580がEMR発生源542の周りに巻き付けられた実施形態を示す。図7Dに示すように、個々のファイバのそれぞれ、またはファイバ580の群は、その出力を皮膚に向けることが可能である。図7Eは、手持ち部からの出力の底面図を示す。図7Eに示すように、ファイバ580は、処置の小島を生成するように空間的に変調された出力分布を有する。
【0073】
図7Fは、図7B、7Cおよび7Dの実施形態と同じ一般構造を使用する他の実施形態を示す。図7Fの実施形態では、ファイバ束580(すなわち、図7C〜Eの束)の出力は、光ガイドの出力面に取り付けられた微少レンズ586のアレーから製作された遠位の端部を有してよい。微少レンズ586のアレーは、ファイバ束580から出力を焦点形成して集光し、損傷の小島を生成する働きをなし得る。
【0074】
再び図3Aおよび3Bを参照すると、手持ち装置32の出力窓86は、皮膚に接触または近接可能であり、制御装置90は、EMRを複数の離散する皮膚位置に送達させるように、命令する(例えば、利用者がボタン38を押すと発生する信号を介して)ことが可能である。ある実施では、制御装置90は、皮膚上のファイバ先端の移動と協調してEMR
発生源44を選択的に作動させることが可能であり、これは、上で説明した方法で走査機構によって実行され、ファイバ先端動作の軌道に沿ってEMRを複数の分離離散する位置に送達する。この模範的な実施のように、ファイバ先端の遠位の端部は螺旋軌道をたどり、EMR発生源の選択的な作動は、図2Bに例示したように、この軌道に沿って複数の離散する位置にEMRを送達することになるだろう。他の実施では、ファイバの遠位の先端によって移動する軌道は、螺旋軌道と異なってよい。例えば、ファイバ先端は、皮膚上でラスターパタンで移動してよく、ダイオードレーザは選択的に作動して光学エネルギをラスターパタンに沿って離散する位置に送達し、例えば、皮膚位置の正方形格子を発生させ、図2Aに模式的に示したように、ここにEMRを適用することが可能である。
【0075】
離散する位置すなわち光学小島は、下に説明する装置によって生成可能な任意の形状に形成可能であり、これは、組織内にEMR光束を制御する機能によってのみ制限される。このように、EMRの波長、時間的特性(例えば、連続送達に対しパルス状の送達)、およびフルエンス、ならびに、EMR光束の形状、入射、および焦点形成、ならびに、組織層の屈折率、吸収係数、散乱係数、異方性因子(散乱角の平均余弦)、および構成、ならびに、外因性の発色団および他の物質の存否等の、処置に影響するさまざまなパラメータにより、離散する位置すなわち小島は、皮膚表面から1つまたは複数の層に渡る、または、皮膚表面の下から1つまたは複数の層に渡る、または、単一層内で、延在するさまざまな形の体積であり得る。光束が集束性でない場合には、そのような光束は、光束軸(例えば、円柱、直方体)に直交する平面において実質的に一定の断面積の体積を画定する。別法として、光束が集束性の場合もあり、光束の中心軸(例えば、円錐、角錐)に直交する平面において減少する断面積の体積を画定する。断面域は形状が正規(例えば、楕円、多角形)でもよく、または、形状が任意でもよい。さらに、EMR光束の波長およびフルエンス、ならびに、その波長に対して組織の吸収および散乱特性によって、EMR光束は、初期的にまたは完全に吸収または散乱する前に、一定の深さまで浸透可能であり、従って、EMR処置された離散する位置は、皮膚の深さ全体に渡り延在することはなく、しかし、むしろ、表面と特定の深さとの間、または表面下の2つの深さの間に延在し得る。
【0076】
一般に、格子は、1次元、2次元、または3次元中で離散する位置すなわち小島の、周期的な構造である(しかし非周期性でもよい)。例えば、2次元(2D)格子は、2次元中で周期性があり、第3番目の次元では並進不変または非周期性である。周期性の型はボクセル形状によって特徴づけられる。例えば、制限はないが、層、正方形、六角形、または長方形格子でよい。格子の次元は、個々の小島の次元と異なってよい。等しく離間した無限円柱の単一の列は、1D格子の2D小島の例である(円柱が有限の長さであれば、これは1D格子の3D小島である)。格子の次元は、その小島の次元と等しい、まはは小さい(この事実は、その小島が並進不変な次元中では格子は周期的であり得ないと言う事実による)。それ故に、全部で6つの格子の型が存在し、それぞれの型は小島と格子の次元の組み合わせが可能である。用途のあるものでは、「逆」格子を採用可能であり、逆格子の中では、無傷の組織の小島がEMR処置された組織の面域によって分離されており、処置面域は、処置されなかった島を包含する連続する処置された組織の塊である。
【0077】
処置された体積のそれぞれは、比較的薄い円盤、比較的長い円柱(例えば、第1の深さから第2の深さまで延在する)、または、その幅と深さを実質的に超える長さで、皮膚表面に実質的に平行に配向された長さを有する実質的に線形の体積である。所与の用途における小島の線の配向は、全て同じである必要はなく、線のあるものは、例えば、他の線に対して直角でもよい。線は、また、より大きな効力のために処置標的の周りに配向してもよい。例えば、線は脈管に垂直、または、皺に平行でもよい。小島、すなわち離散する位置は、球体、楕円体、立方体、または選択された厚さの直方体等の部分表面体積でよい。小島は、また、実質的に線形または平面状の体積でもよい。小島の形状は、組み合わされた光束の光学パラメータによって決定され、光束の大きさ、分布の振幅と位相、適用の期
間、および程度は少ないが、波長を含む。
【0078】
本発明のEMR処置された小島の格子内の個々の小島の大きさは、意図した美容または医療用途により広く変わり得る。ある実施形態では、実質的な組織の損傷を引き起こし、組織の構造または領域を破壊または排除することが望ましい(例えば、皮脂腺、毛包、組織の切除)が、その一方、他の実施形態では、規定の波長でEMRの有効量を管理しつつ、損傷をほとんど、または全く引き起こさないことが望ましい(例えば、光生体刺激)。しかし、上で述べたように、損傷小島に対しては、損傷した組織の治癒は、傷の縁部の体積に対する比がより大きな、より小さな損傷小島でより効果的である。
【0079】
本発明のEMR処置された小島の大きさは、どの特定の次元でも1μmから30mmまでの範囲でよい。例えば、制限はないが、実質的に線形な小島の格子は、約30mmの長さで、約10μmから1mmまでの幅を有する平行な小島からなってよい。他の例では、制限はないが、円柱の軸が組織表面に直角な実質的に円柱状の小島に対しては、深さが約10μmから4mmまでで、直径が約10μmから1mmまででよい。実質的に球体または楕円体の小島については、直径または主軸は、例えば、制限はないが、約10μmから1mmまででよい。このように、ある実施形態では、小島は、1μmから10μmまでの、10μmから100μmまでの、100μmから1mmまでの、1mmから10mmまでの、または10mmから30mmまでの範囲の最大寸法を有し得るが、1μm内から30mm内までの全ての範囲も同様にあり得る。
【0080】
組織の散乱効果のために、EMR処置される小島の最小大きさは組織中の目的の深さと共に増加し、角質層での数ミクロンから、下皮組織中での数ミリメートルまでの範囲に渡る。患者組織中の約1mmの深さについては、より大きな小島(例えば、1〜10mm)もあり得るが、小島の最小直径または幅は約100μmと推定される。損傷小島の大きさは、対応する光学小島の大きさよりも、小さい、または大きいの、いずれもあり得るが、より大きな量のEMRエネルギが光学小島に適用されると熱拡散のために、一般により大きい。皮膚内の任意の特定の深さの小島の最小大きさについては、波長、光束の大きさ、集束性、エネルギおよびパルス幅の最適化が必要である。
【0081】
本発明のEMR処置された小島は、表面および表面下の位置、比較的限定された深さの位置、およびかなりの深さに渡る位置を含み、組織内でさまざまな場所に位置し得る。小島の望ましい深さは、標的の分子、細胞、組織、または細胞間構造の位置を含み、意図される美容または医療用途による。
【0082】
例えば、光学小島は、EMRエネルギの浸透深さにより、組織または器官中でさまざまな深さで誘発可能であり、EMRエネルギの浸透深さは、ある程度、波長および光束の大きさによる。このように、小島は、組織の表面層にのみ浸透する浅い小島(例えば、0〜50μm)、組織のいくつかの層に渡るより深い小島(例えば、50〜500μm)、または非常に深い表面下の小島(例えば、500μm〜4mm)があり得る。光学エネルギを使用し、25mmまでの深さは、1,000〜1,300nmの波長を使用して達成可能である。マイクロ波または高周波EMRを使用して、数センチメートルの深さが達成可能である。熱小島または損傷小島については、所望の深さにのみ存在する発色団を標的にすることによって、または、EMRを送達しながら組織の上層を冷却することによって、表面下の小島が生成可能である。深い熱小島または損傷小島の生成については、表面冷却を伴う長いパルス幅が特に有効な場合がある。
【0083】
EMR発生源が電磁放射のパルスを供給す場合には、光学ファイバの遠位の端部の動作と併せて、パルスの時間的な分離により、ファイバ先端の動作の軌道に沿って、複数の離散する皮膚位置にEMRを適用可能となる。
【0084】
