説明

打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造。

【課題】 コンクリート構造物の打ち継ぎ面での止水性および連結目地部の止水性や相対変位の吸収ができるとともに、可撓止水継手を取り付ける継手取付枠体とコンクリートとの間の止水性を確保することができる打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造を提供すること。
【解決手段】 打ち継ぎ止水部材5の目地部側の端部5aと継手取付枠体9のシール部材11と連結することで、可撓止水継手8と打ち継ぎ止水部材5とを連続させ、連結目地部4および打ち継ぎ面3双方の止水性を確保するとともに、継手取付枠体9のコンクリートと接触する全周にシール部材11を設置して打ち継ぎ止水部材5と連結することで、全ての止水のための部材5,8,11が連続させて継手取付枠体9のシール部材11の設置範囲を広げて止水性の向上をはかる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造に関し、洞道、上下水道、地下鉄、共同溝等の中空のコンクリート構造体同士の連結目地部および中空コンクリート構造体自体の打ち継ぎ面の止水性を向上できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の施工にあたり、コンクリートを打ち継いで構築することも多く、躯体の規模、コンクリートの打設量の限度、型枠支保工にかかるコンクリート荷重などを考慮し、複数回の打ち継ぎが行われる場合もあり、例えば図12に示すコンクリート構造物1では、各コンクリート構造体1a,1bをそれぞれ上下2箇所に打ち継ぎ面2,3を設けて打ち継いで構築するとともに、コンクリート構造体1a,1b同士も連結目地部4を介して順次構築することが行われる。
【0003】
このようなコンクリート構造物1では、打ち継ぎ面2,3での止水と、コンクリート構造体1a,1b間の連結目地部4での止水および地盤の不等沈下や地震、あるいは温度変化などに伴なう相対変位を吸収できるようにする必要がある。
【0004】
このため、例えば打ち継ぎ面3上での平面状態を示す図13のように、水平な打ち継ぎ面3の上下のコンクリート間に垂直に帯状の打ち継ぎ止水材5を介装して打ち継ぎ面3の止水を行う。また、連結目地部4を止水するためコンクリート構造物1a,1bの連結目地部4の打ち継ぎ止水材5より外側にゴム止水板6を介装するとともに、外面側(土砂側)には、防水シート7を取り付ける。さらに、コンクリート構造物1の内面側には、相対変位の吸収と止水のため可撓止水継手8を取り付けるようにしており、互いに対向する一対のコンクリート構造物1a、1bの対向端部に形成した段差部に、筒状の枠体9をそれぞれ碇着させるとともに、ゴム・合成樹脂等の弾性体からなる短筒状に形成した可撓止水継手8の両端部を、枠体9の内周面に水密的に取り付けて地盤の不等沈下や地震などに伴なうコンクリート構造物1a,1bの相対変位を吸収させ止水を行なうようにしたものがある。なお、図中、10は継手の外周側に介在させた目地材である(特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭63−58982号公報
【特許文献2】特開平8−284186号公報
【特許文献3】特開平10−18395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなコンクリート構造物1では、防水シート7が破断したり、剥離した場合には、連結目地部4に浸水する。この外面側から連結目地部4への浸水は、図13(a)中に太い矢印で示すように、打ち継ぎ面3に沿ってゴム止水板6を迂回し、さらに打ち継ぎ止水材5に沿って連結目地部4を介して打ち継ぎ止水材5を迂回して打ち継ぎ面3に沿って浸水し、枠体9および可撓止水継手8の外側からコンクリート構造物1の内面側に至って漏水となるという問題がある。
【0007】
また、コンクリートの打ち継ぎを行う場合、先打ちコンクリートの表面にレイタンス等雑物が付着し、これによって打ち継ぎ面におけるコンクリート同士の付着力が低下することで、打ち継ぎ面を伝う浸水の要因となるという問題があり、特に継手近傍で顕著となるという問題がある。
【0008】
また、可撓止水継手8を取り付けるための筒状の枠体9を予め設置した状態で、コンクリートを打設してコンクリート構造物1bを構築する場合に、図13(b)に示すように、枠体9とコンクリートとの間に、ジャンカ、気泡跡、コンクリートの乾燥収縮を起因とする水密性の低下が危惧され、連結目地部4からの浸水が打ち継ぎ面3だけでなく、これら水密性のより悪い位置に回り、可撓止水継手8の近傍からの漏水に至るという問題がある。
