説明

手摺り取付け構造

【課題】壁面に腰壁の上端部等の段差があっても取付け位置の調整が容易であり、意匠性に優れ、かつ使用しや易い手摺りの取付け構造を提供する。
【解決手段】手摺り本体1の一方の側面を壁面Wへの取付け固定面2とし、該取付け固定面2に対応する他方の側面を固定具を打込む打込み面3とし、手摺り本体1の上部に手摺り部4を形成してなる手摺りにおいて、手摺りの取付け固定面2に下方に開放する切欠き段部21を形成するとともに、上記切欠き段部21に対向した位置の打込み面3に凹溝部31を形成し、該凹溝部31と切欠き段部21を連通する貫通孔5を複数形成し、該手摺り本体1の切欠き段部21を壁面W設けられた腰壁パネルPに係合し、該凹溝部31から上記貫通孔5を貫通した固定手段7で該手摺り本体1を腰壁パネルPに固定してなる手摺り取付け構造A。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は手摺りに関するものであり、詳しくは、廊下や階段等の壁面に取付けられる手摺りの取付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、手摺りとしては、例えば、壁面に取付けられた本体部に略円筒形状のにぎり部が支持されたものが知られており、特開平8−114016号公報には上記した構造を有する壁面密着タイプの手摺りが開示されている。
【0003】
すなわち、上記公報には、長尺な手摺り部材が壁面に密着した状態で取付けられる手摺りにおいて、上記手すり部材に、側面側に壁面への取付面が形成され、上面側に歩行者の下腕部を支持可能な平坦面が形成された本体部と、本体部から歩行者側に延出され、上部側がこの本体部の平坦面より上方に突出するように形成されているにぎり部とを設けてなる壁面密着タイプの手摺りが提案されている。
【0004】
そして、軽度の足腰弱体者は、手の平を手すり部材のにぎり部に当てつつ歩行し、これより足腰の弱い者は、手すり部材の平坦面に下腕部を当てつつ歩行できるため、歩行者の足腰の弱さの程度にかかわらず、その機能を充分に発揮できるとその効果が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−114016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の手摺りにおいては、手すり部材の平坦面に手や下腕部を当てつつ歩行できるという効果はあるが、上記平坦面を手で掴もうとする際に、手摺りに対して横方向あるいは下方から指先を掛ける形状となっているため、上方からしっかりと掴みにくいという問題がある。
【0007】
また、壁面密着タイプであることから、壁面に、上端面が見切り部を構成するように加工された腰壁が固着されているときは、腰壁の上端部を納めて該壁面に取付ける必要があり、取付け高さの位置調整が困難であるという問題がある。
【0008】
本願発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、取付け位置の調整が容易であり、意匠性に優れ、かつ使用しや易い手摺りの取付け構造を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本願請求項1に記載の発明に係る手摺り取付け構造は、手摺り本体の一方の側面を壁面への取付け固定面とし、該取付け固定面に対向する他方の側面を固定具を打込む打込み面とし、手摺り本体の上部に手摺り部を形成してなる手摺りにおいて、手摺りの取付け固定面に下方に開放する切欠き段部を形成するとともに、上記切欠き段部に対応する位置の打込み面に凹溝部を形成し、該凹溝部と切欠き段部とを連通する貫通孔を複数上下に間隔をおいて形成し、該手摺り本体の切欠き段部を壁面設けられた腰壁パネルに係合し、該凹溝部から上記貫通孔を貫通した固定手段で該手摺り本体を腰壁パネルに固定してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本願請求項1記載の発明に係る手摺り取付け構造においては、主たる構成要素である手摺り本体の一方の側面を壁面への取付け固定面とし、この取付け固定面に下方に開放する断面逆L字形の切欠き段部を形成してこの切欠き段部に腰壁パネルの上端部を係合することができるため、腰壁パネル自体が支持部として機能し、手摺り本体をしっかりと支えることができる。
【0011】
さらに、上記切欠き段部に対応する位置の打込み面に設けた凹溝部から、上記切欠き段部に連通する貫通孔を複数間隔をおいて形成し、この貫通孔を通じて固定手段、例えばネジを螺入することによって手摺り本体を腰壁パネルと壁面とに固定するため、上記した切欠き段部との係合による支持と共同してしっかりと手摺り本体を腰壁パネルに取付けることができる

【0012】
また、手摺り本体の取付け高さは、切欠き段部の天井面と腰壁パネルの上端面との間で距離d分、通常10mm〜15mmだけ隔てるようにして取付け可能とされているため、足腰弱体者が、手摺り部を握って歩行するとき、最も歩行し易い位置に手摺り本体の取付け位置を調整して取付けることができる。
