打寿命打切り試験からの寿命見積もり方法・装置
【課題】打切り試験において、試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命水準を、簡単かつ迅速に試算することができ、かつ信頼性の高いものとでき、熟練者でなくても試算できる方法を提供する。
【解決手段】コンピュータに、未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル乱数を試験個数分発生させ、破損個数分の乱数を短いものから順に除いた残りの乱数が未破損時間以上になるか否かを調べる。上記手順を設定回数繰り返し、調べた未破損時間以上にある確率を調調べる手順を、所定の最短寿命から次第に長い最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す。得られた寿命と未破損時間以上にある確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命と定める。
【解決手段】コンピュータに、未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル乱数を試験個数分発生させ、破損個数分の乱数を短いものから順に除いた残りの乱数が未破損時間以上になるか否かを調べる。上記手順を設定回数繰り返し、調べた未破損時間以上にある確率を調調べる手順を、所定の最短寿命から次第に長い最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す。得られた寿命と未破損時間以上にある確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命と定める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軸受またはその他の機械部品の寿命試験として、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、打切り時間後の試験継続等を行ったときに、少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命を見積もる方法、装置、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
寿命試験は、軸受等の機械部品の性能を評価するために欠かせない試験の1つである。寿命試験には、大きく分けて(1)実機の使用環境に近い条件で試験を行う実機試験と、(2)比較的過酷な条件で寿命試験を行う加速試験がある。前者は、製品が有限時間内に破損するケースが極めて少ないため、ある目標時間まで破損することなく試験が継続すれば、寿命は問題ないと判断する試験である(以下、このような試験を「打切り試験」と呼ぶ)。一方、後者は、比較的短時間で破損が発生するので、ワイブルプロットで寿命が算出でき(例えば非特許文献1)、その算出寿命から性能の優劣を判定する試験である(以下、このような試験を「加速試験」と呼ぶ)。
【0003】
従来より、寿命試験は経験を積んだ熟練者が行っており、試験条件や試験個数を決める寿命試験の設計と寿命試験結果の解釈に対して経験的に確からしい判断ができたと考えられる。
図22に、従来から行われてきた寿命試験の設計と寿命試験結果の解釈の手順を、打切り試験と加速試験ごとに示す。
また、現在、寿命試験において経験的に判断されているものの詳細を、表1に示す。
【0004】
【表1】
【0005】
なお、ワイブル分布を機械部品の寿命判断に用いるものは、種々の特許文献,非特許文献に提案されている。
【特許文献1】特開2006−040203号公報
【特許文献2】特開2002−277382号公報
【特許文献3】特開2005−226829号公報
【非特許文献1】真壁肇著、信頼性工学入門79、1991年発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
打切り試験は、打切り時間が経過すると要求寿命が満足されたとする試験であるが、納期に余裕がある場合など、打切り時間の経過後も引き続いて試験を継続し、その試験対象品の寿命水準を確認したい場合がある。このような状況は、しばしば発生する。
しかし、従来、このような打切り試験の継続で試験対象品の寿命水準を試算する適切な方法がなかった。
また、上記試験対象品の寿命水準として、対象ロットの寿命が何時間以上であるかという寿命の下限だけでなく、そのロットの寿命の上限が何時間であるかという上限を知りたい場合があるが、このような寿命の上限を試算する方法についても、従来は適切な方法がなかった。
【0007】
この発明の目的は、打切り試験において、少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命水準を、簡単かつ迅速に試算することができ、かつ信頼性の高いものとでき、熟練者でなくても寿命水準を試算することのできる方法、装置、およびその方法の実施のためのコンピュータプログラムを提供することである。
この発明の他の目的は、打切り試験において、少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命の上限を、簡単かつ迅速に試算することができ、かつ信頼性の高いものとでき、熟練者でなくても寿命の上限を試算することのできる方法、装置、およびその方法の実施のためのコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明における第1の寿命打切り試験からの寿命見積もり方法は、軸受またはその他の機械部品または試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、所定信頼度の寿命についての要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命を見積もる方法であって、
コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間を入力する入力過程(E1)と、
上記コンピュータに、寿命を演算させ演算結果を表示装置の画面に表示させるコンピュータ演算処理過程(E2)とを含む。
上記所定信頼度の寿命は、例えばL10寿命(90%の信頼度の寿命)や、L50寿命(50%の信頼度の寿命)等である。未破損時間および寿命は、必ずしも時間の単位でなくても良く、例えば、軸受を回転させて試験を行うときの回転回数等の負荷回数で表示されていても良い。
【0009】
上記コンピュータ演算処理過程(E2)として、
未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順(G21)と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、破損個数分の乱数を短いものから順に除いた残りの乱数が未破損時間以上になるか否かを調べる乱数分析手順(G22)と、
上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返し、この繰り返しの各回おける上記乱数分析手順で調べた未破損時間以上にある確率を調べる設定割合寿命充足調査手順(G23)と、
この設定割合寿命充足調査手順(G23)を、破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命充足調査手順(G24)と、
この異寿命充足調査手順(G24)により得られた寿命と未破損時間以上にある確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命と定める寿命読み取り手順(G25)と、
を実行する。
【0010】
ワイブル分布は、次式、
【0011】
【数1】
【0012】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
によって特定される。
【0013】
軸受等の機械部品の寿命は、ワイブル分布に従うとされている。ワイブル分布は、ワイブルスロープm、尺度因子α、最小寿命γの3つのパラメータを持っており、ワイブルスロープmによって指数分布、対数正規分布、正規分布を表現できる万能分布として知られている。量産される軸受等では、ワイブルスロープは実績値が既知である場合が多く、この発明方法において、ワイブルスロープには、試験対象となる機械部品の実績値を用いることが好ましい。実績値がない場合は、適宜の方法で見積もったワイブルスロープを用いてもよい。最小寿命γは、種々の規格、例えばISO等によって計算方法が定められており、そのように定められたいずれかの計算方法を用いることが好ましい。尺度因子αは、ワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、要求寿命の値、および上記最小寿命γから一義的に決定される演算式があり、その演算式を用いて特定しても良い。
【0014】
この方法によると、未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、破損個数分の乱数を短いものから順に除いた残りの乱数が未破損時間以上になるか否かを調べる。この手順を設定回数、例えば数千回数繰り返し、未破損時間以上にある確率を調べる。この確率を、順次異なる寿命を持つワイブル分布に対して求める。
このようにして得れた寿命と未破損時間以上にある確率の関係は、どのような寿命分布であれば、上記未破損時間まで未破損である確率が高いかということを示している。したがって、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値(L10寿命であれば、100%から90%を引いた10%)となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命と定めることができる。
このように、種々の寿命のワイブル乱数を試験個数だけ発生させ、破損個数分を除いた残存乱数により、どのような寿命分布であれば、上記未破損時間まで未破損である確率が高いかという確率分布を求めるようにしたため、未破損時間から試験対象品の寿命水準を高い信頼度で求めることができる。また、上記の処理はコンピュータシミュレーションとし、コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間を入力するだけで、寿命水準が出力されるようにしたため、熟練を要することなく、簡単に、かつ迅速に、未破損時間から寿命水準を求めることができる。
【0015】
この発明における第1の寿命打切り試験からの寿命見積もり装置は、軸受またはその他の機械部品または試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、所定信頼度の寿命についての要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命を見積もる装置であって、
演算処理装置(1)と、この演算処理装置(1)の出力を画面に表示する表示装置(2)と、上記演算処理装置(2)に入力を行う入力手段(3)とを備える。
【0016】
上記演算処理装置(1)は、上記表示装置(2)の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段(7E)と、
実行命令の入力に応答して、寿命を見積もる演算をし上記表示の画面に出力する寿命見積もり演算手段(22)とを備える。
【0017】
上記寿命見積もり演算手段(22)は、乱数発生手段(23)と、乱数分析手段(24)と、設定割合寿命充足調査手段(25)と、異寿命充足調査手段(26)と、寿命読み取り手段(27)と、読取結果出力手段(28)とを備える。
【0018】
乱数発生手段(23)は、未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させる手段であり、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる。
【0019】
乱数分析手段(24)は、発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、破損個数分の乱数を短いものから順に除いた残りの乱数が未破損時間以上になるか否かを調べる手段である。
【0020】
設定割合寿命充足調査手段(25)は、上記乱数発生手段(23)および上記乱数分析手段(24)の処理を設定回数繰り返し、この繰り返しの各回おける上記乱数分析手段(24)で調べた未破損時間以上にある確率を調べる手段である。
【0021】
異寿命充足調査手段(26)は、上記設定割合寿命充足調査手段(25)の処理を、破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す手段である。
【0022】
寿命読み取り手段(27)は、異寿命充足調査手段(26)の処理により得られた寿命と未破損時間以上にある確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命と定める寿命読み取る手段である。
【0023】
読取結果出力手段は、寿命読み取り手段で読み取った寿命を上記表示装置に出力させる手段である。
【0024】
この構成の寿命打切り試験からの寿命見積もり装置は、この発明の寿命見積もり方法を実施して、未破損時間から寿命水準を、簡単、迅速求めることができ、かつ信頼性の高いものとでき、熟練者でなくても未破損時間から寿命水準を適切に求めることができる。
【0025】
この発明における第1の寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラムは、
コンピュータで実行可能なプログラムであって、
表示装置の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順(F1)と、
実行命令に応答して、寿命を演算し上記表示装置の画面に表示させる寿命演算手順(F2)とを含む。
【0026】
上記寿命演算手順(F2)は、
未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順(G21)と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、破損個数分の乱数を短いものから順に除いた残りの乱数が未破損時間以上になるか否かを調べる乱数分析手順(G22)と、
上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返し、この繰り返しの各回おける上記乱数分析手順で調べた未破損時間以上にある確率を調べる設定割合寿命充足調査手順(G23)と、
この設定割合寿命充足調査手順(G23)を、破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命充足調査手順(G24)と、
この異寿命充足調査手順により得られた寿命と未破損時間以上にある確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命と定める寿命読み取り手順(G25)と、
を含む。
【0027】
この構成の寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラムは、この発明の寿命見積もり方法の実施に使用され、未破損時間から寿命水準を、簡単、迅速求めることができ、かつ信頼性の高いものとでき、熟練者でなくても未破損時間から寿命水準を適切に求めることができる。
【0028】
この発明における第2の寿命打切り試験からの寿命見積もり方法は、寿命の上限、つまりその寿命試験の結果からその寿命以上は期待できないと上限を見積もる方法である。
すなわち、第2の寿命打切り試験からの寿命見積もり方法は、
軸受またはその他の機械部品または試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、所定信頼度の寿命についての要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、一部の試験対象品が破損し残りの対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命の上限を見積もる方法であって、
コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および上記未破損時間(一部の試験対象品が破損し残りの対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間)を入力する入力過程(E1A)と、
上記コンピュータに、上記寿命の上限を演算させ演算結果を表示装置の画面に表示させるコンピュータ演算処理過程(E2A)とを含む。
上記所定信頼度の寿命は、例えばL10寿命(90%の信頼度の寿命)や、L50寿命(50%の信頼度の寿命)等である。未破損時間および寿命は、必ずしも時間の単位でなくても良く、例えば、軸受を回転させて試験を行うときの回転回数等の負荷回数で表示されていても良い。
【0029】
上記コンピュータ演算処理過程(E2A)として、
未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順(G21A)と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になるか否かを調べる乱数分析手順(G22A)と、
上記乱数発生手順(G21A)および上記乱数分析手順(G22A)を設定回数繰り返し、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になる確率を調べる設定割合寿命非充足調査手順(G23A)と、
この設定割合寿命非充足調査手順(G23A)を、上記未破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命非充足調査手順(G24A)と、
この異寿命非充足調査手順(G24A)により得られた寿命と未破損時間以下になる確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命の上限と定める寿命上限読み取り手順(G25A)と、を実行する。
前記100%から減算する所定信頼度は、例えば90%とする。
【0030】
なお、上記寿命上限読み取り手順(G25A)は、より具体的には、上記異寿命非充足調査手順(G24A)により調べた各設定割合寿命毎の未破損時間以下になる確率を、寿命と未破損時間以下になる確率の関係である累積確率分布とし、この累積確率分布から、発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命の上限と定める手順とされる。
【0031】
この方法によると、未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になるか否かを調べる。この手順を設定回数、例えば数千回数繰り返し、未破損時間以上にある確率を調べる。この確率を、順次異なる寿命を持つワイブル分布に対して求める。
このようにして得られた寿命と未破損時間以下にある確率の関係は、どのような寿命分布であれば、最も短い方から破損個数までの試験対象品の寿命が上記未破損時間以下になる確率が高いかということを示している。したがって、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値(L10寿命であれば、100%から90%を引いた10%)となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命の上限と定めることができる。
このように、種々の寿命のワイブル乱数を試験個数だけ発生させ、どのような寿命分布であれば、最も短い方から破損個数までの試験対象品の寿命が未破損時間以下になる確率が高いかという確率分布を求めるようにしたため、未破損時間から試験対象品の寿命の上限を高い信頼度で求めることができる。また、上記の処理はコンピュータシミュレーションとし、コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間を入力するだけで、寿命水準が出力されるようにしたため、熟練を要することなく、簡単に、かつ迅速に、未破損時間から寿命の上限を求めることができる。
【0032】
この発明における第2の寿命打切り試験からの寿命見積もり方法は、第1の寿命打切り試験からの寿命見積もり方法と併用しても良い。
すなわち、第1の寿命打切り試験からの寿命見積もり方法において、一部の試験対象品が破損し残りの試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から、試験対象品のロットの寿命の上限を見積もる方法を含み、この上限を見積もる方法として、上記コンピュータに、上記寿命の上限を演算させ演算結果を表示装置の画面に表示させるコンピュータ演算処理過程(E2A)を含む。
【0033】
上記コンピュータ演算処理過程(E2A)として、
未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順(G21A)と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になるか否かを調べる乱数分析手順(G22A)と、
