説明

手振れ補正装置及び電子機器

【課題】簡素な構造で耐衝撃性が大きい手振れ補正装置及び電子機器を提供する。
【解決手段】カメラ本体に固定される固定側ユニット100と、レンズ及び撮像素子が一体的に設けられたカメラユニット210を含む可動側ユニット200とが、球面ヒンジにより揺動可能に連結される。可動側ユニット200を支持する可動側フレーム310には、スリット310a、310bにより腕部311、312が形成される。腕部311、312は、ステッピングモータ121、131の駆動力を可動側ユニット200に伝達して手振れによる振れ量を打ち消すように揺動させる。また、腕部311、312は、衝撃等による外力を受けた場合に、自身がたわむことにより、腕部311、312やナット122、132の破損等を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ、カメラ機能付き携帯電話及びビデオカメラ等において、手振れによる影響を除いて、鮮明な画像を得るための手振れ補正装置、及びそれが組み込まれた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
写真を撮影する際に生じる手振れと言われる現象は、シャッタ(レリーズボタン)を押して絞りが開いてから閉じるまでの間に、カメラが動いてレンズ光軸が撮像対象方向から傾斜することにより、合焦点ではあるものの、撮像画像がぶれてしまう現象である。このような手振れによる画像の劣化を軽減するために、種々の手段が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ジャイロセンサによりカメラが動いたことを検知し、被写体像が撮像センサ上の手振れが生じない場合と同じ位置に結像されるようにレンズをシフトさせる手振れ補正技術(レンズシフト方式)が開示されている。また、特許文献2には、上述のレンズの代わりに、撮像センサをシフトさせる手振れ補正技術(センサシフト方式)が開示されている。さらに、特許文献3には、レンズと撮像センサとを一体としてシフトさせる手振れ補正技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−57706号公報
【特許文献2】特開2005−316400号公報
【特許文献3】特開2007−93953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1及び特許文献2に開示されたレンズシフト方式及びセンサシフト方式のいずれの手振れ補正装置も、レンズ又は撮像センサの移動を制御するために、レンズ又は撮像センサの位置センサを、カメラ本体の振れ(傾き)を検知するセンサの他に別途設置する必要がある。このため、制御が複雑であるばかりでなく、実装するセンサの数が増大し、手振れ防止装置の小型化が困難である。また、レンズ又は撮像センサの仕様が変更される度に、それらの移動量も変える必要があるため、量産効率が悪いという問題点がある。
【0006】
また、レンズシフト方式の光学式手振れ補正においては、レンズを移動させて光軸を変えるため、光学設計が難しいという問題点がある。また、レンズの収差等の問題が発生しやすく、レンズの光学性能が低くなりやすい。一方、センサシフト方式の手振れ補正装置の場合は、光学系の劣化がないものの、光学系部品とイメージセンサとの位置関係が変化するので、ガタ等の機械的精度の影響を受けやすいという問題点がある。
【0007】
また、特許文献3に開示されたレンズと撮像センサとを一体としてシフトさせる手振れ補正装置においては、外枠、中枠及びレンズと撮像センサを内蔵するカメラモジュールが固定された内枠を設け、それらの間の関係、即ち、外枠と中枠の垂直軸の回りの関係と、中枠と内枠との水平軸の回りの関係とを調節することで、カメラモジュールの向きを制御する。そのため、構造が複雑になると共に、制御も複雑なものとなる。また、外枠、中枠及び内枠をはじめとして多数の部品が必要であるので、手振れ補正装置の重量も重くなり、駆動装置としては、大きな駆動力が必要になる。さらに、装置が複雑であるため、装置の小型化が困難である。
【0008】
さらに、落下等により、カメラに大きな衝撃が加えられた場合、アクチュエータで発生した駆動力をレンズや撮像センサに伝達するための部品が変形、または破損する恐れがある。しかし、この問題を防ぐために、衝撃に耐えられる程度の強度を有する部品を用いると、カメラの小型化や軽量化の障害になってしまう。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、簡素な構造で耐衝撃性が大きい手振れ補正装置及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る手振れ補正装置は、
レンズ及び撮像素子が一体的に設けられたカメラユニットを含む可動側ユニットと、
