説明

手術器具

本発明は、棘間スペーサを隣接する棘突起間に、より簡便な操作で挿入することが可能な手術器具を提供することを課題とする。本発明の手術器具は、隣接する棘突起の間に挿入して使用され、かつ、中空部を有する筒状の棘間スペーサを、棘突起間に挿入するための手術器具であって、棘間スペーサの中空部に挿通する挿通部を有する挿入部材と、挿入部材を把持する把持部材とを有し、挿入部材の一方の端部を第1の端部、他方の端部を第2の端部とすると、挿入部材を棘間スペーサの中空部に挿通して、挿入部材の第1の端部付近に設けられた被把持部を把持部材で把持した状態で用いることを特徴とする。挿入部材は、第1の端部とは反対側の端部である第2の端部に、棘間スペーサを挿通部に挿通した際、棘間スペーサが挿通部から脱落するのを防止するための支持部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、中空部を有する筒状の形状をなし、かつ、隣接する棘突起の間に挿入して使用される棘間スペーサを、棘突起間に挿入する手術において用いられる手術器具に関するものである。
【背景技術】
例えば、脊柱管狭窄症では、椎体と椎体との間に介在する椎間板の変性や、変形性椎間関節症、椎体の二次的な変形、脊柱変形と、それに起因した馬尾・神経根障害が病態として認められる。
このような脊柱管狭窄症の治療には、変性した椎間板を椎体間から摘出し、この椎間板が除去された椎体間に自家骨を移植して椎体を固定する椎体固定術が用いられる。
しかし、椎体間に骨移植するだけでは、骨癒合が得られるまでに移植骨の吸収により、脊椎に不安定性を生じる場合がある。
このような不安定性を防止する方法として、例えば、棘突起間に、棘間スペーサを挿入することが知られている。
ところで、従来、このような棘間スペーサを棘突起間に挿入するような手術において使用される手術器具として種々のものが提案されている(例えば、日本国登録実用新案第2550758号公報参照。)。
この公報に記載の手術器具は、挟持部の内面に軟質性の樹脂体が取り付けられており、直接、棘間スペーサ等を挟持する構成となっている。
しかし、かかる手術器具では、直接、棘間スペーサ等を挟持するため、過度の挟持力等によって棘間スペーサ等に損傷を与えてしまう場合があった。また、決まった位置で挟持しないため、その都度、棘間スペーサ等が適正な方向に挿入されているかどうか確認しなければならず、手術が煩雑になるという問題があった。
【発明の開示】
本発明の目的は、棘間スペーサを隣接する棘突起間に、より簡便な操作で挿入することが可能な手術器具を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の手術器は、中空部を有する筒状の形状をなし、かつ、隣接する棘突起の間に挿入して使用される棘間スペーサを、棘突起間に挿入する手術において用いられる手術器具であって、前記棘間スペーサの前記中空部に挿通する挿通部を有する挿入部材と、前記挿入部材を把持する把持部材とを有し、前記挿入部材は、前記把持部材によって把持される被把持部を、前記挿入部材の一方の端部である第1の端部付近に有するものであって、前記挿入部材を前記棘間スペーサの前記中空部に挿通して、前記被把持部を前記把持部材で把持した状態で用いることを特徴とする。
これにより、棘間スペーサを隣接する棘突起間に、より簡便な操作で挿入することができる。
好ましくは、前記挿入部材は、前記第1の端部とは反対側の端部である第2の端部に、前記棘間スペーサを前記挿通部に挿通した際、前記棘間スペーサが挿通部から脱落するのを防止するための支持部を有する。これにより、棘間スペーサが挿通部より抜け落ちる(脱落する)のを防止することができる。
また、好ましくは、前記支持部は、前記第2の端部方向に向かって断面の面積が漸減する漸減部を有する。これにより、棘間スペーサを隣接する棘突起間に、より容易に挿入することができる。
また、好ましくは、前記支持部は、前記棘間スペーサの一方の端面が当接する第1の当接部を有する。これにより、棘間スペーサと支持部との接触による損傷を効果的に防止することができる。
また、好ましくは、前記被把持部は、前記挿入部材の長手方向に垂直な方向における前記被把持部の断面の面積が、同方向における前記挿通部の断面の面積よりも小さい第1の部位を有する。これにより、把持部材は、挿入部材をより確実に把持することができる。
また、好ましくは、前記第1の部位よりも前記第1の端部側に、前記挿入部材の長手方向に垂直な方向における前記第1の部位の断面の面積よりも、同方向における断面の面積が大きい第2の部位が設けられている。これにより、挿入部材が把持部材から抜け落ちるのを効果的に防止することができる。
また、好ましくは、前記把持部材は、基端側に操作部、先端側に前記被把持部を把持する把持部を有する一対の腕部材を、支点を介して回動可能に支持してなるものである。これにより、挿入部材をより確実に把持することができる。
また、好ましくは、前記把持部は、前記被把持部を把持するための、前記被把持部の形状に対応する形状の溝が設けられたものである。これにより、挿入部材や棘間スペーサに損傷を与えるのを十分に防止しつつ、挿入部材をより確実に把持することができる。
また、好ましくは、前記把持部は、前記棘間スペーサの一方の端面が当接する第2の当接部を有する。これにより、棘間スペーサと把持部との接触による損傷を効果的に防止することができる。
また、好ましくは、前記把持部材は、前記腕部材の回動方向に対して垂直な方向に屈曲している。これにより、棘間スペーサを棘突起間に挿入するのが容易となり、また、狭い手術部位での手術器具の操作性が向上する。
また、好ましくは、前記把持部材は、前記第2の当接部が設けられている側に向かって屈曲している。これにより、棘間スペーサを棘突起間に挿入するのが容易となり、また、狭い手術部位での手術器具の操作性が向上する。
また、好ましくは、前記第1の当接部および/または前記第2の当接部は、少なくとも表面付近が、樹脂材料で構成されたものである。これにより、接触による棘間スペーサの損傷をより効果的に防止することができる。
また、好ましくは、前記練間スペーサと当接する部分の少なくとも一部が、樹脂材料で構成されたものである。これにより、接触による棘間スペーサの損傷をより効果的に防止することができる。