【0009】
この発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、コンクリート構造物の打ち継ぎ面での止水性および連結目地部の止水性や相対変位の吸収ができるとともに、可撓止水継手を取り付ける継手取付枠体とコンクリートとの間の止水性を確保することができる打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
連結目地部および打ち継ぎ面を備えるコンクリート構造物での漏水について鋭意検討を重ねた結果、連結目地部を止水する可撓止水継手と打ち継ぎ面を止水する打ち継ぎ止水部材とが独立して設置されるため、これらの間から漏水が生じることが分かり、この発明を完成したものである。
【0011】
すなわち、この発明では、具体的な対策として、可撓止水継手と打ち継ぎ止水部材とを連続させることで、連結目地部および打ち継ぎ面双方の止水性の確保を可能とするとともに、継手取付枠体を目地部の外側に延長し全周にブチルゴムなどのシール部材を設置することなどで、継手取付枠体のシール部材の設置範囲を広げて止水性の向上を可能としたものである。
【0012】
上記従来技術の課題を解決するこの発明の請求項1記載の打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造は、それぞれが打ち継ぎ面を介してコンクリートを打ち継いで構築される先行および後行の中空コンクリート構造体の前記それぞれのコンクリート構造体の打ち継ぎ面を止水するとともに、前記先行および後行のコンクリート構造体同士を連結する連結目地部を相対変位可能に止水するコンクリート構造体の打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造であって、前記先行および後行のコンクリート構造体の連結目地部の内面側に、可撓止水継手を取り付ける筒状の継手取付枠体を設置し、これら相対向する継手取付枠体に連結目地部を跨いで短筒状の可撓止水継手を取り付け、前記それぞれの打ち継ぎ面には、打ち継ぎ面を挟む両側のコンクリート間に埋設して止水する打ち継ぎ止水部材を設置するとともに、この打ち継ぎ止水部材の目地部側の端部を前記継手取付枠体と連結して構成したことを特徴とするものである。
【0013】
この発明の請求項2記載の打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造は、請求項1記載の構成に加え、前記継手取付枠体のコンクリートと接触する全周または一部にシール部材を設置し、前記打ち継ぎ止水部材の端部と前記シール部材とを連結して構成したことを特徴とするものである。
【0014】
この発明の請求項3記載の打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造は、請求項1または2記載の構成に加え、前記打ち継ぎ止水部材の目地部側の端部と前記継手取付枠体あるいは前記シール部材との連結を、当該継手取付枠体の全周に形成した延設部または前記打ち継ぎ止水部材と対応して前記継手取付枠体部分に形成した延設部で行う構成としたことを特徴とするものである。
【0015】
この発明の請求項4記載の打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造は、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加え、前記打ち継ぎ止水部材の目地部側の端部と前記継手取付枠体あるいは前記シール部材との連結を、当該継手取付枠体の全周に設けた補助連結部材または前記打ち継ぎ止水部材に対応して設けた補助連結部材を介して行う構成としたことを特徴とするものである。
【0016】
この発明の請求項5記載の打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造は、請求項1〜4のいずれかに記載の構成に加え、前記打ち継ぎ止水部材の目地部側の端部と前記継手取付枠体あるいは前記シール部材との連結を、ブチルゴムを介して接着する、あるいはボルト・ナットで締結する、もしくはその両方を行う構成としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
