打音検査におけるピーク周波数の抽出方法
【課題】打音検査による良品および不良品の判断精度を向上させるべく、打音データの周波数解析データから、抽出対象となる周波数帯域において、音圧強度がピークとなるときの周波数を精度良く抽出することができる、打音検査におけるピーク周波数の抽出方法を提供する。
【解決手段】周波数解析データFDに対して、最小探索周波数Fminと最大探索周波数Fmaxによって区切られる仮探索範囲Skを設定する工程と、仮探索範囲Skにおいて、最小探索周波数Fminを始端とする一定幅Lの第一範囲S1で音圧強度が最低となる第一周波数F1を抽出するとともに、最大探索周波数Fmaxを終端とする一定幅Lの第二範囲S2で音圧強度が最低となる第二周波数F2を抽出し、第一周波数F1と第二周波数F2によって区切られる本探索範囲Srを設定する工程と、本探索範囲Srにおいて、音圧強度が最大となるピーク周波数Fpを抽出する工程と、を備える。
【解決手段】周波数解析データFDに対して、最小探索周波数Fminと最大探索周波数Fmaxによって区切られる仮探索範囲Skを設定する工程と、仮探索範囲Skにおいて、最小探索周波数Fminを始端とする一定幅Lの第一範囲S1で音圧強度が最低となる第一周波数F1を抽出するとともに、最大探索周波数Fmaxを終端とする一定幅Lの第二範囲S2で音圧強度が最低となる第二周波数F2を抽出し、第一周波数F1と第二周波数F2によって区切られる本探索範囲Srを設定する工程と、本探索範囲Srにおいて、音圧強度が最大となるピーク周波数Fpを抽出する工程と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打音検査におけるピーク周波数の抽出方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製品の内部欠陥を非破壊で検査する方法として、打音検査による方法が知られており、例えば、以下に示す特許文献1に開示され公知となっている。
係る特許文献1に示される従来技術では、基準周波数データとして、予め実験等により良品である製品の打音データから音圧強度と固有(共振)周波数との関係を求めておき、この基準周波数データと検査対象の製品から採取した打音データから求めた固有周波数の解析データとを比較して、検査対象製品から得た固有周波数がピークとなる周波数(以下、ピーク周波数と記載する)が、基準周波数データのピーク周波数よりも予め設定された所定の周波数幅以上乖離している場合、または、基準周波数データのピーク周波数と検査対象製品のピーク周波数の位置(帯域)が一致しない場合には、検査対象製品に不良があると判断するようにしている。
【0003】
しかしながら、打音データから求めた固有周波数の解析データには、ノイズが含まれている場合が多く、このノイズの影響によって、固有周波数のピーク周波数を正確に抽出することができない場合があった。このため、検査対象製品が良品であるにもかかわらず、不良品であると判断してしまったり、反対に、不良品を良品と判断してしまったりする場合もあった。このため、固有周波数の解析データからピーク周波数を正確に抽出することができる技術の開発が望まれていた。
【特許文献1】特開2006−242580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、係る現状を鑑みてなされたものであり、打音検査による良品および不良品の判断精度を向上させるべく、打音データの周波数解析データから、抽出対象となる周波数帯域において、音圧強度がピークとなるときの周波数を精度良く抽出することができる、打音検査におけるピーク周波数の抽出方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、検査対象物を打撃することにより生じる打音から生成された打音データの周波数と音圧強度との関係を表す周波数解析データに対して、最小探索周波数と、最大探索周波数と、によって区切られる仮探索範囲を設定する工程と、前記仮探索範囲において、前記最小探索周波数を始端とする一定幅の第一範囲を設定し、該第一範囲において、音圧強度が最低となる第一の周波数を抽出するとともに、前記最大探索周波数を終端とする一定幅の第二範囲を設定し、該第二範囲において、音圧強度が最低となる第二の周波数を抽出し、前記第一の周波数と、前記第二の周波数と、によって区切られる本探索範囲を設定する工程と、前記本探索範囲において、音圧強度が最大となるピーク周波数を抽出する工程と、を備えるものである。
【0007】
請求項2においては、前記本探索範囲における任意の周波数における音圧強度を、打音データの周波数解析データにおける前記任意の周波数を中心とする任意の幅の帯域における音圧強度の平均値として求め、音圧強度が平均化された平均化周波数解析データを求める工程と、前記本探索範囲において、前記平均化周波数解析データの音圧強度が最大となる仮ピーク周波数を抽出する工程と、をさらに備え、前記本探索範囲における前記仮ピーク周波数を中心とする任意の幅の帯域において、前記周波数解析データの音圧強度が最大となるピーク周波数を抽出する工程と、を備えるものである。
【0008】
請求項3においては、検査対象物を打撃することにより生じる打音から生成された打音データの周波数と音圧強度との関係を表す周波数解析データにおける、任意の周波数における音圧強度を、前記周波数解析データにおける前記任意の周波数を中心とする任意の幅の帯域における音圧強度の平均値として求め、音圧強度が平均化された平均化周波数解析データを求める工程と、前記平均化周波数解析データに対して、最小探索周波数と、最大探索周波数と、によって区切られる本探索範囲を設定する工程と、前記本探索範囲において、前記平均化周波数解析データの音圧強度が最大となる仮ピーク周波数を抽出する工程と、前記周波数解析データに対して、前記仮ピーク周波数を中心とする任意の幅の帯域において、前記周波数解析データの音圧強度が最大となるピーク周波数を抽出する工程と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、隣接するピーク周波数の影響を排除して、正確にピーク周波数を抽出することができる。