また、好ましくは、前記樹脂材料は、主としてポリアミド樹脂で構成されたものである。これにより、例えば、滅菌消毒時のような過酷な条件(例えば、高温高圧等)にも十分耐えうることができる。
また、好ましくは、前記挿入部材を前記棘間スペーサの前記中空部より引き抜くための引き抜き部材を有する。これにより、狭い手術部位においても、容易に挿入部材を引き抜くことができる。
また、好ましくは、前記引き抜き部材は、基端側に操作部、先端側に前記棘間スペーサの前記中空部に挿通された前記挿入部材の前記支持部を挟持する挟持部を有する一対の腕部材を、支点を介して回動可能に支持してなるものである。これにより、狭い手術部位においても、容易に挿入部材を引き抜くことができる。
また、好ましくは、前記挟持部は、少なくとも表面付近が樹脂材料で構成されたものである。これにより、接触による棘間スペーサの損傷をより効果的に防止することができ、また、より確実に挿入部材を挟持することができる。
また、好ましくは、前記樹脂材料は、主としてポリアミド樹脂で構成されたものである。これにより、例えば、滅菌消毒時のような過酷な条件(例えば、高温高圧等)にも十分耐えうることができる。
また、好ましくは、前記挟持部は、前記挿入部材の前記支持部の形状に対応した形状を有するものである。これにより、より確実に挿入部材を挟持することができ、棘間スペーサより挿入部材を引き抜く際、挿入部材が引き抜き部材より脱落するのをより効果的に防止することができる。
また、好ましくは、前記把持部材の前記操作部と、前記引き抜き部材の前記操作部との外観が異なっている。これにより、異なる手術器具であることを認識することができる。
また、好ましくは、各前記操作部によって、各手術器具が特定可能とされている。これにより、使用する手術器具を間違えてしまうようなミスを防止することができる。
上述したまたはそれ以外の本発明の目的、構成および効果は、図面を参照して行う以下の実施形態の説明からより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の手術器具が適用される棘間スペーサを構成するブロック体を示す斜視図である。
図2は、本発明の手術器具が適用される棘間スペーサを構成するブロック体の実施形態を示す平面図(a)、側面図(b)である。
図3は、本発明の手術器具が適用される棘間スペーサの使用状態を示す図である。
図4は、本発明の手術器具が適用される棘間スペーサの使用状態を示す図である。
図5は、本発明の手術器具を構成する挿入部材の実施形態を示す側面図である。
図6は、挿入部材が棘間スペーサに挿通した状態を示す平面図である。
図7は、本発明の手術器具を構成する把持部材が閉じた状態における平面図である。
図8は、本発明の手術器具を構成する把持部材が開いた状態における平面図である。
図9は、本発明の手術器具を構成する把持部材の側面図である。
図10は、図7中のA−A線断面図である。
図11は、棘間スペーサに挿通した挿入部材を把持部材で把持した状態を示す図である。
図12は、本発明の手術器具を構成する引き抜き部材の実施形態を示す平面図である。
図13は、本発明の手術器具を構成する引き抜き部材の側面図である。
図14は、手術器具を構成するディストラクターの平面図である。
図15は、手術器具を構成するディストラクターの平面図である。
図16は、本発明の手術器具を用いて、棘間スペーサを棘間に挿入する際の手術法の一例を説明するための図である。
図17は、本発明の手術器具を用いて、棘間スペーサを棘間に挿入する際の手術法の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の手術器具を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の手術器具が適用される棘間スペーサを構成するブロック体を示す斜視図、図2は、平面図(a)、側面図(b)で、図3および図4は、それぞれ、本発明の手術器具が適用される棘間スペーサの使用状態を示す図、図5は、本発明の手術器具を構成する挿入部材の実施形態を示す側面図、図6は、挿入部材が棘間スペーサに挿通した状態を示す平面図、図7は、本発明の手術器具を構成する把持部材が閉じた状態における平面図、図8は、把持部材が開いた状態における平面図、図9は、把持部材の側面図、図10は、図7中のA−A線断面図、図11は、棘間スペーサに挿通した挿入部材を把持部材で把持した状態を示す図、図12は、本発明の手術器具を構成する引き抜き部材の実施形態を示す平面図、図13は、引き抜き部材の側面図、図14、図15は、手術器具を構成するディストラクターの平面図である。なお、本明細書では、図7〜図10、図12〜図15中、左側を「基端」、右側を「先端」として説明する。
まず、本発明の手術器具が適用される棘間スペーサについて説明する。
従来、脊柱管狭窄症の治療用の棘間スペーサとしては、特開平8−52166号公報に開示されているような棘間スペーサが用いられてきた。このような棘間スペーサは、棘突起間に固定する場合、耳部を棘突起にネジで固定するため、健全な骨組織を傷つけてしまうという問題があり、また、形状が複雑で、手術操作が煩雑となるという問題があった。
このような問題を解決するため、発明者らは、鋭意検討した結果、棘突起と棘突起との間に確実に保持され、隣接する棘突起の間隔を適正に維持することができ、かつ、骨や軟部組織を大きく切除することなく、低侵襲手術が可能な棘間スペーサ、すなわち、以下に説明するような棘間スペーサを発明するに至った。
図3および図4に示すように、本発明の手術器具が適用される棘間スペーサ1は、棘突起101と棘突起102との間(以下、「棘間」とも言う。)に挿入されるものである。棘間スペーサ1が棘間に挿入された状態(以下、「挿入状態」とも言う。)で、棘突起101と棘突起102との間隔(離間距離)が適正に維持(保持)される。
図1および図2に示すように、棘間スペーサ1(以下、単に「スペーサ1」とも言う)は、ブロック状のブロック体2で構成されている。
ブロック体2は、図示の構成のように、略円柱形状をなしており、凹部21と、中空部22を有している。また、ブロック体2は、一体的に形成されている。
凹部21は、図3および図4に示すように、棘間にスペーサ1を挿入した状態で、上下の棘突起の(隣接する棘突起の)それぞれ両方の一部を収納する機能を有する。