光学ファイバの使用は、実質的に均質な断面強度分布を示す、皮膚に結合するためのEMR光束をもたらし、利点となる。特に、発生源によって発生しファイバの中に結合したEMR光束は、ファイバの中を移動する際に多数の反射を受ける。これらの反射は、ファイバからの出力光束の断面強度を実質的に均質にする。この模範的な実施形態では、光学ファイバは、例えば、約100〜300ミクロンの直径で約0.5から約4までのNAを備える出力先端を有し得るが、他の先端の大きさ、および/または、開口数もまた、利用可能である。処置パラメータは変わり得るが、ある実施形態では、1平方センチメートル当たり約50〜1000の離散する皮膚位置で、1つの処置部位当たり約50〜200の離散する皮膚位置が処置される。さらに、図3Fに示すように、ある実施形態では、微少光学系(例えば、微少レンズ)1が光学ファイバの遠位の端部に結合しており、出力光束の整形および/または焦点形成を行うことが可能である。他の場合では、光学ファイバはテーパー状の端部を含み、出力光束を所望の断面形状(例えば、正方形)とすることが可能である。
【0085】
ある実施形態では、EMRが適用される離散する皮膚位置に関連付けられた間隔(すなわち、隣接位置間の距離)は、ファイバの遠位の先端が皮膚上で移動する速度を加減することによって調節可能である。例えば、図3Aおよび3Bを参照すると、EMR発生源によって発生した所与のパルスの繰り返し速度については、間隔を増加させるために、制御装置はステップモータに歯車78および72をより速い速度で回転させ、これによって、ファイバの遠位の先端が皮膚上を移動する速度を増加させることができる。別法として、歯車の回転速度を減少させると、小さな間隔(すなわち、離散する皮膚位置のより密な配置)とすることができる。
【0086】
他の実施形態では、圧電走査機構を採用しファイバの遠位の先端を皮膚上で移動することが可能である。一例として、図8は、1つまたは複数のモータ82を含みファイバ840を所定のパタンで移動させ装置10に含まれるような走査機構の模範的な実施を模式的に表している。モータ820は、適当な任意のモータでよく、例えば、ステップモータ、リニアモータ、圧電モータ、または共振圧電モータを含む。
【0087】
1つの実施形態では、ファイバ840の遠位の端部は、光学ファイバ840が所定のパタンで移動可能なように、ファイバガイド組立体システム870に結合している。XYリニア走査装置800はファイバを保持するフェルール880を含み、このフェルールは、滑動板中の位置合わせされた長穴891を介するX方向滑動板850およびY方向滑動板860を含むファイバガイド組立体システム870にファイバ840を接続する接続器890に結合する。フェルール880はファイバ840を正確に接続器890内に位置合わせされた状態に保つ。滑動板のそれぞれは、モータが滑動板に対して押した時に、ファイバ840が水平(X)および/または垂直(Y)方向に移動するように、モータ82に結合している。ある実施形態では、ファイバの2D移動はEMR発生源の作動に連動する。さまざまな所定の空間パタンが走査装置内にプログラム可能であり、製造者によって選択可能、または、ハウジング上の制御用の構造体(図示せず)を介して利用者によって選択可能である。そのような実施形態では、利用者は、同じ手持ち部を使用して、皮膚中の種々の小島の処置パタンから選択可能である。本発明のこの実施形態を使用するためには、先に説明した実施形態と同様に、利用者は、作動前に、開口部を皮膚の標的面域上に手動で設置することができる。他の実施形態では、装置は皮膚に接触させる必要がない。そのような実施形態では、装置と皮膚表面との間の所定距離を確定するために、装置に隔離機構(図示せず)を含む場合もある。
【0088】
他の実施形態では、EMR送達機構は、2つの直交する軸の周りを回転するようになされた2つの回転する鏡を含み、発生源からのEMRを皮膚上で2次元で走査することが可
能である。一例として、図9は手持ち光美容装置110を模式的に示しており、直交する軸AおよびBの回りに回転することができる2つの回転可能な鏡114および116を含むEMR送達機構112を含む。鏡114はEMR光束を発生源118から受け、このEMRを鏡116に伝達し、鏡116は、次に、EMR伝達出力窓120を通してEMRを皮膚に向けることが可能である。鏡の回転を利用し、皮膚の2次元面域に渡り光束を走査可能である。ある実施では、制御装置122は鏡の回転をEMR発生源によるEMR放射に同期させ、複数の分離離散する皮膚位置にEMRを送達可能である。EMRを複数の離散する皮膚位置に適用するための回転する鏡を利用する走査機構に関するさらなる詳細は、「EMR処置のための方法および装置」と題された米国特許第6,997,923号、および、2005年4月1日出願の「組織中にEMR処置された小島の格子を生成させそれを使用するるための方法および製品」と題された同時係属中の米国特許出願第11/097,841、11/098036、11/098,015、11/098,000号の中に見ることができ、これらを本明細書に援用する。回転する鏡を利用する走査システムの1つの利点は、皮膚の広い面域をより速く走査可能なことである。
【0089】
図10を参照すると、手持ち装置124の他の実施形態では、複数の微少レンズ126がEMR発生源128によって発生したEMRをコリメータレンズ132を介して受け、複数の分離したEMR光束130として、EMR伝達窓134を通してこのEMRを複数の離散する皮膚位置に適用する。ある実施形態では、ビームの焦点形成を行うために、1つまたは複数の焦点形成要素が微少レンズ126と窓134との間に配置可能である。ある実施形態では、EMR伝達窓134は、光学小島の格子中の出力密度の空間的な変調を行う働きをする微少レンズの格子から製作可能である。そのような微少レンズを利用するEMR送達システムに関するさらなる詳細は、例えば、「皮膚科処置のためのヘッド」と題された米国特許第6,511,475号に見ることができ、これを本明細書に援用する。
【0090】
多くの実施形態では、装置の安全な操作を確保するように、さまざまな安全機構が本発明の手持ち装置の中に一体化可能である。例えば、再び図3Aおよび3Bを参照すると、容量性接触センサ84は、装置の遠位の先端が皮膚の所定の距離の範囲内(例えば、皮膚から約5mmより少ない距離、または皮膚から約3mmより少ない距離、または皮膚から約2mmより少ない距離)かどうか検出可能である。制御装置90はセンサの出力信号を受信し、この信号に基づきEMR発生源の作動を制御する。例えば、装置の遠位の端部が皮膚に対して適当な距離にあると検出できない場合には、センサはEMR発生源の作動を禁止する、または、装置がEMRを放射している場合には発生源を不作動にする。さらに、ある実施では、装置が皮膚上に適切に位置していないとセンサから示されると、制御装置は視覚指示器(例えば、ハウジング上に配置された赤のLED発光器40C)を作動させ、利用者に警報を発することができる。
【0091】
他のセンサを装置内に一体化することも可能である。例えば、図6を参照すると、ハウジング内(例えば、制御板88上)に配置された温度センサ98は、EMR発生源の温度をモニタ可能である。さらに、他の温度センサ(例えば、温度センサ99)はハウジング内に一体化され、ハウジング内の周囲温度をモニタ可能である。温度センサの出力信号は制御装置に送信可能であり、制御装置は、センサからの信号に適当な対応を行うようにプログラム可能である。例えば、センサによって示された温度が所定の閾値の上の場合には、制御装置はEMR発生源を不作動にすることが可能である。
【0092】
さらに他の安全上の特色として、ある実施では、処置セッション(例えば、装置の電源投入後、EMR発生源の初期作動に続く所定の時間間隔として定義される)に皮膚に適用される総光学エネルギが追跡され、セッション中に皮膚に適用される総エネルギは所定の閾値より低く留まることを確保可能である。例えば、制御装置90は、例えば、EMR発
生源によって発生したパルスの繰り返し速度、1パルス当たりのエネルギ、EMR発生源とエネルギを皮膚に送達する光学ファイバとの間の光学結合の効率、およびファイバから皮膚の中に結合する光学エネルギの効率に基づき、適用される総エネルギを実時間で計算するようにプログラム可能である。総エネルギが所定の閾値を超え始めると、制御装置は発生源を不作動とし、選択された間隔が経過した後にのみ、発生源を再作動させることが可能である。
【0093】
ある実施形態では、手持ち装置のハウジングは、それぞれが装置の一定の部品を収容し、互いに分離再接合可能な、複数のモジュール式の部分から形成可能である。一例として、図11Aは、複数の接続器140を介して取り外し可能かつ再配置可能に接合される、2つのモジュール式の部分138aおよび138bを有するハウジング138を含む実施形態による手持ち装置136を模式的に表す。この実施形態では、EMR発生源142ならびに制御装置144および電源システム146は部分138a中に配置され、発生源によって放射されたEMRを複数の離散する皮膚位置に送達するための走査機構148は、もう1つのハウジング部138b中に配置される。モジュール方式の装置136では、さまざまに異なる走査機構と共に、同じEMR発生源および制御回路構成を利用可能な利点がある。これは製造過程を迅速化するのみならず、製造コストを低減させる。
【0094】
さらに、ある実施では、EMR発生源を有する単一のモジュールは、種々の走査機構を収容する複数のモジュールを備えることが可能であり、利用者が種々の光美容用途のために装置を直ぐに利用できるようにする。例えば、モジュール138bは、図11Bに模式的に示す異なる走査機構148bを有する他のモジュール138cと交換可能である。