【0011】
請求項2においては、ピーク周波数の近傍に出現するノイズの影響を排除して、より正確にピーク周波数を抽出することができる。
【0012】
請求項3においては、ピーク周波数の近傍に出現するノイズの影響を排除して、正確にピーク周波数を抽出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず始めに、一般的な打音検査装置の全体構成について、図1および図2を用いて説明をする。図1は一般的な打音検査装置の全体構成を示す模式図、図2は一般的な打音データの解析方法を示す模式図である。
図1に示す如く、一般的に打音検査に用いられる打音検査装置1は、ハンマー2、マイクロフォン3、PC(パーソナルコンピュータ)4等によって構成され、マイクロフォン3はPC4に接続されている。
【0014】
ハンマー2は、検査対象物となるワーク5に対して、打撃を加えて、打音を発生させるために手段である。そして、ハンマー2による打撃によってワーク5から生じた打音はマイクロフォン3によって集音される。マイクロフォン3によって集音された打音はアナログデータであるため、この打音をPC4によってデジタル変換処理して、打音データDが生成される。そして、生成された打音データDはPC4の記憶装置4aに記憶される。
【0015】
さらに、図2に示す如く、記憶装置4aに記憶された打音データDを、PC4の演算装置4bによって高速フーリエ変換(FFT)することにより、打音データDを周波数と音圧強度の関係として表した周波数解析データFDが生成され、この周波数解析データFDは、記憶装置4aに記憶される。
【0016】
図2に示す如く、一般的に打音データDから求められる周波数と音圧強度との関係を表す周波数解析データFDには、固有周波数(即ち、ピーク周波数)が複数出現する。ワーク5が同一であれば、固有周波数の出現状態が略一定となるが、ワーク5に内部欠陥等がある場合には、固有周波数の出現状態が変化する。打音検査装置1は、このことを利用して、良品であるワーク5から予め抽出しておいた基準となる周波数解析データFDと、検査対象のワーク5から抽出した周波数解析データFDとを比較して、ピーク周波数の出現状態の差異を評価することにより、ワーク5の内部欠陥等を非破壊で検出することができるものである。
【0017】
次に、本発明の第一実施例に係るピーク周波数の抽出方法について、図3および図4を用いて説明をする。図3は本発明の一実施例に係る周波数解析データを示す図、図4は本発明の第一実施例に係るピーク周波数の抽出方法を示す説明図、(a)は仮探索範囲設定工程を示す説明図、(b)は本探索範囲設定工程を示す説明図、(c)はピーク周波数抽出工程を示す説明図である。
【0018】
図3に示す如く、本発明の第一実施例に係るピーク周波数の抽出方法では、周波数解析データFDに複数存在するピーク周波数のうち、出現状態が特徴的なピーク周波数を含む周波数帯域を適宜選択し、選択した周波数帯域において、ピーク周波数の抽出を行う。ここでは、選択した任意の周波数帯域Wにおける、ピーク周波数Fpの抽出方法を例示する。
【0019】
選択した周波数帯域Wにおける周波数解析データFDwを切り出して簡略化して表したものを、図3(b)に示している。この周波数帯域Wにおいては、抽出するピーク周波数Fpに隣接する別のピーク周波数Fnが存在している。
【0020】
(仮探索範囲設定工程)
図4(a)に示す如く、本発明の第一実施例に係るピーク周波数の抽出方法では、まず始めに、周波数解析データFDwの選択した周波数帯域Wにおいて、最小探索周波数Fminと、最大探索周波数Fmaxを設定する。そして、最小探索周波数Fminと最大探索周波数Fmaxによって区切られる範囲(最小探索周波数Fminから最大探索周波数Fmaxまでの範囲)を、仮探索範囲Skとして設定する。尚、最小探索周波数Fminおよび最大探索周波数Fmaxをどの位置に設定するかは、周波数解析データFDwの状況等に応じて適宜設定することができる。
【0021】
(本探索範囲設定工程)
次に、図4(b)に示す如く、仮探索範囲Skにおいて、最小探索周波数Fminを始端とする一定幅Lの周波数帯域である第一範囲S1と、最大探索周波数Fmaxを終端とする一定幅Lの周波数帯域である第二範囲S2を設定する。尚、この第一範囲S1および第二範囲S2をどの程度の幅に設定するかは、周波数解析データFDwの状況に応じて適宜設定することができる。
【0022】
そして、第一範囲S1において、音圧強度の最小値を抽出し、その最小値をとる周波数を第一周波数F1として設定する。さらに、第二範囲S2において、音圧強度の最小値を抽出し、その最小値をとる周波数を第二周波数F2として設定する。
そして、第一周波数F1と第二周波数F2によって区切られる範囲を、本探索範囲Srとして設定する。
【0023】
(ピーク周波数抽出工程)
次に、図4(c)に示す如く、本探索範囲Srにおいて、音圧強度の最大値を抽出し、その最大値をとる周波数をピーク周波数Fpとして抽出する。
このように、本発明の第一実施例に係るピーク周波数の抽出方法によれば、隣接するピーク周波数Fnの影響を受けることなく、正確にピーク周波数Fpを抽出することが可能となる。
【0024】
即ち、本発明の一実施例に係るピーク周波数の抽出方法では、打音データDの周波数解析データFDwに対して、最小探索周波数Fminと、最大探索周波数Fmaxと、によって区切られる仮探索範囲Skを設定する工程と、仮探索範囲Skにおいて、最小探索周波数Fminを始端とする一定幅Lの第一範囲S1を設定し、第一範囲S1において、音圧強度が最低となる第一周波数F1を抽出するとともに、最大探索周波数Fmaxを終端とする一定幅Lの第二範囲S2を設定し、第二範囲S2において、音圧強度が最低となる第二周波数F2を抽出し、第一周波数F1と、第二周波数F2と、によって区切られる本探索範囲Srを設定する工程と、本探索範囲Srにおいて、音圧強度が最大となるピーク周波数Fpを抽出する工程と、を備えるものである。
