説明

手持ち式糸撚り器

【課題】撚り糸をつくる過程に興味を惹起するような遊び的な要素を備えた簡便な手持ち式糸撚り器を提供すること。
【解決手段】ハンドル3を備えたホルダー1に、内歯車14が設けられた駆動歯車部材13の駆動軸15を回転自由に設けると共に当該駆動軸の先端部にホイール22を固定し、表裏両側に爪歯車30,31が設けられた爪車28を該駆動軸15の基部15aに回転可能に設け、その爪車28に固定されたケース35に、小歯車45を備えた複数の糸保持軸41を回転自由に支持すると共に各小歯車45を内歯車14に噛合するように設け、ホイール22を一方向へ転動させることによって糸保持軸41を自転させて1本の糸に夫々撚りをかけ、ホイール22を一方向と反対方向へ転動させることによって糸保持軸41を公転させて複数本の糸を1本の糸に寄り合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の糸を撚り合わせて1本の撚り糸をつくる手持ち式糸撚り器に関する。
【背景技術】
【0002】
手芸等に使用される従来の糸撚り器は、糸撚り器本体をテーブルに固定した状態にて、ハンドルを回転操作して糸の一端が固定された複数の糸保持軸を自転、公転させることにより、複数本の糸を撚り合わせて1本の撚り糸をつくる構造とされている。
【0003】
特開平10−8333号公報には、複数個の糸駒がセットされた回転盤をモータの駆動により回転させながら、各糸駒から繰り出された糸を回転盤に設けられた糸通し穴に導いて1本の糸に撚り合わせる糸撚り機構と、撚り合わされた糸をコーンに順次巻き取っていく巻き取り機構とを備えた電動式糸撚り装置が開示されている。
【0004】
前者の糸撚り器は、撚り糸をつくる機能自体に問題はないが、撚り糸をつくる過程に興味を惹起するような遊び的な要素を備えていないので、手芸に関して初級レベルの者にとって面白みに欠ける点を否めない。
【0005】
後者の電動式糸撚り装置は、糸撚り作業と糸の小分け作業を選択にできる等の本格的な撚り糸をつくることができる複雑な構造とされており、趣味的に手芸をたしなむ者、初級レベルの者にとってはそこまでの高性能を必要としていないと言えよう。
【特許文献1】特開平10−8333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、撚り糸をつくる過程に興味を惹起するような遊び的な要素を備えた簡便な手持ち式糸撚り器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために請求項1に記載した発明は、ハンドルを備えたホルダーに、内歯車が設けられた駆動歯車部材の中心に突設された駆動軸を回転自由に設けると共に当該駆動軸の先端部にホイールを固定し、表裏両側に爪歯車が設けられた爪車を該駆動軸の基部に回転可能に設け、その爪車に固定されたケースに、糸の一端を固定可能な係止片を先端部に設けると共に基部に小歯車を備えた複数の糸保持軸を回転自由に支持させると共に各小歯車を前記内歯車に噛合するように設け、前記ホルダーに取り付けた爪が前記表側の爪歯車に係合することにより当該爪車の一方向への回転を阻止すると共に前記駆動歯車部材の一方向の回転を許容するように設け、前記駆動歯車部材に取り付けた爪が前記裏側の爪歯車に係合することにより前記駆動歯車部材と爪車とを前記一方向と反対の方向へ一緒に回転するように設け、前記ホイールを前記一方向へ転動させることによって前記糸保持軸を自転させて1本の糸に夫々撚りをかけ、前記ホイールを前記一方向と反対方向へ転動させることによって前記糸保持軸を公転させて複数本の糸を1本の糸に寄り合わせるように構成したことを特徴とする。
【0008】
同様の目的を達成するために請求項2に記載した発明は、請求項1に記載の手持ち式糸撚り器において、前記糸保持軸の係止片は、軸部と一体に設けられていて、その軸部との間に形成される楔状の隙間に糸の一端を係止することにより当該糸を固定可能に設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
同様の目的を達成するために請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載の手持ち式糸撚り器において、前記ホイールは、ホイール本体にゴム製タイヤが装着されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
(請求項1の発明)
この手持ち式糸撚り器は、テーブル等の上でホイールを一方向(前進方向)へ転動させることにより糸保持軸を自転させて1本の糸に夫々撚りをかけ、ホイールを反対の方向(後退方向)へ転動させることによって糸保持軸を公転させて複数本の糸を1本の糸に撚り合わせる簡素な構造であり、撚り糸をつくる過程に興味を惹起するような遊び的な要素を備えている。