このように、スペーサ1を構成するブロック体2は、棘突起間にスペーサ1を挿入した状態で、上下の棘突起のそれぞれの一部を収納する凹部21を有している。このような構成により、スペーサ1が棘間に確実に保持され、棘突起と棘突起との間隔を適正に維持することができる。また、特に、このような構成のスペーサを用いることにより、治療を行う際に、骨や軟部組織を大きく切除することなく、低侵襲手術が可能となる。
凹部21は、図示の構成のように、略円柱状の形状を有するブロック体2の周面上の軸方向のほぼ中央付近に設けられている。これにより、より確実にスペーサ1を棘間に保持することができる。
また、凹部21は、凹部21の底面の形状が、円弧状をなしているものである。これにより、スペーサ1を棘間に挿入する際および挿入した後のいずれにおいても、周辺組織が損傷するのをより確実に防止することができる。
前述したような凹部21は、少なくとも、棘突起間にスペーサ1を挿入した状態で、上下の棘突起の一部を収納する機能を有するものであればよく、スペーサ1を構成するブロック体2の一部に設けられていればよいが、図示の構成のように、スペーサ1を構成するブロック体2の全周にわたって設けられているのが好ましい。これにより、より確実にスペーサ1を棘突起間に保持することができる。また、このような構成であると、スペーサ1を棘間に挿入する際に、位置合わせが容易になるという利点がある。また、このような構成であると、スペーサ1を製造する際に、容易に凹部21を形成することができる。
このような凹部21の図2(a)中のDで表される深さは、0.5〜10mmであるのが好ましく、1〜2mmであるのがより好ましい。これにより、より確実にスペーサ1を棘突起間に保持することができる。これに対し、凹部21の深さが前記下限値未満であると、棘突起間にスペーサ1を十分に保持することができない可能性がある。一方、凹部21の深さが、前記上限値を超えると、スペーサ1自体の強度が低下し、また、棘突起と棘突起との間隔を適正に維持することができない可能性がある。
また、前述のように溝状に形成された凹部21の図2(a)中のWで表される幅は、1〜15mmであるのが好ましく、5〜10mmであるのがより好ましい。これにより、より確実にスペーサ1を棘間に保持することができる。これに対し、凹部21の幅が前記下限値未満であると、凹部21に適度に棘突起を収納することが困難となる場合がある。一方、凹部21の幅が前記上限値を超えると、棘突起間にスペーサ1を十分に保持することができない可能性がある。
前述したように、本実施形態の手術器具が適用される棘間スペーサ1(ブロック体2)は、略円柱形状をなしており、このような形状であると、棘間に挿入する際および挿入した後においても、周辺組織を傷つけにくいものとなる。
また、このようなスペーサ1は、隣接する棘突起間に固定されるものであるが、ある程度自由度を有するように固定されるものであってもよい。このように自由度があると、人体の動き(姿勢)に応じて移動することができるので、人体への負担を軽減することができる。
中空部22は、図1および図2に示すように、側面23および側面24の中央付近に貫通するように設けられている。すなわち、中空部22は、ブロック体2の横方向(円柱の軸方向)に対して平行に、かつ、ブロック体2のほぼ中央に位置している。
この中空部22は、後に詳述するように、棘間スペーサ1を棘間へ挿入するための手術器具を挿通するのに用いられる。また、このような中空部22は、例えば、棘間スペーサ1を棘間に固定する固定部材3を挿通するのに用いることもできる。これにより、より確実にスペーサ1を棘間に保持することができる。
また、中空部22は、図2に示すように、開口部の縁部が斜めになっている。すなわち、中空部22は、略円柱状の形状を有するブロック体2の軸方向に対して垂直な方向における中空部22の断面積が、開口部(ブロック体2の端部)に向かって漸増する漸増部25を有している。これにより、例えば、固定部材3を挿通してスペーサ1を棘間に固定した際に、固定部材3の緩みを防止することができ、また、スペーサ1の動きによって固定部材3が損傷するのを効果的に防止することができる。また、このような漸増部25は、固定部材3を中空部22に挿通する際のガイド部としての機能も有している。
また、このような中空部22の図2(a)中のDで表される直径は、特に限定されないが、1〜5mmであるのが好ましく、2〜4mmであるのがより好ましい。中空部22の直径が前記下限値未満であると、固定部材3を挿通するのが困難となる場合がある。また、中空部22の直径が前記上限値を超えると、棘間スペーサとしての強度を十分に保持することができない可能性がある。
また、前述したような漸増部25の図2(a)中のDで表される開口部付近での直径は、特に限定されないが、2〜8mmであるのが好ましく、4〜6mmであるのがより好ましい。これにより、前述の効果がより顕著なものとなる。
棘間スペーサ1を棘間に固定する固定部材3としては、特に限定されないが、例えば、ワイヤー状のものを用いることができる。このようなワイヤー状の固定部材3としては、具体的には、例えば、高分子ポリエチレン製ケーブル、ポリエステル縫合糸、チタンやステンレス製ワイヤー等が挙げられる。
前述したような構成のブロック体2の図2(a)中Lで表される全長は、10〜40mmであるのが好ましく、15〜25mmであるのがより好ましい。Lが前記下限値未満であると、棘突起間にスペーサ1を十分に保持できなくなる場合がある。一方、Lが前記上限値を超えると、棘突起間にスペーサ1を挿入するのが困難となる場合がある。
また、ブロック体2の図2(a)中Lで表される端部付近における直径は、5〜20mmであるのが好ましく、8〜15mmであるのがより好ましい。Lが前記下限値未満であると、スペーサ1の強度を十分に保持することができず、また、大きな衝撃が加わった場合に、目的の部位からずれてしまう可能性がある。また、棘間の十分な間隔を得ることができず、治療効果が十分に得られない可能性がある。一方、Lが前記上限値を超えると、凹部21の深さによっては、棘突起と棘突起との間隔が広くなりすぎてしまう場合がある。