上記乱数発生手順(G1A)および乱数分析手順(G22A)を設定回数繰り返し、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になる確率を調べる設定割合寿命非充足調査手順(G23A)と、
この設定割合寿命非充足調査手順(G23A)を、上記未破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命非充足調査手順(G24A)と、
この異寿命非充足調査手順(G24A)により得られた寿命と未破損時間以下になる確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命の上限と定める寿命上限読み取り手順(G25A)と、 を実行する。
【0034】
この第1,第2の方法の併用により、試験対象品のロットの寿命の下限と上限の両方を求めることができる。なお、第1,第2の方法の併用する場合、共通する処理、例えば入力処理は、重複して行うことなく、1回で済むようにできる。
【0035】
この発明における第2の寿命打切り試験からの寿命見積もり装置は、寿命の上限を見積もる装置である。
すなわち、第2の寿命打切り試験からの寿命見積もり装置は、
軸受またはその他の機械部品または試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、所定信頼度の寿命についての要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、一部の試験対象品が破損し残りの対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命の上限を見積もる装置であって、
演算処理装置(1)と、この演算処理装置(1)の出力を画面に表示する表示装置(2)と、上記演算処理装置(1)に入力を行う入力手段(3)とを備える。
【0036】
上記演算処理装置(1)は、
上記表示装置の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段(7EA)と、
実行命令の入力に応答して、寿命の上限を見積もる演算を行いその演算結果を上記表示の画面に出力する寿命上限見積もり演算手段(22A)とを備える。
【0037】
上記寿命上限見積もり演算手段(22A)は、
未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手段(23A)と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になるか否かを調べる乱数分析手段(24A)と、
上記乱数発生手段(23A)および上記乱数分析手段(24A)の処理を設定回数繰り返し、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になる確率を調べる設定割合寿命非充足調査手段(25A)と、
この設定割合寿命非充足調査手段(25A)の処理を、破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命非充足調査手段(26A)と、
この異寿命非充足調査手段(26A)により得られた寿命と未破損時間以下になる確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命の上限と定める寿命上限読み取り手段(29A)と、
この手段(29A)で読み取った寿命の上限を上記表示装置(2)に出力させる読取結果出力手段(28A)と、
を備える。
【0038】
この構成の寿命打切り試験からの寿命見積もり装置は、この発明の第2の寿命見積もり方法を実施して、未破損時間から寿命の上限を、簡単、迅速に求めることができ、かつ信頼性の高いものとでき、熟練者でなくても未破損時間から寿命の上限を適切に求めることができる。
【0039】
この発明における第2の寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラムは、寿命の上限を見積もるプログラムである。
すなわち、第2の寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラムは、
コンピュータで実行可能なプログラムであって、
表示装置の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順(F1A)と、
実行命令に応答して、上記寿命の上限を演算し上記表示装置の画面に表示させる寿命上限演算手順(F2A)とを含む。
【0040】
上記寿命上限演算手順(F1A)は、
上記未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順(G21A)と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になるか否かを調べる乱数分析手順(G22A)と、
上記乱数発生手順(G21A)および上記乱数分析手順(G22A)を設定回数繰り返し、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になる確率を調べる設定割合寿命非充足調査手順(G23A)と、
この設定割合寿命非充足調査手順(G23A)を、破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命非充足調査手順(G24A)と、
この異寿命非充足調査手順(G24A)により得られた寿命と未破損時間以下になる確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命の上限と定める寿命上限読み取り手順(G25A)と、を含む。
【0041】
この構成の寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラムは、この発明の第2の寿命見積もり方法の実施に使用され、未破損時間から寿命の上限を、簡単、迅速求めることができ、かつ信頼性の高いものとでき、熟練者でなくても未破損時間から寿命水準を適切に求めることができる。
【発明の効果】
【0042】
この発明の第1の寿命打切り試験からの寿命見積もり方法、装置、プログラムによると、種々の寿命のワイブル乱数を試験個数だけ発生させ、破損個数分を除いた残存乱数により、どのような寿命分布であれば、上記未破損時間まで未破損である確率が高いかという確率分布を求めるようにしたため、未破損時間から試験対象品の寿命水準を高い信頼度で求めることができる。また、コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間を入力するだけで、寿命水準が出力されるようにしたため、熟練を要することなく、簡単に、かつ迅速に、未破損時間から寿命水準を求めることができる。
この発明の第2の寿命打切り試験からの寿命見積もり方法、装置、プログラムによると、種々の寿命のワイブル乱数を試験個数だけ発生させ、どのような寿命分布であれば、最も短い方から破損個数までの試験対象品の寿命が未破損時間以下になる確率が高いかという確率分布を求めるようにしたため、未破損時間から試験対象品の寿命の上限を高い信頼度で求めることができる。また、コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間を入力するだけで、寿命の上限が出力されるようにしたため、熟練を要することなく、簡単に、かつ迅速に、未破損時間から寿命の上限を求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
この発明の第1の実施形態を説明する。この寿命打切り試験からの寿命見積もり方法は、軸受を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、打切り時間後の試験継続等を行ったときに、少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命を見積もる方法である。なお、軸受の他の機械部品や、軸受またはその他の機械部品の試験片の打切り試験における打切り時間を見積もる場合にも適用できる。
この実施形態の寿命打切り試験からの寿命見積もり方法は、例えば、一つのロットの軸受の中から一部の軸受を抜き取って打切り寿命試験を行い、そのロットの寿命を確認する試験等に適用される。
【0044】
以下、この実施形態を図面と共に説明する。この寿命打切り試験からの寿命見積もり方法は、図1に示すコンピュータ1に、寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラム21を実行させることで行う。コンピュータ1はパーソナルコンピュータ等からなり、中央処理装置4およびメモリ5を有し、所定のオペレーションシステムによって動作するものである。コンピュータ1には、液晶表示装置等の画面によって表示可能な表示装置2と、キーボードやマウス等の入力装置3が接続され、あるいは付属して設けられている。コンピュータ1、表示装置2、入力装置3、および寿命見積もりプログラム21により、図2に各機能達成手段をブロックで示した寿命見積もり装置が構成される。同図の寿命見積もり装置の構成については、後に説明する。
寿命見積もりプログラム21は、コンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図4および図5に流れ図で示す手順を備えるものである。同図の内容は、後に説明する。
【0045】
この寿命見積もり方法は、図2に示すように、コンピュータ1に対して所定の情報を入力する入力過程E1と、コンピュータ1で演算処理を行って演算結果を出力するコンピュータ演算処理過程E2とからなる。
【0046】
入力過程E1では、図7に示すように所定の入力情報の入力を促す入力画面2aが、コンピュータ1の出力によって表示装置2に表示される。この画面では、入力情報として打切り試験の対象となる軸受のワイブルスロープの値、試験開始時の試験個数、未破損個数および未破損時間の入力を促す表示を行わせる。ワイブルスロープの値には、試験対象となる型番の軸受における実績値を入力する。
実績値は10個以上の試験で得た結果を用いることが望ましく、より好ましくは20個以上の試験結果である。
【0047】
図3のコンピュータ演算処理過程E2では、入力された未破損時間,未破損個数等からその試験対象品を含むロットの寿命水準となる寿命を演算し、その演算結果を、図8のように出力画面2bに表示する。すなわち、少なくともいえる寿命の計算結果が同図のように出力される。
【0048】
図1の寿命見積もりプログラム21は、コンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図4,図5に流れ図で示す手順を備える。図4に示すように、寿命見積もりプログラム21は、促し画面出力手順F1と寿命演算手順F2とでなり、促し画面出力手順F1では、図7と共に前述した入力画面2aを出力する。この入力画面2aに対して、上記各入力情報が入力手段3から入力され、かつ入力画面2aのOKキーのクリック等によって実行命令が入力手段3から入力されると、寿命演算手順F2が実行される。同図の入力画面2aに対して入力する過程が、図3の入力過程A1であり、同図のコンピュータ演算処理過程E2は図4の寿命演算手順F2を実行する過程である。
【0049】
寿命演算手順F2は、図5に流れ図で示す各手順で構成される。この流れ図には、各手順G21〜G26毎の具体的な処理例を併記してある。
【0050】
理解の容易のため、図5の流れ図を説明する前に、同図の流れ図の処理につき、全数未破損である場合に限定した処理を、具体的数値例と共に、図6と共に説明する。
【0051】
図6は、継続している全数未破損の打切り試験の途中結果から寿命を算出するための手順を示す。今、目標品質がL10寿命で1000時間を保証するための試験を行っている状況を考える。納期が3ヶ月(2100時間)であったため、試験個数を6個用意して全数打切り時間が1860時間の打切り試験を開始した。
試験は破損が発生することなく継続し、全数打切り時間が1860時間を経過したので目標品質を保証できるという結果が得られた。試験を終了してもよいが、試験機を他の調査で今すぐ使用するという状況ではないので、その製品の寿命水準を把握しておくという目的で更に試験を継続するということになった。
【0052】
今、試験が継続して3000時間が経過し、試験片6個全数未破損という状況から言える寿命を試算する。まず、現在の全数未破損時間である3000の1/10倍(=300時間)のL10寿命を持つワイブル分布(ワイブルスロープは実績から設定して1.85)から乱数を6個発生し(手順G21′)、得られた乱数6個すべてが3000時間以上になるかどうかを調べる(手順G22′)。
【0053】
次に、この作業を5000回繰り返し、5000回中何回の頻度で3000時間を越える状況が発生するのかを調べる(G23′)。これらは、ワイブルスロープ1.85、L10寿命300時間の寿命である6個の試験片を寿命試験したときに、どのくらいの確率で3000時間全数未破損になるかを調査していることに対応する。
【0054】
さらに、この確率の調査を3000時間よりも1/10、2/10、3/10…11/10 …200/10倍のL10寿命を持つワイブル分布で行う(G24′)。このように得られた確率につき、横軸をそのL10寿命、縦軸を3000時間全数未破損の確率としたものが図9(A)になる。この図は、どのような寿命分布であれば3000時間全数未剥離になる確率が高いかということを示している。10%の頻度でしか3000時間全数未剥離のデータが得られない寿命分布は、L10寿命が1530時間のものである。したがって、3000時間全数未剥離のデータが得られる場合は、90%の確率でL10寿命が15630時間以上であるといえる。このように、発生確率が10%(L10寿命の信頼度90%を100%から引いた値)に対応する時間を読み取って、その試験対象品のロットのL10寿命が15630時間以上であると読み取る(G25′)。
以上が全数打切り試験の途中結果から寿命を算出する方法である。
【0055】
次に、破損が生じた場合を含む寿命打切り試験から言える寿命について説明する。上記の表1の打切り試験の解釈(2) の項目に示すように、打切り試験の破損状況が複雑でも、その試験片の寿命水準を確認したい状況を想定している。例えば、試験個数10個の試験を行い、その内の2個の試験片は破損したが、その他の8個の試験片は未破損であったため、目標品質を満たすことができたが、引き続き試験を継続して、その試験片の寿命水準を確かめたい状況を想定している。
【0056】
ここでは、総試験軸受中に少数の軸受に破損が発生した状況から寿命を試算する方法について説明する。図5の流れ図は、破損が生じた場合を含む寿命打切り試験から言える寿命の演算手順を示す。
図5の流れ図において、具体例を示す注釈部分を参照して説明する。基本的な手順は、図6と共に前述した全数打切り試験結果から寿命を見積もる手順と同様である。
【0057】
以下、説明を簡単にするため、具体例を挙げる。目標品質がL10寿命で1000時間を保証するための試験を行っている状況を考える。納期が5ヶ月(3600時間)であったため、試験個数を6個用意して全数打切り時間が1860時間の打切り試験を開始した。試験を継続している途中、1個の試験片が1000時間で破損した。1000時間は、試験を中止する基準である全数打切り時間の設定値1860時間よりも短いが、試験を中止する基準(要求品質が満たされないとして試験を中止する基準時間)412時間を越えていたため、引き続き試験を継続することになった。目標品質を満たすためには、残存試験片の打切り時間が2626時間になるが、納期的には問題ない状況である。試験を継続した結果、残存試験片が2626時間で破損しなかったため、その製品は目標品質を満たすことができた。試験を終了してもよいが、試験機を他の調査で今すぐ使用するという状況ではないので、その製品の寿命水準を把握しておくという目的で更に試験を継続するということになった。
なお、全数未破損時の打切り時間、一部破損時の打切り時間、および試験中止基準時間は、適宜の方法で見積もることができるが、ここでは説明を省略する。
【0058】
今、試験を継続して3000時間経過し、試験片6個中5個が未破損という状況から言える寿命を試算する。
まず、現在の全数未破損時間である3000時間よりも、適宜の設定割合、例えば1/10倍(=300時間)のL10寿命を持つワイブル分布(ワイブルスロープは実績から設定して1.85)から乱数を6個発生する(手順G21)。
次に、得られた6個の乱数を昇順に並び替え、最も小さな乱数以外の5個のデータが3000時間以上になるかどうかを調べる(手順G22)。
【0059】
次に、この作業を設定回数(この例では5000回)繰り返し、5000回中何回の頻度で3000時間を越える状況が発生するのかを調べる(手順G23)。
これらは、ワイブルスロープ1.85、L10寿命300時間の寿命である6個の試験片を寿命試験したときに、一番短寿命である試験片以外の5個の試験片がどのくらいの確率で3000時間未破損になるかを調査していることに対応する。
【0060】
さらに、この確率の調査を3000時間の1/10、2/10、3/10…11/10 …200/10倍のL10寿命を持つワイブル分布で行う(手順G24)。これは、この方法で寿命演算できる最短寿命を3000時間の1/10、最長寿命を3000時間の200/10倍と設定した場合の演算範囲である。
【0061】
このように順次割合変更しながら、上記手順G23で得た確率について、横軸をL10寿命、縦軸を3000時間6個中5個未破損の確率としたものを作図したものが、図10(B)になる。この図は、どのような寿命分布であれば、最も短寿命である試験軸受以外の5個の試験片が3000時間全数未剥離になる確率が高いかということを示している。10%(L10寿命の信頼度である90%を100%から引いた値)の頻度でしか、3000時間6個中5個未剥離のデータが得られない寿命分布は、L10寿命が1099時間のものである。
【0062】
したがって、最も短寿命である試験片以外の5個の試験片が3000時間全数未剥離になる状況は、90%の確率でL10寿命が1099時間以上である状況といえる。このように、寿命分布と、残存乱数が未破損時間以上全数未剥離になる確率の関係から、(100%)−(信頼度)の時間を読み取り、その軸受のロットの水準となる寿命とする(手順G25)。このように読み取った寿命を、表示装置2の出力画面2bに表示する(手順G26)。
【0063】
以上が総試験軸受中の少数の試験軸受に破損が発生した状況から寿命を算出する方法である。ここで、この状況の試験は、1000時間全数未破損という状況と考えることもできるし、6個中5個の試験片が3000時間未破損という状況と考えることもできるので、どちらの状況で寿命を試算すればよいかという疑問が残る。このような時には、いずれを採用するかを適宜設定しておけば良い。例えば、2つの状況で寿命の試算を行い、寿命が長く見積もられるほうを採用してもよい。表2に6個の試験片が1000,2000,3000時間全数未剥離であったとき試算できる寿命と6個中5個の試験片が1000,2000,3000時間未剥離であったとき試算できる寿命を示す。
【0064】
【表2】
【0065】
6個中全数の未破損時間1000時間であった時試算できる寿命は、6個中5個の試験片が3000時間未剥離であったとき試算できる寿命よりも短くなることが分かる。この場合、例えば、寿命が長く見積もられるもの(6個中5個の試験片が3000時間未剥離であったとき試算できる寿命)を採用することにする。
【0066】
表3に試験結果の別の例を示す。
【0067】
【表3】
【0068】
この試験結果は、(1) 6個中6個が3050時間以上、(2) 6個中5個が4000時間以上、(3) 6個中4個6000時間以上の3通りの解釈が可能である。表4にそれぞれの解釈で計算を行った結果を示す。
【0069】
【表4】
【0070】
計算の結果、6個中4個が6000時間以上であると解釈するほうが、最も長寿命側の判定ができる。したがって、この試験結果からは、L10寿命が1742時間以上であるといえる。
【0071】
図4,図5に示した寿命見積もりプログラム21についての上記の説明は、具体的に数値を例にとって説明したが、この寿命見積もりプログラム21は、整理すると、次の手順により構成される。
【0072】
この実施形態の寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラム21は、
コンピュータで実行可能なプログラムであって、
表示装置の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順(G1)と、
実行命令に応答して、寿命を演算し上記表示装置の画面に表示させる寿命演算手順(G2)とを含む。
【0073】
上記寿命演算手順(G2)は、