【0095】
一例として、図12Aは模範的な接続器140を示し、接続して図12Bに示す装置805を形成可能なハウジングのモジュール式の部分138aおよび138bを、取り外し可能かつ再配置可能に取り付けるために採用される。図12Aおよび12Cの展開図に示すように、モジュール式の部分138aは走査装置800を含み、走査装置は、ハウジング端802中に取り外し可能かつ再配置可能に結合可能である。ハウジング端802中に挿される走査装置の型(例えば、XYリニア走査装置、螺旋走査装置、鏡および/または他の光学要素を採用する自由光束走査装置、等)は、手持ち部138aによって検出可能である。例えば、種々の形状の接続器140が使用可能であり、または、指示器851(例えば、バーコード)を使用して、ハウジング端および/または走査装置の型を指示し手持ち部138a中の制御電子系を制御可能である。
【0096】
図12Aの装置は、光空間変調を行うように光学コーティング(すなわち、処置窓803上に)を有してよい。ある実施形態では、自身の半径に渡り可変伝達鏡である、グラジエント鏡と同様な技術を使用可能である。複数のグラジエント鏡を含む実施形態は、光発生源のパラメータ(フォトンリサイクリング効果等)、およびシステム冷却能力(非常に薄いコーティング厚さ)の拡張に有利であろう。
【0097】
ある場合には、モジュール方式の装置では、例えば、電磁スペクトルの他の部分のEMRを供給するまたは装置の修理のために、1つのEMR発生源を他のものと交換可能である。一例として、図13Aはそのような1つの実施形態による手持ち装置148を模式的に表し、EMR発生源152および関連した制御および電源回路構成(図示せず)が配置された部分150aと、走査装置154(または他の光送達機構(例えば、複数の微少レンズ))が配置された他の部分150b(例えば接続器140を介し、取り外し可能かつ再配置可能に部分150aと係合する)とを有するモジュール式のハウジング150を含む。EMR発生源152は、取り外し可能かつ再配置可能なカートリッジ156中に配置され、カートリッジは、異なるEMR発生源を収容する他のカートリッジと交換可能である。例えば、図13Bに模式的に示すように、モジュール式の部分150aおよび150
bは、異なるEMR発生源(図示せず)を有する他のカートリッジと取り外しかつ交換可能なカートリッジ156に近接できるように分離可能である。ある実施形態では、ハウジング内で新しいEMR発生源の設置に際し、制御装置は、検出器を使用してどの型の発生源かを決定し、この発生源と協調して動作するように走査装置に指令可能である。例えば、制御装置は走査パタン、パルス幅、焦点の深さ、および/または開口数を変更してよい。検出器システムは、例えば、機械的、光学的、または電気的な検出器が可能である。ある実施形態では、制御システムはモジュールのさまざまな組み合わせを認識し制御する。例えば、各モジュールは制御装置に識別子を与えるように設計されており、所与のモジュールの組み合わせに対し、制御装置は、識別子を使用して処置のために許容可能なパラメータを決定し、許容不可のパラメータを制限し、装置の運転を制御する。
【0098】
図14Aおよび14Bは、他の実施形態による手持ち皮膚科装置158を模式的に表し、複数のEMR発生源162が配置されたハウジング160を含む。EMR発生源は、例えば、先の実施形態に関連して先に説明したもの等の、冷却器(図示せず)に熱的に結合され、EMR発生源から熱を除去し、発生源の運転温度が許容範囲内に留まることを確保する。この実施では、ハウジング160は、ハウジングの内部と外部環境との間の空気流を可能にする網目材料で形成された部分160’を含み、装置の冷却を容易にする。
【0099】
図14Cに示すように、この模範的な実施形態では、EMR発生源は、皮膚に適用するために複数のEMR光束167を供給するダイオードレーザバー166を含む。好ましい実施形態では、ダイオードレーザバー166は、約1cmの長さL、約10mmの厚さW、約0.0015mmの厚さTを有する。この実施形態では、EMR光束は電磁スペクトル(例えば、約290〜10000nmの範囲内で)の赤外領域中の1つまたは複数の波長を有し、他の実施形態ではEMR光束は他の波長を有する。ある実施では、送達されたEMRを皮膚に焦点形成させるように、1つまたは複数の焦点形成要素(例えば、1つまたは複数のレンズ)がEMR発生源と出力窓との間に配置可能である。しかし、この模範的な実施形態では、そのような焦点形成要素を不要にするようにダイオードレーザバーが窓に十分近く設置される。
【0100】
装置内に位置するダイオードバー中にファイバを直接結合することによって、生成されたEMRは、柔軟な送達方法を使用して皮膚表面に直接伝達される。このように、レーザダイオードバーは移動せず、光学系は不要で、光学要素を精密に位置合せする必要がない。このように、もたらされる装置は、より信頼性があり、より耐久性があり、より安価であり、より小型である。さらに、単一のレーザダイオードを有し、柔軟な送達機構を所望の処置位置に移動する実施形態では、追加のレーザダイオード、レーザダイオードバー、およびバーの積層体が不要であり、さらに、装置のコストおよびピーク電力要件を減少させる。このように、処置過程の間に単一のレーザダイオード(別のある実施形態では数個のレーザダイオード)を繰り返し作動させることによって、一般に入手可能で比較的安価な再充電可能な電池等、低電源エネルギ源から装置が運転可能である。さらに、装置のピーク電力要件を減少させることによって、強力な冷却器はあまり必要とされない。このように、装置は、冷却機でなくても、例えば、TECまたは熱フィンおよびファンで冷却可能である。
【0101】
さらに、ファイバの遠位の端部が処置される組織の表面に、または近くに位置する実施形態では、光学系なしに、または、比較的に安価な光学系(例えば、照射されたEMRを焦点形成し、および/または集束させるようにファイバの端部に光学的および/または物理的に結合したレンズ)を使用して、十分なエネルギが直接組織中に伝達される。そのような構成では、また、装置はより堅固で耐久性があり、かつより安価となる。さらに、ある実施形態では、EMRが照射されるファイバ端部と組織表面との間の直接接触および/または非常な近接により、効力が向上する。
【0102】
引き続き図14Aおよび14Bを参照すると、模範的な手持ち装置158は、装置が皮膚上を移動する際にその速度を決定する速度センサ170をさらに含んでよい。図15Aを参照すると、一例として、速度センサは、例えば、複数のホイール173およびホールセンサ175を採用する機械的センサ171で、皮膚上の装置の速度を決定可能である。他の例では、直接または間接的に装置の速度を決定可能(例えば、ホイール173の回転速度を決定することによって)な光学的センサ177が図15Bに模式的に示される。本発明の実施において使用に適する速度センサに関するさらなる詳細は、例えば、同時係属中の米国特許出願第11/097,841、11/098036、11/098,015、11/098,000号の中に見ることができ、これらを本明細書に援用する。
【0103】
再び図14Aを参照すると、装置158は、押し付け方式、または走査方式、または滑動方式で使用可能である。例えば、押し付け方式では、装置は皮膚に接触、または近接して設置し、ダイオードレーザバーが作動してEMR光束のそれぞれを離散する皮膚の位置に適用することが可能である。装置は、次に、皮膚の他の部分に移動してEMRをそこに適用可能である。押し付け方式では、もたらされる皮膚中の温度(および、多分、損傷のプロファイル)は開口部の形状および照度/冷却パラメータによって決定される。滑動方式では、走査速度を変化させることによって、さらなる度合いの制御が利用できる。
【0104】
別法として、装置158は走査方式で利用可能である。例えば、EMR発生源がEMRを皮膚に適用しながら、装置を皮膚部分上で走査可能である。EMR発生源が、皮膚上の装置速度よりもかなり速い繰り返し速度のパルス状EMRまたは連続EMRを供給する場合には、図16Aに示すように、EMRが適用される皮膚部分は複数の分離した線状区域となり得る。他の場合には、制御装置は皮膚上の装置の動作と協調してEMR発生源を作動させ、図16Bに示すように、EMRを複数の離散する位置に適用可能である。EMRが適用される皮膚位置の密度は、速度センサ170によって検出されるような、装置が皮膚上を移動する速度に基づき、発生源を選択的に作動させることによって調節可能である。
【0105】
ある実施形態では、ローション分配器が装置の手持ちハウジング上に装着され、ローションをEMRが適用される皮膚部分の表面に塗布可能である。一例として、図17は手持ち美容装置172を模式的に表し、近位の端部176から遠位の端部178まで延在する手持ちハウジング174を含む。先の実施形態と同様に、装置172は、ハウジング内に配置された少なくとも1つのEMR発生源と、装置の遠位の端部を介しEMRをその発生源から複数の離散する皮膚位置に送達するための機構とを含む。ローション分配器180は装置の遠位の端部に装着され、ローションを保存する貯蔵部182と、皮膚上にローションを放出するためのローション放出機構184(例えば、作動可能な弁)とを含む。ローション分配器は、利用者によって手動で、または自動的で(例えば、装置の制御装置からの電気信号を介して)作動し、装置の遠位の端部の下の皮膚表面にローションを塗布可能である。例えば、装置が押し付け方式で使用される場合には、ローション分配器はローションを皮膚に塗布するように作動可能であり、次に、EMRが皮膚に適用可能である。装置が走査方式で使用される場合には、ローション分配器は遠位の端部に配置可能であり、これによって、装置の遠位の端部が皮膚上を移動すると、皮膚部分にEMRを適用する前に分配器がその部分にローションを塗布可能である。
