説明

手捏ねパン生地の製造方法

【課題】
パンを手捏ねで行う場合、相当の労力が必要で、労力を軽減しようと思えば少ししか生地が作れない。
【解決手段】
配合の一部の材料を手捏ねで発酵種として作成及び発酵。発酵終了後に残りの材料を入れて手捏ねで本仕込みをするが、混ぜたり、麺棒で伸ばし巻き込んだりと従来と比較して7分の1〜3分の1程度の労力での手捏ねで生地が完成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は手捏ねパン生地の作成を簡単及び楽にする為の製法である。
【背景技術】
【0002】
手捏ねパン生地は従来機械(ミキサー)が導入される前は、パン職人が手捏ねでパン生地の製造を行っていたが、機械(ミキサー)が導入されると手捏ねはほとんど無くなった。
【0003】
近年、家庭で手捏ねパンを作る方が増え、多くは自己流若しくは本などの製法でおよそ200回〜300回も捏ねてパン生地を作成している。
【特許文献1】特開昭63-160540
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
中種法という、発酵種と近いものがあるが、機械を使用しての製法である。中種の時間がかかりすぎる事や、PH調整剤を使用し、PH値を下げる手法をとっている。前記の中種法では、家庭で手捏ねのパン作りは不向きである。また従来の手捏ねの製法でパンを手捏ねで行う場合、相当の労力が必要で、労力を軽減しようと思えば少ししか生地が作れない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
パン生地製造に使用される小麦粉等の穀類の量を100%として、小麦粉等の穀類の30%から60%の粉と塩、その他の材料などを混ぜ合わせた発酵種を作成し、次に前記の発酵種が発酵した後,前記の発酵種に残りの70%から40%の小麦粉等の穀類の粉を混入し、その後手捏ねで生地を作成する手捏ねパン生地の製造方法。

【0006】
発酵種のPHが低下(4.8〜5.8)するとともに、小麦粉等の穀類の粉と塩、その他の材料などを水和した状態で発酵が終わる、請求項1に記載の手捏ねのパン生地の製造方法。

【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来200回〜300回も手捏ねでパン生地を混ぜなければならない労力を、30回〜60回の混ぜる、麺棒を使用することで簡単かつ楽に手捏ねのパン生地の作成が出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0009】
まず、本発明の形態の手捏ねパン類の製造方法における手捏ねパン類の生地の原料について説明する。本発明における基本的な配合は以下のとおりであり、下記記載の範囲で適宣選択すればよい。
・原料配合(質量部)
穀粉 100
塩 0.5〜2.5
糖類 0〜20
卵 0〜20
乳製品 0〜20
油脂 0〜50
イースト 0〜3.0
水 0〜70
自家製酵母 0〜100
天然酵母 0〜100
【0010】
(1)穀粉について
穀粉としては、小麦粉(強力粉)が主であるが、場合によりライ麦粉、米粉、タピオカデンプンなどを適宣配合してもよい。
(2)糖類について
糖類としては、グラニュー糖が主であるが、場合により上白糖、三温糖、黒糖、モラセス、和三盆などを適宣配合してもよい。
(3)油脂について
油脂としては、バターが主であるが、場合によりコンパウンドマーガリン、オリーブオイル、グレープシードオイル、サラダ油、ショートニングなどを適宣配合してもよい。
(4)その他の原料について
本発明においてはその他の原料を配合してもよい。その他の原料の例としては、澱粉、油脂、鶏卵、乳製品、ドライフルーツ(例えば、干しブドウ、ブルーベリー、ストロベリー、ラズベリー、ブラックベリー、クランベリー)、乾燥野菜(例えば、パンプキンチップ、ドライトマト、サツマイモチップなど)、各種ナッツ類(マカダミアナッツ、ピーナッツなど)バジル、、シナモンなどのハーブ類などが挙げられる。この場合、穀粉100質量部に対して、その他の原料1〜15質量部を添加することができる。
【0011】
また、果汁、野菜ジュース、豆乳、各種エキス(例えばモルトエキスなど)などの液体原料を添加してもよい。この場合、水をこれら液体原料で一部または全て置き換えればよい。
【0012】
次に本実施の手捏ねパン類の生地の製造方法について説明する。
〔1〕行程 発酵種作成
すべての材料を常温に出し、小麦粉等の穀類の50パーセントの粉と、イースト、塩、糖類、卵、乳製品、油脂をダマにならない手順でケーキクリーナー、ホイッパー等で合わせていき、ホットケーキ生地くらいのトロッとした感じで混ぜ合えば完成。
〔2〕工程 発酵
家庭用のオーブン及びオーブンレンジの発酵機能で40℃〜45℃で30分〜3時間発酵種を発酵。
〔3〕工程 本捏ね
発酵種がフワッとした感じでケーキクリーナーで生地をさぐれば、発酵による炭酸ガスとアルコールの気泡がアメーバー状の発酵模様として見られる。その状態で残りの小麦粉等の穀類の50%の粉を入れ、粉のダマが無くなるまでケーキクリーナー若しくは手でしっかり混ぜる。手につきにくくなった状態で、打ち込んだり、麺棒で伸ばし巻いたりを繰り返すことにより30〜60回くらいで生地の完成。