未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順(G21)と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、破損個数分の乱数を短いものから順に除いた残りの乱数が未破損時間以上になるか否かを調べる乱数分析手順(G22)と、
上記乱数発生手順(G1)および上記乱数分析手順(G22)を設定回数繰り返し、この繰り返しの各回おける上記乱数分析手順で調べた未破損時間以上にある確率を調べる設定割合寿命充足調査手順(G23)と、
この設定割合寿命充足調査手順(G23)を、破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命充足調査手順(G24)と、
この異寿命充足調査手順(G24)により得られた寿命と未破損時間以上にある確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命と定める寿命読み取り手順(G25)と、
寿命出力手順(G26)とを含む。
【0074】
設定割合寿命充足調査手順(G23)は、上記乱数発生手順(G1)および上記乱数分析手順(G22)を設定回数繰り返させる手順(G231)と、この繰り返しの各回おける上記乱数分析手順で調べた未破損時間以上にある確率を調べる確率調査の手順(G232)とでなる。
【0075】
異寿命充足調査手順(G24)は、設定割合寿命充足調査手順(G23)を、所定の最長寿命に達するまで繰り返させる繰り返し手順(G241)と、繰り返し毎に上記設定割合を順次変更する割合変更手順(G242)とでなる。なお、設定割合の初期値(上記の具体例では1/10)は、手順G21で定めておく。
【0076】
上記乱数発生手順(手順B21)の詳細について説明する。この手順B21は、ワイブル分布特定手順(G211)と、その特定したワイブル分布に従ってワイブル乱数を発生させる手順(G212)とでなる。ワイブル分布特定手順(G211)では、次のワイブル分布を特定する。
一般に軸受の寿命分布は次式1)のワイブル分布に従うと言われている。
【0077】
【数2】
【0078】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
ワイブル分布は、3つのパラメータを持っており、ワイブルスロープmによって指数分布、対数正規分布、正規分布を表現できる万能分布として知られている。参考として、図11に各種パラメータを変化させた時のワイブル分布の変化を示す。ワイブルスロープmは、分布の形状を支配するパラメータであり、この値が小さいほどばらつきの大きい分布ということができる。尺度因子αは、横軸(寿命)のスケールを変化させるもので、この値が大きいほど寿命は相対的に長くなる。最小寿命γは、寿命分布の横軸(寿命)を単にシフトさせるものである。
【0079】
この実施形態では、ワイブル乱数を発生させるが、この乱数を発生させるためにはワイブル分布の3つのパラメータを決定する必要がある。決め方の手順は、例えば以下のようになる。
1)ワイブルスロープmを実績から決定する。
2)乱数を発生させたい分布の信頼度(例えばL10寿命であるか、あるいはL50寿
命であるか)を決定する。
3)信頼度から求めたワイブルスロープmから、最小寿命γを所定の数式を使って決定
する。例えば、L10寿命またはL50寿命から求めた尺度因子αから、
最小寿命γを、例えば、以下の2)式を使って決定する。
この式は、1990年制定のISOの最小寿命であり、実験値からの回帰式である。
【0080】
【数3】
【0081】
これは、R≦10の値で、R=0(L10寿命でのa1)のとき、この式は1になるという式である。過去のISOの最少寿命考慮の式では、L10寿命以下の寿命は、この式にL10寿命を書けた値ということで定義されている。Rは信頼度に対応する値(100−Rが信頼度となる値)である。
なお、最小寿命の定め方については、各種の規格(例えばISO)において、時代と共に変更される場合があるが、規格の変更に伴い、実施時の規格に応じた定め方を採用すれば良い。また、最小寿命は、材料試験条件によっても変化するのでより一般的な式で記述するほうが良いとの主張もあり、適宜の値を用いれば良い。
【0082】
ワイブル乱数の発生(手順G212)につき説明する。乱数とは、定性的にはでたらめな数列であって、発生頻度が均一(等確率)で、その発生に規則性がない(無規則性)というものであるが、完全な乱数を発生させることは不可能である。そこで、コンピュータで発生させることのできる疑似乱数を使う。簡易な乱数発生アルゴリズムでは、例えば10進法で20桁ぐらいの周期性が見られるが、周期性が6千桁以上の周期性となるものもあり、このような周期性の少ない乱数発生アルゴリズムを用いることが好ましい。
【0083】
この実施形態では、一様な乱数ではなく、ワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を発生させる。このため発生方法には工夫が必要になる。確率密度関数が複雑な場合、その分布に従う乱数を発生するには棄却法と呼ばれる方法を用いればよく、この実施形態においても、棄却法を用いる。
確率密度関数f(x)の変域が図12のように、0からX0 の範囲にあるとみなされるものとし、その変域内でのf(x)の最大値をMとする。RNを区間〔0,1 〕での一様擬似乱数とするとX0 ・RNにより、区間〔0,x0〕での一様擬似乱数xiを発生することができる。同様にして、M・RNにより、区間〔0,M 〕での一様擬似乱数yiを発生することができる。そこで、このようにして発生させた乱数xi,yiがf(xi)> yi となる条件を満足する場合には、乱数xiは与えられた確率密度分布に従うものとして採用し、満足しなければ、その乱数xiを不採用とする。この作業を繰り返し、確率密度分布に従う確率で乱数xiを採用し、確率密度分布に従う乱数の数列を作っていく方法を棄却法という。この方法は、条件に合わない乱数を捨てることになるので乱数発生法としては効率がよくないが、よい一様乱数さえ得られれば原理的に正しい数列が得られる方法である。
【0084】
図2と共に寿命打切り試験からの寿命見積もり装置につき説明する。この寿命見積もり装置は、打切り試験において、少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命を見積もる装置であって、演算処理装置であるコンピュータ1と、このコンピュータ1の出力を画面に表示する表示装置2と、コンピュータ1に入力を行う入力装置3とを備える。
コンピュータ1は、表示装置2の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段7Eと、
実行命令の入力に応答して、寿命を見積もる演算を行いその演算結果を上記表示の画面に出力する寿命見積もり演算手段22とを備える。
【0085】
寿命見積もり演算手段22は、乱数発生手段23と、乱数分析手段24と、設定割合寿命充足調査手段25と、異寿命充足調査手段26と、寿命読み取り手段27と、読取結果出力手段28とを備える。
【0086】
乱数発生手段23は、未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させる手段であり、図5の手順G21で説明した処理を行う。上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる。
乱数発生手段23は、ワイブル分布特定部23aと、乱数発生部23bとからなる。ワイブル分布特定部23aは、図5の手順G211で説明した処理を行い、乱数発生部23bは、図5の手順G212Dで説明した処理を行う。
【0087】
乱数分析手段24は、発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、破損個数分の乱数を短いものから順に除いた残りの乱数が未破損時間以上になるか否かを調べる手段であり、図5の流れ図における手順G22で説明した処理を行う。
【0088】
設定割合寿命充足調査手段25は、上記乱数発生手段23および上記乱数分析手段24の処理を設定回数繰り返し、この繰り返しの各回おける上記乱数分析手段24で調べた未破損時間以上にある確率を調べる手段であり、図5の流れ図における手順G23で説明した処理を行う。
【0089】
異寿命充足調査手段26は、上記設定割合寿命充足調査手段26の処理を、破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す手段であり、図5の流れ図における手順G24で説明した処理を行う。
【0090】
寿命読み取り手段27は、異寿命充足調査手段26の処理により得られた寿命と未破損時間以上にある確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命と定める寿命読み取る手段であり、図5の流れ図における手順G25で説明した処理を行う。
【0091】
読取結果出力手段28は、寿命読み取り手段27で読み取った寿命を上記表示装置2に出力させる手段であり、図5の流れ図における手順G26で説明した処理を行う。
【0092】
この発明の第2の寿命見積もり方法、装置、プログラムに係る実施形態を、図13ないし図21と共に説明する。なお、この実施形態において、特に説明した事項の他は、図1ないし図12に示す第1の実施形態と同様である。
この実施形態は、寿命打切り試験の結果から、寿命の上限、つまりその試験結果からはそれ以上の寿命が期待できないという判断を行う方法等に係る。
【0093】
この実施形態の寿命打切り試験からの寿命見積もり方法も、第1の実施形態と同じく、軸受を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、適用される。
ただし、この方法は、一部の試験対象品が破損し残りの対象品が破損することなく試験を継続している場合に適用され、未破損時間から試験対象品のロットの寿命の上限を見積もる方法である。
軸受の他の機械部品や、軸受またはその他の機械部品の試験片の打切り試験における打切り時間を見積もる場合にも適用できる。
この実施形態の寿命打切り試験からの寿命見積もり方法も、例えば、一つのロットの軸受の中から一部の軸受を抜き取って打切り寿命試験を行い、そのロットの寿命を確認する試験等に適用される。
【0094】
以下、この実施形態を図面と共に説明する。この寿命打切り試験からの寿命見積もり方法は、図13に示すコンピュータ1に、寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラム21Aを実行させることで行う。コンピュータ1はパーソナルコンピュータ等からなり、中央処理装置4およびメモリ5を有し、所定のオペレーションシステムによって動作するものである。コンピュータ1には、液晶表示装置等の画面によって表示可能な表示装置2と、キーボードやマウス等の入力装置3が接続され、あるいは付属して設けられている。コンピュータ1、表示装置2、入力装置3、および寿命見積もりプログラム21Aにより、図14に各機能達成手段をブロックで示した寿命見積もり装置が構成される。
寿命見積もりプログラム21Aは、コンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図16および図17に流れ図で示す手順を備えるものである。
なお、この実施形態における寿命見積もりプログラム21Aは、第1の実施形態における寿命見積もりプログラム21と同じコンピュータ1で実行され、例えば第1の実施形態における寿命計算の後に、この実施形態による寿命の上限の計算を行うようにすることが望ましい。すなわち、第1の実施形態に係る寿命打切り試験からの寿命見積もり方法と、第2の実施形態に係る寿命打切り試験からの寿命見積もり方法とは、併用することができる。その場合、オペレータの入力事項のうち、重複する入力事項は一度で行うようにし、入力処理を兼用することができるできる。この第1,第2の寿命見積もり方法併用により、試験対象品のロットの寿命の下限値と上限値との両方を知ることができる。
【0095】
この寿命見積もり方法は、図15に示すように、コンピュータ1に対して所定の情報を入力する入力過程E1Aと、コンピュータ1で演算処理を行って演算結果を出力するコンピュータ演算処理過程E2Aとからなる。
【0096】
入力過程E1では、図19に示すように所定の入力情報の入力を促す入力画面2aAが、コンピュータ1の出力によって表示装置2に表示される。この入力画面2aA、およびこの入力画面に対して行う入力は、第1の実施形態(図1ないし図12)と同様であるので、重複する説明を省略する。ただし、この実施形態では、見積もる寿命は、L10寿命およびL50寿命の上限であり、その旨の表示が行われる。
【0097】
図15のコンピュータ演算処理過程E2Aでは、入力された未破損時間,未破損個数等からその試験対象品を含むロットの寿命の上限(その試験結果からはその寿命以上は期待できないという値)を演算し、その演算結果を、図20のように出力画面2bAに表示する。すなわち、ロットの寿命の上限値が、同図のように出力される。この上限値は、L10寿命およびL50寿命の各々について出力される。
【0098】
図13の寿命見積もりプログラム21Aは、コンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図16,図17に流れ図で示す手順を備える。図16に示すように、寿命見積もりプログラム21Aは、促し画面出力手順F1Aと寿命上限演算手順F2Aとでなり、促し画面出力手順F1では、図19と共に前述した入力画面2aAを出力する。この入力画面2aAに対して、上記各入力情報が入力手段3から入力され、かつ入力画面2aAのOKキーのクリック等によって実行命令が入力手段3から入力されると、寿命上限演算手順F2Aが実行される。同図の入力画面2aAに対して入力する過程が、図15の入力過程E1Aであり、同図のコンピュータ演算処理過程E2Aは図16の寿命上限演算手順F2Aを実行する過程である。
【0099】
寿命上限演算手順F2Aは、図17に流れ図で示す各手順で構成される。この流れ図には、各手順G21A〜G26A毎の具体的な処理例を併記してある。
【0100】
理解の容易のため、図17の流れ図を説明する前に、同図の流れ図の処理につき、1個破損である場合に限定した処理を、具体的数値例と共に、図18と共に説明する。
【0101】
図18は、継続している全数未破損の打切り試験の途中結果から寿命の上限を算出するための手順を示す。
今、6個の試験片の試験が継続して3000時間が経過し、その中の1個の試験片が破損したという状況からいえる寿命範囲を試算する。なお、第1の実施形態により、6個す ての試験片が3000時間以上であった場合の少なくともいえる寿命(90%の確率で保証できる下限のL10寿命)は1530時間以上であると求めることができる。
以下、図18と共に、寿命の上限を求めていく。現在、6個中1個の試験片が3000時間で破損しているが、その破損時間の0.5倍(=1500時間)のL10寿命を持つワイブル分布(ワイブルスロープは実績から設定して1.85)から乱数を6個発生させる(G21A′)。
得られた乱数6個を昇順に並び替え、最も小さい乱数が3000時間以下になるか否かを調べる(G22A)。
次に、この作業を5000回繰り返し、最も小さい乱数が3000時間以下になる状況が5000回中何回の頻度で発生するのかの確率を調べる(G23A′)。
これらは、ワイブルスロープ1.85、L10寿命1500時間の寿命である6個の試験片を寿命試験したときに、最も短い寿命の試験片ではどのくらいの確率で3000時間以下のデータが出るのかを調査していることに対応する。
さらに、この確率の調査を3000時間よりも、0.5、1、1.5…25倍のL0寿命を持つワイブル分布で行う(G24A′)。
この調査の結果から累積確率分布を求め、10%の確率分布となる時間を読み取る(G25A′)。すなわち、横軸をそのL10寿命、縦軸を最も短い試験片の寿命が3000時間以下になる確率としたものが、図21(B)である。この図は、どのような寿命分布であれば、最も短い試験片の寿命が3000時間以下になる確率が高いかということを示している。
この図から、L10寿命が7316時間の寿命分布を持つ試験片から6個中1個の試験片が3000時間以下の破損が生じることは10%のレアケースである。したがって、6個中1個の試験片が3000時間以下のデータが得られる試験片群の寿命は、90%の確率で、L10寿命が7316時間以下であるといえる。これより、寿命の範囲は1530時間以上7316時間以下であるといえる。
【0102】
以上が1個以上の破損データが得られた場合の寿命の上限を計算する方法である。この方法を応用すれば、2個の破損データが得られた場合でも寿命上限を計算することができる。これらの計算は、上記の寿命見積もりプログラム21,21Aを使って行うが、その入力と出力の結果を図19,図20に示す。ここで、ワイブルスロープは試験個数が10個以上の実際の試験から求めた実績値を入力することが望ましい。
以上のことから明らかなように、この寿命上限の計算方法によれば、その結果からその寿命以上は期待できないという判断が可能になる。
【0103】
次に、図17と共に、寿命上限演算手順F2A、つまり1個以上の破損データが得られた場合の寿命の上限を計算する手順の詳細を説明する。同図の流れ図において、具体例を示す注釈部分を参照して説明する。基本的な手順は、図18と前述した手順と同様である。
【0104】
図17につき、説明が重複するが、図18につき説明した例を具体例として用いる。以下の説明における括弧内の数値は具体例である。
いま、n個(6個)の試験片の試験が継続して所定の未破損時間(3000時間)が経過し、その中のm個(1個)の試験片が破損したという状況から言える寿命範囲を試算する。
【0105】
まず、ステップG21A(乱数発生手順)の処理を説明する。n個中m個(6個中1個)の試験片が所定の未破損時間T(3000時間)で破損しているが、そのm個の試験片が破損した破損時間である上記未破損時間Tに対する設定割合(0.5倍=(1500時間))のL10寿命を持つワイブル分布(ワイブルスロープは実績から設定して1.85から乱数をn個(6個)発生させる。この処理中のワイブル分布の特定(G211A)および乱数発生(G212A)の方法は、第1の実施形態で説明した方法と同様である。
【0106】
ついで、乱数分析手順(G22A)では、得られた乱数n個(6個)を昇順に並び替え、最も小さい方から破損個数m個までの乱数が上記未破損時間T(3000時間)以下になるか否かを調べる。破損個数mが1個の場合は、一番小さい乱数が3000時間以下になるか否かを調べる。
【0107】
次に、設定割合寿命非充足調査手順(G23A)では、上記乱数発生手順(G21A)と乱数分析手順(G22A)を設定回数(5000回)繰り返し(G231A)、最も小さい方から破損個数mまでの乱数が上記未破損時間T以下になるか否かを調べる(G232A)。破損個数mが1個である場合は、一番小さい乱数が3000時間以下になる状況が5000回中何回の頻度で発生するのかの確率を調べる。
これらは、ワイブルスロープ1.85、L10寿命が、(設定割合)×T(1500時間)の寿命であるn個(6個)の試験片を寿命試験したときに、最も小さい方から破損個数mまでの試験片ではどのくらいの確率で未破損時間T(3000時間)以下のデータが出るのかを調査していることに対応する。
【0108】
さらに、異寿命充足調査手順(G24A)では、上記確率の調査(G23A)を、上記未破損時間T(m個の破損が生じた破損時間)(3000時間)よりも、0.5、1、1.5…25倍のL0寿命を持つワイブル分布で行う。
【0109】
寿命上限読み取り手順(G25A)では、上記異寿命充足調査手順(G24A)の結果から累積確率分布を求め、その発生確率が100%から所定信頼度(90%)を減算した値(10%)の確率分布となる寿命時間を読み取る(G25A)。
すなわち、横軸をそのL10寿命、縦軸を最も短い試験片の寿命が未破損時間T(3000時間)以下になる確率としたものが、図21(B)である。この図は、どのような寿命分布であれば、最も短い方から破損個数m(1個)までの試験片の寿命が未破損時間T(3000時間)以下になる確率が高いかということを示している。
この図から、L10寿命が7316時間の寿命分布を持つ試験片から6個中1個の試験片が3000時間以下の破損が生じることは10%のレアケースである。したがって、6個中1個の試験片が3000時間以下のデータが得られる試験片群の寿命は、90%の確率で、L10寿命が7316時間以下であるといえる。これより、寿命の範囲は1530時間以上7316時間以下であるといえる。
【0110】
寿命上限出力手順(G26A)では、寿命上限読み取り手順(G25A)で読み取った寿命の上限を、表示装置2の出力画面2bに表示する。
以上が、寿命上限演算手順F2A、つまり1個以上の破損データが得られた場合の寿命の上限を計算する手順である。
【0111】
