説明

打ち込み治具及び打ち込み治具の使用方法

【課題】土木構築物用壁面材に対する打ち込み式アンカーの取付けにおいて、作業者の負担を極力抑えることができる打ち込み治具を提供する。
【解決手段】打ち込み治具28として、柱状本体部42と、柱状本体部42にその軸心延び方向の全長に亘って形成されるスリット45と、柱状本体部42の外周面から側方に張り出す張り出し部43と、張り出し部43にスリット45から離れるようにして取付けられる連結軸部44と、を備えるものを用意する。そして、その打ち込み治具28を電動ハンマーに装着すると共に、自然石2の取付け穴4内にアンカー3の軸状部7の一端部及び打ち込み筒24を挿入した上で、その打ち込み治具28のスリット45内にアンカー3の軸状部7を入り込ませて、電動ハンマーを作動させ、その電動ハンマーの打撃力(押圧力)を、連結軸部44、張り出し部43及び柱状本体部42を介して係止筒24の他端面に作用させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンカーを取付け穴に打ち込む際に用いる打ち込み治具及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、護岸、擁壁等の土木構築物の構築においては、土木構築物用構築材として、自然石やコンクリートブロック等の土木構築物用壁面材にアンカーの一端部を取付け、そのアンカーの他端部に抵抗力を増大させる抵抗力増大手段が設けたものが用いられている。この土木構築物用構築材は、土木構築物の構築に際して、複数用意され、その各土木構築物用構築材の土木構築物用壁面材を、隣り合うように順次配設しつつ積み上げると共にアンカーを略水平に配置し、そのアンカー及び抵抗力増大手段を栗石や割石等の胴込材をもって埋設することとされる。これにより、土圧や流水力に抵抗できる強固な土木構築物を構築できると共に、動植物の生息空間を確保できることになる。
【0003】
ところで、上記土木構築物用構築材に用いられるアンカーとして、特許文献1に示すように、延び部材の一端部に、膨らみ部が一体的に設けられていると共に、該膨らみ部よりも該延び部材の軸心延び方向内方側において該延び部材の一端部が挿通されるようにして打ち込み筒が保持され、その打ち込み筒の端部に、膨らみ部が存在する側において、該膨らみ部が該打ち込み筒内に相対的に進入するに伴って押し開かれる拡開可能片が形成されているものがある。このアンカーの一端側を土木構築物用壁面材に取付けるに際しては、延び部材の径よりも大きいスリット幅を有するスリットが軸心延び方向全長に亘って形成されている筒状部材を用意し、その上で、土木構築物用壁面材の取付け穴内に、アンカーにおける延び部材の一端部を、膨らみ部及び打ち込み筒と共に挿入し、次に、延び部材の他端側において、延び部材を筒状部材内にスリットを介して相対的に進入させて、その延び部材とその筒状部材とを略同心状態に配置し、次に、筒状部材を延び部材に沿いつつ移動させて、その筒状部材の移動に基づく打撃により、打ち込み筒に対して取付け穴の底部側に向けた外力を付与することとされる。
これにより、筒状部材による外力に基づき打ち込み筒が取付け穴内に膨らみ部に抗して移動し、これに伴い、膨らみ部が打ち込み筒内に相対的に進入して各拡開可能片を押し開くことになり、その各拡開可能片は取付け穴の内壁に係止されることになる。このため、このようなアンカーを用いれば、土木構築物用壁面材の取付け穴に何等の処理、処置を施すことなく、アンカーの一端部を土木構築物用壁面材に固定できることになり、土木構築物用壁面材に対する取付け作業を迅速に行えると共に、その土木構築物用壁面材に対する取付け作業後、直ちに土木構築物用構築材として使用できることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−290982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記アンカーを用いる場合には、土木構築物用壁面材にアンカーの一端部を取付けるに際して、作業者が筒状部材を手に持って、その筒状部材を上下方向に何回も往復動させる必要がある。このため、作業者には、打ち込みのための大きな力が、打ち込みのための回数だけ要求されることになり、手作業による打ち込み作業は、作業者に負担を強いることなる。