前記可動側ユニットを揺動させる駆動部を備える固定側ユニットと、
前記可動側ユニットが前記固定側ユニットに対して相対的に揺動可能に連結する連結部と、
カメラの振れ量を検出する振れ検出部と、
前記振れ検出部により検出された前記カメラの振れ量に基づいて、前記駆動部を制御して、前記可動側ユニットを前記固定側ユニットに対して前記カメラの振れ量を打ち消すように揺動させる制御部と、を備え、
前記連結部は、前記駆動部の駆動力を前記可動側ユニットに伝達し、かつ外部から前記駆動部への衝撃力を吸収する、
ことを特徴とする。
【0011】
前記連結部は、
前記可動側ユニットと前記固定側ユニットとが相互に係合する1つのヒンジ部と、
前記ヒンジ部を中心として、前記可動側ユニットの前記固定側ユニットに対する揺動を許容するとともに、前記ヒンジ部の係合が外れないように付勢する付勢部材と、を含んでもよい。
【0012】
前記連結部は、前記可動側ユニットを支持する可動側フレームを含み、
前記可動側フレームには、前記駆動部の駆動力を前記可動側ユニットへ伝達し、かつ外部から前記駆動部への衝撃力を吸収する伝達部材が一体として形成されていてもよい。
【0013】
前記駆動部は、前記カメラユニットの光軸に対して平行に前記可動側フレームを移動させる第1の駆動部と第2の駆動部とを含み、
前記伝達部材は、前記第1の駆動部の駆動力を前記可動側ユニットに伝達する第1の伝達部材と、前記第2の駆動部の駆動力を前記可動側ユニットに伝達する第2の伝達部材と、を含み、
前記第1の駆動部と前記第2の駆動部は、互いに同一方向、または反対方向の駆動力をそれぞれ前記第1の伝達部材と前記第2の伝達部材に伝達してもよい。
【0014】
前記第1の伝達部材と前記第2の伝達部材は、前記可動側フレームに形成されたスリットによりアーム状に形成されていてもよい。
【0015】
前記第1の伝達部材と前記第2の伝達部材は、前記第1の駆動部と前記第2の駆動部に対応するように対称な位置関係で配置されていてもよい。
【0016】
前記第1の伝達部材と前記第2の伝達部材は、前記第1の駆動部と前記第2の駆動部の駆動力を伝達する際の前記第1の伝達部材と前記第2の伝達部材のたわみが前記可動側ユニットの揺動に影響を与えない材料から構成されていてもよい。
【0017】
前記第1の伝達部材と前記第2の伝達部材は、SUS系の金属材料から構成されていてもよい。
【0018】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る電子機器は、上記いずれかの手振れ補正装置と、この手振れ補正装置を収容する電子機器本体と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡素な構造で耐衝撃性が大きい手振れ補正装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係る手振れ補正装置の斜視図である。
【図2】固定側ユニットと可動側ユニットの分解斜視図である。
【図3】図2の上下方向を逆にして示す分解斜視図である。
【図4】球面ヒンジの拡大断面図である。
【図5】(a)は手振れ補正装置をZ軸負の方向から見た正面図、(b)は通常使用時の(a)の切断線A−Aにおける断面図、(c)は外力を受けた時の(a)の切断線A−Aにおける断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る手振れ補正装置を図面を参照して説明する。本発明に係る手振れ補正装置は、例えばデジタルカメラ、カメラ機能付き携帯電話及びビデオカメラといった撮像機能を有する電子機器に組み込まれるものである。本実施形態では、そのような電子機器の一例として、本発明に係る手振れ補正装置がデジタルカメラの筐体内に配置される場合について説明する。
【0022】
図1および図2に示すように、本実施形態に係る手振れ補正装置1は、固定側ユニット100と、可動側ユニット200と、連結部300と、振れ検出部(図示せず)と、制御部(図示せず)とから構成される。これらは組み立てられた状態で、デジタルカメラ内に配置される。また、固定側ユニット100と可動側ユニット200とは、固定側ユニット100に形成された凸部410と連結部300に形成された凹部420とから構成される1つの球面ヒンジ400により連結されている。この球面ヒンジ400を原点とし、レンズの光軸と平行にZ軸が規定されるX、Y、Z直交座標系を想定した場合、可動側ユニット200は、X軸及びY軸を中心として揺動可能である。
【0023】
固定側ユニット100は、カメラの筐体に固定され、その内部に可動側ユニット200を揺動可能に保持するものである。固定側ユニット100は、固定フレーム110と、2つの駆動部120、130と、2つの位置センサ140、150とから構成されている。