このように、種々の寿命のワイブル乱数を試験個数だけ発生させ、どのような寿命分布であれば、最も短い方から破損個数までの試験対象品の寿命が未破損時間以下になる確率が高いかという確率分布を求めるようにしたため、未破損時間から試験対象品の寿命の上限を高い信頼度で求めることができる。また、上記の処理はコンピュータシミュレーションとし、コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間を入力するだけで、寿命水準が出力されるようにしたため、熟練を要することなく、簡単に、かつ迅速に、未破損時間から寿命の上限を求めることができる。
【0112】
図17,図18に示した寿命見積もりプログラム21Aについての上記の説明は、具体的に数値を例にとって説明したが、この寿命見積もりプログラム21Aは、整理すると、次の手順で構成される。
【0113】
この実施形態の寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラム21Aは、寿命の上限を コンピュータで実行可能なプログラムであって、
表示装置の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順(G1A)と、
実行命令に応答して、寿命を演算し上記表示装置の画面に表示させる寿命上限演算手順(G2A)とを含む。
【0114】
上記寿命上限演算手順(G2A)は、
未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順(G21A)と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間未満になるか否かを調べる乱数分析手順(G22A)と、
上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返し、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間未満になる確率を調べる設定割合寿命非充足調査手順(G23A)と、
この設定割合寿命非充足調査手順(G23A)を、上記未破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命非充足調査手順(24A)と、
この異寿命非充足調査手順により得られた寿命と未破損時間未満になる確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命の上限と定める寿命上限読み取り手順(G25A)と、
寿命上限出力手順(G26A)とを含む。
【0115】
設定割合寿命非充足調査手順(G23A)は、上記乱数発生手順(G21A)および上記乱数分析手順(G22A)を設定回数繰り返させる手順(G231A)と、この繰り返しの各回おける上記乱数分析手順で調べた最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間未満になる確率を調べる確率調査の手順(G232A)とでなる。
【0116】
異寿命非充足調査手順(G24A)は、設定割合寿命非充足調査手順(G23A)を、所定の最長寿命に達するまで繰り返させる繰り返し手順(G241A)と、繰り返し毎に上記設定割合を順次変更する割合変更手順(G242A)とでなる。なお、設定割合の初期値(上記の具体例では5/10)は、乱数発生手順G21Aで定めておく。
【0117】
この構成の寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラム21Aは、この発明の第2の寿命見積もり方法の実施に使用され、未破損時間から寿命の上限を、簡単、迅速求めることができ、かつ信頼性の高いものとでき、熟練者でなくても未破損時間から寿命水準を適切に求めることができる。
【0118】
図14と共に、第2の寿命打切り試験からの寿命見積もり装置について説明する。この寿命打切り試験からの寿命見積もり装置は、寿命の上限を見積もる装置である。
この寿命見積もり装置は、上記打切り試験において、一部の試験対象品が破損し残りの対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命の上限を見積もる装置であって、演算処理装置であるコンピュータ1と、このコンピュータ1の出力を画面に表示する表示装置2と、コンピュータ1に入力を行う入力手段3とを備える。
【0119】
コンピュータ1は、表示装置2の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段7EAと、
実行命令の入力に応答して、寿命の上限を見積もる演算を行いその演算結果を上記表示の画面に出力する寿命上限見積もり演算手段22Aとを備える。
【0120】
寿命上限見積もり演算手段22Aは、乱数発生手段23Aと、乱数分析手段24Aと、設定割合寿命非充足調査手段25Aと、異寿命非充足調査手段26Aと、寿命読み取り手段27Aと、読取結果出力手段28Aとを備える。
【0121】
乱数発生手段23Aは、未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させる手段であり、図17の手順G21Aで説明した処理を行う。上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる。
乱数発生手段23は、ワイブル分布特定部23Aaと、乱数発生部23Abとからなる。ワイブル分布特定部23Aaは、図17の手順G211Aで説明した処理を行い、乱数発生部23Abは、図17の手順G212Aで説明した処理を行う。
【0122】
乱数分析手段24Aは、発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間未満になるか否かを調べる手段であり、図17の流れ図における手順G22Aで説明した処理を行う。
【0123】
設定割合寿命非充足調査手段25Aは、上記乱数発生手段23Aおよび上記乱数分析手段24Aの処理を設定回数繰り返し、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間未満になる確率を調べる手段であり、図17の流れ図における手順G23Aで説明した処理を行う。
【0124】
異寿命非充足調査手段26Aは、上記設定割合寿命非充足調査手段25Aの処理を、未破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す手段であり、図17の流れ図における手順G24Aで説明した処理を行う。
【0125】
寿命上限読み取り手段29Aは、異寿命非充足調査手段26Aの処理により得られた寿命と未破損時間未満になる確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命の上限と定める手段であって、図17の流れ図における手順G25Aで説明した処理を行う。
【0126】
読取結果出力手段Aは、寿命上限読み取り手段29Aで読み取った寿命の上限を上記表示装置2に出力させる手段であり、図17の流れ図における手順G26Aで説明した処理を行う。
【0127】
この構成の寿命打切り試験からの寿命見積もり装置によると、この実施形態における第2の寿命見積もり方法を実施して、未破損時間から寿命の上限を、簡単、迅速求めることができ、かつ信頼性の高いものとでき、熟練者でなくても未破損時間から寿命の上限を適切に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】この発明の一実施形態に係る寿命見積もり装置の概略ブロック図である。
【図2】同寿命見積もり装置の概念構成を示すブロック図である。
【図3】同寿命見積もり装置を用いた寿命見積もり方法の概略流れ図である。
【図4】同寿命見積もり方法を実施する寿命見積もりプログラムの概略の流れ図である。
【図5】同プログラムにおける寿命演算手順の詳細を示す流れ図である。
【図6】同流れ図を特定の数値の場合に適用した例を示す概略流れ図である。
【図7】図1の寿命見積もり装置における入力画面例の説明図である。
【図8】図1の寿命見積もり装置における出力画面例の説明図である。
【図9】(A)はワイブル分布の例のグラフ、(B)は寿命分布と全数未破損となる確率の関係を示すグラフである。
【図10】(A)はワイブル分布の例のグラフ、(B)は寿命分布と6個中5個未破損となる確率の関係を示すグラフである。
【図11】ワイブル分布の各パラメータの影響例を示すグラフである。
【図12】ワイブル分布の定め方を示すグラフである。
【図13】この発明の第2の実施形態に係る寿命見積もり装置の概略ブロック図である。
【図14】同寿命見積もり装置の概念構成を示すブロック図である。
【図15】同寿命見積もり装置を用いた寿命見積もり方法の概略流れ図である。
【図16】同寿命見積もり方法を実施する寿命見積もりプログラムの概略の流れ図である。
【図17】同プログラムにおける寿命演算手順の詳細を示す流れ図である。
【図18】同流れ図を特定の数値の場合に適用した例を示す概略流れ図である。
【図19】図13の寿命見積もり装置における入力画面例の説明図である。
【図20】図13の寿命見積もり装置における出力画面例の説明図である。
【図21】所定割合寿命が非充足となる頻度を示すグラフ、(B)は寿命と累積確率の関係を示すグラフである。
【図22】従来の打切りおよび加速試験の手順を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0129】
1…コンピュータ(演算処理手段)
2…表示装置
3…入力装置
7E…促し画面出力手段
21…寿命見積もりプログラム
22…寿命見積もり演算手段
23……乱数発生手段
24…乱数分析手段
25…設定割合寿命調査手段
26…異寿命充足調査手段
27…寿命読み取り手段
28…読取結果出力手段
21A…寿命見積もりプログラム
7EA…促し画面出力手段
22A…寿命上限見積もり演算手段
23A……乱数発生手段
24A…乱数分析手段
25A…設定割合寿命非充足調査手段
26A…異寿命非充足充足調査手段
27A…寿命読み取り手段
28A…読取結果出力手段
【技術分野】
【0001】
この発明は、軸受またはその他の機械部品の寿命試験として、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、打切り時間後の試験継続等を行ったときに、少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命を見積もる方法、装置、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
寿命試験は、軸受等の機械部品の性能を評価するために欠かせない試験の1つである。寿命試験には、大きく分けて(1)実機の使用環境に近い条件で試験を行う実機試験と、(2)比較的過酷な条件で寿命試験を行う加速試験がある。前者は、製品が有限時間内に破損するケースが極めて少ないため、ある目標時間まで破損することなく試験が継続すれば、寿命は問題ないと判断する試験である(以下、このような試験を「打切り試験」と呼ぶ)。一方、後者は、比較的短時間で破損が発生するので、ワイブルプロットで寿命が算出でき(例えば非特許文献1)、その算出寿命から性能の優劣を判定する試験である(以下、このような試験を「加速試験」と呼ぶ)。
【0003】
従来より、寿命試験は経験を積んだ熟練者が行っており、試験条件や試験個数を決める寿命試験の設計と寿命試験結果の解釈に対して経験的に確からしい判断ができたと考えられる。
図22に、従来から行われてきた寿命試験の設計と寿命試験結果の解釈の手順を、打切り試験と加速試験ごとに示す。
また、現在、寿命試験において経験的に判断されているものの詳細を、表1に示す。
【0004】
【表1】
【0005】
なお、ワイブル分布を機械部品の寿命判断に用いるものは、種々の特許文献,非特許文献に提案されている。
【特許文献1】特開2006−040203号公報
【特許文献2】特開2002−277382号公報
【特許文献3】特開2005−226829号公報
【非特許文献1】真壁肇著、信頼性工学入門79、1991年発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
打切り試験は、打切り時間が経過すると要求寿命が満足されたとする試験であるが、納期に余裕がある場合など、打切り時間の経過後も引き続いて試験を継続し、その試験対象品の寿命水準を確認したい場合がある。このような状況は、しばしば発生する。
しかし、従来、このような打切り試験の継続で試験対象品の寿命水準を試算する適切な方法がなかった。
また、上記試験対象品の寿命水準として、対象ロットの寿命が何時間以上であるかという寿命の下限だけでなく、そのロットの寿命の上限が何時間であるかという上限を知りたい場合があるが、このような寿命の上限を試算する方法についても、従来は適切な方法がなかった。
【0007】
この発明の目的は、打切り試験において、少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命水準を、簡単かつ迅速に試算することができ、かつ信頼性の高いものとでき、熟練者でなくても寿命水準を試算することのできる方法、装置、およびその方法の実施のためのコンピュータプログラムを提供することである。
この発明の他の目的は、打切り試験において、少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命の上限を、簡単かつ迅速に試算することができ、かつ信頼性の高いものとでき、熟練者でなくても寿命の上限を試算することのできる方法、装置、およびその方法の実施のためのコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明における第1の寿命打切り試験からの寿命見積もり方法は、軸受またはその他の機械部品または試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、所定信頼度の寿命についての要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命を見積もる方法であって、
コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間を入力する入力過程(E1)と、
上記コンピュータに、寿命を演算させ演算結果を表示装置の画面に表示させるコンピュータ演算処理過程(E2)とを含む。
上記所定信頼度の寿命は、例えばL10寿命(90%の信頼度の寿命)や、L50寿命(50%の信頼度の寿命)等である。未破損時間および寿命は、必ずしも時間の単位でなくても良く、例えば、軸受を回転させて試験を行うときの回転回数等の負荷回数で表示されていても良い。
【0009】
上記コンピュータ演算処理過程(E2)として、
未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順(G21)と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、破損個数分の乱数を短いものから順に除いた残りの乱数が未破損時間以上になるか否かを調べる乱数分析手順(G22)と、
上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返し、この繰り返しの各回おける上記乱数分析手順で調べた未破損時間以上にある確率を調べる設定割合寿命充足調査手順(G23)と、
この設定割合寿命充足調査手順(G23)を、破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命充足調査手順(G24)と、
この異寿命充足調査手順(G24)により得られた寿命と未破損時間以上にある確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命と定める寿命読み取り手順(G25)と、
を実行する。
【0010】
ワイブル分布は、次式、
【0011】
【数1】
【0012】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
によって特定される。
【0013】
軸受等の機械部品の寿命は、ワイブル分布に従うとされている。ワイブル分布は、ワイブルスロープm、尺度因子α、最小寿命γの3つのパラメータを持っており、ワイブルスロープmによって指数分布、対数正規分布、正規分布を表現できる万能分布として知られている。量産される軸受等では、ワイブルスロープは実績値が既知である場合が多く、この発明方法において、ワイブルスロープには、試験対象となる機械部品の実績値を用いることが好ましい。実績値がない場合は、適宜の方法で見積もったワイブルスロープを用いてもよい。最小寿命γは、種々の規格、例えばISO等によって計算方法が定められており、そのように定められたいずれかの計算方法を用いることが好ましい。尺度因子αは、ワイブルスロープの値、要求寿命の信頼度、要求寿命の値、および上記最小寿命γから一義的に決定される演算式があり、その演算式を用いて特定しても良い。
【0014】
この方法によると、未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、破損個数分の乱数を短いものから順に除いた残りの乱数が未破損時間以上になるか否かを調べる。この手順を設定回数、例えば数千回数繰り返し、未破損時間以上にある確率を調べる。この確率を、順次異なる寿命を持つワイブル分布に対して求める。
このようにして得れた寿命と未破損時間以上にある確率の関係は、どのような寿命分布であれば、上記未破損時間まで未破損である確率が高いかということを示している。したがって、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値(L10寿命であれば、100%から90%を引いた10%)となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命と定めることができる。
このように、種々の寿命のワイブル乱数を試験個数だけ発生させ、破損個数分を除いた残存乱数により、どのような寿命分布であれば、上記未破損時間まで未破損である確率が高いかという確率分布を求めるようにしたため、未破損時間から試験対象品の寿命水準を高い信頼度で求めることができる。また、上記の処理はコンピュータシミュレーションとし、コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間を入力するだけで、寿命水準が出力されるようにしたため、熟練を要することなく、簡単に、かつ迅速に、未破損時間から寿命水準を求めることができる。
【0015】
この発明における第1の寿命打切り試験からの寿命見積もり装置は、軸受またはその他の機械部品または試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、所定信頼度の寿命についての要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命を見積もる装置であって、
演算処理装置(1)と、この演算処理装置(1)の出力を画面に表示する表示装置(2)と、上記演算処理装置(2)に入力を行う入力手段(3)とを備える。
【0016】
上記演算処理装置(1)は、上記表示装置(2)の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段(7E)と、
実行命令の入力に応答して、寿命を見積もる演算をし上記表示の画面に出力する寿命見積もり演算手段(22)とを備える。
【0017】
上記寿命見積もり演算手段(22)は、乱数発生手段(23)と、乱数分析手段(24)と、設定割合寿命充足調査手段(25)と、異寿命充足調査手段(26)と、寿命読み取り手段(27)と、読取結果出力手段(28)とを備える。
【0018】
乱数発生手段(23)は、未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させる手段であり、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる。
【0019】
乱数分析手段(24)は、発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、破損個数分の乱数を短いものから順に除いた残りの乱数が未破損時間以上になるか否かを調べる手段である。
【0020】
設定割合寿命充足調査手段(25)は、上記乱数発生手段(23)および上記乱数分析手段(24)の処理を設定回数繰り返し、この繰り返しの各回おける上記乱数分析手段(24)で調べた未破損時間以上にある確率を調べる手段である。
【0021】
異寿命充足調査手段(26)は、上記設定割合寿命充足調査手段(25)の処理を、破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す手段である。
【0022】
寿命読み取り手段(27)は、異寿命充足調査手段(26)の処理により得られた寿命と未破損時間以上にある確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命と定める寿命読み取る手段である。
【0023】
読取結果出力手段は、寿命読み取り手段で読み取った寿命を上記表示装置に出力させる手段である。
【0024】
この構成の寿命打切り試験からの寿命見積もり装置は、この発明の寿命見積もり方法を実施して、未破損時間から寿命水準を、簡単、迅速求めることができ、かつ信頼性の高いものとでき、熟練者でなくても未破損時間から寿命水準を適切に求めることができる。
【0025】
この発明における第1の寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラムは、
コンピュータで実行可能なプログラムであって、
表示装置の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順(F1)と、
実行命令に応答して、寿命を演算し上記表示装置の画面に表示させる寿命演算手順(F2)とを含む。
【0026】
上記寿命演算手順(F2)は、
未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順(G21)と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、破損個数分の乱数を短いものから順に除いた残りの乱数が未破損時間以上になるか否かを調べる乱数分析手順(G22)と、
上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返し、この繰り返しの各回おける上記乱数分析手順で調べた未破損時間以上にある確率を調べる設定割合寿命充足調査手順(G23)と、
この設定割合寿命充足調査手順(G23)を、破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命充足調査手順(G24)と、
この異寿命充足調査手順により得られた寿命と未破損時間以上にある確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命と定める寿命読み取り手順(G25)と、
を含む。
【0027】
この構成の寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラムは、この発明の寿命見積もり方法の実施に使用され、未破損時間から寿命水準を、簡単、迅速求めることができ、かつ信頼性の高いものとでき、熟練者でなくても未破損時間から寿命水準を適切に求めることができる。
【0028】
この発明における第2の寿命打切り試験からの寿命見積もり方法は、寿命の上限、つまりその寿命試験の結果からその寿命以上は期待できないと上限を見積もる方法である。
すなわち、第2の寿命打切り試験からの寿命見積もり方法は、
軸受またはその他の機械部品または試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、所定信頼度の寿命についての要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、一部の試験対象品が破損し残りの対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命の上限を見積もる方法であって、
コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および上記未破損時間(一部の試験対象品が破損し残りの対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間)を入力する入力過程(E1A)と、
上記コンピュータに、上記寿命の上限を演算させ演算結果を表示装置の画面に表示させるコンピュータ演算処理過程(E2A)とを含む。
上記所定信頼度の寿命は、例えばL10寿命(90%の信頼度の寿命)や、L50寿命(50%の信頼度の寿命)等である。未破損時間および寿命は、必ずしも時間の単位でなくても良く、例えば、軸受を回転させて試験を行うときの回転回数等の負荷回数で表示されていても良い。
【0029】
上記コンピュータ演算処理過程(E2A)として、
未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順(G21A)と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になるか否かを調べる乱数分析手順(G22A)と、
上記乱数発生手順(G21A)および上記乱数分析手順(G22A)を設定回数繰り返し、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になる確率を調べる設定割合寿命非充足調査手順(G23A)と、
この設定割合寿命非充足調査手順(G23A)を、上記未破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命非充足調査手順(G24A)と、
この異寿命非充足調査手順(G24A)により得られた寿命と未破損時間以下になる確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命の上限と定める寿命上限読み取り手順(G25A)と、を実行する。
前記100%から減算する所定信頼度は、例えば90%とする。
【0030】
なお、上記寿命上限読み取り手順(G25A)は、より具体的には、上記異寿命非充足調査手順(G24A)により調べた各設定割合寿命毎の未破損時間以下になる確率を、寿命と未破損時間以下になる確率の関係である累積確率分布とし、この累積確率分布から、発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命の上限と定める手順とされる。
【0031】
この方法によると、未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になるか否かを調べる。この手順を設定回数、例えば数千回数繰り返し、未破損時間以上にある確率を調べる。この確率を、順次異なる寿命を持つワイブル分布に対して求める。
このようにして得られた寿命と未破損時間以下にある確率の関係は、どのような寿命分布であれば、最も短い方から破損個数までの試験対象品の寿命が上記未破損時間以下になる確率が高いかということを示している。したがって、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値(L10寿命であれば、100%から90%を引いた10%)となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命の上限と定めることができる。
このように、種々の寿命のワイブル乱数を試験個数だけ発生させ、どのような寿命分布であれば、最も短い方から破損個数までの試験対象品の寿命が未破損時間以下になる確率が高いかという確率分布を求めるようにしたため、未破損時間から試験対象品の寿命の上限を高い信頼度で求めることができる。また、上記の処理はコンピュータシミュレーションとし、コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間を入力するだけで、寿命水準が出力されるようにしたため、熟練を要することなく、簡単に、かつ迅速に、未破損時間から寿命の上限を求めることができる。
【0032】
この発明における第2の寿命打切り試験からの寿命見積もり方法は、第1の寿命打切り試験からの寿命見積もり方法と併用しても良い。
すなわち、第1の寿命打切り試験からの寿命見積もり方法において、一部の試験対象品が破損し残りの試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から、試験対象品のロットの寿命の上限を見積もる方法を含み、この上限を見積もる方法として、上記コンピュータに、上記寿命の上限を演算させ演算結果を表示装置の画面に表示させるコンピュータ演算処理過程(E2A)を含む。
【0033】
上記コンピュータ演算処理過程(E2A)として、
未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順(G21A)と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になるか否かを調べる乱数分析手順(G22A)と、
上記乱数発生手順(G1A)および乱数分析手順(G22A)を設定回数繰り返し、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になる確率を調べる設定割合寿命非充足調査手順(G23A)と、
この設定割合寿命非充足調査手順(G23A)を、上記未破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命非充足調査手順(G24A)と、
この異寿命非充足調査手順(G24A)により得られた寿命と未破損時間以下になる確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命の上限と定める寿命上限読み取り手順(G25A)と、 を実行する。
【0034】
この第1,第2の方法の併用により、試験対象品のロットの寿命の下限と上限の両方を求めることができる。なお、第1,第2の方法の併用する場合、共通する処理、例えば入力処理は、重複して行うことなく、1回で済むようにできる。
【0035】
この発明における第2の寿命打切り試験からの寿命見積もり装置は、寿命の上限を見積もる装置である。
すなわち、第2の寿命打切り試験からの寿命見積もり装置は、
軸受またはその他の機械部品または試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、所定信頼度の寿命についての要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、一部の試験対象品が破損し残りの対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命の上限を見積もる装置であって、
演算処理装置(1)と、この演算処理装置(1)の出力を画面に表示する表示装置(2)と、上記演算処理装置(1)に入力を行う入力手段(3)とを備える。
【0036】
上記演算処理装置(1)は、
上記表示装置の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段(7EA)と、
実行命令の入力に応答して、寿命の上限を見積もる演算を行いその演算結果を上記表示の画面に出力する寿命上限見積もり演算手段(22A)とを備える。
【0037】
上記寿命上限見積もり演算手段(22A)は、
未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手段(23A)と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になるか否かを調べる乱数分析手段(24A)と、
上記乱数発生手段(23A)および上記乱数分析手段(24A)の処理を設定回数繰り返し、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になる確率を調べる設定割合寿命非充足調査手段(25A)と、
この設定割合寿命非充足調査手段(25A)の処理を、破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命非充足調査手段(26A)と、
この異寿命非充足調査手段(26A)により得られた寿命と未破損時間以下になる確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命の上限と定める寿命上限読み取り手段(29A)と、
この手段(29A)で読み取った寿命の上限を上記表示装置(2)に出力させる読取結果出力手段(28A)と、
を備える。
【0038】
この構成の寿命打切り試験からの寿命見積もり装置は、この発明の第2の寿命見積もり方法を実施して、未破損時間から寿命の上限を、簡単、迅速に求めることができ、かつ信頼性の高いものとでき、熟練者でなくても未破損時間から寿命の上限を適切に求めることができる。
【0039】
この発明における第2の寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラムは、寿命の上限を見積もるプログラムである。
すなわち、第2の寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラムは、
コンピュータで実行可能なプログラムであって、
表示装置の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順(F1A)と、
実行命令に応答して、上記寿命の上限を演算し上記表示装置の画面に表示させる寿命上限演算手順(F2A)とを含む。
【0040】
上記寿命上限演算手順(F1A)は、
上記未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順(G21A)と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になるか否かを調べる乱数分析手順(G22A)と、
上記乱数発生手順(G21A)および上記乱数分析手順(G22A)を設定回数繰り返し、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になる確率を調べる設定割合寿命非充足調査手順(G23A)と、
この設定割合寿命非充足調査手順(G23A)を、破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命非充足調査手順(G24A)と、
この異寿命非充足調査手順(G24A)により得られた寿命と未破損時間以下になる確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命の上限と定める寿命上限読み取り手順(G25A)と、を含む。
【0041】
この構成の寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラムは、この発明の第2の寿命見積もり方法の実施に使用され、未破損時間から寿命の上限を、簡単、迅速求めることができ、かつ信頼性の高いものとでき、熟練者でなくても未破損時間から寿命水準を適切に求めることができる。
【発明の効果】
【0042】
この発明の第1の寿命打切り試験からの寿命見積もり方法、装置、プログラムによると、種々の寿命のワイブル乱数を試験個数だけ発生させ、破損個数分を除いた残存乱数により、どのような寿命分布であれば、上記未破損時間まで未破損である確率が高いかという確率分布を求めるようにしたため、未破損時間から試験対象品の寿命水準を高い信頼度で求めることができる。また、コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間を入力するだけで、寿命水準が出力されるようにしたため、熟練を要することなく、簡単に、かつ迅速に、未破損時間から寿命水準を求めることができる。
この発明の第2の寿命打切り試験からの寿命見積もり方法、装置、プログラムによると、種々の寿命のワイブル乱数を試験個数だけ発生させ、どのような寿命分布であれば、最も短い方から破損個数までの試験対象品の寿命が未破損時間以下になる確率が高いかという確率分布を求めるようにしたため、未破損時間から試験対象品の寿命の上限を高い信頼度で求めることができる。また、コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間を入力するだけで、寿命の上限が出力されるようにしたため、熟練を要することなく、簡単に、かつ迅速に、未破損時間から寿命の上限を求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
この発明の第1の実施形態を説明する。この寿命打切り試験からの寿命見積もり方法は、軸受を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、打切り時間後の試験継続等を行ったときに、少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命を見積もる方法である。なお、軸受の他の機械部品や、軸受またはその他の機械部品の試験片の打切り試験における打切り時間を見積もる場合にも適用できる。
この実施形態の寿命打切り試験からの寿命見積もり方法は、例えば、一つのロットの軸受の中から一部の軸受を抜き取って打切り寿命試験を行い、そのロットの寿命を確認する試験等に適用される。
【0044】
以下、この実施形態を図面と共に説明する。この寿命打切り試験からの寿命見積もり方法は、図1に示すコンピュータ1に、寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラム21を実行させることで行う。コンピュータ1はパーソナルコンピュータ等からなり、中央処理装置4およびメモリ5を有し、所定のオペレーションシステムによって動作するものである。コンピュータ1には、液晶表示装置等の画面によって表示可能な表示装置2と、キーボードやマウス等の入力装置3が接続され、あるいは付属して設けられている。コンピュータ1、表示装置2、入力装置3、および寿命見積もりプログラム21により、図2に各機能達成手段をブロックで示した寿命見積もり装置が構成される。同図の寿命見積もり装置の構成については、後に説明する。
寿命見積もりプログラム21は、コンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図4および図5に流れ図で示す手順を備えるものである。同図の内容は、後に説明する。
【0045】
この寿命見積もり方法は、図2に示すように、コンピュータ1に対して所定の情報を入力する入力過程E1と、コンピュータ1で演算処理を行って演算結果を出力するコンピュータ演算処理過程E2とからなる。
【0046】
入力過程E1では、図7に示すように所定の入力情報の入力を促す入力画面2aが、コンピュータ1の出力によって表示装置2に表示される。この画面では、入力情報として打切り試験の対象となる軸受のワイブルスロープの値、試験開始時の試験個数、未破損個数および未破損時間の入力を促す表示を行わせる。ワイブルスロープの値には、試験対象となる型番の軸受における実績値を入力する。
実績値は10個以上の試験で得た結果を用いることが望ましく、より好ましくは20個以上の試験結果である。
【0047】
図3のコンピュータ演算処理過程E2では、入力された未破損時間,未破損個数等からその試験対象品を含むロットの寿命水準となる寿命を演算し、その演算結果を、図8のように出力画面2bに表示する。すなわち、少なくともいえる寿命の計算結果が同図のように出力される。
【0048】
図1の寿命見積もりプログラム21は、コンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図4,図5に流れ図で示す手順を備える。図4に示すように、寿命見積もりプログラム21は、促し画面出力手順F1と寿命演算手順F2とでなり、促し画面出力手順F1では、図7と共に前述した入力画面2aを出力する。この入力画面2aに対して、上記各入力情報が入力手段3から入力され、かつ入力画面2aのOKキーのクリック等によって実行命令が入力手段3から入力されると、寿命演算手順F2が実行される。同図の入力画面2aに対して入力する過程が、図3の入力過程A1であり、同図のコンピュータ演算処理過程E2は図4の寿命演算手順F2を実行する過程である。
【0049】
寿命演算手順F2は、図5に流れ図で示す各手順で構成される。この流れ図には、各手順G21〜G26毎の具体的な処理例を併記してある。
【0050】
理解の容易のため、図5の流れ図を説明する前に、同図の流れ図の処理につき、全数未破損である場合に限定した処理を、具体的数値例と共に、図6と共に説明する。
【0051】
図6は、継続している全数未破損の打切り試験の途中結果から寿命を算出するための手順を示す。今、目標品質がL10寿命で1000時間を保証するための試験を行っている状況を考える。納期が3ヶ月(2100時間)であったため、試験個数を6個用意して全数打切り時間が1860時間の打切り試験を開始した。
試験は破損が発生することなく継続し、全数打切り時間が1860時間を経過したので目標品質を保証できるという結果が得られた。試験を終了してもよいが、試験機を他の調査で今すぐ使用するという状況ではないので、その製品の寿命水準を把握しておくという目的で更に試験を継続するということになった。
【0052】
今、試験が継続して3000時間が経過し、試験片6個全数未破損という状況から言える寿命を試算する。まず、現在の全数未破損時間である3000の1/10倍(=300時間)のL10寿命を持つワイブル分布(ワイブルスロープは実績から設定して1.85)から乱数を6個発生し(手順G21′)、得られた乱数6個すべてが3000時間以上になるかどうかを調べる(手順G22′)。
【0053】
次に、この作業を5000回繰り返し、5000回中何回の頻度で3000時間を越える状況が発生するのかを調べる(G23′)。これらは、ワイブルスロープ1.85、L10寿命300時間の寿命である6個の試験片を寿命試験したときに、どのくらいの確率で3000時間全数未破損になるかを調査していることに対応する。
【0054】
さらに、この確率の調査を3000時間よりも1/10、2/10、3/10…11/10 …200/10倍のL10寿命を持つワイブル分布で行う(G24′)。このように得られた確率につき、横軸をそのL10寿命、縦軸を3000時間全数未破損の確率としたものが図9(A)になる。この図は、どのような寿命分布であれば3000時間全数未剥離になる確率が高いかということを示している。10%の頻度でしか3000時間全数未剥離のデータが得られない寿命分布は、L10寿命が1530時間のものである。したがって、3000時間全数未剥離のデータが得られる場合は、90%の確率でL10寿命が15630時間以上であるといえる。このように、発生確率が10%(L10寿命の信頼度90%を100%から引いた値)に対応する時間を読み取って、その試験対象品のロットのL10寿命が15630時間以上であると読み取る(G25′)。
以上が全数打切り試験の途中結果から寿命を算出する方法である。
【0055】
次に、破損が生じた場合を含む寿命打切り試験から言える寿命について説明する。上記の表1の打切り試験の解釈(2) の項目に示すように、打切り試験の破損状況が複雑でも、その試験片の寿命水準を確認したい状況を想定している。例えば、試験個数10個の試験を行い、その内の2個の試験片は破損したが、その他の8個の試験片は未破損であったため、目標品質を満たすことができたが、引き続き試験を継続して、その試験片の寿命水準を確かめたい状況を想定している。
【0056】
ここでは、総試験軸受中に少数の軸受に破損が発生した状況から寿命を試算する方法について説明する。図5の流れ図は、破損が生じた場合を含む寿命打切り試験から言える寿命の演算手順を示す。
図5の流れ図において、具体例を示す注釈部分を参照して説明する。基本的な手順は、図6と共に前述した全数打切り試験結果から寿命を見積もる手順と同様である。
【0057】
以下、説明を簡単にするため、具体例を挙げる。目標品質がL10寿命で1000時間を保証するための試験を行っている状況を考える。納期が5ヶ月(3600時間)であったため、試験個数を6個用意して全数打切り時間が1860時間の打切り試験を開始した。試験を継続している途中、1個の試験片が1000時間で破損した。1000時間は、試験を中止する基準である全数打切り時間の設定値1860時間よりも短いが、試験を中止する基準(要求品質が満たされないとして試験を中止する基準時間)412時間を越えていたため、引き続き試験を継続することになった。目標品質を満たすためには、残存試験片の打切り時間が2626時間になるが、納期的には問題ない状況である。試験を継続した結果、残存試験片が2626時間で破損しなかったため、その製品は目標品質を満たすことができた。試験を終了してもよいが、試験機を他の調査で今すぐ使用するという状況ではないので、その製品の寿命水準を把握しておくという目的で更に試験を継続するということになった。
なお、全数未破損時の打切り時間、一部破損時の打切り時間、および試験中止基準時間は、適宜の方法で見積もることができるが、ここでは説明を省略する。
【0058】
今、試験を継続して3000時間経過し、試験片6個中5個が未破損という状況から言える寿命を試算する。
まず、現在の全数未破損時間である3000時間よりも、適宜の設定割合、例えば1/10倍(=300時間)のL10寿命を持つワイブル分布(ワイブルスロープは実績から設定して1.85)から乱数を6個発生する(手順G21)。
次に、得られた6個の乱数を昇順に並び替え、最も小さな乱数以外の5個のデータが3000時間以上になるかどうかを調べる(手順G22)。
【0059】
次に、この作業を設定回数(この例では5000回)繰り返し、5000回中何回の頻度で3000時間を越える状況が発生するのかを調べる(手順G23)。
これらは、ワイブルスロープ1.85、L10寿命300時間の寿命である6個の試験片を寿命試験したときに、一番短寿命である試験片以外の5個の試験片がどのくらいの確率で3000時間未破損になるかを調査していることに対応する。
【0060】
さらに、この確率の調査を3000時間の1/10、2/10、3/10…11/10 …200/10倍のL10寿命を持つワイブル分布で行う(手順G24)。これは、この方法で寿命演算できる最短寿命を3000時間の1/10、最長寿命を3000時間の200/10倍と設定した場合の演算範囲である。
【0061】
このように順次割合変更しながら、上記手順G23で得た確率について、横軸をL10寿命、縦軸を3000時間6個中5個未破損の確率としたものを作図したものが、図10(B)になる。この図は、どのような寿命分布であれば、最も短寿命である試験軸受以外の5個の試験片が3000時間全数未剥離になる確率が高いかということを示している。10%(L10寿命の信頼度である90%を100%から引いた値)の頻度でしか、3000時間6個中5個未剥離のデータが得られない寿命分布は、L10寿命が1099時間のものである。
【0062】
したがって、最も短寿命である試験片以外の5個の試験片が3000時間全数未剥離になる状況は、90%の確率でL10寿命が1099時間以上である状況といえる。このように、寿命分布と、残存乱数が未破損時間以上全数未剥離になる確率の関係から、(100%)−(信頼度)の時間を読み取り、その軸受のロットの水準となる寿命とする(手順G25)。このように読み取った寿命を、表示装置2の出力画面2bに表示する(手順G26)。
【0063】
以上が総試験軸受中の少数の試験軸受に破損が発生した状況から寿命を算出する方法である。ここで、この状況の試験は、1000時間全数未破損という状況と考えることもできるし、6個中5個の試験片が3000時間未破損という状況と考えることもできるので、どちらの状況で寿命を試算すればよいかという疑問が残る。このような時には、いずれを採用するかを適宜設定しておけば良い。例えば、2つの状況で寿命の試算を行い、寿命が長く見積もられるほうを採用してもよい。表2に6個の試験片が1000,2000,3000時間全数未剥離であったとき試算できる寿命と6個中5個の試験片が1000,2000,3000時間未剥離であったとき試算できる寿命を示す。
【0064】
【表2】
【0065】
6個中全数の未破損時間1000時間であった時試算できる寿命は、6個中5個の試験片が3000時間未剥離であったとき試算できる寿命よりも短くなることが分かる。この場合、例えば、寿命が長く見積もられるもの(6個中5個の試験片が3000時間未剥離であったとき試算できる寿命)を採用することにする。
【0066】
表3に試験結果の別の例を示す。
【0067】
【表3】
【0068】
この試験結果は、(1) 6個中6個が3050時間以上、(2) 6個中5個が4000時間以上、(3) 6個中4個6000時間以上の3通りの解釈が可能である。表4にそれぞれの解釈で計算を行った結果を示す。
【0069】
【表4】
【0070】
計算の結果、6個中4個が6000時間以上であると解釈するほうが、最も長寿命側の判定ができる。したがって、この試験結果からは、L10寿命が1742時間以上であるといえる。
【0071】
図4,図5に示した寿命見積もりプログラム21についての上記の説明は、具体的に数値を例にとって説明したが、この寿命見積もりプログラム21は、整理すると、次の手順により構成される。
【0072】
この実施形態の寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラム21は、
コンピュータで実行可能なプログラムであって、
表示装置の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順(G1)と、
実行命令に応答して、寿命を演算し上記表示装置の画面に表示させる寿命演算手順(G2)とを含む。
【0073】
上記寿命演算手順(G2)は、
未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順(G21)と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、破損個数分の乱数を短いものから順に除いた残りの乱数が未破損時間以上になるか否かを調べる乱数分析手順(G22)と、
上記乱数発生手順(G1)および上記乱数分析手順(G22)を設定回数繰り返し、この繰り返しの各回おける上記乱数分析手順で調べた未破損時間以上にある確率を調べる設定割合寿命充足調査手順(G23)と、
この設定割合寿命充足調査手順(G23)を、破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命充足調査手順(G24)と、
この異寿命充足調査手順(G24)により得られた寿命と未破損時間以上にある確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命と定める寿命読み取り手順(G25)と、
寿命出力手順(G26)とを含む。
【0074】
設定割合寿命充足調査手順(G23)は、上記乱数発生手順(G1)および上記乱数分析手順(G22)を設定回数繰り返させる手順(G231)と、この繰り返しの各回おける上記乱数分析手順で調べた未破損時間以上にある確率を調べる確率調査の手順(G232)とでなる。
【0075】
異寿命充足調査手順(G24)は、設定割合寿命充足調査手順(G23)を、所定の最長寿命に達するまで繰り返させる繰り返し手順(G241)と、繰り返し毎に上記設定割合を順次変更する割合変更手順(G242)とでなる。なお、設定割合の初期値(上記の具体例では1/10)は、手順G21で定めておく。
【0076】
上記乱数発生手順(手順B21)の詳細について説明する。この手順B21は、ワイブル分布特定手順(G211)と、その特定したワイブル分布に従ってワイブル乱数を発生させる手順(G212)とでなる。ワイブル分布特定手順(G211)では、次のワイブル分布を特定する。
一般に軸受の寿命分布は次式1)のワイブル分布に従うと言われている。
【0077】
【数2】
【0078】
ただし、m:ワイブルスロープ、α:尺度因子、γ:最小寿命、
ワイブル分布は、3つのパラメータを持っており、ワイブルスロープmによって指数分布、対数正規分布、正規分布を表現できる万能分布として知られている。参考として、図11に各種パラメータを変化させた時のワイブル分布の変化を示す。ワイブルスロープmは、分布の形状を支配するパラメータであり、この値が小さいほどばらつきの大きい分布ということができる。尺度因子αは、横軸(寿命)のスケールを変化させるもので、この値が大きいほど寿命は相対的に長くなる。最小寿命γは、寿命分布の横軸(寿命)を単にシフトさせるものである。
【0079】
この実施形態では、ワイブル乱数を発生させるが、この乱数を発生させるためにはワイブル分布の3つのパラメータを決定する必要がある。決め方の手順は、例えば以下のようになる。
1)ワイブルスロープmを実績から決定する。
2)乱数を発生させたい分布の信頼度(例えばL10寿命であるか、あるいはL50寿
命であるか)を決定する。
3)信頼度から求めたワイブルスロープmから、最小寿命γを所定の数式を使って決定
する。例えば、L10寿命またはL50寿命から求めた尺度因子αから、
最小寿命γを、例えば、以下の2)式を使って決定する。
この式は、1990年制定のISOの最小寿命であり、実験値からの回帰式である。
【0080】
【数3】
【0081】
これは、R≦10の値で、R=0(L10寿命でのa1)のとき、この式は1になるという式である。過去のISOの最少寿命考慮の式では、L10寿命以下の寿命は、この式にL10寿命を書けた値ということで定義されている。Rは信頼度に対応する値(100−Rが信頼度となる値)である。
なお、最小寿命の定め方については、各種の規格(例えばISO)において、時代と共に変更される場合があるが、規格の変更に伴い、実施時の規格に応じた定め方を採用すれば良い。また、最小寿命は、材料試験条件によっても変化するのでより一般的な式で記述するほうが良いとの主張もあり、適宜の値を用いれば良い。
【0082】
ワイブル乱数の発生(手順G212)につき説明する。乱数とは、定性的にはでたらめな数列であって、発生頻度が均一(等確率)で、その発生に規則性がない(無規則性)というものであるが、完全な乱数を発生させることは不可能である。そこで、コンピュータで発生させることのできる疑似乱数を使う。簡易な乱数発生アルゴリズムでは、例えば10進法で20桁ぐらいの周期性が見られるが、周期性が6千桁以上の周期性となるものもあり、このような周期性の少ない乱数発生アルゴリズムを用いることが好ましい。
【0083】
この実施形態では、一様な乱数ではなく、ワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を発生させる。このため発生方法には工夫が必要になる。確率密度関数が複雑な場合、その分布に従う乱数を発生するには棄却法と呼ばれる方法を用いればよく、この実施形態においても、棄却法を用いる。
確率密度関数f(x)の変域が図12のように、0からX0 の範囲にあるとみなされるものとし、その変域内でのf(x)の最大値をMとする。RNを区間〔0,1 〕での一様擬似乱数とするとX0 ・RNにより、区間〔0,x0〕での一様擬似乱数xiを発生することができる。同様にして、M・RNにより、区間〔0,M 〕での一様擬似乱数yiを発生することができる。そこで、このようにして発生させた乱数xi,yiがf(xi)> yi となる条件を満足する場合には、乱数xiは与えられた確率密度分布に従うものとして採用し、満足しなければ、その乱数xiを不採用とする。この作業を繰り返し、確率密度分布に従う確率で乱数xiを採用し、確率密度分布に従う乱数の数列を作っていく方法を棄却法という。この方法は、条件に合わない乱数を捨てることになるので乱数発生法としては効率がよくないが、よい一様乱数さえ得られれば原理的に正しい数列が得られる方法である。
【0084】
図2と共に寿命打切り試験からの寿命見積もり装置につき説明する。この寿命見積もり装置は、打切り試験において、少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命を見積もる装置であって、演算処理装置であるコンピュータ1と、このコンピュータ1の出力を画面に表示する表示装置2と、コンピュータ1に入力を行う入力装置3とを備える。
コンピュータ1は、表示装置2の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段7Eと、
実行命令の入力に応答して、寿命を見積もる演算を行いその演算結果を上記表示の画面に出力する寿命見積もり演算手段22とを備える。
【0085】
寿命見積もり演算手段22は、乱数発生手段23と、乱数分析手段24と、設定割合寿命充足調査手段25と、異寿命充足調査手段26と、寿命読み取り手段27と、読取結果出力手段28とを備える。
【0086】
乱数発生手段23は、未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させる手段であり、図5の手順G21で説明した処理を行う。上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる。
乱数発生手段23は、ワイブル分布特定部23aと、乱数発生部23bとからなる。ワイブル分布特定部23aは、図5の手順G211で説明した処理を行い、乱数発生部23bは、図5の手順G212Dで説明した処理を行う。
【0087】
乱数分析手段24は、発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、破損個数分の乱数を短いものから順に除いた残りの乱数が未破損時間以上になるか否かを調べる手段であり、図5の流れ図における手順G22で説明した処理を行う。
【0088】
設定割合寿命充足調査手段25は、上記乱数発生手段23および上記乱数分析手段24の処理を設定回数繰り返し、この繰り返しの各回おける上記乱数分析手段24で調べた未破損時間以上にある確率を調べる手段であり、図5の流れ図における手順G23で説明した処理を行う。
【0089】
異寿命充足調査手段26は、上記設定割合寿命充足調査手段26の処理を、破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す手段であり、図5の流れ図における手順G24で説明した処理を行う。
【0090】
寿命読み取り手段27は、異寿命充足調査手段26の処理により得られた寿命と未破損時間以上にある確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命と定める寿命読み取る手段であり、図5の流れ図における手順G25で説明した処理を行う。
【0091】
読取結果出力手段28は、寿命読み取り手段27で読み取った寿命を上記表示装置2に出力させる手段であり、図5の流れ図における手順G26で説明した処理を行う。
【0092】
この発明の第2の寿命見積もり方法、装置、プログラムに係る実施形態を、図13ないし図21と共に説明する。なお、この実施形態において、特に説明した事項の他は、図1ないし図12に示す第1の実施形態と同様である。
この実施形態は、寿命打切り試験の結果から、寿命の上限、つまりその試験結果からはそれ以上の寿命が期待できないという判断を行う方法等に係る。
【0093】
この実施形態の寿命打切り試験からの寿命見積もり方法も、第1の実施形態と同じく、軸受を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、適用される。
ただし、この方法は、一部の試験対象品が破損し残りの対象品が破損することなく試験を継続している場合に適用され、未破損時間から試験対象品のロットの寿命の上限を見積もる方法である。
軸受の他の機械部品や、軸受またはその他の機械部品の試験片の打切り試験における打切り時間を見積もる場合にも適用できる。
この実施形態の寿命打切り試験からの寿命見積もり方法も、例えば、一つのロットの軸受の中から一部の軸受を抜き取って打切り寿命試験を行い、そのロットの寿命を確認する試験等に適用される。
【0094】
以下、この実施形態を図面と共に説明する。この寿命打切り試験からの寿命見積もり方法は、図13に示すコンピュータ1に、寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラム21Aを実行させることで行う。コンピュータ1はパーソナルコンピュータ等からなり、中央処理装置4およびメモリ5を有し、所定のオペレーションシステムによって動作するものである。コンピュータ1には、液晶表示装置等の画面によって表示可能な表示装置2と、キーボードやマウス等の入力装置3が接続され、あるいは付属して設けられている。コンピュータ1、表示装置2、入力装置3、および寿命見積もりプログラム21Aにより、図14に各機能達成手段をブロックで示した寿命見積もり装置が構成される。
寿命見積もりプログラム21Aは、コンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図16および図17に流れ図で示す手順を備えるものである。
なお、この実施形態における寿命見積もりプログラム21Aは、第1の実施形態における寿命見積もりプログラム21と同じコンピュータ1で実行され、例えば第1の実施形態における寿命計算の後に、この実施形態による寿命の上限の計算を行うようにすることが望ましい。すなわち、第1の実施形態に係る寿命打切り試験からの寿命見積もり方法と、第2の実施形態に係る寿命打切り試験からの寿命見積もり方法とは、併用することができる。その場合、オペレータの入力事項のうち、重複する入力事項は一度で行うようにし、入力処理を兼用することができるできる。この第1,第2の寿命見積もり方法併用により、試験対象品のロットの寿命の下限値と上限値との両方を知ることができる。
【0095】
この寿命見積もり方法は、図15に示すように、コンピュータ1に対して所定の情報を入力する入力過程E1Aと、コンピュータ1で演算処理を行って演算結果を出力するコンピュータ演算処理過程E2Aとからなる。
【0096】
入力過程E1では、図19に示すように所定の入力情報の入力を促す入力画面2aAが、コンピュータ1の出力によって表示装置2に表示される。この入力画面2aA、およびこの入力画面に対して行う入力は、第1の実施形態(図1ないし図12)と同様であるので、重複する説明を省略する。ただし、この実施形態では、見積もる寿命は、L10寿命およびL50寿命の上限であり、その旨の表示が行われる。
【0097】
図15のコンピュータ演算処理過程E2Aでは、入力された未破損時間,未破損個数等からその試験対象品を含むロットの寿命の上限(その試験結果からはその寿命以上は期待できないという値)を演算し、その演算結果を、図20のように出力画面2bAに表示する。すなわち、ロットの寿命の上限値が、同図のように出力される。この上限値は、L10寿命およびL50寿命の各々について出力される。
【0098】
図13の寿命見積もりプログラム21Aは、コンピュータ1で実行可能なプログラムであって、図16,図17に流れ図で示す手順を備える。図16に示すように、寿命見積もりプログラム21Aは、促し画面出力手順F1Aと寿命上限演算手順F2Aとでなり、促し画面出力手順F1では、図19と共に前述した入力画面2aAを出力する。この入力画面2aAに対して、上記各入力情報が入力手段3から入力され、かつ入力画面2aAのOKキーのクリック等によって実行命令が入力手段3から入力されると、寿命上限演算手順F2Aが実行される。同図の入力画面2aAに対して入力する過程が、図15の入力過程E1Aであり、同図のコンピュータ演算処理過程E2Aは図16の寿命上限演算手順F2Aを実行する過程である。
【0099】
寿命上限演算手順F2Aは、図17に流れ図で示す各手順で構成される。この流れ図には、各手順G21A〜G26A毎の具体的な処理例を併記してある。
【0100】
理解の容易のため、図17の流れ図を説明する前に、同図の流れ図の処理につき、1個破損である場合に限定した処理を、具体的数値例と共に、図18と共に説明する。
【0101】
図18は、継続している全数未破損の打切り試験の途中結果から寿命の上限を算出するための手順を示す。
今、6個の試験片の試験が継続して3000時間が経過し、その中の1個の試験片が破損したという状況からいえる寿命範囲を試算する。なお、第1の実施形態により、6個す ての試験片が3000時間以上であった場合の少なくともいえる寿命(90%の確率で保証できる下限のL10寿命)は1530時間以上であると求めることができる。
以下、図18と共に、寿命の上限を求めていく。現在、6個中1個の試験片が3000時間で破損しているが、その破損時間の0.5倍(=1500時間)のL10寿命を持つワイブル分布(ワイブルスロープは実績から設定して1.85)から乱数を6個発生させる(G21A′)。
得られた乱数6個を昇順に並び替え、最も小さい乱数が3000時間以下になるか否かを調べる(G22A)。
次に、この作業を5000回繰り返し、最も小さい乱数が3000時間以下になる状況が5000回中何回の頻度で発生するのかの確率を調べる(G23A′)。
これらは、ワイブルスロープ1.85、L10寿命1500時間の寿命である6個の試験片を寿命試験したときに、最も短い寿命の試験片ではどのくらいの確率で3000時間以下のデータが出るのかを調査していることに対応する。
さらに、この確率の調査を3000時間よりも、0.5、1、1.5…25倍のL0寿命を持つワイブル分布で行う(G24A′)。
この調査の結果から累積確率分布を求め、10%の確率分布となる時間を読み取る(G25A′)。すなわち、横軸をそのL10寿命、縦軸を最も短い試験片の寿命が3000時間以下になる確率としたものが、図21(B)である。この図は、どのような寿命分布であれば、最も短い試験片の寿命が3000時間以下になる確率が高いかということを示している。
この図から、L10寿命が7316時間の寿命分布を持つ試験片から6個中1個の試験片が3000時間以下の破損が生じることは10%のレアケースである。したがって、6個中1個の試験片が3000時間以下のデータが得られる試験片群の寿命は、90%の確率で、L10寿命が7316時間以下であるといえる。これより、寿命の範囲は1530時間以上7316時間以下であるといえる。
【0102】
以上が1個以上の破損データが得られた場合の寿命の上限を計算する方法である。この方法を応用すれば、2個の破損データが得られた場合でも寿命上限を計算することができる。これらの計算は、上記の寿命見積もりプログラム21,21Aを使って行うが、その入力と出力の結果を図19,図20に示す。ここで、ワイブルスロープは試験個数が10個以上の実際の試験から求めた実績値を入力することが望ましい。
以上のことから明らかなように、この寿命上限の計算方法によれば、その結果からその寿命以上は期待できないという判断が可能になる。
【0103】
次に、図17と共に、寿命上限演算手順F2A、つまり1個以上の破損データが得られた場合の寿命の上限を計算する手順の詳細を説明する。同図の流れ図において、具体例を示す注釈部分を参照して説明する。基本的な手順は、図18と前述した手順と同様である。
【0104】
図17につき、説明が重複するが、図18につき説明した例を具体例として用いる。以下の説明における括弧内の数値は具体例である。
いま、n個(6個)の試験片の試験が継続して所定の未破損時間(3000時間)が経過し、その中のm個(1個)の試験片が破損したという状況から言える寿命範囲を試算する。
【0105】
まず、ステップG21A(乱数発生手順)の処理を説明する。n個中m個(6個中1個)の試験片が所定の未破損時間T(3000時間)で破損しているが、そのm個の試験片が破損した破損時間である上記未破損時間Tに対する設定割合(0.5倍=(1500時間))のL10寿命を持つワイブル分布(ワイブルスロープは実績から設定して1.85から乱数をn個(6個)発生させる。この処理中のワイブル分布の特定(G211A)および乱数発生(G212A)の方法は、第1の実施形態で説明した方法と同様である。
【0106】
ついで、乱数分析手順(G22A)では、得られた乱数n個(6個)を昇順に並び替え、最も小さい方から破損個数m個までの乱数が上記未破損時間T(3000時間)以下になるか否かを調べる。破損個数mが1個の場合は、一番小さい乱数が3000時間以下になるか否かを調べる。
【0107】
次に、設定割合寿命非充足調査手順(G23A)では、上記乱数発生手順(G21A)と乱数分析手順(G22A)を設定回数(5000回)繰り返し(G231A)、最も小さい方から破損個数mまでの乱数が上記未破損時間T以下になるか否かを調べる(G232A)。破損個数mが1個である場合は、一番小さい乱数が3000時間以下になる状況が5000回中何回の頻度で発生するのかの確率を調べる。
これらは、ワイブルスロープ1.85、L10寿命が、(設定割合)×T(1500時間)の寿命であるn個(6個)の試験片を寿命試験したときに、最も小さい方から破損個数mまでの試験片ではどのくらいの確率で未破損時間T(3000時間)以下のデータが出るのかを調査していることに対応する。
【0108】
さらに、異寿命充足調査手順(G24A)では、上記確率の調査(G23A)を、上記未破損時間T(m個の破損が生じた破損時間)(3000時間)よりも、0.5、1、1.5…25倍のL0寿命を持つワイブル分布で行う。
【0109】
寿命上限読み取り手順(G25A)では、上記異寿命充足調査手順(G24A)の結果から累積確率分布を求め、その発生確率が100%から所定信頼度(90%)を減算した値(10%)の確率分布となる寿命時間を読み取る(G25A)。
すなわち、横軸をそのL10寿命、縦軸を最も短い試験片の寿命が未破損時間T(3000時間)以下になる確率としたものが、図21(B)である。この図は、どのような寿命分布であれば、最も短い方から破損個数m(1個)までの試験片の寿命が未破損時間T(3000時間)以下になる確率が高いかということを示している。
この図から、L10寿命が7316時間の寿命分布を持つ試験片から6個中1個の試験片が3000時間以下の破損が生じることは10%のレアケースである。したがって、6個中1個の試験片が3000時間以下のデータが得られる試験片群の寿命は、90%の確率で、L10寿命が7316時間以下であるといえる。これより、寿命の範囲は1530時間以上7316時間以下であるといえる。
【0110】
寿命上限出力手順(G26A)では、寿命上限読み取り手順(G25A)で読み取った寿命の上限を、表示装置2の出力画面2bに表示する。
以上が、寿命上限演算手順F2A、つまり1個以上の破損データが得られた場合の寿命の上限を計算する手順である。
【0111】
このように、種々の寿命のワイブル乱数を試験個数だけ発生させ、どのような寿命分布であれば、最も短い方から破損個数までの試験対象品の寿命が未破損時間以下になる確率が高いかという確率分布を求めるようにしたため、未破損時間から試験対象品の寿命の上限を高い信頼度で求めることができる。また、上記の処理はコンピュータシミュレーションとし、コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間を入力するだけで、寿命水準が出力されるようにしたため、熟練を要することなく、簡単に、かつ迅速に、未破損時間から寿命の上限を求めることができる。
【0112】
図17,図18に示した寿命見積もりプログラム21Aについての上記の説明は、具体的に数値を例にとって説明したが、この寿命見積もりプログラム21Aは、整理すると、次の手順で構成される。
【0113】
この実施形態の寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラム21Aは、寿命の上限を コンピュータで実行可能なプログラムであって、
表示装置の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順(G1A)と、
実行命令に応答して、寿命を演算し上記表示装置の画面に表示させる寿命上限演算手順(G2A)とを含む。
【0114】
上記寿命上限演算手順(G2A)は、
未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順(G21A)と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間未満になるか否かを調べる乱数分析手順(G22A)と、
上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返し、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間未満になる確率を調べる設定割合寿命非充足調査手順(G23A)と、
この設定割合寿命非充足調査手順(G23A)を、上記未破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命非充足調査手順(24A)と、
この異寿命非充足調査手順により得られた寿命と未破損時間未満になる確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命の上限と定める寿命上限読み取り手順(G25A)と、
寿命上限出力手順(G26A)とを含む。
【0115】
設定割合寿命非充足調査手順(G23A)は、上記乱数発生手順(G21A)および上記乱数分析手順(G22A)を設定回数繰り返させる手順(G231A)と、この繰り返しの各回おける上記乱数分析手順で調べた最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間未満になる確率を調べる確率調査の手順(G232A)とでなる。
【0116】
異寿命非充足調査手順(G24A)は、設定割合寿命非充足調査手順(G23A)を、所定の最長寿命に達するまで繰り返させる繰り返し手順(G241A)と、繰り返し毎に上記設定割合を順次変更する割合変更手順(G242A)とでなる。なお、設定割合の初期値(上記の具体例では5/10)は、乱数発生手順G21Aで定めておく。
【0117】
この構成の寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラム21Aは、この発明の第2の寿命見積もり方法の実施に使用され、未破損時間から寿命の上限を、簡単、迅速求めることができ、かつ信頼性の高いものとでき、熟練者でなくても未破損時間から寿命水準を適切に求めることができる。
【0118】
図14と共に、第2の寿命打切り試験からの寿命見積もり装置について説明する。この寿命打切り試験からの寿命見積もり装置は、寿命の上限を見積もる装置である。
この寿命見積もり装置は、上記打切り試験において、一部の試験対象品が破損し残りの対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命の上限を見積もる装置であって、演算処理装置であるコンピュータ1と、このコンピュータ1の出力を画面に表示する表示装置2と、コンピュータ1に入力を行う入力手段3とを備える。
【0119】
コンピュータ1は、表示装置2の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段7EAと、
実行命令の入力に応答して、寿命の上限を見積もる演算を行いその演算結果を上記表示の画面に出力する寿命上限見積もり演算手段22Aとを備える。
【0120】
寿命上限見積もり演算手段22Aは、乱数発生手段23Aと、乱数分析手段24Aと、設定割合寿命非充足調査手段25Aと、異寿命非充足調査手段26Aと、寿命読み取り手段27Aと、読取結果出力手段28Aとを備える。
【0121】
乱数発生手段23Aは、未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させる手段であり、図17の手順G21Aで説明した処理を行う。上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる。
乱数発生手段23は、ワイブル分布特定部23Aaと、乱数発生部23Abとからなる。ワイブル分布特定部23Aaは、図17の手順G211Aで説明した処理を行い、乱数発生部23Abは、図17の手順G212Aで説明した処理を行う。
【0122】
乱数分析手段24Aは、発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間未満になるか否かを調べる手段であり、図17の流れ図における手順G22Aで説明した処理を行う。
【0123】
設定割合寿命非充足調査手段25Aは、上記乱数発生手段23Aおよび上記乱数分析手段24Aの処理を設定回数繰り返し、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間未満になる確率を調べる手段であり、図17の流れ図における手順G23Aで説明した処理を行う。
【0124】
異寿命非充足調査手段26Aは、上記設定割合寿命非充足調査手段25Aの処理を、未破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す手段であり、図17の流れ図における手順G24Aで説明した処理を行う。
【0125】
寿命上限読み取り手段29Aは、異寿命非充足調査手段26Aの処理により得られた寿命と未破損時間未満になる確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命の上限と定める手段であって、図17の流れ図における手順G25Aで説明した処理を行う。
【0126】
読取結果出力手段Aは、寿命上限読み取り手段29Aで読み取った寿命の上限を上記表示装置2に出力させる手段であり、図17の流れ図における手順G26Aで説明した処理を行う。
【0127】
この構成の寿命打切り試験からの寿命見積もり装置によると、この実施形態における第2の寿命見積もり方法を実施して、未破損時間から寿命の上限を、簡単、迅速求めることができ、かつ信頼性の高いものとでき、熟練者でなくても未破損時間から寿命の上限を適切に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】この発明の一実施形態に係る寿命見積もり装置の概略ブロック図である。
【図2】同寿命見積もり装置の概念構成を示すブロック図である。
【図3】同寿命見積もり装置を用いた寿命見積もり方法の概略流れ図である。
【図4】同寿命見積もり方法を実施する寿命見積もりプログラムの概略の流れ図である。
【図5】同プログラムにおける寿命演算手順の詳細を示す流れ図である。
【図6】同流れ図を特定の数値の場合に適用した例を示す概略流れ図である。
【図7】図1の寿命見積もり装置における入力画面例の説明図である。
【図8】図1の寿命見積もり装置における出力画面例の説明図である。
【図9】(A)はワイブル分布の例のグラフ、(B)は寿命分布と全数未破損となる確率の関係を示すグラフである。
【図10】(A)はワイブル分布の例のグラフ、(B)は寿命分布と6個中5個未破損となる確率の関係を示すグラフである。
【図11】ワイブル分布の各パラメータの影響例を示すグラフである。
【図12】ワイブル分布の定め方を示すグラフである。
【図13】この発明の第2の実施形態に係る寿命見積もり装置の概略ブロック図である。
【図14】同寿命見積もり装置の概念構成を示すブロック図である。
【図15】同寿命見積もり装置を用いた寿命見積もり方法の概略流れ図である。
【図16】同寿命見積もり方法を実施する寿命見積もりプログラムの概略の流れ図である。
【図17】同プログラムにおける寿命演算手順の詳細を示す流れ図である。
【図18】同流れ図を特定の数値の場合に適用した例を示す概略流れ図である。
【図19】図13の寿命見積もり装置における入力画面例の説明図である。
【図20】図13の寿命見積もり装置における出力画面例の説明図である。
【図21】所定割合寿命が非充足となる頻度を示すグラフ、(B)は寿命と累積確率の関係を示すグラフである。
【図22】従来の打切りおよび加速試験の手順を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0129】
1…コンピュータ(演算処理手段)
2…表示装置
3…入力装置
7E…促し画面出力手段
21…寿命見積もりプログラム
22…寿命見積もり演算手段
23……乱数発生手段
24…乱数分析手段
25…設定割合寿命調査手段
26…異寿命充足調査手段
27…寿命読み取り手段
28…読取結果出力手段
21A…寿命見積もりプログラム
7EA…促し画面出力手段
22A…寿命上限見積もり演算手段
23A……乱数発生手段
24A…乱数分析手段
25A…設定割合寿命非充足調査手段
26A…異寿命非充足充足調査手段
27A…寿命読み取り手段
28A…読取結果出力手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受またはその他の機械部品または試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、所定信頼度の寿命についての要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命を見積もる方法であって、
コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間を入力する入力過程と、
上記コンピュータに、寿命を演算させ演算結果を表示装置の画面に表示させるコンピュータ演算処理過程とを含み、
上記コンピュータ演算処理過程として、
未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、破損個数分の乱数を短いものから順に除いた残りの乱数が未破損時間以上になるか否かを調べる乱数分析手順と、
上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返し、この繰り返しの各回おける上記乱数分析手順で調べた未破損時間以上にある確率を調べる設定割合寿命充足調査手順と、
この設定割合寿命充足調査手順を、破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命充足調査手順と、
この異寿命充足調査手順により得られた寿命と未破損時間以上にある確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命と定める寿命読み取り手順と、
を実行する寿命打切り試験からの寿命見積もり方法。
【請求項2】
軸受またはその他の機械部品または試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、所定信頼度の寿命についての要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命を見積もる装置であって、
演算処理装置と、この演算処理装置の出力を画面に表示する表示装置と、上記演算処理装置に入力を行う入力手段とを備え、
上記演算処理装置は、
上記表示装置の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段と、
実行命令の入力に応答して、寿命を見積もる演算を行いその演算結果を上記表示の画面に出力する寿命見積もり演算手段とを備え、
上記寿命見積もり演算手段は、
未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手段と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、破損個数分の乱数を短いものから順に除いた残りの乱数が未破損時間以上になるか否かを調べる乱数分析手段と、
上記乱数発生手段および上記乱数分析手段の処理を設定回数繰り返し、この繰り返しの各回おける上記乱数分析手段で調べた未破損時間以上にある確率を調べる設定割合寿命充足調査手段と、
この設定割合寿命充足調査手段の処理を、破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命充足調査手段と、
この異寿命充足調査手段により得られた寿命と未破損時間以上にある確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命と定める寿命読み取り手段と、
この手段で読み取った寿命を上記表示装置に出力させる読取結果出力手段と、
を備えた寿命打切り試験からの寿命見積もり装置。
【請求項3】
コンピュータで実行可能なプログラムであって、
表示装置の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順と、
実行命令に応答して、寿命を演算し上記表示装置の画面に表示させる寿命演算手順とを含み、
上記寿命演算手順は、
未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、破損個数分の乱数を短いものから順に除いた残りの乱数が未破損時間以上になるか否かを調べる乱数分析手順と、
上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返し、この繰り返しの各回おける上記乱数分析手順で調べた未破損時間以上にある確率を調べる設定割合寿命充足調査手順と、
この設定割合寿命充足調査手順を、破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命充足調査手順と、
この異寿命充足調査手順により得られた寿命と未破損時間以上にある確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命と定める寿命読み取り手順と、
を含む寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラム。
【請求項4】
軸受またはその他の機械部品または試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、所定信頼度の寿命についての要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、一部の試験対象品が破損し残りの試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命の上限を見積もる方法であって、
コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および上記未破損時間を入力する入力過程と、
上記コンピュータに、上記寿命の上限を演算させ演算結果を表示装置の画面に表示させるコンピュータ演算処理過程とを含み、
上記コンピュータ演算処理過程として、
未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になるか否かを調べる乱数分析手順と、
上記乱数発生手順および乱数分析手順を設定回数繰り返し、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になる確率を調べる設定割合寿命非充足調査手順と、
この設定割合寿命非充足調査手順を、上記未破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命非充足調査手順と、
この異寿命非充足調査手順により得られた寿命と未破損時間以下になる確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命の上限と定める寿命上限読み取り手順と、
を実行する寿命打切り試験からの寿命見積もり方法。
【請求項5】
請求項4において、前記100%から減算する所定信頼度が90%である寿命打切り試験からの寿命見積もり方法。
【請求項6】
請求項1において、一部の試験対象品が破損し残りの試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から、試験対象品のロットの寿命の上限を見積もる方法を含み、この上限を見積もる方法として、上記コンピュータに、上記寿命の上限を演算させ演算結果を表示装置の画面に表示させるコンピュータ演算処理過程を含み、
上記コンピュータ演算処理過程として、
未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になるか否かを調べる乱数分析手順と、
上記乱数発生手順および乱数分析手順を設定回数繰り返し、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になる確率を調べる設定割合寿命非充足調査手順と、
この設定割合寿命非充足調査手順を、上記未破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命非充足調査手順と、
この異寿命非充足調査手順により得られた寿命と未破損時間以下になる確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命の上限と定める寿命上限読み取り手順と、
を実行する寿命打切り試験からの寿命見積もり方法。
【請求項7】
軸受またはその他の機械部品または試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、所定信頼度の寿命についての要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、一部の試験対象品が破損し残りの試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命の上限を見積もる装置であって、
演算処理装置と、この演算処理装置の出力を画面に表示する表示装置と、上記演算処理装置に入力を行う入力手段とを備え、
上記演算処理装置は、
上記表示装置の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および上記未破損時間の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段と、
実行命令の入力に応答して、寿命の上限を見積もる演算を行いその演算結果を上記表示の画面に出力する寿命上限見積もり演算手段とを備え、
上記寿命上限見積もり演算手段は、
未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手段と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になるか否かを調べる乱数分析手段と、
上記乱数発生手段および上記乱数分析手段の処理を設定回数繰り返し、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になる確率を調べる設定割合寿命非充足調査手段と、
この設定割合寿命非充足調査手段の処理を、破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命非充足調査手段と、
この異寿命非充足調査手段により得られた寿命と未破損時間以下になる確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命の上限と定める寿命上限読み取り手段と、
この手段で読み取った寿命の上限を上記表示装置に出力させる読取結果出力手段と、
を備えた寿命打切り試験からの寿命見積もり装置。
【請求項8】
コンピュータで実行可能なプログラムであって、
表示装置の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順と、
実行命令に応答して、上記寿命の上限を演算し上記表示装置の画面に表示させる寿命上限演算手順とを含み、
上記寿命上限演算手順は、
上記未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になるか否かを調べる乱数分析手順と、
上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返し、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になる確率を調べる設定割合寿命非充足調査手順と、
この設定割合寿命非充足調査手順を、破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命非充足調査手順と、
この異寿命非充足調査手順により得られた寿命と未破損時間以下になる確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命の上限と定める寿命上限読み取り手順と、
を含む寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラム。
【請求項1】
軸受またはその他の機械部品または試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、所定信頼度の寿命についての要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命を見積もる方法であって、
コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間を入力する入力過程と、
上記コンピュータに、寿命を演算させ演算結果を表示装置の画面に表示させるコンピュータ演算処理過程とを含み、
上記コンピュータ演算処理過程として、
未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、破損個数分の乱数を短いものから順に除いた残りの乱数が未破損時間以上になるか否かを調べる乱数分析手順と、
上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返し、この繰り返しの各回おける上記乱数分析手順で調べた未破損時間以上にある確率を調べる設定割合寿命充足調査手順と、
この設定割合寿命充足調査手順を、破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命充足調査手順と、
この異寿命充足調査手順により得られた寿命と未破損時間以上にある確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命と定める寿命読み取り手順と、
を実行する寿命打切り試験からの寿命見積もり方法。
【請求項2】
軸受またはその他の機械部品または試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、所定信頼度の寿命についての要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、少なくとも一部の試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命を見積もる装置であって、
演算処理装置と、この演算処理装置の出力を画面に表示する表示装置と、上記演算処理装置に入力を行う入力手段とを備え、
上記演算処理装置は、
上記表示装置の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段と、
実行命令の入力に応答して、寿命を見積もる演算を行いその演算結果を上記表示の画面に出力する寿命見積もり演算手段とを備え、
上記寿命見積もり演算手段は、
未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手段と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、破損個数分の乱数を短いものから順に除いた残りの乱数が未破損時間以上になるか否かを調べる乱数分析手段と、
上記乱数発生手段および上記乱数分析手段の処理を設定回数繰り返し、この繰り返しの各回おける上記乱数分析手段で調べた未破損時間以上にある確率を調べる設定割合寿命充足調査手段と、
この設定割合寿命充足調査手段の処理を、破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命充足調査手段と、
この異寿命充足調査手段により得られた寿命と未破損時間以上にある確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命と定める寿命読み取り手段と、
この手段で読み取った寿命を上記表示装置に出力させる読取結果出力手段と、
を備えた寿命打切り試験からの寿命見積もり装置。
【請求項3】
コンピュータで実行可能なプログラムであって、
表示装置の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順と、
実行命令に応答して、寿命を演算し上記表示装置の画面に表示させる寿命演算手順とを含み、
上記寿命演算手順は、
未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、破損個数分の乱数を短いものから順に除いた残りの乱数が未破損時間以上になるか否かを調べる乱数分析手順と、
上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返し、この繰り返しの各回おける上記乱数分析手順で調べた未破損時間以上にある確率を調べる設定割合寿命充足調査手順と、
この設定割合寿命充足調査手順を、破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命充足調査手順と、
この異寿命充足調査手順により得られた寿命と未破損時間以上にある確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命と定める寿命読み取り手順と、
を含む寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラム。
【請求項4】
軸受またはその他の機械部品または試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、所定信頼度の寿命についての要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、一部の試験対象品が破損し残りの試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命の上限を見積もる方法であって、
コンピュータに対し、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および上記未破損時間を入力する入力過程と、
上記コンピュータに、上記寿命の上限を演算させ演算結果を表示装置の画面に表示させるコンピュータ演算処理過程とを含み、
上記コンピュータ演算処理過程として、
未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になるか否かを調べる乱数分析手順と、
上記乱数発生手順および乱数分析手順を設定回数繰り返し、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になる確率を調べる設定割合寿命非充足調査手順と、
この設定割合寿命非充足調査手順を、上記未破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命非充足調査手順と、
この異寿命非充足調査手順により得られた寿命と未破損時間以下になる確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命の上限と定める寿命上限読み取り手順と、
を実行する寿命打切り試験からの寿命見積もり方法。
【請求項5】
請求項4において、前記100%から減算する所定信頼度が90%である寿命打切り試験からの寿命見積もり方法。
【請求項6】
請求項1において、一部の試験対象品が破損し残りの試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から、試験対象品のロットの寿命の上限を見積もる方法を含み、この上限を見積もる方法として、上記コンピュータに、上記寿命の上限を演算させ演算結果を表示装置の画面に表示させるコンピュータ演算処理過程を含み、
上記コンピュータ演算処理過程として、
未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になるか否かを調べる乱数分析手順と、
上記乱数発生手順および乱数分析手順を設定回数繰り返し、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になる確率を調べる設定割合寿命非充足調査手順と、
この設定割合寿命非充足調査手順を、上記未破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命非充足調査手順と、
この異寿命非充足調査手順により得られた寿命と未破損時間以下になる確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命の上限と定める寿命上限読み取り手順と、
を実行する寿命打切り試験からの寿命見積もり方法。
【請求項7】
軸受またはその他の機械部品または試験片からなる試験対象品を所定の使用環境条件におき、目標時間である打切り時間まで破損することなく試験が継続すれば、所定信頼度の寿命についての要求寿命を満足すると判断する打切り試験において、一部の試験対象品が破損し残りの試験対象品が破損することなく試験を継続している未破損時間から試験対象品のロットの寿命の上限を見積もる装置であって、
演算処理装置と、この演算処理装置の出力を画面に表示する表示装置と、上記演算処理装置に入力を行う入力手段とを備え、
上記演算処理装置は、
上記表示装置の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および上記未破損時間の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手段と、
実行命令の入力に応答して、寿命の上限を見積もる演算を行いその演算結果を上記表示の画面に出力する寿命上限見積もり演算手段とを備え、
上記寿命上限見積もり演算手段は、
未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手段と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になるか否かを調べる乱数分析手段と、
上記乱数発生手段および上記乱数分析手段の処理を設定回数繰り返し、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になる確率を調べる設定割合寿命非充足調査手段と、
この設定割合寿命非充足調査手段の処理を、破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命非充足調査手段と、
この異寿命非充足調査手段により得られた寿命と未破損時間以下になる確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命の上限と定める寿命上限読み取り手段と、
この手段で読み取った寿命の上限を上記表示装置に出力させる読取結果出力手段と、
を備えた寿命打切り試験からの寿命見積もり装置。
【請求項8】
コンピュータで実行可能なプログラムであって、
表示装置の画面に、入力情報として、試験対象品のワイブルスロープの値、試験対象品の試験個数、未破損の試験対象品の個数である未破損個数または破損個数、および未破損時間の入力を促す表示を行わせる促し画面出力手順と、
実行命令に応答して、上記寿命の上限を演算し上記表示装置の画面に表示させる寿命上限演算手順とを含み、
上記寿命上限演算手順は、
上記未破損時間に対する設定割合の寿命を持つワイブル分布に従った乱数であるワイブル乱数を試験個数分発生させ、上記ワイブル分布には上記入力情報のワイブルスロープの値を用いる乱数発生手順と、
発生した試験個数分のワイブル乱数のうち、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になるか否かを調べる乱数分析手順と、
上記乱数発生手順および上記乱数分析手順を設定回数繰り返し、最も小さい方から破損個数までの乱数が上記未破損時間以下になる確率を調べる設定割合寿命非充足調査手順と、
この設定割合寿命非充足調査手順を、破損時間よりも短い所定の最短寿命から次第に長い所定の最長寿命まで、繰り返し毎に、上記設定割合を順次変更した寿命を持つワイブル分布に対して繰り返す異寿命非充足調査手順と、
この異寿命非充足調査手順により得られた寿命と未破損時間以下になる確率の関係から、その発生確率が、100%から所定信頼度を減算した値となる寿命を読み取って試験対象品のロットの寿命の上限と定める寿命上限読み取り手順と、
を含む寿命打切り試験からの寿命見積もりプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2008−145414(P2008−145414A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171679(P2007−171679)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
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