また、ブロック体2は、その角部が丸みを帯びた形状をなしている(面取りされている)。これにより、各ブロック体2を棘間に挿入する際等において、周辺組織が損傷するのをより確実に防止することができる。
このようなブロック体2は、生体親和性を有する材料で構成されたものであるのが好ましい。このような生体親和性を有する材料としては、チタンまたはチタン合金、ステンレス鋼、Co−Cr系合金、Ni−Ti系合金等の生体為害性の小さい金属材料、セラミックス材料、または、これらの複合材料等が挙げられる。
上記材料の中でも、チタンまたはチタン合金を用いた場合、強度の高い材料であるため、繰り返し応力が作用しても摩耗を抑制することができるという利点があり、また、手術後に、X線撮影等の映像を乱すことがないという利点がある。
また、上記材料の中でも、セラミックス材料を主材料として用いた場合、セラミックス材料は、生体親和性に特に優れており、また、加工性に優れているため、旋盤、ドリル等を用いた切削加工によりその形状、大きさ等を調整することが容易である。また、術場において、ブロック体2の寸法を棘突起101、102の大きさや、脊椎の彎曲度等の違い、すなわち、症例に応じて微調整することも可能となる。
セラミックス材料としては、各種のセラミックス材料が挙げられるが、特にアルミナ、ジルコニア、リン酸カルシウム系化合物等のバイオセラミックスが好ましい。なかでもリン酸カルシウム系化合物は、優れた生体親和性を備えているため、ブロック体2の構成材料として特に好ましい。
リン酸カルシウム系化合物としては、例えばハイドロキシアパタイト、フッ素アパタイト、炭酸アパタイト等のアパタイト類、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム等が挙げられ、これらを1種または2種以上を混合して用いることができる。また、これらのリン酸カルシウム系化合物のなかでもCa/P比が1.0〜2.0のものが好ましく用いられる。
このようなリン酸カルシウム系化合物のうち、ハイドロキシアパタイトがより好ましい。ハイドロキシアパタイトは、骨の無機質主成分と同様の組成、構造、物性を有するため、特に優れた生体親和性(生体適合性)を有している。
また、ブロック体2を製造する際、原料のハイドロキシアパタイト粒子は、500〜1000℃で仮焼成されたものがより好ましい。かかる温度で仮焼成されたハイドロキシアパタイト粒子は、ある程度活性が抑えられるため、焼結が急激に進行すること等による焼結ムラが抑制され、強度にムラのない焼結体を得ることができる。
このようなブロック体2は、その空孔率(気孔率)が50%以下であるのが好ましく、0〜20%程度であるのがより好ましい。空孔率を前記範囲とすることにより、ブロック体2の強度をより好適なものとすることができる。
なお、ブロック体2は、前記セラミックス材料と、例えばチタンまたはチタン合金、ステンレス鋼、Co−Cr系合金、Ni−Ti系合金等の生体為害性の小さい金属材料との複合材料等を用いて構成することも可能である。
さて、上述したような棘間スペーサ1を、隣接する棘突起間に挿入するのに、本発明の手術器具が用いられる。
以下、本発明の手術器具について説明する。
以下の説明では、図1に示すような棘間スペーサ1に適用する場合を例にして説明する。
本発明の手術器具は、上述したような棘間スペーサ1を、隣接する棘突起間に挿入する手術において用いられる手術器具であって、挿入部材4と、把持部材5とを有している。
挿入部材4は、図5、6に示すように、棘間スペーサ1に挿通される挿通部41と、挿入部材4の一方の端部(第1の端部)側に被把持部42と、他方の端部(第2の端部)側に支持部43を有している。
挿通部41は、図6に示すように、棘間スペーサ1の中空部22に挿通され、棘間スペーサ1を隣接する棘突起間に挿入する際に、棘間スペーサ1を適正な方向に挿入するためのガイド部としての機能を有している。
このような挿通部41は、棘間スペーサ1の中空部22に対応する形状を有している。すなわち、図示の構成では、挿通部41の横断面(挿入部材4の長手方向に垂直な方向における断面)の形状が略円形をなしている。
挿通部41の横断面の直径は、特に限定されないが、棘間スペーサ1の中空部22の直径とほぼ等しい値であるのが好ましい。これにより、より確実に、かつ、適正な方向で、棘間スペーサ1を隣接する棘突起間に挿入することができる。
挿通部41の横断面の直径は、具体的には、1〜5mmであるのが好ましく、2〜4mmであるのがより好ましい。挿通部41の横断面の直径が前記下限値未満であると、挿入部材4全体としての強度が十分に得られない場合があり、また、棘間スペーサ1が挿入部材4に確実に保持されず、棘突起間に適正な方向で挿入するのが困難となる場合がある。一方、挿通部41の横断面の直径が前記上限値を超えると、棘間スペーサ1の中空部22に挿通するのが困難となる場合がある。なお、挿通部41の横断面の直径は、挿通部41の長さ方向において、一定であっても一定でなくてもよい。
挿入部材4の長手方向における挿通部41の全長は、特に限定されないが、棘間スペーサ1の図2(a)中Lで表される全長とほぼ等しい値であるのが好ましい。これにより、より確実に、かつ、適正な方向で、棘間スペーサ1を隣接する棘突起間に挿入することができる。挿通部41の全長は、具体的には、10〜40mmであるのが好ましく、15〜25mmであるのがより好ましい。
図示の構成では、被把持部42は、前述した挿通部41よりも、挿入部材4の第1の端部側に設けられており、後に詳述する把持部材5により把持される部位である。
被把持部42は、被把持部42の横断面(挿入部材4の長手方向に垂直な方向における断面)の面積が、挿通部41の横断面の面積よりも小さい第一の部位421を有している。これにより、後述するような把持部材5は、挿入部材4をより確実に把持することができる。
また、被把持部42は、第1の部位421よりも第1の端部側に、第1の部位の横断面の面積よりも、横断面の面積が大きい第2の部位422を有している。
このように被把持部42が、第1の部位421と第2の部位422とを有することにより、挿入部材4が後述するような把持部材5から抜け落ちるのを効果的に防止することができる。
第1の部位421の横断面の直径は、1〜5mmであるのが好ましく、2〜4mmであるのがより好ましい。第1の部位421の直径が前記下限値未満であると、被把持部42として十分な強度が得られない可能性がある。一方、第1の部位421の横断面の直径が前記上限値を超えると、前述したような把持部材5からの抜け落ち防止効果が十分に発揮されない可能性がある。