【0024】
固定フレーム110は、図2に示すように、断面がコの字形に形成され、その開口する部分には駆動部120、130を設置するための設置部111が設けられている。また、固定フレーム110の設置部111と対向する面には、球面ヒンジ400を構成する凸部410が形成されている。凸部410は、その凸面がZ軸の負の方向を向くように形成されている。
【0025】
2つの駆動部120、130は、制御部からの制御信号に基づいて可動側ユニット200を揺動するものとして構成される。2つの駆動部120、130は、その一例として図2に示すように、それぞれステッピングモータ121、131と、ナット122、132とから構成される。
【0026】
ステッピングモータ121、131は、Y軸を中心として線対称の位置であって、その回転軸がZ軸と平行になるように設置部111に設置される。ステッピングモータ121、131の回転軸はリードスクリューシャフト121a、131aであり、このリードスクリューシャフト121a、131aには、それぞれナット122、132が螺合されている。
【0027】
ナット122、132は、固定フレーム110により回転が規制されるが、リードスクリューシャフト121a、131aの長手方向、すなわちZ軸正の方向又は負の方向への移動は許容されるように設置部111に設けられる。従って、リードスクリューシャフト121a、131aが回転すると、その回転方向に応じてナット122、132はリードスクリューシャフト121a、131aに沿ってZ軸正の方向又は負の方向に移動する。またナット122、132には、図3に示すように、Z軸負の方向に半球状の凸面を有する凸部122a、132aが形成されている。この凸部122a、132aは、後述する可動側フレーム310の腕部311、312の先端部311a、312aと接触している。また、ナット122、132には、後述する位置センサ140、150がナット122、132の位置を検出するための突出部122b、132bが形成される。
【0028】
位置センサ140、150は、可動側ユニット200の基準位置を検出するものであって、例えばフォトインタラプタから構成される。位置センサ140、150は、図2に示すように、センサフレーム141を介して設置部111に設置されている。位置センサ140、150は、断面U字状に形成され、それぞれX軸負の向き、及び正の向きに開口する。X軸負の向きに開口する位置センサ140は、X軸正の向きに突出するナット122の突出部122bの位置を検出する。同様に、X軸正の向きに開口する位置センサ150は、X軸負の向きに突出するナット132の突出部132bの位置を検出する。
【0029】
以下に具体的な、位置センサ140、150のナット122、132の位置検出処理について説明する。位置センサ140、150は、ナット122、132の突出部122b、132bが位置センサ140、150の検出範囲(手振れの制御範囲)内にあるときは、制御部への出力をオフにする。また、位置センサ140、150は、ナット122、132の突出部122b、132bが位置センサ140、150の検出範囲から外れたときは、制御部への出力をオンにする。そして、制御部は、位置センサ140、150からの出力がオフからオン、又はオンからオフに切り替わったときの位置に基づいて、可動側ユニット200の基準位置を、例えば検出範囲内の中央位置に決める。なお、可動側ユニット200の位置は、ナット122、132の位置によって決まる。従って、ナット122、132の位置を検出することにより、可動側ユニット200の位置を検出することができる。
【0030】
前述のように位置センサ140、150とナット122、132との関係は、検出範囲ではナット122、132が位置センサ140、150の内側に収納された状態にし、検出範囲を超える位置では位置センサ140、150がオンになるように設定する。つまり、位置センサ140、150がオンからオフになるまで、ステッピングモータ121、131を一定方向に回転させ、オンになった位置を基準に基準位置を決めることができる。このようにして、ステッピングモータ121、131の回転数等から求められる可動側ユニット200の基準位置が、当初の基準位置からずれてしまった場合に、元の位置に戻すことができる。
【0031】
次に、可動側ユニット200について説明する。可動側ユニット200は、図2に示すように、基板210と、基板210上に配置され、レンズ及び撮像素子としてのイメージセンサが一体化されたカメラユニット220と、基板210上のカメラユニット220が配置された領域の外側の領域に配置された外部引出用のコネクタ230とから構成される。可動側ユニット200は、後述する可動側フレーム310により挟持され、バネ部322によりZ軸正の方向に付勢されることにより、カメラユニット220が固定フレーム110内に保持される。