このような構成により、隣接するピーク周波数Fnの影響を排除して、正確にピーク周波数Fpを抽出することができる。
【0025】
次に、本発明の第二実施例に係るピーク周波数の抽出方法について、図5および図6を用いて説明をする。図5は本発明の第二実施例に係るピーク周波数の抽出方法における平均化周波数解析データの生成方法を示す説明図、図6は本発明の第二実施例に係るピーク周波数の抽出方法を示す説明図、(a)は仮探索範囲設定工程を示す説明図、(b)は仮ピーク周波数抽出工程および本探索範囲適正化工程を示す説明図、(c)はピーク周波数抽出工程を示す説明図である。
【0026】
図5中の矢印Aで示す部位のように、周波数解析データFDw中に、急峻な音圧強度の変動が出現する場合があるが、これは、ノイズ(所謂、スパイクノイズ)である。このようなノイズAがあると、正確にピーク周波数Fpを抽出することが困難となる場合があるため、本発明の第二実施例に係るピーク周波数の抽出方法では、周波数解析データFDwから、平均化周波数解析データFDaを生成して、ノイズAの影響を排除し、より正確にピーク周波数Fpを抽出できるようにしている。
【0027】
ここで、平均化周波数解析データFDaの生成方法について、図5を用いて説明をする。
図5に示す如く、周波数解析データFDw中の任意のデータである点anについて、その点anに対応する、平均化されたデータである点Xnの求め方について、例示して説明をする。
本発明の第二実施例に係るピーク周波数の抽出方法では、点Xnは、点anの前後の一定範囲に存在するデータの平均値として求められる。さらに具体的に言えば、本実施例では、点Xnは、点anの前後各2点の平均値として求めている。
つまり点Xnは、点an−2、点an−1、点an+1、点an+2、の以上4点の音圧強度の平均値から求められる。
【0028】
同様にして、点Xn+1は、点an+1の前後各2点の平均値として求めており、具体的には、点Xn+1は、点an−1、点an、点an+2、点an+3、の以上4点の音圧強度の平均値から求められる。
尚、本実施例では、点anの前後2点(合計4点)の平均値として、点Xnを求める例を例示したが、点an前後のどこまでの範囲のデータを用いて平均値を算出するかは、適宜設定することが可能であり、後述する適正化された本探索範囲St(即ち、一定幅2V)以内とすることが望ましい。
【0029】
このようにして、仮探索範囲Skの全てのデータ(点an、点an+1、点an+2、・・・)について、平均化データ(点Xn、点Xn+1、点Xn+2、・・・)を生成することによって、平均化周波数解析データFDaを生成することができる。
【0030】
(本探索範囲設定工程)
本発明の第二実施例に係るピーク周波数の抽出方法では、前述した本探索範囲をより適正化することができる。
図6(a)に示す如く、第一範囲S1において、音圧強度の最小値を抽出し、その最小値をとる周波数を第一周波数F1として設定する。さらに、第二範囲S2において、音圧強度の最小値を抽出し、その最小値をとる周波数を第二周波数F2として設定する。
そして、第一周波数F1と第二周波数F2によって区切られる本探索範囲Srを設定する。
【0031】
(平均化周波数解析データ生成工程)
図6(b)に示す如く、第一周波数F1と第二周波数F2によって区切られる本探索範囲Srの周波数解析データFDwを前述した手法によって平均化して、平均化周波数解析データFDaを生成する。
【0032】
(仮ピーク周波数抽出工程)
また、図6(b)に示す如く、平均化周波数解析データFDaから音圧強度の最大値を抽出し、この最大値をとる周波数を仮ピーク周波数Fkとして抽出する。
【0033】
(本探索範囲適正化工程)
そして、周波数解析データFDwにおいて、仮ピーク周波数Fkを中心とする一定幅2Vの周波数帯域として適正化された本探索範囲Stを設定する。
【0034】
(ピーク周波数抽出工程)
そして、図6(c)に示す如く、適正化された本探索範囲Stにおいて、音圧強度の最大値を抽出し、その最大値をとる周波数をピーク周波数Fpとして抽出する。
このように、本発明の第二実施例に係るピーク周波数の抽出方法によれば、隣接するピーク周波数Fnの影響を受けることなく、また、ピーク周波数Fpの近傍に出現するノイズAの影響を受けることもないので、より正確にピーク周波数Fpを抽出することが可能となる。
【0035】
即ち、本発明の第二実施例に係るピーク周波数の抽出方法では、本探索範囲Srにおける任意の周波数における音圧強度(即ち、点an、点an+1、点an+2、・・・)を、打音データの周波数解析データFDwにおける前記任意の周波数を中心とする任意の幅(例えば、前後各2点)の帯域における音圧強度の平均値(即ち、点Xn、点Xn+1、点Xn+2、・・・)として求め、音圧強度が平均化された平均化周波数解析データFDaを求める工程と、本探索範囲Srにおいて、平均化周波数解析データFDaの音圧強度が最大となる仮ピーク周波数Fkを抽出する工程と、をさらに備え、本探索範囲Srにおける仮ピーク周波数Fkを中心とする任意の幅2Vの帯域である適正化された本探索範囲Stにおいて、周波数解析データFDwの音圧強度が最大となるピーク周波数Fpを抽出する工程と、を備えるものである。
このような構成により、ピーク周波数Fpの近傍に出現するノイズAの影響を排除して、より正確にピーク周波数Fpを抽出することができる。
【0036】
次に、本発明の第三実施例に係るピーク周波数の抽出方法について、図7を用いて説明をする。図7は本発明の第三実施例に係るピーク周波数の抽出方法を示す説明図、(a)は本探索範囲設定工程を示す説明図、(b)は仮ピーク周波数抽出工程および本探索範囲適正化工程を示す説明図、(c)はピーク周波数抽出工程を示す説明図である。
【0037】
前述した本発明の第二実施例に係るピーク周波数の抽出方法において、選択した周波数帯域Wが狭い場合等には、仮探索範囲設定工程を省略し、最小探索周波数Fminと最大探索周波数Fmaxによって区切られる選択した周波数帯域Wの全範囲を本探索範囲Srとすることも可能である。この場合のピーク周波数Fpの抽出方法について、以下説明をする。