【0006】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その第1の技術的課題は、土木構築物用壁面材に対する打ち込み式アンカーの取付けにおいて、作業者の負担を極力抑えることができる打ち込み治具を提供することにある。
第2の技術的課題は、上記打ち込み治具を用いる打ち込み治具の使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記第1の技術的課題を達成するために本発明(請求項1の発明)にあっては、
延び部材の一端部に、膨らみ部が一体的に設けられていると共に該膨らみ部よりも該延び部材の軸心延び方向内方側において該延び部材の一端部が挿通されるようにして打ち込み筒が保持され、前記打ち込み筒の端部に、前記膨らみ部が存在する側において、該膨らみ部が該打ち込み筒内に相対的に進入するに伴って押し開かれる拡開可能片が形成されているアンカーに対して、該アンカーを土木構築物用壁面材の取付け穴に取付ける際に用いる打ち込み治具であって、
柱状に形成され、その軸心延び方向一端面が前記打ち込み筒に対する押圧面とされる柱状本体部と、
前記柱状本体部に該柱状本体部の軸心延び方向の全長に亘って形成され、該柱状本体部の側面から径方向内方に向けて前記延び部材の進入を許容するスリットと、
前記柱状本体部の外周面から側方に張り出す張り出し部と、
一端部が前記張り出し部に取付けられ、該一端部よりも他端側が前記スリットの延び方向において該スリットから離れる方向に延びてその他端部が打ち込み用機械に連結するための連結端部とされる連結軸部と、
が、備えられている構成としてある。
上述の構成により、当該打ち込み治具を打ち込み用機械に装着すると共に、土木構築物用壁面材の取付け穴内にアンカーの延び部材の一端部及び打ち込み筒を挿入した上で、その打ち込み治具のスリット内にアンカーの延び部材を入り込ませて、打ち込み用機械を作動させれば、その打ち込み用機械の打撃力(押圧力)は、連結軸部、張り出し部及び柱状本体部を介して打ち込み筒の他端面に的確に作用することになる。これにより、膨らみ部が打ち込み筒内に相対的に進入して各拡開可能片を押し開くことになり、その各拡開可能片は取付け穴の内壁に迅速且つ的確に係止されることになる。
【0008】
請求項1の発明の好ましい態様としては、前記張り出し部が、前記柱状本体部の軸心延び方向他端側外周面に設けられ、前記張り出し部と前記柱状本体部の延び方向一端側外周とが補強部により連結されている構成とすることができる(請求項2)。
上述の構成により、連結軸部と柱状本体部とが偏位(オフセット)した配置をとっていることに基づき、打ち込み治具の使用時に、張り出し部に曲げ力が作用することになるが、張り出し部が補強部により補強されることになり、打ち込み筒に対する打ち込みを長期に亘って何回も的確に行うことができる。その一方で、張り出し部の内面側にも柱状本体部を張り出させて、柱状本体部だけからなるもの(柱状本体部が拡大されたもの)にしなくても強度を確保できることになり、打ち込み治具に使用する材料量(鉄材等の使用量)を極力抑えることができる。
【0009】
上記第2の技術的課題を達成するために本発明(請求項3の発明)にあっては、
請求項1に係る打ち込み治具と、打ち込み用機械と、取付け穴を有する土木構築物用壁面材と、延び部材の一端部に、膨らみ部が一体的に設けられていると共に該膨らみ部よりも該延び部材の軸心延び方向内方側において該延び部材の一端部が挿通されるようにして打ち込み筒が保持され、前記打ち込み筒の端部に、前記膨らみ部が存在する側において、該膨らみ部が該打ち込み筒内に相対的に進入するに伴って押し開かれる拡開可能片が形成されているアンカーと、を用意し、
先ず、前記請求項1に係る打ち込み治具を前記打ち込み用機械に装着すると共に、前記土木構築物用壁面材の取付け穴内に前記アンカーにおける延び部材の一端部及び打ち込み筒を挿入し、
次に、前記請求項1に係る打ち込み治具を装着した前記打ち込み用機械を移動させて、該請求項1に係る打ち込み治具におけるスリット内に前記アンカーにおける延び部材を進入させ、
次に、前記打ち込み用機械を作動させて、その押圧力を、前記請求項1に係る打ち込み治具における連結軸部、張り出し部及び柱状本体部を介して前記打ち込み筒に作用させる、
ことを特徴とする打ち込み治具の使用方法とした構成としてある。