【0011】
(請求項2の発明)
この手持ち式糸撚り器は、糸保持軸の係止片に糸の一端を巻きつけてから楔状の隙間に係止することにより当該糸を固定可能に設けており、糸の固定や取り外しが行ない易い。
【0012】
(請求項3の発明)
この手持ち式糸撚り器は、ホイール本体にゴム製タイヤを装着しているので、ホイールをテーブル等の上で転動させるときに滑りにくく回転が安定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の最良の形態例を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る手持ち式糸撚り器の斜視図、図2は同、要部の縦断側面図、図3は同、分解斜視図、図4は爪車と駆動歯車部材の斜視図、図5は図2のB−B線断面図、図6は駆動歯車部材の内歯車に糸保持軸の小歯車が噛合した状態を示す斜視図、図7は糸の他端を保持する保持片の斜視図である。
【0014】
図1に示す本発明に係る手持ち式糸撚り器Aの概要については、テーブル等の上でホイール22を一方向(前進方向)へ転動させることにより各糸保持軸41を自転させて夫々固定された1本の糸に撚りをかけ、ついで、ホイール22を反対の方向(後退方向)へ転動させることによって糸保持軸41を公転させて複数本、この実施形態では3本の糸を1本の糸に撚り合わせる構造とされている。
【0015】
手持ち式糸撚り器Aのプラスチック製ホルダー1は、図2に示すように、中心に段付穴が形成された軸受け部2の側部2aに一文字形のハンドル3を一体に設けている。その軸受け部2の一端側に一体状に形成されたフランジ2bの内面には、鉤形状の爪8を装着するピン5と同爪8の基部に一端が固着された薄板状のバネ片9の他端を係止する係止ピン6とが突設されている(図3)。11はホルダー1の段付穴の大径穴4bに嵌着されたブッシュである。
【0016】
13は円盤部13aの正面に内歯車14を設け、その円盤部13aの裏面中心に駆動軸15を突設したプラスチック製の駆動歯車部材である。また、円盤部13aの裏面には、鉤形状の爪19を装着するピン16と同爪19の基部に一端が固着された薄板状のバネ片20の他端を係止する係止ピン17とが突設されている(図4)。図2に示すように、駆動軸15は、ホルダー1の段付穴の小径部分である軸穴4aに遊嵌されて回転自由に設けられ、その先端部15aにホイール22のホイール本体23の中心に設けたボス穴23bが嵌合されてボルト26により両者を締め付け固定している。ボス23aは前記ブッシュ11内に回転自由に遊嵌されている。24はホイール本体22に装着されたゴム製タイヤである。
【0017】
28は中心に形成された軸穴29を中心として表側28aと裏側28bの両側に爪歯車30,31が夫々設けられたプラスチック製の爪車である(図3、図4)。この爪車28は、爪歯車30を前記爪8に、爪歯車31を前記爪19に夫々係合させた状態で前記駆動軸15の大径の基部15aに回転可能に設けられている。
【0018】
しかして、ホルダー1に取り付けた爪8が表側28aの爪歯車30に係合することにより爪車28の一方向への回転を阻止すると共に駆動歯車部材13の一方向の回転を許容するように設け(図4)、駆動歯車部材13に取り付けた爪19が裏側28bの爪歯車31に係合することにより駆動歯車部材13と爪車28とを前記一方向と反対の方向へ一緒に回転するように設けられる(図5)。
【0019】
35は爪車28に被着するように固定された椀形状のケースである。このケース35は、底部35aに3個の軸穴36を等角度間隔に設け、外側部35bに2個の取り付け穴37を設けている(図3)。39は取り付け穴37に通してから爪車28に螺着されたボルトである。
【0020】
41は糸の一端を固定可能な逆三角形状の係止片43を半円形状の先端部42aに一体に設けると共に基部42bに小歯車45を備えた複数の、この実施形態例では3個の糸保持軸である(図3)。図6に示すように、その係止片43は軸部42と一体に設けられており、その軸部42の平坦面42cとの間に形成される楔状の隙間44,44に糸の一端を係止することにより当該糸を固定可能に設けられている。これら糸保持軸41は、図2に示すように、ケース35の軸穴36に軸部42を遊嵌して回転自由に支持されると共に各小歯車45を前記内歯車14に噛合するように設けられている。
【0021】
以上により、テーブル等の上でホイール22を一方向(前進方向)へ転動させることにより糸保持軸41を自転させて1本の糸に夫々撚りをかけ、ホイール22を一方向と反対方向(後退方向)へ転動させることによって糸保持軸41を公転させて3本の糸を1本の糸に撚り合わせる本発明に係る手持ち式糸撚り器Aが構成される。
【0022】
手持ち式糸撚り器Aの糸保持軸41により固定される糸の他端は、図7に示す保持片50により保持する。この保持片50は、指通し穴52が設けられた厚板部51の一方の面に3個の逆三角形状の係止片53が並設されている。それら係止片53は、一方の面との間に形成される楔状の隙間54,54に糸の他端を係止することにより当該糸を固定可能に設けている。
【0023】
つぎに、本発明に係る手持ち式糸撚り器Aの使い方について説明する。
(1)まず、適当な長さの3本の毛糸を用意し、各々の毛糸の一端を糸保持軸41の係止片43に巻きつけて固定する。
(2)ついで、保持片50の係止片53に各毛糸の他端を長さが揃うように巻きつけて固定し、左手で保持片50を掴む。
(3)毛糸を緩く張った状態において、右手に掴んだ手持ち式糸撚り器Aのホイール22をテーブル等の上で前進方向へ転動させる。これにより、糸保持軸41が自転するので1本の糸に夫々撚りがかかる。
(4)ついで、ホイール22を後退方向へ転動させる。これにより、糸保持軸41が公転するので3本の糸が1本の糸に撚り合わせられる。
(5)つくられた撚り糸を糸保持軸41及び保持片50から外す。
【0024】
以上に述べた通り、この手持ち式糸撚り器は、テーブル等の上でホイールを一方向へ転動させることにより糸保持軸を自転させて1本の糸に夫々撚りをかけ、ホイールを反対の方向へ転動させることによって糸保持軸を公転させて複数本の糸を1本の糸に撚り合わせることができ、撚り糸をつくる過程に遊び的な要素を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る手持ち式糸撚り器の斜視図
【図2】同、要部の縦断側面図
【図3】同、分解斜視図
【図4】爪車と駆動歯車部材の斜視図
【図5】図2のB−B線断面図
【図6】駆動歯車部材の内歯車に糸保持軸の小歯車が噛合した状態を示す斜視図
【図7】糸の他端を保持する保持片の斜視図
【符号の説明】
【0026】
A・・・本発明に係る手持ち式糸撚り器
1・・・ホルダー
3・・・ハンドル
8・・・爪
13・・・駆動歯車部材
14・・・内歯車
15・・・駆動軸
15a・・・基部
19・・・爪
22・・・ホイール
28・・・爪車
30,31・・・爪歯車
35・・・ケース
41・・・糸保持軸
42・・・軸部
43・・・係止片
45・・・小歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルを備えたホルダーに、内歯車が設けられた駆動歯車部材の中心に突設された駆動軸を回転自由に設けると共に当該駆動軸の先端部にホイールを固定し、表裏両側に爪歯車が設けられた爪車を該駆動軸の基部に回転可能に設け、その爪車に固定されたケースに、糸の一端を固定可能な係止片を先端部に設けると共に基部に小歯車を備えた複数の糸保持軸を回転自由に支持させると共に各小歯車を前記内歯車に噛合するように設け、前記ホルダーに取り付けた爪が前記表側の爪歯車に係合することにより当該爪車の一方向への回転を阻止すると共に前記駆動歯車部材の一方向の回転を許容するように設け、前記駆動歯車部材に取り付けた爪が前記裏側の爪歯車に係合することにより前記駆動歯車部材と爪車とを前記一方向と反対の方向へ一緒に回転するように設け、前記ホイールを前記一方向へ転動させることによって前記糸保持軸を自転させて1本の糸に夫々撚りをかけ、前記ホイールを前記一方向と反対方向へ転動させることによって前記糸保持軸を公転させて複数本の糸を1本の糸に寄り合わせるように構成したことを特徴とする手持ち式糸撚り器。
【請求項2】
前記糸保持軸の係止片は、軸部と一体に設けられていて、その軸部との間に形成される楔状の隙間に糸の一端を係止することにより当該糸を固定可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の手持ち式糸撚り器。
【請求項3】
前記ホイールは、ホイール本体にゴム製タイヤが装着されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の手持ち式糸撚り器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−221609(P2009−221609A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63825(P2008−63825)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000116091)ロイヤル工業株式会社 (27)
【Fターム(参考)】