【0038】
(本探索範囲設定工程)
図7(a)に示す如く、本発明の第三実施例に係るピーク周波数の抽出方法では、最小探索周波数Fminと最大探索周波数Fmaxによって区切られる全範囲を本探索範囲Srとして設定する。
【0039】
(平均化周波数解析データ生成工程)
図7(b)に示す如く、最小探索周波数Fminと最大探索周波数Fmaxによって区切られる本探索範囲Srの周波数解析データFDwを平均化して、平均化周波数解析データFDaを生成する。
【0040】
(仮ピーク周波数抽出工程)
そして、平均化周波数解析データFDaから音圧強度の最大値を抽出し、この最大値をとる周波数を仮ピーク周波数Fkとして抽出する。
【0041】
(本探索範囲適正化工程)
そして、周波数解析データFDwにおいて、仮ピーク周波数Fkを中心とする一定幅2Vの周波数帯域として適正化された本探索範囲Stを設定する。
【0042】
(ピーク周波数抽出工程)
そして、図7(c)に示す如く、適正化された本探索範囲Stにおいて、音圧強度の最大値を抽出し、その最大値をとる周波数をピーク周波数Fpとして抽出する。
このように、本発明の第三実施例に係るピーク周波数の抽出方法によれば、ピーク周波数Fpの近傍に出現するノイズAの影響を受けることがないので、正確にピーク周波数Fpを抽出することが可能となる。
【0043】
即ち、本発明の第三実施例に係るピーク周波数の抽出方法では、任意の周波数における音圧強度(即ち、点an、点an+1、点an+2、・・・)を、打音データDの周波数解析データFDwにおける前記任意の周波数を中心とする任意の幅(例えば、前後各2点)の帯域における音圧強度の平均値(即ち、点Xn、点Xn+1、点Xn+2、・・・)として求め、音圧強度が平均化された平均化周波数解析データFDaを求める工程と、平均化周波数解析データFDaに対して、最小探索周波数Fminと、最大探索周波数Fmaxと、によって区切られる本探索範囲Srを設定する工程と、本探索範囲Srにおいて、平均化周波数解析データFDaの音圧強度が最大となる仮ピーク周波数Fkを抽出する工程と、周波数解析データFDwに対して、仮ピーク周波数Fkを中心とする任意の幅2Vの帯域において、音圧強度が最大となるピーク周波数Fpを抽出する工程と、を備えるものである。
このような構成により、ピーク周波数Fpの近傍に出現するノイズAの影響を排除して、正確にピーク周波数Fpを抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】一般的な打音検査装置の全体構成を示す模式図。
【図2】一般的な打音データの解析方法を示す模式図。
【図3】本発明の一実施例に係る周波数解析データを示す図。
【図4】本発明の第一実施例に係るピーク周波数の抽出方法を示す説明図、(a)は仮探索範囲設定工程を示す説明図、(b)は本探索範囲設定工程を示す説明図、(c)はピーク周波数抽出工程を示す説明図。
【図5】本発明の第二実施例に係るピーク周波数の抽出方法における平均化周波数解析データの生成方法を示す説明図。
【図6】本発明の第二実施例に係るピーク周波数の抽出方法を示す説明図、(a)は仮探索範囲設定工程を示す説明図、(b)は仮ピーク周波数抽出工程および本探索範囲適正化工程を示す説明図、(c)はピーク周波数抽出工程を示す説明図。
【図7】本発明の第三実施例に係るピーク周波数の抽出方法を示す説明図、(a)は本探索範囲設定工程を示す説明図、(b)は仮ピーク周波数抽出工程および本探索範囲適正化工程を示す説明図、(c)はピーク周波数抽出工程を示す説明図。
【符号の説明】
【0045】
D 打音データ
FD 周波数解析データ
FDa 平均化周波数解析データ
Fp ピーク周波数
Fk 仮ピーク周波数
Fmin 最小探索周波数
Fmax 最大探索周波数
Sk 仮探索範囲
Sr 本探索範囲
St 適正化された本探索範囲
S1 第一範囲
F1 第一周波数
S2 第二範囲
F2 第二周波数
【技術分野】
【0001】
本発明は、打音検査におけるピーク周波数の抽出方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製品の内部欠陥を非破壊で検査する方法として、打音検査による方法が知られており、例えば、以下に示す特許文献1に開示され公知となっている。
係る特許文献1に示される従来技術では、基準周波数データとして、予め実験等により良品である製品の打音データから音圧強度と固有(共振)周波数との関係を求めておき、この基準周波数データと検査対象の製品から採取した打音データから求めた固有周波数の解析データとを比較して、検査対象製品から得た固有周波数がピークとなる周波数(以下、ピーク周波数と記載する)が、基準周波数データのピーク周波数よりも予め設定された所定の周波数幅以上乖離している場合、または、基準周波数データのピーク周波数と検査対象製品のピーク周波数の位置(帯域)が一致しない場合には、検査対象製品に不良があると判断するようにしている。
【0003】
しかしながら、打音データから求めた固有周波数の解析データには、ノイズが含まれている場合が多く、このノイズの影響によって、固有周波数のピーク周波数を正確に抽出することができない場合があった。このため、検査対象製品が良品であるにもかかわらず、不良品であると判断してしまったり、反対に、不良品を良品と判断してしまったりする場合もあった。このため、固有周波数の解析データからピーク周波数を正確に抽出することができる技術の開発が望まれていた。
