説明

手芸用素材

【課題】 家庭において安全に実施することができると共に、三次元的に湾曲させることが可能であり、出来上った製品は風合が良好で折れたり白化したりすることがなく、いろいろと変化に富んだ作品を作ることのできる手芸用の素材を提供することを目的とする。
【解決手段】 クレープ紙を、当該クレープ紙のクレープ方向が若干の角度をもって交差するように重ね合わせ、これを硬化性シリコーン樹脂液により接着硬化せしめる。クレープ師の角度は5〜30度が適当である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手芸として造花や袋物などの手芸作品を作るための、シート状の成形用素材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来造花としては、いわゆるホンコンフラワーなどのような、プラスチックの成型品を組合わせたものが広く知られているが、色彩や形状に変化が乏しく、必ずしも美観に優れたものとは言えなかった。
【0003】
そこで手芸などの分野においては、紙や布を花弁や葉の形状に裁断して造花素材とし、これを着色し、所望の構造に組合わせて変化に富んだ造花を形成することが行われている。そしてその花弁や葉の風合を良くするために、造花素材にろうを塗布することが行われている。
【0004】
しかしながらろうを塗布した造花素材は、風合は相当に改善されるものの、硬くなって花弁や葉を曲げると折れることがあり、また長期間放置すると劣化して、ひゞ割れたり白化したりすることがある。
【0005】
また造花素材にろうを塗布するためには、ろうを加熱して熔融する必要があり、熔融したろうは発火する可能性もあり、また火傷をする可能性もあり、家庭などにおいて手芸の分野で実施するには安全性の点で問題がある。
【0006】
また造花素材として紙や布が使用されることが多いが、これらの素材は平面状の部分品を作るのには適しているが、三次元的に湾曲させることは困難である。ニットやクレープ紙を使用することにより三次元的に湾曲させることも可能ではあるが、力を除くと歪が回復して形状を保持することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60−110976号公報
【特許文献2】特開平6−146104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであって、家庭において安全に実施することができると共に、三次元的に湾曲させることが可能であり、出来上った製品は風合が良好で折れたり白化したりすることがなく、いろいろと変化に富んだ作品を作ることのできる手芸用の素材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
而して本発明は、クレープ紙を、当該クレープ紙のクレープ方向が若干の角度をもって交差するように重ね合わせ、これを硬化性シリコーン樹脂液により接着硬化せしめたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明においては、前記クレープ紙を、5〜30度の角度をもって交差するように重ね合わせることが好ましい。またこれらのクレープ紙のうちの上側のクレープ紙を、下側のクレープ紙と同一のクレープ方向から、反時計方向に回転させて重ね合わせることが好ましい。
【0011】
また本発明における前記硬化性シリコーン樹脂液としては、市販の一液型シリコーン系シーラントを100部に対し、エチルアルコールを30〜60部添加したものを使用することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明はクレープ紙を重ね合わせて硬化性シリコーン樹脂液で接着硬化したものであるので、ろうを使用する場合のように加熱を必要とせず、火傷や発火の恐れもなく、家庭において安全に実施することができ、また素材自体が柔軟であるので白化したり折れたりすることもない。
【0013】
また伸縮性を有するクレープ紙と軟質のシリコーン樹脂液よりなるので、柔軟であって伸縮性を有しており、また局部的に強く引き伸ばすことにより歪を残し、三次元的に湾曲した形状を形成することができ、またその形状を安定して保持することができ、手芸用素材として変化に富んだ作品を製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の手芸用素材の平面図。
【図2】本発明を使用した作品の一例としての造花の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明の手芸用素材1を示すものであって、2a及び2bはクレープ紙であり、二枚のクレープ紙2a、2bを、上側のクレープ紙2aを下側のクレープ紙2bに対してクレープの方向が反時計方向に約15度回転させた状態で重ね合わせ、その両クレープ紙2a、2bを硬化性シリコーン樹脂液3で接着硬化させたものである。
【0016】
クレープ紙2a、2bは通常の市販のクレープ紙をそのまま使用することができる。そしてそのクレープ紙2a、2bをクレープの方向が交差した状態で重ね合わせるのであるが、その交差角度は5〜30度とするのが好ましい。
【0017】