【0106】
散乱と吸収の両方が波長依存性である。従って、浅い深さに対しては、かなり広い波長帯域が利用可能である一方、光束の焦点形成を達成しても、焦点が深ければ深いほど、散乱および吸収がより大きな要因となり、適切な焦点形成が達成される利用可能な波長帯域が狭くなる。表1はさまざまな深さに対して好ましい波長帯域を示し、これらの帯域の外部でも結果を得ることが可能であろうが、許容可能であっても最適化には満たない。
【0107】
【表1】

【0108】
典型的には、運転波長は約0.29μmから約100μmまでの範囲であり、入射フルエンスは約1mJ/cmから約100J/cmまでの範囲である。1つの例では、光のスペクトルは水の吸収ピークの範囲またはその周囲である。これらは、例えば、970nm、1200nm、1470nm、1900nm、2940nmおよび/または1800nmより大きな任意の波長を含む。他の例では、スペクトルは、0.92μm、1.2μm、1.7μm、および/または2.3μm、および3.4μmのような波長等、脂質に対する吸収ピーク、および、より長いすなわちケラチン等の蛋白質、または組織に含有される他の内在性の組織発色団に対する吸収ピークの近くに調整される。
【0109】
波長は、この吸収係数が、10cm−1より大きい等、1cm−1より大きな範囲から選択可能である。典型的には、波長は約0.29μmから約100μmまでの範囲であり、入射フルエンスは約1mJ/cmから約1000J/cmまでの範囲である。有効加熱パルス幅は、好ましくは、標的の発色団の熱的緩和時間の100倍未満である(例えば、100f秒から1秒までの)。
【0110】
通常、適用されるEMRのパルス幅は、長時間ではこれらの部分の境界を超えて熱の拡散をもたらし得るため、離散する位置すなわち光学小島のそれぞれの熱的緩和時間(TRT)未満にすべきである。離散する位置は一般に比較的小さいため、パルス時間は比較的短い。しかし、深さが増加し、従ってスポットの大きさも増加すると、最大パルス幅すなわち時間も増加する。標的の密度が高くなさ過ぎず、標的面域からの総合の熱が、これらの面域の外部の任意の場所にて、そのような場所の組織に対する損傷閾値よりも十分に低ければ、パルス幅は離散する位置の熱的緩和時間よりも長くてもよい。一般に、熱拡散理論によると、球状の小島に対するパルス幅τはτ<500D/24であり、直径がDの円柱状の小島に対するパルス幅は、τ<50D/16であり、ここでDは標的の特有の大きさである。標的の密度が高くなさ過ぎず、標的面域からの総合の熱が、これらの面域の外部の任意の場所にて、そのような場所の組織に対する損傷閾値よりも十分に低ければ、パルス幅は離散する位置の熱的緩和時間よりも長くてもよい時もある。また、適当な冷却手法を用いると、上の制限は適用されなくてもよく、熱的緩和時間を超える、時には、TRTを著しく超える、離散する位置に対するパルス時間を利用してよい。
【0111】
EMR発生源からの必要な出力は所望の治療効果に依存し、深さおよび冷却が増加する、および、波長のために吸収が減少すると、増加する。出力は、また、パルス幅が増加すると減少する。本発明のある実施形態では、EMR発生源として1つまたは複数のダイオードレーザを使用する。多くの光皮膚科用途では高い出力の光発生源を必要とするため、実施形態のあるものでは、標準的な40W、1cm長のcwダイオードレーザが使用可能である。例えば、10〜100Wのダイオードレーザバーを含み、任意の適するレーザバーが使用可能である。上で述べたもの等、多くの種類のダイオードレーザが本発明の範囲内で使用可能である。光学的および機械的な下位システムに適当な変更を行うことにより、他の発生源(例えば、LEDおよびSHGを備えるダイオードレーザ)は、ダイオードレーザバーを置換可能である。
【0112】
さまざまな光ベースの装置を使用して必要な光線量を体に送達可能である。利用される光学的な放射源は、利用者の皮膚表面で、約1mW/cmから約100W/cmまで、好ましいくは、10mW/cmから約10W/cmまでの出力密度を供給するだろう。採用される出力密度は、長期間に渡って比較的に頻繁な処置によって、上に示したような顕著な治療効果を達成可能なものだろう。出力密度は、限定されないが、処置される状態、採用される単複の波長、および処置が所望される体の位置、すなわち、処置の深さ、利用者の皮膚の型、等を含み、多くの要因の関数として変わり得る。適当な発生源は、例えば、約1〜100W、好ましくは、2〜10Wの出力を供給するものであろうが、皮膚表面で約0.01〜10W/cmの出力密度で皮膚表面の0.2〜1mm下の組織を照射するように設計される。本発明の他の態様では、この処置は、血液および内在性の他の組織発色団による光の吸収を通し、にきび障害を間接的に外見で解決または改善することができる。
【0113】
ある実施形態では、単一のEMR発生源(例えばレーザダイオード)が伝達され光学小島の光子を生成する。光学小島の格子は皮膚中に微少変性領域の格子を発生させ、これが異常に着色した細胞の除去を促進すると共に、新たなコラーゲン成長を刺激し、その結果、着色箇所を目立たなくすると共に皮膚外見と皮膚の肌合いを改善することができる。本方法の断片性により、他の光ベースの皮膚科処置よりも痛みが少なく、治癒が速い。
【0114】
他の実施形態は、例えば、発生源によって発生したEMRを像形成し、像形成されたEMRを組織に送達する一群のレンズを含む光学送達システムが採用可能である。そのような、いくつかの別法は、同時係属中の2007年2月1日出願の「ズームレンズシステムを有する皮膚科装置」と題された米国特許出願第11/701,192号に詳細に記載されるように、ズームレンズシステムを付加的に含んでよく、この出願を本明細書に援用する。ズームレンズは、皮膚部分として処置されなかった(または、あまり処置されなかった、または異なって処置された)皮膚によって互いに分離された、複数の皮膚部分(本明細書で小島またはEMR処置された小島とも称する)にビームレットを焦点形成する。ズームレンズは、形成する光学マスクの像の拡大率を変化させることによって、小島の間隔(小島間の距離)の調節を可能とし、従って、皮膚内に形成される小島の密度を調節する。焦点形成されたスポットの間隔の調節は、さまざまな皮膚の型および状態に対して皮膚の処置を最適化するために利用可能な利点があり、さらに下で説明する。
【0115】
使用の方法
ある態様では、提供される方法および装置は、多セッションのダイオードレーザの断片的処置の使用に適当なものであり、例えば、皮膚若返り、皺の減少、皮膚黒色症の減少、組織の切除、微少孔の形成、および他の処置のために使用可能である。
【0116】
例えば、図3Aの装置等の装置は、新規な定期的な処置手法の一部として使用可能である。既存の断片的装置を使用する処置は、皮膚科医または療養専門家等の専門家を通して消費者が利用可能である。これらの処置は、元来、非常に高出力で比較的高密度の光束を有する装置を使用して実行される。換言すると、一群の光束(または、走査装置を使用するいくつかの装置の場合には単一の光束)によって組織中に生成される個々の処置小島間の間隔は比較的小さく、単位面積および/または体積当たりで比較的多数の小島が生成される。これは、より強力な処置を行い、単一の処置の効力を向上させるように設計される。換言すると、専門家用の装置は、1回または数回の処置で結果を得るため、単一の処置で可能な限り多量の組織を処置するように設計される。
【0117】
しかし、本発明者は、あまり強力でないが、より頻繁に組織を処置することにより、よりよい結果を得ることができることを発見した。例えば、図3Aの装置32は、専門家用の装置によって生成される小島よりも、比較的より低密度のものを組織内に生成する。換言すると、小島間の間隔は既存の専門家用の装置よりも大きい。同様に、1小島当たりに適用される出力密度は、典型的な専門家の処置よりも低い。このように、単一の処置で、典型的な専門家の処置よりも、組織の単位面積および/または体積当たりより少ない小島が生成され、本装置を使用する単一の処置では、一般に、組織損傷がより少ないくなる。そのような単一の処置は、専門家用の装置を使用する単一の処置ほど効力はないが、単一の処置で生成される損傷はより少ないため、組織を過度に損傷せずに、より早く、利用者がその後の処置を安全に実行可能である。簡単に利用できる、例えば家庭で使用される装置を提供することによって、患者は、より簡単にかつ定期的にそのような処置を実行可能であり、これは、専門家または医療の環境下では、運営上の困難性、および典型的な患者が専門の医療提供者の治療に頻繁に通院することのコストにより、非現実的である。
【0118】
図3Aの装置32と同様の装置の初期臨床試験では、本発明者は、1処置当たりでより少ない強度を有する断片的装置を使用する定期的かつ反復的なEMRの適用の方が、既存の専門家用の装置よりも、長期に渡りより大きな効果をもたらすことを発見した。例えば、顔の面域を処置する装置32と同様な装置を使用した患者は、典型的な専門家の処置を受けた患者よりも、平均して優れた結果を得た。皮膚若返りのための模範的な処理手順を表2に示す。