【特許文献1】特開2006−242580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、係る現状を鑑みてなされたものであり、打音検査による良品および不良品の判断精度を向上させるべく、打音データの周波数解析データから、抽出対象となる周波数帯域において、音圧強度がピークとなるときの周波数を精度良く抽出することができる、打音検査におけるピーク周波数の抽出方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、検査対象物を打撃することにより生じる打音から生成された打音データの周波数と音圧強度との関係を表す周波数解析データに対して、最小探索周波数と、最大探索周波数と、によって区切られる仮探索範囲を設定する工程と、前記仮探索範囲において、前記最小探索周波数を始端とする一定幅の第一範囲を設定し、該第一範囲において、音圧強度が最低となる第一の周波数を抽出するとともに、前記最大探索周波数を終端とする一定幅の第二範囲を設定し、該第二範囲において、音圧強度が最低となる第二の周波数を抽出し、前記第一の周波数と、前記第二の周波数と、によって区切られる本探索範囲を設定する工程と、前記本探索範囲において、音圧強度が最大となるピーク周波数を抽出する工程と、を備えるものである。
【0007】
請求項2においては、前記本探索範囲における任意の周波数における音圧強度を、打音データの周波数解析データにおける前記任意の周波数を中心とする任意の幅の帯域における音圧強度の平均値として求め、音圧強度が平均化された平均化周波数解析データを求める工程と、前記本探索範囲において、前記平均化周波数解析データの音圧強度が最大となる仮ピーク周波数を抽出する工程と、をさらに備え、前記本探索範囲における前記仮ピーク周波数を中心とする任意の幅の帯域において、前記周波数解析データの音圧強度が最大となるピーク周波数を抽出する工程と、を備えるものである。
【0008】
請求項3においては、検査対象物を打撃することにより生じる打音から生成された打音データの周波数と音圧強度との関係を表す周波数解析データにおける、任意の周波数における音圧強度を、前記周波数解析データにおける前記任意の周波数を中心とする任意の幅の帯域における音圧強度の平均値として求め、音圧強度が平均化された平均化周波数解析データを求める工程と、前記平均化周波数解析データに対して、最小探索周波数と、最大探索周波数と、によって区切られる本探索範囲を設定する工程と、前記本探索範囲において、前記平均化周波数解析データの音圧強度が最大となる仮ピーク周波数を抽出する工程と、前記周波数解析データに対して、前記仮ピーク周波数を中心とする任意の幅の帯域において、前記周波数解析データの音圧強度が最大となるピーク周波数を抽出する工程と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、隣接するピーク周波数の影響を排除して、正確にピーク周波数を抽出することができる。
【0011】
請求項2においては、ピーク周波数の近傍に出現するノイズの影響を排除して、より正確にピーク周波数を抽出することができる。
【0012】
請求項3においては、ピーク周波数の近傍に出現するノイズの影響を排除して、正確にピーク周波数を抽出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず始めに、一般的な打音検査装置の全体構成について、図1および図2を用いて説明をする。図1は一般的な打音検査装置の全体構成を示す模式図、図2は一般的な打音データの解析方法を示す模式図である。
図1に示す如く、一般的に打音検査に用いられる打音検査装置1は、ハンマー2、マイクロフォン3、PC(パーソナルコンピュータ)4等によって構成され、マイクロフォン3はPC4に接続されている。
【0014】
ハンマー2は、検査対象物となるワーク5に対して、打撃を加えて、打音を発生させるために手段である。そして、ハンマー2による打撃によってワーク5から生じた打音はマイクロフォン3によって集音される。マイクロフォン3によって集音された打音はアナログデータであるため、この打音をPC4によってデジタル変換処理して、打音データDが生成される。そして、生成された打音データDはPC4の記憶装置4aに記憶される。
【0015】
さらに、図2に示す如く、記憶装置4aに記憶された打音データDを、PC4の演算装置4bによって高速フーリエ変換(FFT)することにより、打音データDを周波数と音圧強度の関係として表した周波数解析データFDが生成され、この周波数解析データFDは、記憶装置4aに記憶される。
【0016】
図2に示す如く、一般的に打音データDから求められる周波数と音圧強度との関係を表す周波数解析データFDには、固有周波数(即ち、ピーク周波数)が複数出現する。ワーク5が同一であれば、固有周波数の出現状態が略一定となるが、ワーク5に内部欠陥等がある場合には、固有周波数の出現状態が変化する。打音検査装置1は、このことを利用して、良品であるワーク5から予め抽出しておいた基準となる周波数解析データFDと、検査対象のワーク5から抽出した周波数解析データFDとを比較して、ピーク周波数の出現状態の差異を評価することにより、ワーク5の内部欠陥等を非破壊で検出することができるものである。
【0017】
次に、本発明の第一実施例に係るピーク周波数の抽出方法について、図3および図4を用いて説明をする。図3は本発明の一実施例に係る周波数解析データを示す図、図4は本発明の第一実施例に係るピーク周波数の抽出方法を示す説明図、(a)は仮探索範囲設定工程を示す説明図、(b)は本探索範囲設定工程を示す説明図、(c)はピーク周波数抽出工程を示す説明図である。
【0018】
図3に示す如く、本発明の第一実施例に係るピーク周波数の抽出方法では、周波数解析データFDに複数存在するピーク周波数のうち、出現状態が特徴的なピーク周波数を含む周波数帯域を適宜選択し、選択した周波数帯域において、ピーク周波数の抽出を行う。ここでは、選択した任意の周波数帯域Wにおける、ピーク周波数Fpの抽出方法を例示する。
【0019】
選択した周波数帯域Wにおける周波数解析データFDwを切り出して簡略化して表したものを、図3(b)に示している。この周波数帯域Wにおいては、抽出するピーク周波数Fpに隣接する別のピーク周波数Fnが存在している。
【0020】
(仮探索範囲設定工程)