上述の構成により、土木構築物用壁面材に対してアンカーの一端部を迅速且つ的確に取付けることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明(請求項1に記載された発明)によれば、土木構築物用壁面材に対してアンカーの一端部を取付けるに際して、当該打ち込み治具を用いることにより、打ち込み用機械の打撃力を的確に利用でき、土木構築物用壁面材に対してアンカーの一端部を迅速且つ的確に取付けることができ、作業者の負担を格段に軽減することができる。
また、本発明(請求項3に係る発明)によれば、請求項1に係る打ち込み治具を用いた打ち込み治具の使用方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る土木構築物用構築材を示す説明図。
【図2】図1の要部拡大図。
【図3】実施形態に係るアンカーの一端部の構造を説明する説明図。
【図4】自然石に対する実施形態に係るアンカーの一端部の取付けを説明する説明図。
【図5】実施形態に係る打ち込み治具が装着された電動ハンマーを示す斜視図。
【図6】実施形態に係る打ち込み治具を示す正面図。
【図7】図6の背面図。
【図8】図6の左側面図。
【図9】図6の右側面図。
【図10】図6の平面図。
【図11】図6の底面図。
【図12】自然石に対する実施形態に係るアンカーの一端部の取付けを説明する斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1において、符号1は、土木構築物としての護岸等を構築するために積み上げたりして用いられる土木構築物用構築材である。この土木構築物用構築材1は、土木構築物用壁面材2としての自然石(以下、本実施形態においては符号2を用いる)と、アンカー3とを備えている。
【0013】
前記自然石2としては、玉石、割石、栗石等が用いられており、その圧縮強さは30N/mm2以上とされ、その大きさは施工護岸に応じて適宜決められることになっている。具体的には、直径が100〜500mmの範囲のものが好ましく、300mm内外のものを用いるのがより好ましい。勿論、自然石2に代えて、擬石、植生用ポット等を用いてもよい。このような自然石2には、図2に示すように、一つの取付け穴4が形成されている。取付け穴4は、自然石2のうち、背面略中央部に開口され、その取付け穴4は、自然石2の表面側にまで貫通しないことになっている。
【0014】
前記アンカー3は、図1、図2に示すように、前記自然石2に連結されている。このアンカー3には、自然石2の使用時(積み上げ状態時)の移動(滑落)を胴込材(アンカー3を埋設する埋設材)との抵抗により防ぐべく、軸状部(延び部材)7と、湾曲部としてのカール部8、ストッパパネル9(抵抗力増大手段)等が備えられている。
【0015】
上記軸状部7及びカール部8は、直線材により一体的に形成されている。直線材は、強度、加工性等を考慮して、鉄線、鉄筋、パイプ等が好ましく、本実施形態においては、線径6mm程度の鉄線(アルミニウムを10%程度含有)が用いられている。この直線材の外周には、錆止めを目的として、メッキ層、樹脂被覆層を形成するのが好ましい。
【0016】
上記軸状部7は、本実施形態においては、図1,図2に示すように、真っ直ぐ延びており、その全長は、0.5〜1.5m程度、好ましくは0.5m〜0.8m程度とされている。この軸状部7の先端部(軸状部の一端部)にはくさび状の膨らみ部23が一体的に形成されていると共に、その膨らみ部23よりも軸状部7の軸心延び方向内方側において、打ち込み筒としての係止筒24が保持されている。係止筒24は、鉄材等を用いて円筒状(軸心方向長さ50mm前後)に形成されており、その係止筒24内には、図3に示すように、自然石2に対する取付け前において、軸状部7の一端側が遊嵌状態をもって挿通され、係止筒24は、膨らみ部23により軸状部7の軸心延び方向外方に向けて移動することが規制されている。この係止筒24には、一端側である膨らみ部23の存在側において、複数のスリット25が該係止筒24の周方向に間隔をあけて形成されている。各スリット25は、係止筒24の一端から軸心方向内方に入り込んでおり、係止筒24における各スリット25間の構成部は、拡開可能片26を構成している。この拡開可能片26は、膨らみ部23が係止筒24内に進入するに伴い、係止筒24の径方向外側に押し開かれることになっており、その各拡開可能片26は、自然石2に対する取付け状態において、図2に示すように、取付け穴4の内壁に係止される。尚、符号27は、係止筒24が膨らみ部23に抗して所望位置まで移動したか否かを判断するためのマークである。
【0017】
前記カール部8は、図1に示すように、軸状部7の他端部(図1の左端部)がカ−ル状に巻かれて形成されている。このカール部8内には、内径30mm前後の円状の孔が形成されており、その孔の形成後、そのアンカー3の他端部(湾曲終端部)は、巻き付け部11として、溶接されることなく単に、軸状部7に巻かれることになっている。このため、巻き付け部11にカール部8に向けて外力が作用したときには、巻き付け部11は、該巻き付け部11と軸状部7との案内効果に基づきカール部8に必ず係合(当接)されて移動が規制されることになっている。
【0018】
前記ストッパパネル9は、図1に示すように、その板面を軸状部7の軸心延び方向に向けつつ該軸状部7に移動可能に保持されている。ストッパパネル9は、樹脂、例えばABS樹脂を用いて、一辺が150mm前後、厚みが6mm前後とされた正方形状の合成樹脂板とされており、その中心部に挿通孔14が形成されている。このストッパパネル9の挿通孔14に、軸状部7が挿通されており、ストッパパネル9は、軸状部7を移動できる一方、カール部8によってその移動が規制されることになっている。
【0019】
このようなアンカー3は、次のようにして製造されている。先ず、直線材を用意し、その直線材の一端部に膨らみ部23が形成される。膨らみ部23の形成には、成型等が用いられ、その膨らみ部23は、直線材の軸心方向外方に向かうに従って広がるくさび状に形成される。次に、前記係止筒24に直線材が、その他端側から通され、係止筒24は、直線材の一端側における膨らみ部23に当接するまで移動される。このとき、係止筒24は、スリット25の存在する側が膨らみ部23側に向けられる。
【0020】
次に、ストッパパネル9に対して直線材が、その他端側から通され、その後、その直線材の他端部がカール状に巻かれてカール部8が形成される。これにより、アンカー3が得られることになる。
【0021】
上記土木構築物用構築材1は、次のようにして組立てられる。
先ず、自然石2を用意し、その自然石2の背面とする部分にドリル等の加工具を用いて取付け穴4を形成する。取付け穴4の内壁をもって、前記アンカー3における係止筒24の各拡開可能片26が係止する係止面を確保するためである。勿論この場合、取付け穴4を形成した自然石2を予め用意しておき、それを、施工現場に搬送して、施工現場での組立に供してもよい。
【0022】
次に、前記アンカー3を組立部品として用意し、そのアンカー3の軸状部7の一端部及び係止筒24を、図4に示すように、上記取付け穴4に挿入する。自然石2に対するアンカー3における一端部の取付け作業を行うべく、係止筒24の各拡開可能片26を取付け穴4の内壁に臨ませるためである。この場合、軸状部7は、その一端面が取付け穴4の底面に当接されるまで挿入され、係止筒24の一端は、膨らみ部23に当接する状態とされる。
【0023】
次に、図5に示すように、専用治具としての打ち込み治具28を用意し、その打ち込み治具28を打ち込み用機械としての電動ハンマー41に装着する。電動ハンマー41の打撃力(押圧力)を利用して、係止筒24を取付け穴4内に打ち込むためである。勿論この場合、この電動ハンマー41に対する打ち込み治具28の装着は、アンカー3の軸状部7の一端部及び係止筒24を取付け穴4に挿入する前に、予め準備しておいてもよい。
【0024】
上記打ち込み治具28は、基本的には、図6〜図11に示すように、柱状本体部42と、スリット45と、張り出し部43と、連結軸部44と、を備えており、これらは、鉄材等により一体的に形成されている。柱状本体部42は、端面を円形ないしは楕円形にしつつ柱状に形成されており、その一端面42aが前記係止筒24の他端面に対する押圧面となっている。本実施形態においては、この柱状本体部42の一端側部分が、その一端に向うに従って縮径されており、その一端面42aは、係止筒24の他端面に当接する面積を有する平坦面として形成され、その一端面42aの周囲はテーパ面42bとして形成されている。
【0025】
スリット45は、図5,図9〜図11に示すように、柱状本体部42に形成されている。スリット45は、柱状本体部42の軸心延び方向全体に亘って延びており、そのスリット45は、その状態を維持しつつ、一定幅をもって柱状本体部42の側面からその略軸心に向けて形成されている。このスリット45の幅は、本実施形態においては、前記アンカー3(軸状部7)の径よりもやや長いものとなっている。
【0026】
張り出し部43は、図6〜図8,図10,図11に示すように、前記柱状本体部42の他端側外周面のうち、スリット45とは反対側に設けられている。この張り出し部43は、一定厚みの厚肉状態をもって、柱状本体部42の他端側外周面から側方に向けて張り出されており、柱状本体部42の他端面42cと張り出し部43の外面43aとは、図6,図11に示すように、平面視楕円形状をもって面一に形成されている。
【0027】
連結軸部44は、図6〜図10に示すように、その一端部が張り出し部43の外面43a側に取付けられている。この連結軸部44は、その一端部よりも他端側が、前記スリット45の延び方向(図9中、上下方向)において、該スリット45から離れる方向に延びており(図9参照)、その連結軸部44の他端側には、その他端面から一端側に向けて順に、丸棒部46、多角形部47、縮径部48が形成されている。これら丸棒部46、多角形部47は、電動ハンマー41に相対回転不能に装着(嵌合)されることになっており、このとき、その電動ハンマー41のツールリテーナ(ずれ・外れ止め金具)49が、縮径部48に係止されることになっている(図5,図6参照)。これにより、連結軸部44は、電動ハンマー41に対して相対回転不能に保持され、電動ハンマー41の駆動に基づき、連結軸部44は、その軸心延び方向に往復動することになる。一方、連結軸部44の一端側は、本実施形態においては、張り出し部43に形成された嵌合穴(図示略)に嵌合されており、その嵌合穴の開口周縁部と連結軸部44の外周面とが溶接等により固定されている。これにより、連結軸部44の一端部と張り出し部43とは強固に連結関係が確保されている。
【0028】
本実施形態においては、図6〜図8,図11に示すように、前記張り出し部43と前記柱状本体部42の軸心延び方向一端側外周面とが補強部50により連結されている。補強部50は、棒材により形成されており、その補強部50の一端部は、連結軸部44の一端面の延長領域において張り出し部43に連結され、補強部50の他端部は、柱状本体部42の一端側外周面に連結されている。これにより、補強部50が張り出し部43を支えることになり、柱状本体部42と連結軸部44との偏位した配置関係に基づき、張り出し部43に曲げ力が作用するとしても、補強部50は、張り出し部43が曲がることを抑制することになっている。
【0029】
このような打ち込み治具28が電動ハンマー41に装着されると、図12に示すように、電動ハンマー41を移動することにより、アンカー3における軸状部7の軸心延び方向に対して打ち込み治具28におけるスリット45の延び方向を同じ方向にして、アンカー3における軸状部7をスリット45内に相対的に入り込ませると共に、打ち込む治具28の柱状本体部42を係止筒24の他端面に当接させた状態とする。打ち込み治具28における柱状本体部42の一端面42aを係止筒24の他端面に臨むようにして、その柱状本体部42により係止筒24に対して電動ハンマー41に基づく打撃力(押圧力)を付与するためである。
【0030】
次に、電動ハンマー41を作動させて、打ち込み治具28の柱状本体部42により係止筒24の他端面を叩き、その係止筒24を膨らみ部23に抗して取付け穴4内に押し込む。膨らみ部23を係止筒24内に進入させて、各拡開可能片26を押し開き、その各拡開可能片26を取付け穴4の内壁に係止させるためである。これにより、図1,図2に示すように、アンカー3の一端部が自然石2に取付けられることになり、当該土木構築物用構築材1を得ることになる。
【0031】
したがって、このように、打ち込み治具28及び電動ハンマー41を用いた場合には、係止筒24を膨らみ部23に抗して取付け穴4内に押し込むに際して、電動ハンマー41に基づく打撃力を係止筒24に的確に作用できることになり、手作業の場合とは異なり、自然石2に対してアンカー3の一端部を迅速且つ容易に取付けることができる。このため、、作業者の負担を格段に軽減することができる。しかもこの場合、打ち込み治具28及び電動ハンマー41を用いることから、自然石2の側方からも打ち込み作業(取付け作業)を行うことができ、そのとき、作業者に無理な姿勢を強いることはなくなる。