【0013】
次に本発明の製法と従来から行なわれている手法による、手捏ねのパンの製造に於ける作業性と食感について、比較対比して証明する。
〔1〕本発明の配合と工程は下記のとおりである。
発酵種
配合表
塩 5g
グラニュー糖 100g
バター 75g

卵 100g

スキムミルク 10g
牛乳 75g

水 150g
ドライイースト 10g

強力粉 250g
工程
・全ての材料を常温に出しておく。
・水とドライイーストを溶かし、イースト溶液を作る。
・塩、グラニュー糖、バターを混ぜ合わせる。
・卵を溶き上記と合わせる。
・上記にスキムミルクと牛乳、イースト溶液を入れ強力粉を合わせる。ダマにならない手順で
・道具はケーキクリーナー、ホイッパー等で合わせていき、ホットケーキ生地くらいのトロッとした感じで混ぜれば完成
・捏上温度 25℃
・発酵時間 30分〜40分(家庭用オーブン)
・発酵終了時PH 5.2
本捏ね
配合表
強力粉 250g
工程
・発酵種がフワッとした感じでかつ
ケーキクリーナーで生地をさぐれば炭酸ガスとアルコール発酵による
気泡のアメーバー状の発酵模様が見える。その状態で本捏ね配合表の強力粉をいれダマが無くなるまでケーキクリーナー若しくは手でしっかり混ぜる。手につきにくくなった状態で、打ち込んだり、麺棒で伸ばし巻いたりを繰り返すことにより30〜60回くらいで生地の完成。
・捏上温度 25℃
・第一次発酵 40分(家庭用オーブン)
・分割・丸め 40g
・第二次発酵 15分(家庭用オーブン)
・成型
・最終発酵 30分(家庭用オーブン)
・焼成 160℃ 10分(家庭用オーブン)

〔2〕比較例1の配合と工程は下記のとおりである。
配合表
塩 5g
グラニュー糖 100g
卵 100g
スキムミルク 10g
牛乳 75g
水 150g
ドライイースト 10g
強力粉 500g

バター 75g

工程
・水とドライイーストを溶かし合わせバター以外の全ての材料を160回位手で捏ねる。生地がまとまってきたらバターを入れて120回位手で捏ねる。
・捏上温度 25℃
・第一次発酵 60分(家庭用オーブン)
・分割・丸め 40g
・第二次発酵 15分
・成型
・最終発酵 30分
・ 焼成 160℃ 10分(家庭用オーブン)

【0014】
10名のパネラーによる手捏ねのパン生地作成の作業性と完成品の食感なども比較対照とし、官能検査をおこなう
【表1】



実施例1、比較例1でパン生地の作成の作業性と
製造されたパンを室温で36時間放置した後、表2の評価項目、評価基準に基づき、10人のパネラーにより評価した。その結果として、10人のパネラーによる評点の平均値を表2に示す。
【0015】
【表2】



以上の結果より、本発明の製造方法で作業性も良く、同時に時間が経過してもその優れた食感が保持され、その品質が低下しにくいことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パン生地製造に使用される小麦粉等の穀類の量を100%として、小麦粉等の穀類の30%から60%の粉と塩、その他の材料などを混ぜ合わせた発酵種を作成し、次に前記の発酵種が発酵した後,前記の発酵種に残りの70%から40%の小麦粉等の穀類の粉を混入し、その後手捏ねで生地を作成する手捏ねパン生地の製造方法。
【請求項2】
発酵種のPHが低下(4.8〜5.8)するとともに、小麦粉等の穀類の粉と塩、その他の材料などを水和した状態で発酵が終わる、請求項1に記載の手捏ねのパン生地の製造方法。