説明

手洗い器付き便器装置

【課題】便器装置の給水配管から分岐した分岐配管が手洗い器に接続されている水道直結給水式の手洗い器付き便器装置において、便器ボウルへの給水および手洗い器への給水を個別に制御することができる手洗い器付き便器装置を提供する。
【解決手段】便器ボウル3を有する便器本体2と手洗いボウル5を有する手洗い器4とを備え、便器本体2には、水道水を便器ボウル3に直接給水する給水配管7が接続され、この給水配管7の管路の途中には第1給水弁8および流量センサ9が設けられ、手洗い器4には、給水配管7から分岐した、水道水を手洗いボウル5に給水する分岐配管16が接続され、この分岐配管16の管路の途中には第2給水弁17が設けられている手洗い器付き便器装置1であって、流量センサ9による給水配管7を流れる水道水の流量に関する情報に基づいて第1給水弁8および第2給水弁17の開閉動作を制御する制御部23を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手洗い器付き便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、便器装置の給水配管が水道管に直結され、水道からの洗浄水が便器ボウルに直接供給される水道直結給水式の便器装置に、手洗い器が設けられた手洗い器付き便器装置が知られている(例えば特許文献1,2参照)。この手洗い器付き便器装置は、便器装置の給水配管から分岐した分岐配管が手洗い器に接続されており、便器ボウルに給水される洗浄水の一部が分岐配管を経由して手洗い器に給水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−177160号公報
【特許文献2】特開2008−303624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この手洗い器付き便器装置は、短時間での給水が実現されるほか、ロータンクが省略されることにより水洗便器の専有する空間が削減され、トイレに空間的なゆとりが実現される。また、便器装置から独立した給水配管を施工せずに、手洗い器を設けることができるなど配管が簡素化される。
【0005】
しかしながら、このような手洗い器付き便器装置は、洗浄水の給水流量が水道圧に依存するため、低水圧地域において便器ボウルへの給水と手洗い器への給水を同時に行うと、便器ボウル面に洗浄水が行きわたらない場合や手洗い器の吐出量が十分でない場合がある。
【0006】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、以下のことを課題とする。便器装置の給水配管から分岐した分岐配管が手洗い器に接続されている水道直結給水式の手洗い器付き便器装置において、便器ボウルへの給水および手洗い器への給水を個別に制御することができる手洗い器付き便器装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の手洗い器付き便器装置は、便器ボウルを有する便器本体と、手洗いボウルを有する手洗い器とを備え、前記便器本体には、水道水を便器洗浄水として前記便器ボウルに直接給水する給水配管が接続され、この給水配管の管路の途中には第1給水弁および流量センサが設けられ、前記手洗い器には、前記第1給水弁の一次側で前記給水配管から分岐した、水道水を手洗い水として前記手洗いボウルに給水する分岐配管が接続され、この分岐配管の管路の途中には第2給水弁が設けられている手洗い器付き便器装置であって、さらに、前記流量センサによる前記給水配管を流れる水道水の流量に関する情報に基づいて前記第1給水弁および前記第2給水弁の開閉動作を制御する制御部を備え、この制御部は、前記第1給水弁および前記第2給水弁をともに開状態にして前記便器本体の前記便器ボウルと前記手洗い器の前記手洗いボウルへの給水を開始した際に前記流量センサにより検知される流量が前記制御部にあらかじめ設定された所定流量未満である場合には、前記第1給水弁および前記第2給水弁のうちいずれか一方の弁を一定時間の間閉状態にし、その後、一定時間の間開状態にするとともに他方の弁を閉状態にすることを特徴とする。
【0008】
この手洗い器付き便器装置においては、前記制御部は、前記流量センサにより検知される流量が前記制御部にあらかじめ設定された所定流量未満である場合には、前記第1給水弁を一定時間の間閉状態にし、その後、一定時間の間開状態にするとともに前記第2給水弁を閉状態にすることが好ましい。
【0009】