【0119】
【表2】

【0120】
本装置を隔日で使用し顔組織の皮膚若返りを実行した患者は、一連の専門家の処置で典型的に達成した結果よりも、数ヶ月の間のうちに優れた結果を達成した。本発明の範囲を制限するものではないが、これは、比較的大きな間隔(比較的低小島密度)を使用し頻繁かつ反復的に実行される緩やかなEMRの適用に、組織の治癒反応がより良く反応すると言う事実によるものと、本発明者は考える。また、本発明の範囲を制限するものではないが、反復的な低強度の処置は先の結果を維持するのに役立つものと、本発明者は考える。また、本発明を制限するものではないが、長期に渡るより緩やかな処置により、既存の専門家の処置で可能なものよりも、処理された単位面積および/または体積当たりの処理スポットがより大きな総密度で可能になると、本発明者は考える。さまざまな処置の処理手順の初期試験に基づき、より強度の少ない処置を使用してより頻繁に実行した場合の方が、他の処置(皺除去、にきび処置、等)でも同様により効力があると、本発明者は期待する。
【0121】
従って、多くの新たな処置手法が可能である。例えば、患者は専門家によって処置されてより強力な初期処置を受ける一方、本発明のさまざまな実施形態を使用して、その後のあまり強力でない処置が患者によって実行可能である。店頭で入手可能な装置を使用して、または処方装置または処置を実行した専門家によって供給される他の装置を使用して、フォローアップ処置が実行可能であろう。同様に、患者は本発明の実施形態を使用して、
一連の比較的低強度の処置を長期に渡り(隔日、毎週等、および数週間、数ヶ月、数年に渡り)定期的に実行可能である。患者は、また、本発明の実施形態を使用して、より強力な初期処置を(例えば、比較的短い小島間の間隔で、および/または処置中に1小島当たりより多くのエネルギを適用して)実行し、引き続き、あまり強力でない処置を達成するパラメータを使用して、一連の定期的なフォローアップ処置が可能である。
【0122】
そのような定期的な処置は、好ましくは、頻繁で持続的なベースで一連の低強度の処置を採用するが、他の多くの実施形態も可能である。例えば、ある処置では、専門家の処置に典型的に採用されるパラメータ等、比較的より強力なパラメータを使用して実行された一連の処置が有益な場合がある。同様に、専門家の処置と同じ頻度で装置を使用してもよい。
【0123】
追加的な光美容用途
多くの追加的な用途が可能である。例えば、本明細書に記載したものと同様な装置を使用して、断片的切除および微少孔の形成を実行し得る。この用途のさらに詳細な開示は、「EMR処置された小島の格子を使用して組織を切除するための方法および製品」と題する現在係属中の米国特許仮出願第60/877,826号中に与えられ、これを本明細書に援用する。
【0124】
非切除性の用途には、着色した障害、血管障害、および静脈処置等の皮膚内の構造の選択的処置を含む。これらの、および同様の用途は、「皮膚および他の組織中の光選択的な小島」と題された現在係属中の米国特許仮出願第60/923,093号中に非常に詳しく記載されており、これを本明細書に援用する。
【0125】
真皮の処置、特に真皮の深層も可能である。これらの、および同様な用途は、「真皮/皮下接合部における、深い断片的熱処置」と題された現在係属中の米国特許仮出願第60/923,398号中に非常に詳しく記載されており、これを本明細書に援用する。
【0126】
手持ち光美容装置の実施形態は、さまざまな異なった器官および組織における、さまざまな追加的な用途で使用可能である。例えば、処置は、皮膚、粘膜組織(例えば、口の粘膜、胃の粘膜)、眼の組織(例えば、結膜、角膜、網膜組)、および腺組織(例えば、涙腺、前立腺)を含む組織に適用可能であるが、これらに限定されるものではない。一般的な事項として、本方法を使用して、障害(例えば、炎症部、潰瘍)、にきび、酒さ、むだ毛、望まない血管、肥大成長(例えば、腫瘍、ポリープ、良性前立腺過形成)、肥大成長(例えば、良性前立腺肥大)、新血管新生(例えば、腫瘍関連血管形成)、動脈または静脈異常(例えば、血管腫、火炎状母斑)、および、望まない着色(例えば、着色したあざ、入れ墨)を含む状態を処置可能であるが、これらに限定されるものではない。
【0127】
ある態様では、本発明は、熱小島の格子を生成することによって組織を処置する方法を提供する。これらの方法は、例えば、治療薬および美容薬を含むさまざまな薬品に対して角質層の浸透性を増加させる方法、および、治療上の高熱を生成するための方法に使用可能である。
【0128】
1つの実施形態では、組織の小島を35〜100℃に加熱することによって熱小島の格子が生成され、角質層の浸透性を可逆的に増加させる。角質層および、存在する場合には、透明層の細胞を取り囲む結晶性脂質の細胞外基質の溶解から、浸透性の増加が起こる。この基質が溶解すると(すなわち、その結晶構造の消失)、角質層は皮膚表面上の分子に対してより浸透性になり、いくつかの分子が内部に拡散することを可能にする。層の温度が通常の範囲(すなわち、29〜37℃)に戻ると、細胞間基質が再結晶し、角質層はより浸透性がなくなり、角質層の下に拡散していたどのような分子もそこに滞留し、周囲の
組織中にさらに拡散または全身の循環に入る。このように、本明細書に使用されるように、脂質の細胞間基質は再結晶するため、浸透性の増加は「可逆的」である。別の実施形態では、浸透性の増加は処置が中止された後1秒から2時間以内で反転する。このように、ある実施形態では、浸透性の増加は、EMR処置が中止された後15分、30分、1時間または2時間以内で反転する。
【0129】
これの実施形態では、熱小島は角質層および透明層を通って、または、ほとんど通って延在可能な浸透経路を画定し、化合物、例えば、皮膚の外部表面に塗布された美容または治療薬が効率的に角質層/透明層を浸透できるようになる。この浸透は、表面上であり角質層の直ぐ下または角質層内に留まり得る、または、表皮または真皮の内部層の中により深く入り得る、または、真皮中の血管新生を介して血流中にも入り得る。これにより、美容または治療薬の表皮および真皮への経皮送達が局部的に可能になる。化合物が処置部位から拡散散逸する範囲では、化合物の局部的な送達は増大可能である(例えば、接合領域への送達)。さらに、化合物が真皮の脈管構造に到達する範囲では、送達は全身的となり得る。
【0130】
ある実施形態では、化合物は治療薬である。治療薬の例には、制限はないが、ホルモン、ステロイド、非ステロイド抗炎症薬、抗腫瘍薬、抗ヒスタミン、および麻酔薬を含む。具体的な例には、制限はないが、インスリンおよびエストロゲン等のホルモン、プレドニゾロンおよびロテプレドノール等のステロイド、ケトロラクおよびジクロフェナク等の非ステロイド抗炎症薬、メトトレキサート等の抗腫瘍薬、ならびに、ヒスタミンH1拮抗薬、クロルフェニラミン、ピリラミン、メピリラミン、エメダスチン、レボカルバスチン、およびリドカイン等の抗ヒスタミン薬を含む。
【0131】
他の実施形態では、化合物は美容薬である。美容薬の例には、制限はないが、着色剤(自然発生的および合成発色団、染料、色素、インクを含む)、反射剤(光散乱化合物を含む)、および光保護剤(日焼け止め剤を含む)を含む。そのような美容薬は、異なった色の着色剤または反射剤を加えることによって、皮膚に色を加える、または既存の色(例えば、あざ、着色した損傷、入れ墨)を隠すために使用される。本発明は、(a)薬品が角質層内に含有され、にじまない、こすって落ちない、または洗って落ちない、および(b)薬品が角質層内に留まり、角質層の細胞が基底層から通常の成長過程を通じて置換される(例えば、約21〜28日)ために、美容薬を適用する改良された方法を提供する。このように、美容薬の1回の適用が数週間持続し、これは、毎日適用しなければならない美容品に対し利点である。逆に、美容薬の適用が数週間に限定され、これは、光退色または組織切除によって取り除かなければ、通常永久である入れ墨に対して利点である。1つの実施形態では、所望する一時的な入れ墨のための着色剤が皮膚に適用可能であり(例えば、フィルム、ブラシ、プリントによって)、角質層をEMR処置して浸透性を増加させ、着色剤が皮膚に拡散し一時的な入れ墨を生成する。他の実施形態では、色素を送達することによって、人工の日焼けが生成可能であり、逆に、日焼け止めを皮膚中に送達するすることによって日焼けが防止可能である。
【0132】
角質層の浸透性の増加により、連続する加熱面域ではなく、むしろ、熱小島(または損傷小島)の格子を使用することによって、患者にとって無痛または痛みを少なくする。全体の面域および皮膚の深さが加熱されないため、40〜43℃の等温線は、真皮中深くでなく、表皮/真皮の境界付近で終結し得る。従って、真皮乳頭層中に見られる神経末端は、痛み反応に関連する40〜43℃の温度に曝露されない。その結果、角質層が40〜43℃より著しく高い温度に曝露されたとしても痛みを伴わずに、熱小島によって画定される拡張した浸透経路が生成可能である。
【0133】
他の態様では、本発明は、組織に不可逆的な構造的損傷を引き起こさずに、または、そ
のような損傷を最小化しつつ、角質層(SC)中に浸透性が増加した多くの領域の生成に関与する。可逆的な浸透性は、限られた時間だけ角質層中に局所的な浸透性を生成することによって達成される。一般に、この限られた時間は、EMRエネルギの適用に対応する。EMRエネルギの適用後、角質層は閉じる。別法として、EMRエネルギの適用後の一定時間、浸透性が残存可能である浸透性のための時間は、感染の危険性を防止するために限られた時間内に達成されるべきである。本発明の原理を使用して、そのような処置が安全かつ無痛で実施可能であり、従って、例えば、一般大衆の人、すなわち、特別な訓練していない個人によって実施可能である。そのような1つの用途は、在宅での適用の間に、局所的な美容組成物または医薬品の送達を拡張することである。