この発明の請求項1記載の打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造によれば、それぞれが打ち継ぎ面を介してコンクリートを打ち継いで構築される先行および後行の中空コンクリート構造体の前記それぞれのコンクリート構造体の打ち継ぎ面を止水するとともに、前記先行および後行のコンクリート構造体同士を連結する連結目地部を相対変位可能に止水するコンクリート構造体の打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造であって、前記先行および後行のコンクリート構造体の連結目地部の内面側に、可撓止水継手を取り付ける筒状の継手取付枠体を設置し、これら相対向する継手取付枠体に連結目地部を跨いで短筒状の可撓止水継手を取り付け、前記それぞれの打ち継ぎ面には、打ち継ぎ面を挟む両側のコンクリート間に埋設して止水する打ち継ぎ止水部材を設置するとともに、この打ち継ぎ止水部材の目地部側の端部を前記継手取付枠体と連結して構成したので、打ち継ぎ止水部材の目地部側の端部と継手取付枠体と連結することで、可撓止水継手と打ち継ぎ止水部材とを連続させることができ、全ての止水のための部材が連続することになって止水性の向上をはかることができる。また、コンクリートの打ち継ぎを行う場合、先打ちコンクリートの表面にレイタンス等雑物が付着し、これによって打ち継ぎ面におけるコンクリート同士の付着力が低下するようなことがあっても、可撓止水継手と打ち継ぎ止水部材とが連続することで、打ち継ぎ面を伝う浸水を防止することができる。
【0018】
これより、コンクリート構造物での全ての止水に用いる部材が連続し、打ち継ぎ面での止水性および連結目地部の止水性や相対変位の吸収を確保することができる。
【0019】
また、この発明の請求項2記載の打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造によれば、前記継手取付枠体のコンクリートと接触する全周または一部にシール部材を設置し、前記打ち継ぎ止水部材の端部と前記シール部材とを連結して構成したので、継手取付枠体の全周または一部にシール部材を設置し、打ち継ぎ止水部材の端部とシール部材とを連結することで、継手取付枠体とコンクリートとの止水生を向上できるとともに、全ての止水のための部材であるシール部材と可撓止水継手と打ち継ぎ止水部材とを連続させることで、一層確実に止水性を向上することができる。
【0020】
また、この発明の請求項3記載の打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造によれば、前記打ち継ぎ止水部材の目地部側の端部と前記継手取付枠体あるいは前記シール部材との連結を、当該継手取付枠体の全周に形成した延設部または前記打ち継ぎ止水部材と対応して前記継手取付枠体部分に形成した延設部で行う構成としたので、継手取付枠体の全周に形成した延設部にシール部材を設置することで、シール部材の設置が容易になるとともに、設置範囲を広げたシール部材と可撓止水継手と打ち継ぎ止水部材とを連続させることができ、また、打ち継ぎ止水部材と対応する継手取付枠体部分に形成した延設部でシール部材と可撓止水継手と打ち継ぎ止水部材とを連続させることで、確実に全ての止水のための部材であるシール部材と可撓止水継手と打ち継ぎ止水部材とを連続させることができる。
【0021】
この発明の請求項4記載の打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造によれば、前記打ち継ぎ止水部材の目地部側の端部と前記継手取付枠体あるいは前記シール部材との連結を、当該継手取付枠体の全周に設けた補助連結部材または前記打ち継ぎ止水部材に対応して設けた補助連結部材を介して行う構成としたので、継手取付枠体の全周に設けた別体の補助連結部材を介してシール部材を設置することで、シール部材の設置が容易になるとともに、設置範囲を広げたシール部材と可撓止水継手と打ち継ぎ止水部材とを連続させることができ、また、打ち継ぎ止水部材に対応して設けた補助連結部材を介してシール部材と可撓止水継手と打ち継ぎ止水部材とを連続させることで、確実に全ての止水のための部材であるシール部材と打ち継ぎ止水部材とを連続させることができる。
【0022】
この発明の請求項5記載の打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造によれば、前記打ち継ぎ止水部材の目地部側の端部と前記継手取付枠体あるいは前記シール部材との連結を、ブチルゴムを介して接着する、あるいはボルト・ナットで締結する、もしくはその両方を行う構成としたので、打ち継ぎ止水部材の目地部側の端部と継手取付枠体のシール部材との連結をブチルゴムによる接着やボルト・ナットによる締結もしくこれらの両方で止水性を確保して確実に連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造の一実施の形態にかかる止水のための部材のみを抽出してモデル化した説明図および打ち継ぎ面上での平面図である。