図4(a)に示す如く、本発明の第一実施例に係るピーク周波数の抽出方法では、まず始めに、周波数解析データFDwの選択した周波数帯域Wにおいて、最小探索周波数Fminと、最大探索周波数Fmaxを設定する。そして、最小探索周波数Fminと最大探索周波数Fmaxによって区切られる範囲(最小探索周波数Fminから最大探索周波数Fmaxまでの範囲)を、仮探索範囲Skとして設定する。尚、最小探索周波数Fminおよび最大探索周波数Fmaxをどの位置に設定するかは、周波数解析データFDwの状況等に応じて適宜設定することができる。
【0021】
(本探索範囲設定工程)
次に、図4(b)に示す如く、仮探索範囲Skにおいて、最小探索周波数Fminを始端とする一定幅Lの周波数帯域である第一範囲S1と、最大探索周波数Fmaxを終端とする一定幅Lの周波数帯域である第二範囲S2を設定する。尚、この第一範囲S1および第二範囲S2をどの程度の幅に設定するかは、周波数解析データFDwの状況に応じて適宜設定することができる。
【0022】
そして、第一範囲S1において、音圧強度の最小値を抽出し、その最小値をとる周波数を第一周波数F1として設定する。さらに、第二範囲S2において、音圧強度の最小値を抽出し、その最小値をとる周波数を第二周波数F2として設定する。
そして、第一周波数F1と第二周波数F2によって区切られる範囲を、本探索範囲Srとして設定する。
【0023】
(ピーク周波数抽出工程)
次に、図4(c)に示す如く、本探索範囲Srにおいて、音圧強度の最大値を抽出し、その最大値をとる周波数をピーク周波数Fpとして抽出する。
このように、本発明の第一実施例に係るピーク周波数の抽出方法によれば、隣接するピーク周波数Fnの影響を受けることなく、正確にピーク周波数Fpを抽出することが可能となる。
【0024】
即ち、本発明の一実施例に係るピーク周波数の抽出方法では、打音データDの周波数解析データFDwに対して、最小探索周波数Fminと、最大探索周波数Fmaxと、によって区切られる仮探索範囲Skを設定する工程と、仮探索範囲Skにおいて、最小探索周波数Fminを始端とする一定幅Lの第一範囲S1を設定し、第一範囲S1において、音圧強度が最低となる第一周波数F1を抽出するとともに、最大探索周波数Fmaxを終端とする一定幅Lの第二範囲S2を設定し、第二範囲S2において、音圧強度が最低となる第二周波数F2を抽出し、第一周波数F1と、第二周波数F2と、によって区切られる本探索範囲Srを設定する工程と、本探索範囲Srにおいて、音圧強度が最大となるピーク周波数Fpを抽出する工程と、を備えるものである。
このような構成により、隣接するピーク周波数Fnの影響を排除して、正確にピーク周波数Fpを抽出することができる。
【0025】
次に、本発明の第二実施例に係るピーク周波数の抽出方法について、図5および図6を用いて説明をする。図5は本発明の第二実施例に係るピーク周波数の抽出方法における平均化周波数解析データの生成方法を示す説明図、図6は本発明の第二実施例に係るピーク周波数の抽出方法を示す説明図、(a)は仮探索範囲設定工程を示す説明図、(b)は仮ピーク周波数抽出工程および本探索範囲適正化工程を示す説明図、(c)はピーク周波数抽出工程を示す説明図である。
【0026】
図5中の矢印Aで示す部位のように、周波数解析データFDw中に、急峻な音圧強度の変動が出現する場合があるが、これは、ノイズ(所謂、スパイクノイズ)である。このようなノイズAがあると、正確にピーク周波数Fpを抽出することが困難となる場合があるため、本発明の第二実施例に係るピーク周波数の抽出方法では、周波数解析データFDwから、平均化周波数解析データFDaを生成して、ノイズAの影響を排除し、より正確にピーク周波数Fpを抽出できるようにしている。
【0027】
ここで、平均化周波数解析データFDaの生成方法について、図5を用いて説明をする。
図5に示す如く、周波数解析データFDw中の任意のデータである点anについて、その点anに対応する、平均化されたデータである点Xnの求め方について、例示して説明をする。
本発明の第二実施例に係るピーク周波数の抽出方法では、点Xnは、点anの前後の一定範囲に存在するデータの平均値として求められる。さらに具体的に言えば、本実施例では、点Xnは、点anの前後各2点の平均値として求めている。
つまり点Xnは、点an−2、点an−1、点an+1、点an+2、の以上4点の音圧強度の平均値から求められる。
【0028】
同様にして、点Xn+1は、点an+1の前後各2点の平均値として求めており、具体的には、点Xn+1は、点an−1、点an、点an+2、点an+3、の以上4点の音圧強度の平均値から求められる。
尚、本実施例では、点anの前後2点(合計4点)の平均値として、点Xnを求める例を例示したが、点an前後のどこまでの範囲のデータを用いて平均値を算出するかは、適宜設定することが可能であり、後述する適正化された本探索範囲St(即ち、一定幅2V)以内とすることが望ましい。
【0029】
このようにして、仮探索範囲Skの全てのデータ(点an、点an+1、点an+2、・・・)について、平均化データ(点Xn、点Xn+1、点Xn+2、・・・)を生成することによって、平均化周波数解析データFDaを生成することができる。
【0030】
(本探索範囲設定工程)
本発明の第二実施例に係るピーク周波数の抽出方法では、前述した本探索範囲をより適正化することができる。
図6(a)に示す如く、第一範囲S1において、音圧強度の最小値を抽出し、その最小値をとる周波数を第一周波数F1として設定する。さらに、第二範囲S2において、音圧強度の最小値を抽出し、その最小値をとる周波数を第二周波数F2として設定する。
そして、第一周波数F1と第二周波数F2によって区切られる本探索範囲Srを設定する。
【0031】
(平均化周波数解析データ生成工程)
図6(b)に示す如く、第一周波数F1と第二周波数F2によって区切られる本探索範囲Srの周波数解析データFDwを前述した手法によって平均化して、平均化周波数解析データFDaを生成する。
【0032】
(仮ピーク周波数抽出工程)
また、図6(b)に示す如く、平均化周波数解析データFDaから音圧強度の最大値を抽出し、この最大値をとる周波数を仮ピーク周波数Fkとして抽出する。
【0033】