【0032】
次に連結部300について説明する。連結部300は、可動側ユニット200が固定側ユニット100に対して相対的に揺動可能に連結するものであり、可動側フレーム310と、板バネ320とから構成される。
【0033】
可動側フレーム310は、図2に示すように、Z軸方向から見て略矩形に形成される。そして、Y軸と平行に設けられた2本のスリット310a、310bにより、2本の腕部311、312が形成され、その間に本体部313が腕部311、312とともに一体として形成される。腕部311、312は、Y軸と平行に延び、そのY軸方向長さは、本体部313のY軸方向長さよりも長い。この本体部313から突出している腕部311、312の先端部311a、312aは、ナット122、132に形成された凸部122a、132a(図3参照)と接触している。また、本体部313のY軸正の方向側の端部は、Z軸の正方向に折り曲げられ、可動側ユニット200を挟持するための挟持部313aが形成されている。同様に、本体部313の挟持部313aと対向する辺の両端部は、Z軸の正方向に折り曲げられ、可動側ユニット200を挟持するための挟持部313b、313cが形成されている。また、挟持部313b、313cの間にはY軸負の方向に突出する突出部313dが本体部313と一体として形成されている。突出部313dには、Z軸負の方向に窪み、球面ヒンジ400を構成する凹部420が形成されている。また、本体部313の中央付近には、Y軸と平行に、可動側ユニット200をZ軸正の方向に押圧するバネ部322がZ軸負の方向から挿通するための313eが形成されている。
【0034】
ここで、腕部311、312として用いられる材料について腕部311、312の機能とともに説明する。まず、手振れ補正動作時においては、リードスクリューシャフト121a、131a上を移動するナット122、132に挿圧されて、腕部311、312は、可動側フレーム310及び可動側ユニット200と一体となって揺動する。このとき、腕部311、312は図2に示すように片支持の板バネ形状であるから、たわみが生じる。しかし、このたわみ量が大きいと可動側ユニット200を振れ量に対してそれを打ち消す量だけ揺動することができず、十分な手振れ補正の効果を得ることができない。従って、腕部311、312の材料としては、手振れ補正時において、駆動部120、130の駆動力を伝達する際のたわみ量が振れ量に対して十分無視出来る程度の縦弾性係数を有する材料を使用することが好ましい。このような材料を使用することで、腕部311、312は、手振れ補正時において、精度良く可動側ユニット200の揺動することができる。
【0035】
また、落下して地面にぶつかった時に受ける衝撃等による外力をカメラが受けた場合、例えば、図5(c)の矢印の向きに外力を受けた場合、可動側ユニット200は、外力の方向と反対方向に傾く。このとき、可動側ユニット200を挟持する可動側フレーム310も傾くが、腕部311、312がたわんで外力による衝撃を吸収する。そのため、腕部311、312やナット122、132が変形したり、破損したりすることを防止することができる。従って、腕部311、312の材料としては、想定される衝撃による腕部311、312のたわみでは塑性変形しない程度の降伏強さを有する材料を使用することが好ましい。
【0036】
このような腕部311、312の材料としては、例えば、SUS301−CSPやSUS304−CSPといったバネ材があるが、これらに限られず、カメラの形状や重量といった仕様に合わせて、上述した腕部311、312の機能を発揮することが可能な縦弾性係数や降伏強さを有する材料を選定することが好ましい。
【0037】
板バネ320は、可動側ユニット200の固定側ユニット100に対する揺動を許容するとともに、球面ヒンジ400の係合が外れないように付勢する付勢部材として構成されるものである。板バネ320は、X軸方向から見て断面が略L字形状の基部321と、基部321のZ軸と垂直な面の略中央からY軸正の方向に向けて延びるバネ部322とから構成される。基部321は、そのY軸と垂直な面が固定フレーム110の凸部410を有する面に外側から重なるように、固定フレーム110に固定される。この際、基部321のZ軸と垂直な面は、球面ヒンジ400の凸部410と凹部420との係合が外れないように、固定フレーム110と可動側フレーム310を支持する。バネ部322は、基部321が固定フレーム110に固定された状態で、その先端部322aは可動側フレーム310を付勢する。
【0038】
球面ヒンジ400は、図4に拡大して示すように、固定フレーム110に形成された凸部410と、突出部313dに形成された凹部420とから構成される。凸部410の先端部には、その断面が円形又は放物線等である滑らかに湾曲した凸面410aが形成されている。一方、凹部420にも、その断面が円形又は放物線等である滑らかに湾曲した凹面420aが形成されている。そして、凸部410の凸面410aを凹部420の凹面420aに接触させて凸部410を凹部420に係止させる。これにより、凹部420は、凸部410をZ軸(球面ヒンジ400の中心線)に対する任意の傾斜角度で支持する。