第2の部位422の横断面の直径は、特に限定されないが、前述した挿通部41の横断面の直径とほぼ同じ値であるのが好ましい。これにより、挿入部材4が把持部材5から抜け落ちるのをより効果的に防止することができる。また、これにより、棘間スペーサ1の中空部22から、挿入部材4を引き抜く際に、引き抜きやすくなる。このような第2の部位422の横断面の直径は、具体的には、1〜5mmであるのが好ましく、2〜4mmであるのがより好ましい。
支持部43は、挿入部材4の第1の端部とは反対側の端部である第2の端部付近に設けられている。すなわち、前述した挿通部41よりも第2の端部側に設けられている。
支持部43は、棘間スペーサ1を挿通部41に挿通した際に、棘間スペーサ1が挿通部41より抜け落ちる(脱落する)のを防止する機能を有している。
支持部43は、第2の端部方向に向かって、その横断面(挿入部材4の長手方向に垂直な方向における断面)の面積が漸減する漸減部431を有している。これにより、棘間スペーサ1を隣接する棘突起間に、より容易に挿入することができる。
支持部43の図5中Dで表される最大径は、特に限定されないが、5〜20mmであるのが好ましく、8〜15mmであるのがより好ましい。これにより、挿通部41より棘間スペーサ1が抜け落ちるのをより効果的に防止しつつ、棘間スペーサ1を棘突起間に、より挿入しやすくすることができる。
また、支持部43は、棘間スペーサ1の一方の端面が当接する第1の当接部432を有している。
本実施形態では、第1の当接部432が樹脂材料で構成されている。これにより、接触による棘間スペーサ1の損傷をより効果的に防止することができる。
このような樹脂材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコンゴム、塩化ビニル、高密度ポリエチレン等が挙げられるが、中でも、ポリアミド樹脂を用いるのが好ましい。これにより、例えば、滅菌消毒時のような過酷な条件(例えば、高温高圧等)にも十分耐えうることができる。
上述したような挿入部材4の図5中Lで表される全長は、特に限定されないが、15〜50mmであるのが好ましく、25〜40mmであるのがより好ましい。挿入部材4の全長Lが前記下限値未満であると、棘間スペーサ1の全長によっては、後述するような把持部材により、把持するのが困難となる場合がある。一方、挿入部材4の全長Lが前記上限値を超えると、挿入部材4を挿通した棘間スペーサ1を、棘突起間に挿入するのが困難となる場合がある。
把持部材5は、図7〜図9に示すように、一対の長尺な腕部材(軸部材)51a、51bを有し、それらの途中を支点(ピン)55により回動可能に支持してなるものである。腕部材51aと腕部材51bとは、支点55付近の部分を除き、ほぼ対称の形状をなしている。
腕部材51aは、基端側に操作部(把持操作部)52a、先端側に把持部53aを有している。また同様に、腕部材51bは、基端側に操作部(把持操作部)52b、先端側に把持部53bを有している。
両腕部材51a、51bは、操作部52a、52bを閉じると把持部53a、53bも閉じ(図7参照)、操作部52a、52bを開くと把持部53a、53bも開く(図8参照)ように支持されている。
操作部52a、52bは、把持部材5を手で操作するための部位であり、それぞれ、指を挿入して引っ掛けるためのリング54a、54bで構成されている。なお、操作部52a、52bは、腕部材51a、51bの回動操作を行なうことができるものであれば、その形状はいかなるものでもよく、例えばC字状(フック状)やL字状のものでもよい。
また、操作部52a、52bは、それぞれ、挿入部材4を把持した状態を維持できるように、固定部521a、521bを有している。これにより、手術中に、把持部材5が開いて、棘間スペーサ1に挿通された挿入部材4が脱落するのを効果的に防止することができる。
把持部53a、53bは、棘間スペーサ1を挿通させた挿入部材4の被把持部42を把持するための部位であり、それぞれ、棘間スペーサ1と当接する側に、第2の当接部531a、531bを有している。
把持部53a、53bは、図7、10に示すように、それぞれ半円柱形状を有しており、把持部材5が閉じた状態、すなわち、把持部53aと把持部53bとが合わさった状態で略円柱形状をなすものである。
また、把持部53a、53bは、把持部53aと把持部53bとが合わさった(閉じた状態)状態における円柱の軸に沿って、溝が形成されている。このような溝の形状は、把持部53aと把持部53bとが合わさった状態で、被把持部42の形状に対応した形状をなしている。すなわち、図10に示すように、把持部53a、53bが閉じた状態で、孔部が形成される。これにより、挿入部材4や棘間スペーサ1に損傷を与えるのを十分に防止しつつ、挿入部材4をより確実に把持することができる。
図示の構成では、孔部は、径の小さい小径部532と径の大きい大径部533を有しており、小径部532、大径部533は、それぞれ被把持部42の第1の部位421、第2の部位422に対応した形状を有している。すなわち、小径部532で第1の部位421を把持し、大径部533で第2の部位422を把持する構成となっている。このような構成であると、挿入部材4や棘間スペーサ1に損傷を与えるのを十分に防止しつつ、挿入部材4が把持部材5より脱落するのをより効果的に防止することができる。
把持部材5は、腕部材51a、51bの回動方向に対して垂直な方向に屈曲している。特に、把持部材5は、図示の構成のように、第2の当接部531a、531bが設けられている側に向かって屈曲しているのが好ましく、把持部材5のほぼ中央付近で屈曲しているのがより好ましい。これにより、棘間スペーサ1を棘突起間に挿入するのが容易となり、また、狭い手術部位での手術器具の操作性が向上する。
前述したような屈曲の角度(図9中、θで表される角度)は、特に限定されないが、前述した効果をより有効に発揮するために、30〜150°程度であるのが好ましく、60〜120°程度であるのがより好ましい。
第2の当接部531a、531bは、少なくともその表面付近が、樹脂材料で構成されているのが好ましい。これにより、接触による棘間スペーサ1の損傷をより効果的に防止することができる。
