説明

手持ち道具

【課題】ロック操作及びロック解除操作を容易にするとともに、ロック状態を維持し易くする医療用刃物などの手持ち道具を提供する。
【解決手段】ホルダ1と、刃体24を取り付けた可動頭部21と、可動頭部21を支持する操作体14とを備えている。可動頭部21はホルダ1に対し操作体14とともに移動して互いに離間する収容状態と突出状態とを取る。ホルダ1には案内孔10の前後両側で係止凹部11,12を操作体14の移動方向Xに沿って並設している。操作体14においては、係止凸部19がホルダ1の係止凹部11,12に係止されるように操作部15を軸線16aに対する周方向へ付勢する板ばね部17を設けるとともに、その板ばね部17の弾性力に抗して操作部15を周方向へ作動させることによりホルダ1の係止凹部11,12に対する操作部15の係止凸部19の係止を解除し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刃体などの機能部がホルダに対し操作体とともに移動して複数の状態を取る医療用刃物などの手持ち道具において、ホルダに対する操作体のロック機構の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1では、鞘管にスリットが設けられ、この鞘管に挿通された支持杆に設けられた突起がこのスリットに挿入され、このスリットの両端部に設けられた係止部にこの突起が係止されて鞘管に対する支持杆の移動が阻止される。
【特許文献1】実公昭61−2570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1では、スリットの両係止部に支持杆の突起を押し入れなければならないため、その押入操作が面倒であるばかりでなく、支持杆の突起がスリットの両係止部から抜け外れ易くなって鞘管に対し支持杆が不用意に移動するおそれがある。
【0004】
この発明は、医療用刃物などの手持ち道具において、ロック操作及びロック解除操作を容易にするとともに、ロック状態を維持し易くすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
後記実施形態の図面(図1〜12)を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかる手持ち道具は、下記のように構成されている。
この手持ち道具は、ホルダ1と、機能部24を取り付けた頭部21と、この頭部21を支持する操作体14とを備えている。この頭部21はホルダ1に対し操作体14とともに移動して互いに離間する複数の状態Q,Pを取る。このホルダ1には操作体14の移動方向Xに沿って並設した複数の係止部11,12を設けている。この操作体14においては、係止部19がこのホルダ1の係止部11,12に係止されるように操作部15を付勢する弾性体17を設けるとともにその弾性体17の弾性力に抗して操作部15を作動させることによりホルダ1の係止部11,12に対する操作部15の係止部19の係止を解除し得る。
【0006】
請求項1の発明では、操作部15の係止解除状態で頭部21をホルダ1に対し操作体14とともに移動させて操作部15を離すと、弾性体17の弾性力により操作部15の係止部19がホルダ1の係止部11,12に対し自動的に係止される。従って、ホルダ1に対する操作体14のロック及びロック解除を行い易いとともに、弾性体17によりロック状態を維持し易い。
【0007】
請求項1の発明を前提とする請求項2の発明において、前記頭部21の各状態は、機能部24とともにホルダ1内に収容される収容状態Qと、機能部24をホルダ1から突出させた突出状態Pとを含む。請求項2の発明では、機能部24がホルダ1内に収容することができる手持ち道具において、請求項1の発明の効果を発揮させることができる。
【0008】
請求項1または請求項2の発明を前提とする請求項3の発明において、前記弾性体17は操作体14の移動方向Xに沿った操作部15の軸線16aに対する周方向Rの弾性力を有し、操作部15はその周方向Rへ作動される。請求項3の発明では、操作部15を操作し易い。
【0009】
請求項3の発明を前提とする請求項4の発明にかかる操作体14において、弾性体17は操作部15と頭部21との間に設けられ、この頭部21は弾性体17に支持されている。請求項4の発明では、操作部15を付勢する弾性体17を操作体14に対しコンパクトにまとめることができる。
【0010】
請求項1から請求項4のうちいずれかの請求項の発明を前提とする請求項5の発明において、前記操作部15は操作体14の移動方向Xに沿った操作部15の軸線16aに対する周方向Rへ前記頭部21に対し捩じられて作動される。請求項5の発明では、操作部15を操作し易い。
【0011】
請求項3または請求項4または請求項5の発明を前提とする請求項6の発明において、前記操作部15の係止部は係止凸部19であり、前記ホルダ1の各係止部は、この係止凸部19を操作体14の移動に伴い案内する案内孔10で操作体14の移動方向Xに沿って並設された複数の係止凹部11,12であって、操作部15の作動に伴いこの各係止凹部11,12と案内孔10との間で係止凸部19が係脱される。請求項6の発明では、ホルダ1に対する操作体14の係止構造を簡単にすることができる。
【0012】
次に、請求項以外の技術的思想について実施形態の図面の符号を援用して説明する。
請求項4の発明を前提とする第7の発明において、前記操作体14の操作部15及び弾性体17と頭部21とは一体成形されている。第7の発明では、操作体14及び頭部21を簡単に設けることができる。
【0013】
請求項6の発明を前提とする第8の発明において、前記係止凸部19は、操作部15において弾性を有する片持ち梁状の台板18に設けられている。第8の発明では、台板18の弾性を利用して係止凸部19を案内孔10に対し容易に嵌め込むことができる。
【0014】
第8の発明を前提とする第9の発明において、前記係止凸部19が前記係止凹部11,12に係入された際に前記台板18の弾性に抗してホルダ1内に逃げて係止凹部11,12から離脱されるのを阻止するようにその係止凹部11,12に係止されるストッパ部11a,12a,19aをこの係止凸部19と係止凹部11,12との間に設けた。第9の発明では、係止凹部11,12に対する係止凸部19の不用意な係止解除を規制することができる。
【0015】
請求項1から請求項6のうちいずれかの請求項の発明、または第7の発明または第8の発明または第9の発明に対し、下記の第10の発明または第11の発明または第12の発明または第13の発明または第14の発明または第15の発明を組み合わせることができる。
【0016】
第10の発明にかかる手持ち道具は、下記のように構成されている。
この手持ち道具は、ホルダ1と、機能部24を取り付けた可動頭部21とを備えている。その可動頭部21は、機能部24とともにホルダ1内に収容される収容状態Qと機能部24をホルダ1から突出させた突出状態Pとを取るようにホルダ1に対し移動可能に支持され、この収容状態Qと突出状態Pとで機能部24の向きNが互いに異なる。
【0017】
第10の発明では、特に機能部24が屈曲する手持ち道具に適し、機能部24を利用し易い突出状態Pにもかかわらず、機能部24の向きNを変えて機能部24を収容し易い収容状態Qにすることができる。その際、第11の発明のように可動頭部21が収容状態Qと突出状態Pとの間でホルダ1に対し移動する途中において傾動したり、可動頭部21が収容状態Qや突出状態Pのまま傾動したりしてもよい。従って、機能部24が収容されるホルダ1の収容口4を小さくすることができる。
【0018】
第10の発明を前提とする第11の発明において、前記可動頭部21は収容状態Qと突出状態Pとの間でホルダ1に対し移動する途中において傾動する。第11の発明では、機能部24をホルダ1の収容口4に対し出没させ易い。
【0019】
第12の発明にかかる手持ち道具は、下記のように構成されている。
この手持ち道具は、ホルダ1と、機能部24を取り付けた可動頭部21とを備えている。その可動頭部21は、機能部24とともにホルダ1内に収容される収容状態Qと機能部24をホルダ1から突出させた突出状態Pとを取るようにホルダ1に対し移動可能に支持され、この収容状態Qにおける機能部24の位置とこの突出状態Pにおける機能部24の位置とはホルダ1の長手方向Xとその長手方向Xに直交する方向Zとでそれぞれ変化する。
【0020】
第12の発明では、特に機能部24が屈曲する手持ち道具に適し、機能部24を利用し易い突出状態Pにもかかわらず、機能部24の位置を長手方向Xとその長手方向Xに直交する方向Zとでそれぞれ変えて機能部24を収容し易い収容状態Qにすることができる。従って、機能部24が収容されるホルダ1の収容口4を小さくすることができる。
【0021】
第10の発明または第11の発明を前提とする第13の発明においては、前記可動頭部21を支持する操作体14を備え、その操作体14により可動頭部21を前記収容状態Qと突出状態Pとの間で移動し得る。第13の発明では、可動頭部21を収容状態Qと突出状態Pとの間で移動させ易い。
【0022】
第13の発明を前提とする第14の発明においては、前記収容状態Qと突出状態Pとの間で前記可動頭部21に対し弾性力を付与することができる弾性体17を前記操作体14に設け、その弾性体17により可動頭部21を傾動させる。第14の発明では、弾性体17を利用して可動頭部21を収容状態Qと突出状態Pとの間で傾動させ易い。
【0023】
第10の発明または第11の発明または第13の発明または第14の発明を前提とする第15の発明においては、前記ホルダ1と可動頭部21とには前記収容状態Qと突出状態Pとの間で可動頭部21をホルダ1に対し移動可能に案内するとともに傾動を許容する案内規制部6,7,22、8,9,23を設けた。第15の発明では、案内規制部6,7,22、8,9,23により可動頭部21を円滑に傾動させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、医療用刃物などの手持ち道具において、操作体14の移動後に操作部15を離すと、弾性体17の弾性力により操作部15の係止部19がホルダ1の係止部11,12に対する係止解除状態から係止状態となり、ロック操作及びロック解除操作を容易にするとともに、弾性体17の弾性力によりロック状態を維持し易い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態にかかる手持ち道具について図面を参照して説明する。
この手持ち道具は医療用刃物であって、図1、図2,3、図4及び図5,6に示すように、この医療用刃物のホルダ1においては、前後方向Xへ細長い筒状をなす外周壁2の内側に形成された内孔3が前端側の頭口4と後端側の尻口5とでそれぞれ開放されている。この外周壁2において上下方向Zの両側のうち内周上側には頭口4から案内規制部としての押圧部6が後方へ延設されている。この外周壁2の上側にはこの押圧部6から段差6aを介して連続する案内規制部としての押圧回避孔7(押圧回避部)が後方へ延設されて内孔3から外側へ開放されている。この外周壁2の内周下側には頭口4から案内規制部としての案内溝8(押圧回避部)が前記押圧部6及び押圧回避孔7に対し下方で面して後方へ延びている。この外周壁2の内周下側にはこの案内溝8から段差8aを介して連続する案内規制部としての受け部9が前記押圧回避孔7に対し下方で面して後方へ延設されている。この外周壁2の上側には前記押圧回避孔7よりも若干後方で案内孔10が後方へ延び、この案内孔10の前端部と後端部とでそれぞれ周方向Rへ広がる係止部としての係止凹部11,12が形成されている。図7〜10に示すように、この両係止凹部11,12の前後両側にはストッパ部としての端縁部11a,12aが形成されている。このホルダ1は、ポリカーボネイト樹脂による射出成形で一体成形され、可透性を有している。
【0026】
この医療用刃物の芯部材13において操作体14は、可動棒16を主体とする操作部15と、その可動棒16の前端部下側から前方へ延設された弾性体としての板ばね部17とを有している。この操作部15においては、可動棒16の前端部上側から片持ち梁状の台板18が前方へ延設され、この台板18上に係止凸部19が形成されている。図11(a)に示すように、この係止凸部19の前後両側にはストッパ部としての鍔部19aが突設されている。この可動棒16の後端部には指当部20が形成されている。
【0027】
この医療用刃物の芯部材13において可動頭部21は、前記台板18上の係止凸部19よりも前方で前記板ばね部17の前端部に支持されている。この可動頭部21の上下両側には案内突部22,23が形成されている。この可動頭部21の端面部21aには機能部としての刃体24が取着されている。この刃体24においては、支持板部24aの前端部から刃板部24bが斜め上方へ延びている。この刃体24はステンレス鋼により成形されている。また、この可動頭部21と操作体14とからなる芯部材13はポリブタジエンテレフタレート樹脂により一体成形されている。
【0028】
この芯部材13を前記ホルダ1に挿嵌する場合には、ホルダ1の頭口4から可動棒16の指当部20を挿入してホルダ1の尻口5から突出させる。その際、台板18が上下方向Zへ弾性力に抗して撓むため、台板18上の係止凸部19を外周壁2の内周に沿って移動させて案内孔10に嵌め込むことができる。この指当部20は、ホルダ1において可動頭部21が出没する頭口4に対し反対側になる尻口5から常時露出している。この案内孔10の前後両側で外周壁2の外周に付された矢印は、この係止凸部19に対する移動操作方向を表す。
【0029】
図2及び図3に示すように、可動頭部21の前部及び刃体24がホルダ1の頭口4から外側へ突出した突出状態Pでは、図7に示すように係止凸部19が前側の係止凹部11に係入されて前後方向Xへの移動が阻止されるため、芯部材13がその突出状態Pでロックされる。その際、図11(a)に示すように、台板18が内孔3側へ撓んでも係止凸部19の両鍔部19aが係止凹部11の両端縁部11aに当接するため、係止凸部19が内孔3側へ入り込まない。この可動頭部21においては、上側の案内突部22特にその傾斜面22aが上側の押圧部6により板ばね部17の弾性力に抗して下方へ押されるために端面部21a側が上向きに傾動し、下側の案内突部23が下側の案内溝8に係入されて可動棒16の軸線16aに対する周方向Rへの回動が阻止される。また、この可動頭部21において上下両案内突部22,23よりも若干前側部分の外周面が押圧部6を含む外周壁2の内周面に沿って合わされるため、可動頭部21が上下方向Zや左右方向Yへ動くのを防止して可動頭部21の突出状態Pを安定させることができる。
【0030】
この突出状態Pで、指当部20を把持して可動棒16をその軸線16aに対する周方向Rへ板ばね部17の弾性力に抗してホルダ1に対し捩じると、可動頭部21がホルダ1に対し回り止めされたまま、図8に示すように係止凸部19が前側の係止凹部11から案内孔10側へ離脱されるため、芯部材13がその突出状態Pでロック解除される。なお、前記指当部20の外周には滑止め凹凸部が形成されているため、可動棒16を捩じり易い。
【0031】
図4に示すように指当部20を把持して可動棒16を捩じったまま後方へ引くと、係止凸部19が案内孔10に沿って移動しながら図9に示すように後側の係止凹部12に隣接する。それまでに、可動頭部21においては、図5及び図6に示すように、上側の案内突部22が上側の押圧部6から上側の押圧回避孔7に係入されるとともに、下側の案内突部23が下側の案内溝8から離脱して下側の受け部9により支えられ、板ばね部17が弾性力により上方へ復帰して端面部21a側が下向きに傾動する。係止凸部19が案内孔10にある場合には、その案内孔10が可動棒16の捩じり力を受けることができる。その後、可動棒16を離すと、図10に示すように、可動頭部21がホルダ1に対し回り止めされたまま、板ばね部17の弾性力により可動棒16が復帰して可動棒16の捩じり力がなくなるとともに、係止凸部19が後側の係止凹部12に自動的に係入されて前後方向Xへの移動が阻止されるため、芯部材13が収容状態Qでロックされる。
【0032】
この突出状態Pから収容状態Qに至る間に、図2(b)、図4(a)及び図5(b)に示すように、可動頭部21及び刃体24が傾動してそれらの向きNが約12°だけ変化する。すなわち、突出状態Pではホルダ1の頭口4を長手方向(前後方向X)へ延ばした領域Sの範囲外に刃体24の刃板部24bが突出し、収容状態Qではその領域Sの範囲内に収まるまで可動頭部21及び刃体24が下向きに傾く。
【0033】
この収容状態Qで、指当部20を把持して可動棒16をその軸線16aに対する周方向Rへ板ばね部17の弾性力に抗してホルダ1に対し捩じると、可動頭部21がホルダ1に対し回り止めされたまま、図9に示すように係止凸部19が後側の係止凹部12から案内孔10側へ離脱されるため、芯部材13がその収容状態Qでロック解除される。
【0034】
図4に示すように指当部20を把持して可動棒16を捩じったまま前方へ押すと、係止凸部19が案内孔10に沿って移動しながら図8に示すように前側の係止凹部11に隣接する。それまでに、可動頭部21においては、図2及び図3に示すように、上側の案内突部22が上側の押圧回避孔7から離脱して特にその傾斜面22aが上側の押圧部6により下方へ押されるとともに、下側の案内突部23が下側の受け部9から下側の案内溝8に係入され、板ばね部17が弾性力に抗して下方へ撓んで端面部21a側が上向きに傾動する。その後、可動棒16を離すと、図7に示すように、可動頭部21がホルダ1に対し回り止めされたまま、板ばね部17の弾性力により可動棒16が復帰して可動棒16の捩じり力がなくなるとともに、係止凸部19が前側の係止凹部11に自動的に係入されて前後方向Xへの移動が阻止されるため、芯部材13が前記突出状態Pでロックされる。
【0035】
なお、前記外周壁2の前部外周で左右方向Yの両側には手術時や芯部材13の出没時などに指を当てることができる凹凸部2aが形成され、また、尻口5の付近で外周壁2の後端部外周にはホルダ1の転がりを防止する載置突起部5aが形成されている。
【0036】
ちなみに、前記医療用刃物においては、図2,3に示す突出状態Pで前後方向Xの全長が約142mm、図5,6に示す収容状態Qで前後方向Xの全長が約145mm、ホルダ1で上下方向Zの高さが約9mm、頭口4で上下方向Zの高さすなわち領域Sで上下方向Zの高さが約6.4mm、可動頭部21で前後方向Xの最大移動距離が約22mmに設定されている。また、可動棒16の捩じり角については、使用者の使い勝手や可動棒16の捩じり強度などを考慮して、10〜45°好ましくは15〜30°に設定されている。さらに、図1(a)や図5,6の状態にある板ばね部17については、可動棒16と可動頭部21との間で前後方向Xの長さ寸法が約40mm、可動頭部21付近で上下方向Zの厚さ寸法が約1.0mm、可動棒16付近で上下方向Zの厚さ寸法が約1.4mm、可動頭部21付近で左右方向Yの幅寸法が約3.7mm、可動棒16付近で左右方向Yの幅寸法が約4.5mmにそれぞれ設定されている。すなわち、板ばね部17の可動頭部21付近は、厚さ寸法が小さい薄い部分で且つ幅寸法が小さい狭い部分になっているため、周方向Rへ捩じり易いとともに上下方向Zへ撓み易い。
【0037】
従って、本実施形態では、医療用刃物において、頭部21を操作体14とともに移動させた後に操作部15を離すと、板ばね部17の弾性力により操作部15の係止凸部19がホルダ1の係止凹部11,12に対する係止解除状態から係止状態となり、ホルダ1に対する操作体14のロック操作及びロック解除操作を容易にするとともに、板ばね部17の弾性力によりロック状態を維持し易い。
【0038】
前記実施形態以外にも下記のように構成してもよい。
* 前記実施形態では、図11(a)に示すように係止凸部19の両側にストッパ部としての鍔部19aを形成したが、係止凸部19の片側にのみ鍔部19aを形成してもよい。図11(b)に示す別例では、係止凸部19の両側と係止凹部11,12の両側とを膨出させたストッパ部19a,11a,12aを形成している。図11(c)に示す別例では、係止凹部11,12の両側に段差状のストッパ部11a,12aを形成している。図11(d)に示す別例では、係止凸部19の両側のストッパ部と係止凹部11,12の両側のストッパ部とを省略している。図示しないが、この係止凹部11,12を案内孔10に沿って3以上形成してもよい。
【0039】
* 図12に示す別例では、刃体24が収容状態と突出状態との間で向きNを変えずに平行移動し、その収容状態における刃体24の位置とその突出状態における刃体24の位置とは、ホルダ1の長手方向Xで距離Lだけ変化するとともに、その長手方向Xに直交するホルダ1の上下方向Zで距離Wだけ変化している。図示しないが、この距離Wは、長手方向Xに直交するホルダ1の左右方向Yで変化させてもよい。
【0040】
* 刃体24において支持板部24aに対する刃板部24bの屈曲角度は約45°になっているが、それ以外の屈曲角度にしてもよい。その屈曲部分の形態については、曲線状に湾曲させてもよいし、複数の屈曲部分を形成してもよい。刃体24以外の機能部も同様である。
【0041】
* 案内規制部としては、可動頭部21の上下両案内突部22,23やホルダ1の押圧部6及び押圧回避孔7やホルダ1の案内溝8及び受け部9に代えて、種々の構造に変更することができる。
【0042】
* 可動頭部21と板ばね部17とを互いに別々に設けて取着したり、板ばね部17と可動棒16とを互いに別々に設けて取着してもよい。
* 可動棒16の移動機構としては、ボールペンなどの筆記具に広く用いられているノック方式や、マイクロメータのように回転しながら長手方向へ移動するねじ方式など、目的や形態に応じて種々選択することができる。
【0043】
* 手持ち道具としては、メス等の医療用刃物以外に、ボールペン等の筆記具、剃刀やカッターやナイフや彫刻刀等の刃物、耳掻き、フォーク、化粧用ブラシ、口紅など、各種広義のものを含む。機能部はそれらの手持ち道具に応じて異なる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】(a)は本実施形態にかかる医療用刃物においてホルダから芯部材を取り出した分解状態を示す側面図であり、(b)はそのホルダを側面側から見た断面図である。
【図2】(a)は本実施形態にかかる医療用刃物において刃体の突出状態を示す側面図であり、(b)は同じく側面側から見た断面図である。
【図3】(a)は本実施形態にかかる医療用刃物において刃体の突出状態を示す平面図であり、(b)は同じく平面側から見た断面図である。
【図4】(a)は本実施形態にかかる医療用刃物において刃体の突出状態と収容状態との間の途中状態を側面側から見た断面図であり、(b)は同じくその途中状態を示す平面図である。
【図5】(a)は本実施形態にかかる医療用刃物において刃体の収容状態を示す側面図であり、(b)は同じく側面側から見た断面図である。
【図6】(a)は本実施形態にかかる医療用刃物において刃体の収容状態を示す平面図であり、(b)は同じく平面側から見た断面図である。
【図7】(a)は図3(a)においてロック状態を示す部分平面図であり、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図8】(a)は図3(a)においてロック解除状態を示す部分平面図であり、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【図9】(a)は図6(a)においてロック解除状態を示す部分平面図であり、(b)は(a)のC−C線断面図である。
【図10】(a)は図6(a)においてロック状態を示す部分平面図であり、(b)は(a)のD−D線断面図である。
【図11】(a)は図3(a)及び図6(a)のE−E線部分断面図であり、(b)(c)(d)はそれぞれ別例を示す(a)相当図である。
【図12】(a)(b)はそれぞれ収容状態と突出状態とにおける刃体の動作状態の別例を示す概略的部分断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1…ホルダ、10…案内孔、11…係止部としての係止凹部、12…係止部としての係止凹部、14…操作体、15…操作部、16a…軸線、17…弾性体としての板ばね部、19…係止部としての係止凸部、21…可動頭部、24…機能部としての刃体、Q…収容状態、P…突出状態、R…周方向、X…操作体の移動方向である前後方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダと、機能部を取り付けた頭部と、この頭部を支持する操作体とを備え、この頭部はホルダに対し操作体とともに移動して互いに離間する複数の状態を取り、このホルダには操作体の移動方向に沿って並設した複数の係止部を設け、この操作体においては係止部がこのホルダの係止部に係止されるように操作部を付勢する弾性体を設けるとともにその弾性体の弾性力に抗して操作部を作動させることによりホルダの係止部に対する操作部の係止部の係止を解除し得ることを特徴とする手持ち道具。
【請求項2】
前記頭部の各状態は、機能部とともにホルダ内に収容される収容状態と、機能部をホルダから突出させた突出状態とを含むことを特徴とする請求項1に記載の手持ち道具。
【請求項3】
前記弾性体は操作体の移動方向に沿った操作部の軸線に対する周方向の弾性力を有し、操作部はその周方向へ作動されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の手持ち道具。
【請求項4】
前記操作体において弾性体は操作部と頭部との間に設けられ、この頭部は弾性体に支持されていることを特徴とする請求項3に記載の手持ち道具。
【請求項5】
前記操作部は操作体の移動方向に沿った操作部の軸線に対する周方向へ前記頭部に対し捩じられて作動されることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれかの請求項に記載の手持ち道具。
【請求項6】
前記操作部の係止部は係止凸部であり、前記ホルダの各係止部は、この係止凸部を操作体の移動に伴い案内する案内孔で操作体の移動方向に沿って並設された複数の係止凹部であって、操作部の作動に伴いこの各係止凹部と案内孔との間で係止凸部が係脱されることを特徴とする請求項3または請求項4または請求項5に記載の手持ち道具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−61868(P2008−61868A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243917(P2006−243917)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000001454)株式会社貝印刃物開発センター (123)
【Fターム(参考)】