説明

手書き入力装置およびプログラム

【課題】手書き入力中の見易さを確保し、また全体のレイアウトを崩さないようにして既存の手書きオブジェクトに新たな手書きオブジェクトを挿入することのできる手書き入力装置を提供する。
【解決手段】追記マーク31の記入により追記モードに入る。追記モードでは背景が半透明の追記領域32を既存オブジェクト34の上に重ねて表示し、追記領域32内で追記オブジェクトの手書き入力を受ける。追記領域32は手書き入力に応じて順次拡大する。追記オブジェクト36の入力が完了した時点でこの追記オブジェクト36のサイズに基づき、周囲の既存オブジェクト34を必要量だけ移動させて、追記オブジェクト36を手書き位置に挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字・図形などの手書き入力を受けてその内容を表示する手書き入力装置およびそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータのデスクトップ画面に表示されるアイコンのように表示/移動位置が決められているものであれば、既に並んで表示されているアイコンの列に別のアイコンを挿入する際に、比較的容易な処理により、既存のアイコンを自動的に移動させて挿入に必要な空き領域を確保することができる。
【0003】
しかし、手書き入力された文字・図形などの手書きオブジェクトの場合、それぞれの手書きオブジェクトのサイズや位置が自由で不規則なため、既存のオブジェクトを自動的に移動させて適切に挿入することは難しい。そのため、手書きオブジェクトが既に表示されているところに別の手書きオブジェクトを追記する場合には、新たなオブジェクトを既存のオブジェクトと重ならない空きエリアに手書きし、この新たなオブジェクトと既存のオブジェクトとを矢印等で結んで擬似的な関連を持たせるといったことしかできず、それらが増えると、非常に見難い状態になっていた。
【0004】
なお、手書き入力における挿入技術としては、たとえば、手書き入力中に、既に入力された手書きストロークの並び方から、次に手書き入力される位置を予測し、その予測した位置に空きスペースが確保されるように、既存のオブジェクトを、X/Y軸方向の移動距離が小さい方向に次々と移動させる技術がある(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−79623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、手書き入力中に、次の手書き入力位置を予測し、その予測位置に空きスペースが確保されるように、既存のオブジェクトを次々と移動させる技術では、予測が外れた場合には、ユーザの意図した位置への手書き入力が難しくなる。
【0007】
また、入力の度に周囲のオブジェクトが移動すると、ユーザにとって非常に見難い状況が発生する。
【0008】
また、次の入力予測位置に従って既存のオブジェクトを次々に移動させると、次の入力のみに対応した場当たり的な移動が積み重なり、入力終了時には、既存のオブジェクトのレイアウトが大きく崩れてしまう恐れがある。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、手書き入力中の見易さを確保して、既存の手書きオブジェクトに新たな手書きオブジェクトを挿入することのできる手書き入力装置およびそのプログラムを提供することを目的としている。また、全体のレイアウトを崩さないようにして既存の手書きオブジェクトに新たな手書きオブジェクトを挿入することのできる手書き入力装置およびそのプログラムを提供することを第2の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0011】
[1]手書きオブジェクトの入力を受ける手書き入力部と、
前記手書き入力部から入力された手書きオブジェクトを表示する表示部と、
制御部と
を備え、
前記制御部は、所定の追記指示を受けた手書きオブジェクトの手書き入力中はその手書きオブジェクトを既存のオブジェクトに重ねて表示し、前記手書きオブジェクトの入力が完了したとき、この手書きオブジェクトを既存のオブジェクトに挿入して表示する挿入処理を行う
ことを特徴とする手書き入力装置。
【0012】
上記[1]および下記[10]に記載の発明では、追記指示を受けた手書きオブジェクトの手書き入力中はその手書きオブジェクトを既存のオブジェクトに重ねて表示し、手書きオブジェクトの入力が完了したとき、この手書きオブジェクトを既存のオブジェクトに挿入して表示する。入力完了後に挿入処理を行うので、入力完了により確定した手書きオブジェクトのサイズやその周囲の状況に応じた挿入処理が行われ、全体のバランスを崩すことなく既存の手書きオブジェクトに新たな手書きオブジェクトを挿入することができる。
【0013】
[2]前記制御部は、前記追記指示を受けた手書きオブジェクトの手書き入力中は、少なくとも既存のオブジェクトと重なる部分の前記手書きオブジェクトの背景を、この手書きオブジェクトを見易くする所定の背景に変更する
ことを特徴とする[1]に記載の手書き入力装置。
【0014】
上記[2]および下記[11]に記載の発明では、追記指示を受けた手書きオブジェクトの手書き入力中は、その手書きオブジェクトを見易くする背景が表示される。たとえば、白色の背景、無地で半透明の背景などが適する。
【0015】
[3]前記制御部は、余白を詰めるように既存のオブジェクトを移動させることで、前記手書きオブジェクトの入力位置に前記手書きオブジェクトを挿入するための空き領域を確保する
ことを特徴とする[1]または[2]に記載の手書き入力装置。
【0016】
上記[3]および下記[12]に記載の発明では、手書きオブジェクトの入力位置の周囲にある既存のオブジェクト等を、手書きオブジェクトの入力位置から見て該周囲の既存のオブジェクトの向こう側にある余白を詰めるように移動させることで、手書き位置に空き領域を確保するので、大きなレイアウトの変更は生じない。
【0017】
[4]前記制御部は、前記手書きオブジェクトを挿入するために移動させる既存のオブジェクトの指定をユーザから受け付け、その指定された既存のオブジェクトを移動させて前記空き領域を確保する
ことを特徴とする[3]に記載の手書き入力装置。
【0018】
上記[4]および下記[13]に記載の発明では、ユーザは、新たな手書きオブジェクトを挿入するために移動させる既存のオブジェクトを指定することができる。
【0019】
[5]前記制御部は、余白を詰めることにより前記手書きオブジェクトを挿入可能な空き領域を確保できない場合は、既存のオブジェクトおよび前記手書きオブジェクトを縮小して余白を詰めることで、縮小した前記手書きオブジェクトを挿入可能な空き領域を確保する
ことを特徴とする[3]または[4]に記載の手書き入力装置。
【0020】
上記[5]および下記[14]に記載の発明では、余白を詰める移動だけでは必要なサイズの空き領域を確保できない場合は、縮小処理が行われる。手書きオブジェクトの追記完了後にその手書きオブジェクトを挿入できないといった事態の発生が回避される。
【0021】
[6]前記所定の背景は、既存のオブジェクトの上に重ねる、不透明もしくは低透過度の背景である