このような樹脂材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコンゴム、塩化ビニル、高密度ポリエチレン等が挙げられるが、中でも、ポリアミド樹脂を用いるのが好ましい。これにより、例えば、滅菌消毒時のような過酷な条件(例えば、高温高圧等)にも十分耐えうることができる。
上述したような把持部材5の平面視した際の全長(図9中Lで表される長さ)は、特に限定されないが、100〜250mmであるのが好ましく、180〜220mmであるのがより好ましい。これにより、把持部材5の取り扱い性がより向上する。
また、本実施形態の手術器具では、前述したような挿入部材4と把持部材5の他に、引き抜き部材6を有している。
以下、本発明の手術器具を構成する引き抜き部材6について説明する。
引き抜き部材6は、挿入部材4を挿通した棘間スペーサ1を、棘突起間に挿入した後に、挿入部材4を引き抜くのに用いるものである。
引き抜き部材6は、図12、13に示すように、一対の長尺な腕部材(軸部材)61a、61bを有し、それらの途中を支点(ピン)65により回動可能に支持してなるものである。腕部材61aと腕部材61bとは、支点65付近の部分を除き、ほぼ対称の形状をなしている。
腕部材61aは、基端側に操作部(挟持操作部)62a、先端側に挟持部63aを有している。また同様に、腕部材61bは、基端側に操作部(挟持操作部)62b、先端側に挟持部63bを有している。
両腕部材61a、61bは、操作部62a、62bを閉じると挟持部63a、63bも閉じ、操作部62a、62bを開くと挟持部63a、63bも開くように支持されている。
操作部62a、62bは、引き抜き部材6を手で操作するための部位であり、それぞれ、指を挿入して引っ掛けるためのリング64a、64bで構成されている。なお、操作部62a、62bは、腕部材61a、61bの回動操作を行なうことができるものであれば、その形状はいかなるものでもよく、例えばC字状(フック状)やL字状のものでもよい。
また、操作部62a、62bは、それぞれ、挿入部材4を挟持した状態を維持できるように、固定部621a、621bを有している。これにより、棘間スペーサ1より挿入部材4を引き抜く際、引き抜き部材が開いて、挿入部材4が脱落するのを効果的に防止することができる。
挟持部63a、63bは、図12に示すように、前述したような挿入部材4の支持部43の形状に対応した形状を有しており、引き抜き部材6が閉じた状態での挟持部63aと挟持部63bとの離間距離(図中Xで表される距離)は、前述したような支持部43の最大径よりも若干小さいものとなっている。これにより、より確実に挿入部材4を挟持することができ、棘間スペーサ1より挿入部材4を引き抜く際、挿入部材4が引き抜き部材6より脱落するのをより効果的に防止することができる。
挟持部63a、63bは、少なくともその表面付近が、樹脂材料で構成されているのが好ましい。これにより、接触による棘間スペーサ1の損傷をより効果的に防止することができ、また、より確実に挿入部材4を挟持することができる。
このような樹脂材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコンゴム、塩化ビニル、高密度ポリエチレン等が挙げられるが、中でも、ポリアミド樹脂を用いるのが好ましい。これにより、例えば、滅菌消毒時のような過酷な条件(例えば、高温高圧等)にも十分耐えうることができる。
上述したような引き抜き部材6の全長(図13中Lで表される長さ)は、特に限定されないが、100〜250mmであるのが好ましく、180〜220mmであるのがより好ましい。これにより、引き抜き部材6の取り扱い性がより向上する。
また、本実施形態の手術器具は、上述した挿入部材4、把持部材5、引き抜き部材6の他に、ディストラクター10を有している。
ディストラクター10は、前述した棘間スペーサ1を棘突起間に挿入する前に、棘間靭帯を拡張するのに用いるものである。
ディストラクター10は、図14、図15に示すように、棒状の本体100と、本体100の先端側には、棘間(靭帯)に挿入される挿入部110と、本体100の基端側には、ディストラクター10を把持するための把持部120とを有している。
挿入部110は、図示の構成のように、本体100の短手方向の一方向に突出するよう設けられている。
本体100の長手方向と、挿入部110の突出している方向とのなす角(図中θで表される角度)は、50〜110°であるのが好ましく、60〜100°であるのがより好ましい。これにより、ディストラクター10の操作性が向上する。
また、挿入部110は、本体100の厚さ(直径)よりも、厚さが薄い板状の形状を有している。このような形状とすることにより、棘間(靭帯)に比較的容易に、挿入部110を挿入することができる。また、挿入後に挿入部110を回転させることで、棘間靭帯を拡張することができる。
挿入部110の平均厚さは、具体的には、2〜8mm程度であるのが好ましい。これにより、棘間(靭帯)により容易に挿入部110を挿入することができる。
また、挿入部110の図14中Xで示す幅は、8〜15mm程度であるのが好ましい。これにより、挿入後に挿入部110を回転させることで、棘間靭帯を拡張することができる。
また、挿入部110は、本体100と接続している側から挿入部110の突出方向に向かって、すなわち、挿入部110の先端部に向かって、その断面積が漸減する漸減部111を有している。このような漸減部111を有することにより、棘間(靭帯)に比較的容易にディストラクター10を挿入することができる。
また、挿入部110は、図14に示すように、その先端付近の一部が湾曲している湾曲部112を有している。これにより、挿入部110を棘間に挿入する際に、周辺組織が損傷するのをより確実に防止することができる。
また、把持部120の外面には、滑り止めのための微小な凹凸が形成されている。これにより、ディストラクター10の操作性をより高いものとすることができる。
このようなディストラクター10の平面視した際の全長(図14中Lで表される長さ)は、特に限定されないが、150〜300mmであるのが好ましく、200〜250mmであるのがより好ましい。これにより、ディストラクター10の取り扱い性がより向上する。