また、この手洗い器付き便器装置においては、前記制御部は、前記流量センサにより検知される流量が前記制御部にあらかじめ設定された所定流量以上である場合には、ひきつづき前記第1給水弁および前記第2給水弁を一定時間の間開状態にすることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の手洗い器付き便器装置によれば、便器装置の給水配管から分岐した分岐配管が手洗い器に接続されている水道直結給水式の手洗い器付き便器装置において、便器ボウルへの給水および手洗い器への給水を個別に制御することができる。これにより、便器ボウル面の洗浄をより確実に行うことができ、また手洗い器への給水を十分に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の手洗い器付き便器装置の一実施形態を概略的に示した構成図である。
【図2】本発明の手洗い器付き便器装置の一実施形態を示した斜視図である。
【図3】手洗い器付き便器装置の給水制御の一例を示すタイムチャートであり、(a)は流量センサにより検知される流量が制御部にあらかじめ設定された所定流量未満の場合であり、(b)は所定流量以上の場合である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の手洗い器付き便器装置を図面に沿って説明する。図1は、本発明の手洗い器付き便器装置の一実施形態を概略的に示した構成図であり、図2は、本発明の手洗い器付き便器装置の一実施形態を示した斜視図である。
【0013】
手洗い器付き便器装置1は、便器ボウル3を有する便器本体2と、手洗いボウル5を有する手洗い器4とを備えている。この手洗い器付き便器装置1は水道直結給水式の便器装置であり、便器本体2には、上水の水道管6に直結されて水道水を便器ボウル3に直接給水する給水配管7が接続されている。
【0014】
給水配管7の管路の途中には、開閉作動して給水およびその給水を停止する第1給水弁8と、給水配管7を流れる水道水の流量を検知する流量センサ9が設けられている。この流量センサ9は、例えば水道管6側である第1給水弁8の一次側に設けられる。第1給水弁8、流量センサ9以外にも、流量センサ9の一次側において水道管6側から順次、止水栓10、ストレーナ11が設けられ、第1給水弁8の二次側において逆流防止のためのバキュームブレーカ12が設けられている。また、止水栓10とストレーナ11との間には水抜栓13が設けられ、流量センサ9と第1給水弁8との間には第1流量調整弁14が設けられてもいる。
【0015】
この給水配管7を経由した水道水は便器本体2の便器ボウル3に給水される。給水された水道水は便器洗浄水として便器ボウル面3aを洗浄し、便器ボウル面3aに排出された汚物、汚水などとともに便器排水口15から下水に排出される。
【0016】
手洗い器4には、水道管6側である第1給水弁8の一次側で給水配管7から分岐した、水道水を手洗いボウル5に給水する分岐配管16が接続されている。図1では、分岐配管16は、流量センサ9の二次側、かつ、第1流量調整弁14の一次側において給水配管7から分岐されているが、ストレーナ11の二次側、かつ、流量センサ9の一次側において給水配管7から分岐されていてもよい。
【0017】
分岐配管16の管路の途中には、開閉作動して給水およびその給水を停止する第2給水弁17が設けられている。また、第2給水弁17の一次側には第2流量調整弁18が設けられている。
【0018】
手洗い器4は、例えば、図2に示すように、便器本体2の後部において立設される支持部19の上部に配設されており、この支持部19を介して便器本体2と一体的に配設されている。
【0019】
分岐配管16を経由した水道水は、手洗い器4に設けられた水栓20から手洗い水として手洗いボウル5に給水される。手洗いボウル5には排水管21の一端が接続されており、この排水管21の他端は便器排水口15に連通する便器排水領域22に接続されている。手洗いボウル5に給水された水道水はこの排水管21を経由して便器排水口15から下水に排出される。
【0020】
手洗い器付き便器装置1は、第1給水弁8が開状態で第2給水弁17が閉状態のときに、便器ボウル面3aの洗浄に必要な流量の水道水が便器ボウル3に給水可能とされていることが前提である。このような手洗い器付き便器装置1においては、第1給水弁8が閉状態で第2給水弁17が開状態のときに、手洗いに必要な流量の水道水が手洗い器4の手洗いボウル5に給水される。
【0021】
手洗い器付き便器装置1は、第1給水弁8および第2給水弁17の開閉動作を制御する制御部23を備えている。制御部23はマイクロコンピュータなどを内蔵する電気回路などで構成されており、第1給水弁8および第2給水弁17は電磁弁などで構成されており、制御部23はこれら第1給水弁8および第2給水弁17と電気的に接続されている。また、制御部23は、流量センサ9による給水配管7を流れる水道水の流量に関する情報に基づいて第1給水弁8および第2給水弁17の開閉動作を制御する。このため、流量センサ9とも電気的に接続されている。制御部23は、AC100Vなどの電源24に接続されている。
【0022】