ことを特徴とする[2]に記載の手書き入力装置。
【0022】
上記[6]および下記[15]に記載の発明では、不透明の背景は既存のオブジェクトが覆い隠されるので、手書きの内容が見やすくなる。一方、低透過度(半透明)の背景の場合は、下層にある既存のオブジェクトの内容を確認しながら追記することができる。
【0023】
[7]前記追記指示は、所定の追記開始マークの手書き入力である
ことを特徴とする[1]乃至[6]のいずれか1項に記載の手書き入力装置。
【0024】
上記発明では、追記開始マークを追記したい位置に書き込むことで、追記の開始を指示することができ、良好な操作性が提供される。
【0025】
[8]前記手書きオブジェクトの入力の完了は、所定の追記終了マークの手書き入力により判別する
ことを特徴とする[1]乃至[7]のいずれか1項に記載の手書き入力装置。
【0026】
上記発明では、手書き入力により、追記の終了を指示することができ、良好な操作性が提供される。
【0027】
[9]前記手書きオブジェクトを挿入するために移動させる既存のオブジェクトの指定は、移動対象の既存のオブジェクトに対する所定の選択マークの手書き入力である
ことを特徴とする[4]に記載の手書き入力装置。
【0028】
上記発明では、手書き入力により、移動対象のオブジェクトを指定することができ、良好な操作性が提供される。
【0029】
[10]手書きオブジェクトの入力を受ける手書き入力部と、前記手書き入力部から入力された手書きオブジェクトを表示する表示部とを備えた情報処理装置を、
所定の追記指示を受けた手書きオブジェクトの手書き入力中はその手書きオブジェクトを既存のオブジェクトに重ねて表示し、前記手書きオブジェクトの入力が完了したとき、この手書きオブジェクトを既存のオブジェクトに挿入して表示するように動作させる
ことを特徴とするプログラム。
【0030】
[11]前記情報処理装置を、
前記追記指示を受けた手書きオブジェクトの手書き入力中は、少なくとも既存のオブジェクトと重なる部分の前記手書きオブジェクトの背景を、この手書きオブジェクトを見易くする所定の背景に変更する
ように動作させる
ことを特徴とする[10]に記載のプログラム。
【0031】
[12]前記情報処理装置を、
余白を詰めるように既存のオブジェクトを移動させることで、前記手書きオブジェクトの入力位置に前記手書きオブジェクトを挿入するための空き領域を確保するように動作させる
ことを特徴とする[10]または[11]に記載のプログラム。
【0032】
[13]前記情報処理装置を、
前記手書きオブジェクトを挿入するために移動させる既存のオブジェクトの指定をユーザから受け付け、その指定された既存のオブジェクトを移動させて前記空き領域を確保するように動作させる
ことを特徴とする[12]に記載のプログラム。
【0033】
[14]前記情報処理装置を、
余白を詰めることにより前記手書きオブジェクトを挿入可能な空き領域を確保できない場合は、既存のオブジェクトおよび前記手書きオブジェクトを縮小して余白を詰めることで、縮小した前記手書きオブジェクトを挿入可能な空き領域を確保するように動作させる
ことを特徴とする[12]または[13]に記載のプログラム。
【0034】
[15]前記所定の背景は、既存のオブジェクトの上に重ねる、不透明もしくは低透過度の背景である
ことを特徴とする[11]に記載のプログラム。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る手書き入力装置およびそのプログラムによれば、手書き入力中の見易さを確保し、また全体のレイアウトを崩さないようにして、既存の手書きオブジェクトに新たな手書きオブジェクトを挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態に係る手書き入力装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る手書き入力装置の追記モードにおける手書き入力作業の概略を示す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る手書き入力装置の追記モードにおけるオブジェクトの移動方向指示、移動対象指示の記入例を示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る手書き入力装置が手書き入力を受けてその表示を行う際の動作の概要を示す流れ図である。
【図5】座標検知処理(図4のステップS102)を示す流れ図である。
【図6】オブジェクト認識処理(図4のステップS107)の詳細を示す流れ図である。
【図7】図6の続きを示す流れ図である。
【図8】文字が入力された場合のオブジェクト認識処理の動作の具体例を示す説明図である。
【図9】オブジェクト認識処理によって複数の手書き内容が2個のオブジェクトに区分されて認識された例を示す説明図である。
【図10】全体エリア余白算出処理(図4のステップS110)による余白エリアの探索および登録の具体例を示している。
【図11】全体エリア余白算出処理の詳細を示す流れ図である。
【図12】追記領域初期設定処理(図4のステップS112)の詳細を示す流れ図である。
【図13】追記領域拡張処理(図4のステップS121)によって追記領域が順次拡張される様子の一例を示す説明図である。
【図14】追記オブジェクト状態設定処理(図4のステップS118)の詳細を示す流れ図である。
【図15】図14の続きを示す流れ図である。
【図16】余白エリアの不足時であって移動対象(または移動方向)が指定された場合の一例を示す説明図である。
【図17】余白エリアの不足時の縮小処理の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0038】
図1は、本発明に係る手書き入力装置10の構成例を示している。
【0039】
手書き入力装置10は、制御部11に、表示部12と、操作入力部13と、無線通信部14と、外部メモリ接続部15とを接続して構成される。手書き入力装置10の動作を統括制御する制御部11は、CPU(Central Processing Unit)16、FlashROM(Read Only Memory)17、メモリ18などを主要部として構成される。
【0040】
表示部12は液晶ディスプレイなどで構成される。操作入力部13は、表示部12の画面上に設けられ、この画面上へのペンなどの接触位置を検出するタッチパネル部(座標位置検出センサ)13aのほか、各種の操作スイッチで構成される。操作入力部13はタッチパネル部13aからユーザの手書きによる文字、図形などオブジェクト(手書きオブジェクト)の入力を受ける。タッチパネル部13aの検知方式は、静電容量、アナログ/デジタル抵抗膜、赤外線、超音波、電磁誘導等、任意でよい。
【0041】
無線通信部14は、無線通信によりネットワークと接続し、他の機器と通信する機能を果たす。
【0042】
制御部11のFlashROM17は、電源をオフしてもその記憶内容が保持される書き換え可能なメモリである。FlashROM17には、各種プログラムやデータが格納され、これらのプログラムに従ってCPU16が各種の処理を実行することで手書き入力装置10としての各機能が実現される。また、FlashROM17には、手書き入力装置10に対して設定された各種設定値なども記憶される。メモリ18はCPU16がプログラムを実行する際に各種のデータを一時的に格納するワークメモリや表示データを一時記憶するメモリとして使用される。
【0043】
外部メモリ接続部15には、SD(Secure Digital)メモリカードなどが着脱可能に接続される。SDメモリには、たとえば、テンプレートのように予め定めたオブジェクト(パーツ)のデータなどが保存される。
【0044】
手書き入力装置10は、手書き入力モードとして、新たな手書きオブジェクトを既存のオブジェクトを移動させずに上書きする通常入力モードと、既存のオブジェクトを必要に応じて移動させて新たな手書きオブジェクトを挿入する追記モードとを備えている。通常入力モードは、空白部分に新たな手書きオブジェクトを書き込む場合や、既存のオブジェクトに新たな手書きオブジェクトを重ね書きする場合に使用される。
【0045】
追記モードでは、新たな手書きオブジェクトの書き込み中は、その書き込み中の新たなオブジェクトが既存のオブジェクトに重ねて表示され、書き込みが完了すると、その手書きオブジェクトをその手書き位置に挿入するために必要な空き領域が確保されるように、周囲の既存のオブジェクトが移動され、該移動によって確保された空き領域に新たな手書きオブジェクトが自動的に挿入される。また周囲にあった既存のオブジェクトの移動により、新たな手書きオブジェクトの挿入に必要なサイズの空き領域を確保できない場合は、既存のオブジェクトおよび新たな手書きオブジェクトの縮小が自動的に行われる。
【0046】
図2は、手書き入力装置10の追記モードにおける手書き入力作業の概略を示している。なお、手書き入力装置10の画面には、左上端を原点として、左から右方向を+のX軸方向、上から下方向を+のY軸方向とした座標系が設定されている。
【0047】
ユーザは、新たなオブジェクトを追記モードで手書きしたい場所に、予め定められた追記マーク31を手書きする(図2(a)参照)。手書き入力装置10は手書きの内容が追記開始指示(追記マーク31)か否かを判断し、追記マーク31であった場合は、手書き入力モードを追記モードに設定する。なお、追記開始指示は上記の追記マーク31に限定されない。また、追記開始指示は手書き入力以外の方法、たとえば、特定のスイッチの操作で入力する方法などであってもよい。
【0048】
手書き入力装置10は、追記モードに入ると、図2(b)に示すように、新たな手書き入力を受けるための追記領域32を、追記マーク31の記入された位置の+X方向のすぐ隣に表示する。追記領域32の初期サイズは、追記マーク31のサイズに応じて設定される。たとえば、+のX軸方向に追記マーク31の5倍、+のY軸方向に追記マーク31の2倍の矩形エリアを初期の追記領域32として設定する。
【0049】
追記領域32は、既存のオブジェクトの上に重ねて表示される不透明もしくは低透過度の無地の背景を有しており、追記領域32に手書き入力された文字・図形などはこの背景の上に表示される。これにより、追記領域32に書き込んだ文字などの手書きオブジェクトは、追記領域32の背景の下層に既存のオブジェクトがあっても、見やすく表示される。なお、追記領域32の背景が半透明の場合には、下層にある既存のオブジェクトを確認しながら追記することができる。図中の追記領域32は枠線を有するが枠線はなくても良い。
【0050】
追記領域32にユーザが文字などを手書きすると、それに応じて順次、追記領域32は拡張される。
【0051】
追記領域32への手書き入力の完了(追記モードの終了)を示す追記終了指示は、たとえば、「。」など、文の終わりを示す句点の記入や、特定マークの記入により行われる。追記終了指示は上記特定マークの記入に限定されない。たとえば、特定のスイッチの操作に従って追記モードの終了を指示するように構成してもよい。
【0052】
手書き入力装置10は追記領域32への手書きオブジェクトの書き込み完了を認識すると、書き込まれた手書きオブジェクト(追記オブジェクトとする)のサイズを特定し、これを挿入するために必要な空き領域が手書き位置に確保されるように、周囲の既存のオブジェクトを移動させ、追記オブジェクトをその書き込み位置に挿入する。図2の例では、同図(a)に示すように追記マーク31の下方に既存オブジェクト34があり、さらにその下方に追記オブジェクトを内包可能なサイズの余白領域35がある。そこで、同図(c)に示すように、余白領域35を詰めるように既存オブジェクト34を下方(+Y方向:図中の矢印37の方向)に移動させて追記オブジェクト36の書き込み位置に必要なサイズの空き領域を確保し、ここに追記オブジェクト36が挿入されている。
【0053】
なお、手書き入力装置10では、追記オブジェクト36の書き込み位置に必要なサイズの空き領域を確保するために、周囲の既存オブジェクトをどの方向へ移動させるかの移動方向指示や、どのオブジェクトを移動対象にするかの移動対象指示をユーザから受け付け可能になっている。
【0054】
本実施の形態では、図3に示すように、追記マーク31の入力後に、追記マーク31と同じ形の移動方向指示マーク41を、オブジェクトを移動させたい方向に連続して記入することで、オブジェクトの移動方向が指定される。図3の例では下方への移動が指示される。また、追記マーク31を記入した後、次のストロークで円42が手書きされた場合、この円42は移動対象指示として機能し、この円42で囲まれたオブジェクトが移動対象のオブジェクトに指定される。なお、移動方向や移動対象の指定方法は上記に限定されず、任意でよい。
【0055】
次に、上記のような追記モードを備えた手書き入力装置10の動作をより詳細に説明する。
【0056】
図4は、手書き入力装置10が手書き入力を受けてその表示を行う際の動作の概要を示す流れ図である。この処理は、1ストロークの手書き入力を受ける毎の動作を示している。なお、1ストロークは、ペンを下ろしてからそのペンが離れるまでの入力軌跡である。
【0057】
制御部11は、タッチパネル部13aへの手書き入力(指やペンなどのタッチ)を検出すると(ステップS101)、その手書き位置のXY座標の取得やストロークの切れ目を判断する座標検知処理を行う(ステップS102)。また、手書きの内容を表示部12に表示する(ステップS103)。なお、座標検知処理は1ストロークの入力完了を検出すると1ストロークフラグをセットする。座標検知処理の詳細は後述する。制御部11は、1ストロークフラグを参照等して1ストロークの入力完了を判断し(ステップS104)、1ストロークの入力が未完了ならば(ステップS104;No)ステップS101に戻って処理を継続する。これにより手書き入力中のストロークの軌跡がリアルタイムに表示部12に表示される。
【0058】
1ストロークの入力が完了すると(ステップS104;Yes)、制御部11は、1ストロークフラグをクリアし(ステップS105)、以下の処理を行う。
【0059】
まず、今回入力されたストロークが文字、あるいは追記開始指示等のマークか否かの判断処理を行う(ステップS106)。次に、今回入力されたストロークを前回入力されたストロークの属する手書きオブジェクトに含めるか否かを判断して、関連する複数のストロークを1つのオブジェクトにまとめるオブジェクト認識処理を行う(ステップS107)。オブジェクト認識処理では、一定時間内に入力された近接する複数のストロークを1つの手書きオブジェクトとして認識する。オブジェクト認識処理の詳細は後述する。
【0060】
制御部11は、現在の手書き入力モードが追記モードか否かを判断し(ステップS108)、追記モードでない場合は(ステップS108;No)、今回入力されたストロークが追記開始指示(追記マーク31)か否かを判断する(ステップS109)。今回入力されたストロークが追記マーク31であった場合は(ステップS109;Yes)、手書き入力モードを追記モードに設定し、追記モードで手書き入力を受けるための準備処理を行う。すなわち、記入された追記マーク31の周辺等の余白エリアを探索する全体エリア余白算出処理を行い(ステップS110)、この処理で検出した余白エリアを登録し(ステップS111)、さらに追記領域32を初期設定する追記領域初期設定処理(ステップS112)を行って本処理を終了する。全体エリア余白算出処理(ステップS110)、追記領域初期設定処理(ステップS112)の詳細は後述する。
【0061】
今回入力されたストロークが追記マーク31でない場合は(ステップS109;No)、このストロークは通常入力モードでの文字などの手書き入力なので、ステップS103の表示以外に特別な処理は不要なため、本処理を終了する。
【0062】
追記モード中であった場合は(ステップS108;Yes)、今回入力されたストロークが、移動方向指示か否かを判断し(ステップS113)、移動方向指示であった場合は(ステップS113;Yes)、指示された移動方向を認識して登録し(ステップS114)、本処理を終了する。
【0063】
今回入力されたストロークが移動方向指示でない場合は(ステップS113;No)、そのストロークが移動対象指示か否かを判断する(ステップS115)。今回入力されたストロークが移動対象指示であった場合は(ステップS115;Yes)、指示された移動対象のオブジェクトを登録して(ステップS116)処理を終了する。
【0064】
今回入力されたストロークが移動対象指示でない場合は(ステップS115;No)、今回入力されたストロークが追記終了指示か否かを判断する(ステップS117)。追記終了指示でない場合(ステップS117;No)、今回のストロークは追記領域32への通常の文字などの記入なので、その記入に応じて追記領域32を拡張させる追記領域拡張処理を行って(ステップS121)、本処理を終了する。追記領域拡張処理(ステップS121)の詳細は後述する。
【0065】
今回入力されたストロークが追記終了指示であった場合は(ステップS117;Yes)、追記領域32内の追記オブジェクトのサイズを特定し、この追記オブジェクトをこの手書き位置に挿入するための空白エリアを、周囲の既存のオブジェクトを移動させたり必要に応じて縮小したりして確保し、その確保した空白エリアに追記オブジェクトを挿入する追記オブジェクト状態設定処理(ステップS118)を行う。さらに、各オブジェクトの配列を調整する精緻化処理(ステップS119)、追記領域32の枠や背景を消去したり、追記マーク31、移動方向指示、移動対象指示の指示記号を消去したりする通常表示処理(ステップS120)を行って本処理を終了する。なお、追記オブジェクト状態設定処理(ステップS118)の詳細については後述する。
【0066】
精緻化処理では、入力した手書きオブジェクトに、ナンバリングや、箇条書きマーク「・」等があった場合、上下に同様な記号等があれば、X軸方向またはY軸方向の位置を合わせるといったことが行われる。
【0067】
図5は、座標検知処理(図4のステップS102)を示す流れ図である。制御部11はタッチパネル部13aから手書き検知有りの情報を取得し(ステップS201)、その検知された手書き位置のX軸方向の座標情報およびY軸方向の座標情報を取得し(ステップS202、S203)、これらの座標情報を保存する(ステップS204)。つぎに前回の手書き位置の座標情報を読み出し(ステップS205)、今回検出された手書き位置と前回の手書き位置とが近接(連続)しているか否かを判断する(ステップS206)。
【0068】
近接していない場合は(ステップS206;No)、手書きが一旦中断されたとして、1ストロークの入力完了を示す1ストロークフラグをセットして(ステップS207)処理を終了する。近接している場合は(ステップS206;Yes)、同じ1つのストロークの入力が続いていると判断し、そのまま処理を終了する。なお、上記のほか、手書きの検知が途絶えたことにより1ストロークの入力完了を認識するようになっている。
【0069】
図6、図7は、オブジェクト認識処理(図4のステップS107)の詳細を示している。手書き入力装置10は、通常入力モードの手書き入力において、一定時間内に近接して書き込まれた複数のストロークを1つのオブジェクトとして認識する。
【0070】
本例では、オブジェクトは下記の手順で決定される。
まず、図4のS106で行われた認識結果より、今回の手書きの内容が文字かイメージかを判定する(ステップS301)。
【0071】
文字の場合は(ステップS301;Yes)、入力中オブジェクトの最初のストロークの入力開始からの経過時間を計測する時間カウンタを読み取り(ステップS302)、上記経過時間が一定の時間内(たとえば、1分以内)であれば(ステップS303;Yes)、今回の入力文字が入力中オブジェクトの近傍にあるか否かを判断する(ステップS304〜S307)。
【0072】
すなわち、今回の入力文字が、入力中オブジェクトの存在範囲を基準にして、X軸方向の入力であれば(ステップS304;Yes)、+のX軸方向に入力文字サイズの5倍の入力エリアを確保し(ステップS305)、X軸方向の入力でなければ(ステップS304;No)、+のY軸方向に入力文字サイズの5倍の入力エリアを確保し(ステップS306)、いずれかの入力エリア内に今回の入力文字が位置するか否かを判断する(ステップS307)。今回の入力文字が入力エリア内にあれば(ステップS307;Yes)、今回の入力文字を入力中オブジェクトの構成メンバに追加し(ステップS310)、当該入力中オブジェクトの登録を更新して(ステップS311)処理を終了する。
【0073】
入力中オブジェクトの入力開始からの経過時間が一定時間を越えている場合(ステップS303;No)、もしくは、今回の入力文字が入力エリア内にない場合は(ステップS307;No)、新たなオブジェクトを設定する(ステップS308)。この新たなオブジェクトは次回のオブジェクト認識処理において入力中オブジェクトになる。その後、時間カウンタをクリアし(ステップS309)、今回の入力文字を新たなオブジェクトの最初の構成メンバに設定し(ステップS310)、このオブジェクトを登録して(ステップS311)本処理を終了する。
【0074】
今回の手書きの内容が文字でなくイメージの場合は(ステップS301;No)、入力中オブジェクトの入力開始からの経過時間を調べ(図7、ステップS321、S322)、一定の時間内(たとえば、1分以内)であれば(ステップS322;Yes)、今回の入力イメージが入力中オブジェクトの近傍にあるかを判断する(ステップS323〜S326)。
【0075】
すなわち、今回の入力イメージが、入力中オブジェクトの存在範囲を基準にして、X軸方向の入力であれば(ステップS323;Yes)、+のX軸方向で入力イメージサイズの10倍の入力エリアを確保し(ステップS324)、X軸方向の入力でなければ(ステップS323;No)、+のY軸方向で入力イメージサイズの10倍の入力エリアを確保し(ステップS325)、いずれかの入力エリア内に今回の入力イメージが位置するか否かを判断する(ステップS326)。今回の入力イメージが入力エリア内にあれば(ステップS326;Yes)、今回の入力イメージを入力中オブジェクトの構成メンバに追加し(ステップS329)、当該入力中オブジェクトの登録を更新して(ステップS311)処理を終了する。
【0076】
入力中オブジェクトの入力開始からの経過時間が一定時間を越えている場合(ステップS322;No)、もしくは、今回の入力イメージが入力エリア内にない場合は(ステップS326;No)、新たなオブジェクトを設定する(ステップS327)。この新たなオブジェクトは次回のオブジェクト認識処理において入力中オブジェクトになる。その後、時間カウンタをクリアし(ステップS328)、今回の入力イメージを新たなオブジェクトの最初の構成メンバに設定し(ステップS329)、このオブジェクトを登録して(ステップS311)本処理を終了する。
【0077】
なお、1つのオブジェクトに文字とイメージが混在している場合でも、上記の処理で対応することができる。
【0078】
図8は、文字が入力された場合のオブジェクト認識処理の動作の具体例を示している。図8(a)では、文字Aが入力中オブジェクト51(グレーの部分)であり、この場合は、+のX軸方向および+のY軸方向に文字Aのサイズの5倍の入力エリア52が確保される。
【0079】
同図(b)に示す位置に文字Bが手書き入力されると、文字Bは入力中オブジェクト51を基準とした入力エリア52内にあるので、文字Aと同じオブジェクトの構成メンバに追加される。文字Bが追加されることにより入力中オブジェクト51の範囲は同図(c)に示すように広がり、この広がった入力中オブジェクト51の範囲に対して新たな入力エリア52が設定される。
【0080】
このようにして一定時間内に近傍に記載された複数の文字やイメージが関連付けされて1つのオブジェクトに集約される。
【0081】
図9は、図6、図7に示すオブジェクト認識処理によって複数の手書き内容が2個のオブジェクト34A、34Bに区分されて認識された例を示している。
【0082】
次に、全体エリア余白算出処理(図4のステップS110)について説明する。
【0083】
図10は、全体エリア余白算出処理による余白エリアの探索および登録の具体例を示している。追記マーク31が記入されると、この追記マーク31の位置を基準にして周囲の余白エリア、および周囲のオブジェクトの向こう側にある余白エリアが探索される。なお、周囲のオブジェクトの向こう側の余白エリアの向こう側にさらにオブジェクトがあればさらにその向こう側の余白エリアを探索するというようにして画面の端に至るまで余白エリアが探索される。図10の例では、X軸方向として、第1から第4余白エリア61〜64が探索されて登録される。Y軸方向として、第5から第7余白エリア65〜67が探索されて登録される。
【0084】
図11は、全体エリア余白算出処理の詳細な流れを示している。まず、記入された追記マーク31のサイズをチェックし(ステップS401)、この追記マーク31の+−のX軸方向に追記マーク31のサイズの2倍以上のサイズの余白エリアが存在するか否かを調べる(ステップS402)。該当する余白エリアが存在する場合は(ステップS402;Yes)、その余白エリアを+−のX軸方向に拡張可能な範囲で拡張して仮設定する(ステップS403)。図10の例では、この処理により、第2余白エリア62、第3余白エリア63が探索される。
【0085】
次に、追記マーク31の+−のY軸方向に追記マーク31のサイズの2倍以上のサイズの余白エリアが存在するか否かを調べ(ステップS404)、該当の余白エリアがあれば(ステップS404;Yes)、その余白エリアをY軸方向の余白エリアとして仮設定する(ステップS405)。図10の例ではこの処理により第7余白エリア67が探索される。その後、ステップS403、S405で仮設定した余白エリアの整合を取ってそれらの余白エリアを登録する(ステップS406)。
【0086】
次に、追記マーク31を含む、または追記マーク31の周囲に存在するオブジェクトの情報(サイズ、位置)を取得する(ステップS407)。図10の例では、オブジェクト34A、34B(これらは図9と同じ)が存在しており、それらの情報が取得される。
【0087】
追記マーク31を基準にして、+−のX軸方向に存在するオブジェクトの周囲にあって既に登録されている余白エリア以外の余白エリアを探索し、該当する余白エリアを仮登録する(ステップS408、S409)。この処理では、第1余白エリア61および第4余白エリア64が探索されて仮登録される。第2余白エリア62は既に登録されているので除外される。
【0088】
同様に追記マーク31を基準にして、+−のY軸方向に存在するオブジェクトの周囲にあって既に登録されている余白エリア以外の余白エリアを探索し、該当する余白エリアを仮登録する(ステップS410、S411)。この処理では、第5余白エリア65および第6余白エリア66が探索されて仮登録される。
【0089】
その後、ステップS409、S411で仮登録した余白エリアの整合を取ってそれらの余白エリアを登録する(ステップS412)。
【0090】
以上の処理により図10の例では、第1〜第7余白エリア61〜67が探索されて登録される。なお、オブジェクトの周囲の余白エリアは、そのオブジェクトの幅で設定される。これは、オブジェクトの向こう側にある余白エリアを詰めてその余白エリアの方向へオブジェクトを移動させるには、オブジェクトの移動方向と垂直方向の幅で余白エリアが存在すれば足りることによる。たとえば、図10の第1余白エリア61のY軸方向の範囲はオブジェクト34AのY軸方向の存在範囲と同じにされる。
【0091】
図12は、追記領域初期設定処理(図4のステップS112)の詳細を示している。まず、記入された追記マーク31の位置、サイズをチェックし(ステップS501)、追記マーク31のサイズの+X軸方向に5倍、+Y軸方向に2倍の幅を持つ矩形領域を初期の追記領域32として追記マーク31の+X軸方向の直近に設定する(ステップS502)。設定した追記領域32は、半透明(ここでは透過度25%)かつ無地の背景にして、既存のオブジェクトの上に重ねて表示する(ステップS503)。なお、追記領域32に記入された文字やイメージは追記領域32の背景の上に表示される。
【0092】
図13は、追記領域拡張処理(図4のステップS121)によって追記領域32が順次拡張される様子の一例を示している。同図(a)は、追記マーク31が記入された直後に表示される初期の追記領域32aを示している。追記マーク31のサイズのX軸方向5倍、Y軸方向2倍のサイズの矩形領域が初期の追記領域32aとして設定される。追記領域32の背景は透過度25%の白無地になっている。同図(a)では、下層のオブジェクト34Cが薄く透けて見える様子を例示している。
【0093】