【0039】
振れ検出部は、カメラの振れ量を検出するものであり、例えば図1に示すX軸回りの角速度を検出するX軸角速度センサと、Y軸回りの角速度を検出するY軸角速度センサとから構成される。振れ検出部は、固定側ユニット100若しくは固定側ユニット100が固定されているカメラ本体又は可動側ユニット200に取り付けられている。手振れによりカメラが揺動した場合、X軸角速度センサはX軸回りのカメラの角速度を検出し、Y軸角速度センサはY軸回りの角速度を検出する。図1に示すX軸回りの角速度を検出する。検出されたX軸回り及びY軸回りの角速度を示す検出信号は制御部に送られる。
【0040】
制御部は、振れ検出部により検出されたカメラの振れ量に基づいて、ステッピングモータ121、131を制御して、可動側ユニット200を固定側ユニット100に対してカメラの振れ量を打ち消すように揺動させるものとして構成される。
【0041】
次に、上述のように構成された本実施形態に係る手振れ補正装置1の動作について説明する。撮影者がシャッタを押したことによって絞りが開いた直後に、例えばカメラがX軸を中心として傾くと、レンズ光軸も同様に傾く。すると、振れ検出部のX軸角速度センサがX軸回りの角速度を検出する。検出された角速度は、カメラに取り付けられた制御部に出力される。制御部は、検出された角速度から、X軸回りのカメラの回転角である振れ量を算出する。そして、制御部は算出された振れ量を打ち消すようにステッピングモータ121、131により可動側ユニット200を揺動させるための制御量を算出し、モータの駆動回路を介してステッピングモータ121、131を算出した制御量に基づいて駆動させる。このとき、ステッピングモータ121、131を同一方向に回転させることにより、可動側ユニット200をX軸回りに回転させることができる。
また、カメラがY軸を中心として傾いた場合には、制御部はY軸回りの振れ量を算出する。そして、Y軸中心に可動側ユニット200が揺動させるための制御量を算出し、モータの駆動回路を介してステッピングモータ121、131を算出した制御量に基づいて駆動させる。このとき、ステッピングモータ121、131を互いに逆方向に回転させることにより、可動側ユニット200をY軸回りに回転させることができる。
【0042】
次に、上述のように構成された本実施形態に係る手振れ補正装置が外部から衝撃を受けた場合の動作について図5を用いて説明する。図5(b)は、カメラが衝撃等による外力を受けていない通常使用時の断面図である。この状態では、上述したように、手振れに対して、その振れ量を打ち消すため、ステッピングモータ121、131が駆動して、ナット122、132がリードスクリューシャフト121a、131a上を移動する。そして、ナット122、132と接触する腕部311、312は、ナット122、132から挿圧されることにより、可動側フレーム310全体が一体となって揺動する。このとき、腕部311、312は片支持の板バネのようにたわみが発生するが、このたわみ量は揺動時の移動量に比べて無視できるほど小さい。
【0043】
また、図5(c)に示すように、カメラが衝撃等により上向きの外力を受けた場合、可動側ユニット200は下方に傾く。このとき、腕部311、312はナット122、132と接触したままたわむことにより、外力による衝撃を吸収する。そのため、腕部311、312やナット122、132の変形や破損を防止することができる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態に係る手振れ補正装置1において、連結部300が、可動側ユニット200に駆動部120、130の駆動力を伝達するとともに、衝撃等による外力を受けた場合にはその衝撃を吸収する。従って、極めて簡素な構造で耐衝撃性を向上させることができる。また、手振れ補正装置1を備えるカメラの小型化や軽量化が可能になる。
【0045】
また、可動側ユニット200と固定側ユニット100とは、滑らかな凸面410aを滑らかな凹面420aで受ける1つの球面ヒンジ400により連結されている。そして、可動側ユニット200は、可動側フレーム310を介して可動側ユニット200上の2点に駆動力が作用することにより、固定側ユニット100に対して揺動する。これにより、極めて簡素な構造で、部品点数の少ない手振れ補正装置を構成することができ、小型化や軽量化を図ることができる。
【0046】
また、連結部300に含まれる可動側フレーム310には、可動側ユニット200への駆動力を伝達し、かつ外部からの衝撃の吸収を行う部材が一体として形成されているため、部品点数及び組立工程を減らすことができる。
【0047】
また、X軸回りの回転及びY軸回りの回転を2つのステッピングモータ121,131による駆動力を合成して行うため、X軸上、Y軸上にモータを配置する必要がなく、手振れ補正装置の小型化に有利である。さらに、レンズやイメージセンサの仕様が変更されても、基本の制御方法は流用可能であるため、汎用性が高く、量産化しやすい。
【0048】
また、ステッピングモータ121、131の駆動力を可動側ユニット200に伝達する腕部311、312は、Y軸に対して線対称となるように配置されているため、可動側ユニット200を、特にY軸を中心として揺動させる場合に、バランス良く揺動させることができる。また、本発明に係る手振れ補正装置が組み込まれた電子機器の格納状態及び撮影状態において最も頻度が多い姿勢は、Y軸の正方向が重力方向となる姿勢である。従って、図1に示すように球面ヒンジ400は、ステッピングモータ121、131の力点よりもY軸の負の方向側、すなわち重力方向の上側にあるため、重力方向の左右に、すなわちY軸を中心としてバランス良く揺動させることができ、電子機器を長期的に使用した場合の耐久性が高く、誤差が生じにくくなるという利点がある。
【0049】
また、本実施形態に係る手振れ補正装置1は、ステッピングモータ121、131の回転運動を直線運動に変えるために、リードスクリューシャフト121a、131aを利用している。このリードスクリューシャフト121a、131aは、逆に直線運動を回転運動に変えることはできないため、ステッピングモータ121、131が無励磁時でも可動側ユニット200、すなわちナット122、132をその位置に止めることができる。すなわち、ステッピングモータ121、131は、通常、リードスクリューシャフト121a、131aの回転によりナット122、132を移動させることができる。しかし、仮にナット122、132がリードスクリューシャフト121a、131aに沿って外力を受けたとしても、ナット122、132がリードスクリューシャフト121a、131aに沿って移動して、リードスクリューシャフト121a、131aが回転することはない。従って、ナット122、132が外力を受けても、ナット122、132を外力を受ける前の位置に保持することができる。
【0050】
また、ステッピングモータ121、131は、オープンループ制御が可能なモータであるため、フィードバック用のセンサ等は必要ない。
【0051】
また、球面ヒンジ400は、カメラユニット220の光軸の位置から外れるように配置することができるため、カメラ本体の薄型化を図ることができる。
【0052】
また、可動側ユニット200の基準位置を検出する位置センサ140、150を設けたことにより、基準位置がずれてしまっても修正が可能であり、不具合の発生を防ぐことができる。また、ステッピングモータ121、131のリードスクリューシャフト121a、131a上のナット122、132の位置を検出するため、誤差が少なく、かつ省スペースでの実装が可能である。
【0053】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されず、種々の変形及び応用が可能である。例えば、本実施形態では、球面ヒンジ400の凹部420が可動側フレーム310に形成され、凸部410が固定側フレーム110に形成されているが、逆に形成されていてもよい。
【0054】
また、本実施形態では、ナット122、132に設けられた突出部122b、132bが、位置センサ140、150内に位置する状態で、位置センサ140、150の出力をオフとして、手振れ制御範囲内とし、突出部122b、132bが位置センサ140、150から外れたときに、位置センサ140、150の出力をオンにして、オンからオフに移行する位置に基づいて可動側ユニット200の基準位置を決定した。しかし、これに限られず、例えば、突出部122b、132bが、位置センサ140、150内に位置する状態で、位置センサ140、150の出力をオンとして、手振れ制御範囲内とし、突出部122b、132bが位置センサ140、150から外れたときに、位置センサ140、150の出力をオフにして、オンからオフに移行する位置に基づいて可動側ユニット200の基準位置を決定してもよい。
【0055】