【図2】この発明の打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造の一実施の形態にかかる施工工程の説明図である。
【図3】この発明の打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造の一実施の形態にかかる継手取付枠体と打ち継ぎ止水部材の概略構成図である。
【図4】この発明の打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造の他の一実施の形態にかかる継手取付枠体と打ち継ぎ止水部材の概略構成図である。
【図5】この発明の打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造の一実施の形態にかかる継手取付枠体と打ち継ぎ止水部材の部分拡大構成図である。
【図6】この発明の打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造の一実施の形態にかかる継手取付枠体と打ち継ぎ止水部材の部分拡大構成図および打ち継ぎ面上での平面図である。
【図7】この発明の打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造の他の一実施の形態にかかる継手取付枠体と打ち継ぎ止水部材の部分拡大構成図および打ち継ぎ面上での平面図である。
【図8】この発明の打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造のさらに他の一実施の形態にかかる部分拡大構成図である。
【図9】この発明の打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造の他の一実施の形態にかかる部分拡大構成図である。
【図10】この発明の打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造の一実施の形態にかかる継手取付枠体と打ち継ぎ止水部材の部分拡大構成図である。
【図11】この発明の打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造の他の一実施の形態にかかる継手取付枠体と打ち継ぎ止水部材の部分拡大構成図および打ち継ぎ面上での平面図である。
【図12】この発明の打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造が適用されるコンクリート構造物の一例の概略斜視図である。
【図13】従来の打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造の打ち継ぎ面上での平面図および部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。
この発明の打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造が適用されるコンクリート構造物は、例えばボックスカルバート型の暗渠で、コンクリート構造物に打ち継ぎ面が少なくとも1箇所設けられるものであり、ここでは、図11で説明した水平の打ち継ぎ面3が1箇所だけ設けられる場合を例に説明する。
【0025】
この打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造20では、基本原理としてコンクリート構造物1の先行のコンクリート構造物1aと後行のコンクリート構造物1bとの連結目地部4間を相対変位可能に連結して止水する可撓止水継手8と、先行および後行の各コンクリート構造物1a,1bの打ち継ぎ面3を止水する打ち継ぎ止水部材5,5とを止水構造的に連続させることで、連結目地部4および打ち継ぎ面3双方の止水性を確保しようとするものである。
【0026】
さらに、この打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造20では、可撓止水部材8を取り付けるための継手取付枠体9のコンクリート側の全周にシール部材11を設置し、このシール部材11と可撓止水部材8と打ち継ぎ止水部材5,5とを連結することで、継手取付枠部材9とコンクリートとの間の止水性を向上するようにしており、シール部材11の取り付けのため継手取付枠体9をコンクリート構造物1の外側に延長し、延設部にシール部材11として、例えばブチルゴムシートを設置している。