同図(b)は文字Aが記入されたことによって+X軸方向に拡張された追記領域32bを、同図(c)は文字Aの+X軸方向の隣にさらに文字B、Cが追記されたことによって+X軸方向にさらに拡張された追記領域32cを、同図(d)は文字Aの+Y軸方向に文字Dが追記されたことによって+Y軸方向に拡張された追記領域32dを示している。なお同図(e)は追記終了指示43を受けて確定した追記オブジェクトの範囲をグレーで示している。追記終了指示43を受けると追記マーク31や移動方向指示、移動対象指示などの指示記号は自動的に削除される。ただし、本実施の形態の移動終了指示43である「。」のように、追記オブジェクトの実体を成す文字が兼用された指示記号は自動削除しない。
【0094】
図14、図15は追記オブジェクト状態設定処理(図4のステップS118)の詳細を示している。まず、制御部11は、追記領域32に手書きされた追記オブジェクトのサイズを取得する(ステップS601)。次に、追記マーク31の周囲の余白エリアに関する情報を取得する(ステップS602)。この情報は、追記開始指示を受けた際に図4のステップS110で探索して登録した余白エリアに関する情報である。
【0095】
次に、追記オブジェクトの手書き位置に追記オブジェクトをそのまま収めることのできる余白エリアが存在するか否かを確認する(ステップS603)。追記オブジェクトの手書き位置に追記オブジェクトをそのまま収めることのできる余白エリアがあれば(ステップS604;Yes)、追記オブジェクトの配置を手書き位置に確定して(ステップS611)本処理を終了する。
【0096】
手書き位置に追記オブジェクトをそのまま収めることのできる余白エリアがない場合は(ステップS604;No)、移動対象指示を受けているか否かを調べる(ステップS605)。
【0097】
移動対象指示を受けている場合は(ステップS605;Yes)、移動対象に指定されたオブジェクトを移動させることで、追記オブジェクトの手書き位置に追記オブジェクトを収めることのできる空白エリアを確保できるか否かを調べる。移動対象に指定されたオブジェクトの移動方向は、追記マーク31との相対位置によって自動的に決定される。すなわち、追記マーク31に対して移動対象に指定されたオブジェクトの存在する方向が移動方向に自動設定される。
【0098】
移動対象に指定されたオブジェクトを上記の方向に移動させることで追記オブジェクトの手書き位置に追記オブジェクトを収めることのできる空白エリアを確保可能ならば(ステップS606;Yes)、必要サイズの空白エリアを確保可能な範囲で最小の移動量となるように、指定されたオブジェクトの移動量を決定し、そのオブジェクトを移動させる(ステップS610)。追記オブジェクトの配置を手書き位置に確定して(ステップS611)本処理を終了する。
【0099】
たとえば、図3に例示したように追記オブジェクトの下方(+Y軸方向)のオブジェクトが移動対象に指定されている場合、そのオブジェクトのさらに下方に余白エリアが存在するか否かを判断する。余白エリアが存在するならば、移動対象に指定されたオブジェクトをその余白エリアを詰めるように下方へ移動させた場合に、追記オブジェクトの手書き位置に追記オブジェクトを収めることのできる空白エリアが確保されるか否かを判断する。なお、元々、手書き位置に余白エリアがあれば、その余白エリアがオブジェクトの移動によって拡張されて空白エリアが確保される。
【0100】
必要サイズの空白エリアを確保可能ならば、必要サイズの空白エリアを確保可能な範囲で最小の移動量となるように、指定されたオブジェクトの移動量を決定する。
【0101】
指定されたオブジェクトの移動で、追記オブジェクトの現在位置に追記オブジェクトを収めることのできる空白エリアを確保できない場合は、(図14、ステップS606;No)、移動対象に指定されたオブジェクトを最大限に移動させた状態で、追記オブジェクトの手書き位置に生じる空白エリアに追記オブジェクトが収まるように、縮小処理を行い(ステップS607〜S609)、必要なオブジェクトの移動を行った後(ステップS610)、追記オブジェクトの配置位置を確定して(ステップS611)本処理を終了する。
【0102】
たとえば、図16に示すように追記マーク31の位置にY軸方向のサイズがAの追記オブジェクト71を挿入するものとする。移動対象に指定されたオブジェクト72のY軸方向サイズをBとし、追記マーク31から見てオブジェクト72の向こう側にある余白エリア73のY軸方向サイズをCとする。C<Aのため、現在のサイズのままでは必要な空白エリアを確保できない。
【0103】
この場合、(B+C)の範囲に(A+B)が収まるように縮小率を決定する(ステップS607)。縮小率は1に近いほど好ましい。この場合、(B+C)/(A+B)が最も好ましい縮小率になる。
【0104】
追記オブジェクト71および移動対象に指定されたオブジェクト72をそれぞれこの縮小率に従って縮小し(ステップS608、S609)、縮小後のオブジェクト72を、余白エリア73を詰める方向に最大量移動させ、縮小後の追記オブジェクト71を手書き位置に配置する。
【0105】
なお、縮小率が許容上限値を超える場合には、移動対象指示で指定されたオブジェクトの移動では適切な挿入ができない旨の警告を行った後、もしくは警告後にユーザの承認を得た後、移動対象指示を解除して、図15のステップS622へ進むように構成することが好ましい。
【0106】
移動対象指示を受けていない場合は(図14、ステップS605;No)、移動方向指示を受けているか否かを調べる(図15、ステップS621)。移動方向指示を受けていない場合は(ステップS621;No)、追記マーク31の周辺の既存のオブジェクトに関する情報を取得する(ステップS622)。さらに、周囲の既存オブジェクトの周囲にある余白エリアの情報を取得する(ステップS623)。そして、周囲にある余白エリアを詰めるように周囲の既存オブジェクトを移動させることで、追記オブジェクトの手書き位置に追記オブジェクトを収めることのできる空白エリアが確保されるか否かを確認する(ステップS624)。
【0107】
ここでは、必要サイズの空白エリアが確保可能か否かを以下の手順で判断する。
1.周囲の余白エリアの中で+Y軸方向(下側)の余白エリアを優先的に使用する。
2.上記1.で必要サイズの空白エリアを確保できない場合は−Y軸方向(上側)の余白エリアを使用する。
3.上記2.で必要サイズの空白エリアを確保できない場合は、下側の余白エリアすべて使用しその不足分だけ上側の余白エリアを詰める。
4.上記3.でも必要サイズの空白エリアを確保できない場合はステップS624にてNoと判断する。
【0108】
なお、空白エリアは、元々の手書き位置に余白エリアがあれば、その余白エリアがオブジェクトの移動によって拡張したものになる。また、使用する余白エリアを定めることで、必然的に移動させる周囲の既存オブジェクトやその移動方向も決定される。また、上記手順の2.を省略してもよい。
【0109】
さらに、どの方向の余白エリアを優先的に使用するかに関してユーザが設定変更可能に構成することが好ましい。また文字の入力方向(縦書き、横書き)に応じてどの方向の余白エリアを優先的に使用するかを自動変更してもよい。
【0110】
必要サイズの空白エリアを確保可能ならば(ステップS625;Yes)、使用する余白エリアに応じて移動対象の既存オブジェクトとその移動方向を決定し、さらにそのオブジェクトの移動量を、必要サイズの空白エリアが確保可能な範囲で最小量となるように決定する(ステップS636)。そして、その決定に従って周囲の既存オブジェクトを移動させた後(ステップS637)、ステップS611へ移行する。
【0111】
周囲の既存オブジェクトの移動によって必要サイズの空白エリアを確保できない場合は(ステップS625;No)、縮小処理を行う(ステップS626〜S628)。縮小後、必要なオブジェクトの移動を行った後(ステップS636、S637)、追記オブジェクトの配置位置を確定して(ステップS611)本処理を終了する。
【0112】
たとえば、図17(a)に示すように追記マーク31の位置にY軸方向のサイズがAの追記オブジェクト74を挿入するものとする。既存のオブジェクトおよび余白エリアの状態は図10に示すものと同一とする。追記マーク31の位置にある既存のオブジェクト34BのY軸方向サイズをD、上側の第5余白エリア65のY軸方向サイズをB、下側の第6余白エリア66のY軸方向サイズをCとする。C+B<Aのため、現在のサイズのままでは必要な空白エリアを確保できない。
【0113】
この場合、(A+D)−(B+D+C)が不足するサイズになり、(B+D+C)の範囲に(A+D)が収まるように縮小率を決定する(ステップS626)。縮小率は1に近いほど好ましい。この場合、(B+D+C)/(A+D)が好ましい縮小率になる。
【0114】
追記オブジェクト74および該当する既存のオブジェクト34Bをそれぞれこの縮小率に従って縮小した後(ステップS627、S628)、縮小後のオブジェクト34Bを追記マーク31に対応する箇所の近傍で上下に分割する。そして、分割後の上側のオブジェクトを、第5余白エリア65を詰める上方向(−のY軸方向)へ最大量移動させ、かつ分割後の下側のオブジェクトを、第6余白エリア66を詰めるように下方向(+のY軸方向)へ最大量移動させる(ステップS636、S637)。この移動により追記マーク31のあった位置に縮小後の追記オブジェクト74が収まる空白エリアを確保し、縮小後の追記オブジェクトをその空白エリアに配置する。図17(b)は、縮小して追記オブジェクトを挿入した状態を示している。
【0115】
移動方向指示がある場合は(ステップS621;Yes)、追記マーク31に対して、移動方向指示で指定された方向にある既存のオブジェクトの情報(サイズ、位置など)を取得する(ステップS629)。さらに、指定された方向に存在する既存のオブジェクトの周囲にある余白エリアの情報を取得する(ステップS630)。そして、指定された方向にある余白エリアを詰めるように指定された方向にある既存のオブジェクトを移動させることで、追記オブジェクトの手書き位置に追記オブジェクトを収めることのできる空白エリアが確保されるか否かを確認する(ステップS631)。
【0116】
必要サイズの空白エリアを確保可能ならば(ステップS632;Yes)、移動させる既存オブジェクトとその移動方向を決定し、さらにそのオブジェクトの移動量を、必要サイズの空白エリアが確保可能な範囲で最小量となるように決定する(ステップS636)。そして、その決定に従って既存オブジェクトを移動させた後(ステップS637)、ステップS611へ移行する。
【0117】
移動方向指示で指定された方向にある既存のオブジェクトの指定された方向への移動によって必要サイズの空白エリアを確保できない場合は(ステップS632;No)、縮小処理を行い(ステップS633〜S635)、縮小後のオブジェクトを移動する(ステップS636、S637)。さらに、追記オブジェクトの配置位置を確定して(ステップS611)本処理を終了する。
【0118】
たとえば、図16において移動方向が下方向に指定されている場合、追記マーク31の下側にあるオブジェクト72をそのさらに下側にある余白エリア73を詰めるように下側へ移動させることになる。しかし、余白エリア73のY軸方向サイズCが追記オブジェクトのY軸方向サイズAより小さいため、現在のサイズのままでは、指定された方向へのオブジェクトの移動によって必要な空白エリアを確保できない。そこで、(B+C)の範囲に(A+B)が収まるように縮小率を決定する(ステップS633)。縮小率は1に近いほど好ましい。この場合、(B+C)/(A+B)が好ましい縮小率になる。
【0119】
追記オブジェクト71および移動させるオブジェクト72をそれぞれこの縮小率に従って縮小し(ステップS634、S635)、縮小後のオブジェクト72を、指定された方向、つまり、余白エリア73を詰める下方向に最大量移動させ、縮小後の追記オブジェクト71をこの移動によって確保された空白エリアに配置する。
【0120】
なお、縮小率が許容上限値を超える場合には、移動方向指示で指定された方向へのオブジェクトの移動では適切な挿入ができない旨の警告を行った後、もしくは警告後にユーザの承認を得た後、移動方向指示を解除して、ステップS622へ進むように構成することが好ましい。
【0121】
以上のように、本発明の手書き入力装置10では、追記モードによる手書き入力中は、その手書きオブジェクトを既存のオブジェクトに重ねて表示し、手書きオブジェクトの入力が完了したとき、この手書きオブジェクトを既存のオブジェクトに挿入するので、全体の配置を崩すことなく、既存の手書きオブジェクトに新たな手書きオブジェクトを挿入することができる。
【0122】
また、追記モードでの手書き入力中は、追記領域32を既存のオブジェクトの上に重ねて表示し、かつ追記領域32の背景を、不透明もしくは低透過度にしたので、追記中の手書きオブジェクトを見易く表示することができる。特に、背景を低透過度にすることで、背景の下にある既存のオブジェクトを薄い表示で確認しながら追記することができる。
【0123】
また、移動方向や移動対象のオブジェクトをユーザが指定できるため、ユーザの意図に沿うように既存のオブジェクトを移動させて追記オブジェクトを挿入することができる。
【0124】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0125】
たとえば、追記開始指示、追記終了指示、移動方向指示、移動対象指示などの指示記号は、実施の形態で例示したものに限定されない。
【0126】
複数の文字やストロークを1つのオブジェクトとして認識する方法、余白エリアを探索する方法、追記領域の初期設定や拡張などの方法、図6のステップS305、S306、図7のステップS324やS325などに示した入力エリアを確保する際の倍率、図12のステップS502等で示した追記領域を初期設定したり拡張したりする際の倍率などは例示であり、実施の形態で示したものに限定されず、任意でよい。
【0127】
周囲の既存のオブジェクトの中からどのオブジェクトを移動対象に選択するか、またどのように移動させるか等の処理は、実施の形態で示したアルゴリズムの処理に限定されない。追記オブジェクトの周囲の既存のオブジェクトをそのオブジェクトの追記マーク31から見てさらに向こう側にある余白エリアを詰めるように移動させて、追記オブジェクトの手書き位置に追記オブジェクトを挿入可能なサイズの空きエリアを確保できる処理であればよい。
【0128】
追記領域32の背景を不透明の白などにするか、半透明とするか、あるいは半透明とする場合の透過度などはユーザが設定変更できるように構成される。また、追記中の手書き内容を見やすくする背景であれば、実施の形態で例示した背景に限定されない。また、実施の形態では、入力中の手書きオブジェクトの内容を既存のオブジェクトと区別して見やすく表示するために矩形の追記領域32を設定し表示したが、見やすくする方法はこれに限定されない。たとえば、追記領域32を設けなくても、手書き入力中のオブジェクトのうち下層に既存のオブジェクトが存在する部分だけに背景が表示されるようにしてもよいし、追記したストロークの存在する部分の周辺だけに背景を設けてもよい。
【0129】
手書き入力装置10は、携帯可能なサイズに構成されてもよいし、たとえば、会議などで多数の参加者が共通に見る大型のディスプレイやスクリーンに手書きするような装置として構成されてもよい。
【符号の説明】
【0130】
10…手書き入力装置
11…制御部
12…表示部
13…操作入力部
13a…タッチパネル部
14…無線通信部
15…外部メモリ接続部
16…CPU
17…FlashROM
18…メモリ
31…追記マーク
32、32a〜32d…追記領域
34、34A、34B、34c…既存オブジェクト
35…余白領域
36…追記オブジェクト
37…移動方向を示す矢印
41…移動方向指示マーク
42…移動対象指示マーク(円)
43…追記終了指示(句点)
51…入力中オブジェクト
52…入力エリア
61〜67…余白エリア
71…追記オブジェクト
72…既存オブジェクト(移動対象)
73…オブジェクトの移動で詰められる余白エリア
74…追記オブジェクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手書きオブジェクトの入力を受ける手書き入力部と、
前記手書き入力部から入力された手書きオブジェクトを表示する表示部と、
制御部と
を備え、
前記制御部は、所定の追記指示を受けた手書きオブジェクトの手書き入力中はその手書きオブジェクトを既存のオブジェクトに重ねて表示し、前記手書きオブジェクトの入力が完了したとき、この手書きオブジェクトを既存のオブジェクトに挿入して表示する挿入処理を行う
ことを特徴とする手書き入力装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記追記指示を受けた手書きオブジェクトの手書き入力中は、少なくとも既存のオブジェクトと重なる部分の前記手書きオブジェクトの背景を、この手書きオブジェクトを見易くする所定の背景に変更する
ことを特徴とする請求項1に記載の手書き入力装置。
【請求項3】
前記制御部は、余白を詰めるように既存のオブジェクトを移動させることで、前記手書きオブジェクトの入力位置に前記手書きオブジェクトを挿入するための空き領域を確保する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の手書き入力装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記手書きオブジェクトを挿入するために移動させる既存のオブジェクトの指定をユーザから受け付け、その指定された既存のオブジェクトを移動させて前記空き領域を確保する
ことを特徴とする請求項3に記載の手書き入力装置。
【請求項5】
前記制御部は、余白を詰めることにより前記手書きオブジェクトを挿入可能な空き領域を確保できない場合は、既存のオブジェクトおよび前記手書きオブジェクトを縮小して余白を詰めることで、縮小した前記手書きオブジェクトを挿入可能な空き領域を確保する
ことを特徴とする請求項3または4に記載の手書き入力装置。
【請求項6】
前記所定の背景は、既存のオブジェクトの上に重ねる、不透明もしくは低透過度の背景である
ことを特徴とする請求項2に記載の手書き入力装置。
【請求項7】
前記追記指示は、所定の追記開始マークの手書き入力である
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の手書き入力装置。
【請求項8】
前記手書きオブジェクトの入力の完了は、所定の追記終了マークの手書き入力により判別する
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の手書き入力装置。
【請求項9】
前記手書きオブジェクトを挿入するために移動させる既存のオブジェクトの指定は、移動対象の既存のオブジェクトに対する所定の選択マークの手書き入力である
ことを特徴とする請求項4に記載の手書き入力装置。
【請求項10】
手書きオブジェクトの入力を受ける手書き入力部と、前記手書き入力部から入力された手書きオブジェクトを表示する表示部とを備えた情報処理装置を、
所定の追記指示を受けた手書きオブジェクトの手書き入力中はその手書きオブジェクトを既存のオブジェクトに重ねて表示し、前記手書きオブジェクトの入力が完了したとき、この手書きオブジェクトを既存のオブジェクトに挿入して表示するように動作させる
ことを特徴とするプログラム。
【請求項11】
前記情報処理装置を、
前記追記指示を受けた手書きオブジェクトの手書き入力中は、少なくとも既存のオブジェクトと重なる部分の前記手書きオブジェクトの背景を、この手書きオブジェクトを見易くする所定の背景に変更する
ように動作させる
ことを特徴とする請求項10に記載のプログラム。
【請求項12】
前記情報処理装置を、
余白を詰めるように既存のオブジェクトを移動させることで、前記手書きオブジェクトの入力位置に前記手書きオブジェクトを挿入するための空き領域を確保するように動作させる
ことを特徴とする請求項10または11に記載のプログラム。
【請求項13】
前記情報処理装置を、
前記手書きオブジェクトを挿入するために移動させる既存のオブジェクトの指定をユーザから受け付け、その指定された既存のオブジェクトを移動させて前記空き領域を確保するように動作させる
ことを特徴とする請求項12に記載のプログラム。
【請求項14】
前記情報処理装置を、
余白を詰めることにより前記手書きオブジェクトを挿入可能な空き領域を確保できない場合は、既存のオブジェクトおよび前記手書きオブジェクトを縮小して余白を詰めることで、縮小した前記手書きオブジェクトを挿入可能な空き領域を確保するように動作させる
ことを特徴とする請求項12または13に記載のプログラム。
【請求項15】
前記所定の背景は、既存のオブジェクトの上に重ねる、不透明もしくは低透過度の背景である
ことを特徴とする請求項11に記載のプログラム。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図2】
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【図3】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−114431(P2013−114431A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259618(P2011−259618)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】