また、図14中Xで示す、ディストラクター10の先端部付近の幅は、20〜45mm程度であるのが好ましい。これにより、より確実に棘間(靭帯)に挿入部110を挿入することができる。
以上、本発明の手術器具について説明したが、前述した把持部材5と引き抜き部材6とでは、各操作部(操作部52aおよび/または52bと、操作部62aおよび/または62b)の外観が、それぞれ異なっているのが好ましい。これにより、異なる手術器具であることを認識することができる。
この場合、各操作部において、例えば、形状、寸法、材質、手触り、色彩等を変える方法、文字(数字)、記号、図形のようなマーカーを付す方法等のうちの少なくとも1つの方法により、各操作部の外観を異なるものとすることができる。
図示の構成では、例えば、把持部材5の操作部52aのA1で示す部分、引き抜き部材6の操作部62aのA2で示す部分を、それぞれ、異なる色彩としたり、各部分A1、A2にそれぞれ異なる数字を付したりすることができる。
これにより、各操作部を見るだけで、いずれの手術器具であるかを、容易に識別(特定)することができ、使用する手術器具を間違えてしまうようなミスを防止することができる。
上述したような各手術器具は、主として、例えば、ステンレス鋼(SUS316、SUS304、SUS301など)、チタンまたはチタン合金のような金属材料で構成されているのが好ましい。これにより、高強度で衝撃に強く、また、耐熱性を有するため、器具を滅菌する際の熱に十分に耐えることができる。
次に、本発明の手術器具を用いて、棘間スペーサ1を棘間に挿入する際の手術法の一例について、図16および17を参照しつつ説明する。
1.まず、図16(a)に示すように、患者を右側臥位屈曲位とし、局部麻酔を行う。
2.患部の皮膚を5cm程度切開する。
3.棘突起の両側から筋を剥離し、開創器(retractor)7により挙上する。
4.棘上靱帯の前方にカギ状のプローブ(ダイレーター)8を挿入する(図16(b)参照)。
5.棘間靱帯にディストラクター10を挿入する(図16(c)参照)。その後、ディストラクター10の挿入部110を回転させ、棘間靭帯を拡げる。
5.X線写真により位置を確認し、棘間靱帯にトライアル9を差し込んでいき、棘突起間の間隔を拡げる(図16(d)参照)。
6.図11のように、棘間スペーサ1に挿通した挿入部材4を把持部材5で把持し、固定部521aと固定部521bとを咬み合わせて、把持部材5が閉じた状態を固定した状態で、棘間スペーサ1を、患者の右側から棘突起間に挿入する(図17(a)参照)。
7.固定部521a、521bの咬み合わせを解除し、把持部材5を開くことによって、把持部材5を取り除く(図17(b)参照)。
8.引き抜き部材6の挟持部63aと63bとで、挿入部材4の支持部43を挟持して、棘間スペーサ1より挿入部材4を引き抜く(図17(c)、(d)参照)。
9.棘間スペーサ1の中空部22に固定部材3を挿通し、該固定部材3により棘間スペーサ1を棘突起間に固定する(図3参照)。
10.創部を閉鎖する。
このように本発明の手術器具を用いれば、棘間スペーサを、容易に、かつ、低侵襲手術で挿入することが可能となる。また、特に、挿入部材4と把持部材5とを併用することにより、棘間スペーサ1を隣接する棘突起間に挿入する際、棘間スペーサ1の側方を把持部材5の第2の当接部531aと531bとで押圧することができ、すなわち、棘間スペーサ1の挿入方向への力が加えやすいため、より容易に棘間スペーサ1を設置することが可能となる。また、棘間スペーサ1を把持部材5により、直接把持する必要がない(棘間スペーサ1に把持力が加わらない)ので、過度の把持力によって棘間スペーサ1をチッピングさせるおそれがない。
なお、挿入部材4の第1の端部(被把持部42が設けられている側の端部)付近に、固定部材3の一端を取り付けておいてもよい。これにより、挿入部材4を棘間スペーサ1から引き抜くと同時に、固定部材3を棘間スペーサ1の中空部に挿通することができ、手術の効率をより向上させることができる。
また、以上説明したような術式によれば、ダイレーター8、トライアル9を用いているため、より好適に棘間靭帯を拡げることができる。なお、本実施形態の手術器具は、ディストラクター10を備えているので、ダイレーター8、トライアル9を省略した場合であっても、棘間靭帯を容易に拡げることができる。
以上、本発明の手術器具を図示の構成に基づいて説明したが、本発明は、これに限らず、各部の構成は、同様の機能を発揮し得る任意の構成にすることができる。例えば、把持部材や引き抜き部材の両腕部材の全体形状や、それに属する部位(例えば操作部、把持部、挟持部等)の形状は、非対称であってもよい。
また、本発明の手術器具は、前述した実施形態に限定されず、他の部材を有するものであってもよいし、他の部材と組み合わせて用いられるものであってもよい。
また、本発明の手術器具は、本発明の手術器具を構成する各部材を、それぞれ複数個有するものであってもよい。例えば、挿入部材4が複数あって、棘間スペーサ1の形状や大きさ等にあわせて、適宜選択して用いるものであってもよい。また、同様に、把持部材5、引き抜き部材6も複数あって、棘間スペーサ1の形状や大きさ等にあわせて、適宜選択して用いるものであってもよい。
また、前述した実施形態では、把持部材5の両腕部材51a、51bは、操作部52a、52bを閉じると把持部53a、53bが閉じるように支持されたものとして説明したが、その逆の構成であってもよい。すなわち、操作部52a、52bを閉じると把持部53a、53bが開くように支持されたものであってもよい。
また、前述した実施形態では、引き抜き部材6の両腕部材61a、61bは、操作部62a、62bを閉じると挟持部63a、63bが閉じるように支持されたものとして説明したが、その逆の構成であってもよい。すなわち、操作部62a、62bを閉じると挟持部63a、63bが開くように支持されたものであってもよい。
また、前述した実施形態では、引き抜き部材6を有する構成について説明したが、このような引き抜き部材6はなくてもよい。
また、前述した実施形態では、挿入部材4の第1の当接部432が樹脂材料で構成されたものとして説明したが、これに限定されず、例えば、棘間スペーサ1と当接する部分であって、第1の当接部432以外の部分が樹脂材料で構成されたものであってもよい。棘間スペーサ1と当接する部分であって、第1の当接部432以外の部分としては、例えば、挿入部材4の挿通部41や把持部材5の把持部53a、53b等が挙げられる。