また、本実施形態においては、電動ハンマー41に基づく打撃力を係止筒24に的確に作用させるために、打ち込み治具28として、柱状本体部42から張り出し部43が張り出すもの(柱状本体部42と連結軸部44とがオフセットした配置のもの)が用いられているが、その張り出し部43が補強部50により補強されていることから、打ち込み治具28の使用時において、張り出し部43に曲げ力が作用するとしても、係止筒24の打ち込みを長期に亘って何回も的確に行うことができる。その一方で、張り出し部43の内面側にも柱状本体部42を張り出させて、柱状本体部42だけからなるもの(柱状本体部42が拡大されたもの)にしなくても強度を確保できることになり、打ち込み治具28に使用する材料量(鉄材等の使用量)を極力抑えることができる。
【0032】
尚、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましい或は利点として記載されたものに対応したものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【符号の説明】
【0033】
1 土木構築物用構築材
2 自然石
3 アンカー
4 取付け穴
7 軸状部(延び部材)
23 膨らみ部
24 係止筒(打ち込み筒)
26 拡開可能片
28 打ち込み治具
41 電動ハンマー(打ち込み用機械)
42 柱状本体部
43 張り出し部
44 連結軸部
45 スリット
50 補強部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
延び部材の一端部に、膨らみ部が一体的に設けられていると共に該膨らみ部よりも該延び部材の軸心延び方向内方側において該延び部材の一端部が挿通されるようにして打ち込み筒が保持され、前記打ち込み筒の端部に、前記膨らみ部が存在する側において、該膨らみ部が該打ち込み筒内に相対的に進入するに伴って押し開かれる拡開可能片が形成されているアンカーに対して、該アンカーを土木構築物用壁面材の取付け穴に取付ける際に用いる打ち込み治具であって、
柱状に形成され、その軸心延び方向一端面が前記打ち込み筒に対する押圧面とされる柱状本体部と、
前記柱状本体部に該柱状本体部の軸心延び方向の全長に亘って形成され、該柱状本体部の側面から径方向内方に向けて前記延び部材の進入を許容するスリットと、
前記柱状本体部の外周面から側方に張り出す張り出し部と、
一端部が前記張り出し部に取付けられ、該一端部よりも他端側が前記スリットの延び方向において該スリットから離れる方向に延びてその他端部が打ち込み用機械に連結するための連結端部とされる連結軸部と、
が、備えられている、
ことを特徴とする打ち込み治具。
【請求項2】
請求項1において、
前記張り出し部が、前記柱状本体部の軸心延び方向他端側外周面に設けられ、
前記張り出し部と前記柱状本体部の延び方向一端側外周とが補強部により連結されている、
ことを特徴とする打ち込み治具。
【請求項3】
請求項1に係る打ち込み治具と、打ち込み用機械と、取付け穴を有する土木構築物用壁面材と、延び部材の一端部に、膨らみ部が一体的に設けられていると共に該膨らみ部よりも該延び部材の軸心延び方向内方側において該延び部材の一端部が挿通されるようにして打ち込み筒が保持され、前記打ち込み筒の端部に、前記膨らみ部が存在する側において、該膨らみ部が該打ち込み筒内に相対的に進入するに伴って押し開かれる拡開可能片が形成されているアンカーと、を用意し、
先ず、前記請求項1に係る打ち込み治具を前記打ち込み用機械に装着すると共に、前記土木構築物用壁面材の取付け穴内に前記アンカーにおける延び部材の一端部及び打ち込み筒を挿入し、
次に、前記請求項1に係る打ち込み治具を装着した前記打ち込み用機械を移動させて、該請求項1に係る打ち込み治具におけるスリット内に前記アンカーにおける延び部材を進入させ、
次に、前記打ち込み用機械を作動させて、その押圧力を、前記請求項1に係る打ち込み治具における連結軸部、張り出し部及び柱状本体部を介して前記打ち込み筒に作用させる、
ことを特徴とする打ち込み治具の使用方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−31652(P2012−31652A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172688(P2010−172688)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(397045769)環境工学株式会社 (35)
【Fターム(参考)】