(本探索範囲適正化工程)
そして、周波数解析データFDwにおいて、仮ピーク周波数Fkを中心とする一定幅2Vの周波数帯域として適正化された本探索範囲Stを設定する。
【0034】
(ピーク周波数抽出工程)
そして、図6(c)に示す如く、適正化された本探索範囲Stにおいて、音圧強度の最大値を抽出し、その最大値をとる周波数をピーク周波数Fpとして抽出する。
このように、本発明の第二実施例に係るピーク周波数の抽出方法によれば、隣接するピーク周波数Fnの影響を受けることなく、また、ピーク周波数Fpの近傍に出現するノイズAの影響を受けることもないので、より正確にピーク周波数Fpを抽出することが可能となる。
【0035】
即ち、本発明の第二実施例に係るピーク周波数の抽出方法では、本探索範囲Srにおける任意の周波数における音圧強度(即ち、点an、点an+1、点an+2、・・・)を、打音データの周波数解析データFDwにおける前記任意の周波数を中心とする任意の幅(例えば、前後各2点)の帯域における音圧強度の平均値(即ち、点Xn、点Xn+1、点Xn+2、・・・)として求め、音圧強度が平均化された平均化周波数解析データFDaを求める工程と、本探索範囲Srにおいて、平均化周波数解析データFDaの音圧強度が最大となる仮ピーク周波数Fkを抽出する工程と、をさらに備え、本探索範囲Srにおける仮ピーク周波数Fkを中心とする任意の幅2Vの帯域である適正化された本探索範囲Stにおいて、周波数解析データFDwの音圧強度が最大となるピーク周波数Fpを抽出する工程と、を備えるものである。
このような構成により、ピーク周波数Fpの近傍に出現するノイズAの影響を排除して、より正確にピーク周波数Fpを抽出することができる。
【0036】
次に、本発明の第三実施例に係るピーク周波数の抽出方法について、図7を用いて説明をする。図7は本発明の第三実施例に係るピーク周波数の抽出方法を示す説明図、(a)は本探索範囲設定工程を示す説明図、(b)は仮ピーク周波数抽出工程および本探索範囲適正化工程を示す説明図、(c)はピーク周波数抽出工程を示す説明図である。
【0037】
前述した本発明の第二実施例に係るピーク周波数の抽出方法において、選択した周波数帯域Wが狭い場合等には、仮探索範囲設定工程を省略し、最小探索周波数Fminと最大探索周波数Fmaxによって区切られる選択した周波数帯域Wの全範囲を本探索範囲Srとすることも可能である。この場合のピーク周波数Fpの抽出方法について、以下説明をする。
【0038】
(本探索範囲設定工程)
図7(a)に示す如く、本発明の第三実施例に係るピーク周波数の抽出方法では、最小探索周波数Fminと最大探索周波数Fmaxによって区切られる全範囲を本探索範囲Srとして設定する。
【0039】
(平均化周波数解析データ生成工程)
図7(b)に示す如く、最小探索周波数Fminと最大探索周波数Fmaxによって区切られる本探索範囲Srの周波数解析データFDwを平均化して、平均化周波数解析データFDaを生成する。
【0040】
(仮ピーク周波数抽出工程)
そして、平均化周波数解析データFDaから音圧強度の最大値を抽出し、この最大値をとる周波数を仮ピーク周波数Fkとして抽出する。
【0041】
(本探索範囲適正化工程)
そして、周波数解析データFDwにおいて、仮ピーク周波数Fkを中心とする一定幅2Vの周波数帯域として適正化された本探索範囲Stを設定する。
【0042】
(ピーク周波数抽出工程)
そして、図7(c)に示す如く、適正化された本探索範囲Stにおいて、音圧強度の最大値を抽出し、その最大値をとる周波数をピーク周波数Fpとして抽出する。
このように、本発明の第三実施例に係るピーク周波数の抽出方法によれば、ピーク周波数Fpの近傍に出現するノイズAの影響を受けることがないので、正確にピーク周波数Fpを抽出することが可能となる。
【0043】
即ち、本発明の第三実施例に係るピーク周波数の抽出方法では、任意の周波数における音圧強度(即ち、点an、点an+1、点an+2、・・・)を、打音データDの周波数解析データFDwにおける前記任意の周波数を中心とする任意の幅(例えば、前後各2点)の帯域における音圧強度の平均値(即ち、点Xn、点Xn+1、点Xn+2、・・・)として求め、音圧強度が平均化された平均化周波数解析データFDaを求める工程と、平均化周波数解析データFDaに対して、最小探索周波数Fminと、最大探索周波数Fmaxと、によって区切られる本探索範囲Srを設定する工程と、本探索範囲Srにおいて、平均化周波数解析データFDaの音圧強度が最大となる仮ピーク周波数Fkを抽出する工程と、周波数解析データFDwに対して、仮ピーク周波数Fkを中心とする任意の幅2Vの帯域において、音圧強度が最大となるピーク周波数Fpを抽出する工程と、を備えるものである。
このような構成により、ピーク周波数Fpの近傍に出現するノイズAの影響を排除して、正確にピーク周波数Fpを抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】一般的な打音検査装置の全体構成を示す模式図。
【図2】一般的な打音データの解析方法を示す模式図。
【図3】本発明の一実施例に係る周波数解析データを示す図。
【図4】本発明の第一実施例に係るピーク周波数の抽出方法を示す説明図、(a)は仮探索範囲設定工程を示す説明図、(b)は本探索範囲設定工程を示す説明図、(c)はピーク周波数抽出工程を示す説明図。
【図5】本発明の第二実施例に係るピーク周波数の抽出方法における平均化周波数解析データの生成方法を示す説明図。
【図6】本発明の第二実施例に係るピーク周波数の抽出方法を示す説明図、(a)は仮探索範囲設定工程を示す説明図、(b)は仮ピーク周波数抽出工程および本探索範囲適正化工程を示す説明図、(c)はピーク周波数抽出工程を示す説明図。
【図7】本発明の第三実施例に係るピーク周波数の抽出方法を示す説明図、(a)は本探索範囲設定工程を示す説明図、(b)は仮ピーク周波数抽出工程および本探索範囲適正化工程を示す説明図、(c)はピーク周波数抽出工程を示す説明図。
【符号の説明】
【0045】
D 打音データ