また、本実施形態では、腕部311、312の材質として、SUS系の金属材料を用いることにより、可動側ユニット200への駆動力を伝達し、かつ外部からの衝撃の吸収を行うという機能を良好に発揮させることができる。また、カメラの形状や重量といった仕様に合わせて、腕部311、312の材質だけでなく、スリットの形状や腕部311、312の幅を調整することにより、上述した腕部311、312の機能を発揮させてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…手振れ補正装置、100…固定側ユニット、110…固定側フレーム、111…設置部、120、130…駆動部、121、131…ステッピングモータ、121a、131a…リードスクリューシャフト、122、132…ナット、122a、132a…凸部、122b、132b…突出部、140、150…位置センサ、141…センサフレーム、200…可動側ユニット、210…基板、220…カメラユニット、230…コネクタ、300…連結部、310…可動側フレーム、310a、310b…スリット、311、312…腕部、311a、312a…先端部、313…本体部、313a、313b、313c…挟持部、313d…突出部、313e…挿通孔、320…板バネ、321…基部、322…バネ部、322a…先端部、400…球面ヒンジ、410…凸部、410a…凸面、420…凹部、420a…凹面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ及び撮像素子が一体的に設けられたカメラユニットを含む可動側ユニットと、
前記可動側ユニットを揺動させる駆動部を備える固定側ユニットと、
前記可動側ユニットが前記固定側ユニットに対して相対的に揺動可能に連結する連結部と、
カメラの振れ量を検出する振れ検出部と、
前記振れ検出部により検出された前記カメラの振れ量に基づいて、前記駆動部を制御して、前記可動側ユニットを前記固定側ユニットに対して前記カメラの振れ量を打ち消すように揺動させる制御部と、を備え、
前記連結部は、前記駆動部の駆動力を前記可動側ユニットに伝達し、かつ外部から前記駆動部への衝撃力を吸収する、
ことを特徴とする手振れ補正装置。
【請求項2】
前記連結部は、
前記可動側ユニットと前記固定側ユニットとが相互に係合する1つのヒンジ部と、
前記ヒンジ部を中心として、前記可動側ユニットの前記固定側ユニットに対する揺動を許容するとともに、前記ヒンジ部の係合が外れないように付勢する付勢部材と、を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の手振れ補正装置。
【請求項3】
前記連結部は、前記可動側ユニットを支持する可動側フレームを含み、
前記可動側フレームには、前記駆動部の駆動力を前記可動側ユニットへ伝達し、かつ外部から前記駆動部への衝撃力を吸収する伝達部材が一体として形成されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の手振れ補正装置。
【請求項4】
前記駆動部は、前記カメラユニットの光軸に対して平行に前記可動側フレームを移動させる第1の駆動部と第2の駆動部とを含み、
前記伝達部材は、前記第1の駆動部の駆動力を前記可動側ユニットに伝達する第1の伝達部材と、前記第2の駆動部の駆動力を前記可動側ユニットに伝達する第2の伝達部材と、を含み、
前記第1の駆動部と前記第2の駆動部は、互いに同一方向、または反対方向の駆動力をそれぞれ前記第1の伝達部材と前記第2の伝達部材に伝達する、
ことを特徴とする請求項3に記載の手振れ補正装置。
【請求項5】
前記第1の伝達部材と前記第2の伝達部材は、前記可動側フレームに形成されたスリットによりアーム状に形成されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の手振れ補正装置。
【請求項6】
前記第1の伝達部材と前記第2の伝達部材は、前記第1の駆動部と前記第2の駆動部に対応するように対称な位置関係で配置されている、
ことを特徴とする請求項4または5に記載の手振れ補正装置。
【請求項7】
前記第1の伝達部材と前記第2の伝達部材は、前記第1の駆動部と前記第2の駆動部の駆動力を伝達する際の前記第1の伝達部材と前記第2の伝達部材のたわみが前記可動側ユニットの揺動に影響を与えない材料から構成されている、
ことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の手振れ補正装置。
【請求項8】
前記第1の伝達部材と前記第2の伝達部材は、SUS系の金属材料から構成されている、
ことを特徴とする請求項4乃至7のいずれか1項に記載の手振れ補正装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の手振れ補正装置と、この手振れ補正装置を収容する電子機器本体と、を有する、
ことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−48059(P2011−48059A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195300(P2009−195300)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】