【0134】
本発明によると、さらに下で完全に説明されるように、皮膚表面から組織の深い層にまで渡る、または表面下の層中に全体が存在する熱小島が生成可能である。そのような熱小島は、下に説明するように、熱的に拡張した光生体調節、光生体刺激、および光生体サスペンジョン等の用途に、ならびに損傷小島の生成に対して使用可能である。
【0135】
ある態様では、本発明は、損傷小島の格子を生成することによって組織を処置する方法を提供する。これらの方法は、例えば、特に、皮膚の若返り、入れ墨除去(例えば、インク粒子を含有する細胞を死滅させる、入れ墨インク粒子を切除する)、にきび処置(例えば、皮脂腺を損傷または破壊する、細菌を死滅させる、炎症を減少させる)、着色した障害の処置、血管障害の処置、火炎状母斑(「ポートワイン母斑」)除去(例えば、病理学的な脈管構造の減少)に使用可能である。損傷小島の格子は、また、角質層の浸透性を増加させるために使用可能である。そのような損傷小島の快復すなわち治癒のための時間は、損傷小島の大きさ、および格子の充填係数を変化させることによって制御可能である。
【0136】
ある実施形態では、本発明は、組織の損傷制御に基づき組織改造の方法を提供する。組織改造の1つの実施形態は皮膚の「若返り」であり、これは、(a)皮膚の色素異常(すなわち、不均一着色)の減少、(b)毛細管拡張症(すなわち、血管異常)の減少、(c)皮膚の肌合いの改善(例えば、皺および小皺の減少、皮膚の平滑化、毛穴大きさの減少)、および(d)皮膚の張力特性の改善(例えば、弾力性の増加、持ち上げ、引き締め)の1つまたは複数が関与する複雑な過程である。皮膚若返りのために使用される技術は、切除性、非切除性、および断片的(本発明の小島の格子を含む)の3つの種類に大きく分割できる。
【0137】
切除性の表面付け替えアプローチでは、表皮の全厚さおよび上部真皮部分が切除および/または凝固される。切除性の技術は、一般に、より明白な臨床結果をもたらすが、術後回復時間と介護、不快度、および感染症の危険性がかなり伴う。例えば、レーザ皮膚付け替え(例えば、吸収係数約900cm−1のCOレーザを使用して、または、吸収係数約13,000cm−1のEr:YAGレーザを使用して)は数週間の快復時間が必要であり、その後、処置された皮膚が紅斑性である期間が最大数ヶ月となる。
【0138】
非切除性アプローチでは、表皮が無傷のまま残されて、凝固領域が組織中に深く移動する(例えば、吸収係数5〜25cm−1のレーザを使用する)。非切除性の技術は、術後回復時間と介護、不快度、および染症の危険性がかなり少ない。
【0139】
断片的アプローチも、非切除性であるが、全ての処置面域すなわち損傷領域を凝固させる代わりに、処置面域の部分的すなわち断片的損傷を伴う。すなわち、損傷小島の格子が処置面域内に生成される。
【0140】
本発明は、皮膚若返りの方法を提供し、熱および損傷小島が真皮および下皮中に比較的深く存在し得る(例えば、皮膚表面からの深さ>500μm)。表皮の損傷を防止するた
めに、表皮の能動的または受動的な冷却が採用してよい。
【0141】
損傷小島の格子の生成は、(a)上昇した温度に曝されたコラーゲン小繊維の収縮(直接効果)、または(b)真皮および下皮中の局部化された面域の凝固(直接短期効果)の結果として、皮膚の持ち上げまたは引き締めをもたらす。
【0142】
損傷小島の格子の生成は、真皮および下皮中の局部化された面域の凝固の結果として、より平滑な皮膚の肌合いをもたらす(直接短期効果)。この技術は、真皮または表皮以外の組織または器官をテクスチャリングのために使用可能である(例えば、唇増大)。
【0143】
損傷小島の格子の生成は、熱ストレスまたは熱ショックに対する組織の治癒反応の結果として、コラーゲンの生成促進をもたらす(中長期効果)。損傷小島の格子の生成は、熱ストレスまたは熱ショックに対する組織の治癒反応の結果として、ヒアルロン酸の生成促進をもたらす(短中期効果)。定期的な間隔で処置を繰り返すことにより、ヒアルロン酸のレベルを維持し、その結果、向上した皮膚の外観を維持できる。
【0144】
損傷小島の格子の生成は、インク粒子を含有する細胞を死滅させることによって、入れ墨を除去するために使用可能である(一般に、上部真皮の細胞)。これらの細胞を死滅させると、入れ墨インクは通常の清掃過程によって組織部位から消失する。別法として、または、追加で、損傷小島の格子は、EMR処置の波長を選択し入れ墨インクによるEMRエネルギの選択的な吸収を引き起こすことによって、入れ墨を除去するために使用可能である。ある実施形態では、入射パルスのパルス幅は、インク粒子の熱的緩和時間に一致するように選択される。入れ墨インク粒子によるEMRエネルギの吸収は、細胞が加熱され死滅することを引き起こし得る、インク粒子が光退色を受けるまたは小さな分子に分解され通常の過程によって除去され得る、それ以外では、インクの破壊を引き起こす。
【0145】
損傷小島の格子の生成は、組織の小島を100℃より高い温度に加熱し角質層中に小さな孔を生成することによって、角質層の浸透性を増加させるために使用可能である。このように、これらの実施形態では、EMR処置は、結晶性細胞間脂質構造または細胞を含み、角質層の一部を、切除する、気化させる、それ以外では、損傷させる、または除去して、角質層を通して損傷小島の格子を形成する。この方法は、上に説明した熱小島方法よりも角質層の浸透性を長期間増加させるが、細胞の層が基底層から通常の成長過程を通じて置換される(例えば、約21〜28日)まで、損傷面域または孔は角質層中に留まり得るためである。
【0146】
損傷小島の格子の生成は、EMR処置の波長を選択し皮脂によるEMRエネルギの選択的な吸収を引き起こすことによって、または、皮脂腺を格子の標的とし、皮脂腺を選択的に損傷または破壊することによって、にきびを処置するために使用可能である。EMR処置は、にきび炎症部内の細菌を標的とすることも可能である。
【0147】
損傷小島の格子の生成は、収縮および傷跡組織の引き締めを誘発して、異常な接続組織を正常な接続組織に置換することによって肥大傷跡を処置可能である。
【0148】
損傷小島の格子の生成は、選択的にエクリン腺を標的とし、これによって、エクリン汗の生成を減少させる、または、その組成を変化させることによって、体臭を処置するために使用可能である。
【0149】
傷小島の格子の生成は、選択的に病理組織を標的として細胞を死滅させる、または、組織の剥離を引き起こすことによって、いぼ、および、こぶを処置するために使用可能である。病理組織は、通常の生物学的な過程によって正常な組織に置換可能である。
【0150】
損傷小島の格子の生成は、適当な波長のEMRを使用して選択的に乾癬斑を標的とし、これによって、斑の生成を停止または反転させることによって、乾癬を処置するために使用可能である。病理組織は、通常の生物学的な過程によって正常な組織に置換可能である。
【0151】
損傷小島の格子の生成は、実質的に体積を増加させずに傷または火傷の縁部を増加させることによって、傷または火傷(凍傷を含む)の治癒のために必要な時間を減少させるために使用可能である。
【0152】
損傷小島の格子の生成は、真皮/下皮境界での機械的な応力分布を変化させることによって、セリュライトを減少させるために使用可能である。別法として、または追加で、損傷小島の格子は、小島内部の脂肪細胞を加熱および損傷させることによって、下皮(皮下組織)の脂肪を減少させるために使用可能である。
【0153】
損傷小島の格子の生成は、皮膚中の毛包を損傷小島の格子の標的とすることによって、体毛の量または存在を減少させるために使用可能である。本方法は、体毛または毛包中に存在するメラミンまたは他の発色団を選択的に標的とする、または、毛包中の水を非選択的に標的とすることが可能である。
【0154】
損傷小島の格子の生成は、内部上皮を損傷させるまたは破壊して、良性の前立腺過形成または肥大、または再狭窄の状態を処置するために使用可能である。本方法は、組織界面に損傷面域を生成することによって、組織を互いに融合させるためにも使用可能である。
【0155】
損傷小島の格子の生成は、組織または他の構造の切除に起因する、または、組織の治癒過程に起因する識別模様を組織中に生成するために使用可能である。例えば、模様は、損傷小島の格子で体毛を「エッチング」することによって、毛幹中に生成可能である。別法として、真皮の、表皮の、または他の上皮の組織が治癒過程を使用して模様付け可能であり、改変された外観で画定された面域を生成する。
【0156】
ある態様では、本発明は、光化学小島の格子を形成することによって組織を処置する方法を提供する。これらの方法は、例えば、EMRに依存する生化学反応(例えば、メラミン生成すなわち「日焼け」)、および光力学療法(例えば、白斑または低色素症に対するソラレン療法)を活性化するために使用可能である。例えば、白斑、白色伸展線(すなわち、線条白質)、および低色素症は、光力学薬品を用いるまたは用いないで、処置された面域中に着色の生成を増加させる光化学小島を生成することによって、処置可能である。特に、基底層を標的にすることによって、メラニン形成細胞の増殖および分化が促進可能である。
【0157】