また、前述した実施形態では、挿入部材4が、漸減部431を有するものについて説明したが、これに限定されず、例えば、漸減部431はなくてもよい。
また、前述した実施形態では、挿入部材4の被把持部42が、横断面積の異なる第1の部位421と第2の部位422とを有するものとして説明したが、これに限定されず、例えば、第2の部位422がなくてもよいし、横断面積の異なる部位がなく、挿通部41の一部をそのまま被把持部としてもよい。
また、前述した実施形態では、棘間スペーサとして、円柱形状のものを用いる場合について説明したが、これに限定されず、例えば、棘間スペーサの形状は、中空部を有するものであれば、いかなるものであってもよく、例えば、略球形状、略三角柱形状や略四角柱形状等の多角柱形状等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
以上述べたように、本発明によれば、棘間スペーサを隣接する棘突起間に、より簡便な操作で挿入することができる。
特に、本発明の手術器具を用いれば、骨や軟部組織を大きく切除することなく、低侵襲手術が可能となる。
なお、本件出願は、日本国特許願2003−149725に基づくものであり、当該出願の番号を明記することにより、その開示内容全体が本件出願に組み込まれたものとする。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を有する筒状の形状をなし、かつ、隣接する棘突起の間に挿入して使用される棘間スペーサを、棘突起間に挿入する手術において用いられる手術器具であって、
前記棘間スペーサの前記中空部に挿通する挿通部を有する挿入部材と、
前記挿入部材を把持する把持部材とを有し、
前記挿入部材は、前記把持部材によって把持される被把持部を、前記挿入部材の一方の端部である第1の端部付近に有するものであって、
前記挿入部材を前記棘間スペーサの前記中空部に挿通して、前記被把持部を前記把持部材で把持した状態で用いることを特徴とする手術器具。
【請求項2】
前記挿入部材は、前記第1の端部とは反対側の端部である第2の端部に、前記棘間スペーサを前記挿通部に挿通した際、前記棘間スペーサが挿通部から脱落するのを防止するための支持部を有する請求項1に記載の手術器具。
【請求項3】
前記支持部は、前記第2の端部方向に向かって断面の面積が漸減する漸減部を有するものである請求項2に記載の手術器具。
【請求項4】
前記支持部は、前記棘間スペーサの一方の端面が当接する第1の当接部を有する請求項2または3に記載の手術器具。
【請求項5】
前記被把持部は、前記挿入部材の長手方向に垂直な方向における前記被把持部の断面の面積が、同方向における前記挿通部の断面の面積よりも小さい第1の部位を有するものである請求項1ないし4のいずれかに記載の手術器具。
【請求項6】
前記第1の部位よりも前記第1の端部側に、前記挿入部材の長手方向に垂直な方向における前記第1の部位の断面の面積よりも、同方向における断面の面積が大きい第2の部位が設けられている請求項5に記載の手術器具。
【請求項7】
前記把持部材は、基端側に操作部、先端側に前記被把持部を把持する把持部を有する一対の腕部材を、支点を介して回動可能に支持してなるものである請求項1ないし6のいずれかに記載の手術器具。
【請求項8】
前記把持部は、前記被把持部を把持するための、前記被把持部の形状に対応する形状の溝が設けられたものである請求項7に記載の手術器具。
【請求項9】
前記把持部は、前記棘間スペーサの一方の端面が当接する第2の当接部を有する請求項7または8に記載の手術器具。
【請求項10】
前記把持部材は、前記腕部材の回動方向に対して垂直な方向に屈曲している請求項7ないし9のいずれかに記載の手術器具。
【請求項11】
前記把持部材は、前記第2の当接部が設けられている側に向かって屈曲している請求項9または10に記載の手術器具。
【請求項12】
前記第1の当接部および/または前記第2の当接部は、少なくとも表面付近が、樹脂材料で構成されたものである請求項8ないし11のいずれかに記載の手術器具。
【請求項13】
前記棘間スペーサと当接する部分の少なくとも一部が、樹脂材料で構成されたものである請求項1ないし12のいずれかに記載の手術器具。
【請求項14】
前記樹脂材料は、主としてポリアミド樹脂で構成されたものである請求項12または13に記載の手術器具。
【請求項15】
前記挿入部材を前記棘間スペーサの前記中空部より引き抜くための引き抜き部材を有する請求項1ないし14のいずれかに記載の手術器具。
【請求項16】
前記引き抜き部材は、基端側に操作部、先端側に前記棘間スペーサの前記中空部に挿通された前記挿入部材の前記支持部を挟持する挟持部を有する一対の腕部材を、支点を介して回動可能に支持してなるものである請求項15に記載の手術器具。
【請求項17】
前記挟持部は、少なくとも表面付近が樹脂材料で構成されたものである請求項16に記載の手術器具。
【請求項18】
前記樹脂材料は、主としてポリアミド樹脂で構成されたものである請求項17に記載の手術器具。
【請求項19】
前記挟持部は、前記挿入部材の前記支持部の形状に対応した形状を有するものである請求項16ないし18のいずれかに記載の手術器具。
【請求項20】
前記把持部材の前記操作部と、前記引き抜き部材の前記操作部との外観が異なっている請求項16ないし19のいずれかに記載の手術器具。
【請求項21】
各前記操作部によって、各手術器具が特定可能とされている請求項16ないし20のいずれかに記載の手術器具。

【国際公開番号】WO2004/105656
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506538(P2005−506538)
【国際出願番号】PCT/JP2004/007581
【国際出願日】平成16年5月26日(2004.5.26)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【出願人】(592247274)
【出願人】(503178635)
【Fターム(参考)】