また、手洗い器付き便器装置1には、便器ボウル3および手洗いボウル5への給水の操作を行う操作部25が設けられている。この操作部25は、例えば洗浄ボタンなどを有し、使用者がこの操作部25において洗浄ボタンを押すなどの操作を行うと、便器ボウル3および手洗いボウル5への給水を開始する情報が入力される。操作部25は、制御部23と電気的に接続されており、その入力情報は入力信号として制御部23に伝えられるようになっている。操作部25の設置箇所は特に限定されるものではなく、使用者が利用しやすい箇所に設置することができる。図2では、手洗い器4の前面に操作部25が設置されている。
【0023】
操作部25からの入力信号が制御部23に伝えられると、制御部23は、まず、第1給水弁8および第2給水弁17をともに開状態にして給水配管7および分岐配管16に水道水を通水させる。これにより、便器本体2の便器ボウル3と手洗い器4の手洗いボウル5への給水が開始される。次いで、第1給水弁8および第2給水弁17がともに開状態のときの、流量センサ9による給水配管7を流れる水道水の流量に関する情報に基づいて、第1給水弁8および第2給水弁17の開閉動作を制御する。第1給水弁8および第2給水弁17の開閉動作の制御は、例えば、制御部23に内蔵されるマイクロコンピュータなどに格納されたプログラムに沿って行われる。これら第1給水弁8および第2給水弁17の開閉動作の制御により、便器ボウル3への給水およびその給水が停止され、また、手洗いボウル5への給水およびその給水が停止される。
【0024】
このプログラムは、流量センサ9により検知される流量があらかじめ設定された所定流量以上の場合および所定流量未満の場合の各々において第1給水弁8および第2給水弁17に所定の開閉動作をさせるように設定されている。
【0025】
図3は、手洗い器付き便器装置の給水制御の一例を示すタイムチャートであり、(a)は流量センサにより検知される流量が制御部にあらかじめ設定された所定流量未満の場合であり、(b)は所定流量以上の場合である。S、Sはそれぞれ第1給水弁、第2給水弁を示し、「ON」は弁が開状態であることを示し、「OFF」は弁が閉状態であることを示している。tは、操作部において便器ボウルおよび手洗いボウルへの給水を開始する情報が入力された時間であり、便器ボウルまたは手洗いボウルへの給水が開始される時間でもある。tは、便器ボウルおよび手洗いボウルへの給水がともに停止された時間であり、便器ボウル面の洗浄が終了する時間でもある。
【0026】
制御部にあらかじめ設定された「所定流量」とは、第1給水弁および第2給水弁がともに開状態のときに、便器ボウル面洗浄に必要な流量の水道水が便器ボウルに給水可能であり、かつ、手洗いに必要な流量の水道水が手洗いボウルに給水可能な流量と定義できる。このような所定流量の値は、これまでに蓄積されたデータや経験もしくはこれらに基づいて実験を行うなどして容易に把握することができる。
【0027】
流量センサにより検知される流量が所定流量未満の場合、ひきつづき第1給水弁および第2給水弁を開状態にして給水配管および分岐配管に水道水を通水させると、便器ボウル面の洗浄に必要な流量の水道水が便器ボウルに給水されない可能性がある。また、手洗いに必要な流量の水道水が手洗いボウルに給水されない可能性がある。そこで、プログラムには、図3(a)に示すように、まず第1給水弁を一定時間の間閉状態にし、一定時間経過後は、第1給水弁を一定時間の間開状態にするとともに第2給水弁を閉状態にするように設定されている。
【0028】
第1給水弁の閉時間Tおよび開時間Tと、第2給水弁の開時間Tはプログラムにあらかじめ設定されている。これらの時間は使用形態に応じて適宜設定される。また、第1給水弁の開時間T経過後は、操作部において便器ボウルおよび手洗いボウルへの給水を開始する情報が入力されるまで第1給水弁は閉状態となるようにも設定されている。
【0029】
第1給水弁が閉状態で第2給水弁が開状態のときは、手洗い器の手洗いボウルのみ給水される。このとき、手洗いボウルには手洗いに必要な流量の水道水が給水される。一方、第1給水弁が開状態で第2給水弁が閉状態のときは、便器装置の便器ボウルのみ給水される。このとき、便器ボウルには便器ボウル面の洗浄に必要な流量の水道水が給水される。このように図3(a)の例では、まず手洗いボウルへ給水され、次いで便器ボウルへ給水されるなど手洗いボウルへの給水が便器ボウルへの給水よりも優先されており、使用者の手洗いの利便性が確保されている。
【0030】
また、図3(a)の例とは異なり、プログラムには、まず第2給水弁を一定時間の間閉状態にし、一定時間経過後は、第2給水弁を一定時間の間開状態にするとともに第1給水弁を閉状態にするように設定することもできる。この例では、まず便器ボウルへ給水され、次いで手洗いボウルへ給水されるなど便器ボウルへの給水が手洗いボウルへの給水よりも優先されている。
【0031】
このように本実施形態では、便器ボウルへの給水および手洗いボウルへの給水のうち一方の給水を選択的に行うことができる。便器ボウルへの給水および手洗いボウルへの給水のうちどちらの給水を優先させるかは使用者の利用形態に応じて適宜設定すればよい。