FD 周波数解析データ
FDa 平均化周波数解析データ
Fp ピーク周波数
Fk 仮ピーク周波数
Fmin 最小探索周波数
Fmax 最大探索周波数
Sk 仮探索範囲
Sr 本探索範囲
St 適正化された本探索範囲
S1 第一範囲
F1 第一周波数
S2 第二範囲
F2 第二周波数
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物を打撃することにより生じる打音から生成された打音データの周波数と音圧強度との関係を表す周波数解析データに対して、
最小探索周波数と、
最大探索周波数と、
によって区切られる仮探索範囲を設定する工程と、
前記仮探索範囲において、
前記最小探索周波数を始端とする一定幅の第一範囲を設定し、
該第一範囲において、音圧強度が最低となる第一の周波数を抽出するとともに、
前記最大探索周波数を終端とする一定幅の第二範囲を設定し、
該第二範囲において、音圧強度が最低となる第二の周波数を抽出し、
前記第一の周波数と、
前記第二の周波数と、
によって区切られる本探索範囲を設定する工程と、
前記本探索範囲において、
音圧強度が最大となるピーク周波数を抽出する工程と、
を備える、
ことを特徴とする打音検査におけるピーク周波数の抽出方法。
【請求項2】
前記本探索範囲における任意の周波数における音圧強度を、
打音データの周波数解析データにおける前記任意の周波数を中心とする任意の幅の帯域における音圧強度の平均値として求め、音圧強度が平均化された平均化周波数解析データを求める工程と、
前記本探索範囲において、
前記平均化周波数解析データの音圧強度が最大となる仮ピーク周波数を抽出する工程と、
をさらに備え、
前記本探索範囲における前記仮ピーク周波数を中心とする任意の幅の帯域において、
前記周波数解析データの音圧強度が最大となるピーク周波数を抽出する工程と、
を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の打音検査におけるピーク周波数の抽出方法。
【請求項3】
検査対象物を打撃することにより生じる打音から生成された打音データの周波数と音圧強度との関係を表す周波数解析データにおける、任意の周波数における音圧強度を、
前記周波数解析データにおける前記任意の周波数を中心とする任意の幅の帯域における音圧強度の平均値として求め、音圧強度が平均化された平均化周波数解析データを求める工程と、
前記平均化周波数解析データに対して、
最小探索周波数と、
最大探索周波数と、
によって区切られる本探索範囲を設定する工程と、
前記本探索範囲において、
前記平均化周波数解析データの音圧強度が最大となる仮ピーク周波数を抽出する工程と、
前記周波数解析データに対して、
前記仮ピーク周波数を中心とする任意の幅の帯域において、
前記周波数解析データの音圧強度が最大となるピーク周波数を抽出する工程と、
を備える、
ことを特徴とする打音検査におけるピーク周波数の抽出方法。
【請求項1】
検査対象物を打撃することにより生じる打音から生成された打音データの周波数と音圧強度との関係を表す周波数解析データに対して、
最小探索周波数と、
最大探索周波数と、
によって区切られる仮探索範囲を設定する工程と、
前記仮探索範囲において、
前記最小探索周波数を始端とする一定幅の第一範囲を設定し、
該第一範囲において、音圧強度が最低となる第一の周波数を抽出するとともに、
前記最大探索周波数を終端とする一定幅の第二範囲を設定し、
該第二範囲において、音圧強度が最低となる第二の周波数を抽出し、
前記第一の周波数と、
前記第二の周波数と、
によって区切られる本探索範囲を設定する工程と、
前記本探索範囲において、
音圧強度が最大となるピーク周波数を抽出する工程と、
を備える、
ことを特徴とする打音検査におけるピーク周波数の抽出方法。
【請求項2】
前記本探索範囲における任意の周波数における音圧強度を、
打音データの周波数解析データにおける前記任意の周波数を中心とする任意の幅の帯域における音圧強度の平均値として求め、音圧強度が平均化された平均化周波数解析データを求める工程と、
前記本探索範囲において、
前記平均化周波数解析データの音圧強度が最大となる仮ピーク周波数を抽出する工程と、
をさらに備え、
前記本探索範囲における前記仮ピーク周波数を中心とする任意の幅の帯域において、
前記周波数解析データの音圧強度が最大となるピーク周波数を抽出する工程と、
を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の打音検査におけるピーク周波数の抽出方法。
【請求項3】
検査対象物を打撃することにより生じる打音から生成された打音データの周波数と音圧強度との関係を表す周波数解析データにおける、任意の周波数における音圧強度を、
前記周波数解析データにおける前記任意の周波数を中心とする任意の幅の帯域における音圧強度の平均値として求め、音圧強度が平均化された平均化周波数解析データを求める工程と、
前記平均化周波数解析データに対して、
最小探索周波数と、
最大探索周波数と、
によって区切られる本探索範囲を設定する工程と、
前記本探索範囲において、
前記平均化周波数解析データの音圧強度が最大となる仮ピーク周波数を抽出する工程と、
前記周波数解析データに対して、
前記仮ピーク周波数を中心とする任意の幅の帯域において、
前記周波数解析データの音圧強度が最大となるピーク周波数を抽出する工程と、
を備える、
ことを特徴とする打音検査におけるピーク周波数の抽出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2010−117318(P2010−117318A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292491(P2008−292491)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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