交差角度が5度未満であると、二枚のクレープ紙2a、2bのクレープ方向が変わらないため、その弾力により変形が回復しやすく、また30度を超えると一方のクレープ紙による伸縮性が他方のクレープ紙により阻害されるため、素材としての伸縮性に劣る。クレープ方向の交差角度は10〜15度とするのがさらに好ましい。
【0018】
また二枚のクレープ紙2a、2bの交差方向は、上側のクレープ紙2aが下側のクレープ紙2bに対して、同一のクレープ方向から反時計方向に回転させた状態で重ね合わせるのが好ましい。これによりより深い凹凸を形成することができ、より立体性に富んだ作品とすることができる。この理由は必ずしも明確ではないが、人の利き手の方向と関係があるのではないかと思われる。
【0019】
また二枚のクレープ紙2a、2bを接着するのには、柔軟な硬化性シリコーン樹脂液3を使用する。当該硬化性シリコーン樹脂液3をクレープ紙2a、2bに塗布して接合し、樹脂液を硬化させて接着する。
【0020】
樹脂液の形態としては、硬化性シリコーン樹脂を水又はアルコールに分散させたエマルジョンが好ましい。かかるエマルジョンとしては、接着性を有する一液型シリコーン系シーラント(例えばセメダイン社製POSシール)として市販されているものを使用することができる。またこれらの市販のシーラントを、シーラント100部に対して30〜60部のエチルアルコールで希釈して粘度を調整することもできる。
【0021】
本発明によれば、二枚のクレープ紙2a、2bを硬化性シリコーン樹脂液3で接着効果させているので、クレープ紙2a、2bによる幅方向の伸縮性を保持しており、変形が可能であるとともに、局部的に幅方向に強く伸長することにより硬化性シリコーン樹脂に歪みを残し、三次元的な湾曲を形成し、立体的な作品を製作することができる。
【0022】
また二枚のクレープ紙2a、2bのクレープ方向を若干の角度をもって交差させているので、局部的に幅方向に引っ張り力を作用させた時に、二枚のクレープ紙2a、2bの伸長方向が異なり、その間を接着した硬化性シリコーン樹脂に大きな歪みがかかり、その歪みが残り易いので、過度に大きな力を必要とすることなく、手芸用素材1を三次元的に湾曲させることができる。
【0023】
本発明の手芸用素材1は、これを製作する作品の部品の形状に合わせて裁断し、その裁断片を指で局部的に伸長して所望の湾曲形状に成形し、必要に応じて所望の色に着色し、その部品を適宜組み合わせて作品を製作する。
【0024】
図2は本発明を使用した作品の一例としての造花4を示すものである。5は花部であって花弁をかたどった複数の造花部品6を組合わせたものである。また7は葉部であって葉をかたどった造花部品8よりなっている。そしてこれらの花部5及び葉部7を、針金9に紙などの素材を巻いて茎をかたどった茎部10に取付け、それをさらに組合わせて造花4を構成している。
【0025】
この造花4を作る具体的手順としては、本発明の手芸用素材1を裁断して花弁又は葉をかたどった造花部品6、8を作り、これを指で局部的に引き延ばして所望の湾曲形状を形成し、これに水彩絵具などにより所望の色彩を施す。そしてこの造花部品6、8を組合わせて花部5及び葉部7を作り、さらにその花部5及び葉部7を茎部10に取付け、造花4を製作する。また造花4の風合を改善するために、花部5や葉部7にアクリル樹脂などの透明で柔軟な樹脂を塗布することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の手芸用素材1は、上述の造花4を製作するための素材に限定されるものではなく、本発明の手芸用素材1を使用して、造花のほか各種のポーチなどの袋物や、その他の種々の手芸作品を製作することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 手芸用素材
2a、2b クレープ紙
3 硬化性シリコーン樹脂液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレープ紙(2a、2b)を、当該クレープ紙(2a、2b)のクレープ方向が若干の角度をもって交差するように重ね合わせ、これを硬化性シリコーン樹脂液(3)により接着硬化せしめたことを特徴とする、手芸用素材
【請求項2】
前記クレープ紙(2a、2b)を、5〜30度の角度をもって交差するように重ね合わせたことを特徴とする、請求項1に記載の手芸用素材
【請求項3】
クレープ紙(2a、2b)のうちの上側のクレープ紙(2a)を、下側のクレープ紙(2b)と同一のクレープ方向から反時計方向に回転させて重ね合わせたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の手芸用素材
【請求項4】
硬化性シリコーン樹脂液(3)が、市販の一液型シリコーン系シーラントを100部に対し、エチルアルコールを30〜60部添加したものであることを特徴とする、請求項1に記載の手芸用素材

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−242252(P2010−242252A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91580(P2009−91580)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(509097301)
【Fターム(参考)】