【0032】
流量センサにより検知される流量が所定流量以上の場合、プログラムには、図3(b)に示すように、ひきつづき第1給水弁および第2給水弁が一定時間の間開状態になるように設定されている。これにより、便器ボウル面の洗浄に必要な流量の水道水が便器ボウルに給水され、かつ、手洗いに必要な流量の水道水が手洗いボウルに給水される。この場合、便器ボウル面洗浄および手洗いを同時に行うことができる。
【0033】
第1給水弁の開時間Tおよび第2給水弁の開時間Tはプログラムにあらかじめ設定されている。また、その設定時間経過後は、操作部において便器ボウルおよび手洗いボウルへの給水を開始する情報が入力されるまで第1給水弁および第2給水弁は閉状態となるようにも設定されている。第1給水弁の開時間Tと第2給水弁の開時間Tは図3(b)の例ではその開時間の長さが同じであるが、使用形態に応じて異なる長さ時間に設定することもできる。例えば、第2給水弁の開時間Tを第1給水弁の開時間Tよりも短くすることができるし、第2給水弁の開時間Tを第1給水弁の開時間Tよりも長くすることもできる。
【0034】
このように手洗い器付き便器装置は、流量センサにより検知される流量が所定流量以上の場合には、便器ボウルおよび手洗いボウルへの同時給水が可能である。このため、便器ボウル面洗浄および手洗いを同時に行うことができ、操作部において便器ボウルおよび手洗いボウルへの給水を開始する情報の入力後、便器ボウル面の洗浄を短時間で終了させることができる。もちろん、流量センサにより検知される流量が所定流量以上の場合であっても、上述した所定流量未満の場合と同様な給水制御が可能であり、便器ボウルへの給水および手洗いボウルへの給水のうち一方の給水を選択的に行うこともできる。
【0035】
以上のように、手洗い器付き便器装置は、便器ボウルへの給水および手洗い器への給水を個別に制御することができる。これにより、便器ボウル面の洗浄をより確実に行うことができ、また手洗い器への給水を十分に行うことができる。
【0036】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。例えば、図2の例では、手洗い器4は支持部19を介して便器本体2と一体的に配設されているが、別体として配設されていてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 手洗い器付き便器装置
2 便器本体
3 便器ボウル
4 手洗い器
5 手洗いボウル
7 給水配管
8 第1給水弁
9 流量センサ
16 分岐配管
17 第2給水弁
23 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器ボウルを有する便器本体と、手洗いボウルを有する手洗い器とを備え、前記便器本体には、水道水を便器洗浄水として前記便器ボウルに直接給水する給水配管が接続され、この給水配管の管路の途中には第1給水弁および流量センサが設けられ、前記手洗い器には、前記第1給水弁の一次側で前記給水配管から分岐した、水道水を手洗い水として前記手洗いボウルに給水する分岐配管が接続され、この分岐配管の管路の途中には第2給水弁が設けられている手洗い器付き便器装置であって、さらに、前記流量センサによる前記給水配管を流れる水道水の流量に関する情報に基づいて前記第1給水弁および前記第2給水弁の開閉動作を制御する制御部を備え、この制御部は、前記第1給水弁および前記第2給水弁をともに開状態にして前記便器本体の前記便器ボウルと前記手洗い器の前記手洗いボウルへの給水を開始した際に前記流量センサにより検知される流量が前記制御部にあらかじめ設定された所定流量未満である場合には、前記第1給水弁および前記第2給水弁のうちいずれか一方の弁を一定時間の間閉状態にし、その後、一定時間の間開状態にするとともに他方の弁を閉状態にすることを特徴とする手洗い器付き便器装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記流量センサにより検知される流量が前記制御部にあらかじめ設定された所定流量未満である場合には、前記第1給水弁を一定時間の間閉状態にし、その後、一定時間の間開状態にするとともに前記第2給水弁を閉状態にすることを特徴とする請求項1に記載の手洗い器付き便器装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記流量センサにより検知される流量が前記制御部にあらかじめ設定された所定流量以上である場合には、ひきつづき前記第1給水弁および前記第2給水弁を一定時間の間開状態にすることを特徴とする請求項1または2に記載の手洗い器付き便器装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate