説明

打設用コンクリートの予冷却制御方法

【課題】 冷却装置の小容量化並びに簡易化を図り、予冷却のための温度管理の精度を高め、管理手法の容易化を果たし得る打設用コンクリートの予冷却制御方法を提供する。
【解決手段】 予めトラックアジテータ1のドラム2内にレディーミクストコンクリートを投入し攪拌しつつ液化ガスを液化ガス噴射ノズル3から噴射しその噴射量を調節することで、レディーミクストコンクリートの降下温度に対する液化ガスの所要噴射量の関係を算定し、ドラム2内のレディーミクストコンクリートの温度に対応する温度を検知するための表面検知部4,4…をドラム2の表面部の複数箇所に設定し、非接触式温度計で各表面検知部4,4…の温度を計測して各表面部温度からレディーミクストコンクリートの温度を換算的に計測可能と成し、前記算定値及び前記各表面部温度の実測値に基づいてドラム2内に噴射する液化ガスの噴射量を制御して所定温度に予冷却制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体窒素等の低温液化ガスを冷却熱源に用いてトラックアジテータ内に投入している錬り上がりコンクリート(以下、レディーミクストコンクリートという)を効果的に予冷却(プレクーリング)するための制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的小規模のダム建設などで使用される打設用コンクリートとしては、既設バッチングプラントのミキサから搬送される購入レディーミクストコンクリートが利用されることが多く、特に夏場の高温環境の下ではレディーミクストコンクリートの温度管理が十分になされていない場合にはコンクリート打設後にコンクリートにひび割れが多発する。そこでコンクリートの打設温度を所定の温度範囲に維持する必要があり、夏季には液化ガス例えば液体窒素で予冷却するが、従来ではバッチングプラントのミキサで練混ぜ中のコンクリートに液化ガスを投入してプレクーリングさせるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−333182号公報(特に特許請求の範囲、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが上記先行技術では、一度に比較的多量のコンクリートを混練中に冷却することから、大容量の冷却装置を必要として、装置が大掛かりとなるし、温度管理を精度よく行い難い問題が有る。更に、バッチングプラントからトラックに小分けして輸送する過程での温度変動にも対処しなければならなくて温度管理面でより複雑化することは避けられない。
【0005】
このような先行技術が抱える問題点に鑑みて本発明はその解決を図るためとして成されたものであり、従って、本発明の目的は、冷却装置の小容量化並びに簡易化を図り、併せてプレクーリングのための温度管理の精度を高めると共に管理手法の容易化をも果たし得る打設用コンクリートの予冷却制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するべく、本発明における請求項1の発明は、トラックアジテータ1のドラム2内に投入し攪拌中の所定量のレディーミクストコンクリートに対し、液化ガスを液化ガス噴射ノズル3により噴射量と噴射時間の少なくとも一方を制御可能に噴射することにより所定温度に冷却された打設用レディーミクストコンクリートを製造するに際し、所定量のレディーミクストコンクリートを予めドラム2と同容量のテスト用ドラム内に投入して予備実験することにより、ドラム2におけるレディーミクストコンクリートの降下温度に対する液化ガスの所要噴射量と所要噴射時間の少なくとも一方の関係を示す予冷却情報を事前に算定する一方、前記ドラム2内で攪拌中のレディーミクストコンクリートの温度に対応関係を成す表面温度を検知するための表面検知部4,4…を当該ドラム2の表面部における該回転軸方向に適宜離隔し配置した複数箇所にそれぞれ設定して非接触式温度計により各表面検知部4,4…の温度を計測することにより、それらの各表面部温度から攪拌中のレディーミクストコンクリートの温度を換算的に計測可能と成して、前記予冷却情報のデータから得られるフィードバック値及びドラム2の各表面部温度の実測値に基づいてドラム2内に噴射する液化ガスの噴射量と噴射時間の少なくとも一方を制御することを特徴とする打設用コンクリートの予冷却制御方法である。
【0007】
また、本発明に係る請求項2の発明は、上記請求項1記載の打設用コンクリートの予冷却制御方法に関して、前記予冷却情報のデータから得られるフィードバック値及びドラム2の各表面部温度の実測値に加えて、外気との温度差及びトラックアジテータ1による搬送時間を制御信号要素としてなる構成としたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る請求項3の発明は、上記請求項1又は2に記載の打設用コンクリートの予冷却制御方法に関して、前記表面検知部4,4…が熱伝導率の良好な部材からなる小片をドラム2の表面部に貼着して形成される構成としたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る請求項4の発明は、上記請求項1又は2に記載の打設用コンクリートの予冷却制御方法に関して、前記表面検知部4,4…が、熱伝導率の良好な部材からなる環状帯をドラム2の表面部に該回転軸と略直交差する方向に周回させ貼着して形成される構成としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上のような手段を備えてなる本発明によれば、大掛かりなバッチングプラントのミキサに比べて小容量であるドラム2内のレディーミクストコンクリートに対して、これに対応した小能力の液化ガス噴射ノズル3により必要最少量の液化ガスを供給することで、所期通りのプレクーリングが行えることから、プレクーリングに要する冷却装置は小型かつ簡易なものでよく、更に、冷却効率が高くて温度管理を精度よく容易に行い得る利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態の一つについて図面を参照しつつ以下に詳細説明する。図1は本発明の実施の形態に係るプレクーリング作業の態様を示す立面図、図2はレディーミクストコンクリートの降下温度に対する液体窒素使用量の関係を示す予冷却情報としての線図、図3は冷却温度と液体窒素の所要噴射量・噴射時間との対応関係を示す予冷却情報としての表をそれぞれ図示したものであり、また、図4は本発明の実施の形態に係る制御の流れを示すフローチャートを図示したものである。
【0012】
図1において、符号1で示される部材は一般に広く用いられるトラックアジテータの例であり、コンクリート搬送容量が約4.5m3 のドラム2を搭載していて、レディーミクストコンクリート製造基地でドラム2内に投入された所定量のレディーミクストコンクリートを攪拌しながら走行・移送してダム建設現場などの需要場所に搬送するための車両である。
【0013】
レディーミクストコンクリート製造基地において所定量のレディーミクストコンクリートをドラム2内に投入する場合に、特に夏場では投入の直後にレディーミクストコンクリートをプレクーリングする必要があることから、レディーミクストコンクリートが投入された直後のトラックアジテータ1を所定位置に停車させたところで、該位置の近くに設置した作業架台5に搭乗している作業員9によって、液化ガスである液体窒素を当該ドラム2内に供給させるようにしている。その際、液体窒素の供給は、作業員9が操作する液化ガス噴射ノズル3により噴射量と噴射時間の少なくとも一方の制御可能に噴射することにより成されるが、ドラム2の上端部に開口するコンクリート投入口に連ねた投入ホッパーに液化ガス噴射ノズル3の先端噴射口を臨ませて、該ノズル3の引金を適宜開閉動操作することで、攪拌中のレディーミクストコンクリートに対してその量に見合った所定量の液体窒素を直接噴射させることができる。
【0014】
この場合、液化ガス噴射ノズル3への液体窒素の供給は、例えば図1に図示の如く液体窒素ローリー6から供給配管7を用いて液化ガス噴射ノズル3に直接接続することにより、プレクーリングのためとしての特別の設備は上記ノズル3以外に何等必要としなく、簡単な装置で対応することが可能である。なお、図中の符号8で示される部材は、液化ガス噴射ノズル3による液体窒素の噴射の際に発生する白煙を吹き飛ばすための白煙処理用ファンであり、前記投入ホッパーの個所を通してドラム内部が良好に視認できるようにする上で好適な装置である。
【0015】
ところで、液化ガス噴射ノズル3による液体窒素の供給に当たっては、以下に述べるようにして液化ガス噴射量の調節が行われるのである。
即ち、予めドラム2と同容量のテスト用ドラムを用意してそのドラム2内に所定量のレディーミクストコンクリートを投入し、かつ、攪拌中の状態に保持しておき、液化ガス噴射ノズル3の先端噴射口から液体窒素を時間当たり一定の所定噴射量に調節しながら噴射させて、漸次増量して行く過程において攪拌中のレディーミクストコンクリートの実際の温度を計測する。このようにして事前に計測した結果得られる情報は例えば図2,3に示される通りであって、テスト用ドラムにおけるレディーミクストコンクリート降下温度に対する液化ガスの所要噴射量と所要噴射時間の少なくとも一方の関係を示す予冷却情報として演算回路に記憶させることにより、その後に行われるレディーミクストコンクリート予冷却制御運転の際のフィードバック値(演算情報)として備えさせる。なお、前記テスト用ドラムとしては、事前測定に備えて別途用意したものに限らなく、実際に搬送用として整備されているトラックアジテータの内から選定しものであってもよいことは勿論である。
【0016】
一方、前記テスト用ドラムには、その表面部における該回転軸方向に適宜離隔し配置した複数箇所、例えば中心軸方向の胴長を約20等分割した離隔箇所において、当該ドラム内で攪拌中のレディーミクストコンクリートの温度を間接的に検知するための表面検知部4,4…をそれぞれ設定させていて、それらの各表面検知部4,4…の温度を非接触式温度計(赤外線方式温度測定器など)によって離れた個所から計測できるように形成していて、これによりレディーミクストコンクリートの実質温度をこれと対応関係を成すドラム表面部の温度で換算的に計測することができるようになっている。
【0017】
上記表面検知部4,4…には、例えば熱伝導率の良好な部材、一例としてアルミニウムの板体を材料として環状帯に形成したものをドラム2の金属性胴体の表面部に該回転軸と略直交差する方向に周回させ貼着したものが用いられる。また、上記環状帯に形成したものに替えてアルミニウム板を材料とし方形状、円形状に形成される小片をドラム2の表面部の所定箇所に分散して貼着したものであっても良い。
【0018】
このように表面検知部4,4…を設けることで、それらの各表面部温度から攪拌中のレディーミクストコンクリート温度を換算的にかつ精度よく計測が可能となり、ドラム内部に温度検出手段をわざわざ設けることを要しないので冷却のための装置の簡易化及び操作面の利便性が果たされる。
【0019】
続いて、本発明に係る打設用レディーミクストコンクリートの予冷却制御の運転態様を図1乃至図4に基づき説明する。
上述する各表面検知部4,4…がドラム2の所定個所に取り付けられたトラックアジテータ1に対して、レディーミクストコンクリート製造基地において所定量のレディーミクストコンクリートをドラム2に投入した後に攪拌を続けさせる。一方、コンクリート投入作業に相前後して事前実験として液体窒素の投入時間(投入量と同義)とコンクリート温度降下量との関係になる予冷却情報(図2、図3参照)を制御系統に把握させる(図4のステップS1)。
【0020】
そしてドラム2内に投入したレディーミクストコンクリートの温度を測定する(同ステップS2)が、この場合実際の温度或いは換算的な表面温度の測定によって可能である。続いて図2、3に基づく予冷却情報から液体窒素の投入時間を決定する(ステップS3)。この決定投入時間に基づいて、液化ガス噴射ノズル3の先端噴射口から液体窒素を時間当たり一定の所定噴射量、例えば820g/secの噴射量、に調節しながらドラム2内に噴射させて液体窒素によるレディーミクストコンクリートのプレクーリングを行わせる(ステップS4)。
【0021】
液体窒素の所定投入時間噴射によるレディーミクストコンクリートのプレクーリングを行った直後にドラム2内で攪拌中のレディーミクストコンクリートの温度を測定する(同ステップS5)。即ち、ドラム2の各表面検知部4,4…の温度を赤外線放射温度計によって換算的に測定する。そして、所定温度までレディーミクストコンクリート温度が低下しているかをチェックし(同ステップS6)、低下している場合には液体窒素の噴射を止めてプレクーリングを終了し、一方、低下していない場合には、図2、3に基づく予冷却情報から液体窒素の投入時間を再決定して(ステップS7)、所定温度に低下するまでプレクーリングを続行する。
【0022】
このようにすることで、ドラム2内で攪拌中のレディーミクストコンクリートのプレクーリングを確実かつ精度良く行わせることが可能である。なお、図2、図3に基づく予冷却情報から液体窒素の投入時間を決定するに当たって、外気との温度差及びトラックアジテータ1による需要箇所までの搬送時間をも考慮して投入時間(投入量)を加減するように調節させることは輸送の実態に即した温度を維持させ得る点で好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係るプレクーリング作業の態様を示す立面図。
【図2】レディーミクストコンクリートの降下温度に対する液体窒素使用量の関係を示す線図。
【図3】冷却温度と液体窒素の所要噴射量・噴射時間との対応関係を示す表。
【図4】本発明の実施の形態に係る制御の流れを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0024】
1…トラックアジテータ、 2…ドラム、 3…液化ガス噴射ノズル、
4…表面検知部、 5…作業架台、 6…液化ガスローリー、
7…供給配管、 8…白煙処理用ファン、 9…作業員。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックアジテータ(1)のドラム(2)内に投入した攪拌中の所定量のレディーミクストコンクリートに対し、液化ガスを液化ガス噴射ノズル(3)により噴射量と噴射時間の少なくとも一方を制御可能に噴射することにより所定温度に冷却された打設用レディーミクストコンクリートを攪拌するに際し、所定量のレディーミクストコンクリートを予め同容量のテスト用ドラム内に投入して予備実験することにより、ドラム(2)におけるレディーミクストコンクリートの降下温度に対する液化ガスの所要噴射量と所要噴射時間の少なくとも一方の関係を示す予冷却情報を事前に算定する一方、前記ドラム(2)内で攪拌中のレディーミクストコンクリートの温度に対応関係を成す表面温度を検知するための表面検知部(4),(4)…を当該ドラム(2)の表面部における該回転軸方向に適宜離隔し配置した複数箇所にそれぞれ設定して非接触式温度計により各表面検知部(4),(4)…の温度を計測することにより、それらの各表面部温度から攪拌中のレディーミクストコンクリートの温度を換算的に計測可能と成して、前記予冷却情報のデータから得られるフィードバック値及びドラム(2)の各表面部温度の実測値に基づいてドラム(2)内に噴射する液化ガスの噴射量と噴射時間の少なくとも一方を制御することを特徴とする打設用コンクリートの予冷却制御方法。
【請求項2】
前記予冷却情報のデータから得られるフィードバック値及びドラム(2)の各表面部温度の実測値に加えて、外気との温度差及びトラックアジテータ(1)による搬送時間を制御信号要素としてなる請求項1記載の打設用コンクリートの予冷却制御方法。
【請求項3】
前記表面検知部(4),(4)…が、熱伝導率の良好な部材からなる小片をドラム(2)の表面部に貼着して形成される請求項1又は2に記載の打設用コンクリートの予冷却制御方法。
【請求項4】
前記表面検知部(4),(4)…が、熱伝導率の良好な部材からなる環状帯をドラム(2)の表面部に該回転軸と略直交差する方向に周回させ貼着して形成される請求項1又は2に記載の打設用コンクリートの予冷却制御方法。

【図2】
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【図4】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−130971(P2007−130971A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−328734(P2005−328734)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(000158312)岩谷産業株式会社 (137)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【Fターム(参考)】