【0027】
こうすることで、コンクリート構造物1の打ち継ぎ面3で構造物1の外側の防水シート7が破損したり、剥離した場合でも、外面側から連結目地部4への浸水は、図1(b)中に太い矢印で示すように、打ち継ぎ面3に沿ってゴム止水板6を迂回し、さらに打ち継ぎ止水材5に沿って連結目地部4に漏水しても、打ち継ぎ止水部材5と継手取付枠体9のシール部材11と可撓止水継手8とが連結してあるので、連結目地部4側からコンクリート内に浸水することが防止され、コンクリート構造物1の内面側に至って漏水となることを防止でき、止水性を向上することができる。
【0028】
また、可撓止水継手8を取り付けるための筒状の継手取付枠体9を予め設置した状態で、コンクリートを打設してコンクリート構造物1a,1bを構築する場合に、継手取付枠体9とコンクリートとの間に、ジャンカ、気泡跡、コンクリートの乾燥収縮を起因とする水密性の低下が生じたとしても、連結目地部4からの浸水がコンクリートの水密性のより悪い位置に回り、可撓止水継手8の近傍からの漏水に至ることも防止でき,止水性を向上することができる。
【0029】
次に、この打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造20を適用したコンクリート構造物1の構築工程について、図2により説明する。
【0030】
コンクリート構造物1を構築する地下底面に基礎21を通常のボックスカルバート型の暗渠の場合と同様に構築し、基礎21上に先行コンクリート構造物1aを構築するための型枠や補強用の鉄筋22を設置するとともに、後行コンクリート構造物1bとの連結目地部4に可撓止水部材8を取り付けるための継手取付枠体9,9を設置する。これら継手取付枠体9,9には、予め可撓止水継手8をアンカー23を介して取り付けた状態としておいても、アンカー23だけとしてコンクリート打設完了後に可撓止水継手8を取り付けるようにすることもでき、継手取付枠体9も片方ずつ設置してコンクリート構造物1a、1bに固定することもできる。
【0031】
この継手取付枠体9には、コンクリートと接する側の全周にコンクリートとの止水性を確保するシール部材11としてブチルゴムシートが取り付けられる。
【0032】
この継手取付枠体9へのシール部材11の取り付けは、コンクリート構造物1aの連結目地部4の端面に沿うフランジ面9a(図1参照)に取り付けるが、既に説明したように、このシール部材11と打ち継ぎ止水部材5とを連結する必要があることから、図2および図3に示すように、打ち継ぎ止水部材5の設置位置と対応する継手取付枠体9の下隅部に延設部24を設けてシール部材11を取り付けてある。
【0033】
なお、コンクリート構造物1に2箇所の打ち継ぎ面2,3を設けてコンクリート構造物1a,1bを構築する場合には、図4に示すように、継手取付枠体9の両側部および上下隅部に連続する側部延設部25を設けてシール材11を設置して上下2箇所の打ち継ぎ面2,3で打ち継ぎ止水部材5と連結できるようにする。さらに、継手取付枠体9の全周に延設部を設けて全周延設部としてシール部材11を設置するようにしても良い。これら側部延設部25や全周延設部を設ける場合には、打ち継ぎ面2,3の位置が変わる場合にも何ら変更することなくそのままで対応することができる。
【0034】
さらに、この打ち継ぎ面3には、図5に示すように、打ち継ぎ面3の上下に埋設されるように打ち継ぎ止水部材5を鉄筋22およびアンカー23を利用して固定糸26を用いるなどで下半分が打ち継ぎ面3の下側に、上半分が打ち継ぎ面3の上側に埋設される状態とする。この打ち継ぎ止水部材5は帯状のものがロール状に丸めて搬入され、これを巻戻して設置する。
【0035】
そして、この打ち継ぎ止水部材5は、例えば、その連結目地部4側の端部5aをL字状に曲げて継手取付枠体9のシール部材11とブチルゴム27を介して接着することで連結されて設置される。この打ち継ぎ止水部材5の端部5aと継手取付枠体5のシール材11との接着を強固にするため、例えば図6に示すように、据付治具28を用い、両端部の断面コ字状の締付ボルト28aを備えた2つのクランプ部28b,28bと押え板28cとで構成し、打ち継ぎ止水部材5の端部5aをシール部材11に当て、その上に押え板28cを当てて継手取付枠体9とともに、クランプ部28b,28bを挟むようにした後、締付ボルト28aを締め付けた状態を保持することで、接着強度を向上して連結することができる。接着完了後は、据付治具28を取り外してコンクリートの打設を行うこともできる。
【0036】
なお、打ち継ぎ止水部材5の端部5aと継手取付枠体9のシール部材11との連結は、ブチルゴムを介して接着する場合に限らず、他の方法でも良く、例えば図7に示すように、継手取付枠体9にボルト・ナット29を用いて締結するようにしても良い。この場合には、相対向する継手取付枠体9,9間にボルト・ナット29による締結スペースを確保できるように、継手取付枠体9のフランジ部9aを連結目地部4に対して引っ込んだ状態となるよう成形しておくことで、作業性を向上することができる。
【0037】
また、打ち継ぎ面3に用いる打ち継ぎ止水部材5によっては、端部をL字状に曲げて設置することが困難な場合もあるが、その場合には、図8および図9に示すように、補助連結部材30,31を用いて打ち継ぎ止水部材5と継手取付枠体9のシール部材11との連結を行う。例えば図8に示す補助連結部材30では、L字状の金属材で構成され、補助連結部材30の一方30aが継手取付枠体9の延設部24に設置したシール部材11に接着され、他方30bの外側面に打ち継ぎ止水部材5が接着して設置される。
【0038】
また、図9に示す補助連結部材31では、L字状の金属材で構成され、補助連結部材31の一方31aが継手取付枠体9の延設部24に設置したシール部材11に接着され、他方31bの内側面に打ち継ぎ止水部材5が当てられて押え板31cを介してボルトナット31dで締め付けることで設置され、補助連結部材31の他方31bの外側面には、ブチルゴム31eを貼り付けて水道を遮断するようにしてある。
【0039】
さらに、他の補助連結部材32を用いる打ち継ぎ止水部材5の端部5aと継手取付枠体9のシール部材11との連結方法として、図10に示すように、継手取付枠体9に延設部を設けることなく、補助連結部材32に、継手取付枠部材の下隅部の略3角形部分位置する延設部分32aを形成するとともに、L字状の補助連結部32b,32cが形成され、図10(b)に示すように、延設部分32aを継手取付枠部材9のアンカー23に締め付けて固定してシール部材11と連結状態とする。そして、補助連結部32cの外側に打ち継ぎ止水部材5の端部を当ててボルトナット32dで締め付けて連結固定してある。
【0040】
このような継手取付枠体9の延設部に対応する部分を補助連結部材32に延設部分32aとして形成したので、従来の継手取付枠体9の形状を変えることなく、打ち継ぎ止水部材5の端部5aと継手取付枠体9のシール部材11との連結を行うことができる。
【0041】
また、他の補助連結部材33を用いる打ち継ぎ止水部材5の端部5aと継手取付枠体9のシール部材11との連結方法として、図11に示すように、継手取付枠体9に延設部を設けることなく、補助連結部材33に、継手取付枠部材の下隅部の略3角形部分位置する延設部分33aを形成するとともに、L字状の補助連結部33b,33cを形成して構成し、継手取付枠部材9の下隅部に溶接あるいはブチルゴムで接着することで固定設置するようにして補助連結部材33とシール部材11とを連結状態とする。そして、補助連結部33cの外側に打ち継ぎ止水部材5の端部を当ててブチルゴムシートを用いて連結固定したり、図示しないボルトナットで締め付けて連結固定したり、あるいは、これらの両方を用いて連結固定する。
【0042】
このような継手取付枠体9の延設部に対応する部分を補助連結部材33に延設部分33aとして形成して溶接あるいはブチルゴムで接着してあるので、従来の継手取付枠体9の形状を変えることなく、打ち継ぎ止水部材5の端部5aと継手取付枠体9のシール部材11との連結を行うことができる。
【0043】
このように第1工程としての打ち継ぎ止水部材5の設置、継手取付枠体9の設置およびシール部材11の設置、さらに打ち継ぎ止水部材5とシール部材11との連結を行った後、さらに連結目地部4に、図1(b)に示すように、先行および後行のコンクリート間に跨るようにゴムの止水板6を設置しておく。
【0044】
こうしてコンクリートの打設前の準備が完了した後、基礎21上に打ち継ぎ面3までのコンクリートの打設が行われる(図2(b)参照)。
【0045】
この後、打ち継ぎ面3上に型枠などを設置してコンクリートの打設準備を行った後、打ち継ぎ面3を介した上部のコンクリートの打設を行い先行のコンクリート構造物1aが構築される(図2(c)参照)。
【0046】
後行のコンクリート構造物1bについても先行のコンクリート構造物1aと同様に構築することを繰り返すことで、コンクリート構造物1が完成する。