等価物
一定の実施形態のみ説明してきたが、添付の請求項によって定義される趣旨と範囲から逸脱することなく、形態および細部にさまざまな変更を行い得ることが、当業者によって理解されるだろう。当業者は、本明細書に具体的に説明された特定の実施形態に対し多くの等価物を認識する、または単なる日常の実験を使用して確認可能だろう。そのような等価物は、添付の請求項の範囲の中に包含されることを意図する。
【0158】
参照および定義
本明細書で参照した特許、科学および医学刊行物は、本発明がなされた時点で当業者が入手可能であった知識を確立する。本明細書で引用した発行済み米国特許、公開および係属中の特許出願、および他の参照物の開示の全てを、これによって、本明細書に援用する

【0159】
本明細書で使用した全ての技術的および科学的用語は、下に定義しない限りは、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有することを意図する。本明細書で採用した技術に対する参照は、当業者にとって明白であろう、後で開発された技術、または同等物の置換物、これらの技術に関する変形を含み、当分野で一般に理解されるような技術を参照している。さらに、より明瞭かつ簡潔に特許請求する主題を記述するために、明細書および添付の請求項の中で使用される一定の用語に対して以下の定義を行う。
【0160】
数値範囲
本明細書で使用するように、変数に対する数値範囲の列挙は、当該範囲の境界を含み、当該範囲内の任意の値を使用して実施形態の実施が可能であると伝えることを意図する。従って、本質的に離散する変数は、当該範囲の両端を含み、当該数値範囲内の任意の整数値に等しくてよい。同様に、本質的に連続する変数は、当該範囲の両端を含み、当該数値範囲内の任意の実数値に等しくてよい。例として、制限はないが、0と2との間の値を有するとして記載された変数は、変数が本質的に離散数ならば、0、1、または2を取り得るし、変数が本質的に連続数ならば、0.0、0.1、0.01、0.001、または、≧0かつ≦2の任意の他の実数値を取り得る。最後に、変数は、当該引用範囲内の任意の部分範囲の値を含み、当該範囲の複数の値を取り得る。
【0161】
本明細書に使用するように、具体的に指定しない限り、用語「または」は、「および/または」の意味を包含し、「または/いずれか」の排他的な意味ではない。
【0162】
本明細書に使用するように、EMRは約200nmと10mmとの間の範囲の波長を含む。光学放射、すなわち、約200nmと100μmとの間の範囲内の波長を有するスペクトルのEMRが、好ましくは、上に説明した実施形態において採用されるが、同様に上で説明したように、多くの他の波長のエネルギが単独または組み合わせで使用可能である。用語「狭帯域」は、単一のピークを、または各ピークのFWHM(半値全幅)が典型的に各自のピークの中心波長の10%を超えない複数のピークを有する電磁放射スペクトルを指す。実際のスペクトルは、また、処置のさらなる利点をもたらす、または処置に全く効果がない、広帯域成分を含んでもよい。さらに、光学の用語は(「光学放射」の用語以外の用語中で使用される場合)EMRスペクトル全体に適用する。例えば、本明細書で使用するように、用語「光学経路」は、「光学放射」を除き、EMR放射に適する経路である。
【0163】
しかし、他のエネルギもまた、同様な方法で処置小島を形成するために使用してよいことを、留意すべきである。例えば、超音波、光音響、および他のエネルギ発生源等の非EMR発生源もまた、処置小島を形成するために使用してよい。このように、本明細書で説明した実施形態は、小島を形成するためのEMRの使用に関して説明したが、小島を形成するための他のエネルギ形態も本発明および請求項の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者によって組織の断片的処置を実行するための手持ち光美容装置であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置されたEMR発生源と、
前記光発生源に光学的に結合した前記ハウジング内のEMR送達経路とを具備し、
前記EMR送達経路が前記EMR発生源によって発生したEMRを前記組織の処置面域内に位置する複数の離散する位置に適用するように構成され、前記複数の離散する位置の総面積が前記処置面積よりも小さく、
前記装置が前記ハウジング内または前記ハウジング周りに自己充足式であり、実質的に前記装置全体が前記利用者によって運転中に手持ち可能であるように構成された、手持ち光美容装置。
【請求項2】
前記複数の離散する位置の前記総面積が前記処置面積の約1パーセントと90パーセントとの間である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記EMR発生源と電気的に連通し、前記EMR発生源に電力を供給するように構成された電気コードをさらに具備する請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ハウジングに結合し、かつ前記EMR発生源と電気的に連通する電源をさらに具備し、前記電源が前記EMR発生源に電力を供給するように構成された、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記電源が電池を有する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記離散する位置が所定または無作為パタンに従って分布する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記EMR送達経路が光学走査装置を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記走査装置が、EMR発生源からのEMRを受けるようになされた導入口と、EMRが通過し前記位置に送達可能な導出口とを有する少なくとも1つの光学ファイバを有する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記走査装置は、前記ファイバの前記導出口に結合し前記導出口を移動してEMRを前記位置に向けるための走査機構をさらに有する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記走査機構は、前記ファイバの前記導出口に光学的に結合し、前記EMRを前記位置に向けるための1つまたは複数の回転可能な鏡をさらに有する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記走査機構が少なくとも1つの圧電走査要素を有する、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記圧電走査要素が調節可能な多層圧電素子である、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記導出口を通過した前記EMRを整形するための前記導出口に結合した光学系をさらに有する、請求項8に記載の装置。
【請求項14】
前記ファイバの導出口の動作に実質的に同期して前記EMR発生源を制御し、EMRを前記位置に送達するための制御装置をさらに有する、請求項8に記載の装置。
【請求項15】
前記制御装置が前記EMR発生源を選択的に作動させる、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記制御装置が、前記発生源から放射されたEMRが前記ファイバの中に入ることを選択的に遮断する、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記発生源からの光を前記ファイバの中に向けるために、前記EMR発生源と前記光学ファイバとの間に配置された光学カプラをさらに有する、請求項8に記載の装置。
【請求項18】
前記カプラが、前記発生源からのEMRを前記ファイバの中に焦点形成させる1つまたは複数の焦点形成光学要素を有する、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記1つまたは複数の焦点形成要素は、約0.5から約3までの範囲内の開口数で前記EMRを前記ファイバの中に焦点形成させる、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記発生源によって発生したEMRエネルギの少なくとも80%が前記光学ファイバの中に結合するように、前記EMR発生源と前記光学ファイバの前記導入口とが位置合わせされた、請求項8に記載の装置。
【請求項21】
前記カプラが、選択されたEMR発生源と選択された光学ファイバとを選択的に接続するための接続器を有する、請求項17に記載の装置。
【請求項22】
前記装置の1つまたは複数の運転パラメータを感知するための1つまたは複数のセンサを有する安全システムをさらに有する、請求項1に記載の装置。
【請求項23】
前記センサの少なくとも1つが、前記装置のEMRを放射する端部と皮膚との間の接触を感知するための接触センサを有する、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記接触センサが最小接触閾値より低い接触値を感知すると、前記安全機構が皮膚への光の送達を禁止する、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記最小接触閾値が、前記EMRを放射する端部の面積の約70%より大きな接触面積である、請求項23に記載の装置。