【0013】
さらに、腰壁パネルの上端見切り部に凹凸が存在したり、平滑でない場合でも手摺り本体が目隠しとなって見切り部を構成し、腰壁パネルと手摺り本体とを意匠性よく一体的に仕舞うことが可能となり、意匠性を高めることができる。また腰壁パネル自体は、使用者の脚部や車椅子の車輪等が当たっても壁面を保護するとともに、廊下や室内の装飾性を向上させるという効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本願発明に係る手摺り本体を示す部分斜視図。
【図2】(a)上記手摺り本体を、壁面の下半分に固着された腰壁パネルの上端部に取付ける形態を示す部分断面説明図。(b)上記手摺り本体を、壁面の下半分に固着された腰壁パネルの上端部からやや上方に取付ける形態を示す部分断面説明図。
【図3】本願発明に係る手摺り取付け構造を示す部分断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本願発明に係る手摺り取付け構造の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、上記手摺り取付け構造の主構成要素である手摺り本体1を示す部分斜視図である。
【0016】
図1に示すように、上記手摺り本体1の一方の側面は後記する腰壁パネルへの取付け固定面2とし、該取付け固定面2に対向する他方の側面をタッピングビス等の固定手段を打込む打込み面3とし、手摺り本体1の上部には手摺り部4が起立して形成されている。上記手摺り部4は、壁面対向面42と上面41と上記打込み面3とから構成されている。
【0017】
図示するように、上記取付け固定面2には、下方に開放する断面逆L字形の切欠き段部21が設けられ、上記切欠き段部21に対向する位置の打込み面3には凹溝部31が形成されている。
【0018】
上記手摺り本体1は、床面に対して略平行に、かつ床面から例えば成人のおよそ腰の位置の高さで壁面に固着された腰壁パネルに沿って取付けられる。手摺り本体1は、MDF(中密度繊維板)等の木質材からなり、長尺で断面視において略L字状に形成されており、その表面には樹脂材等からなる表面化粧シート(図示せず)が貼着され一体とされている。
【0019】
表面化粧シートは、手摺り本体1の全面に貼着してもよいが、少なくとも手摺り本体1の取付け状態において露出する下端面11、固定手段の打込み面3、起立する手摺り部4の表面である手掛部12、傾斜面13および水平面14等に表面化粧シートが貼着されていることが望ましい。
【0020】
上記下端面11の幅寸法はとくに限定されるものではないが、例えば60mm〜70mm程度とすれば、狭い廊下等に手摺り本体を設置する場合でも邪魔になることなく、コンパクトに構成できる。
【0021】
また上記打込み面3の縦寸法もとくに限定されるものではないが、例えば75mm〜85mm程度とすれば、凹溝部31の縦寸法を適切に形成できその後の手摺り本体1の固定作業が容易となり、また、手摺り本体1としての強度を十分に備えたものとすることができる。上記水平面14から傾斜面13を介して凹状に形成された手掛部12は、手摺り本体1の前方から手で手摺り部4を掴んだ際に指先が引っ掛けられる深さに形成され、握力の弱い高齢者や病人、幼児等が掴み易いように手摺り部4の幅寸法は、25mm〜35mm程度とすることが望ましい。
【0022】
図2(a)は、本願発明に係る手摺り本体1を、壁面Wの下半分に固着された腰壁パネルPの上端部に取付ける形態を示す部分断面説明図である。該図2(a)に示すように、上記手摺り本体1を腰壁パネルPに取付けた場合、上記手摺り部4を構成する壁面対向面42と壁面Wとは略平行に配置される。
【0023】
上記手掛部12から腰壁パネルPへの取付け固定面2に連なる面には、斜めに傾斜した傾斜面13が形成されているものとしてもよい。傾斜面13の傾斜角度はとくに限定されるものではなく、手摺り本体1の大きさ等に応じて適宜設定され、図示するように湾曲した傾斜面13としてもよい。
【0024】
このように、手摺り部4と手摺り本体1の水平面14との間を略直角の角部とはせずに傾斜面13とすることにより、手摺り部4の強度が安定するとともに手掛部12から取付け固定面2に連なる面に溜まる埃などを掃除し易いものとすることができる。
【0025】
さらに、手摺り本体1の下端面11とネジ等の固定手段の打込み面3との角部、打込み面3と手摺り部4の上面41とで形成される角部、上記手摺り部4の上面41と壁面対向部42との角部等の各角部はそれぞれがR加工されているものとしてもよい。また図示していないが、上記の各角部が面取り加工されているものとしてもよい。このようにすることによって、手摺り本体1の上記R加工された角部に身体の一部が過って強く当たった場合でもその痛手を最少に抑えることができる。また手掛部12の握り心地がよいものとすることができる。
【0026】
図2(a)に示されているように、上記手摺り本体1の取付け固定面2を切り欠いて形成された切欠き段部21の天井面211は、腰壁パネルPの上端部と接触し、係合するように取付けられる。このとき、腰壁パネルPの上端部は切欠き段部21の天井面211と接触しているため、腰壁パネルP自体が支持部として機能し、手摺り本体1を壁面Wに固定するネジ等の固定手段と共同して、しっかりと手摺り本体1を腰壁パネルPに取付けることができる。
【0027】
つぎに、手摺り本体1を腰壁パネルPに取り付ける方法について説明する。ここでは、固定手段としてネジを用いる場合について述べる。まず、図2(a)に示すように、上記打込み面3に形成された凹溝部31から切欠き段部21に向けて2個の貫通孔5を穿設する。このとき、貫通孔5の軸がぶれないように治具6を使用し、ドリル等の適当な穿孔手段を用いて図2(a)に示す一点鎖線を中心軸として穿たれる。上記貫通孔5の数は、例えば、上下2個の貫通孔5を等間隔で10列に設ける等、手摺り本体1の長さに応じて設定され、所望の数を穿孔する。穿孔後、上記治具6は取り去られる。
【0028】
図2(b)は、上記手摺り本体1を、壁面Wの下半分に固着された腰壁パネルPの上端部からやや上方に取付ける形態を示す部分断面説明図である。図2(b)に示すように、手摺り本体1は、切欠き段部21の天井面211が腰壁パネルPの上端面から距離d分だけ隔てるようにして取付けられる。ここで距離dは、通常10mm〜15mmとされる。
【0029】
このように、手摺り本体1の取付け位置が上記dの範囲で微調整が可能であるため、足腰弱体者が、手摺り部4を握って歩行するとき、最も歩行し易い位置に手摺り本体1を取付けることができる。さらに、腰壁パネルPの上端部に凹凸があったり平滑でない場合でも、手摺り本体1が目隠しをして一体的に仕舞うことが可能となり、すっきりとした外観で手摺り本体1を腰壁パネルPに取付けることができる。
【0030】
図3は、本願発明に係る手摺り取付け構造Aを示す部分断面説明図である。同図に示すように、凹溝部31から切欠き段部21に向けて形成された貫通孔5に固定手段7として用いたタッピングビスを挿通させる。タッピングビスを貫通孔5に挿通した後、該タッピングビスをドリル等で腰壁パネルPに螺入し、さらに壁面Wを構成する躯体に螺着していく。このようにして、ドリル等でタッピングビスを腰壁パネルPと躯体に固着することにより、手摺り本体1をしっかりと腰壁パネルPに取付けることができる。
【0031】
上記のようにして手摺り本体1を腰壁パネルPに取付けた後、凹溝部31はカバー部材8で塞がれる。カバー部材8は、ABS樹脂等の合成樹脂からなり、凹溝部31の形状、大きさに合わせて凹状に形成され、タッピングビスの頭等固定手段7が露出しないように嵌め込まれる。ここで、手摺り本体1の打込み面3とカバー部材8とが略面一となるように、カバー部材8を形成することによって、見栄えよく、また足腰弱体者が伝い歩きする際に手摺り本体1に寄りかかっても固定手段7に当たることなく、安全に使用することができる。
【0032】
図3に示した上記した手摺り取付け構造Aは、図2(a)に示す形態についてであるが、図2(b)に示す形態も、同様にして手摺り本体1をしっかりと腰壁パネルPに取付けることができる。
【0033】
以上、本願発明に係る手摺り取付け構造Aを床面に平行に取付ける実施形態について説明したが、階段等傾斜のある場所に取付けることも可能である。このように本願発明に係る手摺り取付け構造は設計変更自在であり、特許請求の範囲を逸脱しない限り、本願発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0034】
A 本願発明に係る手摺り取付け構造
P 腰壁パネル
W 壁面
d 切欠き段部の天井面と腰壁パネルの上端面との距離
1 手摺り本体
11 下端面
12 手掛部
13 傾斜面
14 水平面
2 腰壁パネルへの取付け固定面
21 切欠き段部
211 天井面
3 固定手段の打込み面
31 凹溝部
4 手摺り部
41 上面
42 壁面対向面
5 貫通孔
6 治具
7 固定手段
8 カバー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手摺り本体の一方の側面を壁面への取付け固定面とし、該取付け固定面に対応する他方の側面を固定具を打込む打込み面とし、手摺り本体の上部に手摺り部を形成してなる手摺りにおいて、手摺りの取付け固定面に下方に開放する切欠き段部を形成するとともに、上記切欠き段部に対応する位置の打込み面に凹溝部を形成し、該凹溝部と切欠き段部とを連通する貫通孔を複数形成し、該手摺り本体の切欠き段部を壁面設けられた腰壁パネルに係合し、該凹溝部から上記貫通孔を貫通した固定手段で該手摺り本体を腰壁パネルに固定してなる手摺り取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−246603(P2012−246603A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116654(P2011−116654)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】