【0047】
以上、具体的に説明したように、この打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造20によれば、打ち継ぎ止水部材5の目地部側の端部5aと継手取付枠体9と連結することで、可撓止水継手8と打ち継ぎ止水部材5とを連続させることができ、連結目地部4および打ち継ぎ面3双方の止水性を確保することができ、全ての止水のための部材5,8が連続することになって止水性の向上をはかることができる。
【0048】
また、コンクリートの打ち継ぎを行う場合、先打ちコンクリートの表面にレイタンス等雑物が付着し、これによって打ち継ぎ面におけるコンクリート同士の付着力が低下するようなことがあっても、可撓止水継手8と打ち継ぎ止水部材11とが連続することで、打ち継ぎ面3を伝う浸水を防止することができる。
【0049】
これより、コンクリート構造物1での全ての止水に用いる部材5,8,11が連続し、打ち継ぎ面3での止水性および連結目地部4の止水性や相対変位の吸収を確保することができる。
【0050】
さらに、この打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造によれば、継手取付枠体9のコンクリートと接触する全周または一部にシール部材11を設置し、打ち継ぎ止水部材5の端部とシール部材11とを連結して構成したので、継手取付枠体9の全周または一部にシール部材11を設置し、打ち継ぎ止水部材5の端部5aとシール部材11とを連結することで、継手取付枠体9とコンクリートとの止水生を向上できるとともに、全ての止水のための部材であるシール部材11と可撓止水継手8と打ち継ぎ止水部材11とを連続させることで、一層確実に止水性を向上することができる。
【0051】
また、この打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造20によれば、打ち継ぎ止水部材5の目地部側の端部5aと継手取付枠体9あるいはシール部材11との連結を、継手取付枠体9の全周に形成した延設部または打ち継ぎ止水部材5と対応して継手取付枠体部分に形成した延設部9aで行うようにしたので、継手取付枠体9の全周に形成した延設部にシール部材を設置することで、シール部材11の設置が容易になるとともに、設置範囲を広げたシール部材11と可撓止水継手8と打ち継ぎ止水部材5とを連続させることができ、また、打ち継ぎ止水部材5と対応する継手取付枠体9部分に形成した延設部9aでシール部材11と可撓止水継手8と打ち継ぎ止水部材5とを連続させることで、確実に全ての止水のための部材であるシール部材11と可撓止水継手8と打ち継ぎ止水部材5とを連続させることができる。
【0052】
さらに、この打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造20によれば、打ち継ぎ止水部材5の目地部側の端部5aと継手取付枠体9あるいはシール部材11との連結を、継手取付枠体9の全周に設けた補助連結部材または打ち継ぎ止水部材5に対応して設けた補助連結部材30,31,32,33を介して行うようにしたので、継手取付枠体の全周に設けた別体の補助連結部材を介してシール部材を設置することで、シール部材の設置が容易になるとともに、設置範囲を広げたシール部材と可撓止水継手と打ち継ぎ止水部材とを連続させることができ、また、打ち継ぎ止水部材5に対応して設けた補助連結部材30,31,32,33を介してシール部材11と可撓止水継手8と打ち継ぎ止水部材5とを連続させることで、確実に全ての止水のための部材であるシール部材11と打ち継ぎ止水部材8と打ち継ぎ止水部材5とを連続させることができる。
【0053】
また、この打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造20によれば、打ち継ぎ止水部材5の目地部側の端部5aと継手取付枠体9あるいはシール部材11との連結を、ブチルゴムを介して接着する、あるいはボルト・ナット31dで締結する、もしくは両方で行うようにしたので、打ち継ぎ止水部材5の目地部側の端部5aと継手取付枠体9のシール部材11との連結をブチルゴムによる接着やボルト・ナットによる締結、あるいは両方で止水性を確保して確実に連結することができる。
【0054】
なお、上記実施の形態では、コンクリート構造物としてボックスカルバート型の暗渠を例に説明したが、これに限らず他の中空のコンクリート構造物であっても同様に適用でき、コンクリート構造物の断面形状も略矩形のものに限らず他の形状であっても良い。
【0055】
また、連結目地部を相対変位可能にシールする可撓止水継手として中間部に断面略U字状の伸縮部を備えたものを例に説明したが、他の断面形状の伸縮部を備えた可撓性継手であっても良く、相対変位の吸収と止水とが可能であれば良い。
【符号の説明】
【0056】
1 コンクリート構造物
1a 先行コンクリート構造物
1b 後行コンクリート構造物
2,3 打ち継ぎ面
4 連結目地部
5 打ち継ぎ止水部材
5a 目地部側の端部
6 止水板
7 防水シート
8 可撓止水部材
9 継手取付枠体
9a フランジ面
10 目地材
11 シール部材
20 打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造
21 基礎
22 鉄筋
23 アンカー
24 延設部
25 側部延設部
26 固定糸
27 ブチルゴム
28 据付治具
28a 締付ボルト
28b クランプ部
28c 押え板
29 ボルト・ナット
30 補助連結部材
30a 一方の辺
30b 他方の辺
31 補助連結部材
31a 一方の辺
31b 他方の辺
31c 押え板
31d ボルトナット
31e ブチルゴム
32 補助連結部材
32a 延設部分
32b 補助連結部
32c 補助連結部
32d ボルトナット
33 補助連結部材
33a 延設部分
33b 補助連結部
33c 補助連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが打ち継ぎ面を介してコンクリートを打ち継いで構築される先行および後行の中空コンクリート構造体の前記それぞれのコンクリート構造体の打ち継ぎ面を止水するとともに、前記先行および後行のコンクリート構造体同士を連結する連結目地部を相対変位可能に止水するコンクリート構造体の打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造であって、
前記先行および後行のコンクリート構造体の連結目地部の内面側に、可撓止水継手を取り付ける筒状の継手取付枠体を設置し、これら相対向する継手取付枠体に連結目地部を跨いで短筒状の可撓止水継手を取り付け、
前記それぞれの打ち継ぎ面には、打ち継ぎ面を挟む両側のコンクリート間に埋設して止水する打ち継ぎ止水部材を設置するとともに、この打ち継ぎ止水部材の目地部側の端部を前記継手取付枠体と連結して構成したことを特徴とする打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造。
【請求項2】
前記継手取付枠体のコンクリートと接触する全周または一部にシール部材を設置し、前記打ち継ぎ止水部材の端部と前記シール部材とを連結して構成したことを特徴とする請求項1記載の打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造。
【請求項3】
前記打ち継ぎ止水部材の目地部側の端部と前記継手取付枠体あるいは前記シール部材との連結を、当該継手取付枠体の全周に形成した延設部または前記打ち継ぎ止水部材と対応して前記継手取付枠体部分に形成した延設部で行う構成としたことを特徴とする請求項1または2記載の打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造。
【請求項4】
前記打ち継ぎ止水部材の目地部側の端部と前記継手取付枠体あるいは前記シール部材との連結を、当該継手取付枠体の全周に設けた補助連結部材または前記打ち継ぎ止水部材に対応して設けた補助連結部材を介して行う構成としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造。
【請求項5】
前記打ち継ぎ止水部材の目地部側の端部と前記継手取付枠体あるいは前記シール部材との連結を、ブチルゴムを介して接着する、あるいはボルト・ナットで締結する、もしくはその両方を行う構成としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の打ち継ぎ面および連結目地部の止水継手構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−184925(P2011−184925A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50485(P2010−50485)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000196624)西武ポリマ化成株式会社 (60)
【Fターム(参考)】