【請求項26】
前記接触センサが、導電率センサ、圧電センサ、および機械的センサを有する群から選択された、請求項23に記載の装置。
【請求項27】
前記安全システムが、前記装置のEMRを放射する端部が接触する皮膚位置に所定の閾値を超えるEMRエネルギを送達することを禁止する、請求項22に記載の装置。
【請求項28】
処置セッション中に、前記安全システムが、皮膚に所定の閾値を超えるEMRを送達することを禁止する、請求項22に記載の装置。
【請求項29】
処置セッションが前記装置の作動に続く一時的な期間を有する、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記安全システムは皮膚位置に適用されるEMRエネルギ量を追跡する制御装置を含み、前記エネルギが前記閾値に達すると、前記制御装置は皮膚にEMRを送達することを禁止する、請求項28に記載の装置。
【請求項31】
前記制御装置が、前記発生源を不作動として皮膚にEMRを送達することを禁止するよ
うに構成された、請求項28に記載の装置。
【請求項32】
前記走査装置が少なくとも1つのステップモータを有する、請求項7に記載の装置。
【請求項33】
前記EMR発生源が、約300nmから約11,000nmまでの範囲内の1つまたは複数の波長を伴うEMRを発生させる、請求項1に記載の装置。
【請求項34】
前記EMR発生源がコヒーレントな光発生源である、請求項1に記載の装置。
【請求項35】
前記EMR発生源が単一のダイオードレーザである、請求項1に記載の装置。
【請求項36】
前記EMR発生源が複数のダイオードレーザを有する、請求項31に記載の装置。
【請求項37】
前記光発生源が少なくとも1つのダイオードレーザバーである、請求項1に記載の装置。
【請求項38】
前記光発生源が非コヒーレントな光発生源である、請求項1に記載の装置。
【請求項39】
前記コヒーレントな光発生源が、発光ダイオード(LED)、アークランプ、フラッシュランプ、蛍光灯、ハロゲンランプ、およびハライドランプからなる群から選択可能な、請求項38に記載の装置。
【請求項40】
前記ハウジングが少なくとも2つの分離可能なモジュールを有する、分離モジュールの1つが前記EMR発生源を収容し、もう1つが前記EMR送達機構を収容する、請求項1に記載の装置。
【請求項41】
前記モジュールが、取り外し可能かつ再配置可能に互いに係合するための連結接続器を有する、請求項40に記載の装置。
【請求項42】
EMR発生源の型を感知し前記走査装置に前記型を指示可能なセンサシステムをさらに有する、請求項40に記載の装置。
【請求項43】
前記EMR発生源に熱的に結合した冷却機構をさらに有する、請求項1に記載の装置。
【請求項44】
前記冷却機構が、前記EMR発生源からの熱を除去するための熱電気冷却器を有する、請求項43に記載の装置。
【請求項45】
前記冷却機構が、前記EMR発生源からの熱を除去するための熱質量を有する、請求項43に記載の装置。
【請求項46】
前記ハウジング中に配置された再充電可能な電源をさらに有する、請求項1記載の装置。
【請求項47】
前記ハウジングに結合するようになされたドッキングステーションをさらに有し、前記ドッキングステーションが前記電源を再充電するための回路構成を有する、請求項1記載の装置。
【請求項48】
前記EMR送達経路が複数の微少レンズを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項49】
離散する位置が処置を必要とする皮膚部分内に包含される、請求項1に記載の装置。
【請求項50】
前記ハウジングに結合したローション分配器をさらに有する、請求項1記載の装置。
【請求項51】
近位の端部から遠位の端部まで延在する手持ち部分と、
前記手持ち部分の中に配置されたEMR発生源と、
複数のEMR送達モジュールであって、前記モジュールのそれぞれが、前記手持ち部分の前記遠位の端部に取り外し可能かつ再配置可能に結合するようになされており、前記発生源からの光を複数の離散分布する皮膚位置に送達するためのモジュールとを具備し、
前記光送達モジュールのそれぞれが異なるパタンの前記離散する位置を形成する、光美容システム。
【請求項52】
前記手持ち部分および前記モジュールが、取り外し可能かつ再配置可能に互いに係合するための連結接続器を有し、前記手持ち部分とそれぞれのモジュールとの組み合わせが手持ち装置を形成する、請求項51記載の装置。
【請求項53】
前記モジュールによって形成される前記パタンは面積が変化する、請求項51記載のシステム。
【請求項54】
前記モジュールによって形成される前記パタンは間隔が変化する、請求項51記載のシステム。
【請求項55】
前記モジュールによって形成される前記パタンは形状が変化する、請求項51記載のシステム。
【請求項56】
前記モジュールによって形成される前記パタンは焦点深さが変化する、請求項51記載のシステム。
【請求項57】
前記近位の端部がドッキングステーションと結合可能な、請求項51記載のシステム。
【請求項58】
前記手持ち部分が電源をさらに有する、請求項51記載のシステム。
【請求項59】
前記近位の端部がドッキングステーションと結合可能で、前記ドッキングステーションが前記電源を再充電するための回路構成を有する、請求項58記載のシステム。
【請求項60】
近位の端部から遠位の端部まで延在するハウジングと、
前記ハウジングの中に配置され、前記ハウジングの前記遠位の端部を通して光を複数の分離離散する皮膚位置に向けるように構成された複数の光発生源と、
前記ハウジングに装着され、前記遠位の部分の皮膚に対する移動速度を感知する動作センサと、
前記動作センサおよび前記光発生源に連通し、前記発生源からの光を複数の分離離散する皮膚位置に向けるように、前記速度に基づいて前記発生源を制御する制御装置とを具備する、光美容装置。
【請求項61】
前記制御装置が前記発生源を選択的に作動制御可能な、請求項60に記載の光美容装置。
【請求項62】
前記発生源がパルス性であり、前記制御装置が前記パルスの繰り返し速度を制御する、請求項60に記載の光美容装置。
【請求項63】
処置日と処置日との間が0から7日までの間隔で、1日当たり1と3回の間で、請求項
1記載の装置を定期的に適用することを有する、向上した皮膚外観を維持する方法。
【請求項64】
手持ち光美容装置を使用して組織の断片的処置を実行するための方法であって、
第1の処置中に組織の標的面域内の複数の分離した処置スポットをEMRで照射するステップであって、前記複数の処理スポットの総面積が前記標的面域の面積よりも小さい、ステップと、
第2の処置中に組織の前記標的面域内の第2の複数の分離した処理スポットをEMRで照射するステップであって、前記第2の複数の処置スポットの総面積が前記標的面域の面積よりも小さい、ステップとを有し、
前記第2の照射するステップは前記第1の照射するステップの後に起こり、少なくとも前記第2の照射するステップは、自己充足式の手持ち光美容装置を使用して実行される、方法。
【請求項65】
前記照射するステップが1日当たり1と3回の間で繰り返される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
処置日と処置日との間に0と7日の間の間隔が存在する、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記照射するステップが、1処置スポット当たり約2mJから30mJまでの範囲内のEMR放射を送達するステップを有する、請求項63に記載の方法。
【請求項68】
前記照射するステップが、1処置スポット当たり約4mJから10mJまでの範囲内のEMR放射を送達するステップを有する、請求項63に記載の方法。
【請求項69】
前記第1と第2の処置が、前記複数の処置スポットを1処置当たり2から10回の間で照射するステップをさらに有する、請求項63に記載の方法。
【請求項70】
前記照射するステップが、照射処置中に約100/cmから約700/cmまでの範囲の処置スポット密度を生成するステップを有する、請求項63に記載の方法。
【請求項71】
前記方法が、照射ステップと照射ステップとの間に照射強度を調節するステップをさらに有する、請求項64に記載の方法。
【請求項72】
前記方法が、処置日と処置日の間に専門家のEMR処置をさらに有する、請求項66に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図14B】
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【図14C】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【公表番号】特表2009−542330(P2009−542330A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518254(P2009−518254)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/014949
【国際公開番号】WO2008/002625
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(507185406)パロマー・メデイカル・テクノロジーズ・インコーポレーテツド (5)
【Fターム(参考)】